人気マンガ家・イラストレーターの和田フミ江さんがステキなおばあちゃんを目指すマンガ連載「ときめけ!BBA塾(ばばあじゅく)」第56話。今回のテーマは「サンクコスト」です。———————————————————————————————————–皆さんは「サンクコスト」という言葉をご存知でしょうか?サンクはThankではなくSunk。日本語に訳すと埋没費用。事業や行為に投じた資金や労力のうち、たとえ事業や行為の撤退・縮小・中止をしても戻って来ない資金や労力のことです。恥ずかしながら、私は最近初めてこの言葉を耳にしました。例えば、新しい洋服を買ったけど、全然似合わなくてまったく着なくなってしまったとします。もう二度と着ることはないけれど、返品できないので代金は返ってきません。この失った代金が「サンクコスト」です。これに関係して「サンクコストの誤謬(ごびゅう)」という言葉があります。二度と着ない服をしまい込んでいることで収納スペースが狭くなり、本来入るはずのものが床に散乱したり、収納スペースを増やすために棚など買ってさらにお金を費やしたりしてしまう。こういう判断の誤りを「サンクコストの誤謬」と言うそうです。私はケチなので、これがものすごく多いんです。例えばDVDをレンタルしたらつまらなかった。つまらないなら見るのをやめればいいのに、レンタル代がもったいないからと、最後まで見てしまう。その場合、DVDを見ている時間をほかのことにも使えたのに、自分の大切な2時間を無駄にしてしまうわけです。こんなこと、しょっちゅうあります。「もったいない」と物を大事にする気持ちも大切だけど、本当にその「もったいない」は正しいのか。これからは「サンクコストの誤謬」になってないかも、気を付けたいと思います。
2021年01月14日「彼氏からの体重制限」と題する男性からの投稿が、掲示板サイト「発言小町」に寄せられました。トピ主さんは昨秋から、交際中の彼氏に「デブ」「ブス」などと体重や見た目を批判され続けることに苦しんでいます。周囲から心配されるほど痩せた時期もあるそうで、「一日中食事のことを考えて生活する事が苦しい」「褒めてもらいたいから努力するのにどうしてけなされるのでしょうか」と悩める心情をつづっています。「彼に従うこと」は、本当にクリアすべき目標や課題なの?交際相手に体重制限をかけたり、「下剤飲んで」と言ってきたりするのは異常では……とのことですが、確かに第三者から見れば、彼の言動は相当に行き過ぎたものに映ります。それでも、トピ主さんはそんな彼の言動にNOと言えず、関係を絶てないからこそ苦しいのですよね。「体重に限らず彼に言われると私が悪かったのかという思考回路になってしまう」といった記述なども加味すると、トピ主さんは今、「彼が課してくる課題をクリアすること」が、ある種、日々の目標のようになってしまっているのではないかと推測します。他人の指示に従うのはしんどいことに聞こえますが、自分で考えたり決めたりしなくて済む分、見方を変えれば「ラクなこと」でもあります。強権を振るう存在の支配下にいると、人は抵抗することや自分で考えることを放棄し始め、「この人の言うことを聞いてさえいればいい、それが自分の仕事だ」などと思うようになることも知られています。のちの投稿には「私は彼の世界に染まっている」という記述もありますが、トピ主さんも少し、それに近い“思考停止”状態になっている可能性を感じました。彼の暴言を許容し、彼の望む見た目でいることは、本当にトピ主さんがクリアすべき課題なのでしょうか? 交際とは、そのような課題を伴うプロジェクトなのでしょうか。「女性は、悪く育った男性のリハビリセンターになってはいけません。(中略)あなたはパートナーが欲しいのであって、プロジェクトが欲しいわけではありません」。ジュリア・ロバーツさんのこの言葉を、ぜひ自分事として受け止めてみてください。自分の目標を見つけて、そこから満足感や達成感を得ていこう今の状況を抜け出すためには、夢中になれる「別の目標」を見つけることも役立つと思います。仕事に役立つ資格や語学などの勉強をしてみるもよし、何か極めてみたい趣味やお稽古ごとを探すもよし。何でも構いませんが、恋愛以外、つまり「彼の要望に応える」以外の、自分だけの目標を見つけることを勧めます。彼の指示でダイエットをすることで「褒められたい願望」を満たそうとするのではなく、自分が必要だと思うこと、好きだと思うことに力を注いで、達成感や満足感、喜びを得ていきましょう。「温室育ちで人を疑う事、世間を知らない」「昔から自分の芯がない事が短所」とのことですが、そういう自覚があり、それが今の苦しい状況を招いていると思うならば、自分の意思を軽んじず発する勇気を持ち、知りたい世界のドアを自分の手で開けていく姿勢を大切にしていきましょう。就活では第一志望への道をつかみ取れたとのこと。社会に出れば視野が広がり、新しい価値観にもたくさん触れられると思います。無力感を与えてくる存在は、「未来の人生」をも壊していくまた、彼は「お前はいつも中途半端でだらしがない」「総じてお前は女性らしくない」などとも批判してくるそうですが、そのように無力感を与えることで、トピ主さんの人生を支配しようとしている印象も受けます。彼は人一倍熱い家族や友人への想いがある、普段は心優しい……とのことですが、そのように硬軟とりまぜた言動をするのも、デートDVの典型的な傾向です。本当に心優しい彼氏ならば、「だらしない、死ね」など人として一線を超えるような言葉は決して言わないはずです。「これだけやってあげたのに(別れたら)私は報われないと考えてしまう」という記述も見られますが、これは「サンクコスト効果」と呼ばれる心理作用です。その銘柄が損を出していても、これまで投資した額を考えるとなかなか“損切り”ができない心理状態を指しますが、これを放置していると、損失はより拡大していくのが一般的です。つまり、このまま彼と付き合い続ければ、心に癒しがたい深い傷を負ったり、その影響で幸せな人生が送れなくなったり……等々、たとえ別れても、先々まで悪影響が及ぶ可能性も考えられます。両親や友人との関係など、彼といることで多くのものを失った……とのことですが、トピ主さんは「それでも彼と居続けることが、私にとって満足のいく人生なんだ」と胸を張って言えそうですか? 人を好きになり、一緒に過ごす中ではもちろん、嫌なことやつらい出来事に苛まれることもあります。しかしながら、幸福感や嬉しい気持ち、心地よさや安心感といったポジティブな感情よりも、悲しさや辛さ、苦しさが勝るようになったら、その関係は未来に繋がるよいものとは言えず、ご自身のために決断すべきタイミングに来ているようにも映ります。トピ主さんに決心ができさえすれば、実行のための力は、ご両親や友人たちもきっと喜んで貸してくれると思いますよ。一日でも早く心身の健康を取り戻し、笑顔で毎日を過ごせるようになることを願っています。(外山ゆひら)
2020年06月29日