『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の監督コンビ、ダニエル・クワンとダニエル・シャイナート(ダニエルズの愛称で知られる)の次回作が、2026年6月12日に北米公開されることになった。製作、配給はユニバーサル。タイトルは未定。内容、キャストなどは何も明かされていない。『エブリシング〜』は昨年のオスカーを、作品、監督、脚本、主演女優、助演男優、助演女優の6部門で受賞。A24の歴史で最高記録の1億4300万ドルを売り上げる大ヒットにもなっている。文=猿渡由紀
2024年03月01日『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を生み出したA24と、『パラサイト 半地下の家族』の韓国CJ ENMが初の共同製作で贈る注目作『パスト ライブス/再会』から、再会した主人公の2人がニューヨークをめぐる場面写真が解禁された。本作は、移住によって離れ離れになった幼なじみの2人が24年後、36歳の夏にニューヨークで再会する7日間を描く、大人のラブストーリー。物語のキーワードは「運命」の意味で使う韓国の言葉、“縁ーイニョンー”。見知らぬ人とすれ違ったときに、袖が偶然触れるのは、前世(PAST LIVES)で2人の間に“縁”があったから。登場人物たちが感じるいくつもの「もしも…」が、観客1人ひとりの人生における“あの時”の選択に重なり、心の中に存在する“忘れられない恋”の記憶を揺り起こす――。賞レースの幕開けを飾るゴッサム賞作品賞をはじめ、AFI(アメリカン・フィルム・インスティテュート)2023年映画トップ10の受賞、インディペンデント・スピリット賞では5部門にノミネート、そして第81回ゴールデン・グローブ賞では作品賞(ドラマ部門)賞、非英語作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞(ドラマ部門)と5部門へノミネートされ、存在感を発揮した本作。現在、207の映画賞へノミネート、70受賞(1月15日時点)と本年度賞レースを席巻。2024年に入ってからもその勢いは止まらず、年始から第58回全米映画批評家協会賞で作品賞を受賞。全米の著名な映画批評家61人で構成される同賞は、過去にも『TAR/ター』『ドライブ・マイ・カー』『ノマドランド』『パラサイト 半地下の家族』など、その年のアカデミー賞を賑わせてきた数々の作品が作品賞を獲得している歴史がある。ほかにも続々と受賞を重ねており、先日発表された全米監督組合賞(DGA)では、セリーヌ・ソン監督が初長編映画監督賞にノミネートされるなど、批評家たちからの熱烈な支持とさらなる注目を集めている。1月23日にノミネートが発表される米国アカデミー賞では、第92回に『パラサイト 半地下の家族』がアジア映画として初めて作品賞を受賞、翌年には『ミナリ』で助演女優賞(ユン・ヨジョン)を、そして昨年は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞をはじめ7部門で受賞を果たすなど、アジア系作品の勢いが止まらない。今回も『オッペンハイマー』や『バービー』『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』など名だたる作品と肩を並べるノミネートにも期待がかかる。また、マスコミ向けの試写会では、「鳥肌が立った」「いつまでも余韻に浸れそう」「心の奥深くに刺さって抜けない映画」「ラブストーリーという概念も超えている作品」「映画全体が洗練されている」など、称賛の声が続々と上がっている。今回公開された場面写真は3点。ノラ(グレタ・リー)に会うためにニューヨークを訪れたヘソン(ユ・テオ)との再会の瞬間を捉えたショットや、ハドソン川の船上や地下鉄など、ニューヨークの様々な場所をめぐりながら、お互いを見つめ合い笑顔で微笑むものなど、いずれも24年ぶりの再会の喜びが伝わってくるカット。これら“再会”のシーンについて主演のグレタ・リーは、「最初から(ヘソン役のユ・テオと)お互いにフィジカルコンタクトがないようにと言われていました」と言う。「役者は普段からしょっちゅうハグする傾向があるから」と撮影前にセリーヌ・ソン監督から指示があったことを明かし、「監督からそういうアドバイスがあったからこそ、マディソン・スクエア・パークのシーンにつながる緊迫感が生まれたんだと思います」と同シーンでの撮影をふり返る。俳優陣がリアルな緊張感をもって臨んだ再会の様子に注目だ。『パスト ライブス/再会』は4月5日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:パスト ライブス/再会 2024年4月5日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開2022 © Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved
2024年01月16日『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が本年度の米アカデミー賞を席巻し、絶対的な存在へと上り詰めた感のあるアメリカの映画会社A24。そのA24の初公開作品計11本を上映する「A24の知られざる映画たち presented by U-NEXT」が、12月22日より全国5劇場で開催中。ホラー、コメディ、ドキュメンタリーと多彩な作品が入り乱れる本企画の実施を記念し、『ミッドサマー』や『aftersun/アフターサン』ほかA24作品の日本版ポスターやパンフレット等を多数手がけるグラフィックデザイナーの大島依提亜と、A24のクリエイターに多数インタビューしたSYOの対談を実施。「A24の知られざる映画たち presented by U-NEXT」のラインナップを中心に、A24の今後についても考察していく。大島依提亜映画のグラフィックを中心に、展覧会広報物、ブックデザインなどを手がける。A24の日本版担当作は『パーティで女の子に話しかけるには』『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』『ミッドサマー』『Zola ゾラ』『カモン カモン』『X エックス』『LAMB/ラム』『MEN 同じ顔の男たち』『エブリシング・エブリウェア・オール』『Pearl パール』『aftersun/アフターサン』『ボーはおそれている』など。SYO1987年福井県生。東京学芸大学卒業後、複数のメディアでの勤務を経て2020年に独立。A24好きが高じて『インスペクション ここで生きる』日本公開時のオフィシャルライターを務めたほか、『アフター・ヤン』『X エックス』『Never Goin' Back/ネバー・ゴーイン・バック』等のパンフレットに寄稿。アリ・アスターやマイク・ミルズほか、多数のA24系クリエイターにインタビューを行う。「A24の知られざる映画たち」ではケリー・ライカート監督のオフィシャルインタビューを担当。『エターナル・ドーター』© ETERNAL DAUGHTER PRODUCTIONS LIMITED/ BRITISH BROADCASTING CORPORATION MMXXIISYO:最初に簡単な流れを話すと、元々僕たちが「A24の知られざる映画たち」のセンチュリーシネマさんでのイベントに出ることになっていて。そこでは『エターナル・ドーター』を中心に話す予定なのですが(本対談は12月中旬に実施)、先日シネマカフェさんのポッドキャスト番組「ツクリテラジオ」に依提亜さんに出ていただいた際に「今回の特集上映についてもっと語りたいね。時間足りないね」という話になり、今回の対談につながりました。大島:「A24の知られざる映画たち」で上映されるのは11本ですが、個人的に5つ星の作品が半分以上あって、これはぜひじっくり話したいなと。最初は「未公開のやつだからどうかな」と思っていたのですが、まだまだこんなに傑作が揃っていたのか!と驚きました。SYO:全作観て思ったのは、「これもA24なんだ!」と。自分の中のA24のイメージから外れたものもあって面白かったです。それこそ「未体験ゾーンの映画たち」(ヒューマントラストシネマ渋谷で開催される劇場未公開作品一挙上映イベント)を全部A24作品でやったみたいな。大島:そうそう。SYO:個人的に意外だったのは『ゴッズ・クリーチャー』です。これA24よりNEONなんじゃない?(『パラサイト 半地下の家族』『PERFECT DAYS』等の米国配給を手掛けるスタジオ)と思うような、それこそ賞を獲りに行く系の渋~い作品で。『ゴッズ・クリーチャー』© A24 DISTRIBUTION LLC, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, NINE DAUGHTERS, SCREEN IRELAND 2022大島:もしくはサーチライト・ピクチャーズとか。SYO:そうそう(笑)。ろくでなしの息子を守るために母親がついた嘘が波紋を呼んでいく…というような話なのですが「日本でも置き換えられるよな、エミリー・ワトソンの役をやるのは吉永小百合さんか?いや、田中裕子さんかな」などと思いながら観ていました。息子役のポール・メスカルは『aftersun/アフターサン』で日本でも認知が広がりましたね。大島:ポール・メスカル、ハマっていましたよね。僕の今回のイチオシは『ファニー・ページ』です。これは傑作だった。『ゴーストワールド』のイーニドとレベッカの出てこないモブキャラだけで成立しているような作品で、ダメダメな人たちしか出てこないんだけど(笑)、16mmフィルムで撮影していることもあるけど、愛に溢れた視点で汚いものも美しく見えてくる。『ファニー・ページ』© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.SYO:漫画家に憧れる男の子を中心にした、才能の話なんですよね。持っていない人たちや、持っているけど続けられるほどではなかった人たちが登場して「この部屋にいる奴らは全員才能がない」と自嘲するシーンなど、切なかった…。大島:そして、出来がものすごくいい。『グッド・タイム』『アンカット・ダイヤモンド』のサフディ兄弟がプロデュースをしているのですが、彼らがコメディを撮ったらこうなるのかなというような、あまり観たことのない感じがありました。主人公が下宿する先が、地下の温室みたいなところじゃないですか。あのシチュエーションを撮りたかったんだろうなと思いました。SYO:なんでわざわざここに!?と思うような場所ですよね。住人みんな汗かきまくってるし、眼鏡も曇っていて(笑)。自分がプロデュースする立場だったら「ここにする必然性は何?」と聞いてしまいそう。だからこそそこに、作家性が出ますよね。大島:監督は撮影中、もっと汗を!と演出してたみたいです(笑)。カンヌ国際映画祭の監督週間に出品されてA24が買い付けたみたいなんだけど、凄い才能ですよね。監督・脚本のオーウェン・クラインは、『イカとクジラ』に出演していた俳優で本作が監督デビュー作。今後がすごく楽しみです。主演のダニエル・ゾルガードリは、『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』今回の特集上映のラインナップにも入っている『ロー・タイド』とA24御用達の若手俳優ですね。ダニエル・ゾルガードリ縛りで観てもいいかもしれません(笑)。SYO:僕のイチオシは『アース・ママ』です。良すぎてびっくりしました。先日発表された英国インディペンデント映画賞2023でダグラス・ヒコックス賞(新人監督賞)を受賞したのですが、納得です。『アース・ママ』© 2023 Earth Mama Rights LLC, Channel Four Television Corporation. All Rights Reserved.大島:これは最高でしたね。『aftersun/アフターサン』と『Zola/ゾラ』を足したような撮り方も良かったし、本作でデビューしたサバナ・リーフ監督がバレーボールの元オリンピック選手というのもびっくりしました。SYO:短期間に11本一気見したことで、ファーストカットで大体いい作品かどうかがわかるようになったのですが、本作はちょっとレベルが違いましたね。大島:わかる。主演のティア・ノーモアはラッパーなのですが、『アース・ママ』を見た後に即Apple Musicで彼女の曲を探して聴きまくっています。SYO:そうなんですね!僕も聴かなきゃ。『アース・ママ』は育児の資格がないと判断され、子ども二人が児童養護施設に収容されてしまった妊婦が主人公なのですが、貧困や有害な男性性といった問題や文化的なアイデンティティについても触れられていて見ごたえが凄まじい。大島:生まれてくる子どもを養子縁組に出すかという部分で、人種のアイデンティティと実生活のせめぎ合いが描かれていくのも上手いですよね。離ればなれになった子どもたちに電話でお気に入りの曲を流すシーン、グッと来ませんでした?SYO:あれは泣きました…。僕自身が親になったことで共感ポイントが増えると同時に、厳しい目で見てしまうことも出てきましたが、本作はノイズを全然感じなくて。先ほど有害な男性性の話をしましたが、加害者であろう男性がほぼ全く出てこない・意図的に登場させていないというのも特徴だなと。大島:確かに、出てこないですね。僕はへその緒の描写も印象に残りました。現実問題を描きながら、新しい映像を撮ろうとする野心もちゃんとある監督だなと。『カモン カモン』のようなドキュメンタリー的な取材シーンと創作の物語をミックスさせているから、深みも出ていたし。SYO:そしてヴァル・キルマーのドキュメンタリー『ヴァル・キルマー/映画に人生を捧げた男』。これは感動しましたね…。幼少期からヴァル・キルマーが撮りためていた日常の記録が1本の映画になっていて。『ヴァル・キルマー/映画に人生を捧げた男』© 2020 A24 DISTRIBUTION, LLC. All Rights Reserved大島:エディットがうまいですよね。素晴らしかったです。これを観た後に『トップガン マーヴェリック』を観たら、感動がものすごいんじゃないかな。しかし、A24のドキュメンタリーはハズレがないですね。『AMY エイミー』に『ボーイズ・ステイト』『オアシス:スーパーソニック』とみんな面白い。SYO:今回のラインナップの中で一番「劇場で観たい人が絶対いるはず」と思った作品かもしれません。彼の演技に対する想いや、完璧主義すぎて敬遠されてしまう苦しみ、ナレーションを息子が担当しているところ等々、見どころが多すぎました。大島:ドキュメンタリーはその人のどこを切り取るかによって180度イメージが変わるし、自分がプロデュースしている作品だからいい人に見せすぎてしまうきらいはあるけど、本作は一歩手前で止まる冷静さがあるのが素晴らしい。SYO:「過去の栄光にすがっている俺はダサいだろ?」と自嘲しつつ「でもこういう機会がないとファンと交流できない」と告白するシーン等々、全部を開示してくれる感じがありましたよね。大島:そして『ショーイング・アップ』も最高でした。ケリー・ライカート監督は日本でも人気だし本作は今回の特集上映の顔になっていますが、観たら作品自体が素晴らしくて顔になる理由がよくわかりました。しかし、ホン・チャウは素晴らしいですね。『ザ・メニュー』『ザ・ホエール』『アステロイド・シティ』そして本作と、いい作品に連続して出演していて凄いなと。『ショーイング・アップ』© 2022 CRAZED GLAZE, LLC. All Rights Reserved.SYO:本作は2人のアーティストの対立構造になっていて、芸術系の一家に育ったけどなかなかブレイクしきれない主人公(ミシェル・ウィリアムズ)と、自分ひとりで道を切り開いていく野心家のアーティスト(ホン・チャウ)の衝突も描かれるのですが、そこにお互いに認めているシスターフッド感があって心地よかったです。大島:ミシェル・ウィリアムズとホン・チャウが並んで歩き去っていくシーンでクリント・イーストウッドがよくやるエンディングショットというか、ふたりの遠ざかる姿をクレーンが上がっていく方法で撮影されていて、「ケリー・ライカートがこれをやるんだ」と思ったらハト目線だったのか!と気づいて面白かったです。あのシーンの演出はちょっと『フェイブルマンズ』を思い出しました。ミシェル・ウィリアムズ、ジャド・ハーシュとキャストもかぶっているし。あと僕は、映画に出てくる現代美術のコレクターなんです。例えば『ザ・スクエア 思いやりの聖域』などもそうだけど、『ショーイング・アップ』に出てくるアートも素晴らしいものばかりでした。SYO:今回の特集上映に際してケリー・ライカート監督にインタビューさせていただいたのですが、ミシェル・ウィリアムズとホン・チャウが演じたキャラクターは「どんな作品を作るか」から生み出されていったようです。実際にアーティストのもとでレクチャーを受けてから撮影に臨んだとか。大島:そうだったんだ。あとは、『ザ・ヒューマンズ』も良かったですね。『WAVES/ウェイヴス』のトレイ・エドワード・シュルツ監督の長編デビュー作『クリシャ』は、ホラーテイストに見せかけた家族の話という仕掛けですが、本作はその逆。最初から「家族の話ですよ」といいつつ、撮り方がホラー的でめちゃくちゃ上手いし、凝っている。『ザ・ヒューマンズ』© 2021 THE HUMANS RIGHTS LLC. All Rights Reserved.SYO:舞台となる家が怖いんですよね。壁の汚れとか、割れたトイレとか。そしてそれをじっと見ている父親がいて…。その中で展開していく会話が、聞かせようとしていない家族の内々の日常会話だから独特の居心地の悪さを感じました。それでいて、キャストが異常に豪華。『シェイプ・オブ・ウォーター』のリチャード・ジェンキンスに『ミナリ』『BEEF/ビーフ ~逆上~』のスティーヴン・ユァン、ジェイン・ハウディシェルは『その道の向こうに』に出演しているんですね。大島:『レディ・バード』のビーニー・フェルドスタインのシリアスめな演技が見られるのもいいですよね。本作はピュリッツァー賞に2度ノミネートされた劇作家スティーヴン・カラムが、トニー賞を受賞した自身の戯曲を映画化した作品だそうですが、映画としての完成度が非常に高い。いわゆる「劇作家の人が映画を撮りました」的な癖がないんですよね。演劇で出来ることをやり尽くしたから、映画ならではのことをやるんだという意志を感じました。SYO:エイミー・シューマー演じる姉が、妹カップルが仲良くしているところを見ちゃって「あっ」となるシーン等々、映像的な視点を感じました。大島:日常のディテールを強調することで醸し出される気持ち悪さが上手いですよね。ちょっとアリ・アスター監督の来年2月公開の『ボーはおそれている』にも通じるところがあるかもしれない。冒頭の建物で切り取られた空を映したカットもカッコよかったですよね。SYO:かなりじっくり見せていましたよね。ちょっと十字架に見える意味深なカットもあって…。僕は『アフター・ヤン』や『ブレードランナー 2049』のような“家映画”が好きなのですが、そうした方にもハマる気がします。大島:『フォルス・ポジティブ』も面白かったです。マタニティホラーなんだけど、こういう映画にピアース・ブロスナンが出ているのが新鮮だった。『フォルス・ポジティブ』© 2019 FP RIGHTS, LLC. All Rights Reserved.SYO:『007』のイメージを効果的に使っていましたよね。ファーストカットがラストカットと一緒で「なぜこうなったのか?」が明かされる構成の上手さ、そして床に垂れてしまった血が胎児の形になるなど、魅せ方も印象的でした。『オール・ダート・ロード・テイスト・オブ・ソルト』『アース・ママ』含めて妊娠を描いた作品も今回多かった印象です。ここまでバーッと話してきましたが、こうやってA24縛りで様々な作品を観られるのは楽しいですね。A24にも色々な作品があるし、個人個人で最高!と思うものや微妙…と感じるものもあるでしょうが、本数が増えていくと「A24」というレーベルに対する解像度も上がっていきますし。大島:僕はA24全作品鑑賞マラソンを続けていますが、すごく楽しいです。観続けていくと「この監督は絶対に追っていこう」という人に出会えるし、青田買い的な楽しみ方もできる。新人・ベテランにかかわらず、A24は気に入った監督と継続的に組む特徴がありますから。『エターナル・ドーター』のジョアンナ・ホッグとは『スーヴェニア私たちが愛した時間』でも組んでいるし、『ショーイング・アップ』のケリー・ライカート監督とは『ファースト・カウ』もやっていますしね。SYO:『ファニー・ページ』はサフディ兄弟、『オール・ダート・ロード・テイスト・オブ・ソルト』はバリー・ジェンキンス(『ムーンライト』)プロデュースですしね。『オール・ダート・ロード・テイスト・オブ・ソルト』© 2023 CARDINAL RIVER LLC. ALL RIGHTS RESERVED.大島:とはいえ監督を追いかける観賞スタイルって、やっぱりその人の作家性があるからあまり広がっていかない部分もあると思うんです。じゃあもっと広い意味で色々な映画を観てみようといっても、多すぎて何を観たらいいかわからない方もいるはず。そんなときに、制作・配給会社縛りで観てみるのは効果的ですよね。映画の多様性も味わえるし、一貫した自分の好みにフィットする映画を観ることもできる。「ホラーだったらブラムハウス」みたいなブランド感ってあると思いますが、A24の場合はひとつのジャンルによらず様々な作品が観られるから面白いですよね。SYO:しかも最近、A24自体も次なるフェーズに入ろうとしていますよね。先日情報解禁された『MEN 同じ顔の男たち』のアレックス・ガーランド監督の新作『Civil War(原題)』なんて、IMAX専用映画ですから。A24史上最高の製作費らしいのですが、まさかIMAX映画を撮るとは思わなかった…。大島:ロック様(ドウェイン・ジョンソン)が伝説のレスラーを演じた『The Smashing Machine(原題)』をサブディ兄弟の弟、ベニー・サフディが監督するのも驚きですし、『セイント・モード/狂信』のローズ・グラス監督の新作『LOVE LIES BLEEDING(原題)』等、アクションの方にかじを切ってきた?と思うようなところもありますよね。明らかにこれまでとは違う動きだなと。SYO:確かに、来年日本公開が発表された『アイアン・クロー』もプロレスラーの映画ですしね。主題は違っていても、アクション要素はあるでしょうし。小島秀夫監督のゲーム『DEATH STRANDING』実写化も発表されましたし、アートフィルムと並行して大きめなバジェットの作品もどんどん作っていくのかな、とは感じています。大島:今後の戦略として、アートフィルムを撮っている監督にエンタメやアクション映画を撮らせて、毛色の違うものを作ろうとしている感じはありますよね。アレックス・ガーランド監督は『アナイアレイション -全滅領域-』も撮っているけど、『Civil War』はもっと現実的な話でしょうし。SYO:個人的には政権がひっくり返るディストピア映画『ニューオーダー』的なテイストの話かなと思っています。依提亜さんと話していて思ったのですが、こうした新たな動きは劇場体験を追求した結果なのかな?と。これまでは『ミッドサマー』だったり『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』のヒットもあってA24の武器の一つにホラーがあったように思いますが、劇場に呼び込むさらなる施策として臨場感や肉体性を感じられるアクション映画の比重を増やしているのかもしれませんね。「A24の知られざる映画たち presented by U-NEXT」12月22日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷ほかにて4週間限定ロードショー。2024年1月26日(金)よりU-NEXTにて独占配信。※『ロー・タイド』『ファニー・ページ』『スライス』はPG-12作品。(SYO)
2023年12月29日本年度アカデミー賞最有力とされる『PAST LIVES』(原題)が、邦題『パスト ライブス/再会』として4月5日(金)より全国公開決定。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を生み出した「A24」と『パラサイト 半地下の家族』配給の韓国CJ ENMが初の共同製作で贈る注目作の予告&ポスタービジュアルが解禁された。本作は、移住によって離れ離れになった幼なじみの2人が24年後、36歳の夏にニューヨークで再会する7日間を描く、大人のラブストーリー。すでに公開を迎えた各国では共感と絶賛の嵐が巻き起こり、映画レビューサイト「ロッテントマト」98%フレッシュを獲得(2023年10月2日時点)、世界の映画祭でも高い評価を得ている本作は、賞レースの幕開けを飾るゴッサム賞で作品賞を受賞。先日発表されたゴールデン・グローブ賞では『オッペンハイマー』や『バービー』など名だたる作品と肩を並べ作品賞(ドラマ部門)・監督賞・脚本賞をはじめ主要5部門へノミネート。そのほか、インディペンデント・スピリット賞への5部門ノミネートやAFI(アメリカン・フィルム・インスティテュート)2023年映画トップ10、IndieWire誌やHollywood Reporter誌、Rolling Stone誌など複数の海外メディアの<ベストムービー>にも選ばれるなど下馬評を高め、米国アカデミー賞最有力と大きな期待を集めている。第33回ゴッサム賞授賞式 にて本作で鮮烈な長編映画監督デビューを飾るのは、セリーヌ・ソン。12歳の時に家族と共にカナダへ移住した自身の原体験を元にオリジナル脚本を執筆した。主人公・ノラ役には、Netflixドラマシリーズ「ロシアン・ドール」(19~)で注目され、声優として『スパイダーマン/スパイダーバース』にも参加、ハイブランド「ロエベ(LOEWE)」のモデルも務めるグレタ・リー。幼なじみのヘソン役には、ニューヨークとベルリンで俳優としてのキャリアを重ね、2009年よりソウルを拠点に活躍。「その恋、断固お断りします」(23/Netflix)などに出演し活躍の幅を広げるユ・テオが抜擢された。ノラの夫・アーサー役には、『キャロル』や『マネー・ショート華麗なる大逆転』などに出演、ケリー・ライカート監督『ファースト・カウ』で主演を務めるジョン・マガロがキャスティングされている。解禁となった予告編は、ニューヨークの公園でノラ(グレタ・リー)とヘソン(ユ・テオ)が24年ぶりに再会するところから始まる。12歳の時にソウルで離れ離れになり、24歳オンラインでつながり、そして36歳になった今、再びめぐり逢う時の流れを映し出す。ヘソンとの再会を果たしたノラに、夫であるアーサー(ジョン・マガロ)は「また彼に惹かれている?」と問いかける。「今はあなたと人生を共にしている」と答えるノラ。一方「もし君がソウルを去らなかったら…僕たち付き合ったかな?」「結婚したのかな?」とヘソンが投げかける、彼女が選ばなかった人生の選択肢。ブルックリンブリッジ、地下鉄、ハドソン川…ニューヨークの様々な景色と、エモーショナルな音楽が運命の相手との再会の7日間を彩る。同時に解禁されたポスタービジュアルでは、ノラとヘソンがメリーゴーランドを前に座り、お互いを見つめ合う姿が印象的。リラックスした様子のノラと、少し緊張しているようにも見えるヘソン。ニューヨークの摩天楼を背に、24年ぶりに再会した2人の心情と恋の行方に想像をかき立てられる。物語は「運命」の意味で使う韓国の言葉“縁ーイニョンー”がキーワード。見知らぬ者がすれ違ったときに、袖が偶然触れるのは、前世―PAST LIVES―でふたりの間に“縁”があったから。そんな縁による、心の中に存在する“忘れられない恋”の記憶を揺り起こす。『パスト ライブス/再会』は2024年4月5日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)
2023年12月25日『ミッドサマー』や『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』などの話題作を次々と世に送り出し、現在の映画界でもっとも勢いがある映画製作・配給会社と言われている「A24」。そこで今回は、日本初公開となる11作品をスクリーンで楽しめる特集上映「A24の知られざる映画たち presented by U-NEXT」のなかからオススメの1本をご紹介します。『ショーイング・アップ』【映画、ときどき私】 vol. 625美術学校に勤める彫刻家のリジーは、間近に控えた個展に向けて作品の制作に追われる日々を送っていた。ところが、大家で隣人でもある芸術家のジョーはお湯が出ないまま修理をしてくれず、家に迷い込んだ鳩の世話まですることになり、思うようにいかない。リジーは創作に集中できないまま、それでも一生懸命に毎日を過ごしていくことに…。昨年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門出品で高く評価されたのち、今年4月に全米で公開された本作。今回は制作秘話などについて、こちらの方にお話をうかがってきました。ケリー・ライカート監督アメリカの“インディーズ映画の至宝”と称され、活躍を続けているライカート監督(写真・左)。12月22日に日本で公開を迎える『ファースト・カウ』に引き続き、本作ではA24と2度目のタッグを組んでいます。そこで、監督から見たA24の魅力や創作活動の原動力、そして女性監督としての苦労を乗り越えてきた秘訣などについて語っていただきました。―舞台となるのは、監督が住んでいるコミュニティでもあるそうですが、モデルとなっている方がいるのでしょうか。監督特定の誰かの話を映画にしたわけではなく、自分たちが知っている多くのアーティストからさまざまなインスピレーションをもらいました。ただ、主人公の隣人であるジョーが大家という設定は、カナダの画家エミリー・カーの経験がもとになっています。というのも、実は最初は彼女の伝記を作ろうとしていたことがあり、大家として収入を得ていた経験があったことを本で読んで知っていたからです。彼女は絵を描く時間を取るために大家になることを選んだのですが、実際は住人の方々からいろんなお願いをされることが多く、全然絵を描く時間が取れなかったとか。そういった失敗談から、本作は日常生活と創作活動のバランスについての物語になりました。―タイトルの『ショーイング・アップ』には、どのような思いが込められていますか?監督まずは、友人や誰かが自分を必要としているとき、そこに「現れる」という意味があります。それから作品づくりをするアーティストにとっては、日々作業台に「向き合う」という意味にもなると思って付けました。こんなにも作り手の願いを叶えてくれるスタジオはない―主演のミシェル・ウィリアムズさんが素晴らしかったですが、ご一緒されるのは4度目となります。現場での様子や監督から見た魅力について、お聞かせください。監督今回、ミシェルとはキャラクターを一緒に模索していくような感覚がありました。そのうえで、彼女は役作りとして実際のアーティストと一緒に時間を過ごして準備をしてくれたり、劇中のアパートで実際に生活をしてみたり、自分の手で作品を作ってくれたりしています。ミシェルといえば、新しいことにトライしたい気持ちが強い方でもありますが、お互いのことをよく知っているからこそ、リスクがあってもいろんな挑戦ができました。天候や共演者が変わるだけでも違ったことを提案してくれますし、さまざまなアイデアも出してくれるので、本当に信頼できる俳優ですね。単純な作業でさえ、ミシェルの手にかかれば絶対に素敵なものになるという安心感もあったほどです。―おふたりの間に長年の信頼があったからこそ、生まれた作品とも言えそうですね。そして、本作を語るうえで欠かせない存在となるのがA24ですが、2作続けてお仕事をされてみていかがでしたか?監督私たちにプレッシャーを与えることなく辛抱強く待ってくださり、これ以上ないほどのサポートをしてくれました。昔から一緒に仕事をしてきた方が何名かいるというのもありますが、とてもいい関係を育ませていただいているので、これからも続いていったらいいなと思っています。こんなにも作り手の願いを叶えてくれるスタジオは、なかなかありませんからね。―ちなみに、A24の作品で監督が好きな作品があれば、教えてください。監督たくさんあって選ぶのが難しいですね…。でも、1本だけ挙げるとすれば、『ムーンライト』です。監督のバリー・ジェンキンスと同じく私もマイアミ出身ですが、彼のような方法で撮影されたマイアミを見たことがありませんでしたから。本当に美しい映画だと思っています。動物たちは私たちの“オブザーバー”でもある―監督の作品は、動物が多く登場する傾向にあり、本作でも鳩などの動物が印象的に出てきます。どういった意図で動物を起用されていますか?監督今回の鳩についてはそこまで深い意味を持たせているわけではなく、リジーとジョーが生活でお互いに関与するきっかけにしたくて入れました。といっても動物を撮影するのは難しいので、本当は避けたいといつも思っているんですよ。ただ、言葉を話さない動物たちとコミュニケーションすることでキャラクターが人間との関係では見せない側面を露わにするので、そこを映したくて登場させているところはあるのかなと。ある意味、動物たちは私たちの“オブザーバー”と言えるのかもしれませんね。―なるほど。本作ではリジーが抱えるフラストレーションについても描かれていますが、それが創作活動のモチベーションを上げている部分もあるように感じました。では、監督にとってインスピレーションの源は何ですか?監督私も若い頃は、リジーのように悩みやフラストレーションが原動力になっていた部分もありました。いまはだいぶ状況も変わりましたが、当時は男性監督たちと同じように女性が映画を作れないことがよくありましたからね。あと、映画づくりというのは、長い時間をかけてパズルを組み合わせていくような作業なので、その過程で見たり聞いたりすることが自分の気持ちに火をつけてくれることも。そういった一つ一つが大事だと考えています。大事なのは、自分を信じる気持ち―思うように映画が作れなかった時期もあったようですが、どのようにしてその壁を乗り越えて、自分なりの道を切り拓いていかれたのでしょうか。監督私は長編の1作目と2作目の間に、12年ほど間が空いてしまったのですが、その間もつねに映画のことを考え、小さい作品でも撮り続けていました。それは、長編が撮れるチャンスがやってきたときにその機会を逃さないように、時間を無駄にしてはいけないと考えていたからです。結果的に時間はかかりましたが、いつでもできる準備が整っていたおかげで次の扉を開くことができました。あと、大事なのは、自分を信じる気持ち。「自分が目指すゴールには価値があるんだ」と勇気を持って進むことが大切だと考えています。ちなみに、これは長年教える立場にいて感じていることですが、「自分のアイデアは素晴らしいから映画にすべきだ!」という姿勢で来ることが多いのは若い男性。それに対して、若い女性はどちらかというと「まだ周りに認められていないから…」と不安そうにしている傾向があると感じています。―男女でそのような違いあるのは興味深いですね。監督でも、若い頃なんて誰だって自信がない人が大半ですよね。「成功するまで、うまくいっているフリをしろ」という言葉が英語にありますが、まさにその通りだなと思っています。待っているだけで「あなたのしようとしていることは価値がありますよ」なんて誰かが言ってくれるわけではないので、年齢に関係なく自分を信じるしかないですよね。日本では、人との輪を大事にしていると感じた―確かに、その通りですね。話は変わりますが、監督は今年の東京国際映画祭に参加するために来日されていましたが、日本で印象に残っていることがあれば教えてください。監督10日間しか滞在できませんでしたが、日本のことは映画を通して30年以上見てきたのですべてが刺激的でした。建築や庭は美しいですし、東京の地下鉄はアメリカの映画館よりも静かだと感じたくらい(笑)。みなさん親切なので、言葉がわからない国で迷子になるなら、日本より最高の場所はないですよね。それと、自己中心的なところが多いアメリカに比べると、人との輪を大事にしている印象ですし、日本のみなさんがしていることには合点がいくことが多いとも思いました。「なんでアメリカではしていないんだろう?」と何度も考えてしまったほどです。あとは、銃社会ではない場所で生きることがどれだけ素晴らしいのかを改めて実感しました。―それでは最後に、日本の観客に向けてメッセージをお願いします。監督自分の作品がほかの国の方々にどのように観られているのかはあまり知ることができないので、とても気になっているところです。それだけにこの作品をみなさんに観ていただけることは本当にうれしく、夢のようなことだと思っています。A24ならではの作品が続々登場!家族や友人との複雑な人間関係を繊細に描いて共感を呼ぶ本作をはじめ、A24が放つ最新作が一挙に堪能できる今回の特集上映。ヒューマンドラマやコメディ、ミステリー、ドキュメンタリーといった幅広いジャンルのなかから、新たなお気に入りの1本を探してみては?取材、文・志村昌美目が離せない予告編はこちら!作品情報「A24の知られざる映画たち presented by U-NEXT」12月22日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷ほかにて4週間限定ロードショー2024年1月26日(金)よりU-NEXTにて独占配信配給:U-NEXT(c) 2022 CRAZED GLAZE, LLC. All Rights Reserved.
2023年12月21日アカデミー賞受賞『ムーンライト』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』や日本でも大ヒットとなった『ミッドサマー』などを世に送り出したアメリカ・ニューヨークを拠点とする独立系映画スタジオ「A24 Films LLC」が、A24製作作品など世界配給権を所有する新作映画について、日本国内配給を独占的に手掛けることなどを盛り込んだ独占パートナーシップ契約をハピネットファントム・スタジオとの間に締結した。ハピネットファントム・スタジオと「A24」は、第89回アカデミー賞で作品賞ほか3部門を受賞した『ムーンライト』、日本国内興行収入が北米を除く全世界で1位を記録したアリ・アスター監督『ミッドサマー』など、ライセンシーとライセンサーの立場で協力し、これまで数多くの作品を成功させてきた。アカデミー賞受賞『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ハピネットファントム・スタジオは、今回の独占パートナーシップ契約を通じて、「A24」がこれまで手掛けてきたアカデミー賞受賞作など数多くのクオリティの高い話題作を安定的に確保し、さらに自社製作映画を含むコンテンツや日本のクリエイターを「A24」に紹介することによって、日本映画の新たな可能性を拡げる展開などにも期待。一方で、「A24」は劇場配給・宣伝のみならず配信、テレビ販売、パッケージ流通などの二次利用の領域まで一気通貫で手掛けるハピネットファントム・スタジオとの独占パートナーシップによって、マーケティング戦略の意思統一とブランディングのさらなる構築が可能だと判断し、今回の契約締結が実現することになった。アリ・アスター監督最新作『ボーはおそれている』2024年2月16日公開今後の展開としては、ハピネットファントム・スタジオは、新レーベルを立ち上げてA24作品を手掛けることを検討しているだけでなく、今後は映画のグッズなどの「A24」ブランドのマーチャンダイジングへの拡大、また将来的には、合作映画の製作や、ハピネットファントム・スタジオが手掛ける日本映画の「A24」配給による北米・インターナショナル展開、日米の新しいクリエイターとの協業など、さらなるシナジーを生み出す展開を目指していく。●ハピネットファントム・スタジオ代表取締役社長・小西啓介 コメントこれまでも独創的な作品を数多く生み出してきた「A24」が今後、どういった作品を手掛けるのか非常に楽しみで、その全ての作品の国内配給を弊社が手掛けることにワクワクしています。また「A24」とのコラボレーションで日本映画や日本のクリエイターの可能性を拡げて行くことにも大きな期待を抱いています。とにかく一人でも多くのお客様に楽しんで頂けるように丁寧に作品を届けて行きたいと思います。●A24コメントハピネットファントム・スタジオは、「A24」の設立当初からの素晴らしいパートナーです。私たちは、この関係性が次のフェーズに進むことに非常に興奮しており、日本の観客のみなさんと、より深い関係をともに築いていくことを、とても楽しみにしています。2012年に設立され、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドンを拠点とする「A24」は、これまで『ヘレディタリー/継承』『ムーンライト』『レディ・バード』『アンカット・ダイヤモンド』『スプリング・ブレイカーズ』など110本以上の映画と、エミー賞受賞シリーズ「ユーフォリア/EUPHORIA」など多くのTV番組を含むプレミアム・ライブラリーを構築してきた。今後予定されている新作は、ザック・エフロンとジェレミー・アレン・ホワイト出演『The Iron Claw』、ジョナサン・グレイザー監督『The Zone of Interest』、ニコラス・ケイジ主演『Dream Scenario』、アン・ハサウェイとミカエラ・コエル出演『Mother Mary』、 オーランド・ブルームとピート・デヴィッドソン出演『Wizards!』、キルスティン・ダンスト、カイリー・スペイニー、ワグナー・モウラ出演『Civil War』、クリステン・スチュワート主演『Love Lies Bleeding』、ヒュー・グラント主演『Heretic』、イェーデン・マーテル、レイチェル・ツェグラー、ジュリアン・デニソン出演『Y2K』、レナーテ・ラインスヴェ、セバスチャン・スタン出演『A Different Man』、ポール・ラッド、ジェナ・オルテガ出演『Death of a Unicorn』などが控えている(いずれも原題)。(シネマカフェ編集部)
2023年10月31日2012年に設立し、10年余りで唯一無二のブランドへと成長した映画会社A24。2023年の第95回アカデミー賞では『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『ザ・ホエール』が主要部門を席巻し、『aftersun/アフターサン』『その道の向こうに』『CLOSE/クロース』『マルセル 靴をはいた小さな貝』と製作や北米配給を手掛けた作品が続々とノミネートを果たした。A24といえば『ミッドサマー』のアリ・アスターを筆頭に、個性的な若手監督をピックアップする“目利き”な采配で知られている。そのアスターがプロデュースし、ニコラス・ケイジが主演し、A24が配給を手掛ける新作『Dream Scenario(原題)』を手掛けた俊英クリストファー・ボルグリ。『ミッドサマー』チームが熱視線を送る才能が2022年に生み出した映画『シック・オブ・マイセルフ』が、10月13日より劇場公開。“承認欲求おばけ”の実像をブラックに、それでいて切実に描き切った本作は、いまの時代に突き刺さるリアルタイムな空気感を内包している。30代=ネットリアタイ世代の俊英による、生きた「承認欲求」まずは、簡単に『シック・オブ・マイセルフ』のあらすじを紹介しよう。アーティストである恋人のトーマス(エイリック・セザー)が脚光を浴び始め、嫉妬を抱くシグネ(クリスティン・クヤトゥ・ソープ)。彼女は、あるきっかけから承認欲求をエスカレートさせていく。しかし、その方法はあまりに危険で――。「承認欲求」はインターネットの台頭で加速し、SNSが生活に浸透していくにしたがって最早三大欲求(食欲・睡眠欲・性欲)に付随するレベルにまで肥大してしまった感すらある、いわば現代病のひとつ。当然、様々な映画でも題材に取り上げられてきたが――これは個人的な感覚だが、その正体を的確に表せている作品はあまり多くないように思う。その要因の一つは、世代的な問題だ。青春時代をネットやSNSと共に過ごすことを免れた世代の作り手は、どうしても他者的な批判・批評めいた目線でこの問題を斬りがち。ただ我々(ゆとり~Z世代)においては、「そうではない」ことが肌感としてわかるのではないか。我々自身が実生活で経験している日常的な悩みでもあるからだ。例えば同じA24の『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』のボー・バーナムは1990年生まれ、『メインストリーム』のジア・コッポラ監督は1987年生まれ。一概に年齢だけで判断できない部分はあれど、ネット社会に対する解像度が高い作品の作り手は、やはり若手が多い(なお、アリ・アスターは1986年生まれ)。例えばリューベン・オストルンド監督(1974年生まれ)が『ザ・スクエア 思いやりの聖域』『逆転のトライアングル』で描く「炎上商法」「インフルエンサー」とは、距離感がだいぶ異なっている。そして、『シック・オブ・マイセルフ』のクリストファー・ボルグリは1985年生まれ。リアル/デジタルの他者からの評価を欲してしまう「承認欲求」のどうしようもなさ(止められなさ)、そんな自分にどこか引いていたりもするアンビバレントな状態等々、加熱/冷めた心理描写が絶妙だ。シグネの行為自体は過激だと感じても、そうさせる心理には思い当たるフシしかないのではないか。実に先鋭的な切れ味を、震えながら楽しんでいただきたい。「ルッキズム」「多様性」「盗作」「搾取」――現代の問題を網羅承認欲求をテーマにしているという点で“いま”感の強い『シック・オブ・マイセルフ』だが、時代に突き刺さる要素はそれだけではない。「ルッキズム」や「多様性」「創作におけるオリジナリティ」「搾取」に対するエグい球を次々と繰り出してくる。シグネは働いているカフェである事件に遭遇して血を浴び、「自分を傷つけたら注目を浴びるのでは?」と考えてしまう。そして違法薬物に手を出し、身体がどんどん変化していくのだが…。見た目や容姿に対する過度な意識はルッキズムに通じ、直近ではNetflixシリーズ「マスクガール」等でも描かれている。小説では金原ひとみの「デバッガー」(作品集「アンソーシャル ディスタンス」収録)や綿矢りさの「眼帯のミニーマウス」(作品集「嫌いなら呼ぶなよ」収録)で“お直し(整形)”に熱中する人々が描かれており、こうした題材選びにおいても時代の匂いをかぎ取る非凡な嗅覚を感じさせる。さらに、シグネが変化させた外見を病気と偽り、ハンディキャップを背負った人々による「セルフラブ」の広告塔としてプチブレイクしていく展開は、「多様性」を痛烈に皮肉ったものといえるだろう。同じノルウェーのオスロを舞台にした『わたしは最悪。』や、マイノリティがマジョリティを“利用”するさまを描いた高瀬隼子の「おいしいごはんが食べられますように」や年森瑛の「N/A」といった小説にも通じ、複雑化した現代のひりついた空気感を鮮度高くパッキングしている。また、トーマスの表現技法は既存の家具をかっぱらってきて作品化するようなものであり、シグネも活動に加担させられる。マルセル・デュシャンはかつてアート界に「レディ・メイド」というジャンルを構築したが(トイレの便器を作品化した「泉」が有名)、トーマスはそんな崇高なものではなく“引用”というのもおこがましいほど。「バズれば著作権を無視していい」というマインドや、恋人という立場を利用した搾取――。今日(ようやく)問題視されるようになったトピックが、『シック・オブ・マイセルフ』にはごまんと盛り込まれている。毒された「普通の我々」を暴き切る心理描写しかし、『シック・オブ・マイセルフ』の凄まじい点は、それらが飛び道具的に暴れまくっているのではなく、必然性をたたえながら一つの物語に収まっていること。着眼点や解像度の高さもさることながら、センセーショナルなトピックの数々をまとめてしまえる筆力と作品の強度は、目を見張るものがある。それでいて、さりげない「居心地の悪さ」等の描き方が抜群に上手い。例えば、トーマスが主役のパーティに参加したシグネの居場所のなさ、皆の気を引こうと発言するもエアポケット的な沈黙を作ってしまい、後に引けなくなって虚言が膨らみ騒動になっていく流れや、自分が悲惨な状態に陥っても「これバズネタじゃない?」と考えてしまう卑しさ等々――「目も当てられない」と思いながらも、あくまで多少デフォルメされただけでそこに映っているのは私たちの分身。普通であると信じたい我々の闇深さをしっかりわかってくれて、容赦なく突き飛ばす『シック・オブ・マイセルフ』、観賞後に救われるか食らうか…勇気をもって試してみてほしい。(SYO)
2023年10月14日『ミッドサマー』や『LAMB/ラム』、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『Pearl パール』などの話題作を次々と手掛ける気鋭の製作・配給会社A24が北米配給権を獲得した、驚異の英国発ワンショット・ミステリーが、邦題『メドゥーサデラックス』(原題:MEDUSA DELUXE)として日本公開が決定した。物語の舞台は、年に一度のヘアコンテスト。開催直前、優勝候補と目されていたスター美容師・モスカが変死を遂げた。担当のモデルが席を外したわずか数分のうちに、奇妙にも頭皮を切り取られた姿で発見されたのだ。会場に集まっていたのは、今年こそ優勝すると誓ってコンテストの準備を進めていたライバルの美容師3人と、それぞれが担当するモデルたち4人。さらにコンテストの主催者やモスカの恋人、警備員を巻き込みながら、彼女たちは事件や人間関係に関する噂をひそひそと囁きはじめる。「私たちの中に殺人鬼が潜んでいるのかも」「モスカは報いを受けるべきだった」「彼女はコンテストに勝つため不正を働いている」「あなたが殺したの?」――。その日、コンテストの裏側で何が起きたのか。なぜカリスマ美容師は死ななければならなかったのか。観客は事件を捜査する探偵さながら、一同の噂話に耳を傾けることになる…。ユージン・スレイマンと『女王陛下のお気に入り』撮影監督がタッグ世界で絶賛されたワンショット撮影を務めたのは、ヨルゴス・ランティモス監督『女王陛下のお気に入り』でアカデミー賞候補となった撮影監督ロビー・ライアン。錚々たる名監督の信頼を受け、ケン・ローチ監督『わたしは、ダニエル・ブレイク』『家族を想うとき』ほか、近年はノア・バームバック監督『マリッジ・ストーリー』やマイク・ミルズ監督『カモン カモン』も記憶に新しい名手が、キャリア史上最高といわれる手腕で瞬きさえ許さない美しさと緊張感を生み出した。劇中のヘアスタイルを手掛けたのは、レディー・ガガのヘアメイクなどをはじめ、“最も独創的なヘアスタイリスト”と称されるユージン・スレイマン。「シャネル(CHANEL)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」「Kenzo」などのランウェイヘアや、「エルメス(HERMES)」「カルバン・クライン(Calvin Klein)」から「ジル・サンダー(JIL SANDER)」「ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)」などまでコラボレーションを務めた重鎮だ。監督・脚本は美容院で育った新鋭監督初の長編映画で監督・脚本を務めたのは、新鋭トーマス・ハーディマン。美容師の親を持ち、美容院で育った経歴の持ち主で、これまで手掛けた2本の短編映画が、英国内の映画促進を目的として1933年に設立されたBFI(英国映画協会)に高く評価され、長編の製作を促された。BFIと数々の名作を世に送り出してきたBBC Filmsによる支援のもと、本作の製作が実現。BBC Filmsといえば、特に新たな才能の発掘と育成に力を入れており、これまでスティーブン・ダルドリー監督『リトル・ダンサー』(2000)、スティーブン・フリアーズ監督『あなたを抱きしめる日まで』(2013)、マシュー・ウォーチャス監督『パレードへようこそ』(2014)、近年ではジェーン・カンピオン監督のNetflix映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021)といった意欲的な作品を世に送り出してきた。監督が温めていたアイディアから選んだのは、自身のルーツとしても特別な想いがある“髪”をテーマにしたマーダーミステリー。そんな本作には「観客を翻弄しながら展開する、魅力的な殺人ミステリー!ユージン・スレイマンのクリエーションはまばゆく、映像美を誇る撮影と脚本を、完璧に引き立てている。」(Indie Wire)、「天才撮影監督ロビー・ライアンによる最高傑作!緊張感を高めているワンショット撮影が効果的で、素晴らしい」(Variety)と絶賛され、シッチェス・カタロニア国際映画祭やサンパウロ国際映画祭では最優秀作品賞に、またロンドン映画祭や英国インディペンデント映画賞、ファンタスティック・フェストでは新人監督賞にあたる賞にノミネートされるなど、世界の映画祭で話題をさらってきた。ロビー・ライアンによるカメラはギリシャ神話に登場するメドゥーサの蛇のごとく、コンテスト会場の廊下をうねりながら進み、部屋から部屋を渡り歩いて、関係者たちの間に広がる混乱と真相を映し出していく。その映像をエレクトロニックス音楽界の天才・Korelessによる実験的でミニマルな音楽が、効果的に盛り立てている。『メドゥーサデラックス』は10月14日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開。(シネマカフェ編集部)
2023年07月11日『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が第95回アカデミー賞で作品賞含む7部門を受賞し、話題の映画スタジオ「A24」が贈る最新作『Pearl パール』。悪魔的(デモニッシュ)な魅力で世界を虜にした、無慈悲かつ凶暴なシリアルキラー・パールの誕生を描く本作では、パールを怪演したミア・ゴスにも俄然注目が集まっている。そこで本作同様、俳優たちの演技も見逃せない、ホラーを超えてトラウマの領域にまで踏み込んでしまったA24発・“トラウマホラー映画”を紹介する。★『Pearl パール』公開中スクリーンの中で踊る華やかなスターに憧れるパール。しかし、現実は、戦争へ出征中の夫を待ちながら、敬虔で厳しい母親に従い、身体の不自由な父と農場の家畜の世話に明け暮れる繰り返しの日々だった。しかし、ある日、父親の薬を買いに町へ出かけ、母に内緒で映画を見たパールは、そこで映写技師に出会ったことから、いっそう外の世界への憧れが募っていく。そんな中、地方を巡回するショーのオーディションがあることを聞きつけたパールは、オーディションへの参加を強く望むが、母親に「お前は一生農場から出られない」と言われてしまう…。比類なき無邪気さと残酷さを併せ持つパールの人物像を描くに当たり、「一度も道を踏み外さない清廉潔白な主人公が登場するディズニーの実写映画も参考にした」と明かすタイ・ウェスト監督。「そういった物語には、清らかさと驚きがある。楽観的で不可能なんかないという要素が『メリー・ポピンズ』では魔法になった」と話す。「そういう映画ではひどいことは絶対に起こらない。だってそぐわないから」。だが、そうした典型的なキャラクターたちに、もっとリアルで、むしろ非現実的な課題を与えたかったという監督。“自分は特別ではなく、夢が叶わないと知った無垢なキャラクター・パール”の行く末は…?全米公開時に「女性版ジョーカー」と話題にもなった、ラストシーンのパールの“笑顔”は必見となっている。★『ミッドサマー』(2019年)日本では毎年夏至(ミッドサマー)に上映イベントが企画されるなど、根強い人気をもつ傑作サイコホラー。家族を不慮の事故によって失い、心に深い傷を負った大学生のダニー(フローレンス・ピュー)は、民俗学を研究する大学の仲間や恋人たちと共に5人で、スウェーデンの奥地で90年に一度開かれるという祝祭へ参加する。太陽が沈むことのない白夜の明るさと、咲き誇る美しい花々、美しい刺繍を施された衣装を纏いながら、村の人々は陽気に歌い踊る。まるで夢の中のような日々を過ごしていく中、やがて不穏な空気が漂い始める。妄想、悪夢、恐怖――全てが襲いかかる映画として“クセになる”“何度でもみたい”という熱狂的なファンも存在する。本作で、主演のフローレンス・ピューは一気にスターダムへと躍り出た。★『ライトハウス』(2019年)謎めいた孤島にやって来た“2人の灯台守”たちが、外界から遮断され、徐々に狂気と幻想に侵されていく――。1801年にイギリス・ウェールズで実際に起きた事件をベースに、人間の極限状態を恐ろしくも美しいモノクロ映像で描いた本作。4週間の予定で、孤島にある灯台と島の管理を行う仕事を任されたベテランのトーマス(ウィレム・デフォー)と、新米のウィンズロー(ロバート・パティンソン)。そりが合わずに初日から衝突を繰り返していた2人だったが、やがて嵐のせいで2人は島に閉じ込められてしまう。険悪な雰囲気の中、2人きりで孤独な世界に取り残されたとき、おぞましい狂気の扉が開いていく。劇中、ほぼウィレム・デフォーとロバート・パティンソンの2人しか登場せず、公開当時はその壮絶な演技合戦が話題ともなった。アカデミー賞撮影賞にもノミネートされた、強烈で、ときに美しい悪夢のような映像はトラウマ必至。監督は、アニャ・テイラー=ジョイ主演の『ウィッチ』で一躍注目されたロバート・エガース。★『ヘレディタリー/継承』(2018)グラハム家の祖母・エレンが亡くなった。娘のアニー(トニ・コレット)はある出来事をきっかけに、祖母に対して複雑な感情を抱いていたが、家族と共に淡々と祖母の葬儀を執り行う。その死を家族で乗り越えようとする中、奇妙な出来事がグラハム家に頻発。祖母に溺愛されていた娘チャーリーは、次第に異常な行動を取り始め、やがて最悪な出来事が起こってしまう。修復不能なまでに崩壊、想像を絶する恐怖に襲われた一家の行く末は?“受け継いだら死ぬ”、祖母が家族に遺したものは一体何なのか?長編デビュー作ながら「骨の髄まで凍りつく」(Hollywood Reporter)、「現代ホラーの頂点」(USA TODAY)などメディアも絶賛した、『ミッドサマー』アリ・アスター監督が放った21世紀最恐ホラー。主演のトニ・コレットも、アカデミー賞ノミネートが有力視されるほど注目を集めた。(シネマカフェ編集部)■関連作品:へレディタリー/継承 2018年11月30日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2018 Hereditary Film Productions, LLCミッドサマー 2020年2月21日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開© 2019 A24 FILMS LLC. All Rights Reserved.ライトハウス 2021年7月9日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開©2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.
2023年07月09日6月はプライド月間。LGBTQ+の人々の“リプレゼンテーション”が年々高まっている中、配信サービスや劇場で観ることのできる映画やシリーズの中から、いま観たい作品をピックアップ。“リプレゼンテーション”とは、映画やテレビのメディアなどにおいて、LGBTQ+(性的マイノリティ)や人種的マイノリティなども含め、社会を構成する人々の多様性が公正に描かれていること。現実には当たり前が当たり前ではなかったり、存在意義や居場所を見つけられなかったりと、まだまだアンフェアであるからこそ、リプレゼンテーションやリスペクトがうかがえる作品に注目した。アカデミー賞最多7冠『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』第95回アカデミー賞作品賞をはじめ主演女優賞(ミシェル・ヨー)、助演男優賞(キー・ホイ・クァン)、助演女優賞(ジェイミー・リー・カーティス)、監督賞、脚本賞、編集賞の最多7冠。A24作品最大のヒットとなった今作では、ミシェル・ヨー演じるコインランドリーの経営者エヴリンが無数に広がるマルチバースを行き来しながら、全宇宙を破壊しようとする“巨大な悪”と対峙する。そのエヴリンが夫ウェイモンドとともにアメリカに移住して誕生した娘が、“喜び(Joy)”と名づけられたジョイで、レズビアン。エヴリンはジョイのガールフレンド、ベッキーとの交際を認めず、中国から呼び寄せた父ゴンゴンにも紹介させない。ジョイの話にも耳をかたむけようとせず、久しぶりに娘に会っても辛辣になりがちで、「だらしがない」「食事に気をつけなさい」と小言ばかり。そんなアジア系移民の母娘の諍いが、なんとマルチバースの命運を握ることになる。また、エヴリンと天敵のはずの国税局のディアドラ(ジェイミー・リー・カーティス)は、人類の手の指がソーセージになっているバースでは同棲中の恋人同士として描かれている。そんなバースがあるのなら、わだかまりもフッと消えてしまうのだ。なお、ジェイミーは娘がトランスジェンダーであり、獲得したオスカー像をジェンダーニュートラルな代名詞「They/Them」と呼んでいることを明かしている。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』はU-NEXT(レンタル)にて配信中。9月6日(水)より4K ULTRA HD&Blu-ray&DVD発売。ロングランヒット継続中!『エゴイスト』「アジアのアカデミー賞」と呼ばれる第16回アジア・フィルム・アワードにて、主演男優賞(鈴木亮平)、助演男優賞(宮沢氷魚)、衣裳デザイン賞にノミネートされ、宮沢氷魚が最優秀助演男優賞を受賞。さらに香港国際映画祭、イタリアのウディネ・ファー・イースト映画祭などで上映され、アメリカのLGBTQ+をテーマとした最も歴史あるフレームライン映画祭、LGBTQ+映画を多数上映するプロビンスタウン映画祭での上映ほか、今秋には北米公開も決定している話題作。14歳で母を失い、故郷を飛び出して、高級ブランドを鎧のように身に纏い生きてきたファッション誌編集者・浩輔と、病気がちなシングルマザーを支えるパーソナルトレーナー・龍太の親密な恋愛と、エゴとも呼べる“愛のあり方”を描いた。ドキュメンタリーのように手持ちカメラで人物たちを傍らから追うことで、表情は見えなくても心情まで感じ取れる息づく人間たちが映し出されている。ドリアン・ロロブリジーダをはじめ、浩輔の友人たちはいずれもゲイ当事者であり、LGBTQ+の登場人物のセリフや所作などを監修するLGBTQ+インクルーシブ・ディレクターのミヤタ廉や、性的シーンでの所作や細かい部分を監修するインティマシー・コレオグラファーのSeigoを迎えている。「こういうサポートがあるというのは日本映画において大きな一歩」と宮沢さんも日本外国特派員協会記者会見で語るなど、ゲイカップルを演じた鈴木さん、宮沢さんが度々発するメッセージからもプライドがうかがえる1作。『エゴイスト』はU-NEXT(レンタル)にて配信中。8月25日(金)より4K ULTRA HD&Blu-ray&DVD発売。結婚か、破局か…Netflixリアリティ「最後通牒 ~クィア・ラブ~」『エゴイスト』には、同性婚が法的に認められていないゲイ当事者がカップルで婚姻届を取りに行って書いてみた、と会話するシーンがあった。本番組には、長く交際してきたが結婚するかしないかという最後通牒を突きつけられたアメリカのクィア女性カップル5組が登場。交際は解消され、新たな恋が始まりカップルになった相手と3週間同棲した後、元恋人と3週間同棲して、最終的に結婚か、破局かを決断することになる。男女のカップルが参加する「最後通牒~結婚、それともさようなら?~」のクィア版スピンオフで、今シーズンの最終話では、番組での試練多き体験と最終決断をした後の近況報告を語る“再会”までが描かれ、注目を集めている。ホストは「ゴシップガール」「ワンス・アポン・ア・タイム」の俳優ジョアンナ・ガルシア・スウィッシャーが担当。Netflixリアリティシリーズ「最後通牒 ~クィア・ラブ~」はNetflixにて配信中。『好きだった君へのラブレター』の妹が韓国へ「愛を込めて、キティより」ヒット映画シリーズ『好きだった君へのラブレター』のスピンオフ。これまで姉のララ・ジーンをはじめ、さまざまな迷える恋を成就させてきた末っ子のキティ・ソン・コヴィー(アナ・キャスカート)が、今度は自身が遠距離恋愛をしているデイに会うため韓国・ソウルのインターナショナルスクールに転入する。「セックス・エデュケーション」「ハートブレイク・ハイ」「ハートストッパー」など、Netflix発の世界的ヒットとなったティーンドラマではクィアのキャラクターが主体的で、流動的な性的指向・性自認もごく当たり前に描かれてきた。今作では韓国を舞台にして、キティはカムアウトしているゲイの同級生Q(キュー)の縁結びをしたり、校長の娘で人気インフルエンサーであり、レズビアンであることを公にしていないユリと恋人デイの偽装カップルに悩まされたりしながら、自分でも思いがけない“揺らぎ”に直面していく。そんなキティの学校生活を彩るのは、「BTS」「SEVENTEEN」「BLACKPINK」「TWICE」「Stray Kids」「(G)I-DLE」、チョン・ソミなどのK-POPのヒットソング。国際的に活躍する韓国俳優やカメオでK-POPアイドルも出演している。Netflixシリーズ「愛を込めて、キティより」はNetflixにて配信中。王子たちのお受験競争だけじゃないNetflix韓国ドラマ「シュルプ」世界を席巻するKコンテンツでは、キム・ヘスが架空の朝鮮王朝時代の王妃を熱演した韓国時代劇「シュルプ」にも着目。キム・ヘス演じる王妃イム・ファリョンは王座を巡ってライバルがひしめく宮廷で、王の母である大妃の策略や側室たちの牽制にも屈することなく、子どもたちの内の1人を次の王にするために奮闘する。実はその1人、ケソン大君は性別違和を抱えていた。ときどき姿を消しては自分に正直になる時間を持つケソン大君だが、その秘密を利用して母子の失脚を目論む者が現れる。タイトルの「シュルプ」とは朝鮮古語で「傘」のこと。子どもたちを貶め尊厳を傷つけようとする者を、王妃ファリョンの「傘」は絶対に寄せつけない。悲劇の主人公にもさせない。現代社会を揶揄するような宮廷での受験競争や権力闘争、そして社会的弱者差別に、ファリョンは着物をたくし上げて全力疾走で立ち向かう。Netflixシリーズ「シュルプ」はNetflixにて配信中。フィンランドから届いた新時代の青春映画『ガール・ピクチャー』韓国映画『はちどり』でも描写された、思春期の主人公の性的指向の揺らぎ。一方、フィンランドのZ世代を描いた『ガール・ピクチャー』には、“普通”に恋愛してみたいのに「男の人と一緒にいても何も感じない。私はみんなと違う」と悩み、男子といい雰囲気になる度にドン引かれて落ち込むロンコが登場する。また、再婚した母親への複雑な感情を抱え、怒りを抑えることができない自分自身にもイラつくミンミは、大好きだったはずのスケートから離れたくなったエマと運命的な恋に落ちる。だが、ふとしたきっかけから破壊衝動が現れてしまい…。監督のアッリ・ハーパサロが、「今の時代を生きる女の子たちへのリスペクトであり、応援歌」と表現している本作。お互いを称え合い、鼓舞し合う“女の子”たちの痛みと輝きを感じてみてほしい。『ガール・ピクチャー』は全国にて順次公開中。このほかにも、前作『モロッコ、彼女たちの朝』で2人の女性の連帯と希望を描いたマリヤム・トゥザニ監督の最新作『青いカフタンの仕立て屋』(6月16日公開)は、伝統衣装を手縫いで績ぐ仕事と本来の自分の狭間で苦悩する夫とその妻、若い職人の姿を描いている。第75回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞した。『青いカフタンの仕立て屋』さらに、少年2人の繊細な親密さに無自覚な悪意ともいえるレッテルが貼られることで、2人が運命を違えることになるフランス映画『CLOSE/クロース』が7月14日(金)より公開される。『CLOSE/クロース』同作と是枝裕和監督の『怪物』(公開中)には、揺らぐ少年たちの葛藤や周囲の視線などクィア映画として驚くほどの相似点がある。『怪物』昨年、カンヌ国際映画祭グランプリを獲得したルーカス・ドン監督による今作があったからこそ、『怪物』が今年の第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞とクィア・パルム賞に選ばれたのかもしれない。『CLOSE/クロース』この『CLOSE/クロース』や『ガール・ピクチャー』『青いカフタンの仕立て屋』が、いずれもアカデミー賞国際長編映画賞の各国の代表作品となっているのは偶然ではないはずだ。そして、『CLOSE/クロース』の全米配給や『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『ムーンライト』などで知られる気鋭の映画会社A24が手がけた『インスペクション ここで生きる』(8月4日公開)も控えている。親に捨てられ社会からも除外され、“透明だと思っていた”自分を癒すために映画を撮ろうとした新鋭監督エレガンス・ブラットンが自身の半生を映画化、新たな傑作となりそうだ。『インスペクション ここで生きる』(上原礼子)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-エゴイスト(2023) 2023年2月10日より全国にて公開© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.怪物 2023年6月2日より全国にて公開©2023「怪物」製作委員会ガール・ピクチャー 2023年4月7日より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開© 2022 Citizen Jane Productions, all rights reservedCLOSE/クロース 7月14日(金)より全国公開© Menuet / Diaphana Films / Topkapi Films / Versus Production 2022
2023年06月13日ミシェル・ヨーが、カンヌ国際映画祭にて著名人が各分野の女性の立場について意見を述べる場「ウーマン・イン・モーション・トーク」に出演した。今年、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアジア人俳優として史上初のアカデミー主演女優賞を獲得したミシェル。カンヌ国際映画祭を初めて訪れたのは『グリーン・デスティニー』に出演した20年以上も前だといい、当時のハリウッドはアジア人俳優を認める準備が「できていなかったのが明白」と語る。転機は2018年の『クレイジー・リッチ!』だったと分析。ミシェルは同作の世界的な成功により、ようやくハリウッドの重鎮たちがアジア系に注目し始めたと言う。「(あの作品の成功がなければ)私は今日ここに座っていないでしょうね」。そして『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の大ヒットで、アジア系にさらなる注目が集まった。60歳のミシェルは、その長いキャリアの中で最も進歩したことについて「最高だと思うのは、中国人だとかアジア系の見た目の人物として描かれていないキャラクターの脚本が届くようになったことです。私たちは俳優で、演じるのが仕事。与えられた役に入り込み、ベストを尽くす。だからそれが私には最大の前進なんです」と語った。ミシェルはカンヌ国際映画祭で、「Variety」との対談において『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の続編は「ない」と発言している。(賀来比呂美)■関連作品:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年05月22日米アカデミー賞作品賞含む7冠を獲得した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が5月3日(水・祝)よりU-NEXTにて独占配信されることが決定した。映画ファンから絶大な支持を集めるA24が贈る本作は、家族の問題に悩み赤字コインランドリーの経営に頭を抱える主婦が、マルチバースと繋がりカンフーを駆使して巨悪と戦うことになるアクションコメディ。全世界興行収入は1億ドルを突破し、インディペンデントスタジオとしては、異例中の異例のメジャースタジオ級大ヒットを記録。542ノミネート、308受賞と賞レースをばく進し、本年度アカデミー賞では、作品賞ほか、監督賞(ダニエルズ)、脚本賞(ダニエルズ)、主演女優賞(ミシェル・ヨー)、助演男優賞(キー・ホイ・クァン)、助演女優賞(ジェイミー・リー・カーティス)、編集賞の計7部門の最多受賞を果たす偉業を達成。3月3日に封切られた日本でも、公開初週の洋画興行収入ランキング第1位を獲得した。「マルチバース」と「カンフー」が融合した、かつてないほどカオスな世界観で繰り広げられる壮大な物語。異色作でありながら、まさかの超感動作として映画界に“カオス旋風”を巻き起こした本作が早くも配信にて楽しめる。またU-NEXTでは、第46回日本アカデミー賞最優秀作品賞『ある男』、サバイバルスリラー『FALL/フォール』、青春恋愛映画『少女は卒業しない』ほかGW中に楽しめる新作映画を続々配信中だ。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は5月3日(水・祝)12時~(予定)U-NEXTにて配信開始。(text:cinemacafe.net)■関連作品:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年05月01日『アベンジャーズ/エンドゲーム』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟が製作、主演に『エターナルズ』のリチャード・マッデンと『マトリックス レザレクションズ』のプリヤンカー・チョープラー・ジョナスを迎えた「シタデル」の本予告編が解禁となった。8年前、シタデルは崩壊した。全人類の安全と安心を守ることを使命とする独立したグローバルスパイ機関だったが、世界を陰から操る強大なシンジケート、マンティコアの工作員によって破壊されたのだ。この戦いでシタデルのエリート捜査官メイソン・ケイン(リチャード・マッデン)とナディア・シン(プリヤンカー・チョープラー・ジョナス)は辛くも命は取り留めたが記憶をなくしてしまう。それ以来、彼らは自分の過去を知らずに新しい人生を歩んでいた。しかしある夜、メイソンはシタデルの元同僚バーナード・オリック(スタンリー・トゥッチ)に追われる。バーナードはマンティコアが新たな世界秩序を築くのを阻止するためにメイソンの力を借りようとした。やがてメイソンはかつてのパートナー、ナディアを探し出し、彼らはマンティコアの陰謀を阻止するために世界中を駆け巡る。秘密と嘘、そして危険な愛に悩まされながら――。解禁された本予告編では、マッデン演じるメイソンとチョープラー・ジョナス演じるナディアが、次々と戦いに身を投じていく姿が映し出されていく。爆破、銃撃、肉弾アクションシーン満載で、戦闘用コスチュームからスーツ、ドレス姿まで着こなす主演2人も注目だ。キャストは『ファントム・スレッド』のレスリー・マンヴィル、『キル・チーム』のオシ・イカイル、『アニマルズ 愛のケダモノ』のアシュリー・カミングス、『パピヨン』のローランド・ムーラー、『ミッドナイト・スカイ』のカオイリン・スプリンガルと国際性豊かな演技派たちが集結。ショーランナーのデヴィッド・ウェイルは製作総指揮も兼務する。さらに本作は画期的なグローバル・フランチャイズとなり、ルッソ兄弟の製作会社AGBOが製作総指揮を務める本作とシリーズは相互にリンクしながら世界を舞台に製作。各国版のシリーズは各地のトップスターが起用され、すでにマチルダ・デ・アンジェリス主演のイタリア版や、ヴァルン・ダワン&サマンサ・ルス・プラブ主演のインド版の製作が進行中となっている。「シタデル」は4月28日(金)よりPrime Videoにて独占配信開始(初回2話一挙配信開始、その後に新エピソード配信開始。全6話)。(text:cinemacafe.net)
2023年03月31日先日開催された米アカデミー賞にて『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアジア人として初めて主演女優賞に輝いたミシェル・ヨー、同助演男優賞を初受賞して見事俳優として復活したキー・ホイ・クァンが出演する新作アクションコメディシリーズ「アメリカン・ボーン・チャイニーズ 僕らの西遊記」が、5月24日(水)よりディズニープラスにて配信決定。予告編が解禁となった。漫画家ジーン・ルエン・ヤンによる同名のコミックに基づいた本作は、ごく平凡な高校生活と家庭生活を送る若者ジン・ワンの物語。新しいクラスメイトの留学生と顔を合わせた新学期初日、複数の世界がクラッシュ、ジンはいつのまにか中国神話の神々の戦いに巻き込まれていく、という破天荒なストーリー。この青春アドベンチャーには、ミシェル・ヨーにキー・ホイ・クァン、さらに同助演女優賞ノミネートのステファニー・スーもゲスト出演、ベン・ワンを含む国際的なオールスターキャストが出演。さらに、国際エミー賞に2度ノミネートされたヤオ・ヤン・ヤンのほか、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のチン・ハン、「バッドランド最強の戦士」の中国系アメリカ人俳優ダニエル・ウー、元テコンドーチャンピオンのジミー・リューとシドニー・テイラーら、アジア出身のトップ俳優たちが集結する。そして製作総指揮・ショーランナーにはエミー賞受賞プロデューサーで脚本家のケルヴィン・ユー、監督・製作総指揮には『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のデスティン・ダニエル・クレットンほか、原作者のジーン・ルエン・ヤンも名を連ねる。今回、ミシェル・ヨーが空から舞い降りるシーンから始まり、千手観音のような技を披露したり、孫悟空が如意棒を操るシーンも収録された興奮の予告編も公開。本年度アカデミー賞を席巻した国際俳優たちと、マーベル『シャン・チー/テン・リングスの伝説』の監督がタッグを組んだアクションコメディに期待が高まる。「アメリカン・ボーン・チャイニーズ 僕らの西遊記」は5月24日(水)よりディズニープラスにて一挙配信(全8話)。(text:cinemacafe.net)
2023年03月22日本年度第95回アカデミー賞、作品賞を含む“最多”7部門受賞の偉業を達成した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』から、抱腹絶倒のNGシーン集が到着した。公開初週の洋画興収第1位を獲得、「マルチバース」と「カンフー」が融合した、かつてない異色SFアクション大作であり、まさかの超感動作として先日のアカデミー賞授賞式でもその圧倒的な無双ぶりを見せつけた本作。SNSでも「年間ベストどころか映画史に残る超絶ミラクル面白大傑作」「最高の最高の最高の最高の最高でした」という絶賛評から「開始5分からエンドロールまで涙」「奇天烈な映画なのにびっくりするくらい涙出てた」など、笑いと涙に溢れたカオスな感想が溢れかえり、空前の“エブエブ旋風”を巻き起こしている。コインランドリー店を営むフツーの主婦ながら、突如全宇宙を救う宿命を背負った主人公・エヴリンを演じ、約40年のキャリア史上初となるアカデミー賞主演女優賞に輝いたミシェル・ヨー。解禁された映像では、謎のダンスを踊り狂ったり、真面目なシーンで大ゲップをかます往年の名優ジェームズ・ホンに「最悪!笑」と叫んだかと思えば、自身も衝撃の変顔を披露するなど、最高にカオスなキャラを楽しむ彼女の様子が映し出されている。実は撮影当初、そんなミシェルの姿を見たアシスタントから、こっぴどく叱られていたというダニエルズ監督。「撮影が始まってからの数日間、アシスタントはすごく怒っていたんだ。“ミシェルをそんな風に見せたらダメ。そんなことしないで!あのカツラはやめて!ミシェルには白髪なんてない!”なんてまくし立てていたよ…(笑)」と裏話を告白しつつ、誰よりも撮影を楽しむ彼らの情熱に、ミシェルはもちろん全てのキャスト・スタッフが引き込まれていたことが伺える。また、エヴリンを支える夫・ウェイモンドを演じて助演男優賞を受賞したキー・ホイ・クァンが、うっかり役名を忘れ、撮影中に「ミシェル!」と本名を呼んでしまうお茶目なNGシーンも。脚本段階ではミシェルの役名はエヴリンではなく、本名のミシェルが使われていたそうで、脚本を読み込んでいた真面目なキーは撮影中に何度もNGを出してしまったようだ。そのほか、助演女優賞を獲得したジェイミー・リー・カーティスらとの注目のアクションシーンの舞台裏や、ファンの間で話題となっている“ソーセージの世界”や“石の世界”、そして日本でも「glee/グリー」で人気のラカクーニ(アライグマ)を頭に乗せたハリー・シャム・Jr.のシュールすぎる撮影シーンまで見どころ盛りだくさん。カオス極まりない現場の中で、まるで家族のように本作を創り上げたスタッフ&キャストの絆が感じられる映像となっている。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年03月17日12日(現地時間)にアカデミー賞で助演女優賞(『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』)を受賞したジェイミー・リー・カーティスが、朝の情報番組「Today」に出演。司会者のサヴァンナ・ガスリーに「彼女(オスカー像)に名前は付けましたか?」と聞かれ、「娘の応援をするという意味で、(オスカー像の代名詞は)They/Themにしようと思って。ただThemって呼ぶようにします」と話した。ジェイミーは夫で俳優・監督のクリストファー・ゲストと1984年に結婚し、養子2人を迎えた。2021年、そのうちの1人がトランスジェンダーであることをジェイミーが公表。「AARP」誌に「息子が娘ルビーになるのを、夫と共に驚きと誇りを持って見守ってきました」と語った。こういった経緯があり、ジェイミーはオスカー像をジェンダーニュートラルな代名詞「They/Them」で呼ぶというのだ。「They(オスカー像)は元気にしていますよ。うちで落ち着くことでしょう」とオスカー像にペタッと寄り添うジェイミー。「ここ数日間に起きたことは、私の人生で全く思いもしなかったことです。すべてのことに、本当に本当に感動しています」と感極まって涙声になってしまった。(賀来比呂美)
2023年03月15日12日(現地時間)、アカデミー賞授賞式において『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で助演男優賞を獲得したキー・ホイ・クァン。受賞そのものに喜びを噛みしめているのはもちろんだが、彼にとって「本当に特別な瞬間」だったのは「名前」を読み上げられたときだったという。「俳優業を始めた子どもの頃、本名のキー・ホイ・クァンを使っていました。(キャリアの)状況が厳しくなってきたとき、マネージャーから『アメリカ風の名前を付ければよくなるかもしれないよ』と言われたのを覚えています。どうしても仕事がほしかったので、なんだってしようと思いました」と受賞後、プレスルームにてふり返った。改名については葛藤があったようだ。「生まれたときに与えられた名前を変えるなんて、愚かだとは思いますが、どれだけ追い詰められていたかということでしょう。とにかくやってみて、状況を変えたかったのです」。こういった経緯があり、キャリア初期の作品には「ジョナサン・クァン」や「ジョナサン・キー・クァン」としてクレジットされているものがいくつかある。その後、俳優としてはしばらく低迷期間が続いた。そして再び俳優業にカムバックするにあたり、「最初にしたかったこと」というのが出生名に戻すことだったのだという。「今夜、(プレゼンターの)アリアナ(・デボース)が封筒を開けて『キー・ホイ・クァン』と読み上げるのを見たとき、とても感動しました。真っ先に心に浮かんだのは母の姿です。私がアメリカにいて、よりよい人生を送っているのは母のおかげです。このようなチャンスすべてを手に入れられた。母は多くの犠牲を払ったのです」と語った。そんな胸の内を明かしたキーだったが、彼を一躍有名にした『グーニーズ』時代のこともふり返っており、「セットで子どもらしく人生を楽しんでいた」とも。『グーニーズ』共演者らの名前を挙げ、「大好き」「常につながっています。ファミリーは永遠。『グーニーズ』も永遠のものです」といまだカルト的人気を誇る『グーニーズ』ファンを喜ばせた。(賀来比呂美)■関連作品:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年03月14日第95回アカデミー賞授賞式が3月13日(日本時間)、アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞をはじめ、監督賞と脚本賞(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)など7部門に輝く圧勝で幕を閉じた。誰も止められない!大旋風を巻き起こした『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』カンフーとマルチバース(並行宇宙)の要素を融合させた異色のアクションエンターテインメント。困窮した生活に息詰まる中年女性が、突然「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒す」という驚きの使命を背負わされ、無数に広がるマルチバースを行き来しながら、カンフーをはじめ、さまざまなスキルを手に入れ、全人類の命運をかけた戦いに身を投じる。作品賞受賞した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は前哨戦で圧倒的な強さを見せていたミシェル・ヨー(主演女優賞)、キー・ホイ・クァン(助演男優賞)に加えて、劇中の“ヴィラン”を演じたジェイミー・リー・カーティスが、大本命だった『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のアンジェラ・バセットを猛追し、見事に助演女優賞を獲得する逆転劇も。これで『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は候補となった演技部門をすべて受賞するという快挙も成し遂げた。「夢は実現する」を証明した元人気スターの復活劇そんな今年の受賞式は、元人気スターの復活劇が大きな注目を浴びることになった。まずは、前述のキー・ホイ・クァンだ。子役として出演した『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』や『グーニーズ』などで人気を博すも、ルーツや年齢的な壁により、キャリアの低迷を余儀なくされた彼が、スクリーンに復帰し、オスカー像を手にするなど、半年前まで誰が想像できただろうか。助演男優賞を受賞したキー・ホイ・クァン受賞スピーチでは、涙ながらに「まるで映画みたいと思うかもしれませんが、実は僕の人生なんです。これこそがアメリカン・ドリームだと思います。諦めかけたこともありました。でも、夢というのは、信じなければ実現しません。皆さんも、夢を諦めないでください!」と力強く訴えかける姿が、印象的だった。会場には、『フェイブルマンズ』で監督賞候補になったスティーブン・スピルバーグがおり、作品賞発表の際には、ハリソン・フォードがプレゼンターとして登場。一瞬ではあるが、同じ空間に『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の関係者が顔を揃える、感動的な展開が待っていた。壇上でハグをするハリソン・フォード&キー・ホイ・クァン復活劇といえば、もうひとり忘れてはいけないのが『ザ・ホエール』のブレンダン・フレイザー。ダーレン・アロノフスキー監督(『レスラー』『ブラック・スワン』)の最新作で、フレイザーは恋人を亡くしたショックから逃れるため、過食を繰り返してきた結果、体重が272キロになってしまった主人公のチャーリーを演じた。巨体を演じるにあたり、自身の体重増量に加え、特殊メイクとファットスーツを着用する全身全霊の役作りが高く評価された結果だ。主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザーフレイザーといえば、『ハムナプトラ』シリーズで一世を風びしたスター俳優だが、その後は、プライベートでの不幸が重なり、ハリウッドの表舞台から長らく遠ざかっていた。それだけに、この夜の受賞スピーチでは「当時は自分の恵まれた状況に、感謝することはあまりありませんでした。今夜、評価していただき、本当にありがたいです」と感無量の面持ちだった。そんな復活劇を体現した2人は、1992年に製作された『原始のマン』で共演していたという不思議な縁も。ともに、ハリウッドの悪しき慣習によって、キャリアの機会を奪われた側面が強いため、キー・ホイ・クァンの「皆さんも、夢を諦めないでください!」という言葉にはより一層の重みと説得力が感じられた。映画が結び付けた、時空と国境を超えた“マルチバース”昨年起こったビンタ事件の影響なのか、授賞式はよくも悪くも“滞りなく”幕を閉じた印象が強いが、受賞者の感動的なスピーチや、歌曲賞候補アーティストたちのパフォーマンスは感動的で見応えがあった。MVPは間違いなくインド映画『RRR』の劇中歌「Naatu Naatu」だ。この夜、一番の盛り上がりで会場を熱くさせただけでなく、レディー・ガガやリアーナといった大物シンガーを抑えて、見事に歌曲賞を受賞してしまった展開は、痛快の一言だった。歌曲賞受賞『RRR』の劇中歌「Naatu Naatu」パフォーマンスそんな熱気が象徴するように、アジア圏から世界に発信された作品が、第95回アカデミー賞を席巻した。ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァンの快挙については、もはや説明不要だが、例えば短編ドキュメンタリー映画賞では、インドで製作された『エレファント・ウィスパラー:聖なる象との絆』が受賞を果たしている。短編ドキュメンタリー映画賞受賞『エレファント・ウィスパラー:聖なる象との絆』『RRR』に話題を戻すと、オスカーに輝いた「Naatu Naatu」のダンスシーンは、ロシア侵攻のわずか数か月前、ウクライナの首都キーウで撮影された。一方、ロシアの弁護士で政治活動家のアレクセイ・ナワリヌイが、自分を毒殺しようとした犯人を自ら追い詰め、政府の暗部に切り込む姿を捉えた『ナワリヌイ』が、長編ドキュメンタリー賞を受賞。また、圧倒的なスケールで、戦争の不条理と非情を現代社会に突き付けた『西部戦線異状なし』(ドイツ)が、撮影賞、美術賞、作曲賞、国際長編映画賞の4部門を獲得し、存在感を発揮した。国際長編映画賞を受賞した『西部戦線異状なし』こうした受賞作から見いだされる“結びつき”は単なる偶然ではなく、映画というメディアが過去と現在、そして国境を超えたマルチバースを見事に捉え、描いている証ではないだろうか。その頂点として、マルチバースが舞台になった意欲作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が第95回アカデミー賞を制した結果に異論はない。世界は確かに、つながっているのだ。(text : Ryo Uchida)■関連作品:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年03月13日第95回アカデミー賞授賞式が3月13日(日本時間)、アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞に輝いた。『ミッドサマー』で知られる新進気鋭の製作・配給スタジオ「A24」史上No.1ヒットを記録している本作。作品賞、監督賞(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)、主演女優賞(ミシェル・ヨー)、助演男優賞(キー・ホイ・クァン)など10部門11ノミネートを果たし、本年度の台風の“目”として注目された『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が、下馬評通りの大暴れ。最多7部門を受賞し、オスカーを制圧した。カンフーとマルチバース(並行宇宙)の要素を融合させた異色のアクションエンターテインメント。困窮した生活に息詰まる中年女性が、突然「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒す」という驚きの使命を背負わされ、無数に広がるマルチバースを行き来しながら、カンフーをはじめ、さまざまスキルを手に入れ、全人類の命運をかけた戦いに身を投じることになる。オスカー前哨戦を振り返ると、第80回ゴールデングローブ賞の最優秀作品賞(ミュージカル/コメディ)こそ逃したが、以降は、第28回クリティクス・チョイス・アワード(放送映画批評家協会賞)で作品賞を含む4冠、第75回米監督組合賞(DGA)の長編映画部門、第34回アメリカ製作者組合(PGA)賞の映画部門で最高賞にあたる作品賞、第29回全米俳優組合(SAG)賞で4冠、第38回インディペンデント・スピリット賞で作品賞など最多7冠と、主要な映画賞を総なめにしていた。受賞コメントキャストとクルーのおかげでこの映画ができました。みなさまを代表し、アカデミーに感謝したいと思います。私たちの奇妙なものをずっとサポートしてくれました。私たちが映画をともにつくりました、父の教えに従いました。決して忘れることはできません、ダニエルズありがとうございます。<ダニエル・クワン>私たちは互いに混乱から自分たちを守るということが大切でした。私たちの物語が十分に追いついていないと感じることがあります。このような物語によって私たちの人生が変わりました。何世代にもわたって続いています、ありがとうございました。(text:cinemacafe.net)■関連作品:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年03月13日第95回アカデミー賞授賞式が3月13日(日本時間)、アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のミシェル・ヨーが主演女優賞を獲得。アジア人俳優初の快挙を達成した。カンフーとマルチバース(並行宇宙)の要素を融合させた異色のアクションエンターテインメントで、ミシェル・ヨーが演じたのは、経営困難なコインランドリーを抱え、日々の困窮に追い詰められる主婦エヴリン・ワン。要介護の父親、優しいだけで頼りない夫、大学を中退し、恋人と家を出ようとする娘、そして確定申告とやること・考えることが山積みの彼女が、突然、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒す」という驚きの使命を背負わされ、無数に広がるマルチバースを行き来しながら、カンフーをはじめ、さまざまスキルを手に入れ、全人類の命運をかけた戦いに身を投じることに。そんな、文字通り“マルチ”なヒロインを、ハリウッドに進出したアジア人俳優の先駆者として、『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』『クレイジー・リッチ!』、そして『シャン・チー/テン・リングスの伝説』など多種多彩な映画で活躍したミシェル・ヨーが心身ともに体現。国籍、年齢、性別といった、いわゆるガラスの天井を突き破り、アジア人俳優にとって、初めてとなる快挙を成し遂げた。オスカー前哨戦を振り返ると、第80回ゴールデングローブ賞の最優秀主演女優賞(ミュージカル/コメディ)、第29回全米俳優組合(SAG)賞の主演女優賞、第38回インディペンデント・スピリット賞の主演俳優賞(今回から演技賞の性別区分を廃止)など、圧倒的な強さを見せていた。受賞コメントありがとうございます。今夜、この様子を見ている私のような小さな子どもたちにとって、(オスカー像を掲げながら)これは希望と可能性、「夢は実現する」という証なのです。女性の皆さん、もう誰にも『あなたはもう旬を過ぎている』なんて言わせてはダメ。決して諦めないでください。(監督コンビの)ダニエルズ、A24、素晴らしいキャストとクルーがいなければ、私はここに立ってはいません。同時に私の84歳になる母親、世界中のお母さんたちに、この賞を捧げたいです。彼女たちは皆、スーパーヒーローなのです。彼女たちがいるから、私たちがいる。お母さん、これ持ち帰ります。そして、キャリアの始まりだった香港の家族、皆さんの助けがあったおかげで、今ここにいます。本当にありがとうございます。アカデミー賞、ありがとう!これは歴史的な出来事です。(text:cinemacafe.net)■関連作品:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年03月13日第95回アカデミー賞授賞式が3月13日(日本時間)、アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、監督賞に『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート(ダニエルズ)が輝いた。エキセントリックな設定で話題を集めた『スイス・アーミー・マン』の監督コンビが、監督賞を過去2度受賞のスティーヴン・スピルバーグ(『フェイブルマンズ』)、昨年のカンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いた『逆転のトライアングル』のリューベン・オストルンド、2度目の監督賞ノミネートとなったマーティン・マクドナー(『イニシェリン島の精霊』)、16年ぶりの新作を発表したトッド・フィールド(『TAR/ター』)といった巨匠、著名監督に勝利を収めた。カンフーとマルチバース(並行宇宙)の要素を融合させた異色のアクションエンターテインメント。困窮した生活に息詰まる中年女性が、突然「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒す」という驚きの使命を背負わされ、無数に広がるマルチバースを行き来しながら、カンフーをはじめ、さまざまスキルを手に入れ、全人類の命運をかけた戦いに身を投じることになる。受賞コメント▼ダニエル・クワン天才とは、こうしてステージにあがる私たちだけではなく、集団の中にあってその才能を発揮するものです。移民の親にも感謝します。映画が好きな父が、その愛情を私に伝えてくれました。役者にはなれませんでしたが、兄弟や高校時代の友人が手助けしれくれました。クリエイティビティの自由というものを教えてくれた人たちにも感謝しています。この状況は、信じがたい驚異です。とてつもないことです。一人一人の人間が、偉大な存在になりえるのです。そして才能を発揮できるのです。▼ダニエル・シャイナート世界中の母親、私の母親、そして両親に捧げたいです。これまで、ホラーやコメディなどいろいろ作ってきましたが、今回、誰にも脅威を及ぼさない作品を生み出すことができました。素晴らしい天才たちが集まり、魂を込めて、僕らために尽力してくれました。(text:cinemacafe.net)■関連作品:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年03月13日第95回アカデミー賞授賞式が3月13日(日本時間)、アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のジェイミー・リー・カーティスが助演女優賞を初受賞した。『スイス・アーミー・マン』の監督ダニエル・シャイナート&ダニエル・クワン(通称:ダニエルズ)がミシェル・ヨー主演で描く、「マルチバース」と「カンフー」が融合した、かつてないカオスな世界観で繰り広げられる壮大な異色作。本年度ゴールデン・グローブ賞では2部門受賞4部門ノミネート、第95回アカデミー賞では作品賞、監督賞(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)、主演女優賞(ミシェル・ヨー)、助演男優賞(キー・ホイ・クァン)など10部門11ノミネートを果たし、公開前から大きな注目を集めていた。ジェイミーは、主人公・エヴリン(ミシェル・ヨー)に立ちはだかる“ヴィラン”の中の一人、ディアドラを好演。第80回ゴールデン・グローブ賞では、主演賞発表時にミシェルの名前が読み上げられ、感動のあまり両手で顔を覆ったミシェルと両手を上げて大喜びするジェイミーの姿が話題になっていた。大ヒットシリーズ『ハロウィン』のローリー・ストロード役でおなじみのジェイミー。これまで『大逆転』(83)で英国アカデミー賞受賞、『ワンダとダイヤと優しい奴ら』(88)でゴールデン・グローブ賞と英国アカデミー賞、『トゥルーライズ』(94)でゴールデン・グローブ賞、『フォーチュン・クッキー』(03)でゴールデン・グローブ賞にノミネートされるなど数々の作品にて受賞・ノミネートを果たしてきたが、アカデミー賞のノミネートは今回が初めてとなる。受賞コメント私はここに一人で立っているように見えると思いますが、もちろん、そんなことはなくて、多くの方々と一緒なのです。すばらしいアーティストたちのおかげで、オスカーに輝く作品となったのです。私の両親(俳優のトニー・カーティスと女優のジャネット・リー)は異なった部門でノミネートされてきました。そして、私はオスカーを獲得することができました!(text:cinemacafe.net)■関連作品:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年03月13日第95回アカデミー賞授賞式が3月13日(日本時間)、アメリカ・ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のキー・ホイ・クァンが助演男優賞に輝いた。『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』や『グーニーズ』といった80年代を代表するヒット映画に出演し、映画ファンに愛された元人気子役のキー・ホイ・クァン。キャリアの低迷を経験した後、南カリフォルニア大学で映画を学び、スタント・コーディネーターやアシスタント・ディレクターとして裏方の活動をしていた。Netflix配信映画『オハナ』で久しぶりに俳優活動を再開させ、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で華麗なるスクリーン復活を果たした。助演女優賞と助演男優賞に輝いたジェイミー・リー・カーティス&キー・ホイ・クァンカンフーとマルチバース(並行宇宙)の要素を融合させた異色のアクションエンターテインメント。困窮した生活に息詰まる中年女性が、突然「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒す」という驚きの使命を背負わされ、無数に広がるマルチバースを行き来しながら、カンフーをはじめ、さまざまスキルを手に入れ、全人類の命運をかけた戦いに身を投じることになる。キー・ホイ・クァンが演じるのは、主人公エヴリン(ミシェル・ヨー)の夫で、優しいだけで頼りないウェイモンド。ある日、“別の宇宙のウェイモンド”と名乗り、エヴリンを未知なる世界に誘うというキーパーソンだ。ユーモアとシリアスの両面を演じ分けるだけでなく、広東語、北京語、英語を“マルチ”に使いこなし、作品のもつカオスを体現した。オスカー前哨戦を振り返ると、第80回ゴールデングローブ賞の最優秀助演男優賞、第29回全米俳優組合(SAG)賞の助演男優賞、第38回インディペンデント・スピリット賞の助演俳優賞(今回から演技賞の性別区分を廃止)など、圧倒的な強さを見せていた。受賞コメントありがとうございます。私の84歳にある母が、見てくれていると思います。お母さん、オスカーを受賞したよ。私の旅路は、ボートに乗ってたどり着いた難民キャンプで始まりました。今はこうして、ハリウッド最高の舞台に立っています。まるで映画みたいと思うかもしれませんが、実は僕の人生なんです。これこそがアメリカン・ドリームだと思います。(スタッフや親族への感謝に続き)、妻・エコに感謝します。何か月も、何年も、そして20年間「いつか、あなたの時が来るわよ」と言い続けてくれたんです。諦めかけたこともありました。でも、夢というのは、信じなければ実現しません。皆さんも、夢を諦めないでください。本当にありがとうございました。ありがとう、ありがとう、ありがとう!(text:cinemacafe.net)■関連作品:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年03月13日現在公開中の映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(略称:『エブエブ』)で約30年ぶりにスクリーン復帰を果たし、名だたる賞レースを総なめにしているキー・ホイ・クァンを応援するイベントが、3月8日(水) に東京・神楽座で開催された。本作は、ある日突然、宇宙一の悪党と闘うためにマルチバースに放り出されたおばさんの活躍を描いたSFアクション。第95回アカデミー賞では10部門11ノミネートで最多候補となっている。主演に『シャン・チー/テン・リングスの伝説』で華麗なアクションを見せたミシェル・ヨーを迎え、キー・ホイ・クァンのほかに『トゥルーライズ』のジェイミー・リー・カーティスも出演する。イベントでは彼の代表作でもある『グーニーズ』の上映会をはじめ、『グーニーズ』が好きだと公言しているエレキコミックのやついいちろうによるトーク、さらにイベント終盤にはサプライズとしてキー・ホイ・クァン本人からのコメント動画が到着。会場は大盛り上がりとなり、まさにキー・ホイ・クァン一色のプレミアムな内容となった。『グーニーズ』の上映後、興奮と懐かしさが冷めやらぬまま、キー・ホイ・クァンが『グーニーズ』で演じたデータの衣装(アパレルブランド「HEADGOONIE」提供)を身にまとい、黄色いリュックサックを背負ってやついが登場。久々に観たという『グーニーズ』について「やっぱり面白いですよねぇ……。忘れてるところもあって、初めて観るような感じで楽しめました」としみじみ。やついいちろう(エレキコミック)イベントはあくまでも“キー・ホイ・クァン祭り”だが、やついの推しは、ピザとお菓子の大好きな太っちょのチャンク(ジェフ・コーエン)とのこと。「チャンクの表情が抜群じゃないですか! 触ったもの全て落とすし、近くにいたらマジで腹立つでしょうけど、良い表情してますねぇ」と称賛した。やついは小学生の頃『グーニーズ』が好き過ぎて、本作を題材に国語の授業の課題で小説を書いたという。「架空の大陸の絵から想像して話を書くということで、『グーニーズ』っぽい宝探しの物語で、『ズッコケ三人組』を混ぜて、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も入っていて、空中を飛ぶローラースケートが出てきたり、絵は『ドラゴンボール』の悟空も入っていたり(笑)。学級文庫に置いてありました」と懐かしそうに振り返る。公開当時、やついは小学5年生で「ラジオも聴き出した頃で、サントラが流行ってて、映画音楽を流す番組があって、シンディ・ローパー(本作の主題歌「The Goonies ’R’ Good Enough」)もそこで聴いてました」と明かした。ちなみに、公開当時はアンディ(ケリー・グリーン)に心惹かれていたそうで「スカートがめくれてドキドキしちゃいました」と明かすが「いまになって観るとステフ(マーサ・プリンプトン)のほうがタイプですね。(当時はアンディの)パンチラに心がときめいてただけだったんですね。キスシーンとか、いま見ると『なんでいま!?』って笑っちゃいますね」とバッサリ。そしてこの日のイベントのために、キー・ホイ・クァン本人が『グーニーズ』や『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』に出演した際のエピソードや、アカデミー賞ノミネートへの思いを語ったスペシャル動画を上映。キー・ホイ・クァンは集まったファンに向けて「みんな、元気? キー・ホイ・クァンです。キー・ホイ・クァン・マツリ(祭)に来てくれてありがとう!」と笑顔で呼びかける。そして『グーニーズ』について「何世代にもわたって感動させる映画に関われたのはとても嬉しいよ。信じられないかもしれないけど、38年経った今でも僕を見つけては『グーニーズ』がどれほど好きか話してくれる人たちがいるんだ。『グーニーズ』は生き続けているんだね。この映画を見て育った人が親になって子供ができて、その子どもたちにこの映画を見せ、次の世代もこの映画を愛してくれる。素晴らしい旅をしている映画だよね」と特別な思いを口にした。ちなみに当時の共演陣とは今でも仲が良いとのこと。特にチャンクを演じたジェフ・コーエンとは大の仲良しで、現在彼はエンタメ系の弁護士となり、キー・ホイ・クァンのエージェントを務めていることが明かされると、会場は驚きに包まれた。『エブエブ』の出演交渉の際にはプロデューサーから「まさかデータの出演の件でチャンクと交渉する日が来るなんて」と驚かれたと明かした。また『インディ・ジョーンズ魔宮の伝説』についても「ずっと大好きな作品だよ。スティーブン・スピルバーグとジョージ・ルーカスという巨匠コンビが初めてアジア人をキャストした映画だからね。しかも当時大ヒットしていた『レイダース/失われたアーク<聖櫃>』の続編だよ!この映画は僕の人生を変えたんだ。人生の軌道を変えてくれたおかげで、僕の人生はとてもいいものになった。年数を経ても愛される作品に参加することができたのは特別なことだね」と強い思い入れと感謝の思いを語った。そして20年以上のブランクを経て俳優業に復帰し、ゴールデングローブ賞を獲得した『エブエブ』について「(『インディ・ジョーンズ』や『グーニーズ』への出演で)僕はもうこれで終わりなのかなと長い間不安だった。子どもの頃に達成したことをもう超えることはできないのかなと。でも感謝すべきことに『エブエブ』という小さな映画がやってきて、それが全てを変えてくれた。いまは外に出るとたくさんの人が“エブエブのウェイモンドだ!”と声をかけてくれる。『エブエブ』は僕にとって大きな贈り物となった作品だよ」と嬉しそうに語った。アカデミー賞助演男優賞へのノミネートについては「もう最高の気分だね。自分がオスカー候補俳優だなんて信じられないしびっくりしてるよ。(俳優業から)20年以上遠ざかっていたのに復帰作が『エブエブ』でしかもこんな評価をいただけてとてもとても光栄です」と笑みをたたえて喜びを口にした。最後は「みんな、愛してるよ!!!!!」とカメラに向けて投げキッス。約4分に及ぶこの日のための動画メッセージに集まったファンも大喜びだった。やついは、キー・ホイ・クァンの口から明かされたチャンクの大出世に「すごい!チャンク大活躍!データとチャンクが親友って、本当にいい!」と満面の笑み。既に『エブエブ』も鑑賞したというやついだが「すごい作品でした。超カオスですね。最初はアジア人差別を描いた社会派かと思ったら、全然違いました。全部が新鮮で、ギャグも『グーニーズ』以上に下ネタしかない(笑)! 下ネタでアカデミーまで行けるんだ?って思いました」と独特の表現でその魅力を熱弁した。ミシェル・ヨー演じる主人公の夫を演じたキー・ホイ・クァンに関しても「大活躍ですよ。気弱な……でも優しいというのがピッタリで、頭を下げながら、いろんな人を守っている」と称賛。いよいよ3月12日(現地時間)にアカデミー賞の授賞式が開催となるが「(受賞したら)こんな感動的なことはない! 子役で終わりかと思ったら、これでアカデミー賞を獲ったらすごいですよ」と快挙に期待を寄せ、イベントは幕を閉じた。<作品情報>映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』公開中監督:ダニエル・クワン ダニエル・シャイナート出演:ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ステファニー・スー、ジェイミー・リー・カーティス(C)2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.関連リンク公式サイト:::
2023年03月09日7日(現地時間)に行われていたアカデミー賞の最終投票時間に、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で主演女優賞候補のミシェル・ヨーが「VOGUE」誌のある記事をインスタグラムでシェアし、波紋を呼んでいる。「It's Been Over Two Decades Since We've Had a Non-White Best Actress Winner(直訳:非白人の主演女優賞受賞から20年以上が経っている)」というタイトルの複数ページに渡る記事だ。その一部には、ミシェルと同じく主演女優賞にノミネートされている『TAR/ター』のケイト・ブランシェットと、ミシェルを比較するような内容もみられる。ケイトはすでに主演女優賞、助演女優賞と2度のアカデミー賞に輝いており、「今回3度目の受賞となれば業界の巨匠として認められることになるだろう」というが、すでに十分その実力を示してきたケイトにその証明が再び必要かという疑問も呈している。一方で、ミシェルにとってアカデミー賞受賞は「人生を変えるものになり、永遠に名前の前に『アカデミー賞受賞者』が付くようになる」と書かれている。SNSユーザーは、この投稿がアカデミーのルール、特にNo.11の「References to Other Nominees(他の候補者に対する言及)」に抵触しているのではないかと声を上げている。このルールは具体的に「他の競争者の名前や(映画の)タイトルを挙げ、矛先を向けるような作戦」を明示的に禁止するというもの。ミシェルはこの投稿をすでに削除している。(賀来比呂美)■関連作品:TAR/ター 2023年5月12日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 FOCUS FEATURES LLC.エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年03月09日インディペンデント・スピリット賞が発表された。作品賞に輝いたのは、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。今作では、ダニエル・クワンとダニエル・シェイナートが監督賞と脚本賞、ミシェル・ヨーが主演賞、キー・ホイ・クァンが助演賞、ステファニー・スーがブレイクスルー演技賞、ポール・ロジャースが編集賞を受賞した。撮影監督賞は『TAR/ター』。ドキュメンタリー賞は『All the Beauty and the Bloodshed』。監督またはプロデューサーにとって初の作品である映画に贈られるファースト・フィーチャー賞は『Aftersun』、初めての脚本に贈られるファースト・スクリーンプレイ賞は『Emily the Criminal』だった。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』公開中(C)2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.『TAR/ター』5月12日(金) TOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー(C)2022 FOCUS FEATURES LLC.文=猿渡由紀
2023年03月06日先日、無料配信された全米映画俳優賞(SAG)にて『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアジア俳優にして初の主演女優賞を受け取り、感極まりながらのスピーチが話題を呼んだアジアのレジェンド、ミシェル・ヨー。本年度アカデミー賞では主演女優賞や作品賞を含む10部門11ノミネートを果たした、このカオスで奇妙なマルチバース・アクション・アドベンチャーがついに日本公開!アジア発のアクションヒロインの先駆者にして、『007』ではいわゆる“ボンドガール”も経験、『クレイジー・リッチ!』では大富豪となり、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の『シャン・チー/テン・リングスの伝説』でもキレキレのアクションを見せた彼女自身の映画人生を紐解くと、様々な平行世界で生きる本作の主人公エヴリン・ワンそのもののようにも見えてくる。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は「一生もの」世界興行収入で1億ドル超え、「A24」史上最大のヒット作となっている『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。SAG賞では作品賞にあたるキャスト賞を含め4冠を達成したが、やはり同業者からの評価は格別の喜びだったらしい。壇上にのぼったミシェルは額に“目”を作りながら、俳優たちへの感謝とともに、「これは私だけのものではありません。私と同じような見た目のすべての少女たちのものです。この仕事を本当に愛しているからこそ、やめるつもりはありません」と涙をこらえつつ語っていた(感激のあまり、ついFワードも飛び出してしまったほど)。ミシェルの前にも、共演以来、大親友となった同助演女優賞のジェイミー・リー・カーティス、アジア俳優初の助演男優賞を獲得したキー・ホイ・クァンも感動的なスピーチ。そして、キャスト賞受賞で皆に称えられた本作の父・ゴンゴン役の94歳のジェームズ・ホンは、スピーチの締めくくりにミシェルがゴールデン・グローブ賞の授賞式で言った「静かにして!私はあなたを打ちのめせる(Shut up! I can beat you up.)」を引用して会場の笑いを誘い、本作が評価された意義とチームの連帯を改めて示していた。本作でミシェル・ヨーが演じたのは、毎日毎日、家庭とコインランドリー店を“回して”いくのに精一杯な主婦エヴリン・ワン。父を介護しながら、確定申告のための領収書をテーブルに広げて頭を抱え、やること・考えることが山積みの白髪交じりの女性だ。夫ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)はまるで頼りなく、ひとり娘のジョイ(ステファニー・スー)は大学を中退し、ガールフレンドと家を出ようとしている。ジョイは将来への期待や夢を持てず、愛する人とささやかに暮らせればいいという、日本でいうところの“さとり世代”のよう。家族には自分のことを分かってほしいと願っているが、母エヴリンとは衝突してばかり…。これほどまでに冴えない、生活感丸出しの役柄はミッシェルのキャリア史上おそらく初めて。だが、ミシェルは「エヴリン・ワン役は私の40年のキャリアからの授かりもの。まさに一生ものの役」とInstagramでコメントするほど、この役を愛している。当初、監督のダニエルズ兄弟はジャッキー・チェンを主演にした父親の企画を考えていたそうだ。しかし、彼の出演が流れたことで物語の設定を母親に変更したとき、「脚本に命が宿ったような気がして、主役はミシェル・ヨーだと確信した」という。そして「年を取れば取るほど、演じる役は小さくなっていく」とインタビューでも再三語っているミシェルは、このオファーを大切に受け取った。40年に及ぶキャリアの中で映画界の多様性・包括性とともに、性別や肌の色、人種によって求められるステレオタイプからの脱却を訴え、リスクを恐れずにさまざまなチャレンジをしてきたミシェルは、“誰かの母親で、誰かの娘である、ごく普通の年配のアジア系移民女性”の物語においてもステレオタイプを打破してくれた。また、今回、“アジア人初”のアカデミー賞主演女優賞候補となったことも意味深い。1936年にも、マール・オベロンが『ダーク・エンジェル』で同主演女優賞にノミネートされたが、マールは英国とインドのダブルであったことを公にせず英国人として活動していたという。ミシェルはアジア人であることを自認する初の主演女優候補、ということだ。ただ、ミシェルは多くの素晴らしい俳優たち、共に立つ仲間たちや先人たちがいるからだと常に感謝を口にしており、こうした“アジア俳優として”といった言い方そのものは「過去のものになることを望んでいます」として、「私たちのような顔の俳優がノミネートされ、役を演じる機会が平等に与えられることが普通になってほしい」とトーク番組「The Late Show With Stephen Colbert」でも語っている。さらに「People」に語ったところによれば、「現在のキャリアは母のおかげ」だという。彼女の母ジャネットは大の映画好きで、チャンスさえあったならば自身が映画スターになりたかったそうだ。本作が実は、マルチバースを舞台にした母と娘の愛の物語であることを踏まえれば、ミシェル自身の思いも少なからずエヴリン役に反映されていることだろう。香港映画界からハリウッドへ!主演もスタントもこなす1962年8月6日生まれ、マレーシア出身。両親は華僑。いまでもトレーニングを欠かさないというミシェルは、4歳のころからバレエを習い、テニスや水泳などに親しんできた。10代でロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・ダンスにバレエ留学するも、ケガのためにバレエを断念し演技と振付で学位を取得。1983年にミス・マレーシアに選ばれたことをきっかけに、香港映画界を代表するD&B Filmsのサモ・ハン・キンポーに見出され、1984年にジャッキー・チェンとCMで共演、サモ・ハン監督・主演『デブゴンの快盗紳士録』の端役でスクリーンデビューする。第80回ゴールデン・グローブ賞にて80年代は『皇家戦士』(86)『チャイニーズ・ウォリアーズ』(87)などに出演し、1987年にD&B Filmsを所有する富豪と結婚し一時引退。離婚を経て、1992年にジャッキー・チェンの人気シリーズ『ポリス・ストーリー3』で復帰。その後もアクション俳優として『ワンダー・ガールズ 東方三侠』(93)『詠春拳』(94)など香港で大活躍を続け、1997年に『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』に抜擢され、ミシェル・ヨーとしてハリウッドデビューする。『SAYURI』来日記者会見時アン・リー監督の『グリーン・デスティニー』(00)や、『SAYURI』(05)『バビロンA.D.』(08)などの作品で人気を確立し、『カンフー・パンダ2』(10)や『ミニオンズ フィーバー』(20)など、アニメ映画でもカンフーの先達役を演じてきた。MCUの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(17)にもカメオ出演している。2002年には初のプロデュース作品『レジェンド三蔵法師の秘宝』に主演し、『グリーン・デスティニー』の撮影監督ピーター・パウを迎え、シルクロードを舞台に三蔵法師が遺した秘宝を巡る壮大な冒険を繰り広げた。『シルバーホーク』(04)でも自ら製作総指揮を務め、銀色のマスクとスーツに身を包み正体を隠して悪を退治する近未来のアクションヒロインに扮したこともある。2007年には、長年にわたる功績によりフランスからレジオン・ドヌール勲章(The Legion of Honour)を授与。2022年には「TIME」誌のアイコン・オブ・ザ・イヤーにも選ばれている。待機作も数多く、『アバター』第3弾以降に博士役で出演が決定しており、『シャン・チー』デスティン・ダニエル・クレットン監督による「アメリカン・ボーン・チャイニーズ」の実写ドラマ化などがある。『イップ・マン外伝マスターZ』(2018)よりアジアのレジェンドとして、ときには信念のために戦い、マーベル“初”のアジア系ヒーローのメンターを務め、アジア女性として宇宙へ行ったり、売れっ子芸者にもなったりしてきたミシェル。「決まりきった見方で私のことを見ないから」ダニエルズのような若い監督たちと仕事をするのが好きだという彼女は、これからもガラスの天井を打ち破り、限界を押し広げていってくれるはずだ。『ポリス・ストーリー3』(1992)保安局捜査官:ジェシカ・ヤンカンフーアクションはもちろん、バイクで走行中の列車の屋根にジャンプするなど、ジャッキー・チェンをも凌ぐ超絶スタントを自らこなして大復活、話題を呼んだ。ジャッキー映画ではおなじみのエンディングクレジットのNGシーンでは、まさしく体を張ったスタントに挑んでいたことがうかがえる。『スタントウーマン 夢の破片』(1996)スタントウーマン:カン香港を代表する映画監督7人によるオムニバス作品『七人樂隊』にも参加した女性監督アン・ホイによる、スタント俳優と香港映画界を描いたヒューマンドラマ。同じくサモ・ハンが、劇中でもミシェルの恩人となるアクション監督役で出演し、ワイヤーアクションの裏側を垣間見ることができる。撮影中、ミシェルは実際に重傷を負っている。『宋家の三姉妹』(1997)宗家の長女:靄齢(アイレイ)“新しい中国”のためには新しい女性の力が必要、と考える父のもとで育った実在の三姉妹の生き様から、中国近現代史の概形に触れられる。ミシェルが演じたのは財閥と結婚した長女・靄齢。『東方三侠』『ポリス・ストーリー3』で共演したマギー・チャンが革命家・孫文と結婚した次女・慶齢、『ラストエンペラー』のヴィヴィアン・ウーが蒋介石夫人となった三女・美齢を演じた。『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997)女性スパイ:ウェイ・リンメディア王のフェイクニュースによる謀略を取り入れた『007』シリーズ18作目。新華社通信の記者に扮した中国外務局公安部員ウェイ・リンとして、ジェームズ・ボンド(ピアース・ブロスナン)と共闘するまったく新しい“ボンドガール”を体現。ボンドと手錠でつながれた状態でのバイクチェイスシーンをはじめ、彼女に求められたであろうアクションを惜しみなく披露したミシェルは必見。当時のハリウッドを、「彼らは私が中国人なのか、日本人なのか、韓国人なのか、英語を話せるのかさえ区別できなかった。いつも大声で、ゆっくりと話した」とふり返っている。『グリーン・デスティニー』(2000)剣士:ユー・シューリンチョウ・ユンファ、チャン・ツィイー、チャン・チェンら豪華共演、アン・リー監督が小説「臥虎蔵龍」を映画化した武侠アクション・ラブストーリー。アカデミー賞外国語映画賞(当時)など4部門に輝いた。以後のアクション映画史を変えたといえる圧巻のワイヤーアクションや、剣術・カンフーシーンはもちろん、最愛の人ムーバイ(チョウ・ユンファ)の伝説の剣・碧銘剣を奪った者でありながら、姉妹のような友情を交わすチャン・ツィイー演じるイェンとの関係性にも要注目。「ソード・オブ・デスティニー」Netflix配信中なお、2016年には続編となるユエン・ウーピン監督の『ソード・オブ・デスティニー』がNetflix配信。ドニー・イェンとの再共演や、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の“料理人”バースで共演したハリー・シャム・Jr.、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』『オールド・ガード』のヴェロニカ・ンゴーら、こちらも豪華共演。『サンシャイン 2057』(2007)植物学者:コラゾンダニー・ボイル監督×アレックス・ガーランド脚本による、おそらく好みがはっきりと分かれるSFサスペンス・アドベンチャー。船長役の真田広之や、MCU仲間のベネディクト・ウォンとともにクルーとして太陽へと向かった。ミシェルに出演してほしかったボイル監督は、彼女が選んだ植物学者役を男性の設定から変更した。『レイン・オブ・アサシン 剣雨』(2010)刺客:シーユー/ザン・ジン韓国の人気俳優チョン・ウソンと夫婦役を演じ、『インファナル・アフェア 無間序曲』のショーン・ユーらと共演し、ジョン・ウーが共同監督。過去を捨てて愛に生きようとするも、その風格がつい現れてしまう、宿命に抗えない刺客を演じた。武術界の覇権を握れるという伝説の秘宝を手に入れたい暗殺組織のボスの理由があまりにも…。『The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛』(2011)民主化指導者:スー・チー2021年の軍事クーデターにより現在収監されているミャンマーの民主化指導者を、リュック・ベッソンがメガホンをとり映画化。当時も軍幹部に危険視されていたことから国民がその名を呼ぶことができず、“The Lady”と呼ばれていたスーチーを減量の上、熱演。来日時には「この映画に参加し、周囲の人々に優しく接すること、良い人間であろうとすることを学ぶことができました」と語っていた。「スタートレック:ディスカバリー」(2017-)皇帝:フィリッパ・ジョージャウこれまでも多様性を推し進めてきた「スタートレック」シリーズで、黒人女性初の主人公マイケル・バーナム(ソネクア・マーティン=グリーン)も慕うカリスマ性たっぷりの皇帝…から、平行世界ではまったく別の冷徹にして高潔な皇帝として登場し、人気キャラクターとなった。別バースの関係性が平行世界においても影響するのは、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』にも通じるものが。フィリッパのスピンオフの進捗状況が気になるところ。『クレイジー・リッチ!』(2018)シンガポールの大富豪:エレノア・ヤン主人公レイチェル・チュウ(コンスタンス・ウー)の想像を超えるほどリッチな一家の生まれだった彼氏の母親で、立ち向かわなければならないアジアの伝統・文化・歴史の象徴のような存在を演じた。本作での演技がアカデミー賞では冷遇されたこともまた記憶に新しい。息子役のヘンリー・ゴールディングとはエミリア・クラーク主演『ラスト・クリスマス』(2019)でも共演、同作では素顔により近そうな(?)“サンタ”を演じた。『ガンパウダー・ミルクシェイク』(2021)“図書館員”:フローレンス図書館に見せかけたワル御用達の武器庫を守る図書館員をアンジェラ・バセット、カーラ・グギーノとともに演じた。ガンアクションはもちろん、鋼鉄チェーンと拳のみで立ち向かうミシェルのカッコよさと、過去にミシェルが出演してきた香港アクション映画のファンであるナヴォット・パプシャド監督の世界で連帯して闘う女性たちの姿は痛快!なお、3月12日(現地時間)にドルビーシアターで行われる第95回アカデミー賞授賞式では、『ハムナプトラ3呪われた皇帝の秘宝』(08)で共演し、今回『ザ・ホエール』の凄みある演技で復活を遂げたブレンダン・フレイザーとW受賞となれば、胸アツの展開必至。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が10部門11ノミネートからどれだけオスカーを獲得するのかも楽しみだ。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は全国にて公開中。(上原礼子)■関連作品:レイン・オブ・アサシン 2011年8月27日より新宿武蔵野館ほか全国にて公開© 2010, Lion Rock Productions Limited. All rights reserved.The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛 2012年7月21日より角川シネマ有楽町ほか全国にて公開© 2011 EuropaCorp - Left Bank Pictures - France 2 Cinemaクレイジー・リッチ! 2018年9月28日より新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENTシャン・チー/テン・リングスの伝説 2021年9月3日より全国にて公開©Marvel Studios 2021ガンパウダー・ミルクシェイク 2022年3月18日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2021 Studiocanal SAS All Rights Reserved.エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年03月04日第80回ゴールデン・グローブ賞で主演女優賞、助演男優賞に輝いたのをはじめ、本年度の映画賞を席巻している映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』がついに明日3日(金)から公開になる。本作は、マルチバース(多元宇宙)を舞台にした壮大なドラマが描かれるため、すでに映画を観た人の中には“複雑”や“カオス”といったフレーズを挙げる人もいるようだ。しかし、本作の主軸に据えられているのは、誠実で、シンプルで、まっすぐな人間ドラマだ。本作を手がけたふたりの監督は「自分たちの経験を基に地に足のついた物語にしたかった」と語る。大丈夫。本作は複雑でもカオスでもない。別の言い方をすれば、私たちの日常と同じぐらい複雑でカオスだ。ダニエル・クワンとダニエル・シャイナートのコンビ“ダニエルズ”は、これまでに数々のミュージックビデオやCMなどを手がけてきた。2016年製作の『スイス・アーミー・マン』は無人島に流れ着いた男が、そこで発見した死体を“スイスアーミーナイフ”のように駆使して危機を乗り切ろうとする物語で、驚愕のアイデア、巧みな物語運び、強烈な映像が観客から好評を集めた。そんなふたりは次回作で何に挑む? 前作よりも“攻めた”アイデアはあるのか? しかし、ふたりは意外にも「この作品をつくりはじめた時から、自分たちの経験を基に地に足のついた物語にしたかった」と語る。「だから最初は主人公の一家がアジア系だとは想定していませんでした。ただある時、ダニエル(・クワン)がDJスネイク&リル・ジョンの『Turn Down For What』のミュージックビデオに出演して好評だったことを思い出しました。そこで僕らはアジアというプラットフォームを持っているのに、これまでちゃんと描いてこなかったことに気づいたんです。だとすると、アクションの要素のある物語にしたくて、アジア系のキャストで……となると主演はミシェル・ヨーにお願いしたいな、とか、家族や移民やジェネレーションギャップの話をしたいな、とか自然に題材やテーマが浮かび上がってきたんです」(シャイナート)「脚本を書いているときにプロデューサーのジョナサン・ワンのお父さんが亡くなりました。彼は中国の人で、僕たちもお葬式に伺ったので、そこで中国系の方の話をたくさん聞きました。そんな流れの中で自然とこの映画はアジア系の家族の話になっていったんです」(クワン)ふたりの願いが叶い、本作は名女優ミシェル・ヨーが主演を務めることになった。彼女が演じるエヴリンは、家族でコインランドリーを経営している女性だ。しかし、彼女の人生は難題だらけ。商売では税金問題に頭を悩ませ、夫は優しいけど頼りなく、娘は反抗期で、父の介護もしなければならない。店に来る客もややこしくて、さらに娘が紹介したい人がいると言い出す……難題だ。難題しかない。そんなある日、彼女は税金の督促を受けて、説明に向かった先で“別の次元にいる夫”に出会う。あの頼りない夫とは同じ姿だが、似ても似つかぬキャラクターの彼は、エヴリンに全宇宙の命運を託す。さっきまで税金の書類の山に埋もれ、嫌味な客の相手をしていたエヴリンはなぜか強大な悪に立ち向かうことになる。本作はマルチバースを行き来しながら物語が進んでいくため、主人公エヴリンは反抗期の娘を抱える母かと思えば、次の瞬間にはカンフーの達人になっていたりする。さらに頼りないと思っていた夫は別の宇宙ではまったくの別人として存在するのだ。エヴリンは世界なんか救いたくない。税金の問題を解決して、家族のトラブルをうまくおさめたいだけだ。しかし、彼女は強制的に別の宇宙に運ばれ、屈強な男たちとカンフー対決することになる。一見すると複雑に思えるが、すべては我々が日々、生活している中で味わう感情や体験がベースになっているのが本作のポイントだ。「映画の冒頭では私たちの現実と地続きの世界で、エヴリンをはじめとする家族がうまくコミュケーションをとれずにいる状況が描かれます。なぜなら、“私たちが暮らす現実世界もマルチバースなんだ”ということを言いたかったからです。エヴリンが良い例ですが、彼女は夫、娘、父、そして店に来る客に対して違った接し方をしていて、まったく違った顔を見せます。他のキャラクターも、まるで“自分が主演の作品”のように振る舞っているんですが、そこに家族や他人の要望だったり干渉が入って邪魔されてしまう。そういうことって現実に普通に起きているんですよ」(シャイナート)「マルチバースについて考える時には、いろんな分野・視点から考えることができると思います。たとえば数学の世界におけるマルチバースもあるでしょうし、物理、SF、哲学、宗教的な解釈……さまざまなアプローチができます。そういえば昔、キリスト教関連の本を読んでいたら“信徒が自分とは違う道徳的宇宙を持っていることに気分を害した哲学者”の話が載っていました。これは言ってしまえば“モラル上のマルチバース”が起こっている(笑)。面白いですよね。それに私たちはみな、誰しもが生きていく上で、何かしらパフォーマンス(演技)している部分があると思うんです。対する人が違えば見せる顔も違いますし、ふれあい方も違います。一般的にはひとりの人間のパーソナリティはひとつだと思いがちですけど、ひとりの人間の中にはもっといろんなものが詰まっているんです」(クワン)本作が目指す“ゴール”とは?そこで彼らは本作で、ひとりの人間の中に詰まっている“いろんなもの”をマルチバースの設定を援用して丸ごとエンターテイメントにしてしまうことに挑んだ。クワンは「作りはじめた時から“大きくてグチャグチャしたもの”を作りたいと思っていましたが、その材料が何なのかは最初はわからなかったんです」と笑い、シャイナートは「シチューをつくりたいんだけど、メインの食材がわからない感じです。だからメインの食材が決まるまでは、まるで科学の実験でもするみたいに何度も書いてはやり直し……を繰り返しました」と振り返る。結果として本作には家族ドラマ、移民の物語、哲学的な語り、SF的なアイテム、カンフー、クラシカルなショットで見せるロマンス劇の要素、頭がよろしいとは言いがたいギャグ、観ていてせつなくなる描写……などがシチューのようにグツグツと煮込まれた映画になった。結果として“複雑”や“カオス”のフレーズが頭に浮かんだ人もいるかもしれないが、本作のメインの食材はちゃんとある。シャイナートは「映画を作っていく中で、ゴールになる“北極星”のようなものは常にちゃんとあったし、そこからはズレないようにしていた」と振り返る。「昔、スタンリー・キューブリックが『2001年宇宙の旅』について語った言葉で大好きなものがあるんです。“宇宙というものが怖いのは、我々に対する敵だからではなく、宇宙が我々人間に対して無関心だったからだ。もし、そのこととを我々が受け入れることができるのであれば、混沌としている中でも人生を意義深いものにすることができる。この広大な闇の中で我々は自分の光を自分で照らさなければならない”これこそがまさに映画の冒頭でエヴリンが置かれている状態だと思うのです。彼女は映画のはじまりでは世界が自分に対して“敵”のように振る舞っていると思っています。でも彼女はやがて、世界は敵なのではなく自分に対して“無関心”なんだということを知るんです。その上で彼女はこの真実を受け入れて、自分自身のストーリーを自ら書き直していく。この映画が描くストーリーはそのようなものだと思っています。だから、この部分については、どれだけ新しいアイデアが出ても、どれだけ脚本を書き直しても、絶対にブレないようにしましたし、これこそがこの映画のガイド/北極星だと思っていました」クワンは「映画の中に哲学的なメッセージを全面的に出すつもりはなかった」と言うが、同時に「観ている方に誤解されたくもなかった」と語る。「だから、自分たちの言いたいことはハッキリと誤解されることのないように入れて、他の要素とのバランスを見つけていく作業になりました」映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、次から次へと予想外の展開が飛び出す、アクション満載の一大エンターテインメント作品だ。同時に本作は、我々の暮らす世界の、我々の物語でもある。この世界はそもそもがマルチバースだ。我々の日常はいつも複雑でカオスだ。大きなスクリーンに向き合って、 “広大な闇の中に灯った光”を見つけだしてほしい。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』3月3日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー(C)2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年03月02日A24の話題作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』から、オルタナティヴポスターが解禁された。本年度アカデミー賞では“最多”10部門11ノミネートと賞レースを賑わす本作。間もなく全国公開を控え、ますます注目が高まっている。この度解禁されたのは、イラストレーター、漫画家の本秀康、漫画家の西村ツチカ、イラストレーターの羽鳥好美ら人気クリエイター3名による描き下ろし作品を、A24作品ほか数々の映画宣材ビジュアルを手掛けるグラフィックデザイナーの大島依提亜がデザインした、日本オリジナルオルタナティヴポスター3種。4名よりコメントも到着している。本秀康(イラストレーター/漫画家)ミシェル・ヨー演じるエヴリンが劇中でバースジャンプ(平行世界にいる別の自分にアクセス)して変身する“カンフーの達人”をメインに、“歌手”、“シェフ”、“看板回しのパフォーマー”と変幻自在に能力を駆使する姿を油絵で表現したのは、イラストレーターで漫画家の本秀康。周辺にあしらわれる印象的なキーアイテムの数々は、本編を見たあとニヤリとさせられる、コメントにも寄せられている通り、まさに「ワクワク感を絵で表現」されたイラストポスターとなっている。西村ツチカ(漫画家)また、本作で数々の助演男優賞を文字通り総なめしアカデミー賞で「受賞当確」とも言われるほど俳優としての完全復活を遂げたキー・ホイ・クァン演じるウェイモンドにフィーチャーしたイラストを手掛けたのは漫画家の西村ツチカ。普段の平凡で気弱なウェイモンドと打って変わり、ウェストポーチファイトを行う武道家、エヴリンを救世主としてマルチバースの世界へと導く人物“アルファ・ウェイモンド“と様々に人格を変え、本作におけるもう一人の主人公ともいえるマルチバース上の様々な顔のウェイモンドが西村氏らしい摩訶不思議な空間デザインで描かれており、見れば見るほどに発見がある細かな描き込みも含め、まるで全てが同時に共存するマルチバースをそのまま表現された作品となっている。羽鳥好美(イラストレーター)最後に人類の突然変異で指がソーセージのように変容した“ソーセージ・フィンガー”の世界に生きるエヴリンと、ジェイミー・リー・カーティス演じるディアドラとの切ない愛の一幕を描いたのはイラストレーターの羽鳥好美。本作で描かれる目まぐるしいほどのカオスの中でひときわ異彩を放つ淡いピンク色の世界のなかでふたりのどこか物悲しくも温かく寄り添い合う様子を羽鳥氏がドリーミーなタッチで手掛けた。コメント通り「アンニュイで緩やかな時間の流れ」さえもビジュアルから伝わるポスターとなっている。三者三様のまさに“マルチバース”を表現した日本オリジナルオルタナティブポスターは六本木蔦屋書店にて限定期間展示予定。(※詳しくは公式Twitter、公式HPを)。<コメント全文>●大島依提亜(グラフィックデザイナー)色々な世界を行き来するエヴリンよろしく、本秀康さん、西村ツチカさん、羽鳥好美さんという心強い“バース・ジャンパー”たちを迎えて、ポスターもマルチバース展開してみました。さて本作、昨年日本で観れるA24作品全視聴マラソン(およそ100作)を遂行した自分も納得のA24ベスト級の作品となっております。是非劇場で。●本秀康(イラストレーター/漫画家)厳しい修行の行程をすっ飛ばして、いきなりカンフーの達人に!こんな手があったとは!最高です!! ミシェル・ヨーのバラエティ溢れる奇抜なカンフーアクションの連続に胸が踊ります。そのワクワク感を絵で表現してみました。●西村ツチカ(漫画家)主人公エヴリンだけでなくその夫ウェイモンドにもいくつもの人生の物語があったと思うと、彼の親しみあふれる表情や仕草のひとつひとつに可能世界を感じられるようになり、ますます引き込まれました。彼を中心にしてグワーッと描きました!●羽鳥好美(イラストレーター)一見コミカルでありながらどこか切ない浅い夢の中のようなバースには、アンニュイで緩やかな時間の流れを感じます。淡い光とコーラルピンクに彩られた御揃いで過ごす二人の場所を、白にふっと色が溶け込むかのようなタッチで描きました。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は3月3日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 2023年3月3日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年03月02日アカデミー賞の発表が近づくにつれて、本年度の賞レースもさらなる盛り上がりを見せていますが、もっとも注目を集めている1本といえば『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。数々の話題作がしのぎを削るなか、最多となる10部門で11ノミネートを果たしています。そこで、主演を務めたこちらの方にお話をうかがってきました。ミシェル・ヨーさん【映画、ときどき私】 vol. 554本作で、自身初となるアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたミシェルさん。受賞すればアジア系の俳優として初の受賞となるため、大きな関心が寄せられています。劇中で演じたのは、人生のどん底にいたにも関わらず「全宇宙を救えるのは君だけだ」と世界の命運を突然託されてしまう“普通のおばさん”エヴリン。見事な熱演ぶりで観客を魅了し、絶賛されています。前哨戦と言われるゴールデングローブ賞で最優秀主演女優賞に輝くなど、アカデミー賞受賞への期待も高まるなか、ananwebでは単独インタビューを実施。前向きに生きる秘訣や苦境に立たされたときの乗り越え方、そして日本を好きな理由などについて語っていただきました。―本作では「あのとき別の決断をしていたら別の人生があったのに……」ということも描かれており、これは誰もが一度は考えることだと思います。演じている際に、ご自身の人生における後悔などが頭をよぎることもあったのでしょうか。ミシェルさんもちろん、誰もがそう思うことはあるかもしれませんね。でも、私自身はいままで後悔をするような生き方はしていません。というよりも、失敗することがあってもそれはそれで認めて引きずらず、逆にそこから何を学べるのかを考えるようにしています。実際、失敗したことを後悔するよりも、そこからどうしたら前に進めるかを考えるほうが大切ですよね。とはいえ、私もこの作品を制作しているときに、「もしも……」と想像したことはありましたよ。ただ、いまの自分は幸せなので、そんなことを考えること自体が無意味だと気がついたんです。他人の言葉は聞かずに、自分の声にだけ耳を傾ける―素晴らしいですね。ゴールデングローブ賞の授賞式で行ったスピーチにも感銘を受けましたが、アジアを代表する女優であるミシェルさんほどの方でも、さまざまな差別を経験されていたことに驚きました。しかも、本作出演前には年を取ったことが理由で周囲から引退を勧められたこともあったとか。厳しい状況を乗り切るために意識していることはありますか?ミシェルさんまず大事なのは、そういうときの他人からの言葉は聞き入れないことです。私は自分の声にしか耳を傾けないようにしています。そもそも他人のほうが私のことを知っているわけはありませんよね?なので、必要のない意見は聞かなくていいと思っています。あと、私の場合は、俳優という職業柄いつオファーが来ても応えられようにするというのは重要です。それは体調面を含めたさまざまな準備のことですが、それらが整っていればチャンスをしっかりとつかむことができますから。とはいえ、確かに年齢が上がって行くにつれて少しずついろんな機会が狭まってしまうところがいまだにあるのは事実です。でも、最近は映画業界にも女性が増えていて活躍できる場が広がりつつあるので、これからも私は戦い続けていきたいと思っています。この役を演じるために、40年間準備をしてきたと感じる―「もっと前にこの作品に出ていたらキャリアも変わっていたかも」と感じたこともあったそうですが、このタイミングで本作に出演したことで得たものもあったのではないでしょうか。ミシェルさんもし私が若いころにこの映画の話があったら、きっと私はエヴリンの娘役を演じていたでしょうね。おそらく、それでもアジア人である私にとっては十分に大きなチャンスだったと思います。実は最近、女優のエマ・トンプソンと「役が人生のどの時期にやってくるのかは運命かもしれない」という話をしたことがありました。つまり、その役を演じる準備ができたときに、役が目の前に現れて私たちを見つけてくるんじゃないかということです。現に、私はこの役を演じるために40年間リハーサルをして準備してきたような気がしているんですよ。だからこそ、どれほど混沌としていて不条理なことがあっても、劇中ではさまざまな役を同時に演じることができたし、どんなキャラクターでもブレることなく理解することができました。―確かに、この役は60歳を迎えて年齢と経験を積み重ねたいまだからこそ表現できた部分があると感じました。ご自身でも成熟していくことの素晴らしさを実感したところもあったのでは?ミシェルさんそうですね。私たちは生まれたときから年を取る運命にあるので、年齢を重ねることは避けられません。若さにしがみつくことは不可能ですし、若さは私たちの手から離れていくものなので、それは仕方がないことですよね。でも、英語で「Grow Old Gracefully(優雅に年を重ねる)」という言葉があるように、どうしたら美しく年を重ねていくことができるかを考えることはできます。エヴリンのように短所があったとしても、知恵と強さを合わせ持った女性として周りに響くような人になることはできるはずです。日本の好きなところは、本質にある純粋さや奥深さ―まさにミシェルさんが体現されていることですね。また、監督であるダニエルズのおふたりは、本作を制作するうえで日本のアニメからもインスピレーションを受けているとお話されていますが、演じるうえで感じたことはありましたか?ミシェルさん日本のアニメやポップカルチャーなど、目に飛び込んでくるような刺激的なものから影響を受けているんだろうなというのは私にも伝わってきました。そのなかでも彼らが素晴らしいのは、原宿のようなカオスもしっかりと捉えられるところだと思っています。ただ、私もエヴリンと同じように「一体何が起きているんだ!」と現場で混乱してしまったこともありましたが(笑)。―ちなみに、ミシェルさんは日本に対してどのような印象をお持ちですか?ミシェルさんオー・マイ・ゴッド!日本には大好きなものがたくさんあるので、どこから始めたらいいのでしょうか……。とはいえ、まずは食べ物ですね(笑)。あと、私は日本で最高の休日を過ごしたこともあるんですよ。それは箱根に富士山を見渡せる素敵な家を持っている友人のところを訪ねたときのことですが、温泉に入って自然を堪能することができました。そういった純粋さや奥深さが日本文化の本質だと思いますし、そういうところが日本の好きなところです。また、日本の街はトレンディなのに伝統や歴史がある。その関係性とコントラストが日本の美しさを生み出していますし、それが日本に対して畏敬の念を抱く理由だと思います。観る方に好きなユニバースを選んで楽しんでほしい―ありがとうございます。本作ではまるで10本ほどの映画を観たような感覚に陥りましたし、細部にわたってさまざまなこだわりも感じました。見どころが多いので、もしそのなかでもミシェルさん的に注目してほしいポイントがあれば、日本の観客に教えてください。ミシェルさん確かに、この映画が10本分というのはその通りかもしれないですね!実際、SFとコメディとマーシャルアーツとドラマとホラーと5種類のジャンルが入っていて、それをいっぺんに体験できる作品となっていますから。ただ、改めていろいろ思い返すと私自身も一つを選ぶのは不可能なので、これはいい質問ですね。それくらい本当に見るべきところがたくさんありすぎる作品になっています。おそらく1回目は「え?どうなってるの?」となると思いますが、2回目、3回目となると少し落ち着いて観られるので「なるほど」となるかなと。そうなったときに、異なるユニバースやそれぞれのニュアンスを理解することができるはずです。とにかくいろいろと見逃してしまう可能性がたくさんある作品でもあるので、「何があっても上映中にお手洗いには行かないでくださいね」というのは伝えておきたいです(笑)。あとは、どのユニバースでも、観る方が好きに選んで楽しんでください。ぜひ、何回も観てほしいです。インタビューを終えてみて……。今回はオンラインでの取材でしたが、画面越しでもオーラがひしひしと伝わってきたミシェルさん。限られた時間ではあったものの、そのなかでも人生のヒントになるような素敵な言葉をたくさんいただき、感動しっぱなしの取材となりました。凛とした美しさと優しい笑顔はもちろん、知性が溢れる佇まいもまさに目指したい理想の女性像です。本作では、新境地で七変化するミシェルさんの魅力を堪能してください。アクションも笑いも涙も何でもあり!見たことのない映像と息つく間もない展開に、誰もがカオスの世界へと誘われる本作。奇想天外なストーリーに衝撃を受けながらも、そのなかにある普遍的な愛のメッセージには込み上げてくるものを感じるはず。あらゆる映画の醍醐味が体感でき、1本の映画とは思えない満足感を味わえる必見作です。取材、文・志村昌美ストーリー家族で経営するコインランドリーの税金問題に頭を悩ませているエヴリン。それに加えて、父親の介護や反抗期の娘、優しいだけで頼りにならない夫と、盛りだくさんのトラブルを抱えていた。そんななか、夫に乗り移った“別の宇宙の夫”が現れ、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と突如告げられる。まさかと驚いていたエヴリンだが、悪の手先に襲われるとマルチバースにジャンプ。そして、カンフーの達人である“別の宇宙のエヴリン”の力を得て、闘いに挑むことになるのだが……。異次元に引き込まれる予告編はこちら!作品情報『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』3月3日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー配給:ギャガ(c) 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
2023年03月01日