コロナ禍によってコンサートが激減し、家で音楽を楽しむ機会が増えたところに、久々のビッグニュースが到着した。ドイツの名門「バイエルン国立歌劇場」が自主レーベルをスタートすることが発表され、5月28日にその第1段が発売になる。しかもその中身が、キリル・ペトレンコ指揮バイエルン国立管弦楽団によるマーラーの交響曲第7番なのだから素晴らしい。キリル・ペトレンコといえば、2019年よりサイモン・ラトルの後任としてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の芸術監督に就任したクラシック・ファン大注目のマエストロだ。しかしその実力に比して録音の数が極端に少なく、今だに全貌がつかめない状況だ。その彼がバイエルン国立管弦楽団を指揮した2018年の話題のライブ録音が発売になるのだからこれは楽しみだ。*演奏会評は以下の通り「このマーラー7番はあらゆる点で議論の余地なく最上級だ『ジ・アーツ・デスク』」「素晴らしいバイエルン国立管弦楽団による真に輝かしいマーラー『ザ・ガーディアン』 」「息をのむばかりの完璧な演奏『アーべントツァイトゥング』」「超高解像度のマーラー。CD はいつ出るのか?『ミュンヘン・メルクール』」今回のシリーズを手掛けるナクソス・グループによる今後のリリース計画にも注目したい■CD情報グスタフ・マーラー:交響曲第7番 ホ短調「夜の歌」キリル・ペトレンコ指揮、バイエルン国立管弦楽団録音:2018年5月28日&29日 ミュンヘン、バイエルン国立歌劇場 (ライヴ)NYCX-10223国内仕様盤・日本語解説付 定価3,300円輸入盤:BSOrec0001:オープンプライス2021年5月28日発売キリル・ペトレンコ(C)Wilfried_Hoesl(C)Wilfried_Hoesl■今後のリリース計画(順不同、発売日未定)※オーケストラはすべてバイエルン国立管弦楽団【CD】〇ベートーヴェン:交響曲第2 番、ブレット・デイーン:テスタメントウラディーミル・ユロフスキ(指揮)、録音:2020年10月〇シューベルト:交響曲第8番「ザ・グレート」ズービン・メータ(指揮)、録音:2021年1月【映像作品】〇コルンゴルト:歌劇《死の都》ヨナス・カウフマン(テノール)、マルリス・ペーターゼン(ソプラノ)、キリル・ペトレンコ(指揮)収録:2019年12月〇アブラハムセン:歌劇《雪の女王》バーバラ・ハンニガン(ソプラノ)、レイチェル・ウィルソン(メゾ・ソプラノ)、ピーター・ローズ(バス・バリトン)、コルネリウス・マイスター(指揮)収録:2020年1月〇ストラヴィンスキー:マヴラ、チャイコフスキー:イオランタバイエルン国立歌劇場オペラ・スタジオ、アレフティナ・ヨッフェ(指揮)収録:2019年4月〇リヒャルト・シュトラウス:ばらの騎士マルリス・ペーターゼン(ソプラノ)、クリストフ・フィシェッサー (バス)、サマンサ・ハンキー(メゾ・ソプラノ)、ヨハネス・マルティン・クレンツレ(バリトン)、カタリーナ・コンラーディ(ソプラノ)、ウラディーミル・ユロフスキ(指揮)収録:2021年3月
2021年04月14日この12月に再び都響に帰ってくる首席客演指揮者アラン・ギルバート。定期Bシリーズと都響スペシャルでのシューマン、ストラヴィンスキーの「春」プロに続いて、定期CシリーズとAシリーズでは、カラフルで情熱的なスペイン・プログラムを楽しませてくれる。【チケット情報はこちら】近年、オペラ指揮者としても世界中で活躍し、今年の5月にスウェーデン王立歌劇場でR.シュトラウスの『ばらの騎士』を、2019年5月から6月にかけて、ミラノ・スカラ座でコルンゴルトの『死の都』を振るなど、歌劇のレパートリーを広げているギルバート。都響と新たな境地を創り上げる意欲が感じられるドラマティックな曲をセレクトした。R.シュトラウス:交響詩『ドン・キホーテ』とリムスキー=コルサコフの『スペイン奇想曲』では、都響のメンバーがソリストとしてフィーチャーされるのも聴きどころ。『ドン・キホーテ』ではソロ首席ヴィオラ奏者 鈴木学が、ゲストのチェリスト ターニャ・テツラフとソロ・パートを演奏し、『スペイン奇想曲』ではヴァイオリン、クラリネット等で都響の首席奏者たちのソロを聴くことができる。『ドン・キホーテ』も『スペイン奇想曲』も指揮者とオケの呼吸感がものをいうエネルギッシュな楽曲。その瞬間に降りてくるひらめきをキャッチした、エキサイティングな掛け合いを聴かせてくれるはず。ビゼーの『カルメン組曲』はアラン・ギルバート・セレクションで、「音楽で物語を語りたい」という彼のこだわりが強く表れている。オペラの王道の中の王道ともいえる『カルメン』を歌なしでオケに歌わせる自信があるのだろう。都響も、頻繁ではないが東京二期会のピットや東京・春・音楽祭でオペラの成功を支えてきた功績がある。ギルバートが求めるオペラ的な次元に、冴えたレスポンスをしてくれるのが楽しみでならない。同じスペインを主題にしていながら、異なる国の作曲家を三人並べる自由さも「無限」が似合うギルバートらしい。ボーダーレスで冒険的なプログラムには、ユーモアも感じられる。若くしてニューヨーク・フィルの音楽監督に抜擢され、50代を迎えて指揮者としての本格的な円熟期に入ったアラン・ギルバート。つねに新しい何かを待っている都響とギルバートの出会いは必然だった。両者にとっての未知の次元を切り拓く、華やかなスパニッシュ・プログラムに期待。文:小田島久恵(音楽ライター)
2018年12月07日