働き方への不満や、ずるずるつきあっている恋人との関係に、日々閉塞感を感じていた34歳の派遣社員、深津ケイ。ある日、ランジェリーのセレクトショップで味わった運命的な体験が、ケイの人生を変えていく。人と下着との出合いを軸に描かれるコミック『ランジェリー・ブルース』がSNSでも大反響。その著者がツルリンゴスターさんだ。自分にフィットする下着と出合い、生き方も見直していく女性の成長。「伊勢丹新宿店『マ・ランジェリー』の初代ボディコンシェルジュ、松原満恵さんが下着について語った記事を読んで、私が描きたい女性の生き方にも通じるものを感じたんです。フィッティングしていただいたときに、ノンパテッド(パッドを使わず、レースでバストを包む)のブラを初めて着けたら、自重で涙型になり、バスト本来の形にキレイに整えてくれる感覚があって。寄せて上げてのブラとあまりに違う。作中でケイが伝説のフィッター・柳真智さんにフィッティングしてもらったときの気持ちをはじめ、お客様の心情は、私自身と重なるものも多いです」そんな本書のいちばんの魅力は、「ステキなランジェリーを身に着けたら気持ちがアガった」で終わらず、生き方を見直したり、自己肯定にもつながっていく大きな物語になっているところだ。「下着を選ぶなんてささいなことに見えるけれど、小さな選択ができるその先でしか、大きな選択もできる自分になれないと思うんです。ボディポジティブという言葉がありますが、実際問題、コンプレックスも自己否定も感じながら“自分の体をありのままに愛そう”と言われてもハードルが高いというか。むしろ、作中でケイの元派遣仲間の田﨑さんが言う〈自分の体を許す〉くらいの意味が女性たちへのエールになるのではないか、と思っています」たくさんのランジェリーが登場するので、「絵にする難しさはひとしおだった」とツルリンゴスターさん。「肌が透ける感じや、レースのデザインの繊細さ…。美大時代のデッサンスキルをフルに使っても大変でした(笑)。モデルさんではなくふつうの女性が着るわけですから、どこの肉がはみ出すとリアルかとか、ちゃんとフィッティングしたときの肌になじんだ感じとか、毎回冷や汗モノでした(笑)。ただ、『なんとなく買っていたけど、この本を読んで自分の買える範囲でちゃんと選んでみようかな』と思ってもらえたなら、本当にうれしい。自分を大切にする一歩にしてほしいですね」『ランジェリー・ブルース』年を重ねてからの体型コンプレックス、子育てに押されて自分を後回しにしてしまうジレンマ、男性や思春期にもある下着の悩みなど、扱うテーマは幅広い。KADOKAWA1485円©ツルリンゴスター/KADOKAWAツルリンゴスターイラストレーター、マンガ家。1985年生まれ、関西在住。2018年からSNSにマンガ投稿を始め、商業デビュー。他の著書に『君の心に火がついて』など。※『anan』2023年11月22日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年11月21日「夫源病」トラブルに巻き込まれた中野沙由。夫と2人の子どもと暮らす沙由は毎日忙しい日々を送っていましたが、突然昼頃になると義父がアポなしでやってきて昼食を食べて帰るように…。■リタイアした義父、気になる義母への態度…2歳の息子と生後4カ月の娘の育児に追われている沙由。忙しくも楽しく過ごしている中で気になっているのは気難しい義父の事。義母に厳しく当たる姿を見て義母が心配になるのでした。■アポ無しで義父が来た!昼ご飯食べたいだけ?ある日の平日の昼に、連絡もせず義父がやってきます。何か用があるのかと、驚く沙由ですが…。「腹減った」と言われ夕食用のメニューを出すことに…。無言で黙々と食べて早々に帰るのでした。しかしその2日後に再び…。全然空気を読まない義父のおかげでトイレで授乳するハメに…。夕食のために買っておいた食材の計画もめちゃくちゃだし、第一気が休まらない…しかも冷凍へのダメ出し!この日は義父のある発言に耐えかね、今後の訪問を控えてもらえるようやんわりと伝えることにしたのですが‥。こうなるとさすがに沙由の手には負えなくなって、夫の力を借りることに…。こちらは投稿者のエピソードを元に、ウーマンエキサイトで公開された漫画です。漫画に対する読者からのコメントを紹介します。■夫の留守中に来る義父 読者は拒絶反応…!まずは、連絡無しで義父が来ることに抵抗のあるという意見。居留守したら良い、自分のご飯は持参して…。という声が多かったです。・家に居場所がないからって息子が不在の家に押し掛けないで!嫁なら口答えせずに言うこと聞くと思って下に見てるんだろうなぁ。・遊びに来たい!と言われるのがもう無理です。ストレスでしかない。・何しに来たん?用がないなら帰ってくれるかね?・世話をされにこられても困るんだわ。義母さんは知らないかもしれないね。早めに話して相談しよう!・こういう頭硬そうなじぃさんってめんどいよね。・アポ無しは居留守で良いよ。・アポ無し訪問するなら自分のお昼ご飯買ってくるとか出前奢るとかしてくれたらいいのに。・金持ちなら、義父持ちで昼出前でも取ってくれ。・来るなら来るで絶対連絡はして欲しい。アポなしで来て腹減ったなら自分が出すから出前でも取ろうと言え。・勝手に人の家来て自分が食べる用の弁当も用意してきてないって何なの?せめて手土産くらい持参してほしい…。次に、思っていることを口に出さない沙由に対して、言いたいことは義父にハッキリ言ったら良いという意見です。・そこまで臨機応変に考えられないので、はっきり言うわ。お昼には親子2人分の納豆ご飯と残り物豚汁しかありませんって。昼にキーマ作ったら、晩御飯どうしよってなっちゃう。・嫌なら断ればいいだけの話。何言われても聞き流しなよ。・ハッキリ言ったら良いのに。ズケズケ来る人にはズケズケ言う、遠回しな人には遠回しに言う。気づかない人にはバシッと言う。最後に、リタイアした義父に対してのコメントです。リタイアしたら職場でのキャリアは関係なく自分を見つめ直してほしいという意見などがあがりました。・場所が変わればキャリア関係なく新人ということを忘れてはいけないと思います。受け入れるのも大変だろうけれど…。・リタイアしたら、色んな意味で自分の立場が変わるのだから、見つめ直して欲しいです。働き続ける高齢者は多くなってるんだけど。管理職とかで偉かった時代のままの感覚のままやって行けるわけがない。柔軟さは必要ではないでしょうか。・役員までやったけど会社でも相当嫌われてるから、退職して行き場無いんじゃないかな。・自分には気遣ってほしいけど相手に気遣い出来ない。そりゃ周りと揉めるよ。義父のアポなし訪問を拒絶する読者が多く「まるで大きい子ども」などという辛口の意見が多数寄せられました。この後、義母が「夫源病」ということが分かるのですが…。義父との関係はどうなっていくのでしょうか…?▼漫画「夫源病で義実家トラブル 」
2023年11月20日ふじちかさんによる、コミック『スケバンと転校生』をご紹介します。「’80年代が舞台なのですが、この時代のレトロな雰囲気がすごく好きなんです。スマホもないので待ち合わせするのも大変で、思い通りにならなかったりして。いろんな制限があるなかで、ゆっくり距離を縮めていく関係を描きたいなと思いました」『スケバンと転校生』は、ふじちかさんの商業デビュー作。一匹狼で“億人殺しのアツコ”の異名を持つ、スケバンの南雲あつ子と、天真爛漫すぎて周りから少々浮いている転校生・神崎凛々(りり)。あるとき神崎はあつ子の鍵を拾った代わりに、“くだらない遊び”に付き合ってほしいとお願いする。その内容は、神崎が考えたかわいい言葉を、1日5つまで言ってもらうというもの。「ふわふわ」「もぐもぐ」「あんよ」など紙に書かれた言葉を照れながら口にするあつ子を見て、神崎はたまらない気持ちになり、あつ子のほうも物怖じせず近づいてくる神崎の無邪気さに、今まで経験したことのない感情を抱く。「なんでこの遊びを思いついたのか、自分でも謎なんですけど(笑)。高校時代って当事者だけが面白いような遊びに真剣になったりしますよね。あの感じを出したかったんです」念願の「友達」になったふたり。2巻では、その定義に戸惑いつつ、お互いを慕う思いが暴走して空回り。ドタバタ感もクセになる。「性格は違うんですけど、ふたりとも根本的には不器用だと思っていて。しかも友達らしい友達が今までいなかったので、いろんなことが初めてなんです。今みたいにLINEで探りを入れるようなこともできないので、勝手に妄想して一喜一憂して、体当たりするしかないんですよね」怖い噂のある教室を掃除する羽目になったり、宿題のプリントを自宅に届けたり、夏祭りに出かけたり。学園モノの王道的シチュエーション、そして絵のタッチも往年の少女マンガを読んできた人の心をくすぐる。「私自身は平成生まれですが、最初にハマった少女マンガが、いがらしゆみこ先生の作品だったんです。絵柄に関して、そういった時代のマンガに寄せている意識はそれほどないのですが、やっぱり自分の好きなものが染み付いているんでしょうね」相手を思う感情が友情なのか恋なのか、もはやどうでもよくなるほどの純粋さ、それゆえの必死さが笑えたり、いじらしくて泣けてきたり。「ふたりの距離が変わっても、不器用であることは変わらないので、この先も、もだもだしている心の機微を丁寧に描いていきたいですね」『スケバンと転校生』2“閻魔も逃げ出す歩く地獄”と恐れられている最強のスケバンと、明るくて天然な転校生。まったく違うタイプのふたりが心を通わせる、’80sガールズラブコメディ。双葉社770円©ふじちか/双葉社ふじちかマンガ家。東京都出身、愛知県在住。pixivなどで作品の発表を始め、本作で商業デビュー。「webアクション」で連載中。X(旧Twitter)は@icco_8※『anan』2023年11月15日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年11月14日2023年2月5日にX(当時はTwitter)に投稿が開始され、あっという間に大人気になった「ねこに転生したおじさん」、通称「ねこおじ」。その魅力はなんといっても可愛い猫…いや、むしろ、可愛いおじさんたちにある。猫ライフを満喫するおじさんが可愛い。ある日、猫に転生してしまった主人公のおじさん。途方に暮れていると、現れたのはいつも怒りっぽい勤め先の社長!万事休す…と思いきや、社長は「きゃわいいねこたん」とメロメロな様子。その後、紆余曲折を経て、おじさんは社長に拾われ、「プンちゃん」という名前で可愛がられることに。慣れない体に戸惑いつつも徐々に猫ライフを満喫するおじさんと、100%以上の熱量でプンちゃんを溺愛する社長のやりとりは可愛らしさとシュールさが混ざり合い、猫好きのみならず、幅広い読者をクスリと笑わせる。ストーリーが進むにつれて魅力的なサブキャラクターも続々登場。猫を飼い始めてから様子のおかしくなった社長を冷静に観察する謎多き秘書・谷さん、愛猫「てぷちゃん」をこれまた溺愛する隣人のイケオジ小説家・糸柳(しやな)先生など、多種多様なおじさんたちによるコメディは勢いを増すばかり。単行本の発売も12月に控えている。What’s ねこおじ?猫×転生×おじさん!キュートで笑える化学反応。「トラックにはねられて、気がついたら猫に転生していた」という一文ととも共に投稿された可愛らしい猫、そしてその背後に浮かぶリアルめなおじさん…。「ねこに転生したおじさん」は、SNSに投稿された一枚のイラストから始まった大人気シリーズ。単行本収録の内容から、イントロダクションとして2つの話を抜粋!主な登場人物プンちゃん/おじさんトラックにはねられ猫に転生した会社員。勤め先の社長に拾われ溺愛される。社長プンちゃんと暮らし始めてから明るくなった。ずっと一緒にいたいので出張が嫌。谷さん社長秘書。「プンたん」(プンちゃんの愛称)が社長のタイ人恋人だと勘違い中。糸柳先生お隣さんのホラー作家。愛猫は「てぷちゃん」。社長に猫吸いの悦びを教えた。甥っ子糸柳先生のファン。飼っている柴犬「スケキヨ」は、実はおじさんと同じ境遇!?おじさん愛から生まれた愛され作品。「ねこおじ」の誕生、そして執筆の裏側とは。「ねこおじ」ワールドを日々生み出す、作者のやじまさん。キャラクターは、ストーリーは、どう作られたのか。お話を伺いました。猫漫画ですが、実はおじさん推しです。可愛い猫のプンちゃんと、背後霊のようにふわっと浮かぶおじさん。2023年2月、X(当時はTwitter)に投稿した一枚のイラストがバズり、漫画となった「ねこに転生したおじさん」。満を持さずにゆる~く始めた作品ながら、待望の書籍化も決まり、やじまさんの漫画家人生は激変!――「ねこおじ」最初のイラストを描くきっかけを教えてください。やじまさん(以下、やじま):たまたま落書きで猫を描いていて、後ろに同じ表情のおじさんを描いてみたら、猫の中身がおじさんみたいな見え方になって。ネタっぽくて面白いからTwitterに投稿してみたんです。――それまでもSNSにイラストや漫画を投稿していたんですか?やじま:そうですね。それこそTwitterをやり始めた頃に、おじさんのイラストを投稿したこともありました。10いいねくらいしかもらえなかったですが(笑)。でも、その後はぽつぽつとネタっぽい投稿がバズることもあり、実は「ねこおじ」の最初のイラストの時も、特に感動はなかったんです。――では、なぜ漫画にすることになったんでしょうか?やじま:前職の制作会社時代から担当編集をしてくれている長谷川さんと、おじさんが転生する漫画って面白そうだと話していたんです。だから、どこにでもいるザ・おじさんがバズることはそうないし、これを機に、猫に紛れておじさんをいっぱい見てもらおうと。――あくまで、猫よりもおじさんがメインなんですね(笑)。おじさんを描くのは好きなんですか?やじま:好きです(笑)。モチーフとして。――そのおじさん愛はいつから?やじま:思い返せば、子どもの頃にノートの片隅に描いた担任の先生がおじさんの描き始めかも。七三分けでメガネをかけていて、柔らかい口調で喋るクセ強めの先生でした。――そのおじさん愛が高じてなのか、「ねこおじ」の登場人物はほぼおじさんですよね。やじま:プンちゃんの中身がおじさんなので、若い女性に抱っこされて、ニコッとしてもちょっと気持ち悪いかなと…。おじさん同士なら好きにしてよって感じですけど(笑)。――「ねこおじ」は猫を飼っていない人でも楽しめますが、飼っている人にとっては“あるある”が描かれていて、共感する人も多いと思います。やじまさんは猫を飼っていた経験はあるんですか?やじま:実家では飼っていました。あとは地域猫とふれあったり、友達の猫を預かったり。会社員時代は企業の仕事で猫漫画を描いていたので、猫の話を聞く機会も多くて。ネタにはその経験が生かされています。ちなみにプンちゃんは、社長に飼われずに、地域猫として“野良おじ”になるルートもあったんですよ。――毎日Xで投稿していますが、ネタを考えるのは大変では?やじま:決まるとまとめるのは早いんですが、決まらないと、まったりとお茶を濁す回もあったりして(笑)。最初は、おじさんでやったら面白いことを猫にもやってもらえばいいかぐらいに考えていたんですが、だんだんみんなが見慣れてきちゃって。顔芸もやり切った感があるから、最近はキャラの掛け合いの面白さにシフトしていっています。――ご自身が思い入れのあるキャラクターはいますか?やじま:個人的には、何考えているかわからないキャラが好きです。人間だと社長秘書の谷さん、猫ならば隣の家に住むてぷちゃんとか。――谷さんは某俳優さん似と噂ですが、妙に猫の扱いがうまかったり、謎が多いですよね。やじま:水谷豊さんですよね?似せたつもりは全くないけど、最近は引っ張られそうになってます。彼の素性は、今後少しずつ明かしていくかもしれません。あと、実はもう一人、メインのおじさんの新キャラを増やそうと思ってかれこれ1か月くらい考えているのですが、なかなか定まらないんですよね。――12月には「ねこおじ」の書籍が発売されますが、今年一年を振り返っていかがでしたか?やじま:福岡へ引っ越し、会社を辞めて、「ねこおじ」がバズって漫画を描き始めたら、書籍化が決定。でも、制作会社時代から続いていたホラー漫画の連載が終了して…。終わりもあるけど始まりもあって、変化の年になりました。Xのフォロワーもおかげさまですごく増えましたし。今後は新たな作品にも挑戦して、いろんなメディアや雑誌でも活動していきたいですね(笑)。描き下ろし20ページ!待望の書籍が12/5発売。『ねこに転生したおじさん』1KADOKAWA1375円。Xで発表してきた1話から10話までの漫画をまとめて書籍化。描き下ろしも20ページあり、読み応えある内容に。「初期の頃の作品は、結構加筆しています。20ページの描き下ろしでは、谷さんとか宅配のお兄さん、そしてペットカメラとか、サブキャラの視点でアナザーストーリーを描いています。ぜひ楽しみにしていてください」やじまさん漫画家。20歳からフリーターをしながらSNSで4コマ漫画を発表。その後、制作会社に就職してWebや企業用の漫画制作に携わる。2023年に独立し、福岡へ移住。Xで「ねこおじ」を毎日投稿。※『anan』2023年11月15日号より。文・野尻和代(by anan編集部)
2023年11月14日人類の大半が滅び、〈断罪者〉というプレデターのような存在が跋扈する終末世界。その瘴気によって〈結晶病〉を発症し死に至った人間を埋葬するのが、主人公・丑三小夜(うしみつ・さや)の任務だ。小夜はクーという正体不明の小動物(これが超可愛い!)を相棒としながら、遺体を回収する仕事を続けている。壮大で無二の世界観で描かれる岩宗治生さんの『ウスズミの果て』が、面白すぎる!「この世にひとりぼっちで残されたらどうしようというのは、自分がよくやる空想なんです。連載を始める頃にちょうどコロナ禍が重なって、僕の中で『世界が終わってしまったら…』がかなりリアルに考えられた。小夜自身はその特別な出自からいまの僕らの感覚とは若干ズレがあると思いますし、そもそも彼女には希望も絶望もないのではないかなと。もし自分が小夜のような境遇にいたら、暇を持て余すよりは生存者を探して、土地を浄化してというタスクをコツコツやり続けることに意味を見出すのではないでしょうか」荒廃した街を彷徨う小夜がどんな体験をし、誰と出会うかが読みどころ。第九、十話(2巻に収録)の図書館エピソードは、紙の本を愛する人には絶対に刺さる神回だ。「ストーリーは、人物より、道具や場所をまず考えて、そこにどんな存在がいたら面白いだろうと考えて、組み立てていくことが多いです。建物など廃墟化したときに映えるような場所を意識しています」小夜がイサミとカノコという兄妹に出会うことで、また物語は大きく動く。だが、なぜイサミとカノコは生き残れているのだろう。「人類が生き残れないほどの厄災が前提としてあるので、軽々しく生存者がいたというのも変だなと。こんな世界だからこそ、生きていられるのはよほど限定的な条件だよなと考え抜いて思いついたのがあのふたりの特性なんですよね」ストーリーにもわくわくするが、岩宗さんの画力にも一目で射貫かれるはず。作画はフルデジタル。廃墟写真などの資料の他、土木作業の関連本からイメージを膨らませた。廃墟につきものの繁茂する植物の様子などは、街中の植物が絡まった建物などを参考にしているそう。「マンガってやっぱりキャラクターが生きているかのように伝えるのが大事で、それには廃墟にあっても生活感が不可欠だろうと。背景を細かく描き込むことで作品世界をリアルに感じてもらえたらうれしいです」『ウスズミの果て』2終末モノを描くにあたり強く影響されたのは、弐瓶勉さんの代表作『BLAME!』だというが、ストーリーや画面構成にオリジナリティが光る。KADOKAWA792円©岩宗治生/KADOKAWAいわむね・はるおマンガ家。1991年、大阪府生まれ。2020年からSNSにマンガ投稿を始め’21年7月『ハルタ』増刊号掲載の読み切りで商業誌デビュー。※『anan』2023年11月8日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年11月06日怪異を引き寄せる男と、追う男、日常の隣に潜む不思議を巡る物語『となりの百怪見聞録(ひゃっかいけんぶんろく)』。「昔から怪談やホラーなど不思議な話が好きで、いつか描きたいと思っていました。私自身はだいぶ怖がりなのですが(笑)」四季折々のスープと人間模様を描いた『オリオリスープ』の著者、綿貫芳子さんが満を持して挑んだテーマが、怪異。最新巻に収録されている「遠野物語」をモチーフにした短編「まよひが異聞譚」から、イメージを膨らませて連載化したのがこの作品だ。装丁家でゲイの片桐甚八は、“オバケ先生”と呼ばれる高名な日本画家の原田織座(おりざ)に、なくした財布をとある方法で取り戻す手助けをしてもらう。織座に惚れてしまった甚八は、なぜか怪異に好かれ不思議な現象に遭遇しやすいようで、“あちら”の世界に魅せられている織座の道楽に振り回されることに。「ふたりとも『オリオリ~』に登場しているキャラクターで、具体的に触れる機会はなかったものの、結構細かく設定を考えていたんです。自分でも忘れていたことを思い出したり、実はこういう人だったのかと気づいたりしながら描いています」あちら側への入り口となるのは、古本にあった見知らぬ人の書き込みや、不意にポスティングされる情報の少ない移動販売のチラシ、いつも釣り銭が置き去りにされている古い自動販売機など、誰もが日常で身に覚えがありそうなことばかり。「描きたい物語があるからネタを探すというより、“気になることノート”が発端になることが多いですね。たとえば母から聞いた思い出話や、街中で見つけた変な風景、お風呂に入っていて唐突に浮かんだ単語などをメモしておくんです。それ自体は全然怖くなかったりするのですが、違和感や妙なギャップのある、座りが悪い事象をホラーの土俵に持っていく作業をしている感じです」彼らは遭遇した怪異をドラマティックに祓ったりはしない。常識的にはあり得ない体験をしながらも、現実の隣に存在する世界だと認識して、また日常に戻る。その描き方に好感が持てるし、「きっといる」と思わせてくれる怪しさと魅力がある。「いかにもモンスターっぽい佇まいだと、インパクトがあっても隣にいそうにないので、いつもそのせめぎ合いに苦戦してます。イメージは、街の角を曲がったらいそうな存在。ホラーや怪談といっても本当にさまざまですし、怪異が出てこなくても怖いこともたくさんある。そこに可能性があると思っているので、いろんな波で描けたらいいですね」『となりの百怪見聞録(ひゃっかいけんぶんろく)』2怪異に好かれる男・片桐甚八と、好事家の原田織座。不思議と恐怖、そして好奇心のバランスが絶妙な見聞録。Web「となりのヤングジャンプ」で連載中。集英社715円©綿貫芳子/集英社わたぬき・よしこマンガ家。第64回ちばてつや賞一般部門にて「ヘミスフィア」で佳作受賞。著書に『オリオリスープ』(全4巻)、『真夏のデルタ』。※『anan』2023年11月1日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年10月31日大きな話題となったドラマ『ブラッシュアップライフ』や、公開中の映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』では、物語のキーパーソンを好演。気がつけばこちらの懐にするりと入り込んでいて、心に残るお芝居を見せてくれる木南晴夏さん。主演を務める新ドラマで演じるのは、昼は地味なOLだが、誰にも知られていない、エキゾティックなベリーダンサーの顔も持つ“セクシー田中さん”こと田中京子だ。「原作の漫画を読むと、そもそも田中さんってすごくスタイルがいいんです。手足が長くて、体は細いながらも引き締まっていて。少女漫画でしかあり得ない見た目なのですが、なるべく近づけるようにと体を絞りながら役作りをしています。ちょうどこのお話をいただく少し前から始めたピラティスを継続しながら、5月からは食事コントロールとベリーダンスのレッスンをスタート。実はこの取材の前も、みっちり2時間レッスンを受けてきました」役作り上、ベリーダンスの習得は最優先となるが、数か月間、地道にレッスンを積んできたという。「最初に先生から『胸を張って自信を持って、全世界で自分が一番いい女だと思って踊ってみて』と言われて戸惑いました。ベリーダンスは曲線美や女性らしさを前面に出した、大人の魅力が詰まった踊りなんですが、そもそも私の性格はベリーダンサーの田中さんではなくOLの田中さん寄り。どうすれば自信を持てるようになるかなんて全然わからなくて。それでもレッスンを重ねて踊れるようになってくると、だんだん背筋が伸びていき、不思議と自信が持てるようになっていきました。煌びやかな衣装をまとい、イヤリング、ネックレス、ブレスレットに指輪と、これでもかっていうぐらい装飾品をつけるので、その華やかさも背中を押してくれている感じです」会社の後輩・倉橋朱里役の生見愛瑠さんとは初共演。「目がキラキラしていて美肌で、まつ毛も長くて…小動物みたい。可愛すぎて直接は見られないから、愛瑠ちゃんが誰かと喋っている時にこっそり盗み見て、可愛いな~って思っています(笑)。40歳の田中さんの生き方や発言にも『わかる!』って思うけど、でも、若さや可愛いことにしか自分の市場価値がない、と焦ったり悩んだりする朱里ちゃんに共感できる人のほうが多いんじゃないかな。私も20代の頃は、先の見えなさに不安を感じていたこともありましたから。それでもこの物語に出てくる人たちはみんな、自分で変わろうと決めて奮起していくので、見てくださる方にとって、何か変わるきっかけになれば嬉しいですね」ところで、木南さんにも誰にも知られていない顔があるのだろうか。「たまに『大木のように揺るがない心を持っていそう』と言われますが、実は根っこはネガティブで、人の言葉に影響されてスポンジのように吸収するからブレブレ。まぁそれも善しあしで、役者にとってはよかったりするのかもしれませんけど(笑)」『セクシー田中さん』ある日、ベリーダンサーのSaliに一目惚れした朱里だが、その正体はなんと職場の同僚でアラフォーOLの田中さんだった…。原作漫画はananマンガ大賞受賞作。日本テレビ系にて毎週日曜22:30~放送中。きなみ・はるか1985年8月9日生まれ、大阪府出身。公開中の映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』に出演。パン好きが高じて、「キナミのパン宅配便」というサービスを展開。ワンピース¥82,500(PHOTOCOPIEU/SHOWROOM LINKS)左手のリング¥39,600右手のリング¥45,100イヤーカフ¥154,000(以上GEORG JENSEN/GEORG JENSEN JAPAN TEL:0120・637・146)※『anan』2023年11月1日号より。写真・神藤 剛スタイリスト・中井綾子(crepe)ヘア&メイク・坂本志穂インタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2023年10月30日読書好きな加藤家の末っ子、剣くんは、スパルタおじいちゃんの薫陶を受け、小学4年生のときには立派な本の虫に。古今東西の名作や話題の本を介して、たくさんの気づきを得る。『本の虫 ミミズクくん』は、学校でミミズクくんというあだ名で呼ばれる彼の、本への熱意と、どんなことにも懸命に取り組む健気さに打たれるコミックだ。その著者がカラシユニコさん。古今東西の名著を味方に、本が大好きな少年が、悩みと向き合う。「主人公が毎回違う本を読む話、しかもその主人公が小学生だったら面白いかも…というところからスタートしました。主人公が小学生だからといって“やわい”マンガにはしたくなかったので、ミミズクくんのキャラクターをとことん地味でアンニュイに、でも特徴あるビジュアルにしよう、家庭も厳格にしよう、とひとつひとつ設定を考えました」作中で引用される本や名フレーズは、カラシユニコさんが過去に読んだ愛読書のほか、担当さんに推薦してもらって読んだものなども。「あくまで読書のある“日常”を描きたかったんですね。ただ、ミミズクくんは毎回何かしらで悩んでいる。その悩みが引用文に後押しされて解消する流れが見えたとき、物語をまとめるのはとても爽快で楽しい作業でした。逆に引用文が内容と全然合わないときは、本を読み返して合う引用をひたすら探すか、一から別の本、別の話題に変更するかをしなければいけなかったので、そのときは大変でした(笑)」読書に熱中しているミミズクくんは光って見えるのだが、その謎も3巻でいよいよ解かれる。「連載を開始した当初は、読書を心から楽しんでいる様子の心象風景にすぎなかったのですが、彼以外にも見えている現象だとわかってきた。となると、『光る理由がちゃんとあってもいいかな』と考えるようになっていきました。連載終了にあたって、“光る理由”を明らかにすることは最終話にもってこいのテーマではないかと思い当たりましたし、名前だけ登場させて存在を仄めかしていたおばあちゃんの伏線回収の懸案もありました。そのふたつを絡めたエピソードなので、ぜひ読んでもらえたらうれしいです」ずっとミミズクくんの成長を見守っていきたかったが、惜しまれつつこの巻で完結。「ミミズクくんが読んだ本を買って読んだ、あるいは再び手にとって読んだ、という声をちらほら耳にしたのは想定外の反響でした。登場した全23冊を読破するとか、物語の舞台である横浜市の菊名駅周辺を本片手に散策するとかも、余韻に浸る楽しみとなるかもしれません」カラシユニコ『本の虫 ミミズクくん』33巻で取り上げる本はモーム『月と六ペンス』、吉本ばなな『キッチン』ほか。後半、中学生になったミミズクくん。青春の甘酸っぱい物語が増えるのも。小学館715円©カラシユニコ/小学館カラシユニコマンガ家。神奈川県生まれの帰国子女。2014年、第74回小学館新人コミック大賞〈青年部門〉で佳作を受賞しデビュー。他の著作に『メメント飛日常』が。※『anan』2023年10月18日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年10月17日飼う人がいれば診る人も必要。特殊なペットの病院とは?二宮香乃さんによる『珍獣のお医者さん』をご紹介します。世の中には、驚くべき職業がまだまだあるものだ。「お仕事マンガを描こうと思って、浮かんだ案のひとつが爬虫類の医者でした。そして調べてみようと手に取ったのが、監修をしてくださっている田向健一先生の本だったのですが、とにかく面白くて、知識としても新鮮だったんですよね」エキゾチックアニマル、略してエキゾとは、犬・猫以外の動物を指す獣医学用語。一般的な動物病院に就職したものの、犬アレルギーを発症したうえ、ミスを連発してクビになった神無望(かんな・のぞみ)は、まったく興味のなかったエキゾ専門の動物病院の門を叩く。そして敏腕エキゾ獣医、月光先生の下で働くことに。神無が最初に遭遇するのが、甲羅の割れた亀の治療なのだが、ラップでぐるぐる巻きにしたり、パテで割れた部分をつないだりして、クラフト感満載。「亀はエキゾの中でも比較的身近な動物ですが、先生に取材をすると、マンションの5階から落ちて無事だった子もいるみたいなインパクトのある話ばかりで、本当に不思議な生き物なんですよね」ほかにもトカゲ、蛇、ワニ、ウサギなどが登場するが、新米獣医の最初の難関が、検査や診療のために動物の体を一時的に動けなくする「保定」という行為。飼い主の前で蛇に噛まれても平静を装いながら実践を積む、涙ぐましい努力が描かれる。「獣医のみなさんは大抵、手が傷だらけだったりして、大変な仕事だなと思います。しかもエキゾ獣医はニッチなので、前例も少ないし、情報を共有しながら道を切り拓いていくしかない。その感じもかっこよく描けたらいいなと思っています」爬虫類などは特に、好き嫌いが分かれる生き物といえるが、二宮香乃さんの描くエキゾたちは、気持ちを理解したいという獣医側の心理の表れなのか、愛情を感じられる。「描いたことのない生き物ばかりなので、毎回苦労しているのですが、みんな顔がかわいいんですよね。爬虫類は正面から見るとちょっと間抜けだったり、ワニもそばにいたら死ぬほど怖いだろうけど、目とか短い手足とかがかわいいので(笑)」ペットブームなどで飼われる動物も多様化し、エキゾ獣医の需要は高まっている。本作は治療の現場を興味深く描きながら、ペットと人間のあり方も考えさせてくれる。「ペットを飼う際、病気になったときのことまで考える人はなかなかいませんよね。だけど動物病院で起こっていることを先に知るのも、ありなのかもしれない。その辺を楽しく描けたら人間だけでなく、エキゾの役にも立てるかも、と思うのです」二宮香乃『珍獣のお医者さん』1ほかの病院では断られるような特殊な動物と、クセの強めな飼い主が訪れる、エキゾチックアニマル専門の動物病院。見たことのないメディカルドラマ。KADOKAWA792円©二宮香乃/KADOKAWAにのみや・かのマンガ家。第10回エンターブレインえんため大賞 コミック部門で佳作。過去作に『小学生ゾンビ・ロメ夫』。本作は『ハルタ』で連載中。※『anan』2023年10月11日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年10月10日人生で立ち止まった時、名ゼリフ揃いのレジェンド作家の作品が助けになるはず。「この先生の作品なら間違いない!」「もはやバイブル」というマンガ家さんが、あなたの中にもいるのでは。今回、ライター・青柳美帆子さんが推薦してくれたのは、近藤聡乃先生です。【近藤聡乃先生】シンプルな言い回しが、登場人物をリアルに見せる。マンガ、アニメーション、ドローイング、油彩など多岐にわたる作品を国内外で発表し、2008年からニューヨーク在住の近藤聡乃先生。「エッセイ『ニューヨークで考え中』も、もちろんいいのですが、とにかく代表作の『A子さんの恋人』のセリフが素晴らしい!決して凝った言い回しではないのに、キャラクターが確かに存在して、目の前で喋ってくれているような温度感があります。このセリフのリアリティが、登場人物みんな知り合いであるかのような感覚、知り合いの恋愛相談を聞いているような感覚を導いています」(青柳さん)『A子さんの恋人』2巻コミカルからの、本心。ギャップにやられる。NY帰りのA子を中心に、大人になりきれない男女を描く。「元恋人A太郎と、NY在住でアメリカ人の現恋人A君との三角関係もので、これはA君が愛を吐露する場面。本エピソードは前半がコミカルなA君で進むため、ギャップで余計に胸を打たれます。A君との会話は英語で(マンガは日本語)、それゆえの敬語が、急に静かな雰囲気になるようでいい」(青柳さん)。全7巻各792円/KADOKAWA©近藤聡乃/KADOKAWA『A子さんの恋人』7巻若い時の絶望を、痛みとともに乗り越えて。同じく『A子さんの恋人』で友人U子のセリフから。「作品の中で一番印象に残っているセリフがこれ。本作は、時にはボタンを掛け違えてしまうことがあるというクリエイティブの才能にまつわるお話でもあります。若い時は絶対的に感じて絶望してしまうものを、時間の経過と成長で乗り越えていく、チクッとした痛みを受け入れて前を向くようなこのセリフは、いつ読んでもうるうるします」(青柳さん)©近藤聡乃/KADOKAWA青柳美帆子さんライター。女性向けカルチャーやエンタメを得意領域とし、書籍、雑誌、Webなどで幅広く執筆。月1回、ありまよさんと雑談ツイキャス「給料日ラジオ」を配信。X(旧ツイッター)は@ao8l22※『anan』2023年10月11日号より。文・川明子(by anan編集部)
2023年10月10日「この先生の作品なら間違いない!」「もはやバイブル」というマンガ家さんが、あなたの中にもいるのでは。人生で立ち止まった時、この“レジェンド作家”の作品が助けになるはず。マンガライター・ちゃんめいさんが推薦するのは、矢沢あい先生です。【矢沢あい先生】ページをめくれば、強いヒロインが導いてくれる。『天使なんかじゃない』『NANA』など、数多くの名作を世に送り出してきた矢沢あい先生。現在は休載中だが、多くのファンを惹き付けている。「恋愛、友情、将来……、多感な時期に立ちはだかる壁の乗り越え方を、美麗なキャラクターや繊細な感情表現で描く作家さん。強い心で自分の夢を貫くこと、別れるという愛し方があること、そんな“一般論に囚われない生き方”を教えてもらいました。ページをめくれば、先生が生み出した気高く強いヒロインたちが色褪せずにそこにいる。私の手を引いて光の方へと導いてくれます」(ちゃんめいさん)『ご近所物語』大人になったからこそ、心に沁みる名ゼリフ。デザイナー志望の実果子と、幼馴染みのツトムが成長していくラブストーリー。「大人になると夢や目標を見失いがちで、結婚や出産などのライフステージに悩み、自分の人生のゴールはどこ?と焦燥感にかられることも。人生は生きている限り続くからこそ、自分の人生をご機嫌に歩み続けるための“心”を育もう!大人になったからこそより沁みる」(ちゃんめいさん)。全5巻各770円/集英社文庫©矢沢漫画制作所/集英社『Paradise Kiss』自分は自分と、目覚めさせてくれる。受験生の紫が、矢澤芸術学院服飾科のジョージたち「パラダイス・キス」のメンバーと出会い、モデルを目指す。「自分は自分!と言い聞かせていても、周囲の目が気になり、噂話などに振り回されて心をかき乱されることも。他人に自分の意識を持っていかれている時に、目覚めさせてくれるセリフ。横断歩道を力強く走り抜けていく紫の姿も印象的」(ちゃんめいさん)。全5巻各943円/祥伝社©矢沢漫画制作所/祥伝社ちゃんめいさんマンガライター。マンガを中心に書評、インタビュー、コラムなどの執筆や、トークイベント、女性誌のマンガ特集に携わる。毎月100冊以上マンガを読む。X(旧ツイッター)は@meicojp24※『anan』2023年10月11日号より。文・川明子(by anan編集部)
2023年10月10日いつだって、私たちのそばにあるマンガ。セリフやモノローグが絵と合わさって生まれるパワーは計り知れません。ここでは、“恋愛に効くセリフ”をテーマに、言葉に注目して読みたい名作を集めました。恋愛に効くセリフ恋愛をテーマにしたマンガでは、二人が結ばれるかという結末もさることながら、その過程で描かれる、人が人を想う気持ちに心を揺り動かされるもの。登場人物の心と重なって、思いが深まっていきます。『セクシー田中さん』芦原妃名子本音を見せないズルい男が吐露するもの。優秀で地味な印象だけど、実はベリーダンサーの田中さんと、彼女に心酔している後輩OLの朱里を取り巻くラブコメディ。「朱里の腐れ縁男・進吾の本音が明かされる場面。好意をわかっていてはぐらかすズルい男の内面には何があるのか?そういう男自身の口から、自分の弱さについて語らせる、少女マンガでもそう見たことのない展開でぐっときます」(ライター・青柳美帆子さん)。1~6巻各550円/小学館©芦原妃名子/小学館フラワーコミックス『瓜を破る』板倉 梓はじめての“彼シャツ”の、ときめきが伝わる。30代処女のまい子が抱える性的コンプレックスを描いた物語。「まい子が惹かれるのが、コピー機をメンテナンスしている鍵谷。二人がようやく結ばれたあとの一幕です。“彼シャツ”というベタな状況ながらも、そういう存在ができたことのうれしさや、この瞬間のときめきがストレートに伝わってくる。この作品はセリフはもちろん、モノローグが全部いい」(青柳さん)。1~7巻682~704円/芳文社©板倉梓/芳文社『氷の城壁』阿賀沢紅茶自分自身の気持ちを見つめる大切さ。人と接するのが苦手な女子高生・小雪が、グイグイ距離を詰めるミナトと出会い――。「この人、なんだかなぁ……、という、恋愛はもちろん、日頃の人付き合いにおいて感じる小さな違和感。良いところに目を向けてやり過ごそうとしてしまう時、大切なのは、相手に対して“自分”がどう感じているか。誤魔化したり、揺らいでしまったりする心をまっすぐにしてくれる」(マンガライター・ちゃんめいさん)。1~5巻各990円/集英社©阿賀沢紅茶/集英社『君に届け 番外編 ~運命の人~』椎名軽穂不器用さもめんどくささも包み込んでくれる人。『君に届け』のスピンオフで、爽子の友人・くるみがヒロイン。作者の過去作『CRAZY FOR YOU』に登場した赤星くんが相手役。「どんなカップルで、どんな恋愛模様を見せてくれるのかとワクワクしていたら、赤星くんが最高すぎてときめきが爆発!くるみの不器用なところを見抜き、めんどくさいところを大切にしてくれる赤星くんは、めんどくさい恋愛をしがちな女子にとって理想の彼氏」(青柳さん)。全3巻各484円/集英社©椎名軽穂/集英社『サターンリターン』鳥飼 茜小さなこだわりの中に潜む、その人なりの価値観。小説家・加治理津子が、担当編集者と共に友人アオイの死の真相に迫る。「例えば鍋にどんな具材を入れるのかなど、パートナーシップにおいては、小さなこだわりの中にその人の価値観が詰まっているのかもしれないと気づかされる。否定やスルーは、二人の関係性を破滅へと導くことになるのかも、と恐怖を感じるとともに背筋が伸びます」(ちゃんめいさん)。1~10巻各715円/小学館©鳥飼茜/小学館青柳美帆子さんライター。女性向けカルチャーやエンタメを得意領域とし、書籍、雑誌、Webなどで幅広く執筆。月1回、ありまよさんと雑談ツイキャス「給料日ラジオ」を配信。X(旧ツイッター)は@ao8l22ちゃんめいさんマンガライター。マンガを中心に書評、インタビュー、コラムなどの執筆や、トークイベント、女性誌のマンガ特集に携わる。毎月100冊以上マンガを読む。X(旧ツイッター)は@meicojp24※『anan』2023年10月11日号より。文・川明子(by anan編集部)
2023年10月09日“テルマエ”とは「熱い」という意味のギリシャ語「テルモス」に由来する言葉。狭義には古代ローマの皇帝らによって建設された大規模公共浴場を、広義には古代ローマの公共浴場全体を指す言葉だ。4世紀に記された2種類の『ローマ市総覧』によれば、当時ローマ市内には大規模な公共浴場は11軒、小規模な公共浴場は856~951軒もあったというから馴染み深いのもうなずける。古代ローマ人も日本人も大好きだった風呂の真実に迫る。©ヤマザキマリ「テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本」は、そんなテルマエを愛した古代ローマの人々の生活を、絵画や彫刻、考古資料など100点以上の作品や、映像や模型でひもとくもの。会場では、実写映画化もされたヤマザキマリによる漫画『テルマエ・ロマエ』の主人公ルシウスが案内人となり、古代ローマのテルマエと、日本の入浴文化についても紹介。そもそも、なぜ古代ローマで公共浴場は広く浸透していたのか?公共浴場はローマ人の発明ではなく、そのルーツは古代ギリシャ発の施設にあった。ただ、それを大衆の娯楽へと発展させたのはローマ人だった。帝政初期、特権階級と大衆の格差はかつてないほどに広がっていた。下層民が住むのは高層の集合住宅で、住空間は極めて狭く、水道もなければ台所や風呂の設備もなかった。皇帝たちは貧困にあえぐ大衆のストレスを解消すべく、娯楽を提供する。そのひとつであるテルマエは、大衆からの人気を得るのに大いに役立ち、何人もの皇帝がローマに巨大なテルマエを建設した。一方、日本の風呂が清めの場として仏教とともに寺院に広まったのが6世紀頃。江戸時代には町中に湯屋が誕生し、現代の入浴スタイルが定着する。本展では日本の入浴に関する美術品や資料も展示。古代ローマ人に劣らない日本人の風呂好きの歴史も見どころのひとつだ。大規模なテルマエには、皇帝や浴場の建設者の肖像のほか、神々の像や古代ギリシャの有名作品のコピーなど数多くの大理石彫刻が飾られていた。《恥じらいのヴィーナス(ウェヌス・プディカ)》1世紀 ナポリ国立考古学博物館蔵 Photo©Luciano and Marco Pedicini古代ローマ時代の富裕層の暮らしを描いている。饗宴を催すことができたのは、家に台所があり奴隷がいる者だけだった。《ヘタイラ(遊女)のいる饗宴》1世紀 ナポリ国立考古学博物館蔵 Photo©Luciano and Marco Pedicini豊富に温泉の湧く日本では、古くから地域の温泉が住民に利用されてきた。本展では山梨の温泉の資料も展示し、地域の魅力を伝える。三浦宏《湯屋模型》1980年代 個人蔵 撮影:石﨑幸治健康や医療とも直結する入浴。ギリシャのイスキア島ニトローディの温泉では、泉の精たちが疫病を祓う神アポロと共に祀られる。《アポロとニンフへの奉納浮彫》2世紀 ナポリ国立考古学博物館蔵 Photo©Luciano and Marco Pedicini「テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本」山梨県立美術館山梨県甲府市貢川1‐4‐27開催中~11月5日(日)9時~17時(入館は閉館の30分前まで)月曜(10/9は開館)、10/10休一般1000円ほかTEL:055・228・3322※『anan』2023年9月27日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2023年09月24日奈美は夫と2人の娘たちとの4人家族。夫の慎吾とは元々高校時代の友達で、お互いに気を遣わない楽な関係に心地よさを感じて結婚しました。しかし結婚後、慎吾の『気を遣わない精神』がエスカレート。いつからか慎吾は妻に迷惑をかけても「ごめんねを言わない夫」になってしまったのです…。■気を遣わない夫 結婚前は良かったけど…「ごめん」が言えない夫。結婚前は気を遣わないのが良いと思っていたけど…。連絡もせず待たせたあげく、謝れない夫にイライラする奈美でした…。■夫のノリが本当に許せない…!さらに、足を踏んでも謝らない夫に、奈美は「謝るべきでしょ?」と話します。しかし夫は子どもに「ママ、怖くね?」と悪ノリ…。夫の態度に奈美はさらに激怒します。そんなある日、夫が奈美のお気に入りのコップを割ってしまって…。こちらは投稿者のエピソードを元に、ウーマンエキサイトで公開された漫画です。漫画に対する読者からのコメントを紹介します。■「ごめん」が言えない夫に読者は…まずは、コメントの中でも圧倒的に多かった、謝れない夫についての批判や見解です。「精神が幼い」「学生のノリ痛い」「礼儀は必要」といった意見があがりました。・学生みたいなノリがずっと続く人って、精神が幼いんですよね。そして、その振る舞いが許されると勘違いしてる。特に近しい人と接しているほど。無礼な事してブチ切れされない限り分からないんだよね。・社会人になっても高校時代のノリって、大人になりきれてないってことでは?・「気を遣わなくていい人」と、「周りに気を遣えない人」はまるっきりの別モンなんだよなぁ。・気を使わない仲でもそれなりの礼儀は必要だと思うけどね。・社会人になっても高校生からノリが変わってない人とか痛過ぎて無理なんだけど、それが良いと思う人もいるんですね。・人の足踏んでおきながらごめんも言えないなんて…。満員電車乗ったらトラブルになるわ。スニーカー洗えばいいじゃんって言ってるけど洗いもしないくせに偉そうに。謝ったら負けだとでも思ってんの?・ごめんなさいと謝罪することと、ありがとうと感謝することは円滑に生きていく上でマストだと思っています!別にお金も掛からないし、それにより自分も成長できます。次は、奈美が夫に怒った際、子どもに母親の悪口を言った場面での読者のコメントです。子どもへの悪影響を指摘する読者が多数いました。・迷惑かけて謝れないのも見ててムカつくし、何より母親への悪口みたいな事を子どもに言ってる時点でゴミすぎる。・親が謝ってるところみせないと子どもも謝れない子供になるよ。・子どもに、ママ怖いねとか平気で言う人ってめちゃ腹たちます。・分かります!!最近、6歳の息子も言わなくなって来て完璧旦那の悪いとこがうつってて腹たちます。また読者から「うちの夫みたい!」というコメントも寄せられました。・あー、まさにうちの夫ですね。夫の場合「これから気を付けるんだから良いだろ」というタイプ。過失に対して文句は言わず今後どうすればいいか、自分にも他人にもそこだけを求めている人なんです。子どもにはそうなってほしくなくて、ごめんねの大切さを教えこんでますがなにぶん目の前に謝らない人がいるので。・うちの夫も謝らないけど、この旦那と違ってウザくはない。謝ったら負けって思ってるんだよなぁ。挨拶でも謝罪でも会話でも勝ち負けって思考は男性特有なのかしら?・うちの旦那も謝れない人です。謝ったら死ぬ病気なんか?ってくらい言わないです。この他にも、すぐ謝るけど全く反省も改善もしないで同じこと繰り返す、「ただ言ってるだけ」の人もいるというコメントに共感する読者が多数いました。どうして夫は謝れないのか…。夫が思いを明かす場面に、読者からは疑問の声が集まる結果に…!▼漫画「ごめんねが言えない夫」
2023年09月24日東京という地名から思い浮かべるのは、どんな景色だろう。葛飾区出身のかつしかけいたさんによる『東東京区区(ひがしとうきょうまちまち)』は、「東東京」を一緒に歩いているような気分になれる一冊だ。他者の視点が自分の視点を豊かにする、再発見の街歩き。「もともと街歩きが好きで、いつかそれをテーマにしたマンガを描いてみたいと思っていました。しかもここ数年、葛飾区在住のエチオピアの方やムスリムの方と交流する機会が多く、マンガにするならそういった人のことも描きたかったのです」インドネシア人の父と日本人の母を持ち、大学で社会学を専攻するサラは、立石の商店街にあるエチオピア人が営むカフェで、8歳の少女・セラムと出会う。そして店を空けられない母の代わりに、セラムに付き添って墨田区にある父の仕事場に忘れ物を届けることに。方向音痴のサラが悪戦苦闘していると、街歩きが趣味の中学生・春太がやってくる。「普通の人とは少し違うところのある3人で、世代もバラバラですが、トリオだと立体的なバランスで面白くなりそうな気がしました」3人が歩くのは東京スカイツリーのある押上や、『男はつらいよ』の舞台となった柴又、駅前の再開発が進む立石など。歩きながら、その土地の歴史や文化だけでなく、思わぬ本音などいろんな会話が飛び交う。「場所を決めたら実際に歩いてみて、地域の図書館などで調べ物をして、3人だったらどんなふうに動くのか想像しながらストーリーを組み立てます。マンガを描くのと同じくらい、調べる時間も好きなんですよね」観光地然とした風景はほとんど出てこないのも特徴で、スカイツリーのようなランドマークも、なじみのある風景のひとつとして描かれる。「3人はルーツは違うものの東東京出身なのですが、ここで育った人が改めて街を見るという視点を大事にしました。よその地域から来るほうが、発見や驚きを表現しやすいのかもしれないですけど、暮らす人の視点で描く街歩きがあってもいいんじゃないかなと感じていたので。東東京は下町情緒溢れるエリアとしてメディアで紹介されがちですが、もっと生活者のリアリティに寄せれば、ある種のステレオタイプとは違うものが描けるはずだと思いました」たとえ知らない土地のマニアックな知識だとしても、好奇心をくすぐられるのは、街やそこを歩く3人が魅力的に描かれているからこそ。「読んでくれた人が、自分の地元をちょっと歩いてみようと思うきっかけになったら、うれしいですね」かつしかけいた『東東京区区(ひがしとうきょうまちまち)』1ムスリムの大学生、エチオピア人の小学生、不登校の中学生。世間の普通とはちょっと違う区区(まちまち)な3人が、東東京の魅力を再発見。トゥーヴァージンズ1210円©かつしかけいた/トゥーヴァージンズかつしかけいたマンガ家、イラストレーター。2010年頃より地元葛飾周辺の風景を描いたマンガ作品を発表。雑誌や書籍の挿画なども手がけている。本作が初の連載作品。※『anan』2023年9月27日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年09月23日誰かに淡い恋心を抱いたり、友情を育んだり、家族と過ごす時間を大切にしたり。描かれているのはどこにでもありそうな日常だが、登場するのはすべてモンスターの本作、『月出づる街の人々』。「こうありたい」が詰まった、モンスターたちのユートピア。「プロトタイプの短編を描いたのは約10年前。コミティア(自主制作漫画誌展示即売会)で発表しましたが、今、はるみの弟として出てくる飛べないドラキュラが主人公でした」酢豚ゆうきさんは当時、『宇宙兄弟』の小山宙哉さんのもとでアシスタントをしながら、マンガ家を目指していた。しかしながらプロになるのを断念し、一度は企業に就職。「それでも趣味で二次創作などをしていたのですが、久しぶりにオリジナルに挑戦しようと思って、現在の第1話を描いたのが2019年。社会人として大変なこともいろいろ経験したので、優しい世界であってほしいなっていう僕自身の願望が、表れているのかもしれません」モンスターが暮らすのは、ヨーロッパのような石造りの建物と、日本のノスタルジックな雰囲気がミックスされたような街。透明人間のはるみはさっぱりした性格で、同学年の狼男の毛づくろいに癒されている。フランケンのもち子はおっとりしているものの、怪力の持ち主。クールだけど優しいメドゥーサのユイは、頭の蛇たちをいつも気にかけている。家族構成も学校のクラスも、異なる種族が入り交じっているのだが、それぞれの特性を当たり前のように認め合い、他者の困りごとも理解している関係性は、理想郷ともいえる。「モンスターのキャラクターに関しては、自分が入り込めるかどうかを大事にしています。たとえば巨大な一つ目モンスターとかだと、いきなり感情移入するのは難しかったりしますよね。一見人間っぽいけど造形的にちょっと不思議だったり、日々の悩みは僕たちと大して変わらなかったりなど、モンスター感と身近さを同時に出せればと思っています」3人の女子高生モンスターを中心に、さまざまなキャラクターが登場するオムニバスなのだが、2巻では新キャラも続々出てくる。ミノタウロスの男子がもち子の筋トレ姿にほれぼれしたり、女子3人でクリスマスマーケットに繰り出したり、はるみが赤ちゃんのとき、ほとんど透明の状態で、子育てに苦労したというほのぼのエピソードも。「この作品を機に、いろんな国の神話を調べるようになったのですが、モンスターには昔の人たちの考え方などが反映されていることを知り、ますます興味が湧いています。3人のキャラクターを中心に掘り下げつつ、彼らが住む街の様子もより立体的に描いていきたいですね」『月出づる街の人々』2透明人間、狼男、フランケン、ドラキュラ、メドゥーサ。種族を超えて心を通わせるモンスターたちの温かな日常を描いた8編のオムニバス。おまけマンガも!双葉社726円©酢豚ゆうき/双葉社すぶた・ゆうきマンガ家。2010年頃からコミティアなどで活動を始める。本作で商業誌デビュー。『月刊アクション』(双葉社)で連載中。※『anan』2023年9月20日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年09月18日息子と一緒だと走り回って、買い物も大変…!夫も一緒に来ているのに…。自分のことしか見えていない夫。散々怒っても、荷物も子どもも連れずどんどん先に行く夫に唖然とする葵でした…。■走り回る息子 夫も一緒のはずが… 買い物の途中で走り回る息子。捕まえに行ってはレジの列から離れてしまい、また一番後ろから並ばないといけなくなり…。一緒に来ているはずの夫は連絡しても出なくて、怒り心頭の葵なのでした。■息子を置いけぼりに 夫は何処?!家族みんなで買い物へ。葵も自分の服をゆっくり見たいため夫に息子を預けます。すると、5分もしないうちに息子が葵のもとに。ベビーカーとリュックも無く、息子を抱っこして必死に夫を探すと…。こちらは投稿者のエピソードを元に、ウーマンエキサイトで公開された漫画です。漫画に対する読者からのコメントを紹介します。■いるいる!自分の夫を見ているよう…まずは、家族みんなで出かけても、妻と息子を置いてマイペースに買い物をする夫に「旦那のよう!」「いるいる!」と共感する読者の体験談や目撃談を紹介します。大変そうなお母さんに声を掛けた人も…!・いる。ほんとにいる。カートに子ども乗せて、お母さん抱っこ紐で抱っこして、てくてく歩いてる子ども連れて買い物してる横で、ただ歩いてるだけの父親…。マジかよ!となる。・29年前の夫を見ている様です‥。今は荷物を持ってくれないどころか、私の為に車を出してくれる事は無くなったので、免許を持っていない私は遠くでも自転車で買い物へ行っています(夫は、よその奥さんとデートでお忙しい様です)。・うちの娘も最終的に抱えるしかなかったなぁ…涙。今ではそれもいい思い出だけど、その時なんの役にもたたなかった旦那のことは、決していい思い出にならん!・うちの旦那だわ。ただ息子は大人しい子だったので主人公ほど大変じゃなかったけど。旦那連れて行かないで毎回子どもと買い物でも、ディズニーでも旅行でも行くようにした。私と子どもにはたくさんの思い出あるけど旦那だけは無い。そして旦那がなに誘っても誰も行かない。皆「行って来れば?」ってなっちゃって旦那は孤独に(笑)。・よくスーパーにいる奥さんの隣や後ろをただただついていくカオナシみたいな旦那さん。奥さんは抱っこ紐もしくはカートにお子さん乗せて買い物して、旦那さんはその後ろをスマホ見ながらついていって、フラフラノロノロ歩くからめっちゃ邪魔なのもわからない人。まじで脳内停止するのかな?状況把握とか家庭だと敢えてしなくなるのか…不思議でならない。・スーパーで働いてる時。臨月の妊婦さんが買い物袋3つと小さい子の手を引いてて、旦那さん手ぶらだったから「あらあら大変!お車までお持ちしますね!お母さん1人で大変ねー!」ってババア全開で手伝いに行ったら、渋々旦那が荷物持ちに来たから「あら旦那さんいたの!?まあ!普通荷物とかお子さんはねえ!? 妊婦さんなのに!旦那さんいたの!? まあまあ!」ってちょっとオーバーなくらい晒し者にしてやったことはある(笑)。周りの家族連れはパパが抱っこ紐で赤ちゃん抱っこしたり荷物持ったりしてるから旦那さんは気まずそうだったわ。次にご紹介するのは「自分だったら…」と、置いていく夫への対策についてのコメントです。夫が気がつくまで待つという人や、夫を置いて先に帰ってしまっては。という斬新な意見も。・私だったら追いかけない。旦那が戻るまで待つ。スーパー出口のベンチで荷物置いて待つ。後ろにいないことに自分で気づかせる。それを想定して車の鍵はこっちで持っとく。・逆に奥さんと子供で旦那おいて、車で帰ってみたら?笑・わかるわかる!だから何処かへいく前に頼んだりしてる。言われる前に動いて欲しいけど言われないとわからない人いるし、スマホに夢中すぎて周り見えてない聞こえないタイプの人だから。最後に紹介するのは、走り回ってしまう子どもにカートやハーネスを利用してほしい!というコメントに、賛否両論の意見です。実際にカートを利用した経験談や意見も挙がりました。カートはベルトをしても立ち上がったりでストレスになる人も。今まさに考えている人には参考になるかもしれません。・子供を乗せるカートもハーネスもダメなのかな?・走り回る子は、本人だけでなくまわりの安全のためにも嫌がろうがハーネスお願いいたします。高齢者に体当たりして靭帯断裂→寝たきりというケースを知っています。・うちの息子も大暴れしてたなぁ。抱っこしてもダメ。カートに乗せたら、カートのベルトしても立ち上がる、カゴの部分に乗り上げる、何度も説明してもダメ。ストレスになっちゃうから、ネットスーパーも一時期やってたけど、割高でそれもそれでストレス。旦那に息子と2人で買い物行った時もなぜか「俺の時は大丈夫なんだけどね~」って言われてまう。。・2歳の子供がスーパー行くと走り回ろうとするから買い物が全然できなくて、途中から3歳未満用の身体が固定されるタイプのカートに乗せたんだけどもちろんギャン泣きで…みんな見てくるから恥ずかしいしで急いで買い物してたらすれ違い様におばさんから「あらー、降りたいのよー。可哀想にー」とか言われて悔しくて泣きながら帰ったな。上の子の時もだけど、もう基本イヤイヤ期が過ぎるまでは極力スーパーには行かなかった。・カートやハーネスを進める人は、それが合うこどもだったんでしょうな。カートは乗せようとすると、体突っ張って全力拒否するから両手じゃないと無理。そうすると今度はカートが動くし。ハーネスは無遠慮に全力で走ろうとするからこっちも引っ張られるもしくは引っ張ってしまいまじ危険。うちは買うもの一緒に探そう作戦でうまく落ち着いてくれたからよかったけどあの手この手がだめな子はいるよね。・ハーネスはこれだけ全力ダッシュする子には向いてないかもしれないです。全力ダッシュされると引っ張られて頭から後ろに転けます!大人しいけどいつの間にかうろちょろして居なくなる子向けだなぁと思います。カートも乗せても立ち上がるし勝手に降りようとして危ないし、色々ありますよね…。・子ども用のハーネスより、必要なのは旦那用のハーネスだと思います…!マイペース過ぎる夫への批判から、大変だった過去の経験、対策まで幅広く意見を頂戴しました。息子へのハーネス論争まで広がり、子どものイヤイヤ期で悩んでいる人や「あの頃は…」と回顧する人たちも共感できる内容ばかりです…!▼漫画「ひとりで先に行ってしまう夫」
2023年09月16日幼い頃から同じ屋根の下で暮らし、成長した双樹沙羅(ふたき・さら)と春野夜(はるの・よる)。16歳になったあるとき、二人は平安時代にタイムスリップ。夜は天皇家との外戚関係を望む平清盛のもとで平徳子として、沙羅は奥州・藤原氏の家で源義経として過ごすことに。突如、仇敵同士になってしまった二人の運命は…。そんなユニークな設定で進む黒崎冬子さんの『平家物語夜異聞(へいけものがたりよるくんのはなし)』は、原書に忠実、かつ随所に笑いをちりばめた傑作ラブコメだ。「特に深い意味もなく、歩いているときに『源義経が女の子だったら可愛いだろうな』というアイデアがふと浮かんで。平家物語も、中学時代に、“滅びの文学”として教わってからずっと気になっていました」宝塚のファンだという黒崎さんは男女逆転のお話も好物。かくて、世話好きで心優しい夜と暴れん坊なかまってちゃんの沙羅とが“家”に翻弄され、物語が進んでいく。「平家は、平家物語の中ではわりに悪者として描かれているのですが、調べてみると家族仲や兄弟仲がよくて、宮中の女房たちにもとても優しかったとか。エピソードがいろいろ残っているんですよね。一方、源氏は、頼朝も頼朝の父親も兄弟で殺し合うんです。血を分けた者同士が疑心暗鬼になり家が途絶えるのは、平家とはあまりに対照的。史実をなぞりつつ、血のつながりだけが幸せではないと伝えたかったし、夜くんのような他人が平家の人と心を通わせ家族のようになっていく新しい家族像も描けたらいいなと思いました」終盤、本書を「異聞」とするにふさわしい仕掛けが用意されている。とりわけ、平家滅亡のその先と沙羅の成長はうれしいサプライズだ。「いまは変わりましたが、私も20代頃は良妻賢母的な生き方こそ女の幸せだと思い込んでいて、そのくせそれが息苦しかったんです。なので本作でも、夜くんが沙羅ちゃんを“幸せにしてあげる”ような形にはしたくなかった。沙羅の決断を見届けてほしいです」登場するあまたの平安貴族と武士たちのモダンミックスなファッションも注目ポイントだ。沙羅が馬の代わりにバイクを乗り回したり、BL要素が織り込まれていたり、エンターテインメント性はバッチリ。「宝塚の舞台では、平安時代の人が膝丈のレザーのブーツを履いて出てきたりしますし、マンガ的なセンスと歴史をミックスさせた舞台も多い、劇団新感線の影響も受けているかもしれません」黒崎冬子『平家物語夜異聞(へいけものがたりよるくんのはなし)』3原作はシリアスな歴史モノだが、本書はコマの隅々にまで描き込まれた小ネタ、ハイテンションなギャグがぎっしり!現代的なキャラデザも魅力。全3巻。KADOKAWA880円©黒崎冬子/KADOKAWAくろさき・ふゆこマンガ家。2019年2月に読み切りでデビュー。他の著作に4コマねこマンガ『トラと陽子』、ラブコメ『無敵の未来大作戦』がある。※『anan』2023年9月13日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年09月12日最近よく耳にするようになった、「発達障害」という言葉。町田粥さんの初コミックエッセイ『発達障害なわたしたち』は、当事者による当事者へのインタビューがベースになっていて、そもそも発達障害とは何なのか、日常でどんなことに困っているのかを明るく解読している。インタビュアーは限りなく本人に近いキャラクター、マンガ家のM(エム)ちださんと担当編集のK成(ケーなり)さん。ふたりは同時期に発達障害の特性のひとつ、軽度のADHD(注意欠如・多動性障害)の診断を受けている。当事者もそうでない人も、大人の発達障害について明るく語ろう。「自分が発達障害だと言われたら、いろんなリアクションがあると思うのですが、私はショックや動揺ではなく『面白い!』と思ったんですよね。劣等感に繋がっていた部分を説明できるようになって救われもしたので、そういう気持ちになれる人はほかにもいるはずだと思いました」ふたりの事例から始まり、登場するゲストはMちださんの妹、ADHD寄りのASD(自閉スペクトラム症)の特性のあるマンガ家のカメントツさん、性別で見ると圧倒的に少ないASD傾向の女性など。「子どもの頃からの困り事を軸に、解決するためにどんな動きをして、今どうやって過ごしているのか、それぞれ順を追ってお聞きしました。カメントツ先生の“辛い人は『辛い』って言っていいし、辛くない人は『辛くない』って言っていい”という言葉が印象的で、たしかに大変かどうかは周りが決めることではない。その人と向き合った聞き方をしなければいけないと感じました」発達障害の特性のある人たちが、日々の困り事を減らすために欠かせないのが、家族や職場など周りの人たちの理解やちょっとした配慮であることも、本作は教えてくれる。たとえば衝動の強い人は、いわゆる失言や余計なことをしてしまいがちなのだが、本人に悪気がないことを知っておくだけで、受け取り方が変わってくるだろう。得手不得手の差が激しいという傾向も、周囲の理解さえあれば、組織内で大きな力を発揮することにも繋がっていく。「正しい知識がないと、当事者にどう接したらいいかわからないと思うのですが、ネットの情報は結構偏っていたりすることも監修の先生への取材を通して知りました。なので間違った知識や偏見を、丁寧につぶしていくつもりで描いています」連載中から本作への反響は大きく、このテーマへの関心の高さや、他人事ではない感じもうかがえる。「2巻以降、お話を聞きたい人がすでに何人かいて、『実は私も…』という声も多くいただいています。そういった繋がりから、さらに話が広がっていくかもしれないですね」『発達障害なわたしたち』1軽度のADHDと診断されたマンガ家と担当編集者が、さまざまな症状の当事者にインタビュー。発達障害について、ポジティブに考えるきっかけになる一冊。祥伝社1034円。©町田粥/祥伝社フィールコミックスまちだ・かゆマンガ家。『マキとマミ~上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話~』でデビュー。著作に男のみの歌劇団を描いた『吉祥寺少年歌劇』など。※『anan』2023年9月6日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年09月05日夫婦のすれ違いを描き、話題沸騰の『あなたがしてくれなくても』に続いて始まった、ハルノ晴さんの新連載『私がひとりで生きてくなんて』。その1巻が刊行された。主人公は、専業主婦6年目の愛菜。夫の宏之から突然離婚を切り出され、ショックのあまり家から飛び出してしまう。動転した愛菜が弁護士事務所だと思って駆け込んだのは、あろうことか税理士事務所で…。「私も、マンガ家のアシスタントをやっていたくらいの社会経験しかなく、愛菜の不安や自信のなさなどは理解できたんですよね。基本的に、自分の体験を通して思ったことや感じたことしか描けないので、それをどうリアルに表現するか、担当さんと一緒に試行錯誤しています」愛菜は、その税理士事務所の岸本から厳しいことをズケズケ言われ、一度は落ち込むし、腹も立てる。だが、スーパーマーケットのスタッフ、フードデリバリーなど人生で初めて働くことに挑みながら、自分が望む未来を模索していく姿は好もしい。「離婚相談なら普通は弁護士事務所に行くでしょうが、弁護士の出てくるマンガはけっこうあるけど、税理士の出てくるマンガはあまりないので、税理士事務所にしました。身近な知り合いに税理士さんがいたのでイメージが湧きやすかったです。自分自身、マンガ家を生業にしてあらためてお金の仕組みと向き合うことになり、それは世の中の仕組みと通じているんだなと実感したんです。なので、愛菜にも、お金のことから世の中をわかってもらいたくて、税理士と出会ってもらいました」そんな岸本は、愛菜のメンター的な存在として活躍する。「彼をもう少しソフトで親切なキャラにしてもよかったのかもしれませんが、展開上『オマエは甘いんだ』と厳しくツッコむ人間が欲しかったんですね。サラサラヘアのツンデレ系が個人的に好きなのもあり、キャラクターデザインとしてもそういうビジュアルにしました」愛菜がどんな選択をしていくのか、岸本との関係はどうなっていくのか、ハラハラドキドキ。「いろいろな職業や経験を経て自分のやりたいことがわかってきたりすることってありますよね。愛菜にもさまざまな生き方をしている人と出会って、自分らしい道を決めてほしいと思っています。ただ、愛菜と岸本の関係は、作者の願い通りには発展してくれなくて。まだまだじれったいふたりでいきそうです(笑)」ハルノ晴『私がひとりで生きてくなんて』1愛菜との関係に未練がありそうな宏之。一方、互いに意識しながらも、一向に距離が縮まらない愛菜と岸本。波乱の三角関係の行方が気になる。2巻は今冬刊行予定。講談社748円はるの・はるマンガ家。『僕らは自分のことばかり』(全2巻)に次ぐ、第2作『あなたがしてくれなくても』(連載中)はドラマ化もされ、大ブレイク。©ハルノ晴/講談社※『anan』2023年8月30日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年08月28日同棲相手の浮気が発覚し、家を飛び出した相沢ゆかり。急遽、兄の紹介してくれた人のマンションに居候することになるが、その相手はミニマリストの男性――〈無田仁(むた・じん)〉だった。部屋に運び込まれたダンボールの山を挟んで、「捨てろ」「捨てられない」の応酬から、ふたりの同居生活は始まる。そんな設定からして「絶対面白いやつ!」のオーラが漂う朝比奈ショウさんの『無田のある生活』。「知り合いに割と極端なミニマリストの人がいまして、アイデアのきっかけになっています。私も思い出のモノは捨てられないタイプ。その人の部屋を見たときの衝撃を、率直にゆかりの心情に反映させました」一方で、無田の言い分は常に合理的で、それにゆかりが納得する場面もしばしば描かれる。たとえば、引っ越し早々、元彼とお揃いのチェーンが切れたストラップを巡ってふたりが対立するのだが…。「無田のような極端すぎる思考で主張されれば、ゆかりがはねのけたくなるのもわかります。ただ、耳を傾けてみれば、『確かに』となる瞬間はどこかにあるだろうという気持ちで描いています」1巻の終盤、アパレル業界で働くゆかりの服に対する思いがハンパなく熱いことがわかる。単にだらしなくて捨てられないのではなく、大切に思うから捨てられないのだ。「ミニマリストの人としゃべっていたときに気づいたのですが、その人も、大事にしたいからこそ、ごく限られたお気に入りのものだけと暮らしたいのだなと。大本をたどると、モノを大事にしたい気持ちは同じ。割と共通点もあるのだなと感じたんです。性格もライフスタイルも違うふたりが互いに影響し合って、グレーゾーンでつきあえる部分を描けたらいいなと思っています」無田のキャラクターデザインは、わかりやすいイケメンではなく、ミニマリストらしい淡泊なルックスになっている点にも注目。「ほどよく突き放した、何を考えているかわからないような感じを出したかったんです。基本無表情ですが、感情や感覚が動くときだけ黒目の位置や白目の幅などを変えて振り幅を出すとかの工夫はしています」捨てる捨てないの話に終始せず、ふたりの丁々発止を通して、モノをどう扱うか、恋愛や人間関係において何が大切かまで考えさせてくれるところが、本書の魅力ではないだろうか。続刊が待ち遠しい。朝比奈ショウ『無田のある生活』1職業、出自、女性との同居が必要だった本当の理由など、1巻では無田をめぐるサプライズがてんこ盛り。ラブコメ展開も気になる2巻は9月28日頃刊行予定。小学館715円©朝比奈ショウ/小学館あさひな・しょうマンガ家。1995年生まれ。他の著作に、ヒロインの強気ファッションと可愛い中身ギャップに萌える『強ガール』などが。※『anan』2023年8月2日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年08月02日幼稚園のママ友で集まると必ずと言っていいほど始まる愚痴大会。角谷つぐみは、みんなを安心させようと「私の方が不幸だよ!」と話してあげるのです。ママ友たちとたくさん話せて、関係がうまくいっていると思っているつぐみなのですが…。■「分かる~!」ママ友たちに不幸アピール幼稚園のママ友との集まりで、夫の愚痴の言い合いに。誰かが愚痴を言うと、つぐみは「うちよりマシかもよ」と、不幸アピールを被せます。つぐみは、みんなと沢山話せて、ママ友関係がうまくいっていると思っています。■私って可哀そう…!悲劇のヒロイン?夫に今日の出来事を話しても、スマホに夢中で話を聞いてくれず…。そのことをママ友に話し、共感してくれたのに誰かが自分の話を始めると、またもや被せて不幸アピールするつぐみですが…。みんなに避けられてる?こちらは投稿者のエピソードを元に、2月14日よりウーマンエキサイトで公開された漫画です。漫画に対する読者からのコメントを紹介します。■自分の事しか見えてない? 読者からは批判が続々と…!今回はウーマンエキサイトの公式Instagramに多くのコメントが投稿され、盛り上がりを見せていました。中でも多かったのは、つぐみへの批判! まずはその一部をご紹介しましょう。・不幸自慢というよりお話泥棒ですね。こういう人は一緒にいると疲れます。これまで誰からも指摘されなかったか、指摘されても何のこと?って気づかなかったんだろうなあ…。・愚痴を聞くくらいならいいけど、話しを被せて不幸アピールしてくるのはうざいな。ママ友の間柄でしんどい。・こんな人いると疲れる…。結局自分に引き付けたい自己中な人。・不幸自慢でマウント取れて何が楽しいんだろう?話盛り過ぎてオオカミおばさんになるだけでは?・自分だけしか見えてないですよね…全ての思考に『私は』『私が』『私の方が』。世界の中心は『私』で、あとはモブ。そんな扱いされてまでお付き合いする人、いないんじゃないかな…。・不幸な自分に酔ってる人って本当に面倒だし関わりたくない。この人は自分が一番不幸じゃなきゃ気が済まないのかな。私は自分が幸せな方が嬉しいけど。・不幸自慢する事で、自分が大変な人、可哀想な人だと周りに知ってほしいし自分の存在を認めて欲しいのかなと感じました。・不幸自慢して他の人は元気になんて、なるわけないじゃない。身近なところにも、つぐみのような人が…。読者から体験談が寄せられました。・職場でもいました。話のなかで「今日の勤務時間長いんだー」と言ったら「大丈夫、私の方が長いから」と、なにが大丈夫なの?と毎回聞き返してましたが、不幸自慢みたいな人いますよね。・不幸の押しつけする人、何処にでもいますね~。こういう人って、不幸の基準が低すぎだから、別の意味で「可哀想に…」って思われて、皆から距離を取られる。・こういう人いるいる~。まず声のボリュームを落としてほしい…。私かも…?! つぐみを見て、反省する読者もいました。・私も自分に話題持っていくような事してたから(これに関しては本人無意識なんだよね)、社会人になってからは相手から聞かれるまでは聞き役に回るようにしてる。結果その方が信頼されるようになった。・先日友だちが「自分が一番大変自慢」する人がいてウザいって言ってたな~。私も気をつけねば…。スマホばかり見て空返事をする夫に同情する意見もありました。・こんな奥さんなら、旦那もスマホに向かいたくなるよ。食べた食器も片付けてくれるいい旦那じゃないか。これじゃ人が離れていくよ。・話してる最中にスマホに夢中な旦那さんにもカチンとくるけど、この人の話が単純につまらないのもあるのでは。自分が不幸だというエピソードをすることで、ママ友たちとの関係が良好だと思い込んでいるつぐみ。しかし読者からは関わりたくないという声が多く集まり、不幸自慢する人からは人が離れてしまうという辛い結果に。一方つぐみがこうなってしまった背景もあるようです。そんなつぐみは果たして変われるのでしょうか。ラストに読者からは温かい言葉が寄せられることに…!▼漫画「私が一番不幸でしょ?」
2023年07月28日簡潔に言うと、『サラウンド』は3人の男子高校生の日常を描いたマンガなのだが、最新刊の3巻まで読むと、飽きるどころか、3人への愛着が深まっていることに気づくだろう。いつまでも眺めていたくなる、男子高校生のゆるくて眩しい日常。初連載である本作が形になるまでの経緯を、著者の紺津名子さんは次のように語る。「デビュー後、何を描けばよいかわからず、悩んでいた時期が長かったんです。いろんなマンガ家さんに相談して、好きなことを気軽に描いてみたらとアドバイスをいただき、ツイッターで2~3ページの短いマンガを発表するようになりました」筆が乗らなかった理由は、風変わりな設定や仕掛けなど何かしら強いフックが必要だと思っていたから。「だけど私が描きたかったのは普通の人たちで、日常系のマンガだったんですよね。ツイッターではいろんなキャラクターを思いつくままに描いていたのですが、『サラウンド』に登場する3人のうち、最初に描いたのが戸田でした。初っ端からふざけていたので、ユーモアを大切にする人っていうのはそのとき決まった感じで。山口は当初ダウナー系男子のつもりで描いたのですが、今では一番ピュアになってます(笑)。田島は飄々とした戸田と仲良くなれるのってどんな人だろうと考えて、出てきたキャラ。行動力のある田島のおかげで、私も助かっています」性格も成績も家庭環境も異なる3人は、何となく気が合って、教室やファミレスでいつもダラダラしゃべっている。会話の内容はゲームやバイト、ときに下ネタなど取るに足らないことばかりなのだが、男子高校生らしく能天気でバカっぽくて(もちろんほめ言葉!)、隣でこっそり聞いているようなおかしみが。「今を生きるリアルな高校生を描こうとは思っていなくて、でも感情の部分はリアルにする必要があるというか、作り手のご都合主義になってはいけない。こういう人がいたらいいな、こういうやり取りがあったらいいなと思えるのがマンガの楽しさだと思っているので、パラレルの世界のどこかで彼らが生活していたらいいなと思いながら描いてます」3巻では、田島に戸田が勉強を教えたり、山口がバイトを探し始めたり。そしてついに恋の予感も……。「『サラウンド』というタイトルは、3人を取り巻くものというイメージで、日常の言い換えとしてつけました。個々のエピソードに寄りつつも、3人でいることの魅力を丁寧に描いていきたいので、見守っていただければ嬉しいです」紺 津名子『サラウンド』3女子と話すのが苦手な山口、冷静沈着で独自の世界観を持つ戸田、社交的で友達の多い田島。仲良し男子高校生3人のゆるやかな日々と、小さな変化を描く。リイド社880円 ©紺津名子/リイド社こん・つなこマンガ家。2014年、講談社『ITAN』でデビュー。青年誌などで読み切りを発表。本作は「トーチweb」で連載中。Twitterは@kontsunako※『anan』2023年7月19日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年07月14日楽観的で新しモノ好き、マイペースすぎる父。家事とパートをこなす働き者、心配性ゆえに小言の多い母。『てつおとよしえ』は、昭和っぽさあふれるご両親に育てられた山本さほさんが、家族史を振り返るハートウォーミングなコミックエッセイ。「思い出した順にマンガにしていったので、子ども時代の話も大人の反抗期のころの様子もあって、わりと時系列がバラバラになってしまいました。その分、私が両親からどんなふうに影響を受けたかが伝わっていたらいいなと思います」性格は正反対なのに、金婚式を越えても仲がいいというご両親の睦まじさはもちろん、子ども時代の山本さんが甘えん坊ぶりを発揮するエピソードも微笑ましい。たとえば、第10話の「温泉とサラミ」は、子どものころに両親と車で温泉に出かけた、雪が降る日の思い出だ。パーキングエリアの自販機で買ってもらったカップラーメンのおいしさや、帰り道で寝たふりをして家までおぶってもらった幸福感…。思わずほっこりしてしまう。「お風呂に入るときには、必ず父についていきました。父は常に食べ物を隠し持っていたので(笑)、それ目当てに。ハムとかサラミとか、母だと『体に悪い』となかなか食べさせてくれないものをこっそり分けてくれるのが楽しみで」自分のことよりも家族に献身する〈よしえ〉は、典型的な昭和の母、というイメージ。「将来を考えなさいという母の心配が、10代のころはイヤでしかたなかったんです。大人になったいまはわかりますが。とはいえ、母の言うことを全部受け止めるのもしんどいので、そこは父のように受け流す合気道的な知恵が母のいちばんの対処法なんだなと。父から学びました」そんな母は、実は山本さんのいちばんの応援団かもしれない。「連載していた文芸誌を毎月買って、チェックしてました。『こんなこと描いて恥ずかしいでしょ』と言いながら、『お父さんがこの前こんなことしたのよ』と結構ネタを提供してくれましたね。マンガにしても面白くない話が多かったですが…(笑)」家事を全部ひとりで担っていた母。気になった新製品なら、値段は二の次で買ってしまう父。「いまだったら、ツイッターに上げた途端に炎上しそうです(笑)。でもそういういくつものバランスで、うちの家族はできていたのだなとあらためて思いますね」山本さほ『てつおとよしえ』自伝的作品『岡崎に捧ぐ』では描ききれなかった著者の家族にフォーカスした、ファミリーヒストリー。極端なところもあるけれど、すべては愛情の裏返し。新潮社1210円©山本さほ/新潮社やまもと・さほマンガ家。1985年生まれ。2014年、幼なじみとの友情を描いた自伝的作品『岡崎に捧ぐ』でデビュー。『きょうも厄日です』等、著書多数。※『anan』2023年7月12日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年07月09日羊毛フェルトで亡きペットと再会!引きこもり大学生×少女の成長譚『針と羊の舟』について、著者の幌琴似さんにお話を聞きました。「マンガのネタが思い浮かばず落ち込んでいたとき、本屋さんでリアルな兎の作り方を紹介した羊毛フェルトの本を見つけました。私は10年ほど前に兎を飼っていたのですが、ちょうど命日が近く、また会いたいなあと思ったんです」羊毛を特殊な針で刺して固めることで成形する羊毛フェルト。著者の幌琴似さんの願望は、本作で羊毛フェルトを始める花原に投影されている。花原は愛兎・ジュラを亡くしペットロスに陥り、東京の大学にも馴染めずにいる引きこもりの男子学生。師匠と仰ぐ小学生の弥生と公民館で落ち合い、手芸にいそしんでいる。「男の人が手芸をやっていたらかわいいなと思ったのと、小さい子のほうが引っ張っているような関係性が好きなので、この組み合わせになりました。私も一通りの手芸をしてきましたが、無心で手を動かすのはセラピー効果があるんですよね。羊毛フェルトで死んだペットを再現したいという目標を持つことと、黙々と作業することで、2重に癒される過程を描ければと思いました」といっても、本作に漂う雰囲気は基本的にコミカル。実際の製作工程はひたすら針を刺していく単調かつ地味な動きの繰り返しだが、ふたりのかけ合いや、申し訳ないけど笑わずにはいられない失敗、心に浮かんでは消える雑念・妄想などの賑やかな描写で、読み手を飽きさせない。「自分でも花原と同じ順序で作っているのですが、そのとき気付いたことやあり得そうなことを、絵的な面白さも重視して物語に落とし込んでいます。羊毛フェルトは効率よくできないというか、一針ずつ進めていくしかないので、急ぐのを諦めて時間をかけてやろうっていう開き直りの境地に至ることができるんです」パンダ、カワウソ、トイプードルなど、花原はレベルを上げながらいろんな動物を作るのだが、気になるのが弥生の反応。的確なアドバイスをしながらも、夢中になっている彼を見て複雑な感情を抱いてしまう。「弥生はものを作りたい人というより、他者に認められたい思いが強いんです。しかも彼女の場合は、母親がプロの作家で、自分も大人になったら勝手に上手くなると思い込んでいた節があって、実際はそうじゃないと気付き始めてもいる。どちらも私の経験を反映させた、思い入れのあるキャラクターですね」“繊維の彫刻”とも称される奥深い世界の一端に触れながら、ふたりが乗り合わせた舟の行方を見届けよう。幌 琴似『針と羊の舟』1ペットの兎を亡くした大学生が、小学生の天才クリエイター(?)に弟子入り。羊毛フェルトを通してさまざまな気付きを得る、ヒューマンコメディ。KADOKAWA770円©幌琴似/KADOKAWAほろ・ことにマンガ家。学生の頃からマンガを描き始め、コミティアなどで活動。商業マンガとしては、本作がデビュー作。10月に2巻発売予定。※『anan』2023年7月5日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年07月04日前作『イチケイのカラス』では、裁判官という職業を軸に裁判所で働く人々をリアルに描いた、浅見理都さん。本作『クジャクのダンス、誰が見た?』のテーマは“冤罪”だ。元警察官の父を殺した犯人は?なかったことにはできない真実。「『イチケイ~』でも少し扱った題材ですが、自分のなかで消化しきれた感覚が得られず、気になっていました。冤罪は個人に降りかかる最大級の不幸だと思っているのですが、ある日いきなり警察に捕まったらどうしよう、などと不安に思っている人はまずいないし、自分事として想像しにくいですよね。今回はもっとエンタメに寄せながら、もう一度自分なりに描いてみたいと思いました」事件が起こるのは、雪がちらつくクリスマスイブの夜。心麦(こむぎ)と父が暮らす一軒家が全焼し、元警察官の父が遺体で発見される。容疑者として逮捕されたのは、父が担当した凶悪事件で死刑囚となった男の息子。これによって事件は終息したかに思えたが、亡き父が遺した手紙には、その容疑者が犯人ではないことを示す内容が。そして心麦は“遺言”に従って、松風という弁護士のもとへ。「心麦は理想の妹像です。私は3人姉妹の末っ子で、弟か妹が欲しかったのですが、芯がしっかりある子に叱られたいっていう願望があって(笑)。一方で心麦は、何度も同じ失敗をするなど危なっかしい面もあるんですけど、応援したくなるような子に描けていればいいですね」大人びたところと子供っぽさを併せ持つ21歳の心麦に振り回される、飄々とした雰囲気の松風という、デコボコのバディも本作の読みどころ。そして多くの人がおそらく気になっているのが、このタイトルだろう。1巻でタイトルにまつわるエピソードが出てくるのだが、簡単に説明すると、もしもジャングルの中でクジャクが踊っていて、それを誰も見ていなかったとしたら、存在していないことと同じなのか、というちょっとドキリとするような意味が。「世界のことわざを紹介している本から見つけた言葉です。描こうとしていた内容にも合っているし、前作がカラスだったので、今回はクジャクにするのもいいかなと(笑)」父はなぜ殺されてしまったのか、そして父が主張するように冤罪であるならば、真の犯人は誰なのか。クジャクのダンスをないものにしないために、心麦と松風は奔走する。「冤罪は誰かひとりの責任で起こることではないと思うので、それぞれの立場の人をしっかり描いていきたいと思っています。3巻以降、物語はさらに加速する予定なので!」浅見理都『クジャクのダンス、誰が見た?』2松風と共に父を殺した犯人を捜す心麦。父が関わった過去の猟奇的殺人事件と複雑に絡み合い、翻弄されるクライム・サスペンス。月刊誌『Kiss』で連載中。講談社726円あさみ・りとマンガ家。埼玉県出身。「第三日曜日」で第33回MANGA OPEN東村アキコ賞を受賞。『イチケイのカラス』(全4巻)は映像化もされた。※『anan』2023年6月28日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年06月26日雀を追いかけて家の外に飛び出し、途方に暮れていた〈マルル〉。ボス猫〈ハチ〉のピンチを助けたことで2匹は“ツレ”となり…。過酷な野良生活をリアルに描き、猫マンガファンの涙を絞った『ツレ猫 マルルとハチ』。その著者が園田ゆりさん。「前に住んでいたのは野良猫が結構多い地域でした。毎日散歩していると、エサをくれる人を覚えてなついている子や、悲惨な状態で生きている子など、さまざまな猫を見るように。若いころはお金もないし猫飼育の経験もないしで勇気が出なくて、ひどい状態の猫を救えなかったなぁとふがいない気持ちでした。いざ飼おうとなっても、女性の一人暮らしだと譲渡会でなかなか合格できなくて、飼えるまでが長かった。いまは2匹と暮らしているのですが、そんな猫へのさまざまな思いをこじらせて生まれたマンガです」2巻の終わりで保護団体に捕獲されたマルル、ハチと〈サビ姐さん〉。3巻ではシェルターでの新生活に少しずつ適応しようとする姿が描かれ、それぞれの個性が炸裂。「私も猫にたくさん触れるまで、運動神経に優れた動物という意識があったのですが、猫でもドンくさい子はすごくドンくさいし、ずっと遊びたがりもいれば、遊びにまったく興味のない子もいるんですよね。保護猫カフェやシェルターなどにも行きますが、猫の個性については取材で知ったというより、動物観察好きが高じて自然に学んだ部分が大きいかもしれません」登場する猫たちはみな言葉をしゃべる。当然、作者のアテレコなのだが、猫がいかにも考えそうなことばかりだ。笑えるわ可愛いわで、眺めているだけで、んーたまらん!「マルルとハチたちが友情を意識しているとは思いませんが、お互い生存のためには何か助け合うぐらいのことはするだろうなと。作者の私が勝手にアテレコしているだけで、実際は違うのかもしれないけれど、生物としてあり得ないような大嘘は言わせないと決めています」また、3巻では、長毛が伸びっぱなしになっていて歯肉炎もひどく、野良生活で弱ってしまった猫〈けだま〉にフォーカスされている回もあり、エピソードは必見だ。「結構ライトに描いてるんですが、毎日毎日『明日は生きられるかな』という状態の野良猫がいるのだということを知ってほしい。この作品が、猫と人間の関わりを考えるきっかけになってくれたらうれしいですね」園田ゆり『ツレ猫 マルルとハチ』3猫捜索のうまい〈やすお〉や新人ボランティアの〈日野〉など猫シェルターの人間たちの仕事ぶりから、保護施設の様子もよくわかる。講談社748円©園田ゆり/講談社そのだ・ゆりマンガ家。兵庫県出身。本作は「コミックDAYS」で連載中。他の著作に、『きつねくんと先生』『あしあと探偵』などがある。※『anan』2023年6月21日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年06月20日ほそやゆきのさんによる『夏・ユートピアノ』。表題作は、ほそやさんにとっての初連載作品だ。ピアノ調律師の娘で修業中の米村新(あらた)が、世界的ピアニストの娘で弱視の駒木饗子と出会い、さまざまな化学変化が起きる。夢破れた者と夢にしがみつく者。立場は違えど呼応し合う友愛を描く。「学生のころ、女性調律師が主人公の、佐々木昭一郎監督の『四季 ユートピアノ』というドラマを見ました。主人公の栄子と、その師である宮さんという初老の調律師の関係が何とも心地よく、タイトルやキャラクターのアイデアのきっかけに。うまく自分の言葉で良さを説明できないのですが、ぜひ見てみてほしいです」驚いたことに、ほそやさんは調律の仕事について、調律師さんへの取材もしたが、主に本や動画で学び、アウトプットしたそうだ。それが滅法わかりやすくて、脱帽する。「調律師さんって、もの静かだけれど自我や信念が強い方が多いのかなという印象を受けました。私の中にある職人的な仕事への憧れを、そういう環境で仕事を学べたらステキだなと米村家の父娘に託しました」ほそやさんはコメディセンスも抜群。たとえば、新は幼いころからあちこちを音叉で叩き、その響きを楽しむ癖がある。結果、自分の太ももを青あざだらけにしてしまうさまは愛らしく、思わず笑いがこみあげる。「音叉は、自分でも買って叩いてみました。ちゃんと442Hzの音が出るように振動させるには結構強く叩かないといけなくて、子どもならあざだらけになりそうだなと思って思いついた場面です。ただ、描いている本人は『ギャグが全部滑ってる…』と思っていたので、望外にうれしいです。ネームを切っていても、作中で空気が軽くなる瞬間がないと自分も読者もしんどいという強迫観念で、笑える要素を入れています(笑)」一方、饗子は音楽の道に目の障害もあって挫折し、他者とのコミュニケーションを閉ざしたままだ。「饗子の置かれた環境が特殊なものに見える人も多いのかもしれません。ただ、私はとても普遍的な出来事だと思って描いています。いろんなことがうまくいかず、自分を大事にできなかった。それを一言で説明なんてできず、なぜこんな所に来てしまったのかなというぼんやりした感情の繭の中にいる印象で描きました」〈どこで間違えたんだろ〉と言う饗子に不器用ながら近づく新。少しずつふたりの距離は変わっていく。「本当に縮まってしまっている人に手を差し伸べるって難しいなとは私もよく思うことです。でも、こんなふたりの関係は好きですね」ほそやゆきの『夏・ユートピアノ』併録作「あさがくる」は四季賞2021春のコンテスト四季大賞受賞。宝塚受験に4度失敗したバレエ教室OG朝顔が受験を目指す16歳のくるみの家庭教師となり…。講談社770円©ほそやゆきの/講談社ほそやゆきのマンガ家。「鹿の足」が、モーニング月例賞「モーニングゼロ」2018年12月期奨励賞を受賞し、商業デビュー。現在、次回作を構想中。※『anan』2023年6月14日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年06月13日ショッキングな事件の裏にある社会の歪みを浮かび上がらせ、深い余韻を残す無二の作風。ウチヤマユージさんのマンガを、ずっと紹介したかった。最新刊『もろびとこぞりて』も期待を裏切らない衝撃作!エスカレートする加害者バッシング。正義の欺瞞を暴く令和版「罪と罰」。「もともと実在の事件などをモチーフにした作品も描くので、事件ルポなどをよく読みます。ただ、何が起きたかや犯罪者自身については扱われても、周りの家族に目を向けたものは少ない印象があって。加害者家族はその後どんなふうに生きているのか、以前から興味がありました」描かれるのは、加害者家族をめぐる、市井の人々の悪意の暴走と、再生への希望だ。実社会でもSNSでも、加害者のみならずその家族や友人、同情を示した人にまで容赦ないバッシングが起こるのは見慣れた光景。だが、その際限のなさを含めフィクションとして眺めると、大義名分を振りかざした“ふつうの人”の愚かさがはっきりと伝わってくる。「人生のいろいろで少し認識が狂ってしまった、という感じの人たちを描くのが好きなんです。もちろん本人にとってはおかしくなっている意識があまりない。何かの劇的なきっかけでその人が急に変わるわけではなくて、少しずつ曲がった方向に誘導されていくのではないかなと。認知の歪みではなく、認知が曲がる感じを、淡々と描いていきたいという思いは昔からあります」前半は重苦しい場面が続くが、驚きの展開が待っている。何より、いじめられっ子の海藤亮介と転校生・大島真琴とのボーイ・ミーツ・ガールは甘酸っぱく、一筋の光となる。映画監督志望だったというウチヤマさんのマンガは、実際、一本のショートフィルムを観るようだ。「北野(武)映画や、コマ割りは小津安二郎のカメラワークに影響されているかもしれません。本書も、着想のきっかけのひとつが岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』なんですが、自分でも、初めに考えたこととはどうも違ってしまった気がするなと思うんですけれど(笑)」ウチヤマさんは、連載でもすべて最初に完成させてしまい、それを分割で提出するやり方なのだそう。「ハマってしまったパズルは動かせない」と言うが、それくらい完成度が高いのだともいえる。サスペンスフルなメインストーリーに加え、セクハラ、ネグレクト、DVなど、簡潔に描かれたコマで裏側にある世界まで連想させる凄み。他の作品もぜひ手に取ってみて。『もろびとこぞりて』クリスマス・イブに起きた新宿駅無差別殺傷事件。町田市から越してきた一家が、その加害者家族ではないかと噂に…。正義が凶器になる怖さ。日本文芸社792円©ウチヤマユージ/日本文芸社ウチヤマユージマンガ家、個人サークル「キツネツカ」主宰。「コミティア」等で活動を始め、2013年、『夏の十字架』で商業デビュー。他の著作に『よろこびのうた』など。※『anan』2023年6月7日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年06月05日野生のもぎさんによる、『オトリ―過剰殺傷(オーバーキル)取締官・斑目詩子(まだらめ・うたこ)―』をご紹介します。日々ネット上で当たり前のように起こっている、炎上や誹謗中傷。対岸の火事と捉える人も多いかもしれないが、本当にそうなのだろうか。「ドラマが好きで、バディものによく出てくる車の中で張り込むような話を描きたかったんです。一方で同じ張り込みでも、週刊誌などはいきすぎなんじゃないの?と思うこともあったりして、一方的にやられるのではなく、それを成敗する話にしたら面白いんじゃないかと思いました」と著者の野生のもぎさん。本作において「オーバーキル」が意味するのは、主にネット社会で激しい攻撃の標的となり、心身の健康を著しく害される過剰制裁のこと。その犠牲者を救うために、政府が厚生労働省に新設したオーバーキル取締部、通称「オトリ」。その取締官に抜擢された、斑目詩子と迎井史也(むかい・ふみや)が奔走する物語だ。1巻で登場するオーバーキル事案は、新人女優の恋愛スキャンダル、ラーメン批評家による店の無断掲載、ストーカー被害、失言による炎上など。どれも実際に聞いたことがあるような話ばかりだ。「テーマを選ぶ際は、鮮度ももちろん大事にしていますが、何よりも本当に困っている人に対して解決策を提示できたらいいなと思っています。今は有名人だけでなく、一般人も炎上する時代なので、ごく身近なものとして描いていきたいですね」現実では今のところ、被害者が泣き寝入りするしかなかったり、うやむやになったりするパターンがまだまだ多い印象だが、マンガならではの“御破算”という解決法が痛快。「読んでスカッとできるオチを大前提にしています。やりすぎがテーマなので、単純に被害額と加害額の金額面でイーブンにするだけでなく、精神的にも肉体的にもやられた以上でも以下でもなく、やられた分だけきっちりやり返す。そろばん片手に、斑目がそこまで被害者を導いてくれるのが御破算なんです」シリアスにも振れる内容だが、あくまでも「こんなところで笑かすんか!?っていうような、深夜ドラマ的テンション」にこだわる。何を考えているのかよくわからないものの、正義感の強さは伝わってくる斑目と、相性がいいのか悪いのかこれまたよくわからない迎井が、淡々と弱きを助け、強きを挫く様が癖になる。「今気になるのは、アスリートへの野次や誹謗中傷。多様性という言葉で逆に枠をはめ、お互いを許容しないような矛盾もいつか描いてみたい。それこそネタには困りませんね」『オトリ―過剰殺傷取締官・斑目詩子―』1過剰制裁(オーバーキル)を取り締まり、弱者のために奔走する“マトリ”ならぬ“オトリ”の熱き戦い。「コミックDAYS」で連載中。2巻が5月23日発売予定。講談社715円©野生のもぎ/講談社やせいの・もぎマンガ家。第1回Dモーニング連載獲得コンペ「最強ヒロイン」で連載権を獲得。本作でデビュー。Twitterは@yaseino_mogi※『anan』2023年5月17日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年05月16日