メットライフ生命保険はこのほど、「全国47都道府県大調査2024〜社会情勢の変化と将来への備え〜」の調査結果を発表しました。7回目となる今回は、全国の20代〜70代までの男女約14,000人を対象に、将来のお金と備えに関する意向等について調査しました。今回の調査では、お金への向き合い方に変化が見られたことが大きな特徴で、キャッシュレスやポイ活など、お金を「現金や形のあるもの」から「デジタルや概念的なもの」に捉える傾向がうかがえます。NISAへの関心や貯蓄から投資への意向も増えており、これからお金への知識や教養が問われる時代になりそうです。■約6割がキャッシュレス派、4人に1人は普段から財布を持ち歩かない全年代において、6割がキャッシュレス派と自認し、現金で買い物をする人の方が少数派になりつつある現状が浮き彫りとなりました。4人に1人は普段から財布を持ち歩かないことがわかり、特に、20代男性は約4割が「普段から財布を持ち歩かない」と回答しています。■4人に3人が「ポイ活」を、4割以上がポイント投資も実施全体の75.8%が、クレジットカードやバーコード決済の支払いで貯まるポイントを積極的に集める、いわゆる「ポイ活」をしていると回答しました。また、 43.1%が集めたポイントで投資する、いわゆる「ポイント投資」を実施しているという結果に。さらに、現在資産運用をしていない人でも、35.1%は「ポイント投資」を実施していることが明らかになりました。■就労者の約4割がボーナスをNISAに投資する意向現在、就労している人のうち、69.0%が「ボーナスを貯蓄・投資したい」と回答。また、37.1%が「ボーナスをNISAに投資しようと思う」と回答しました。NISAが資産形成の新たな手段として広く浸透し始めている様子が見て取れます。■お金について、貯蓄よりも投資を重視2024年の調査では「NISA」が昨年の21.9%から28.7%と増加し、今後保有を増やしたい金融商品では突出して大きくなりました。一方で、「定期預金・貯金」や「積立預金・貯金」は昨年から減少しており、貯蓄よりも投資を重視する傾向が顕著となっています。■資産運用意向・実施率は、ともに過去最高を更新資産運用意向は61.1%と、過去最高を更新。また、資産運用実施率は40.5%で、2018年の調査開始以来、初めて40%を超えました。特に30代で74.1%と概ね4人のうち3人が運用の意向がある結果となっただけでなく、実施率も45.0%と全体をけん引しました。■賃上げの「実感」は乏しく、将来にも悲観的物価上昇・インフレに対して、82.2%の人が「不安」と回答。また、「現状は物価が高い状態」と見ている人は68.0%、「今後も現在と同じ状態が続く」または「上昇する」と回答した人は92.1%。賃上げの「実感」は16.1%、現状の給与を「安いと思っている」が61.7%。また来年の給与も「下落すると思うor変化なし」が81.4%と、昇給・賃上げの恩恵を受けていないと感じている人が大勢であることがうかがえます。◇その他のトピックスお金に関するトピックスを中心に、他にもさまざまな設問を用意しており、興味深い結果が出ています。・家計/お小遣いは、20代・30代では「夫・妻それぞれ管理」が最多、40代以降は「妻が管理」が最多・新札切り替えへの期待は埼玉県(渋沢栄一の出身地)がトップ・「自分は最低限の介護でよい」が、「配偶者にはよい介護を受けさせたい」意向が高い・全世代で「お金を掛けてでも外国語を話せるようにしたい」意向が増加、特に高齢層は大幅に増加・人生100年時代を生きる子ども達が「社会で生き抜くのに必要だと思う力」の1位は「コミュニケーション能力」、2位「金融リテラシー」■調査概要「全国47都道府県大調査 2024 〜社会情勢の変化と将来への備え〜」調査対象:全国47都道府県に在住(調査実査時点)の20代〜70代の男女調査方法:インターネット調査調査数:14,079人調査時期:2024年4月12日〜4月17日(エボル)
2024年07月24日世界的なインフレが続くなか、IT企業のサイボウズは7月13日、自社の社員に最大15万円の「インフレ特別手当」を支給すると発表した。不景気の昨今、存続が危うい企業も多いなかでの、そんな民間のインフレ対策や地方自治体の対策などについて、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれましたーー。■諸外国にならい日本政府も対策を!サイボウズは今年も例年どおり1月に給与を改定しましたが、想定外の大幅なインフレに早急な対応が必要だと判断したといいます。最大15万円の特別手当はいわゆる賃上げではなく、今回のみ臨時に支給されるもの。日本国内の社員だと1日8時間、週4日以上働く人には15万円、週3日勤務だと12万円などが支給されます。ネットなどで「うらやましい」との感想をよく見ますが、それが皆さんの実感ですよね。不景気の昨今、存続が危うい企業も多く、社員に特別手当を支給できる会社は少ないのが現実でしょう。一方、ヤフーやNTTのように、リモート勤務を拡大し「日本全国どこに住んでもよい」と社員の居住地制限を廃止する企業が増えています。地方で暮らす選択をすると、住居費が大きく節約できます。また、産地が近いため生鮮食品などが安く手に入ります。地方移住を認めるというのも、民間企業ができる一種のインフレ対策といえるかもしれませんね。地方自治体の対策に目を向けてみましょう。たとえば企業への支援として、兵庫県は「中小企業等原油価格・物価高騰対策一時支援金」を実施しています。売り上げが減った中小企業や個人事業主などに、最大30万円の補助金を支給しています。また、子育て家庭への支援には、岩手県奥州市の「子育て世帯への臨時特別給付金」。児童手当を受けている家庭に、子ども1人当たり3万円を支給します。ほかにも、学校給食費の補助や子ども食堂の運営支援など、多くの自治体が住民の実情に沿った補助を行っているようです。海外では国を挙げて、ガソリンなど燃料費が高騰した昨年秋ごろから、大胆な対策を行っています。たとえば、フランスでは昨年10月に、月給が手取り2000ユーロ未満の人に、100ユーロを支給しました。さらに、コロナ禍の始まった’20年にはイギリスやドイツで、日本の消費税に当たる「付加価値税」の税率を引き下げました。国民の生活を見て、税金もそのつど必要な見直しを行っているのです。ところが日本政府は、税率などを変えるのは“ご法度”とばかり、税金には一切手をつけません。ガソリン価格の高騰にしても、高騰時にはガソリン税の一部を徴収しないとする「トリガー条項」の凍結を解除すれば済むものを、複雑な石油元売り業者への補助金でごまかしています。ましてや消費税減税などは一部の野党が口にするだけで、政府は聞く耳を持ちません。岸田首相は亡き元首相の死を「国葬」などと政治利用する前に、そこで使われる何億円もの血税を苦しい国民に還元していただきたいものです。【PROFILE】荻原博子身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある
2022年07月29日インフレ時代の考え方、「欲張らない投資」。あなたが持っているのは、どのようなタイプの投資信託なのでしょうか。○今回のポイントインフレから資産を守るためには、短期間で大きく儲けようと無理をせず、『欲張らない投資』を考えてみよう。すでに運用している人も「スパイス的な投資」に偏っているなら、改めて資産の全体設計をし直そう!○「欲張らない投資」とは今、インフレ(物価上昇)が話題です。実際に、日本の消費者物価上昇率もデフレからインフレへの転換を示唆しています。いよいよ、物価上昇分を穴埋めするための運用の必要性が高まってきています。投資というと、市場をみてタイミングを判断する「面倒で怖いもの」だと考える人も多いようです。しかし、「欲張らない投資」は短期間で大きく儲けようというスタンスではありません。あくまで物価上昇からの資産の保全を目指し、低リスク・低リターンの商品で運用に臨む、預金の一歩先のような投資です。○売れ筋投信は高リスク?2014年、日本の売れ筋投信上位にランクインしたのは、先進国や新興国の株式に加え、世界リートや米国リート、米国ハイイールド債券や欧州ハイイールド債券、MLP等の投信でした。単一の国や資産を投資対象とするこれらの投信は、意外にも高リスク。人気の投資信託には、タイミングを吟味してリターンを追求する「スパイス的な投資」に分類されるものも多くあるようです。だからこそ、資産を分散しリスクを抑えた「欲張らない投資」を併せて考えることがより大切になります。「預貯金を含めた全体設計」で資産を考えるイメージ(※上記はイメージ図です。)「欲張らない投資」のリスク・リターンイメージ(※上記はイメージ図です。)●ピクテ投信投資顧問が提供する、「「欲張らない投資」のススメ」からの転載です。
2015年07月27日最近の日本の話題は、「インフレ」と「低金利」。今後はどのように付き合っていくのがよいのでしょうか。○今回のポイント今、預貯金や債券では、インフレ対策には不十分といえそう。これからは、インフレに強いといわれる株式の出番かも!でも、株式は怖い。そんなときには、株式も投資対象としているバランスファンドに投資することも考えてみよう。○今、日本で起きていること現在、日本政府・日銀は2%の物価上昇(インフレ)を目指しています。実際に物価が2%上昇すると、現在100万円の車は1年後には102万円出さないと買えなくなります。インフレになると、今まで買えたものが同じ金額では買えなくなってしまいます。つまり、お金の価値が実質的に減ってしまうのがインフレです。○株式の力を借りてインフレに対抗!そこで、今後はインフレに強いといわれる株式の出番。…といっても、株式は怖い。そんなときには、株式を含めた複数の資産に分散投資するバランスファンドを考えてみる余地がありそうです。日本の物価上昇率目標と個人向け国債の利回り・預金金利(2015年5月末現在)●ピクテ投信投資顧問が提供する、「「欲張らない投資」のススメ」からの転載です。
2015年06月25日○インフレから資産を守るは耳にタコ?日本は、物価上昇を2%とする目標に向かっています。こうした環境下では、物価が上昇した分(=2%)以上に資産の価値が増えないと資産が目減りしたことになります。モノの値段が2%上昇するということは、100万円が102万円になることです。私達のお金も2%増やして100万円を102万円にしないといけません。ですから「インフレから資産を守る」必要があるんです…。でも、こんな話は耳にタコですよね!?そこで今回は、2%のインフレ上昇分をどの資産にいくら投資して備えるか?を考えてみましょう。○何に? いくら? 投資する?例えば、1,000万円の預金があるとします。1,000万円の2%目減り分は20万円です。20万円を預金の一部の100万円で備える場合と500万円で備える場合で考えてみましょう。パターン(1) 100万円で20万円に備える場合100万円の投資で20万円を得るには、20%のリターンが期待できる資産に投資する必要があります。パターン(2) 500万円で20万円に備える場合500万円の投資で20万円得るには、4%のリターンが期待できる資産に投資する必要があります。資産運用では、全体の資産の一部で運用しましょう、とよくいいますが、少ない投資金額で同じリターンを得るには、よりリスクの高い運用をする必要があります。しかし、「インフレ2%から資産を守る」ことが目標であれば、ある程度の投資金額で2~4%のリターンが期待できる相対的にリスクの低い運用で十分、といえます。○鉄則は「欲張らない」運用投資をするなら儲けたい! なんて欲張りな気持ちがでてきますが、目先必要なことは「インフレから資産を守ること」。肩肘張らずに「欲張らない」気持ちで取り組みましょう。●ピクテ投信投資顧問が提供する、「ボンジュール」からの転載です。
2015年05月22日「預貯金にもリスクがある」という言葉を聞いたことはありますか? 投資の必要性を説く時によく使われる言い回しで、預貯金にお金を置いておくと、インフレがおこった際、預貯金の金利よりも物価上昇率が高くなり、知らないうちに資産が目減りしてしまうという意味です。そんな預貯金のリスクですが、実際のところはどうなのかを考えてみましょう。■「インフレ」と「デフレ」とは?物価が上がることをインフレーション、略してインフレといいます。本来は景気の良い時に、自然と物価が上がる現象を指します。そうした時期は企業の売り上げが増加するので従業員の給料も上昇し、株価や預貯金の金利も上がるため、世の中に好循環をもたらします。反対にデフレ(デフレーション)とは、不況のもとで物価が下がることを指します。日本ではバブル崩壊後に不況が続き、その間に百均ショップやコストを抑え値段を下げた衣料や雑貨のお店も増え「デフレ」になりました。デフレで物の値段が下がるのは、一見いいことのように思えますが、企業にとっては売り上げを上げられないため、給与水準も上がらず、世の中にとっては厳しい状況となります。貯金の金利も下がり、株価も低迷します。こんな中、「インフレ」と言われてもピンとこない方もいるかもしれませんね。現在、安倍政権では景気回復のために物価を2%上げることを目標としています。効果については賛否両論がありますが、原油高などの影響もあり、2014年6月は前年同月に対し3.3%、消費税増税による押し上げ効果を引いて1.3%だそうです(総務省の調査)。■預貯金は、インフレによって本当に資産価値が減ってしまうのかさて、本題に戻りますが、預貯金は本当に、インフレによって資産価値が減ってしまうのでしょうか。インフレとデフレの時期を含んだ1975年から2005年までの30年間の物価上昇率を見ると、お米10kgの値段は1.4倍、ビール大びんは2倍、郵便料金は4倍になっています(内閣府調べ)。それを踏まえると、不況の時期があったとしても長期にわたって物価が上がらない、ということはなさそうです。また、教育費などは不況期でも上がっていること、日本は食料や資源などを海外からの輸入に頼っているため、原料高や為替の影響などでインフレとなる要因もあることを考えると、長期の資産を預貯金だけで貯めていた場合、物価上昇時に価値が目減りする可能性があることも考えられます。■預貯金と投資ただし、そうは言ってもデフレで物価が下がっている時にも、預貯金は元本割れすることがありません。今後の経済を完全に予測するのは難しいことなので、デフレに備え、預貯金を持っておくのは大切なことです。預貯金のリスクを補完するために、投資が必要になることもあるでしょう。ですが、投資の特性として、値動きに波があり、特に短期間では元本割れの可能性が高いというリスクを含んでいます。では、長期の資金ではどうでしょうか。長期の運用は適切な配分をすることによって、物価の上昇に対応する収益を見込むことができます。もちろん、人によってはリスク許容度が低く、投資に向かない場合もあります。自分にとって投資が本当に必要か、どんな投資が向いているかについては、はじめは分からないもの。ちょうど昨年始まったNISA制度をきっかけに投資を始めた方も増えているので、各証券会社とも初心者向けセミナーや相談会に力を入れています。そんな機会を上手く活用してみてはいかがでしょうか。
2014年09月19日改革開放(1978年からの経済立て直しのための中国国内の体制改革、対外開放政策)以来、中国はこれまで2回の大きなインフレに直面してきました。1回目のインフレは1988年に発生しています。鄧小平氏による価格改革を起因とするインフレは国民生活を圧迫することとなりました。共産党に対する国民の不満は、1989年の天安門事件でピークを迎え、改革開放も一時中断となりました。2回目のインフレは1994年のことです。その背景には1ドル=5元台だった人民元を一気に8元台まで切り下げたことがあげられます。通貨安は輸出には都合がいいですが、第9回でふれたように、輸入品価格を上昇させ、インフレをもたらすことにもつながります。当時、米クリントン政権は中国との関係を重視していました。米ドル高・人民元安となれば、米国はより安く中国の労働力を利用することができます。そして中国は輸出で儲けることができます。ここで二国の利害が一致したわけです。ちなみに、1994年から1995年にかけてというのは、ドル/円レートが当時の史上最高値である1ドル=79円台まで円高が急激に進んだステージです。米ドルは中国元に対しては究極のドル高、逆に日本円に対しては究極のドル安となったわけです。米国からみた世界の工場としての役割がそれまでの日本から中国へとシフトした期間であったとも言えるでしょう。中国の1回目のインフレから2回目のインフレにいたる期間、急激な元安が進んでいるのが図表から確認できるかと思います。その後、元が米ドルと固定されることによってそれ以上の元安進行に歯止めがかかり、激しかったインフレも落ち着いた状況がわかります。2005年以降の極めて小幅で段階的な元切り上げが実施されていたときは、世界的にみれば新興国の経済成長と米国の住宅バブルが重なって、食料品や資源価格が高騰していった時期と重なります。原油価格がうなぎ上りとなり、WTIはピークである1バレル=147ドル台をつけたのは2008年7月でした。もし元の切り上げが実施されていなければ、この間の中国の輸入物価は上がっていたはずですから、中国のインフレ率ももっと上昇していたでしょう。その後、サブプライム危機が深刻の度合いを増していき、リーマン・ショックへと続きましたので、世界的な経済活動も低迷することとなりました。原油の需要も後退し2008年12月には1バレル=40ドルを割り込むまでに急落をしています。原油価格そのものが安くなれば、元を米ドルと固定して=元高が進まないようにして、元安水準で維持してもインフレが進むことはありません。そして世界経済が回復基調となり、原油・食料品などが再度上昇をし始めた2010年の段階では、小幅な元高が進むような通貨バスケット制度に戻しています。これで中国国内ではインフレ抑制効果が期待できます。結果的に中国は資源価格の推移や世界経済の動向を見ながら、通貨バスケット制度とドルペッグ制とを上手く使い分けをすることで、これまで長らくの間5%前後のインフレ率にとどめることができた、ということになります。そして、変動幅を今回1.0%まで拡大させたということは今後、元高方向を中国当局としても望んでいるとも考えられます。というのも、国内の自動車の保有台数、電力需要の増加を考えれば原油などの一次産品の輸入増加は必至です。製造業にとっては確かに元安がいいわけですが、輸入インフレを抑えるためには元高であることが望まれます。これからの世界的な資源価格の高騰を視野に入れているからこそ、変動幅拡大がこのタイミングで実施されたとも考えられます。中国にビジネスで頻繁に訪れている友人の話によると、モノにはよりますが、数年前から中国での価格が日本と遜色ないような製品が出てきたといいます。中国の人件費も年々上昇しており、もはや世界の工場として低賃金労働を提供できるような状況ではなくなりつつあることの象徴と言えるでしょう。たとえ変動幅が1.0%という微々たるものだとしても、ある程度の期間を経て元高となれば、中国の製造業には大きな打撃となります。総務省統計局が発表している2009年対GDP貿易依存度によると中国のGDPに対する輸出比率は24.5%となっています。日本の輸出比率は11.4%ですから、日本の2倍以上、経済成長を輸出に依存しているのが中国です。日本と比べれば断然比率の高い、中国の輸出の中核を現在なしている製造業を見捨ててまでも、インフレの対応にシフトしてきたー国民生活が深刻な打撃を受け、政治的・社会的な反発が出かねないインフレに対して中国政府は警戒をしているはずです。そしてさらに注目すべきは、以前から主張してきたことではありますが、今年の全人代(全国人民代表大会)においては特に、経済成長優先路線を修正し、量から質への成長モデルへの転換を温家宝首相が強調したことです。世界の工場として安い労働力にものを言わせ安価な製品を大量生産するというこれまでの量による成長ではなく、世界の工場の立場は放棄して為替変動に影響されない高品質高付加価値の製品作りに特化していく、という宣言とも受け止められます。良い製品は値段が高くても売れるのです。為替レートの変動をもろともしません。それを証明しているのは実は日本の製造業でもあります。いったん世界の工場となったならば、やがては次なる新興国にその立場を譲らなくてはならない。それは宿命であり、歴史の必然でもあります。この点についてもやはり中国は日本から十分学んでおり、この場合はむしろ我々を手本にしている部分がある、といえるかもしれません。ところで、例年正月、ゴールデンウイーク、そしてお盆といった日本の長期休暇の際には相場は急激な動きとなる場合が多いものです。FX取引などを連休中もされるという方は、注視が必要な時期です。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年05月01日アジア諸国では、これまで政策運営の課題となっていたインフレ率が緩和傾向にあることなどに伴ない、政策の重点をインフレ抑制から景気の下支えへと移行する動きがみられています。2008年の金融危機後の先進国による大規模な資金供給などを背景に、経済が比較的堅調だった新興国を中心に投資資金の流入が活発化したことや、商品相場が高騰した影響などから、2010年の後半頃より、アジア各国では急激な物価上昇が懸念材料となっていました。これを受け、各国中央銀行は金利の引き上げを行ない、インフレ抑制を政策の優先事項としていましたが、継続的な金融引き締めによって経済成長が鈍化する傾向がみられていました。しかしながら、昨年後半以降、金融市場の混乱により投資家のリスク回避姿勢が強まったことで海外資金の流出圧力が高まったほか、世界景気の減速傾向を受けて商品相場に落ち着きがみられたことなどから、インフレ圧力が後退し、各国当局は欧州債務危機に端を発した外需の低迷など国内景気への影響に対応する政策への転換が可能になったとみられます。実際にアジア各国の政策金利をみると、足元でインドネシアやタイなどが数度の利下げを実施しているほか、インフレへの警戒感が依然根強い中国やインドにおいても、利上げの休止や預金準備率(中央銀行が市中銀行から強制的に預かる資金の比率)の引き下げを行なっています。アジアにおいては、こうした金融政策の転換によって内需の活性化が促されていくと予想されることに加え、比較的健全な財政状況を背景に、インフラ投資など歳出拡大を通じた景気対策を行なう国もみられています。引き続きアジアでは、物価動向に留意する必要はあるものの、金融・財政の両面において景気浮揚策の効果が見込まれることなどを考えると、底堅い経済が維持されると期待されます。(※上記のグラフ・データは過去のものであり、将来を約束するものではありません。)(2012年2月14日 日興アセットマネジメント作成)●日興アセットマネジメントが提供する、マーケットの旬な話題が楽に読める「楽読」からの転載です。→「楽読」【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年02月15日