突然ですが質問です。皆さんは「ちっちゃな家の空間3原則」というものを聞いたことはありますか?これは、狭小住宅を数多く手掛けている建築家・杉浦伝宗さんが提唱された名言です。杉浦さんは『それでも建てたい!!10坪の土地に広い家―「ちっちゃな家」の空間3原則』という本も出版されています。住まいのプランやデザインを考える上で、筆者はこれをよくキーワードにさせてもらっています。では、この3原則とは、いったい何でしょうか?■ 「透ける」「抜ける」「兼ねる」。この3原則に込められた意味とは?それは「透ける」「抜ける」「兼ねる」。この3つを駆使することで、限られたスペースを最大限に活用し、快適に、そして楽しく住める「ちっちゃな家」が実現できるということなんですね。と、ここまで読んだ皆さんの中には、「なんだ、杉浦さんのような著名な建築家に依頼しないと、狭さを感じない素敵な狭小住宅なんて無理なのね」と、思う方もおられるかもしれませんが、そうとは限りません。makaron* / PIXTA(ピクスタ)既にでき上がった新築でも、これからやるリノベーションでも、賃貸住宅であっても、ちょっとした発想の転換や割り切りで、簡単に、しかもローコストに取り入れられることもあるはず。ご紹介する第1回目は、「透ける」です。■ 建築家・杉浦さんによる本来の「透ける」とは?ちっちゃな家シリーズを拝見すると、エキスパンドメタルというメッシュ状の金属板で内外を仕切ったり、パンチングメタルという穴のあいた金属板が階段に使われています。エキスパンドメタルパンチングメタルこれら透ける素材のおかげで、圧迫感の無い開放的な家、そして光や風を通してくれる快適な家になっているんですね。※念のため補足しておくと、エキスパンドメタルは、室内側からは透けて外が見渡せるのに、外からは室内の様子が見えないというメッシュの特性を持っているので、内外の仕切りに使えるのだそうです。■ 身近にもこんなにある!「透ける素材」を取り入れた実例ガラス・アクリル・プラスチック・ポリカーボネート等は透ける素材の代表格。これらの「透ける素材」と使っている実例を3つご紹介します。事例1上の写真は、ホームセンターで買ったポリカーボネート製の透明波板を窓の無い廊下の天井に使っています。狭い空間の圧迫感を抑えられ、しかも超ローコスト・簡単施工の天井です。事例2これは、蜂の巣状に形成されたプラスチックハニカムコアという素材を床に使い、階段下や玄関にも光が届くようにしています。事例3こちらは「透ける素材」を使っての収納や棚です。もし棚板が透明ではなく、透けない色柄の付いた板だったとしたら……主張が大きく違ってきますよね。空間を少しでも広く見せたいなら、重さや厚みを感じさせない透ける素材は非常に効果的なのです。■ 「透ける素材」のデメリットも把握し、自分に合った取り入れ方を!ここまでは、「透ける素材」の魅力と効果を力説してきましたが、気をつけるべきポイントも、ご紹介しなければなりません。取り入れるにあたっては、プライバシー性、断熱性や遮音性、強度等が、適切で納得のいくものなのか?波板を棚板にしたら、ご覧の通りたわんでしまいました。 今は波板を二重にして強度を出していますせっかく取り入れたのに、なんだか落ち着かない、暑い寒い、使用に不便を感じてしまっては、残念ですよね。そして、日本の障子や、すだれ・よしず、ブラインドや薄手のカーテンが持つ「視線や光を柔らかく遮り・風を通す」という性質も、手軽に使える「透ける」素材として、見直したいところです。ぜひ、皆さんも参考にしてくださいね。次回は「抜ける」についてご紹介します。
2018年10月05日