顔のスキンケアには人一倍気をつかうのに、首のスキンケアはサボりがちという方も多いのではないでしょうか。しかし、気づいた時には首にくっきりとシワが…。実は、顔よりも年齢が顕著に表れるのが首。そこにできてしまったシワが原因で、年齢よりも老けて見えてしまうかも。首のシワはどうすれば予防できるのでしょうか? また、すでにできてしまったシワを薄くすることは可能なのでしょうか? 詳しくご紹介しましょう。【監修】イシハラクリニック副院長 石原新菜 先生小学校は2年生までスイスで過ごし、その後、高校卒業まで静岡県伊東市で育つ。2000年4月帝京大学医学部に入学。2006年3月卒業、同大学病院で2年間の研修医を経て、現在父、石原結實のクリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により、種々の病気の治療にあたっている。クリニックでの診察の他、わかりやすい医学解説と、親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動と幅広く活躍中。著書に、13万部を超えるベストセラーとなった『病気にならない蒸し生姜健康法』(アスコム健康BOOKS)をはじめ、『「体を温める」と子どもは病気にならない』(PHP研究所)等30冊を数える。■首のシワの原因 ~首のシワは2種類ある顔のシワばかりに目が行きがちですが、実は、老けて見える一つの要因に「首のシワ」も大きく影響しているそうです。資生堂が2001年に20代~60代の女性に行った調査によると、「首で他人の年齢を判断する」と回答した人が約67%にも上り、「首のシワ・たるみに悩んでいる」人は約80%を占めることがわかりました。顔のシワは一般的に、年を重ねるにつれ、最初は目の周りからでき始め、次に口回り、そして首回りの順でできると言われています。しかし、首と顔とでは皮ふの仕組みや性質や違うため、シワができる原因も少し違うようです。▼そもそも首のシワは2種類ある首のシワには、2種類あります。一つは、横ジワ。体の中でも、上下左右と頻繁に動かす首は、顔よりも皮ふが薄く、伸び縮みします。しかし、加齢によって元に戻りにくくなり、横方向に深いたるみジワが出きるのです。さらに、顔の皮ふよりも首は3倍もキメが深く、形がきれいに整っていることがわかっています。そのキメが、年齢を重ねるにしたがって横方向に流れるようになり、「キメジワ」という形で表れるのです。もう一つは、縦ジワ。これは、乾燥やコラーゲンの減少、筋力の衰えなどが原因で、あごの下から首の付け根にかけてできるものです。縦方向にできるちりめんジワで、これも加齢にともなって目立ち始め、老けて見える原因になります。参考サイト:資生堂ビューティーノート 「いま注目の首。ネックゾーンケアを知りましょう」 資生堂ニュースリリース 「首特有の皮膚生理に関する新知見 ― 「首専用」美容液に応用 ― 」 参考資料:第31回日本美容皮膚科学会「しわ治療の最前線」(順天堂大学浦安病院皮膚科 須賀康教授) 【原因-1】姿勢年齢以上に首のシワが目立つ人の特徴として、その姿勢が挙げられます。例えば、机上のノートパソコンでずっと仕事をし、それ以外の時間はスマホを触っているとしたらどうでしょう。ずっと視線を落としてパソコンやスマホを操作する姿勢を続けると、首に負担がかかる「ストレートネック」となり、首や肩、背骨、腰などがこり、重症化すると痛みやしびれに発展します。この姿勢は「首にずっと横ジワができている状態」のため、これが習慣となっていると首のシワもどんどん深くなっていきます。参考サイト:日本成人病予防協会 「ストレートネック 〜今話題の健康ワード!〜」 【原因-2】乾燥首は顔と比べて2倍の汗腺があり、汗をかきやすいことから肌は潤っていると思っていませんか? 実は、汗の蒸発とともに肌表面は乾燥し、ベタつきだけが残ります。さらに、首は皮ふが薄いことから保湿機能が低く、顔と同様に露出することが多いため、乾燥による細かいシワができやすいのです。【原因-3】枕が合っていない枕の高さが合っていない、枕を使っていないなどで、不自然な姿勢で眠ることは、首のシワができる原因にもなります。高すぎる枕で仰向けに寝ると、あごを不自然に引く姿勢となり、首に横ジワができますね。そのまま睡眠時間を6〜8時間とすると、1日の4分の1〜3分の1もの長い間、横ジワがついたままの姿勢となるわけです。だからと言って低い枕が良いかというと、そういうわけではありません。頭がそった状態で寝てしまうと首の後ろの血管が圧迫され、脳の血液循環がうまくできなくなります。合っていない枕で寝ることは質の低い眠りとなるため、成長ホルモンの分泌を阻害し、シワやシミ、たるみにつながるとも言われています。参考サイト:日本睡眠科学研究所 「良い睡眠によるメリット〜美容編〜」 【原因-4】新陳代謝の衰え肌の新陳代謝を「ターンオーバー」と呼びます。新しい肌が生まれ、表皮へと成長し、あかとなってはがれ落ちるまでが約6週間。これを1サイクルとして、肌は生まれ変わっています。しかし、加齢や生活習慣の乱れ、ストレス、偏った食生活などで、うまく新陳代謝ができなくなり、シワやシミ、くすみ、肌荒れなどの症状として出てきます。【原因-5】日焼け紫外線による肌のダメージや老化を「光老化」と呼んでいます。加齢に伴う老化は、皮ふの厚さや色が薄くなるのに対し、光老化は紫外線に対して皮ふが体を守ろうとするため、黒くゴワゴワとした厚い皮ふに変化します。それがシワ、シミとなって表面化します。参考サイト:日本皮膚科学会 「皮膚科Q&A 日焼け」 【原因-6】筋肉不足顔の筋肉が衰えることにより、皮ふがゆるんで下がり、あご下や首のたるみ、シワにつながります。もともと首の皮ふは皮下組織や筋肉と密着していないため、一度たるむと元に戻すことは難しい箇所です。そのため、首の筋肉をいくら鍛えても、シワ予防・改善にはなりません。顔の筋肉の衰えが、首のシワの原因の一つとなっているわけです。参考サイト:資生堂ニュースリリース 「首特有の皮膚生理に関する新知見 ― 「首専用」美容液に応用 ― 」 J-STAGE 「頸部皮膚生理の研究と首専用化粧料への応用 」 ■首のシワを解消する簡単な方法一度ついてしまうと、なかなか薄くするのは難しい首のシワ。すでにできてしまったシワを薄くし、さらにこれ以上のシワ増加を防ぐ効果が期待できる5つの方法をご紹介しましょう。▼生活習慣を見直すふだんの生活習慣が、首のシワを増やす原因となっている場合もあります。例えば、肌の新陳代謝、ターンオーバーのサイクルを正常に戻すことは、肌を健やかに保ちシワ予防にもつながります。シワ予防効果が期待されるビタミンCを含む果物などを積極的にとり、バランスの良い食事、十分な睡眠、ストレスフリーな生活を心がけましょう。また、シワを作る大きな原因の一つ、乾燥の予防も大切です。なるべく露出を避け、肌表面からの乾燥を防ぐと同時に、紫外線を予防し光老化から肌を守りましょう。参考サイト:農林水産省 「果実の1日の摂取目標『200g』とは」 ▼正しい姿勢をキープ本来、首はゆるやかなカーブを描くことで頭を支えています。しかし、うつむきながらスマホやパソコンを長時間操作を続けると、首には深い横ジワが刻まれ、頸椎がまっすぐになるストレートネックとなり、首や肩、背中に大きな負担がかかります。スマホの長時間使用はなるべく避け、パソコンを使ったデスクワークの場合は、モニター画面をなるべく目線と同じ高さにする、骨盤を立てて座る、足は床にしっかりつける、猫背にならないように背筋を伸ばす、20〜30分おきに休憩をはさみ姿勢を変えるなど心がけましょう。参考サイト:日本成人病予防協会 「ストレートネック 〜今話題の健康ワード!〜」 ▼寝具を調整する睡眠中、首にシワができないようにするためには、自分の体に合った枕を選ぶことは重要です。特に、高すぎる枕は、首のシワを助長させます。枕選びのコツは、仰向け寝と横向き寝の両方に対応できる枕を選ぶこと。人は寝ている間に寝返りを打つので、頭3つ分の幅があり、中央部が低く、両サイドが高い立体的なものを選べば、仰向けでも横向きでも枕が首と頭をしっかり支えてくれます。▼スキンケアをチェック顔のスキンケアはていねいにしても、首まではなかなか手が回らないという人は多いでしょう。実際、顔の皮ふはこれまでさまざまな研究がされてきましたが、首の皮ふはまだまだこれからの分野。そのため、顔のスキンケアアイテムは数多くありますが、首専用となるとかなり数が絞られてきます。前述したように、顔に比べて首の皮ふは薄く乾燥しやすい、紫外線の影響を受けて光老化しやすい、たるみやすく元に戻りにくいという特徴があります。その特徴に合わせて、保湿や日焼け止め、肌のハリキープに効果があるスキンケアアイテムを活用しましょう。参考サイト:厚生労働省 「薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会 議事録」 資生堂ニュースリリース 「首特有の皮膚生理に関する新知見 ― 「首専用」美容液に応用 ― 」 ▼ストレッチやマッサージをする首の皮ふは皮下組織や筋肉とつながっていないため、首を鍛えてもシワが消したり予防したりといった効果は期待できません。しかし、ストレッチやマッサージをすることで、顔や首回りの血流が良くなり、皮ふにハリやツヤが生まれます。そのため、顔よりも黄味がかってくすんで見える首の肌色に透明感が生まれ、ハリによってちりめんジワの予防にもなります。詳しいストレッチやマッサージ方法は次の章でご紹介しましょう。■首のシワをケアするマッサージマッサージやストレッチは、首のシワを予防したり薄くしたりする効果が期待できます。ただし、皮ふが薄くたるみやすいので、自己流でやるのは禁物です。▼首ケアマッサージの方法1.肌に負担がかからないように、首にあらかじめネック専用美容液か、なければ顔用の乳液やローションを塗ってすべりを良くしておきます。2.指全体を使い、首の真ん中から外へ向かって円を描くようになでます。3.次に、鎖骨からあごに向かって下から上でマッサージします。4.最後に、首の後ろを下から上の順でツボを押すように指で押しておしまいです。力を入れるとかえってシワの原因となるので、あくまでもやさしくなでるようにマッサージしましょう。参考サイト:資生堂ビューティーノート 「いま注目の首。ネックゾーンケアを知りましょう」 ▼首ストレッチ方法スマホの操作や猫背でいつも萎縮しているあご下と首の左右を伸ばすようにストレッチをすると、血行が良くなり、肌のハリ・ツヤが増し、首のシワも改善されるでしょう。1.両方の手のひらを鎖骨の下部分に当て、あごをゆっくりと上げ頭を後ろに倒します。この時、手のひらで少し鎖骨下を押し下げるようにすると一層効果が上がります。2.一度顔を正面へ戻し、今度は顔を右へ向けます。左側の首筋を伸ばすように意識しながら、斜め右上に向かって顔を上げます。両手のひらは逆に、左下へ向かって鎖骨下をやさしく押し下げます。3.また顔を正面へ戻し、今度は顔を左上、両手のひらは右下へ。▼首のケアに効果的なヨガのポーズ顔や肩、背中をほぐすヨガのポーズで、首をケアしましょう。1.あぐらを組んで座ります。2.両手を体の後ろで組み、下に向かって引っ張るように伸ばします。3.さらに組んだ手を左右にゆらゆらを揺らしましょう。1.〜3.を繰り返すと、こりかたまった肩や背中、肩甲骨がほぐれ血行が良くなり、首のシワやむくみの解消につながります。また、顔ヨガもおすすめです。1.口を横に開き、口角を引き上げます。2.そのまま、首の縦筋が浮き上がるように力を入れます。3.力を入れる・ゆるめるを数回繰り返し、最後にふーっと顔全体の力を抜きます。顔の筋肉をほぐし鍛えることで、顔のたるみがなくなり、首のたるみジワも薄くなるでしょう。▼リンパの流れをよくするコリのほぐし方体内の余分な水分や老廃物を運ぶリンパは「体の下水管」とも呼ばれています。このリンパの流れをスムーズにすることで、むくみの原因となる余分な水分や、老廃物が体内にとどまることなく排泄(はいせつ)されるのです。しかし、毛細リンパ管には弁がないため、リンパ液の流れは不安定。そこで、リンパに沿ったマッサージで、その流れをうながすことができるわけです。1.肌に負担がかからないよう、首にあらかじめネック専用美容液か、なければ顔用の乳液やローションを塗ってすべりを良くしておきます。2.右手の中指と人差し指をあごの下からフェイスラインにそって左耳の下までなでます。同様に左手で右耳の下までやさしくなで、左右5回ずつを目安に行いましょう。3.次に、中指と人差し指で耳の下から鎖骨の上までなで下ろします。これも、左右5回ずつ行います。力を入れず、やさしく行うことがポイントです。リンパの流れを促し、首のシワの改善やくすみ・むくみをとる効果が期待できます。■まとめ加齢によって深くなっていく顔の表情ジワと違い、日頃の姿勢や生活習慣などが強く影響する「首のシワ」。一度ついてしまったら、首の皮ふの性質上、薄くするのは至難の業です。手遅れになる前に、こちらで紹介した予防法や生活改善をぜひ試してみてください。参考資料:・ 資生堂 ・第31回日本美容皮膚科学会「しわ治療の最前線」(順天堂大学浦安病院皮膚科 須賀康教授)・ 日本成人病予防協会 ・ DHC ・ 日本睡眠科学研究所(東京西川) ・ エスエス製薬 ・ 日本皮膚科学会 ・ J-STAGE ・ 農林水産省 ・ 厚生労働省
2020年08月04日