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映画『スクロール』でW主演を飾る北村匠海&中川大志の本取材が行われたのは、2023年早々のことだった。北村さんと言えば、フロントマンを務める「DISH//」の活動で年末は怒涛の歌番組出演があり、一方の中川さんは初の音楽劇「歌妖曲~中川大志之丞変化~」が年末に大千秋楽を迎えたばかり。多忙を極めるふたりに、せめてお正月はゆっくりできたのかと聞くと、対照的な声が上がった。「年末年始は音楽の仕事をしていたので、まだ正直、年が明けたかどうか実感がないです…!」(北村さん)「僕は匠海と反対だわ、ごめん(笑)」(中川さん)そう話す中川さんに、北村さんは「いいなあ~!」と身をよじり、「オフの自分を輝かせるために仕事していますからね」とにこりとする。そして、ときには愛車のドライブで息抜きをしていることも、朗らかに教えてくれた。ふたりの出会いは今から10年以上前。同じ事務所に所属している1歳違いで、子役時代から同じ役のオーディションを受けてきた。近い距離を保ちながらそれぞれのステージを見つめてきた瞳には、表現者としてのプライドと熱がこもっている。映画での共演は中川さんが石井杏奈とW主演を務めた『砕け散るところを見せてあげる』以来2度目だが、正確に言えば『砕け散る~』では共演シーンがなく(中川さんの成長した子供役が北村さんで撮影はすれ違い)、本作『スクロール』が正真正銘・堂々たる共演作となった。大学時代の友達の死を通して再びつながった〈僕〉(北村さん)とユウスケ(中川さん)のふたりが、20代中盤にして改めて向き合う生死への葛藤を描く物語。ふたりに作品のテーマや共演について、じっくりと語り合ってもらった。同じ熱量を持つも、役者としてのタイプの違い――北村さんと中川さんのW主演映画『スクロール』では共演シーンも多かったです。お互いに刺激を受けたと思いますが、その感想から伺えますか?北村:僕は大志のことを常々、言葉に芯がある役者だなと思っていました。言葉の意味がきちんと伝わる役者はなかなかいないけれど、大志のお芝居は大志自身の芯が通っている感じがすごくするんです。僕はどちらかと言うと、かなりぼんやりしているから「つえぇなあ」と今回すごく思いました。僕らは同じ熱量を持っているけれど、役者としてのタイプは全然違うと思うんです。そのことを久々に一緒にお芝居をして感じました。映画の中でふたつの役が違うようで似ているのと同じ感覚というか。向いている方向も炎の大きさも一緒だけど、炎の色が全然違うんです。――似ているけれど表現のあり方が違うとは、面白いお話です。作品のトーンとしてもぴったりだったわけですね。北村:僕らのベクトルは違うけれど、同じような感覚を持っていると思うんです。今起きているいろいろなことに対して、一(いち)人間として感じていることは同じはず。だけど、歩んできた道が違うから得てきた色も違うということは、芝居を見ていてもすごい感じました。中川:うん。僕は匠海と一緒に“W主演で映画”をできることが、単純にすごくうれしかったです。お互い20代半ばになって共演できた、っていう。北村:僕ら、もう半ばなのか…!中川:26でしょ、今年?北村:26だね。中川:でしょ。僕達は子どもの頃からお互いを知っているわけですけど、匠海はすごく映画に愛されている人だな、と感じていて。映画の中の北村匠海が「やっぱりすげぇな」と思っていました。匠海は「ぼんやり」という言い方をしていたけれど、“〈僕〉(北村さん演じる)”は抽象的でどこかつかみどころのないキャラクターなんです。でも、それをすごく細かいところまで抽出するようなお芝居をするんですよね。だから、隣で一緒に芝居をしていて現場で見ても気づかなかったことが、映画館のスクリーンだと拾えるんですよ。もう微粒子レベルのものを放っていることを、映画(の画)では捉えられる。完成したものをスクリーンで観たときに、「わぁ、こんなところまで!」と驚きますし、匠海はそういうものを表現できる人だと思っています。北村:うれしいなぁ…!――「映画に愛されている人」という表現もすごく素敵ですよね。北村さんが中川さんにキャッチフレーズをつけるなら何になりますか?中川:キャッチフレーズ(笑)。北村:そうですね…僕は大志のことを革命家だと感じているんです。勝手に僕が革命を起こす仲間だと思っているのもあるけど。キャッチフレーズになるのかな、大志のことは「三国志」でいう諸葛亮的な立ち位置だと思っています。中川:えっ!諸葛亮…って、どういう人なの?北村:諸葛亮(孔明)は、天才軍師。策士なんだよね。中川:そうなんだ…!北村:何と言うか、僕自身はわかりやすく音楽と役者をやっている中で、音楽は自分の持っているものが大事というか、ある意味すごく自分勝手でいいところもあると思うんです。役者の場合は脚本というのがそもそもあるので、また違っていて。でも大志は役者という一本道に生きながら、その両方を持っている感じが僕にはすごく感じられるんです。だから、プレイヤーであり、クリエイターの心をすごく持っていて、スケッチするのが大志なのかなと思ったりしました。取材で話していても、それはすごい感じています。だから諸葛亮!中川:うわ、すごいうれしい。ありがとう!“今”起きていることへの向き合い方「考えてみることが大事」――作品内では、〈僕〉もユウスケも友人の死をきっかけに「生きることや生きる意味」を見つめ直します。おふたりも「生きる意味」について、考えたりしますか?北村:僕は「生きる意味」が人生のテーマでもあるので、しょっちゅう考えています。…さそり座なんですけど、さそり座は「生きる・死ぬ」とかがテーマらしくて。生きると一言で言っても、自分の人生についても、今のエンタメ界における自分の存在意義は何だろう、とかも考えます。特にエンタメ界に生きることについては、すごく難しいなと思っています。自分がやることが正解なのか、不正解なのか、常に模索しながらやっている感じです。生きることに答えなんてないと思うんだけど、…としたら死ぬことにも答えがないとすると、じゃあ何なんだろうと。だから常に、やることなすこと自分が本当に心の底からわくわくできるものを選んでいくことが、単純だけど、そういうことの積み重ねが北村匠海の生きることなのかな、と思っています。中川:「生きる意味」を考えているかという質問の答えとは、ちょっと違うかもしれないけれど、僕は自分の生きている時間を大切にするようにしています。僕らがやっている仕事と、ひとりの人間に戻った瞬間の部分は、いつも切り離せないんですよね。僕らは毎回台本をもらって、いろいろな“誰か”を生きないといけない。そうなってくると、まずは自分の人生をちゃんと(見つめ)、僕はそこに立ち返ってくる時間を大事にします。作品や仕事場でずっと目まぐるしくしていると、だんだん軸がわからなくなってくるんです。そこで家族や友人との時間に戻ると、自分に帰ってこられるんです。自分の人生や生活、生きている時間に1回戻ってくることを大事に生きています。――本作は、ハラスメントや社会的な問題にも触れています。おふたりは今ハラスメントについてどう感じたり、もしくは向き合ったりしていますか?北村:映画の中で、まさしくハラスメントはいっぱい出てきますよね。でも、ハラスメントしている側をたどっていくと、その上にはきっとハラスメントを受けてきた過去があったりするのかな、と思うんです。だから、僕らはいろいろ試行錯誤するし、それがかなったり・かなわなかったり・失敗したり・成功したりする年代なのかなと受け止めています。中川:うん、そうだね。結構いろいろなことが転換期なんじゃないかなと、僕も思ってる。北村:変わるよね。変わっていっているよね。――中川さんも肌で感じていらっしゃるんですね。中川:肌で感じたり、ニュースを見て感じたりします。これまで当たり前としてやってきたことを、1回冷静に立ち止まって考えてみることが大事なのかなと思います。やることがすべてになってしまって、なぜやっているかを考えなくなることが、結構怖いなと思いました。北村:そういう話を大志とちょろっとしたよね。中川:そうそう。意味を求めることが、すごく大きなことという気がしています。(text:赤山恭子/photo:Maho Korogi)■関連作品:スクロール 2023年2月3⽇よりTOHOシネマズ ⽇⽐⾕ほか全国にて公開©橋⽖駿輝/講談社 ©2023映画「スクロール」製作委員会
2023年02月04日ディズニープラス「スター」にて、昨年12月より独占配信がスタートし、毎週1話ごとの更新(水曜配信/全7話)でいま、まさにクライマックスを迎えようとしているのが、二宮正明の人気コミックを原作としたヴィレッジサイコスリラー「ガンニバル」である。プロデュースを手がけたのは、アカデミー賞国際長編映画賞に輝いた『ドライブ・マイ・カー』のプロデューサーを務め、現在はウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社にて、日本オリジナルのコンテンツの企画・制作に従事している山本晃久氏。「人が喰われているらしい」という噂のある山奥の村に赴任した警察官が、愛する家族を守り、村に隠された秘密を明らかにするべく戦う姿を描く本作。“ディズニー”というブランドのイメージとはかけ離れた感のあるサイコスリラーである本作がなぜディズニープラス「スター」で配信されることになったのか?映画の仕事に携わる人々に話を伺う【映画お仕事図鑑】。19回目となる今回は、山本プロデューサーに本作の企画の成り立ちから配信にいたるまでのプロセスについて話を聞いた。――“映像化不可能”という枕詞のついた「ガンニバル」というコミックをディズニープラスが映像化することになった経緯について、そもそもの企画の成り立ちから教えてください。今回のプロダクションに入っていただいているSDPの岩倉達哉プロデューサーが、我々ディズニーのローカルコンテンツ制作チームに企画の提案をしていただいたのがそもそもの始まりです。我々も「ガンニバル」という原作の存在を知ってはいたんですが、それまでしっかりと読んでおらず、拝読したところ、本当に面白く、単純に原作の力が素晴らしいというのが一番の感想でした。みなさんに驚いていただいているんですがこれを「ディズニープラス」というプラットフォームで映像化するというインパクトの強さに我々全員がワクワクしました。ディズニープラスの中でも、「スター(STAR)」ブランド(※)というゼネラルエンタテインメントを掲げるブランドの特性を最大限に活かせるコンテンツになるのではないかという声も上がりました。確かに「ガンニバル」の実写化は大変難しいものではありましたが、挑戦しがいのある、我々のローカルコンテンツのオリジナル作品にふさわしい一本になるのではないかということで採択に至りました。※ディズニー・テレビジョン・スタジオや20世紀スタジオをなどが制作する映画やドラマや、世界中のスタジオが生み出すローカルコンテンツを配信。なお、ディズニープラスには「スター」以外に「ディズニー」、「ピクサー」、「マーベル」、「スター・ウォーズ」、「ナショナル ジオグラフィック」というブランドがある。――「難しい」という言葉がありましたが、カニバリズム(食人)をテーマのひとつとして扱い、凄惨なシーンも多いという点で、反対意見は出なかったのでしょうか? 映像化決定にいたるまでにどのような議論があったのでしょうか?当たり前のことですが我々は、何かを変に誇張したり、倫理的に許されざることを肯定するような意図は全くありません。ただ、この「ガンニバル」という原作にある“カニバリズム”というものが、社会の中の別の価値観を持った集団の存在を浮き彫りにする上で、非常に強いテーマ性を持っている事象であることは明らかです。だからこそ、避けたり、濁したりすることなく、このことを正面からしっかりと描くことが重要ではないかという議論はありました。避けたり、濁したりすることは、原作の味わいをなくしてしまうことになる。人間ドラマを描く上で、非常に重く、強過ぎる――ある意味で究極の表現だと思いますが、そこから逃げるのではなく、そのことによって起きる人間のドラマにちゃんとフォーカスを向けるためにも、きちんと正面から取り組もうという話し合いはしました。――約2時間の劇場映画でも地上波のドラマでもなく、ディズニープラスという配信プラットフォームだからこそ可能になった部分はありますか?当たり前ですが、原作はそもそも2時間という枠に収めるような前提で描かれているわけでもなく、連綿と物語が紡がれていきます(全120話)。配信ドラマで映像化する利点として、やはり尺にとらわれないというのは大きいところだと思います。2時間にギュッと押し込むのではなく、この物語を見せる上で、最も適した形にすることができるという利点は、脚本の大江崇允さんも感じてくださったと思います。実際、第1話は51分で、第2話は34分、最終話である第7話は1時間を超える作品になっていたりしますが、尺の制約がないということが、物語をより豊かにしていると思います。――大江さんの名前が出ましたが、『ドライブ・マイ・カー』でもご一緒された大江崇允さんに脚本を、そして『岬の兄妹』でセンセーションを巻き起こした片山慎三監督を起用された意図と経緯を教えてください。まず、片山慎三さんにこの作品をお任せしたいということ、大江さんに脚本をお願いしたいということは私から提案させていただきました。意図としては『岬の兄妹』で片山さんが見せてくれた、作家性と娯楽性の絶妙なバランス感覚が本当に秀逸だと感じたこと。なかなかこの感覚を持っている人はいないと思います。もちろん、日本の映画監督で優れた方は多いですが、バランス感覚ってなかなか難しい部分だと思うんです。片山さんのことは前から知っていまして、人柄やどういった演出をされるかということは理解していましたし、この「ガンニバル」という題材にも興味を持ってくれるだろうとは思っていました。大江さんに関しては、原作の有無にかかわらず、物語の世界観を構築する際の“分析能力”が非常に高い人なんですよね。物語の世界観を細分化した上で、何が必要で何が必要じゃないか? あるいは何を加えるべきか? といったことを精緻に分析してくれるんです。「これはこういう物語なのではないか?」と言語化する能力に優れていて、それはものをつくっていく上での指針にもなるので非常に助けられます。また、非常に柔軟な頭の持ち主でもあるので、ディスカッションを重ねていく中で「そうか、自分はこう思っていたけど、こういうことだったんですね」と再構築する力にもたけています。さらに、それ等を脚本に落とし込んでいく際の“構成力”も素晴らしく、今回で言うと、長い物語を全7話に振り分けたり、1話ごとの物語の運びという部分での“柱”の立て方でも非常に優れているんです。この「ガンニバル」という入れ子構造の難しい物語を大江さんならまとめ上げてくれるだろうと思っていましたし、もしかしたら、我々が思ってもいないような新たな発想や視点を加えてくださるのではないかと期待してお願いしました。――原作の脚本化を進める中で、大切にした部分、大江さんや片山監督と話し合ったことについてお聞かせください。まず何より、原作の味わいというものを余すところなく伝えようということ。原作を読まれた方ならおわかりになると思いますが、本当にどうなっていくのかわからないし、展開もテンポも早いんですよね。読み始めると、全巻を一気に読んじゃうような原作が持っている“熱量”は大切にしたいということは話しました。一番大切にしたのは、第3話の構成ですね。ここで大悟の過去のエピソードと、現在の後藤家の襲撃によるカーアクションが交差して描かれます。エモーショナルな過去と、いま起きているアクション&サスペンスが“入れ子構造”となって、クライマックスに向けて加速していきます。当初はこういう構造ではなく、過去と現在がセパレートされていて、過去のエピソードから始まり、それが終わってから現在のパートという流れだったんです。ここに関して僕のほうから「見たことのない映像体験にしたい」という話を大江さん、片山さんにしました。主人公の阿川大悟の過去がめくれていく部分と、現在軸で起きている後藤家の襲撃に対処する大悟の“狂気”みたいなものが、重なる瞬間があるんじゃないか? 過去に娘を守るために彼が取った行動と、現在、後藤家の襲撃に対して見せる狂気が重なる――それは、その後、ある人物が発する「お前も同じじゃろ? 俺は家族を守るためなら何でもする。お前もそうじゃろ?」というセリフともシンクロするんですね。それを見たら視聴者はきっとゾクゾクするだろうし、大悟という主人公は何をしでかすかわからない! と彼から目が離せなくなるんじゃないかと思いました。片山さんは、そこでの僕の提案を僕以上に深く理解して、あの映像シークエンスで結実させてくださいました。――主人公の警察官・阿川大悟を柳楽優弥さんが演じていますが、いまのお話にあったように、赴任先の村で遭遇する奇妙な事件に巻き込まれていくだけでなく、途中で妻から「楽しんでいるでしょ?」と指摘されるような、どこか狂気を帯びた男を見事に演じられています。柳楽さんの起用に関しては満場一致でしたね。本当にすごい俳優さんで、現場であれほど強い影響力を持てる俳優さんはなかなかいません。カメラの前に柳楽さんが立っているだけで、物語の世界がこちら側に流れ込んでくる錯覚を覚えるような――レンズを通して視聴者に届けるだけでなく、現場にいる我々に対してまでも没入感を与えて、その場を掌握するような強い存在感を持った俳優さんですね。阿川大悟という男を柳楽さんでしか演じられないようなやり方で演じてくださったと思います。柳楽さんが持っている――例えば過去の作品で言うと『ディストラクション・ベイビーズ』で見せたような狂気のかがやきみたいなものが、「ガンニバル」でも見られます。何を軸にお客さんにこの作品を興奮してもらうか? という指針、何を見せるべきか? という編集の方向性などが、柳楽さんの芝居で定まっていったと思います。柳楽さんに出演をお願いし、快諾していただいた瞬間に、この作品の“核”が定まったんだなと思いますね。――お話にもあった第3話のカーアクション然り、映像の質の高さも目を引きます。きちんと予算と時間をかけて、クオリティの高い作品をつくろうという意思が伝わってきますが、プロデューサーとしてこの作品を成功に導く“勝算”はあったのでしょうか?映像のクオリティに関しては、まず片山慎三さんにこの作品をお願いしたということ。そもそも、片山さんと知り合ったのは、何本かお仕事をさせていただいているカメラマンの池田直矢さんのご紹介なんです。今回も池田さんに撮影監督をお願いしているんですが、池田さんのセンスが本当にすごいことはわかっています。映像の質の高さという点に関しては、片山さんと池田さんのコンビによる部分が大きいですし、そこに照明、美術、録音などの素晴らしいスタッフ陣が加わってくれました。何よりもまずスタッフへの信頼がありました。これだけのスタッフを揃えた上で、“力点”をどこにするかを選ぶ必要はありました。全てのシーンに100%の予算と時間を注いでつくりあげていくというのは現実的になかなか難しいですし、様々な制約はあります。スケジュールが決まった時点で、「この作品は、ここに賭けるんだ」という力点を選んでいかないといけないのですが、その選択肢の豊かさは今回、確実にあったと思います。実際の撮影に関していうと、ロケ現場があちこちに点在してしまったことで、現場のスタッフやキャスト陣は本当に大変だったろうと思います。――12月に配信が開始されて以降、反響はいかがですか?非常にありがたいことに「面白い」「一気に見てしまいます」「続きが気になる」「早く水曜日にならないかな」といった声を数多くいただいています。海外でも非常に見られているということで、ありがたいです。先ほどの話にも出たような、柳楽さんの“狂気”を楽しんでいる視聴者の方が数多くいるみたいで(笑)、それは僕自身、編集の段階でも強く感じたことだったので嬉しいですね。本当にすごい“ヒーロー”なんだなと思います。もちろん、暴力そのものは恐ろしいんですけど、あの男の戦い方は、見入ってしまうような魅力があるんですよね。それが多くのお客さんに届いているのは嬉しいです。――改めて本作の企画から配信までをふり返って、プロデューサーとして大切にされたこと、苦労されたことはどんなことですか?長丁場でスタッフ、キャストの負担がどうしても大きくなってしまったということ。加えて各話ごとに大きな見せ場があるので、その準備の部分でも現場のみなさんは本当に大変だったと思います。これだけの長丁場の中で、みなさんのモチベーションをどう維持していくか? そのためにも「いま、我々は面白い作品をつくっているんだ」ということを常に確認しながらやっていく必要がありました。その共通認識を深めていくということが、非常に重要なことだったと思います。それは、私というよりも、片山慎三監督が力強く旗を振ってくださったおかげだなと思います。その手助けが少しでもできていたならプロデューサーとして嬉しいです。「ガンニバル」山本晃久プロデューサー――最後に、映像業界を志している人たちに向けて、メッセージをお願いします。僕自身の経験則に基づいてでしか、何かを言うことはできないですが、僕自身、これまでに素晴らしい映画やドラマに救われて、何度も人生の後押しをしてもらいました。だからこそ、いま、こうして映画やドラマづくりを仕事にさせてもらえているということは、本当にありがたい日々だなと感じています。僕は常にワクワクしています。まだ見ぬ物語、映像、新しい語り口がこの世界にはたくさんあって、それを探す旅は本当に面白いです。なので、本当にドラマや映画のことを本当に好きでいてくださるなら、ぜひまだ見ぬものを探す旅に乗り出してほしいなと願っています。(text:Naoki Kurozu)
2023年02月01日自由すぎて、型破りにもほどがあり、超迷惑。それでいて、こんな人になりたい、こんな生き方をしたいと思わされる。入間みちおはそんな人だ。そのことは彼の被害者(?)であり、彼の信奉者とも言える井出伊織が一番よく知っている。そして、“みちお旋風”ならぬ“みちお暴風”はスクリーンへ。裁判官・入間みちおと検事・井出伊織として連続ドラマ「イチケイのカラス」を共に駆け抜けた竹野内豊と山崎育三郎が、映画『イチケイのカラス』と一連のシリーズについて語る。「竹野内豊と入間みちおの境界線がよく分からない」──映画『イチケイのカラス』でも、みちおと井出の関係は相変わらずですね。山崎:井出がみちおさんを追いかける構図は、連ドラのころから変わりないんですよね。初めこそ敵対するポジションにいましたが、どこか惹かれていって。みちおさんの生き方や行動を見ながら、井出自身が変わっていく。「自分にとっての正義とは何か?」を考えるような瞬間もありましたし。そのあげく、今ではみちおさんのお目付け役のような立場になって。みちおさんのことになると結局、井出はコントロールできないんです(笑)。竹野内:私を含め、入間みちおという破天荒な裁判官には誰しも違和感を持っていると思います(笑)。ですが、みちおと出会うことで、井出くんも坂間さん(黒木華)もそれぞれ自分自身や自分なりの正義と向き合うことになっていくんですよね。たとえ反発していても心の中の塊みたいなものが少しずつ溶かされていき、内心では認めざるを得なくなっていく。それが「イチケイのカラス」の魅力にもなっているんじゃないでしょうか。──ある意味、井出はみちおに最も溶かされる登場人物の1人です。山崎:特に連ドラでは猛スピードで溶かされていました(笑)。でも、僕自身も竹野内さん演じるみちおさんが大好きなので、気持ちは分かります。──山崎さんから見て、“竹野内さんが演じるみちお”の魅力はどんなところにありますか?山崎:まずは何より、僕は竹野内さんの声が大好きで。喋り出すだけで全体を包み込むような、柔らかくて優しい低音の声をずっと聴いていたい。竹野内:ありがとうございます(笑)。山崎:僕、声フェチなんです(笑)。そんな竹野内さんだからこそ、みちおさんを演じるうえでの絶妙な説得力があって。正直、竹野内さんとみちおさんの境界線ってよく分からないんです。なんて言うか、佇まいと存在感に説得力があるんですよね。台本を読んだときに僕がイメージしたのとは全然違う角度で演じられることも多いんですが、それこそが竹野内さんならではのみちおさん。芯の強さも感じますし、「次はどうするのかな?」とずっと見ていたい。井出としても山崎育三郎としても憧れの目で見ています。回を追うごとに山崎育三郎“井出伊織”のキャラクターが構築──逆に、竹野内さんから見た“山崎さんが演じる井出”の魅力は?竹野内:まずは、冒頭陳述のスピードですね。ものすごい速さで読み上げますから。しかも、なんてこともないようにさらっと。なかなかできるものじゃないですよね。山崎:いやいや、いつも緊張しています(笑)。竹野内:NGを出すこともなく、本当に素晴らしいなと思います。それに加え、回を追うごとに井出伊織のキャラクターが構築されていき…。気づいたら、独自の世界観が確立されていました(笑)。今や「イチケイのカラス」になくてはならない存在ですからね。みちおとはまた違うキャラの濃さがあって。山崎:連ドラのときは大抵、事件の説明をしているか、全速力で走っているかでしたけどね(笑)。それが、スピンオフ(「イチケイのカラス-井出伊織、愛の記録-」)でネジが外れちゃって…。竹野内:ほんとだねえ。ちょっとネジが外れてた(笑)。山崎:恋愛になるとそういうタイプなんだなって。すごく危険な人だと改めて感じました(笑)。──スピンオフドラマにはみちおも登場していましたね。ふたりの距離感が今まで以上に縮まっているのを感じました。竹野内:顔が近かったですよね(笑)。ああいったシーンはすべて田中(亮)監督の指示です。「もっと(近くに)行って」とおっしゃるので…。山崎:竹野内さんはコミカルなシーンの瞬発力がすごいんです。ぱっと予測不可能なことをなさる(笑)。竹野内:その言葉はそのままお返しします(笑)。山崎:僕はもう、ふざけているだけなので(笑)。でも、竹野内さんはこの素敵な感じのまま瞬時にアドリブをなさるから。──優しい低音の声で面白いことをなさるんですね。ずるいです。山崎:そうそう。そうなんですよ!(笑)約7年前「グッドパートナー」での共演秘話──おふたりは「グッドパートナー 無敵の弁護士」でも共演なさっていますね。竹野内:もう7年ほど前になりますね。クランクアップの直後に、育三郎くんのミュージカルを拝見しに行ったことも覚えています。山崎:帝国劇場まで観に来てくださいましたよね!竹野内:あえて前情報を入れずに観に行ったら、最初に髭の男性が出てきて。それが育三郎くんだったんですが、しばらく分かりませんでした。低くて野太い声の別人で…。山崎:(「エリザベート」の)ルキーニだったので…(照れ)。竹野内:10分ほど経ってから、もしかして…育三郎くん?と。山崎:(笑)。「グッドパートナー」のイメージもあったでしょうしね。竹野内:そうそう。直後だったから、本当に分からなくて。ものすごい才能を持たれているんだなと思いました。役柄による変化はもちろん、カメラの前と舞台の上の違いもありましたし。台詞を言う声に圧があり、圧倒されました。山崎:そうおっしゃってくださって、すごく嬉しかったです。竹野内さんも「グッドパートナー」(の咲坂健人)とみちおさんでは全然違いますけど(笑)。でも、現場での居方は変わらないですよね。変わらず魅力的で、安心感があって、優しいです。何をしても何が起きても絶対に受け止めてくれますし。どうして常にフラットにいられるんですか?竹野内:いやいやいや(笑)。主演として皆さんを引っ張りたい気持ちはすごくあるし、かっこいいところを見せたいんですけど、気づくと自分のほうが受け止められていて…。山崎:そんなことないです!竹野内:育三郎くんを含め、皆さんから教わることのほうが多いです。山崎:竹野内さんのおかげで、明るく開放的な撮影現場になっていましたから。“入間みちお”から学ぶ、今の時代に求められる人物像──現場の空気づくりをなさる竹野内さんと空気の読めないみちおは、ある意味対照的ですね。その一方、目的に向かう信念の強さは共通していて。おふたりは入間みちおのような生き方をどう思いますか?竹野内:ぶれることなく、自分の信念を貫く。それがみちおの何よりもの強さですし、見習いたいとは思います。映画の彼みたいに、国と戦うほどの勇気はなかなか出ないかもしれませんけど。不可能と言われているような壁すら突破していく。そんなエネルギーを持つ人が、今の時代には必要なんじゃないかなとも思います。あまりやりすぎると身の危険を感じることになるかもしれないし、難しいことではありますけど。でも、彼のような生き方と強い心に憧れる気持ちはあります。山崎:僕がいいなと思うのは、みちおさんの子供っぽさですね。できれば僕も大人になんてならず、子供でいたい(笑)。大人っていろいろな場面で空気を読み、人の視線も感じ、「こうしなきゃ」と思いながら生きていくものじゃないですか。そういったものから解放され、思うままに生きてみたいですね。それが、みちおさんにとっては真実にとことん向き合うことであって。そのためにあえて空気を読まず、ありのままの自分で突き抜けていくみちおさんみたいに生きられたらかっこいいと思います。(text:Hikaru Watanabe/photo:Maho Korogi)■関連作品:イチケイのカラス 2023年1月13日より全国にて公開©︎浅見理都/講談社 ©︎2023映画「イチケイのカラス」製作委員会
2023年01月26日満島ひかりと佐藤健が共演し、宇多田ヒカルの「First Love」「初恋」からインスパイアされたラブストーリーを紡ぐNetfixオリジナルシリーズ「First Love 初恋」。配信開始されるや否や、日本のみならず各国でヒットを記録している本作、その立役者の一員が八木莉可子と木戸大聖だ。本作は、也英と晴道という高校生が恋に落ちるも予期せぬ試練に遭い離ればなれになり、時が経って運命的に再会する姿を約20年というスパンで描いた作品。也英を満島さんと八木さん、晴道を佐藤さんと木戸さんがそれぞれ2人一役で演じている。一大ブームの渦中で自身に起こった“変化”を皮切りに、ふたりが本作とどのように歩んできたのか――。その軌跡を語っていただいた。国内外の声からも反響の大きさを実感――11月24日の配信からちょうど1か月が経過しましたが、おふたりのもとにはどのような反響が届きましたか?八木:私は、本当にたくさんの国の方からInstagramのコメントをいただくようになりました。あとは、この間渋谷で撮影をしていたら台湾出身の方が英語で話しかけてきてくださったんです。ご本人も向こうで役者をされているそうで、観ていただけたことも嬉しかったですし、これまではそんな風に声をかけていただけることもなかったのでびっくりして嬉しかったです。大学の友達も観てくれましたし、学内の知らない子からも声をかけられて反響の大きさを実感しています。木戸:僕も莉可子ちゃんと一緒で、日本だけでなく海外の人からも反響をいただけたことがすごく嬉しかったです。あとは、具体的な数字になってしまうのですがInstagramのフォロワーが配信前は1.3万人くらいだったのですが、一気に19万人くらいまで増えました。これも莉可子ちゃんと一緒だとは思うのですが、海外の方がたくさんフォローしてくださいました。――10倍以上!すごいですね…。木戸:あまりに増えすぎて、その数字を見たときは「バグかな?」と思ったくらいでした(笑)。こうやって、日本のラブストーリーが国を超えて海外の方にもたくさん支持いただけていると実感できて嬉しかったです。――ここからは作品の舞台裏含めて伺えればと思います。まずはオーディションについて。木戸さんはオーディション後、タクシーで移動中に合格の連絡が来たそうですね。ちなみに、オーディション時はどんなシーンを演じたのでしょう?八木:也英と晴道がリスの話をしているシーンがあって、「10年後に何をしているんだろうね」と会話するところです。大聖くんもそうだったよね?木戸:そうだね。僕は2回オーディションを受けたのですが、2回目は先に莉可子ちゃんの出演が決まっていて相手役をしてくれたんです。その時に演じたのがいま言ってくれたシーンでした。八木:私が受けたオーディションは1回だったのですが、実際に具体的なシーンを演じていた時間は2分くらいで、ほぼほぼ1時間くらい寒竹ゆり監督やプロデューサーさんとお話ししていました。「普段はどういう人か」といったように私自身のことを聞かれたり、宇多田ヒカルさんの音楽を聴きますか?とご質問いただきました。実は私が初めて受けたオーディションがポカリスエットのCMなのですが、その時の課題曲が宇多田さんの「traveling」だったんです。そのことを話したら「じゃあ歌ってみて」という話になってその場で歌ったり…。「プロットを読んでどう感じた?」というお話もしましたし、自分の内面や考え、気持ちをたくさん話すオーディションでした。木戸:僕が受けた1回目のオーディションも同じ内容でした。ただ僕は、1回目のオーディションであえて渡されたプロットを読まずに挑んだんです。そのときは審査して下さる方の中で「えっ読んでないんだ」という反応もありましたが、現場に入る前に寒竹監督からいただいた手紙に「プロットを読まずにオーディションに挑んだあなたは誰よりも晴道でした」と書かれていて、ホッとしました。莉可子ちゃんと一緒にやった2回目のオーディションも、ずっとお芝居していたというより話していた時間が多かったよね。八木:そうだね。ふたりで並んでみて!みたいなのもあったね(笑)。木戸:あったあった(笑)。あと、僕は作品の中で坊主にするシーンがあるのですが、プロデューサーの方に頭をたくさん触られました(笑)。――頭の形のチェックが…(笑)。木戸:そうなんです(笑)。でもそのときはなんのこっちゃわからず、後からそういうことか!となりました(笑)。役作りのため様々な“90年代”を体験――撮影に入る前には、満島ひかりさんによるワークショップも開催されたと伺いました。木戸:也英と晴道が『タイタニック』のポーズを真似してはしゃぐシーンをピックアップしてやりしました。台本にはジャック(レオナルド・ディカプリオ)とローズ(ケイト・ウィンスレット)のセリフがあって「笑い合う」くらいしか書いていないんですが、ワークショップの前に監督と3人で読み合わせをやったときに僕と莉可子ちゃんが恥ずかしくなっちゃって(笑)。八木:私も「I’m flying, Jack!」のセリフが全然うまく言えなくて、何回も回数を重ねてしまいました…(苦笑)。あとは晴道との電話を切った後に「キャー!」って喜びを爆発させるシーンも何回もやったことを覚えています。木戸:ワークショップではひかりさんが莉可子ちゃんの部分をやってくださって、そこに書いてあるセリフに関係なくアドリブで「やだやだやだやだ!やりたくない!」みたいに演じてらっしゃって、新鮮でした。お芝居というよりもひかりさんが素で楽しんでらっしゃるような感じがあって、ご本人も「とにかく楽しんだ方がいいよ」とおっしゃってくださいました。――八木さんは役作りの一環で「90年代当時のことを調べた」とおっしゃっていましたが、『タイタニック』のシーン然り、世代的に当時の盛り上がりを体感していないなか演じる状況でもありました。八木:おっしゃる通り当時の盛り上がりだったり、そういった当時流行ったものがその人にとってどれくらい大切なものなのかわかっていなくて、監督に現場で指摘いただいて「自分はちゃんとわかっていなかったんだな」「違ったんだな」と感じることはありました。木戸:いまのお話に通じますが、90年代当時はいまみたいにスマホで簡単に連絡を取り合えなかっただろうから、と思い、僕から提案して莉可子ちゃんと連絡先を交換しなかったんです。そのぶん、会える時間に色々な話をするはずと思って現場入りしたのですが、お芝居をやりながら「もっと普通に連絡を取っておけばよかった…」と思い直して(苦笑)。僕が監督から晴道を演じるうえで色々言っていただけたことを処理しきれずに悩んでしまったときに、ホテルのロビーで莉可子ちゃんと話をさせてもらったのですが、そのタイミングで「やっぱ連絡先交換していい?」とお願いしました。八木:お互いに「こうした方がいいよ」みたいにシーンの悩み相談をするだけじゃなくて、普通に会話する時間を増やしました。「明日は仲のいいシーンの撮影だし1回会って話そうか」みたいにホテルのロビーで待ち合わせて話したり、1回だけじゃなくて何回もお互いに話す機会を作りました。木戸:ふたりでNetfixの宇多田ヒカルさんのライブツアー「Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018」を観たりもしましたね。それこそ、劇中の也英と晴道の屋上のシーンみたいに。八木:でも私たちはAirPodsだったから(有線式の)イヤフォンを片耳ずつ、ではなかったです(笑)。木戸:(笑)。あとは撮休のときに、莉可子ちゃんが飛行機のお守りを買ってきてくれたんです。八木:パイロットの方やCAさんが買うお守りがあるんです。――素敵ですね。劇中とリンクしていますね。木戸:そうなんです。僕が空いている日はお守りを買ってきて、お守り交換もしました。八木:札幌の中島公園に行って話したりもしたよね。木戸:そうだね。出演を経てからの変化と成長――本作ですと順撮り(※脚本の順番通り、ないし時系列順に撮影すること)ではないぶん日によって也英と晴道の距離感も変わりますし、満島ひかりさん・佐藤健さんと2人一役という難しさもあります。八木さんは手の使い方・木戸さんはタバコを吸うときの角度などを参考にされたと伺いました。八木:最初にプロデューサーさんから「ひかりちゃんと莉可子が通じるのは、野性的なところ」と言っていただけたのが大きかったですね。手に関しては最初からそこを考えていたというより、むしろ意識できていなくて監督から教えていただいたんです。私は「仕草を真似しようかな」と考えていたのですが、撮影時に監督から「ひかりちゃんはすごく丁寧にものを持つんだよ」と言われて、「確かに!」と気を付けるようになりました。――なるほど、そういう順番だったのですね。最初に「ひかりさんと通じる」と言ってもらえたことで、自分らしくいられる部分もあったのではないでしょうか。八木:そう思います。最初は「ひかりさんと同じ役を演じさせてもらえるなんて、どうしよう」と思っていましたから。ひかりさんも「莉可子ちゃんの自然体のキラキラしたところが映るといいね」と言ってくださって、お陰でリラックスしてお芝居に臨めました。木戸:僕も初めは健さんのいままでに出ていらっしゃる作品を観たうえでの芝居のイメージはもちろんあったのですが、そこに近づこうとしていくのは違うのではないかとどこかのタイミングで思うようになりました。健さんも晴道に近づこうとしているなかで、僕も同じようにしなければベクトルが違ってしまうと感じたんです。本作は也英の事故を境に健さんのブロックになりますが、それまでは僕が演じないといけない。晴道自身も大きく変わるわけで、同じものを演じるというより僕がやる部分では純愛のキラキラした部分をしっかり演じようと思いました。そういった意味では芝居面で寄せていこうというアプローチではなく、ただ先ほど挙げてくださった所作については人間が子どものころからやっているものが大人になっても出ちゃうものだから、晴道が1本の線でつながっていると見せるためにも沿わせていきたいと考えていました。――いま木戸さんがお話した部分は、「身体が憶えている」という本作のテーマにも通じますね。木戸:そうなんです。そのうえで今回、「タバコを吸う」という共通項があるのであれば…と先に撮っていた健さんの喫煙シーンを見せていただき、「指のこの位置で挟んでいるな」等を研究して、意識して演じましたね。――本日は貴重なお話、ありがとうございました。最後に、「First Love 初恋」を経験したことでおふたりの「演じる」に生じた変化があれば、ぜひ教えて下さい。八木:本作の出演が決まったのは高校生のときで、まだお芝居の経験もあまりないタイミングでした。それからコロナなどで撮影が延びてしまい、何回も読み合わせをしたりワークショップを開いていただいたりと、本当に一から手取り足取り教えていただいた感覚があります。だから「ここが変わった」というより、この作品で役との向き合い方を教えてもらった気持ちです。まだまだ未熟なので全然わかっていないのですが、「こうしたら綺麗に見える」みたいなものではなく、役に対して俳優としてどう向き合うかの姿勢や意識ができてきたように感じます。たとえば私は自分に引き寄せて考えないと苦手なタイプだな、自分事として捉えるのがいいんだなとわかりました。木戸:僕がすごく覚えているのは、去年の7月くらいに自衛隊の基地で撮影していたときのことです。炎天下のなか自衛隊員の方たちに混ざってほふく前進をしないといけないシーンでしたが、無我夢中でやっている僕の芝居を観た寒竹監督が「それまで撮ってきた中で、初めて大聖が周りの目や人が気にならなくなって、ガッとそこしか見えていない状態になっていた」とおっしゃっていて。ひかりさんがそういう状態のことを「水中に潜っている状態」とおっしゃっていて、ひょっとしてこれかもしれないと気づきました。――ゾーンに入るといいますか。木戸:そうですね。芝居の最中は必死でしたが、周りの音が聞こえなくなって目の前のことだけに集中する瞬間は初めてかもしれないと感じました。寒竹監督は五感や身体の人間的な反応をすごく大事にしている方なので、そう思っていないまま表面的な芝居をするとすぐカットをかけられて「違う」と言われてしまうんです。でも、そういった部分に気づけずに役者を続けていたら、いつか絶対に壁にぶち当たっていました。寒竹監督や、莉可子ちゃんはじめ色々な方と芝居していくなかでこの“水中に潜った感覚”に出会えたこと――この経験は、今後も大事にしていきたいです。(text:SYO/photo:Jumpei Yamada)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 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2023年01月04日ソン・ガンホ、イ・ビョンホンに、チョン・ドヨン、キム・ナムギルらが豪華共演し、ハワイ行きの航空機が謎のウイルスによって恐怖と混乱の渦に巻き込まれていく航空パニック映画『非常宣言』。Withコロナの時代に極限のリアリティーが描かれる本作で、「すごいことを起こす、飛行機テロだ」と言い放つ謎の男を演じたのは、ドラマ「ミセン -未生-」や映画『弁護人』『名もなき野良犬の輪舞』などで知られる人気実力派俳優イム・シワン。登場した瞬間から異様な雰囲気を纏い、冷たい眼差しで観る者を戦慄させるテロリストを演じた彼が、初めて挑んだ悪役の役作りや、共演者についてシネマカフェに語ってくれた。「引き受けた役をしっかりと演じなければ」メガホンをとったハン・ジェリム監督が脚本を執筆し、キャスティングを行い、撮影開始の準備をしていたのはもちろんコロナ禍以前のこと。「自分が頭の中で思い描いていた出来事が現実になるのを見て、衝撃を受けずにはいられなかった」とコメントしているとおり、クランクインは 2020年5月30日、クランクアップは同年10月24日と、まさに世界中がウイルスパニック真っ只中での撮影となった。そんな本作への出演を決めた理由をイム・シワンは、「僕自身が作品を選択したというよりも、“選択していただいた”という表現が適切かと思います」と謙虚に語る。「素晴らしい先輩、素晴らしい監督、何よりも作品が素晴らしいので、僕自身を選択していただいたのは大きな機会になると思いましたし、光栄だと思って作品に臨みました。引き受けた役をしっかりと演じなければ作品に対して失礼になってしまう、そんな責任感を持って臨みました」と明かす。2019年に兵役を終えた彼は、ドラマ「他人は地獄だ」「それでも僕らは走り続ける」ほか、現在は最新ドラマ「なにもしたくない」(原題)など精力的に活躍を続けている。そこには、役者という仕事への激しい渇望があったようだ。「若い年齢で入隊すると、何かの仕事をしていたら一定期間、その仕事を中断せざるを得ないという状況になります。それが兵役の特徴なんですけれども、そんなふうにやってきた仕事を中断すると、やはりその仕事に対する“喉の渇き”のような、その仕事に対する気持ちがどんどん強まっていくものなんです」と言う。「ですから、その気持ちを解消できるような作品と出会えるというのは、“恵みの雨”ともいえるような心境になりました。(復帰作の)『他人は地獄だ』を撮っていたときも本当にワクワクしていましたし、共演した俳優や監督とおしゃべりするときもそうでしたし、食事をするときも本当に楽しくてワクワクしていました」とふり返る。イ・ビョンホンとの共演は「不思議な、スゴい日だった」本作においても、錚々たる顔ぶれと共演することになった。演じたのは、謎のウイルスを仁川発ハワイ行きKI501便に持ち込み、拡散させた張本人リュ・ジンソクという男。空港から、イ・ビョンホン演じる飛行機が苦手なジェヒョクとその娘スミンに執拗につきまとい、不審がられるというキャラクターだ。イ・ビョンホンについてイム・シワンは、「世界的にも演技が認められている先輩ですから、先輩の演技は常に正解だと思っています。そんな先輩と共演できて、また、息を合わせて一緒に演技できたのは、僕にとって不思議な経験でした」と語る。「撮影初日のことは日付も記憶にあるくらい、本当に自分にとってイ・ビョンホンさんと共演できた日というのは不思議な、スゴい日だったと、いまでも思っています」と当時の心境を打ち明ける。また、副操縦士ヒョンス役のキム・ナムギルと対峙するシーンもあった。「キム・ナムギルさんは僕のことを弟のようにかわいがってくださったんです。撮影しているときにも、(緊迫したシーンが続く)僕が心理的に大変な思いをしないように一緒にふざけてくれたり、いたずらをしてくれたりして、いい雰囲気を作ってくださいました」と言う。「そのおかげで気持ちを楽にして撮影ができたんです。映画の中で乱気流が発生するシーンがあったんですが、そのときにも気遣ってくださって気楽な気持ちで演技ができました。僕たちがふざけていたのを見て、監督はそれが演技だと思ったらしく、『いまのがいいですね』と言ってくださって、それが演技に反映されたところもありました」とも明かした。航空バイオテロを引き起こす張本人役「僕なりに彼の個人史を考えました」イム・シワンが演じたリュ・ジンソクは、副操縦士のヒョンスらに追及されても傲岸不遜で、その人物背景も多くは語られない。「監督としては、リュ・ジンソクの背景や動機は推測に留めておこうという考えだったようなんですね。つまり、リュ・ジンソクの細かい個人史を(劇中では)説明しないという方向で監督は考えていたようです」と語る。「なぜかと言いますと、(米国史上最悪といわれた2017年の)ラスベガス銃乱射事件が起きたとき、誰にとっても悲劇であり、恐怖だったわけですが、その事件の恐怖が大きかったのは犯人に特定の動機がなかったという点だったんです。動機がないという不透明さ。明確な理由がないまま、あのような事件を起こした。それがむしろ大きな恐怖に感じられた、と監督はおっしゃっていました。そのお話を聞いて、僕も共感できたんですね」。「ですから僕は、演技をするために必要になるので、リュ・ジンソクがどんな人間だったのかという個人史を、キャラクターの正当性を作るために自分なりに考えてみました。それはあくまでも僕が演技をする上で必要なものであって、監督とも共有する必要がないと思ったので、『僕なりに彼の個人史を考えます』と監督にお伝えしたところ、監督も快く認めてくださいました」と言い、「僕なりに考えたリュ・ジンソクの個人史を根幹にして演技に臨みました」と、未曾有のバイオテロを引き起こした人物の秘かな役作りを打ち明けた。また、「リュ・ジンソク本人は自分がしている行動をテロとは思っていなかったと思うんです」とも言う。「本人にとっては、神聖な浄化作業のようなもの、と頭の中でセッティングをして行動に及んだと思います。ですから、スミンという少女は自分にとって邪魔になる存在だと思ったはずなんです。これから神聖なことをするけれども、スミンが知ってしまったら失敗する恐れがある。だから彼にとっては邪魔者になるわけで、だからこそ、スミンが乗る飛行機のチケットを買うことになったと思います」と分析。「それについてはおそらく、罪悪感は感じていなかったと思うんですね」と続け、「罪悪感があったら、あのような行動はできなかったと思いますし、スミンについてはそのときにすでに犠牲者の1人だと思っていたはず。リュ・ジンソクには、もとから罪悪感などなかったのです」と話す。その穏やかな語り口とは打って変わって、これまでのイメージを覆すようなキャラクターを怪演したイム・シワンは、第31回釜日映画賞で助演男優賞を受賞、第43回青龍映画賞でも助演男優賞ノミネートなど、大きな反響を得ている。彼の新境地といえる役どころを、スクリーンで確かめてみてほしい。『非常宣言』は2023年1月6日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:非常宣言 2023年1月6日より全国にて公開© 2022 showbox and MAGNUM9 ALL RIGHTS RESERVED.
2023年01月03日竹田優哉監督『暮れる』は、“真実の映画”だ。映画監督への登竜門と呼ばれる自主映画のコンペティション、ぴあフィルムフェスティバルの「PFFアワード」は、1977年から続く歴史の中で、黒沢清監督や諏訪敦彦監督など日本映画界を牽引する映画監督を数多く輩出してきた。今年開催されたPFFアワード2022で京都会場のグランプリ「京都観客賞」を受賞したのが『暮れる』だ。主人公は祖母と愛犬と暮らす無職の青年。将来への不安を抱えながら静かな日常をおくっている。ある日彼は犬の散歩中に原因不明の腹痛に襲われ、犬のリードを離してしまう。迷子になってしまった犬を探して辿り着いた自然の中で、彼はキャンプ中の男性と出会い、そこで一夜を過ごすことになる。痛みは、湖の水面や火の音と同じように、全てリズムなのだ。少し掴みづらいリズムもあるというだけだ。世界に隠された優しい真実を見せてくれた竹田監督は、どのような眼差しで世界を見つめ、映画にしたのだろうか。竹田監督が本作に込めた思いを伺った。――『暮れる』を製作した経緯を教えてください。大学院で長期間留学に行く予定だったんですが、コロナで中止になってしまって1年間ほど空き時間ができたというのが大きな理由です。どうせなら何かやろうと思って、友達と2人でアイディアを発表する会を立ち上げました。そのとき僕の頭の中にあったのが『暮れる』のような映画をつくることでした。その会を開いていた場所が友達の家族が所有していた山の近くにある空き家だったんですが、そこの環境がすごく良くて、この場所で友達と一緒に映画をつくりたいという思いが徐々に湧き、プロットを書き始めました。そのとき一緒に会をやっていた友達が『暮れる』の主演の子です。スタッフも大学の後輩や先輩や友達などを集めて撮りました。――『暮れる』は少し俯瞰的な視点から日常を描いているように感じました。そこは意識されていますか?映画の視点というのは常に意識しています。ある映画監督から、「監督の重要な仕事のひとつは、カメラポジションを最良の位置に持ってくることだ」という言葉をいただいたことがあります。それから「最良のカメラポジション」ってなんだろう…とずっと考えていました。僕は登場人物の主観やモノの肌触りを感じるような作品が好きだったので、当初は人間の目線に近い画角を意識して撮ろうと考えていました。だけど同時に、必要以上に物語に入り込みたくないという気持ちもありました。だから、手持ちカメラなどとは別のやり方で、普段感じていることを映画で表現してみようと思いました。脚本を書いたのは僕ですが、それに必要以上に縛られるとわざとらしくなってしまいます。そうならないために今回使った手法は、リハーサルを繰り返して、セリフを役者が言いやすいように変えたり、役者の普段の立ち振る舞いをもとに脚本を考えたりすることでした。撮影もどこからか眺めているような映像を目指してつくりました。――葛藤の末に生まれた視点だったのですね。PFFアワードで入選したことはやはり嬉しかったですか?めっちゃ嬉しかったです(笑)。自分が考えていることを自分なりに映画にしたら、10人中9人はつまらないと言うけど、1人くらいの心には届くんじゃないかなという期待はありました。PFFアワードの審査員の中にそういう方が1人くらいいたら、もしかしたら…と思っていたら、そのもしかしたら起きました(笑)。積極的に賞をとりにいった作品ではなかったのですが、せっかく本気でつくった映画なので、誰かに届いてほしいという思いはありました。だから入選したときは本当に嬉しかったです。――主人公が月に一度襲われる原因不明の腹痛や迷子になってしまう犬など、印象的な描写がありますが、これは竹田監督の経験に基づいたものでしょうか?腹痛は僕自身の経験です。人はコントロールできない何かとどういう風に折り合いをつけていくのかということにずっと興味がありました。それを考えているときに映画づくりでピックアップしたのが、まず自分にとって身近な腹痛、つまり身体です。犬や自然というのも、人間のコントロールから外れてしまう存在として入れました。――どうしてコントロールできない存在との関係性に興味を持ったのですか?僕はコントロールできないものとうまく折り合いをつけることができないから、興味を持ったんです。うまく生きていくことができないなとずっと思っていました。たぶんそういう人はたくさんいると思うんですけど、そういう人たちの中でもすごく楽しそうに生きている人はいるじゃないですか。彼らはどうやって楽しく生きているんだろうというのを探っていくと、やっぱり彼らなりの工夫がたくさんあることがわかりました。僕も折り合いをつけて楽しく暮らしていきたいので、そのためにまず人の生き方を観察したいという思いがありました。大学院ではそういうことを研究していました。――主人公の青年が歌う開放的なシーンがありましたが、あれは折り合いのつけ方のひとつでしょうか?あれは単純に、自己主張が苦手な青年がきっかけを与えられたことで自分を表出するというシーンを撮りたかったんです。でも、言われてみれば折り合いのひとつかもしれませんね。主演の子は歌がすごくうまかったので、これを活かさない手はない、と思っていました。もし彼が走るのが得意だったら、走らせていたかもしれないですね(笑)。――竹田監督の映画観についてお聞きしたいのですが、竹田監督にとって映画はどのような存在ですか?映画は僕にとって一番馴染みのあるメディアですし、元気をもらえたり、自分の人生を見つめ直すきっかけになったりもします。でも映像をつくる一番の理由は、考えていることを言葉でうまく伝えられないからだと思います。言葉をうまく操ることができなくても、映像だったらできそうだなと思うんです。僕はどこか自分の気持ちを隠してしまう癖を持っているので、それと向き合うためにも映画づくりが必要でした。――最後に、『暮れる』を通してどのようなメッセージを伝えたいですか?あえて言うとすれば、「みんないろいろ背負っていると思うけど、大丈夫。そのまま生きていけばいい」ということかもしれません。でも僕は、何かメッセージを伝えたいというよりは、ひとつの自律した世界のような映画を生み出したいという気持ちの方が強いです。映画を観終わったあとも、映画の世界や人物が動いているのではないかと思えるような映画をつくりたいです。そんな映画を観ると、たぶん自分を見つめ直すきっかけになるんじゃないかなと思います。僕自身、そうやって今まで映画に救われてきました。『暮れる』も、別の誰かの人生を見ることで自分の人生を考えなおす鏡のような存在になればいいなという思いでつくりました。今後もそのような映画はつくっていきたいです。そして、何かで悩んでいる人たちの考えるきっかけになってくれたら嬉しいです。「PFFアワード2022」は2023年1月13日(金)まで「スカパー!番組配信」にて配信中。※視聴には、スカパー!のいずれかの有料チャンネル、プラン・セット(一部有料PPS放送を除く)のご契約が必要です。(text:cinemacafe.net)■関連作品:【映画祭】ぴあフィルムフェスティバル 2013年9月14日〜20日、渋谷シネクイントにて開催
2022年12月27日名は体を表すというが、俳優・三浦透子はそのことわざをまさに地でいくようだった。落ち着きを払いながらも、朗らかに受け答えする表情は透明感にあふれており、その思考はクリアで潔く深い。2002年、5歳でデビューを飾ってから芸能生活は今年で20年となる。2021年に公開され、第45回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』で、三浦さんの名前は全国ばかりか世界に知れ渡り、さらに注目を集めるようになった。現在、出演中のドラマ「エルピス-希望、あるいは災い-」では物語のキーとなる大山さくらを演じており、かと思えば、ドラマ「すべて忘れてしまうから」ではエンディング曲を歌うアーティストのひとりとして参加したりと、我々は気付けば三浦さんを目にしている。12月16日には初主演映画『そばかす』も公開され、彼女のキャリアは、ひとつのピークとなるであろうフェーズを迎えている。この2022年は、三浦さんにとってどんな1年だったのか。躍進を続ける今の心境、気になる現在地を聞いた。「まず、1回はやってみよう」新しいことに触れた1年――これまでたくさんの作品に出演されていますが、2022年はさらに様々なところで三浦さんを目にする機会が多かった印象です。ご自身にとって、2022年はどんな年でしたか?本当に「よく見るね」と言っていただく機会が増えた年、という感覚です。自分としてはお休みもありましたし、特別ぐんとお仕事が増えたとか、忙しくなったという感じでもなかったんです。ただ、新しいことに触れる機会のあった年だったな、とは思います。――新しいこととは、どのような内容ですか?これまでは割と映画メインにやってきていて、『ドライブ・マイ・カー』以降、今年はドラマを続けてやらせてもらったり、ミュージカルに挑戦してみたりということをしました。違うフィールドとの人との出会いを含めて、新しいことに触れた1年だったように思います。――今後ますますその幅を広げていきたいのか、もしくはその中から突き詰めていきたいのか、どのような気持ちでいますか?幅を広げたい欲はそんなにないんですが、「まず、1回はやってみよう」と思っているんですよね、やったことがないことは。そういう機会の多かった1年だとは思うんですけど、その上で自分がやりたいことはなんなのか、できないなと諦められることなのか、できるようになろうと頑張りたいことなのか…みたいなことも含めて、この1年を振り返って整理して次の年を始められたらいいのかなと思っています。――「1回はやってみよう」的なことは何に置いてもそうですか?そうですね、はい。「1回は食べてみよう」というのはあります(笑)。――毎日スケジュールもびっしりだと思うのですが、どのように気分転換をしていますか?気分転換しなきゃいけないような瞬間を、なるべく仕事の中に作らないようにしようと思っているんです。こちら(現場)がオン・家に帰るとオフ、みたいな感覚を持たなくて済むようにしたいな、という考え方でやっています。もちろん完璧にできるわけではないですし、難しいんですけど…。どこかでちゃんと他人の評価と距離を取ろうとしているんです。周りの価値基準とは別にちゃんと自分で自分の価値を決めることは、こういう仕事をしているとどこか難しさもあると思うんですね。やっぱり見られる人がいる仕事ですし、誰かに求められて生まれる需要なので。だからこそ、より強く自分が何者か、自分の幸せは何かを考えることは意識しないといけないな、と。そうしたら、人前に出る自分、その価値基準の中で生きる自分のオンみたいな部分を作ることからちょっと開放されるのかな、とは思いますね。――キャリアも長いですが、デビューしてどれくらいのタイミングから今のような考えになったんでしょうか?徐々に、徐々に、だと思います。子供の頃は役者としての自意識みたいなものはそんなになかったですし、とにかく行った現場で相手の方に求められることに応えることを頑張ってきました。でも、あるときそれに矛盾が生じてくるわけですよね。この前の現場では「いいね」と言われたことを次の現場でもやってみると、「いや、今回はそれじゃない」と言われる。それに応えていくのも当然この仕事のひとつではあると思うんですけど、それを繰り返しているときに、自分というものがなくなっていくような感覚も同時にあって…。自分は誰に求められたいのか、自分はどういうものを提示したいのかも、同時に考える必要があるんだなということは、やりながら徐々に感じていたところです。――自分がなくなっていくような、わからなくなっていくような感覚は、俳優業でない仕事でも、どんな仕事をしている人でも共通してわかる気持ちかもしれません。もちろん求められることに応えるということだって、ひとつのプロフェッショナルなあり方だと思いますし、誰にでもできることではないので、それが間違いだということではないんです。ただ、私はそれだと自分がなくなっていっちゃうんじゃないかと葛藤したので、やっぱりそこは何か考えなくちゃいけないなと思ったんですよね。――お話を伺っていて、三浦さんは感覚と言語がきちんと結びついていて驚いています。考えを整理してお話することが上手なんですね。いえいえ、全然!まだまだですが、それも日々こうやって言語化する機会をいただいているから鍛えられてきたことだと思うんです。本当に自分と向き合う時間になります、こうやってしゃべるときって。「彼女の一番の理解者になりたい」作品に出会えた喜び――2022年のフィナーレを飾る映画『そばかす』は、恋愛をしたことがなく、恋愛感情を持ったことがない蘇畑佳純の物語です。主人公の佳純を演じる三浦さんは、どんなところに惹かれてお引き受けになったんですか?『そばかす』の成り立ちとして、作品を作る際「アロマンティック・アセクシャル(※)を主人公にしよう」ということで制作は始まりました。今、多様化が進んでいったり、そういうことに対していろいろな扉を開こうとしている人たちがいる中で、こうして“映画”という芸術を通しても、アロマンティック・アセクシャルというセクシャリティを知ってもらうきっかけにもなると思いました。でも、そうしたセクシャリティの人ということだけじゃない、いろいろと「マイノリティなんじゃないか」と感じたことのある人の心の葛藤を受け入れてくれる温かさや、そういうものに触れるような機会になる作品なんです。今作ることにすごく意味があることなんじゃないかなと純粋に思ったところが、一番大きいですかね。――本作は佳純の妹が「レズビアン」という言い方をしたり、佳純の同僚が「ゲイ」という言葉を口にしたりしますが、「アセクシャル」という言葉自体は出てこないですよね。そうですよね、はい。――明言しないが、だからこそ分かったり感じられるところがあり、そうした良さみたいなものがにじみ出ている気がしました。そのワードを映画の中で使うかどうかは、原案のアサダさん含め、玉田さん(監督)もすごく考えたと思うんです。難しいものなんですよね、自認するということも。明言しないリアリティというか、佳純自身も自分がそうなのかどうかが断定できなかったり、葛藤の中にいることも含めて、リアルに表現できますし。おっしゃっていただいた妹が「レズビアンなんでしょ」と佳純に言うシーン、それは「言ってくれたら、私たちはちゃんとあなたのことをわかってあげられるのに」という、ある種、妹からの優しさゆえの言葉なんですよね。けど、それ自体、相手がわかる形で自分の何かを提示しなくちゃいけないのか、という問題も含んでいるといいますか。複雑で自分の中でもやもやしているものを、相手のために明確にしてやる必要は別にないんじゃないかなとも思うんですよね。説明しなくてはいけないものではないし、定まらないものはそのままにしておいてもいいんじゃないかな、ということも同時にすごく感じていて。明言しないというところには、そういう意味もあると思います。――『そばかす』が三浦さんにとっての初主演作になります。どのような思いを持ちましたか?自分自身も今まで世間の常識や、当たり前とのギャップというかズレを感じたこと、悩んだことがあったりしたんです。「何でみんなができることが、自分はできないんだろう?」と、自分ではそういうことを感じてきた側の人間だと思っています。この脚本を読んだとき、ありのままの自分を自分自身で大切にできて、そういう自分のことをわかってくれる人が当たり前のようにいるんだって信じられる、そういう社会みたいなものを求めている自分がいたと気づいたんです。自分自身が、すごくこの脚本を読んで救われる部分があったというか…。こういう物語を求めている人は、きっといるんじゃないかと自分も思ったし、それを伝える側になれることも、私としては「ああ、私のもとにこの脚本が届いてくれてありがとう」という気持ちにすごくなったんです。不思議な感覚なんですけど、私が彼女の一番の理解者になりたいとすごく思ったというか。そういう気持ちで臨める、向き合える役に出会える、そういう作品に出会えること自体がとても幸せなことですし、それが皆さんの目に触れる最初の私の主演作として残ることがすごく恵まれているなと思います。――本当に、そうですね。ありがとうございました。最後に、佳純はタバコを一服する海岸沿いというお気に入りの場所がありましたが、三浦さんにとっても心安らげるお気に入り場所はありますか?えっと…家、ですね(笑)。ひとりでベッドにいるときが一番幸せです。(※)アロマンティック…恋愛的指向の一つで他者に恋愛感情を抱かないこと/アセクシャル…性的指向の一つで他者に性的に惹かれないこと(text:赤山恭子/photo:Maho Korogi)■関連作品:そばかす 2022年12月16日より新宿武蔵野館ほか全国にて公開©2022「そばかす」製作委員会
2022年12月16日静寂の夜につんざく鳥の啼き声。その音に反応し、虚空を見つめるひとりの女。彼女を少し遠くから見つめる男――映画『夜、鳥たちが啼く』においての印象的な1シーンだ。言葉はない。たたずまいと表情だけで、雄弁なほどに心情を訴えてくる。役に身を投じた山田裕貴と松本まりかによる渾身の表現は、観客の心を何度も揺さぶり続けた。物語は、同棲していた彼女に出て行かれ、作家業もふるわず人生を諦めかけた慎一(山田さん)のもとに、シングルマザーの裕子(松本さん)がやってくるところから始まる。定住先が決まるまで、息子アキラ(森優理斗)と仮住まいをさせてもらう裕子は母屋に、家主の慎一は仕事部屋として使っている離れで生活する。恋人でも家族でもない、友人と呼ぶにはいささか複雑な関係性の3人。傷を抱えた彼らが不器用にコミュニケーションを取り、ともに時間を過ごすことで癒やしを得て、少しだけ自分をゆるせるようになっていく。現場で長い時間を過ごした山田さん・松本さんにとって、当時のタイミングでふたりが共演し撮影することは“救いの時間”だったという。というのも、ここ数年の彼らと言えば爆発的に知名度が上がり、多忙やプレッシャーのあまり自分を追い込むことも多かったはずだ。同じような経験を同じ時期にして感じていたふたりだったからこそ、互いを通して、役を通して、自分を見つめるような時間が助けになっていった。山田さんと松本さんへの単独インタビューでは、当時の心境や互いへの思について、じっくり聞かせてもらった。言葉がなくても理解し合える関係――『夜、鳥たちが啼く』を観ると、山田さんと松本さん以外に慎一と裕子は考えられないと思ってしまいます。共演経験も多くもともと信頼関係もあったでしょうが、「山田さんだったらから」「松本さんだったから」ここまでできた、という気持ちはベースにあったんでしょうか?山田:僕はめちゃくちゃありました。まりかさんが、僕のことを本当に理解してくださっていました。それは決して表面的なものではなく、マインド的な面においてのものです。僕が考えに対して「あっそれわかる!そうだよね」と共感をしてくださって、5段階で言えば多分5ないし4くらいに達しているんじゃないかと思います。松本:アハハ。――それは何か言葉で確かめ合ったりしなくても、わかるものというか。山田:そんな多くを話したわけではなく…たぶん感じてきたこと、思っていること、いろいろなことが一緒なんだろうなと思うんです。そういうことが、今回、1対1でがーっとやる中での安心感としてありました。松本:そうだよね。『夜鳥』の現場に入る頃、私はとにかくいろいろな仕事をしすぎて何も考えられないような状態でした。「何が楽しかったんだっけ?」、「何のためにやってたんだっけ?」となっていて、今思えば極限状態だったというか。プライベートで誰かに言うこともできなかったときに、初日、山田くんと会って、「えっ…!自分がいた…!」とびっくりしたんです。――極限状態の松本さんと同じような感じだと、すぐにわかったと?松本:もう、(自分と)同じ目をしていたので。喋ったわけでもない。けど同じ境遇にいたのがすぐわかりました。すごく悩んでいたし、フラストレーションも抱えていたし、ものすごく忙しいし、隙間ないし…という。これはタイミングだと思うんですけど、「ホリデイラブ」の撮影では、お互い違ったんですよ。あのあと、いきなり忙しくなったでしょ?山田:うん、うん。松本:その感じもすごく似ていて。境遇、タイミング、目が同じ。山田くんを見て、自分がいた感じがしたんです。それは「仲間だよね?同士だよね?」ということじゃなくて。山田くんが言った「理解する」というか、彼のことを理解するというよりは自分のことを見ているようで、なんか理解できる感覚でした。山田:本当にそうです。まりかさんに「大丈夫?」と言われるんですけど、本当に心配されている音と顔をしているんですよ。友達に「ねぇ、裕貴大丈夫?」と言われるのとは、違う意味を持つというか。――同じような経験を同じ時期にしている方の「大丈夫?」は、心に沁みる度合いが違うんですね。山田:分かってくれているからこその「大丈夫?」なんです。松本:私、普段「大丈夫?」とあまり声を掛けないんです。でも、山田くんは見る度に「大丈夫?」って。生存確認じゃないけど、自分にも言っているような感じなんです。何もできないけど、しないけど、彼にかける「大丈夫?」だけは人と違う。山田:うんうん。経験した人の「大丈夫」というのが伝わってくる感じでした。――慎一と裕子が似た者同士のように、おふたりも。松本:そうですね。やっぱり山田くんだったからこそ、本当に慎一と裕子みたいな似た者同士(になれた)。足りないかけらをものすごく欲している、でもどうすればいいか分からない、みたいな状況がふたりともリンクしていました。山田:例えば、この作品にはラブシーンもあるじゃないですか。本来、すごく気を遣うはずなんですけど、リラックスして臨むことができる不思議さがあったんです。普段はカットがかかったら、準備するまで1回離れたりしますけど、ずっとその場にいて空気感を保つことができました。まりかさんは本当に「すげえな」と。安心感があって、とても助けられました。松本:ラブシーンのときも触れていないと不安というか、どうしていいかわからない、触っている安心感が本能的に出てきた感じがありました。その感覚が作品に映っていたと思うので、それがなんか良かったな~って。コミュニケーションは「受け入れてやってみよう」――同じような境遇の中、再会して作品をやるタイミングは、すごく稀な経験だと感じます。撮影現場でのその時間は、おふたりにとってある種、救いというか癒やしの時間にもなっていたんでしょうか?山田:まりかさん、どうですか?松本:私はめちゃくちゃありました。“山田裕貴”という存在がいてくれたことに、すごい救われた感じがしたんです。やっと息が吸えたというか。…こんなことを言っていいのかな、言いますけど(笑)、自分の本当の言葉をSNSにぶちまけたくても、ニュースになってしまう。有難いことではあるのですが。けど、そうした理解できないことを彼には全部言えたというか、言わなくても「ああ、分かってるなあ」という感覚があって、私はすごく救われましたね。山田:そうだったんですね。僕はこれが「すげぇタイミングだな」と思ったのは後からだったんですよ。松本:そうなんだ!山田:何なら今改めて話すことで、すごく感じています。僕は、自然にその時間が大変という感情や思いを一切感じずに作品ができていたのが、すごく不思議だったんです。だからこそ、「あぁ、まりかさんだったからだ」、「まりかさんのそのタイミングだったからだ」と思いました。だから、本当に僕も救われていたと今思い返してみてすごく感じます。大変だと感じなかった分、あのときは救われてるとすら感じずに、その時間を楽しくいることができました。――慎一は「君が俺を好きなんだからわかってほしい」、「愛しているんだからわかってほしい」という強い思いを前の恋人に持ちぶつけていました。裕子に関しては、詳細の描写はないものの、元夫へ言いたいことを伝えないまま離れた印象です。近しい人だから「わかってくれるだろう」と思ってしまうことはままあることですが、おふたりは特に親しい人とのコミュニケーションにおいて、意識していることはありますか?松本:あの、、、実は、この数年自分のプライベートはないものと割り切っていて、プライベートで誰かに会おうなんて思わないというか(笑)なので、友達とも家族ともほとんど会わない。そんな中で、私のプライベートと言ったら現場の女性マネージャーさんなんです。365日中、360日ぐらいずーっと一緒にいるような感覚で(笑)。最初、彼女は新人さんで入ってきて私のマネージャーになった人。そうしたらそのうちふたりが急に忙しくなって、忙しい状況は私も新人&彼女も新人。訳が分からない中でやってきました。ずっと一緒にいると、細かいことですれ違うときもあるじゃないですか。それをどう許容したり、理解してやっていくかで、諦めたり逃げたりせずに受け入れてやってみようと思ったんです。そうしていくうちに、彼女のことをすごく好きになって、今は本当に信頼している存在になりました。私はそのマネージャーさんとの関係性で日々学んだんですよね。今では本当に阿吽の呼吸で、ああ大好きだなあって。…大好きとか初めて言いました。やだ、恥ずかしい(笑)。山田:今の話、聞き入っちゃいました。現場で一緒だったとき、傍から見ていても、おふたりの連携がそう見えるなと感じていたんですよね。――はじめから100%の関係性はなくて、お互いに歩み寄ったり理解し合う努力をすることで信頼関係も築いていくものだと、松本さんが実感されているんですね。山田さんはいかがですか?コミュニケーション。山田:まりかさんの話をすごく聞き入っちゃってたから、あまり自分について考えてなかった(笑)。うーん…何だろう。…親だろうが、どれだけ長いこといる友達だろうが、「良いんじゃない」と言うことですかね。――受け入れるということでしょうか?山田:はい。決断や生き方や考えについて、僕の「いやいや、それはこうだろ?」と押し付けてしまうようなことは言わないし、思わないです。基本的には「そうだよね」と受け入れて、「困ったときは言ってね」という感じです。僕はたぶん、どんな人でもそうかもしれない。頼られたら返しますし、頼られない、頼られるまでは何も言わない感じです。…それはたぶん僕も放っておいてもらいたいからだな、きっと(笑)。(text:赤山恭子/photo:Maho Korogi)■関連作品:夜、鳥たちが啼く 2022年12月9日より新宿ピカデリーほかにて公開© 2022 クロックワークス
2022年12月06日ベビーカレンダーは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により各地で立ち会い出産や面会が制限されているなか、これから出産を迎える方の心の準備としてご覧いただくための出産ドキュメンタリー動画を公開中です! 「感動した」「勇気をもらった」というコメントが続々と届いています! 出産の奇跡を目の当たりにした方から、感動の声が続々!ベビーカレンダーでは、公式YouTubeチャンネルにて33歳ママの通常分娩での出産に密着したドキュメンタリー動画を公開中です。新型コロナウイルス感染の影響から、立ち会いでの出産が制限され、現在でもひとりで分娩に臨む産婦さんが多くいます。今回は、厳しい感染対策を実施するレディースクリニックで、小さな命が生まれた瞬間を動画におさめました。 コロナ禍のひとりきりで臨むリアルな出産シーンを見た視聴者さんから、「これから出産予定なので勇気をもらった!」「母ってすごい。感動しました!」という声が続々と届いています。 立ち会いなしでひとりきりで臨んだ初の出産…今回、茨城県「なないろレディースクリニック」協力のもと、1人のママの出産に密着させていただきました。 コロナ禍での妊娠、ひとりきりで臨む出産への不安、恐怖心など、さまざまな思いを抱えながらの出産当日。 LDR(陣痛・分娩・回復室)に入室してから、ひとり陣痛に耐えます。あまりの痛みに度々「痛い!」という声が漏れます。 「私の病院も立ち会い面会禁止で心細すぎるけど、この動画見てひとりぼっちでも頑張ろうと思った」「私も立ち会いできないので、不安だったんですが、この動画で勇気もらいました!」と、同じようにひとりきりでの出産を控える妊婦さんからのコメントが相次ぎました。 孤独な痛みと闘う産婦さんを助産師さんが全力サポート 初めて経験する痛みに不安なときも、助産師さんの存在が産婦さんを支えます。 助産師さんに腰をさすってもらい、呼吸を整えながら子宮口が全開大になるのを待ちます。 偶然、同じ病院で出産したという方からは、「助産師さんたちが素敵な方ばかりで、思い出に残るお産にしていただけました」「メインで介助してもらった助産師さんがいらっしゃって感動!助産師さん、神でした」というコメントも! 掛け声に合わせていきみスタート 子宮口が全開になり、本格的ないきみがスタート。助産師さんたちが声をかけながらお産が進んでいきます。 これから出産予定の方からは、「赤ちゃんの頭が見えて、産まれて来るシーンを見た瞬間、涙が溢れてきました!」「本当に出産は神秘的で奇跡だと思いました」という感動の声が集まりました。 経産婦さんの中には、「本当に出産は命懸け。いきみ逃がしの呼吸やいきみ中とか、まるで自分を見ているようでした」「わが子もこんな風に産まれてきたのかと感動して、涙が止まらなくなりました」と、ご自身の出産シーンを振り返る方たちも! ようやく会えた愛娘…「出てきた瞬間、すごく感動しました」 「想像以上にしんどかったけど、無事に生まれてきてくれて本当に良かった」と話すママ。立ち会えなかったパパには、テレビ電話で報告しました。離れていても気持ちはつながったまま。生まれたばかりの愛娘をスマホ越しに見たパパは、「本当にお疲れさま」とママに優しく労いの言葉をかけていました。 コメント欄には、温かいメッセージで埋め尽くされていました! 「コロナ禍で何かと不安が多く気持ちも落ち込みがちでしたが、お母さんと赤ちゃんの頑張りに感動して号泣……私も頑張ろう‼️と勇気をもらいました」 「出産が終わったママの優しい顔を見て、涙が出ました」 「産まれてきてくれた娘さんに感謝の気持ちで痛みも吹っ飛びますよね。本当におめでとうございます!」 コロナ禍での妊娠、立ち会いなしでの出産は、特に不安や恐怖心を感じてしまいますよね。そんな方たちからの「勇気をもらった」「赤ちゃんに会うために自分も頑張ろう!」といった、前向きなコメントが多かったのが印象的でした! これからママになる方たちへ、この動画を通じてたくさんのエールが届きますように。 本編はぜひ動画からチェックしてみてくださいね! <茨城県 なないろレディースクリニック 黒田院長>夕方に陣痛が始まってLDRに入室し、日が変わったころからスムーズにお産が進行しました。初産の方ですが、経過は順調で、お一人でよく頑張ったと思います。当院にかかっている産婦さんで30人ほどコロナウイルスに感染された方がいましたが、そのうち2人は分娩直前だったので他施設での帝王切開になりました。その他の産婦さんたちは無事に回復し、全員元気に当院で出産されています。コロナ禍で不安に思われている妊婦さんはいっぱいおられると思いますけれど、「赤ちゃんに会うために頑張るんだ」という気持ちで出産をポジティブに捉えてほしいですね。スタッフがそばに寄り添って旦那さんの分までサポートしますので、一緒に乗り切っていただければと思います。 <ベビーカレンダー編集長 二階堂美和>新型コロナウイルスの感染症対策のため両親学級や立ち会い出産などが依然として制限されている病院も多く、妊婦さんにとっては物理的・精神的な負担が大きくなっています。私たち編集部も出産を控えているママたちから不安の声をよく耳にしています。実際にパパや家族と離れてひとりきりで産むというのはどのような心算が必要なのでしょうか?これから出産を控えているママやパパたちのために、コロナ禍での出産のリアルをお届けしたい! そんな想いから、今回、ひとりで出産に臨む妊婦さんの陣痛から出産までの一部始終に密着させていただきました。出産はやはり大変なものではありましたが、妊婦さんが心細くならないようにと、心を配って寄り添い励ます助産師さん、赤ちゃんに少しでも早く会うためにひとりでも気丈に頑張る妊婦さん、テレビ電話越しに喜びを分かち合いママを労うパパ……。私が今回の出産で得られたものは、「どんな状況でも人は強い!」「私たちはコロナなんかに負けない!」という希望でした。立ち会いができないことは、寂しい、つらいことなんかじゃない!この感動を、そして小さな命の誕生の素晴らしさをぜひ皆さんも感じてもらえたら幸いですベビーカレンダーでは、さまざまな出産にフォーカスを当て、一部始終を収めた動画「出産ドキュメンタリーシリーズ」も公開中!
2022年11月30日2009年に公開され、世界興行収入歴代1位(当時)を記録した『アバター』。あれから13年の時を経て、続編となる『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』がいよいよ公開を迎える。前作で、その驚くべき映像技術により映画史に“革命”を起こしたジェームズ・キャメロン監督だが、今回はいったいどんな驚きを観客にもたらしてくれるのか? キャメロン監督を支えるプロデューサーとして活躍するジョン・ランドー氏に話を聞いた。「家族」をテーマに「海の世界」を描く――前作『アバター』は惑星パンドラの“森”を舞台に物語が進んでいきました。今回はタイトルにもあるように“水”が重要な要素となっており、海を舞台に、ジェイクとネイティリ、その子どもたちの“家族”の物語となっているそうですが、このストーリーはどのようなプロセスで作り上げていったのでしょうか?私たちがストーリーについて考え始めたのは2012年以降のことでした。というのも、ジムはいろんな作品に取り掛かっていましたし、休む時間も必要でした。そして充電期間を経て、ジムから出てきたのが1,500ページにもおよぶストーリー、キャラクターに関するメモでした。この時点で、続編はひとつの物語では終わらないなと思ったので、脚本家による3つのチームを組んで、脚本づくりに取り掛かりました。脚本家を集めると、みんな、いろんなアイディアを持ってきてくれるのですが、私たちは「いまの時点ではキミたちのアイディアはいらない。第1作の『アバター』がなぜあんなに成功したのか?それがわかれば、その成功を続編で再現することができる。第1作を見直して、なぜあの作品があんなに成功したかを考えるように」と言いました。そうして、彼らが提出してくれたレポートに目を通したんですが、彼らに1,500ページのジムによるメモを見せて「キミたちが考えてくれたことは、全てこのメモの中にある」と伝えました。その後、脚本家たちとジムは、集まっていろんなアイディアを出し合い、脚本づくりを始めました。脚本家のなかには映画の脚本家だけでなく、小説家、それから「パンドラペディア(=惑星パンドラに関するWikipedia)」のライターもいました。脚本家とジムが集まって5か月で4作分のストーリーができました。それから、それぞれのストーリーに脚本家を割り当てて、各脚本家がジムと一緒に物語の詳細を考えていきました。それが執筆のプロセスです。――“水”をテーマにするというアイディアはどの段階で生まれたのでしょう?「海の世界」を舞台にし「家族」をテーマにすることは、もともとジムのメモにあったものです。自然の存在、そしてそれを大切に守っていこうということは、ジムにとっても私にとっても非常に大切なことです。1作目で「森」について人々の目を開かせました。今回は、なかなか目にすることのできない「水の中の世界」について、人々の目を開かせることができればと考えたんです。――『アバター』と言えば、“青”が非常に印象的です。パンドラに住む人々の皮膚も青ですし、今回も海が舞台ということで、青を使った描写が多く出てきますが、それぞれ青の色味や濃さが異なります。1作目のとき、当初は森林も全て青にしようと思ったんですけど、それでは観客の目にあまりにも“異物”として映りすぎてしまうんじゃないか?ということで、そこから少し色を引いて、リアルに近づけつつ、色をアクセント的に使っていました。パンドラの森の人々は青い皮膚を持っていますが、今回の水の中にすんでいる人々の持つ青い皮膚はまた違う色です。そしてもちろん、海の青も描かれています。ジャック=イヴ・クストー(海洋学者)をはじめ、いろいろな人々が海について書いていますが、ジェームズ・キャメロンも水の中で長い時間を過ごしてきて、海の中で見える色についてよく知っています。その体験をなるべくリアルに再現したいと思いました。深く潜れば潜るほど、太陽の光が届かなくなることで色がなくなっていきます。そういう部分も描きたいと思っていました。進化する「映像表現」と変わらない「劇場での映画体験」――インタビューに先立って行われた、特別映像を交えたプレゼンテーションでも「ぜひ映画館で体験してほしい」と強調されていました。2009年に第1作が公開された頃と比べ、スマホの普及、配信サービスの勃興など映画・映像コンテンツの視聴環境がガラリと変わりました。この変化をどう受け止めていますか?「ニューヨーク・タイムズ」にこんな記事が出ました。「今日、我々が置かれているエンターテインメントの状況を鑑みるに、映画を家で見ることができるようになったことで、映画ビジネスは死ぬだろう」と。ちなみにこれは1983年3月の記事です(笑)。同じことをいまも言えると思います。私たちが取り組んでいることは非常にユニークなことです。配信サービスがあっていいと思いますし、そこから何かを奪おうとは思いません。モバイルで映画を鑑賞するということも同様に何の問題もありません。だけども、劇場で映画を観るという体験は独特のものであり、永遠に存在し続けるものだと思います。音楽ビジネスに置き換えて考えると、「劇場で映画を観る」というのは「ライヴに行く」というのと同じだと思います。ヘッドフォンで音楽を聴くこともできるけど、それはライヴに行くという体験にとって代わるものではありません。「映画づくりには情熱の炎が必要。そのパッションがないならば、映画を作るべきではない」と語るランドー氏。世界的ヒットメーカーが十数年もの間、情熱を注ぎ込み、作り上げた『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』はどんな体験をもたらしてくれるのか?楽しみに待ちたい。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:アバター 2009年12月23日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国にて公開© 2009 Twentieth Century Fox. All rights reservedアバター:ウェイ・オブ・ウォーター 2022年12月16日より全国にて公開© 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
2022年11月25日フローレンス・ピューとハリー・スタイルズが夫婦役を演じたオリヴィア・ワイルド監督の最新作『ドント・ウォーリー・ダーリン』が11月11日(金)より日本公開。この度、物語の舞台となる不穏なユートピア、完璧な街<ビクトリー>に絶対的支配者として君臨するフランク(クリス・パイン)の妻シェリーを演じた、マーベル作品でもお馴染みのジェンマ・チャンのインタビューがシネマカフェに到着した。『ブックスマート卒業前夜のパーティーデビュー』のオリヴィア監督の第2作目となる本作。フローレンス演じるアリスとハリー演じるジャックが暮らす、完璧な生活が保証されたはずの街<ビクトリー>では、“夫は働き、妻は専業主婦でなければならない”、“パーティーには夫婦で参加しなければならない”、“夫の仕事内容を聞いてはいけない”、“街から勝手に出てはいけない”というルールがあった…。「脚本で書かれているテーマが面白く、今の時勢を考えると共感できるものでもありました。とにかく面白いサイコスリラーだと思ったんです。最後どうなるのかが気になって、ページをめくり続けました」とジェンマは語る。オリヴィア監督はもちろん、フローレンスにハリーら「才能豊かな方々と一緒に仕事ができることにやりがいを感じた」ことが出演を決めた一番の理由で、「キャストだけでなく、スタッフの各部門のリーダーも優秀な人たちが集結しているので、一緒に何が創造できるかを見てみたかったんです。撮影はパンデミックの初期に敢行されたので、とても厄介な時期でしたが、みんなで力を合わせて素晴らしいものを作り上げることができました」と自信を込めて語る。「美しいが何か邪悪なものが潜んでいる世界」が見事に作り上げられた「オリヴィアは、この映画に対して独特のビジョンを持っていました。そして徹底的に準備をした上で製作にあたったんです。わたしたちに対しても、美術史についてなど、聴いておいたほうがいいものや読んでおいたほうがいい資料をパッケージにして送ってきました。私はその資料を見ながら、この映画で表現しようとしている世界、そこで描かれている家父長制、その中の女性の役割について考えさせられ、そういうところに一番興味が湧きました」と言う。「また、オリヴィアが撮影監督のマシュー・リバティーク、衣装デザイナーのアリアンヌ・フィリップス、ヘア・メイクのハイメ・リー・マッキントッシュとヘバ・スラスドーターなど、有能なスタッフと一緒に仕事を進める様子も素晴らしかった。舞台裏で活躍するどの部門も力をしっかり集結させることができ、一見したら美しいが何か邪悪なものが潜んでいる世界を作り上げることができました」。「家父長制の中で女性がどのようにして力を発揮するのか」そんな本作で演じているのは、シェリーという一見、従順な妻だ。「シェリーは実はかなり恐ろしい女性だと思います。彼女はフランクの右腕となる女性なのですが、不可解なところもあります。つまり、彼女がどこまで真相を知っていて、フランクがやっていることにどの程度加担しているのかがはっきりしません。そこは私なりの結論を出しつつ演じましたが、映画のなかでは曖昧にしておきたかった。シェリーは力強く、パワフルな女性なんです」と、ジェンマはキャラクターに寄り添う。「そして先ほども触れたように、私は、家父長制の中で女性がどのようにして自らの力を発揮しようとするのかというテーマに惹かれたんです。シェリーは、その抑制の効いた泰然としたところに力強さが宿ります。おもてなしをするときのチャーミングな一面も持ち合わせているんです」。さらに、シェリーというキャラクターを深掘りしていったそうで、「バレエ教室で先生を担当しているところが一つのポイントだと思っていて、そこはすごく気に入っていました」と言い、「バレエは身体を極限までコントロールするダンスですから、シェリーが周りの女性の動きをコントロールする様や、あの抑制された動きとリンクするところがある」とも語る。「シェリーのような立場の女性、そしてその芯を探求するのはとても楽しいことでした。また、権威主義的で独裁的な男性の右腕として活躍した歴史上の女性たちについても調べてみました。誰か一人をモデルにしたわけではないけれど、歴史からインスピレーションを得ているのは確かです」。衝撃的なラスト…「シェリーなりの確固たる意志がある」シェリーたちが暮らす、1950年代を舞台にした“完璧な街”の世界観は、衣装やヘアスタイル、メイクなどからも表現された。「あの時代に飛び込み、アイデアを出しあい、ヘア・メイクのチームとコラボレーションできたのはとても楽しかった。衣装はアリアンヌが担当しましたが、美しいヴィンテージものを着せてくれ、これが役作りにとても効果的でした」と語るジェンマ。「ヘア・メイクは、ハイメが担当で、彼女はカツラをデザインするのがとても上手。今回はソフィア・ローレンなど、往年のハリウッド女優の写真を参考にし、官能的なルックスを狙いました。ルックスはこの映画に登場するキャラクターたちの重要な要素になっています」と明かす。だが、そんなシェリーはとても衝撃的な結末を迎えることになる…。「ラストはかなりショッキングですね。シェリーは、一見クールなようで、実は表面下ではいろいろな欲があったり、いろいろなものを抑圧しているのだろうと解釈しました。そういう意味では、フランクとは釣り合いが取れています。そしてフランクは彼女の行動に不意を突かれるんです。シェリーにはシェリーなりの確固たる意志があるので」とジェンマ。「シェリーの最後のセリフについてはオリヴィアとケイティ(・シルバーマン:脚本)と話し合いました。何パターンか試しながら楽しく試行錯誤しましたが、カタルシス的な瞬間になるように意識しました」と打ち明けた。“夫”クリス・パインは「恐ろしい存在感」本作では、豪華キャスト陣との共演も気になるところ。フローレンスはMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)シリーズ『ブラック・ウィドウ』で知られ、『ダンケルク』以来、久々の本格演技で、ジェンマが出演した『エターナルズ』にサプライズ出演を果たしたハリーにも今後の活躍に期待が高まっている。「ハリーとはすでに『エターナルズ』で共演しているので知り合いでした。今回もいい仕事ぶりを見ることができました。とても直感の冴えた俳優で、フローレンスとのコンビが素晴らしかった。今回の撮影中にさらに仲良くなれたのは嬉しかったですね。フローレンスと共演できたのも楽しかった」とジェンマ。また、夫婦役を演じたクリス・パインについても、「クリスは素晴らしい。彼とも数年前に別の作品で共演していますが、再会できて嬉しかった。素晴らしい才能の持ち主ですし、この役の演技も素晴らしい。とても魅惑的だし、恐ろしい存在感を放っていました!」と語る。最後に日本公開を楽しみにするファンに向け、「日本に行きたくて仕方がないです! まだ訪れたことがなく、いつか行ってみたいとずっと思っていました。桜を見たり、日本食を食べてみたりしたい。日本の文化にはとても親しみを感じるので、チャンスがあれば行きたいと思っています」と日本愛を明かし、「皆様の幸せを祈っています。いつか日本でお会いできることを楽しみにしています」とメッセージを贈ってくれた。『ドント・ウォーリー・ダーリン』は11月11日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ドント・ウォーリー・ダーリン 2022年11月11日より全国にて公開© 2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
2022年11月08日超豪華キャストが集結したデヴィッド・O・ラッセル監督最新作『アムステルダム』が現在公開中。ラッセル監督と3度目のタッグとなったクリスチャン・ベイルが、コロナ禍に一緒に作りあげた今作と主人公のバートというキャラクターや監督との仕事について語った。「僕が演じた医者のバートは、本当に魅力的な男です」とクリスチャン。「彼はとても楽観的です。人生に打ちのめされるはずなのに、惨めな野郎どもの中にあっても喜びを持ち続ける、素晴らしい反抗心を持っている人なんです。そして友情を大切にし、誰もが望むような最高の友人を持っている人物です」と言う。その最高の友人を演じたのは、マーゴット・ロビー(ヴァレリー役)とジョン・デヴィッド・ワシントン(ハロルド役)だ。「2人は素晴らしい才能の持ち主でした。僕たちは、素晴らしいキャストたちにとても恵まれていました。最初はデヴィッド(監督)と僕だけがダイナーに座っているところから始まりました。そして、ボブ(ロバート・デ・ニーロ)が再びデヴィッドと僕に加わってくれたんですが、それは明らかに素晴らしいことでしたね」とふり返る。「僕たちは『アメリカン・ハッスル』で一緒に仕事をしたから。それから、なんということか、素晴らしい俳優たちが続々と集まってきました。中心となる3人の親友だけど、本当に素晴らしいマーゴットに来てもらえました。それからジョン・デヴィッド・ワシントン。デヴィッドはとても独特な仕事の仕方をするんです。彼はとてもユニークで、それが本当に素晴らしかった」と絶賛を贈る。デヴィッド・O・ラッセル監督の「ものすごくユニークなアプローチ」今作は、1930年代にアメリカで実際に起こった出来事をベースにした“ほぼ実話”。この歴史を「もちろん知っていました」とクリスチャン。「完全に衝撃的でした。ロバート・デ・ニーロが演じた元軍人のギルは、権力に対して真実を語り、権力はそれを好まず、そのためすべてが抑圧され葬り去られたのです」と言う。また、脚本が「組み立てられていくのを見た」と明かすクリスチャン。「私とデヴィッド(監督)は、デヴィッドが取り組んでいるさまざまなキャラクターについて話しました。話しているとデヴィッドの頭の中で、それぞれのシーンが出来上がっていくんです。その話を聞いて、彼が影響を受けたものを見て、彼が何を選択するかを見てきました。だから、実際に脚本が書き上がるのを見ましたよ。たぶん、家に14もの脚本があると思うから、まったく違う経験になりました。それは、私たちが経験したすべてのプロセスなのです」。これほどまでに厚い信頼を寄せるラッセル監督とは『ザ・ファイター』(2010)、『アメリカン・ハッスル』(2013)に続いて3度目のタッグだ。「彼は、映画を作り続けられること、そして監督であることにとても感謝しています。そして、彼は物語を語ることができることに喜びを感じています。ものすごくユニークなアプローチで、脚本を撮影するのですが、その後で脚本から完全に離れて、カメラの後ろのテーブルクロスの下や足元、どこかの棚に座り、時には撮影に入り込んでセットの至る所にいます」と撮影秘話が飛び出す。「でも、彼は映画の中のもう一人のキャラクターのようなもので、しゃべりながらセリフを言ったり、人のセリフを変えたりして、生き生きとして誠実でハートフルで、本当に美しくエネルギッシュな環境を作り出しているんです」と、監督自身も楽しんでいる撮影現場の魅力を語った。「骨の髄まで完全にバートが染み込んでいた」「今作を作るのに何年もかかりました。デヴィッドと僕は、この映画を一緒に作り始めたんです。そして僕はアダム・マッケイと『バイス』を作り、それからジェームズ・マンゴールドと『フォードvsフェラーリ』を作りました。その間もデヴィッドと僕はまだこの映画を作っていました。それは本当に素晴らしいことでしたね」とクリスチャン。「なぜなら、バートのことを完全に自分のものにしないといけなかったからです。僕の頭の中には常にバートの存在がありました」と続け、「これだけ長い間一緒にいると、デヴィッドは僕に自由を与えてくれて、『これがキャラクターのアイデアだ。しばらくどこかへ行って(考えて)、それから僕に話してほしい。バートならどうするだろうか?』と相談してくれました。そして僕にさまざまな状況を与えて、『バートはこれにどう反応するだろう?』と聞くんです。映画の撮影を始める時までには、もう骨の髄まで完全にバートが染み込んでいました」と言う。観客は『アムステルダム』から「楽しい時間、うらやましいほどの友情、逆境に立ち向かう喜びと楽観主義、そして素晴らしい歌とダンス」を享受できるとクリスチャンは語る。彼自身にとっても今作は「とても意味のある映画になっている」と言い、「パンデミックの最中に撮影を行いました。仕事に行くのがおかしいと思われるような時も撮影しましたが、それは楽観的な喜びでした」と語る様子はまるでバートのよう。「この映画は、立ち上げから完成まで、私が最も関わった映画です。そして、その旅に私を誘ってくれたデヴィッドに心から感謝しています。そして、今まで出会った中で最も魅力的で、そして愛すべきキャラクターが登場する作品だとも思っています」と愛を込めて語ってくれた。『アムステルダム』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:アムステルダム 2022年10月28日より全国にて公開©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
2022年11月08日フランスに実在するゲイの水球チーム「シャイニー・シュリンプス」をモデルに、アマチュア水球チームの奮闘を描き、本国フランスで大ヒットを記録し、日本でも話題を呼んだ『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』。その続編となる『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』が先日より公開されているが、本作の制作スタッフに“共同プロデューサー”として名を連ねているのが小田寛子氏だ。映画の宣伝・配給などを手がける「株式会社フラッグ」に新たに設立されたグローバルコンテンツ部で働く小田さんだが、学生時代はカナダで映画制作を学び、帰国後は複数の配給会社で主に海外作品の買い付けや配給業務を担当してきた。そんな彼女がなぜフランス映画の共同プロデューサーに…? 映画界の様々な仕事について紹介していく【映画お仕事図鑑】。映画を“作る仕事”と完成した映画を“観客に届ける仕事”という、従来は別々のものだった業務の垣根を飛び越えた、新たな時代の映画のお仕事について話を聞いた。カナダへの映画留学、帰国後の映画業界への就職――学生時代はカナダに留学されて映画制作を学ばれていたそうですね?私は福岡県の北九州の出身なんですが、もともと映画が好きだったものの、周りに映画を仕事にしている人が誰もいなかったんですね。父の影響で洋画が好きだったこともあってか「東京で映画の仕事をしたい」というよりも「海外に行きたい」という思いが強かったんです。ただ、父からは「大学受験から逃げるな」と言われまして…(苦笑)。いったん、地元の大学に入学したんです。たまたま大学の友人で「カナダに留学する」という子がいたんですけど、私が高3の時に「9.11」が起きたこともあって「アメリカに行きたい」と言いづらいこともあったし、当時はカナダドルも安くて、カナダは“ノースハリウッド”と言われてハリウッド映画の撮影が多く行われるようになっていて、留学先としてカナダに注目が集まっていたんです。それで、いったん、ワーキングホリデーでカナダに渡り、気になっていた大学の映画科の夜間コースの試験を受けて、その後その大学の映画科に入学しました。私が入学したのは「Capilano University(キャピラノ大学)」という学校の映画制作学科で、実践的に映画づくりについて勉強をするという感じで、講師も最近まで現役バリバリでしたという撮影監督や助監督の方が多かったです。周りの生徒も「映画理論を学びたい」というより、「映画の現場で働きたい」という人間が多かったですね。ワーホリの期間も含めると、カナダには4年ほどいました。当時、映画の撮影がカナダで行われることが本当に多くて、インターンという形で現場に入らせてもらってアシスタントをやったり、エキストラをやりながら現場を見る機会も多くありました。あとは、学校で短編映画を作る際も、ヒマな時期であれば、講師のツテでプロの方たちが参加してくださったりして「X-ファイル」に入られていたスタッフさんが、私たちの短編のサウンドミックスを担当してくれたりすることもありました。講師の方を含めて“THE 現場”の人たちと触れ合う機会が持てて、留学先として選んで正解だったなと思います。――当時はその後の進路、就職などについてはどのように考えていらしたんでしょうか?映画留学している人間って、みんな「とにかく映画に関わる仕事がしたい」と思ってるし、特に最初は「監督になりたい」って思っている方が多いと思います。1年目に「監督になりたい人?」と聞くと9割くらいの手が上がるけど、3年目くらいになると監督志望者は減ってきて「俺は照明がやりたい」とか「衣装がやりたい」ということで専門の学科に行く人も増えていくんですね。私も途中で「プロデュースをやりたいな」と思うようになりました。脚本に書いてあることを映像にする才能が監督に必要だとすると、それは自分にはないんじゃないか? どちらかと言うと才能がある人を集めて、進める製作のほうが向いてるんじゃないかと思ったんですね。映画学校ってどうしても自分たちで「作る」だけで終わってしまいがちなんです。せいぜい映画祭に出品して…という感じで、カナダ、特にバンクーバーには配給会社が多いわけでもなかったので、作った後にどうしたらいいのか? という部分でフラストレーションがありました。同時に映画学科の留学生の中で唯一の日本人ということもあって、日本の映画業界について周りにすごく質問されることが多かったんですけど、なんせ“北九州→カナダ”なので何もわからない…(苦笑)。加えて、カナダ人であればもらえる助成金システムなどもあるんですが、私はそこにはアクセスできないので、私の“強み”と言えるものを活かせるようにならないといけないと思い、日本に帰ることを決めました。――帰国後、どのように映画業界で働き始めたんでしょうか?東京に出てきたものの、時期的にも一般的な就職活動の時期とはズレていたので、いわゆる就活みたいなことはできず、外配協(外国映画輸入配給協会)に載っている配給会社に片っ端から履歴書を送ったり、電話をしたりして、プレシディオという配給会社にバイトで入社しました。最初は洋画の買い付けをしているチームのアシスタントとして資料を整理したり、作ったりしていました。その後、自分でも買い付けをやらせていただけるようになって、洋画を買ってくるという仕事に加えて、買った後の二次使用権(ビデオグラム権や配信権)をメーカーさんに営業して売るということもやっていました。その後、TSUTAYAでおなじみのCCCグループの会社で、TSUTAYA独占レンタルの映画の買い付け業務などをやって、それから日活に移り、そこでも基本的に買い付けと配給宣伝の進行管理、二次使用権の営業などをやっていました。帰国して働き始めた当初は、いわゆる社会人としての常識や教養が全くない状態で(苦笑)、請求書の書き方や資料を作るのに必死だったんですけど、20代後半になるにつれて、いろいろ変化もありまして。面白いことに、カナダで映画を“作る“ことを学んでいた頃は、作品を“世に出す”ことを勉強したいと思ったんですが、逆に作品を世に送り出すことを仕事でずっとやっていると、今度は「もっと作る側に関わりたい」という思いがまた芽生えてくるんですね。日活に入社する際も、日活は映画を「作る」仕事もしている会社なので、その部分に魅力を感じて入社を決めました。その後、広告代理店の配給レーベル立ち上げの手伝いをしたり、フリーランスで映像制作などにも関わっていたのですが、2018年に現在のフラッグに入社しました。フラッグはずっと映画の宣伝事業をやってきた会社ですが、配給事業への進出や制作事業のグローバル化を考えていて、私も配給だけでなく海外との共同製作に取り組みたいという思いがあり、入社しました。最初はこれまでのような買い付けの仕事や配給、それから共同事業のためのパートナーさんの営業などをメインでやっていましたが、その後、バイリンガルの映像制作スタッフを採用し、現在は買い付け、配給、それから映画だけでなく、海外向けのCMなどを含めた映像制作の仕事をやっています。これまで携わってきた仕事と現在の取り組み――ここまでお話を伺ってきた中で、主にやられてきた海外作品の買い付け、配給・宣伝の仕事で、携わって印象深かった作品や海外とのやり取りでの苦労などがあれば教えてください。私、背が低くて、20代の頃はいまよりも顔立ちが幼いこともあって、海外との打ち合わせの場に行っても「なんでお前が来たんだ?」という扱いを受けることが多かったんですね(苦笑)。無理して高いヒールを履いて、少しでも威圧感を出そうとしたり…(笑)。ただ、私がアシスタントだった当時、同じように向こうでアシスタントをしていた人間が、徐々に決定権を持つ立場になったりとか、年齢を重ねていく中で業界のコミュニティみたいなものが形成されていて、そういう意味で、何かあったら相談できる人間が常にいましたし、働いていて「つらい…」という経験はそこまでないですね。(買い付け予定作品を)取り逃がして、怒られてつらかったりしたことはありましたけど…(笑)。これまで関わった映画で、思い出深い作品はプレシディオ時代に配給に関わった『パラノーマル・アクティビティ』ですね。買い付けたのは当時の上司だったんですけど、急にポスタービジュアルに使用されている写真1枚が送られてきて、ストーリーもほぼわからない状況だったんですけど「これを検討しているから、パートナーを探すための資料を作って」と言われまして…。当時は参照になる作品も(同じようにモキュメンタリー手法を採用した)『ブレアウィッチ・プロジェクト』くらいしかなかったんですよね。最初は「何これ?」という感じだったんですが、公開されて最終的には興行収入が6億円くらいまでいったんですね(※ちなみに制作費はたった135万円!)。買い付けた頃は、まだスピルバーグが絶賛して話題になる前のタイミングだったと思うのですが、当時、会社内での「この映画、絶対に当ててやろう!」という熱気がすごかったんですよね。仕事を始めて、わりと早い時期にあの作品に携わったこともあって、映画をヒットさせようと思ったら、あれくらいの熱量が必要なんだということを教えられましたし、ひとつのトレンドを作ることに関わることができたという経験もすごく大きかったですね。宣伝もいろんなことを試して、社員が全員、常に大量のチラシをカバンに忍ばせていました。休みの日にプライベートで買い物に行ったりして「お仕事は何されてるんですか?」と聞かれたら、よくぞ聞いてくれました! って感じでチラシを渡したり(笑)。熱かったです。あれを買い付けた上司がすごいと思いますし、プレシディオはあの作品の「続編権」を獲得していたんですよね。それでプレシディオの製作・配給による日本版続編として『パラノーマル・アクティビティ 第2章 TOKYO NIGHT』が公開されたんですけど、そういうビジネスセンスに関しても、勉強させてもらいました。もうひとつ、日活時代に関わったインド映画で『きっとうまくいく』のラージクマール・ヒラニ監督の『PK』という作品も思い出深いです。それまでインド映画については全然詳しくなかったんですけど、映画の内容の素晴らしさはもちろん、ヒラニ監督がプロモーションのために来日されたことも、すごく心に残っています。関われたことが誇らしく思える作品です。それまでホラー映画を担当することが多くて、両親に「観に行って」と言っても「疲れる…」とか言われてたんですけど(笑)、あの作品に関しては母が友人から「この映画を配給してくれてありがとう」というお手紙をいただいたり、個人的にも嬉しかったです。ヒラニ監督とは、いまもやりとりをさせていただいていて、一生の友達を得ることができた作品だったなと思います。――ここからさらに、フラッグでの小田さんの現在のお仕事――海外との共同制作作品などについて、詳しくお伺いしていきます。フラッグで新たな部署の設立にも関わられたとのことですが、そのあたりの経緯についても教えてください。ちょうど10月1日から「グローバルコンテンツ部」という部署として始動して、コンテンツを作る過程と世に出す過程をひとつの部署で担うことになりました。映画に関する具体的な業務としては、「日本で撮影をしたい」という企画について、ラインプロデュース(制作進行)のお手伝いをする制作受託の仕事がひとつ。加えて、こちらで企画を立てて、海外のパートナーを探して一緒に映画コンテンツやTV、配信向けのコンテンツを開発するというもの。それから、今回の『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』がまさにそうですが、「こういう企画があるんだけど、日本を舞台にするから一緒にやらないか?」など、既に海外で始動している企画に関して、共同で入らせてもらい、制作の一部や配給を担うというもの。以上の3パターンがメインになります。最初に挙げたラインプロデュース事業に関しては、映画祭などを通じてお話をいただくので、映画は私が窓口になることも多いのですが、実際の制作進行は制作経験が豊富にある社内のバイリンガルスタッフにほぼ任せています。実際に現在、進んでいる企画があるのですが、半分を海外で撮影し、半分を日本で撮影するということで、日本での撮影に関してはスタッフのハイアリング(雇用)から制作まで、こちらで全て手配を行ない、撮影監督とプロデューサーが海外から来るという形になっています。私が今特に力を入れ始めているのは、先ほど挙げた3つのうちの2つ目と3つ目、企画開発の部分や、海外との共同製作作品の配給という部分です。――企画開発を行なった上で、海外のパートナーを探して共同で制作するという業務について詳しく教えてください。いま、やっているのは、フラッグでアイディアを考えて企画を立てた上で、海外の制作会社に「こういう配信向けのドキュメンタリーシリーズを作りたいと考えています」と話を持っていき、そのキャスティングや内容について一緒に企画開発を進めて、配信プラットフォームやTV局などに売り込んでいます。あとは、アイディアベースの映画の企画に関して、海外の脚本家の方を紹介していただいて、脚本開発の段階から一緒に進めていったりするということも少しずつですが、やり始めています。――もともと、カナダで映画制作を学ばれているとはいえ、帰国後に携わっていた「買い付け」や「配給・宣伝」とは全く異なる「企画」「製作」にガッチリと関わられているんですね。そうですね。ただ、海外の映画祭に顔を出して買い付けを行なったり、配給・宣伝をやってきたという点で、いま、どういうクリエイターが話題になっているのか? 社会問題などを含めての映画のトレンドやトーンが世界的にどうなっているのか? ということを吸収しやすいポジションにはいるのかなと思います。実際、海外でもコンテンツの売り買いに関わっていた同世代の人間が、配信プラットフォームに転職したり、プロデューサーとして製作に関わるようになっている例が結構多いんですけど、そういう知識や経験を必要とされているのかなと思います。意外と自然流れでそうなっているのかなというのは感じますね。ただ、そうした試みが許される環境があるというのが非常に大きなことだし、ラッキーだったと思います。企画・製作から配給までを行なう会社というのは、大手以外では決して多くはないですし、会社の規模が大きくなると、どうしても部署ごとのタテ割りの意識が強くなってしまうこともあるのかなと思います。その意味で、いま私たちがやろうとしていることは、すごく大きなチャレンジだなと感じています。――企画開発を進めていく上で、大切にしているのはどんなことですか?英語でも「Trust your gut.」という言い方がありますけど、「自分の直感を信じること」ですかね。日本を扱ったコンテンツで海外の方とやりとりしていると、いまだにステレオタイプな日本をイメージして、推してくる方もいるんですよね。そこに関して、きちんと意見交換をできるパートナーでなければ、組んではいけないなと感じてます。どんなに企画のコンセプトが良くて、キャッチーで面白かったとしても、“価値観”の部分できちんと共通認識を持てるか――「いまの時代にそういう日本を描くべきか?」ということを意見交換できて、リスペクトしてくれるパートナーでなくては一緒に仕事はできないなと思います。逆にこちらが指摘をしたら、意外とあっさりと理解してくださることも多いんです。だからこそ、きちんと意見交換し、価値観のすり合わせをすることが大事だなと思っています。それからもうひとつ、私ひとりでやっているわけではないので、「会社」としていま、どういうアジェンダを持っていて、どういうメッセージを発信していこうと考えているのか? ということは、チームで話し合うことは大事にしています。――そして、グローバルコンテンツ部として、先ほど挙げていただいた業務の3つ目、海外から持ち込まれた企画の共同製作についてもお聞きします。今回、小田さんが共同プロデューサーを務めた『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』がまさにそうした仕事だとのことですが、この作品に参加されることになった経緯について教えてください。この作品は『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』の続編なんですが、1作目はフラッグが初めて買い付けを行なった作品なんですね。この作品を売ってくれたセールスエージェントは、以前から日本との仕事をしている方で、私が「共同製作で一緒に何か作りたい」と思っていることもずっと前から伝えていたんです。1作目がフランスで大ヒットして続編を作るという話になった時、当初は劇中の「ゲイゲームズ」(※主人公たちが参加する実際に開催されているLGBTQ+のスポーツ&文化の祭典)は香港で開催されるという設定だったんです。でもそのセールスエージェントが「日本での開催に変えるから、ヒロコたち、一緒にやらない?」と声をかけてくれたんですね。そこで「やる!」と答えたら、少ししたら脚本が届きました。私も彼にはずっと「一緒に合作をやりたい」と言い続けていたんですけど、彼のほうも、私たちとやりたいと思ってくれたのには理由がありまして。まず“日仏合作”の作品で、ここまで商業的な“ザ・エンタメ!”というタイプの作品やコメディってこれまであまりなかったんですよね。それをやってみたら面白いんじゃないか? と。私たちにとっても、1本目の合作ですから、それなりの規模で公開される海外でインパクトのある面白いことをやりたいという思いもありました。もうひとつ、あちらの製作会社がフラッグと似ていて、普段はCMや映像制作をやったり、広告代理店が主業務で、年に1本だけ映画を作っているという会社なんです。そういう部分、会社の事業内容やスピリットの部分でリンクするところが多いということで、一緒にやりやすいんじゃないかということもありました。――そこで共同製作することになって、どのように進められていったんでしょうか?脚本にも意見がほしいという声をいただいて、脚本内容に関しても、こちらから提案させていただいた部分はありました。もともと、コロナ禍以前にいただいたお話だったので、撮影も当初は日本で行う予定で、実際に脚本の最初と最後は日本が舞台になっていたんです。なので、日本での撮影を含めたファイナンスを組んでいたんですね。その後、コロナ禍となり、それでもギリギリまで粘って、去年の東京オリンピックの開催時期を避ける形で何とか日本で撮影できないか? と奔走していました。それこそ(水球シーンを撮影するために)全国のプールを探し回ったり…。日本以外の配給権をライセンスしてくれたユニバーサルもできれば日本で撮りたいよね、とかなり待ってくれて、去年のアタマの段階で、日本で撮影予定のシーン以外はフランスとウクライナで撮り終えていたんです。でもやはり、海外からの入国制限が緩和されなかったこともあって、8月くらいの段階で難しいということで、10月末にフランスのストラスブールで東京で開催されるゲイゲームスのシーンを撮影することになり、私ともう一人のスタッフがフランスに渡りました。ただ、美術に関しては、こちらでデザイン・制作したものを現地に持っていきました。もともと、日本で撮影する予定だったので、デザインなどに関しては日本でやるつもりでしたし、監督も日本へのリスペクトを大事にしてくださって「日本の美術スタッフとやりたい」とおっしゃってくれたんです。――実際に現地に赴いて、撮影はいかがでしたか?監督が大事にされていたのが、フランスで撮影する客席の様子が「ちゃんと東京ゲイゲームスに見えるか?」という部分でした。「東京ゲイゲームス」が開催されていないので、誰も実際の「東京ゲイゲームス」の客席の様子を想像することはできなかったんですけど(笑)。ただ、2019年に日本でラグビーワールドカップが開催されたので、その時の客席の様子や雰囲気について、監督に写真などを送りました。ちょうど東京オリンピックのおかげで日の丸のハチマキだったり、観戦グッズがたくさん出回っていたので、それをいっぱい買い込んで、現地に持っていきました(笑)。オリンピックにせよワールドカップにしろ、祭典の時って、日本の良さを少し「盛る」部分があるじゃないですか? そういう部分も含めて、日本のスタッフにすごく良いデザインをしていただけて、それをフランスのスタッフもすごく喜んでくれて、良い形でのコラボレーションができたと思います。あと、監督は日本で撮影する予定だった当初からずっと「日本でやるなら、日本のLGBTQ+コミュニティを巻き込んで一緒にやりたい」ということをおっしゃっていたんです。フランスで日本人のドラァグクィーンとして活躍されているMadame WASABI(マダム ワサビ)さんという方がいらっしゃるんですが、その方にDMを送り「こういう映画があるんですが、出ていただけませんか?」とお願いしたところ、作品の内容に共感して下さり、なんとか日程を調整して撮影に参加してくださいました。今、ロシアの反LGBT法のニュースが話題になっていますが、こういう形でタイムリーな作品になってしまったことはとても悔しいです。同時に今この映画を世に出す意義、監督たちの想いを再認識しています。エンタメには自分には関係ないと思いがちなことを自分ごととして捉えるのを手助けする力があると信じています。今後見据える展開と映画業界を志す人へメッセージ――本作以降の今後のお仕事についても教えてください。現在ポストプロダクション中の海外との合作がありまして、エストニアの気鋭の監督の作品です。この作品に関しては、製作出資と配給を担当させていただきます。あとは現在、ヨーロッパとの合作で企画開発中の案件がいくつかあります。――小田さん自身は、今後、どのように映画に携わっていきたいと考えていますか? 将来的な目標などを含めて教えてください。洋画好きとして育ってきたからかもしれませんが、どうしても「洋画」と「邦画」がジャンルとして分けられていて、その壁を感じてしまうことが多いんですね。日本と海外の合作となると、日本が舞台になっていて、日本で撮影をするということだったり、日本人の俳優が出演するということだったりに限られてしまう部分が多いですが、それだけじゃなく、もう少し自然な形で日本と海外が絡んで、物語を伝えるということができないかな? と思っています。これまでとはまた違った形で(海外と)コラボレーションできるんじゃないか? わかりやすく「海外から見た日本」を描くものだけじゃない作品ができないか? そこはチャレンジしていきたいなと思います。地理的な近さや環境も大きいと思いますが、イギリス人とフランス人がコラボすることなんて、ごく当たり前にあるじゃないですか? ストーリーテリングの部分で、もう少し日本と海外でそれができないか? そこは突き詰めていきたいなと思っています。日本人だから日本のストーリーしか伝えちゃいけないということもないし、私が日本人だからって、日本に関わりのあるコンテンツしか作っちゃいけないわけでもないので、そのハードルを下げていきたいなと思います。――最後になりますが、映画業界を志している人に向けて、メッセージをお願いいたします。最近、強く思うことがあって、コロナ禍以前は、映画というものが、社会に絶対的に必要なもか? といったら、あくまでも“プラスアルファ”のものとして捉えていた部分があったと思うんです。特に私の母が看護師として働いていて、わかりやすく社会のためになる仕事をしていたこともあって、エンタメの仕事に対し、ある種の“うしろめたさ”みたいなものを抱いている部分もあったんですよね。でもコロナ禍になって、逆にエンタメって人々の生活に絶対に必要なものなんだなと思えるようになって、いまやっている仕事を誇らしく思う気持ちが強くなりました。日本の環境のせいもあるかもしれないですけど、エンタメ系の仕事に就くって、周りから「え? そっちの仕事行くの?」と思われがちな部分もあるじゃないですか(笑)? でも、いまやエンタメって社会に必要不可欠な存在だと思うし、だからこそ、こういう仕事を志してくださる人がいるのは嬉しいです。もうひとつ感じるのが、この連載インタビューのような、映画の世界の“中”を教えてくれるものが、自分が若い頃にもあったらよかったになぁ…ということ。映画の世界に入ってみて、本当にいろんな仕事があるんだなというのを初めて知りました。私たちが若い頃って、俳優さんや監督、プロデューサーに関する記事はあっても、それ以外の仕事に関する記事って限られたものしかなかったですよね。映画界の中にどういう仕事があるのか? というのを知ることってすごく大事だと思います。買い付けの仕事について知らない方もたくさんいらっしゃると思いますし、配給会社の中にも劇場営業をしている人間もいれば、宣伝を担当する人間もいたり、本当にいろんな仕事があるんですよね。どれだけの仕事があるのかというのを知っておいたほうが、自分にハマる仕事を見つけるきっかけにはなるんじゃないかと思います。――お仕事は楽しいですか?楽しいですね(笑)。いろんなアイディアを持っている才能豊かな監督だったり、自分にはない発想や経験値を持っている人たちと組んで作品を作っていくというのが楽しいですね。今回、フランスチームと一緒に仕事していると、あちらの方たちって本当にケンカするんですよ(笑)。「ケンカが国技だ」みたいなことを言いますけど、みんなでワーッと激しく言い合って、でも終わると「じゃあ、お疲れ!」って感じで、誰も引きずらないんですね(笑)。みんな、良い映画にするために言い合っているし、“ゴール”はきちんと共有できていたので、どんなに激しく言い合っても平気だったし、言いたいことを言って全て出し切るから、ストレスなしで仕事ができたんですよね。なかなかハードではあるんですけど、そういう部分も含めて楽しいですね。(text:Naoki Kurozu)■関連作品:シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ 2022年10月28日より新宿武蔵野間、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国にて公開© 2022 LES IMPRODUCTIBLES - KALY PRODUCTIONS - FLAG - MIRAI PICTURES - LE GALLO FILMS
2022年11月04日クリスチャン・ベイル、ジョン・デヴィッド・ワシントン、マーゴット・ロビーらが豪華共演、デヴィッド・O・ラッセル監督が贈る、ありえないけど“ほぼ実話”の物語『アムステルダム』。異国の地で2人の兵士と出会う看護師にして、戦争の残留品を使った作品を作りあげるアーティストのヴァレリーを演じたマーゴットが、共演者や監督、そして愛すべきヴァレリーというキャラクターについて語った。出番はみんな一緒!「アンサンブルキャストでは珍しいこと」「これほど多くのアンサンブルキャストがいる中でも素晴らしかったことは、みんながほとんどいつも同時に仕事をしていたことです」とマーゴットは話す。「自分の演じるキャラクターの出番がなければたくさんオフの時間がありますが、私たちの多くが、この映画でみんな一緒にすべてのシーンに出ていました。それってアンサンブルキャストでは珍しいことです。いつも誰かと一緒にいることが出来てとても素晴らしかった」という。確かにクリスチャンやジョン・デヴィッドに、ラミ・マレック、アニャ・テイラー=ジョイ、ロバート・デ・ニーロら豪華俳優たちが、多くのシーンで同じ画面に収まっているのは奇跡的ともいえ、本作の大きな魅力となっている。中でもロバート・デ・ニーロや、クリスチャン・ベイルとの共演は「夢が叶ったといえます」とマーゴット。「まさにバケットリスト(死ぬ前にやっておきたいことを書き出したリスト)にいる俳優たち。彼らのどちらかと一緒に仕事を出来る幸運に恵まれることがあるなんて、思ってもみませんでした。ましてや、2人と一緒に同じ映画で共演できるなんて。だから、本当に素晴らしかった」と明かす。特にクリスチャンについては、「私は、彼が非常に真面目な俳優であるというイメージを持っていました。撮影中、決してキャラクターから抜け出すことがないと思っていたんです。だから、彼の演技を見て学ぼうと思っていました」と言う。「私たちがおしゃべりをすることはないだろうと思っていたんです。なぜなら、彼はずっと役になりきっていますから。でも、実はそうじゃありませんでした。撮影の合間、まったくくだらないことについておしゃべりしたりしたんです。彼はとてもフレンドリーでした。明らかな才能があるうえ、とても気さくな人なんです」。そして、デ・ニーロについても「いつも犬を連れていました」と話し、「犬のおかげで、少し親近感が湧きました」と名優との共演を恐縮しながらふり返った。「ヘアメイク、衣装のデザインを通して、自分のキャラクターを見つける」マーゴットが演じたヴァレリーは、1930年代を生きる、戦争のトラウマや家族との確執をアートによって昇華している女性だ。「ヴァレリーにとって衣装は、彼女のアートのもう一つの表現で、彼女の反抗心の表れでもありました。だから、衣装は私にとってとても重要なものでした」とマーゴットは語る。「私は帽子が大好きだから、帽子をかぶりたいと言いました。そして、パイプを吸いたいとも言いました。こういうアイデアがあると、みんな、特にデヴィッド(・O・ラッセル監督)はいつでもコラボレーションを歓迎してくれました。ヘアやメイク、衣装のデザインを通して、自分のキャラクターを見つけることもとても重要なんです」。さらにマーゴットは、ヴァレリーというキャラクターについて「幸運にも、準備をする時間がたっぷりありました」と明かす。「これほど時間をかけてキャラクターの準備をしたことはありません。監督はコラボレーションを好む人で、撮影が始まるずっと前から、このキャラクターや映画について私と話し合いをしてくれました。そこへパンデミックが起きたので、私はヴァレリーにじっくり時間をかけることができたのです。正直言って、時間がありすぎた感じ」だという。「ほかのキャストの代弁をするつもりはないけれど、(時間があったからこそ)私たちはみんな自分たちの一部をキャラクターに入れ込んだと思います。だからカメラを通じてもリアルに見えるんです。そこには個人的な歴史があるから」と、それぞれのキャラクターには俳優たちの一部が投影されていると話す。クリスチャンが演じるバート、ジョン・デヴィッドが演じるハロルドも、おそらくそうなのだ。『アムステルダム』とは「美しくて自由なもの」「バートとハロルドとヴァレリーは、知り合ってから本当に美しい友情を築いています。友だちというのは、自分で選べる家族みたいな存在と私は昔からずっと思っていますが、あの3人の友情はまさしくそういうタイプのものですね」とマーゴットは言う。「ヴァレリーはトラウマに美しさを見い出し、それを使って芸術を作る情熱に人生をかけています。バートやハロルドと彼女は戦争というものすごくトラウマ的な状況下で出会ったけれど、彼女にはそこに美しさを見い出せます。そんな独創的な能力を持っているのです。3人がアムステルダムで過ごしたあの日々は、戦争の恐怖を目の当たりにした彼らが、生きる意味を再び見つけ出すためのものだったんですね。そして不思議なことに、3人とも自分の母国ではないあの街に暮らすことに大きな自由を感じていたんですよ」。『アムステルダム』というタイトルには、深い意味が込められていそうだ。「タイトルはいろいろなことを表していますが、主に登場人物たちの人生の中で、“本当に美しくて自由なものがあった時代”を表しています。私の中で、この映画を作るのもそういった感じだったんです。そして今、私たちはそれを世界と共有しています。それは本当に不思議でエキサイティングなことです」とマーゴットは続ける。「この映画もまた、とても不思議でエキサイティングです。信じられないようなキャストに囲まれて、とてもラッキーだと感じています。それに、みんな本当に素晴らしい人たちばかりでした。撮影現場にはエゴがなかったんです。誰と一緒に仕事をするのが怖いとか、今日出勤してくるのは誰なんだ?とか。『よし、今日も来てくれるぞ』とワクワクするだけ。みんなとても協力的で本当に楽しかったです」と、生き生きとふり返る。「この映画には、大きな陰謀や政治的なもの、いろいろなものがあると思います。しかし、観客の心に最も響くのは、友情だと思います」とマーゴット。「愛と友情は、この映画の中で登場人物たちが経験した他のすべてと比べても優先されるものだと思います」。「コラボしようと監督から持ちかけられたのは初めて」ラッセル監督とのタッグも、厚い友情を育みながら生まれていったようだ。「監督は、このストーリーや私のキャラクターを徹底的に掘り下げようとしてました。監督が早い段階からあそこまで深く役者にかかわろうとすることって、とても稀なことです。これほど早い段階から、あそこまで一緒にコラボしようと監督から持ちかけられたのは、私にとって今回が初めてでしたし、そのプロセスは本当に最高でした」とマーゴットは話す。「何年もかけて、彼が脚本の中で組み上げた陰謀やアメリカの歴史について話し合いましたし、アートについても、彼や私自身の経験についても、ヴァレリーの人物像についても、彼女の家族についても、色んなことを話し合いました。それはとても独創的で魅力的な体験でしたし、本当に最高でした」と自信を込めて繰り返した。マーゴットは、そんなラッセル監督を「本能的な人で、自分の好みをしっかりと心得ていて、当然だけどとても可笑しい人」と表現する。「この映画がとても可笑しいと知って、きっと皆さんは驚くでしょうね。彼の最大の才能は、とても具体的で愛らしいキャラクターを作り上げることですが、それが出来るのは彼自身がとても具体的で風変わりで愛らしい人だから。彼自身がとても可笑しくて賢いからこそ、このキャラクターたちにもそういう要素がたくさん染み込んでいるんですね」。さらに、本作の撮影監督は「何年も前から一緒に仕事をしたい撮影監督リストに入っていた」というエマニュエル・ルベツキ。「この映画は史上最も美しく撮影された映画のひとつだと思います」と言い、「とてもワクワクしたし、とにかく信じられないほど素晴らしい人でした。まったくの恐れ知らずなのに、とても優しくて謙虚。彼はものすごくマジカルなものを捉えてみせます。とにかく驚異的なアーティストで、撮影現場ではとても自由に仕事を進めていましたね」とふり返っていた。『アムステルダム』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:アムステルダム 2022年10月28日より全国にて公開©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
2022年11月03日1930年代ニューヨーク。壮絶な戦争を経験した親友3人組が、アムステルダムで愛と友情と自由をかみしめた後、アメリカ史上最も衝撃的な陰謀に巻き込まれていくデヴィッド・O・ラッセル監督最新作『アムステルダム』。親友3人組、帰還兵の医師バートを演じたクリスチャン・ベイル、同じく弁護士のハロルドを演じたジョン・デヴィッド・ワシントン、看護師でアーティストのヴァレリーを演じたマーゴット・ロビーに加え、ラッセル監督と数々の作品で組んできたロバート・デ・ニーロ、初参加のラミ・マレック、ゾーイ・サルダナ、アニャ・テイラー=ジョイほか、さらに世界的人気シンガーのテイラー・スウィフトまで競演し、話題を呼んでいる。今回は、『TENET テネット』でも注目を集めたジョン・デヴィッド・ワシントンからインタビューが到着。豪華キャストとの共演や、ラッセル監督とのタッグについて語ってくれた。デ・ニーロとの共演は「生涯の教訓」に「撮影はまるでお祭りのようでした。映画を作るには長い時間がかかります。そして、その始まりから終わり、今に至るまで、たくさんの人が関わります。撮影現場では毎日が刺激的で、長年尊敬してきた俳優たちのさまざまなプロセスを見ることができ、とても幸せでした」とジョン・デヴィッド。「愛、仲間、友情、それらがいかに大切か、どんな時代であれ、わかるはず。人間のつながりというのは、とてもパワフルなものなんです」と、本作のテーマを撮影現場でも実感した様子だ。とりわけ、デ・ニーロとの共演は大いに刺激となったらしい。「ミスター・デ・ニーロは本当に素晴らしい。シンプルだったんです」とジョン・デヴィッドは言う。撮影中のラッセル監督は、ある動きやあるセリフの言い方に対して、とても情熱的にこだわりを見せるが、その中でもデ・ニーロは「『わからないよ、デヴィッド。やってみよう。僕は立ち上がるかもしれないし、座るかもしれない。こういうふうにこのセリフを言うかもしれない。わからないよ』と言うんです。僕たちの目の前にいるこの並はずれた伝説の俳優は、すべてを知り尽くしているかのように振る舞ったり、そういうフリをしたりしないんです」。「『僕たちで一緒にそれを見つけよう』と言うんです。彼は、僕たちがチームメイトであるかのように感じさせてくれました。そして、そのプロセスに僕たちを入れてくれました。シンプルなことですが、僕がずっと持ち続ける生涯の教訓となったんです」。ジョン・デヴィッドはそう続け、「彼はこれまですべてのことを見てきたのに、それでもなおプロセスをごまかしたりしないんです。最も信憑性があるパフォーマンスを引き出すために、必要な手順を早めることもしません。それは素晴らしいことでした」と深く感銘を受けたことを打ち明けた。「クリスチャン・ベイルは最高のリーダー」「この撮影現場ではみんなが謙虚でした。それが現場の基盤だったんです。だから、安心して弱い部分を見せることができました。自分が失敗しても、共演者が助けてくれるとわかっていたから」とも語る。「その意味において、クリスチャン・ベイルは最高のリーダーでした。現場での2日目、彼は僕のいるところにやって来て、『ようこそ。1日目を乗り切ったね』と言ったんです。それはすばらしかった。彼は僕にそんなことを言わずに、真っ直ぐ自分の控室に行くこともできたんです。だけど、彼は僕に『君はもうデヴィッド(監督)の言語を喋っているよ』と言ってくれたんです。『ここで泥まみれになろうね』と」とふり返る。こうした関わり合いは「無意識のうちに演技に影響を与えます」とジョン・デヴィッド。「パートナーにどう耳を傾けるべきなのか、彼らの言うことをどう受け止めるべきなのか、監督から言われることをどう受け止めるのかを、教えてくれます。ここではみんながお互いを応援しているとわかっていたから、自分のキャラクターや、キャラクターのモチベーションについての質問への答えを探すのが、簡単で、楽しいことになるんです」。ジョン・デヴィッドが演じたハロルドは、第一次世界大戦に従軍し、負傷して帰還したアフリカ系アメリカ人の1兵士だ。「僕はまず当時のアフリカ系アメリカ人はどんな感じだのだろうと考え始めたんです。第二次世界大戦ほどには第一次世界大戦のことを知らなかったし、復員軍人であるというのはどういうことなのかを調べること、人種的分析は一旦脇において、1918年に母国のために戦うアメリカ人について調べること、そして他国からアメリカ人がどう見られていたのか、アメリカと他国との関係はどうだったのかというグローバルな感覚を学ぶことは、とてもエキサイティングでした」と、本作の背景から役作りを考えていったと明かす。監督は「キャラクターたちの温かさと真実味を伝えようとしている」そんなジョン・デヴィッドに対し、監督は「僕が演じようとしている役柄とか他の登場人物との関係性について、とても具体的に示してくれました」という。「彼はものすごく情熱的で、特にこういう物語の解釈に関しては、彼の世界が広く開かれていること、選択肢が無限にあるということを僕らに理解させてくれるんです。脚本に書かれていることだけがすべてではなく、もっと大切なのは登場人物たちがどういう人間なのかというところ。彼は断固として観客にこのキャラクターたちの温かさと真実味を伝えようとしているんです」と力を込める。「彼の作品に出演する全ての俳優が彼のことを暗黙のうちに信頼しています。そして、監督はそんな俳優たちのことを家族のように思っている。彼は撮影現場にいることが大好きですし、俳優たちのことが大好きなんです。彼が作り出すキャラクターも彼が紡ぎ出すセリフも、彼は大好き。だけど、その中からどれかひとつを選ばなければならないとしたら、きっと彼は俳優たちを選ぶでしょうね。彼の言葉や物語を解釈する演者たちを選ぶに違いないですよ」と話し、ラッセル監督が描き出す世界を体現する俳優たちへの愛に言及する。さらに今回、『レヴェナント:蘇えりし者』などでアカデミー賞に3度輝く撮影監督エマニュエル・ルベツキとのタッグも実現した。「チヴォ(ルベツキの愛称)はいつも動き回っていて、常にその場にいると同時に、なぜか消えているんです。本当にすごい。彼の作業の進め方はすごくて、たとえすごく俳優に近寄った撮影でさえも、彼の気配は消えていなくなり、まったくこちらの邪魔にならないようにしているんです…。まるで本当にその場から姿を消したかのように。だけどいつだってそこにいるんです」と、映像の魔術師の“秘術”についても称えている。『アムステルダム』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:アムステルダム 2022年10月28日より全国にて公開©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
2022年10月31日あの関口メンディーが教師にしてプロレスラーの主人公を演じ、しかも「覆面D」というダジャレのようなタイトル。先日、ABEMAで放送が始まったオリジナルドラマ「覆面D」について「これはコメディドラマでしょ?」と思った(というか、いまも思っている)人も多いのではないだろうか?関口メンディー本人でさえ、最初に企画を聞いた時は「コメディかと思った」とのこと。だが、鈴木おさむの手による脚本を読んでビックリ! ヤングケアラーや現代の貧困、イジメや10代の妊娠といった問題に真正面から切り込んだ、見事な社会派ドラマに仕上がっているのだ。「GENERATIONS」および「EXILE」の一員として活動し、最近はバラエティ番組などでも活躍する姿を見せているメンディーさん。ドラマ初主演となる本作にどのように挑み、ここで描かれる様々な社会問題に対してどのような思いを抱いたのか?――高校教師であると同時に、プロレスラーという裏の顔を持つ大地大輔が、赴任先の教育困難校と言われる高校で、様々な問題を抱える生徒たちに向き合う姿を描いた本作ですが、最初に企画について聞いた時の印象は?最初はコメディかなと思ってました(笑)。僕というキャラクターとプロレスを掛け合わせた作品ということで、勝手にそう思っていたんですけど、脚本が上がってきて、読んでみたら全く違う角度でいまの世の中の問題を切り取った社会派の作品に仕上がっていて驚きました。自宅で脚本を読みながら泣いてしまったのは初めてのことで、「これは絶対に自分がやりたい」と思いましたし、魂を削って良い作品を作り上げたいなと思いました。――メンディーさん自身、以前は教師を志していたそうですね?教師になろうと思ったのは、母が「あなた、教師向いているんじゃない?」と軽く言ったからなんです。それで自分も「教師もいいかも…」と軽い気持ちで体育大学への進学を決めたんです。なので、何か強烈な出来事がきっかけとしてあったわけでもないんです。ただ、僕自身も小学校の頃に担任の先生の言葉に救われた経験があって、周りの人や生徒たちに寄り添える先生になりたいなと思っていました。――先生の言葉に救われた経験というのは?僕はハーフで、見た目が周りと違うということもあって、小学校1~2年生の頃、高学年の子たちからイジられたり、容姿のことを遠目からからかわれたりすることがあって、それがすごく悔しかったんですよね。それで落ち込んでいる時に、その先生が「あなたには黒人の血が入っているけど、それは特別なことなのよ」と言ってくれたんです。その先生はマイケル・ジャクソンの大ファンで、そこで僕にマイケルのカッコよさを熱く語ってくれて「あなたは、世界のポップスターと同じ黒人の血が流れてるんだよ」と。その言葉で「僕はこのままでいいんだ」と認められた気がして、胸がすーっと軽くなって学校生活が楽しくなったんです。――ドラマでは第1話からハードなイジメの様子が描かれたり、10代にして、自分の時間を犠牲にして近親者の介護に従事しなくてはならないヤングケアラーの姿が描かれました。本作で描かれるこうした社会問題をどのように受け止めましたか?大きな社会問題のひとつであり、実際につらい思いを抱えている子たちがたくさんいると思うし、そういう子たちって自分から「つらい」とか「苦しい」と言い出せなかったり、助けを求めたくてもどうにもできない苦しさを抱えている側面もあると思うんです。このドラマを通じて、周囲に助けを求めてもいいし、周りが協力できることもたくさんあるんだということを広く理解してもらえたら嬉しいなと思いました。その意味でも、いま届ける意味のある作品だなと感じています。――ドラマの中で特に印象的なエピソードや心に残ったことはありますか?この作品って、大地大輔が何かを解決するわけじゃないんですよね。最終的には生徒たちが自分たちで問題に向き合っていくので、大地大輔がしていることってシンプルに「寄り添う」ってことだけなんです。ヤングケアラーの問題もそうですが、解決できなくても、誰かが寄り添ってあげるだけで救われる部分があるというのをこの作品を通してすごく感じました。もちろん、具体的な解決策で世の中が良くなっていくことはすごく大事なことですが、まず苦しんでいる人に寄り添ってあげるだけで変わるものってあるんですよね。「自分には何もできないから」なんて考える必要はなくて、自分にもできること、救えることがあるんだというのが、わかりました。――いまのお話にもありましたが、大輔は問題そのものを自分で解決するわけでもないですし、ひと昔前の「俺についてこい!」というタイプの教師でもないですよね? 彼自身、前任校での事件による心の傷も抱えていて、生徒との距離感という部分でも繊細さを持っています。演じる上でこの役柄をどのように捉えましたか?そういう意味で、僕自身と近いなと感じる部分が多かったんですよね。それこそ、少し前の学園ドラマだと「俺についてこい!」というタイプの先生像が多かったかもしれません。世の中の流れもあると思いますが、いま世間で“リーダー”と呼ばれる人たちって「俺についてこい」タイプの人たちは少なくなっていて、どちらかと言うと、頼るべきところは周りに頼るし、「仲間に助けを求めることができる“完璧ではない”リーダーが増えてるんじゃないかなと。僕自身、もしリーダーという立場に置かれても「ついてこい!」とは言えなくて(笑)、どちらかと言うと「この部分、僕はできないから助けてね」とか「ここは頑張るから、その代わりこっちは頼むわ」とお願いするタイプだなと思うんです。いまの世の中の流れを反映した先生像なのかなと思いましたね。――メンディーさん自身は、このドラマの生徒たちと同じ17歳の頃はどんな若者でしたか?ずっと野球をやっていて、高校球児として「甲子園に出たい」という思いはありつつ、「でも自分は甲子園には出れないんじゃないか…?」と気づき始めてもいて、でもやっぱり野球が好きで、うまくなりたいし、試合に勝ちたいという思いで野球に打ち込んでいました。――青春時代をふり返って「こうしておけば」と後悔していることはありますか?後悔とはちょっと違ってくるかもしれませんが、僕らが最上級生になったタイミングで、後輩たちが不祥事を起こして、大会に出られなくなったことがあったんです。その時に思ったのが、こうなってしまった原因や責任は後輩たちだけにあるんだろうか? ということ。もちろん、彼らも悪いんですが、そうなる前に、先輩である僕らができることはあったんじゃないか? と思ったんですね。この事件をきっかけに「何かを他人のせいにするのはやめよう」と強く思いましたし、そこから何かが起きた時「自分に何かできたんじゃないか?」と考える思考法が身につきました。後悔もありつつ、それはいまでも自分が生きていく上で、すごく大切にしている価値観になっていますね。――年齢を重ねて、仕事などで若い世代と接することも増えてきたかと思います。いわゆる“イマドキの若者”に対して、どのような印象を抱いていますか?僕が接している人たちに限りますけど、みんなコミュニケーション能力が高い印象ですね。SNSがこれだけ発達していることも大きいんでしょうけど、「見られている」という意識がすごく高い気がしますね。自分を発信することに慣れていて、そういう部分を僕は後天的に学習したけど、いまの子たちは早い段階でSNSやスマホに触れていたので、自然とできてすごいなと思いますね。――若い世代に接する中で、何かアドバイスしたり、彼らの能力を引っ張り上げてあげようと思うことはありますか?正直、若い子たちにアドバイスすることが果たして良いことなのか? と疑問に感じるところがありまして…。求められればアドバイスはしますけど、そもそも、若い人たちが新しいものを次々と作っていくものだと思っているので、極端な言い方ですけど「若い人たちの考えは正義だ」と思っているんです。「最近の若いやつは…」みたいなことを感じる人もいるかもしれませんが、逆に若者の価値観に僕らが合わせていかないと、世の中がアップデートされていかないなと思います。なので、求められれば相談に乗りますが、基本的には「思うように好き勝手やればいいじゃん!」という思いが強いですね。その周りに頑張っている大人もいるというのを自分が体現できればいいのかなと。――逆に若い人たちの才能に触発されたり、「そんな考え方をしているのか!」と驚かされることは?それはメッチャありますね! みんな才能がすごくて。そこは本当に「どんどんやりなよ!」と応援したくなります。ダンスもそうだし、俳優さん、音楽、ゲームでも新しい価値観を持った若い子たちが次々と新しいものを生み出しているなというのを感じるので、そこに刺激を受けつつ、マネするところはマネしたいです。――メンディーさん自身は今年31歳ですが、いまのご自身の立場や立ち位置について、どのように感じていますか? 30代はどうありたいか? というイメージはお持ちですか?30代は自分の中では、ステップアップの時期なのかなと思っていて、ここまでアーティストとして10年ほど活動してきて、少しずつ余裕も生まれてきているので、それを“新しいメンディー”のために投資する時間にできたらと思っています。いろいろチャレンジしたいし、ここからが本番だと思っています。いまの自分の立場や多少なりともある影響力を駆使して、どれだけ世の中に価値を提供できるか?というチャレンジをしたいし、その輪を広げていけたらと思っています。――そういう意味では、20代で良い積み重ねをすることができたという手応えも感じていらっしゃいますか?手応えはよくわからないですが、ありがたいことに多くの方に自分の存在を知っていただけて、ライブでもアリーナツアーができるようになったり、経験の量という意味では、なかなかできないことをさせてもらえたと思うし、良い20代を過ごせ……いや、うーん…、でも世界は広いんでね…(笑)。まだまだかなぁ? こうやって「まだまだだなぁ」と思いながらやっていくというのはこの先も変わらないのかな? 上には上がいますからね。「もっとできたんじゃないか?」と常に思うし「もっと高く羽ばたける!」といまも信じています。メンディー、まだ序の口です。ここからのメンディーのほうが面白くなります!(photo / text:Naoki Kurozu)
2022年10月28日ベビーカレンダーは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により各地で立ち会い出産や面会が制限されているなか、これから出産を迎える方の心の準備としてご覧いただくための出産ドキュメンタリー動画を10月14日(金)に公開しました。 孤独な痛みに耐える産婦さんを全力サポート!初産・通常分娩の出産シーンに密着10月14日(金)、ベビーカレンダーは公式YouTubeチャンネルにて、33歳ママの通常分娩での出産に密着したドキュメンタリー動画を公開しました。新型コロナウイルス感染の影響から、立ち会いでの出産が制限され、現在でもひとりで分娩に臨む産婦さんが多くいます。今回は、厳しい感染対策を実施するレディースクリニックで、小さな命が生まれた瞬間を動画におさめました。コロナ禍のひとりきりで臨むリアルな出産シーンを共有することで、これから出産を控える方々の励みとなり、そして不安が少しでも解消するきっかけになれば幸いです。 今回、茨城県「なないろレディースクリニック」協力のもと、新型コロナウイルス感染症対策を講じたうえで、1人のママの出産に密着させていただきました。コロナ禍での妊娠、ひとりきりで臨む出産への不安、恐怖心など、さまざまな思いを抱えながらの出産当日。ママとパパ、離れていても気持ちは一緒。2人の夫婦のもとにやってきた奇跡のような命の誕生の瞬間を、ぜひ動画でご覧ください。 ▲出産当日、陣痛が始まり、ひとり痛みに耐えます。あまりの痛みに度々「痛い!」という声が漏れます ▲助産師さんに腰をさすってもらい、呼吸を整えながら子宮口が全開大になるのを待ちます 今回密着したのは、コロナ禍で立ち会いなしの出産に挑んだご夫婦。出産当日は立ち会えないものの、入院準備をしてくれたり、お使いに走ってくれたりと、パパが全力でサポートしてくれたと言います。「初産で妊娠中はつわりもひどく、体重が7キロも落ちてしまいました。出産は想像以上にしんどくて大変でしたが、自分のおなかにいた子が出てきた瞬間は、やっぱり感動しましたね」。「テレビ電話越しだったけれど、泣き声が聞けてほっとしました。お疲れさま」とママを労うパパ。そこには、離れていても心はつながったまま、強い絆で結ばれたご夫婦の姿がありました。 ▲本格的ないきみがスタート。助産師さんたちが声をかけながらお産が進んでいきます ▲ようやく会えた愛娘。立ち会えなかったパパにテレビ電話報告。「頑張ったね」とパパの笑顔が迎えてくれます <茨城県 なないろレディースクリニック 黒田院長>夕方に陣痛が始まってLDRに入室し、日が変わったころからスムーズにお産が進行しました。初産の方ですが、経過は順調で、お一人でよく頑張ったと思います。当院にかかっている産婦さんで30人ほどコロナウイルスに感染された方がいましたが、そのうち2人は分娩直前だったので他施設での帝王切開になりました。その他の産婦さんたちは無事に回復し、全員元気に当院で出産されています。コロナ禍で不安に思われている妊婦さんはいっぱいおられると思いますけれど、「赤ちゃんに会うために頑張るんだ」という気持ちで出産をポジティブに捉えてほしいですね。スタッフがそばに寄り添って旦那さんの分までサポートしますので、一緒に乗り切っていただければと思います。 <ベビーカレンダー編集長 二階堂美和>新型コロナウイルスの感染症対策のため両親学級や立ち会い出産などが依然として制限されている病院も多く、妊婦さんにとっては物理的・精神的な負担が大きくなっています。私たち編集部も出産を控えているママたちから不安の声をよく耳にしています。実際にパパや家族と離れてひとりきりで産むというのはどのような心算が必要なのでしょうか?これから出産を控えているママやパパたちのために、コロナ禍での出産のリアルをお届けしたい! そんな想いから、今回、ひとりで出産に臨む妊婦さんの陣痛から出産までの一部始終に密着させていただきました。出産はやはり大変なものではありましたが、妊婦さんが心細くならないようにと、心を配って寄り添い励ます助産師さん、赤ちゃんに少しでも早く会うためにひとりでも気丈に頑張る妊婦さん、テレビ電話越しに喜びを分かち合いママを労うパパ……。私が今回の出産で得られたものは、「どんな状況でも人は強い!」「私たちはコロナなんかに負けない!」という希望でした。立ち会いができないことは、寂しい、つらいことなんかじゃない!この感動を、そして小さな命の誕生の素晴らしさをぜひ皆さんも感じてもらえたら幸いです 「コロナ禍での妊娠は不安……」「立ち会いなしの出産が怖い……」など、初めての妊娠・出産への不安や恐怖心を抱えている方も多いでしょう。そんな方たちが、この動画を見て「赤ちゃんに会うために頑張ろう」と思っていただけるきっかけになりますように。これからもベビーカレンダーでは、赤ちゃんがいることの幸せを感じてもらえるような、さまざまな情報を発信していきます
2022年10月19日驚異的な速度で成長していくさまを示した「筍(たけのこ)の親まさり」ということわざがあるが、清原果耶はまさにそれを地で行く存在だ。『3月のライオン』「透明なゆりかご」『宇宙でいちばんあかるい屋根』「おかえりモネ」と、ここ数年で急成長。『ジョゼと虎と魚たち』ではボイスキャストとしても実力を見せつけ、『護られなかった者たちへ』では数々の賞を受賞。演技派俳優として、確かな地位を築いた。その清原さんが『ちはやふる 結び』の小泉徳宏監督、『愛唄 約束のナクヒト』の横浜流星と再びコラボレーション。水墨画の世界を描いた『線は、僕を描く』(10月21日公開)だ。彼女が扮した篠田千瑛は、水墨画の巨匠・篠田湖山(三浦友和)の孫であり将来を嘱望された存在でありながら、自身の描く線にためらいが生じる複雑なキャラクター。もがきながらオリジナリティを探す表現者を演じ切った清原さんに、ものづくりの信念を語ってもらった。――劇中で千瑛は「いままで通りに描けない」という壁にぶつかります。長く続ける表現者の多くが経験する苦悩ともいえますが、清原さんご自身はこれまでの道のりでそんな状態に陥ったことはありますか?スランプという言葉にすると大層なものになってしまうのですが、どの作品の現場に入っても毎回悩むことはありますし、毎回「その壁をどう乗り越えるか」の闘いではあります。そういうときは監督に聞きに行ったり、監督がどう思っているかの意識をなんとか汲めないか試行錯誤します。――「自分から聞きに行く」という行動理念は、清原さんの芝居に対するアプローチの根幹かと思いますが、スタイルに組み込むきっかけはあったのでしょうか。きっと単純に「わからないことをわからないままにしておくのが怖い」という想いからですね。「聞いたら何かしら答えに近づけるかもしれない、作品がもっと良くなるかもしれない」と思ったら、聞きに行かない理由はない。特別な理由はなく、「聞いてみて、考える」という選択肢でしかない気がします。――「聞く」怖さを、向上心が勝るというか。私自身は、聞きに行くことに躊躇してしまって、行動に起こせない方が悲しいと思うタイプです。そういった話し合いをできる人たちと一緒に作品を作っていきたいです。――流石です。今回は小泉監督・横浜さんと再タッグの方々が並んでいますね。『ちはやふる』のときは現場の雰囲気に合わせる感じだったので、今回も青春映画ではありますがちゃんと心の浮き沈みを表現したいなと思い、監督ともっとちゃんと話そうと心がけて現場に入りました。撮影中もかなり話しながら作っていきました。たとえば、千瑛と霜介(横浜流星)の関係性について。流星くんとも「千瑛と霜介は距離が近くなるけど、絶対恋仲にはならない」と話して、その信頼関係をどう見せていくかは都度「これくらいの距離感でいいですか」「ここは友達みたいな感じでいいですか」「いまのような雰囲気で大丈夫ですか」と確認していました。また、「千瑛がとっつきにくすぎると怖いかも」という話になり、強気すぎずちょっとガードを張っているくらいに調整していきました。あとは流星くんと並んだときに私が幼く見えないようにしたいなと思っていて、幼さはあまり入れ込まないようにしていました。声も少し低くして、でも低すぎると怖く見えるから微調整して…という感じでした。いまだからこそ明かす撮影エピソード――撮影に入る前、キャラクターのすり合わせで重要な対話の機会となるのが衣装合わせかと思います。印象的なエピソードはありましたか?終盤で着る着物の候補が2つあって、「どっちもとんでもないお値段なんだよ」と聞かされながら着て、とにかくひやひやしていました(笑)。こっちが「傷つけないように着なきゃ」と思っているそばで、みんな「墨を飛ばしちゃったらどうなるんだろうね」みたいなことを言ってて…(笑)。――清原さんでもひやひやされるのですね!それはもう(笑)。千瑛は水墨画を記号的に描きすぎてしまう役だったので、ちゃんと描けないといけない。ひやひやしながら練習していましたし、現場でも毎回ひやひやしていました。――教室で霜介や大学生たちに水墨画を教えるシーンなど、堂々とされていましたが…。あのシーンも余裕そうに見えたらいいなと思っていましたが、内心めちゃくちゃ緊張していて(笑)。みんなの前で説明しながら描かないといけないのが大変で、セリフが走ったり速くなってしまって小泉監督に「もうちょっとゆっくり、ゆとりのある感じで」と言われちゃいました。しっかりプロに見えないといけないので、緊張でプルプルしていたら全然説得力がない(笑)。頑張りましたが、余裕があるように見えていたならよかったです。根本にあるのは「演じることが楽しい」ということ――演技におけるオリジナリティについても伺いたいのですが、たとえば清原さんが幼少期から経験されてきたクラシックバレエは師匠やコーチから教わっていくなかで個性が発芽するものかなと。水墨画もそうかなと思いつつ、演技はまた違うベクトルのように感じます。お芝居も人によっては師匠がいる方もいらっしゃるかと思いますが、私に関してはおそらく今まで出会った監督やキャストの皆さんを見てきてこうなったという感じがあります。改めて、芝居におけるオリジナルってなんだろう?と考えるとわからなくなりますね(笑)。私の場合は様々な人の意見やスタイルが混ざったうえでの今なので、それは果たして真の意味でのオリジナルなのか?とは思います。――先ほどお話しいただいたように、演出やリクエストも入ってきますもんね。ただ、「清原さんが演じるから役が立ち上がる」と考えると、それはオリジナリティかなと。演じる際の、一個人としての感情――楽しさについてはいかがですか?やっぱり、「演じることが楽しい」というのは根本にあります。自分が演じる役に対して理解を深めきれるのは演じる人だけだと思いますし、役のことを考え続けたらその人が言いそうな言葉が自然に出てきたり、行動を起こしたりする。私自身の感覚が役にリンクして「お芝居って面白いな」と思うタイミングもありますし、そこまで完璧にリンクしなくても「この人のことを考えるだけですごく楽しい」という役もあります。私にとって役に向き合うことが、お芝居を面白い・楽しいと思う理由だと感じています。――最後に、インプットについてお聞かせください。清原さんは詩集をよく読まれている印象がありますが、そういったところからも感性を吸い上げているのでしょうか。そうですね。言葉をすごく信頼していた時期があって、詩集ってそれ以上でもそれ以下でもないんです。紙の上に言葉が載っているだけなのに、読む側はそこからイメージが広がって想いを馳せる。そういう瞬間がすごく好きなんです。音楽もよく聴きますが、メロディはもちろん歌詞も重視しているので、そういう意味では言葉への興味はずっとあるのかもしれません。最近だと宇多田ヒカルさんのアルバム「BADモード」をよく聴いています。(text:SYO/photo:You Ishii)■関連作品:線は、僕を描く 2022年10月21日より全国にて公開©砥上裕將/講談社©2022映画「線は、僕を描く」製作委員会
2022年10月19日ニューヨーク・タイムズ紙のコラム「Modern Love」に投稿されたエッセーに基づき、1話完結ドラマとしてスタートした「モダンラブ」。ニューヨークを舞台に、様々な愛にまつわる物語を展開してきた同作は、シーズン1、2を経て舞台を日本・東京に移した。全7話のエピソードからなる「モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~」は、東京という世界の中でも有数の大都市のリアルを映し出すような、華やかな街に住まう人々の裸の心をそっと覗ける物語だ。各話には、マッチングサイトでの出会い、シニアラブ、セックスレス、リモートで芽生えた恋など、バラエティ豊かなテーマを持ち、2022年・今の東京の空気を感じられる仕上がりとなっている。このアンソロジー・シリーズのはじまりであるエピソード1「息子の授乳、そしていくつかの不満」では、仕事と子育てを両立し完璧を追求する高田真莉と、彼女のパートナーである河野彩の日常、その変化が描かれる。演じた水川あさみ&前田敦子は、ドラマ初共演にして心地よい協和を生み出した。インタビューでは、作品への意気込みから「もうできない!」と思った演技の苦労まで、和気あいあいと語ってもらった。――最初に、「息子の授乳、そしていくつかの不満」の脚本を読んだ感想から教えていただけますか?水川:何か大きな事件が起きるとかいうようなお話ではないのですが、私が演じる真莉とあっちゃん演じるパートナーの彩という女性のことに関しても、とりわけ説明をすることもなく、当たり前にストーリーの中に組み込まれていたんです。そうしたナチュラルな展開の仕方も、すごく素敵だなと惹かれたポイントでした。あとは、言葉で説明するようなことも少なかったので、すごく余白のある脚本だなと思いました。説明が少ないからこそ、空気感や相手との温度が作品に反映されるんだろうなと感じました。前田:私も、家族愛がとても素敵だなと思いました。女性同士の恋愛も受け入れている(真莉の)母親がいて、みんなで協力し合って生活をしていて。その中で、ちょっとした感情のやりとりがあり、ぶつかり合ったりするんですよね。それってすごい愛だなとも思うんです。家族の愛は深いなと、脚本を読んでいてすごく感じました。――水川さんは真莉を、前田さんは彩を演じるにあたって、大事にしていたことなどは何でしょうか?水川:真莉は子育ても仕事もどちらも大切にしたい、とにかく自分の理想に近づけることに必死で…。だから、一番そばで支えてくれる彩や、お母さんという身近な愛に気づけていないというか、少し見失っている状態でした。仕事も家庭も一生懸命やっている誰しもに当てはまるような出来事かもしれない、と考えながら演じていましたね。前田:私の役は、どちらかと言うと俯瞰で家族を見守る立場だったので、言葉も少なくて。いる雰囲気や空気感みたいなものはちょっと意識したほうがいいな、と思いながら淡々とやっていました。役柄と普段の私は全然違うとは思っています。でも彩は誰に対しても平等な感じがありましたし、こうやっていられたらいいなという憧れを持ちながら演じていました。水川:彩、裏表がないよね。前田:そう。淡々と、飄々としている感じで。彩が家にいると安心しますよね。水川:そうだよね。――水川さんはお料理も上手で完璧なイメージもあるので、こだわりがあるという面で、ご自身と真莉に共通点があるようには思わなかったですか?水川:私は好きなものが多いというだけで、別にこだわりではないんですよね。料理も難しいことそんなにやらないですし(笑)。だから好きなことをやっているだけで、完璧にやらなくちゃいけないという考えではないから、真莉とはわりと真逆かなと思っていました。前田:向き合い方がちょっと違うかもしれないですよね。水川:そうね、ことがらの向き合い方が違うかもしれないかな。――好きでやっているから完璧主義とは違うということですね。水川:全然完璧じゃないですし、できなきゃできないでいいと思っているんです。自分ができる範囲の中で自分が楽しめて面白くできないと続かないから。監督に「芝居するな」と言われて――水川さん&前田さんの芝居の変化とは――演じていて、特に心に残った場面やセリフはありましたか?水川:お話の中で真莉が今まで我慢していた気持ちや自分がとらわれていたもの、感情がわーっとあふれ出してしまう場面があって。そういうことって何気ないきっかけであったりしますよね。ポンってコルクが抜けてあふれ出すみたいな、そういう感情になるときがあるなと思いました。一見ちょっとしたできごとなんだけど、真莉にとってはすごく大きな変化で。そういうのは、すごく愛にあふれた生活だからこそありえることなので、素敵な場面だなと感じました。前田:私も水川さんのお話したシーンが、すごく素敵だなと思いました。「あ、安心できる場所がある!」と思ったので、すごくいいなあと。あと、私は真莉たち親子のやりとりをそばで見させてもらっていたんですけれど、すごいリアルだなあと思いました。こういう母娘の感じ、あるよなーって。感情論のぶつけ合いは、自分にも思うところはありましたね(笑)。水川:そっか(笑)!前田:母親には甘えたい気持ちもあるからこそ「わかって!」となっちゃうんですよね。「わかって!」が出過ぎてすごい感情論になっちゃうので、真莉ちゃんの気持ちは痛いぐらいわかりました。――監督ならびに脚本を務めた平柳敦子さんは、ロスなど海外で活動されていますが、普段のお芝居や演出とやり方が違うなどと感じたところはありましたか?水川:全然違いました。私はもうとにかく「芝居するな、芝居するな」と言われていたので大変でした(笑)。監督は“そこに存在する"ということを言いたかったんだと思うんですけど、表現するとなると、どうしてもプラスの要素が働いてしまうんです。つけ加えてしまうというか。それをなくしてほしいという演出方法は、私にとっては新しくて。悩んだけれど、とてもいい経験でした。前田:私は、ただただ水川さんを「さすがだな」と見守っているだけでした。監督が本当に空気感から作るのを大事にしてくれている方だったんですよね。水川:うん、うん。前田:私たちの家の中がそういう感じで。…なんか撮影という感じじゃなかったですね。水川:本当にそうだよね。――監督のいう「芝居するな」を体現するため、水川さんはどう工夫していったんですか?非常に自然な演技だと思い観ていました。水川:うーん、そうですね…。現場の雰囲気に助けてもらうことももちろんありました。あと監督に言われたのは「もう顔を動かさないで」って。前田:あー!言われましたね。水川:「もう能面だと思って芝居しろ」と言われたんです。最初は何のこっちゃわからなかったんですけど、私は自分が思っているよりも表情が豊かだから、ひとつひとつのセリフに気持ちを込めすぎている、ということを言われたんです。そんなことを言われたのが初めてだったから、それを0にする作業はすごく大変でしたね。くたくたになって家に帰ってくるという玄関先でのシーンは、何回も何回も撮り直したんです。「もうできない!」と言うと、「がんばれ!!」と助監督や監督に励まされて(笑)。前田:確かに、監督はあきらめないですもんね!「よし、もう1回」「もう1回」って。「何がなんだろうー?」みたいな。水川:わかんないよー!と思いながらやっていました(笑)。“凛とした人代表”の水川さん&“肝の据わった人”の前田さん――おふたりは過去にCMで共演されていますが、ドラマでは初共演となります。印象の変化はありましたか?水川:私はとても印象が変わりました。共演してみて、本当に肝の据わった人だなと思って、彼女の格好良さというものを知りました。その感じは、あっちゃんの役にもすごく反映されているんです。彩のどーんと構えてくれる感じは、あっちゃんの内から出てくるものもすごくあったと思ったから。すごく安心できて、ご一緒できてよかったなと本当に思っています。…横にいるから、こういう話はなんか照れくさいよね(笑)。前田:はい、褒めていただいてすみませんって思います(笑)。――CMで共演していたとき、前田さんは今回のような印象ではなかったんですか?水川:CMでは現場で少しご一緒したぐらいだったんです。だから印象というよりも、どういう人なのかをあまりわかっていなくて。あのときはかわいい印象が強かったけど、すごく覚悟の決まっているというか、肝の据わった人という印象になりました。何でも自分でやるし、ひとりでどこにでも行くし。そういう姿をそばで見ていて、めちゃくちゃ格好いいなと思いました。前田:嬉しいです、やったー!…いや、でも女性からしてみると、水川さんは本当に凛としている方代表だなと、私はずっと思っているんです。みんなに分け隔てないですし、現場でも本当にずっとそういう風にいてくれたので。そんな水川さんにそうやって言ってもらえて、すごい嬉しいです。Amazon Original「モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~」は10月21日(金)よりPrime Videoにて独占配信開始。【水川あさみ】ヘアメイク:星野加奈子/スタイリスト:番場直美【前田敦子】ヘアメイク:高橋里帆(HappyStar)/スタイリスト:有本祐輔(7回の裏)(text:赤山恭子/photo:Maho Korogi)
2022年10月17日2020年3月6日、シム・ウンギョンは第43回日本アカデミー賞にて、『新聞記者』での演技で最優秀主演女優賞を受賞。ステージ上で、トロフィーを握りしめながら涙ながらに受賞の喜びを口にした。そして、その年の10月に放送が始まったのが、彼女にとっては初の日本の連続ドラマ出演となる「七人の秘書」。約半年前に美しい涙でお茶の間を感動に包んだ彼女が、同作では6人の仲間たちと共に、巨悪をぶった斬り、その痛快な姿に多くの視聴者が快哉を叫んだ。そんな同作が満を持して映画化。『七人の秘書 THE MOVIE』として10月7日(金)に公開を迎えた。シム・ウンギョンさん演じる“頭脳明晰なハッカー秘書”パク・サランは、アクションも見せるなど、映画でも大活躍! 公開を前にシム・ウンギョンさんに話を聞いた。初の日本の連続ドラマ出演を経て――ドラマ版の「七人の秘書」はシム・ウンギョンさんにとっては初の日本の連続ドラマ出演となりましたが、同作への参加はご自身にとってどのような経験になりましたか?このドラマを通じて、日本の多くのみなさんに私のことを知っていただくことができましたし、とても貴重な経験でした。木村文乃さんをはじめ、いろんな方たちと共演をさせていただいて、様々な経験を重ねることができましたし、自分にとっては“宝物”のような存在です。――ドラマが放送されて、反響はありましたか?私が演じたサランもそうですが、何よりも作品そのものがものすごくみなさんに愛されているのを感じました。こういう言い方は失礼かもしれませんが(苦笑)、私が予想していた以上に、みなさんに愛していただけたんだなと。だからこそ今回、こうして映画化も実現できたんだと思います。映画のチラシにも「悪いヤツら、ぶっ潰させて頂きます。」というコピーがありますけど、悪を懲らしめるという部分、そして一人でじゃなくて、みんなで力を合わせてというのが、みなさんの心を掴んだんだろうなと思います。――ドラマの放送から2年を経て、映画が公開となりますが、最初に映画化の話を聞いた時の気持ちは?先日から、みんなで取材を受けることがあったんですけど、私以外のみんなは「また次、あるでしょ」と予想してたみたいで、私だけが「やるのかなぁ…? もしやるなら、またみなさんとお会いできるなぁ」くらいの気持ちで待っていたんですよね(笑)。なので、またやるということ、しかも映画を作ると聞いた時は、すごく嬉しかったです!アクションが見どころ「すごくカッコいいです!」――映画の撮影はいかがでしたか?2年ぶりにみなさんとお会いして、最初は「お久しぶりです!」「元気ですか?」みたいな感じだったんですけど、それも一瞬で、すぐに「いや、私たちって昨日もずっと一緒の現場だったっけ?」と思うくらい、ドラマの時と同じ空気感でした。ずっと楽しくおしゃべりしてて、そのまま終わった感が強いです(笑)。「え? もう今日でクランクアップ?」と思うくらい、いつの間にか映画を撮り終えていました。今回はアクションも見どころなんですけど、みなさん、すごくお上手なんですよ。私が演じたサランもアクションに挑んでいますが、キャラクターの設定としてサランは怖がりなので、そこまでカッコいい感じのアクションではなく、ちょっとコミカルなんです。でも他のみなさんはすごくカッコいいです!――改めて、シム・ウンギョンさんから秘書軍団のメンバーを演じたみなさん(木村文乃、広瀬アリス、菜々緒、大島優子、室井滋、江口洋介)の印象についてひと言ずついただけますか。木村さんは、お会いする前は(木村さんが演じた)千代と似てるんじゃないかな? と思ってました。でも、すごくイタズラ好きなところがあったり、私のこともすごくかわいがってくれて「お姉ちゃん」というイメージです。広瀬さんは、あまりにも現場で面白過ぎて「私がいままで出会った日本人で一番面白い人だ」といつも言ってます。本人もそれが気に入ったみたいです(笑)。ボーっとしてる姿もしゃべっている時も、全てが面白いんですよ(笑)。今回の映画で広瀬さんのことがさらに大好きになりました!菜々緒さんは、クールなイメージがありましたけど、すごくさっぱりした人ですね。私にはずっと韓国のことを質問してくださって、すごくかわいがってくれました。大島さんは韓国語を話したいということで、時々私に「こういう言い方、韓国語で何て言うの?」と質問してくれました。現場でも韓国語教室みたいな(不思議な)場面もありましたが、面白くなりすぎてどんどんわけのわからない韓国語を聞いてくるんですよ。「なんでそんな言葉を知りたいんだ?」「それを知って、どこで使うんだ?」と思ってました。一応、教えましたけど…(笑)楽しかったです。室井さんも、韓国のドラマや映画が大好きでハマっていて、私の出演作までご覧になってくださって「あの作品の撮影の時はどうだったの?」というお話をしてましたね。江口さんは(演じた)萬さんそのままの存在感で、カッコよすぎて正直、私からなかなか話しかけられなかったんですけど、すごく優しくて、「あの映画、観た」とかいつもオススメの作品を教えてくださいました。経験を積み重ねてきたからこその不安「もっとちゃんとしなきゃ」――お話を伺っていると、シム・ウンギョンさんが現場でみなさんに愛されている様子が伝わってきます。日本でも活動されるようになって数年になりますが、生まれ育った国を出て、外国語で演技をするというのは、本当に大変なことだと思います。当初、日本で活動することに恐怖や不安はなかったんでしょうか?むしろ最初の頃のほうが恐怖感とかはなかったと思いますね。何も知らなかったからこそ「とにかくやってみます!」という感じで(笑)、勢いでどんどんいろんなことを経験させてもらいました。逆にいまのほうが、言葉も覚えて経験を積み重ねてきたからこそ「もっとちゃんとしなきゃ」と思ったり、「私はしっかりやれているんだろうか?」と悩んで不安になったりしますね。でも、そういう気持ちがあるからこそ、やり続けていくしかないんだとも思っています。――本作のサランだけでなく、これまでもいろんな作品を通じて、強い女性、戦う女性など様々な女性像を見せてきましたが、シム・ウンギョンさん自身がカッコいいと感じる女性、理想の女性像について教えてください。誰か特定の人に憧れたり、「この人みたいになりたい」というのはないんですけど、ありのままの自分でいたいという思いはあります。そうあるためにも、誰かに寄り掛かることなく、芯の強さを持った自分でいたいなといつも思っています。さっきの話とも重なるんですけど、この仕事をしている中で、悩んだり、怖くなったりすることもありますが、ありのままの自分であるために、続けていくしかないんだなと思っています。◆ヘアメイク:伏屋陽子(ESPER)◆スタイリスト:島津由行(text:Naoki Kurozu/photo:Jumpei Yamada)■関連作品:七人の秘書 THE MOVIE 2022年10月7日より全国東宝系にて公開©2022「七人の秘書 THE MOVIE」製作委員会
2022年10月11日シンガーソングライター・Charaの軽やかなたたずまいは、いつの時代もどの世代にも人々の憧れの存在として映る。現在、Charaさんはディズニー公式動画配信サービス・ディズニープラス「スター」の日本発オリジナルドラマシリーズとして制作された『すべて忘れてしまうから』に出演中。主人公のミステリー作家“M(阿部寛)”が通う「Bar 灯台」オーナー・カオルを演じ、キャリア初のドラマ出演を飾った。「新しいことに挑戦することが好き」と『すべて忘れてしまうから』への出演参加について話すCharaさん。輝き続ける活動の源泉は、新たなことへ飛び込む気持ちにもあったようだ。単独インタビューでは、26年ぶりとなった演技の仕事から始まり、年齢を重ねて変わったこと・変わらないことなど、Charaさんの内面についても伺った。毎日をハッピーに過ごす、ハッピーを見過ごさずに見つけられるCharaさんのマインドは、我々がより良い明日を過ごすため、幸せに生きるためのヒントが得られるはずだ。――『すべて忘れてしまうから』では初めてのドラマ出演となりました。これまでもたくさんオファーはあったと思うんですが、出演の決め手は何でしたか?今回は音楽を愛するカオルさんという役だったので、音楽つながりということもあったし、監督たちも「そのまま(のCharaさん)で」とおっしゃってくださったので、「できるかなあ~」みたいな感じで、お引き受けしました。例えば、役柄が主役とか重荷のものだったらちょっとできないけどね。あとは、燃え殻さんのこのエッセイでやると聞いたとき、「ええ、これ!?難しくない?」と思ったんです。淡々としていてミステリー要素もあって、割と地味と言ったらあれだけど…でも映像になったらじわじわとくる、新しい感じなんじゃないかなと思って。それは挑戦だと感じたから、素敵だなと思ったんです。挑戦することって、私、好きなので。――新しいことに踏み込む、やったことのないことに挑戦することは、日頃よりCharaさんの原動力のひとつだったりするんですか?チャンスがあったら、やれたら面白そうってなります。何だろうな…自分が知ってると思う以外のことって、たくさんあるじゃない。今回は「新しいことをやろう」と思っている人やチームに参加できたら面白いかも、と感じたので。そうやって違う筋肉を使ってみると「あれっ…」と気づくきっかけにもなりますし。例えば、お散歩でも意識しないと、道路の端っこ、コンクリートの間に咲いてるお花とかも見過ごしちゃうじゃん。そういうのと同じように「見過ごさないで気がつけることができる」ことが、何かあると思うんです。――今回のお芝居や現場での経験で感じたものが、Charaさんの創作の血肉になっていったりもするんですね?なってると思いますね。いろいろな人とコミュニケーションを取るほうが、自分で気がつかないうちに他人と接する筋肉、コミュニケーション能力の筋肉は活性化されるはずなので。だから違う現場、このチームに入ることで活性化されてるはずですけどね。もともと割と活動的なタイプですけど。――作品内では、とても自然な感じの演技に惹かれました。Bar 灯台では流れるような会話劇が続きますが、大変ではなかったですか?撮影前、友達の女優が心配して「Chara、本読みやってあげるよ~」と来てくれたりしたんです。娘も「やってあげるよ」と言って本読みをやってくれて、…台本はその2回ぐらいかな。今回はセットが本当に素晴らしかったから、「Bar 灯台に行けば、カオルさんになれる」みたいな状況があったんだと思います。美術さん、メイクさん、衣装さんもすごくこだわっていたんです。特にカオルさんは衣装がすごーく凝っていて、ほかの役者さんは毎回似たような服なのに(笑)、カオルさんだけ毎回違っていて。それは監督たちの希望でした。――監督からは、そのほかにオーダーもありましたか?監督が、現場で「やっぱり、それはなし」とか「こっちにしたい」と変えていくのはよくあることで、それは普通にあったかな。映像は監督のものだと思っているから、「言うことを聞いてやったらいい」と思っていました。だからむちゃぶりも結構あったんだけど、「やりたいな」と思って努力しました。自分にちょっとでも余裕がないと、人を愛する余裕は出てこない――先ほどお話された新しいことに挑戦する以外に、Charaさんが日々の生活などでも指針にしていることはありますか?魅力的に生きるヒントを知りたいです。私は普段から音楽的に生きてると思うけど、このインタビューを読まれている方と同じように、普通に人間です…(笑)。なので、「人生を楽しみたいな」と思っているから、自分が楽しい・ハッピーなことが何かを知ることがいいじゃないですか。年を重ねていくと、何がハッピーでこれが好きというのがたくさん分かってくると思うので、私もそれを大切にしてるんじゃないかな。家族も大好きで、友達も大好きだし。自分にちょっとでも余裕がないと、人を愛する余裕は出てこないと思うので、リラックスして生きていたいですね。そういうのに気をつけてるかも。あと、言葉に出してしまうと出したものは引っ込まないから、それも気をつけてますね。――ハッピーに感じることについては、年齢を重ねるにつれて変わっていきましたか?変わってますね。詞も書いているんだけど、言葉を紡ぐのがすごい好きなんです。若いときは、その辺に落ちてるような普通の言葉、要は「人がやってる使っている言葉を使いたくない!」みたいなのがあったんですよね。自分のオリジナリティーを理解してほしいのもあったのかな、新人さんは人と比較されちゃうじゃんそういう時を経て、27歳くらいのときに長女のSUMIREを妊娠したんです。妊娠して子供が生まれてくるとなると、すごい責任感があって。小さな子供も理解する言葉を改めて勉強し始めて、そこで「普通の言葉はなんて素敵なんだ!」と意識がとても変わりました。子供がいなかったときといるときで分けるとするならば、やっぱり全然違いましたね。前は、もうちょっと身勝手だったと思います。なんか心が豊かになって、いろいろ気がつける、気づきがすごいたくさんあるから、すごい優しくなったかな?――今、何をやっているときが一番ハッピーですか?私、大体何でもハッピーなんだけどね(笑)。「ああ、なんかうれしいな」と思うのが、子供たちが大きくなったので、ちょっと昔の母ちゃんとの出来事や思い出を、今の彼らと話して「ワハハ!」となるとき。何とも言えない楽しい雰囲気になりますね。「2回目の楽しみ」みたいなね。昔楽しかった出来事が、また今思い出せて話せて「すてき」と思うから、そういうのが楽しいです。――今はSUMIREさんも佐藤緋美さんも俳優業をやられていますが、作品を観て感想を言い合ったりもしますか?そうですね。娘のも息子のも観てチェックしてますね。感想を言うときもあるね。「意外と声が出ててびっくりしたよ」とか(笑)。作品を観ていて、「私の好きなこの俳優さんと一緒に出てるね!ママが好きだって言っといて!」とか(笑)。普通では考えられないけど、芸能一家だとそういう会話がありますね。――もしかしたらちょっとしたことかもしれないけれども、幸せを見つけたりハッピーに変換するのが、Charaさんは上手なのかもしれないですね。なんかそうですね。私、今ひとり暮らしなんですよ。子育てが終わって、みんな独立して。もともと家族と暮らしていたときから、アーティストでも、お母さんでも、1日のうちにどんなに子育てで忙しくても、ひとりでいる時間は本当に大切だと思ったんです。本当に忙しくて時間がなくても、寝る前のお手入れの少しの時間でも、みんなが寝た後に1杯飲んだりする時間とかでも、何でもいいんだけど…そういうルーティーンみたいなのが(自分を)支えるじゃん。そういうの、いいですよね。そういうのがうまいんじゃないかな。だから、意外とひとりでも、なんかやってるんじゃない(笑)。『すべて忘れてしまうから』は毎週水曜日、ディズニープラス「スター」にて独占配信中(全10話)。(C) Moegara, FUSOSHA 2020◆ヘアメイク:杉田和人(POOL)◆スタイリスト:小川夢乃(text:赤山恭子/photo:You Ishii)
2022年10月05日画面の向こうにいる満島ひかりを見ていると、言葉にならない感情がこみ上げてくるのはなぜだろう?説明的演技でも感情演技でもなく、ただただその人物にしか見えない“生きた”演技を披露し続ける満島さん。『かもめ食堂』や『彼らが本気で編むときは、』、ドラマ「珈琲いかがでしょう」で知られる荻上直子監督の新作『川っぺりムコリッタ』(9月16日公開)で満島さんは、様々な事情を抱えた人々が集うアパートの大家・南に扮している。松山ケンイチ、ムロツヨシ、吉岡秀隆扮する住人を見守りながら、自身も夫を亡くした哀しみを抱えるシングルマザーの実像――その人間味すらも豊かに体現した満島さん。シネマカフェでは、彼女の高い感受性に裏打ちされた演技について、単独インタビューでじっくり語っていただいた。魅力的な“南さん”の役作りは"感じる"を意識――満島さんが演じられた南さん、自己紹介するシーンから非常に魅力的でした。出ずっぱりではないキャラクターですが、それを全く感じない密度で。ある種“スポット出演”的なポジションに臨むにあたって、荻上直子監督との話し合い含めてどのような準備をなさったのでしょう?ありがたいことに、どちらかというと出ずっぱりの役のほうが増えているので、少ししか出てこないけど気になる人というか、気楽だからこそ"さじ加減"の難しい役どころも、サラッとできたらいいなって気持ちもありました。当て書きされていない脚本でお芝居をするのも楽しそうで。荻上監督は、初めて会ったときから佇まいが独特で、お話しの口調にも選ぶ言葉にも妙なおもしろさが漂っていて…どんな現場になるんだろう、いったいどうやって映画を撮るんだろうと興味が湧いちゃったんです。役のヒントをたくさんくれたのは、伝説のスタイリスト・堀越絹衣さんの衣装たちです。荻上組常連の堀越さんは、日本のファッション界では知らない人はいないってくらいの方なのですが、衣装合わせのときにどんどん提案して下さって。「女だけの生活だから、男の方と何かがある感じに見えないためにも、ステテコを履いているのって良くないかしら?スカートの下がスースーしているより気持ちいいわよね」なんて、監督も交えて服から役を考えるいい時間でした。あと、実の妹が“みなみ”という名前でして、すごく紛らわしいなと思いながらお芝居をしていました(笑)。そんな感じで、がんばって準備をしたというより、一緒にいてゆったりな気持ちになれる俳優さんばかりの現場だったので、環境に身を任せて、"感じる"を意識していたように思います。頭を使いすぎて、呼吸が浅くならないように。役者の醍醐味は"その土地で暮らしているごっこ"!?――本作に限らず、満島さんの演技を拝見していると豊かな感受性を感じます。「そう思わないとできない」から作品によっては事前に下調べもされると伺ったのですが、今回のように現場で吸い上げる形も多いのでしょうか。本当に作品によりますね。準備に関しては、自分のスタイルは持っていません。私自身がすごくふざけた部分やダメな部分も持っている人で、常に「どうやって抜こうかな?」と考えてしまうくらい(笑)。映画の中とはいえ、演じる人物それぞれに呼吸が通っているとすてきだなと思っていますが。撮影までの準備の期間は短いことも多くって、時間のない中で脚本で描かれていることにまっすぐ向き合うと、妙な力が入っちゃうこともあります。だから発想を変えて、意味がないことをいっぱいしたりします。連想ゲームみたいな感じで、脚本を読んでただ連想したことをやってみたり見てみたり…。今回は富山ロケだったので、新米の香りに誘われて3軒くらい米農家さんに行って、おいしいお米を作る方々とお話をしました。撮影をする土地で、そこにただ生きてたら「いいな」と思うところに顔を出してみるんです。"その土地で暮らしているごっこ"は、役者さんの醍醐味かもしれませんね。――とても面白いお話です。そういった部分から、役の人間味が生まれてくるのですね。景色とか気候の持つ力には影響されます。影響を受けていたのか何なのか、映画を観て、南さんのしゃべり方が早くてびっくりしました。「なんでこんなに喋るの速いんだろう、南さんをどういう風に捉えていたんだろう」って。自分で分かりながら演じているわけではなかったので、新鮮に感じました。南さんはギリギリまでは気持ちを話すけど、つかまれたくない人なのかな?とか、観ていて感じました。重くなりそうになったら去るとか、一緒に感動しそうになったらどこかに行くとか、人と共感・共有する時間が苦手な人なのかなとか。落ち着いて振る舞っているけど、大切な人を亡くしてまだ時間が経っていないから、本当の自分の気持ちがあふれかえる前に相殺するような感じがあって、女の人ってなんて健気なんだろうと思って観ていました。――完成した作品をご覧になって、役の人となりに“気づく”という感覚なのですね!これまでもそっちの方が多いですね。多分、無意識で演じている部分が多いんだと思います。ただ、フィジカルの意識はすごく持っています。身体のクセは、自分の日常の習慣からなかなか離れられないじゃないですか。だから役柄によって、ちょっと違う体の動きをできるようには考えています。例えば同じ距離を歩くのでも、「この人は4歩だけどこの人は2歩でいけるな」だったり、「この人は普段から草履をはいているから足が地面から離れにくい歩き方だろうな」といったことは意識していて。今回本当にラッキーだったのは、子ども役のふたりが地元の小学生だったことです。実際にその地で生きている子たちだから、目の前にお手本がいるんですよね。現場で子どもたちのお母さんとも話せたし、自由な子どもたちだったので、勝手についてくるのが面白くて。北村光授くん(吉岡秀隆さん演じる溝口の息子役)のほうがちょっと私のことを意識し始めて「俺あっち行くけど満島さんも行く?」って言ってきて、「私はまだここにいるかな」と返したら「じゃあ俺もいようかな」って残ったりすることもありました(笑)。それを見た吉岡さんが「懐かしいな。俺のときは田中裕子さんだった」と話していました。――現場のいい雰囲気が伝わってきます(笑)。しかし、いまおっしゃった通り現地の方がいてくれるのは大きいですね。僕たちが映画で観るのはあくまでその人物の一部であって、描かれないだけで人生はそれぞれにある。ただ演技ではその描かれない過去だったり生活も匂わせないといけないと考えると、その土地の風土や空気感を知っている人たちの存在は心強いなと感じます。撮影した場所には実際に住んでいる方もいるのですが、家賃が1万円もしないようなすごいところなんです。なかなかに特殊な場所に住んでいる方々だから、皆さん個性豊かでした。家賃が高い家に住む才能もあるけど、低すぎる家に住むにも才能がいると思うんです。「人生をどう面白がれるか」を体現している住人の方たちがいたので、余計に感じやすかったですね。なんだか私の演技の在り方って、植物っぽいんですね(笑)。土地の光を浴びて光合成して、地面から水を吸い上げるみたいにその場所の空気を感じて、人とふれあって…。確かにそうやってお芝居しています…。映画のパワーを再確認「“形に残らない芸術”はやっぱりいいな」――満島さんが以前『奇蹟がくれた数式』を観て過呼吸になるくらい感動した、というお話を聞きました。心を使うお仕事のぶん、役者さんによっては感情が引っ張られすぎてしまうから“閉じて”映画を観る方もいらっしゃるかと思いますが、満島さんはいかがですか?作品もそうなのですが、演者さんによって変わると思います。私にとってはデヴ・パテルさんで、観ているうちにどこかの部分がつながる感覚がするというか、シンパシーを感じすぎてしまうんでしょうね(『スラムドッグ$ミリオネア』『LION/ライオン ~25年目のただいま~』ほか。最新主演作『グリーン・ナイト』が11月25日公開)。自分がその状況になっている気持ちだったり、近親になった気がして。そういった風に、持っていかれやすい俳優さんがいますね。監督だと、ジュゼッペ・トルナトーレさんの映画を観るとすごい泣いちゃいます(『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』等で知られる)。懐かしいんだか何なんだか、波長がそろっちゃって感動しすぎちゃうんですよね。『奇蹟がくれた数式』もそうですが、観たいのに気持ちが溢れてきて最後まで観られないから、映画館では難しくて。家で観て、何回も止めて、また観てを繰り返してようやくエンドロールにたどり着きました(笑)。――感受性が豊かすぎるから…。限られた作品だけなので、普通に見られるものも多いですが、それくらいの気持ちにさせてくれる映画ってやっぱりすさまじいパワーだなと感じます。『川っぺりムコリッタ』はどんな映画になるのか想像できていなくて…でも、想像以上に好きでした。荻上さんの監督作品はこれまでも好きで観ていたのですが、これまで以上に人間と自然が同等に映っていて、人の感情すら風景の一部に見えて。その感じがすごく好きでした。――すごくわかります。ナメクジやイカの目玉だったり、自然が持つある種のグロテスクさ、生命みたいなものが映し出されていました。撮影監督の安藤広樹さんは、これまでにCMやMVを中心に活躍されている方で、商業映画の長編は2本目くらいと聞きました。良い画を撮られますよね(『いなくなれ、群青』、本作を経て『線は、僕を描く』の撮影監督を務める)。私の撮影最終日は小さなハイツムコリッタの庭に、ホースで水をかけて虹を出す場面だったのですが、撮影が終わって安藤さんに「お疲れ様でした」って言うと「満島さんって何を考えているんですか」と聞かれまして。「他の役者さんたちはこういう思想でいまこういう場面になっているというのがわかるから、段取りやリハーサルを見て『こういう風に撮っていこう』を考えられるんだけど、何を考えて何を見ているのか全然わからなかった。もしかして僕たちに見えないものとか見てますか?」と言われました(笑)。――きっとそれは、満島さんが南さんを生きていたからでしょうね。カメラを意識しない境地まで到達されているというか。どうなのか分かりませんが(笑)、そう言っていただけて嬉しいです。ただ私、本当にカメラを無視しちゃうときが多々ありまして…若かりし頃はお芝居中にカメラに何回もお尻を向けちゃって、よく怒られていました(苦笑)。自分がそっちのほうを好んでいるからこそそうなってしまうのだと思いますが、やっぱり意識がその場所に集中してしまうんですよね。――それもまた感受性の高さと紐づくように感じますが、同時に負荷を背負いすぎてしまうのではないかとも心配になります。何かしらでバランスはとっているんだと思います。自分でも、負荷を他人よりかけちゃっているところと、信じられないくらい抜いているところの両方があるような気がしています。でも、おっしゃっていただいたように心を配ってもいるんでしょうね。今回『川っぺりムコリッタ』を観て改めて「映画の中っていいな」と思えました。上手い下手じゃなくて、意味が分からないからいい。映画って、意味が分からないことを栄養にしてくれるじゃないですか。わかり良いことのほうがどんどん増えているなかで、映画に生きている“形に残らない芸術”はやっぱりいいなと再確認してしまいました。◆ヘアメイク:星野加奈子(KanakoHoshino)◆スタイリスト:安野とも子(Tomoko Yasuno)◆衣装クレジット:ワンピース 私物/ジュエリー CASUCA/靴安野商店(text:SYO/photo:Masumi Ishida)■関連作品:川っぺりムコリッタ 2022年9月16日より全国にて公開© 2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会
2022年09月16日ディズニープラスで配信中の映画『ザ・プリンセス』のエグゼクティブ・プロデューサー兼主演のジョーイ・キング、さらに共演のヴェロニカ・ンゴーと監督のレ・ヴァン・キエットのインタビューが到着。本作で本格的なアクションに挑んだジョーイは「マーシャル・アーツのプロセスに恋してしまった」と語り、アクション俳優として知られるヴェロニカもそんなジョーイの姿勢に絶賛を贈っている。ジョーイはエグゼクティブ・プロデューサーとして当初から本作のプロジェクトに関わってきた。「この映画をやりたいと思わせた理由は、この映画が私をすごく怖がらせたからだと思います。最初に読んだ脚本は、最終的に私たちが撮影するときに使った脚本とは違うものでした。何人かでアイディアを寄せ合って、少しその脚本を変えましたが、何ページあったでしょうか。95ページのうちの92ページは、戦いだったんです」と明かす。物語は、ある中世の王国。国王の座を奪い、全ての村人を自分の支配下に置こうと企むジュリウスの求婚を拒否した王女が、城の離れの塔に監禁されてしまう。さらに、ジュリウスは国王の座を力ずくで奪おうと、王家に攻撃を仕掛けてくるのだ。「素晴らしい脚本を読んでも、それが駄作になったりするし、その反対のこともあります。そんなに良くない脚本を読んで、それが素晴らしい作品になることもあります。でも、この映画には、素晴らしいチームがいました。ここにいる2人や他のみんなも、私が怖がったこの脚本がすごく好きでした。そして、キャラクターが大好きでしたし、彼女(主人公の王女)に名前がないこともとても気に入りました」とジョーイ。「それに、これまでにアクション映画をやったことが一度もありませんでした。それで私は、そろそろ私がやるべき時だ、と思ったんです」と語る。「とてもエネルギッシュな軌道を持つキャラクター重視のストーリーが、僕をとても刺激したんです」と言うのは、ベトナム出身のキエット監督。「繊細なユーモアが好き」という『ダイ・ハード』や、『ザ・レイド』のようなハードボイルドなアクションやサバイバル・スキルが「僕たちにとてもインスピレーションを与えてくれました」と語り、「『ザ・プリンセス』はこうあるべきだというリズムに、僕たちを引き込んだと思うんです」と、今作の指針になった作品の名前を挙げた。「こんなプリンセス・ストーリーを見られるのは初めてのこと」その製作過程をふり返り、ジョーイは「すごく素晴らしかった。これほど誇りに思ったことは、長い間ありませんでした」と言う。「関わった人々みんながどれほどの仕事をしたか、私自身がどれほど仕事をしたか。そしてどれほどの知識が今作に入っていったか。それから完成作を見て、どれだけ素晴らしいものになったかということにとても驚きました。これ以上誇りに思うことはできませんし、人々にこの映画を見てもらえることにすごく興奮しています」と語り、「本当に楽しい時を過ごしました。観ていてとても楽しい映画なんですよ」と自信を込める。「ジョーイが言った通りです。僕たちはとても楽しみました」と応じるキエット監督は、「ジョーイは、常に僕をドラマ的に感心させただけじゃなくて、身体的にも感心させました。本当に楽しかった。なぜなら、明らかに、僕の仕事をもっとずっと簡単にしてくれたから。映画に見事に溶け込んでいました」と語る。また、ヴェロニカも「ベトナムから出て来て、こういったプロダクションに参加するのはいつもとても楽しいです」と話しながら、「今回でキエットと一緒に仕事をするのは3度目です。でも今回は、初めて彼の違う側面を見ることになりました」と明かす。もともとクレイジーでダークなストーリーを得意とするという監督だが、「私に電話をしてきて『僕がプリンセス映画をやるんだ』と言ったとき、私は『何ですって?』という感じでした(笑)」と打ち明ける。「すべては本当にファンタスティックでした。映画の中でジョーイがとてもかっこいい演技をしているのを見ることができますし、ストーリーはとても楽しいのです。こんなプリンセス・ストーリーを見られるのは初めてのこと。すごく驚かされることを約束します」と続け、「私にとってもとても楽しい作品なのです。キエットとまた、こんなに素晴らしい旅をできてとても誇りに思います。そして、ジョーイのことを知ることができました」とヴェロニカ。「彼女は本当に才能があります。私はこれまで一度も、女の子がああいうふうに戦うのを見たことがありません」と話し、ジョーイについて「トレーニングしている時すでに、どれほど全力を傾けてやっているかを見ました。完成作を見て、私は『ワオ』って思いましたね。座席にじっと座っていられませんでした。素晴らしかった」と絶賛した。初めての本格アクションも「素晴らしいサポートシステムがあった」そんなヴェロニカの言葉を受け、「本当に名誉なこと」とジョーイは言う。「ヴェロニカは明らかに、アクションの世界でものすごく経験があって、本当に信じられないほど素晴らしいファイターです。彼女から学ぶことが山ほどあることがわかっていました」と語り、「彼女が戦っているのを見ると美しいダンスみたいなんです。だからそう言ってもらえてとても嬉しい」と明かす。「私は、どれだけ学ばないといけないかよくわかっていましたし、今も学ばないといけないことが山ほどあります。でも、自分が全力を尽くしたことを知っていて、ヴェロニカみたいに、彼らの仕事をよくわかっている人と一緒に仕事ができて、彼女が、たとえほんの少しだけでも私に感心してくれたと聞いて、とてもナイスだと思います」と自らを誇る。すると、「あなたは、誰にとっても最高の生徒でしたよ」とヴェロニカが応じ、改めてお互いを称え合った。「私が自分にこういったことがやれると感じた唯一の理由は、キエットやヴェロニカやスタントチーム全体のおかげなのです」とジョーイ。「『私には何もやれない』と感じさせるような人は誰もいませんでした。私の2人のスタントダブルの人たちは、私にとって素晴らしい友人たちになりました。彼女たちは、私にやれることはなんでも私にやらせたかったのです。私が自分にやれる最高の状態になれるように、私を訓練したかったんですね。そういったことが私を良い生徒にしてくれました」と言い、そこまで挑むことができたのは「私を信じてくれた人たちの本当に素晴らしいサポートシステムがあったから」と続ける。緊張していた彼女を「あなたがやれるとわかっている」と奮い立たせてくれたチームの存在が、「とてもとても助けになった」というのだ。ジョーイとヴェロニカは王女とリンそのもの「多くの人々が共感できる関係」ヴェロニカが演じるリンは、ジョーイ演じる王女にとってまさにそうした役割を担うメンターである。「私とヴェロニカのキャラクターの関係で大好きなことは、それが映画の心のよりどころだということ。すごく多くのことが起きている映画の中でね。それが映画の中で失われることはありません」とジョーイ。「私たちの関係や、私たちのキャラクターの変化、私たちが一緒に戦うこととかすべてにハートがあります。その背後にはたくさんの愛があるのです。とても美しい姉妹のような、母親のような、力強い相性があります。そして、観客はずっと彼女たちのことを応援します。彼女たちの間の関係は、脚本でとてもよく描かれていました。とても美しかった」と明かす。「完成作の中の2人の関係は、さらにもっとエキサイティングになっていると思います。彼女たちはお互いにとても楽しんでいます。彼女たちの関係は可笑しいんです。お互いのことをとてもよく知っています。だから、もっともクレイジーな状況においても、お互いのことをからかい合ったりするんですよ。それは、多くの人々が共感できる関係だと感じます。彼らの人生にいる誰かと同じように」と語る。また、ヴェロニカも「たとえ私はプリンセスのメンターを演じていても、それは間違いなく友情です。なぜならプリンセスは彼女と一緒に育って、一緒にトレーニングをし、すべて(同じ)哲学を持っているから。その哲学は、プリンセスの頭の中で思い出されて、繰り返されます」と言う。「たとえ極めて重要な状況の中にいても、彼女はいつもフラッシュバックして、彼女たちがお互いに会った時のことを思い出すのです」と語り、「私とジョーイもです。私たちはどんなシーンを演じていても、それをとても楽しみました。ジョークを言い合っていました。その過程でストレスはまったくありません。だから、大好きな撮影になりました」と語った。王女のように「新たな自信を自分の中で解き放った」もし、今作の続編か、あるいはアクションシーンがたくさんある映画をまたやりたいかと問われると、「私は本当にマーシャルアーツのプロセスに恋してしまったんです。この映画のトレーニングをやっている間に、どのように戦うかを学ぶことで」とジョーイは応じる。再びアクションにチャレンジすることになっても、「尻込みしません。私が持っていることを知らなかった、新たな自信を自分の中で解き放ったように感じたんです。なぜなら、こういうことをできるとは思わなかったから。でもそれをできたのです。だから、それは私をとてもエンパワーさせてくれたように感じます」。まさに中世のおとぎ話のような世界観で訴えるのは、女性へのエンパワーメントだ。「『ザ・プリンセス』は、勝ち目のない人が最後にトップになるという物語です。彼女が、自分にはそれはできないと思っている時にね。そして、この映画の中での私のお気に入りの一つは、そこにどれだけ自己不信があるかということなんです。プリンセスには自信があります」とジョーイは言う。「彼女は自分が戦えると知っています。でも、彼女は、自分にそれをやり遂げられるかどうかわからないのです」と語り、「彼女はそれを一度に一歩ずつこなしていくのです。彼女は圧倒されているし、疲れています。彼女はものすごいファイターなのです。この映画の最高の部分は、どんなに相手が強くても、どんなにあなたの自己不信が大きくても、それを克服し、乗り越えて、トップに辿り着けることができるということを、この映画から受け取ることができることですね」と思いを込める。「僕も同意します」と監督も続ける。「最後には、人々はこの全体のテーマを受け取ると思います。『もしあなたが自分自身を信じていたら、もし自分自身に賭けたら、最後はきっと大丈夫です』ということをね」と締めくくっていた。『ザ・プリンセス』はディズニープラスにて配信中。(text:cinemacafe.net)
2022年07月23日インタビューを通じて、彼の口からこぼれる言葉のひとつひとつが、凄まじいまでの熱を帯びている。まるで『キングダム』で演じた信のように。信という直情型の熱い主人公を演じ切った『キングダム』は、2019年に公開され興行収入57.3億円を叩き出し、この年の邦画実写No.1作品に輝き、山崎さんの代表作となった。そして、待望の続編となる『キングダム2 遥かなる大地へ』がついに公開を迎える。果たして『キングダム』という作品、信という役柄との出会いは、山崎賢人をどのように変えたのか――?「プレッシャーよりもワクワクするような気持ち」――前作『キングダム』が公開を迎えるまで、原泰久さんによるこの大人気漫画の実写化に対して否定的な声も少なくありませんでした。主演としてプレッシャーもあったかと思いますが、公開されてからの数多くの称賛の声や57.3億円の大ヒットという結果をどのように受け止めましたか?実写版『キングダム』の世界観をどうやって作り上げていけばいいのか?明確な“答え”が見えない状態で始まりましたが、とにかく現場の熱量が凄まじかったし、自分自身も全身全霊で挑ませてもらいました。それがあれだけの熱い作品、日本の映画ではなかなかないスケールの映画として完成して、嬉しかったですし、それを実際にたくさんの方に観ていただけて、楽しんでもらえたのは素直に嬉しかったです。――大ヒットという結果に安堵する気持ちもありましたか?自分としては「やれることは全てやった」という気持ちでしたが…、それでもホッとした部分はありましたね。普段から数字はあまり気にしないようにしてはいますけど、きちんとヒットしたのはやっぱり嬉しかったです。――その数字があって実現した今回の続編ですが、前作からスケールアップし、合戦シーンもあるなど、ゼロから全てを作り上げた前作とはまた異なる難しさやプレッシャーもあったかと思います。そこは、信が初めて戦場に出ていくときの気持ちとも重なるというか、プレッシャーよりもワクワクするような気持ちが大きかったですね。やる気満々で、アクションの練習も早めに始めましたし、武者震いするような気持ちというか、良い意味での緊張感がありました。――前作では厳しい減量を行なったそうですが、もう一度、そういう厳しい状況に自身を持っていくのはつらくなかったですか?今回の信は、前作でいろんなことを乗り越えてより強くなっていたので、前作のように(過酷な環境で生きる信を体現するために)減量をして…ということはなかったので、そこまでつらいという感じではなかったです。どちらかというと「強く優しく」、「たくましくみんなを引っ張っていく」という気持ちで、思い切り暴れてやろうという思いでした。――今回、再び演じてみて、信という人間に対して発見や新たに魅力を感じたところはありましたか?信は、前作で漂という大切な存在を失っていて、その哀しみを知っているからこそ、本作で出会った同じような境遇の羌瘣(きょうかい/清野菜名)が「姉の仇を討てたら死んでもいい」と言うのに対して、ストレートな言葉で「ふざけんな」と言えるんですよね。そこで“夢”の話をするんですけど、出会ったばかりの相手に「死んじゃダメだ!」と言える信はやはり優しいし、みんながどこかで躊躇してしまったり、言いづらかったりすることを力強く言えるっていうのは、信の魅力だなと改めて思いました。信が羌瘣に言う言葉って、実はいまの時代、みんなが言ってほしい言葉なんじゃないかって思うんです。映画を観に来て下さった人たちに、信を通して『生きる』という力強さを伝えられたらと思います。存在感のある役者がキャラクターをリアルに演じる――前作の「王宮奪還編」で生死を共にした嬴政(えいせい/吉沢亮)や河了貂(かりょうてん/橋本環奈)とは今回、一緒のシーンは前作より多くはないですが、撮影自体は彼らと共演する王宮のシーンからスタートしたそうですね?そうなんです。やはり熱い思いをもって一緒に『1』を作り上げたお亮と環奈ちゃんと共に撮影を始めることができたというのは、すごく大きかったです。「あぁ、『キングダム』が始まったんだな」という感覚でスーッと入っていけて大きな安心感がありました。僕自身、信と政と河了貂の関係ってすごく好きなんです。それぞれが、自分の道で頑張りつつ、目指すべきところは一緒というところが。それこそ、お互いに離れていて、別々の作品でそれぞれ頑張っている時間があっても、また『キングダム』でこうやって一緒になって、同じ志で頑張れるというところで、すごく僕らの関係とも重なるし、2人がいてくれることで自然にそこにいられるんですよね。――大沢たかおさんが演じる大将軍・王騎も、決して一緒のシーンは多くはないんですが、前作に続いて信に非常に大きな影響を与えます。大沢さんの王騎将軍は『1』でもそうでしたが、とにかく圧倒的なオーラと存在感、説得力があって、対峙すると自然と信として憧れの感情がわいてきます。個人的にも大沢さんのことが大好きで尊敬しているので、自分と信の重なる部分をすごく感じられるんですよね。現場でも前回よりもいろんなお話ができてすごく嬉しかったです。大沢さんだけでなく、『キングダム』って役者のみなさんの存在感をそれぞれのキャラクターですごくリアルに感じられるんですよね。豊川(悦司)さんが演じられた麃公もそうですし、佐藤浩市さん(呂不韋役)、玉木宏さん(昌平君役)、高嶋政宏さん(昌文君役)、要潤さん(騰役)…、みなさん、ご自身の“オーラ”ですごくリアルにキャラクターを成立させているなと思います。――撮影、そして完成した作品をご自身でご覧になって、最も心動かされたのはどの部分ですか?「ここ」という一部分というより、全編を通じてノンストップで走り続ける感じが今回の続編の魅力だなと思いました。とにかく勢いがすごくて、走って、走って突き進んで、着いたと思ったらまた…という感じで、そこにすごい数のキャラクターが出てきて、それぞれにドラマがあって、最初から最後までずっと面白いです。役を通して自身も成長「良い相乗効果が生まれている」――山崎さんは10代後半に俳優としてデビューされて、それから現在まで10年以上にわたって、いろんな作品で主演を務めてきましたが、10代後半や20代前半の頃と、20代の後半になった現在とで、作品に向き合う気持ちや俳優という仕事に対する思いに変化はありますか?以前と比べて「みんなで作っている」という気持ちをより強く感じるようになったのかなと思います。ひとりで作品を背負うものでもないし、自分の役だけをやっていればいいというものじゃなくて、共演者のみなさん、衣装、ヘアメイク、小道具、特殊メイク、撮影、照明、録音……本当にいろんなみなさんの力をあわせることでひとつの作品ができているというのをすごく感じますね。――本作でも“仲間”の大切さが大きなテーマとして描かれます。先ほどからお話を聞いていると、『キングダム』という作品、そして信の姿にご自身を重ね合わせながら、生きる上での“道標”のように捉えているのが伝わってきます。そうなんですよね。信は成長していく中で、少しずつ、背負うものができたりもしていきますが、僕自身、俳優として歩んでいく上でリンクする部分がすごく多いなと感じています。『キングダム』という作品に出会い、信を演じさせていただくことで、良い相乗効果が生まれているのを感じています。※山崎賢人の「崎」は、正しくは「たつさき」※高嶋政宏の「高」は、正しくは「はしごだか」(text:Naoki Kurozu/photo:Jumpei Yamada)■関連作品:キングダム2 遥かなる大地へ 2022年7月15日より全国にて公開(C)原泰久/集英社 (C)2022 映画「キングダム」製作委員会
2022年07月18日ベビーカレンダーは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により各地で立ち会い出産や面会が制限されているなか、これから出産を迎える方の心の準備としてご覧いただくための出産ドキュメンタリー動画を7月8日(金)に公開しました。 「全く痛くないお産」を目指す「完全計画無痛分娩」での出産に密着!7月8日(金)、ベビーカレンダーは公式YouTubeチャンネルにて、29歳ママの計画無痛分娩での出産に密着したドキュメンタリー動画を公開しました。新型コロナウイルス感染の影響から、現在でも感染予防の観点から面会や立ち会い出産を制限する産院が多くあります。今回は、厳しい感染対策を実施し、家族(パパ、子ども)のみ立ち会いを可能としているレディースクリニックで、パパに見守られながら小さな命が生まれた瞬間を動画におさめました。尊い命が生まれる瞬間を共有することで、これから出産を迎える方や赤ちゃんを産みたいと思っている方の励みになれば幸いです。 今回、「全く痛くないお産」として独自の「完全計画無痛分娩」をおこなう東京都北区王子「スワンレディースクリニック」協力のもと、新型コロナウイルス感染症対策を講じたうえで、1人のママの出産の様子を撮影させていただきました。コロナ禍での妊娠、初めての出産への恐怖心など、さまざまな思いを抱えて挑んだママの出産当日。ずっと近くで寄り添い続けたパパに見守られながら、小さな命が生まれた奇跡のような瞬間をぜひご覧ください。 ▲出産前日、ママの背中にカテーテルを入れるための局所麻酔をおこないます ▲陣痛の痛みがない状態でパパがママの頭を支えて上体をサポート。助産師さんたちの掛け声とともにいきみます 今回密着したのは、「近くに頼れる人がいなかった」「産後の回復が早いと思った」という理由から無痛分娩を選択したご夫婦。「パパに立ち会ってもらいたい」という願いを叶えられることも大きかったと言います。「職場で周りの理解も得やすく、急に生まれるかも……という不安もなかったので、精神的にも安心でした」というパパ。そしてママも、パパがつねに近くにいてくれて「一緒に出産をしている」と思うことができ、最後まで頑張れたと言います。無事にお子さんが生まれた喜びを噛みしめながら、お互いを思い合い、感謝の気持ちを伝え合う姿がありました。 ▲生まれたばかりの愛娘を初めて抱っこするパパ。「こんにちは、お父さんよ」 ▲ずっと寄り添ってくれたパパ。お互いに自然と「ありがとう」の言葉があふれます <東京都 北区王子 スワンレディースクリニック 岩本院長>無痛分娩とは陣痛(陣痛の痛みやストレス)を麻酔の力を使って取り除くことによって、落ち着いてお産に臨んでいただくというのが目的の出産方法です。陣痛が来てから麻酔をして痛みを取り除く方法と、前もって入院・出産をする日を決めて陣痛を計画的に起こし、麻酔を投与する「計画無痛分娩」の2通りがあり、当院では「計画無痛分娩」にてご出産いただいております。今回のお産は、出産前日の入院時の内診初見では子宮口が硬く、比較的お産に時間がかかりましたが、母児ともに元気でご出産されました。ご本人のいきみがじょうずだったので、子宮口が全開になってからはスムーズにお産が進みました。生まれてきた赤ちゃんもとても元気で、本当に安心しました。赤ちゃんの頭が細長くなって生まれてきたのは、赤ちゃんがお母さんの産道に合わせて自分の頭の形をうまく通れるように調整して出てきてくれたからです。お産は本当に赤ちゃんとお母さんの協力作業で、本当に神秘的なものだなといつも感じています。 <ベビーカレンダー編集長 二階堂美和>出産はいつの時代も命がけです。産後のママの体は大きなダメージを負っています。本調子に戻らないうちに慣れない育児に向き合うことで、心も体もまいってしまうケースも少なくありません。コロナ禍で人に気軽に会うこともままならなくなった昨今、その傾向は進んでいるように感じています。そんなコロナ禍の出産で今回のご夫婦が選択したのは全く痛くないお産を目指した「完全無痛分娩」。産後、ママひとりでの育児になるため、少しでも体力を温存できるよう、回復が早いお産を望んだことも理由の一つだそう。コロナ禍で妊娠・出産を躊躇している方にとって今回の分娩方法が新しい選択肢の一つになり、希望に繋がったら……と考え、出産の一部始終に密着させていただきました。Withコロナ時代の新しい出産のカタチをご覧ください。そしてどんな状況でも人は強く、命の誕生は素晴らしいものであることを感じてもらえたら幸いです。 コロナ禍での不安な妊娠生活、初めての出産への恐怖心。いろいろな思いを抱えながらの出産でしたが、きっと同じような気持ちを抱えている方も多くいらっしゃるでしょう。そんな方たちがこの動画をきっかけに、少しでも前向きな気持ちになり、赤ちゃんが生まれることの幸せをいっぱいに感じられますように。
2022年07月13日ホッキョクグマをはじめとする、寒い地域ならではの動物たちと触れ合える、北海道の札幌市円山動物園(以下、円山動物園)。散策しながら、さまざまな動物たちを見ることができる、人気のスポットです。2022年7月現在、円山動物園オフィシャルショップにあるオリジナルグッズが、ネット上で「天才すぎる!」「もはやアートの域では?」「めっちゃ欲しい」と話題になっているのをご存じですか。多くの人々の心をわしづかみにしているのは、円山動物園オフィシャルショップが2021年3月から販売しているオリジナルグッズ『アニマルご祝儀袋』です。こちらのグッズは、同年に円山動物園が70周年を迎えたタイミングで作られたものだといいます。水引の部分は、動物園にゆかりのある動物の顔がデザインされていて、インパクト抜群ですね!発売から1年が経過した2022年7月現在も、たびたびネット上で「かわいい!」と話題になり、グッズを購入する人が多いのだとか。多くのファンの心をわしづかみにしたオリジナルグッズは、どのようにして誕生したのでしょうか。円山動物園の『アニマルご祝儀袋』に反響!制作秘話を聞いてみたグッズの制作秘話について、円山動物園オフィシャルショップの社員に、話をうかがいました!――商品が生まれたキッカケは。まず、円山動物園が70周年を迎えるにあたり、「何かおめでたい商品が作れないか」と思ったのがスタートでした。いろいろとグッズ展開を考える中、さまざまな表現や活用方法で注目され始めていた水引に思い当たり、動物を水引で作れたら面白いのでは…という案が浮上したのがキッカケです。それから、現在お世話になっている『水引工作所』さんに白羽の矢が立ちました。『アニマルご祝儀袋』は、水引で創作活動を行う『水引工作所』に依頼して、実際に作ってもらった商品とのこと。『水引工作所』の作家さんが、一つひとつ丁寧に手作りしているそうです。種類は、オオカミ、ホッキョクグマ、レッサーパンダの3パターンがあります。オオカミホッキョクグマレッサーパンダどれも異なる魅力があって、購入時に迷ってしまいそうですね!たくさんの動物がいる中で、なぜこの3種類を選んだのでしょうか。――この3種類の動物をモチーフにした理由は。どの動物も、本当にそれぞれの魅力がありますので、正直、動物選びはとても迷いました。ですが、円山動物園の70周年を記念する企画でもあったので、「特に人気の高い動物にしよう」と社員で話し合いを重ね、この3種類にしました。さらに、動物グッズとしては未知の商品だったので、極力万人受けする動物を選びました。――ちなみに、一番人気のあるデザインはどれ?本当にどれも人気は拮抗しています。ただ、発売当初は円山動物園でも代表的な動物であるホッキョクグマが、若干抜きん出ていた感じはあります。こうして1年以上経ち、再注目を集めてからは、オオカミもさらに人気が出ています。ただ、残念なのが今年のゴールデンウィーク中にオオカミが亡くなってしまい、現在は円山動物園でオオカミは見られなくなってしまいました。それでも根強いオオカミファンからの愛情をヒシヒシと感じています。円山動物園でも人気を博していたオオカミは、2022年のゴールデンウィーク中に亡くなってしまったものの、根強いファンがグッズを購入していくそうです。園内の動物たちが、多くの人に愛されながら過ごしていることが伝わってくるエピソードですね。70周年記念のオリジナルグッズを作る際に、『アニマルご祝儀袋』以外でボツになった企画があったのか、聞いてみると…。ボツになってはいませんが、当時は商品化まで至らず、温めているものはあります。現在もいくつかシリーズ化や発表、商品展開を待ち構えてるものがあります。2022年7月現在、『アニマルご祝儀袋』のほかにも、素敵なオリジナルグッズを検討中とのこと。次はどんなグッズが誕生するのか、楽しみですね!最後に、grapeの読者に向けてメッセージをもらいました。今回のご祝儀袋をきっかけに、まずは動物園へ行ってみたい、どんなところだろうと興味をもってもらえると嬉しいです。当ショップは動物園が運営しているわけではありませんが、実際に足を運んでくださった方々に少しでも楽しい思い出を残してもらうための1つの要素だと思っています。大人の視点や子供の視点、さまざまな物から、動物園や動物を取り巻く環境に興味をもってもらう入口の1つして、これからも面白いグッズや、その土地ならではの商品づくりを心掛けたいと思っています。『アニマルご祝儀袋』が、これほどまでに多くの人を魅了するのは、作り手側の動物を愛する気持ちや、来園者を喜ばせたいという、熱い思いがこめられているからかもしれませんね。[文・構成/grape編集部]
2022年07月09日普段見ることのできない芸能人ママたちのバッグの中身を紹介!今回は14歳の女の子、11歳、9歳、3歳の男の子の4児ママ・辻希美さんが、休日に少し大きめの公園に行くときのママバッグの中身を見せてくれました! 「子どもと出かけると、思わぬことが起きるから大荷物になってしまう」という辻さんの、4人の子育て経験を活かしたマザーズバッグの中身を大公開♪ 辻希美さんのマザーズバッグの中身をチェック! 1マザーズバッグ大好きな「ジェラート ピケ」の「スーパーマリオ・ヨッシー柄」のママバッグを使っています。コーティング素材だから地面に置いても汚れがふき取りやすいです。ショルダー付きで、ポケットも多くて使いやすいです。 2おむつ・おしりふき3歳の三男のおむつはグーンのパンツタイプ・Lサイズ。厚手でしっかりしているから、ずっと使っています! おしりふきはコストコ。リニューアルしてパッケージが可愛くなりました♡ これも厚手で使い安やすい! 公園に行くと子どもたちはたくさん遊んですぐ汚れちゃうので、大きいサイズを持って行ってます。 3タオル夏の公園にはタオルを多めに持って行きます! ハンドタオルは大好きなハンギョドンやスヌーピー♡ 載せきれなかったけど、大きいサイズのタオルもたくさん持って行きます。 4ハンドソープ家族が多いので、公園に行くときは泡ハンドソープをボトルごとジップ付きビニール袋に入れて持って行きます。 5ハンドクリーム&ヘアゴム 「Parsley(パセリ)」のハンドクリーム。香水は付けないから、香りものはハンドクリームだけ。自然なダマスクローズの香りが好きです♡ シュシュなどのヘアゴムも必需品。すぐに髪を結べるように必ずバッグの中に入れています。 6除菌シート手を洗ったあと、アルコールタイプの除菌シートで手を拭くので、80枚入りで大容量の除菌シートも持ち歩いています。生地がしっかりしていて使いやすいアカチャンホンポのものを愛用中です! 7子どもたちの着替え夏の公園では水遊びをするので、必ず子どもたちの着替えも持って行きます! 8 財布「ルイ・ヴィトン」のミニ財布。財布はコインケースくらいの小さいサイズが好き。 9予備のマスク個包装のマスクを予備として持ち歩いています。 10ミラー&コームハンギョドンのコンパクトミラー。娘とサンリオにどハマりしていて、一緒に買い物に行きました♪ 私の必需品はこれ♡ 私の公園バッグは、ミッフィーのミニトートバッグ。大きいマザーズバッグの中に、ミニトートを入れて自分の貴重品を持ち歩きます。 スマホケースもハンカチもミッフィー♡ シュシュやヘアゴム、リップ、メイク直し用のファンデーションなどは、バッグの中でバラバラにならないようにまとめてジップ付きの袋に入れています。 自分の持ち物は少ないから、仕切りがあまりなく、物を出し入れしやすいトートバッグが好き。荷物はなるべく最小限に抑えたいんですけど、子どもと出かけると思いもよらないハプニングが起こるから、タオルや着替えをたくさん持って行くので結局大荷物です(笑)! ◇◇◇ 辻さんありがとうございました! ヨッシーやハンギョドン、ミッフィーなどキャラクターグッズが大好きな辻さん。公園には石けん類がないことが多いので、泡ハンドソープをボトルごと持っていくのは良いアイディア♪ 小さいお子さんがいるご家庭は、泡立てなくてもいいので、紙石けんより便利かもしれませんね。そしてやはり大家族ならではの大荷物に驚き! 大人気ママ・辻さんの持ち物、ぜひ参考にしてみてくださいね。 著者:ライター 廣瀬尚子二児の母。女性誌の編集を経て、フリーランスに。広告やアパレルブランドの撮影、雑誌やWEBマガジンの執筆などを手がける。
2022年06月29日近年、新型コロナウイルスの影響で、保護者が子どものサッカーを観戦する機会が減っています。子どもの様子が知りたくて、「サッカー、どうだった?」と聞くと「別に」「普通」などのそっけない答えしか返ってこず、やきもきした経験は誰しもあるのではないでしょうか?そこで今回は、スポーツジャーナリストとして、多くの著名人、アスリートの取材をしてきた二宮清純さんに「子どもの答えを引き出す、質問の仕方」や「コーチに質問するときのポイント」についてうかがいました。(取材・文鈴木智之)写真は少年サッカーのイメージ<<前編:インタビューのプロ二宮清純さんに聞いた「今日の試合どうだった?」「別に......」で終わらせない会話術■負け試合でも手ごたえがある場合も。「勝った?負けた?」より「今日なんかいいことあった?」と聞こう二宮さんは前回の記事で、「言葉に頼らない」「距離感が大事」など、質問をするときのポイントを教えてくれました。子どもとサッカーの話をするときにしてしまいがちなのが、「勝った?」「負けた?」「何点取った?」など、結果にフォーカスする質問です。二宮さんは「もちろん試合に勝つことや点を取ること、 勝利に貢献することは大事ですが、試合に負けたとしても、自分の中で手応えがあったプレーがあるはず」と言います。「試合の勝ち負けや点取った? ではなく、今日はなんかいいことあった? などの間口の広い質問の方がいいのではないかと思います。僕は子どもの頃、少年野球をしていたのですが、ある試合で内野からピッチャーに牽制のサインを出して、アウトにしたことがありました。試合には負けたけど、自分としてはすごく嬉しかったんです」その試合を偶然見ていた学校の先生から「あのプレーは頭脳的だったね」と褒められたそうで、50年経ったいまも、そのことを覚えていると言います。「試合には負けたけど、褒められて嬉しかった記憶がいまもあります。スポーツには結果以外に、手応えを感じたプレーもあるので、そこを引き出すような『何かいいことあった?』など、相手に委ねるような聞き方がいいと思います」■負けたとき、結果が出ない時ほど自分を信じる力が必要子どもが試合に負けて落ち込んでいたり、いいプレーができなくて悩んでいるときは、保護者の出番です。二宮さんは「負けたときほど、自分を信じることが大事」と言葉に力を込めます。「僕が思う名選手の条件は『負けたとき、結果が出ないときに、自分を信じてることができた人』です。よく『負けたときは自分を信じろ。勝ったときは自分を疑え』という話をするのですが、負けたときやうまくいかないときは、周りから『何でだめだったの?』『何で負けたの?』など色々言われます。そのときこそ、自分を信じる力が必要なんです」うまくいっていないときは、周りから白い目で見られたり、心無い言葉を浴びせられたりすることがあります。「そんなときこそ、誰よりも自分が自分の味方になってあげること。オレはこんなもんじゃない。今日はたまたまうまくいかなかっただけだ。『次はやってやるぞ』ぐらいの気持ちでいいと思います。そこで味方になってあげられるのが保護者です。子どもの様子を観察した上で、サポートできることは何だろう? と探してあげるといいと思います」一方で、試合に勝ったとき、うまくいっているときは「これは自分ひとりの力じゃない。周りが手助けをしてくれたからうまくいったんだと、周囲に気持ちを向けることが大事」と言います。「僕は取材者として、たくさんのスポーツ選手を見てきましたが、ティーンエイジャーの頃は、うまくいっていると自分の手柄だと思って、有頂天になる場合があるんですよ。そういうときこそ、『本当にこれでいいのかな』『たまたまかもしれない』『周りの助けがあったからだ』と、自分を疑う視点があった方がいいんです」■言葉には体温がある、指導者に聞きたいことがあれば直接話してみよう子どもとのコミュニケーションに加えて、指導者とのやりとりに悩んでいる保護者も少なくありません。練習内容や選手起用に関して、指導者に聞いてみたいけど、どう言っていいかがわからない......。そんな思いをしたことのある人もいるのではないでしょうか。インタビューのプロである二宮さんは、「昔は指導に口出しするなとか、子どもを預けたら文句を言うなといった風潮があったと思いますが、いまの時代はそうはいきませんよね。指導者と保護者のコミュニケーションは、より大事になってきていると思います」と話します。「疑問があるときは、会って話をした方がいいと思います。いまはLINEをはじめ、文字でやり取りすることの多い時代です。ですが、それだと言葉のニュアンスやイントネーションが伝わりきれないところがあります」二宮さんは「私に任せてください」という言葉を例に説明します。「文字で単純に『私に任せてください』と書くのと、実際に会って、笑顔で『私に任せてください』と言って相手の肩をポンと叩くのとでは、受け取る側の印象はまったく違いますよね。文字で『私に任せてください』だと、突き放していると感じるかもしれません。でも会って、顔を見て『私に任せてください』と言われると、安心できますよね。それは、表情や言葉からニュアンスが伝わるからです」練習前後の5分、10分でも、コーチに会って話すことができれば、モヤモヤや疑問の解消にもつながりそうです。「大事な話は、会ってした方がいいです。言葉には体温がありますから。文字だけだと、体温を感じることはできませんよね。字面だけで判断することは危険なので、大事な話をするのであれば、基本的に会った方がいいと思います。どう対応するかはそれからですね」サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」■相手から受け取る情報量のうち、「言葉」はわずか7%コミュニケーションの基本は、顔と顔を突き合わせることにほかなりません。『メラビアンの法則』によると、人間が相手から受け取る情報量のうち、言葉から受け取るのはわずか7%で、それ以外の93%は非言語(表情や仕草など)によるものだそうです。それほど、言葉以外の情報は大切なのです。コロナ禍では会って話をしずらく、マスク越しの表情を読み取るのは難しいかもしれませんが、注意深く観察することを心がけるだけで、得られる情報量が変わってきそうです。お子さんやコーチ、周囲の方とより良いコミュニケーションをとるためにも、ぜひ参考にしてみてください。二宮清純(にのみやせいじゅん)スポーツジャーナリスト。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。1960年、愛媛県生まれ。スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。五輪・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士前期課程修了。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。経済産業省「地域×スポーツクラブ産業研究会」委員。認定NPO法人健康都市活動支機構理事。著書に「勝者の思考法」「人を見つけ人を伸ばす」「人を動かす勝者の言葉」など多数。サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」
2022年06月28日4人のお子さんを出産後もテレビ出演のほか、SNSでも大人気の辻希美さんに、妊娠・出産・育児でのエピソードをインタビュー!辻希美さん(35歳)は、2007年に俳優の杉浦太陽さんと結婚。2007年に第1子となる女児・希空(のあ)さん、2010年に男児・青空(せいあ)さん、2013年に男児・昊空(そら)さん、2018年に男児・幸空(こあ)さんを出産。テレビ出演のほか、家事・育児などについて発信するSNSも大人気です。 今回はお子さん4人の妊娠・出産・子育てについて詳しくお話しをお聞きしました! 4人の妊娠・出産はそれぞれ違っていたそう。 4回の妊娠出産……大量出血で意識不明になったことも! 大変だったことで特に印象に残っているのは、第1子のときのこと。一人目を妊娠したのは19歳で、周りの友達が成人式に行ったり、遊んだりしているのに自分だけ育児をしていて……若くしての妊娠・出産だったこともあり「遊びに行けない」ということが気持ち的につらかったです。 でも体力的には、やっぱり若かったので、体のつらさはあまりなかったです。1人目は(上の子がいないから)つわり中は休むことができた分、今思うとラクだったのかなと思います。 つわりはそれぞれで、情緒不安定になることもあったし、食の好みも変わりました。 1人目妊娠中は、トマトや氷など、さっぱりしたものを食べたくなって、2人目か3人目のときには、枝豆をよく食べていました。4人目のときは、無性に辛いものが食べたくて、近所のうどん屋さんの一番辛いメニューを、多い時には週5で食べに行っていました(笑)! 妊娠中の体重は、1人目のときは6キロくらいしか増えなくて、2・3人目も10キロ以下。でも4人目は13キロ増えました! 10キロ以上増えると、産後に体重を戻すのが大変でした……! パパは全員、出産に立ち会うことができました。出産も4人それぞれ違っていて。 1人目の出産は、2日がかりで大変でした。陣痛の合間に寝て、ごはんも食べられなくて本当つらかった……! 2人目は、出産直後の出血が多くて、数時間意識がない状態が続きました。4人の中で一番出産も産後も大変でした。 3人目は、私の母と子どもたち、家族みんなで立ち会ってくれました。長女が水を飲ませてくれたり、腰をさすってくれたりしました。 1~3人目は個人病院、4人目は大きい大学病院で出産。上に子どもたちもいるので計画的に産みたかったのもあり、4人目にして初めて計画無痛分娩で出産しました。MAXの陣痛の痛みがない状態で生めたので、どうして最初からやらなかったのかな?と思ってしまうくらいやってよかったです! 出産してから、すべてが「子ども中心」へ出産して一番変わったのはやっぱり優先順位。考え方が自分中心から、すべて子ども中心に変わりました。結婚する前は自分が第一だったけど、出産してからは子どもが第一に。仕事も、子どもの生活スタイルを崩さない範囲でできるように抑えています。 私が子どものころ、私が風邪をひくと母が「代わってあげたい」とよく言っていたんですが、自分が親になってその気持ちがよくわかりました。 「子どもの成長とともに自分もできることが増えていく」子育てで一番楽しいことは、子どもと一緒に成長できること。一瞬一瞬は大変なんだけど、そのおかげで自身の成長を感じられる瞬間があります。私はもともと、りんごの皮も剥けないくらい何もできなかったんですけど、出産・育児をするなかで、できることがどんどん増えていくんです。子どもと一緒に、自分自身も育っていくことを感じられる瞬間がとても楽しいです。たとえば、食育(釣りに行って、さばき方を学んで、食べさせる)など、自分の成長とともに、子どもが喜んでいる姿を見られるときは嬉しいです。 親子でダウンしてしまったとき、頼れるのはママ友たち子育てで大変だなって思ったのは、やっぱり自分が体調を崩してしまったときですね。きょうだいが多いと、1人が体調を崩すと家族全員にうつってしまうこともあって、3カ月間家から出られないこともありました。 自分が元気だったら家事などもできるんですが、私がうつってしまうと、家事も子どもたちのお世話もままならなくなってしまうので大変ですね。 私も子どももインフルエンザにかかって40度の高熱が出たとき、最悪のタイミングで洗濯機が壊れてしまったことがあって。修理業者を呼ぶところまではできたんですけど、立ち会えなかったので、ママ友に立ち会いに来てもらったり。いろんな人と助け合いながらピンチを乗り切ってます。 子ども一人ひとりの個性を大事にする「比べない育児」子育てをするうえでルールは特にないんですが、気を付けているのは「きょうだいを比べないようにすること」。 お兄ちゃんだから、お姉ちゃんだからできるとは限らない。子どもの成長は、子どもによって違うということ意識するようにしています。 毎日「子どもがいてよかった!」 毎日、子どもたちがいて良かったって思ってます。 下の子ほど成長が早く感じて「大きくならないで~!」と思ってしまいます。子どもがいないと寂しすぎて、私が体を壊しちゃいそう(笑)。子どもがいるから自分のメンタルも体力も保てています。今はもう、子どもがいない生活が想像できないです。 最後に、ママたちへメッセージ育児をしていると、思わぬ壁にぶつかったり、子どもに対してイライラすることもあると思います。でも、子どもといられる時間は、意外と短いんですよね。小学校を卒業するくらいには、親より友達が優先になっちゃう。たくさんお喋りしてくれる時間も、くっつける時間も実はとっても短い。大変な時もあるけど、その時間も含めて大切にして、一緒に子育てを頑張っていきましょう! ◇◇◇ 辻さん、ありがとうございました! 結婚した当初はりんごの皮も剥けないところから日々努力して、今ではSNSでおいしそうな料理を発信している辻さん。子どもと一緒に成長している自分を楽しむ姿勢が素敵ですね♪profile:辻希美1987年6月17日生まれ東京都出身。2000年、モーニング娘。の第4期メンバーとしてデビュー。2004年に同グループを卒業してからはユニット活動を経て、ソロでバラエディー番組に出演。2007年に俳優の杉浦太陽さんと結婚。現在は、4児の母として育児の傍ら、TVやイベントに出演。アメブロ、インスタグラム、YouTubeで育児・家事などを発信中。 著者:ライター 廣瀬尚子二児の母。女性誌の編集を経て、フリーランスに。広告やアパレルブランドの撮影、雑誌やWEBマガジンの執筆などを手がける。
2022年06月22日近年、新型コロナウイルスの影響で、保護者が子どものサッカーを観戦する機会が減っています。そんな中、子どもにサッカーのことを聞くと「別に」「普通」など、そっけない反応が返ってくることも多いのではないでしょうか。そこで今回は、スポーツジャーナリストとして多くの著名人、アスリートの取材をしてきた二宮清純さんに「子どもの答えを引き出す、質問の仕方」についてうかがいました。「質問のプロ」でもある二宮さんは、相手とコミュニケーションをとるときに、どんなことに気をつけているのでしょうか?(取材・文鈴木智之)写真は少年サッカーのイメージ■子どもに質問する時にどんなことを心がければいいのかスポーツジャーナリストとして数々の著名人、スポーツ選手にインタビューをしてきた二宮さんに、「親が子どもに質問をするときに、どんなことを心がければいいのでしょうか?」と尋ねると、次のような言葉が返ってきました。「言葉だけに頼らないことですね。人間の本音は表情やしぐさに出ます。お子さんが『大丈夫』と言っても『本当に大丈夫なのか?』と、言葉どおりに受け取らず、観察することが大切だと思います」二宮さんは自身のジャーナリスト生活を振り返り「インタビューをするとき、言葉だけに頼ると失敗します。仕草や態度、表情、目や指の動きなど、いろいろなところにその人の考えや心配していること、訴えたいことは出ますから」とアドバイスをくれました。■「別に」「普通」で終わらせないためには、言葉だけに頼らないことお子さんが何か問題を抱えていたとして、言葉では「何もないよ、大丈夫だよ」と言うことがあります。それは親を安心させるためかもしれないし、喋りたくないこともあるでしょう。「それは親子間だけでなく、夫婦間でもそうですよね。奥さんの機嫌が悪そうなときに『どうしたの?』と聞いても『何でもない』『大丈夫』と言うかもしれせん。でも、そのときの言い方や表情、しぐさに情報が含まれていますから、それを見逃さないことですね」子どもがサッカーを終えて「今日どうだった?」と聞くと「普通」「別に」などの返事があったとします。そのときに、言葉の裏側にある感情に目を向けると、一歩進んだコミュニケーションがとれそうです。「子どもが『別に』と言ったとしても、怒ったような『別に』なのか、本当に何もない『別に』なのかで、イントネーションが違いますよね。そのニュアンスにヒントが隠されているので、よく観察することですね。その中で、イライラしている素振りがある、足をバタバタさせている、目に落ち着きがないなどの変化を感じたら、ひょっとして何かあるのかな? と考えを巡らせてあげてほしいと思います」■何かあったと感じても無理に聞き出そうとするのは逆効果二宮さんは、「子どもの変化を感じた場合、その場で『何があったの?』と問い詰めない方がいいですね」と、優しく語りかけます。「問い詰めることで、相手が態度を硬化させることがあります。インタビューをするときに、無理やり首根っこを捕まえて『喋れ』と言っても喋りませんよね。取材対象者に、『この人になら話をしてもいいかな』と思ってもらえるように、手を変え品を変え、コミュニケーションをとりながら話をしてもらうのが、僕らの仕事です。相手が自分の子どもであっても、そのような配慮はするべきだと思います」子どもはひとりの独立した人間です。小学生の頃は親の庇護下にありますが、いち個人として尊重することから、良好なコミュニケーションは始まります。「大人も子どももそうですが、喋りたくないことってあるじゃないですか。それを無理に聞き出そうとすると逆効果になるので、相手が話したくなるまでは、見守る方がいいと思います。ただし忘れてはならないのが、子どもの異変に鈍感でないこと。気がつきつつ、見守るというスタンスがいいと思います」サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」■親子でも距離感が大事。近ければいいわけではないそんな中で、様子がおかしいと感じることが続くようであれば、話をするようにうながすのが良さそうです。「異変が何日も続くのであれば、『話してごらん』と、優しく諭すように言ってあげるといいのかなと思います。親が子どものことを一番よく知っているわけで、観察していたら、いつもと違うなと察知できるはず。それが大事なことだと思います」キーワードは観察すること。そして、大切なのはお互いの距離感。二宮さんは「スポーツは距離感を教えてくれる」と言います。「選手とコーチ、親御さんと子どももそうですが、スポーツは距離感のトレーニングになります。距離感はすごく大切で、ただ詰めればいいというわけではないんですね。相手の近くに寄り過ぎると見えづらく、離れすぎても見えません。カメラと一緒で、顕微鏡が必要なときもあれば、双眼鏡が適しているときもあります。今日は顕微鏡で見てみようか。少し引いて双眼鏡で見てみようかと、どちらの視点も持ちながら、子どもの置かれた状況に応じて使い分けることが大切なのかなと思います」■子ども自身が自分と向き合う時間や逃げ場を用意してあげよう二宮さんは取材時に、「いまは離れて見たほうがいい」「ここは近づくべきだ」など、対象者との距離感を意識しているそうです。「木を見て森を見ずという言葉がありますが、僕は木も森も両方見るべきだと思うんです。それが、相手とのいい距離感を保つ方法だと思います。そして、ときには立ち入らないこと。子ども自身が自分と向き合う時間を大切にしてあげてほしいし、逃げ場を用意することも必要です。それを考えることが、親と子の適度な距離感を推し量る上でのヒントになるのではないかと思います」会話を交わす中で、お子さんの様子を観察し、状況に応じて距離感を変えて接してみる。それが良いコミュニケーションにつながると、二宮さんは教えてくれました。後編では、具体的な質問の仕方や、コーチとのコミュニケーションについて紹介します。二宮清純(にのみやせいじゅん)スポーツジャーナリスト。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。1960年、愛媛県生まれ。スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。五輪・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士前期課程修了。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。経済産業省「地域×スポーツクラブ産業研究会」委員。認定NPO法人健康都市活動支機構理事。著書に「勝者の思考法」「人を見つけ人を伸ばす」「人を動かす勝者の言葉」など多数。サッカー少年少女の親の心得「サカイク10か条」
2022年06月21日