女性なら誰しもが「いつまでも美しく若々しい肌を保ちたい」という願いを抱いているのではないでしょうか。近著の『医者が教えるすごい美肌循環』が話題となっている、肌年齢26歳のアラフィフアンチエイジングドクターの日比野佐和子先生に肌と環境、メンタルの関係とその改善方法についてうかがいました。★関連記事:「我慢しすぎは禁物!」甘い物が大好きなアンチエイジングドクターが実践する美肌につながる食事法乾燥は肌の老化を早める原因に!――前回、美肌を実現するためには、食事、睡眠、運動、環境、メンタルを整えることが大切だというお話をいただきました今回は環境とメンタルについて解説をお願いします。日比野先生環境というのは私たちの生活を取り巻くもので、その中には紫外線や乾燥、スマートフォンやパソコンのブルーライトなど、肌や健康にダメージを与えてしまうものもあります。特に、美肌にとっての一番の敵は乾燥です。乾燥した室内で長時間過ごすと肌がつっぱったりカサカサしたりするのは、肌が乾いているからです。室内の乾燥は肌の老化を早める原因の1つです。乾燥によって肌の表面はハリを失い、目元や口元にシワが増えて老け顔が進行します。また、乾燥は肌や粘膜を覆っているバリアー機能を低下させるので、肌トラブルが起こりやすくなります。――乾燥を防ぐにはどのような対策をすれば良いのでしょうか?日比野先生理想的な室内の湿度は60~65%ですから、部屋の湿度を適切に保つことは美肌の維持にも有効です。加湿器の活用はもちろん、コップに水を入れて置いたり、洗濯物を室内に干すことでも部屋の湿度は上がります。ちなみに、インフルエンザウイルスは湿度50%以下で繁殖しやすいので、美肌のために湿度を保つことはウイルス対策にも有効です。ネガティブ思考は肌の調子を低下させる――メンタルについても解説をお願いします。日比野先生実は、かつての私はかなりのネガティブ思考でした。例えば、朝に何か悪いことが起きると「これは不幸な一日の始まりだ」と決めつけたりしていたんです。当時の私は結婚していたのですが、結婚生活での嫌なことを全部相手のせいにしていつもイライラしており、結局は離婚しました。肌の調子もすごく悪かったです。――ネガティブ思考をどのようにして改善したのでしょうか?日比野先生きっかけは30代前半の出来事です。仕事で海外に行ったときに空港で置き引きに遭い、パソコンを盗まれてしまったんです。パソコンの中には、書きかけの論文や3カ月かけて調査した内容など、大事なデータがたくさん入っていました。しかも、バックアップを取っていなかったので、それらのデータが全部なくなってしまったんです。「もう、私の人生は終わった……」とがくぜんとしてしまい、日本にいる母に電話をしました。そうしたら、母は「よかったじゃない」って笑い飛ばしたんです。――「よかったじゃない」というのは、どのような意味なのでしょうか?日比野先生そのころの私はいろいろな仕事に携わっており、明らかにオーバーワークでした。母は「あなたはずっと忙しかったから、リセットして休む時間を神様が与えてくれてよかった」という趣旨のことを言ってくれました。「悪いことが起きるのは、それを乗り越える力があるから」という言葉もかけてくれました。母の言葉を聞いて、たしかにそのとおりだなぁと思ったんですね。それ以来、何か悪いことが起きても「これは神様からの注意のサインなのかもしれない」と思うようになりましたし、考え方が少しずつ変わっていきました。日比野先生のメンタル調整術――今の日比野先生がメンタルを保つために心がけていることを教えてください。日比野先生以前の私は、何か気になることがあるとずっと悩んでいたんです。でも、悩んだり落ち込んだりしても、物事や状況は変わらないんですよね。それなら、今よりも少しでも良い状況に持って行くにはどうすればいいか、その改善策を考えようと思えるようになりました。また、日本人は我慢することを美徳としている人が多い印象なのですが、常識的に考えておかしいことまで我慢する必要はないと思うんです。私の場合、常識の範囲内で何か違和感を覚えたならば、我慢せずにきちんと自分の意思を伝えるようにしています。そのほうがストレスがたまらず、心地良い自分でいられます。実際、ポジティブ思考になってイライラやストレスがたまらなくなったことで、肌の調子は上向きに安定しました。――美肌の実現には、イライラやストレスをためこまないことも大切だということなんですね。日比野先生私が考える最大の美容法は、「いつでもご機嫌でいること」です。例えば、ジャニーズアイドルや韓流スターにときめいたり、趣味に熱中したり。自分にとっての楽しい時間を持っていると細胞やホルモンが活性化され、肌の調子も体調も良くなるものなんです。美肌のためにも心身の健康のためにも、すべての女性がご機嫌な毎日を過ごせるようにと願っています。<著書>『医者が教えるすごい美肌循環』日比野佐和子/著アンノーンブックス1300円+税取材・文/熊谷あづさ(50歳)ライター。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。著者/日比野 佐和子先生医療法人康梓会Y‘sサイエンスクリニック広尾統括院長、大阪大学大学院 医学系研究科 臨床遺伝子治療学特任准教授、医学博士。内科医、皮膚科医、眼科医、アンチエイジングドクター(日本抗加齢医学会専門医)。同志社大学アンチエイジングリサーチセンター講師、森ノ宮医療大学保健医療学部准教授、(財)ルイ・パストゥール医学研究センター基礎研究部アンチエイジング医科学研究室室長などを歴任。現在はアンチエイジング医療における第一人者的な立場として、基礎研究から最新の再生医療の臨床に至るまで幅広く国際的に活躍するとともに、テレビや雑誌等メディアでも注目を集める。プラセンタ療法を含む再生医療においてのパイオニアでもある。『オトナ女子の「美肌」づくり百科』、『つまり、結局何したら免疫力って上がるの?』など著書多数。
2022年06月29日女性なら誰しもが「いつまでも美しく若々しい肌を保ちたい」という願いを抱いているのではないでしょうか。近著の『医者が教えるすごい美肌循環』が話題となっている、肌年齢26歳のアラフィフアンチエイジングドクターの日比野佐和子先生に美肌の実現と維持に必要な食生活と運動、睡眠についてうかがいました。★関連記事:「肌年齢は26歳!」アラフィフのアンチエイジングドクターが実践する一生老けない肌の育て方美肌に大切な5つの要素とは?――美肌を実現するための、具体的な方法を教えてください。日比野先生肌の老化には、紫外線や乾燥、睡眠不足、栄養不足、ストレスなど女性ホルモン以外にもさまざまな要因が挙げられます。特に、加齢と複数の要因が重なることで肌の老化は加速していきます。肌の老化を抑えて美肌を実現するためには、食事、睡眠、運動の三本柱に加えて環境とメンタルを整えること。私はこの五角形が大切だと考えています。――今回は三本柱について伺いたいと思います。まずは食事から教えてください。どのようなものを食べるのが理想的なのでしょうか。日比野先生重要なのは、ビタミンやミネラルが豊富な食事を三食とることです。特に、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEの「ACE(エース)」には優れた抗酸化成分があり“美容ビタミン”といわれています。紫外線によって発生する活性酸素を消去し、肌の老化を防いでくれるんです。――先生が食事で気を付けていることを教えてください。日比野先生朝はたんぱく質をとるようにしていて、ゆで卵や目玉焼き、オムレツなどで卵を食べます。お昼はクリニックでスタッフと手作りの食事を食べることが多いのですが、お米は玄米や胚芽米、パンはライ麦パンや胚芽パン、全粒粉パンなど、炭水化物は白よりも茶色いものをとるようにしています。茶色い炭水化物は血糖値を上がりにくくして、老化を促進させる「糖化」の抑制につながります。夜は会食などで外食が多いのですが、食べ過ぎてしまった翌日は前日の食事から16時間空ける「プチ断食」をすることもあります。プチ断食をすると細胞内の悪玉たんぱく質をエネルギー源に変えてくれるオートファジーという作用が生じます。オートファジーには、長寿遺伝子を活性化させる働きがあることが判明しつつあるんです。日比野先生が実践している“好きなもの”を食べる工夫――著書の中にある「美肌循環」に、「浄」(肌にたまった老廃物を排出する)、「潤」(水分や養分で肌を満たす)、「育」(揺らがない肌の土台をつくる)、「断」(悪しき習慣から肌を守る)という4つのゴールデンサイクルがありますが、食生活で「断」をしていることはあるのでしょうか?日比野先生添加物や着色料など人工的なものが使われているものは、できる限りとらないということです。また、糖分の過剰摂取によって体内で糖化が進むと糖尿病などの病気をはじめ、肌の老化も引き起こします。ですから、先ほどお話したように白い炭水化物はできるだけとらないようにしています。――糖分の摂取に気を付けているということは、スイーツは召し上がらないということでしょうか?日比野先生いえ……。実は私、甘い物が大好きなんです。甘い物をとるとセロトニンという幸せホルモンが分泌されるので、幸福感を得ることができるんですね。以前の私はひと箱50円くらいのチョコレートのお菓子を10箱くらい買ってバクバク食べたりしていました。でも最近は、そうした食べ方はやめました。その代わり、一粒200円もするいただきもののチョコレートを包丁で1/4くらいに切るなどして、少しずつ食べるようにしています。こうすることで、少量でも甘い物を食べたという気分が味わえて満足するんです。――好きな食べ物を我慢するのは良くないということでしょうか?日比野先生何事も我慢しすぎるとコルチゾールというストレスホルモンの分泌が増えてしまうんです。ですから「本当は断ったほうが良いけれど、でも好きだから食べたい」というものは、食べ方を工夫するのが良いと思います。美肌の維持に欠かせない運動と睡眠――美肌づくりにおすすめの運動も教えてください。日比野先生適度な運動は健康を促進させるのですが、激しい運動は活性酸素を大量発生させて体内の炎症を引き起こします。その結果、老化が加速してしまうんです。おすすめは、正座の姿勢から両手をゆっくりと前に伸ばして床につけて深呼吸を繰り返す「チャイルドポーズ」や、あお向けになって1分ほど片足ずつ曲げ伸ばしをする「足上げ」のような緩めのストレッチです。――緩めのストレッチには、どのような効果があるのでしょうか?日比野先生就寝前にストレッチをおこなうと自律神経のバランスが整い、副交感神経が優位になってリラックスできるんです。血流が良くなるので身体のすみずみまで栄養を届けることができ、肌の調子が良くなります。――美肌と睡眠の関係についてはいかがでしょうか。日比野先生睡眠中の肌というのは、ただ休んでいるわけではないんです。日中にダメージを受けた細胞の修復をするなど、肌の内側ではさまざまな活動がおこなわれています。質の良い睡眠を取らないと、肌の老化の速度は確実に早まっていきます。――質の良い睡眠を取るために、先生はどのようなことを実践しているのでしょうか?日比野先生睡眠を妨げるカフェインは、摂取後、体内から抜けるまでには5~7時間ほどかかるといわれています。ぐっすり眠ってスッキリ目覚めるために、夕方以降はできるだけカフェインをとらないようにしています。また、スマートフォンやパソコンのブルーライトには体内時計を狂わせる働きがあるので、寝る直前まで画面を見ていると睡眠の質が落ちてしまいます。質の良い睡眠を取れるよう、就寝前の2時間はできるだけスマートフォンやパソコンを見ないようにと心がけています。<著書>『医者が教えるすごい美肌循環』日比野佐和子/著アンノーンブックス1300円+税取材・文/熊谷あづさ(50歳)ライター。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。著者/日比野 佐和子先生医療法人康梓会Y‘sサイエンスクリニック広尾統括院長、大阪大学大学院 医学系研究科 臨床遺伝子治療学特任准教授、医学博士。内科医、皮膚科医、眼科医、アンチエイジングドクター(日本抗加齢医学会専門医)。同志社大学アンチエイジングリサーチセンター講師、森ノ宮医療大学保健医療学部准教授、(財)ルイ・パストゥール医学研究センター基礎研究部アンチエイジング医科学研究室室長などを歴任。現在はアンチエイジング医療における第一人者的な立場として、基礎研究から最新の再生医療の臨床に至るまで幅広く国際的に活躍するとともに、テレビや雑誌等メディアでも注目を集める。プラセンタ療法を含む再生医療においてのパイオニアでもある。『オトナ女子の「美肌」づくり百科』、『つまり、結局何したら免疫力って上がるの?』など著書多数。
2022年06月26日