シリア北東部にあるアルホール難民キャンプには、過激派組織「イスラム国(IS)」から逃れた人々が多く暮らしている。もともと内戦などで家を失った人々が避難するために機能してきたキャンプだが、ISの支配地から移されてきた人々が増えるにつれて犯罪件数が増加。国境なき医師団の報告によると、女性や子どもは無期限に拘束され、医療へのアクセスも制限されるばかりか、暴力や搾取から逃れられない「屋外刑務所」と成り果てているという。そんな悪名高いアルホール・キャンプで、エジプト人の11歳と13歳の少女がISの構成員によって斬首されるというショッキングな事件が起こった。Daily Mailが伝えている。NGOのシリア人権監視団によると、2人は行方不明になった数日後にキャンプの下水道で遺体となって発見されたという。このような凄惨な犯罪行為は通常、ISのスリーパーセル(潜伏テロリスト)により、同団体の極端なイデオロギーに従わない女性に対して行われるものだとDaily Mailは指摘している。今年9月、このキャンプでは米国の支援を受けたシリア人兵士によって、24日間に及ぶ掃討作戦が行われ、数十人の過激派を拘束し、武器を押収していたという。今回の殺害事件は、その作戦以来初めてのことだった。国境なき医師団は、キャンプ人口の約64%が子どもであり、さらに50%が12歳未満で、母親や養育者から無理矢理引き離されて連れて来られたケースが多いとしている。
2022年11月16日『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』で好演し、今年のアカデミー賞でイスラム教徒として史上初の主演男優賞にノミネートされたリズ・アーメッド。ニュースメディア「Muslim」とのインタビューで、ハリウッドにおけるイスラム教徒の扱いに不満を示した。テレビや映画で描かれるイスラム教徒の表現について、「正したい」と使命感に燃えるリズ。「イスラム教徒は(テレビや映画の)画面上に出てこないし、出てきたとしても“悪い奴”や犯人、暴力による被害者です。私たちは無視されている人か悪者なのです。これを変えなければならない。多様なイスラム教のコミュニティを民族的、地理的に示していく必要があります」と語っている。「過去数年のメジャーな200本の映画で、イスラム教徒の出演者はたったの2パーセントだったんです。世界の人口の4分の1がイスラム教徒だというのに。だから私の目標はそのギャップを埋めることです」と今後目指していることを明らかにした。リズは、画面上でイスラム教徒が誤った描き方をされているのを正すことは、彼らが「生きるか死ぬか」という問題にも関わり、「命を救い、人生を変える」ことだと主張する。「私たちが自分のコミュニティについて語る物語は、可決された法律、攻撃を受けている人々、侵略を受けている国々にも影響を及ぼすのですから」。(Hiromi Kaku)■関連作品:サウンド・オブ・メタル聞こえるということ 2021年10月1日より全国にて公開© 2020 Sound Metal, LLC. All Rights Reserved.
2021年10月21日ムスリム(イスラム教徒)と聞くと、どこの地域に住んでいる人を思い浮かべるだろうか?サウジアラビアなどアラブ諸国を思い浮かべる人は多いかもしれない。だが、アラブ諸国にいるムスリムは一部にすぎず、ムスリム人口が最も集中しているのは南〜東南アジア。そして世界一のムスリム人口を誇るのはインドネシアで、人口2億5000万人のうち9割がムスリムなのだ。(参照元:ハラル・ジャパン協会)Be inspired!が日本で暮らすムスリムの若者たちに「ぶっちゃけ話」を聞くシリーズも3回目を迎えた。今回インタビューに答えてくれたのは、インドネシア出身で現在日本に住んで5年目のアマンダ。彼女も「私イスラム教徒だよ」と話すと、「そう見えないね」と言われるそうだ。東京ストリートを楽しむ平成生まれのムスリムに聞いた、ぶっちゃけ話。▶︎VOL.1 「イスラム教に無知な日本人へ」。VOL.2 メディアはイスラムを偏向報道している。ムスリムとは、イスラム教を信仰する人(イスラム教徒)のことをさす。7世紀にムハンマドが開祖となったイスラム教は、唯一神アッラーを信仰し、啓典は『コーラン』。1日5回メッカの方角へ向かって礼拝をし、イスラム暦の9月である「ラマダーン」には日没まで断食をすることが特徴で、断食には自身を清める以外に貧者の立場に立つという意味がある。また、不浄な動物とされる豚肉を食べることや飲酒などが禁止されている。 ー神様はムスリムにとってどんな存在ですか? イスラムへの信仰は、私が自分で選択したものではなく、イスラムの環境に生まれていつの間にか信じるようになっていたもの。なので私からしたら神様を信じることは、空が青いくらいの感覚。だからすごく説明しづらいけど、自分が弱っているときになぜか心の中に神様がいるような感じ。神様はどんなときも見ていてくれて、不思議と苦しいときも悲しいときも安心させてくれる存在。イスラムだけじゃなくてほかの宗教も、最終的に帰る場所として機能してることもあると思う。心を穏やかにしたいときに慣れている祈り方があれば落ち着く人もいるだろうし、神様は落ちるときの最後に持つところみたいな、そんな感じに思っている信者も少なくないと思うかな。
2017年12月06日「ムスリム(イスラム教徒)」という言葉を聞いて、“テロリスト”を思い浮かべる人はどれくらいいるだろうか。言うまでもなくムスリムの多くは“テロ”と何ら関係ないが、現に「ムスリム=テロリスト」という偏見は、日本だけでなく世界に存在しており、イスラム教を信仰する人たちにとって大きな悩みの種となっている。彼らをそんな偏見なしに見るには、実際にイスラム教を信仰している人と知り合って、「彼らがどのような生活を送っているのか」や「何を考えているのか」を知る機会を作るのが手っ取り早いかもしれない。だが、そうは言っても、その機会を一人ひとりが作ることは決して簡単ではないだろう。そこでBe inspired!は日本で暮らすムスリムの若者たちにインタビューを行ない、彼らが話してくれたことを紹介する記事シリーズを始めた。
2017年11月07日2014年からイスラム過激派組織ISISの支配下にあったイラクの北部に位置する都市モースルの東側が、2017年1月に解放された。アメリカ軍の助けを受け、イラク軍がISISと何週間にも渡り多くの犠牲者を出しながら戦闘した結果だ。いまだに人口が集中している西側は奪還できていないという。(参照元:The New York Times)アルカイダとISISを専門とするThe New York Timesの特派員Rukmini Callimachi。彼女は解放された部分のモースルの街で、現地のある男性がISISからの「暴力の言葉」を「愛の言葉」に塗り替えるという心温まる光景を目にし、ツイッターでシェアしてくれた。1. All over liberated areas of Mosul, 1 of the 1st things people are doing is painting over ISIS graffiti. Some are being artistic about it: pic.twitter.com/Rkmj9rZf4Z— Rukmini Callimachi (@rcallimachi) 2017年4月15日1.モースルの解放された地域で人々が最初に行ったのは、ISISのグラフィティを消す事。ものによってはとても芸術的。2. Today I noticed this man across the street, carefully stenciling a message on this freshly painted wall. So we stopped to talk to him: pic.twitter.com/K4HLVGQzXx— Rukmini Callimachi (@rcallimachi) 2017年4月15日2.今日ある男性の存在に気がついた。ペイントされたばっかりの壁に大事そうに文字を書いていたので話を聞いてみた。3. His name is Sadoun Dhanoun, 39. He's been hired by a senior citizen group to paint over ISIS' graffiti preaching hate. He chose magenta: pic.twitter.com/e46DVlO7e1— Rukmini Callimachi (@rcallimachi) 2017年4月15日3.彼の名前はSadoun Dhanoun。39歳。地元のおじいちゃんやおばあちゃんに雇われて、ISISの憎悪のこもったグラフィティの上に何か描くように頼まれた。色は明るく鮮やかな赤紫。4. This wall here used to be painted with a verse from scripture calling for violence against the kuffar, or infidel. Sadoun painted over it pic.twitter.com/vQKyTCFcJd— Rukmini Callimachi (@rcallimachi) 2017年4月15日4.もともとこの壁には非ムスリムやISISと異なる宗派の人々への暴力を煽るような聖典の一文が綴られていた。Shadounはそこに書き直した。5. What I love is he didn't stop there. He went to an Internet cafe and Googled حكم ومقولات or "Wise sayings." Here's what he wrote down: pic.twitter.com/zJWagRKW1k— Rukmini Callimachi (@rcallimachi) 2017年4月15日5.素敵なのは、ただ塗りつぶしただけじゃないこと。彼はインターネットカフェで「حكم ومقولات (知性あることわざ)」を調べた。こんな感じで。6. The one he chose for this wall says, "In life, be like a cube of sugar, so that when you are gone you leave a sweet taste." pic.twitter.com/MJIOVLSp9B— Rukmini Callimachi (@rcallimachi) 2017年4月15日6.その中の一つは、「人生では砂糖のようにあれ。あなたがいなくなった後には甘い後味が残るように」7. He said he found that evocative "because ISIS left everyone with a bad taste in their mouth."— Rukmini Callimachi (@rcallimachi) 2017年4月15日7.彼はこのことわざを選んだ理由として「ISISがすべての人に苦い思いをさせたから」と言った。8. He's painting at least 7 walls in this northern suburb of Mosul with donations amounting to less than $200. So there's a lot more: pic.twitter.com/iVOt1o59ny— Rukmini Callimachi (@rcallimachi) 2017年4月15日8.彼は2万円ちょっとの募金だけでモースルの北の郊外の7つの壁を少なくとも塗り直した。だからもっとできるに違いない。9. He says he's almost done with this wall and he proudly posed with the quotes & his freshly painted sign. Next he plans to paint flowers pic.twitter.com/3BBHPdkNMj— Rukmini Callimachi (@rcallimachi) 2017年4月15日9.この壁はほとんど終わったと彼は言う。自信満々に、書いたことわざと綺麗に塗り直した壁の前でポーズしてる。次はお花を描くそう。10. His aim is to bring back beauty. It'll be so pretty when he's done, he said, maybe drivers will be distracted. I know it made me stop pic.twitter.com/LGnszG061c— Rukmini Callimachi (@rcallimachi) 2017年4月15日10.彼の目標はこの街に美しさを取り戻す事。彼の仕事が全部終われば、車を運転している人々の気が散るぐらい綺麗だろうと言った。すでに私は思わず止まちゃったわ。ISISがこの街と住民に与えた爪痕は深い。ISISの支配の元、住民は監視され、女性は身体をすべて隠すように命令され、何か少しでも彼らが作った法律に触れれば罰や拷問を受ける恐怖の中暮らしていた。食料や日常品へのアクセスも難しく、人間が人間らしく生きることは難しい状態が3年以上も続いたのだ。(参照元:BBC)そのような暮らしが人々の心にどのように影を落とすのか、想像を絶する。しかし、Shadounと住民はそんな傷を怒りではなく、愛で癒そうとしている。計り知れない苦しみを平和で塗り直そうとしているのだ。少しでもはやくモースル全体が、そしてISISの支配下にあるすべての人々が解放されることを祈る。Text by Noemi MinamiーBe inspired! この記事を読んでいる人はこの記事も読んでいます!街の“差別的なアート”を根こそぎ削る。72歳のおばあちゃんが提案する「平和な社会の作り方」 「爆弾を投げるより、花束を投げ世界を平和に」。そんな反戦のメッセージが込められ、“イスラエルへのテロリストの侵入を防ぐため"にイスラエルとパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区に建...
2017年05月12日「ムスリム(イスラム教徒)」と聞いて何を想像するだろうか。「ヒジャブ」と呼ばれる頭と首を覆うイスラムの伝統的なスカーフを被る女性たちや、一日に幾度かのお祈りをする姿、はたまた“イスラム過激派”かもしれない。残念ながら、約3000万人ものムスリム人口(参照元:Pew Research Center)を抱えるアメリカでも、ムスリムに対する理解はこれくらいなのだ。そんななか、あるムスリム女性がプレイボーイに載ることになった。民放初のヒジャーブを被ったキャスターを目指してムスリムのアメリカ人でヒジャブを被るジャーナリストのノアール・タグーリ、22歳。学校には通学せず、家庭に拠点を置いて学習を行うホームスクーリングで高校の勉強をしながらローカル新聞で働き、16歳で大学に入学した彼女。ハフポストライブのレギュラーゲストを務めたのちハフポストブロガーを経て、ニュースショーのキャスターを目指していた。その理由は、ヒジャブを被った民放のキャスターがアメリカには存在しなかったからだ。そして映画のような話だが、18歳になって数日後のこと、タグーリが大学での詩の朗読パフォーマンスを終えると、いきなり舞台に上がってきたCBSラジオのディレクターに「ジャーナリズムと報道の専攻なの?ワシントンでインターンしないか」と直接誘われ、彼女の新たなキャリアは始まった。(参照元:
2017年01月25日©Singapore Tourism Board イスラム教徒が日中に断食を行う「ラマダン」が、2016年6月6日から約1か月間行われる。 日没後に出現する期間限定の夜市や、ラマダン明けの華やかなイベントは、一度訪れる価値あり!シンガポールやマレーシア、ブルネイなど、イスラム教徒の人々が暮らす国々で見られるこの光景は、日本ではなかなか味わえないイスラム文化を垣間見る良い機会になりそう。 東南アジア各地で見られる「ラマダン」写真提供:マレーシア政府観光局 日の出から日没までの間、食べ物は愚か、敬虔なイスラム教徒の間では水やつばすら飲む事さえ許されない神聖な断食月「ラマダン」。“贖罪と赦し”の1か月間であると同時に、食の喜びを知るための断食月は、シンガポールやブルネイ、マレーシアを中心としたイスラム教徒のコミュニティが根付く地域で毎年実施されている。太陽暦とは毎年11日ずれていくヒジュラ暦の9月がラマダンの月にあたり、2016年は6月6日から7月5日まで。期間中、イスラム教徒は、食欲の他にもあらゆる「欲」を封印し、自己犠牲や空腹を経験することで、食のありがたみや周りの人への感謝の気持ちなどを顧みる。1か月かけてコーランを少しずつ読み進めるのも習わしだ。イスラム教徒でない人々にはもちろんこれらの禁欲を強要される事はないが、期間中は節度ある行動を心掛けたいもの。例えば極端な肌の露出を避けたり、イスラム教徒の人々の目の前で喫煙や飲食を控えたりするなど、異文化に敬意を払う心遣いも大切だ。 日没後のお楽しみ「ラマダン・バザール」写真提供:マレーシア政府観光局 日中は飲食を控えているイスラム教徒の人々は、日沈後から翌朝までに1日分の食事を摂る。半日の空腹を耐え凌いだ人々が”オアシス“を求めて集うのが、「ラマダン・バザール」と呼ばれる夜の屋台群。街角には、家に帰ってすぐ食べられるようなテイクアウト形式のお惣菜やお菓子を売る店舗が、ラマダン期間限定で建ち並ぶ。飲食店の他、伝統工芸品やお土産を売る店も出現し、活気で溢れ返るこの夜市は観光客にも人気。チェーン店やファストフード店さえも日没後は大勢のイスラム教徒でごった返すので、この時期に訪れる際はラマダン期間中であることを念頭に置いておこう。 ラマダン明けを祝うイベントもチェック©Singapore Tourism Board 1か月に及ぶ断食月が明けると、ラマダンの終結を祝うイベントが各地で開催される。「イドゥル・フィトリ」「ハリラヤ・プアサ」「ハリラヤ・アイディルフィトリ」「エイド・エルフィトリ」などと国により呼び名は異なるが、シンガポールやマレーシア、ブルネイでは、ラマダンが明けた2、3日を国民の祝日に制定している。イスラム教徒たちは、この日に合わせて新調した伝統服に身を包み、モスクへ参拝に訪れ、その後家族や親しい友人らと集まって伝統的なイスラム家庭料理をいただくのが慣例だ。シンガポールでは、サルタン・モスクを中心にカンポン・グラム界隈で特に盛り上がりを見せる。街中に華やかなデコレーションが施され、各店舗ではセールやキャンペーンを開催。お隣の国マレーシアでは、王宮や首相官邸が一般人を招きお祝いの食事を振る舞う「オープン・ハウス」も催される。豪華絢爛な佇まいで有名なブルネイの王宮では、オープン・ハウス時に一般人にマレー料理のビュッフェが振る舞われる上、王様、王妃様との握手まですることができるそう。 ブルネイの王宮のオープンハウス ©かめいさおり(TRIPPING!ブルネイレポーター) ラマダン期間中は、イスラム系の店舗や施設は営業時間を短縮・休業したり、日没後もレストランで豚肉やお酒のオーダーがご法度になったりと、日本人にはあまり馴染みのない常識も存在。こうしたマナーも念頭に置きつつ、この地域、この時期ならではの慣習に触れてみるのも、多文化が混在する東南アジアへの旅の醍醐味ではなかろうか。
2016年05月26日10月にGoogleの新CEOに就任したSundar Pichai氏がイスラム教徒や他のマイノリティに対するサポートの必要性を訴えた。日本ではほとんど報じられなかったので、ご存じない方が多いと思う。米国でも一部のメディアが取り上げたものの、その数日前に公開されたMark Zuckerberg氏の「イスラム教徒をサポートする」という声明に比べるとずっと小さな扱いだった。GoogleのCEOとはいえ、Pichai氏の一般的な知名度は低い。その違いが報道の差になって現れた形だ。しかし、「いいね!」の数で圧倒されても、議論を掘り下げ、より深い印象を残したのはPichai氏の方だった。Pichai氏は22歳の時にインドから米国にやってきた。手記「Let’s not let fear defeat our values」の中で同氏は、米国は移民に「機会を与えてくれる地」であり、移民を新たな米国人として受け入れる寛容さ、オープンな心が米国の強みであると述べている。Googleのキャンパスにはさまざまな人種の人々が働き、異なる文化が混ざり合っている。それが活気を生み出し、大きな仕事を成し遂げられる特別な場所を実現しているという。「これを投稿するかどうか、ずいぶんと考えた。なぜなら、不寛容への批判はここ最近の論争の火に油を注ぐだけになってしまいそうな空気だからだ。しかし、われわれのような攻撃を受けていない存在こそ、いま声を上げるべきだと感じた」「恐れに駆られて、私たちの価値を失わないようにしよう。私たちは米国そして世界において、イスラム教徒や他のマイノリティコミュニティをサポートする必要がある」(Pichai氏)シンプルに、米国のあるべき原則を説いている。○Twitterをマスターしたドナルド・トランプ氏Pichai氏の手記の中に「Trump」という名前は一度も出てこないが、Donald Trump氏の発言を意識した内容であるのは明らかだ。来年の米大統領選に向けた共和党候補の指名争いレースに参加しているTrump氏はイスラム教徒や移民をとがめるコメントを繰り返し、イスラム教徒の米国入国を禁止すべきとまで言い出した。それでも指名争いトップを独走している。Trump氏の好調ぶりの背景にはテロ不安があると言われているが、テロ不安が急激に高まったのはパリ同時テロからであり、そもそも同氏は候補者指名レースの序盤を賑わせるだけの泡沫と見なされていた。それがレース終盤に向かう時期でも健在であるのだから、テロ不安だけでは説明できない。いまTrump氏が受け入れられている理由を一つ挙げるとしたら、それは彼が自分の言葉でしゃべっているということだ。演説ではプロンプターを使わず、用意された台詞ではなく、自分のメッセージを伝える。平易で短い言葉は「バカっぽい」と言われたりもするが、政治家疲れを感じている多くの米国民には正直で新鮮にも聞こえる。そして、今回の選挙戦で同氏を押し上げているのがTwitterである。New York Timesの「Pithy, Mean and Powerful: How Donald Trump Mastered Twitter for 2016」によると、Trump氏はスマートフォンでTwitterの使い方をマスターし、スタッフに任せずに、自らツイートし始めた。過激な表現を好むTrump氏にTwitterなんて危険きわまりないが、メディアに揚げ足取りされることばかりだった同氏にとって、Twitterはたくさんの人たちに誤解のない自分を伝えられる手段になっている。実際のところ、同氏はTwitterを上手く利用している。実業家であるTrump氏が支持を伸ばす背景に政治家疲れがあるなら、IT企業の経営者の言葉も新鮮に受け止められるはずである。ところが、移民問題に関してZuckerberg氏やMarissa Mayer氏、Eric Schmidt氏などの言葉はTrump氏ほどのインパクトを残せていない。なぜか? ―― 内容はともかく、Zuckerberg氏がFacebookノートで意見を述べたり、Schmidt氏がインタビューでコメントしても、その言葉は改革者のものではなく、慎重な政治家の発言のように伝わってしまう。Twitterを駆使して、生の声を演出するTrump氏ほど人々の関心を引くことはできない。Pichai氏の手記に話を戻すと、同氏の伝え方は戦略的だ。投稿先にGoogle+ではなくMediumを選んだ。読み物としてブログを公開できるようにしたブログサービスであり、良質な読み物を求めるユーザーが集まっている。GoogleのCEOが同社のサービスを使わずに、あえてMediumで勝負するのはリスクである。しかし、炎上を避けて、望ましい議論を広げたいのだから、Mediumに投稿するのは理にかなっている。その一方で、Pichai氏が働く場所(=Google)に触れながらもGoogleという言葉を使うのを避けるなど、細部においては慎重だ。結果、難しい主張でありながら、誤解されることなく、同氏の言葉は効果的に広がっている。私は2009年にChrome OSの発表会で初めてPichai氏を知ったが、その時からこれまで同氏に対しては「謙虚な人」という印象を抱いている。しかし、同氏と働いたことがある人たちのコメントを読むと、対立を避け、協調を重んじる人でありながら、困難なタスクに挑戦するのを厭わない大胆さを兼ね備えているようだ。Eric Schmidt氏が反対したChromeブラウザの提供を押し切ったのは有名な話である。Pichai氏のCEOとしての力量は未知数だが、謙虚でありながら自分の考えをしっかりと持ち、協調を重んじながら批判を恐れずに大胆に行動できる……それらは「Do the right thing」を新たな社是とするGoogleのCEOに求められる資質と言える。
2015年12月25日©Singapore Tourism Boardシンガポール最大のイスラム寺院「サルタン・モスク」のお膝元に広がるのは、イスラムの世界。Arab Street(アラブ・ストリート)には、コーランが流れ、街角には顔以外を布で覆った女性たちが行き来する。そこにはイスラム教徒たちの生活が溢れる別世界だ。アラブ・ストリートの歴史©Singapore Tourism Board19世紀半ば、中東のイエメンからシンガポールに移り住んだイスラム教徒。彼ら商人の持ち込んだコーヒー豆や香料、砂金などは、アラブ・ストリートの発展を促した。カンポン・グラムと呼ばれるイスラム文化の濃い地域の、メインストリートの一つであるアラブ・ストリートは、今でもシンガポールに住むイスラムの人々の生活を支えている。生活に密着するユニークなお店たち©Singapore Tourism Boardシンガポール最大のイスラム寺院、サルタン・モスクに程近いアラブ・ストリートには、常に敬虔なイスラム教徒たちが集まる。1日5回、お祈りの時間にコーランが流れると、シンガポールにいることをしばし忘れ、ディープなイスラムの世界に包まれる。女性たちは肌の露出を抑え、顔以外を隠すため、スカーフのようなトドンと呼ばれる布で頭を覆うのが伝統。そのためのテキスタイルはアラブ・ストリートが得意。色とりどりの珍しい柄を扱う布地専門店やビーズ店が数多く並び、手芸好きにはたまらない。その他、アラビア絨毯や衣料品、毛織物、籠製品などの伝統的なショップが軒を連ね、世界中からの観光客が訪れている。掘り出し物が見つかるかも!?観光客におススメのお店©Singapore Tourism Boardオーチャードやマリーナ地区のような世界のトップブランドがほとんど見当たらないアラブ・ストリート界隈は、いくら観光大国とはいえ、入るのに物怖じしてしまう店舗もあるかもしれない。しかし、勇気をもって一歩中へ踏み込むと、美しいランプや珍しい生地などの掘り出し物が見るかるかも。香水やボディケア商品の専門店「ALJUNIED BROTHERS」(95 Arab Street)や、B級中東料理が食べられる「Singapore Zamzam Restaurant」(697 North Bridge Road ※Arab Street入口)などは、ガイドブック掲載常連店で、観光客でも入りやすい。「Café Le Caire」(39 Arab Street)のテラス席からは、黄金に輝くサルタン・モスクを眺めながらお茶を楽しむ事ができる。本格的な中東料理にも定評があり、観光客にはもちろん、駐在の欧米人などにも人気。©Singapore Tourism Boardアラブ・ストリート付近には、オシャレなファッションストリートHaji Laneや洗練された雑貨店やカフェが並ぶBussorah Streetなどがあり、この界隈は街歩きに事欠かない。イスラムの世界に浸る1日も、多民族国家シンガポールならではの旅の醍醐味だ。Arab Street(アラブ・ストリート)・営業時間:日曜日を定休日とする店舗が多数。・アクセス方法:MRTブギス駅(NE12もしくはDT14)下車。オーチャードからは7番、175番のバスで約10~20分。
2015年08月24日三井住友銀行の全額出資子会社であるマレーシア三井住友銀行はこのたび、イスラム金融取引がイスラム法(シャリア)教義に適合していることを自社で判定することを目的とし、イスラム法(シャリア)学者で構成される委員会、シャリアコミッティをマレーシア三井住友銀行内に設立したと発表した。シャリアコミッティは社内のイスラム法(シャリア)に関連する全ての決定、見解につき監督責任を負う機関だという。同コミッティ設立に際し、イスラム法(シャリア)に知見のある複数の学者を直接採用することで、より多くの様々なイスラム金融案件に対応することが可能となるという。このたび採用した学者はイスラム法(シャリア)学位に加えて、イスラム銀行勤務経験、他社でのシャリアコミッティ経験、イスラム金融学位保有いずれかのバックグランドを各人が有していて、多様な意見聴取及び判定が可能だという。同行グループは邦銀で唯一、英国及びマレーシアの二拠点からイスラム金融サービスを提供可能な体制を整備しているという。マレーシア三井住友銀行においては、アジアのイスラム金融の中心地であるマレーシアにおいて、今後もイスラム金融への取組みを行うことで顧客のニーズに幅広く応えるとともに、同国の金融市場の発展に一層貢献していくとしている。なお、イスラム金融とは、イスラム法(シャリア)に則した金融取引の総称で、利子という概念の禁止、アルコール、賭博などのイスラム教義に反する事業に関与する取引の禁止、不確実性の排除などの特徴がある。
2014年12月04日○フィクションを認めないシリアで組織的テロを繰り返す「イスラム国」での戦闘参加を目指した北大生(休学中)が、「私戦予備・陰謀の容疑」という聞き慣れない罪状で公安の取り調べを受けました。「交戦権」は国権により行使されるもので、そこらの個人が「宣戦布告」をされても迷惑なので、抑止警告するために用意されている法律です。日本では憲法で「交戦権」を放棄しているので、違和感を訴える有識者もいましたが、世界的には常識的な法律です。騒動は図らずも「日本の非常識」を炙り出しました。さて、その北大生ですが、シリアでの同行取材を目論んでいた、ジャーナリスト常岡浩介氏の取材に「僕は今日本の中で流通しているフィクションというものにすごく嫌な気持ちを抱いていて、向こう(シリア)のフィクションの中に行けばまた違う発見があるのかなと、まあ、それぐらいですね」と動機を語ります。これらの発言から「自分探し」と指摘する声もあり、当初は筆者もそう感じていましたが、取材をすすめるにつれ、考えを改めます。北大生が日本社会への不満を認識できるのは「自分」があるからです。むしろ彼らは「自分」をもっているのです。それが厄介であり、今後も同種の事件発生が危惧されます。○SNSの正体北大生とシリアをつなげたのはSNSです。シリアに渡りをつけたとされる元大学教授はもちろん、東京での住居を提供した人物との接点もSNSです。そしてその「イスラム国」もSNSにより戦闘員を集めています。SNSとは特殊な思想、環境をもった人々の巣窟なのでしょうか。もちろん、違います。SNSのすべてを床一面に並べて上から眺めれば、そこに拡がるのは世界の縮図です。リア充もいればネット民もいて、ガガ様やジャスティン・ビーバーに、有吉弘行、AKB48の神8もいます。ただ、一般的なインターネットと比較したとき、同じ価値観の人が集まりやすい構造になっているがSNSです。生活に不満を持つものらが匿名の「2ちゃんねる」で毒を吐き、Facebookで「良い人自慢」をするように、「イスラム国」に興味を持つものが互いに吸い寄せられます。裏返せば「価値観という自分」を持っていなければ、SNSで同じ趣味の人に出会うことはありません。世界中の多様な価値観と巡り会える空間を「インターネット」とするなら、似た価値観を持つものが集い、狭い空間に引きこもるSNSは「インターネット0.2」といえます。○ベジタブル王子、現る先に「彼ら」としたのは誤植ではありません。シリアの反政府組織で戦闘参加したとカミングアウトした鵜澤佳史氏にも通じます。彼は朝日新聞その他の取材に「極限で戦いたい」と理由を語りました。主体的に「戦闘」を欲する「自分」のために渡航したのです。決して中東の砂になることを求めたわけでもありません。在学中に起業した会社を譲ってまでの計画ながら、参加した戦闘で怪我をすると、安全で医療設備も充実した日本に帰国して治療を受け、そのまま日本に残っているのですから。朝日新聞の記事によれば、鵜澤佳史氏が起業した会社を売却したのは「2012年秋」となっています。ところがその前年"1月25日ベジタブル王子、現る。"としてテレビ朝日の番組で、同局の松尾由美子アナウンサーの取材を受けています。また、放送から10日後の2011年の2月5日には「認定NPO法人 ふるさと回帰支援センター」の「ビジネスプラン・コンペティション」で起業支援対象者に選ばれ、幾ばくかの援助を得ています。その会社を、翌年にはしれっと売り渡したということです。他人の助け、応援を得ながら、あっさりと捨てられるのは「自分」をもっていなければできることではありません。あるいは事業が順調でなかった可能性もあります。だとしても「ひらり」と逃げ出せたのは、「自分」だけを愛している証拠です。○真打ち登場彼「ら」の最後は、いまだ安否不明な湯川遙菜氏です。「民間軍事会社」の経営者としてシリアに渡り、イスラム国に拘束されました。一般的に邦人が「被害者」とされる事件は、その人柄や来歴が報じられるものですが、湯川遙菜氏に限っては、ほとんど触れられていません。それも仕方がないでしょう。彼は「男装の麗人」「東洋のマタハリ」と呼ばれた「川島芳子」の「生まれ変わり」と広言。かつて営んでいた「ミリタリーショップ」の経営に失敗した失望から、自ら自身を切り落とし「正行」という男性名から「遙菜」に改名しています。なんでも「セクハラ」に発展する時節柄、詳報はリスクが高いのです。性別変更とは、これまた強烈な「自分」への執着です。三者三様ながら、みな「自分」を持っています。すると彼らが、シリアを目指した真の理由が浮かび上がってきます。自己顕示欲を満たしてくれない日本社会への復讐。「俺様(自分)」をないがしろにした、というより、大切にしなかった(成功させなかった)日本社会への復讐「リベンジ0.2」です。他人の迷惑を省みない自己顕示欲が、彼らを動かしています。だから、国益を損ねる可能性など考えることなどなく、本人らとみられるSNSに、反省の弁を見つけるのは困難です。あるテレビ番組で「シリア人」が語っていた言葉を、彼らには捧げます。「日本人は、シリアにシリア人を殺しにこないでください」○エンタープライズ1.0への箴言「傲慢な自己顕示欲を優先させて恥じない人が増えている」宮脇 睦(みやわきあつし)プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」
2014年10月28日みずほ銀行の全額出資子会社であるマレーシアみずほ銀行(以下マレーシアみずほ)は25日、マレーシアの上場複合企業であるサンウェイ社の子会社とイスラム金融による貸出契約を締結したと発表した。イスラム金融による同件貸出は、コモディティ・ムラバハと呼ばれ、メタルやヤシ油といったコモディティの売買を介在させることによりイスラム教で禁じられている利息の授受を回避する取引で、運転資金をはじめとする幅広い資金ニーズに対応できる商品だという。2011年9月に開業したマレーシアみずほは、2012年1月にマレーシア中央銀行より外貨建てイスラム金融ビジネスユニット設置の認可を取得し、2013年10月からイスラム金融による貸出の取り扱いを開始している。マレーシアみずほにおけるマレーシア地場企業へのイスラム金融貸出は同件が初めてとなるという。イスラム教徒人口は16億人を数え、世界人口の約1/4を占めている。イスラム圏が有望な市場として注目を集める中、イスラム金融の重要性も日増しに高まっているという。マレーシアみずほはアジアのイスラム金融の中心地であるマレーシアにおいて、引き続きイスラム金融サービスの拡充・提供に努めていくとしている。
2014年09月29日三井住友銀行の全額出資子会社である欧州三井住友銀行はこのたび、イスラム開発銀行(本店所在地:サウジアラビア、ジッダ)傘下の投資・貿易保険機関であるIslamicCorporationfortheInsuranceofInvestmentandExport(以下ICIEC)と15日付でICIEC加盟国におけるファイナンス組成の協働に関する覚書を締結したと発表した。ICIECは、イスラム開発銀行および中東、アフリカ、アジア地域に所在する41カ国の出資を受け、加盟国の政府、企業等が関与する投資、貿易取引を促進するため、イスラム法(シャリア)に則した貸付保険を含む各種保険の引受等を行っているという。三井住友銀行は、欧州三井住友銀行および3月にイスラム金融業務の免許を取得したマレーシア三井住友銀行を通じて、イスラム金融業務を行っているが、同覚書締結を通じて、ICIECとのグローバルな協働体制を構築し、中東、アフリカ、アジアにおける旺盛なインフラ需要に係るプロジェクトファイナンス、エクスポートファイナンス等の分野で顧客のニーズにより幅広く応えていくとしている。○IslamicCorporationfortheInsuranceofInvestmentandExport(ICIEC)の概要設立:1994年本店所在地:ジッダ、サウジアラビア拠点所在国:ドバイ、セネガル総資産:約241百万ドル(2013年12月末現在)自己資本比率:約92%(2013年12月末現在)主要株主:イスラム開発銀行43.2%、サウジアラビア25.9%(2013年12月末現在)
2014年09月18日