2023年10月より放送され、大きな反響を呼んだドラマシリーズ『マイホームヒーロー』。ハラハラドキドキの展開に多くの視聴者が虜となりましたが、その完結編となる『映画 マイホームヒーロー』がついに公開を迎えます。そこで、こちらの方々にお話をうかがってきました。佐々木蔵之介さん & 宮世琉弥さん【映画、ときどき私】 vol. 639本作では、普通の父親が娘に危害を加えようとした彼氏を殺してしまう衝撃の物語が描かれていますが、主人公の鳥栖哲雄を演じているのが佐々木さん。そして宮世さんは、哲雄を追いかける犯罪組織「間野会」に復讐を誓う“謎の男”大沢隼人として映画版から参戦しています。今回は、現場での裏話や自分にとってのヒーロー、そして最近身に起きているピンチについて語っていただきました。―本作で初共演となりましたが、ご一緒されてみていかがでしたか?宮世さん佐々木さんの背中がすごく大きかったので、こっそりといろんなことを吸収させていただきました。佐々木さんそんなところあったかな?宮世さん現場での居方やスタッフさんへの対応、そしてお芝居への向き合い方など、細かいこともいろいろ学ばせていただきました。そのおかげで自分の引き出しもすごく増えたと感じています。僕は普段から何でもメモするタイプで、電車で見かけた派手目の女性が携帯を使いにくそうにしてたら「爪が長いと打ちにくい」とかそんなことも書くほどなんですけど、そんなふうに現場でもたくさんメモさせていただきました。最初から役者として芝居の話が自然とできていた―すごいですね。ちなみに、佐々木さんに関してはどんなことをメモされていたのでしょうか。宮世さんまずは、座長として引っ張っていってくださるところとか、ついていきたくなるような部分を書いていました。あとは、初対面でもボケたりツッコんでくださったりするほど、とにかく優しいところについてです。佐々木さんそれは、関西人だからかもしれないですね(笑)。宮世さん特に、僕は現場で一番年下ということもあってすごく緊張していましたが、そんなときにご飯にまで誘っていただいたので、それもすごくうれしかったです。―佐々木さんから見た現場の宮世さんはどのような印象でしたか?佐々木さんまず役の話をすると、大沢は過去に深い傷を負っていて影があるものの、ハツラツに登場してきて爆発力があるキャラクターなので、そこが面白いと思いました。敵なのか味方なのかわからない感じを宮世くんがうまく出していて、素晴らしかったです。―打ち解けられた瞬間などもあったのでしょうか。佐々木さん最初から役者として芝居の話が自然とできていたので、すんなりいった感じだったかなと。宮世さんちなみに、初めてご一緒したシーンは水族館でしたが、セイウチが急に鳴き出して大変でしたよね!佐々木さんそうそう。本番中、定期的にセイウチが鳴くんですよ。それを止めることができなかったので、セイウチで押しました(笑)。宮世さんでも、そのおかげで佐々木さんと2ショット写真が撮れましたし、そこで距離が縮まった気がします。途中からの参加でどの現場よりも緊張していた―クランクアップのとき、佐々木さんは感極まって涙も見せていたそうですが、ご自身にとっても特別な役でしたか?佐々木さん殺人犯なのにヒーローで、正義なのか悪なのかわからないキャラクターなので、いままでやってきた役のなかでも楽しくてやりがいがありました。客観的に見たらホラーのようなことをしているのに、笑えるところもある。そういう多面的な部分も含めてすごく好きでした。―とはいえ、精神的にも肉体的にもけっこう大変だったのではないかなと思うのですが。佐々木さんみなさんに心配していただいたのですが、僕は普段から役に引きずられることはまったくありません。ただ、今回は血のりが多かったので、「お弁当が食べにくいな」とか「血が付いて嫌だな」とかそういうのはありましたけど(笑)。でも、現場は最高におもしろかったです。―宮世さんは映画版からの参加となりましたが、今回のキャラクターを演じるうえで意識したことはありましたか?宮世さん僕は「間野会をつぶす!」ということだけに専念していたので、すべての行動はそこに向かっています。そのためなら何の手段も問わないという思いを心に入れてお芝居をしていました。佐々木さんいやー、素晴らしいね。宮世さんただ、すでに出来上がっているチームに途中から参加ということで、クランクインのときはどの現場よりも緊張していたと思います。なるべく早くなじめるように、撮影の合間にはスタッフさんたちと話をしたりして、感覚をつかむように心がけていました。自分たちのヒーローに支えられている―本作には豪華な顔ぶれが揃っていますが、印象に残っている方がいれば教えてください。佐々木さん間野会の殺し屋を演じている音尾(琢真)くんですね。彼の演じる窪という役は一番人を殺していて最強なんですけど、あんな怖い顔して差し入れのドーナツを全種類食べるくらい甘い物が好きで「娘に持って帰りたい」と言っていて。あれだけ人を殺している役を演じている彼もやっぱり娘が大事なんだなと思いました(笑)。宮世さん本当にキュートな方で、娘さんを愛していますよね!佐々木さんあと、間野会トップの津田(健次郎)さんもクセが強い役でしたね。でも、ご本人はものすごく優しい方です。―では、おふたりにとって「ヒーロー」といえばどなたですか?佐々木さんそれは、観てくださるお客様です。不安なこともいろいろありますが、「よかったよ」とか「励まされました」と言っていただけると、こちらも力をいただけますし、本当に助けてもらっています。特に、舞台のときは一緒に作品を作っている感じがするので、僕にとって一番の原動力はお客様ですね。宮世さん僕は、家族です。家族がいなかったら、僕はいま生きていません。言葉でも支えられてきた部分が大きいので、その恩返しをしたいという意味でもこういった活動をしています。なので、僕にとっては“マイファミリーヒーロー”です。ピンチのときは、考え方を変える―劇中の哲雄は、自分の得意分野を駆使してさまざまなピンチを乗り越えていきますが、おふたりがピンチに見舞われたときの解決法などがあれば教えてください。佐々木さん僕の場合は、「逆にピンチを笑う」かな。それは「このピンチめっちゃキツイやん」とか「こんなのありえへんで!」とか言いながら消化していくイメージです。というのも、ギリギリの状態でやっていると力を発揮できませんからね。考え方を変えて、あえて笑いにしています。―ということは、ピンチに追い込まれるのも意外と嫌いではない?佐々木さんいや、嫌いですよ(笑)。できれば避けて通りたいです。―ですよね。宮世さんはいかがですか?宮世さん僕は言葉と距離を置くようにしています。弱音を吐きそうになったら、その言葉と距離を取って、自分をその状況に置かないようにする。疲れたときは、そういう意識を持つようにしています。―なるほど。ちなみに、最近ピンチだったことはありますか?佐々木さん実は、昨日めちゃくちゃピンチでした。というのも、2月からXとインスタを開設したんですが、まだ何もわかってないのにいきなりインスタライブをしたんです。宮世さんえっ!?それはかなりハードルが高いですね!佐々木さんでも、そのハードルの高さもわかってないんですよ(笑)。宮世さん僕はインスタを学ぶまでにけっこう時間がかかったほうですが、インスタライブなんて1発目にするものではないので逆にすごいです。佐々木さんそうでしょ!僕もそう思う(笑)。ボタンがどこにあるかもわからないし、いろいろハプニングもあったので、ずっとピンチでした。まさにいま絶体絶命のピンチを迎えている―それは最初から大変でしたね。宮世さんちなみに、僕はいま財布をなくしていてピンチです。なので、頭のなかの5割は財布のことを考えています(笑)。佐々木さんどういうこと?宮世さん朝起きたときに「そういえば最近財布見てないな」と思って、家を探したらなくて。ご飯屋さんに連絡してもなくて…ピンチです(笑)。一昨日まではあったんですけど。買い物はスマホでしていたので全然気が付きませんでした。佐々木さんそれは絶体絶命やね。―まさかのおふたりともピンチの真っ只中とは…。ちなみに、いまだから相手に聞いてみたいこととか相談したいことはありますか?佐々木さんやっぱりインスタのことを相談したいですね(笑)。どういうふうにしたらいいか全然わかっていないので。宮世さん続けるのは難しいですよね。以前ご飯に行ったときに、お酒の作り方とか選び方とか、いまの日本酒業界で起きていることなど、お酒の話をたくさん聞かせていただいたので、僕は佐々木さんからもっといろいろな世界を学びたいなと思っています。佐々木さんそういえば、前回はまだ未成年で飲めなかったんだよね。じゃあ、ちょっと飲みに行きますか。宮世さんやった!佐々木さんそしたら、飲みながらインスタを教えてもらおうかな(笑)。悩めるときは思いっきり悩んだらいい―楽しそうですね。それでは最後に、ananweb読者にメッセージをお願いします。宮世さんまずはシンプルに「がんばれ!」のひと言ですね。というのも、僕自身もTHE BLUE HEARTSさんの「人にやさしく」という曲の「がんばれ」という言葉に支えられている部分があるので。大変になることもありますけど、そういうときは「どうしてこの仕事に就いたのか」とか、自分が活動している意味についてもう一度思い出しながら初心に返るようにしています。佐々木さん僕が20歳くらいのときは、そんなこと考えたこともないのにすごいね。20代や30代の頃は日々苦しいこともいろいろあると思いますが、大いに悩めばいいと思います。悩むことは決して損ではないですし、後から考えたら大丈夫なことばかりですから。なので、絶対に開けてくると己を信じて過ごしてほしいです。僕自身もみなさんの年代のときは困難も多かったですが、その経験で基礎体力は身についたと思います。悩めるときは思いっきり悩んだらいいんじゃないかなと。そういう時期も悪いことではないので、安心してお酒でも飲んでください(笑)。インタビューを終えてみて…。年齢差を超えた仲の良さを見せる佐々木さんと宮世さん。劇中では行動をともにする役どころということもあり、お互いへの信頼感も伝わってきました。ぜひ、おふたりの関係とそれぞれどのような戦いを繰り広げるのかにも注目してください。最後まで息つく間もなくノンストップ!二転三転する展開から片時も目が離せない本作。緊張感が最高潮に達したクライマックスで迎える想像を超えたラストはお見逃しなく。写真・園山友基(佐々木蔵之介、宮世琉弥)取材、文・志村昌美佐々木蔵之介 ヘアメイク・晋一朗(IKEDAYA TOKYO)スタイリスト・勝見宜人(Koa Hole inc.)宮世琉弥 ヘアメイク・礒野亜加梨スタイリスト・徳永貴士(SOT)ストーリー愛する家族を守るため、娘の彼氏を殺してしまった父・鳥栖哲雄。命がけで何とか罪を隠し通してきたが、それから7年後、山中に埋めた死体が発見されてしまう。捜査に乗り出す警察と、死体とともに消えた10億円を探す半グレ犯罪組織が哲雄に襲い掛かる。さらに、再び標的&容疑者になった哲雄にある秘密を知る男・大沢も接触してくるのだった。そして、父の罪を知らずに刑事になった娘は、事件の真相に迫っていくことに…。続きが気になる予告編はこちら!作品情報『映画 マイホームヒーロー』3月8日(金)全国ロードショー配給:ワーナー・ブラザース映画(C)2024 映画「マイホームヒーロー」製作委員会写真・園山友基(佐々木蔵之介、宮世琉弥)
2024年03月07日極上ヒューマンサスペンス「ワンダフルワールド」が、ディズニープラス スターにて配信決定。日本語版ポスタービジュアルも公開された。心理学教授で有名作家のウン・スヒョン(キム・ナムジュ)はある日、息子を殺され、人生が一変。そして法をかいくぐり、野放しにされた犯人を自らの手で葬ることに。生きる意欲を失い、落ち込んでいたスヒョンだが、刑務所で出会った囚人からの慰めに少しずつ心を開いていく。出所したスヒョンは、同じく心に傷を負った謎の青年ソンニュル(チャウヌ)と出会い、それぞれの秘密を抱えたまま対峙することになる――。本作は、愛する息子を失った女教授と、過去に傷を負った謎の青年、同じような痛みを抱える2人が繰り広げるヒューマンサスペンス。息子を殺され、自ら犯人を殺害してしまう主人公で、悲惨な役どころを演じたのは、キム・ナムジュ。また、謎の青年クォン・ソンニュルを、インスタフォロワー数4000万人超えるチャウヌ(ASTRO)が演じている。日本語版ポスタービジュアルでは、雨の中でソンニュルがスヒョンに傘を差し出し見つめ合う、ロマンチックなシーンのようだが、そこは墓地のように見え、揺れ動く複雑な心情が垣間見える。監督は「トレーサー」シーズン1&2のイ・スンヨン、脚本は「嘘の嘘」のキム・ジウンが手掛けた。「ワンダフルワールド」は3月1日(金)よりディズニープラス スターにて配信開始(全14話/毎週金・土曜日2話ずつ配信)。(シネマカフェ編集部)
2024年01月30日イーライ・ロス監督最新作『サンクスギビング』より、キャラクターポスターとサスペンス予告が公開された。クエンティン・タランティーノ監督とロバート・ロドリゲス監督がタッグを組み、映画本編2本と実在しない映画の予告編4本で構成されたホラー映画『グラインドハウス』。本作は、その中でイーライ・ロス監督が手掛けたフェイク予告編『感謝祭(Thanksgiving)』を自らの手で16年ぶりに長編映画化した作品となる。なお、全米ではすでに公開され大ヒット。早くも続編の製作が決定し、「自分たちが作ったものを超えるつもり」とロス監督も意気込んでいる。今回新たに公開されたサスペンス予告は、感謝祭に沸く町のダイナーで働く女性が襲われるシーンからスタート。すぐさま警察が捜査に乗り出すが、犯人は町の伝説の人物ジョン・カーヴァーの仮面を被っており手がかりが掴めない。そして、警察官の「誰も信じるな」というセリフとともに不穏な空気が流れると、衝撃シーンが矢継ぎ早に映し出される。仮面の裏に隠されたその正体はいったい誰なのか?その目的とは──?映画『サンクスギビング』は、12月29日(金) 公開。『サンクスギビング』サスペンス予告<作品情報>『サンクスギビング』12月29日(金) 全国公開公式サイト:
2023年12月12日松本清張原作のTVドラマシリーズ『松本清張サスペンス 隠花(いんか)の飾り』初のデジタル配信がスタートした。2022年に没後30年を迎えた、推理サスペンス小説界の巨星・松本清張。清張作品は、映画・TVドラマの両方で(しかも同原作が複数回)映像化されている作品が多く、『点と線』『砂の器』『ゼロの焦点』は映画化かつTVドラマ化され、劇場ヒット作となりTVで高視聴率を記録している。今回配信される『松本清張サスペンス 隠花の飾り』は清張の同名短篇集を原作とし、1986年春に関西テレビ・フジテレビ系列で放映された単話完結の全8話のシリーズ。主演に、岩下志麻、司葉子、小川眞由美、眞野あずさ、檀ふみ、池上季実子ほか錚々たる女優が名を連ね、愛を強く求めるあまり転落してゆく女たちのむき出しの欲望、うずまく情念が様々な立場・状況で赤裸々に描かれる。また、中島貞夫、鷹森立一、田中登ほか映画界の気鋭が集結し監督を務めていることや、三枝成彰の音楽にも注目だ。<作品情報>『松本清張サスペンス 隠花の飾り』配信中()第1話「足袋」謡曲の師匠である女は、弟子と男女の間柄になったが、やがて男の妻に関係がバレる。男は女との関係を絶とうとするが、男に惚れ込み、執着する女は……。出演:岩下志麻、高橋悦史、萩尾みどり、神山繁、大場久美子 ほか脚本:宮川一郎監督:中島貞夫第2話「見送って」早くに夫を亡くした女は、気難しい姑と嫌味な義姉による熾烈な苛めに長年耐えながら仕えて来たが、娘の結婚を機に、独立、復讐する。出演:司葉子、荒木道子、蜷川有紀、仲谷昇、高橋ひとみ ほか脚本:大薮郁子監督:鷹森立一音楽:三枝成彰第3話「愛犬」真夜中に家の前を通る不自然な靴音に愛犬が吠え立て、飼い主の女は足音の主である男と目が合う。やがて近所で殺人事件が起こり、女と愛犬の生活に異変が……。出演:小川眞由美、山内明、小林稔侍、稲川善一、浜村純 ほか脚本:大薮郁子監督:松尾昭典音楽:三枝成彰第4話「箱根初詣で」夫を不慮の事故で喪って数年後に再婚した女が、ある日偶然前夫の同僚の妻と会い悪夢の事件を呼び起こされ、前夫の死の真相と再婚相手の本性を知る……。出演:眞野あずさ、戸川純、金田龍之介、伊藤孝雄、赤座美代子 ほか脚本:金子成人監督:広瀬襄第5話「遺墨」気鋭の若手速記者として活躍する女は、自分を重用する有名哲学者と不倫中だが、相手の妻に事がばれた際、平謝りする男に幻滅する。そして次々と男の本性が明らかになる……。出演:大滝秀治、岸田今日子、島村佳江、奈良岡朋子 ほか脚本:岩間芳樹監督:河野宏第6話「お手玉」妖艶な美貌と気立ての良さを誇る料亭の女将は、病弱の夫を事故で喪う。得た保険金で女将は愛人の板前と共に店を拡張しようとするが、ある日板前も死亡する……。出演:野川由美子、高橋幸治、河原崎建三、小松方正 ほか脚本:柴英三郎監督:田中登第7話「再春」小説のネタに困った若き気鋭の主婦作家が、知人からヒントを受け作品を発表するが、盗作問題に発展。やがて家庭も崩壊、追い込まれていく……。出演:檀ふみ、三浦浩一、加藤治子、木ノ葉のこ、鈴木瑞穂 ほか脚本:田中晶子監督:小田切成明第8話「百円硬貨」不倫相手を略奪するために必要な三千万円を職場から横領した女。現金を移送中、公衆電話で男に連絡しようとするも、小銭を持ち合わせていなかった女のとった行動は……。出演:池上季実子、奥田瑛二、白都真理、北村総一朗 ほか脚本:宮川一郎監督:小澤啓一(C)松竹
2023年12月02日マーベル初の本格ミステリーサスペンス『マダム・ウェブ』が2024年に公開されることが決定。併せて予告映像が公開となった。マダム・ウェブは、原作コミックで未来予知やテレパシーでスパイダーマンを救う重要なキャラクターとして描かれ、フィジカルな特殊能力をもつ他のヒーローとは異なる存在として注目を浴びてきた。今回公開された予告映像に映るのは、マダム・ウェブの若かりし姿。ニューヨークで救命士として懸命に人の命を救ってきたキャシー(のちのマダム・ウェブ)は、生死を彷徨う事故をきっかけに、‟未来予知”の能力を手にする。突如覚醒した能力に戸惑いながらも、キャシーは未来を予知するだけでなく、自分の意思で未来を変えられることにも気づく。ある日キャシーは偶然出会った3人の少女が、黒いマスクとスーツに身を包んだ謎の男に殺される未来を見たことから、図らずもその男から少女たちを守ることに。‟重要な秘密”を持つとされる少女たちは一体誰なのか、キャシーと同じく未来が見える黒いマスクとスーツの男はどこからやって来たのか。やがてすべては、キャシー出生の秘密とともに、壮大な“運命”の糸で結びついていく。主人公マダム・ウェブを演じるのは、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』シリーズや『サスペリア』などで知られるダコタ・ジョンソン。さらに『ユーフォリア/EUPHORIA』でブレイクしたシドニー・スウィーニー、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』や2024年公開の続編『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』にも出演のセレステ・オコナー、『トランスフォーマー/最後の騎士王』のイザベラ・メルセド、『モーリタニアン 黒塗りの記録』や12月1日(金) 公開の『ナポレオン』のタハール・ラヒム、『アメリカン・ホラー・ストーリー』シリーズのエマ・ロバーツ、『セヴェランス』のアダム・スコットといった面々が出演する。監督は『Marvel/ジェシカ・ジョーンズ』『コラテラル 真実の行方』のS・J・クラークソンが務める。併せて公開されたダコタとクラークソン監督がキャラクターについて語る特別映像では、ダコタは「知性こそがマダム・ウェブのスーパーパワー」だと断言。クラークソン監督も、空を飛べるスパイダーマンとも、変身できるヴェノムとも違い、「マダム・ウェブのパワーは目に見えないもの」と語る。突然手にした予知能力をキャシー自身も最初は信じられないでいるが、監督は「すべての運命が彼女から始まる」と意味深な言葉を残している。さらに本作についてシドニー・スウィーニーは「今までとは全く異なるヒーロー映画になる」(米・Variety)、エマ・ロバーツも「これまでにない切り口のマーベル映画」(米・Collider)と語っている。『マダム・ウェブ』予告映像『マダム・ウェブ』特別映像<作品情報>『マダム・ウェブ』2024年公開公式サイト: TM 2023 MARVEL
2023年11月16日Amazonプライムビデオ「プラス松竹」チャンネルにて、ミステリーサスペンスの名作『八つ墓村』と『この子の七つのお祝いに』の2作品の配信がスタートした。『八つ墓村』は、総製作費7億円(現在での約15億円規模)と2年3カ月もの期間をかけ、総勢120名の豪華キャストと2000名を超えるエキストラという破格のスケールで、横溝正史の小説をオカルトホラー色を強調し映画化した超大作。監督・野村芳太郎、脚本・橋本忍、撮影・川又昂、音楽・芥川也寸志ら『砂の器』のスタッフに、萩原健一、渥美清ほか豪華キャストが共演。懐中電灯を頭に巻き付けた山﨑努による大虐殺シーンはトラウマ必至の強烈なインパクトを残し、「たたりじゃ~!」のセリフはオトナから子供まで誰もが知る当時の流行語となった。『この子の七つのお祝いに』は、怨念に満ちた女の情念の世界と血塗られた愛憎劇を描き、「第一回横溝正史賞」を受賞した斉藤澪の小説が原作。『黒の超特急』『陸軍中野学校』『痴人の愛』『華岡青洲の妻』『動脈列島』の名匠・増村保造が、岩下志麻、根津甚八、岸田今日子ら豪華キャストを得て独特の陰影に富んだ色彩設計による映像美で映画化し、結果的には増村の映画監督作としての遺作となった。『ルパン三世』シリーズで知られる大野雄二による音楽も聴きどころ。<作品情報>『八つ墓村』『八つ墓村』 (C)1977松竹株式会社今から400年前。戦国時代、山あいのある村に流れ着いた八人の落武者たち。しかし村人たちは彼ら尼子一族に懸けられた恩賞金に目がくらみ、皆殺しにする。その後、奇怪な出来事が続発。惨殺した8人の落武者に祟られている。いつからか、この村は八つ墓村と呼ばれるようになった。そしていま、忌まわしい血を持つ寺田辰弥(萩原健一)が妖艶な未亡人・森美也子(小川真由美)と共にこの八つ墓村に帰ってきた。村人たちが恐れるなか、再び血にまみれた戦慄の事件が次々と村を襲う。怨念か。それとも計画的な殺人か。御存知の名探偵、金田一耕助(渥美清)が登場。名推理が奇妙な事件を飄々と紐解いていくのだが……。原作:横溝正史監督:野村芳太郎脚本:橋本忍撮影:川又昂音楽:芥川也寸志出演:萩原健一、渥美清、小川真由美、山崎努、山本陽子、市原悦子、中野良子、藤岡琢也、大滝秀治、田中邦衛、下條アトム、夏八木勲 ほか1977年劇場公開 / カラー / 約151分(C)1977松竹株式会社『この子の七つのお祝いに』『この子の七つのお祝いに』 (C)1982松竹株式会社次期総理の座を狙う大臣の秘書、秦一毅(村井国夫)の家に出入りしていた池畑良子(畑中葉子)の惨殺死体が発見される。政界の闇を暴こうと良子に接触していたルポライターの母田(杉浦直樹)は、秦の内妻で占い師の青蛾(辺見マリ)の身辺を探っていたのだ。母田は後輩記者の須藤(根津甚八)に協力を請う。その時に初めて会ったバーのママ、ゆき子(岩下志麻)に惹かれる母田。ふたりは密会を重ねる。そんな矢先、青蛾の正体を突き止めた母田が謎の死を遂げた。母田に代わって事件の真相を探るため、会津に向った須藤がそこで彼が目にしたのは……。原作:斉藤澪監督:増村保造脚本:松木ひろし、増村保造撮影:小林節雄音楽:大野雄二出演:岩下志麻、根津甚八、杉浦直樹、岸田今日子、辺見マリ、村井国夫、芦田伸介、畑中葉子、中原ひとみ、坂上二郎、室田日出男、名古屋章 ほか1982年劇場公開 / カラー / 約111分(C)1982松竹株式会社プラス松竹チャンネルは こちら()
2023年10月06日土屋太鳳×内田英治監督のタッグで贈る新感覚サスペンス・スリラー映画『マッチング』より、新たなキャストが発表された。マッチングアプリによって増えた“出会い”の裏に仕掛けられた恐怖を完全オリジナルで描く本作。主人公・輪花を土屋さん、彼女とアプリでマッチングする“狂気のストーカー”永山吐夢を佐久間大介(Snow Man)、輪花を助けるマッチングアプリ運営会社のプログラマー・影山剛を金子ノブアキが演じる。今回新たに発表されたのは、輪花、吐夢、影山の3人が巻き込まれていく「アプリ婚連続殺人事件」に関わるキャラクターを演じる俳優陣。輪花を男手一つで育て上げ、娘とは良好な関係ながらも将来を心配する父・唯島芳樹を杉本哲太が演じ、優しさと同時に影を感じさせる父親を作り上げる。仕事漬けの日々を送る輪花にマッチングアプリを勧める職場の同僚・伊藤尚美を、「全裸監督 シーズン2」『万引き家族』に出演した片山萌美が演じる。また、「アプリ婚連続殺人事件」捜査班として真相を追う警部補・西山茜役で真飛聖、西山と併走する巡査部長・堀井健太役で後藤剛範が出演し、それぞれ『ミッドナイトスワン』「全裸監督」などの話題作に続いての内田組となるバディがシリアスな展開に緊張感をもたらす。そのほか、輪花の過去を知る“車椅子の女”美知子役で片岡礼子、美知子に寄り添う世話係・節子役で斉藤由貴が参加する。『マッチング』は2024年2月、全国にて公開予定。(シネマカフェ編集部)■関連作品:マッチング 2024年2月、公開予定©2023『マッチング』製作委員会
2023年09月07日4月もまだまだ幅広い話題作が公開を控えていますが、そのなかでも日本映画界が誇る実力派キャストとスタッフが集結したことで注目を集めている1本といえば最新作『ヴィレッジ』。閉鎖的な村社会を舞台に描いた衝撃のサスペンス・エンタテインメントとしても関心が高まっているところですが、本作の裏側についてこちらの方々にお話をうかがってきました。奥平大兼さん & 藤井道人監督【映画、ときどき私】 vol. 572横浜流星さん演じる主人公・優が働くごみ処理施設に後輩として入ってくるワケありな青年の龍太を演じたのは、デビュー作『MOTHER マザー』で数々の賞に輝き、ブレイク必至の若手俳優と話題の奥平さん(写真・左)。そして、監督と脚本を手掛けたのは、『新聞記者』や『ヤクザと家族 The Family』、大ヒット作『余命10年』などで高く評価され、いまや“日本映画界の寵児”とも呼ばれている藤井監督(右)です。今回は、お互いに対する思いや周りに流されないために意識していること、そして人生が変わったと感じた瞬間などについて語っていただきました。―本作のきっかけは、プロデューサーの故・河村光庸さんから「お面をかぶった人々の行列」や「能」といったいくつかのお題を出されたことだそうですが、最初にお話があったときはどのように思われましたか?監督いきなりバーッと言われてしまったので、いつも通り何を言っているのかわかりませんでした(笑)。奥平さんそうなんですか!?監督というのも、河村さんは頭の回転が早すぎて口が追いついていないような方ですからね。でも、そのときから「今回の映画は村社会を描きたい」「若い人の話にしないと意味がない」ということは特に言われていました。―そこからすぐに物語のイメージは湧いたのでしょうか?監督いや、まったくです…。こんなにも脚本の決定稿までに時間がかかったことはありませんでした。衣装合わせのときにもまだできあがっていなくて、みなさんにも「これから作るので少々お待ちください」と伝えていたほどです。自分とかけ離れた人物を演じるのは楽しい―キャストの方々には、監督から一人ずつキャラクターシートが渡されていたそうですが、それを踏まえて奥平さんはどのように役作りしましたか?奥平さんなかでもよく覚えているのは、劇中に匂わせるシーンもないのに「ヒップホップグループの『舐達麻(なめだるま)』を聴いている」と書かれていたことです。それでもとりあえず聴いてみようと思って、京都にいる間はずっと聴くことに。いまではすっかりファンになりました(笑)。―金髪にタトゥーという外見で、キャラクターとしてもいままでにない役だったと思います。奥平さん今回はそれもすごく楽しみでした。というのも、役者の仕事では短期間でも自分が生きられない人生を味わえるので、疑似的に体験できたり、他人の感覚を知れたりするのはうれしかったです。自分とかけ離れた人物を演じるのは、楽しいことだと改めて感じました。―おふたりがご一緒するのは本作が初めてですが、監督は奥平さんに対してどのような印象をお持ちでしたか?監督河村さんが『MOTHER マザー』をプロデュースしたときに「次のスターを見つけた!」とずっと自慢していたので、実は最初は「うるさいなぁ」って思っていたんです(笑)。でも、信頼している流星のマネージャーたちからも「すごいのが入りました」と話があって、そんなにみんなが言うなら見てみようかなと。奥平さんそれはハードル上がりすぎです(笑)。大兼は見てきた俳優のなかでも一番ニュートラル―実際お会いしてみて、評判通りだと思われましたか?監督評判以上の生き物でしたね(笑)。というのも、大兼は同じことをしないというか、本当に自由にやってくれますから。でも、そこが好きなところです。奥平さんありがとうございます!監督あとは、いろんな俳優を見てきましたが、大兼は一番ニュートラルというか、計算せずに感じたことでやるタイプなんだなとも思いました。実際、衣装合わせで会ったときに、「僕は事前に考えていくよりも、やってみて理解するタイプなんです」と本人からも言われて何も返せなかったです(笑)。奥平さんあははは!監督でも、だからこそ今回演じてもらった龍太という役にはぴったりだなと。芯の部分を持っているのにそこをなかなか出せない人物だったので、そういうところが大兼とシンクロしていて撮るのが楽しかったです。―奥平さんは藤井監督の演出に関して、「ヒントをくれつつ自分で答えを見つけさせてくれた」と感じたそうですが、改めて振り返ってみていかがですか?奥平さんまずこの現場に行く前のお話をすると、ありがたいことではありますが、まだほとんど経験のないときにいろんな映画賞や新人賞をいただいたこともあって、周りの方々が思っている僕と自分自身とのギャップがありすぎてつらいと感じていた時期がありました。というのも、実は僕はあまり自分に自信がないタイプだったので…。俳優部と成長過程を共有できるのは幸せなこと―順風満帆のように見えていたので、意外です。奥平さんだから、現場に行くと「自由にやっていいよ」と言われてしまうこともよくありました。でも、僕自身は「何か言ってほしいな」とずっと思っていたんです。そんなときに藤井さんの現場に行ったら、いろいろと言ってくださったのでそれがすごくうれしくて。おかげで自分に足りないことやできないことがだんだんわかってきたので、勉強になりました。この作品以降はほかの現場に行っても、毎回藤井さんの言葉がフラッシュバックするくらい。本当にありがたいことだなと思っています。監督こちらこそ、そう言ってもらえてうれしいです。―主演の横浜流星さんについてもおうかがいしますが、長い付き合いがある監督だから言える魅力や素顔について教えてください。監督役者のなかには、「作品をどんどんこなしては消化されていく」というのを何回も繰り返していくなかで、潰れてしまう人や間違った方向に行ってしまう人もいます。でも、流星は本当に純粋なので、「作品と監督を信じる」というシンプルだけどすごく難しいことをやり続けられる人。その結果が今回もちゃんと出ていたので、最後のシーンを撮っていたときに「いい役者になったなぁ」とうれしくなりました。大兼にも言えることですが、俳優部と成長過程を共有できるというのは幸せなことです。このままではダメになると思って、考え方を変えた―素敵な関係ですね。奥平さんは横浜さんとは初共演ですが、すごくかっこよくて完璧な方だったので、思わず惚れそうになったとか。奥平さん流星くんは同じ事務所の先輩なのでいろんな話を聞いてはいましたが、実際に会ってみないとどんな人かはわからないなと思っていました。ただ、すごくストイックな方なんだろうなとは想像していたので、現場ではなるべく話しかけないほうがいいかなと最初は遠慮してたんです。でも、あるとき思い切って話しかけたら、集中しないといけないときだったにもかかわらず、すごくやさしく話をしてくれました。そういう僕個人の流星くんに対する気持ちは役とも重なりましたし、おかげで安心してできたと思います。ただ先輩に助けてもらったというだけでなく、人としても教わることがありました。―監督は『新聞記者』、奥平さんは『MOTHER マザー』で一躍注目されるようになってから、環境が大きく変わったと感じていらっしゃるようですが、日本にはこの作品で描かれているように同調圧力が強いところがあります。そのなかで苦労されることもあると思いますが、周りに流されないためにご自身で意識していることはありますか?奥平さん以前は自信がほしいと思っていましたが、最近は「自信は持たなくてもいいっか!」と開き直るようになりました。あとは、小さくてもいいので自分なりの目標を持ち、目の前の壁をちゃんと乗り越えようという意識は持つようにしています。というのも、実は一度だけ調子に乗りかけた時期があって、何でもやればできちゃう気がして作品に対するベクトルがずれそうになったことがありまして…。でも、「そんなわけはない」とすぐに気がつき、このままでは絶対にダメだと思って考え方を変えました。自分を否定してくれる人を大事にしている―そこで客観的に自分を見て修正できるのはすごいですね。監督はいかがですか?監督僕は、自分を否定してくれる人やディスってくれる人を大事にするようにしています。監督は神ではありませんが、現場ではどうしてもそういう雰囲気になってしまうことがありますからね。そういったこともあって、自分に対して気を遣わずに話してくれる人にはなるべく近くにいてもらうようにお願いしています。―なるほど。劇中では、主人公が人生を逆転させたことで生きている実感を得ていく様子も描かれていますが、おふたりにもそういう瞬間はありましたか?奥平さんすごい前のことですが、空手の大会で優勝したときです。強い人たちがたくさんいましたが、会場のなかで一番自分が強いんだと思えました。といっても、いろんな部門があるので本当はそんなことないのですが…。でも、それまでちゃんと努力していたので、報われてよかったなと感じられた瞬間です。監督僕は、いま思えば昨年亡くなってしまった河村さんに引っ張ってもらって、一緒に映画を作るようになってから気が楽になったように思います。それまでは自分がはみ出し者のように感じていましたが、自分よりもはみ出している大人がいることを知ったので(笑)。「この人がオッケーなら自分も大丈夫だな」と考えるようになってから、余裕が出るようになりました。誰もが壁を乗り越えようとしていると知ってほしい―それでは最後に、ananweb読者にメッセージをお願いいたします。奥平さんこの映画はいろんな人の目線から見てほしいなと思いますが、その理由は、誰にでもそれぞれ壁があって、それを乗り越えようとしているということがわかるからです。みんな表に出していないだけで、押さえつけられていることって実はたくさんありますよね。そういうことを知る機会というのはありそうでないので、それを知ることができるだけでも気が楽になるのではないかなと思っています。あとは、お願いですからぜひ映画館で観ていただきたいです。監督まさにその通りで、もし悩みがあっても、みんなが同じように悩んでいる姿を見れば、自分なりの答えを見つけられるのではないかなと。そして答えが出なくても、それもまた正解だと伝えたいです。「素敵な俳優たちを堪能するもよし、物語にハマってもらうもよし」なので、まずは楽しんでください。インタビューを終えてみて…。終始和気あいあいとした雰囲気で、とにかく楽しそうにお話をされていたのが印象的だった奥平さんと藤井監督。そんなおふたりの様子からは、お互いを信頼し合っている気持ちも伝わってきました。近いうちにまたタッグを組まれることがあるのではないかとも感じたので、今後にもぜひ期待したいと思います。現代社会の在り方に一石を投じる!日本社会の縮図とも言えるような村を舞台に、現代にはびこる闇をあぶりだしていく本作。心を揺さぶる俳優陣の熱演と映像美に圧倒されるとともに、生きづらさを抱えるリアルな若者たちに自らの姿を重ね、さまざまな問いと答えが頭のなかを駆け巡るはず。写真・園山友基(奥平大兼、藤井道人)取材、文・志村昌美ヘアメイク・速水昭仁スタイリスト・伊藤省吾(奥平大兼)ストーリー美しいかやぶき屋根が並ぶ山あいにあり、夜霧が幻想的な集落・霞門村(かもんむら)。神秘的な「薪能」の儀式が行われている近くの山には、のどかな景観には似つかわしくない巨大なゴミの最終処分場がそびえ立っていた。幼い頃から霞門村に住む片山優は、この施設で働いていたが、父親が起こした事件の汚名を背負い、さらに母親が抱えた借金の支払いに追われる希望のない日々を送っている。優には人生の選択肢などなかったが、幼馴染の美咲が東京から戻ったことをきっかけに人生が大きく動き出すのだった…。目が離せない予告編はこちら!作品情報『ヴィレッジ』4月21日(金)より、全国公開配給:KADOKAWA/スターサンズ(C)2023「ヴィレッジ」製作委員会写真・園山友基(奥平大兼、藤井道人)
2023年04月20日主演・唐沢寿明、脚本・井上由美子のタッグによるノンストップサスペンス『連続ドラマW フィクサー』が制作されることが決定した。『連続ドラマW フィクサー』は、2008年に「連続ドラマW」の第1弾として始まった「パンドラ」シリーズをはじめ、『白い巨塔』『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』など数々のヒット作を生み出し、2020年秋の紫綬褒章を受章した脚本家、井上由美子が“フィクサー”を題材に描くWOWOWオリジナルドラマ。フィクサーを主人公とした本格的な連続ドラマはこれまで日本にはなく、今回が初の試みとなる。本作では、世の中を裏から操る“フィクサー”の暗躍と金と権力に群がる人間たちを3シーズンにわたる大型ドラマシリーズとして描く。ある夜、総理大臣を乗せた車が崖から転落するという事故が起こる。死亡した運転手には飲酒運転の疑惑が……。さらに、その裏には新薬の認可をめぐる密約スキャンダルとの関係性も疑われ始める。そんな中、事故の対応に追われる総理の秘書官に近づく一人の男がいた――。「フィクサー」とも呼ばれるその男の名は設楽拳一。拳一は過去に総理の不祥事をもみ消し、今回の事故直前にも総理と電話で話をしていたのだった。事故後、意識が戻らない総理は辞任に追いこまれ、総裁選が幕を開ける――。そして、拳一はキングメーカーとして与党総裁候補たちを手玉に取り、権力を掌握していく。主人公のフィクサー・設楽拳一を演じるのは、「連続ドラマW」作品では初出演そして初主演となる唐沢寿明。『白い巨塔』『メイドインジャパン』『ハラスメントゲーム』の唐沢寿明×井上由美子という注目のタッグに期待だ。併せて、3シーズンを通して出演するレギュラー陣も発表された。新聞社の政治部記者・渡辺達哉役に町田啓太、警視庁捜査一課刑事・板倉晃司役に小泉孝太郎、拳一の秘書兼運転手・丸岡慎之介役に要潤、達哉の母の渡辺響子役に斉藤由貴、TVの報道番組の人気キャスター・沢村玲子役に内田有紀、そして、拳一にとって因縁深い相手であり副総理の須崎一郎を演じるのは小林薫と、豪華役者陣が揃い踏みとなっている。『連続ドラマW フィクサー』Season1(全5話)は、2023年春よりWOWOWプライム、WOWOW4Kにて放送、WOWOWオンデマンドにて配信スタートを予定している。<コメント>■設楽拳一 役:唐沢寿明――連続ドラマW作品に初出演、そして初主演が決まった時の印象や意気込み地上波のテレビドラマではなかなか描けないような、WOWOW ならではの重厚な社会派ドラマができると思うのでとても楽しみです。――井上由美子さんの脚本について政治を舞台にした予想がつかないストーリー展開で、今回さらに井上由美子さんの脚本に気合が入っているのが伝わってきました。社会派というだけではなく、骨太のエンタメ作品になっています。緊張感のあるサスペンスを軸に、とにかく筋書きが緻密に作り上げられていて面白いです。――演じられるキャラクターについて私が演じる設楽拳一は、裏から人を操る謎めいた人物で、一見何を考えているかわからないので、視聴者の皆様はきっと随所で騙されると思います。他の登場人物も一人一人のキャラクターが立っていて、それぞれが抱える“人間の欲深さ”が魅力的です。“読めない男”、設楽拳一を再現できるように、そして視聴者の皆様を上手く騙せるよう、演じていきたいと思います。――視聴者の皆さまへメッセージWOWOWでしか見られない面白い作品になると確信しておりますので、是非ご覧いただきたいです! 目の肥えた視聴者の皆様にも必ず満足していただけると思います。■渡辺達哉 役:町田啓太気が付いたら台本を一気読みしていました。普段見聞きするものの表面上だけではなく、もしかしたらその奥には何かあるのかと、僕自身、物事の捉え方を改めて考えさせられるようになりました。新聞記者として大きな力に巻き込まれ、真相に迫っていく様をみなさんと楽しめるように、渡辺達哉を前のめりに演じたいと思います。楽しみにしていてください。■板倉晃司 役:小泉孝太郎全編通して設楽を追いかける刑事・板倉晃司を演じさせていただきます小泉孝太郎です。この作品は個人としても大変興味深く、唐沢さん設楽の不気味さ、そして設楽を取り巻く人間関係が交差していく様を是非ご覧下さい■丸岡慎之介 役:要潤僕の演じる丸岡という役は、唐沢さん演じる設楽拳一を心から尊敬し、献身的に支える一番身近な存在です。個人的には唐沢さんとは15年ぶりの共演で、そんな丸岡と素の自分とリンクする部分が多いと思います。若き日の自分も唐沢さんには役者のイロハを沢山教わりました。そんな気持ちを丸岡に投影しながら精一杯演じさせて頂きます。■渡辺響子 役:斉藤由貴以前、脚本の井上由美子さんが書かれた別の作品に出演させて頂いた時、その打ち上げの席で井上さんから、「私の頭の中には小さな箱があって、その中には斉藤さんがいて、難しそうな役をさて誰にやってもらおうかと考えた時、斉藤さんをその箱から取り出すんです」こんなふうに言われて、本当に嬉しかった記憶があります。以来、井上由美子さんの作品にご縁をいただいた時には必ず喜んで参加させて頂きたい、とお願いしています。今回も、楽しみでなりません。■沢村玲子 役:内田有紀時に自分の知らない世界の扉を開いて、垣間見たい、怖いけど知りたい、覗いてみたいと言う欲求が生まれる事があります。その扉を進んで開くのが、今回演じさせて頂く沢村玲子と言う女性です。女性であるが故の業を抱えながら、子供のように真っ直ぐに真実に迫ろうとする玲子が、皆さんを『フィクサー』の世界にお連れ出来るよう真摯に作品に向き合って行きます。「世の中の裏」を描いたドラマです。どうぞご期待ください。■須崎一郎 役:小林薫この度WOWOW制作の「フィクサー」に出演させて頂くことになりました。主演の唐沢さんは実は初共演で、どんな芝居になるのかワクワクして、今から楽しみにしています。私の役どころは副総理という難役でドキドキしているのですが、監督である西浦さんとは1年前にご一緒させて頂いていて、そのねばりのあるきめ細かな演出には信頼感がありますので、安心して全てお任せしようと思っています。■脚本・井上由美子常に新しいドラマを仕掛けているWOWOWの「連続ドラマ W」で、新たなチャレンジが出来ることにワクワクしております。先が見えない世の中ですが、一筋縄ではいかない大人の俳優たちが、人間の表と裏、光と影を存分に演じるエンターテインメントを楽しんでいただきたいと思います。主演の唐沢さんとは、「白い巨塔」「メイドインジャパン」「ハラスメントゲーム」に続き四度目の作品です。何度、お会いしても初めて会ったような懐の深さが唐沢さんの魅力です。本作でもこれまで描かれてこなかったフィクサー像を新鮮に演じて下さることと期待しています。<作品情報>『連続ドラマW フィクサー』Season1:2023年春スタート(全5話)毎週日曜22:00放送・配信脚本:井上由美子企画・プロデュース:青木泰憲監督:西浦正記音楽:得田真裕プロデューサー:村松亜樹 / 髙田良平 / 黒沢淳■出演唐沢寿明 / 町田啓太 / 小泉孝太郎 / 要潤 / 斉藤由貴 / 内田有紀 / 小林薫詳細はこちら:
2022年11月02日映画『マッチング』が2024年2月に公開される。主演は土屋太鳳、監督・脚本は内田英治。“マッチングアプリ”が題材のサスペンス・スリラー映画『マッチング』は、『ミッドナイトスワン』を手掛けた内田英治による完全オリジナルのサスペンス・スリラー。物語の鍵を握るのは、恋人探しや婚活などのツールとしても使用されている“マッチングアプリ”だ。相手と気軽に出会うことができる気軽さから、その普及率は増加しているが、ユーザー間でトラブルも発生しているとのこと。映画『マッチング』では、“マッチングアプリ”を通じて他人と気軽に出会えるようになった現代だからこそ起こる、身近に潜む恐怖を描く作品。“二転三転”する予測不可能なストーリー展開となっており、追い詰められてゆく主人公と共に、ジェットコースターに乗ったかのようなスリルを味わうことができる。土屋太鳳が“ノンストップの恐怖”に見舞われる主人公に主演を務めるのは、土屋太鳳。『青空エール』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』「チア☆ダン」「やんごとなき一族」など、話題の映画・ドラマで活躍し続ける土屋太鳳が、先の読めない恐怖に見舞われる主人公・輪花を演じる。また、土屋太鳳演じる主人公・輪花とアプリでマッチングする“狂気のストーカー”永山吐夢役として出演するのは、Snow Manの佐久間大介。佐久間は、自身初の実写映画単独出演となる。主人公・輪花(りんか)...土屋太鳳ウェディングプランナーでありながら、恋愛に奥手な主人公。同僚の勧めでマッチングアプリに渋々登録し、マッチングが成立した相手と会うことになるが、現れたのはプロフィールからは想像できないほど暗い男。男は、やがて裏の顔を見せ始めるようになり...。同時期、アプリ婚をしたユーザーが殺される事件が多発。輪花が出会った男が捜査線上に浮上するも、事件は意外な方向から別の展開を見せることに。そして、輪花にも魔の手が迫る...。事件の裏に隠された真相とは?永山吐夢…佐久間大介恋愛に奥手な主人公・輪花がマッチングアプリを介して出会う男。異様な暗い雰囲気を漂わせ、輪花に執拗につきまとう“狂気のストーカー”。アプリ婚をしたカップルの連続殺人事件に輪花が巻き込まれていく過程で、吐夢が捜査線上に浮上する。さらに、他のアプリでも問題を起こし、警戒されている人物だったことが発覚。影山剛…金子ノブアキマッチングアプリの運営会社にプログラマーとして勤める。同アプリで知り合った吐夢からのストーカー行為に悩む輪花の相談に親身に応える。唯島芳樹(ただしまよしき)…杉本哲太輪花を男手一つで育て上げ、娘とは良好な関係ながらも将来を心配する父親。伊藤尚美…片山萌美輪花の職場の同僚。仕事漬けの日々を送り、浮いた話のない輪花にマッチングアプリを勧める。西山茜…真飛聖「アプリ婚連続殺人事件」捜査班として、事件の真相を追う警部補。堀井健太…後藤剛範西山と併走する巡査部長。美知子…片岡礼子輪花の過去を知る“車椅子の女”。節子…斉藤由貴美知子に寄り添う世話係。監督・脚本は『ミッドナイトスワン』内田英治監督・脚本は、第44回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『ミッドナイトスワン』や、Netflix オリジナルドラマ「全裸監督」を世に送り出してきた内田英治。「いつかやりたいと思っていた映画のジャンル、スリラーに挑戦しました」と語る内田は、映画『マッチング』について「どんでん返しに次ぐどんでん返し。ジェットコースターに乗っているような感覚で楽しめる作品でございます」と自信をのぞかせている。映画『マッチング』あらすじウェディングプランナーとして仕事が充実している一方で、プライベートでは恋愛に奥手な輪花。同僚から新しい出会いを薦められてマッチングアプリに登録する。ある男性とマッチングが成立し、やり取りが始まる。新たな出会いに期待をして、初デートに向かう輪花。しかしそこに現れたのはプロフィールとは全くの別人・・・見た目平凡だけど、どこか異様な雰囲気に違和感を感じる輪花。時を同じくして、アプリ婚をした利用者を狙った連続殺人事件が起こる。出会った男が捜査線上に浮上するが、事件は意外な方向へと発展。そしてついに、魔の手は輪花にも迫るのだった。【作品詳細】映画『マッチング』公開時期:2024年2月監督:内田英治脚本:内田英治、宍戸英紀出演:土屋太鳳、佐久間大介、金子ノブアキ、真飛聖、後藤剛範、片山萌美、片岡礼子、杉本哲太、斉藤由貴製作・配給:KADOKAWA
2022年10月31日同じことが繰り返されがちな日常のなかで、刺激を求めているのときにオススメしたいのは韓国サスペンス。これまでにさまざまな傑作が生みだされていますが、今回ご紹介するのは、怒涛の展開で新たな衝撃を味わわせてくれる話題作です。『君だけが知らない』【映画、ときどき私】 vol. 529ある事故が原因で、記憶を失ってしまったスジン。夫・ジフンの献身的なサポートによって、徐々に日常生活を取り戻し始めていたが、幻覚によって未来が見えるようになってしまう。そして、スジンの周りで不可解な事件が次々と起こっていく。そんなある日、殺人現場を目撃してしまったと訴えるスジンの言う通り、実際に死体が発見される。次第に精神が混乱していく彼女は、ついに夫さえも怪しみ始めるのだった……。2021年に韓国で公開された際には、初登場1位を獲得し、大きな反響を巻き起こした本作。今回は、こちらの方にお話をうかがってきました。ソ・ユミン監督韓国の名匠ホ・ジノ監督のもとで、助監督を長年務め、『四月の雪』や『ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女』の脚本を手掛けてきたソ・ユミン監督。本作では、念願の長編監督デビューを果たしています。そこで、物語が誕生したきっかけや女性監督が活躍する韓国映画界の現状、そして日本での思い出などについて語っていただきました。―この物語は、監督が日常生活で感じた恐怖から始まったということですが、どういった出来事からインスピレーションを受けたのでしょうか。監督以前からそういった感情はよく味わっていたのですが、そのなかでも思い出すことの一つは、10年以上前からすごく親しくしていた先輩とのやりとり。ある日、その方が亡くなった父親について話し始めたとき、「実は父親がある犯罪に関わった過去があり、自分も非常につらい時期があった」と打ち明けてくれたのです。先輩のことはよく知っているつもりでいましたが、そんな大きな苦しみを抱えているとは思わず、表面的なことしか知らなかったんだなと強く感じたことを覚えています。そういったことがきっかけとなりました。―本作は非常に複雑な構成になっていますが、そこからどのようにして物語を組み立てていきましたか?監督そのあとストーリーを書き始めたわけですが、一人の女性が一番近い存在だと思っていた夫のことが誰だかわからない状況に陥り、夫を疑っていくなかで自分の過去を知っていく話を最初の軸にしようと考えました。そして、彼女が未来を見ることができるという要素を入れたらより興味深くなると思ったので、そのあたりを付け加えています。あとはシナリオに肉付けしていく作業のなかで大きく影響を及ぼしているのは、私自身の経験です。素晴らしい俳優たちには、感謝している―実際、どのようなところに反映されているのでしょうか。監督たとえば、本作の物語はマンションで展開されていきますが、私も幼い頃からずっとマンション暮らし。マンションの住人たちというのは、よく出くわす存在でありながらお互いのことをまったく知らなかったりしますよね?そういう関係性を取り入れたいと思ってあの空間を舞台にすることに決めました。また、本作には少女と女子高校生と主人公が登場しており、年齢と比例して住んでいる階が上になりますが、それも私が経験してきたのと同じこと。年を重ねて引っ越すたびに、上の階に住むようになりました。ちなみに、階が上がっていくにつれて、子どもの頃からの記憶も蘇っていくような構成にもなっています。―なるほど。本作はまったく先の読めない展開が見どころですが、そのなかでも観客に注目してほしいところや細かいこだわりなどがあれば、教えてください。監督やはり夫の正体というのが気になるところだと思いますが、本当に詳しく見ていただくとさまざまなヒントが散りばめられています。たとえば、あるシーンでチラッと映る書類にも“ある真実”が書かれていますが、韓国で上映した際に気がついた人はほとんどいませんでしたね。ほかにも、写真や変だなと思う状況のなかに、夫の正体を探るヒントを小出しにしているので、ぜひそのあたりを追っていっていただければと思います。―隅々まで見ていただきたいですね。主人公のスジンを演じたソ・イェジさんにとっては難しい役どころだったと思いますが、現場で印象に残ったことはありましたか?監督彼女は出ずっぱりの役だったので、確かに苦労も多かったと思います。なかでも、体にハーネスを装着して高いところから落ちるシーンや海のなかに入って撮るシーンは大変でしたが、非常にがんばってくれました。特に、海で撮影を行ったときはとても寒い日だったので、画面上では温かい海に入っているようですが、実際はソ・イェジさんもキム・ガンウさんもブルブルと震えてしまっていたほど。それでも、撮影が始まるとそういう様子を微塵も感じさせない演技を見せてくれたので、素晴らしい俳優さんたちにはいまでも感謝しています。キム・ガンウさんが大きな助けになってくれた―夫役を務めたキム・ガンウさんの演技にも、非常に引き込まれました。監督彼は本当に下準備をしっかりとしてくれる方で、撮影に入る前から何度も事務所に足を運んでくださり、いろんな話し合いをしました。そのなかでたくさんのアイディアをくれたり、セリフに関しても悩んだりしてくれたので、それが私にとっては大きな助けになっていたと思います。キム・ガンウさんが意識していたのは、どうしたらこのキャラクターの感情を最大限に見せられるかということ。たとえば、結婚式のシーンで最後に言うセリフは、彼自身の意見を参考に変更しました。撮影では私が考えていたセリフと彼が考えたものと合わせて何回かテイクを重ねましたが、彼のアイディア通りに撮ったものが表情もすごくよかったので、本編にはそれを使っています。そのシーンを見るたびに、一緒に悩んでくれたことをいまだに思い出しますね。―ananwebでは韓国の女性監督に数多く取材をしていますが、そのなかで「韓国では数年前から女性監督ブームが起きていて、女性の新しい声が韓国映画界の構図を塗り替えてくれるのではないかと希望の声が上がっている」という話を聞きました。監督自身は、どのように感じていますか?監督確かに、昔の韓国映画界には女性監督は本当に少なかったと思います。いまも増えているとはいえ、まだまだ全体の5%くらいしかいないと聞いていますが、それでも女性監督がどんどん活躍し始めているところです。そんなふうに、女性監督の作品が評価されることによって、先入観もなくなっているような気がするので、私自身もそれに助けられています。というのも、以前から監督になるための準備をしながら脚本家としても活動していましたが、そのときに「監督らしくない」とよく言われました。「監督らしく見えるためにはどうしたらいいの?」と悩んでしまったこともありますが、最近はそういうことも言われなくなったので、それは女性監督が増えてきたからだろうなと。女性でもいい映画が撮ることができるという信頼を持ってもらえるようになったので、それが私にとっても大きな力となっています。今後も女性監督は増えて、状況はよくなっていく―そういうなかで、監督ご自身もこれからの若い女性監督たちを引っ張っていく存在になるかと思います。監督今後も女性監督はどんどん増えていき、さらに状況はよくなっていくと感じています。というのも、私はいま大学の映画科で非常勤講師としても働いていますが、クラスの半分が女子学生。勉強をしながら、すでに彼女たちはいい映画を作り始めています。そして、観客のみなさんも女性たちのストーリーに興味を持ち始めてくださっているので、その後押しも非常に大きいですね。そういったことからも、今後の女性監督たちの活躍は楽しみです。―また、映画に対する助成金やサポートがしっかりしている韓国のシステムも大きな支えになっているのではないかと。監督そうですね。韓国には映画振興委員会という組織がありまして、主にインディーズ系の映画や短編を盛んに支援しています。たとえ自分に制作資金がなくても制度を利用することができるので、その援助を得られたおかげでたくさんの素晴らしい作品が生まれました。それによって、女性監督をはじめ、多くの才能が頭角を現すことができるので、こういう状況が生まれていることは高く評価しています。ただ、基本的にはインディーズ系やアート系作品への支援がメインなので、今回のような商業映画の場合は国の支援を受けられませんでした。とはいえ、映画界全体として見ると非常にいいことだと思います。大好きな日本映画といい時間を過ごしている―監督は日本映画のファンでもいらっしゃるとのことですが、影響を受けている方はいますか?監督私は以前から日本映画が大好きで、黒澤明監督や今村昌平監督の作品で勉強をしましたし、いまは黒沢清監督や濱口竜介監督の作品をよく観ています。あと、最近だと『花束みたいな恋をした』が素晴らしくて、小説まで買って読んだほどです。そんなふうに、日本映画とともにいい時間を過ごさせてもらっています。―日本に対しては、どのような印象をお持ちでしょうか。監督実は、私は札幌から福岡まで日本一周みたいな旅をしたことがありますが、そのときに北野武監督の映画に出てくる場所を訪れたり、東京や大阪などを観光したり、本当にいろんなところに行きました。日本には美しいところがたくさんありますし、みなさんがとても親切にしてくださったのがうれしかったです。そのあとにも、父が亡くなる前に一緒に旅行をして、楽しい時間を過ごせたのもよかったなと思っています。また近いうちに行きたいなと考えているところです。―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。監督20代や30代というのはとてもいい時期で、私もちょうど映画の仕事をすると決心して、夢を叶えるための努力をしていました。私が思うに、意外と人生は長いものなので、みなさんもいまのうちに何かを見つけて、やりたいことをしてもらえたらと。もし、いましていることがつまらなかったり、「このままでいいんだろうか?」と考えたりしているのなら、まだ遅くはないので、自分が好きなことは何かを探してください。たとえ趣味でもそれが人生のなかで癒しになることもあるので、とにかく好きなことを見つけてほしいなと思います。あと、この作品については、過去に不幸な経験してきた主人公が逆境を乗り越えて生きる力と勇気を見つけていくストーリーでもあるので、女性の方々には共感していただけるポイントが多いのではないかなと。どんなにつらい過去があったとしても、人間は一人ではありません。必ず誰かが助けてくれるということも、知ってもらえたらうれしいです。緻密な構成に翻弄される!蘇る記憶とともに次々と明かされる衝撃の真実、そして点と点が繋がった瞬間にすべてが逆転してしまう本作。スリリングかつドラマチックな展開と、俳優陣による熱演も観る者の心を大きく揺さぶるはずです。取材、文・志村昌美胸がざわつく予告編はこちら!作品情報『君だけが知らない』10月28日(金)全国公開配給:シンカ️©2021 CJ ENM. All Rights Reserved.
2022年10月27日WOWOWが北欧の人気配信サービス「Viaplay」とアジア初の独占的ブランドコンテンツ契約を結んだ「Viaplayセレクション」が上質なサスペンスやミステリーを放送し、好評を博している。この枠で11月、12月に日本初放送や配信となる注目の新作ドラマを以下に紹介したい。最初に紹介するのは、11月19日(土)より一挙放送・配信の北欧サスペンス『トロム~フェロー諸島殺人事件~』。美しい自然の残るフェロー諸島初のオリジナルドラマとなる本作は、モンテカルロテレビフェスティバルでゴールデンニンフ賞を2部門受賞した一作。島特有の閉ざされた文化、賛否のある捕鯨による産業、環境活動家との対立など、現代社会の問題を取り上げながらのサスペンス展開は見応えたっぷり。11月はViaplayでロングランの人気作、北欧ドラマ『刑事ヨハンナ~小さな町の殺人事件~』も配信限定で展開する。12月の注目作は『8人の容疑者~誰がオット・ミュラーを撃ったのか~』。富豪が殺害され、居合わせた家族8人が容疑者となるも8人の証言は食い違うという、まさにViaplay版映画『羅生門』で、古典的な舞台装置と犯人推理を楽しむエストニア発の極上ミステリー。Viaplay初のエストニア作品であり、舞台となったエストニアの豪華な城廓にも注目したい。また10月に放送・配信の北欧ホラーサスペンス『ブラックレイク』の第2弾『ブラックレイク2』が12月に放送・配信されることが決定。『ミッドサマー』に代表される北欧ホラーに巧妙な構成のサスペンスがあわさり大ヒットとなった第1弾より、同作においてスウェーデンで権威あるTV賞『クリスタレン』で最優秀俳優賞にノミネートされた、ヨハン役のフィリップ・ベルイが続投。今度はどんな戦慄のホラーサスペンスに巻き込まれるのか見ものとなる。■番組情報北欧サスペンス『トロム~フェロー諸島殺人事件~』11月19日(土)午後3:30~日本独占初放送 / WOWOWオンデマンド配信あり北大西洋に浮かぶ絶景のフェロー諸島を舞台にした初のオリジナルテレビシリーズ。脅迫された反捕鯨・環境活動家の女性が助けを求めたジャーナリスト。彼は島に潜む闇の正体を暴けるのか?モンテカルロテレビフェスティバルでゴールデンニンフ賞を最優秀俳優賞、審査員特別賞の2部門で受賞。“トロム”とは、フェロー語で「崖、境界線」の意味である。北欧ドラマ『刑事ヨハンナ~小さな町の殺人事件~』11月~WOWOWオンデマンド配信限定Viaplayでロングランの人気作。母の死後、小さな町ハンマルヴィクに帰郷した刑事ヨハンナ。20年前の親友の失踪に関連する謎めいた連続殺人、元カレとの再会、家族との確執など、予想外の日常が彼女を待ち受ける。事件と並行して、スウェーデンの美しい風景や人々の暮らしぶりなど見どころ満載。主人公ヨハンナを応援したくなるライトサスペンスだ。北欧ホラーサスペンス『ブラックレイク2』12月~日本独占初放送 / WOWOWオンデマンド配信あり北欧発、戦慄のホラーサスペンス第2弾。さまざまな事情を抱えた男女6人がある孤島で行われるセラピーに参加する。島で起きた悲惨な歴史が参加者たちに忍び寄る。愛や欲望、疑心、詮索……さまざまな思惑が渦巻く中、外界から遮断された状態で、得体の知れない不可解な現象に巻き込まれていく様子が緊張を煽る。ヨハン役はシーズン1に引き続きフィリップ・ベルイが続投。『8人の容疑者~誰がオット・ミュラーを撃ったのか~』12月~日本独占初放送 / WOWOWオンデマンド配信あり65歳の誕生日に殺害された実業家で富豪のオット・ミュラー。容疑者は居合わせた家族8人に絞られ、担当刑事は1人1人を呼び出して取り調べをする。オットの妻と愛人、長男とその妻、次男とその妻と元妻と息子の全員が動機を持つが、それぞれの視点で語られるストーリーは食い違い……。犯人はいったい誰なのか。2人の刑事ガブリエルとアグネスがこの複雑な富豪一族の謎に迫る。エストニア発の本格ミステリー。北欧サスペンス『Face to Face2-尋問-』9月17日(土)18日(日)午後5:00~日本独占初放送 / WOWOWオンデマンド配信あり娘を亡くした心理セラピストのスサンネは、催眠治療中のある患者から殺人の告白を聞いてしまい……。1話30分で描くスリリングな衝撃サスペンスの第2シーズン。続編は、新たにビヨンの元妻である心理セラピスト、スサンネを主人公に。スサンネもひとりまたひとりと“尋問”していくが、その対話の中でスサンネの過去の過ちが見えてきて……。北欧サスペンス『刑事ペーテル2~未解決事件捜査班~』10月22日(土)午後4:00~日本独占初放送 / WOWOWオンデマンド配信あり王道クライムサスペンスの第2弾!殺された男性刑事の家に残された過去の事件の捜査資料。彼は何を追っていたのか?ペーテル率いる未解決事件捜査班が事件の真相に迫る。原案を担当したのは『悪い弁護士は死んだ』などのミステリー作家で、犯罪学教授としてスウェーデン国家警察委員会の顧問も務めたレイフ・GW・ペーション。主演は引き続きスウェーデンを代表するコメディアン・俳優のR・グスタフソン。
2022年09月12日SNSの発展により、有名人は一挙手一投足が取り上げられてしまう時代。そんななか、オススメする話題の映画は、実在するトップスターが誘拐されてしまう事件の裏側を生々しく描き、ネットを騒然とさせてしまうのではないかと言われているサスペンスです。『人質韓国トップスター誘拐事件』【映画、ときどき私】 vol. 518韓国では主演作の累計観客動員が1億人を超え、“1億俳優”とも呼ばれている名優ファン・ジョンミン。ソウルで新作映画の記者会見に出席した夜、何者かに自宅前で突然拉致されてしまう。パイプ椅子に縛りつけられた状態で意識を取り戻すと、高額の身代金目当ての若者5人に誘拐されたことを知る。しかも、冷酷なリーダーが率いる彼らはソウルを震撼させている猟奇殺人事件を起こした凶悪集団でもあった。情け容赦ない脅迫に屈し、身代金の支払いを約束したジョンミンは、同じく監禁されている女性を励ましながら、必死に脱出策を模索する。警察を翻弄して暴走する誘拐犯に対し、ジョンミンは渾身の“熱演”で一か八かの賭けに打って出るのだが……。韓国では「大スターのファン・ジョンミンが誘拐される」という衝撃の展開で、公開時に大きな注目を集めた本作。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。ピル・カムソン監督短編映画でキャリアを積み、本作で長編映画監督デビューを果たしたカムソン監督。今回は、現場での様子や撮影の舞台裏、そして日本での忘れられない思い出などについて、語っていただきました。―本作のきっかけは、有名な俳優が誘拐されたドキュメンタリー番組を見たことだそうですが、主人公をファン・ジョンミンさんにしたのはなぜですか?監督僕が絶対にファン・ジョンミンさんにお願いしたかった理由は、3つありました。まず1つ目は、縛られた状態で演技が求められる作品において、上半身だけで多様な演技ができるのは、ファン・ジョンミンさんだと思ったからです。彼なら感情のスペクタクルというか、表現の幅広さを見せてくれるだろうというのがありました。2つ目は、後半の重要なアクションシーンにおいて、アクション俳優らしくないアクションの演技をうまくできるのも、やはりファン・ジョンミンさんではないかなと考えたから。そして最後は、これまでヤクザや刑事の役を多く演じてきた彼が、あまり経験のない被害者という立場でどんな顔を見せてくれるのか。監督としては、そういったところにも興味が湧きました。―実際、ファン・ジョンミンさんとお仕事をしてみて、いかがでしたか?監督彼の印象は、勇敢なアーティスト。「体のなかに火力発電所でもあるのだろうか?」と思わせるほど、誰よりも情熱的でもありました。また、驚かされたのは、どんな演技をするときでも、まったく恐れることなく取り組んでいたこと。現場にあるエネルギーを吸収し、それを表現に変えていく姿を見て、普通の人ではないなと感じました。初めての役に怖さを感じながらも、なりきってくれた―演じられてみて、ご本人は何かおっしゃっていたのでしょうか。監督今回のような役はしたことがなかったので、非常に怖かったそうです。「もし、自分が同じ状況に追い込まれたら、すぐに降参してしまうと思うけど、映画では違いますよね」という冗談をおっしゃっていたことも(笑)。そんなことを言いながらも、役になりきってくれました。―本作では誘拐犯グループに若手俳優を多く起用していますが、先輩であり、大スターでもあるファン・ジョンミンさんに激しく当たるシーンでは、彼らが躊躇してしまうようなこともあったのではないかなと。撮影時の裏話などがあれば、教えてください。監督この映画では、ファン・ジョンミンさんが本人役として出ていることもあり、そのほかの出演者たちはあえて有名ではない役者で構成しようと決めていました。そのため、今回のキャスティングでは、実力はあるけれどあまり知られていない人を選んでいます。彼らのなかには演技力はあっても経験が浅い人も多かったので、ファン・ジョンミンさんの前で緊張してしまわないようにマインドコントロールするのは大変だったのではないかなと。「自分がミスしてしまったら、映画に支障をきたしてしまうのではないか」というプレッシャーをたくさん感じながらやっていたと思います。―そんな状況のなかで、どのような演出をしていったのでしょうか。監督撮影に入る前に、練習室を貸し切ってみんなで3週間のリハーサルをしました。そこでの大きな目的は、新人俳優たちがファン・ジョンミンさんに気後れしないこと。そのために、ご本人も積極的にリハーサルに参加してくださったので、助けられました。しかも、彼は人間味があって気さくな方なので、若い俳優さんたちと仲良くなるためにボーリングに行ったり、お酒を飲んだり、一緒に映画を観たりしてくれたことも。ファン・ジョンミンさん自ら親しくなる努力をしてくれて、ありがたかったです。リハーサルの時間を取れていなければ、おそらく今回のような撮影はできなかったと思います。つらい気持ちを抑え、自分をせき立てながら撮影した―あれほど真に迫ったシーンが実現できたのも、納得です。また、劇中では“ファン・ジョンミンらしいネタ”も散りばめられていますが、注目してほしいポイントはありますか?監督誘拐犯グループの一員に、ファン・ジョンミンさんのファンであるキャラクターが登場し、韓国の人なら誰でも知っているようなファン・ジョンミンさんの有名なセリフを言うシーンがあります。本作は、全体的にすごく緊張感が漂っている作品ではありますが、その場面だけは少しだけ緊張をほぐせるようなシーンにしたいと思って作りました。ほかにも、あまり詳しくは言えませんが、ファン・ジョンミンさんが過去作で演じたキャラクターの名前を使うことで、ある危機から逃れようとするところがあります。そこも彼のファンなら気がつくはずなので、楽しんでいただけたらうれしいです。―本作は、監督にとって初の長編作品ですが、苦労したことはありましたか?監督ファン・ジョンミンさんが誘拐されたあと、すべてのシーンが思っていた以上に大変でした。なぜかというと、ファン・ジョンミンさんはロープで縛られていた状態が長かったですし、殴られるシーンもあったので、その様子を見ているこちらがつらくなってしまったからです。撮影後に体があざだらけになってしまうこともあり、本人もかなり大変だったとは思います。とはいえ、そこを適当に撮ってしまうとせっかくの苦労が水の泡になってしまうので、「集中してがんばって撮らなければ」と自分をせき立てるようにして撮影を続けました。そんななかで楽しかった場面を挙げるとすれば、カーチェイスのシーン。恐怖に震えるような室内の撮影が多かっただけに、外で車を壊したり、アクションをしたりというシーンは快感でした。いつか日本の俳優さんたちと映画を撮ってみたい―カーチェイスのシーンではCGを最小限にとどめているだけに、かなり迫力のあるシーンの連続で驚かされました。監督僕自身はすごく楽しかったですが、おそらくスタッフたちはみんな苦労していたのではないかなと(笑)。なぜかというと、これまでの作品で見たことがあるような「休日の朝に道を封鎖して撮ったんだろうな」と思われるシーンではなく、リアルな映像を僕が求めていたからです。それを実現させるために大変だったのは場所探しでしたが、ちょうど建物の撤去を予定していた理想的な区域を見つけることができ、そこで撮影を行いました。ただ、撤去の日程が近づいていたので、最速で撮らなければいけないというチャレンジをすることに。とはいえ、スタッフのみなさんもベテランの方々だったので、とても楽しく作業ができました。―本作を手掛けるうえで、参考にした作品などがあれば、教えてください。監督基本的に僕はサスペンスやスリラーが好きなので、普段から自分が好きな作品のことを思い浮かべながら脚本を書きました。そのなかでも1本だけ挙げるとするならば、今村昌平監督の『復讐するは我にあり』。この作品は、誘拐犯を演じた俳優たちとも一緒に観ました。―日本映画は、以前からよくご覧になっていますか?監督そうですね。韓国の映画監督のなかでも、僕くらいの年代で日本映画から影響を受けていない人のほうが少ないんじゃないでしょうか。尊敬しているのは今村昌平監督ですが、ほかにも黒沢清監督や中島哲也監督の作品は大好きです。―監督は日本の俳優にもお詳しいとうかがっていますが、一緒に仕事をしてみたい日本人の俳優はいますか?監督僕は日本の俳優さんがとても好きですし、いい俳優がたくさんいると思っています。そのなかでも、森山未來さんや安藤サクラさん、宮沢りえさん、妻夫木聡さんといった方々が好きなので、いつか日本の俳優さんたちと映画を撮ってみたいです。日本で過ごした大切な日をいまも思い出す―ぜひ、楽しみにしております。ちなみに、日本に対してはどのような印象をお持ちでしょうか。監督日本には何度も行ったことがありますが、毎回とてもうれしい気持ちになります。なかでも印象に残っているのは、初めて日本に行ったときのこと。当時まだ助監督だった僕は、日本映画に関わっている音楽関係の方々と作業することになり、レコーディングに参加していました。オーケストラのみなさんが非常に真摯に演奏をしてくださっているなとは思っていましたが、その様子を見ていた監督が感動の涙を流していたのです。僕はそんな姿にうらやましさを感じ、「自分も映画監督になりたい」と強く思うきっかけになりました。そんな大切な1日を日本で過ごしたことをいまも思い出します。―素敵なエピソードですね。それでは最後に、日本の観客に向けてメッセージをお願いします。監督日本でこの映画が公開されることになり、光栄に感じています。なぜなら、僕は幼い頃から日本語で書かれた自分の映画のポスターを持つことが夢でしたから。今回はその願いが叶って、とてもうれしいです。ぜひ、自らの方法で危機を脱するファン・ジョンミンさんの素晴らしい演技に注目していただきたいですし、それに対する新人俳優たちの堂々とした覇気も見ていただけたらと思っています。誘拐犯とともに、観客も騙される!リアルな臨場感と緊張感に包まれ、思わず息を飲む予測不能な展開に引き込まれていく本作。見たことのないファン・ジョンミンの表情も、最大の“武器”となるおなじみの見事な演技力も堪能できる必見の1本です。取材、文・志村昌美衝撃が走る予告編はこちら!作品情報『人質韓国トップスター誘拐事件』9月9日(金) シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー配給:ツイン️© 2021 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & FILMMAKERS R&K & SEM COMPANY.All Rights Reserved.
2022年09月07日世界的ベストセラーを映画化、エリック・バナが12年ぶりにオーストラリア映画で主演を務め、本国でロングランヒットとなったクライムサスペンス『渇きと偽り』が全国公開決定。ポスタービジュアルと予告編が解禁された。原作は、ジェイン・ハーパーのデビュー作「渇きと偽り」(ハヤカワ文庫刊)をオーストラリア最高峰の映画人たちが映画化。入念に仕組まれた伏線と意外な真相、そして過去と現在が巧みに交錯していく構成が観る者の心をひきつけ、米映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では90%の高評価を記録している(7月現在)。主演は、『ミュンヘン』や『NY心霊捜査官』などの作品で知られ、本作が12年ぶりのオーストラリア映画主演となるエリック・バナ。そのほか、世界中の映画界や演劇界で活躍する実力派オーストラリア人俳優たちが脇を固める。巧妙なサスペンスを描きエンターテインメント作品として人々を魅了しながら、自然に恵まれた観光大国であるオーストラリアがいま直面している問題を生々しく世界に提示する骨太な意欲作。多くの支持を集め、すでに続編も撮影開始されている。予告編でまず目に飛び込んでくるのは、渇ききったオーストラリアの広大な大地。長い間雨が降らず異様な雰囲気に包まれた町で、バナ扮する主人公・フォークは親友ルークが起こしたとされる一家心中事件の捜査を始めるが、それはやがて自身とルークの身に降りかかった過去の事件を思い起こすこととなる。疑惑の目を向けられながらも真相を追い求めるルークだが、「この町で真実を見つけられるとでも?」「長い間ウソをつき続けると、それが習性になる」という意味深なセリフから、町の人々も皆なにかしらの嘘を抱えていることが仄めかされる。渇き果てた灼熱の町で、一体何が起きているのか。静かな緊張感がみなぎる映像となっている。ポスターは、物語の舞台となる干ばつに襲われた町の渇いた大地が主役となり、フォークとその相棒となる警官・レイコーが事件を捜査する様子が描かれている。「本当にお前が殺したのか――」というキャッチコピーがサスペンス感を煽り、物語の意外な真相を予感させている。『渇きと偽り』は9月23日(金・祝)より新宿シネマカリテほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:渇きと偽り 2022年9月23日より新宿シネマカリテほか全国にて公開©2020 The Dry Film Holdings Pty Ltd and Screen Australia
2022年07月22日社会における障壁や家族との問題、他人からの視線など、日々何かと闘いながら生きている人も多いと思いますが、そんな心に共感や感動を与えてくれるもののひとつといえば映画。そこで、ある苦しみを抱えた主人公たちを描いた話題作をご紹介します。『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』【映画、ときどき私】 vol. 471南仏モンペリエを見渡すアパルトマンの最上階で、向かい合う互いの部屋を行き来して暮らしているニナとマドレーヌ。彼女たちは隣人同士であり、実は長年密かに愛し合ってきた恋人同士でもあった。不幸な結婚の末に夫が先立ち、子どもたちも独立していたマドレーヌは、静かな引退生活を送っていたが、2人の望みはアパルトマンを売ったお金で一緒にローマへ移住すること。ところが、子どもたちに真実を伝えられないまま、時間だけが過ぎていく。そんななか、突如マドレーヌを襲った悲劇により、2人は究極の選択を迫られることに……。世界各国の映画祭で評価されるだけでなく、辛口なことで知られるアメリカの映画批評サイト「ロッテントマト」でも98%(2022年4月4日現在)という高い支持を得ている本作。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。フィリッポ・メネゲッティ監督ニューヨークやイタリアでキャリアを積んだのち、現在はフランスに拠点を移して制作に取り組んでいるイタリア出身のメネゲッティ監督。長編監督デビュー作となる本作では見事セザール賞の新人監督賞に輝き、注目を集めています。今回は、作品を通して伝えたいことや完成までに見舞われた苦労、そして日本文化への興味などについて語っていただきました。―監督は、以前から「秘密裏に愛し合う女性たちの物語を撮りたかった」ということですが、こういった題材に興味を持つようになったきっかけはありましたか?監督このテーマで語りたかったのは、他人の目線によって人はどのような影響と制限を受けているのか、そして他人によって排除されてしまう人々についてです。それらについて取り上げたいと思ったのは、自分が若いときに知り合った2人の女性がきっかけでした。彼女たちはこの映画の主人公たちよりも複雑でつらい環境に置かれていましたが、そんな彼女たちの生きざまに心を打たれたのです。と同時に、彼女たちは僕に映画への情熱を植え付けてくれた人でもあったので、僕にとってはとても重要な人物でした。そういったこともあって、彼女たちへの感謝を込めた作品を作りたいという気持ちが大きかったのだと思います。本作は実話を基にした作品ではありませんが、痛みを抱えながら生活をしなければならない人たちを目の当たりにしたことが出発点となりました。この作品には、映画人としての責任を感じた―ほかにも、参考にされたことはあったのでしょうか。監督脚本を書いていたのは2013年から2018年頃ですが、その間に主人公たちと年代の近いフランス人とイタリア人の女性カップルでご近所さんとして密かに暮らしている方が叔母の知り合いにいることを耳にしたり、フランスで同性婚を認める法案の成立を巡って反対のデモが起きているのを目撃したりと、自分が書いている物語と現実が交差するような経験もしました。資金調達にかなり苦労はしましたが、そういった出来事が刺激となり、このストーリーを書き上げてみたいと強く思うようになったのです。―日本では中年以上の女性を主人公にした映画の企画が通りにくいという現場の声を聞いたことがありますが、ヨーロッパでは本作のように年配の女性でも主人公の作品は多く作られているような印象です。とはいえ、現状はどのような感じですか?監督まさに日本と同じで、今回の資金調達が難しかった原因には主人公の年齢という問題が大きくありました。「もし主人公の女性たちが若かったらすぐに制作できるのに……」といったことは、何回も言われましたから。でも、僕としては年齢の高い女性を表現することが自分の映画人としての責任だと考えていました。なぜなら、現代は強迫観念にとりつかれて生きているような社会で、若さやスタイルの完璧さばかりを良しとしているところがあると感じているからです。とはいえ、現実はみんなが若いわけでもなければ、全員がモデルのようなプロポーションをしているわけではないですよね?映画では筋骨隆々のかっこいい店員さんがいることもありますが、僕が行くお店ではそんなことはなく、いろいろな体型の人がいます。だからこそ、人に強迫観念を与えないような正直な映像を撮りたいというのが自分の希望でもあったのです。若さだけでなく、年齢を重ねたところにも魅力はある―そういった信念を貫いたからこそ、素晴らしい作品として完成したのだと感じました。監督あとは、年齢についても包み隠すことなく表現したかったので、ニナとマドレーヌを演じてくれた女優さんたち伝えたのは、「メイクはあまりせず、シワも撮りますよ」ということ。でも、70歳を過ぎた彼女たちはナチュラルで美しく、本当に魅力的でした。僕自身、魅力というのは若さだけでなく、年齢を重ねたところにもあると考えていますから。おそらく主人公たちの年齢を若くしていたら資金調達の問題は早く解決できていたと思いますが、自分の決断は本当に間違っていなかったと感じています。―ちなみに、日本ではフランス人女性に対してありのままの姿で自由に生きている印象を持っている人が多いと思うので、マドレーヌのように夫から虐げられていることに耐え、カミングアウトできない女性像を少し意外に感じる人もいるかもしれません。キャラクターを作り上げるうえで意識したのは、どんなことですか?監督もちろん、フランスにもこういう女性はいますが、パリのような大都会か、今回のような田舎町かによっても考え方や人々のメンタリティは違うように感じています。おそらくそれは、イタリアでも日本でも同じことが言えるのではないでしょうか。人それぞれ感受性はまったく違いますが、僕としては小さな町を舞台にすることによって、誰にでも当てはまる話であるということを示したかったのです。日本文化については、これからもっと知りたい―なるほど。また、劇中では日本風の絵画や盆栽が部屋に飾られているのが目に留まりましたが、何かメタファーのような意図がありますか?監督気がついてくれたのはすごいですね。ただ、正直な答えとしては「好きだから」です(笑)。実は、日本文化にはとても興味があり、僕の家にも盆栽や浮世絵のような絵が置いてあるほどなので。作品に取り入れたことについては自分でも無意識でしたが、好きだから使わせてもらいました。―日本文化のどういったところに興味を持たれているのかを教えてください。監督まずは、やはり日本映画ですね。黒澤明監督や溝口健二監督をはじめとする偉大な古典映画は、何度も繰り返し観ました。日本には一度だけ行ったことがありますが、その際に興味を持ったのは、自分に語り掛けてくるような美的感覚。細かいところにまでバランスが取れていたり、わずかな記号で多くを物語っていたりするのは素晴らしいと感じました。あとは、日本人作家の方々が書かれた作品もいくつか読ませていただいています。そういったことが自分の何に影響を与えているのか自分ではわかりませんが、非常に複雑な日本文化からさまざまな感銘を受けているのではないかなと。ただ、まだ自分には無知なところが多いので、日本についてはこれからもっと知りたいと思っています。―ありがとうございます。それでは最後に、日本の観客に向けてメッセージをお願いします。監督僕が映画作りをするのは、観客の方々と感情を共有するためでもあるので、この映画がみなさんの心の琴線に触れ、感動していただけたらとてもうれしいです。ぜひ、感情移入しながら観ていただけたらと願っています。愛がもたらす光と影を鋭く映し出す!目に見えない社会の圧力や他人の視線に苦しみながらも、愛する人との自由な人生のために命をかけて闘う女性たちをサスペンスフルに描いた秀作。年齢や偏見に囚われることなく突き進む彼女たちの姿は美しく、そして観る者の心を激しく揺さぶるはずです。取材、文・志村昌美胸を引き裂く予告編はこちら!作品情報『ふたつの部屋、ふたりの暮らし』4月8日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー配給:ミモザフィルムズ© PAPRIKA FILMS / TARANTULA / ARTÉMIS PRODUCTIONS - 2019
2022年04月07日3月もさまざまな話題作が並ぶなか、どれを観たらいいのか悩んでいる人もいるのでは?そこで今回は、大人の女性にオススメしたい注目の1本をご紹介します。『親密な他人』【映画、ときどき私】 vol. 467行方不明になった最愛の息子・心平を探しているシングルマザーの恵。ある日、息子の消息を知っているという20歳の謎の青年・雄二から電話が入り、呼び出される。雄二から心平の持ち物を渡された恵は、不審に思いながらも、マンガ喫茶に寝泊まりしているという雄二を自宅に招き入れることに。やがて二人は親子のような、恋人のような不思議な関係になっていく。しかし、雄二には隠された目的があり、恵もまた誰にも言えない秘密があった。だまし、だまされた果てに見つけた衝撃の真実とは……。幅広い作品で唯一無二の存在感を放ってきた女優・黒沢あすかさんと、映画やドラマへの出演が絶えない注目の俳優・神尾楓珠さんの共演でも話題となっている本作。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。中村真夕監督『ハリヨの夏』で監督デビューしたのち、ドキュメンタリー映画などを手がけ、国内外で高く評価をされてきた中村監督。今回は、初のサスペンス映画となった意欲作に込めた思いや完成までの苦労などについて語っていただきました。―長編劇映画の公開は久しぶりとなりますが、制作の過程について教えてください。監督資金面などで時間がかかってしまったのでこのタイミングとなりましたが、企画自体はずっと温めていたものでした。メインストーリーはあまり変わっていないものの、設定をコロナ禍に書き直したので、親密になることが怖い時代が背景になったことでテーマがより強調されたように感じています。結果的には、いま制作できてよかったのかなと思っているところです。―本作のきっかけとなったのは、イギリスとアメリカで14年間を過ごした監督が帰国した際、日本人の母親と息子の関係性に驚いたことだったとか。監督久しぶりに日本に戻ってきたとき、18歳になったら家を出て行けという欧米に比べて、母親の息子に対する執着や愛情の度合いがまったく違うと感じました。これは日本だけでなく、韓国や中国でも見られることなのでアジア的な考えなのかもしれませんが、母と娘にはない不思議な関係性だなと。そして、それを象徴しているのが、日本で多いオレオレ詐欺。男の子が大事にされている社会だからこそ、こんなにも簡単にだまされてしまうんだろうなと思いました。実際、娘を装ったワタシワタシ詐欺って聞かないですよね。大人の女性が観たい映画を作りたかった―確かにそうですね。そのほかにも、何か参考にされたものはありましたか?監督ここ数年、一組の母親と息子が世間をにぎわせていたと思いますが、実はその“Kさん親子”にも私は注目していました。特に興味深いのは、お母さんのほうですが、息子を通して自己実現を図ろうとしているところがありますし、清楚な奥さまの格好をしているようでちょっと色っぽさもある。そういうところが叩かれている部分でもありますが、おもしろい人だと思いました。今回、恵の衣装を決めるうえでも、彼女の写真をいくつかプリントアウトして、「こういう感じにしてほしい」とスタッフにも相談したほど。それを受けて、外出するときは青山にいるマダムのような服を着ているけれど、家のなかでは女らしいセクシーな格好にしてもらいました。―ということは、いまだからできた部分も多かったと。監督確かに、コロナ禍とKさん親子が合体してできたところはありますね。あと、中心にあったのは「女性は妻となり、母となったら女であることを捨てなければいけないのか」という私が以前から抱いていた疑問。本作のように親子ほど離れた年上女性と若い男性の間にエロティックな要素があると、「気持ち悪いからエロは抜いてください」と言われたこともありましたから。でも、女性が妻や母となったら女であってほしくないという考えは、男性の独りよがりなのではないかなと私は思っています。おそらく男女が逆だったらそんなことは言われなかったでしょうが、資金を出してくださるサイドには男性が多いので、大人の女性を主人公にした企画を通すのが難しいのが現状です。いっぽうで、若い女性に好かれる年上男性を描いた“おじさんの妄想映画”のような作品はいまでも多い印象ですが……。そういったこともあって、今回は大人の女性が観たい映画を作りたいという思いが強くありました。女性が自分を活かしきれない世の中にも問題がある―そういった社会の風潮も、母親や息子に依存してしまう理由につながっているのでしょうか。監督母親が息子を恋人のように見たり、子どもを通して自己実現しようとしたりするのは、女性が自分たちを活かしきれていない世の中に生きていることの裏返しなのではないかなと考えています。日本だと女性が性的に魅力的なのは30代前半くらいまで、みたいな空気がありますよね。でも、いくつになっても女性としての魅力を男性たちがきちんと認めてくれていたら、こういったいびつな感じにはならないのではないかなと。決して男性だけのせいにしているわけではありませんが、社会の構造的にそうなっている責任は大きいと感じています。―劇中では、女性が内に秘めている女の部分を恵の下着やペディキュアの色でも表現されていたように感じましたが、意識された点があればお聞かせください。監督そこはすごくこだわりましたね。コロナ禍の影響で変更しなければいけなくなってしまったのですが、実は撮影をする直前まで恵は看護師の設定だったんです。その際に行っていたリサーチで、看護師さんたちは表に女らしさを出せない代わりに、意外と派手な下着をつけているらしいという情報を聞いたので、それを使いたいなと。先ほどのKさんのお母さんともつながっているところですが、一見おばさんのようで実は“魔性の女”みたいな人物がおもしろいと思ったので、そのあたりは細かく作り上げていきました。女性のアイディアがたくさん入った作品となった―また、家電の無機質な音や部屋の装飾なども、効果的使われていたと思いますが、そこにもメタファーがありますか?監督まず部屋や押し入れのイメージは、恵の子宮です。そのうえで、そこに入ってしまったらもう戻れなくなるような感じを出したいと思いましたし、洗濯機や換気扇から出る暴力的な音は部屋が彼女の狂気を秘めた空間になるように入れました。ほかにも、部屋のなかに変わったカーテンがあるのですが、あれは婦人科の検査台に使われているカーテンからインスピレーションを得たもの。欧米の婦人科ではああいったカーテンを見たことがなく、恥じらいのある日本ならではだなと驚いた経験があったので、ぜひ使いたいなと。今回は、衣装も美術も女性が担当しているので、女性のアイディアがたくさん入った作品になっていると思います。―観客に委ねる展開を多く取り入れているのは、最初から決めていたことですか?監督そうですね。私のなかではすべて答えがありますが、見えないからこそ怖いというのがあるので、そういった部分を楽しんでいただいきたいなと。劇中では、開けてはいけない箱を開けてしまうシーンがありますが、そこもみなさんのご想像にお任せします。―確かに、かなり想像力を掻き立てられました。そして何と言っても、恵を演じた黒沢あすかさんが非常に素晴らしかったです。キャスティングの決め手となったものは?監督脚本を開発している過程では、これを演じられる女優さんがなかなか思いつかずに悩みました。そんななか、過去作で見た黒沢さんは多面性があり、おばさんにも妖艶にもなれる本当に稀有な存在だなと。実際に黒沢さんと会ったときには、「この人だ!」と感じました。ちなみに、フランスではイザベル・ユペールさんが68歳でもセクシーな役を演じていますが、日本の女優さんたちは年齢を重ねると良妻賢母を求められるような役柄ばかりだとか。そういったこともあって、黒沢さんにはフランス人女優のような存在になってほしいと思っています。妻や母になったからといって女を捨てる必要はない―それとともに、大人の女性たち向けの作品ももっと増えていってほしいですね。雄二役の神尾さんに関しては、どのような演出をされましたか?監督今回難しかったのは、演技派の神尾さんでも30年以上のキャリアを持つ黒沢さんと比べると、どうしてもレベルの違いが出てしまうということ。そこで、その差を埋めるために神尾さんにはアクティングコーチを付けて、彼だけリハをがっつりとさせていただきました。忙しいなかでも基礎トレーニングからしっかりと取り組んでくれたので、かなり変わったと思います。―そのあたりも注目ですね。それでは最後に、これから観る方に向けてメッセージをお願いします。監督昨年、この作品を東京国際映画祭で上映した際、邦画には大人の女性が観たいと思う映画が少ないという声が上がりました。以前から男性監督が描く女性が“刺身のつま”のように感じることがあったので、私はしっかりとリアルに描きたいという思いを持って映画を作っています。年を重ねた女性がセクシーでいることをバッシングするような社会って何だろうと思いますし、女性も妻や母になったからといって女であることを捨てる必要はないはずです。大人の女性が持つ女としての魅力や母性の持つ怖さなど、女性にはいろいろな顔があることをこれからも描いていけたらいいなと。大それたことを言うようですが、そういう意味で邦画を変えていけるような映画をもっと作っていきたいです。親密な空間へと引きずり込まれていく!母親の内に秘めた愛情と狂気に鋭く迫り、女性の持つ多面性を見事に描いた本作。独自の視点から現代社会を見つめ続けてきた中村監督だからこそ生み出された大人の女性による、大人の女性のための必見作です。取材、文・志村昌美胸がざわつく予告編はこちら!作品情報『親密な他人』ユーロスペースにて公開中ほか全国順次公開劇場情報はこちら『親密な他人』トークイベント スケジュール3月24日(木)16:15の回上映上映後ゲスト:瀬々敬久さん(映画監督)、中村真夕監督3月25日(金)16:15の回上映後ゲスト:尚玄さん、中村真夕監督3月26日(土)16:15の回上映後ゲスト:ジェイク・エーデルスタインさん(ジャーナリスト・「TOKYO VICE」原作者)、中村真夕監督*英語字幕版上映( with English subtitle)3月27日(日)16:15の回上映後ゲスト:黒沢あすかさん、中村真夕監督配給:シグロ©2021 シグロ/Omphalos Pictures
2022年03月23日馬場ふみかが主演する映画『てぃだ いつか太陽の下を歩きたい』の公開が決定。裏切り、憎悪、友情、別れ、愛情を丁寧に描いていく、石垣島初ヒューマンサスペンス映画となっている。タイトルの“てぃだ”は、沖縄の方言で“太陽”を意味する言葉。本作の主人公は、東京から逃げるように石垣島にやってきた高橋まどか。石垣島ならではの自然、離島ならではの人の温かさに触れ、人に裏切られそれでも人を信じようと努力し、成長していく姿を描いていく。まどかを演じるのは、『パズル』で女優デビューし、「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」シリーズや「百合だのかんだの」に出演、4月からは「やんごとなき一族」の放送が控える馬場ふみか。「裏切られ、逃げてきた主人公高橋まどかが、石垣島で人々と触れ合い、温かさをしり、石垣島の離島ならではの綺麗な自然に心を癒され、前を向き太陽の下を歩こうと必死にもがき一人の女性として成長していくさまを丁寧に演じました。実際に行われた石垣島マラソンでの撮影、石垣島の素晴らしい自然も見どころです。ぜひご覧ください」とメッセージを寄せている。監督は、青柳翔主演コメディ映画『サンゴレンジャー』を手掛けた中前勇児。「沖縄県石垣島のきれいな海をたくさんの人たちに見せたい」という思いから本作を製作したという。『てぃだ いつか太陽の下を歩きたい』は秋、全国にて順次公開予定。(cinemacafe.net)■関連作品:てぃだ いつか太陽の下を歩きたい 2022年秋、全国にて公開予定©手力プロダクション
2022年03月17日映画といえば、“時代や社会を映す鏡”とも言われていますが、イランから届いたのは、死刑制度や冤罪問題を背景に描いた傑作サスペンス。ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品されたのをはじめ、世界各国で高く評価されている衝撃作をご紹介します。『白い牛のバラッド』【映画、ときどき私】 vol. 455テヘランの牛乳工場で働きながら耳の聞こえない幼い娘ビタの育てるミナは、1年前に夫が殺人罪で死刑に処せられてしまい、シングルマザーとして暮らしていた。いまなお喪失感に囚われている彼女だったが、夫ではなく別の人物が真犯人だったという信じがたい事実を裁判所から告げられる。深い悲しみに襲われたミナは、賠償金よりも担当判事の謝罪を求めるが門前払いされてしまう。そんななか、救いの手を差し伸べたのは、夫の旧友と称する中年男性レザ。ミナとビタ、レザの3人はいつしか家族のように親密な関係を育んでいくが、レザはある重大な秘密を抱えていた。その罪深い真実を知ったとき、ミナが最後に下した決断とは……。世界的な評価を得ているものの、本国イランでは政府の検閲によって正式な上映許可が下りていないという問題作。そこで、イラン社会の不条理に鋭く切り込んだ本作について、こちらの方々にお話をうかがってきました。ベタシュ・サナイハ監督 & マリヤム・モガッダム監督良質な映画が生まれる国として知られているイランで、“新たな才能”として注目を集めているサナイハ監督(写真・左)とモガッダム監督(右)。私生活でもパートナーのおふたりが、共同監督を務めるのは本作で2度目となります。今回は、主演も務めたモガッダム監督がミナに込めた思いや死刑制度が抱える問題、さらにイランと日本の共通点などについて語っていただきました。―イランは死刑執行件数が世界2位となっていますが、さまざまなリサーチを行う過程でイランの死刑制度にはどのような問題があると感じましたか?モガッダム監督イランの死刑制度に対する私たちの意見は、映画を観ていただければわかる部分もありますが、“社会の暴力”をより増やしてしまうものが死刑制度なのではないかと思っています。そういった観点から、この映画では死刑制度が生み出してしまうかもしれないひとつの結果を描くことにしました。まず問題となるのは、冤罪によって罪のない人が命を落としてしまう可能性があること。人間なので、どうしても間違いを犯すことはあると思いますが、死刑制度という法律にはそういった“バグ”があると考えています。―死刑制度を取り上げようと思ったきっかけなどもあったのでしょうか。モガッダム監督実は、父が政治犯として処刑されてしまったこともあり、私にとっては身近な題材だったので、長年温め続けていました。この作品を制作するにあたって、死刑制度に関係のあるさまざまな人たちにリサーチをしましたが、その過程で「これはイランだけでなく、死刑制度があるすべての国にいる人々の物語なのではないか」と考えるようになっていったのです。日本でもよく見られるテクニックを取り入れたかった―本作に登場する白い牛は、「死を宣告された無実の⼈間」を表しているのだとか。そのほかにも劇中でメタファーやダブルミーニングを込めたシーンがあれば、教えてください。サナイハ監督まず白い牛についてもう少し詳しく説明すると、コーランのなかにある牛の章が罪や罰に関するすべてのもとになっているので、今回使用することにしました。イスラムの世界では神に牛を捧げる儀式もあるほど、牛は無垢や謙虚さの象徴とされていますから。そういう意味もあり、白い牛を無実で処刑される人のシンボルにしたいと考えました。モガッダム監督娘のビタをろう者にしたのは、イスラムの女性たちの声が世界や権力者に届いていないこと、そして彼女たちの声が聞こえないものとされていることを意図したかったからです。あと、ミナが口紅を塗るシーンが2回ありますが、そこで表しているのは、彼女が芯の強い女性であること。彼女の強さや自身を鼓舞する気持ちを表現するためのメタファーとして入れています。サナイハ監督そのほかにも、今回は建築の要素を効果的に使っており、特にこだわったのは、窓やドアのフォルム。それらは登場人物たちに新鮮な空気が吹き込むような造りになっていますが、そこでは彼らがつかもうと手を伸ばしている“自由への道のり”を意味しています。これらのメタファーは、日本文化や文学のなかでもよく見られるものだと思いますが、イラン文化でも同じようなところがあるので、こういったテクニックを自分たちの映画にも用いたかったというのが私たちの意図です。―また、本作ではイランのシングルマザーが置かれている状況に驚かされました。国際的に活躍されているモガッダム監督は、どのような思いでミナ演じられましたか?モガッダム監督本作では、物語とともに「イランで女性として生きることはどういうことなのか」というのをリアルに見せたいと思っていました。イランではいまだに男尊女卑なところがありますが、同じような状況の国はたくさんあるので、そういった社会で女性が暮らしていくことの大変さや不公平さ、そして女性が抱える葛藤は表現したいと考えていました。2つの国が刺激し合えているのは、素晴らしいこと―先ほど、本作には日本文化でも見られるテクニックを使われたとのことでしたが、日本から影響を受けている部分などもあるのでしょうか。モガッダム監督私はまだ日本へは行ったことがありませんが、いつか絶対に行きたいと思っている国のひとつ。文化的にもイランと日本には近いものを感じるので、非常に興味を持っています。サナイハ監督実は、僕は8歳のときに家族と東京に1か月ほど滞在したことがあるんですが、とても素敵な街ですし、日本の文化が大好きです。特に、影響を受けているとすれば、それは日本のクラシックな映画ですね。ストーリーテリングに詩的な要素を入れることを大事にしているところに、日本映画とイラン映画の共通点を感じていますが、これは映画作りにおいては非常に重要な部分だと考えています。実際にそれらは小津安二郎監督や黒澤明監督、そしてアッバス・キアロスタミ監督にも共通しているのではないかなと。最近の日本の映画作家たちに受け継がれている資質だと思いますし、イランでもバハラーム・ベイザー監督は黒澤監督の影響を強く受けていると感じるほどです。そんなふうに2つの国がお互いに刺激し合いながら映画を作っていることは、本当に素晴らしいことだと思っています。―これからもそうあり続けてほしいですね。それでは最後に、日本の観客へ向けてメッセージをお願いします。サナイハ監督死刑制度というルールが生む痛みは、日本とイランが共通して抱えているものだと考えているので、ぜひそういったことを含めてこの作品を観ていただきたいです。溢れ出る感情に締め付けられるサスペンスとして秀逸でありながら、日本人として決して目を背けてはいけない“社会の闇”を突きつける本作。母として女性として強く生きようとするミナの姿と衝撃のラストは、観る者の心を激しく揺さぶり、さまざまな問いを与えてくれるはずです。取材、文・志村昌美胸がざわめく予告編はこちら!作品情報『白い牛のバラッド』2月18日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開配給:ロングライド
2022年02月16日誘拐犯との壮絶な死闘を描いたサスペンスホラー作品『パーキングエリア』が、ディズニープラスのスターにて配信される。これに先駆けて今回、キービジュアルと予告編が到着した。真冬の夜、女子大生のダービー・ソーンは、ガンで入院中の母親の容態急変の知らせを受け、車を走らせるが、休憩のために立ち寄った高速道路のパーキングエリアで吹雪のため、その場に居合わせた先客と共に立ち往生してしまう。そこで偶然、一台の車に誘拐された子どもが隠されているのを発見するが、事態はさらに悪化。誘拐された子どもを助けようとするが、生死に関わる状況に置かれ、誘拐犯に立ち向かう――。本作は、テイラー・アダムスによる同名小説が原作。プロデューサーは、アメリカ製作者組合(PGA)賞の受賞経験もあるスコット・フランク、監督はダミアン・パワーが務め、長編映画初の主役となるハバナ・ローズ・リューが主人公の大学生ダービー・ソーンを演じるほか、ダニー・ラミレス、デビッド・リスダール、ミラ・ハリス、デニス・ヘイズバートらが出演。今回到着した予告編では、緊迫のシーンが続き、息もつかせぬ映像となっている。ダービーが、母親のもとに向かう場面から始まり、パーキングエリアに避難を余儀なくされ、そこで4人の人物たちと出会う。そんな中、車の中から子どもの叫び声が…。そして、4人に疑いの目を向けるダービー。犯人と対峙し、子どもと一緒に逃げる様子もとらえられている。『パーキングエリア』は2月25日(金)よりディズニープラスのスターにて見放題初独占配信開始。(cinemacafe.net)
2022年02月07日スウェーデンの配信サービス「Viaplay」が創り出したオリジナルサスペンスドラマを、来年1月から3月の3か月間にわたってWOWOWで放送・配信することが決定した。「Viaplay」は、北欧サスペンスをはじめ、多彩なオリジナル番組を量産し、北欧から世界へと拡大を続けている北欧No.1ローカル配信サービス。スウェーデンの小説を原作に映像化された『ミレニアム』3部作がハリウッドで『ドラゴン・タトゥーの女』としてリメイクされ、北欧サスペンスは世界的な評価や注目が高まっている。今回WOWOWでは、「ゾウズ・フー・キル」のリブート版第2シーズン「ブラインデッド:ゾウズ・フー・キル」が1月からスタート。「ブラインデッド:ゾウズ・フー・キル」また3月までに、「ゾウズ・フー・キル」に新たな人物を加えて描かれるリブート版第1シーズン「ダークネス:ゾウズ・フー・キル」、両親を殺された敏腕弁護士の兄と刑事の妹によるリベンジ・スリラー「THE LAWYER ~復讐の天秤~」、4人の女性弁護士が売春組織を追うリーガルサスペンス「HONOUR ~因果の絆~」シーズン1&2、戦慄のクライムサスペンス「刑事ヴィスティング~殺人鬼の足跡~」、目が覚めると犯罪者になっていた男の決死の逃走劇&謎解きを描く「陰謀のからくり~サンデフィヨルドの夜~」の計6作品が日本独占初登場。「HONOUR ~因果の絆~」ほかにも、関連作品が配信中となっている。「3か月連続企画!放送と配信で観る日本初Viaplay作品特集」は2022年1月~3月WOWOWにて放送・配信。(cinemacafe.net)
2021年11月25日ノオミ・ラパス主演のサスペンス映画『The Secrets We Keep』が邦題『マヤの秘密』として来年2月に全国公開されることが決定。併せてポスタービジュアルが解禁となった。1950年代、アメリカ郊外の街。ある日、街中で男の指笛を聞いたマヤ(ノオミ・ラパス)は、“ある悪夢”が蘇ってくる。ナチスの軍人だったその男から戦時中暴行を受けたマヤは、復讐心から男を誘拐し、夫・ルイス(クリス・メッシーナ)の手を借りて自宅の地下室へと監禁する。殺したい気持ちを抑えながら罪の自白を求めるマヤだが、男(ジョエル・キナマン)は人違いだと否定し続ける。果たして、彼女の悪夢は《妄想》か?《現実》か?主人公マヤを演じるのは、今年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で上映され話題となったA24製作の最新作『LAMB』も控えるノオミ・ラパス。本作の脚本を読み「これこそ私が探していた映画!」と出演を快諾したノオミは、製作も務めている。共演に、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』のジョエル・キナマン、『夜に生きる』のクリス・メッシーナ、リメイク版『ペット・セメタリー』のエイミー・サイメッツ。監督は、『ベツレヘム 哀しみの凶弾』のユヴァル・アドラーが務める。今回、公開決定と併せて解禁となった日本版ポスターは、左右上部にメインキャストのノオミ・ラパス、ジョエル・キナマン、中央には縛られた男の手、下部には監禁されている地下室の写真がモノクロで配置され、謎めいた内容を感じさせる。また、「マヤの秘密」というタイトルと、「この女の悪夢は、《妄想》か?《現実》か?」「脳裏から消えないナチスの記憶」いうコピーから、主人公のマヤが過去にナチスから受けた暴行の悪夢に囚われている様子がうかがえ、サスペンスフルな展開を予感させるビジュアルになっている。『マヤの秘密』は2022年2月18日(金)より新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:マヤの秘密 2022年2月18日より新宿武蔵野館ほか全国にて公開© 2020 TSWK Financing and Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
2021年11月12日サスペンス・スリラー映画『スティルウォーター』が、2022年1月14日(金)に公開される。主演はマット・デイモン、監督はトム・マッカーシー。トム・マッカーシー監督の最新作映画『スティルウォーター』は、第88回アカデミー賞作品賞、脚本賞を受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』のトム・マッカーシー監督による最新作。フランス・マルセイユを舞台に、殺人罪で捕まった娘の無実を証明するため、父親が真犯人を探し出すというサスペンス・スリラーだ。「娘を取り戻したい」父が辿り着く“真実”とは?予告動画には、故郷の米オクラホマ州・スティルウォーターから言葉も通じない異国の地フランスへ単身渡る父親ビルの姿が。現地の協力者を得るも、ほとんどの地元民は探りを入れてくる余所者のビルと口をきこうともしない。諦めないビルは、わずかな手がかりを頼りに危険を顧みずさらなる深みへと身を投じる…。行動を起こすも、「娘を救えずあなたも投獄だ」と地元民に忠告を受けるビル。警察もビルの元へ訪れ、次々と不穏な事態。真実を追い求める旅路の果てに、ビルを待ち受ける結末とは―?マット・デイモンが主演主演は、『オデッセイ』『ジェイソン・ボーン』を代表作に持ち、リドリー・スコット監督の最新作『最後の決闘裁判』でも注目を集めるマット・デイモン。『スティルウォーター』では、泥臭くもリアルな父親を演じきり、海外メディアから高い評価を得ている。娘役は、『リトル・ミス・サンシャイン』『ゾンビランド:ダブルタップ』で好演したアビゲイル・ブレスリンが担当。<登場人物>ビル(マット・デイモン)殺人罪で捕まった娘アリソンの無実を証明するために奮闘する父親。異国の地での真犯人探しに奮闘するアメリカ人。アリソン(アビゲイル・ブレスリン)留学中にガールフレンドを殺した罪で逮捕される。賞レースにも期待がかかる一本映画『スティルウォーター』は、第74回カンヌ国際映画祭でワールドプレミア上映され、5分間のスタンディグオベーションを受けた。賞レースにも期待がかかる一本だ。デイモンは「心打つ美しい物語。これまで演じたどの役よりも素晴らしく、演じられて幸運だ」と語っている。トム・マッカーシー“10年を費やしても”描きたかったものとは?実は、アカデミー賞作品賞を受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』よりも前にアイデアが練られていたという『スティルウォーター』。トム・マッカーシー監督は、「着想が生まれたのは10年ほど前で、地中海の暗黒小説に感化されていた。これらの小説は、事件を取り巻く人物の人生を描写し犯罪小説というジャンルを超えていた。同じことを、私の映画を通じてやりたかった」と明かした。構想10年の時を経て、監督が本当に描きたかったものとは?劇場で確かめてほしい。【詳細】映画『スティルウォーター』公開日:2022年1月14日(金)、TOHO シネマズ シャンテ、渋谷シネクイントほか全国公開監督・脚本:トム・マッカーシー脚本:マーカス・ヒンチー、トーマス・ビデガン、ノエ・ドブレ撮影監督:高柳雅暢出演:マット・デイモン、アビゲイル・ブレスリン、カミーユ・コッタン、リル・シャウバウ、イディル・アズーリ2021年/アメリカ/カラー/デジタル/ビスタサイズ/英語・フランス語/原題:STILLWATER/映倫G/字幕翻訳:松浦美奈
2021年10月22日マット・デイモン主演×トム・マッカーシー監督最新作のサスペンス・スリラー『Stillwater』が『スティルウォーター』の邦題で2022年1月より公開することが決定した。本作は仏マルセイユを舞台に殺人罪で捕まった娘の無実を証明するため、父親が真犯人を探し出すというサスペンス・スリラー。主演はリドリー・スコットの最新作『最後の決闘裁判』出演でも注目が集まるマット・デイモン。異国の地での真犯人探しに奮闘するアメリカ人の父親・ビルを泥臭くもリアルに体現し、海外メディアからは「最高の演技を披露した(NERDIST)」と絶賛された。娘アリソン役には、『リトル・ミス・サンシャイン』で映画ファンの心を掴んだアビゲイル・ブレスリン。『ゾンビランド:ダブルタップ』での好演も記憶に新しいが、本作では留学中にガールフレンドを殺した罪で逮捕されるという難しい役柄を見事に演じた。監督は『スポットライト 世紀のスクープ』のトム・マッカーシー。本作について「着想が生まれたのは10年ほど前で、地中海の暗黒小説に感化されていた。これらの小説は、事件を取り巻く人物の人生を描写し犯罪小説というジャンルを超えていた。同じことを、私の映画を通じてやりたかった」と明かす。『スポットライト』よりも前にアイディアが練られていたそうで、構想10年の時を経て、監督が本当に描きたかったもの、そして一つの事件を通して伝えたかったメッセージをスクリーンに映し出す。今年の第74回カンヌ国際映画祭でワールドプレミア上映され、5分間のスタンディグオベーションを受けてマット・デイモンが感極まる場面も。デイモンは「心打つ美しい物語。これまで演じたどの役よりも素晴らしく、演じられて幸運だ」と語っている。『スティルウォーター』は、2022年1月より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:スティルウォーター 2022年1月、TOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイントほか全国にて公開© 2021 Focus Features, LLC.
2021年10月19日混乱する時代のなかで、失いたくないもののひとつは誰の心のなかにもある“信念”。とはいえ、それを維持し続ける難しさを感じている人もいるのではないでしょうか?そこでオススメしたい映画は、そんな思いに応えてくれる話題のヒューマンサスペンスです。『偽りの隣人 ある諜報員の告白』【映画、ときどき私】 vol. 4131985年、次期大統領選に出馬するために帰国した野党政治家イ・ウィシクは空港に到着するなり国家安全政策部により逮捕。家族とともに自宅軟禁を余儀なくされる。ウィシクを監視するため、諜報機関は左遷されていても愛国心だけは人一倍強いユ・デグォンを監視チームのリーダーに抜擢することに。デグォンはウィシクの隣に住み込み、24時間体制の監視任務を遂行。機密情報を入手するために盗聴器を仕掛けていたが、家族を愛し、国民の平和と平等を真に願うウィシクの声を聞き続けるうちに、上層部に疑問を持ち始める。その矢先、ウィシクと家族に命の危険が迫ろうとしていた……。軍事政権が国民の民主化運動を弾圧していた1985年を背景に描き、本国・韓国でも大きな注目を集めた本作。そこで、見事な手腕で作品を完成させたこちらの方にお話をうかがってきました。イ・ファンギョン監督韓国歴代興収10位を記録した『7番房の奇跡』などで知られるファンギョン監督。今回は、制作を通して振り返った少年時代の忘れられない記憶や日本への思いなどについて、語っていただきました。―韓国現代史を描いた作品はこれまでも数多くありますが、本作を作るうえで他の作品とはどういう部分で一線を画した作品にしようと考えていらっしゃいましたか?監督確かに、いままでも本作と近い時代背景と政治的な題材を取り上げた作品はたくさん作られており、どの監督も見事に映画にしていると感じていました。ただ、今回私が作るうえでは、それらと同じような撮り方をするのではなく、重視していたのは、自分なりのスタイルで新しい物語を描くこと。これまでにない変化をつけることはできないだろうか、と考えました。そこで、重い話ではあってもそれを感じることなく、ライトで身近な印象を持ってもらうような作品にしたいなと。この映画では、そういうアレンジを意識して作り上げています。―実際、シリアスなシーンとコミカルなシーンとのバランスが絶妙で素晴らしかったです。監督その点は、私がいつも悩んでいることのひとつでもありますね。今回も念頭に置いていたのは、観客のみなさんにどのくらい楽しんでいただけるか、どのくらい涙を流してもらえるのか、そしてどのくらい共感してもらえるのか、ということ。人と人との間に生まれる美しい関係を感じてほしいと思って努力を重ねました。結果的に私たちがここで笑ってほしいとか、ここで共感してほしいと思うところで、観客のみなさんが反応してくださったので、それはとてもうれしかったです。時代考証は、自分の記憶を頼りに行っていった―今回、舞台を1985年に決めた理由についても、お聞かせください。監督映画のなかでは直接的に実際の事件に触れてはいませんが、似たような出来事が1985年に起きていたからというのはもちろんありました。あとは、80年代から90年代にかけての物語にしたいと思っていたので、それならちょうど真ん中の年を描くのがいいのかなと。なので、実は1985年に特別な思い入れがあったというわけではないんですよ。―なるほど。ただ、監督は当時15歳と多感な時期だったと思います。ご自身の経験や思い出が反映されたシーンもあったのでは?監督当時の美術や衣装、音楽といったところは私の記憶を頼りに時代考証をしていきました。なかでも私にとって忘れられない女優さんといえば、『ラ・ブーム』で主演を務めていたフランス人女優のソフィー・マルソーさん。中学生だった私は、ソフィーさんのことが大好きだったんです。そういったこともあって、今回ウィスクの娘役を演じてもらったイ・ユビさんのヘアスタイルをはじめすべては当時のソフィーさんと同じにしてもらいました。つまり、私が好きなソフィーさんを再現してもらったということです(笑)。ちなみに、韓国では多くの観客に気に入ってもらうことができました。―とても魅力的でかわいかったです。また、劇中に何度も流れる「クルクル」という曲も印象的でしたが、この曲も監督がお好きだったものですか?監督そうですね。その当時、私が好きでよく聞いていた曲です。それに「クルクル」は、グルグルと回ることを表現している部分が問題視されて、実際に禁止曲になった曲でもあったので使いたいなと。そのほかの理由としては、映画のなかで起きている抑圧的な状況と、この曲の歌詞や軽快なリズムが相反するものになっていたので、それらを合わせることで皮肉っぽさがより表現できておもしろいと思って入れました。理解できない出来事が多いことに驚かされた―非常に効果的に使われていると感じました。本作はあくまでもフィクションであると監督はおっしゃっていますが、参考にされた事件はあると思うので、それについても教えていただけますか?監督ご存じの方も多いかもしれませんが、1985年には韓国の大統領を務めたこともあるキム・デジュンさんが軟禁状態に置かれるという歴史的事実がありました。紆余曲折を経て、自宅軟禁されてしまうわけですが、いま考えてもなかなか理解できることではありませんよね。なぜ、自宅を拘置所のようにしなければならなかったのか。さまざまな疑問がつきまとう出来事だったと思います。当時、私はまだ子どもだったので、そのときの政治的な状況などについては、まったくわかっていませんでした。今回の作品を制作するうえで、さまざまな出来事を知ることになりましたが、理解しきれないほどいろいろなことが起きていたのは驚きでしたね。―確かに、本作を観て知ることが多くあり、非常に衝撃的でした。こういったことを描くうえで、意識していたことはありましたか?監督キム・デジュンさんは一挙手一投足を監視され、盗聴もされていた事実があったので、この作品では、そういった真実はモチーフにしたいなと。ただ、そこで頭にあったのは、実際の出来事をなぞるのではなく、私なりにヒューマンドラマとコメディの要素を込めた作品にしたいという思いです。この映画はドキュメンタリーではなく、あくまでも劇映画なので、ストレートに描くのではなく、風刺などを交えつつ、少し迂回するような形で描こうと考えました。―そんな監督の意図を理解し、見事に体現していたのはキャストのみなさんだったと思います。現場で印象に残っているシーンはありましたか?監督劇中で俳優同士のアンサンブルがうまくいったなと思っているシーンのひとつは、私たちが「かくれんぼシーン」と呼んでいたある場面。1人が隠れると、ほかの2人出てくるというのを繰り返しているところですが、何日もかけて撮影したシーンで非常にうまくいったと思っています。あとは、後半でチョン・ウさんとオ・ダルスさんの2人がお互いの顔を思い出しながら考えごとをするシーン。そこでは、観客のみなさんに深みを感じてもらえるように心がけました。個人的にも非常に記憶に残っているところなので、ぜひ観ていただきたいです。日本には、感性を刺激してくれる作品がたくさんある―どちらのシーンも注目していただきたいですね。では、日本についてもおうかがいしたいのですが、日本の作品や文化などで影響を受けているものがあれば、教えてください。監督まずは、村上春樹さんの小説。私だけでなく、韓国ではとても人気が高いですよね。あと好きなのは、日本のアニメーション。なかでも私の心のなかにつねに残っているのは宮崎駿監督の作品で、自分の子どもと一緒に『ハウルの動く城』などをよく観ています。ほかにも高畑勲監督の『火垂るの墓』は、本当に名作だと思っています。それから、高校から大学時代にかけて私の感性を刺激してくれた作品といえば、岩井俊二監督の『Love Letter』。最近だと、私が目指しているものと近いと感じる方は、是枝裕和監督も挙げられます。私はこれまで日本の映画を観ながら映画監督になりたいという夢を育んできましたが、そんなふうに日本の映画や文化はつねに多くのことを考えさせ、たくさんのことを学ばせてくれる存在です。―ありがとうございます。それでは日本の観客に向けて、メッセージをお願いします。監督日本でこの作品が公開されるという知らせを聞いたときは、本当に胸がいっぱいになりました。できることなら、パソコンの画面を突き破って、いますぐ日本にいきたいほど。パンデミックさえなければ、観客のみなさんにも直接挨拶したいと願っていました。なので、いまはそれが叶わなくて、とても残念な気持ちです。ただ、私の作品が公開されることだけでも舞い上がるような気分ですし、ぜひみなさんに愛していただける作品になったらうれしいと思っています。あらゆる感情が溢れ出すヒューマンドラマ!運命は政治に翻弄されることはあっても、いつの時代も変わらないものといえば、人と人との絆。決して出会うはずのなかった2人が繰り広げるやりとりには、ときに笑い、ときに涙してしまうはず。人間関係が希薄になりがちないまこそ観たい心が震える1本です。取材、文・志村昌美胸が騒ぐ予告編はこちら!作品情報『偽りの隣人 ある諜報員の告白』9月17日(金)より、シネマート新宿ほか全国ロードショー配給:アルバトロス・フィルム© 2020 LittleBig Pictures All Rights Reserved.
2021年09月16日藤原竜也×松山ケンイチW主演のサスペンス映画『ノイズ』が、2022年1月28日(金)全国ロードショー。孤島が舞台、衝撃のサスペンス漫画が実写化へ原作は、鬼才・筒井哲也が2017年から2020年まで集英社「グランドジャンプ」で連載したコミック『ノイズ【noise】』。平和な孤島に入り込んサイコキラーと、彼を殺害してしまった島民による新感覚サスペンスだ。“たった一人の人間の悪意(ノイズ)が”じわじわと島を飲み込んでいく不気味な展開と、必死に犯罪の隠蔽を貫く犯罪者たちの物語は、当時“予測不可能なラスト”と多くの注目を集めた。そんな話題作が、廣木隆一監督を迎えて実写化を実現。島のヒーローは今日、殺人犯になる『ノイズ』の物語の舞台となるのは、絶海にぽつりと浮かぶ孤島“猪狩島”。過疎化に苦しむ島を救う希望となったのが、島の青年・泉圭太が生産を始めた“黒イチジク”だった。この黒イチジクは、高く評価され、島には地方創生推進特別交付金として5億円が支給されるように。復活という希望の兆しが見えて、島民たちに平和な日常が戻ってくる。そんなある日、島に小御坂睦雄(こみさかむつお)という一人の男性が現れる。小御坂の不審な言動に違和感を覚えた、泉圭太は、幼馴染の猟師・田辺純と新米警察官の守屋真一郎とともに、小御坂を追い詰めていく。ある日の夕方、圭太の娘に音もなく忍び寄っていく小御坂を目にした3名は、圭太の娘の失踪を機に誤って小御坂を殺してしまう…。「こんな島だ…バレるはずがない」島の未来、そして家族の未来を守るため、3人はこの殺人を隠すことを決意。しかし、小御坂の足取りを追って、県警が押し寄せ静かな島は騒然とする――。なんと小御坂は元受刑者のサイコキラーだったのだ。次々と増える第2、第3 の死体…。果たして圭太たちはすべてを隠し通せるのか!?藤原竜也×松山ケンイチ再び物語のキーパーソンであり、島に潜入した凶悪犯を殺害してしまった島民の共犯者を、『鳩の撃退法』『太陽は動かない』の藤原竜也と、『BLUE/ブルー』の松山ケンイチが演じる。映画『デスノート』シリーズでは名ライバルを演じた二人だが、『ノイズ』ではサイコキラーの死体を隠す“共犯”という難役に。一体どんな化学反応が起きるのか、映画の完成に早くも期待が募る。・泉圭太(藤原竜也)“黒イチジク”の生産で、猪狩島復興の希望をもたらす若きリーダー。妻と娘の3人で幸せな家庭を築いている。・田辺純(松山ケンイチ)島の猟師。寡黙な男だが、幼馴染である圭太と真一郎には心を開いている。神木隆之介や渡辺大知も参戦!その他の登場人物&キャスト『ノイズ』において物語の鍵を握る重要な人物を演じるのは、実力派俳優たち。殺人事件のもう1人の共犯者に神木隆之介、島に現れるサイコキラー役に渡辺大知といった面々が揃った。・守屋真一郎(神木隆之介)幼い頃からの夢だった、故郷の猪狩島にある駐在所での勤務が決まったばかりの新米警察官。圭太と純を兄のように慕う2人の幼馴染で、殺人事件の“もうひとりの共犯者”となってしまう。正義感にあふれる男で、母を大切に思う心優しい一面も。・小御坂睦雄(渡辺大知)平和な孤島に現れた“ノイズ”のような凶悪犯。かつてストーカー殺人を犯した元受刑者のサイコキラー。ある日突然猪狩島に訪れ、不穏な空気を漂わせながら圭太・純・真一郎の周りに静かに現れて、圭太の娘に音もなく忍び寄っていく。・泉加奈(黒木華)...主人公・圭太の優しい妻。ともにイチジク農園を切り盛りする。・畠山努(永瀬正敏)...圭太たち幼馴染3人を追い詰める県警の敏腕刑事。突如姿を消した元受刑者の小御坂睦夫の後を追って、圭太たちの住む猪狩島に訪れるが三人の挙動に不信感を覚え、次第に追い詰めていく。・青木千尋(伊藤歩)...3人を追い詰める刑事・畠山の相棒。・守屋仁美(鶴田真由)...真一郎の母。・酒井義昭(波岡一喜)...地方創生局員として猪狩島に訪れる。・岡崎正(寺島進)...真一郎の先輩である前任の駐在員。・庄司華江(余貴美子)...猪狩島の復興を第一に考える町長。・野毛二郎(迫田孝也)...町長・庄司の部下。・横田庄吉(柄本明)...圭太と純の隣人で物語の重要なカギを握る農家。・横田昭一(酒向芳)...農家・ 床吉の息子 。藤原竜也&松山ケンイチのコメントなお、W主演を務める藤原竜也と松山ケンイチは、映画の公開決定に合わせて、下記の通りコメントを寄せている。藤原竜也 コメント「松ケンと作品で共演するのは本当に久しぶり。芝居に関しても、仕事への姿勢を見ていても、とても頼りがいのある役者になっていて、撮影中は僕自身が救われました。劇中では幼なじみの設定ですが、実際にも長年の付き合いがあるからこそ出せる独特な空気感を良い形に観せられたら良いですね。」松山ケンイチ コメント「竜也さんとの共演は久しぶりですが、改めて演技の暴力に打ちのめされました。これがあるので竜也さんとの共演は楽しくて仕方がありません。」<映画『ノイズ』あらすじ>絶海にぽつりと浮かぶ孤島“猪狩島”――時代に取り残され、過疎化に苦しむ島だったが、島の青年・泉圭太(いずみけいた)が生産を始めた“黒イチジク”が高く評価され、島には地方創生推進特別交付金5億円の支給がほぼ決まり、島民たちには復活という希望の兆しが見えていた。そんな平和な日常がある男の登場によって一変する。男の名前は、小御坂睦雄(こみさかむつお)。圭太と彼の幼馴染の猟師・田辺純(たなべじゅん)、新米警察官の守屋真一郎(もりやしんいちろう)の3人は小御坂の不審な言動に違和感を覚え追い詰めていくが、その日の夕方、圭太の娘の失踪を機に誤って小御坂を殺してしまう。「こんな島だ…バレるはずがない」島の未来、そして家族の未来を守るため、3人はこの殺人を隠すことを決意。しかし、小御坂の足取りを追って県警が大挙に押し寄せて静かな島は騒然とする――。なんと小御坂は元受刑者のサイコキラーだったのだ。圭太たちの殺人、警察の捜査、島民たちの結束、そして次々と増える第 2、第 3 の死体…。果たして圭太たちはすべてを隠し通せるのか!?■作品詳細映画『ノイズ』公開日:2022年1月28日(金)全国ロードショー出演:藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介、黒木華、渡辺大知、酒向芳、迫田孝也、鶴田真由、波岡一喜、寺島進、余貴美子、柄本明、永瀬正敏原作:筒井哲也「ノイズ【noise】」(集英社 ヤングジャンプ コミックス GJ 刊)監督:廣木隆一脚本:片岡翔製作・企画:日本テレビ放送網制作:クレデウス配給:ワーナー・ブラザース映画
2021年06月05日ストーリーの先が知りたいけれど、怖い、でも知りたい!!そんな緊張感あふれる心理系サスペンスマンガを7冊ご紹介。夜、ベッドの中で読むと、眠れなくなってしまうかも…。1、『秘密 ―トップ・シークレット― 新装版』(清水玲子/白泉社)舞台は近未来の科学警察研究所。死者の脳から記憶を映像化し、検証する〈MRI捜査〉を使い、未解決事件の真相に迫るというサスペンス。死者の脳から被害者や加害者の秘密を暴き出し、そこから心理や行動を読み解き、事件を解決へ導くのだが、“現実”ではないその映像の強烈さと影響力は、読者の心をも侵食する。全12巻¥640~©清水玲子/白泉社2、『SPY×FAMILY』(遠藤達哉/集英社)東西平和を脅かす敵に近づくために、結婚し子供を持てと命じられた、スパイの“黄昏”。孤児院からアーニャ(超能力者)を引き取り、市役所勤めのヨル(実は殺し屋!!)と疑似家族を築く。有能スパイ黄昏のプロファイリング能力はさすが!ホームコメディとしても読み応えがあり、ドキドキとワクワクが共存する!1~6巻各¥480©遠藤達哉/集英社3、『ミステリと言う勿れ』(田村由美/小学館)見た目はほんわり系なのに、冷静沈着、頭脳明晰、素晴らしい記憶力&観察眼の持ち主の大学生・久能整。なぜかよく事件に遭遇し、そのたびに、刑事や犯人、関係者と整は語るのだが、彼の言葉に人々はつい本心を吐露してしまい、それがきっかけで謎が解けていく。整の、無意識に相手の心を緩ませる力がスゴい。1~7巻¥429~©田村由美/小学館4、『予告犯』(筒井哲也/集英社)頭に新聞紙をかぶった男が犯罪予告をする動画が発見される。その後も犯罪予告を繰り返す彼らは、シンブンシと呼ばれるように。SNS上で炎上を起こした者たちを主なターゲットとする予告犯シンブンシと、警視庁サイバー犯罪対策課の刑事たちの攻防戦を描いた作品。ネットでの群集心理などを利用した心理戦に息を呑む。全3巻各¥600©筒井哲也/集英社5、『ヴェクサシオン ~連続猟奇殺人と心眼少女~』(湯川義弘/双葉社)河川敷で起きた猟奇殺人の捜査本部に、“ミスター猟奇”こと久留宮が招かれる。新人の緒方と久留宮は、視覚に障害がある、久留宮の妹・玲美の家へ。実は久留宮が解決したといわれていた事件は、すべて妹が解決してきた。聴覚や嗅覚、触覚を使い、相手の小さな変化から心理や行動を読み、推理する玲美に脱帽…。1~3巻各¥670©湯川義弘/双葉社(4巻以降は電子単行本で続刊予定)6、『憂国のモリアーティ』(原案:コナン・ドイル「シャーロック・ホームズ」シリーズ、構成:竹内良輔、漫画:三好輝/集英社)舞台は大英帝国全盛期のロンドン。貴族モリアーティ家に引き取られた養子の兄弟が、嫡男のアルバートとともに家を乗っ取り、国に根付く腐敗した階級制度を変えるべく、様々な“犯罪”を起こす。主人公のウィリアムが、敵の思いを先読みしながら、罠のように犯罪を仕掛けていく様子に読み応えが。1~13巻各¥480©竹内良輔・三好輝/集英社7、『MORTAL LIST』(小見川なまり/スクウェア・エニックス)警視庁捜査一課に転属してきた新人刑事・南郷千景。小学校時代のある経験をきっかけに、己の正義を執行するため、行動心理学を学んできた。犯人の心の闇に潜り、追い詰め、心理を読み解く千景の手腕は、強く、どこか悲しみも漂う。“蛇(くちなわ)”という二つ名で呼ばれる彼女が狂気をあぶり出し、事件解決へ導く。1~2巻各¥600©Naomi Omikawa/SQUARE ENIX※『anan』2021年2月24日号より。写真・中島慶子取材、文・河野友紀山縣みどり(by anan編集部)
2021年02月21日いつの時代も人々の関心を引くテーマのひとつといえば、謎多き未解決事件。そこで今回は、サスペンスフルな展開満載の実話をもとにした刺激的な1本をご紹介します。それは……。『私は確信する』【映画、ときどき私】 vol. 3592000年2月、フランス南西部トゥールーズで38歳の女性スザンヌ・ヴィギエが3人の子どもを残して突然姿を消した。夫で法学部の教授であるジャックに殺人容疑がかけられるが、明確な動機も証拠も遺体も見つからない。しかし、メディアのセンセーショナルな報道は過熱していくいっぽうだった。そんななか、ヴィギエ一家と関わりのあったシングルマザーのノラは、ジャックの無実を訴え、弁護士のデュポン=モレッティに弁護を懇願する。そして、自らも助手となって250時間もの通話記録を調べることに。スザンヌの愛人やベビーシッターの証言が明らかになるなか、ノラは新たな真実と疑惑に気がつき始めていた……。フランスで実際に起きた未解決事件をもとに映画化し、本国では40万人を動員する大ヒットとなった本作。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。アントワーヌ・ランボー監督これまで短編映画の制作で着実に実力をつけてきたランボー監督。本作が長編デビュー作でありながら、確かな演出力が高く評価されています。今回は、自身の経験や作品を通して感じた思いなどについて語っていただきました。―監督がこの事件のことを知ってから、映画が完成するまでには10年近い年月がかかったそうですね。それだけ長い間監督のモチベーションになっていたのは何ですか?監督僕にとっては、「この話を絶対に映画にするんだ」という強い思いがあったので、やめる理由がまったくなかったというだけですね。実際、その期間は毎朝この事件のことが僕の頭のなかにはあったほどですから。それから、ジャック本人や子どもたちと知り合って、彼らに愛情面でも思い入れがあったというのも大きかったかもしれませんね。今回はシナリオを完成させるだけでも5年かかりましたが、それほど長い時間をかけたこともよかったといまは思っています。なぜなら、それによってこの映画にとっても、ヴィギエ一家にとっても、僕にとっても、ちょうどよい距離感が生まれたからです。シナリオに5年かけたあと、資金を集め、ようやく2019年に完成を迎えましたが、僕にとってはあっという間だったと感じています。―ヴィギエ一家と直接交流を続けるなかで、いろいろと感じたことや発見したこともあったと思いますが、それらを映画に反映した部分もありましたか?監督この映画のなかには、僕自身が経験したこともすべて真実として作品に埋め込まれています。たとえば、ノラのように第二審のときに弁護士のデュポン=モレッティにお願いしたのは僕ですし、映画には登場しませんが、ジャックの新しいパートナーであるエミールが子どもたちを育てながら9年間も正義のために戦っている姿も間近で見てきました。そういう意味では、僕もヴィギエ一家とは、家族の一員のような密接な付き合いをしていたと言えるかもしれません。ただ、彼らのことを暴露するようなことはしたくなかったですし、ほどよい距離を取るようには意識していました。クライマックスに司法に対する見解をすべて込めている―では、ノラというキャラクターをフィクションとして入れた意図について教えてください。監督彼らと過ごした経験を踏まえたうえでノラという人物を作りあげましたが、自分の真実に対して少し暴走してしまう姿に、世論の体現という意味を持たせたかったからです。そういった部分に関して自分が描きたいと思うものを彼女に投影しているので、ノラというキャラクターはフィクションにしました。主観性というのは、ノラが体現していることであり、まさにこの映画のテーマでもあります。ノラは自分を見失って、過ちを犯すわけですが、自分は真実を追求しているつもりでもどんどん逆の方向に行ってしまうことがあるというの彼女を通して描きました。―監督もノラのようにヴィギエ一家と近い立場にいたと思うので、ご自身とノラが重なる部分もあったのではないでしょうか?監督そうですね。ただ、彼女の司法に対する視点や見解は、僕のものとは違います。僕の考えは、クライマックスで見せる弁護士の最終弁論にすべてを込めました。このシーンは数年かけて脚本を書き上げたほどですから。そこで伝えたかったのは、疑いがあることによって有罪へと向かうのではなく、弁護して無罪のほうへと向かうべきだということです。あともうひとつ、ノラで描いているのは、強迫観念の危険性。異常なほどの執着に陥ってしまうことの危うさを彼女には表現してもらってます。最初ノラは、エリン・ブロコビッチみたいに正義感あふれる良き市民みたいな感じで登場しますよね。でも、それが暴走することによって、最終的には『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーみたいになってしまうという人物像を頭のなかで思い描いていました。公開禁止を求めて訴えられたこともあった―なるほど。ちなみに、完成した作品をご覧になったジャックや子どもたちの反応はいかがでしたか?監督今回、最初の観客はヴィギエ一家のみなさんで、親戚などを含めるとだいたい100名ほどの方々に観てもらいました。僕にとっても、最初に彼らに見せるということが重要でしたから。彼らは企画にもシナリオにも事前に同意してくれてはいましたが、やはりできあがった作品を観たときは、すごく感情を揺さぶられたようでした。というのも、彼らにとってはつらい経験をふたたび体験するような時間だったので、動揺もしていたと思います。ただ、数回観てくれた子どもたちは、この作品ができてよかったと言ってくれました。なぜなら、これまでメディアでは何度も自分たちの父親が母親を殺した犯人だと言われてきて、そのたびに弁護してきたが、もうそれをしなくてもいいんだと思ったからです。つまり、この作品にリレーのバトンを渡すことができたんだと。そんなふうに、ありがたく受け止めてくれているようです。―関係者のみなさんが、好意的に作品を観てくださってよかったですね。監督いや、それが妻の愛人だけが、この作品が公開禁止になるように、僕らを訴えたんですよ……。それによって僕らも法廷に出ることになりましたが、最終的には彼が敗訴となりました。というのも、これはでっちあげからどういうふうに冤罪が作り出されていくのかというプロセスを描いていて、一般的にも意味がある作品であり、公開してしかるべきだと司法が判断してくれたからです。司法でも間違えることはありますが、それがどうやって生み出されているのかというのをこの作品では見せることができたと感じています。いまでは、そんなふうにとても有効な作品としてとらえられているのでよかったです。タイムリーな作品として観客に訴えかけるものになった―賢明な判決だと思います。実際本国では、多くの観客を動員しヒットとなりましたが、監督がこの作品がいいものになると確信した瞬間はいつですか?監督僕は初めて裁判を傍聴したとき、「フランスの司法はこんなものなのか?」と椅子から転がり落ちそうになるくらい大きな衝撃を受けたんです。そのときにこれは映画にしなければいけないと思いましたし、観客にもいかにフランスの司法制度が機能不全なのかというのをちゃんと知ってほしいと感じました。そう決意したときから、この作品は観客にも自分が受けたような大きな衝撃を与える作品になるだろうという確信はあったと思います。今回の事件は、マスコミが騒ぎ立てた噂が蔓延することによって世論が構成されていったところがありましたが、20年前に比べるといまのほうがSNSも普及していますよね。そういう意味ではいまのこのタイミングのほうが、よりタイムリーな作品として訴えかけるものになるだろうなという確信は強くなっています。―本作では、裁判が題材ではありますが、SNSの普及や過剰なマスコミ報道などによって、現代では誰もが被害者もしくは加害者になるうる危険性があるというのもその先に感じました。私たち個人がどういう意識を持たなければいけないとお考えですか?監督それは現代が抱える非常に大きな問題ですよね。僕の立場からしか答えることはできませんが、この映画を撮って、さまざまな経験をするなかで、いまはSNSにはコメントをしないと決めています。SNS自体はすごく好きですが、自分があまり知らないことに対してコメントすることはよくないと、自分に禁じているんです。SNSを悪者扱いするつもりはないですし、社会的にいい面もありますが、実際トランプ前大統領がTwitterを乱用したことによって、民主主義が脅かされるという事態も起こったばかりですからね。複雑な部分があるこの問題に対してひとつの見解を述べることは容易ではないですが、現段階ではそのような対策を僕は取るようにしています。次々と真実が明らかになる展開に息を飲むスピード感のあるスリルと緊迫感に満ちた法廷バトルで、観る者を釘づけにする本作。いつの間にか疑惑と真実の狭間に引きずり込まれ、感情を激しく揺さぶられてしまうはず。監督の心からの訴えと俳優の熱演によって生み出された圧巻のラストシーンは必見です。胸のざわつきが止まらない予告編はこちら!作品情報『私は確信する』2月12日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開配給:セテラ・インターナショナル©Delante Productions - Photo Séverine BRIGEOT
2021年02月11日直木賞を受賞した大ベストセラー小説『ファーストラヴ』が、待望の映画化。豪華キャストとスタッフが集結して作り上げた“禁断のサスペンス・ミステリー”に、公開前から高い注目が集まっています。そこで、劇中で見せた鬼気迫る演技が話題となっているこちらの方にお話をうかがってきました。女優の芳根京子さん【映画、ときどき私】 vol. 355今回、芳根さんが演じたのは、父親を刺殺した容疑で逮捕された女子大生の聖山環菜。主演の北川景子さん演じる公認心理師の真壁由紀が、環菜との面会をきっかけに心の奥底に隠したはずの“ある記憶”と向き合っていく姿が描かれているため、物語のキーパーソン的存在でもあります。そこで今回は、本作に出演して得た新たな気づきやファーストラヴの思い出などについて、語っていただきました。―まずは、この作品のオファーを受けたときのお気持ちから教えてください。芳根さん堤幸彦監督の作品で北川景子さんや中村倫也さんとご一緒できる喜びとやりがいのある役をいただけて、大きな声で「やったー!」と言ってしまったほどうれしかったです。でも、読めば読むほど本当に重要な役であることに気がつき、ワンテンポ遅れて衝撃が走った感じでした。―複雑なキャラクターでもあるため、演じるうえで難しさを感じることもあったのではないでしょうか?芳根さん私が演じた環菜は周りを翻弄する役どころだったので、役作りの過程で気がついたのは、私の演じ方次第で作品の“色”が変わってしまうかもしれないということ。そう考えるようになってからは、プレッシャーで怖くなってしまうこともありました。でも、監督とたくさん相談しながら環菜を作りあげられたので、普段だったら感情だけで演じていたようなシーンも、見え方を意識して、頭を使って演じることに。これまでとは違う達成感を味わうことができたと思います。北川景子さんは、心が安らぐ大好きな先輩―そんななかでも、忘れられない出来事はありますか?芳根さん印象に残っているのは、北川さんと2人で面会室にいる後半のシーン。リハーサルの前にした段取りの時点で、北川さんの目を見てお芝居をしていたら、下に水たまりができるくらい涙があふれて、ボロボロに泣いてしまったことがありました。そのあと監督に「もう一回同じことをやれる自信がありません」と伝えたら、「ごめん、もうカット割り全部消しゴムで消しちゃったから同じことしてくれないと困る」って言われてしまって(笑)。「困ると言われても困る!」と思ったんですけど、それに応えるのが私たちの役割ですから。内心は不安でドキドキでしたが、北川さんの目を見たら、やっぱりあふれるものがあったので、乗り越えられました。―北川さんとご一緒されてみて、印象に残っていることはありますか?芳根さん実は、その時期は仕事でも私生活でも、モヤモヤして悩んでいたんですけど、特に誰にも言わずに過ごしていました。でも、そんななかで唯一そのことに気がついてくれたのが北川さん。そういう部分は、劇中の役の関係性と重なる部分はあったと思います。―実際、北川さんからはどのような言葉をかけられたのかを教えていただけますか?芳根さん 撮影が終わったあと、お食事に行かせていただいたときに「芳根ちゃん、大丈夫?悩んでるんじゃない?」と声をかけられて、私の心が全部見透かされているのかなと本当に驚きました。それは北川さんの観察力の高さや人柄でもあると思いますが、本当にパワーのある方なんですよね。北川さんにはたくさんのことを引き出していただきましたし、心が安らぐ瞬間を作ってくださる大好きな先輩です。あのときの私以上に、環菜を演じられる人はいない―女優の先輩としても学んだことは多かったですか?芳根さんそれもたくさんありました。プライベートでお会いしたときにも、「こういう女優さんになりたい」とか「こういうお芝居をしたい」とか、いつもいろいろなお話をさせていただいています。北川さんがいまの私の年齢の頃にどうだったかというお話も聞かせていただいたりしたので、おかげで将来に対する不安がなくなりました。―ステキな関係ですね。ただ、今回は精神的につらい役どころだったと思いますが、私生活に影響を与えることはありませんでしたか?芳根さんこの役はけっこう引きずりましたが、同時期にコメディのドラマを撮影していたので、それに救われました。どれだけ環菜でつらい思いをしていても、翌日には別の現場で周りの方たちが笑わせてくださっていたので。そういった感情の差も、今回はすごくおもしろいなと思ったところです。ただ、環菜のことを考えるだけで涙が出てしまうようなことが続いていたので、撮影が終わってから環菜とは距離を取るようにしました。それほどいままでで一番引きずった役だったかもしれないですね。―ご自身の女優人生においては、どのような作品になりましたか?芳根さんもちろん、どの作品も出会えてよかったと言えるものばかりですが、そのなかでもこの作品は特にその思いが強かったと思います。ちょうど悩んでいた時期だったからこそできた部分もあるので、あの時期の私以上に環菜を演じられる人はいないと言いたいくらい。いまの私にもできないかもしれないですね。でも、そういったことも含めていろいろなことを気づかせてくれた役なので、この先も続いていく芝居人生においてたくさんのことを教えていただきましたし、改めてお芝居の楽しさを味わうこともできました。ここから自分の人生が変わると感じられた作品にもなったと思います。これから観客の反応もひとつずつ吸収していきたい―そのほかの共演者の方とのやりとりで、思い出に残っていることはありますか?芳根さんまず中村倫也さんは、本当にこの役にぴったりな方だなという印象でした。監督からは話す相手が女性か男性かで変えてほしいと言われていたので、男性のときには少し媚びを売るような甘ったるい感じを出していますが、中村さんがステキな方だからこそ、演じやすいと感じる部分は多かったです。あと、お母さん役の木村佳乃さんは、現場にいらっしゃるとすぐにわかるくらい本当に明るくてパワーのある方だなと。とても気さくにお話してくださったので、それもうれしかったです。ただ、映像で木村さんを見たときは、あの恐ろしさにゾッとしました。でも、観る人にそういう恐怖心を与えてしまう木村さんの演技がすごく好きですし、私もいつかああいう役をやってみたいです。―法廷のシーンも非常に緊迫感がありましたが、撮影は大変でしたか?芳根さん実はあのシーンでも、面会のときと同様に脚本には泣くとは書いてませんでしたが、それでも込み上げてくるものがあり、独白のシーンでは段取りのときからすごく感情があふれてしまうことも。気持ちが落ちてしまうときもありましたが、監督が私に向かって冗談を言ってくださったりしたので、そういう監督の明るさにとても救われました。―この作品を経て、ご自身で成長を感じる部分などがあれば教えてください。芳根さん特殊な役でしたが、ここまで感情が持っていかれる役に出会えたことは奇跡だと思いました。自分としてはやり切っていても、実際に環菜を見た観客の方々の反応から得るものもあると思うので、それをひとつずつ吸収していきたいです。環菜を演じたことで、すでに自分からにじみ出ている部分もあるかもしれませんが、それが何かを言葉にできるようになるまではもう少し時間がかかるのかなと。それくらい受け止めるのがつらい役でしたし、いまもまだ一緒に生きている感覚なのかもしれません。いつか思い出として振り返れるようになったら、自分でも成長がわかるようになるのかなと思っています。仲良しの母が心の支えになっている―作品が終わると、いつもお母さまとお出かけするそうですが、今回はどのように過ごされましたか?芳根さんいつもだったら、「終わったー!」といって母と外食に行くんですけど、その時期はすごく忙しかったのと、作品が重たかったこともあって、家で母とずっと一緒に時間を過ごしました。物理的にも体力的にも余裕がなかったこともありますが、そういうこともいままではなかったので、この役に出会えたのは運命だったなと改めて感じています。―この作品は、母と娘に関する話もありますが、そういったことについても話されましたか?芳根さん私の母も涙もろいので、原作を読んだときに「環菜ちゃん……」と言って泣いていましたが、私が試写を見たあとに「すごく救われたし、環菜の未来が楽しみに感じられたよ」と伝えたら、また泣いてしまって(笑)。母は私が朝ドラに出演するようになったときくらいから、娘ではなくちゃんと役で見ることができるようになったと言ってくれて、純粋に作品を楽しんでくれているので、この作品もどんな感想を言ってくれるのか楽しみです。私にとっては母が心の支えであり、生きがいと言っても過言ではないほど本当に仲良しなので、母の存在に救われています。私の幼なじみからも、「こんなにポジティブで、パワフルで、明るい人はいままで見たことがない」と言われているくらいの母なんです(笑)。―芳根さんにとって、いま一番幸せを感じる瞬間はどんなときですか?芳根さん最近飼い始めたフェレットと家で一緒に遊ぶのが毎日の楽しみですね。私が出かけるときにいつもかわいい姿を見せてくれるんですけど、それを見るだけで「早く帰ろう!」と思って癒されます。―日常生活で欠かさずにしていることはありますか?芳根さんいままで美容に無頓着で、メイクもスキンケアもほとんどしたことがなかったんですけど、最近はメイクさんや美容に詳しい友達といろいろな情報を共有するようになりました。特に毎日パックをするようになってからは、今日はどのパックにしようかなと選ぶのが楽しくて、「ああ、私って女子だなぁ」と思えてうれしくなります(笑)。自分のファーストラヴって何だろうと考えている―では、「ファーストラヴ」と聞いて思い出すことがあれば、教えてください。芳根さん実は自分の初恋の記憶がないので、母に聞いてみたんですけど、「わからない」と言われ、幼なじみには「多分、小学校6年生じゃない?」と言われたくらい「私のファーストラヴって何なんだろう?」と考えているところです(笑)。というのも、子どもの頃の私は人見知りが激しくて、母の後ろから顔を出しているようなタイプだったので、あまり感情を出すこともなかったんですよね。なので、自分でも忘れてしまいました……。―(笑)。ちなみに、いまラヴなものといえば何ですか?芳根さんいまはフェレットのことしか頭にないかもしれませんね。頼まれてもいないのに、マネージャーさんやメイクさんたちに毎日写真を見せてます(笑)。―かわいいですよね。それでは最後に、理想としている女性像や今後の目標があれば、教えてください。芳根さん私は、北川さんのような女性になりたいと本当に思っています。私が大したことない話をしても毎回ちゃんと答えてくださったり、優柔不断な私に的確なアドバイスをくださったり、あの美しさは心から出ている美しさもあるんだなと感じているからです。しかもそれでいてお母さんでもあるなんて、本当に憧れます。将来、私も結婚して子どもを持つかもしれないですけど、あんなふうになりたいなと。私もがんばろうと思って、最近北川さんと同じジムに通い始めました。ただ、一向に北川さんにはなれないので、次は何をしたら北川さんになれるのかを今度聞いてみたいと思います(笑)。インタビューを終えてみて……。仕事のことからプライベートのことまで、目をキラキラと輝かせて話す姿が印象的な芳根さん。この作品と北川さんとの出会いがいかに大きかったかをひしひしと感じました。誰もが釘づけになってしまう芳根さんの熱演をぜひお見逃しなく!心を揺さぶり、刺激する!先が読めない展開と環菜に翻弄されながら、たどり着く“衝撃の真実”。気がつけば、誰もがさまざまな問いと向き合わずにはいられないはず。あなたも心の奥にある隠し続けてきた“愛の記憶”を呼び起こしてみては?写真・北尾渉(芳根京子)取材、文・志村昌美スタイリスト:藤本大輔(tas)衣装協力:beautiful people(beautiful people 青山店 03-6447-1869)/JIMMY CHOO(JIMMY CHOO 0120-013-700)/talkative(talkative 03-6416-0559)ストーリーアナウンサー志望の女子大生・聖山環菜が、著名な画家である父を刺殺するというセンセーショナルな事件が発生。しかも、「動機はそちらで見つけてください」という環菜の挑発的な言葉が、世間をますます騒がせてしまう。その後、事件を取材することになった公認心理師の真壁由紀は、夫の弟で環菜の弁護士でもある庵野迦葉とともに、彼女の本当の動機を探ろうと面会を重ねることに。二転三転する供述に振り回されながらも、由紀は過去の自分と似た“何か”を感じていた。そして、由紀が封印していた記憶をさらけ出したとき、環菜がついに驚くべき真実を語り始めることに……。胸がざわつく予告編はこちら!作品情報『ファーストラヴ』2 月11 日(木・祝)より 全国ロードショー北川景子中村倫也芳根京子板尾創路石田法嗣清原翔 ・ 高岡早紀木村佳乃窪塚洋介監督:堤幸彦脚本:浅野妙子原作:島本理生『ファーストラヴ』(文春文庫刊)音楽:Antongiulio Frulio主題歌・挿入歌:Uru「ファーストラヴ」「無機質」(ソニー・ミュージックレーベルズ)配給:KADOKAWA製作:『ファーストラヴ』製作委員会制作:角川大映スタジオ/オフィスクレッシェンド公式Twitter @firstlove2021公式Instagram @firstlove2021 #ファーストラヴ© 2021「ファーストラヴ」製作委員会写真・北尾渉(芳根京子)
2021年02月08日良くも悪くも、人生や自分自身のアイデンティティーを語るうえで誰にとっても欠かせないものといえば“記憶”。そこで、記憶にまつわる心理サスペンスを描いた話題作『記憶の技法』をご紹介します。公開を控えたいま、こちらの方にお話をうかがってきました。写真・黒川ひろみ(石井杏奈)石井杏奈さん【映画、ときどき私】 vol. 345ダンス&ボーカルグループ「E-girls」のパフォーマーであり、女優としても幅広く活躍している石井さん。劇中では、奇妙な記憶喪失癖に悩まされ、自身の過去に関する“ある衝撃の事実”と向き合うことになる女子高生・鹿角華蓮(かづのかれん)を繊細に演じています。今回は、本作を経て得たものや新たな一歩を踏み出そうとしている現在の心境などについて、語っていただきました。―主人公の華蓮は、内に感情を秘める部分が多い難しい役どころだったと思いますが、どのように役作りをされましたか?石井さんお話をいただいたあと、台本の前に原作を読ませていただきましたが、華蓮が自分とはあまりにも違う環境で生きてきたキャラクターだったので、最初は苦しくて自分のことのように思うことができませんでした。ただ、台本を読む過程で気がついたのは、華蓮にあるのはただ悲しいや辛いという感情だけではないということ。そこからは監督と話し合いながら、「明るくて強い女の子」という印象を入れるように意識しました。―本作の撮影は3年ほど前にされたということで、石井さんにとっては10代最後に撮影した作品だったそうですね。時を経てから完成した作品を観ると、当時とは違うことに気づかされることもあったのでは?石井さんそれはありました。撮影をしていたときはまだ子どもだったので、苦しい感情が大きかったですが、いま観ると、華蓮の持つ前向きさや強さの大切さに気づかされました。おそらくあのときは辛い現実を受け入れるのに必死でしたが、3年近い年月を経て、感情が変わっていったのだと思います。―自分とはまったく違う経験をしているキャラクターを演じることに、喜びを感じる部分もありますか?石井さんそうですね。ただ、同時に難しいなとも思います。もちろん、「難しい」の先に「楽しい」があるのもわかるのですが、今回はわからない部分のほうが最初は大きかったです。もっと上を目指したいという気持ちが強くなっている―そのためにどのような準備をしましたか?石井さんまずは「もし、自分の大好きな両親が本当の親じゃなかったらどうする?」というところから始めてみました。そしたらやっぱり辛いので、華蓮みたいには笑えなくなってしまいました。でも、そんな状況でも笑っていられるのが華蓮なら、それをどういうふうに受け入れようかと考えてみることにしました。難しさはありましたが、そのぶん終わったときはやりがいを感じることができました。―そういった気持ちがお芝居をするうえで、原動力にもなっているのかもしれないですね。石井さんそうですね。向上心も探求心も前より大きくなっているので、もっと上を目指したいという気持ちは日々強くなっていると思います。試写を見ていろいろと思うことはありますが、自分で悩みながらお芝居をすることがどんどん好きになっているようにも感じているところです。台本に書かれていることをするのは当たり前ですが、感情的になって涙があふれたり、自分の声じゃないような声が出たり、想像していたものを本番で超えることができたときはすごくやりがいを感じます。「ああ、神さまが降りてきてくれたんだ」と。そんなふうに心から思えたときにはやってよかったなと思います。あとは、家族や友達が自分の作品をきっかけに前向きになれたという話を聞くとうれしいですね。―そんななか、華蓮を演じたことでご自身が新たに得られたものはありましたか?石井さんこの役を演じたことで、強くなれた気はすごくしました。どうしようもなく涙が止まらないときもありましたが、「華蓮はこんな弱い子じゃない」と思いながら、一緒に強くなっていったというか、励まされた感じです。それが自分の成長にも繋がっていればいいな、といまは思っています。昔から何でも自分のことはひとりで決めるタイプ―石井さんも華蓮と同様に、大変なことに直面したときには逃げずに挑んでいくタイプですか?石井さんそうだと思います。ただ、私は辛いことがあったとき、そのときには全然気がつけないほうで、何年か経ってから「あのときは本当に辛かったな」と振り返ることが多いです。ひとつひとつを受け入れるのが遅いというか、私がちょっと抜けているだけかもしれないですが……(笑)。「もうダメだ」と考えてしまうこともありますけど、一回泣いたら終わりで、その次の日には「がんばるしかない!」という気持ちになるので、引きずらない性格だとは思います。―ということは、あまり周りには相談せずに、自分で解決されるほうなんでしょうか?石井さん事後報告はしますが、相談はしないです。というのも、決めるのは結局自分だと思っています。これは昔からですが、兄弟が多いことも影響しているかもしれません。もし自分のことを母に相談したら、兄、妹、弟みんなのことを全部聞かないといけなくなる母が大変だろうなと思って。そしたら意外と自分ひとりでも決められるのだなと気がつきました。それを小さいときから学んだので、自然と身に着いのだと思います。―すごいですね。華蓮は記憶が断片的に蘇るところがありますが、石井さんもフラッシュバックする記憶はありますか?石井さんよく出てくるのは、家族で毎年夏に佐渡島へキャンプに行っていたときの光景。メンバーが家族といるところを見たり、自分の家族のことを考えたりしたときに、なぜかキャンプに行っていたときの映像が浮びます。でも、実は懐かしい記憶を思い出すのはあまり好きではないです……。家族との時間や記憶ががんばる源になっている―どうしてですか?石井さん小学生のときは家族みんなでできていたことが、大人になるとできなくなってしまうのだなと思うと、悲しいというか、うらやましく感じてしまうからです。いまはみんなそれぞれ自分のことに時間を使うようになり、休みもなかなか合わないので、家族で毎年していた行事がどんどん減っているので。ただ、たとえば将来自分が家族を持って同じことができるようになったら、きっと思い出してもうれしいのだろうなと思うので、それは楽しみです。いまは「もうあのときみたいに、無邪気にはしゃげないのかな」と考えてしまって、少し寂しくなります(笑)。でも、いまでも家族とは数か月に1回くらい集まってみんなでご飯を食べに行ったりするので、キャンプには行けなくなってしまいましたが、家族との時間は、私にとってがんばる源になっています。―本当にご家族との大切な思い出が多いんですね。ちなみに、石井さんにとって一番古い記憶といえば?石井さん妹が生まれるときに、急に母が真夜中にいなくなって心細くなったことはすごくよく覚えています。あとは、私が5歳くらいのときに母の誕生日で、みんなでサプライズをしたこと。母がお風呂に入っている間に、机の上に緑のテープで「おめでとう」と書いて、真っ暗にしてからローソクに火をつけて驚かすというものでした。母の喜んだ顔をいま思い出しましたが、それは私のなかでも古い記憶のひとつですね。―それも素敵な記憶ですね。では、E-girlsとして活動しているなかで忘れられない記憶についても、教えてください。石井さんNHKの紅白歌合戦に初めて出演したときのことは、すごく印象に残っています。いままで家族で大晦日に観ていた番組だったので、感慨深かったですし、いつもとはまったく違う緊張感がありました。不安よりも、やりきりたいという気持ちが強くなっている―いま一番癒される瞬間といえば?石井さん愛犬と遊ぶこと。家で癒しが待っていると思うだけで、それが原動力になっています。あとは、サツマイモ。差し入れで大学芋とかスイートポテトをもらうと、それだけでウキウキしちゃうくらい大好きです(笑)。―いいですね!では、これから女優さんとして、今後期待していることは?石井さんこの作品を撮っている頃は高校生の役が多かったですが、最近は大学生役など、ここ数年でけっこう変わっています。なので、どんどんお仕事の幅が広がっていくことは、年を重ねるうえでの楽しみにもなっています。―日常生活でも、お芝居のために意識していることはありますか?石井さんありますね。たとえば、映画やドラマを見ているとき、純粋に楽しむというよりは「もし、自分が演じていたらどうするかな」「こんな役をやってみたいな」などいろいろ考えながら見るようになりました。あとは、普段の生活のなかでも、悲しいことも楽しいことも、お芝居に生かしたいという思いが根本にあるのを感じています。様々なことを経験して、貫禄のある素敵な女性になりたい―ちなみに、最近でやってみたいと思った役は何ですか?石井さんこれはずっと前からやりたいことなんですが、『ONE PIECE』がすごく好きなので、この作品で声優として出演したいです。通行人Aとか、一瞬挨拶するだけでも、何でもいいので、いつかできたらいいなと。自粛期間中に、全巻読み返して、映画も全部見返したのですが、そのときに改めて「この世界に入りたい!」と思ったので、それが目標です。―いつかその夢が叶うのを楽しみにしています。では、女性としての理想はありますか?石井さん結婚したり、子どもを産んだり、お母さんになったりと、これから先いろいろなステップがきっとありますよね?いまはまだわからないことが多いので、そういう役を演じるときにはYouTubeで研究しているんですが、それがすごく楽しいです。なので、そういうステップを経験しながら、貫禄のある素敵な女性になりたいと思っています。―それでは最後に、ファンのみなさんへ向けてひと言メッセージをお願いします。石井さん今後新たにいろいろな一面も見ることができると思うので、これからもずっと応援してもらえたらうれしいです!インタビューを終えてみて……。お話をしているだけで、こちらが癒されるようなオーラを放っている石井さん。穏やかな口調ながらも、その裏には女優としての決意と強い思いを感じることができました。今後、ますます幅広い役どころに挑戦されるなかで、どんな表情を見せてくれるのか楽しみにしたいと思います。記憶の奥にある“本当の自分”を探し出す!自分探しという青春ストーリーの側面を持ちながら、ミステリーとしても観る者をどんどんと引き込んでいく本作。思わず目を背けてしまいたくなるような驚愕の真実を前にしてもなお、勇気を持って突き進む華蓮の姿には、胸を引き裂かれるとともに生きる力をもらえるはずです。写真・黒川ひろみ(石井杏奈)取材、文・志村昌美ヘアメイク:八戸亜希子スタイリスト:粟野多美子シャツ¥14,000(Ameri/Ameri VINTAGE 03-6712-7887)パンツ¥19,000(ETRE’ TOKYO 03-6748-0071)ブーツ¥8,900(RANDA 06-6451-1248)ストーリー17歳の女子高生・華蓮は、楽しい友達と優しい両親に囲まれて何不自由なく暮らしていた。ところが、そんな穏やかな生活のなかで華蓮を悩ませていたのは、奇妙な記憶喪失癖。幼少期の記憶の断片が不意に脳裏をよぎり、しばしば意識が飛んでしまうのだった。そんななか、韓国への修学旅行のためにパスポート申請用の戸籍抄本を手にした華蓮は、家族に関するある事実を知ることとなる。一体、自分は何者なのか。成り行きで行動をともにすることになった孤独を抱える同級生・穂刈怜とともに、自分のルーツを探すため、福岡へと旅立つことに。しかし、そこには想像を絶する真実が待ち受けていたのだった……。追求したくなる予告編はこちら!作品情報『記憶の技法』11月27日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開配給:KAZUMO©吉野朔実・小学館 / 2020「記憶の技法」製作委員会
2020年11月25日日々いろいろな事件や事故のニュースが飛び込んできますが、その背景には人間のさまざまな感情が渦巻いているもの。そこで、ある事件をきっかけに、運命が一変してしまう人たちの姿を描いた注目作をご紹介します。それは……。超一級のサスペンス・ノワール『悪の偶像』【映画、ときどき私】 vol. 307クリーンなイメージで絶大な人気を誇る市議会議員のミョンフェ。ところがある夜、息子が飲酒運転によるひき逃げ事故を起こし、政治家としての危機に直面してしまう。揉み消し工作を実行するも、被害者の新妻であるリョナが行方不明になっていることが判明し、見つけ出そうと動き出す。いっぽう、被害者の父であるジュンシクは、リョナが妊娠していることを知り、何としても彼女を探し出そうとするのだった。そして、“消えた目撃者”の行方を追う2人の父親は、葛藤を抱えながら、後戻りできない道へと進み始めることに……。韓国でも実力派として知られるミョンフェ役のハン・ソッキュさんと、ジュンシク役のソル・ギョングさんがダブル主演を務めた話題作。そこで、作品の見どころなどについて、イ・スジン監督にお話をうかがってきました。韓国のイ・スジン監督2013年に『ハン・ゴンジュ 17歳の涙』で長編デビューをはたした際には、巨匠マーティン・スコセッシ監督から絶賛されたイ・スジン監督。今回は、長編作品2本目となる本作の完成までの道のりや現場での様子、さらには映画作りに対する思いなどを語っていただきました。―この作品は、「韓国社会で起きている事件や事故を誘発し、選択しているのは結局人間である」と感じたところから始まったそうですが、そのなかでも「ひき逃げ」というテーマを選んだのはなぜですか?監督これまで、ひき逃げを題材とした作品はたくさん撮られているので、観客のみなさんにとっては少し食傷気味のところもあるかもしれません。しかし、本来事故というものは故意的に起きるものではないため、事故を起こしたあとの行動が非常に重要なところですよね。もし、しっかりと対処していれば、ひき逃げにはなりませんが、何もしなければひき逃げになってしまうので、この差は運転手の選択にかかってくる事件だと思っています。つまり、この映画は、大枠で見ると、人の選択に関する映画であり、人がどんな選択をするのかによって起こる物語を軸としている映画なのです。そんなふうにひき逃げには本人の選択によって、状況が大きく変わるという側面があるので、今回のテーマにしようと思いました。―劇中では、事件によって生まれる“被害者の父親”と“加害者の父親”を中心に描かれています。その点に関してはいかがですか?監督まず、私の考えとして、人間というのは、もともとは“善なる人”。つまり、ミョンフェも最初は善人であり、善人として人生をスタートしたのだと思っています。しかし、それがいろいろな夢や信念、さらに欲望を持つなかで、一線を越えてしまうんですよね。いっぽう、事件に巻き込まれてしまうジュンシクは被害者ではありますが、息子に対する愛情が強いがゆえに、ある条件と交換でリョナと息子を結婚させ、さらに時間が経つにつれて、息子の違った顔、つまり息子も加害者側の人間であったという一面を知ることになります。ミョンフェとの関係でみるとジュンシクは被害者ですが、リョナとの関係を考えると、彼もまた加害者と言えるのではないかと思ったので、そういった関係性を見せたくて、加害者と被害者という設定にしました。環境が人をどんなふうに変えるのか見せたかった―今回は、いずれも見事なキャスティングだと思いましたが、最初は意外にもハン・ソッキュさんにジュンシク役をお願いしようとしていたそうですね。ただ、ご本人がミョンフェを演じたいとおっしゃったのだとか……。監督そうなんです。具体的にキャラクターの何に惹かれているかということには触れていませんでしたが、以前からまさにこういうキャラクターを待ち望んでいたと。特に、いまこの時期に演じてみたい役だとおっしゃっていました。―ちなみに、ジュンシク役のソル・ギョングさんも実はミョンフェを狙っていたんですよね?監督もしかしたら、ミョンフェのほうが、見た人が理解しやすいキャラクターだと思ったからではないでしょうか。ミョンフェは感情の起伏がすごく大きいですが、けっこうわかりやすいですよね。逆にジュンシクのほうは感情を隠す部分がありますので、そういう意味でミョンフェのほうが感情の表現的に演じやすいと思ったのかもしれないです。―また、チョン・ウヒさんが演じたリョナも、かなりインパクトのある役どころです。彼女の登場で一気に展開も変わりますが、作品のなかで彼女にどのような役割を持たせようと意図されていたのでしょうか?監督リョナという人物を通して、私は「環境が人をどんなふうに変えるのかを見せたい」と思っていました。人の性格まで環境が作るのではないか、と思えるくらい環境は大事なものですから。だからこそ、厳しい環境で育ったリョナは本当に恐ろしい人物。まったく怖いもの知らずで、やられたら倍で返すくらいの激しいキャラクターとなりました。この映画は、前半は2人の父親の物語でどんどん展開していきますが、後半になってリョナが登場すると、そこからガラリと映画の構図が変わります。そういう作りにしたいという意味もあり、これほどまでに強烈なキャラクターのリョナを登場させる必要がありました。楽しかったけど、つらい現場でもあった―現場の雰囲気はどのような感じでしたか?監督もう撮影が終わって1年以上が経ちますが、振り返ってみるとにぎやかで楽しかったなと思います。ただ、いっぽうでは映画と同じように重みのある現場、つまり大変なつらい現場でもありました。その一番の理由は天候。本当に天気に恵まれなくて、非常に苦労したのを覚えています。―撮影は、半年間にわたって行われたそうですが、俳優たちとのコミュニケーションを取るうえで大事にしていたことはありますか?監督誰もが映画に対する強い思いを持って臨んでくれましたし、特にメインの3人は本当に情熱的だったので、コミュニケーションを取るうえで難しいことはまったくありませんでした。彼らは私にとって本当に大きな力になってくれましたし、最大の支持者であったとも思います。―そのお三方を演出するうえで、監督から具体的にお話されたことがあれば、教えてください。監督私は事前に台本の読み合わせやリハーサルに時間を多くかけるタイプなので、撮影に入る前にしっかりと話し合いをしました。みなさんベテランの方々ですし、特別たくさんの演出をしたわけではないですが、現場でのやりとりを挙げるとすれば、ハン・ソッキュさんから「この感情表現はちょっと強すぎますか?もう少し弱めますか?」と聞かれたときに、抑えた表現のほうが好きだったので、そういった要求を出したことがあったくらいです。―では、いま振り返ってみて、完成するまでで一番大変だったのは、どのあたりですか?監督まずは、先ほども話した天候。あとは、スケジュールとロケハンにも苦労しました。というのも、撮影が始まる直前になっても、撮影場所が決まっていないところが多くありましたから。そのため、撮影中も撮り終えたらすぐにロケハンに行くという状況が続き、本当に大変でした。自分自身の個性を生かして作品を作ることが大事―現在、韓国映画では多様性に富んだオリジナル作品が次々と生み出されており、評価も非常に高いですが、監督が思う“韓国映画界の強み”とは何だと思いますか?監督私自身はよくわからないですが、やはりいま指摘してもらった多様性ではないかと思います。商業映画よりもインディーズ映画のほうがよりオリジナリティあふれる傾向にあると思いますし、映画が大好きな監督の卵たちが熾烈に競い合いながら準備していることも、大きく影響しているのではないでしょうか。―「素晴らしい監督はたくさんいるが、ポン・ジュノ監督のあとに続く次の世代が育っていない」という声もあるようですが、監督はどのようにお感じになりますか?監督そうですね。ただ、誰もがポン・ジュノ監督みたいになれるわけではないですし、全員がポン・ジュノ監督みたいになってもダメだ、と私は思っています。もちろん私もポン・ジュノ監督は好きですが、映画監督というのはやっぱり本人のカラーがあり、その人にしか描けない物語、そして自分自身の個性を生かして作品を作るのが一番。そういうものを映画にするということが、大事なことですよね。―では、監督にとって映画作りのモチベーションとなっているものとは?監督実は、私はいままで「これからも映画を作り続けよう」とか「たくさんの映画を作ろう」といった大きな夢を抱いたことはありませんでした。もしかしたら、いまでもそういう夢はないのかもしれません。ただ、どんな瞬間も、どの作品でも、「いま撮っている作品が最後かもしれない」という思いで作っています。おそらく今後もそういう思いは変わらないでしょうね。この作品は、私にとって長編2本目の映画ですが、3本目を撮ることになっても、同じように「これが人生の最後の映画になるかもしれない」という気持ちで撮ると思います。次も、これが最後になってもいい思えるような映画になったらいいですね。―次回作も楽しみにしています。それでは最後に、日本の観客へ向けてメッセージをお願いします!監督観客のみなさんには、ここに登場するたくさんの人物のなかで、誰と一番自分が似ているのか、といったことをこの作品を通して考えながら観ていただけたらうれしいです。そして、選択の岐路に立たされた瞬間、もし自分だったらどういう選択をするんだろうかということを想像してご覧いただくと、より興味を持っていただけると思います。二転三転するストーリーから目が離せない!漂う緊張感に息を潜めつつ、予測できない展開に終始引き込まれてしまう本作。ひとつの選択によって人生が思いもよらぬ方向へと大きく変わっていく様、そして人間の奥底にある本性や闇を覗いてみては?衝撃が走る予告編はこちら!作品情報『悪の偶像』6月26日(金)より、シネマート新宿・心斎橋ほか全国順次公開配給:アルバトロス・フィルム© 2019 CJ CGV Co., Ltd., VILL LEE FILM, POLLUX BARUNSON INC PRODUCTION All Rights Reserved.
2020年06月24日