『殺人の追憶』のラストで、ソン・ガンホが演じる刑事は、覗き込んだ排水溝の奥に何を目にしたのか……。見つめる先を確かめたい欲求に心をかき乱されたわれわれ観客は、同じポン・ジュノ監督のこの『スノーピアサー』で、次々と目の前に迫ってくる“その先の光景”の鮮烈なビジュアルに圧倒され続ける。とにかく“見せて”驚かせる。自らの作風をアップデートさせる監督の強い意志に呆然とするしかない。もちろん監督のファンでなくとも、本作はシンプルに楽しめるだろう。その他の写真ストーリーは単純明快(このあたりも過去の彼の作品と印象が違う)。列車の後部車両で悲惨な生活を強いられてきた主人公たちが、一同決起し、前部車両に突進していく。近未来の格差社会で起こる革命が、1本の長い車両での“前進”によって展開するので、見た目にもひじょうに分かりやすい。ドアを開けるたびに出てくるユニークな車両風景で、テーマパークのアトラクションに乗っているような感覚も与えてくれる。革命団の、前へ、前へという方向性が映画自体の強力な推進力にもなった。そんなアトラクションに乗っていた観客は、要所で激しい一撃も喰らい、そこにポン・ジュノの本領が発揮される。近未来が舞台ながら、斧や棍棒という原始的な武器を多用したバトルは確実に生々しい痛みを伝えるし、ティルダ・スウィントンの“超・上から目線”総理に代表されるキャラクターのアクの強さは、トラウマになるレベル。ティルダは『グエムル/漢江〈ハンガン〉の怪物』に惚れ込んだことが出演のきっかけであり、ポン・ジュノ作品でなかったら、ここまで俳優と役の過剰な化学反応は実現しなかったかも。極めつけはクライマックスだ。『殺人の追憶』の刑事や、怪物グエムル、『母なる証明』の母のように、強い動機に突き動かされ、ひたすら前に進んだ主人公たちは、最後の最後に、前進に疑問を投げかける。はたして前に進むだけでいいのか? その疑問は、われわれ全人類への警鐘でもある。アトラクションとして存分に楽しんでいたら、脳天からガツンとやられ、骨太なテーマに引きずりこまれた感じ。でも、この感覚こそ、最高の映画体験じゃないか!?『スノーピアサー』公開中文:斉藤博昭
2014年02月17日雪と氷に覆われた近未来の地球をひたすら走る列車の中で、支配層と被支配層に分かれた人々が、“生きる”ための闘いを繰り広げる、映画『スノーピアサー』。韓国の鬼才ポン・ジュノ監督がクリス・エヴァンス、ソン・ガンホら国際色豊かなキャストを揃えた本作には、早くも劇場にかけつけた人々から「次に何が出てくるか分からないおもしろさ」「様々なバリエーションの車両が出てきて、TVゲームみたい」「人間の本質に迫った演出が実に冴えている」と、その多面的な魅力が語られているが、このほど、オスカー女優ティルダ・スウィントンが驚きの扮装で支配層の権力者を熱演する本編映像が到着した。新たな氷河期を迎えた地球上を周回する列車「スノーピアサー」では、主人公・カーティス(クリス・エヴァンス)ら最後尾に乗る乗客たちは、“生きる”ため、彼らを支配する圧倒的権力者・メイソン総理の非道に屈するしかなかった。だが、やがてカーティスはエドガー(ジェイミー・ベル)やナムグン(ソン・ガンホ)の力を得て、メイソン総理を転覆させるべく“革命”を実行する――。その非道で冷酷なメイソン総理を演じているのが、『フィクサー』でアカデミー賞「助演女優賞」を受賞したティルダ・スウィントン。今回公開された本編映像は、メイソンがカーティスたちに向かって圧倒的権力を振りかざす演説シーンで、スウィントンの比類なき女優魂を感じることができる映像となっている。スウィントンは、トム・ヒドルストンとヴァンパイヤの恋人同士を演じたジム・ジャームッシュ監督作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』などでは透明感ある中性的な魅力を放ち、男女問わず観客を魅了するエレガントな美人女優にもかかわらず、本作では牛乳瓶メガネに入れ歯で、原型をとどめない変貌ぶりを披露。映画を観た多くの映画ファンやマスコミ関係者が、驚嘆の声を上げている。さらに、そのスウィントンに関する衝撃の情報を、ポン・ジュノ監督自ら、先日プロモーションで来日した際に大暴露!監督によれば、なんとスウィントンは、このメイソン総理だけでなく、本作に“一人二役”で出演しているというのだ。監督に告げられるまで、本編を何度も観ている10人以上の宣伝チームでさえ誰一人と気付いておらず、その衝撃の登場場面はどこか尋ねても、監督は嬉しそうに「よく見ればすぐ分かりますよ」と満面の笑顔でお茶を濁すのみ。もう一つの役柄や登場シーンについては一切明かされることなく、監督は帰国してしまったという…。これから本作を観る人も、すでに鑑賞済みの人も、ポン・ジュノ監督からの挑戦状ともいえる、“もう一人のティルダ・スウィントン”探しに挑んでみてはいかが?『スノーピアサー』は2月7日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にて公開。(上原礼子(cinema名義))■関連作品:スノーピアサー 2014年2月7日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にて公開(C) 2013 SNOWPIERCER LTD.CO. ALL RIGHTS RESERVED
2014年02月12日『キャプテン・アメリカ』のクリス・エヴァンス、オスカー女優ティルダ・スウィントンらが出演するSFエンターテインメント大作『スノーピアサー』のジャパンプレミアが29日(水)に予定されているが、当日、登壇予定のポン・ジュノ監督に対する質問募集が行われている。その他の写真質問は映画公式FacebookとTwitterで受付中。ジュノ監督はカンヌやベルリンなど多くの映画祭で高い評価を集め、世界中に熱狂的なファンをもつ人気監督だけに、彼に質問できるのは貴重な機会だ。また、公式FacebookとTwitterでは未公開画像を使った壁紙の配布も行われている。本作の舞台は新たな氷河期を迎えてしまった地球。そこで生き残った人間は、“スノーピアサー”と呼ばれる列車に乗り込んでいるが、そこでは先頭車両の上流階級が列車を支配し、後方車両の乗客は奴隷のような扱いをうけていた。映画は、後方車両で暮すカーティス(エヴァンス)らが革命を起こすため、先頭車両を目指す姿を描いている。『スノーピアサー』2月7日(金) TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
2014年01月21日『グエムル-漢江の怪物-』(2006年)などで知られるポン・ジュノ監督の最新作『スノーピアサー』の日本版予告映像が公開された。フランスのコミック「LE TRANSPERCENEIGE」を原作にした同作は、ポン・ジュノ監督が初めてインターナショナル・キャストを迎え、英語作品として世界に発信する近未来SFエンタテインメント作品。地球温暖化を防ぐため化学薬品が撒かれ、新たな氷河期に突入してから17年が経った2031年。地球上を走る列車「スノーピアサー」だけが、生き残った人類にとって残された唯一の生存場所だった。先頭車両に乗る上流階級が、後方車両の乗客を支配する"世界"で、列車最後尾の住人カーティスは、仲間を引き連れて、自由を求め、反乱を試みて先頭車両を目指すのだが……。このたび公開された予告映像は、魚たちが泳ぐ巨大水槽やレストラン、教室などの充実した施設などがある上流階級が暮らす「先頭車両」と、最下層の人々が奴隷のように扱われ、武装した兵士たちによって支配されている、窓さえもない「後方車両」といった列車「スノーピアサー」内の様子を収録したものだ。主演を務めるのは『キャプテン・アメリカ』シリーズで知られるクリス・エヴァンス。またソン・ガンホ、ティルダ・スウィントン、オクタヴィア・スペンサー、ジェイミー・ベル、ユエン・ブレムナー、ジョン・ハート、エド・ハリスらが出演する。すでに公開された韓国では900万を超える大ヒットを記録し、10月30日に公開されたフランスではハリウッド超大作に続いて初登場第4位を記録。167カ国での公開が決定している。映画『スノーピアサー』は、2014年2月7日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国公開。
2013年11月20日