一度本気で好きになると、相手の欠点も含めて、愛そうと努力する人は多いと思います。しかし、別れたら「どうしてあんな人と付き合っていたんだろう?」と思うことってありますよね。そこで、最近よく耳にする別れの原因の一つ、元カレから受けた「ハラスメント」について聞いてみました。文・上岡史奈「脚太いのによくそんなミニスカート履けるよね」「デートで脚が出るスカートを履いていたら、彼が急に不機嫌になって。『脚が太いのによくそんなミニスカート履けるよね。もう少し人の目を気にしたら?』って言われたんです。悲しかったけど、確かにそうだと思って、デートでは露出が少ない服装ばかり着ていました」(25歳/IT関連会社勤務)これ、本当は彼氏も嫉妬していたのかもしれません。「他の男に見せたくないから履かないで」と言えば、「彼も可愛いところがあるな」と受け取れるはずなのに、相手を否定して従わせようとするのは立派なハラスメントです。「そんな言い方しないで」と言っても聞かないような男性とは離れた方が無難でしょう。「平社員がこんな高い化粧品を使う必要ない」「同棲していた彼がお金にものすごく細かくて。私のクレジットカードの明細も全部チェックしていました。『平社員のくせに、こんなに高い化粧品を使う必要がないだろう』とまで言われたことも。交際費も無駄と言われ、友達と会うお店もダメ出しされるし、窮屈で仕方がなかったです。でも、貯金ができない私にはこのくらい細かい人のほうがいいのかなと思って3年も付き合ってました」(27歳/ネイリスト)倹約家なのは悪いことではありませんが、貯金ができないとバカにしたり、相手のお金まで勝手に管理しようとするのはマネハラのひとつ。とくに、結婚もしていなのにお金を制限するのはやりすぎです。「女のくせに」「仕事ができて最初は魅力的に感じた元カレだったけれど、ちょいちょい「ん?」と思う発言がありました。例えば、彼のシャツのボタンが取れたときに『女のくせに裁縫セットくらい持ち歩いてないの?』と言われたり、彼の友達の店にご飯食べに行ったときも『女のくせに出しゃばって喋るのが好きだよね~』と言われたり……」(29歳/人材派遣会社勤務)「女のくせに」「女なんだから」と女らしさの理想を押し付けてくるのはジェンダーハラスメントのひとつ。これは女性の私たちも気をつけたいもの。「男のくせに病弱だよね」「男のくせに筋肉ないよね」などの発言もNGです。「男らしさ」「女らしさ」を押し付けない人のほうが魅力的なはずです。「慣れてしまう」前に逃げ出して!彼氏からハラスメントに遭っている女性に「別れたほうがいい」と忠告しても、「優しいところもいっぱいある」と彼をかばう発言や、「私も悪いから」と自分を責める発言が出てくることがあります。ハラスメントを日常的に受けると、洗脳されて「彼が正しくて、ちゃんとしていない私が悪い」という発想になってしまうのです。そうなる前に、違和感を感じたら早めに周りの人に相談して一人で抱え込まないようにしてください。©Antonio Guillem/shutterstock©fizkes/shutterstock
2019年12月12日セクシュアルハラスメントは、あらゆる場で起こりうるのが現状。被害を訴えることが難しい世の中に感じますが、今、「#Metoo」運動が日本でも広まっています。自らが受けたハラスメントを、「Me too(私も)」と声を上げるのです。今回、実際に被害を受けたという3人の女性のお話を聞いてきました。生きやすい社会にするためには、どのようにすれば良いのでしょうか。文・七海賛否両論あるけれど。声を上げることはいけないことなのだろうか少し前、ハリウッド女優がセクハラ被害を訴えたニュースが注目を集めました。それから著名人を含め、さまざまな女性が「Me too(私も)」と声を上げ始めました。その波紋は日本にも広がり、「#Metoo」を見かけることが多くなりました。さまざまな考えを持った人がいるので、この「#Metoo」は大きな議論を呼んでいます。勇気ある行動だと賛同する人もいれば、反対する人もいる。反対する人の意見としては、「被害者面している」「魔女狩りのよう」といった意見が目立つように思います。賛否両論は承知の上で問いますが、被害者が声を上げるのは ”被害者面” なのでしょうか?セクシュアルハラスメントは、どんなシーンでも起こり得ます。実際に被害に遭ったという女性の声を、何人かから聞いてきました。まずはその声に耳を傾けていただければと思います。会社の ”接待”。私は性を売る商売道具じゃない中小企業で働く、OLのマリカさん(仮名)。割合としては女性が多く、勤務中にセクハラを受けることはないと言います。しかし、苦痛なのは年に数回行われる接待なのだと語ります。その接待は、社員全員が出席して、取引先企業の人や社長の友人などをもてなすものです。社長の友人の飲食店で、貸し切りにして行われます。入社してから毎回出席していますが、強い違和感を覚えるそうです。取引先企業の人や社長の友人は男性が多いです。それぞれにご飯を取りわけたりお酌をしたりするのは良いのですが、問題はその先。酔いが回ってくると、男性陣は女性を ”指名” してきます。隣に座るように言われ、体を触られます。ときには抱きつかれることもあります。二次会になると、より少人数に。誰かに気に入られると、断れないような雰囲気で、そのまま二次会に行く形になります。二次会も社長の友人の店。大抵個人経営のスナックのようなところで、ボディタッチが激しくなります。接待の欠席はできない、とマリコさんは語ります。出欠は聞かれるそうですが、形式上のものに過ぎません。とても断れるような雰囲気ではなく、断っている人を見たこともないと言います。触られたり性的な質問をされたりするのが嫌で、当日お店の隅に座っていても、社長から大声で呼ばれるそうです。「この人にお酌してあげて」といったように。取引先企業の人と円滑なコミュニケーションを取るための接待は必要だと思いますが、そこに性的な要素がいるのでしょうか。私は性を売る仕事をしているわけではないのに、と悲しそうでした。同棲している彼氏からのハラスメント。耐えるしかないのか同棲して約半年の彼氏がいるという、シオリさん(仮名)。彼氏は頭に血が上りやすく、カッとなると暴言が酷いのだと言います。普段どちらも働いていますが、家事はほとんどシオリさんがしているのだそう。残業が続いて家事が滞ってしまうこともあり、そんなときは「使えない女」だと頭ごなしに怒鳴られるそうです。彼自身几帳面な性格で、例えばタオルの四隅がきちんとそろわずにたたまれていると、ずっと文句を言われるのだと言います。家事を手伝ってほしいと訴えても、家事は女がするものだからと自分では動きません。家の中で罵られるのは我慢すれば良いかなと思ってしまうのですが、人前で罵られるのには耐えきれないと語ります。共通の友人や彼の友人と食事会をすると、「家事ができない」「デブだから食費がかかる」などと言います。お酒が入って饒舌になると、夜の営みにまで言及するそうです。付き合った当初、同棲した当初はそういったことを感じなかったそうですが、3か月ほど経ってからそういった言動が目立つようになりました。何度伝えても直す気配がなく、耐えるのが限界な今、別れを考えているのだそうです。身体的DV。過去の被害に苦しむ今5年ほど前、交際していた男性から暴力を受けていたというアミさん(仮名)。彼女は現在結婚しており、新たな命を授かっているのだと言います。今のアミさんを見ると幸せそうなのですが、過去のDV経験が、いまだに彼女を苦しめています。DVをしていた男性は、交際当初、Sっ気のある男性だという認識だったそう。性行為のときにそういった気が見られたからだと言います。しかしそれは、徐々にエスカレート。普段は優しい彼ですが、性行為になると殴ったり首を絞めたりといった行動が出るようになりました。暴力を受けるのが性的シーンであったため、誰にも相談ができなかったと言います。暴力が発覚するのを恐れてか、顔など見える部分ではなく、お腹など服で隠れる部分を殴られたそうです。泣いてやめてと叫んでも、決してやめてもらえませんでした。「お前が苦しんでいる姿を見ると興奮する」「殺して刑務所に入るのは嫌だから何度も半殺しにする」などと言われるようになり、恐怖心のあまり逃げ出しました。それでも付きまとわれ、電話番号も住居も会社も変えたのだと言います。性行為の場面での被害ということで、警察に行くのが恥ずかしかったそう。軽蔑されるのが怖くて、ご主人にも告白することができないのだと言います。これから生まれてくる子どもは女の子だそうで、「自分と同じ経験をしたらどうしよう」と涙を浮かべました。声を上げないと変わらない。「#Metoo」は本当に ”被害者面” だろうか「#Metoo」はある種ムーブメントでしょう。そこに便乗して「私も」と声を上げることは、果たして ”被害者面” をしていることになるのでしょうか。今回勇気を出して経験を語ってくれた3人の女性は、それぞれがつらい思いをしています。そして、それぞれが社会に疑問を抱き、それぞれが声を上げにくいと感じていました。声を上げなければ、”なかったこと” にされてしまいます。社会は変わらず、被害者も減りません。「#Metoo」があることで、言いやすくなったと感じる女性がいるのは事実。今まで声を上げられなかった人たちが声を上げられるようになり、社会問題が浮き彫りになるのは決して悪いことではないです。被害者は文字通り被害者であって、声を上げることと ”被害者面” をイコールとしてはならないと思います。「#Metoo」ムーブメントに不満を覚えるのはなぜですか? ”弱者” は弱者らしくしていないと不都合があるのでしょうか? ”冤罪” のような形になることを危惧する人もいるでしょうが、そもそもセクハラがなければ冤罪は起こりえません。冤罪被害を訴えるより先に、冤罪が起こりえない社会を作ったほうが、セクハラ被害者・冤罪被害者が減るのではないでしょうか。また、男性が声を上げにくい社会であることも認識しています。ジェンダー的に、「男性は強くなければならない」という風潮が根強いと感じるからです。セクシュアルハラスメントはもちろん、さまざまなハラスメントに遭う男性がいても決しておかしくありません。”男性らしさ” を求められるがゆえに、女性が「Me too(私も)」と声を上げられるのは、ともすれば疎ましく感じるのかもしれません。そういった社会も変えていきたい、私はそう考えています。女性だけでなく、男性は男性で「Me too(私も)」と声を上げられる社会が望ましいのではないかと。そうして社会問題を可視化することが、解決への糸口だと思います。ハラスメントがある社会は、決して生きやすい社会だとは思いません。勇気ある行動が、生きやすい社会を作るのです。さて、もう一度問います。被害者が声を上げるのは ”被害者面” ですか?(C)shironosov/Gettyimages(C)Rawpixel/Gettyimages(C)KatarzynaBialasiewicz/Gettyimages(C)somkku/Gettyimages(C)Björn Foreniu/Gettyimages
2017年12月30日