孤独死した人々の弔いに従事する誠実な公務員を描いた前作『おみおくりの作法』(2013年)が昨年、日本で阿部サダヲ主演の『アイ・アム まきもと』としてリメイクされたウベルト・パゾリーニ監督。久々の新作『いつかの君にもわかること』は余命宣告された30代のシングルファーザーと幼い息子の物語だ。北アイルランドのベルファストに暮らす主人公・ジョン(ジェームズ・ノートン)は窓拭き清掃の仕事をしながら、4歳のマイケル(ダニエル・ラモント)を育ててきたが、不治の病のために余命はあとわずかだ。自分の亡き後の息子の幸せを願って養子縁組手続きを行い、マイケルの“新しい親”を探し始める。偶然目にした新聞記事の実話から着想を得た物語は、全編が静かなトーンで貫かれ、余計なものを削ぎ落とすことによって親子の日常の愛おしさを際立たせる。幼い子どもの視点に立ち、死と向き合うことで生の希望を描いた監督に、繊細な名演を見せたキャストについて、演出術について語ってもらった。ウベルト・パゾリーニ監督© Oksana Kanivetsドラマティックな物語を「静かに」紡ぐ――英語に「Less is more(少ない方がより豊か)」という表現がありますが、その概念をこれ以上ないくらい証明する作品だと思いました。それこそが、この映画で僕がやろうとしていたことです。この映画のキャラクターたちは人生の中で非常にドラマティックな瞬間を生きていますが、だからこそ、なるべくそのように描かないことがとても重要だと思ったのです。脚本はもちろん、演技、カメラワーク、音楽、全ての要素が静かでなければ、と心がけました。それがあなたに響いたのであれば、すごくうれしいですね。映画作りは賑やかな方が楽です。静かに物語を紡ぐのは大変ですが、今回は素晴らしい役者とチームに恵まれました。非常にドラマティックな状況だからこそ、最もドラマティックではない映画的言語を使いたかった。ただ、役者としてはもう少し表現したいのでしょうね。ジェームズは「もう1回、もうちょっと大きめにやっていいですか」と言うんです。だから「全然構わないけど、使わないよ」と言いました(笑)。――ジェームズ・ノートンの静かな佇まいが、非常に印象深かったです。彼を選んだ理由をまず聞かせていただきたいです。とにかくボリュームを絞った作品を作りたかったので、ジョンが置かれている状況や彼が感じている気持ちを言葉にするシーンは、ほぼありません。つまり言葉ではない形で多くのもの、感情を伝えられる俳優でなければならないのです。ジェームズのキャリアは幅広くて、コメディもドラマも、善人も悪役もやっています。ある作品でのかなり抑制した演技を見て、彼ならできるんじゃないかと思って脚本を送ったら、すぐ連絡が来て「泣きました」と言ってくれました。彼に子どもはいませんが、駆け出し時代に子ども向けのエンターテイナーの仕事をしたことがあるので、子どもと接するのは慣れているそうです。実際、彼は素晴らしかった。最初こそ演技は少し大きめでしたが、すぐに共通の映画的言語を見つけることができました。子役ダニエル・ラモントの起用「演技体験の旅を共にしたい」――マイケル役のダニエル・ラモントと本当に親子に思える自然さでした。撮影当時4歳だったダニエルがあれだけ演技ができたのも、ジェームズのおかげだったと思います。ジェームズはとても心が広いのです。そんなジェームズを見ることによって、ダニエルもまた物静かな演技をできたと思いますね。――幼い子どもが死と向き合う内容に、フランス映画の『ポネット』(97)を思い出しました。『ポネット』で主演した少女も撮影時は4歳で、名演を絶賛されましたが、ダニエルの表現力はそれに勝る勢いです。彼をどのように発見したのですか?撮影地がベルファストで、北アイルランドのとても優秀なキャスティングディレクターが3歳半から4歳半の子を100人ほど集めてくれました。私が実際に会ったのは30、40人ですが、彼らがどんなふうに遊んでいるのか、大人のいる空間でどう振舞うのかを見ました。全く演技未経験の子を求めていましたが、中でもダニエルは自分自身もしっかり持っていて、幼いながらも大人と一緒の現場で怖がらずにいる子でした。そして元気いっぱいで、いつも幸せそうで楽しそうですが、部屋の角で1人静かにしている時もある。そういう側面を持っている点がポイントでした。ご両親もとてもサポートしてくれました。特にお父さんが脚本を読んで、ご自身とダニエルの関係性に近いものを感じてくれたそうです。彼らとは今も交流があるんです。この映画をきっかけにダニエルに出演オファーが来るようになったのですが、そのたびに「どう思います?」と1週間に1回ぐらい連絡があります(笑)。――演技経験のない子を起用したいと思われた理由は?演技とはこういうものだと既に考えを持っている子ではなく、その子の初めての演技体験の旅を共にしたい、一緒に発見していきたかったんです。とはいえダニエルの起用は一種のギャンブルでした。実際に演技できるかどうかなんて、撮影が始まるまでわかりませんから。先ほど話に出た『ポネット』はいい映画ですが、メイキング映像を見ると、主演の少女に対して1から10まで細かく指示してひとつひとつのカットを撮り、後で編集して繋げていました。実は私たちも撮影前には、同じようにしなければならないと思っていたんです。ところがダニエルは「アクション」の声がかかるとマイケルになる。もちろん事前に「ここに立って、こっちを見て」と指示はしますが、カメラが回ると、もう一言足りとも私が演出する必要はなかった。本当に奇跡です。編集室で親子関係を人工的に作る必要がなかった。あの2人がワンフレームで収まっているカメラワークは私自身、とても気に入っています。「これは誰にでも起きること、誰もが共感できる物語」――冒頭でジョンが窓拭きの仕事をするシーンがあります。様々な場所の窓から様々な光景が見えますが、どういうふうに思いつかれたのですか?着想の元になった新聞記事を読み、この男性は労働者階級で、友人が少なく、お金もあまりない。それでもこの4年間、全てを息子に捧げてきた父親だとわかりました。そこで、自分の置かれている状況や感情を相談する相手がいないような孤独な仕事として窓の清掃という職業にたどり着きました。個人で元手があまりなくてもできる仕事であり、窓を拭きながら部屋の中の様子が彼の目に映る。自分の死や生について考えている彼が、他人の生を目撃することにもなるわけです。窓ガラスを通して、反対側にいる人たちの人生を見ることによって、自分の息子がこれから進むかもしれない人生を想像する。実際、自分が亡くなった後を考えて養親候補の家庭を訪問する時も、家族と対面する前にその家のキッチンの窓などから彼らが見えるシーンも入れました。ジョンは、物理的にも心理的にも外にいて、自分がいなくなった後の世界での息子に思いをめぐらせ、夢や可能性を見ているんです。つらいけれど、同時に彼を癒やしてくれる部分もありますね。――監督の作品はいつもタイトルが印象的です。原題『NOWHERE SPECIAL』にどんな想いを込めたかをお聞きしたいです。私はメル・ブルックス監督の『ブレージングサドル』(74)でジーン・ワイルダーとクリーヴォン・リトルが交わす、「どこへ行く?」「特別な場所じゃない(Nowhere Special)」「そういう場所に前から行きたかったんだ」という会話が大好きなんです。私のオフィスの壁にそのやりとりを引用したものを貼ってあるんですが、本作の元になった記事の親子の写真を偶然その真下に貼ったんです。それがすごく合致した。つまりこれは誰にでも起きること、特別なことではないんです。特別な世界で起きる特別なストーリーではなくて普遍的なもの。リアルな真実に、誰もが共感できる物語だと思いました。彼らはヒーローではない、ただの普通の人々です。だからこそ、観客も彼らの心の旅に帯同できるのではないでしょうか。(冨永由紀)■関連作品:いつかの君にもわかること 2023年2月17日よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開© 2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl.
2023年02月16日ジェームズ・ノートン主演のウベルト・パゾリーニ監督作『いつかの君にもわかること』より、コメント映像とオフショット画像が解禁された。本作は、余命宣告を受けたシングルファーザーが自分がいなくなった後、頼る人がいなくなる息子に“新しい家族”を見つけるべく里親探しに奔走する感動のヒューマンドラマ。この度解禁となった映像では、父親役を演じたジェームズ・ノートンが「悲しみのどん底にありながら、計り知れない愛と喜びを見つけ出す悲痛と苦悩の物語だが、誰もが共感できるヒューマンストーリー。この映画を観て、できれば愛する人を抱きしめてあげてほしい」と、映画の見どころを語る。またウベルト・パゾリーニ監督は、「ただ感傷的になるのではなく、人生の美しさと寛大さで心を豊かにしてほしい。それが私の心からの願いだ」と、涙を誘う物語に秘められた人生讃歌のメッセージを伝えている。そして映像には、4歳の息子マイケル役を演じているダニエル・ラモントくんも登場。劇中では何気ない表情や目線の投げかけ方ひとつで様々な感情を表現しているダニエルくんだが、普段はとっても明るく元気な4歳の男の子。ジェームズに「未来のマーロン・ブランドだ」と称賛されて聞き流すものの、(本作は)どんな映画?と聞かれれば「悲しいけど幸せな映画」とビシッと映画の本質をついたコメントで、俳優としてのプロフェッショナルぶりを見せる。「映画を楽しんでもらうためには、まず観てもらわないとね」とジェームズにうながされると、カメラのフォーカスが合わないほど近づき「映画を見に来てね~!」っと、元気いっぱいにメッセージを贈っている。さらに映像では、撮影現場でジェームズ・ノートンとダニエルくんがまるで本当の父子のように仲良く振る舞う様子や、愛らしさ全開のダニエルくんの姿が収められている。『いつかの君にもわかること』は2月17日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:いつかの君にもわかること 2023年2月17日よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開© 2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl.
2023年02月15日ウベルト・パゾリーニ監督最新作『いつかの君にもわかること』より特別映像と本編映像が解禁された。本作は、余命宣告された30代のシングルファーザーが4歳の息子のために“新しい家族”を探し求める感動作。本作の重要な役どころである4歳の息子マイケルを演じるのは、この映画がスクリーンデビューとなるダニエル・ラモントくん。まだ幼く「死」をうまく理解できなくても、“新しい家族”探しのために奔走する父親・ジョンに寄り添い、一日一日と成長していくマイケルをとてもナチュラルに演じている。この度、そんなダニエル君のキュートで大人びたインタビュー映像を始め、父親役ジェームズ・ノートンと親子のように戯れるメイキング風景を含む特別映像、そして静かな演技が心を締め付ける本編の抜き映像が解禁となった。映像では「好きなものはアイスクリーム。監督は威張ってたよ!でも、言っちゃダメだよ!!」とイタズラっ子のような笑顔で語るダニエルくん。撮影現場では、初めてにも関わらず、泣いたり、癇癪を起こしたり、ふてくされることもなかったと、ジェームズ・ノートンは当時をふり返る。「遊んでいても、撮影が始まると途端に役に入り込む。自分でも理解できない悲しみと戦う影があって、優しい子供になるんだ。僕でさえもそこまでの経験はないよ!」と彼の才能を称賛した。ウベルト・パゾリーニ監督も、「映画が成功するかはある意味賭けだけど、企画当初から子役のマイケルの演技次第だとずっと思っていた。これ以上のものは望めないよ。ダニエルの演技は完璧だった。プロ意識や演技の姿勢、意気込みに理解力、どれも私がマイケル役に求めていた資質ばかりだった」と満足げな表情で語っている。インタビュー映像の後には、父ジョンの誕生日を祝う父と子の姿を捉えた本編映像が収められており、メイキング映像でみせる無邪気な笑顔とは全く違うダニエルくんの演技に心打たれる。『いつかの君にもわかること』は2月17日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:いつかの君にもわかること 2023年2月17日よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開© 2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl.
2023年02月08日『いつかの君にもわかること』よりジェームズ・ノートンとウベルト・パゾリーニ監督のインタビュー特別映像が解禁された。余命宣告を受けた若き父親が、幼い息子に“新しい家族”を探し求める姿を描く本作。『おみおくりの作法』のパゾリーニ監督が新聞で見つけたある小さな記事に感銘を受け、独自の設定でキャラクターを作り映画化した。この度解禁されたのは、パゾリーニ監督と主人公である余命わずかなシングルファーザー・マイケルを演じたジェームズ・ノートンのインタビューを収めたメイキング映像。まずは「脚本を読み進めるために、時折、気持ちを落ち着ける必要がある、そんな作品。愛する息子の幸せを願って、余命3ヶ月の父親が奔走する愛と希望の物語。とにかく心が打たれる」と本作を紹介するジェームズ。そして、パゾリーニ監督の映画に取り組む姿勢について、「一切の妥協をしないから、その決断に疑問の余地はない。信頼できる素晴らしい監督だ。彼が重視するのは、人物描写とその感情。すべてのシーンで死を感じさせる演技を意識し、人生に立ち向かう姿を見せてほしいと言われた。ただし、重々しさも必要だとも。要求の多さに恐ろしくなったけれど、興奮もしたよ!」と撮影現場でのチャレンジを明かした。ジェームズの経歴をすでに熟知していたパゾリーニ監督も、「脚本を読んで気に入ってくれただけでなく、ベルファストのなまりも習得し、そして何よりも、ジョンという役柄と彼の世界そのものに入り込んでいたのは驚いた。4歳のダニエルのことも全面的に支え、面倒を見てくれた」と、ジェームズの役者としての全方位な取り組みを大絶賛。また、息子マイケル役のダニエル・ラモントくんとのチャーミングなやりとりも必見のメイキング映像となっている。『いつかの君にもわかること』は2月17日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:いつかの君にもわかること 2023年2月17日よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開© 2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl.
2023年01月30日『おみおくりの作法』のウベルト・パゾリーニ監督作『いつかの君にもわかること』より本編映像とメイキング画像が解禁された。本作は、ウベルト・パゾリーニ監督が小さな新聞記事から着想を得て完成させた、父と子の感動作。父親ジョンを演じるのは、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(19)や『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』(19)、英国TVドラマ「グランチェスター 牧師探偵シドニー・チェンバース」シリーズでの活躍が話題のジェームズ・ノートン。息子マイケル役には、本作が映画デビューとなるダニエル・ラモント。この度解禁されたのは、余命僅かなシングルファーザーが幼き息子に“死”を説明する、胸を締め付けられる親子の会話シーンの本編映像。余命宣告を受けながらも、窓拭き清掃人として働き、たった一人で4歳の息子を育てる33歳のジョン(ジェームズ・ノートン)。自分が死ぬ前に幼い息子・マイケルに新たな家族を見つけなければならないが、同時に、まだ“死”を理解することができない息子に父親が死んでしまうことを伝えなければならなかった。ある日、公園で動かなくなった昆虫を見つけたマイケルは、父親に「歩かせて!」とお願いする。言葉を選びながら、“死”が悲しいことではないと説明するジョンだったが、すぐにマイケルは大好きなものに気を取られ、アイスクリームトラックに走り出していくのだった…。何気ない日常の一時を切り取りながらも、ジェームズ・ノートンの抑えた演技が胸を打つ本編映像となっている。ウベルト・パゾリーニ監督は本作が持つトーンについて、「主要な登場人物はそれぞれ非常にドラマチックな状況を抱えているものの、小津安二郎、最近で言えば、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟の作品に見られるような、ストーリーに対し非常に繊細かつ“控えめ”な手法を用い、メロドラマや感情主義とは最大限距離をおくようしました。このアプローチを取ることで、様式的な華やかさから放たれた直球的な映画製作のスタイルに反映されている」と語る。また、「監督として本作品に臨む上で課題だったのが、非常に幼い子どもと撮影することと、真実味がある感動的な父子関係を演出することでした」と、演出の難しさも明かしている。『いつかの君にもわかること』メイキングそんな2人がまるで本当の親子のように、寄り添い合うメイキング画像も解禁。ダニエルくんを気遣うジェームズ・ノートンや監督の様子をとらえた、穏やかな撮影風景も切り取られている。『いつかの君にもわかること』は2月17日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:いつかの君にもわかること 2023年2月17日よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開© 2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl.
2023年01月24日『おみおくりの作法』のウベルト・パゾリーニ監督最新作『いつかの君にもわかること』より予告編とポスタービジュアル、場面写真が解禁された。本作は、ヴェネチア国際映画祭4冠『おみおくりの作法』のウベルト・パゾリーニ監督が、余命わずかな父親とその息子の絆を描いた感動作。この度解禁された予告編では、父親のジョンが息子のマイケルに起こされる仲睦まじいシーンから始まる。いつものように手を繋ぎながら保育園へと登園をする2人だが、マイケルから「ぼくのママは?」と質問をされる。咄嗟に「ママは遠くへ行った」と答えたジョン。実はシングルファーザーとして、男手ひとつでマイケルを育てているのだ。しかし、余命数か月の難病を抱えており、自分が生きている間にマイケルの里親を探さなければならなかった。徐々に病がジョンの身体を侵食していく中、まだ幼いマイケルに対して、どんな生き物でもいつかは死んでしまうということを教えていく。里親探しを続ける中、「あの子にはどんな家族がいいのか。もし間違ったら…」と葛藤する日々を送るジョン。自分は息子の一番の理解者であり、どの里親が一番良いのかはすぐに分かると思っていたが、その確信は徐々に揺らいでいく。愛する息子とのかけがえのない残りの日々を過ごしていく中で、ジョンは最後にどのような決断を下すのか…。併せて解禁となった場面写真では、誕生日ケーキを2人で囲っている幸せそうな様子や、公園のベンチにジョンが一人で座り、思い詰めた表情を浮かべる様子が切り取られている。『いつかの君にもわかること』は2023年2月17日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:いつかの君にもわかること 2023年2月17日よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開© 2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl.
2022年12月19日映画『いつかの君にもわかること』が、2023年2月17日(金)に公開される。監督はウベルト・パゾリーニ。『おみおくりの作法』のウベルト・パゾリーニ7年ぶり新作映画映画『いつかの君にもわかること』は、『おみおくりの作法』のウベルト・パゾリーニが7年ぶりに監督・脚本を手がけた作品。ウベルト・パゾリーニの『おみおくりの作法』は、ヴェネチア国際映画祭4冠に輝くなど世界中の映画祭で絶賛され、日本でもロングランヒットを記録し『アイ・アム まきもと』としてリメイクされるなど、ヒューマンドラマの傑作だ。余命わずかなシングルファーザーが1人息子に遺す“新しい家族”そんなウベルト・パゾリーニが手がける新作映画『いつかの君にもわかること』は、余命宣告を受けたシングルファーザーが、自分が亡き後に息子が一緒に暮らす“新しい家族”を探し求める物語。実際の記事から着想を得たというウベルト・パゾリーニが、「生」と「死」という普遍的なテーマから、力強く紡がれる父子の絆を描き出す。実話から生み出された、希望と感動の物語が展開される。繊細な撮影手法で父子の心情を丁寧に描写映画『いつかの君にもわかること』では、メロドラマや感情主義とは最大限に距離をおいた繊細かつ“控えめ”な撮影手法を採用しているのが特徴。情景描写や登場人物の会話など、余計な要素を極力入れないことによって、父子の心情の移ろいをより丁寧に描写した。こういった表現手法は、ウベルト・パゾリーニが敬愛する小津安二郎の影響を受けているという。また、ウベルト・パゾリーニは「監督として本作品に臨む上で課題だったのが、非常に幼い子どもと撮影することと、真実味がある感動的な父子関係を演出することでした」と、演出の難しさも明かしている。ジェームズ・ノートンが父親役に父親のジョン役を演じたのは、『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』のジェームズ・ノートン。我が子のために過酷な運命に立ち向かう姿を寡黙な演技で体現した。息子・マイケル役は、本作がデビュー作となるダニエル・ラモントが演じている。■ジョン…ジェームズ・ノートンシングルファーザーの33歳。窓拭き清掃員として働いている。不治の病により余命あとわずかとなり、自分亡きあとに息子と一緒に暮らす新たな家族を探し求めて日々、里親候補の家族と面接を繰り返している。■マイケル…ダニエル・ラモントジョンの4歳の息子。■ショーナ…アイリーン・オヒギンズ研修中のソーシャルワーカー。失業のリスクを抱えながらも、ジョンをサポートする。〈映画『いつかの君にもわかること』あらすじ〉若くして不治の病を患ったジョンの余命はあとわずか。シングルファーザーとして男手ひとつで4歳のマイケルを育ててきた彼は、息子の“新しい親”を探し始める。理想の家族を求め、何組もの“家族候補”と面会をするが、人生最大の決断を前に進むべき道を見失ってしまう。そんな彼は、献身的なソーシャルワーカーとも出会い、息子にとって最良の未来を選択しようとするが……。【詳細】映画『いつかの君にもわかること』公開日:2023年2月17日(金)監督・脚本:ウベルト・パゾリーニ出演:ジェームズ・ノートン、ダニエル・ラモント、アイリーン・オヒギンス2020年|イタリア、ルーマニア、イギリス|英語|95分|カラー|ビスタ|5.1ch|原題:Nowhere Special |字幕翻訳:渡邉貴子|G
2022年12月08日『おみおくりの作法』のウベルト・パゾリーニ監督が7年ぶりに監督・脚本を手掛けた『Nowhere Special』が、邦題『いつかの君にもわかること』として、2023年2月17日(金)より公開されることが決定した。窓拭き清掃員として働く33歳のジョンは若くして不治の病を患い、残された余命はあとわずか。シングルファーザーとして男手ひとつで4歳のマイケルを育ててきた彼は、養子縁組の手続きを行い、息子の“新しい親”を探し始める。理想の家族を求め、何組もの“家族候補”と面会をするが、人生最大の決断を前に進むべき道を見失ってしまう。そんな彼は、献身的なソーシャルワーカーとも出会い、自分の不甲斐なさに押しつぶされそうになりながらも、息子にとって最良の未来を選択しようとするが…。世界中の映画祭で絶賛され、日本でもわずか1館での公開から最終的に100館を超え異例のロングランヒットを記録した『おみおくりの作法』。日本でも今年、阿部サダヲ主演『アイ・アムまきもと』としてリメイクされ話題を集めるなど、いまもなお愛され続けているヒューマンドラマの傑作だ。本作はその生みの親であるウベルト・パゾリーニ監督の待望の最新作。余命宣告を受けたシングルファーザーが、自分が亡き後に息子が一緒に暮らす“新しい家族”を探し求める物語。監督が実際の記事から着想を得たという本作は、力強く紡がれた父子の絆を通じて、ヴェネチア国際映画祭をはじめ世界中で涙と感動の評価を受け、米映画レビューサイトRotten Tomatoesでは100%フレッシュを記録した。父親のジョン役を演じたのは、『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』のジェームズ・ノートン。我が子のために過酷な運命に立ち向かう姿を寡黙な演技で体現し、内面に抱える複雑な感情までをも見事に表現している。息子のマイケル役には、本作がデビュー作となるダニエル・ラモント。100人以上に及ぶ候補者から見出された逸材であり、生まれながらの感性と天才的な表現力でノートンとの親子役を演じ切った。ウベルト・パゾリーニ監督はメロドラマや感情主義とは最大限に距離をおいた繊細かつ“控えめ”な撮影手法を採用。余計な情景描写や登場人物の会話などを極力排することによって、父子の心情の移ろいを丁寧に描き出そうとしたのは、敬愛する小津安二郎の影響を受けているという。『おみおくりの作法』では真心を持って他人の死を弔い、あの世に送り出す男を描いたパゾリーニ監督。本作では自らの死と向き合う父親が、愛する息子と“新たな家族”を探す物語を通して、全く異なる視点から再び生と死という普遍的なテーマを観る者に投げかける。本情報と併せて解禁となったメイン写真は、父親のジョンと息子のマイケルが、青いベンチに並んで座っている姿が切り取られた1枚。ジョンの表情からは、自分の死後に一人残されてしまう息子を想い、考えに浸っている心情が伝わってくる。そして隣に座るマイケルは父親の深刻な様子を察して、心配そうに見つめているようだ。「生」と「死」という普遍的なテーマを見つめる監督の新たな感動作に、期待が高まる。『いつかの君にもわかること』は2023年2月17日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2022年12月05日「第44回ぴあフィルムフェスティバル2022」が9月10日(土)より国立映画アーカイブにて開催となる。このなかで行われる特集上映「ようこそ、はじめてのパゾリーニ体験へ」に著名人からの推薦コメントが届いた。さらに『豚小屋』(1969年)の字幕付き予告編も初公開となっている。詩人、小説家、脚本家、評論家、俳優、活動家、多くの顔を持ち、映像表現の最先端を、人間の深淵を、激しく、そして純粋に追及し続け、センセーショナルな話題にまみれた比類なきイタリアの知と行動の人ピエル・パオロ・パゾリーニ(1922-1975)。生誕100年を迎えた本年、その軌跡を未体験世代に伝える「ようこそ、はじめてのパゾリーニ体験へ」は、21作品を揃えたアジア初の大特集だ。本企画は若手映画作家の登竜門と呼ばれる自主映画コンペティション「PFFアワード」をメインとした「第44回ぴあフィルムフェスティバル2022」の招待企画として、開催期間中に上映。その後、渋谷ユーロスペースや京都文化博物館「第44回ぴあフィルムフェスティバル2022 in 京都」にて引き続き特集上映を実施する。この特集上映を記念して、パゾリーニ作品に精通し、かつて「はじめてのパゾリーニ体験」をした時の衝撃や感動を著名人たちが若い世代に伝えるべくコメントが到着。フィレンツェの美術学校生時代にパゾリーニ作品に出会ったというヤマザキマリ、現在『ビリーバーズ』公開中で『テオレマ』が一番のお気に入り作品だという城定秀夫監督らから熱いメッセージに加え、それぞれが推薦作品を挙げた。また字幕付きの予告編が公開されたパゾリーニ中期の傑作『豚小屋』(1969年)は、ヴェネチア映画祭で賛否両論を巻き起こした作品である。中世の戦闘の最中、飢えをしのぐために人間を襲ってしまう若者、そして人間の女性を愛せず足しげく豚小屋に通う現代ブルジョア階級に暮らす青年。ふたつの物語を交互に進行させるユニークな構成の寓話にして衝撃作だ。主演は『昼顔』(1967年)、『ベルトルッチの分身』(1968年)などのピエール・クレマンティ、『大人は判ってくれない』のジャン=ピエール・レオが務める。ジャン=ピエール・レオは『夜霧の恋人たち』(1968年)や『家庭』(1970年)の『アントワーヌ・ドワネルの冒険』3~4作目の最中に出演した作品としても注目に値する。この予告編を見て、ぜひ特集上映に足を運んでほしい。<ヤマザキマリ(漫画家・文筆家)・コメント>私がパゾリーニの作品と初めて出会ったのは17歳の時でしたが、その時に得た衝撃は私の中にあらゆる実情を受け入れる受容体を作り上げました。映像を世界共通の新たな言語であると称し、我々を拘束する倫理を客観視することで、人間の生の真意を繊細かつアグレッシヴな表現によって暴き出そうとした詩人パゾリーニは、満身創痍になりつつも立ち上がり続けた孤独な闘士だったと捉えています。パゾリーニの作品を知るのと知らないのとでは、私の人生も確実に違っていた。これだけは間違いありません。#はじめましてパゾリーニ:『マンマ・ローマ』<城定秀夫(映画監督)・コメント>パゾリーニ全作品上映なんてチャンスはそうそうないですよ!映画を志すすべての人に観てもらいたいです。「なんだこれー、よくわかんないけど面白い!」となるかもしれませんし、ならないかもしれません。高校生の頃の自分はなりました。#はじめましてパゾリーニ:『テオレマ』神が宿っているような美しい物語、美しい映画。実のところ意味とか大して分かっていないのですが、そんなのはどうでもいいのです。圧倒的な美の前ではあらゆることが無意味になると、この映画が語っていますから。<小野寺系(映画評論家)・コメント>若い時代に体験したパゾリーニ作品は、閃光のように心を貫き、いまでも衝撃の余韻が身体のなかに燻っている。彼が“謎の死”を遂げる直前に撮りあげた『ソドムの市』が到達したのは、人がどれほど悪辣になり得るかという極限の表現だった。悪逆の限りを尽くした狂宴の果てに姿を現すのは、人間の正体であり、我々の内面の鏡像でもある。その姿から目を逸らさない者だけが、人間を、世界を理解することができる。#はじめましてパゾリーニ:『豚小屋』、『ソドムの市』かつて人間の真実を探求し、イタリアから世界を席巻した巨匠監督たち。なかでも『豚小屋』『ソドムの市』を撮ったパゾリーニは、その深部に最も迫った。いまだこれらの作品は、現在の我々の姿を描く“最新の映画”であり、豚小屋の豚として生きる日常から脱出する武器である。<宮代大嗣(maplecat-eve / 映画批評)・コメント>パゾリーニの映画には人物を撮ることのプリミティブな喜びが溢れている。ニネット・ダヴォリがストリートをスキップする『造花の情景』のような喜劇性。パゾリーニの映画においては、喜劇のすぐ隣にすべての終わりと始まりがある。束の間の生は花火のよう咲き乱れ、体ごと砕け散ってしまう。しかしその残香は、なんと馨しいことだろう!※『造花の情景』:オムニバス映画『愛と怒り』のパゾリーニ監督作#はじめましてパゾリーニ:『大きな鳥と小さな鳥』喜劇俳優へのリスペクトとパッション!パゾリーニの覚悟が刻まれた記念碑的傑作!<四方田犬彦(批評家)・コメント>世界は根底を失ってしまった。神々は零落して放浪し、時間は廻りくることを忘れてしまった。この疲れきった現代にあって、神聖なるものはどこにあるのだろうか。聖女は本当に実在して、奇跡を起こしてくれるのだろうか。これが『テオレマ』を通してパゾリーニの差し出した問いである。半世紀前、彼が非業の死を遂げたとき、答えられる者はひとりもいなかった。イタリアにも、日本にも。いや、全世界にも。世界映画史のなかで突出する鬼才監督の全貌が、今、明らかにされようとしている。■イベント情報「第44回ぴあフィルムフェスティバル2022」9月10日(土)より国立映画アーカイブにて開催第44回ぴあフィルムフェスティバル2022 特別企画「ようこそ、はじめてのパゾリーニ体験へ」特設サイト: 上映劇場:【東京】京橋・国立映画アーカイブ9月11日(日)~22日(木)渋谷・ユーロスペース10月22日(土)~11月3日(木・祝)【京都】三条高倉・京都文化博物館11月19日(土)~26日(土)<「ようこそ、はじめてのパゾリーニ体験へ」上映作品>『アッカトーネ』1961年『マンマ・ローマ』1962年『ロゴパグ』1963年『愛の集会』1964年『奇跡の丘』1964年『大きな鳥と小さな鳥』1966年『華やかな魔女たち』1967年『アポロンの地獄』1967年『イタリア式奇想曲』日本初上映 1968年『テオレマ4Kスキャン版』1968年
2022年09月02日今年1月に公開され異例のロングランヒットを記録した『おみおくりの作法』のBD&DVDが本日リリースされた。これを記念して、主演のエディ・マーサンとウベルト・パゾリーニ監督のインタビュー映像が届いた。インタビュー映像本作は、孤独死した人を見送る民生係の主人公を通して“生”と“死”を描いたヒューマンドラマ。ヴェネチア映画祭のオリゾンティ部門でワールドプレミア上映され、監督賞を受賞するなど各国の映画祭で高い評価を集めた。ひとりきりで亡くなった方の葬儀を行う民生係のジョンを演じたマーサンは、イギリスを代表する実力派俳優のひとり。近年では『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』『思秋期』『戦火の馬』などに出演しており、本作が長編初主演作となった。メガホンを執ったのは、『フル・モンティ』などを手がけた名プロデューサーのパゾリーニ監督。本作では脚本と製作も担当。インタビュー映像では、そんなふたりがお互いの印象や仕事ぶりについて語っている。発売中のブルーレイ&DVDには、インタビューのほか撮影風景など充実の特典映像が収録されている。なお本作は、ポニーキャニオンが贈る最新名画シリーズ『映画美食宣言 シネマ・スペシャリテ 第4弾』のキャンペーン対象作品となっており、期間中に実施店舗でソフトを購入すると、抽選で豪華プレゼントが当たる。『おみおくりの作法』ブルーレイ&DVD:発売中ブルーレイ:4700円+税DVD:3800円+税※レンタル同日開始販売元・発売元:ポニーキャニオン
2015年09月02日都会の片隅で、ひっそりと孤独に暮らす人々。彼らが人知れず亡くなったとき、可能な限りの情報を集め、関係者を見つけ、そこから分かったことを手掛かりに故人の人となりを盛り込んだ弔辞を作成し、たったひとりで葬式を出す。それが、ロンドン市ケニントン地区を担当する民生係、ジョン・メイの仕事です。事務的に処理することも可能な仕事ですが、ジョンは故人に敬意を払い、誠意をもって時間をかけて一件一件処理しているのです。ところが、その仕事ぶりが災いし、あまりに時間と手間、費用ばかりかかってしまうと、人員整理され解雇されてしまうことに。そんな彼が最後に担当することになったのは、目の前の建物に住んでいたのに、全く交流のなかった男性。これが最終案件と思えばなおのこと、そして身近にいた人物だと知ればなおのこと、これまで以上に熱心に男の人生を辿っていくのです。そうする中で、彼自身に、新しい人生の扉が開かれ…。自らも孤独であるジョンにとって、担当する人々は単なる“案件”ではありません。彼が行う“おみおくり”には、仕事という以上に、彼の生き方、精神、人間味、心が込められているのです。そんな彼の内面を垣間見られるのが、幾度となく繰り返される日常の描写。いつも同じきちんとした服装で座るジョン、いつも同じメニューの食事が並べられたテーブル。大した楽しみもなさそうなジョンの生活は単調で、ファッションも食生活も、決して華やかでも贅沢でも、スタイリッシュでもありません。その描写は、極めて静か。静止画のようでもあります。“STILL LIFE”という原題がつけられている本作ですが、これは、絵画の“静物・静物画”と同じ意味。果物、花瓶、魚、食器、花などの静物が描かれた画を鑑賞するとき、私たちは描かれているものだけでなく、そのシーンの裏にある人間の気配や、そこに存在する物をとりまく空気感、雰囲気などをじっくり楽しむことができるはず。つまり、淡々とジョンの生活を映し出した静物画的描写からは、彼が内包しているもの、彼をとりまくもの、彼の人生などを察することができるわけです。そこには、寂しさ、孤独、誠実さ、まじめさが。形式美を重んじながらもシンプルに徹したストーリーテリングによって、実に雄弁にジョンの心情、そして何より彼そのものを表現させているのです。それは、短歌や川柳のような、究極的な引き算の世界。日本人にはとてもしっくりきます。ウベルト・パゾリーニ監督はこう話しているそう。「私が視覚的に小津安二郎監督の晩年の作品を参考にしました。そこには日々の生活が静かに、しかし力強く描かれているのです」と。なるほど。小津映画で観られた、静かでシンプル、なのに力強く豊かな人間描写が確かに継承されています。そんな手法だからこそ、死というものを悲劇という単純な視点で片づけることなく、その周囲にある人情と、そこから生まれる希望や温かさをじっくりと映し出すことに成功したのでしょう。決して逃れることのできない死を意識したとき、救いとなるのはやはり人の心。誠実に生き、正直に人と向き合うことこそ、死という恐怖の呪縛から解放されるのかもしれません。重く、切ない物語ですが、最後に訪れる奇跡の瞬間に触れたとき、きっと胸が熱くなり、この作品と出会えてよかったと心から思えることでしょう。(text:June Makiguchi)■関連作品:おみおくりの作法 2015年1月24日よりシネスイッチ銀座ほか全国にて公開(C) Exponential (Still Life) Limited 2012
2015年01月26日第70回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門で「監督賞」を含む4賞を受賞したほか、各国の映画祭でも受賞が相次いだ、英国版“おくりびと”を描く『おみおくりの作法』。2015年1月24日(土)からの日本公開を前に、いち早く本作を観賞した、小堺一機や斎藤工、映画コメンテイターのLiLico、漫画家の辛酸なめ子、『エンディングノート』で知られるドキュメンタリー監督の砂田麻美などから、絶賛のコメントが続々と寄せられていることが分かった。ロンドン市ケニントン地区の民生係ジョン・メイ(エディ・マーサン)。彼の仕事は、ひとりきりで亡くなった人の“おみおくり”。ともすれば事務的に処理することもできるこの仕事を、ジョン・メイはいつも誠意をもってこなしていた。ある日、ジョン・メイの真向かいに住むビリー・ストークが亡くなり、これまで以上に熱心に仕事に打ち込むジョン・メイ。故人を知る人を訪ねて葬儀へと招待する旅の過程で、出会うことのなかった人々と知り合い、彼にも変化が生まれていく…。本作は、日本でも社会問題となっている孤独死の弔いを担当する、役所の几帳面な民生係ジョン・メイが、故人の人生を紐解く中で新たな人生を歩みだす物語。主人公ジョン・メイを情感豊かに演じるのは、『戦火の馬』『思秋期』などの大作やシリアスな作品から、『ワールズエンド 酔っぱらいが世界を救う!』などコメディもこなせる、英国を代表する名優、エディ・マーサン。監督・脚本は大ヒットコメディ『フル・モンティ』を生み出した名プロデューサー、ウベルト・パゾリーニが手がけている。死者に対しても、誰に対しても丁寧にあたたかく向き合うジョン・メイが見守る“旅立ち”と、胸震える感動が待つ奇跡的なラストシーンは、日本でも多くの映画通たちの心をとらえている。<著名人コメント>(順不同・敬称略)■斎藤工(俳優)※オフィシャルブログより抜粋きめ細かく上質な風味。 厳選され抽出されたエスプレッソの様な作品。ひたすらに素晴らしい。■LiLiCo(映画コメンテーター)優しさに満ちた生き方をすれば逝くときは美しくて感動的。日本らしい考えが溢れる傑作!■辛酸なめ子(漫画家・コラムニスト)誰も来ない誕生日よりも誰も来ないお葬式の方が何倍も淋しいことに気付き、生きている間にもっと人と関わらなければと切実に思いました。■砂田麻美(『エンディングノート』監督)死者という名のモノ言わぬ人間の痕跡は、一体誰のためにあるのだろうと、答えのない問いをずっと考えている。映画「おみおくりの作法」の主人公は、 彼等がわたしたちの世界を横切っていくことの愛おしさを、 その真摯な人生を通じて惜しみなくわたしに教えてくれた。■志茂田景樹(よい子に読み聞かせ隊隊長・作家)こんな人、日本人もいるよね、と自問して観ていたら、登場人物がみんな日本人に見えてきた。死者の思いを、探しあてた遺族に伝える主人公の崇高な心情にふれ涙があふれた。■小堺一機(タレント)観終わった後に、こみあげてくる数々のセリフ、場面の意味、いま生きていることの素晴らしさ、小津映画のような、静かな饒舌さ。エディ・マーサンが素晴らしい!特に、先日行われた自身初のトークライブに登壇した小堺さんは、本作を紹介する際、ラストシーンを話すことができないもどかしさに「とにかく、細部にわたってこだわり抜かれた素晴らしい映画だから、絶対に観てほしい!」と繰り返していたほど。観た後には誰かに伝えずにはいられない、そんなアツい想いが詰まったコメントの数々から、本作に思いを巡らせてみて。『おみおくりの作法』は2015年1月24日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2014年12月30日2015年1月、シネスイッチ銀座ほかで公開されるイギリス映画『おみおくりの作法』。ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門で「監督賞」含む4賞ほか、数多くの映画祭を席巻してきた本作は、身寄りなく亡くなった人を弔う仕事をする公務員、いわば“イギリス版おくりびと”のような主人公の物語。本作のようにいままでなかなか知られなかった職業や、初めて耳にする職業にスポットをあてた映画は数多い。今回は、そんな一風変わった仕事を描いた映画の数々をピックアップ。また、本作のようにコツコツ真面目に仕事と向き合うことから人生が輝きだす主人公たちにも注目してみた。『おみおくりの作法』は、ひとりきりで亡くなった人を弔う、几帳面で誠実なロンドン市の民生係ジョン・メイが、故人の人生を紐解き、人と出会うことで新たな人生を歩みだす物語。死者にも、誰に対しても丁寧にあたたかく向き合う主人公の姿と思いがけないラストには、万国共通に観る者の胸を打ち、ヴェネチア国際映画祭始め、世界各国の映画祭で数多くの賞を受賞した。監督は大ヒット作『フル・モンティ』を生み出した名プロデューサー、ウベルト・パゾリーニ。死と向き合う民生係という難しい役どころを情感豊かに演じるのは、『戦火の馬』『思秋期』などで知られる、イギリスを代表する名優、エディ・マーサン。また、共演には、大ヒットTVシリーズ「ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館」で注目されているジョアンヌ・フロガットなど、個性的な俳優が集結する。こんなお仕事まで! 映画から知る珍しい職業の数々例えば、本作『おみおくりの作法』の舞台となったイギリスでは、実際に主人公のジョン・メイと同じ仕事をしている民生係は存在するものの、その職業についての認知度は低く、映画を観るまで「こういった職業があることすら知らなかった!」とも言われていたという。日本でも、葬儀にあたり亡くなった人の体を清め、おくりだす納棺師という職業の主人公を描いた『おくりびと』では、納棺師という職業に初めてスポットが当てられた。同作は改めて日本の葬儀様式や死生観、“おみおくり”について考えさせる作品となり、第81回アカデミー賞「外国語映画賞」受賞するなど、海外でもそれは受け入れられていた。また、パゾリーニ監督のプロデューサー作『フル・モンティ』では、やむなく男性ストリッパーとなった男たちを描いており、“クリニクラウン”(クリニック+クラウン:道化師)と呼ばれる個性的な医師が主人公となるロビン・ウィリアムズ主演『パッチ・アダムス』、武器商人を描いた『ロード・オブ・ウォー』、風俗店の風変わりなサービスを描く『やわらかい手』、数学者の苦悩を描いた『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』、映画予告編や映画音楽の製作者が登場する『ホリデイ』、ピアニストの演奏中に楽譜をめくる『譜めくりの女』などのほか、スパイク・ジョーンズ監督がオスカー「脚本賞」を受賞した『her/世界でひとつの彼女』では、“手紙の代筆行”をしている主人公とOSとの恋がテーマとなった。堺雅人主演、沖田修一監督の『南極料理人』では、南極観測隊員たちのために基地で食事を作る料理人が主人公となり、思いもよらない南極での生活や、限られた食材(生もの一切なし)で食事を作る工夫と困難、そして食事を通して人々の想いが繋がっていく様がコミカルに描かれていた。一方、オスカー俳優フォレスト・ウィテカーが主演した『大統領の執事の涙』では、1950~80年代という激動の時代のアメリカで、アイゼンハウワー、ケネディ、ニクソン、レーガンら8人の大統領のもとで歴史を目撃してきた黒人の執事の人生に迫ったことも記憶に新しい。イギリス発といえば、ジュリアン・ジャロルド監督『キンキーブーツ』では、倒産寸前の靴工場で、ひょんなことから知り合ったドラァグクイーン(キウェテル・イジョフォー)の助言を元に女物の紳士靴=キンキーブーツを作り出し、再起をかける靴職人(ジョエル・エドガートン)を描き、次第に育まれてゆくふたりの友情も見どころとなっていた。頑張った分だけ人生が輝くことを教えてくれる、お仕事映画さらに、『おみおくりの作法』では、主人公ジョン・メイはプライベートも仕事も、何事も丁寧に規則正しくこなす人物だが、彼が最後に担当した“おみおくり”の仕事と真剣に向き合うことによって、その人生が変化していく姿も物語の重要なテーマだ。仕事が人生のすべてではなくても、仕事によって人生が変わる可能性はある。優しい視点から、そう教えてくれる映画は、これまでにも数多く公開されてきた。黒澤明監督によるヒューマンドラマの名作『生きる』では、志村喬演じる、仕事の情熱を失った定年間際の市役所市民課長が、自身が余命いくばくもないと知ったことから、残された時間の中で「自分にできること」について改めて考え、仕事への情熱を取り戻す姿が描かれている。ウィル・スミスの親子共演が話題となった『幸せのちから』が描くのは、事業の失敗により一度はホームレスにまでなりながら、最終的には成功をつかみ、億万長者となった実在の男の半生。愛する息子との生活のため、証券会社の正社員をめざす父親の奮闘は単なるサクセスストーリーではなく、父子の愛情や絆を感じさせた。家族の絆といえば、マット・デイモン主演、キャメロン・クロウ監督『幸せへのキセキ』は、自宅として買い取った動物園を再生させるべく、飼育員や地域住民と協力して苦難を乗り越えていく男の物語だった。半年前に妻を失った悲しみや、意思疎通が難しくなっていた子どもたちとの関係は、動物という命と向き合う仕事を通じて修復されていった。また、ジョン・メイの生真面目さは、第37回日本アカデミー賞「最優秀作品賞」受賞作『舟を編む』で、松田龍平が演じた辞書編集者・馬締にも通じるものがある。馬締だけでなく、一人ひとりが言葉に対して真摯に取り組み、8年もの年月をかけて1冊の辞書が完成するまでの裏側を見せつつ、まじめに生きるものの達成を見せていた。まじめにコツコツと慎ましく生きてきたものの、不況のため職を失い、次から次へと災難が降りかかてしまう、アキ・カウリスマキ監督の『浮き雲』の夫婦も同様だ。だが、レストラン経営という新たな活路を見いだし、奮闘する彼らの真面目さとふたりの絆は、最後には小さな幸せを運んできてくれた。ちょっと珍しいお仕事でも、丁寧に向き合い、自分の人生を見い出していく主人公たち。それまで真面目にコツコツ頑張ってきた努力が報われる、そんな心に染みる感動のラストは、どの作品でも共通項といえそうだ。『おみおくりの作法』は2015年1月、シネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2014年11月26日