キレッキレのダンスで魅了しつつ、ダンスで物語を表現する“無言芝居”で人気のダンスパフォーマンスグループs**tkingz(シットキングス)。通称シッキン。shoji(ショージ)、kazuki(カズキ)、NOPPO(ノッポ)、Oguri(オグリ)の4名でオリジナルの舞台を展開し、今秋、結成15周年を迎える。名だたるアーティストのダンス振付を300曲以上も手掛け、アメリカのダンスコンテストで2年連続優勝を果たすなど、今、数あるダンスグループの中で突出した高いダンス技術を持つ彼らが、それぞれの振付力や演出力を統合させて作り上げる舞台。それは、ダンス通もダンス初心者も、誰が見ても一緒にダンスの楽しさを体感できるように作られた、仲良し4人組のシッキン・ワールドだ。今回はコロナ禍で断念した『HELLO ROOMIES!!!』(ハロー・ルーミーズ)を、2年を経て上演。どんな舞台になるのか、kazukiとNOPPOに話を聞いた。s**t kingz 「HELLO ROOMIES!!! 」チケット情報「僕らの舞台は言葉やセリフがなく、アクティング要素をふんだんに盛り込んで表現するダンスパフォーマンスというイメージです」とNOPPO。シッキンの舞台には物語があり、音楽に合わせて踊るだけの通常のダンス公演とは一味違う。また今回の作品には、初めてメンバー以外のキャラクターが登場。それが主役の“A子”。映画監督を夢見ているが思い通りにいかず、日々モヤモヤした思いがA子の心の中に“ゴミ”(ルーミーズ)として溜まっていく。そんなある日、A子にチャンスが訪れるが…というストーリーだ。躍る楽曲は全曲オリジナルを目指す中、先駆けてこの舞台のコンセプトソング『心踊らせて』をMVと同時に配信。これまでは明るくハッピーな曲が多かったが、今回はグッとくるメッセージ性の強いもの。「大挑戦です」とkazukiは言う。「シッキンが本当に日々感じていることで、コメディではあるけれどテーマとしては深いマジメなものです」。4人はA子の仲間の人間やA子の心のゴミという抽象的な部分をダンスで表現し、演じる。「いろんな濃いキャラクターが入れ代わり立ち代わり、何人も出てきます」とNOPPO。「人生いろいろな選択がある中で、何を選択するか悩みながらどうやって自分らしく生きていくか。僕らのパフォーマンスが背中を押してあげられるきっかけになったらいいなと。だから最終的に『ここに来てよかった』と思ってもらえるような舞台にしたい」。作品は“超踊るコメディ”、笑いは存分に?「もちろん! まかせてください!!」と声をそろえるふたり。観客はA子に自らを投影しつつ、笑い、考え、前へ進む勇気をもらえるだろう。「観た人全員に楽しんでほしいと思って作っています。映画館へ行くような気軽な感じで観に来てください!」(kazuki)。公演は9月14日(水)~19日(月)東京・新国立劇場 中劇場、11月10日(木)~13日(日)大阪・森ノ宮ピロティホール、11月18日(金)~20日(日)愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホールにて。チケットは6月4日(土)一般発売。取材・文:高橋晴代
2022年06月01日s**t kingz(通称シッキン)は日本ダンス界のパイオニア的なパフォーマンスチームとして世界的に知られている、日本を代表するダンスグループ。それだけでなく、最近ではソロでも日本や韓国のアーティストの楽曲の振り付けやコンサートの演出などを手掛け、アーティストたちからもその実力が高く評価されています。今年は絵本『あの扉、気になるけど』も出版し、マルチな才能がますます開花。そんな彼らが今年12月に「メリーオドリマX’mas」を開催します。毎年、舞台をやり続けてきた彼らが満を持して、今回は踊りまくりなステージを見せたいと語る、その意味は?s**t kingzのみなさんがダンスに出会ったいきさつから、最新ライブへの意気込みまで、たっぷりお話を伺いました。写真・大内香織 動画・千葉 諭 文・尹 秀姫左から、NOPPO、kazuki、shoji、Oguri。--ダンスパフォーマンスはもちろん、アーティストの振り付けやコンサートの演出、ファッションショーへの出演、そして最近では絵本の出版など、活動の幅が群を抜いて広いs**t kingzさんですが、まずは4人のダンスとの出会いについて教えてください。kazuki 僕がダンスに初めて出会ったのは小学5年生くらいの頃。兄も今、ダンサーなんですけど、兄がダンスを始めたのを単純にまねしたのがきっかけでした。当時はダンスのことなんてまったく知らないのに、兄貴がダンスをやるならやろうかな、みたいな感じで始めたら、どっぷりハマっちゃって、今に至るという感じです。当時、たくさん習い事をやっていて、ピアノはサボりたくてしょうがなかったんですけど(笑)、ダンスだけはその時から一生続けていく予感がしていましたね。習い事以外でもやりたいと思っていたくらい、特別でした。NOPPO うちはkazukiとは逆で、習い事は1人ひとつまでと決まっていたんですよ。その当時は算数の塾に通っていて、妹が先にダンスをやっていたんですけど、そこに見学に行った時に楽しそうだったので、試しにやってみたというのがはじまりです。だからきっかけはダンスが好きというよりも、算数がいやだったっていう(笑)。ダンススクールでは友だちもすぐできて、そこからはどっぷりですね。shoji 僕は大学からダンスを始めたんですよ。もともとダンスはやってみたかったんですけど、高校生までは運動神経が悪かったので、やりたいとは言えなくて。大学に入った時、周りには誰も知っている人がいなかったから、ダンスをやるなら今しかない! と思ったのが始まりですね(笑)。完全に大学デビューです。Oguri shojiは最初、スキップすらできなかったもんね(笑)。shoji 自転車も、大学に入ってから乗れるようになったんですよ。いまだに運動神経が悪い名残は残ってて、右手でポイント(人差し指だけを立てる)すると、下に下げてる左手もポイントしちゃうっていう。運動神経のいい人は、別々にできるんですよね。Oguri 僕は、ちっちゃい頃からダンスに対する憧れだけは強かったですね。踊ってる人たちを見ながら、いいなあと思ったり、勝手にライバル視したりしてたんです。だけど、ダンスをどうやってはじめればいいのか、はじめ方がまったくわからなかったんです。身近にダンスしている人がいなかったし、ダンスってそれまでとは違う世界っていう感じがあるじゃないですか。でも、高校生の時に入っていた部活にも飽きてきて、近くにダンス・スタジオがあるのがわかって、ダンスに興味のない友だちを無理やり見学につれて行ったんです。そこで生で見る本物のダンスにハマりました。Shoji 1984年10月24日生まれ、神奈川出身、172㎝、A型。--先日、出版された絵本『あの扉、気になるけど』は、ダンスの動画がQRコードで読み込めたり、s**t kingzさんならではの工夫とNOPPOさんの個性あふれる絵がとても印象的でした。絵本を出版するに至ったきっかけは何ですか?shoji 去年、図書館がテーマの「The Library」っていう舞台をやらせていただいて、その流れで「いつかs**t kingzの本が図書館に並ぶ日が来たらいいな」という思いから始まったプロジェクトだったんですよ。普段、s**t kingzがやってる舞台にはセリフがないんですよね。セリフがないぶん、子どもから大人まで楽しめるし、言葉が違う人たちでも楽しめるというのがs**t kingzの舞台のいいところなんですね。そしてそれって、絵本と似たところがあるんじゃないかと思ったんですよ。絵本も、子どもから大人まで楽しめるし、大人になってから読むのと子どもの時とではまた感じ方が違ったり。s**t kingzとしては、どうしてもダンスを本の中に何かしらの形で落とし込みたかった、というのもありました。子ども向けのダンスではなく、大人が観てもカッコいいと思うダンスを身近で観てもらえたら素敵だなと思ったので、そういう作品を作ろうと思ってできたのがあの絵本でした。--絵本『あの扉、気になるけど』は、s**t kingzさんの結成やメンバーと重なる部分があるんですよね。NOPPO s**t kingzはもともとkazukiがメンバーを集めて、新しいことをやろうよということで、最初はユニットとしてスタートしたんです。でも一緒にやっているうちになんだかしっくり来て、いつの間にかチームになったという感じです。絵本で言うと、kazukiが猫で、僕がロバ、shojiがニワトリで、Oguriが犬。僕とkazukiはもともと幼なじみで、小学生の頃からダンスをやっていたのですが、絵本でも、猫がロバと出会うところからストーリーが始まります。僕らもその後、Oguriと出会って、shojiと出会って、一緒にダンスをするうちに、気づけば4人でいろんなことが達成できました。その過程は、大変だったというよりは、むしろ楽しく笑っていたら、いつの間にかできていたことが多くて。でもこれって、ひとりじゃできなかったよなっていうことがほとんど。そういう僕たちの話を絵本に込めました。絵本は、扉を開けたらまた新しい扉が現れ、なんだかわくわくするねというお話なんですが、実際に僕らもそういう感じでした(笑)。--ダンスに限らない幅広い活動は、絵本のテーマである“扉の向こうにある、まだ見たことのない世界”を、s**t kingzさんが見せてくれようとしているのかな、と感じました。s**t kingzさんがグループとして目指しているものは何ですか?shoji 基本的に、常にチャレンジャーでありたいという思いはありますね。その時々で出会った新しいものにチャレンジする人たちでいたいなと思っています。だから、あまり明確な目標は立てないようにしているんですよ。ゴールを決めちゃうと、そこしか見えなくなってしまうので。それこそ絵本をを出す時も、誰が絵を描く? ってなった時、他の3人がなんとなくNOPPOかなと思って黙ってたら決まったんです(笑)。最初は無茶ぶりかなと思ったけど、絵本を描いたことで、NOPPOのアートな側面が開花するきっかけにもなったりして。だから、その時その時の出会いを大事に、そこから受けた刺激でさらに新しい扉を開けていく、そんなチームでありたいなって思いますね。Oguri 1987年1月6日生まれ、東京出身、172㎝、A型。--先日は「True Colors DANCE -No Limits-」でNOPPOさんが講師を務めたワークショップも開催されました。NOPPO 高校生の頃からダンスを教えるようになって、キッズの教室をもたせてもらったんですけど、それからしばらくはキッズに教える機会がなくて。僕は子どもを教える時は、僕も遊んじゃうんですよ(笑)。楽しんじゃうっていうか。子どもって、言葉で教えるとずっとキラーパスを受けてるみたいな感覚になっちゃうんですよね。だから、キッズからも発信できるようなクラスになったらいいなと。言葉だけでなく、ダンスで触れ合えるようにしたいなと思って、僕が動いたらまねしてという感じで、あんまりしゃべらないようにしています。僕らは海外でもワークショップをさせてもらっていて、最初の頃はどう教えていいかわからなかったけど、ジェスチャーは伝わるんだなっていうのがわかって、その時の経験は今も役に立ってますね。--みなさんがダンスをしながら感じた、ダンスのここが面白い! というポイントは何ですか?kazuki いろいろあるなあ(笑)。Oguri 僕は音楽も好きなので、好きな音楽で踊っている時の幸福感がすごく好きですね。自分が好きな音楽で、好きなように踊っている人を見るのも好き。その人が好きな音楽を目でも感じられる気がするんですよね。音楽って、耳で感じるものだけど、ダンスを通じて、目でも感じることができる。いろいろな刺激を同時にもらえる感覚になれるのって、ダンスならではだなと思いますね。shoji ダンスって、共感できる瞬間を作りやすいと思うんですよね。たとえば、ダンサーは失恋の辛さを踊りで表現したとして、観ている人からすれば、踊っている人に何が起きたかはわからないじゃないですか。でも、自分が持っている悲しい思い出を振り返って、勝手に共感できるんです。だけどもしダンサーが「私は昨日、彼氏と別れて……」と話したとしたら、そこまでの共感は生まれないと思うんですね。ダンスって、単純に感情としてその人の表現を受け取れて、こっちで勝手に解釈して、悲しいとか切ないとか感じることができるんです。言葉がないぶん、感情だけでやり取りできるので、表現する側としても受け取る側としても、すごく楽しい。人によって解釈が違ってもいい、そこがダンスの楽しいところです。NOPPO ただ流行しているからやってみよう、というスタンスのダンスもいいけど、本当にダンスが好きなら、努力してみるというのもいいですよ。次はこういうことをやってみようとか、この人の動きはなぜ素敵なんだろうとか、この曲のこの歌詞を表現してみたいだとか、ダンスのことを考えるだけで感性も育つし、ダンスをするための身体もできあがってくるし、人間的にも成長できると思うんです。ダンスは遊びでもあるけれど、突き詰めて踊ったら、本当に素晴らしいダンスが生まれるんです。そういう面もあるんだって知ってほしいですね。kazuki ダンスをやっていない人にダンスのよさを伝えるとしたら、ダンスには正解がないということかと。僕らはダンスを仕事にしているので、ダンスについて考えなきゃいけないことが山ほどあるんですけど、ダンスってひと口に言ってもいろいろなジャンルがあるんですよ。それに、何をしてもいい。ダンスをはじめる最初の一歩を踏み出すのは大変かもしれないけど、踏み出してみたら後は正解がないから、何をしてもいい。僕らだって、たぶん自己満足の延長でここまできたと思うし。自分が楽しければそれでいい、それくらいの、ふわっとした感じが好きです。楽しみ方がいくらでもあるから。ダンスに何を求めるかによって、悩みも尽きないけど、それが必要ない人がいたっていいし。ひとりで踊ってもいいし、友だちと踊るのも楽しいし、人前で踊って歓声をもらえたら達成感につながるだろうし。作品を表現してみたいんだったら自分で考えるのも楽しいだろうし。いろいろな楽しみ方が無限にあるんです。自分の好きなやり方でダンスをすれば、全員楽しくダンスできるんじゃないかなと思いますね。Kazuki 1986年9月24日生まれ、大阪出身、168㎝、B型。--12月には待望のダンス・ライブ「メリーオドリマX’mas」が開催されます。史上最高に踊りまくり、とのキャッチフレーズがついていますが、どんなライブになりそうですか?shoji とにかく踊りまくる! というテーマなので、今から自分たちを追い詰めています(笑)。今までいろいろな舞台をやらせていただいて、ストーリーの中でパフォーマンスをしてきたんですけど、今までのステージは、言うなれば、1時間半という時間とストーリーがあるからこそ面白いダンス、という感じでした。でも今回は、そういうことをすべてとっぱらって、とにかくいろいろなs**t kingzのダンスを観てもらおうと思って。勢いのあるものから、ハッピーなものから、セクシーなものから、とにかくs**t kingzのダンスのよさをみなさんに伝える、そういうライブにできたらなと思っています。ダンスに興味のない人にはとっつきにくく感じられるかもしれませんが、s**t kingzは常にどうやってみなさんに楽しんでもらえるかを考えて作品を作っているので、安心して観に来てください!NOPPO この舞台をやったら、こういうのはしばらくやらないんじゃないかな。NOPPO 1986年8月19日、神奈川出身、188㎝、A型。shoji たとえば、30分で1つのコントを見せるか、3分のコントを10本見せるかって、同じお笑いでも全然違いますよね。30分だからこそ面白いものもあるし、3分で10本やれば別のものが観られる面白さもある。今回のステージは後者ですね。ダンスって言われると全部同じじゃないの? って思われるかもしれないけど、s**t kingzってこういうダンスもできるんだ!? っていうのを短い時間でたくさん見せる、そういうライブになるんじゃないかなと思います。僕たちにとってもかなりの挑戦になると思うので、ぜひ見届けに来ていただきたいです!kazuki 今回のステージは、ようやくs**t kingzとして1時間半踊れるっていう感じなんですよ。これまでの舞台は役があって、なんとなく設定を守りながら踊ってきたので。でも今回は、s**t kingzの4人としてガツンとステージで1時間半踊れるんです。意外に今までなかったことなので、そういう意味で、本当に踊りまくりですね!Oguri みなさんに笑顔になってもらって、僕らもみなさんの笑顔をクリスマス・プレゼントとして回収するつもりでいます(笑)。shoji プレゼント交換みたいなね(笑)。当日は一応、席はあるんですけど、ライブと銘打っているだけあって、ある曲ではみんな立ち上がってもらって、みたいなこともできたらいいなと思ってます。みなさんの応援のおかげで、早くも追加公演も決まりました! こんなことになるとは僕たちも思ってなかったので、早めのクリスマス・プレゼントをもらった感じですね。このお返しを、ライブでできたらいいなと思っています!s**t kingzさんのコメント動画はこちら!
2019年10月18日ダンスで世界を魅了する男たち。キャラクターもダンススタイルも違う4人が世界に名を轟かすチームとして活躍するs**t kingz。なんとこのたび、新感覚の<踊る絵本>を出版!4人の個性が反映された4匹の動物たちの冒険譚。三浦大知さんやSHINee、EXOなどの振付を手がけるほか、エルメスのファッションショーに出演しパフォーマンスを行うなど、日本のみならず世界から注目を集めているダンスパフォーマンスグループ・s**t kingz(通称・シッキン)。いまやダンスという枠組みにとらわれることなく、オリジナル&フリーダムな活動スタイルを開拓する彼らが、また一歩新たな扉を開いた。「昨年、シッキンとして『The Library』という舞台のツアーを行ったんですね。図書館を舞台にした公演だったこともあって、いつか僕らの本が図書館に並んだらいいねと話していたのが実現した形です」とは、リーダーのshojiさん(以下、s)。そこから、どんな本を作るのが最もシッキンらしいかを4人で話し合う中で辿り着いたのが絵本。「最初に絵本っていうワードが出た時に、めちゃくちゃしっくりきたんです」(kazukiさん・以下、k)。「写真よりも絵で、漫画よりもっとシンプルな言葉で伝える絵本って、セリフなしのシンプルなものを目指している僕らの舞台と近い気がしたんですよね」(NOPPOさん・以下、N)そして完成したのが、『あの扉、気になるけど』。グリム童話の「ブレーメンの音楽隊」をベースにした今作は、いつも楽しそうなことを探し歩いているネコが、ロバ、犬、ニワトリと次々出会い、彼らを誘って、丘の上に見える扉の向こうを目指し冒険に出かける。実はこの物語には、それぞれダンサーとしてソロで活躍していた4人がシッキンを結成するまでの経緯が重ね合わされている。「最初にダンスチームを作ろうと4人を集めたのがkazukiなんですよ。僕らが何かで迷った時に、『やれるんじゃない?』って、前進する言葉をくれるのもそう。まさにこの作品に登場するネコそのもの」(Oguriさん・以下、O)。「普段も気ままで自由で、kazukiはそこもネコっぽい。Oguriは真面目で、まさに犬だし、NOPPOはのんびり屋さんのロバにぴったり。僕は臆病な性格で、ずっとダンスをやりたいと思いながら決断できずにいた人。メンバーに背中を押されていまがあるんですけれど、ニワトリには、そんな自分が反映されている。4人がそのままキャラクターになっているんです」(s)普段の舞台を作るのと同じように、4人でざっくばらんにアイデアを出し合い、そこに編集者や構成作家が加わって、ストーリーを完成させていったそう。「自分ひとりではできないと思っていたことが、ネコから『なんでやらないんだ?君ならできるよ』って言葉を投げかけられて、仲間とならやれるかもしれない、という方向に気持ちが変わっていく。仲間っていいなって思うし、食わず嫌いでいるばかりじゃなくて、ちょっと頑張ってみようかなって思える。少しでも、ポジティブに明日に向かう支えになってくれたらなと思います」(N)そんなストーリーをより魅力的に見せてくれているのが、ユーモラスな中に素朴な優しさを感じさせる絵の存在。これはメンバーのNOPPOさんの手によるものだ。「以前から絵が上手いのは知っていて、誰に絵をお願いしようかという時に、『NOPPOが描きますよ』って軽いノリで言ったんです。そしたら、実際に上がってきたものが、すごく素敵な絵で驚きました。これは僕の個人的な感想ですが、絵に愛があるんで、NOPPOはうちらのこと大好きなんだと思います(笑)」(s)そんな厚い信頼を寄せられているNOPPOさんだけれど、本人は当初、「無茶振りだと思った」と苦笑。なにせ、「絵の具を使って描いたのは小学生以来」だったとか。「僕らが見ていたのは、NOPPOがホワイトボードに描いた落書きなんで、確かに無茶振りといえば無茶振りだったかも(笑)」(k)しかし、「実際に描き始めたら楽しかったし、絵を描くのが好きなんだとあらためて気づいた。背中を押されてやってみたら、思ってもみなかった自分の世界が広がった。まさにこの絵本の話の通りなんですよ」(N)。「NOPPOの絵のすごいところは、物語の世界を、上からだったり横からだったり、いろんなアングルから描いているところ。絵が上手いだけじゃなく、イマジネーションが働く人じゃないと思いつかない構図だし、視点がいろいろ変わることで作品の世界観がより広がった気がします」(O)実はもうひとつ、この絵本にはシッキンらしい仕掛けがある。絵の中にQRコードが埋め込まれていて、それをスマートフォンで読み取ると、物語と連動したオリジナルダンス動画を観ることができるのだ。それぞれ自分のキャラクターをイメージし創作したソロに4人で踊る2本を加えた計6本!「僕らが作る本だから、何かしらの形でダンスは盛り込みたいということはメンバー全員から出ていたアイデアだった」(s)「ソロは、それぞれが4人ではできない自分の得意分野を出していますから、シッキンの舞台を観ている方にも新鮮に感じていただけるはず」(k)ひとりひとりに、ソロのダンスの見どころを教えてもらった。「ニワトリさんのつねに臆病で、飛びたいのに飛べない自信のなさをダンスに盛り込んでいます。その切なさと、みんなとなら何かを成し遂げられる、という希望の部分が伝わるといいですね」(s)「ネコは気ままなキャラクターなので、自由さを表現したくて部屋をフラフラしたり、アクロバットを入れてみたり。のびのび踊るイメージで作りました」(k)「イメージは、“右手くん”とのんびりロバの奮闘。僕自身、ストリートダンスにミュージカリティを交ぜたものが好きなので、曲も含め、少しドラマ性を感じさせる世界観を意識しました」(N)「犬は、時間にシビアでせっかちゆえに早く来すぎてしまうようなキャラクター。バカがつく真面目さが逆にコミカルに見えたらなと思っています」(O)そして何より圧巻なのが4人でのパフォーマンス。広大な自然の中で楽しげに踊る4人の躍動感あるダンスは、シビレるほどカッコいい。この撮影では、幸運を引き寄せる彼らのパワーが発揮される出来事もあったそう。「撮影前日、めちゃくちゃ天気が悪い上に、すごく寒かったんですが、翌日は雲ひとつない青空。しかも道での撮影では、カメラが回っている間、車がまったく通らず、日が沈むギリギリのタイミングで綺麗な夕焼けも見られた。時間がない中での撮影だったのに、最高の動画になりました」(O)メンバーが心がけたのは、文章ですべてを説明するのではなく、「絵を見て、文字を読んで、ダンスを見て、想像力を自由に働かせられるものに」(N)ということ。「絵本だけ読んでいただくこともできるし、逆に、元気になりたい時に動画だけ観ていただいてもいい。いろんな楽しみ方をしていただけたら嬉しいです」(s)シッキンは、つねに新しい可能性に挑戦していける場。結成から11年。個々がソロアーティストとして活躍しながらチームとしての活動を続けている彼ら。取材の中で気づくのは、彼らのメンバーへの深い信頼と、s * *t kingzに対する愛。全員が、義務感ではなく、4人でいることを心から楽しんでいるのだ。「それは、自然に成り立ったチームだからだと思います。友達として出会って、いつの間にか一緒に踊る機会が増えて、気づいたら4人でいるのが居心地よくなって、その関係性がいまも続いているんです」とshojiさん。Oguriさんも、「やりたいことを素直にやれるし、時には自分が予想もしなかった方向に進んでいくのも面白い。いろんな可能性を感じられる場」と語る。つねにポジティブな思いで続けてこられた訳は、「ずっと同じことを続けてきたというより、扉を開けたらまた次の扉があって、新しいことに挑戦してきた11年だったから」(k)「ダンスという素地を大切にしつつも、その枠にとらわれずに、いろんな表現を無限に追求していけるのがシッキンなんです」(N)ダンスチームながら絵本を手がけたのも、そんな挑戦のひとつだ。「かつて、一度、目標を決めようっていう話が出たことがありました。でも話していくうちに、なんか違うなってなったんです。目標を決めたら、そこを目指していかなきゃいけないけれど、それってシッキンらしくないなって気づいたんです。僕らは、あてどもなく山を歩いているだけ。その時どきに出会う人たちが“どこでもドア”を持ってきてくれて、面白そうだからやってみようかというスタンスで、そのドアを開いていっている感覚」(s)。「この絵本をきっかけに、今度は絵とパフォーマンスを組み合わせた作品なんかも面白いなと思っています」(N)さらなる次の展開にも期待大だ。シットキングスアメリカ最大級のダンスコンテストで‘10年・‘11年の2年連続優勝し、世界から注目される。‘13年より舞台公演を開始。昨年の『The Library』ツアーは全国7都市30公演を行い好評を博した。6/8(土)・6/9(日)、shoji&Oguriがスパイラルホールでの朗読×ダンス公演『My friend Jekyll』に出演。NOPPOさん・ジャケット¥120,000シャツ¥36,000(共にアミ アレクサンドル マテュッシ/アミ オモテサンドウ TEL:03・5778・4472)パンツ¥102,000(ニール バレット/ニール バレットギンザシックスTEL:03・3572・5216)シューズ¥13,800(ドン ぺぺ/スタジオ ファブワークTEL:03・6438・9575)ベルト¥19,000(ニードルズ×マーティンF./ネペンテスTEL:03・3400・7227)バングル¥50,000(アイブイエックスエルシーディーエム/IVXLCDM 六本木ヒルズTEL:03・6455・5965)Oguriさん・シャツ¥27,000(アトリエ ベトン/スタジオファブワーク)トレンチコート¥61,000(ジョンメイソン スミス)パンツ¥24,800(バーンストーマー)バングル¥24,000(トゥエンティー エイティー)以上HEMT PR TEL:03・6721・0882シューズ¥65,000(パラブーツ/パラブーツ青山店TEL:03・5766・6688)ハンチング¥16,000(カンゴール/カンゴール ヘッドウェアTEL:03・6805・1272)shojiさん・ジャケット¥46,000(ネサーンス/エリオットTEL:03・5708・5757)シャツ¥26,000(ニードルズ/ネペンテス)パンツ¥39,000(サイ/マスターピースショールームTEL:03・5414・3531)サンダル¥34,000(パラブーツ/パラブーツ青山店)ハット¥300,000(ボルサリーノ/ボルサリーノ ジャパンTEL:03・5413・3954)ブレスレット¥27,000(トゥエンティー エイティー/HEMT PR)kazukiさん・ジャケット¥47,000(ワンダーランド/ノットワンダー ストアTEL:06・6110・5466)シャツ¥15,000(エンハーモニック タヴァーン/スタジオ ファブワーク)パンツ¥28,000(ギャルリー ヴィー/トゥモローランドTEL:0120・983・522)シューズ¥22,000(ティンバーランド/ティンバーランド/VFジャパンTEL:0120・953・844)スカーフ¥9,000(エンジニアド ガーメンツ/エンジニアド ガーメンツTEL:03・6419・1798)ベルト¥27,000(ニードルズ×マーティンF./ネペンテス)ブレスレット¥22,000(トゥエンティー エイティー/HEMT PR)s**t kingz初プロデュース『あの扉、気になるけど』QRコードを読み取ればダンス動画も楽しめる。s**t kingzの4人を思わせるネコ、ロバ、犬、ニワトリが、丘の上の大きな扉を目指す物語。世界的名作「ブレーメンの音楽隊」をベースにしたオリジナルの愉快な冒険に合わせて、ここでしか見られないハイクオリティなダンス動画が見られる仕掛けも。大興奮必至。見て、感じて、踊りたくなる新感覚の<踊る絵本>。マガジンハウス1852円※『anan』2019年6月12日より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・森田晃嘉ヘア&メイク・外山龍助(KIDMAN)取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2019年06月06日昨年末に紅白の初出場も果たし、抜群の歌唱力と卓越したダンス技術で国内でも傑出した存在となっている、三浦大知さん。三浦さんのステージを長年ともに作り続けるほか、いち“ダンサー”の域を超えて世界を舞台に活躍する4人組ダンスパフォーマンスチーム、s**t kingz(シットキングス)。ダンスを選んだ2組のスペシャルトークをお届けします。――三浦さんがシットキングス(シッキン)と共演したいと思ったきっかけは何でしたか?三浦:すごいダンスユニットがいるという噂を聞き、クラブのショーを見に行ったんですよ。ダンスのうまさはもちろんだけど、4人はすごく仲がいいし、家族のような空気感がいいなぁって。それでNOPPOさんに『Inside Your Head』(2008年リリースのシングル)のMVに出演していただいて、続いてのイベントは全員一緒に出たんだよね。shoji:オファーをいただいたときは、ワオ!僕らが昔から憧れていた大知君と共演!そこに行っていいんですかー、って、相当興奮しました。Kazuki:知り合う前はめちゃライバル視していたんですよ。オレらはアンダーグラウンドで頑張るから、メジャーでどうぞ、って。でもいざ会ってみたら、ヨロシク~、と一瞬で気持ちが変わった(笑)。三浦:そうだったんだ(笑)。NOPPO:大知は接し方でもなんでも、すごくダンサーを尊重してくれるんですよ。“アーティスト”という感じがしない。友達同士の感じなんです。シッキン一同:そうそう。Oguri:アーティストから振付をもらう経験も、大知がはじめて。普通はダンサーが先に振付して、後でアーティストさんに憶えてもらうんですが、大知のリハーサルは、本人がいないと始まらない。現場でコミュニケーションがたくさん取れるのが楽しくて。kazuki:しかも上手な振付を持ってくるんだよね。Oguri:自分で振付するときも、“あ、やべえ、大知の影響を受けちゃってる”って思うこともよくある。三浦:それは僕の作戦にまんまと引っかかってる!実は先にみんなのエッセンスをいただいているんだよ。あれ、似てる?と感じるのは、もともと4人の振りだったりするよ。Oguri:マジで!?巧妙すぎる(笑)。とはいえ、大知のフィルターを通して作られているので、新鮮に感じるな。三浦:出会って10年近く経つけど、会うたびに4人それぞれが刺激を持ってきてくれるチームだよね。どこの世界でも、メンバーが固まると多少マンネリ化することがあるけど、シッキンにはそれがない。そういう関係があるから楽しいし、一緒に踊れる喜びを感じるんです。――三浦さんの作る振付は、やはり歌を第一に考えたものなのでしょうか?三浦:歌のためのダンス、が大前提ですが、その感覚が彼らと似ていると感じています。普通は、いい意味でも悪い意味でも、ダンサーによって聴いている音が全く違うと感じるのですが、4人とは感じているものがとても近い気がします。shoji:普通、昔作った振付の曲を踊ると、“この感じ、ちょっと恥ずかし~!”って感じることがある。でも、大知が振り付けた曲って、振りが古いと感じたことがないんですよね。毎回、その時どきの新しいエッセンスが入っているのに、古くならない。それってすごいことだと思う。Oguri:ベーシックなことを大事にしているからかな。基本がなくて中途半端な振付だと、踊っていても楽しくない。大知の振りは、いつ踊っても古さを感じないんだよね。三浦:おおー。ここはぜひ詳しく書いておいてくださいね。シッキン一同:(笑)みうら・だいち‘87年8月24 日、沖縄県生まれ。‘05年ソロデビュー。天性の歌唱力に加え、抜群のリズム感を見せるダンスで国内外の人々を魅了する、日本を代表するエンターテイナー。昨年末の『第68回NHK紅白歌合戦』に初出場を果たした。シットキングス‘07年結成。米コンテスト「BODY ROCK」で2年連続優勝を果たして以来、世界中から注目を浴びるユニット。海外イベントへの出演から単独舞台公演、夏フェスまでボーダーレスに活躍中。振付家としても引っ張りだこ。通称シッキン。三浦/ベスト¥60,000シャツ¥42,000(共にオールモストブラック/アイデア バイ ソスウTEL:03・3478・3480)ジャケット¥49,000(エトセンス/エトセンス オブ ホワイト ソースTEL:03・6809・0470)パンツ¥22,000(イロコイ/イロコイ ヘッドショップTEL:03・3791・5033)シューズ 参考商品(ディーゼル ブラック ゴールド/ディーゼル ジャパンTEL:0120・55・1978)shoji/ジャケット¥287,000※スーツセット価格ポロシャツ¥42,000(共にディースクエアード/ディースクエアード 東京TEL:03・3573・5731)kazuki/ジャケット¥269,000シャツ¥208,000スカーフ¥19,000(以上ディースクエアード/ディースクエアード 東京)NOPPO/シャツ¥71,000スカーフ¥22,000(共にディースクエアード/ディースクエアード 東京)Oguri/ジャケット 参考商品パンツ 参考商品チュールレイヤードシャツ¥68,000スカーフ¥22,000(以上ディースクエアード/ディースクエアード 東京)その他はすべてスタイリスト私物※『anan』2018年1月31日号より。写真・関 信行スタイリスト・村田友哉(SMB international./三浦さん)Babymix(s**t kingz)ヘア&メイク・外山龍助(KIDMAN/三浦さん)新宮利彦(VRAI/s**t kingz)取材、文・北條尚子
2018年01月30日