建物の外観を演出するうえで、外壁は住まいのひとつの個性となります。外壁にどのような材料を使うかは施主の「好み」に委ねられます。しかしながらこれという決定打がなく、どうすればいいかわからない……という方も多いでしょう。せっかく外壁を決めるのであれば「好み」のほかに「特徴」を把握し、決定する根拠をさらにもつことで、納得した選択となると考えます。一般的な木造住宅を新築する際において、価格や品質のバランスを考え、外壁の材料は以下の3つのパターンに絞られていくと私は考えます。今回は設計事例を挙げながら、それぞれの外壁の特徴をご紹介していこうと思います。■ 1.窯業系サイディング窯業系サイディングはセメントに木質繊維を混ぜ合わせたものです(サイディングとは外壁に貼る仕上げ用板材をいいます。工場加工されているので品質が安定しているという利点があります)。表面塗装によって耐久性を高める工夫が施してあり、最近では技術の発達により、長期的に外壁の美観を保つ部材も増えています。こちらの住宅では、外壁にフラットなタイプの窯業系サイディングを使用してシンプルなデザインとしています。ニチハ株式会社商品の窯業系サイディング材を使用しています次にこちらの住宅では外壁に木目調の窯業系サイディングを使用しています。木を使いたいけれども経年変化が気になる、という方にはちょうど良いのではないでしょうか。こちらもニチハ株式会社商品の窯業系サイディング材を使用しています窯業系サイディングは適当に選択してしまうと、個性のないチープな印象となってしまうことがあります。提案する設計者がしっかり理由づけして扱うことが大事になります。■ 2.ガルバリウム鋼板(サイディング含む)ガルバリウム鋼板はアルミニウムと亜鉛による合金めっき鋼板のことをいいます。防錆性や耐久性が高くリーズナブルで、住宅の外壁材で需要が多い材料です。外観がメタリックなデザインとなるので人気です。設置をする際に色だけでなく、向きや葺き方など多くのバリエーションがあるのもメリットです。ガルバリウム鋼板を縦はぜ葺きに加工したものですまたガルバリウム鋼板のサイディングも多数つくられていて風合いが異なりますので、そこで好みの商品を選択するのもありかと思います。アイジー工業株式会社のガルバリウム鋼板サイディング材を使用していますただ外壁に使用する素材としては薄いので、硬い物が強く当たるとへこみやすいという懸念があります。たとえば自転車置き場などはよく倒れて傷がついてしまうことも多いので、その箇所だけ違う材料を使うなど工夫をしてみてはいかがでしょうか。■ 3.塗装(ジョリパット)継ぎ目なくすっきりとした外観としたい方は、外壁に塗り壁を選択してみてはいかがでしょうか。外壁の塗装は材料や工法など、さまざまなやり方があります。今回はジョリパットをあげてみましょう。ジョリパットとはアイカ工業株式会社から販売されている外壁材で、住宅ではトップクラスの国内シェアを誇っています。意匠性が高く、表面を仕上げるさまざまな色味やパターンを組み合わせることができます。耐久性にも定評があります。アイカ工業株式会社商品の塗装材を使用していますただ外壁として塗ったものですので仕方がないのですが、色あせやひび割れ(他の塗り壁よりは比較的少ないです)の懸念が挙げられます。このように、外壁の表現のしかた、材料の使い方はさまざまです。我々設計事務所もお施主様の要望や好みに合ったもの、敷地との相性などを総合的に検討して外壁を提案しています。上記の素材を組み合わせるのもありだと思います。サンプルを見て悩みながら決定したその材料が、あなたの住まいの個性となるはずです。
2019年02月05日