誰にでも忘れられない思い出の曲はあるものですが、特に自粛期間中は音楽に支えられていたという人も多いのでは?そこで、音楽との出会いで人生が変わった少年の実話を描いたオススメの感動作をご紹介します。それは……。各国で絶賛の『カセットテープ・ダイアリーズ』【映画、ときどき私】 vol. 308イギリスにある小さな町に暮らす16歳のパキスタン系少年ジャベド。夏のアルバイトを終え、9月からハイスクールに入学することになっていたが、同じ誕生日の幼なじみが充実した青春を過ごす姿を見て、孤独と不満を募らせる。それに加えてジャベドを悩ませていたのは、保守的な町の人たちからの移民に対する偏見、パキスタン家庭の伝統やルールから抜け出したいという思い。古い慣習を振りかざす父親に強い反発を感じていたジャベドは、いつしか人種差別や時代を反映させた詩を書いて過ごしていた。ところがある日、ブルース・スプリングスティーンの音楽と衝撃的な出会いをはたし、“自分の言葉”を見つけられなかった彼の世界は180度変わり始めることに……。2019年のサンダンス映画祭でのプレミア上映をはじめ、本国イギリスでも多くの観客と評論家を虜にした話題作。そこで、長年の思いを込めて本作を制作したこちらの方にお話をうかがいました。グリンダ・チャーダ監督『ベッカムに恋して』など数々のヒット作を手がけ、大英帝国勲章を授与されたこともあるチャーダ監督(写真・左)。今回は、アメリカの国民的アーティストにしてロック界の“ボス”とも称されているブルース・スプリングスティーン(写真・右)の大ファンであり、インド系移民としても主人公と同じ境遇だった監督に、自身の経験や作品の見どころなどについてお話いただきました。―まずは原作との出会いについて、教えてください。監督実は原作者のサルフラズ・マンズールと私は、もともと長い間友人関係にありました。なぜなら、私たちはいずれも10代でブルースの音楽と出会い、ブルースの大ファンだったからです。その後、彼が本を書くことを知り、読ませてもらったときには「これは素晴らしい本だし、私ならすごくいい映画を作れると思うけど、ブルースが乗らなければ無理ね」と伝えました。―そこから映画化までは、どのようにして話が進んでいったのでしょうか?監督幸運なことが起きたのは2010年。映画のプレミアでブルースがロンドンに来ていたので、サルフラズと私は普通のファンと同じようにカメラを手にレッドカーペットを見に行ったんですが、そのときになんとブルースがサルフランズに気がついて声を掛けてくれたのです。というのも、彼はどのコンサートでも一番前の列にいましたから(笑)。ただ、驚いたのは、ブルースが「君の本を読んだよ。実に美しい話だね」とコメントしてくれたこと。それを聞いて私は「ブルース・スプリングスティーンと映画の約束を5秒で取りつけるわ!」と思わず口走ってしまいました。さらに「この本を映画化したいの!お願い、助けて!」とまで言ってしまったのですが、なんと彼は「いい話だね。マネージャーと話して」と答えてくれたのです。そのおかげで、この映画が生まれることになりました。友人でもある原作者との作業は最高だった―奇跡的な始まりですね。その後、サルフラズさん本人と一緒に脚本を作っていくこととなりましたが、彼と一緒に仕事をしてみていかがでしたか?監督最初はサルフラズが自分の人生をベースにして書き、そのあと私が脚色を進めていくという流れになりました。もともと友達ですし、必要なことがあればすぐに聞ける環境だったので、彼との作業は最高でしたね。ただ、心配だったのは『ベッカムに恋して』と類似している物語に感じたところ。そのために、異なるテイストの作品になるような努力はしました。―ブルースさん本人にも脚本を送られたそうですが、何か感想やアドバイスはありましたか?監督マネージャーから、「僕はいいから、もう映画を作って大丈夫ですよ」というメッセージだけもらいました。映画が完成した際には、試写で何回か笑っている姿を見ることができて感動的でしたね。―劇中で使う曲に関するリクエストなどもなかった、ということですか?監督そうですね。彼からは特に意見もなく、基本的に好きなように映画を作らせてくれました。―では、監督自身が選曲にこだわった部分があれば、教えてください。監督曲はジャベドの物語にフィットするかどうかで選んだので、すごく有名な曲や使いたいと思った曲でもシーンに合わなければ使いませんでした。―なるほど。監督にもジャベドと同じように、人生に影響を与えた曲はありますか?監督それは、ブルースの「ジャングルランド」ですね。最初は映画とうまくハマらないと諦めていたのですが、曲を短くしてデモ行進のシーンと合わせて使うというアイディアを思いついたので、ブルースに曲を編集する許可をもらうために、ブロードウェイまで会いに行きました。そのときに、「演奏しているサックス奏者も感謝すると思うよ」といって承諾してくれたので、今回使うことができたのです。ブルースの音楽にはパワフルなメッセージがある―では、監督が思うブルースの曲が長年にわたって愛されている理由とは?監督まずは、いまの時代に重ねて聴くことのできるパワフルな歌詞と素晴らしい音楽であること。なかでも、劇中のジャベドも口にするブルースの歌詞で重要なメッセージは、「全員が勝たなければ、誰もが勝ったとは言えない」というものです。そこにあるのは「世界は一つ」という彼の哲学ですが、これは現代においても強いメッセージになっていると思います。そして、映画制作においては、魔法のような役割もはたしてくれました。あと、彼が歌っているのは、社会の隅っこに追いやられている人や助けを必要としている人たちのこと。だから、世界中にファンがいるんだと思いますし、彼が世界一のライブパフォーマーである、というのも大きいですよね。―ほかにも、制作するうえで苦労したことはありましたか?監督一番予測できなかったのは、イギリスの天気ですね(笑)。いつも雨が降っているし、寒くて風が強かったので、なかなか明るくて天気のいい日には撮影できませんでした。―確かにそれも大変ですね。監督自身についてもおうかがいしますが、ジャベドと同様に移民であるがゆえに、似たような経験をされたこともあったのでしょうか?監督私の作品にはすべて自分の経験が反映されていますが、それはなぜかというと、誰もが似ているところや共通点があるんだ、と世界に見せるような作品を作りたいからです。今回の主人公はアジア系のキャラクターではありますが、彼らが経験していることは普遍的なことでもありますから。私たちは葛藤から知識を得て、豊かになれる―ということは、劇中で描かれているような家族間の葛藤や親世代との価値観の違いにも悩んだことがあったということですか?監督私はそれを問題ととらえるよりも、「ギャップを祝福する」という見方をしています。なぜなら、私たちはそういった葛藤から知識を得て、より豊かになれるからです。たとえば、私の人生において運命を変えるような大きな出来事のひとつといえば、16歳のときに、人種差別に反対する運動「ロック・アゲインスト・レイシズム」の有名なコンサートに行ったときのこと。心配した両親から行かないように言われていたのですが、買い物に行くと嘘をついて参加しました。そのときに、人生で初めて、アジア系や黒人系、白人系などの人たちが一つになって反人種差別の声を上げている姿を見て、本当に感動したのです。その瞬間から私は政治的な考えを持つようになりましたが、これが私を形作ったイベントだと言えると思います。―素敵なお話をありがとうございました。それでは最後に、日本の観客にメッセージをお願いします。監督日本の文化もほかのアジア圏と同じように、親へのリスペクトを求められるところがあると思うので、自分がしたいことと、家族が自分に求めていることとのバランスを見つけていかなければいけないかもしれません。でも、私がこの映画を通して見せているのは、その両方が可能であるということ。つまり、自分の夢を叶えながら、両親を幸せにすることもできるのだ、ということです。本作の脚本と製作総指揮を務めている私の夫も日本の血が流れていますが、移民だとしても、親や言語、文化をリスペクトしながら、自分が育ってきた文化も大切にし、組み合わせることができるんだ、というのを感じてもらえたらうれしく思います。さわやかな感動に包まれる!青春時代ならではの葛藤や家族間に生まれる衝突、そして愛情といった普遍的な感情を描いた珠玉の音楽映画。ブルース・スプリングスティーンが贈る名曲の数々とともに、琴線に触れる感動を味わってみては?夢が詰まった予告編はこちら!作品情報『カセットテープ・ダイアリーズ』7月3日(金)より、TOHO シネマズ シャンテ 他全国ロードショー配給:ポニーキャニオン©BIF Bruce Limited 2019 ©Bend It Films
2020年07月01日映画『カセットテープ・ダイアリーズ』が、TOHOシネマズ シャンテ他にて2020年7月3日(金)に公開。監督は、『ベッカムに恋して』を手掛けたグリンダ・チャーダ。“音楽”との出会いで変わる、移民少年の青春音楽ムービー物語の舞台は、1987年イギリスの閉鎖的な田舎町。音楽と詩を書くことが好きな主人公の少年・ジャベドは、パキスタンの移民であることから人種差別を受けたり、保守的な親に価値観を押し付けられてらりと、鬱屈とした生活を送っている。ところがある日ジャベドは、そんな思春期のモヤモヤを吹き飛ばしてくれる、ブルース・スプリングスティーンの音楽と出会う。音楽の力で、平凡な少年の人生に勇気と希望をもたらす、青春ストーリーが始まるー。時代背景も落とし込んで本作の原作となったのは、英国ガーディアン紙で定評のあるジャーナリスト サルフラズ・マンズールの回顧録「Greetings from Bury Park: Race, Religion and Rock N’Roll(原題)」。軽やかなストリータッチにも関わらず、時代背景をしっかりと落とし込んでいるのが特徴で、映画内容にも当時のサッチャー政権の影響からなる移民排斥運動といった国内問題も、緻密に練り込まれている。80年代のポップな若者ファッションまた映画を彩る、登場人物達のファッションも忠実に再現。ポップなカラーリングをふんだんに取り入れた、80年代の若者ファッションが、当時の空気をエモーショナルに表現している。フレッシュな顔ぶれなおティーネイジャーの登場人物たちを演じるのは、若手実力派俳優。主人公のジャベドをヴィヴェイク・カルラ、そのガールフレンドのイライザをネル・ウィリアムズ、ジャベドの幼なじみ・マットを、『1917 命をかけ た伝令』「ゲーム・オブ・スローンズ」出演のディーン=チャールズ・チャ ップマンが演じる。詳細映画『カセットテープ・ダイアリーズ』公開日:2020年7月3日(金)※当初2020年4月17日(金)公開を予定していたが延期となった。監督:グリンダ・チャーダ脚本:サルフラズ・マンズール、グリンダ・チャーダ、ポール・マエダ・バージェスキャスト:ヴィヴェイク・カルラ、クルヴィンダー・ギール、ミーラ・ガナトラ、ネル・ウィリアムズ、アーロン・ファグラ、ディーン=チャールズ・チャップマン、ロブ・ブライドン、ヘイリー・アトウェル、デヴィッド・ヘイマンムビチケ発売日:2020年3月6日(金) 各上映劇場にて※一部劇場を除く※特製カセットテープ付き
2020年02月07日インド系の少女が女子サッカーに奮闘する姿を描いた『ベッカムに恋して』のグリンダ・チャーダ監督最新作で、パキスタン移民の少年がブルース・スプリングスティーンの音楽に影響を受けながら成長していく姿を描く『Blinded by the light』(原題)が、『カセットテープ・ダイアリーズ』として公開が決定した。1987年、イギリスの町ルートンで暮らすパキスタン系の高校生ジャベド。音楽と詩を書くことが好きな彼は、閉鎖的な街の中で受ける人種差別や、保守的な親に価値観を押し付けられる鬱屈とした生活から抜け出したくてたまらない。だがそんなある日、そのモヤモヤを全てぶっ飛ばしてくれる、ブルース・スプリングスティーンの音楽と衝撃的に出会い、彼の人生は変わり始める――。2019年のサンダンス映画祭でプレミア上映され、観客と評論家から大絶賛された本作は、英国「ガーディアン」紙で定評のあるジャーナリスト、サルフラズ・マンズールの回顧録「Greetings from Bury Park:Race, Religion and Rock N’ Roll」(原題)を基に描いた青春音楽ドラマ。当時のサッチャー政権の影響を受けた移民排斥運動などのイギリス国内の問題が、軽やかなストーリーの中に緻密に盛り込まれ、偏見や父親との確執、友情、恋愛、そして将来の夢へと懸命に前へ進もうとするティーンの心情を爽やかに映し出している。この度公開された場面写真では、主人公ジャベド(ヴィヴェイク・カルラ)がガールフレンドのイライザ(ネル・ウィリアムズ)とウォークマンを聴くツーショットや、部屋一面に貼られたスプリングスティーンのポスターを背に詩を書く姿、彼の音楽と出会った時の衝撃を表現した、アーカイブ映像と共に歌詞を建物に映し出したシーンなどが切り取られている。また、『1917 命をかけた伝令』や「ゲーム・オブ・スローンズ」への出演で注目を集めているディーン=チャールズ・チャップマンがジャベドの幼なじみマット役で出演しており、80年代の若者ファッションに身を包む姿も切り取られている。『カセットテープ・ダイアリーズ』は4月17日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2020年02月04日