人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは、レジェンド級の作家からもリスペクトが絶えない、83歳のマンガ家・水野英子さん。最終回となる今回は、先生の人生を支えたモットーと、子育てのお話を。自分を信じ、進むこと。それが私を支えてきました。’60年代の終わりから’70年代初頭、若いマンガ家から仕事に関して相談を受けることが増えました。そんな中で〈著作権〉という概念があることを知り、詳しい方を招いて勉強会を開いたことも。でも出版社はそんな私の動きを警戒したので、結果、不利なこともいろいろありました。その後、私は未婚で子供を産み、子育てのために執筆の時間も機会も減り…。40歳を越えようやく時間に余裕が出たときには、時代が変わっていて、もう連載をさせてくれる場所がなかった。でも、ならば自分で描けばいいと自費出版で本を制作。それもとても楽しかったです。昔から私は、自分のしていることは絶対に間違っていないと信じてやってきました。上手くいかないときも、どうすれば解決できるかを考えました。自分のしてきたことを“失敗”だと思ったことはありません。全ては経験です。物事に対するその考えは、83歳になった今もまったく変わりません。子育ては大変です。若い皆さん、本当に頑張って!32歳で子供を産み、シングルマザーとしてひとりで子育てをしました。妊娠がわかったときは、中学生のときからマンガ一筋でやってきた自分に、初めて人間らしい出来事が訪れたと思ったので、何があろうと産んで、ひとりで育てようと思いましたね。でも私は両親を早くに亡くし、兄弟姉妹もいなかったので、子育てを手伝ってくれる人はだれもいない。だから、本当に本当に大変でした。子育ては、当然ですが私がマンガで描いてきたようなファンタジーとはまったく異なり、泣いたらおむつを替えたり食事を与えたり、危険なことがないかひたすら見守っていなくちゃいけない。仕事にどんなに集中していても、子供は待ってくれません。ノッてきたときに中断させられるのが一番つらかったですね。今振り返っても、よくやってきたなと思います。これを読む方の中に、きっとこれから子供を産む人もいますよね。本当に大変ですから、皆さん頑張ってくださいね。みずの・ひでこマンガ家。1939年生まれ、山口県出身。’55年、15歳でデビュー。’70年に小学館漫画賞を受賞した『ファイヤー!』が、先日『復刻版 ファイヤー!』上・下として文藝春秋より復刊し、話題に。※『anan』2023年5月3日‐10日合併号より。写真・内山めぐみ(by anan編集部)
2023年05月03日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは、’60年代から’70年代にかけて描かれた作品『ファイヤー!』が先日復刻され話題になった、マンガ家の水野英子さん。今読んでも斬新なこの作品が生まれた経緯を伺いました。第3回目をお届けします。恋愛すらご法度だった少女マンガに、新たな風を。現在、恋愛は少女マンガに必須のテーマですが、昔は“男女のラブ”を描くのはご法度でした。映画や文学、オペラの中で美しく描かれるロマンスを見るたび、私もマンガで恋愛を描きたいという思いが大きくなりました。そして1960年に初めて、男女の恋愛をテーマにした『星のたてごと』という物語を発表。その後は、ロシア革命を背景にした『白いトロイカ』で歴史ものに挑戦。今振り返ると、好きなテーマでマンガを描ける喜びに溢れていた、そんな20代だったと思います。一方、海の向こうではキング牧師の公民権運動やベトナム反戦運動が起こっていて、私はニュースを通じて当時のアメリカの若い人のあり方やパワーに触れて、それに惹かれてしまったんですね。そして当時、反体制のカルチャーといえばロック。私はアメリカ、そしてロックを描きたいと思い、自費で1か月の欧米旅行に出ました。それをベースに描いたのが、『ファイヤー!』という作品です。同じ仕事をしているのに、どうして男女で差があるの。『ファイヤー!』は、感化院を出たアロンという青年が、音楽を追い求める物語です。私がこの作品を描きたいと思った理由は、私自身も当時の社会に対して疑問を持っていたからです。一番大きかったのは、男女の差別。マンガ家という同じ仕事なのに、男にはできて、女にはできないことがたくさんあった。また女性作家の原稿料はとても安く、「一桁違った」なんて話もありましたしね。この作品のために、それまでのロマンティックな作風を捨て、鋭い線を出すために道具も変えました。そんな強い思いで連載をスタートしたのですが、最初は読者からの反応がまったくない(笑)。日に何通も来ていたファンレターもゼロに…。でもそんなこと全然気になりませんでした。だって私自身は、自分が描いているものは絶対に間違っていないと思っていましたからね。その作品が時を経て、今再び単行本になった。とても嬉しいですね。ぜひ今の若い世代にも読んでほしいです。みずの・ひでこマンガ家。1939年生まれ、山口県出身。’55年、15歳でデビュー。’70年に小学館漫画賞を受賞した『ファイヤー!』が、先日『復刻版 ファイヤー!』上・下として文藝春秋より復刊し、話題に。※『anan』2023年4月26日号より。写真・内山めぐみ(by anan編集部)
2023年04月25日何かと気が散りやすく、しかも想定外の事態に陥ると途端にパニック気味になる、主人公の花田もね。ある晩、海辺で自分と同じ〈大丈夫じゃない感じ〉の匂いがした不思議な生き物の芦川さんと出会い、彼ももねの〈大丈夫を目指す活動〉に参加することに。もねや彼女に寄り添う芦川さんのやることなすことに共感し、元気をもらうファンが続々と!そんなユニークなコミックが、井上まいさんの『大丈夫倶楽部』だ。大丈夫な自分になりたい。でも、ならなくても大丈夫と熱くエール。「私も仕事がなかなか、にっちもさっちもいかなくなった時期があったんです。もねのように『大丈夫になりたい』と思いつつ、やり過ごしていた実体験が発想のきっかけです。翻案していますが、もねが味わう焦りや落ち込み、ちょっとしたきっかけで快復する心情のアップダウンを描く上での手がかりにしています」もねを面白がりつつおおらかに見守る幼なじみの早瀬や、書道教室の爽やかお兄さんで大丈夫を体現しているゲンローさんこと玄郎(くろう)、衝突しがちなもねの母など、もねと周囲の人たちとの交流が楽しく、それぞれにいい味出しているキャラクター。なかでも芦川さんの存在感は大きい。「話し手と聞き手の両方がいた方がストーリーを動かしやすいというのはあるのですが、『自分にも芦川さんみたいな人がいたら、もう少し気楽だったかも』という気持ちもあったのかも。見た目に関しては、試行錯誤した末に、いまの丸っこいフォルムになりました」3巻に入ると、もねが偶然知り合ったアキラと再会したり、芦川さんと謎の探偵事務所との縁が見えてきたり、作中作を含め宇宙というモチーフが作品全体とつながってきたりと、物語はさらに波乱の展開に。本作の裏テーマでもある〈ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)〉=いまいる場所を大丈夫な場所にする大切さが、いっそう色濃くなる。「失敗したくないと思ったところで失敗してしまう時はしてしまうもの。ただ、失敗していま大丈夫じゃなくても仕方ないことだと受け止められるようになれたらいいね、というメッセージは伝えたいです」本作は、上から下へ縦にスクロールして読む形式で連載が始まったのだが、ふつうの横開きのマンガ形式にも対応している。「画面を作る上で考えなくてはいけない条件がまったく違うので、最初は挑戦でした。スクロール形式は自分のテンポで読むアニメみたいな印象なんです。そんな縦読み用のギミックも入れつつ、ページをめくると大胆に場面展開できる横読みならではのダイナミックさも取り入れて、どちらの読者にも楽しんでもらえる作品を目指したいですね」井上まい『大丈夫倶楽部』3現在、ウェブトゥーン「マンガ5(ファイブ)」で連載中。出張掲載としてウェブサイト「路草」でも一部読める。1巻は書籍と電子書籍、2~3巻は電子書籍のみ。レベルファイブ748円©LEVEL‐5 Inc.いのうえ・まいマンガ家。大阪府出身。2013年商業誌デビュー。’17年、小学館『ゲッサン』にて「春のムショク」(完結済み、全4巻)を初連載。※『anan』2023年4月19日号より。インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年04月18日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは、1955年にデビューをした、マンガ家の水野英子さん。約70年の作家活動を経て改めて思うマンガの魅力とは?また、かつて女性作家がいなかった時代のお話など…。第2回目をお届けします。自分を好きに表現できる、それがマンガです。白い紙とペンさえあれば、自分の好きなことを好きなように描くことができる。友だちに話しても理解してくれないような世界だってマンガには描ける。その自由さこそがマンガの神髄であり、最大の魅力だと思います。でもマンガには受難の時代があり、昭和の間には“子供に良くない”とマンガを敵視する動きがあり、子供向けマンガ雑誌に対する焚書運動もあちこちで起きました。それ以外にもマンガにはいろいろな圧力がかけられてきたものの、結局みなさんがマンガを読むのをやめなかった、つまりおもしろかったから、生き延びたんです。そして今は、世界の人が日本のマンガを読んでいる。私もマンガ家としてとても喜ばしいです。ただ個人的に残念なのが、私が若かった頃はマンガを単行本として出版しない時代だったので、私は自分の当時の単行本があまりないんです…。現代のみなさんにとっては、まったくわからない感覚ですよね、きっと(笑)。少女向け作品も男性の作家が執筆。理由は…。18歳で上京し、豊島区にあったトキワ荘に住みました。トキワ荘とは、駆け出しのマンガ家ばかりが住んでいた木造2階建てのアパート。私が住んでいたときは、『ドラえもん』の藤子・F・不二雄さん、『サイボーグ009』の石ノ森章太郎さん、そして『天才バカボン』の赤塚不二夫さんなどが居住中でした。みなさんもちろんまだまだ若手の時代。ちなみに唯一女性で住んでいたのが私です。当時、女性マンガ家はほぼ皆無。実は少女向けのマンガも男性が別名で描いていたんです。『ゴルゴ13』でおなじみのさいとう・たかをさんも、別の名義でロマンティックな作品を描いていらしたんですよ。というのも、あの頃の女性は“嫁に行く”のが当たり前だったから。あの時代、仕事に生きる女性なんてほとんどいなかった。でも私に限って言えば、ただただマンガを描きたいから描いていた。「普通の女の生きる道」?そんなものを考えたこともありませんでしたよ。みずの・ひでこマンガ家。1939年生まれ、山口県出身。’55年、15歳でデビュー。’70年に小学館漫画賞を受賞した『ファイヤー!』が、先日『復刻版 ファイヤー!』上・下として文藝春秋より復刊し、話題に。※『anan』2023年4月19日号より。写真・内山めぐみ(by anan編集部)
2023年04月16日原作は『月刊アフタヌーン』で連載中の人気マンガ。岩倉美津未と志摩聡介との出会いからして、少女マンガによくある学園恋愛もの?と思わせるが、実はそうではない。美津未の素朴で真っすぐすぎる性格は、東京ではちょっと浮き気味。はじめは戸惑うクラスメイトも、少しずつ美津未に感化され、距離が近づいていく。心の機微を丁寧に描いた原作をどうアニメで表現するのか?『スキップとローファー』の監督を務める出合小都美さんに話を聞いた。ヒーロー的な女の子を少女マンガの様式で描く。『スキップとローファー』「高松美咲先生のマンガは前作も読んでいて、ぱっと表現できない人の感情や感覚を描くのがうまいという印象がありました。この作品も、『普通の少女マンガとはちょっと違うぞ』と感じましたね」マンガ原作のアニメ化では、原作の大事なところは絶対にずらさないことを意識している出合さん。「今作では、登場人物の心の微妙な揺らぎを丁寧に拾っていくようにしています。でも、高松先生が『ベースはコメディ』とおっしゃっていたので、その要素も大切に」志摩は、過去のある出来事によって無意識のうちに自分の気持ちを押さえ気味なところがあった。しかし、不安があっても一歩踏み出し、自分の道を切り開いていく美津未に影響されていく。「志摩にとって美津未はヒロインじゃなくて、ヒーローみたいな存在なんです。志摩から美津未への、キラキラした視線が伝わると嬉しいです。私は、『スキップとローファー』という作品はある種のヒーローものだと思っていて。キャラクターたちの抱えている色々な負の感情を、美津未が、本人も悩みながらも持ち前の明るさと純粋さで次々と殴り飛ばし、ハッピーにしていくイメージです」他にも、オシャレで気遣い屋だが少し計算高いミカ、抜群の容姿を持つ結月、人見知りの誠などのクラスメイトが登場。友達同士の楽しいやりとりが描かれる一方、コンプレックスの裏返しで相手を軽く見てしまったり、恵まれた容姿が理由で嫌な思いをしたせいで人と距離を作りがちだったりと、それぞれがちょっと嫌な自分を抱えつつ、学校生活を送っている。視聴者も、心の柔らかいところを触られたような気持ちになり、美津未の明るさに背中を押される。また、自然あふれる美津未の故郷と、きらきらした都会の対比も、作品の魅力のひとつだ。「美津未が生まれ育った田舎は高松先生のお母様のご実家がある地域がモデル。ロケハンに行き、写真をたくさん撮ってきました。リアリティの中にも、アニメならではの柔らかい雰囲気が表現できているはずです」柔らかい雰囲気は、キャラクター描写にも反映されている。「原作では志摩のふわふわした髪が特徴ですが、いかにもアニメっぽい造形で描くと硬そうに見えてしまいます。キャラクターデザインの梅下麻奈未さんがかなり試行錯誤していたので、注目してみてください」こうして描かれた映像に音楽や声優の生きた声を重ね、原作の世界観により深みを出していく。「仕事や人間関係に疲れている人は多いはず。夜にテレビをつけたらこのアニメが流れていて、『なんかいい感じだな』くらいで気軽に観てもらえればと。登場人物は高校生ですが、人間関係の悩みやコンプレックスは大人も同じようなもの。美津未たちが変わっていく姿を見て『そういう考え方もあるな』と気づいたり、ホッとしたりできる作品です」『スキップとローファー』STORY石川県の過疎の町で生まれ育った15歳の岩倉美津未は、東京の高偏差値高校に首席入学し、完璧な人生設計まで持っていた。入学式当日、慣れない都会の電車で迷い途方に暮れている時に、同じく新入生の訳ありイケメン志摩聡介に声をかけられる。美津未の、そして彼女と出会って変わっていく登場人物たちの高校生活が幕を開ける!Check it!高松美咲の原作マンガは『月刊アフタヌーン』(講談社)で連載中。単行本は既刊8巻。TOKYO MXにて毎週火曜23:00~放送中。ほかAT‐X 、北陸朝日放送、BS 朝日、関西テレビ放送でも放送。DMM TVでは地上波同時配信も。Netflix、Amazon Prime Video、U-NEXT、ABEMAなど、各種配信も。出合小都美さん本作では監督・シリーズ構成を担当。アニメ監督、演出家。初監督作は『銀の匙 Silver Spoon』(第2期)で、『ローリングガールズ』『夏目友人帳』ほか多数の監督、演出を務める。※『anan』2023年4月19日号より。取材、文・川明子(by anan編集部)
2023年04月14日株式会社文藝春秋(本社・東京都千代田区:社長・中部嘉人)は、文春オンライン内のwebコミックサイト、「文春コミック」を大幅リニューアル、4月11日(火)より総合コミックサイト「BUNCOMI」としてスタートします。「BUNCOMI」では、読者のみなさまがよりコミックを楽しみやすいようにデザインを一新、最新作や作品の情報が一目で分かるようにいたしました。リニューアルに合わせて4月11日から『女(じぶん)の体をゆるすまで』のペス山ポピー改めスタニング沢村さんが描く女子高生の成長譚『佐々田は友達』、山崎紗也夏さんの自身初となる料理漫画『にゃーの恩返し』の2本の新連載が開始。司馬遼太郎氏の代表作を『コウノドリ』の鈴ノ木ユウさんがコミカライズした「週刊文春」人気連載中の『竜馬がゆく』の平日毎日連載も始まります。さらに麻耶雄嵩氏の衝撃ミステリー『隻眼の少女』(漫画・pikomaro)、ニコニコ静画で人気のおちRさんが描くファンタジー『勇者様、昨夜もお楽しみでしたね。』、『トーキョーカモフラージュアワー』の松本千秋さんが人妻の日常を赤裸々に描いた書き下ろし読み切り『灰汁女(あくじょ)』といった注目作が順次掲載されます。読み応え満点なコミックサイトとして大きく生まれ変わった「BUNCOMI」にご期待ください。「BUNCOMI」とは文春オンライン内の総合webコミックサイトです。会員登録などは一切不要、完全無料で全作品を読むことができます。リニューアル日4月11日(火)サイトURL 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年04月11日魅惑の施設のレポートやドキュメンタリー、さらには物語やラジオ番組も。サウナブームはエンタメにまで波及!Movie自宅や会社、バスにも!まさに生活のオアシス。『サウナのあるところ』(2019)多様なサウナ室で寡黙な男らが汗とともに秘めた想いを語り合うドキュメンタリー。本場・フィンランドでは社交場であることが分かる。監督・脚本/ヨーナス・バリヘル、ミカ・ホタカイネン©2010 Oktober Oy.閉店日のドタバタ寸劇に磯村勇斗さんも登場。『サウネ』(2022)従業員に片想い中の客や熱波師など。歴史に幕を閉じる日に起こるドラマを描く。監督・脚本/松居大悟『MIRRORLIAR FILMS Season3』内で視聴可能。ABEMAにて独占配信中&DVD販売中。©2021 MIRRORLIAR FILMS PROJECTYouTube聖地・北海道よりサウナ情報を発信。「&sauna」全国のサウナとその先に広がるカルチャーをYouTube・Podcast・地上波番組で紹介。これまで200軒超(’23年3月中旬時点)を取り上げてきた。北海道文化放送などでも毎週水曜21:54~放送中。女友達と一緒にサ活をしている気分に。「あせだくサウナ / DRIPPIN’ SAUNA」学生時代からサウナに癒されていたタレント・わちみなみによるガイド。学生時代の同級生と訪れてルポをしているため心の距離が近く、連れ立って蒸されているような感覚を味わえる。Music & Podcast芯まで響くロウリュの音で別世界へと誘う。『MUSIC FOR SAUNA QUIET NIGHT ECHO』とくさしけんご“夜の残響”をテーマに没入度の高い音を奏でる。ドラマ『サ道』などのBGMを生んだ作者の最新盤。心身を解放する休憩時におすすめ。全16曲。Spotifyなどにて配信中。¥2,200(Vihta Records)“ととのい”は自由だと、背中を押してもらえる。『藤森慎吾の有楽町サウナクラブ』サウナ大好き芸人・藤森慎吾とゲストが答えるサ活ステップの所要時間が十人十色で、ルールに縛られなくて大丈夫だと確信。ツウでも間違うサウナクイズも注目。毎週水曜19:37に配信。Book & Magazine日本の37スポットをエッセイで紹介。『休日ふらりとサウナ旅』岩田リョウコ(いろは出版)長野県・野尻湖の『The Sauna』を「フィンランドの森に住むおじいさんの雰囲気」と例えるように、独創的な見出しに引き込まれる。国内外のサウナを知り尽くす著者だからこその一冊。¥1,650ブームの火付け役が刊行した指南書。『はじめてのサウナ』文・タナカカツキ絵・ほしゆりこ(リトルモア)極寒の地で太陽のような暖かさを求める農民によってサウナが生まれたという逸話から、みんなが苦手な水風呂克服法まで。かわいいイラストとやさしい文でエトセトラを解説。2018年に刊行。¥1,540©リトルモア「私とサウナ」を題材に誌面でおしゃべり。『トトノイ人』(BCCKS Distribution)1人に焦点を当て、サウナとの関係性を深掘りし、ゲストの魅力も引き出していく。これまで、とくさしけんご、岩田リョウコなどサウナを愛する面々が登場。不定期刊行。データ版¥300紙版¥700蒸されることで人生も上向きに?『お熱いのがお好き?』大町テラス(イースト・プレス)仕事と恋の悩みもサウナに入れば吹き飛ぶ!?独身に戻った33歳の主人公が“ととのい”を重ねるたびに前向きに、肌は美しく変わっていく。子ども問題など世代特有のゆらぎも軽やかに描く。¥880©イースト・プレス※『anan』2023年4月12日号より。取材、文・松岡真子(by anan編集部)
2023年04月09日将棋のマンガだが、ルールを知らなくても十分に楽しめるマンガである。作者は、移民社会としての日本をSF的に描いた『バクちゃん』で話題を呼んだ、増村十七さんだ。「名人を目指す過程に焦点を当てたマンガは、読むのは好きなんですけど、自分が挑戦するようなものではない気がして。先人たちが描いていなくて、かつ気になっていたのが、トップの戦線に行くことのできていないプロの人たち。プロになった時点でみなさん天才といえますが、上には上がいるので一番になれない人はどういうモチベーションでやっているのだろうと思ったのです。そしてそれをコメディで描けたら、だいぶ読みやすいんじゃないかなと」花四段こと花つみれは、プロのなかではピラミッドの下のほうにいる棋士。将棋にはごく真剣に取り組んでいるものの、対局中にちょくちょく雑念に惑わされてしまう。浮世離れした雰囲気は、たしかに並外れた頭脳を持つプロ棋士っぽいのだが、こちらが“つかめなさ”を感じるのには、実はこんな理由があった。「この作品は最初にツイッターで発表しているのですが、ストーリーもキャラクターもまずはそこで反応を見て、だんだん固めていきました。第1話で、対局に関係ないことをいっぱい考えてしまう展開も、ギリギリまで勝敗を決めていなくて。だけどあそこで花四段が負けたことで、“負けてもいい将棋マンガ”になったんですよね。今思うと、あの選択は大きかった気がします」花つみれの日常は些細な事件が頻発する。対局に向かう途中、工事現場でずぶ濡れになったり、対局時に昼食のメニューがなかなか決められなかったり、ネット中継の解説の仕事でハプニングに陥ったり……。笑いが幾層にも重なっている。「棋士の方への取材で聞いたことや、配信を見て気になったことなど小ネタをストックしておいて、どんなエピソードとつなげられるか考えるんです。でもこれだけは言っておきたいのですが、実際のプロの方は本当に真面目で、このマンガほどふざけている人はいませんので(笑)」2巻では、花四段を一方的にライバル視している友人の意外な一面や、女性初のプロ棋士を目指す、花四段の妹弟子の苦悩も描かれ、感情の振れ幅がより大きくなっている。「プロ棋士は全員幼なじみといえる関係性で、子どもの頃から知っている相手と戦い続けています。だからこそお互いの過去の話が面白いというのも、描きながらわかってきました。3巻でどう動くかわかりませんが、花四段の過去を掘り下げるような展開も描いていきたいです」増村十七『花四段といっしょ』2雑念多きプロ棋士・花つみれ四段と、将棋界の愉快な仲間の日常を描いたコメディ。最新話はTwitter公式アカウント(@hanayodan)で読むことが。朝日新聞出版770円©増村十七/朝日新聞出版ますむら・じゅうしちマンガ家、イラストレーター。2012年、「のんちゃん!の破壊日記」で商業誌デビュー。代表作に『バクちゃん』(全2巻)。※『anan』2023年4月12日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年04月09日人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは、マンガ家の水野英子さん。デビューはなんと、今から68年前です!第1回目をお届けします。小学校3年生で、マンガ家になる運命が定まりました。私が小さい頃といえばまだ戦後間もない時代で、自分の身の回りの世界はまったく楽しくないものでした。そんな中で私が夢中になったのは、本。本は、一瞬にして自分を別世界に連れていってくれるじゃないですか。なので学校から帰るとかばんを放り出し、10円を握りしめて貸本屋に行き、好きな本を1冊借りて読むのが毎日の楽しみでした。ある日、貸本屋さんの本棚に『漫画大学』という本があるのを見つけ、何の気なく開いてみたら、かわいい絵が並んでいるマンガで、しかもSFにファンタジー、ミステリーなどジャンルの違うお話が入っている。これはおもしろそう!と借りてみたら、その本はなんと、手塚治虫先生によるマンガの描き方入門だったんです。読み終わったときにはもう、「私はマンガを描くしかない!」と決意するほど、手塚先生とそしてマンガに心を奪われました。今思えばその小学校3年生での出来事が、人生を決めたんだと思います。手塚先生で始まった夢、思わぬ形で実りました。その後、自分でもマンガを描き始め、中学からは雑誌に投稿するようになりました。でも、佳作にはなるものの賞はもらえず。マンガ家は、なれたとしても副業か…と思い、中学卒業後は就職の道を選びました。卒業をした3月、一通の茶封筒が届きました。差出人は見知らぬ人で、そこには“大日本雄弁会講談社”と、なんだか怖そうな名前が。開けてみると、「手塚先生のところであなたの原稿を拝見しました。大変良い絵を描いているので、カットやコママンガなど、小さいものを描いてみませんか?」という手紙が。手塚先生?!執筆?!もう頭はパニックです(笑)。どうやら審査員に手塚先生がいらっしゃって、成り行きはわかりませんが、なぜか先生の家にあった私の原稿を見た編集者に、先生が「いい線行ってるから、育ててみたら?」と言ってくださったそうなんです。手塚先生で始まった私の夢が、手塚先生によって繋がった。嘘のようですが、本当のお話なんですよ。みずの・ひでこマンガ家。1939年生まれ、山口県出身。’55年、15歳でデビュー。’70年に小学館漫画賞を受賞した『ファイヤー!』が、先日『復刻版 ファイヤー!』上・下として文藝春秋より復刊し、話題に。※『anan』2023年4月12日号より。写真・内山めぐみ(by anan編集部)
2023年04月08日ショートムービーのような余韻とハッとさせられる印象的な会話。田沼朝さんの『四十九日のお終いに』は、一編一編が忘れがたいオムニバスコミックだ。商業誌未発表作品を含め、読み切りと表題作の後日談となる描き下ろしの全9編を収録。ありそうでなさそうな1対1の絆。各編に漂う空気感にはまる人、続出。「1話めの『海はいかない』は、編集さんとの打ち合わせのときに、大人になってから出会った人と仲良くなることって、ちょっとめずらしいしワクワクするよね、というところから物語が広がっていったような記憶があります」女性ふたりの距離感とテンポのいい会話の妙に痺れる短編。女性会社員の高森は、社外の女性とひょんなきっかけで、休憩所でおしゃべりする仲になる。何も起きない夏なのに、やけに思い出深いものになりそうな、ガール・ミーツ・ガールの秀作だ。「私も会社員時代に、しゃべったことはないものの、なんとなく顔見知りという別の職場の人がいました。私には話しかける勇気はなかったですが、思い返すと、あのふたりみたいに話すことができたら楽しかったのかもしれないですね(笑)。高森たちはこの関係がずっと続くとも思っていないでしょう。それでもこの出会いの特別感はうらやましいなと。自分の憧れを描いた感じです」表題作は、石川青年が父の葬儀で幼なじみと再会したことからストーリーが動いていく。父権的な父親が亡くなり、母親の口からこぼれたひと言に傷ついた石川。家族の難しさと無二の友情の描き方が繊細で、読者を揺さぶる。「彼らは20年来の幼なじみで、疎遠だった時期もあります。だけど、ここからここまでが友情というように、パチンとスイッチが切り替わるわけではないんじゃないかと。長く一緒にいるからこそグラデーションな関係性を振り返ることができる。それこそが、かけがえのないものかも」なんといっても感服するのは、田沼さんの抜群のネームセンスだ。〈夏なのに勤労で日々が溶けていく…〉〈行動こそが人生をつくるとだけ言っておきますよ〉等々、ハッとさせられる名フレーズが随所に。「作品に取り掛かる前に、ヒントを求めてスマホのメモをスクロールしつつ眺めたりすることもあるのですが、実際はほとんど使えないですね。でも『こんなことを考えていたのか』という発見もあって、それが取っ掛かりになったり」商業誌掲載されたのはデジタル作品だが、同人誌時代のアナログの雰囲気を踏襲しているそう。「生活感を描くのが好きなんですね。それと余白を大事にして抜けをつくることにはこだわっています」田沼 朝『四十九日のお終いに 田沼朝作品集』男×男、男×女、女×女、男×かかと(?)など、描かれるのは、基本、1対1の関係。誰かと出会ったり、誰かがいなくなったりの、小さな変化を見つめる。KADOKAWA814円©田沼朝/KADOKAWAたぬま・あさ大阪府生まれ。2014年より同人活動を始め、’21年5月商業誌デビュー。本作と、現在『ハルタ』連載中の『いやはや熱海くん』1巻が同時刊行。※『anan』2023年4月5日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年04月03日「このマンガがすごい!2023」オンナ編第1位を獲得するなど各賞を受賞し、話題を集めているトマトスープさんの『天幕のジャードゥーガル』。13世紀、世界に名を轟かせたモンゴル帝国が舞台なのだが、構想はなんと10年以上。「学生の頃、世界史に興味を持ち始めたのですが、モンゴルって大草原の勇壮なイメージがありますよね。だけど国の仕組みや遊牧民の暮らしなどを調べていくと、先入観が覆されてどんどん好きになり、趣味で調べる時間が長く続いていたんです」そしていよいよマンガにする段になって焦点を当てたのが、後宮、つまり女性たちの生き様だった。「当初は歴史上、より有名なドレゲネ(チンギス・カンの三男オゴタイの第6妃)を主人公にするつもりでしたが、モンゴル帝国はスケールが大きいので動きのある人物がいいと思いました。それと私自身、イスラムの歴史も好きなので、そっちの世界から来た人を、と考えたのです」シタラ、後のファーティマ・ハトゥンは、当時世界最高レベルの医療技術や科学知識を誇ったイラン出身。1巻は、奴隷でありながら高い教養を身につけたファーティマが、モンゴル帝国の捕虜となり後宮に仕えることになる、いわば序章にあたる。「ドレゲネはファーティマというイスラム教徒の女性から意見を操られていた、などと歴史書には結構悪しざまに書かれています。だけど裏を返せば、侍女が国を操っていたという話は、マンガ的にも想像の膨らむ余地があって面白いと思いました」2巻では、ファーティマとドレゲネの運命的な出会い、ファーティマ同様、モンゴルを憎むドレゲネの過去、チンギス・カン亡き後のパワーバランスの変化などが描かれ、いよいよ本編が動き出した感がある。「話作りも、作画も時間がかかるのですが、調べ物をしている時間が一番長いかもしれません。この論文にヒントがありそうだけど、今から取り寄せていたら間に合わないから、国会図書館に行ってみようとか、そんなことの繰り返しです。絵に関しては、残っている中世の写本が平面的だったりするので、あえてそういったリアリティに寄らない描き方を真似してみたりもしています」多くの人にとって未知の世界の物語が、こうして注目されることには素直に驚きと喜びを感じている。「私が面白いと感じたことをそのまま描けば、きっと面白いと感じてくれるはずだと思っていましたが、こんなに共有できていいの!?という気持ちです(笑)。でもこの時代の面白さが認められて、嬉しいですね」大帝国を揺るがす女性たちのドラマ、今からでも追いつけます!『天幕のジャードゥーガル』2主人を殺されモンゴル帝国の捕虜となった女性が、後宮に仕え、知識を武器に復讐を決意。史実をもとにしたフィクション。マンガサイト「Souffle」で連載中。秋田書店693円©トマトスープ(秋田書店)2022トマトスープマンガ家。主に中世~近世の世界史をテーマとしたマンガを制作。実在した冒険家をモデルとした『ダンピアのおいしい冒険』も連載中(既刊4巻)。※『anan』2023年3月29日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年03月27日シンガーソングライターの多野小夜子がSNS上から姿を消した。彼女の曲を聴いて、その存在を、神様のように思っていたファンの高校生や、小夜子の才能に触れ、上京を諦めた同級生、〈小夜子のことは、ちゃんと好きだったと思う〉と語る恋人など、小夜子と直接的・間接的に関わった男女6人が、その喪失をきっかけに自らの生き方と向き合っていく。川野倫さんの『取るに足らない僕らの正義』は、本を閉じた後もその余韻に引きずられる。消えたシンガーソングライターと男女6人が織りなす青春群像劇。「私も昔、似た経験をしたことがあるんです。半年くらいでしたが、周りの誰とも連絡を取れなくなった友人がいて。その人がとても社交的で、結構どこかに連れ出してくれたり、人との縁をつないでくれたりしていたので、ふと気づくと私の生活や、いるコミュニティがちょっと変わってしまったんですよね。変わった部分がある一方で、周囲のみんなが学校に行ったり仕事に行ったりのルーティンは、淡々と繰り返される。自分に置き換えたときに、『もし自分がいなくなっても、周りの人の人生って当たり前に続いていくんだな』と、ちょっと寂しい気持ちになって。それを群像の形で描いてみたいと思ったんですよね」小夜子をめぐる男女は、才能に恵まれた特別な存在として彼女に憧れる半面、コンプレックスに身悶える。だが、小夜子自身もまた低い自己評価に苦しんでいるさまを、川野さんは静かに描き出す。「読んだらわかると思うんですけど、私自身が劣等感強くて、結構いろんな人に思うんですよね。『ああ、この人には勝てないな』とか(笑)」登場人物がところどころでつながる全7話の連作形式。肝心の小夜子が登場するのは4話目からだ。「朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』が好きなので、最後まで出さないのもありかなあとか考えたりもしたんですけれど」各編の冒頭には、物語とリンクした小夜子の曲の歌詞が置かれ、小夜子が実在するかのように錯覚してしまう。詞は、川野さんの自作だ。「文章を書くのも好きなんです。ウェブで連載を始めたとき、歌詞にメロディをつけて送ってくれたファンもいて、うれしかったです」本書最大の魅力は、言葉の力。〈私は大切なもののためならいくらでも傷つくと。〉〈恥ずかしくて 死にたくなれよ。生きてるなら。〉をはじめ、ちりばめられた名言に胸を射貫かれる人は多いはず。川野 倫『取るに足らない僕らの正義』舞台は東京・下北沢と宮崎。小夜子の高校時代と現代。2つの時空をつなぎ、小夜子という存在がバタフライ・エフェクトとなった世界を見つめる。トゥーヴァージンズ968円©川野倫/トゥーヴァージンズかわの・りんマンガ家。宮崎県出身。「ごめん」という別名義でも活動。他の著書に『たとえばいつかそれが愛じゃなくなったとして』(KADOKAWA)が。※『anan』2023年3月15日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年03月13日「植物だけでなく音楽や映画、民俗学など、自分の興味をひとつ残らず入れたお話を作りたかったんです」著者の穂坂きなみさんが話すように、『グリーンフィンガーズの箱庭』はひとことでジャンルを説明しにくいのだが、それもあってか独特の余韻を残してくれる。文学部に通う大学生の旭は、大学の裏山にある大きな屋敷に住む“少し変わった植物学者”の手伝いをするアルバイトを紹介される。迷うはずのない山中でなぜか迷子になり、幼少期に何度も神隠しに遭った過去を思い出しながら辿り着いた屋敷にいたのは、透明人間の植物学者・草薙だった。「草薙は当初、1話限りのゲストキャラだったのですが、気に入ったのでメインキャラに(笑)。表情が見えない謎めいているところが面白いと思いつつ、身ぶり手ぶりをオーバーにしたり、おしゃべりな設定にして怖くならないようにしています。旭はできるだけ普通の人にしようと思い、ある意味、私に一番近いキャラになりました」旭の神隠しの原因は植物にあることを特定し、草薙がそれを取り除いたことがきっかけで、ふたりはバディ的な雇用関係に。不思議な現象や風習、日本人の自然観、おとぎ話などをモチーフに、奇妙な植物とそれらに翻弄される人間たちの姿が描かれていく。「物語は基本的にシーンから思いつくタイプです。たとえば第1話だと、草薙と旭が最初に出会う庭のシーンみたいに。その場面に最初から植物が登場していればそこから話を広げていくし、そうでなかったらどういう植物が出てきて、どういう展開だったらこのシーンが一番輝くのかを考えていきます」いろんな要素を盛り込んでいるものの、主軸となっているのは人間ドラマ。幼少期の経験から寂しさを抱えてきた旭が、同じようにちょっと不器用な人たちと出会い、内に秘めた想いに触れたときに起こる、ささやかな変化に光を当てる。「人間の細かい心情の移り変わりを描くのは、自分の強みとまでは言わないけれど、向いているかなと思っています。単にいい話で終わらないような読後感にしたいんです」単行本では、描き下ろしとして各話の最後に、別の角度から物語を補完するショートストーリーが収められていて、読後感がさらに豊かに。「本編で描ききれなかったこともたくさんあるので、描き下ろしを含めてようやく1話が完成しているイメージです。今後は、草薙がなぜ透明人間になったのか、過去を掘り下げていくと思うのですが、達観しているように見える彼の人間くさいところも描いていきたいですね」『グリーンフィンガーズの箱庭』2透明人間の植物学者・草薙と大学生アルバイト・旭の距離感の変化も見どころの第2巻。人の欲望と想いに、不思議な植物が交錯するファンタジー。イースト・プレス880円©穂坂きなみ/イースト・プレスほさか・きなみイラストレーター、漫画家。著書に『おやすみエトランゼ』。本作はイースト・プレスのWebメディア「マトグロッソ」で連載。※『anan』2023年3月8日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年03月07日2月17日公開の映画『BLUE GIANT』で声優を務めた、注目の実力派俳優の3人。ジャズプレイヤーとして切磋琢磨する今作のように、3人の演技も共鳴を見せる。若き表現者たちの熱い思いを伺った。“音が聞こえてくる漫画”とも評される、ジャズをテーマにした同名大ヒットコミック『BLUE GIANT』がついに映像化。豪華な声のキャストも話題で、主人公・宮本大を山田裕貴さん、ピアニストの沢辺雪祈を間宮祥太朗さん、大の同級生でドラム担当の玉田俊二を岡山天音さんが演じる。役との向き合い方やアフレコ時のエピソード、お互いの魅力を3人でトーク!山田裕貴:大がサックスプレイヤーになると決めた時、僕はもっとあっけらかんと「なる」と言うんじゃないかと思っていたんですが、アフレコで映像を見た時に、本当に天然で“自分のことを信じられる強さ”を持っている人なんだと思ったんです。その“本当に思っている”感じが出せたら大らしさに近づくし、大きなことを成し遂げる可能性を感じさせないと成立しない役だなって。間宮祥太朗:俺が演じる雪祈は身長が185cmくらいあって、自分より体がでかくて。体と声質って関係があるから、もっと野太い声だろうと考えて、できる限り下の音で響くような声にしたいと思っていたんだけど。山田:いや、めっちゃぴったりだなと思った。間宮:…なんでアフレコの時に言ってくれないの(笑)。山田:自分のことでいっぱいいっぱいだったからかな(笑)。岡山天音:玉田は混じり気のないところから大を見つめ、ストレートに変化していく人物。漫画を読んで読者に近い存在だと思ったので、大と映画を観に来た人の架け橋的な役割を担えたらと。マジョリティの人が共感しやすい役というか。間宮:声の芝居って普段の芝居の時のリズムよりワンテンポどころかツーテンポくらい早くセリフを出さないといけなくて。掛け合いのシーンでは、相手のアクションを受け、一度自分の中に入れてからリアクションを出すというテンポだと遅いし、本当に難しかった。岡山:セリフを言うタイミングや、どういう表情から発せられた音なのかということも決まっているしね。実写では、制約はあるけれど、自分の感覚や生理から出てきたものをはめ込み、編集でコントロールしてもらうという道のり。でも、アニメだと逆で。映像に自分を沿わせていくのは実写と似て非なるものどころではなく、全然違う媒体だと思った。山田:難しいよね。声の作品を一本通してやらせてもらう経験が初めてだったけど、以前、声優さんに「声優さんの演技を聞いていると自分の声には違和感しかない」という話をしたら、「一本通してやると変わると思う」と言われたことがあって。岡山:そうなんだ。山田:合格点や及第点が取れたとかではないし、正解が叩き出せた感覚もないけど、それが今回、ちょっとわかったかもしれないなとは思った。作品を一本通して役を生きたという経験は大きいなって。でも、日に日に“掴んできたな”という感覚が3人の中に生まれなかった?岡山:え!…うん。山田:あ、違うみたい(笑)。間宮:多分、俺はそのくらいの時に、ようやくセリフを言うタイミングに慣れてきた頃だと思う。岡山:一番最初のテストみたいな時、雪祈が話している絵に、「これしゃべっていいの?」という間宮くんの声が入っていたのを覚えてる。間宮:あはは(笑)。岡山:でも、そこからがすごかった。僕が出ていない場面で雪祈の声を聞いて隠れ泣きしたこともあったし、はたから見ると短期間でスキルアップしてて。声を選択するセンスとか、力を注ぐバランスとか、間宮くんの芝居はシュッとしてる。僕はそういうことができないから、すごいな、違う星の下に生まれた人だなって。間宮:そういう天音は、前から思っていたけど本当にストイック。俺がアフレコに慣れていない頃、すでに表情の分析に入っていて。監督にも「すごく研究されてきていますね」と言われていたでしょ。山田:言われてた!間宮:だから、声のお芝居を何度も経験しているんだ、なんだよ~って思ってたけど、違ってた。山田:これまでの作品を見て器用な人だと思っていたけど、努力で生まれている芝居なんだって。アフレコの時、僕は台本が真っ白なんだけど。間宮:俺も。山田:天音くんの台本は書き込みがすごいの。マーカーも引いてあるし付箋も貼ってあって、俺、すごく恥ずかしくなって。さっき、天音くんは玉田のことを「共感できる人」と言っていたけど、天音くん自身が持っている性質がそのまま玉田に乗ったことで生まれた素直な声は、本当に共感性が高くて。みんなのために怒っている時は胸がクッとなるし、橋の上で泣いている時は「玉田…」と胸がつまったもん。岡山:でも、山田さんの、ある種狂気にも似たクオリティへの欲は本当にすごかった。「もう一回、もう一回」と、大という人物像になんとか触れようとする姿が、それこそ、大と重なるなって思った。山田:狂気感じてたの?俺に(笑)。間宮:そういうところあるよね。岡山:「ダメだったら呼んでください!夜中でも空いてるんで!」って監督に言ってて。それは空いてるんじゃなくて、寝る時間だよって思ったけど(笑)。でも、それって大だなぁって。山田:そんなふうに見えてたんだ。でも、なんか嬉しいな。映画『BLUE GIANT』ジャズの魅力にとりつかれた高校生の宮本大が世界一のジャズプレイヤーを目指す物語。シリーズ累計920万部を突破した石塚真一の人気コミック『BLUE GIANT』をアニメーション映画化したもので、ピアニストの上原ひろみが音楽を担当したことでも大きな話題を呼んでいる。2/17~全国の映画館で公開される。(写真中央)やまだ・ゆうき1990年9月18日生まれ、愛知県出身。NHK大河ドラマ『どうする家康』に本多忠勝役で、フジテレビ『女神の教室~リーガル青春白書~』に藍井仁役で出演中。『山田裕貴のオールナイトニッポンX(クロス)』(ニッポン放送)が毎週月曜24時~放送中。パンツ¥80,300(シーエフシーエル)ブレスレット¥66,000(ブランイリス/ブランイリストーキョー TEL:03・6434・0210)その他はスタイリスト私物(写真右)まみや・しょうたろう1993年6月11日生まれ、神奈川県出身。出演する映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』の『‐運命‐』が4月21日、『‐決戦‐』が6月30日に公開予定。映画『破戒』、ドラマ『ナンバMG5』など主演作も話題に。デニムジャケット¥52,800デニムパンツ¥31,900(共にアポクリファ/サカス ピーアール TEL:03・6447・2762)シャツ¥25,300(ミューズ/ミューズギャラリー TEL:03・6416・4217)その他はスタイリスト私物(写真左)おかやま・あまね1994年6月17日生まれ、東京都出身。2022年は映画『キングダム2 遥かなる大地へ』『さかなのこ』『百花』『沈黙のパレード』『あの娘は知らない』に出演。NHKドラマ10『大奥』が放送中。公開待機作に主演映画『笑いのカイブツ』など。シャツ¥30,800(メアグラーティア/ティーニーランチ TEL:03・6812・9341)ロングコート¥176,000(セブン バイ セブン)パンツ¥33,000(アタッチメント) 共にサカス ピーアールその他はスタイリスト私物※『anan』2023年2月22日号より。写真・平野一穂スタイリスト・森田晃嘉(山田さん)津野真吾(impiger/間宮さん)岡村春輝(岡山さん)取材、文・重信 綾撮影協力・TITLES(by anan編集部)
2023年02月20日マンガ家ユニット・藤峰式さんに、マンガ『不動さんの裏垢活動』について話を聞きました。青春はいつからでも始められる!中年と高校生の“映える”友情。「キラキラしている子と地味なおじさんみたいに、年齢や立ち位置などが全然違う男性ふたりが、友達になるとしたらどんな感じなんだろうっていうのが着想ポイントです」藤峰式さんの本作で、高校2年生の木元良と42歳の不動敬一が出会うのは「KLART(クラート)」という新鋭SNS。良は熱い支持を得ているインフルエンサーだが、不動は顔や名前を出さずに「裏垢」で活動している身。それも自慢の美脚を撮影して晒す、脚限定の女装アカウントだ。「いろんな裏垢を実際に見てみたのですが、そこで書くことや表現することは別に本当じゃなくても、自分が気持ちよくなれればいいのかなと思いました。不動さんにとって裏垢は、ネカマとしてストレスを発散できる場所になっているんです」不動は代わり映えしない日々を過ごしながら、細々と承認欲求を満たしていたが、良が生配信でその裏垢に触れたことで、ファンから嫉妬されてまさかの炎上。直接会って謝罪したいと申し出た良は、その場に中年男性の不動が現れても嫌悪感を示すどころか、あっさり受け入れる。「青春を一緒に過ごしたかった友達とようやく出会えた不動さんは、本来送るべきだった楽しい学生時代を取り戻している感じなんです。なので多少ピュアでもいい気がして(笑)。良くんに関しては、今の10代、20代はジェンダー問題に小さい頃から触れてきて、フラットな社会に慣れている人が多いのかなって思いもありつつ、こういう子がいたらいいなという理想も入っています」ふたりは“映え飯友達”として、気になる店を巡る仲になり、やがて良の友達も交えて遊ぶように。その間、SNS上では裏垢の身バレの危機や、匂わせ疑惑が持ち上がったりするものの、遅れてやってきた青春に戸惑いながら、新しい世界に飛び込んでいく不動の姿がほほえましい。「年の差の友情を描く上では、踏み込みすぎないことを大事にしているかもしれません。相手が困っているサインを出したら、助けに行くけれども、質問はしすぎない。ベタベタしないけど、いつ会っても楽しくいられる存在というイメージです」BL作品のファンを多く持つ藤峰式さんだが、この物語では作者自身も新鮮な感覚を味わっているそう。「ゆっくり距離が縮まっていく関係を、丁寧に描けることが楽しいです。今後は、良くんだけでなく不動さんの裏垢が、ほかの人にいい影響を与える過程も描いていきたいですね」藤峰式『不動さんの裏垢活動』2女装の裏垢活動をする中年男性と、インフルエンサー高校生。前向きな良くんといることで、不動さんの映えない人生がキラキラ輝き始める、愉快な友情物語。講談社748円。©藤峰式/講談社ふじみねしき「ふじみね」と「しき」からなるマンガ家ユニット。著書に『有休オメガ』『番手当って出ますか?』『俺たちは運命力が足りない』など。※『anan』2023年2月15日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年02月14日個性あふれる登場人物たちの、濃く、激しい絡み合いが見どころの一つとなったTL=ティーンズラブ作品。長く愛される王道系から、新しい潮流まで人気を集める注目ジャンルの作品をピックアップ。参考になる描写もあり…!ジャンル&読者層が拡大中。想像を超える設定、揺れ動く恋模様、濃密に描かれる性的なシーン。私たちを魅了するエッセンスが満載のTL=ティーンズラブ作品が、近年、さらに読者層を広げている。「大前提としてTL作品の定義は諸説あり、捉え方もさまざまです。ただ、多いと感じるのは、男女の性愛をメインにしたお話であり、性描写が作品の中心となっているものをTLと呼ぶケース。今回紹介する作品も、広義に捉えてセレクトしました。基本的に、恋愛の延長線上に性的な関係があることは、一般的な恋愛作品と変わりません。電子レーベルが増え、スマホなどで手軽に読めるようになり、最近は漫画の広告を見て作品にアクセスする人が増えています。また、“カップルがイチャイチャする様子を見たい”“パートナーと過ごす時間の参考にしたい”など、さまざまな楽しみ方ができる点も人気の要因では」(ライター、編集者・青柳美帆子さん)なかでも注目を集めている、3つのジャンルがあるという。「まず、不動の人気を誇るのが、オフィスラブ的要素や職業ものなど、お仕事がテーマとなった作品です。もともとTLは10代を対象にして誕生しましたが、今のメインターゲットである20~30代の読者層にハマるのだと思います。2つ目は、2010年代に流行った“なろう系”の流れを汲むR‐18作品をコミカライズしたもの。たとえば、悪役令嬢モノや婚約破棄モノなどです。エッチな描写があって過激な内容にはなっていますが、肝心なところはちゃんと隠されており、TL作品としてR‐18指定はされていません」そして、もう一つ、新しい動きとして注目されているのが、同人作家が手がけている作品だという。「2021年あたりから、同人ダウンロードサイト『DLsiteがるまに』など、個人のクリエイターさんが描いた女性向けR‐18作品を読める機会が増え、熱い支持を集めるようになっています。なかには、出版社の目に留まり、商業出版された作品もあります」現代&お仕事モノ。現代社会を舞台に描かれるシンデレラストーリーや、仕事がフックとなる作品は引き続き大人気!ときめきや職場でのエッチな関係を楽しんで。『だったら俺に惚れてしまえ』おやぬ/リブレ替え玉として出会った御曹司に見出され、骨抜きに…!社長令嬢と瓜二つの会社員・亜以は、時々、彼女の身代わりを務めている。ある日、婚約者である財閥の御曹司・久遠寺流に会いに行くが気に入られ…。「TL作品は電子版のみで展開されるものも多いですが、今作は紙のコレクターズエディションが発売されるほど人気。流の性格の歪み方、亜以への執着ぶりがかわいい!」©おやぬ/リブレ『木更津くんの××が見たい』萩原ケイク/小学館クリエイティブ性の苦手意識が噛み合い本能で向き合う二人。念願の管理職となった前橋旭は、セックスに対して劣等感があり、男の人が一人でシてるところを見たいという願望を持つようになる。そんな時、同じく劣等感を抱え、一人でシてるところを見られたい木更津耕哉と出会う。「仕事の悩みが非常にリアル。アラサー女性が楽しんで読める作品を象徴するような一作です」©萩原ケイク/小学館クリエイティブ同人発の人気作品2021年ごろから盛り上がりを見せる同人作品の商業単行本化。作者のこだわりが炸裂したハードな作品に熱い視線が。『異世界トリップ先で助けてくれたのは、人殺しの少年でした。』堀田阿伴/一迅社暗殺者の少年×不憫なお姉さん。設定とハードな展開が話題に。セクハラやパワハラに悩む日々を送る、図書館の臨時司書として働くめぐみ。ある日、マンホールに落ちたことで異世界にトリップ。絶体絶命のところで暗殺者の少年アレクに助けられるが、彼の言いなりにならざるをえなくなってしまう。「もともと同人で出ていた作品ですが、非常に人気があり、書籍化されました」©堀田阿伴/一迅社令嬢モノ。“なろう系”の流れを汲んだ“悪役令嬢”“転生”モノが成長中。現実離れした世界での甘くディープな展開を堪能して。『伯爵令嬢は犬猿の仲のエリート騎士と強制的につがいにさせられる』鈴宮ユニコ茜たま/一迅社超両片思いの二人が繰り広げるすれ違う恋に思わず夢中に。“国が決めた相手とつがいになり子をもうけること”が決められた国に生きる伯爵令嬢のティアナ。相手は喧嘩ばかりをしている幼馴染みのアデルだったが、彼は何度も彼女を呼び出して…。「人気Web小説シリーズのコミカライズ。互いに“相手には他に好きな人がいる”と思い込んでいる二人がすれ違う様が物語を盛り上げます」©鈴宮ユニコ・茜たま/一迅社『悪役令嬢と鬼畜騎士』生還・猫田・旭炬/一迅社悪役令嬢作品ファンがTLに足を踏み入れるきっかけにも。乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたことに気づいた侯爵令嬢のツェツィーリアは、“ヒロイン”にはめられて娼婦となる。最初の客として訪れたのは、“ヒロイン”の幼馴染みであり初恋をこじらせた近衛騎士のルカスだった。「悪役令嬢に転生するという王道プロットに性愛描写が盛り込まれています。とにかく絵がきれいです!」©生還・猫田・旭炬/一迅社お話を伺った方:青柳美帆子さんライター、編集者。雑誌やWebを中心に、書評、レビュー、インタビューなど、女性向けカルチャーにまつわる記事をメインに執筆を行う。TL作品に精通している。※『anan』2023年2月15日号より。取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2023年02月11日これまで、女性同士の間に流れる恋慕や友情、共感などさまざまな感情を、繊細かつエロティックに描いてきたばったんさん。『けむたい姉とずるい妹』で選んだ題材は姉妹だ。「姉妹って、女友だちとも違う。切っても切れない何かがある関係だと思うんです。最初にあったのは、姉妹の本当に濃密な、魂のぶつかり合いを描きたいという気持ちでした」母の葬儀の日、8年ぶりに顔を合わせた姉のじゅんと妹のらん。小さいころから、じゅんはらんに対して「自分のものを勝手に奪う人」と感じ、らんはじゅんに対して「自分は姉ほど愛されない」とコンプレックスを募らせていた。さらに、母をめぐる確執もある。そうしたもやもやがはっきりとした断絶になった原因は、らんの夫・律の存在。律はかつて、じゅんの恋人だったのだ。らんの結婚により、音信不通になるほど険悪になっていた姉妹。ところが、母の遺した家で、律を交えた奇妙な同居をすることに。姉と妹夫婦で、キッチンやリビングは共有するしかないし、喫煙者のじゅんと律は、縁側で並んでたばこを吸うこともめずらしくない。物理的に近づいてしまったふたりは、うまく心理的な距離感がつかめなくなっていく。「芸能人とかの不倫がすごく叩かれていた時期がありましたよね。褒められたことではないけれど、なかには『人間なら、理性だけではどうにもならない感情もあるのでは』という疑問も湧いてきて。そこで、不倫要素も足しました。正しさだけが正解ではないし、正しいことしか描かないマンガを描きたいわけでもない。むしろ、人間だから絶対に間違うけれど、大切なのは間違ったあとでどうやり直していくかだと思っているんです。間違うからこそ人間は面白いんじゃないかなと」3巻では、急接近していくじゅんと律の関係の変化や、らんが自分の知らなかった本心に気づく瞬間などが描かれる。「描き進めるにつれて実感しているのが、じゅん、らん、律それぞれに私と似たところがあるなということ。無意識に、私自身の性格や心情を一部投影しているみたいですね」そして、予測不能のストーリーを盛り上げるのが、ばったんさんのしっとりしたタッチだ。リボンや煙などたゆたうモノが印象的に使われていて、うっとりしてしまう。それ以上に惹きつけられるのは、感情豊かなキャラクターたちの表情だ。「私、女性がにっこりしているのより、泣いたり怒ったり感情を爆発させている表情が好きなんですね。そういう顔を描きたくて、波乱を起こしているのかもしれません(笑)」ばったん『けむたい姉とずるい妹』33巻にはおまけとして、コミックス表紙の別案イラストと、ばったんさんの愛犬〈つる〉ちゃんとの微笑ましいワンダフルライフも収録。4巻は5月に刊行予定。講談社748円©ばったん/講談社※『anan』2023年2月8日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年02月07日初めての場所が苦手だったり、いつものお布団じゃないと寝られなかったり。子どもが繊細だとちょっぴり心配になることもありますよね。イラストレーターnatsu(なつ)さん( @ona.tsu )の息子さんは、赤ちゃんの頃から小さな物音でも敏感に反応してしまう繊細さん。でも繊細だからこそ見える景色があるのだと気づいてから、ポジティブに捉えられるようになったそう。ご自身も心配性だというなつさんに、繊細な息子さんと接する上で心がけていることなどを伺いました。繊細な息子だからこそ気づくことまずは、なつさんが繊細な息子さんが持っている宝物に気づいた素敵なストーリーをご紹介します。息子のおまじないにキュンが止まらない!繊細がゆえに相手の気持ちを敏感に汲み取ることができる息子さん。続いてご紹介するエピソードは、繊細な息子さんがママを想い、自然と出た行動ですが、可愛すぎる仕草に思わずキュンとしてしまいます。なつさんが子育てで大切にしていることとは?なつさんに当時の様子や繊細な息子さんと接する上で心がけていることについて伺いました。Q1:「繊細な息子と心配性な母の話」を書こうと思ったきっかけ・理由について教えてください。息子は赤ちゃんの頃から繊細で、その繊細さ故に子育てが大変だ…とマイナスに捉えがちでした。でも、その繊細な性質はお友達の気持ちを考えたり優しくできるとても大切な物なんだ! と気付きプラスに捉えることができました。その気付きを自分でも忘れないよう、イラストに残そうと思いました。Q2:繊細な息子さんと接する上で心がけていることはありますか?周りの子と比べないように気をつけています。あの子はできるよ?とか。過去の息子と今の息子を比べるようにしています。Q3:心配性ななつさんご自身の最近の心配性エピソードは何かありますか?いまは来年入学する小学校のことで頭がいっぱいです。息子は新しい環境になじむのに少し時間がかかるので、入学してからしばらくは息子も私も大変だろうな…と想像してひやひやしています。Q4:なつさんが子育てのモットーにしていることや座右の銘は何ですか?「頑張りすぎない!たまにサボって良し」をモットーにしています。私も息子も、気付かないうちに疲れを溜めてしまい、頑張りすぎていてもまだ頑張れてないと感じるタイプなので、サボってダラダラして空気を入れ替えるのも大事だと思っています。Q5:絵を描くことから9年離れていたなつさん、子育てで多忙がゆえに好きなことを見失ったママたちへのメッセージがあればお願いします。私もまだまだ新米で偉そうなことは何も言えませんが…子育てって本当に大変ですよね。自分の時間もなかなか取れなくて。無理に好きなことを探さなくてもいいと思いますが、リラックスできたり、子供から離れて自分に戻れる時間がママもパパも必要だと思います。毎日おつかれさまです!「プラスのことに目を向ける」ことの大切さ子どもが繊細だとどうしても親自身も余計な心配をして、神経質になりがち。でも、少し気持ちにゆとりを持って俯瞰して見てみれば、なつさんのようにその子の個性としてポジティブに捉えられそうです。“繊細だから敏感で心配”ではなく、“繊細だからこそ優しくて人の気持ちに気づくことができる”。物事は両面から見ることで大切な何かを得られるのかもしれません。
2023年01月25日「焦がれる」は「好き」の一部ではあるものの、切なさや激しさが入り混じった、より複雑な感情なのかもしれない。こう森さんの本作『焦がれあい』は、そんな焦がれる思いが交差する恋愛模様を、丁寧に描いている。「最初はもっとシンプルに幼なじみの関係を描こうと思っていたのですが、何度も描き直すなかでキャラクターも増え、今の形になりました」朝日かなは、家が近所で2歳上の望月薫ときょうだいのように育ち、自分にとって薫は「21年間の全て」と思っている。高校卒業後、薫は東京へ。離ればなれの5年間を過ごし、かなも彼を追って上京する。「かなを妹っぽいキャラにしたのは、好きっていう感情だけで動いてしまうような子にしたかったから。若いからこそというのもありますが、かなは良くも悪くも素直で、好きだったら相手に伝えていいと思うし、自分の気持ちが迷惑になるかもしれないなんて疑いもしない。だから行動力があるんですけど、薫は逆に頭で先に考えてしまう理性的なタイプ。しかもその考えが顔に出ないので、最悪の場合まで想像して、自分自身が壁になってしまうのです」かなは言葉にこそ出さないものの、薫への思いを隠そうとしない。対して薫は、かなをあくまでも妹扱い。そして上京早々、つい最近まで薫が恋人と同棲していたことが発覚する。しかも元カノ・夕紀とかなは、すでに別の場所で出会い、お互いに好意を抱いていたのだからややこしい。「かなと夕紀も正反対の性格。幼なじみのかなと薫は特別なつながりなのに対して、夕紀と薫の間にもかなは入り込めない部分がある。ライバルだと発覚したときに、お互いを羨ましがる関係にしたかったのです」さらにかなの職場の先輩で、薫や夕紀と大学の同期である陽太も加わり、個々の思いが絡まり合う。「現実も、恋愛がうまくいくのはひと握りだったりするじゃないですか。結果が見えているのに好きになってしまい、行かずにはいられないのが恋愛だと思うのです。物語におけるキャラクターの立ち位置や役割があるとしても、それぞれのバックボーンを無視せず、“この人ならどう考えて、どう動くか”をしっかり考えて描きたいと思っています」思いが募り、焦がれ合う先には、どんな展開が待っているのか。「『焦がれる』は恋愛だけでなく、友情や尊敬のような関係性にも当てはまる言葉だと思うので、縛られずに描けていけたらいいですね」こう森『焦がれあい』1ずっと一緒だった幼なじみのかなと薫。離れて暮らした5年の間、恋愛に興味のなさそうだった薫に恋人がいたことが発覚。ヒリヒリ感がたまらない恋物語。集英社715円©こう森/集英社こうもりマンガ家。2018年デビュー。現在『ココハナ』(集英社)にて『焦がれあい』、「webアクション」(双葉社)にて「夜のまにまに」連載中。※『anan』2023年1月18日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年01月17日中学1年生の鴻田新(こうだ・あらた)が、限りなく鳥に見える奇妙な生き物・クジマに出会うところから物語が始まる、紺野アキラさんの『クジマ歌えば家ほろろ』。「クジマが可愛い」「ゆるくて癒される」等々、SNSなどでも熱いエールが送られている、大注目のコミックだ。ボーイ・ミーツ・バードに、幸あれ。浸っていたくなる異文化交流コミック。「もともと、ヒト型の細長い謎の生き物と出会う話を考えていました。冬にバイトに行く途中の川に鴨が集まるのを見て、“渡り鳥”という設定が浮かんだので追加。結果、ああいう見た目の生き物になりました。日本食好きやロシア語堪能などのクジマの特性は、ほとんど思いつきですね(笑)。担当編集さんに『家族ものにしたらどうか』と提案されて、謎の生き物によって変化していく家族を描いてみようと、いまの枠組みが決まった感じです」1巻では、マイペースで優しいけれど意外なポイントでキレたりするクジマのキャラや、居候先である鴻田家のおおらかな雰囲気などが紹介されていた。2巻では、日本の行事を楽しむクジマや新たちの交流が中心に。浪人生である長男・英(すぐる)は終始ピリピリしているのだが、なぜか憎めない。笑えて、ハラハラして、ほっこりするエピソードが満載。「クリスマスや正月、こたつなど、日本の文化や初めての経験を、クジマならどう過ごすのかなと、大喜利のような感覚で考えています」本書では、新の両親のみならず、田舎の祖父母までもが正体不明のクジマをすんなり受け入れる。自分と違うものや理解できないものに対して狭量で、何でも排除したがる時代だからこそ、偏見を持たずに共生する彼らに、拍手を送りたくなる。「クジマはたまたま受け入れてくれる人たちに出会っただけかもしれませんが、幸運でしたね」読めばわかるが、本書の最大の魅力はクジマの愛らしさ。クジマがどんなときにどんな表情をするのかを描くのは、まったくの架空の生物なだけに、難しそうだけれど。「クジマの表情の変化は目だけでしか表せないため、できない表情がたくさんあって困ることもありますが、それが『何を考えてるかわからない生き物らしさ』を出す上では、利点でもあるのではないかと思っています。カラーはデジタルで、他はすべてアナログで描いていて、絵としてこだわっているのは背景ですね。陽の光や空気感が伝わればいいなと思いながら描いています」ちなみに、クジマが鴻田家に住むのは、〈ロシアに帰る春まで〉。「春になったらちゃんと帰ります」と紺野さん。それまでは、クジマたちの楽しげな日常を見守りたい。紺野アキラ『クジマ歌えば家ほろろ』21巻ではクジマを仇敵扱いしていた英の態度も軟化。クジマと周囲の人々が、ますます賑やかに、打ち解け合っていくさまがいい。3巻は春に刊行予定。小学館715円©紺野アキラ/小学館 ゲッサンこんの・あきらマンガ家。1997年生まれ。17歳のとき、ゲッサン新人賞で最終選考に残る。20歳で新人コミック大賞入選作「知らない海の底」でデビュー。※『anan』2023年1月11日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2023年01月09日マンガファンの皆さんおまたせしました!毎年気になる作品を紹介する、年に1度のマンガ祭りの季節です。「第13回ananマンガ大賞」に輝いたのは、『山田くんとLv999の恋をする』です。ネトゲで出会った年上女子&男子高生の、じりじり&ほのぼのラブストーリー。気持ちを自覚し変わる二人に…。出会いはゲーム、相手は年下。リアルに近い設定に、きゅん。大人の女性におすすめのマンガを紹介する企画「ananマンガ大賞」。13回目を迎えたこの企画、改めて大賞選考基準を説明すると、1)カッコいい男性が出てくること、2)ラブストーリーであること、3)現在連載中であること、4)読んだ後に前向きな気持ちになれること、の4つ。このポイントと照らし合わせながら、編集部のマンガ好きスタッフらが厳正に審査した結果、今年の大賞はましろさんの『山田くんとLv999の恋をする』となりました!マンガアプリ「GANMA!」で連載中の、ネトゲを通じて知り合った女子大生&高校生が繰り広げる、ちょっぴり不器用な恋物語。二人の“じりじり感”に加え、彼らを囲む個性的な仲間たちとの関係もおもしろい。POINT1:ネトゲの女と浮気をされ、フラれた茜が主人公。通称アフロの山田との出会いは同じくネトゲ。彼氏と共にネトゲをしていた茜だったが、その彼がネトゲで知り合った別の女と浮気失恋…。惰性で同じゲームをプレイ中、アフロ頭キャラの山田と遭遇。失恋話をしても超塩対応な山田に、思わず茜は八つ当たりを…。POINT2:山田は男子高校生でイケメンプロゲーマー。が、そっけないし、女子には全然興味ナシ。その後ゲームイベントで偶然山田と遭遇し、失恋直後の茜は居酒屋で山田にくだを巻く。実は山田は高校生プロゲーマーで、その筋では超有名人&美少年。が、「モテないし恋愛に興味ない」。茜曰く「イケメンの無駄遣い…」。POINT3:互いに恋愛対象だなんて思わない二人が、無自覚に惹かれ合い、恋を自覚する展開が、いかにも王道ラブコメ!男子高校生と女子大生。プロゲーマーとネトゲ初心者。しかも山田は恋愛に興味ゼロ…のはずが、茜にトラブルが起こるたび、山田は放っておけなくて…。二人の心が柔らかくなり、少しずつ近づくじりじり感がイイ!POINT4:ゲームを通じて知り合った2人を囲む仲間たちもキャラが濃いめで魅力的。茜がプレイするゲーム内のギルド(チームのようなもの)には、山田をはじめ年齢や性別の関係ない仲間が。彼らや、茜や山田の学校内の友人との交流も心温まるものばかり。友だちっていいなと、ちょっとホロリとします。ましろ先生に、大賞受賞特別インタビュー。さっそく、受賞の報告をさせていただきつつ、作品への思いや作品執筆の苦労や喜びについてお話を聞かせていただきました!――まずは受賞の感想を!ましろ:担当編集者とスカイプで打ち合わせをしてる中で、教えてもらいました。私が小さい頃から知っている雑誌なので、すごく驚いて…。でもとても光栄です。友だちに自慢できる…と、浮ついた気持ちになりました(笑)。――ましろさんにとって、『山田くん~』は初めての長編連載作品だと聞いたのですが…。ましろ:そうなんです。実は私、以前一度マンガ家デビューをしてるんですが、3年くらいで力尽きてしまい、以降10年、マンガと離れて普通に働いていたんです。それで3年ほど前、転職活動を考えていて。そのときたまたまTwitterに流れてきたGANMA!のオンライン持ち込みのお知らせを見て、無理だろうと思いながら、10年前の作品をデータ化して送信したら、「連載しませんか?」とお知らせが…。本当に嬉しかったんですが、10年マンガから離れていたので人物の輪郭すら描けなくなっていて、恥ずかしながら絵の練習から始めました(笑)。――10年ぶりに描くマンガを、ラブストーリーにしようと思ったのは、理由はありますか?ましろ:私はずっと自分を少女マンガ家だと思っているので、恋愛を描くこと=マンガを描く意義だと思っていて…。恋愛を描きたい理由って、正直自分でもよくわからないんですが、そのテーマが、一番モチベーションが上がるんです。――年下のクール系男子との恋物語という設定はどこから?ましろ:少女マンガにおいて、主人公の女子が好きになる男の子に、憧れのお姉さん的女子がいるって、結構よくある設定ですよね。で、そのお姉さんがその男子のお兄さんとかと付き合っちゃったりするっていう。でもその逆を張って、憧れのお姉さんと年下男子が上手くいくルートがあってもいいのでは…?と思ったのが最初です。そしてだいたい少女マンガのヒーローって女子より精神年齢が10個くらい高い感じで描かれるので、山田は“年下だけど精神年齢が高い”という設定に。一方の茜は、トラウマも悩みも特にない、ごくごく普通の女の子にしようと。――茜ちゃんはコミュ力の高い、明るい女子ですね。ましろ:私自身とは全く性格が違うので、茜って正直今でもよくわからない(笑)。でもそのよくわからないところが気に入っているポイントでもあって。そんな茜と、人間関係を築くのが下手そうな山田の恋を、こっそり覗き見するように楽しんでくれたら…と思って描いています。――初めての連載で単行本も6巻まで出ています。今の段階で一番嬉しいことはなんですか?ましろ:こんなにたくさんの方が読んでくださる作品になったことが、信じられないし、本当に嬉しい。あと、少女マンガは男子キャラに恋してもらうために描くものだと思っているので、山田を好きになってもらえることが、私の本望かな(笑)。かつて学生時代には読んでいたけれど、今は恋愛マンガから離れている、そんな大人の女子たちにぜひ楽しんでもらいたい…、そう思いながら、頑張って描いている作品なので、“昔はマンガ好きだったな…”と思う人にこそ、読んでもらいたいです。ましろさん的“大変だったシーン”「1巻あたりは私がマンガ執筆に不慣れで、茜にいろんなことをやらせすぎました…」実は1巻収録分の作品は、マンガ執筆が久しぶりすぎて、ヒロインの茜に無理をさせすぎたと反省しているそう。「お話を動かしてもらうため、茜をこき使いすぎました、申し訳なかった…。でも描き進むうちに茜のことも尊重できるようになり、今は大切にしています(笑)」ましろさん的“好きなシーン”「山田の同級生・椿の告白シーン。できることならもっと掘り下げたかったです」4巻収録の失恋シーン。「山田の同級生である椿は、逆張りをしなければ本筋のヒロインであってもいいキャラクターでした。彼女の恋と、失恋を描けたのは、少女マンガ家としては嬉しかった。できれば椿の恋心と、山田との関係性をもっと深掘りして描いてみたかったですね」ましろ『山田くんとLv999の恋をする』ごくごく普通の女子大生・茜がネトゲで知り合ったのは、アフロ男の山田。ひょんなきっかけでリアルでも出会った二人が、徐々に惹かれ合って…。マンガアプリ「GANMA!」にて連載中。また2023年にはTVアニメ化も!1~6巻693円~/KADOKAWA©ましろ/COMICSMART INC.ましろマンガ家。2019年より連載をスタート。「次にくるマンガ大賞2021」Webマンガ部門で4位を獲得。ご本人もゲーム好き。単行本あとがきによると愛犬家?Twitterは@msr7025※『anan』2022年12月28日‐2023年1月4日合併号より。写真(本)・中島慶子(by anan編集部)
2023年01月03日海外旅行が復活しつつあるなか、旅心をくすぐる作品が登場した。イラストレーターの小林眞理子さんは当初、年1回ペースで“普通に”旅行をしていたが、デジタル環境が整うにつれiPadを手にノマドワークをしながら、タイ各地を転々とするように。本作『タイのひとびと』には、そんな旅で見聞きしたエピソードが詰まっている。おおらかな日常に溶け込み、暮らすように旅するタイ。「本当は、タイで経験したことをネタに『すべらない話』がしたかったんです。だけどそれは話術の巧みな芸人さんだからできることで、自分が一番うまく人に伝えられる手段は何だろうと考え、イラストの仕事の合間にマンガを描き始めました」もっと言うと、こうした土産話をすると、タイをよく知らない人はすぐに「お腹を壊しそう」とか「街がきれいじゃなさそう」などネガティブなイメージを持ちがちだと実感。街並みや出会った人々を得意な絵でしっかり表現することで、誤解が解けるのではという期待もあった。本作が一般的な旅行エッセイと異なるのは、暮らすように旅を楽しんでいること。有名な観光地が出てくるわけではなく、地元の人しかいないようなローカル食堂に行ったり、宿の近くの公園をジョギングしたりして遭遇する些細な出来事がほとんど。それでも好奇心の持ち方次第で、どんなことも冒険になる様が痛快だ。「旅行会社のツアーに参加したこともありましたが、観光名所より移動中のバンの外に広がる普通の人の暮らしのほうが、楽しそうに見えたんです。長く滞在していると、一食も失敗したくないなど無駄を省こうとする気持ちがなくなるのもよくて。目についた店に入ってごはんを食べたり、地元の人が利用している渡し舟に乗ってみたり。そうやって遊べば遊ぶほど、発見があるんですよね」日本で血液型占いが定着しているのと同じように、タイは生まれた曜日での占いがおなじみだったり、バイクタクシーのふくよかな女性ドライバーに、肩ではなくお腹の肉につかまるよう指示されたり……。異国の地ならではのカルチャーギャップも興味深いが、全体を通して印象に刻まれるのは、タイの自由な空気とマイペンライ(気にしない、大丈夫、などの意)なおおらかさ。「顔や体型がどうであろうが、女装しようが、性別を変えようが、みんないい意味で他人に興味がないんです。この人にはこの人の事情があって、自分には関係ないと思える。そのストレスのなさが、いろんな場面でいいかたちに作用していて、自然と心が軽くなるんですよね」タイ好きはもちろん、今までノーマークだったという人も、気負わない旅の臨場感を味わえるはずだ。『タイのひとびと』タイの日常とそこで暮らす人、あるいは小林さんのようにタイに引き寄せられる人々を描き、SNSで話題となった作品。単行本のための描き下ろしも。ワニブックス1210円©小林眞理子/ワニブックスこばやし・まりこマンガ家、イラストレーター。SNSでタイの楽しい日常マンガを発信中。本書が初の単行本となる。Twitterは@mariko_asia27※『anan』2022年12月28日‐2023年1月4日合併号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2022年12月29日今年もウーマンエキサイトのオリジナルコミック作品をご覧いただき、ありがとうございました。数ある作品の中から、2022年に最も読まれたコミック作品のランキングTOP10を発表します! ■【第1位】 義妹が毎日我が家にやってくる夫と暮らす家に、毎日のように夕食を食べにやってくる義妹。その理由は、モラハラ気質の夫が「ご飯がまずい」と言って食べてくれないからだと言う。主人公の美弥は、毎日のように家に来る義妹にうんざりしていたものの、夫や同居している義父の気持ちを考えると、ないがしろにもできず…。しかし、義妹が家にやってくる本当の理由が分かり…。 >>この作品を見る ■【第2位】 孫名義の貯金通帳の行方初孫が可愛くてしかたない義母は、孫名義の通帳を作ってくれれば「お祝いのお金や孫のために使って欲しいお金を貯められる」と息子に話す。ためらったものの、義母の気持ちをありがたく受け入れた夫婦は、そのお礼にと義母に旅行をプレゼントしたり、お金を渡していたりしたけれど、本当に孫名義の通帳にお金を貯めているのかどうかを疑う出来事が起こり…。 >>この作品を見る ■【第3位】 人任せってダメなの?コミュ力が低く、自分に自信のない未祐は、幼稚園のママ友と積極的に関われずにいたが、新たに入園してきたママ友・彩美のおかげで次第にママ友の和の中に入れるようになっていく。しかし、打ち上げの幹事やお出かけ先のセレクトなどを頼まれるたびに「私は苦手だから」と人任せにしてしまう未祐。「得意な人がやってくれたらいいのに!」と主張する未祐に彩美の態度は冷たくなっていき…。 >>この作品を見る ■【第4位】 女性部下がお弁当を作ってる?菜摘は夫にお弁当を作っていないにも関わらず、夫が会社で手作り弁当を食べている写真を見て衝撃を受ける。いったい誰が夫にお弁当を作ってるのか。真実は菜摘の知らないところで起きていた、ある一人の思惑が原因だった…。予想もできない展開に、読者が釘付けになった人気作品! >>この作品を見る ■【第5位】 自分が中心でいたい義姉不妊治療をしていた愛理は、義兄夫婦に子どもが出来たことを素直に喜んでいたが、自分が中心でいたい義姉はお宮参りに招待してきたり、義父母に孫のいる自分だけが可愛がられているような素振りをわざと見せたりするように…。自分が中心でいたい義姉の思惑はいったい…? >>この作品を見る ■【第6位】 孫育ては勘弁して!息子夫婦と良好な関係を保てていると思っていた美輪は、嫁の和子が「家を買うお金を貯めるために、子どもは保育園に入れず義母に面倒を見てもらいたいと思っている」と知らされる。この歳で孫育て!?と慌てる美輪は、和子の主張に違和感を感じる。すると、実は和子は実家とのお金トラブルで揉めていることが分かり…。 >>この作品を見る ■【第7位】既婚先輩の結婚式に呼ばれた話高校の同級生3人組がママになってからも花を咲かせるガールズトーク。その日、果穂が話し始めたのは夫の会社で起きた衝撃のエピソード。なんと、すでに既婚者で子どももいる夫の会社の同僚が、不倫している彼女と結婚式をあげるから参列することになったと言い…。実話を元にしたエピソードは、読者の想像を超える結末へ...! >>この作品を見る ■【第8位】義妹が夫を狙ってる!?主人公の亜美は、不妊治療をしていたものの、なかなか子宝に恵まれずにいた。そんな中、夫の弟が妻と子を残し病死してしまう…。悲しみに暮れる中、甥っ子を元気づけようと誕生日会が開かれることに。しかし、亜美は夫と義実家へ行くと、義母から孫プレッシャーを受けてしまう。しかも、義妹は甥っ子と遊ぶ夫の姿を見て「パパになってくれたらいいのに…」とつぶやき…。 >>この作品を見る ■【第9位】 私の母を見下す義母主人公の菜緒は、結婚の挨拶のとき義母から「わざわざこんな格下の嫁をもらうなんて親族にも顔が立たない」と言われてしまう。シングルマザーで育ててくれた実母にも「よく奈緒さんを大学出せましたね」と直接嫌味を言う始末…。しかし、実母は見事な方法で嫌味な義母を黙らせる…! >>この作品を見る ■【第10位】夫が変わったワケ「お前って鈍いな」「ぐずぐずするな!」…優しかった貴子の夫・耕司は、子どもの前でも貴子に高圧的な態度を取るようになっていた。ついに夫の影響は子どもにも出てしまい、小学校の担任から生活態度を指摘されてしまう事態に…!しかし、耕司はなんの反省もなく、友だち夫婦の前でも貴子をけなし、反省の色がない…。耕司との生活に限界を感じた貴子は家を出ようとするが、夫はある時変わる決心をする。その理由は…? >>この作品を見る すでに読んだ作品はいくつありましたか? このほかにも、ウーマンエキサイトのオリジナルコミックはまだまだあります! ぜひこの機会に読んでみてくださいね。2023年もたくさんのオリジナル作品をご紹介予定です。ぜひ引き続きご期待ください!ウーマンエキサイトオリジナルコミック連載一覧 >>連載【ママたちのガールズトーク】を読む >>連載【義父母がシンドいんです!】を読む >>連載【夫婦の危機】を読む >>連載【ママ友付き合い事情】を読む >>連載【モラハラ夫図鑑】を読む
2022年12月28日ウーマンエキサイトでは今年も数々の転載コミックをお届けしました。今回はその中から特に人気の高かった転載コミックランキングTOP10を発表! 作品の見どころとともにご紹介します。 【第1位】うちの夫は隠れモラハラ/はむら芥モラハラとは無縁の夫に秘められた裏の顔…!夫は暴言も吐かないし、妻をけなしたり、殴ったりもしない…。なのに結婚生活が息苦しいのはなぜ? 目に見えづらい夫の“隠れモラハラ”に苦しむ妻・さとこ。夫の本性を暴きたい妻と体裁を守りたい夫との壮絶なせめぎ合いは息を呑む展開! 隠れモラハラの恐ろしさとともに、性別による思い込みや偏見についても描く話題の一作です。 >>この作品を見る 【第2位】ヤバすぎる義父と絶縁した話/Aiトラブルメーカー義父と不倫夫とのヤバすぎる事件簿分娩中に乱入してきた前科をもつ義父。主人公・美月は産後直後から毎日自宅に押しかけられ、まさに災難続きの日々を送ります。さらに明らかになる義父の借金と自宅の差押え。思いがけないトラブルに巻き込まれる中、夫の不倫問題が浮上! 義父と夫に振り回される美月はいかに2人と縁を切ることができたのでしょうか? >>この作品を見る 【第3位】夫の浮気相手が想定外過ぎた/ひより信用していた夫が浮気…まさかの浮気相手に大波乱!高校時代から付き合っていた夫と3歳の娘と幸せに暮らす主人公・ヒヨリ。夫の行動に異変を察知したヒヨリは、夫の浮気を追跡します。そして、明らかになる浮気相手の正体とは? 衝撃の真実とともに描かれる夫婦関係の儚さと不倫の代償が胸を突くドロドロ系ストーリー。 >>この作品を見る 【第4位】みんな知らない/スズ周りの人々を魅了する彼氏のヤバすぎる正体…友人の紹介で出会った彼は、大きな夢を叶えるために奮起する素敵な男性。キラキラと眩しい姿に周りの人を魅了するも、その裏には誰も知らない大きな秘密が…! 小さな違和感の果てに待ち受ける衝撃の結末。嘘と欲望が渦巻くまさかの展開に目が離せません! >>この作品を見る 【第5位】見つからない不倫の証拠/3cha絶対クロなのに…不倫夫をどう攻略する?結婚して3年、子なし夫婦に訪れた夫の不倫疑惑。数々の不審な出来事から「クロ」を確信するも、不倫の証拠が見つからない…! 真実をつかむために奔走する妻と逃げ切りたい夫。激しい攻防戦の末、それぞれの報いを得た夫婦が迎える結末とは? >>この作品を見る 【第6位】ママ友の財布/ツムママ「財布を忘れた」を繰り返すママ友の真の目的が明らかに!夫の転機で見知らぬ土地に引っ越しが決まった一家。新しい幼稚園でママ友ができずに悩んでいたところ、優しく声をかけてくれたママ友・クレ子。しかしことあるごとに「財布を忘れた」と繰り返し…。そう、彼女が近づいてきた本当の理由はママ友になることではなかったのです。お金を払わないクレ子が抱えていた裏事情とは一体? >>この作品を見る 【第7位】私なにかしましたか? ママ友の闇/原黒ゆうこ恐怖のママ友ワールドへようこそ!保身に走るママ友、勧誘するママ友、豹変するママ友…作者の体験をベースに描かれる魑魅魍魎が渦巻くママ社会。児童館、親子サークル、幼稚園で繰り広げられる母親同士の価値観の相違、陰湿ないじめ、ママカーストの恐怖…。禁断のママ友ワールドをのぞいてみませんか? >>この作品を見る 【第8位】ママ友がモンペだった話/原黒ゆうこ腐れ縁のママ友がトラブルメーカーだったら…!?わが子のために切っても切れないママ友関係。そんなママ友グループのひとりが娘を甘やかすモンペだったら…? ボスママと化したママ友とクラスのいじめを主導するその娘。子ども、親、教師を巻き込み、数々の事件が起こる--。いじめの加害と被害。そこに向き合う親たちの試練。お友達トラブルを乗り越える小学生親子の姿には多くの学びを得られること間違いなし! >>この作品を見る 【第9位】ママ友との間で起きたありえない話/ぱるる一人のママとの出会いが家族の運命を狂わせる…!夫の転勤により新たな土地で子育てを始める主人公・M子。見知らぬ土地で温かく迎え入れてくれた保育園のママ友との出会いがM子と夫の人生を大きく狂わせることに…。ママ友の恐ろしい魂胆にハマり、壊れていく夫婦関係。さらにママ友と夫との隠された過去が発覚! 女の執念と狂気が入り混じる想像以上の展開に驚愕! >>この作品を見る 【第10位】優しかった夫の裏の顔/人間まお子どもが産まれると豹変した再婚相手の裏の顔とは4年前に離婚し、バツイチ・シングルマザーとなったあゆみは、穏やかで優しい夫・こうじと再婚し、理想の生活を送っていた。しかし、こうじとの間に娘ができると、暴言や束縛など徐々に違和感を感じるようになり…。「だからお前バツイチなんだ」と夫に言われ続けたあゆみは、次第に自分に問題があるからだと思い込んでしまう…。しかし夫には、確かに裏の顔があったのです。モラハラ夫へと豹変していく様子が描かれた衝撃作品! >>この作品を見る 2022年、特に読まれた人気の転載コミックをご紹介しました。この他にも、ウーマンエキサイトには、ママ友、夫婦関係、義父母、不倫など、さまざまなジャンルの転載コミックをお届けしています。年末年始のお供にぜひ! \完結コミック一覧ページを見る/
2022年12月27日文藝春秋コミック編集部では、12月15日のコミック『やまとは恋のまほろば』4巻発売にあわせ、作品中に登場する、古墳をモチーフにしたキャラクター「おたけやん」をたっぷりフィーチャーしたLINEスタンプを同日発売します。『やまとは恋のまほろば』は、大学の古墳研究会(通称・古研)に所属する“さえない”主人公・三和穂乃香が、古研の活動を通じてだんだんと恋をし、成長していくストーリー。おたけやんスタンプは、穂乃香と古研の同級生である飯田くんがつかっています。「おたけやんスタンプが欲しい!」“やま恋”ファンの声にお応えした待望のLINEスタンプ。浜谷みおさんによる、さまざまなシーンにつかえる40種類のスタンプで、トークをたのしく盛り上げましょう!■著者・浜谷みおさんのコメントおたけやんスタンプをリアルで使える日が来るなんて…!皆さんにもぜひご愛用いただけると嬉しいです!■LINEスタンプ概要商品名:やまとは恋のまほろばLINEスタンプクリエイター名:浜谷みお/文藝春秋発売日:2022年12月15日(木)販売価格:250円(税込)または 100LINEコイン■コミック『やまとは恋のまほろば 4』書誌情報書名:やまとは恋のまほろば 4著者名:浜谷みお定価:792円(税込)発売日:2022年12月15日体裁: B6判 軽装 並製カバー装ページ数:200ページ※電子書籍版も同時発売(画像はプレスリリースより)【参考】※ LINEスタンプダウンロードページ※スタンプ作者ページ※商品URL
2022年12月16日文藝春秋コミック編集部では、12月15日のコミック『やまとは恋のまほろば』4巻発売にあわせ、作品中に登場する、古墳をモチーフにしたキャラクター「おたけやん」をたっぷりフィーチャーしたLINEスタンプを同日発売します。『やまとは恋のまほろば』は、大学の古墳研究会(通称・古研)に所属する“さえない”主人公・三和穂乃香が、古研の活動を通じてだんだんと恋をし、成長していくストーリー。おたけやんスタンプは、穂乃香と古研の同級生である飯田くんがつかっています。「おたけやんスタンプが欲しい!」“やま恋”ファンの声にお応えした待望のLINEスタンプ。浜谷みおさんによる、さまざまなシーンにつかえる40種類のスタンプで、トークをたのしく盛り上げましょう!表1: ■LINEスタンプ概要商品名:やまとは恋のまほろば LINEスタンプクリエイター名:浜谷みお/文藝春秋発売日:2022年12月15日(木)販売価格:250円(税込)または 100LINEコインLINEスタンプダウンロードページURL: スタンプ作者ページURL: ■コミック『やまとは恋のまほろば 4』書誌情報書名:やまとは恋のまほろば 4著者名:浜谷みお定価:792円(税込)発売日:2022年12月15日体裁: B6判 軽装 並製カバー装ページ数:200ページ商品URL: ※電子書籍版も同時発売 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年12月15日この人とこの人が!?と傍から見たら意外に感じるようなカップルが、ときにいる。阿賀沢紅茶さんの本作『正反対な君と僕』は、その「!?」を納得と共感に変えてくれるラブコメだ。正反対だから惹かれ合う!高校生の等身大ラブコメ。「輪の中心にいたり目立つタイプの人が、なぜか地味な人のことを好きというシチュエーションだと、好きになられる側視点のマンガが多いので、好きになった側から描くマンガも見てみたいなあと思いました」好きになった側というのが、元気いっぱいの女子高生・鈴木。一見能天気っぽいのだが、周りの目が気になる繊細な一面を持っている。「派手な人がみんな明るくて、上品な見た目の人がみんなおとなしいわけではないと思うので、派手なビジュアルの鈴木が悩むことも普通にあるかなと。鈴木のように明るいグループにいる人が気になり出すとしたら、どういうタイプの子だろうか?どこをきっかけに好きになったんだろうか?と考えて、谷のキャラクターが生まれました」谷は誰に対しても自分の意見をはっきり言える、物静かでマイペースな男子なのだが、鈴木が思い切ってアプローチした甲斐あって、晴れて恋人同士に。付き合いたての浮ついた感じや、じわじわ距離を縮めていく過程が、とにかく初々しい。「ふたりの恋愛模様を描く上では、出来事をドラマティックにしすぎず、外側から持ち込まれる試練に立ち向かうより、本人たちの関係性を築き上げることを大事にしています」笑いながらも、大きく頷かずにいられないのが、コミュニケーションの難しさとそれゆえの面白さ。登場人物のやり取りを通して、自分の気持ちをうまく相手に伝えられないもどかしさや、些細なことで通じ合えた嬉しさが臨場感たっぷりに描かれる。さらに他人の価値基準に振り回される男子や、スレた恋愛観を持つ女子など、友人の存在もふたりの関係を立体的に見せる。ありがちなスクールカーストが描かれないのも、心地よさの一因といえるだろう。「“カースト下位にいる子が上位に上り詰める=幸せになった”という描写は、物語の構造としてカーストの存在を肯定しているようで違和感がありました。そもそも上下をなくして、対等な関係を無理なく築いていく姿を描きたいです。恋愛的なキュン要素を抜きにしても、学生時代のくだらないわちゃわちゃ感を楽しんでもらえるといいなと思います」ずっと浸っていたくなる、“キュンキュン”と“わちゃわちゃ”だ。阿賀沢紅茶『正反対な君と僕』2見た目も性格も正反対だから惹かれ合うし、理解できたときの喜びも大きい、多感な高校生のハッピーな恋愛模様。2巻は夏祭りや文化祭などイベントが満載。集英社660円©阿賀沢紅茶/集英社あがさわ・こうちゃ2020年「LINEマンガ」にて「氷の城壁」でデビュー。本作はマンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」(集英社)にて隔週月曜更新。※『anan』2022年12月14日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2022年12月13日クマとサケが営む甘味処に、悩みを抱えた人たちが夜な夜な訪れる、中山有香里さんの『泣きたい夜の甘味処』。その続編が、“出前スタイル”に形を変え、『疲れた人に夜食を届ける出前店』としてリリースされた。読んでも作っても心の栄養になる夜食のチカラ。「前作も今作もSNSで発表した作品がもとになっていて、前作は1話が10ページ程度のボリュームでした。忙しくて原稿が進まないとき、フォローしていただいている方に少しでもお返ししたくて、1ページのマンガにしたのが続編のきっかけです。前作でも活躍したクマとサケが、フォロワーさんに食べ物を持っていくていで描き始めました」中山さんは現役の看護師でもあるのだが、夜食に対する思いも強い。「憧れの夜食は、おにぎりとソーセージと卵焼き。ほかにも翌日の罪悪感を考えるとなかなか食べられない甘いものやガッツリしたものも、絵で食べた気になってもらおうと、いろんなメニューを用意しました」さらに前作は“泣きたい夜”がテーマだっただけに、食べる側のエピソードに寄ったしっとりとした内容が多かったが、今作はコミカルな要素が多いのも特徴となっている。「たぶん私自身が楽しんで描いているのが、そうなった一番の理由です。夕方から夜にSNSにマンガをアップすることが多いのですが、疲れた人や理不尽な目に遭った人に一日の終わりに何かを渡すとしたら、あったかいごはんの絵とともに、コミカルな話で背中をなでてあげるのがいいのかなと思っています」注文していない出前を勝手に届けてくれるのは、クマとサケだけでなく、ゴリラ、ネコ、天使、魔王など多彩な顔ぶれ。見た目はいかつい魔王が、引きこもりがちな青年の食生活を親身に世話したり、いたずら好きな天使はカロリーたっぷりな食べ物ばかりを持ってきたり。登場するおいしそうな夜食は、実際に再現することもできる。中山さんの絵をもとに、管理栄養士の中村りえさんがレシピを作成しているのだが、疲れた人がササッと作れるよう、手順が簡略化されているのもポイントだ。「おにぎりの作り方やソーセージのおいしい焼き方など、通常のレシピ本には載らないようなことも盛り込めました。レシピによっては、私が住んでいる関西の味付けを再現してもらえたのも嬉しいですね」中山さんから読者へ愛情のこもった夜食は、どこから読んでも、どう味わっても自由なのも心地よい。「夜食は、体はもちろんですが心の支えになるものですよね。どんなに疲れても、嫌なことがあっても明日は来るので、その前にちょっとでも立て直すという意味で、夜食の力を感じてもらえたらと思っています」『疲れた人に夜食を届ける出前店』『泣きたい夜の甘味処』で第9回料理レシピ本大賞コミック賞を受賞したシリーズの第2弾。鮭茶漬け、ハムエッグ丼、肉うどんなど、46のレシピ付き。KADOKAWA1210円©Yukari Nakayama/KADOKAWAなかやま・ゆかり看護師兼イラストレーター、マンガ家。主な作品に『ズルいくらいに1年目を乗り切る看護技術』シリーズ、『泣きたい夜の甘味処』。※『anan』2022年12月7日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2022年12月05日フランスのプレミアム ファッションスポーツ ブランド LACOSTE(ラコステ)の今年のHOLIDAY COLLECTIONはコミックタッチのポップなグラフィックが特徴です。シグネチャーであるワニがクリエイティヴィティの枠を超えた新しいシルエットは、2021年秋冬のランウェイコレクションからインスパイアされています。ポロシャツやニット、パンツなどのテキスタイルから、バッグや時計などの小物まで、身に着けているだけで気分が楽しくなるようなグラフィックのアイテムが勢ぞろい。また、DIYで自分だけのオリジナルの1着を作ることができる特別な商品もオンライン限定でラインアップ。HOLIDAYシーズンならではのプレイフルなコレクションをお楽しみください。【商品】※価格はすべて税込み<MEN>ニット:AH0734L3色展開(ネイビー、レッド、ホワイト)XS, S, M, L3万4,100円<WOMEN>スウェット:SF1411L1色展開(ホワイト)S, M, L, XL2万6,400円<カスタムワッペンポロシャツ>今シーズンのアイコンワッペンを熱処理で好きな場所にカスタマイズできるこの冬限定のDIYポロシャツ。PH1424L1色展開(ホワイト)XS,S,M,L2万2,000円【オンラインストア限定商品】<カスタムペイントポロシャツ>今シーズンのアイコンのアウトラインをプリント。付属のペンで好きなカラーにカスタマイズできるこの冬限定のDIYポロシャツ。PH1421L1色展開(ホワイト)XS,S,M,L2万2,000円<Ace Clip Leather Trainers>シュータントップ、ヒールトップ、サイドパネルの面ファスナーに着脱できるグラフィックワッペンが付属。デザインを自在にカスタムできるユニークな1足。SM01274-MEN, 25-28.5cmSF00784-WOMEN,22.4-24.5cm1色(ホワイト)1万7,600円■商品のお問い合わせ先ラコステお客様センター 0120-37-0202■ラコステ公式サイトwww.lacoste.jp
2022年12月03日知る人ぞ知るバー『王様の耳』では、これまで誰にも話したことのなかった自身の「秘密」を買い取ってくれるという。〈ガイダロス〉というカクテルを注文すると奥の小部屋へ通され、ミステリアスなオーナーの鳳麟太郎(おおとり・りんたろう)がその話の価値を査定。噂を聞きつけて、夜な夜な、さまざまな悩みや過去を持つ客が訪れる。そそる設定、魅力的なオーナーとバーテンダーのシバケン、ゾクゾクする内緒話の数々。オトナ女子の気持ちを鷲掴みするコミックが、えすとえむさんの『王様の耳』だ。「ワルな男たちを描きたい、というところから企画がスタートしたんです。その舞台として、バーは秘密めいた話や打ち明け話をするのにちょうどいい場所だなと。バーテンダーさんのような後腐れのない相手に、お酒が入った勢いで、知り合いには言えないような、普段ならしないような、特別な話をついしたくなるというか。個人的には、ああいうオーセンティックなバーでしっとりもいいけれど、みんなでワイワイビール飲んでいるのが性に合います(笑)」本作では、各章のタイトルがカクテルの名前になっていたりする遊び心も。ヤクザの組長や50代の刑事、秘密を売りに来る男性客ら、続々登場するイケオジたちもステキで、随所に読者サービスが詰まっている。「つるっとした卵のような若いイケメンよりも、年配の男性の方が骨感というか筋感というか、そういうのが出せて、作画的にはすごく楽しいんです。私の場合、実はいちばん筆が進むのがおじいちゃんなんですね。どう描いても、シワとして味が出るので」1巻では不倫話やTVキャスターのスキャンダルなどゴシップめいた話が中心だったが、2巻に入ってからは、俄然、犯罪がらみのアブナイ話題があちこちで絡まり始めて…。ホストに入れあげて借金まみれになった会社員や、過去の少年事件をめぐり後悔を抱え続けている刑事、夫殺しの告白を繰り返す認知症の女性など、人物や事件の輪がつながり、先が気になってしかたがない。そして、最大のミステリーは、オーナーやシバケンは何者なのか、だ。「オーナーの正体はちゃんとはまだ明かしてませんが、人外であることは示しています。オーナーに〈君からは秘密の匂いがしない〉と言われたシバケンですが、過去に何かありそう。人に言えない究極の秘密とはなんだろうと考えながら、伏線を回収しつつ、そこに向かってラストまで走りたいなと思っています」3巻は来年2月に発売予定とのこと。待ちきれなくて、バックナンバーを読み漁ってしまいそう…。えすとえむ『王様の耳 秘密のバーへようこそ』2デザイナーのteraccoさんが手がけた装丁も注目ポイント。2巻の透明カバーの窓からのぞくのはシバケンこと柴健斗。背景になっているバーの棚の絵も圧巻だ。小学館880円©えすとえむ/小学館えすとえむマンガ家。東京都出身。2006年、『ショーが跳ねたら逢いましょう』でデビュー。『いいね! 光源氏くん』がドラマ化。本作は、『女性セブン』で連載中。※『anan』2022年11月30日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2022年11月28日