昨年10月に東京・PARCO劇場ほかで上演された女性キャストのみの舞台、パルコ・プロデュース2021「ジュリアス・シーザー」が、CS放送局「衛星劇場」にてテレビ初放送されることになった。本公演はシェイクスピアの有名な「ローマ劇」の1つ「ジュリアス・シーザー」を、吉田羊、松井玲奈、松本紀保、シルビア・グラブら女性キャストだけで上演し話題を集めた舞台。演出には、いまや演劇界の重鎮と言える森新太郎を配し、朋友たちとの友情、師と仰ぐ人物への信頼と憧れ、正義ゆえの裏切りなどを、ローマ史実を基に壮大な政治劇として描き出す。本作が初めてのシェイクスピア劇出演となる吉田さんが主人公ブルータス役を演じるほか、松井さんがシーザーの腹心の部下アントニー役を、松本さんがブルータスの同僚で友人のキャシアス役を、ミュージカルのみならずストレートプレイでも大きな存在感を放つシルビアさんがブルータスらに暗殺を謀られる古代ローマ王政の独裁官、ジュリアス・シーザー役で出演する。さらに、三田和代や久保田磨希、藤野涼子ほか映像、舞台で活躍するベテランから若手まで硬軟取り混ぜた女優たちが大集結した。ストーリー共和政末期のローマ、紀元前44年3月15日のジュリアス・シーザー暗殺とその後をめぐる物語。宿敵を破ったシーザーが民衆の歓呼を浴びながら堂々とローマへ凱旋するところから芝居は始まる。護民官や貴族のなかには、いまや対抗勢力のなくなったシーザーに危険な野心を感じるものがいた。キャシアスも、その権力が益々強大になり共和政の伝統を破壊することを危ぶんでいた。そして、市民から厚い信望を得ていたブルータスを仲間に引き入れ、シーザーの暗殺を決行する。英雄の死に一度は混乱した市民たちも、直後に行われたブルータスの演説に納得するが、シーザーの腹心だったアントニーが弔辞を述べると、今度は逆に反ブルータスへと翻ってしまい…。パルコ・プロデュース2021「ジュリアス・シーザー」は4月24日(日)17時~「衛星劇場」にて放送。(text:cinemacafe.net)
2022年04月14日シェイクスピアのローマ史劇の名作を、女性キャストだけで上演することで注目を集めている、森新太郎演出・吉田羊主演『ジュリアス・シーザー』が10月10日、東京・PARCO劇場で開幕した。その演出力の高さから俳優たちから最も信頼されている演出家・森新太郎が、3月に上演された『Romeo and Juliet ーロミオとジュリエットー』に続いて今年2本目のシェイクスピア劇を手がける本作。もとは男性による政争劇だが、性別を意識させるセリフをあえて排除し、オールフィメールキャストたちが「男性」を演じるのではなく、「人間」を演じるよう演出。人の業や欲望、正義や信念といったものをつまびらかにしながら、よりリアルな人間たちのドラマを浮き彫りにしていく。初日を終えて森は、「権力闘争劇の金字塔ともいうべき本作が、これほどまでに様々な感情の渦巻く人間ドラマであるとは知りませんでした。オールフィメールで臨んだことによって、この作品の新たな魅力に出会えたような気がします。歴史劇や政治劇の類い、そして何よりもシェイクスピア劇といったものに普段まったく食指が動かぬ方にこそ、是非観ていただきたく思います」とコメント。主人公・ブルータスを演じる吉田羊は、「お客様が入って、この作品の最後のピースが埋まったというか、物語が完成したなという感じがしました」と初日公演の感想を述べ、「シリアスな物語にも関わらず笑いが絶えず、毎日、演出をつけられた役者が目に見えて変わっていく様がとても面白かったです」と稽古を振り返る。見どころについては「“言葉”によって突き動かされていく人々の物語を、かくもドラマティックかつパワフルに仕上げた森新太郎氏の手腕! そう来たか!と唸って頂きたいです!」と息巻く。シーザーの腹心の部下・アントニー役の松井玲奈は、「稽古中の『芝居は呼吸。息を吸ったときに感情が生まれる』という森さんの言葉が強く印象に残っています。今まで感じていたことがハッキリとした言葉で表された時、ハッとするものがあり、この現場での大きな学びの言葉となりました(中略)アントニーを演じる上では、生まれた感情を殺さないようにしたいと考えています。ブルータスとアントニーの演説場面は大きな見どころのひとつです。民衆の心が動かされていくように、客席の皆様の心までも動かす演説ができるよう、ひとりひとりの心に強く訴えかけていきたいと思います」と稽古での手ごたえと見どころについて語った。シーザー暗殺を企てるキャシアス役の松本紀保は、稽古を振り返り「キャストが女性だけなので、稽古場でのリラックスした時間は女子校の休み時間の様な雰囲気で、笑顔のたえない時間でした」としつつ、「演出の森さんとは 2 回目ですが、とにかく容赦ないダメ出しの嵐は 2 回目も健在でした。役者の心に火をつけるのがとても上手な演出家だと思います。今回は歌手、スポーツ選手、芸人さんなど、〇〇さんのようにという例えを使われていてそこがとてもわかりやすく面白かったです」「この作品は全てが見せ場なので、1シーンたりとも見逃せない! なかでも民衆達が扇動されていく姿は、現代にも通じるも のがあるのではないでしょうか」とコメントを寄せた。シルビア・グラブが演じるジュリアス・シーザーは今回「妻のキャルパーニアの前では弱みをかなり見せてます」とのこと。「男たちのドラマであるのはもちろん、今回、森さんはキャラクターのヒントとしていろんな俳優や有名人の名前を持ち出し、そのキャラクターに近づけていくキャストの皆さんを見るのが楽しかった。古畑任三郎をはじめ、松岡修造さんからオードリーの春日さんまで、バラエティに飛んだキャラクターたちがステージ上に隠れています」と松本同様、独特な森演出についてふれた。上演は10月31日(日)までPARCO劇場にて。その後、大阪・山形・福島・宮城・富山・愛知と全国を巡る。
2021年10月11日ウィリアム・シェイクスピアの政治闘争劇を、女性キャストのみで立ち上げることが話題を集めているパルコ・プロデュース2021『ジュリアス・シーザー』。高潔な魂を持つブルータスが、友人であり古代ローマの礎を築いた英雄シーザーを殺害するまでの苦悩や葛藤、そして事後の悲劇が描かれる。本作の演出を務める森新太郎と主人公ブルータスを演じる吉田羊に、稽古前の心境を尋ねた。思いの丈を叫び尽くす、吉田羊の新境地を見せたい──吉田さんは初めてシェイクスピア作品に出演されますね。吉田実はシェイクスピア自体に苦手意識があって敬遠してきたものですから、一生縁がないと思っていたんです。でも来年芸歴25周年を迎える節目のタイミングで、あちらの方からやって来てくださったということは……「原点に帰りなさい」という演劇の神様からのメッセージかな、と思って挑戦することにしました。──なぜシェイクスピアを敬遠されてきたのでしょうか?吉田これまで観客の立場で拝見してきましたが、シェイクスピア作品には俳優の鍛錬と演出家の想像力が求められると感じておりまして。役者の場合、レトリックの多い長ゼリフを朗々と発したり肉体的にも精神的にも大変そうですよね。自分にできるだろうか……と不安を覚える一方で、俳優なら一度は挑戦すべきハードルとも考えていて。シェイクスピアは、作品に選ばれて初めてトライできる感覚がずっとありました。今回のブルータス役を機に、自分を更新していきたいですね。──森さんが、主人公ブルータスに吉田さんを指名した理由は?森新太郎森羊さんのお顔がパッとひらめいたんです。これまで仕事でご一緒したことはありませんが、出演作を拝見すると、羊さんは考えていることを表に出さない人物の芝居が非常にうまい。同時に、こうした抑えた芝居が効くのは心の中にものすごく「激しいもの」を秘めているからなんだろうな、とも感じまして。これほど熱いものをお持ちの方にはシェイクスピアに出てもらわないといけない。むしろご経験がないことの方が不思議でして。吉田ふふふ(笑)。シェイクスピアの登場人物って、心の中をすべて口に出してしまう激しさがありますよね。たとえばブルータスなら「愛する仲間(シーザー)を正義のために殺さねばならぬのだ!」と決意するまで、ありとあらゆる比喩や修飾語を駆使して葛藤や苦悩を語るわけで。森そうなんですよ! 思いの丈をこれほど叫び尽くす吉田羊は見たことがない、とお客さんに新境地をお見せして驚いてもらう方がおもしろいんじゃないかな。羊さんを別のフィールドへ引っ張り出したい。そう思ってオファーさせてもらいました。さらにこれだけ叫んでも本音がわからないブルータスの底知れなさも感じさせてくれそうだな、って。衣裳から垣間見える、オールフィメールのおもしろさ──男性の登場人物が多い『ジュリアス・シーザー』を、女性だけで上演しようと考えた企画意図を教えてください。森シェイクスピア作品は「虚構性」が立った方がおもしろいと感じていまして。もともとは野外のグローブ座で上演されていて、明るい光の中で夜を表現しなければいけなかったわけですし、女性役も少年俳優が演じていました。「これはフィクションです」と現実との線引きが明確にされているからこそ、観客は想像力をフル稼働させて、自分の中で物語を構築していくおもしろさがあった。いわば、日常の約束ごとや規範から解き放たれて自由になれる時間だったんじゃないかな。そういった意味で、男性の登場人物が多くを占める『ジュリアス・シーザー』の虚構性は、女性キャストだけの上演形式でいちばん発揮できるのでは……と仮定して、オールフィメールを提案させてもらいました。吉田女性キャストだけで上演する試みにも惹かれました。一方で、大変な挑戦だと思うんです。史実も含めて有名な作品ですし、お客さんの固定観念を取り払うのは容易ではありません。でも本作は森さんが元の戯曲から取捨選択して、男女それぞれの役割を固定するようなセリフがほとんどカットされているんです。これによって性別という概念がなりを潜めて、「人間同士」の会話として響くようになった気がしますね。その先にどんな感情が見えてくるのか、ぜひ劇場でお確かめいただきたいです。吉田羊──現時点で、どんな衣裳をお考えでしょうか?森オールフィメールでよく見かけるのは、男性のフォーマルを着せてしまうパターンですよね。今回でいうなら、古代ローマの軍人が装着していたような「鎧」で男装するような。でも僕、レトリックの多いシェイクスピア作品では「言葉」を鎧にした方がいいんじゃないかと思うんですよ。吉田たしかに。おもしろいですね!森いまイメージしているのは、コンテンポラリーダンスの踊り手が身につけるような抽象的でシンプルな衣裳です。男装する女性キャストがリアルを追求すると、胸を潰したり男性の体に近づけようとするでしょう? でも今回はそれやる必要はないと思っていて。女性が本来持っている体のままでいて欲しい。吉田それ、大賛成です! 私はもともと中性的な衣裳がいいな、と思っていました。というのも人間の意識って視覚から入る情報でほとんど決まってしまうから、男装した時点でお客さんは我々を「男性」と認識しますよね。でも演じている中身は「女性」だから……違和感になってしまう気がするんです。森その考えをお聞きして、やっぱり舞台経験の豊富な羊さんにオファーしてよかったと思いました。僕とワクワクするポイントが似ているな、って。オールフィメールでシェイクスピアをやることの魅力や楽しみ方を、構想段階からわかっていらっしゃる気がする。吉田あんまりハードル上げないでくださいね(苦笑)個性派が揃ったキャスティングを堪能して──吉田さんは、ブルータスの人物像をどのように捉えていらっしゃいますか?吉田ブルータスって、私利私欲が一切ない「ミスター正義感」ですよね。でも彼の本当の魅力は、人間的な「弱さ」にあるんじゃないでしょうか。友人キャシアスらにそそのかされて最後の炎を燃え立たせるわけですけど、シーザー殺害の一大決心をするまでに、彼は逡巡を繰り返して自らを鼓舞しまくります。はたから見ると優柔不断で煮え切らない人物ですが、そのカッコ悪さこそ人間くさい。お客さんが「決心しろ、ブルータス!」と応援したくなる魅力なのかな、と思いますね。優しさゆえに自分の首を絞めて、物語が加速していく側面もありますし。──そのブルータスを、現時点でどのように演じていこうと考えていらっしゃいますか?吉田お客さんがこの作品に没入できるかどうか、ブルータスの人間的な魅力が要素のひとつになるだろうな、と思っています。政治闘争劇というと小難しいイメージがありますけど、シーザー殺害や事後の悲劇にいたる感情のアプローチにフォーカスしながら演じていきたいですね。──ブルータスを取り巻く登場人物にも多様なキャラクターが勢揃いしています。森さんはどのようにキャスティングしていかれたのでしょうか?森個性ある俳優さんばかりお選びしました。いつもキャスティングは相当こだわるんですが、今回は特に手応えがあります。まずは、シーザー腹心の部下であるアントニー役に松井玲奈さん。アントニーってブルータスたちよりやや若くて、彼らからすると理解できない側面がある新世代の人物だと思うんですよ。このジェネレーションギャップをフレッシュに演じてくれそうな松井さんにお声がけしました。吉田まさに! 初めましての松井さんとは陰影の濃いコントラスト……ブルータスとアントニーのコントラストを一緒につくれたらいいですね。『ジュリアス・シーザー』メインビジュアル:上段左から、吉田羊(主人公・ブルータス役)松井玲奈(アントニー役)、下段左から、松本紀保(キャシアス役)シルビア・グラブ(ジュリアス・シーザー役)森ブルータスの友人キャシアスには、松本紀保さん。以前ご一緒したことがあるんですが、彼女の無尽蔵のエネルギーには目を見張りました。個人的には、ブルータスとキャシアスの間に起こる終盤の諍いがおもしろいと思っているんですよね。様々な状況が複雑に絡み合った末に、ついにお互いの感情が爆発して。吉田いきなり夫婦ゲンカみたいなやり取りが始まりますよね。松本さんのキャシアスとは、かたい友情を育みたいと思っていたんですけど(笑)森当人たちは真剣に、絶叫しながら議論してるんでしょうけどね……若干コミカルにも見える(笑)。そしてタイトルロールには、シルビア・グラブさん。以前『メアリ・スチュアート』でご一緒した時に、エリザベス女王を演じてもらいました。もはや世界の覇者シリーズみたくなっていて、次はチンギス・ハーンしかないんじゃないかと思ってるんですけど(笑)吉田あはは(爆笑)森ブルータスってシーザーを憎む一方で、もしかしたらそれ以上に愛しているんですよね。最後の最後までシーザーの呪縛から逃れられなくて夢や幻の中にシーザーの姿を見るほど。そう考えると、作品タイトルが『ジュリアス・シーザー』なのも頷けるんです。その関係性も女性キャストならではというか、他人が立ち入る隙がないような精神的な結びつきを描けるんじゃないかと期待しています。吉田共演経験のあるシルビアさんが宿敵シーザーで安心感を覚えています。クレバーで優しく愛のかたまりみたいな彼女が、権力を前に揺れ動く臆病で純粋なシーザーをどう演じるのかすごく楽しみですね。シルビアさんに対する私の信頼がブルータスとシーザーの関係性にリンクして、友情の先にある「正義の暗殺」という構図を見せられたら。抑圧されている女性に勇気を与えられる演目でありたい──シェイクスピア作品でオールメールやオールフィメールの上演形式はこれまでもありましたが、森さんは今回なぜ『ジュリアス・シーザー』に着目されたのでしょうか?森僕はね、『ジュリアス・シーザー』の主役って実は「民衆」のような気がしているんです。姿こそ舞台上に現しませんが、この物語は「シーザーに王冠を被せろ」という民衆の熱狂からスタートします。ここから登場人物たちは人生を狂わされていく。ブルータスがいちばん恐れているのもシーザーの圧政というより、彼の存在に惹きつけられていく得体の知れない民衆の熱狂なんですよね。──そこから殺害を決行して、演説で民衆を味方につけようとするもアントニーにちゃぶ台返しされてしまいますよね。森そう、暴動にまで発展してね。ブルータスをはじめとする政治家たちが、民衆の間をただ右往左往しているだけに思えてなりません。で、現代に生きる我々も毎日そんな光景を見てばかりいるわけです。移り気で、無責任で、熱狂のための生贄を常に探し求めている民衆。誰かに支配されるのを嫌いながら、同時に誰かに支配されたいとも望んでいる実に厄介な存在です。そんな民衆の姿を炙り出したいと感じたのが、この『ジュリアス・シーザー』を上演したいと思った動機のひとつですね。吉田そうだったんですね。私も人間の普遍的な業や情を見せたいと思っているので、森さんがこの作品をどのようにステージングしていくのか楽しみにしています。──2021年にも通じる普遍的な時代性を感じていらっしゃるんですね。女性キャストのみで「いま」上演する意義はどのように考えていらっしゃいますか?森オールフィメールでの上演についてどう感じるか、周りの女性に聞いてみました。そうしたら、皆さん揃って目を輝かせながら「おもしろそう!」と言ってくださって。喜んでもらえそうでよかったと思う反面、これほど女性をウキウキさせる背景にあるものって何だろう、とも感じて。──森さんの中で、思い当たることがおありになるのでしょうか?森ひょっとしたら、女性が政治から遠ざけられていることの反映なんじゃないかな……と感じました。最新のジェンダーギャップ指数も、政治参画の面では最下位に近いところにランクしていますよね。依然、深刻な男女不平等が続いていると言わざるを得ません。例えば2020年までに国会議員の女性候補者を30%に引き上げると言っていたのにまったく果たされず、蓋を開けてみたら閣僚20人中2人しか女性がいませんでした。──日本の乏しい現状が、この政治劇を女性キャストのみで発表された瞬間のワクワクにつながっていると?森日ごろ抑圧されていると感じる女性が、オールフィメールのような倒錯性に惹かれることは無視できない気がしました。願わくばこの上演形式がさほど珍しいことでなく「当たり前」になるような時代になればいいな、と。日本の現状に鬱屈としている女性たちに少しでも勇気を与えられる演目でありたいと思っています。取材・文:岡山朋代撮影:川野結李歌パルコ・プロデュース2021『ジュリアス・シーザー』東京公演:2021年10月10日(日)〜10月31日(日) PARCO劇場大阪公演:2021年11月3日(水・祝)森ノ宮ピロティホール山形公演:2021年11月7日(日)やまぎん県民ホール 大ホール福島公演:2021年11月14日(日)いわき芸術文化交流館アリオス大ホール宮城公演:2021年11月17日(水)仙台銀行ホールイズミティ21大ホール富山公演:2021年11月20日(土)・21日(日)富山県民会館ホール愛知公演:2021年11月27日(土)・28日(日)東海市芸術劇場大ホールチケット情報
2021年09月29日シェイクスピアの有名な「ローマ劇」のひとつで、男たちの陰謀と策略の渦巻く古代ローマの政治闘争を描く『ジュリアス・シーザー』を、ブルータス役の吉田羊をはじめ女性キャストのみで演じる舞台が、10月10日(日)~10月31日(日)PARCO劇場で、さらに大阪など各地で上演されることが決定した。あわせて、キャストのコメントが発表された。『ジュリアス・シーザー』は、ローマ史に基づいて描かれた、『コリオレイナス』『アントニーとクレオパトラ』と並ぶシェイクスピアの舞台作品。演出するのは、『Romeo and Juliet ―ロミオとジュリエットー』に続いて、今年2作目のシェイクスピア劇に挑む森新太郎だ。舞台となるのは共和制末期のローマ。宿敵を破ったシーザーが民衆の歓呼を浴びながら堂々とローマへ凱旋するが、護民官や貴族のなかには、いまや対抗勢力のなくなったシーザーに危険な野心を感じる者がいた。そのひとりキャシアスは、市民から厚い信望を得ていたブルータスを仲間に引き入れ、シーザーの暗殺を決行する。主人公・ブルータス役には、『国民の映画』以来、7年ぶりのPARCO劇場出演となる吉田。また、松井玲奈がシーザーの腹心の部下アントニー役を務め、松本紀保がキャシアス役を演じる。さらにシルビア・グラブが、ブルータスらに暗殺を謀られる古代ローマ王政の独裁官、ジュリアス・シーザー役で参加することが分かった。さらに藤野涼子や久保田磨希、中別府葵ほか、映像、舞台で活躍するベテランから若手までがキャスティングされた。キャストのコメントは、以下の通り。■吉田羊コメント初めてシェイクスピア作品に挑戦させて頂くことになりました。凛として端正な台詞の応酬にクラクラしながらも、ひとたび口にすればありありと人物が浮かび上がるシェイクスピアの表現力に感動もし、演者として携われることに心から感謝する思いです。今作は、古代ローマの史実を軸に英雄たちの「人間らしい顔」が描かれています。彼らは苦悩し歓喜し、それぞれの守るべきもののために闘っていて、その姿は、現代の私たちとなんら変わりないように見えます。さらには、男性の戯曲とされるこの物語を、ジェンダーの定義が多様化しているこの時代に女性だけで演じる試みに、大きな意義を感じてもいます。最初は違和感があるかもしれません。けれど固定概念を取り払ったその先には、時代や性別を超えた、「人間」の業や情が見えてくるはずと信じております。演出の森新太郎さんとは初めてご一緒します。数多くのシェイクスピア作品を手掛けられた方ですので、その胸をお借りしながらアイデアを持ち寄って高め合い、素晴らしい共演者の皆様と力を合わせて、新しいジュリアス・シーザーをお届けできるよう頑張りますので、何卒、応援よろしくお願いいたします。■松井玲奈コメントこの度『ジュリアス・シーザー』に出演させていただくことになりました。はじめてのシェイクスピア、憧れのシェイクスピア。とても好きなこの演目に出演できるということを大変嬉しく感じています。共和制末期のローマ。時代がガラリと音を立てて変わる時。セリフの一言一言からほとばしるそれぞれの熱い信念を真っ直ぐにお伝えするべく、たっぷりのエネルギーでキャスト一同演じきりたいと思います。■松本紀保コメント今回新生パルコ劇場にて、このような素晴らしい作品、キャストの皆様と作品を創っていくことができ、本当に嬉しく、そして本当に楽しみです。森新太郎さんとは2度目になりますが、そのしつこく熱い演劇魂に喰らいついていきたいと思います」■シルビア・グラブコメントまさか私が……。一生で絶対に関わることがあるとは思っていなかったシェイクスピア。しかも、本来ならオール男性でやっていたものをオール女性キャストで上演する。色んな意味で痺れます。恐ろしくもあり、エキサイティングでもあり。私はすでに震えが止まらない!久しぶりにPARCOで吉田羊さんとの共演、そしてまた新たな共演者との出会いもとても楽しみです。森新太郎さんの熱い指導の元また新たな自分を発掘したいと思います。『ジュリアス・シーザー』【作】ウィリアム・シェイクスピア【訳】福田恆存【演出】森新太郎【出演】吉田羊松井玲奈松本紀保シルビア・グラブ/藤野涼子久保田磨希智順中別府葵小山萌子安澤千草高丸えみり岡崎さつき 鈴木崇乃水野あや清瀬ひかり原口侑季西岡未央/三田和代【東京公演】 2021年10月10日(日)~10月31日(日)PARCO劇場【大阪公演】2021年11月3日(水・祝)森ノ宮ピロティホール【山形公演】2021年11月7日(日)やまぎん県民ホール 大ホール【福島公演】2021年11月14日(日)いわき芸術文化交流館アリオス大ホール【宮城公演】2021年11月17日(水)仙台銀行ホールイズミティ21 大ホール【富山公演】2021年11月20日(土)、21日(日)富山県民会館ホール【愛知公演】2021年11月27日(土)、28日(日)東海市芸術劇場大ホール
2021年07月14日