東京・竹橋にある東京国立近代美術館で『ゲルハルト・リヒター展』が開かれています。ゲルハルト・リヒター(1932~)はドイツ出身のアーティスト。世界で高く評価され、オークションでも作品が高額で取り引きされている現代アートの巨匠です。リヒター作品はなぜ人気があり、何がスゴいのでしょう?プレス内見会で取材してきました。どんな展覧会?© Gerhard Richter 2022 (07062022)【女子的アートナビ】vol. 252『ゲルハルト・リヒター展』では、2022年に90歳を迎えたアーティスト、ゲルハルト・リヒターの初期作から最新のドローイングまでの作品122点を展示。60年にわたる画業のなかで手がけた油彩画や写真、ドローイング、ガラスや鏡などを用いた作品などが一堂に集まっています。本展の注目ポイントは、作家本人にとって大切な作品が揃っている点です。リヒター自身が手放さず、手元に残してきた本人所蔵の作品と、ゲルハルト・リヒター財団コレクションを中心に、かなり見ごたえある作品が展示されています。また、会場構成についても作家本人の希望を反映。リヒターにとって大事な作品を、本人の希望するスタイルで展示した、なんとも贅沢な展覧会です。スゴい経歴リヒターは、ドイツ東部のドレスデン生まれ。芸術系の大学を出たあと壁画制作などを手がけていましたが、1961年、ベルリンの壁ができる直前に西ドイツへ移住。東独でのキャリアを捨て、デュッセルドルフ芸術アカデミーで再び学びはじめます。1964年には初個展を開催。さらに、1971年にはデュッセルドルフ芸術アカデミーの教授に就任し、その後はパリやアメリカなどの名だたる美術館で個展を開催していきます。1997年にはヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞。その後も数々の賞をとり、紹介しきれないほどの実績があります。スゴい値段経歴もスゴいですが、作品のお値段も飛びぬけています。2012年に開かれたオークションでは、存命作家の最高落札額(当時/2132万ポンド=約27億円)を更新。近年でも、さまざまなオークションで30億、40億など高額の落札額が報道され、世界のアート界で常に注目を集めています。スゴい作品――経歴も作品価値もスゴいことがわかりました。でも、リヒターの作品は、抽象的な絵もあれば具象的な絵もあって、作品としてどこがスゴいのか、素人にはわかりづらい作家です。東京国立近代美術館・主任研究員の桝田倫広さんは、リヒター作品について次のように説明しています。桝田さんリヒターはどうスゴいのか、わかりやすく言ってください、という質問を何度かいただきます。いつも、このような問いにどうしようかと困るのです。一言では言い表せない多様な問題を含んでいることこそ、彼の作品の特徴と言えるからです。――実際、リヒターについての本や論文なども数多くあり、本展の図録にもさまざまな解説が載っています。リヒター作品は、“一言で説明できないほどスゴい”ことがわかります。必見!“最後の絵画”では、ここからは作品について見てみます。リヒター作品には、いくつかジャンルがあります。例えば、「フォト・ペインティング」は、新聞や雑誌に載った写真などを正確にうつしとるように描いたシリーズ。「グレイ・ペインティング」は、灰色の絵具でキャンバスを塗り込めるシリーズ。このグレイのシリーズからつながってできたのが「アブストラクト・ペインティング」(抽象絵画)シリーズです。リヒターは、自作の大きなヘラをつかってキャンバス上で絵具を引きずるようにのばしたり削ったりしながら、独自の「アブストラクト・ペインティング」を生み出しました。この抽象絵画シリーズで、今回もっとも注目されているのが、2017年に制作された作品《アブストラクト・ペインティング》。本記事一枚目の画像です。本作は、作家本人が「これを最後にもう絵画は描かない」と宣言したメモリアル的な作品。ぜひ、じっくりご覧になってみてください。ガラス作品はどう見る?――リヒター作品のなかで、「ガラスと鏡」をつかったシリーズがあります。このような作品は、単にガラスを見ればいいのか、ガラスに映っている自分の姿を見るものなのか、ちょっと迷うかもしれません。桝田研究員は、次のように解説しています。桝田さんリヒター作品の根本的な原理は、「見るとはどういうことか。イメージが表れるとはどういうことか。それらの条件自体を問うもの」と言えます。そのことが端的に表れているのが、ガラスや鏡の作品です。この作品の前に立つと、ガラス越しに壁が見え、自分たちの姿も、ガラスそのものも見えます。ガラスに映し出されたものに何を見いだすかは、私たちが“見る”ということの複雑な営み次第。その営みは、私たちの経験や慣習、何を見たいと欲しているか、によって大きく左右されます。――ガラス作品の鑑賞方法、かなり奥が深いですね。ぼんやり見ているとただのガラスですが、「何を見たいと欲しているか」と考えると、とたんにハードルが上がります。ぜひ、ガラスや鏡の作品の前で、いろいろ感じてみてください。アウシュヴィッツの写真をもとに制作…本展で最大の見どころは、2014年に制作された《ビルケナウ》という4点組の絵画です。一見すると、シンプルな抽象絵画ですが、この絵の下層にはアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所で隠し撮りされた4枚の残酷な記録写真(死体などが写っています)のイメージが描かれています。しかも、その写真は絵画のすぐ隣に展示されているのです。鑑賞者は、絵画の下に隠された残酷なイメージを想像しながら、リヒターの作品と向き合うことになります。この作品の前に立つと、桝田研究員が教えてくれた「見るとはどういうことか。自分は何を見たいと欲しているのか」という問いを突き付けられる気がします。二度とないかも!何が描いてあるのかわからない抽象絵画や、ただガラスだけが並んでいるようなリヒターの作品は、ぼんやり見ていると「わからない・つまらない・難しい」と感じてしまうかもしれません。ただ、リヒター本人も、「優れた絵画は理解できない」と述べているので、理解できなくてもいいようです。「見るとはどういうことか」と思いながら作品と向き合ってみる。それだけで、自分のなかに何かが残るような気がします。これほど充実したリヒターの大規模展覧会を日本で見られる機会は、もう二度とないかもしれません。かけがえのない鑑賞体験を、ぜひ美術館で味わってみてください。Information会期:~10月2日(日)※休館日は月曜日(ただし9月19日は開館)、9月20日(火)会場:東京国立近代美術館1F企画展ギャラリー開館時間:10:00-17:00(金曜・土曜は10:00-20:00)*入館は閉館30分前まで※最新情報などの詳細は展覧会特設サイトをご覧ください。お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
2022年07月31日現代美術でもっとも重要な芸術家のひとり、ゲルハルト・リヒター。今年で90歳を迎えた彼の日本では16年振り、東京の美術館では初となる大規模個展が6月7日(火)に東京国立近代美術館にて開幕。10月2日(日)まで開催されている。ゲルハルト・リヒターは1932年、ドイツ東部のドレスデン生まれ。第二次世界大戦後、社会主義体制が敷かれた東ドイツで壁画家としてのキャリアを積んでいたリヒターは、ベルリンの壁が作られる直前の1961年に西ドイツへ移住。デュッセルドルフ芸術アカデミーで学び、当初は資本主義リアリズムを掲げて大学の仲間たちとパフォーマンスなども含めた活動を繰り広げていたが、徐々に独自の画風を確立。1970年代からはドイツをはじめ各国で個展が開催されるようになり、次第に世界の現代美術を代表する存在としてみなされるようになっていく。同展は60年にわたるリヒターの活動を、ゲルハルト・リヒター財団の収蔵品を中心に122点で振り返る展覧会。展示作品のうち85点以上が日本初公開となる。6月6日に行われた記者発表会の様子開幕に先立ち行われた記者発表会にて、同展を担当した東京国立近代美術館の桝田倫広主任研究員は、「リヒターの作品はひと言でいうとどう凄いのか、という質問をよくされるのですが、むしろひと言では言い表せない多様な問題系を含んでいることこそが彼の作品の特徴。あえていうなら『見るということはどういうことか、イメージが現れるとはどういうことか』という、私たちの認識の根源的な条件自体を問うものであるといえるのではないかと思います」とリヒターの芸術について解説した。展示風景より中央は《8枚のガラス》2012年© Gerhard Richter 2022 (07062022)会場構成については、リヒターが自ら展示室の模型を作り、担当学芸員たちと綿密に展示プランを練ったという。明確な章立てや鑑賞の順路は定められておらず、鑑賞者は自由に会場を回遊することができる。展示室に入るとすぐ目に飛び込んでくるのは立体作品《8枚のガラス》だ。異なる角度にガラス板が配置されたこの作品では、作品自体はまったく動かないにもかかわらず、鑑賞者や周辺の人々が動くことでガラスに映し出された幾重ものイメージがさまざまな形で変容していく。「リヒターのガラスや鏡を使う作品において、ガラスや鏡は網膜のメタファーであると同時に絵画のメタファーであると思います。目の前のものをなんでも写し出すことのできる鏡ですが、その写し出されたものに何を見出すかは私たち次第。私たちの経験や慣習、何を見たいと欲しているかで大きく左右されます。リヒターの「見る」は光学的(Optical)な営みではなく、どれほど「見る」ということが制度的なものに縛られているかということを、抽象や具象を行き来し、さまざまな素材を用いながら提示しているのです」(桝田さん)長いキャリアのなかで、さまざまなバリエーションの作品を制作し、自らのスタイルを更新し続けてきたリヒター。会場ではその代表的なシリーズが紹介されている。1960年代から取り組んでいた「フォト・ペインティング」は、雑誌や新聞に掲載された写真や、私的な写真をそのままキャンバスに描き写すことで、主題、構図、色彩の選択といった絵画における決まり事を排除し、対象を可能な限り客観視しようという試みだ。例えば下の《モーターボート(第1ヴァージョン)》は、ピンボケした写真のようも見えるが、近づいて見ると刷毛目がしっかりと確認できる。写真を忠実に再現することによって、絵画作品が筆跡の集積であることを際立たせている。《モーターボート(第1ヴァージョン)》1975年© Gerhard Richter 2022 (07062022)展示風景より手前:《モーリッツ》2000/2001/2019年© Gerhard Richter 2022 (07062022)《ルディ叔父さん》2000年© Gerhard Richter 2022 (07062022)「アブストラクト・ペインティング」は、1976年以降、40年以上描かれているリヒターの代表的なシリーズのひとつ。巨大なキャンバスに、絵の具を重ね、スキージ(細長いへら)で剥ぎ取った作品は、偶然が生み出した色彩の重なりに目を奪われる。《アブストラクト・ペインティング》2017年© Gerhard Richter 2022 (07062022)《アブストラクト・ペインティング》1992年© Gerhard Richter 2022 (07062022)60年代後半から取り組んだ「グレイ・ペインティング」もまた、リヒターを語る上で重要なシリーズ。さまざまな筆触が見られる灰色一色で塗り固めれた作品は、リヒターが「無」の概念を示そうと試行錯誤したものだ。左:《グレイ(樹皮)》1973年右:《グレイ》1973年© Gerhard Richter 2022 (07062022)グレイ・ペインティングと対照的な位置づけに置かれているのが「カラーチャート」のシリーズ。《4900の色彩》は、既製品である色見本(カラーチャート)の色彩を組み合わせた作品。「この作品は、画材屋で販売されていた色見本を描くことから始まりました。つまり、抽象的なパターンではあるものの、もともとは現実に存在していたものを描いた具象絵画であったとも言えます」と枡田さんは解説する。《4900の色彩》2007年© Gerhard Richter 2022 (07062022)そして、展覧会の見どころのひとつが、2014年に制作された《ビルケナウ》のシリーズだ。《ビルケナウ》は黒と白、赤と緑を基調とした4点組の抽象絵画だが、もともとリヒターは、ホロコーストの舞台となったアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所で隠し撮りされた写真を、キャンバスに投影し忠実に描いていた。それを断念し、その上から「アブストラクト・ペインティング」の手法で絵の具を重ね、剥ぎ取ったのがこの作品。そのため一見したところではその惨状を確認することはできない。《ビルケナウ》2014年© Gerhard Richter 2022 (07062022)会場では、この4枚の作品の向かい側に、全く同じサイズの4枚の複製写真を展示し、さらにその横には大きな鏡の作品《グレイの鏡》を配置。《ビルケナウ》や鏡に映り込む様々な要素を各々が好む形で鑑賞することができる。リヒターにとって、ホロコーストをテーマにした作品はキャリア初期からの課題であり、何度か取り組みつつも断念してきたという。桝田さんは、「アウシュビッツのイメージを絵の具で抹消、あるいは重ねていくことで、わたしたちの眼差しから、それらを守ろうとしているかのようにも捉えられる」と語り、さらに「作品だけでなく、複製写真やグレイミラーを伴う複雑な展示スタイルもあいまって、発表時から現在までさまざまな解釈がなされています」と続けた。《ビルケナウ》2014年と《グレイの鏡》© Gerhard Richter 2022 (07062022)このほかにも、デジタルプリントを使った「ストリップ」シリーズ、写真の上に油彩を施す「オイル・オン・フォト」シリーズ、ガラス板に塗料を転写している「アラジン」シリーズなど、リヒターはさまざまな表現を試みている。《ストリップ》2013〜2016年© Gerhard Richter 2022 (07062022)展示風景より「オイル・オン・フォト」シリーズ© Gerhard Richter 2022 (07062022)展示風景より 「アラジン」シリーズ © Gerhard Richter 2022 (07062022)《2021年10月5日》2021年© Gerhard Richter 2022 (07062022)実は、リヒターは2017年に絵画作品の制作中止を宣言している。しかしながら現在もドローイングを描き続けており、90歳を迎えた今なお創作意欲にあふれ、描かずにいられないことを伺い知ることができる。会場では、2021年に描かれた25点を展示。リヒターのドローイングがここまでまとまって紹介されるのは日本では初めてのことだ。展示風景より© Gerhard Richter 2022 (07062022)リヒターの様々なシリーズの作品を意識して「見る」ことで、私たちはいかに無意識に物事を視界に入れていたのかを自覚することになるだろう。リヒターの作品に何を「見る」のか、それは鑑賞者に委ねられている。取材・文:浦島茂世撮影:源賀津己ぴあでは、公式図録と音声ガイドの無料貸し出し付き『ゲルハルト・リヒター展』招待券のプレゼントを掲載中!皆様、奮ってご応募下さい!【開催情報】『ゲルハルト・リヒター展』6月7日(火)~10月2日(日)、東京国立近代美術館にて開催
2022年06月15日『ポーラ美術館開館20周年記念展モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に』が9月6日(火)までポーラ美術館で開催中だ。この度、本展の開催を記念して6月18日(土)、19日(日)、プロデューサー・立川直樹を進行役に迎え、現代アートと音楽が融合した鑑賞イベント「音楽の情景~JOURNEY TO THE FOURTH WORLD」を開催する。本展はクロード・モネやルノワールなどの印象派から、ゲルハルト・リヒターやアニッシュ・カプーア、杉本博司などの現代美術作品まで、ポーラ美術館の幅広いコレクションを諦観できる展覧会だ。ポーラ美術館は2002年9月、神奈川県箱根町に開館。開館当初はポーラ創業家二代目・鈴木常司が収集した印象派絵画や19世紀後半から20世紀前半の絵画、化粧道具のコレクションなどを核として精力的に展覧会を行ってきた。近年は美術館の敷地内に野外彫刻や森の遊歩道、現代美術ギャラリーの設置や、20世紀以降の美術作品の収集を強化するなど、その活動を拡充させている。発表されたイベントは、両日ともに立川による展示作品からインスパイアされたBGMとともに作品を鑑賞可能。高級オーディオブランド「テクニクス」による最高峰の機材で、臨場感あふれる音楽を楽しんでほしい。<立川直樹・コメント>絵画と音楽には親和性があります。一瞬にして時空を超えた世界に人を連れていきイマジネーションを喚起させる力。それが共鳴した時にマジカルなものになり、未知なる領域への旅が始まります。独自のバイブレーションを持つ箱根に自然と美術の共生を謳って建てられたポーラ美術館の中で僕はその旅の案内人になりたいと思いました。音楽の細かいニュアンスまで見事に再生する力を持ったテクニクスのプレミアム・オーディオを使用して時代もジャンルも超えた音楽が絵画と共鳴します。忘れ得ぬ2日限りの旅の御案内です。■展示情報『ポーラ美術館開館20周年記念展モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に』4月9日(土)~9月6日(火)開催会場:ポーラ美術館公式サイト: <展示内イベント>「音楽の情景~JOURNEY TO THE FOURTH WORLD」6月18日(土)、19日(日)17時~19時集合場所:ポーラ美術館 展示室2(16:30までに入館後、17:00までに入室)定員:各日50名費用:各日5,000円(消費税・当日入館料込)参加方法:要事前申込6月18日(土): 月19日(日):
2022年05月25日ポンピドゥー・センター(パリ、1977年)、ニューヨーク近代美術館(2002年)、テート・モダン(ロンドン、2011年)といった世界の名だたる美術館で個展を開催。現代で最も重要な画家のひとりであるドイツ生まれの巨匠、ゲルハルト・リヒター。日本の美術館では実に16年振り、東京の美術館では初となる大規模個展が6月7日(火)より東京国立近代美術館で開催される。これまで、油彩画、写真、デジタルプリント、ガラス、鏡など多岐にわたる素材を用い、具象表現と抽象表現を行き来しながら、人がものを見て認識するという原理に一貫して取り組み続けてきたリヒター。2012年のオークションで存命作家の最高落札額(当時/2132万ポンド=約27億円)を更新するなど、世界のアートシーンで常に注目を集めてきた。同展では、ホロコーストを主題とした、リヒター自身にとっても重要な位置を占める近年の大作《ビルケナウ》が日本初公開されるほか、初期のフォト・ペインティングからカラーチャート、グレイペインティング、アブストラクト・ペインティング、オイル・オン・フォト、そして最新作のドローイングまで、リヒターがこれまで取り組んできた多種多様な作品を紹介。リヒターが手放さず、大切に手元に置いてきた財団コレクションおよび本人所蔵作品を中心に、約110点を展観する。展覧会場では、特定の鑑賞順に縛られず、来場者が自由にそれぞれのシリーズを行き来しながら、リヒターの作品と対峙することができる空間が創出されるという。2022年に90歳を迎えたリヒター。60年にわたる画業において、一貫したテーマのなかで多様な作品を生み出し続けてきたリヒターの作品世界と静かに向き合ってみたい。ゲルハルト・リヒター《モーターボート(第1ヴァージョン)(79a)》1965年ゲルハルト・リヒター財団蔵(c)Gerhard Richter 2022 (07062022)ゲルハルト・リヒター《頭蓋骨(548-1)》1983年ゲルハルト・リヒター財団蔵(c)Gerhard Richter 2022 (07062022)ゲルハルト・リヒター《2021年6月1日》2021年ゲルハルト・リヒター財団蔵(c)Gerhard Richter 2022 (07062022)Photo: Dietmar Elger, courtesy of the Gerhard Richter Archive Dresden(c) Gerhard Richter 2022 (07062022)【開催概要】『ゲルハルト・リヒター展』会期:2022年6月7日(火)~ 2022年10月2日(日)会場:東京国立近代美術館開館時間:10:00~17:00、金土は20:00まで(入館は閉館30分前まで)※ただし、9月25日(日)~10月1日(土)は20:00まで開館休館日:月曜日(9月19日、9月26日は開館)、9月27日(火)※9月13日開館情報修正料金:一般2,200円、大学1,200円、高校700円展覧会公式サイト:
2022年05月11日ポーラ美術館では、9月6日(火)まで会期中無休で『ポーラ美術館開館20周年記念展モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に』が開催されている。クロード・モネやルノワールなどの印象派から、ゲルハルト・リヒターやアニッシュ・カプーア、杉本博司などの現代美術作品まで、ポーラ美術館の幅広いコレクションを諦観できる展覧会だ。ポーラ美術館は2002年9月、神奈川県箱根町に開館。開館当初はポーラ創業家二代目・鈴木常司が収集した印象派絵画や19世紀後半から20世紀前半の絵画、化粧道具のコレクションなどを核として精力的に展覧会を行ってきた。近年は美術館の敷地内に野外彫刻や森の遊歩道、現代美術ギャラリーの設置や、20世紀以降の美術作品の収集を強化するなど、その活動を拡充させている。展覧会場入口同展はこれまでのコレクションや、新収蔵した作品を「光」をテーマに紹介する展覧会。印象派の画家たちから、現在進行系で活躍する作家まで、さまざまな形での「光」の表現を目にすることができる。二部構成となる同展の第一部は、これまでのコレクションと、それを補強する形で加わった新収蔵作品を紹介。開館以来人気のルノワールやモネ、マティスなどの19世紀末から20世紀初頭のフランス絵画のほか、関根正二や松本竣介、岸田劉生などの日本人作家の作品も展示されている。展覧会はルノワールの《レースの帽子の少女》の展示からスタートする。同作品はポーラ美術館の開館時から人気の作品だ。ピエール・オーギュスト・ルノワール《レースの帽子の少女》1891年ポーラ美術館蔵マティスの《オリーブの木のある散歩道》は、マティスがシニャックの誘いでサン・トロペに滞在し、色彩と造形のヒントを得たあとに制作した新収蔵作品。この作品を描いた後、マティスはサロン・ドートンヌで作品を発表し、それがフォーヴィズムの発端となった。アンリ・マティス《オリーブの木のある散歩道》1905年 ポーラ美術館蔵展示風景より Photo (C)Ken KATO展示風景より Photo (C)Ken KATO今年生誕110年を迎える松本竣介の作品など、日本の近代洋画も新しくコレクションに加わっている第二部は、通常はコレクション展示を行う4つの展示室を使い、近代と現代を結ぶ新収蔵作品を展示する。白髪一雄をはじめとした戦後日本の前衛美術や、アニッシュ・カプーア、ドナルド・ジャッドら現代の作家まで網羅した構成となっている。展示風景よりPhoto (C)Ken KATO左:白髪一雄《泥錫》1987年、右:《波濤》1987年いずれもポーラ美術館蔵そして、この展覧会の見どころ、モネとリヒターを組みわせた展示室へ。ゲルハルト・リヒター《抽象絵画(649-2)》は、リヒターの代表的なシリーズ「抽象絵画」の代表作の一つ。巨大なキャンバスに、スキージ(へら)で塗り、そして削られた絵の具が複雑な層となっている。ポーラ美術館の代表作のひとつ、モネの《睡蓮の池》と並べると調和しあっているように見えるから不思議だ。左:ゲルハルト・リヒター《抽象絵画(649-2)》1987年右:クロード・モネ《睡蓮の池》1899年 いずれもポーラ美術館蔵ゲルハルト・リヒター《抽象絵画(649-2)》1987年(部分)ポーラ美術館蔵展示風景よりまた、リヒターの作品は、ハマスホイとも調和する。「ハマスホイとリヒター」と名付けられたセクションでは、デンマークの画家、ヴィルヘルム・ハマスホイの《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》と、ゲルハルト・リヒターのフォト・ペインティングシリーズの一点《グレイ・ハウス》の2作品のみが展示されている。室内を描いたハマスホイと室外を描いたリヒター、国も時代も異なる画家の作品だが、どちらも静謐で、呼応しあっているように見える。左:ヴィルヘルム・ハマスホイ《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》1899年右:ゲルハルト・リヒター《グレイ・ハウス》1966年いずれもポーラ美術館蔵 Photo (C)Ken KATOヴィルヘルム・ハマスホイ《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》1899年 ポーラ美術館蔵ゲルハルト・リヒター《グレイ・ハウス》1966年 ポーラ美術館蔵また、杉本博司の最新シリーズ「Opticks」シリーズもポーラ美術館のコレクションに加わっている。本シリーズはプリズムを通した光をポラロイドフィルムで撮影し、デジタル技術で大判プリントに仕上げた連作だ。杉本博司「Opticks」シリーズ 2018年 ポーラ美術館蔵(C)Ken KATOポーラ美術館は、2032年の開館30周年に向けて、さらなるコレクションの拡充を目指しているそう。この展覧会はこれまでの美術館活動の集大成であり、そしてこれからに向けての経過報告の展覧会でもある。ぜひ一度、ポーラ美術館の「いま」を確認しに、箱根に足を伸ばしてみよう。取材・文:浦島茂世【開催情報】『ポーラ美術館開館20周年記念展モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に』4月9日(土)~9月6日(火)、ポーラ美術館にて開催
2022年04月29日ポーラ美術館では、2022年4月9日から2022年9月6日まで、開館20周年記念展「モネからリヒターへ―新収蔵作品を中心に」を開催中です。本展を企画するにあたり、主要なテーマを「光」としました。「光」をテーマとした現代の美術作品を収集・公開していくことは、印象派の絵画をコレクションの重要な起点のひとつに据えるポーラ美術館にとって大切なミッションです。クロード・モネをはじめとする印象派の画家たちは光の表現を追究していますが、ゲルハルト・リヒターやケリス・ウィン・エヴァンスなどの現代の作家たちの作品にも、光への強い関心をうかがうことができます。彼らの作品に表れる「光」とは、単に造形的な意味だけでなく、現在を照らし出す「光」、あるいは私たちが持続可能な未来へと進むための道標となる「光」という意味も内包していると言えるでしょう。コロナ禍や緊迫する国際情勢により暗雲が立ち込める現代の状況の中で、作品からほとばしるエネルギーと勢い、そして明るい「光」は、多くの人に前進する勇気を与えるきっかけになるのではないでしょうか。本展覧会では、ポーラ美術館のコレクションの「現在(いま)」をご紹介するとともに、美術館の未来とコレクションの可能性を探ります。■展示風景<第1部>第1章 光のなかの女たち第2章 水の風景、きらめく光第5章 放たれた光彩第8章 松本峻介<第2部>第10章 戦後日本の抽象第11章 物質性の探究第12章 色彩と抽象第14章 ハマスホイとリヒター第16章 杉本博司第17章 三島喜美代すべて©Ken KATO■展覧会概要ポーラ美術館開館20周年記念展「モネからリヒターへ―新収蔵作品を中心に」会期:2022年4月9日(土)~9月6日(火)会 場:ポーラ美術館 展示室1~5、アトリウム ギャラリー、アトリウムロビー、森の遊歩道主 催:公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館出品点数:絵画、版画、彫刻他 約120点おもな出品作家:<第1部 コレクション+新収蔵作品>ベルト・モリゾ、クロード・モネ、ピエール・オーギュスト・ルノワール、 ロベール・ドローネー、ニコラ・ド・スタール、フェルナン・レジェ、ベン・ニコルソン、 アンリ・マティス、レオナール・フジタ(藤田嗣治)、関根正二、松本竣介、里見勝蔵<第2部 新収蔵作品>ヴィルヘルム・ハマスホイ、ジャン・デュビュッフェ、モーリス・ルイス、ドナルド・ジャッド、 ヘレン・フランケンサーラー、パット・ステア、ゲルハルト・リヒター、アニッシュ・カプーア、ケリス・ウィン・エヴァンス、ロニ・ホーン、スーザン・フィリップス、山口長男、山田正亮、 難波田龍起、猪熊弦一郎、斎藤義重、白髪一雄、李禹煥、田中敦子、中西夏之、中林忠良、 杉本博司、三島喜美代展覧会特設サイト:■ポーラ美術館 森の遊歩道2013年7月、ブナやヒメシャラが群生する富士箱根伊豆国立公園内に開設された遊歩道では、四季折々のさまざまな動植物や彫刻作品に出会いながら、森林浴をお楽しみいただけます。遊歩道の全長は約1km、散策の所要時間は 約40 分です。開放時間:9:00~16:30 ※天候により、閉鎖する場合がございます。■ポーラ美術館について2002 年に「箱根の自然と美術の共生」をコンセプトに神奈川県箱根町に開館。印象派から20世紀にかけての西洋絵画を中心としたコレクションを核とする展覧会を開催する一方で、現代美術の第一線で活躍する作家たちの作品も展示し、同時代の表現へと展望を拡げている。富士箱根伊豆国立公園という立地を生かした森の遊歩道では四季折々の豊かな自然を楽しめる。開館時間︓午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)休館日︓会期中無休 ※悪天候による臨時休館あり所在地︓神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山 1285TEL︓0460-84-2111入館料:大人1,800円/シニア割引(65歳以上)1,600円/大学・高校生1,300円中学生以下無料/障害者手帳をお持ちのご本人及び付添者(1名まで)1,000円※すべて税込 団体割引、各種前売り券による割引あり公式サイト:企業プレスリリース詳細へ本記事に掲載しているプレスリリースは、株式会社PR TIMESから提供を受けた企業等のプレスリリースを原文のまま掲載しています。FASHION HEADLINEが、掲載している製品やサービスを推奨したり、プレスリリースの内容を保証したりするものではございません。掲載内容に関するお問い合わせは、株式会社PR TIMES()まで直接ご連絡ください。
2022年04月20日エスパス ルイ・ヴィトン大阪は、開催中のゲルハルト・リヒターの作品を紹介する「Abstrakt」展の会期を延長いたします。「Abstrakt」展は、4月17日を最終日としておりましたが、ご好評につき、5月15日までと変更させていただきます。世界各地のエスパス ルイ・ヴィトンで展開される「Hors-les-murs (壁を越えて)」プログラムの一環として企画された本展では、フォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵作品から選び抜かれた作品を展示。東京、ミュンヘン、ヴェネツィア、北京、ソウル、そして大阪の各エスパスでは、フォンダシオンのミッションを実現し、国際的なプロジェクトを通じてより多くの人々に所蔵作品に触れる機会を提供することを目指しています。フォンダシオン ルイ・ヴィトンは、エスパス ルイ・ヴィトン大阪のために、コレクションからリヒターの18点の抽象作品を特に選び出し、30年以上にわたる創作活動を辿り直します。そのうちの2作品、《940-4 Abstraktes Bild(アブストラクト・ペインティング) 》と《941-7 Abstraktes Bild (アブストラクト・ペインティング) 》(2015年)は、今回が初公開となります。アーティストについてゲルハルト・リヒターは、ドイツのドレスデン近郊のノイシュタットで1932年に生まれ、1961年までそこで過ごしました。まず1951年から1956年までドレスデン美術大学(Kunstakademie Dresden)で、その後1961年から1963年までデュッセルドルフ美術アカデミー(Kunstakademie Düsseldorf)で学びました。現役の最も重要な画家の1人とみなされているリヒターは、過去50年間の作品で国際的な名声を得ており、数々の世代に影響を及ぼしてきました。これまでに、2000年のノルトライン=ヴェストファーレン州の州賞(ドイツ)、1997年の高松宮殿下記念世界文化賞(日本)、1997年の第47回ヴェネツィア・ビエンナーレでの金獅子賞(イタリア)、1988年のゴスラー市のカイザーリング芸術賞(ドイツ)、1985年のオスカー・ココシュカ賞(オーストリア)といった数々の賞を受賞しています。2002年のニューヨーク近代美術館(米国)での「Forty Years of Painting」を皮切りに、リヒターの作品を取り上げる数回の回顧展も開催されてきました。2011年 - 2012年には、欧州の3つの美術館、テート・モダン(イギリス、ロンドン)、新ナショナルギャラリー(ドイツ、ベルリン)、国立近代美術館 - ポンピドゥー・センター(フランス、パリ)がリヒターの作品のパノラマ展を開催しました。フォンダシオン ルイ・ヴィトンについてフォンダシオンルイ・ヴィトンは現代アートとアーティスト、そして現代アーティストのインスピレーションの源となった重要な20世紀の作品に特化した芸術機関です。フォンダシオンが所蔵するコレクションと主催する展覧会を通じ、幅広い多くの人々に興味を持っていただくことを目指しています。カナダ系アメリカ人の建築家フランク・ゲーリーが手掛けた建物は、既に21世紀を象徴する建築物として価値を認められており、芸術の発展に目を向けたフォンダシオンの独創的な取組みを体現しています。2014年10月の開館以来、600万人を超える来館者をフランス、そして世界各地から迎えてきました。フォンダシオンルイ・ヴィトンは、本機関にて実施される企画のみならず、他の財団や美術館を含む、民間および公共の施設や機関との連携においても、国際的な取組みを積極的に展開していくことを掲げてきました。とりわけモスクワのプーシキン美術館とサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館(2016年の「Icons of Modern Art: The Shchukin Collection」展、2021年の「The Morozov Collection」展)やニューヨーク近代美術館(「Being Modern: MoMA in Paris」展)、ロンドンのコートールド美術研究所(「The Courtauld Collection. A Vision for Impressionism」展)などが挙げられます。また、フォンダシオンは、東京、ミュンヘン、ヴェネツィア、北京、ソウル、大阪に設けられたエスパスルイ・ヴィトンにて開催される所蔵コレクションの展示を目的とした「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムのアーティスティック・ディレクションを担っています。これらのスペースで開催される展覧会は無料で公開され、関連す るさまざまな文化的コミュニケーションを通じてその活動をご紹介しています。ゲルハルト・リヒター「Abstrakt」展会期:2021年11月19日 - 2022年5月15日開館時間:12:00-20:00休館日はルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋に準じます。入場無料会場内の混雑防止のため、入場をお待ちいただく場合がございますエスパス ルイ・ヴィトン大阪542-0085大阪市中央区心斎橋筋2-8-16ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋 5Fお問合せ先:T 0120 00 1854contact_jp@louisvuitton.comご来場の際は、事前のご予約をお勧めしております。ご予約サイト:(画像クレジット)GERHARD RICHTER – ABSTRAKTCourtesy of Fondation Louis Vuitton©Gerhard RichterPhoto credits: ©Keizo Kioku/Louis Vuitton企業プレスリリース詳細へ本記事に掲載しているプレスリリースは、株式会社PR TIMESから提供を受けた企業等のプレスリリースを原文のまま掲載しています。FASHION HEADLINEが、掲載している製品やサービスを推奨したり、プレスリリースの内容を保証したりするものではございません。掲載内容に関するお問い合わせは、株式会社PR TIMES()まで直接ご連絡ください。
2022年03月25日ポーラ美術館の開館20周年記念展「モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に」が4月9日(土)~9月6日(火)に渡り、同美術館で開催される。2002年9月6日に開館したポーラ美術館は開館以来、創業家2代目の鈴木常司(1930-2000)が戦後約40年をかけて収集したコレクションを公開し、これを基盤としてさまざまな企画展を開催。2012年の開館10周年を機に、当館は森の遊歩道の整備と開放、野外彫刻の設置、現代美術ギャラリーの開設、体験型の展示の開催、ラーニング・プログラムの実施など、その活動を広げてきた。また、近年では従来のコレクションに加えて、20世紀から現代までの美術の展開を跡づけるために重要な作品の収集を行っています。本展覧会は、鈴木常司が収集したコレクションと、近年新収蔵した作品を合わせて紹介する初の機会となる。本展の企画にあたり、主要なテーマとしたのは「光」。クロード・モネをはじめとする印象派の画家たちは光の表現を追究していますが、ゲルハルト・リヒターやケリス・ウィン・エヴァンスなどの現代の作家たちの作品にも、光への強い関心をうかがうことができる。本展覧会では、ポーラ美術館のコレクションの「現在(いま)」をご紹介するとともに、美術館の未来とコレクションの可能性を探っていく。見どころは以下の通り。<1・従来のコレクションを拡充し、近代と現代をつなぐ新収蔵作品を一挙初公開>鈴木常司のコレクションは西洋・日本とも19-20世紀の近代絵画が中心。しかし新収蔵作品はこれを拡充するものと従来のコレクションにない、近代と現代をつなぐ戦後の日本や欧米の絵画、そして同時代の作家たちの作品であり、そのほとんどが初公開となる。<2・新旧の名品を並べて展示する第1部、新収蔵作品の特徴がわかる第2部の全2部構成>本展覧会は、鈴木常司のコレクションと新収蔵作品を組み合わせた第1部と、従来のコレクションには含まれていない、近代と現代を結ぶ作家たちの作品を紹介する第2部とで構成。特に第2部では初めて収蔵する作家の名品が多数含まれており、コレクションの新たな展開が明確にわかる内容となっている。<3・ポーラ美術館全館と森の遊歩道を会場とした、当館史上最大の超大型企画>本展覧会では、従来のコレクションと新収蔵のコレクションをできるだけ多く観覧するため、館内の5つの展示室、2017年に新設された現代美術を展示するアトリウム ギャラリー、ロビー空間、森の遊歩道にいたるまで作品を展示。ポーラ美術館開館以来、最大規模の超大型企画となる。<4・印象派から現代へ―。「光」にまつわる作品がラインナップ>「箱根の自然と美術の共生」を設立のコンセプトとするポーラ美術館にとって、「光」は建築や照明デザイン、そしてコレクションの重要なテーマ。移ろう光を絵画に描き留めようとしたモネやルノワールら19世紀の印象派の画家たちの作品から、シャイン(光=仮象)を表現し続けるゲルハルト・リヒター、光の色そのものを写し撮る作品を展開する杉本博司、ネオン管を用いたケリス・ウィン・エヴァンスの作品まで、印象派から現代までの「光」にまつわる作品を数多く紹介する。<展覧会構成>第1部:鈴木常司が収集したコレクションと、これをさらに拡充する新収蔵作品を、テーマや時代、作家ごとに組み合わせて紹介。例として、鈴木常司のコレクションの中心となる印象派絵画では、女性像(ルノワール、レジェ、ロベール・ドローネー他)、水辺の風景(モネ、ニコラ・ド・スタール他)、静物(セザンヌ、ベン・ニコルソン他)、マティスとフォーヴィスムなどテーマ別に展示する。日本の近代洋画では、時代や流派、作家ごとに展示。例として大正の洋画(岸田劉生、村山槐多、関根正二)や日本のフォーヴ(里見勝蔵、佐伯祐三他)、その他、レオナール・フジタ(藤田嗣治)や松本竣介、坂本繁二郎など、作家ごとに観覧可能。第2部:従来のコレクションには含まれていない、近代と現代を結ぶ作家たちの作品を紹介。とりわけ重要なのは、山口長男、山田正亮、猪熊弦一郎らの戦後日本の抽象絵画、ジャン・デュビュッフェ、斎藤義重、白髪一雄、中西夏之らマティエール(材質感)を探究した画家たち、そしてモーリス・ルイスやヘレン・フランケンサーラー、ゲルハルト・リヒターら欧米の作家たちによる抽象絵画だ。その他にもアニッシュ・カプーア、中林忠良、杉本博司、三島喜美代、ケリス・ウィン・エヴァンス、ロニ・ホーン、スーザン・フィリップスなど現在も精力的に活動する多様な作家たちの作品も含まれており、ポーラ美術館の新しいコレクションの在り様を楽しめる。■展示情報ポーラ美術館開館20周年記念展「モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に」4月9日(土)~9月6日(火)会期中無休会場:ポーラ美術館道主催:公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館関連プログラム:詳細が決まり次第、展覧会ウェブサイトにてお知らせ。
2022年01月19日1966年ドイツ・ハーメルン生まれの作曲家マックス・リヒターをご存知だろうか。クラシック音楽とエレクトロニック・ミュージックを融合させた音楽、いわゆる「ポスト・クラシカル」の旗手と呼ばれる人物だ。その彼のライフワークと言える「眠り」をテーマにした音楽と、その効果を実証するかのような“真夜中のコンサート”の模様を描いたドキュメンタリー映画が公開される(3月26日よりロードショー)。音楽、特にクラシックは“かしこまって静かに聴く”といったイメージの対極にある「眠り」のためのコンサートでは、会場である野外パークに集まった人々が、用意された簡易ベットの上で、深夜から朝までの時間を思い思いに過ごすのだ。生演奏が延々と続く中で人は一体何を感じ何を思うのか。ロサンゼルスの野外グランド・パークやシドニーのオペラ・ハウス、さらにはアントワープの聖母大聖堂など、さまざまな会場において行われる“眠り”と“目覚め”が、マックス・リヒターの人生を重ねながら描かれる本作は、まさに心地よい「眠り」を求める現代人に向けた「マックス・リヒターからの招待状」に違いない。(C)2018 Deutsche Grammophon GmbH, Berlin All Rights Reserved(C)2018 Deutsche Grammophon GmbH, Berlin All Rights Reserved『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』監督:ナタリー・ジョンズ製作:ステファン・デメトリウ、ジュリー・ヤコベク、ウアリド・ムアネス、ユリア・マール撮影:エリーシャ・クリスチャン出演:マックス・リヒター、ユリア・マール、(ソプラノ)グレース・デイヴィッドソン、(チェロ)エミリー・ブラウサ、クラリス・ジェンセン、(ヴィオラ)イザベル・ヘイゲン、(ヴァイオリン)ベン・ラッセル、アンドリュー・トール2019年/イギリス/英語/99分/シネスコサイズ/原題:Max Richter’s Sleep/映倫:G配給:アット エンタテインメント●映画公式サイト: ●アルバム情報: ●MAX RICHTERマックス・リヒター/作曲家・ミュージシャン1966年3月22日ドイツ・ハーメルンに生まれ、イングランド・ベッドフォードで育つ。エディンバラ大学と英国王立音楽院でピアノと作曲を学んだ後、フィレンツェでルチアーノ・ベリオに作曲を師事。2002年、オーケストラとエレクトロニクスのための『メモリーハウス』でソロ・アルバム・デビューを果たす。その後、イラク侵攻に反対する目的で作曲された『ブルー・ノートブック』(2004)、村上春樹の小説にインスパイアされた『ソングズ・フロム・ビフォー』(2006)、携帯電話の着信音を変奏曲形式で作曲した『24 Postcards in Full Colour』(2008)、ロンドン地下鉄テロ犠牲者を追悼した『インフラ』(2010)、ヴィヴァルディ《四季》全曲をリコンポーズ(再作曲)した『25%のヴィヴァルディ』(2012、英米独iTunesクラシックチャート第1位)、睡眠中のリスニングを前提とした8時間の大作『スリープ』(2015)、作家ヴァージニア・ウルフの小説と生涯を音楽化した『3つの世界:ウルフ・ワークス(ヴァージニア・ウルフ作品集)より』(2017)と、新作を発表するたびに斬新な作曲アプローチに挑み、クラシックとエレクトロニカを融合したポスト・クラシカルのカリスマ作曲家として絶大な人気を集める。映画/テレビのサウンドトラックも数多く手がけ、『戦場でワルツを』(2008、ヨーロッパ映画賞作曲賞)『さよなら、アドルフ』(2014、バイエルン映画賞作曲賞およびストックホルム映画祭作曲賞)『LEFTOVERS/残された世界』(2014-17、HMMAテレビテーマ作曲賞)『女神の見えざる手』(2016)『TABOO タブー』(2017)『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』(2018、HMMA劇映画作曲賞)などで高い評価を得ている。映画『メッセージ』(2016)に使用された《オン・ザ・ネイチャー・オブ・デイライト》(『ブルー・ノートブック』収録曲)は公開時、日本でもiTunesクラシックチャート第1位を獲得した。初来日は2004年。2019年3月には「すみだ平和祈念音楽祭」出演のため、15年ぶりの来日。
2021年03月12日ドイツの“歴史の闇”と“芸術の光”を、現代美術界の巨匠ゲルハルト・リヒターの半生をモデルにフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督が描く『ある画家の数奇な運命』。この度、マックス・リヒターの美しい旋律を背景に、ドイツの気鋭俳優トム・シリングが体現する“芸術家が生まれる瞬間”を切り取った本編映像が到着した。本映像は、リヒターの代名詞ともいえる“フォトペインティング”の制作風景を模したシーン。キャンバスに写真を精密に模写しながら、そこからフィルターをかけたかのように微妙にぼかす作業を加えるこの作風は、決して奇をてらうために生み出されたのではなく、主人公の芸術家・クルトが本当に求めるものを描こうとしてきた結果、真実の芸術にたどり着いた。本映像は、幼きころの叔母の記憶をもとに、まさに自分だけの真実を掴んだ“芸術家の誕生の瞬間”を切り取ったものとなっている。ひと言もセリフを発さないまま、目線や表情だけで芸術家の揺れる心の動きを表現し切った、トム・シリングによる静謐な演技も必見となっている。背景に流れる音楽は、“ポストクラシカル”のアーティストとして知られ、映画『メッセージ』に起用された楽曲や、壮大な宇宙を舞台にした『アド・アストラ』、アカデミー賞を受賞した『戦場でワルツを』など映画音楽家としても高い人気を誇るマックス・リヒター。苦悩しながら少しずつ自分にとっての真の芸術、光を見つけていくクルトの心情を代弁するかのような美しい旋律にも注目してほしい。『ある画家の数奇な運命』は10月2日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ある画家の数奇な運命 2020年10月2日 シネマズ シャンテほか全国公開©2018 PERGAMON FILM GMBH & CO. KG / WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG
2020年10月04日大人の女性として内面を磨くために欠かせないものといえば、芸術に触れること。そこで、波乱な半生を経験した“現代美術界の巨匠”をモデルに描いたオススメの話題作をご紹介します。それは……。各国で絶賛の『ある画家の数奇な運命』【映画、ときどき私】 vol. 326ナチ政権下のドイツで、少年のクルトは叔⺟の影響を受け、芸術に親しむ⽇々を送っていた。ところが、精神のバランスを崩してしまった叔母は安楽死政策によって、命を奪われてしまう。終戦を迎えると、東ドイツの美術学校に進学したクルト。そこで出会ったエリーと恋に落ちるが、その父親こそがクルトの叔母を死に追いやった張本人だった。しかし、そんな残酷な運命に気づかないまま2人は結ばれる。そして、ベルリンの壁が築かれる直前、2人は西ドイツへと逃亡を試みることに……。本作で主人公のモデルとなっているのは、オークションで数⼗億円の価格がつくことで知られ、2012年には生存する画家としては最高金額で落札されたアーティストのゲルハルト・リヒター。そこで、こちらの方にお話をうかがいました。フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督2007年には『善き⼈のためのソナタ』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したドナースマルク監督(写真・右)。13年振りに祖国ドイツを舞台に描いた最新作では、激動の時代を背景に、歴史の闇と芸術の光に迫っています。今回は、作品完成までの道のりや監督が思う芸術の必要性ついて語っていただきました。―今回は、リヒターさんへ1か月にわたる取材を敢行したのち、制作に取り掛かったそうですが、取材のなかで感じたリヒターさんの印象を教えてください。監督確かにリヒターは、僕にとってインスピレーションの一部ではありました。ただ、僕が関心を持っていたのは、彼の芸術家としての本質。あらゆる成功者が抱いている野心や成功したいという強い動機は、彼のなかにもありましたが、そういう個人的な面に興味はありませんでした。あくまでも彼の芸術家としての“エッセンス”にフォーカスしたかったのです。―そういった思いは、俳優への演出面にも影響を与えましたか?監督そうですね。主演のトム・シリングから「身振り手ぶりは、リヒターのまねをしたほうがいいですか?」と聞かれたとき、「ものまねは必要ないよ。君は俳優なんだから自分自身でいてほしいし、僕が書いた脚本のなかのキャラクターを自分のなかに探してほしい」と伝えたほどでしたから。―なるほど。では、リヒターさんと過ごした時間のなかで思い出に残っているエピソードがあれば、教えてください。監督リヒターと出会って何週間か経ったとき、彼が子ども時代を過ごしたドイツのドレスデンという街に行こうと誘ってくれました。そのとき彼は「一緒にプライベートジェットで行かないか?」と言ってくれましたが、そういう部分は僕が作り上げたキャラクターのイメージとはまったく異なるものだったんですよね……。そういった思いから、その誘いを断った僕は冷たい電車に乗り、10時間もかけて自力でドレスデンまで行ったんですよ(笑)。人生の大事な瞬間にリヒターの作品と出会うこともあった―作品のためとはいえ、すごいですね。その後、リヒターさんは完成した作品に対して感想をお話されることはありましたか?監督実は、彼はまだ観ていません。でも、その理由はよくわかります。なぜなら、クルトは彼とは違うキャラクターであるとはいえ、自分の半生にあまりにも近く、しかも人生のトラウマ的な部分を大きなスクリーンで観ることは、つらかった時期をもう一度生き直すことであり、痛ましいことだと思いますから。もし、僕だったら同じように観たくないと思うでしょうね。なので、今回はできあがった脚本を僕が全部彼に読み上げました。その段階で、あまり観る気になれないとおっしゃっていたので、僕もそれはすごく理解できますとお答えしたほどです。―今回は、取材で知った内容を必要に応じて使うのは自由だけれど、映画のなかで何が真実かは明かさないという約束をリヒターさんとされたそうですね。その制限のなかで難しさを感じることはなかったですか?監督実はその制限は、僕から提案したアイディアだったんですよ。というのも、そういった制限を設けることで彼が安心して話をしてくれるのではないかと考えたからです。「これはフィクションになるんだから」と思えば、話しやすくなりますよね。―見事な交渉術ですね。ちなみに、監督の人生において、重要な瞬間にリヒターさんの作品と出会うことも多かったそうですが、そのなかでも忘れられない出来事といえば?監督私の初長編作品である『善き人のためのソナタ』を作る際、当時すでに有名だったウルリッヒ・ミューエに主演をお願いしに行く機会がありました。彼は脚本を気に入ってくれてはいましたが、気がかりだったのは、僕が初監督であるということ。やはり初めての監督を信頼するのは、俳優にとってもリスクのあることですからね。そういったこともあり、彼は2回ほど僕を自宅に呼んで、インタビューをしたのです。僕にとっては、彼が引き受けてくれないとこの映画が作れないというプレッシャーがあったので、非常にストレスのかかる状況でした。そのとき、リビングのソファに腰を掛けていた彼の真後ろにあったのが、リヒターの有名な作品のプリントだったのです。純粋な芸術とは“魂の表現”のこと―その作品から何か得るものがあったのでしょうか?監督ウルリッヒが芸術に関するアーティスティックな質問を僕にしているとき、ずっと目に入っていたのはリヒターの娘が顔を後ろに向けている姿を描いた絵。いまでもそのときのイメージははっきりと残っていますが、おそらくウルリッヒにとってリヒターの絵というのは、彼の芸術における参考基準となっているのだと感じたので、それを受けて質問の答えを言いました。そういった出来事がひとつの例ですね。―劇中では、芸術に対する印象的なセリフがいくつか見られましたが、この作品と向き合うなかで監督が「芸術とは何か?」について改めて考えたこともあったのでは?監督それはとても大きな問題ですが、僕が常に考えているのは、「まったく異なる表現形態の芸術のなかにある共通点は何か」ということです。たとえば、何かのアート作品を見た人がいたとして、素晴らしい芸術なら、それをきっかけにその人の世界に対する見方を変える力があるはず。それがどんな芸術にも共通していることではないかなと感じています。ただ、プロパガンダ絵画のように、芸術に目的を持ってしまうのはちょっと違うんじゃないかなというのが僕の意見。純粋な芸術というのは、魂の表現なので、見る人の感覚や心に訴えかけるものがあると思っています。そしてまた、芸術には人々を結びつける力があるのです。―具体的には、どのようなことでしょうか?監督たとえば、哲学的な疑問としてよくあるのは、「どうして自分の周りにいる人がロボットではないとわかるのか?」というもの。それをどうやって証明できるかの答えのひとつが芸術にはあると思っています。自分が深いところで感じたものを表現したとき、相手も自分と同じように感じることがありますが、それによってお互いを理解することができるのです。そういったものが純粋な芸術には存在するのだと、今回の作品で考えさせられました。この作品が人々の助けとなることを願っている―コロナ禍でドイツ政府は「芸術やアーティストは生命維持に必要不可欠な存在」として大規模な支援をし、日本でも注目を集めました。こういった状況下で、なぜ私たちには芸術が必要なのだとお考えですか?監督経済的な問題で社会が弱くなっているときやいろいろな葛藤が生まれている危機の時代こそ、芸術が大切だと僕は思っています。それゆえに、芸術に対する支援は増やされるべきであって、決して減らされるべきではありません。特に、コロナが原因でほかの人と接触する機会が減り、1人で過ごす人が増えているなかで、「いったい自分の価値とは何なのか?」「自分は何を感じて生きているのか?」といった問いと向き合う時間も増えていますよね。そんなときに、芸術はその助けになると思っています。そういったこともあり、この作品もいまの時代によりインパクトを持って受け入れられたらいいなと。なぜなら、本作は一人の人間が自分自身を発見する物語でもあるので、同じことに直面している人々の助けになればと願っているからです。―最後に、監督が映画や芸術を通して続けていきたいことはありますか?監督僕が映画を作るときに優先しているのは、まずストーリー。たとえば、何年も寝ても覚めてもずっと考えられるようなストーリーなら、映画にしてもいいのかなと思っています。というのも、僕にとっての悪夢は、おもしろいと思って作り始めた作品だったのに、途中で自分がその物語に飽きてしまうこと。自動的に作業しなければいけなくなるような状況は最悪ですからね。それくらい自分を魅了し続けるストーリーを探すことが大切だと思っています。おそらくそういった物語は僕の核心を突くものであり、ある意味で“自画像”のようでもあると思いますが、それは事前に意図したものではありません。できあがった作品を観てはじめて、無意識のうちに意識していたことに気がつき、自分自身が見えてくるものなのです。深い感動を味わい、余韻に浸る!時代と運命に翻弄されながらも、苦しみのなかから希望を見出した主人公を描いた本作。その姿に心を揺さぶられるとともに、芸術の持つ力強さを感じるはず。脳裏に焼き付く圧倒的なシーンの数々を放つ世界観に、身を委ねてみては?真に迫る予告編はこちら!作品情報『ある画家の数奇な運命』10月2日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー配給:キノフィルムズ・木下グループ©2018 PERGAMON FILM GMBH & CO. KG / WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG
2020年10月01日映画『ある画家の数奇な運命』が、2020年10月2日(金)より全国公開される。現代美術界の巨匠をモデルにした若き芸術家の半生『ある画家の数奇な運命』は、激動の時代のドイツを舞台に、“筆”1本で苦悩や悲しみを希望と喜びに変えていった若き美術家の物語。本作の主人公・クルトは、現代美術界の巨匠、ゲルハルト・リヒターをモデルに描かれている。ストーリーナチ政権下のドイツ。少年クルトは叔母の影響から、芸術に親しむ日々を送っていた。ところが、精神のバランスを崩した叔母は強制入院の果て、安楽死政策によって命を奪われる。終戦後、クルトは東ドイツの美術学校に進学し、そこで出会ったエリーと恋に落ちる。元ナチ高官の彼女の父親こそが叔母を死へと追い込んだ張本人なのだが、誰もその残酷な運命に気付かぬまま二人は結婚する。やがて、東のアート界に疑問を抱いたクルトは、ベルリンの壁が築かれる直前に、エリーと西ドイツへと逃亡し、創作に没頭する。美術学校の教授から作品を全否定され、もがき苦しみながらも、魂に刻む叔母の言葉「真実はすべて美しい」を信じ続けるクルトだったが―。必見!リヒター代表シリーズの製作シーンも作品には、リヒターの代表的なシリーズの製作シーンが登場。精密に模写した写真のイメージを微妙にぼかし、写真と絵画の境界線を曖昧にする「フォト・ペインティング」など、リヒターの創作を思わせる技法などが映し出される。なお、本作の監督は、第91回アカデミー賞外国語映画賞にノミネート、長編初監督作『善き人のためのソナタ』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞した、フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクが務める。【詳細】『ある画家の数奇な運命』公開日:2020年10月2日(金)監督・脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク製作:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク撮影:キャレブ・デシャネル音楽:マックス・リヒター英題:NEVER LOOK AWAYキャスト:トム・シリング、セバスチャン・コッホ、パウラ・ベーア、オリヴァー・マスッチ、ザスキア・ローゼンダール
2020年08月08日写真界の巨匠ロバート・フランクと、アートブック界の重鎮であるドイツSteidl社の設立者ゲルハルト・シュタイデル(Gerhard Steidl)による展覧会「Robert Frank: Books and Films, 1947-2016 in Tokyo」が、11月11日から24日まで東京・上野の東京藝術大学美術館 陳列館にて開催される。写真、映画の歴史に最も影響を与えた人物の一人として挙げられるロバート・フランク。しかしその影響の大きさにもかかわらず、非常に繊細な扱いが求められる彼の作品の貸し出し条件は非常に厳しく、高額な保険料が求められるためにそのほとんどが公開されてこなかった。しかし本展では、新聞紙に作品を印刷し、さらに会期終了とともに破棄するという従来の写真展のスタイルを覆す方法で商品価値を低くし、売買と消費のサイクルを回避。また、東京展では東京藝術大学の学生が主体となり展示構成からイベントの立案、広報・什器の製作までが行われ、美術市場において教育的価値も大きな展覧会となった。本展のカタログも、ドイツの有名な日刊紙である『南ドイツ新聞』の特別エディションとして、定型のフォーマットに則ってデザインされ、再生新聞紙へ印刷。それによりわずか5ドル(東京展では500円)という低予算での製作が可能となった。また、関連イベントも多数企画されている。11月9日の13時から16時まではシュタイデルによるワークショップを、11月10日の15時から16時30分まではシュタイデルによるレクチャー「印刷は死なない:デジタルな世界のアナログな本」、20時から21時までは「Robert Frank: Books and Filmsメイキング」を開催。11月23日には、新作ドキュメンタリー映画『Don’t Blink - Robert Frank』の上映会、「鈴木理策 × 松下計 シンポジウム『PHOTO & PHOTOBOOK(仮)』」も行われる。イベントの詳細や事前予約については、「Robert Frank: Books and Films, 1947-2016 in Tokyo」展のオフィシャルページ()より。【展覧会情報】「Robert Frank: Books and Films, 1947-2016 in Tokyo」会場:東京藝術大学美術館 陳列館住所:東京都台東区上野公園12-8会期:11月11日~24日時間:10:00~18:00会期中無休
2016年11月07日ドイツの世界的な現代芸術家であるゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)の最大のガラス作品「ゲルハルト・リヒター 14枚のガラス/豊島」が、愛媛県上島町にある瀬戸内海のほぼ中央に浮かぶ無人島の豊島にて5月28日から8月28日までの土・日・祝日限定で8時45分から18時まで一般公開される。ゲルハルト・リヒターは、世界中の主要な美術館がその作品をコレクションするなど名実ともに世界最高の評価を受ける現代アーティスト。11年秋に瀬戸内海を初めて訪問しており、その際に豊島の風景や自然が気に入ったことから、同所に日本で初めて自らの作品を恒久展示することを承諾した。今回展示される「ゲルハルト・リヒター 14枚のガラス/豊島」は、190×180cmの透明な14枚のガラス板を、ハの字を描くように少しずつ角度を変えて並べたアート作品。全長約8mとなっており、ゲルハルト・リヒターによるガラスの立体作品としては最後にして最大のものとなっている。また、作品を収める箱型の建物も本人のアイデアとデザインに基づいて建てられた。竹林に囲まれた斜面に立つ建物は、陽光がふんだんに入るよう海側は全面ガラス張りで設計。無垢のナラ材が張られた側壁にも縦長の窓を3ヶ所ずつつくることで、時間の経過や季節、天候に応じて、室内に入る光の強さや方向、色合いが変化する。14枚のガラスがその光を反映し、周囲の風景や見る人自身の影を映し込んで無限の表情を見せる。なお、閲覧は無料(身分証明書の提示が必要)。豊島へは、因島土生港(広島県尾道市)か弓削港(愛媛県上島町)から1日2便運航されている町営の定期船で行くことができる。
2016年05月18日