初恋、片恋、悲恋、愛恋…。恋にもいろいろありますが、やはり最も燃えあがるのは禁断の恋。ご紹介する『フランス組曲』は、第二次世界大戦中、ドイツ占領下のフランスで、出兵した夫の帰還を待つフランス人女性リュシルと、作曲家のドイツ軍中尉ブルーノ・フォン・ファルクの恋を描いた、美しい作品です。物語は、主人公二人が奏でる“禁断”のロマンスを、中尉が生み出す美しい旋律に乗せて描き出していて、もちろんそこも注目なのですが、本作の軸にあるのは、人間の在り様。ロマンスとは、文化や身分の違い、国籍や立場を乗り超えて、人は理解し合えるという可能性を証明する現象のひとつ。人の心と心が奥底から通じ合うときに、“禁断”などという概念は無意味だと感じられるのが、本作の魅力なのです。人間がどんな状況にあっても愛を信じられること、誰もが同じ人間であること、どんな隔たりをも超えて好意を交わせることができることを強調している物語だからこそ、二人をつい応援したくなるのです。誰かに好意を抱くという素晴らしいことさえ、理不尽な尺度を用いて断罪することの愚かさといったら。それを強く感じさせるのが、敵も味方も関係なく、危機的な状況にこそ見えてくる人の本性を冷静に描写している細部。戦争中は弱者として描かれがちなフランス人たちが、ドイツ軍に隣人を密告したり、ドイツ軍人に媚を売ったり、食料を他者に内緒で必要以上に備蓄したり。もともと白黒つけられないのが人間というものですが、戦争という強者と弱者、勝者と敗者、善きものと悪しき者、敵と味方というラインを無理やり引こうとする行為の果てにある、矛盾が浮き彫りになるわけです。物語が持つこの力強さは、原作者のイレーヌ・ネミロフスキーが、本作をドイツ占領下のフランスで書き続けていたという背景にも由来しています。彼女は、ドイツ軍から自らが実際に迫害を受けアウシュヴィッツで亡くなったユダヤ人作家でした。自らが受けた迫害をものともせず、人を信じ続けようとしたその精神には胸を打たれるばかり。劇中のさまざまなエピソードがとてもリアルなのも、彼女は実際に見たことを、後に忘れ去れないようにとつぶさに記録し、冷静に物語に反映させているからなのです。作者は、あえてヒロインが好意を持つ紳士的なドイツ人を冷静に公正に描写することで、ドイツ軍のすべてを悪、フランス=すべて善(弱者の総てを善)とした方程式を否定し、人間性だけを見つめた物語を綴りました。その純粋な視点と心の強さが、二人の恋を比類なき人間ドラマへと昇華させているのです。この作品を観ていると、人間の本性を浮き彫りにするには、禁断の恋が最も適した題材だったのだろうと納得できるはずです。とにかくパワフルな本作ですが、ファッションにもぜひご注目を。戦時下でも女性たちはきちんと装っていたことなどがわかりますし、TPOに合わせて、違うタイプの服を用いていたこともよく分かります。例えば、日常的には様々な色と柄のフラワーモチーフワンピースを着用し、ちょっとした活動の際はさっぱりとしたシャツにタイト&フレアなロングスカートを着ているリュシルですが、中尉への恋心を意識し家で密会する際には、真っ赤な口紅をひき、深紅のワンピースを身に纏います。リュシルの覚悟と押さえきれない女心が切なくも印象的なシーンでした。映画の元になった原稿は、作家の死後、60年以上も娘に託され保管されていましたが、2004年にようやく出版されました。いまや全世界で350万部以上の売り上げを誇る大ベストセラーに。60年以上も秘められていた二人の恋に、ドキドキしてください。(text:June Makiguchi)
2016年01月13日「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の「Spirit of Travel」でもミューズを務めるミシェル・ウィリアムズの主演最新作『フランス組曲』。このほど、ミシェルを始め、いま注目のキャストが顔をそろえる日本版予告編映像とビジュアルが解禁となった。1940年、ドイツ占領下フランスの田舎町。戦地に赴いた夫を待つ美しい妻リュシルと厳格な義母の暮らす屋敷に、監視のためドイツ軍中尉ブルーノがやってくる。緊迫した占領下の生活の中で、音楽への愛を共有する2人は、いつしか互いの存在だけが心のよりどころになっていく。それは同時に、狭い世界に生き、従順な女性だったリュシルが、より広い世界へと目を向ける転機にもなっていくのだった――。本作は、アウシュヴィッツで命を奪われたユダヤ人女性作家イレーヌ・ネミロフスキーが、娘に託したトランクに60年以上眠っていた未完の同名小説を原作に、第二次大戦中ドイツ占領下の町で、ピアノの音色が結びつけたフランス人女性とドイツ将校との許されぬ恋を描きながら、過酷な状況下で自由のために懸命に生きる人々の姿を描き出す。『ブルーバレンタイン』『マリリン7日間の恋』などで3度のオスカーノミネートを誇り、ファッション・アイコンでもあるミシェルを主演に迎え、現在公開中の『ヴェルサイユの宮廷庭師』、ティルダ・スウィントン共演『A Bigger Splash』(’15)など話題作が続くマティアス・スーナールツがドイツ人将校を、『イングリッシュ・ペイシェント』や公開を控える『パリ3区の遺産相続人』の名女優クリスティン・スコット・トーマスが義母を演じている。さらに、『オン・ザ・ロード』『マレフィセント』の英国俳優サム・ライリー、『スーサイド・スクワッド』『Tarzan』などハリウッド超大作も控える最旬女優のマーゴット・ロビー、『コーヒーをめぐる冒険』『ピエロがお前を嘲笑う』のトム・シリングなど、オールスターキャストがそれぞれ力強い存在感を見せ、深く見応えある人間ドラマを誕生させている。今回解禁になった予告編では、占領下、ドイツ人将校との許されない愛に揺れる女性をミシェルが繊細に演じ、パリからの大脱出(エクソダス)の様子や、ドイツ軍に占領された町に生きる人々の生活が、壮大なスケールで描かれていく。非情に徹しきれないマティアスの複雑な表情も印象的だ。まずはこちらの予告編から、現代に蘇った“奇跡の遺稿”の物語を確かめてみて。『フランス組曲』は2016年1月8日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年11月10日ファッションアイコンとしても大きな注目を集める女優ミシェル・ウィリアムズが、アウシュヴィッツ強制収容所で生涯を閉じた女性作家の遺稿を映画化した『フランス組曲』に主演。2016年1月、日本公開されることに決まった。1940 年、ドイツ占領下フランスの田舎町。戦地に赴いた夫を待つ美しい妻リュシル(ミシェル・ウィリアムズ)と厳格な義母の暮らす屋敷へドイツ軍中尉ブルーノ(マティアス・スーナールツ)がやってくる。緊迫した占領下の生活の中で、音楽への愛を共有する2人は、いつしか互いの存在だけが心のよりどころになっていく。それは同時に、狭い世界に生きる従順な女性だったリュシルが、より広い世界へと目を向ける転機にもなっていくのだが――。本作は、第二次大戦中のドイツ占領下フランスの田舎町を舞台に、ピアノの音色が結びつけたフランス人女性とドイツ将校との許されざる愛の物語をアカデミー賞受賞作『ある公爵夫人の生涯』のソウル・ディブ監督が壮大なスケールで描き出す人間ドラマ。原作は、1942年、アウシュヴィッツで亡くなった作家イレーヌ・ネミロフスキーによる未完の同名小説。彼女の娘が母の形見として保管していたトランクには、この小説が記されたノートが遺されており、命がけで綴られた原稿が60年の歳月を経て出版されるや、2004年にフランスの四大文学賞の一つ、ルノードー賞を受賞(死後受賞は初)。フランスで70万部、全米で100万部、世界でおよそ350万部の驚異的なベストセラーとなった。主演を務めるのは、『ブルーバレンタイン』『マリリン7日間の恋』などで確かな演技力を披露し、3度のオスカーノミネートを誇るミシェル・ウィリアムズ。相手役には、マリオン・コティヤール主演の『君と歩く世界』以降、ケイト・ウィンスレット主演の『ヴェルサイユの宮廷庭師』(公開中)ほか、キャリー・マリガン主演『Far from the Madding Crowd』(原題)など近年、大物女優との共演が相次ぎ、世界的に注目を浴びているマティアス・スーナールツ。さらに、『イングリッシュ・ペイシェント』『サラの鍵』などの名女優クリスティン・スコット・トーマス、ハリウッド超大作『スーサイド・スクワッド』(’16公開)も控える若手人気女優マーゴット・ロビーなど、国際的な実力派が力強い存在感を見せ、深く見応えある人間ドラマを彩っている。『フランス組曲』は2016年1月、TOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年10月13日ミシェル・ウィリアムズが、ユダヤ系ロシア人の小説家イレーヌ・ネミロフスキーの未完の小説で第2次世界大戦を舞台にした文芸大作「フランス組曲」の映画化作品に出演するために交渉中だ。『ある公爵夫人の生涯』などを手がけてきたソウル・ディブがメガホンを取る本作は、同原作の第2幕「ドルチェ」を元に映画化する作品になるという。戦地に赴いた夫を持つ主人公のルシール・アンジェリアは、義理の母親であるマダム・アンジェリアとの軋轢に耐えつつも、暇を見つけては唯一の楽しみであるピアノを弾く毎日を送っていた。ある日、村全体がナチスの将校たちを強制的に迎え入れざるを得なくなったが、ルシールは家に来たドイツ人将校のブルーノ・フォン・ファルクと次第に禁断の恋に落ちていくという物語になるようだ。ミシェルがマリリン・モンローに扮した『マリリン 7日間の恋』も手がけたデヴィッド・パーフィットとマーク・クーパーらがプロデュースを担当し、来年の春にはロンドンでのクランクインが予定されている。■関連作品:マリリン 7日間の恋 2012年3月24日より全国にて公開© 2011 The Weinstein Company LLC. All Rights Reserved.
2012年10月15日