知的障害の「繰り返し行動」に焦点を当てたヘラルボニー新プロジェクト「ROUTINE RECORDS」、金沢21世紀美術館にて開催Upload By 発達ナビニュース2022年10月1日(土)〜2023年3月21日(火・祝)に、金沢21世紀美術館デザインギャラリーにて、福祉実験ユニット「ヘラルボニー」 の新プロジェクト「ROUTINE RECORDS」が開催されます。このプロジェクトは、金沢21世紀美術館デザインギャラリーを作品展示の場としてだけでなく、調査・ 研究・実験の場として開くことを目的に2017年より始動した〈lab.〉シリーズの第5弾となっています。「ROUTINE RECORDS」は、金沢市内の特別支援学校や福祉施設、他県の福祉施設に通う知的障害のある人が習慣的に繰り返す、日常の行動(ルーティン)から生まれる音を音楽として届ける試みです。繰り返し行動(ルーティン)を行う知的障害のある人々を「ルーティナー」と呼び、その日常から生まれる様々な音について、多角的に知ることができるような構成になっています。会場では、日常のさまざまなルーティンが生み出す「音」や「言葉」を聞くことができる視聴コーナーや、ルーティン音をもとにプロの音楽家が作成した楽曲の視聴、実際にルーティンによって生まれた音から音楽を制作できるDJ体験ブースなどが設けられており、日常の音が音楽となるプロセスを体験することができます。また、特設WEBサイトでも、ルーティンから生まれた音などの一部が公開されます。繰り返し行動が生み出す「音」という新たな視点から、多様な背景を持つ他者への理解を深める良い機会となるのではないでしょうか。※クリックすると、発達ナビのサイトから、「ROUTINE RECORDS」の公式サイトに遷移します。※クリックすると、発達ナビのサイトから、「金沢21世紀美術館」の公式サイトに遷移します。<詳細>【期間】:2022年10月1日(土)〜2023年3月21日(火・祝)/10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)【会場】:金沢21世紀美術館 デザインギャラリー【料金】:無料【休場日】:月曜日(10月10日、31日、1月2日、9日は開場)、10月11日(火)、11月1日(火)、12月29日(木)〜1月1日(日)、1月4日(水)、10日(火)【主催】:金沢21世紀美術館「リト@葉っぱ切り絵 優しい森の仲間たち展 in YOKOHAMA」12月17日(土)~横浜赤レンガ倉庫にて開催Upload By 発達ナビニュース2022年12月17日(土)~2023年1月15日(日)に横浜赤レンガ倉庫1号館2Fスペースにて、「リト@葉っぱ切り絵 優しい森の仲間たち展 in YOKOHAMA」が開催されます。リトさんはADHD当事者でもあり、その特性の一つである「過集中」を前向きに生かすため、2020 年より独学で葉っぱ切り絵の制作を始め、現在TwitterやInstagramなどで人気を博しています。本展は、「森の入口」から始まり、第1章「森の一日」、第2章「森の一年」、第3章「森の仲間たち」、第4章「森のパーティーにご招待」、第5章「葉っぱ切り絵ができるまで」とそれぞれのテーマごとに素敵な世界観を楽しめる構成となっています。さらに12月17日(土)~25日(日)には、第4章「森のパーティーにご招待」がクリスマスムード一色になるクリスマス限定企画も予定されています。ADHDの診断を受けてから、発達障害の情報を発信し理解を広めたいと、試行錯誤を繰り返してきたリトさん。ADHDの特性はネガティブに受け取られてしまうこともありますが、得意を活かすことで可能性が広がることもたくさんあるでしょう。リトさんだからこそ生み出せる素敵な葉っぱ切り絵の世界をこの機会にぜひ堪能してみてはいかがでしょうか。※クリックすると、発達ナビのサイトから、「リト@葉っぱ切り絵 優しい森の仲間たち展 in YOKOHAMA」の公式サイトに遷移します。<詳細>【会場】: 横浜赤レンガ倉庫1号館 2Fスペース【会期】: 2022年12月17日(土)~2023年1月15日(日)【時間】:12月25日(日)まで: 10:30~20:00(最終入場19:30)12月26日(月)から: 10:30~18:00(最終入場17:30)【料金】:前売券:大人(中学生以上)1,200円/子ども500円当日券:大人(中学生以上)1,500円/子ども800円※2歳未満の乳幼児は無料。※障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名まで無料。【主催】: ドリームスタジオ【共催】: 横浜赤レンガ倉庫1号館[公益財団法人 横浜市芸術文化振興財団]【協力】: 講談社チケット購入はこちらから※クリックすると、発達ナビのサイトから、eplusの「リト@葉っぱ切り絵 優しい森の仲間たち展 in YOKOHAMA」チケット購入ページに遷移します。金子書房主催のオンラインセミナー「発達性ディスレクシアのアセスメントと支援」1月29日(日)に開催Upload By 発達ナビニュース発達性ディスレクシアは、学習障害/限局性学習症の中で、文字を読むことに困難があるタイプを指します。ディスレクシアは、文字を音と結びつける「音韻処理」や、文字の形を認識したり語句のまとまりを認識し意味と結びつける「視覚的な処理」などに必要な脳の部位に何らかの機能障害や偏りがあると考えられています。今回は、ディスレクシアの音韻的側面に焦点を当て、アセスメントで行うべき音韻意識課題、子どもの実態に合わせた支援、配慮すべき子どもの心理面などを通して、発達性ディスレクシアがある子どもの理解と支援について学べるセミナーになっています。講師は、北里大学教授であり言語聴覚士である石坂郁代先生です。ディスレクシアについて、ディスレクシアの支援について理解を深める良い機会になるのではないでしょうか。<詳細>【日時】:2023年1月29日 (日)14:00~16:00【場所】:オンライン【講師】:石坂郁代先生(北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科言語聴覚療法学専攻教授/言語聴覚士)【料金】:リアルタイム視聴のみ3,000円/リアルタイム視聴+録画視聴(配信期限あり)4,000円【主催】:金子書房申し込みはこちらから※クリックすると、発達ナビのサイトから、peatixの「発達性ディスレクシアのアセスメントと支援」チケット購入ページに遷移します。11⽉14⽇(⽉)~12⽉25⽇(日)、「セレオ」「nonowa」のクリスマスビジュアルを福祉施設が制作Upload By 発達ナビニュース2022年11⽉14⽇(⽉)~12⽉25⽇(⽇)、JR中央線コミュニティデザイン運営の商業施設「セレオ」「nonowa」9店舗にて、「想造楽⼯(そうぞうがっこう)」と、⼋王⼦・⽴川の福祉施設が制作したクリスマスビジュアルデザインが使用されます。福祉施設の利用者34名が描いた絵が、エントランスや装飾物、販促物に使用されています。「想造楽⼯(そうぞうがっこう)」は、「枠を超える創造を⼀緒に」をスローガンに、株式会社ニューモアが企画運営する事業です。福祉作業施設に通う障害のある⽅の絵にデザインのアレンジを加えることで、商業デザインへの展開を行っています。 現時点で全国6カ所の福祉施設とパートナー事業所として提携し、これまでに企業や⾃治体などと77件のコラボレーシ ョンをしました。今回の企画では、パートナー事業所である2カ所の福祉施設、就労継続⽀援 B型事業所「しあわせのたね」(八王子市)、多機能型事業所「ワークセンターまことくらぶ」(⽴川市)と絵の制作を⾏いました。2ヶ所の福祉施設利⽤者の⽅々の描いたクリスマスイラストを円形に並べ、リースのように⾒⽴てたデザインになっているそうです。クリスマスの買い物と共に、個性的で可愛らしいイラストを楽しんでみてはいかがでしょうか。※クリックすると、発達ナビのサイトから、「想造楽工」の公式サイトに遷移します。<詳細>【期間】:2022年11⽉14⽇(⽉)~12⽉25⽇(⽇)【場所】:セレオ各店舗、nonowa各店舗●セレオ⼋王⼦、セレオ相模原、セレオ⻄⼋王⼦、Dila拝島、セレオ甲府:11/14(⽉)〜12/25(⽇)●セレオ国分寺:11/18(⾦)〜12/25(⽇)●nonowa東⼩⾦井、nonowa武蔵⼩⾦井、nonowa国⽴:11/28(⽉)〜12/25(⽇)「セレオ」「nonowa」総合トップページ※クリックすると、発達ナビのサイトから、JR中央線コミュニティデザイン「セレオ」「nonowa」の総合トップページに遷移します。JTBデータサービス、障害のある方の作品を使用したJTBトラベルギフト「チャレンジド・デザイン」カードを販売Upload By 発達ナビニュース障害のある方の作品を使用したJTBトラベルギフト「チャレンジド・デザイン」カードが2022年11月16日(水)より発売されました。デザインは、「旅行」「贈り物」「ダイバーシティ」をテーマとする3種類があり、使用場面などに合わせて自由に選ぶことができるようになっています。JTBトラベルギフト(カード型旅行券)は、全国のJTBグループ店舗、JTB Webサイトで旅行代金の支払いに利用できるカードです。使用後も記念として手元に残すことができます。㈱JTBデータサービス(JTBグループ)は、障害がある方々が継続して自立できる仕組みの実現を目標に、一般就労をめざす障害者と社会をつなぐための取り組みとして、「チャレンジド・デザイン」カードを発売しました。大切な人への贈り物として、また自分へのご褒美として、この機会に利用してみてはいかがでしょうか。※クリックすると、発達ナビのサイトから、JTBデータサービス「チャレンジド・デザインカード」の詳細ページに遷移します。<販売価格>●「チャレンジド・デザイン」カード料金:2,200円(消費税込み)●旅行券面額<ご希望の購入金額をチャージ>:3,000円~500,000円●送料:770円(消費税込み)LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2022年12月14日「読むこと」に苦手意識のある、ディスレクシアや発達が気になる全てのお子さんのために。学校で教科書を読む、知識を得るために本を読む、解くために試験問題を読む。お子さんの現在から将来に渡って必要となるのが、この「読む力」です。そしてこの「字を読むこと」に困難がある学習障害のひとつに、ディスレクシアというものがあります。字を読むスピードの遅さ、読み間違いの多さが特徴です。ディスレクシアに限らず発達が気になるお子さんにとって、「読む力」を育むことは生きる力を育むことに繋がります。でも一体、その「読む力」はどのように育むことが出来るのでしょうか?そこで今回は、医学博士の平岩幹男先生を中心として結成された「読みの学び直し」を支援するプロジェクトチームの代表の方に、ディスクレシアのことや「読む力」の育て方、そして今回開発された新しい学習法について、お話を伺いました。Upload By 発達ナビ編集部平岩幹男 先生医学博士。Editorial board: Austin Journal of Autism and Related Disorder。発達障害にかかわり続けて、これまでに多くの子どもたちと出会ってきました。1976年東京大学医学部医学科卒業。三井記念病院小児科、東京大学医学部研究生を経て帝京大学医学部小児科助手〜講師。1992年戸田市立健康管理センター母子保健課長〜参事・健康推進室長。2009年Rabbit Developmental Research開設(代表)。2012年〜2019年国立成育医療研究センター理事。専門領域:発達障害(自閉症)、乳幼児健診、思春期医学など。著作多数。脇坂龍治 様Team読むトレGO!代表、Edtech企業の(株)サムシンググッド社長。プリキュアなどのキャラクターを使った知育アプリの開発や英語学習ソフトを開発。発達性協調運動障害を抱えるお子さん向けにUooh!(ウー)運動療育ラボを2施設運営。「読む力」を楽しく伸ばすために開発された、「読むトレGO!」とは?この「読みの学び直し」を支援するプロジェクトチームが開発し、7月10日に発売開始されたのが『読むトレGO!』。ディスレクシアや読みの学び直しのために開発された、Nintendo Switch(TM) 対応のゲームアプリです。※1Upload By 発達ナビ編集部画面に表示された文字をマイクに向かって声に出して練習していきます。マイク+音声認識AIプログラム使用することで、正しく読めたかというフィードバックが即座にされることで、お子さんにとっての理解の促進だったり、もっとやりたいという意欲の向上につながります。Upload By 発達ナビ編集部その他にも、文字をバラバラに捉えるのでは無く一つのまとまりとして読むことや、音を聞いて正しい文字を使い分けるトレーニングをすることを通して、「読む力」を定着させていくことができる学習法です。開発チーム代表の脇坂氏に伺った、「ディスレクシアのお子さんにとって本当に意味のある学習の形」とは?ーーディスレクシアのお子さんの「読む力」をどのように伸ばしていけば良いか、悩まれているおうちの方も多いと聞きます。脇坂さん:「読む力」については学校のサポートにも期待したいところですが、日本の義務教育では「読み」と「書き」を同時に学習していきます。それは読みに困難を抱える子どもにとって、とても大変な学習法であると言わざるを得ないでしょう。その意味でもご家庭での関わりが大切となってきます。「読む力」を伸ばすために、私たちソフト開発陣が一番最初に先生方に教わった2つのことは、①まずは読みのトレーニングを中心にすること、 ②読みの学び直しの機会を提供すること、でした。ーーその2つの方法の実践として発売された、Nintendo Switch 対応のゲームアプリ「読むトレGO!」について教えてください。脇坂さん:「読むトレGO!」の特徴は3つあります。一つ目は発達障害分野の第一人者である医学博士の平岩先生との共同研究であること。専門家が一から十まで膨大な時間を割いて開発にあたるケースはとても珍しいと思いますし、それだけにディスレクシアのお子さんにとって価値あるソフトが開発できたと考えています。二つ目は、音声認識によるトレーニングであるということです。読みが苦手であれば少なからず書きにも困難が伴うはず。ですので、文字を見て→ノートに書いて→覚えるという学習方法は難しいこともあるのではないでしょうか。だからこそ、文字を見て音声で答える、これをリズムよく繰り返す事で、まずは読みに集中したトレーニングを積み重ねることができます。三つ目は、実証実験による効果をきちんと確認したのちに製品化していることだと思います。Upload By 発達ナビ編集部ーー実証実験の結果はどのようなものだったのでしょうか?脇坂さん:「読むトレGO!」では、ディスレクシアの診断(DSM-5thに基づく)を受けた児童10名程度を対象にした実証実験を、2回に渡り実施しています。4週間の実験用ソフトを活用したトレーニングを通して、なんと全ての児童の読みのスピードが向上し、2/3の児童は20%以上向上の数値が出ているんです。※2ーー確かな結果が出ているのですね。この「読むトレGO!」ですが、そもそも何故つくろうと思われたのですか?脇坂さん:私たちは教育×ITに特化した開発を行っているのですが、当社の役員の息子さんが自閉症ということがあり、以前から発達障害分野は身近に感じていたんです。私たちのIT開発力を、発達障害、ディスレクシアの分野に活かせないか?という相談を、平岩先生と始めたのが開発のきっかけでしたね。Upload By 発達ナビ編集部ーーそして平岩先生を中心に開発される中で、特にどのような点に気をつけながら進めたか教えてください。脇坂さん:やはり全ては子どもたちの反応を大切にすることですね。ディスレクシア診断のお子さん、そうでないお子さんにソフトを利用いただき、本当に多数の意見を頂戴しました。その中で先ほどの実証実験の結果も得ることができたので、それを自信に変えながら開発を進めていくことができたと思います。開発途中でご協力いただいた皆さまに、とても感謝しております。ーーゲーム機という形を選ばれたのには、何か理由があったんでしょうか?脇坂さん:企画初期段階、「教科書を見ただけで泣き出す子もいるんだよ…」と平岩先生から言われた言葉がずーっと頭にこびりついていて。最終的にNintendo Switch用アプリとして開発することにしました。Switchなら、ジョイコンで剣を振り漢字の勉強ができる。こんな無駄な動作を入れ込むことが出来るのが良いことですね。ゲームは無駄の集まりとも言うことができますし、それがお子さんにとっての楽しさに繋がっていきます。コンセプトは机に座らない=勉強っぽくない学習ですね。Upload By 発達ナビ編集部ーーその他にもご家庭で「読む力」を育むために出来るトレーニングはありますか?脇坂さん:読みの学び直しのトレーニングブックもあるので、それを活用してご家庭で力を伸ばすこともできます。「読むトレGO!」の共同研究を頂いた平岩先生は、今年の6月に書籍版の「読むトレGO!(合同出版)」を出版されています。こちらの本では、まずは何をすべきなのか?などの基本をおうちの方が理解することからスタートします。その後にワークブックでお子さんの練習に取り組んでいく、という一連の流れで構成されているので、初めてでも取り組みやすいと思いますよ。ーーお話をいただきありがとうございました。最後に、ディスクレシアのお子さんをお持ちのおうちの方へメッセージをお願いします。脇坂さん:お子さんの将来の話で言えば、例えば小学2年生の漢字の読み書きができると簡単な日誌などが書けるようになり、単純に就労機会が広がっていきます。小学4年生の漢字を読むことができれば、さらに広がり収入が増えることにつながります。何より子どもたちの自己肯定感の向上が望めるでしょう。平岩先生は良く仰います。「読みの学び直しは何歳からでも遅くない」と。これからも多くの方々から意見を頂戴しながら、ソフト開発に邁進する所存です。どうぞ応援よろしくお願いいたします。『読むトレGO!』でご自宅にいながら「読む力」を伸ばしませんか?Upload By 発達ナビ編集部開発者の脇坂氏の想い、いかがでしたでしょうか。「読むトレGO!」は、合計6コンテンツ、54レベル、227ステージの反復練習を通して、「読む力」を飽きずに楽しく育めることも大きなポイントです。本を読んだり教科書に向かったり自分一人での学習を続けることが難しい場合でも、リアクションがありゲームとして楽しめる学習なので、より効果的に継続的に「読む力」を育むことができます。ディスレクシアや発達が気になるお子さんの成長を応援する、『読むトレ GO!』という新しい学習教材。きっとお子さんの「読む力」を楽しく伸ばしていく、強い味方となってくれるはず。この『読むトレGO!』ですが、いよいよ一般販売がスタートします。下記のボタンより直接購入することも可能ですので、ぜひご自宅で「読む力」を楽しくトレーニングしてみてください。※1 Nintendo Switch Lite には対応しておりませんので、ご注意ください。※2 第1回目は2019年8月から1ヶ月程度。第2回目は2019年12月から1ヶ月程度。論文は小児科医の専門誌『小児科診療2月号』(2020/2/1発行:診断と診療社刊)に掲載。
2020年07月11日昨今、メディアでも取り上げられることが増えてきた「発達障害」。身近に当事者がいない人でも、この言葉を耳にする機会は多くなってきているのではないでしょうか。そんななか、NHKが「発達障害プロジェクト」と銘打ち、今年5月から1年を掛けて特集放送を行っています。このプロジェクトのなかのひとつに、イギリスのTVドラマ『ハンク―ちょっと特別なボクの日常―』があります。このドラマは、ディスレクシア(読み書き障害)の少年ハンクを主人公にした学園ドラマ。もともと2016年にNHKで放映されていたものを、「発達障害プロジェクト」に合わせて選りすぐりの5本を再放映するというもの。日本ではまだ発達障害を扱ったエンタメ作品の数は少ないですが、このイギリスのドラマでは「ディスレクシアとはどんなものか」を視覚的にわかりやすく表現しています。当事者たちが学校生活を送る上でどんな困難を抱えているか、さらにその困難さを主人公のポジティブな性格と大胆な発想で乗り越えていくさまをスパイスたっぷりに、コメディタッチで描かれています。■ディスレクシア(読み書き障害)とは?ディスレクシアとは、発達障害のひとつである「LD(学習障害)」の一種で、知的発達に遅れはないものの、脳の働きに特徴があり、文字や数字の読み書きなどに困難が生じることをいいます。有名人では、俳優のトム・クルーズやオーランド・ブルーム、映画監督のスティーブン・スピルバーグなどがディスレクシアであると告白していて、多くの人が障害について知るきっかけとなりました。主人公ハンクは12歳の少年。彼の場合は文字を読もうとすると「字が躍っている」ように見え、書くこと、計算も苦手。「作文の宿題をやろうとしても、文字が躍ってなかなか書くことができない!」「ミュージカルの主役に抜擢(ばってき)されたのに台本が読めない!」など、たびたびピンチに陥ります。どんなふうにこのピンチを切り抜けるのだろう? と思っていると、作文を書かされる回では、考えて考えて考え抜いた結果、「作文ではなくて、工作で伝えよう!」というとっぴな方法を思い付き、立派な作品を作り上げてしまいます。そう、彼のすごいところは、どんなピンチに遭遇しても決してあきらめず、ユニークなアイデアで切り抜けること。じつはハンクは頭の回転がとても速く、行動力もあるのです。なんでも突っ走ってしまうので、先生には怒られてばかりだけど…。■ディスレクシアの子どもが学校生活を乗り越える処世術ディスレクシアであることを悲観せず、親友や家族に助けられながら学校生活を送るハンクですが、ちょっとだけ愚痴が出ることも。「成績はいつもビリだから、いじめられる。ディスレクシアだけど頑張ってるのに…。みんな結果しか見ないんだ」発達障害の子どもは、ときにいじめられたり、不登校になったりするとよく耳にします。これを「二次障害」と呼ぶのですが、まさにハンクも同じ。でも、彼はへこたれません! “成績ビリ”という自分のイメージを変えるためには、「何か得意なことをみんなに見せればいいんだ!」と考えることのできる強さがあります。ハンクの姿を見てハッとさせられるのは、そんな発想の転換。ディスレクシアの自分を受け入れ、ほかのことでカバーしたり名誉挽回を目指したり。とくに読み書きや計算についてはみんなと同じようにできないけれど、自分なりの方法でならゴールにたどり着くことができる。それがハンクの学校生活を乗り切る処世術であり、二次障害を深刻にしない助けになっているようです。■発達障害児子育てのヒントがいっぱいあった!筆者にも、発達障害の疑いのある息子3歳がいます(診断待ちの状態です)。まだ私自身も発達障害について初心者で、毎日迷いながら子育てをしています。療育や幼稚園、児童館など、ほかのお子さんたちと活動をする場所に行くと、つい「みんなと同じように」やらせたいと思ってしまいます。でも息子には「できること」と「できないこと」があって、それが息子にとって大きな負担になってしまっていると感じることも多くあります。そして私は、あとから反省することばかり…。また、同じような境遇のママたちと会話して思うのは、自分も含めみなさん真面目だということ。病院や療育の先生のアドバイスひとつ取っても、まっすぐ受け止めすぎてしまいます。子どものことを考えて、「少しでもできることを増やしたい」という必死な思いが、いつの間にか「アドバイスどおりにしなければならない」という強迫観念にも近いものに変わってしまい、そこから外れるものを許容できなくなってしまうのです。どんなことをするにも、答えはひとつではないし、手段もひとつではありません。ハンクの行動は、それを証明しているように思えます。ママの考え方にしてもきっと同じではないでしょうか。みんなと同じようにできなくてもいい。いろんなやり方を試して、生きる力を身に着けることの方がきっと大事なはず。ステレオタイプにとらわれず、柔軟な考え方・受け止め方ができれば、発達障害児の育児の窮屈さが少しでもやわらぐのではないでしょうか。そんな、ちょっとしたヒントを、ハンクから教えてもらった気がしました。TVドラマ「ハンク―ちょっと特別なボクの日常―」第4回は、NHKにて9月23日(土)23:25より、第5回は、NHKにて9月30日(土)23:35より放映。<NHK発達障害プロジェクト 今後の放送予定>・2017年9月24日(日)午後11:00~11:50 NHK「深夜の保護者会」「発達障害 子育ての悩みSP」・2017年9月26日(火)午後8:00~8:29 Eテレ「ハートネットTV」 「自閉症アバターの世界 ①」・2017年9月27日(水)午後8:00~8:29 Eテレ「ハートネットTV」 「自閉症アバターの世界 ②」・2017年9月27日(水)午前8:15~9:54 NHK「あさイチ」 「シリーズ発達障害 どう乗り越える? コミュニケーションの困りごと」※内容は変更になる場合がありますNHK 発達障害プロジェクト 【発達障害についての記事一覧】▼大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界(全4回)▼「うちの子、発達障害かも!?」と思ったら(全9回)
2017年09月22日ディスレクシアの症状・特徴とは?出典 : ディスレクシアは「字を読むことに困難がある障害」を指す通称で、読字障害、読み書き障害、難読症、識字障害などとも呼ばれます。知的な遅れはなく、会話は問題なく理解することができるのに、知的水準や教育段階に見合わない読みの困難があるのが特徴です。ディスレクシアとは、通常、会話(話し言葉の理解や表現)は普通にでき、知的にも標準域にありながら、文字情報の処理(読み書き)がうまくいかない状態を指します。ディスレクシアである人は、文字を読む為に必要な脳の情報処理に問題があると考えられています。主な文字認識の問題は、大きく以下の2つです。1.「文字の読み方の認識が難しい」音韻処理の不全音韻機能とは最小の音単位を認識・処理する能力を指しますが、ディスレクシアの人の脳の特性として、音韻の処理に関わる大脳基底核と左前上側頭回という領域の機能異常があるという説が主流となっています。そのため音を聞き分けたり、文字と音を結びつけて「読む」ことが難しいと言われています。・文字を音に変換して読むのが苦手・単語のまとまりを理解するのが難しい・耳から聞いて記憶するのが苦手2.「文字の形の認識が難しい」視覚情報処理の不全ディスレクシアの人の中には、視覚認識や眼球運動に偏りがあり、普通の文字の見え方とは違った見え方をしている人もいると言われています。・文字がにじんだり、ぼやけた状態で見える・らせん状に文字がゆがんだり、3Dのように浮き出て見える・鏡に映したように文字が左右反転して見える・文字を点で描いているような点描画に見える以上の状態から文字が読み取りづらく、語句や行を抜かしたり、逆さ読みをしたり、音読が苦手な傾向にあります。また、読みだけでなく、読めないことで書くことにも困難があらわれる場合もあります。ディスレクシアの人は文字が全く読めないわけではなく、文字を理解するのに非常に時間がかかるのがその特徴です。一方、音声にすると理解することが多く、会話能力は問題ないことがほとんどです。ディスレクシアはいつ分かる?診断の年齢は?出典 : ディスレクシアは先天的な脳機能障害ですが、知的な遅れがなく、見た目にも分かりづらいことから症状に気づくまでに時間がかかることがあります。一般的には文字を習い始める頃に気づくことが多いとされ、小学生以降の診断がほとんどです。就学前の乳幼児期には文字に興味を示さなかったり、言葉の発達が遅れるなどの症状が現れますが、専門機関に行っても経過観察になることがあります。日本でのディスレクシアの認知度はまだまだ低く、最近になって少しずつ知られるようになりました。そのため、障害に気づかずに成長し、大人になってからディスレクシアの診断を受ける人もいます。また、ADHDや自閉症スぺクトラム障害などと合併している場合もあり、それらの診断や治療の過程でわかることもあります。専門機関でディスレクシアの診断を受ける目安は?出典 : ディスレクシアの症状のあらわれ方は一人ひとり違います。そのため困りごとの解決法も一人ひとり異なり、ただ単純に勉強量を増やすだけでは読めるようにはなりません。ところが、本人は頑張っていても読めないのに、怠けていると思われることも多く、先生や親から叱られることもあります。そこからうつ病や不登校などの二次障害を引き起こすことがあるため、早めにディスレクシアと気づいて適切なサポートにつなげることが大切です。今現在、ディスレクシアを医学的に根本治療する方法は確立されていません。診断は必ず受けなくてはいけないものではありません。ですが、検査によって何に困難を感じているかがわかることがあり、それが支援や解決のきっかけになることも多くあります。ディスレクシアと思われる症状が見られたら、まずは専門機関で相談だけでも受けることをおすすめします。ディスレクシアの診断基準出典 : 日本では標準化された診断基準が存在せず、医学的な診断ではディスレクシアという名称は使用されません。同じような症状として医療機関では世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)における特異的読字障害(Specific Reading Disorder)やアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)における限局性学習障害(Specific Learning Disorder)として診断されます。近年使用されることが多い最新の診断基準『DSM-5』では、ディスレクシアもディスグラフィア(書字障害)やディスカリキュリア(算数障害)などとともに「限局性学習症・限局性学習障害」という名称で診断されます。この診断基準に多くあてはまり、特に「読字の正確さ」「読字の速度または流暢性」「読解力」に困難がある場合は、ディスレクシアとして考えることができます。以下が『DSM-5』の診断基準です。A.学習や学業的技能の使用に困難があり、その困難を対象とした介入が提供されているにもかかわらず、以下の症状の少なくとも1つが存在し、少なくとも6ヶ月間持続していることで明らかになる:(1)不的確または速度が遅く、努力を要する読字(例:単語を間違ってまたゆっくりとためらいがちに音読する、しばしば言葉を当てずっぽうに言う、言葉を発音することの困難さをもつ)(2)読んでいるものの意味を理解することの困難さ(例:文章を正確に読む場合があるが、読んでいるもののつながり、関係、意味するもの、またはより深い意味を理解していないかもしれない)(3)綴字の困難さ(例:母音や子因を付け加えたり、入れ忘れたり、置き換えたりするかもしれない)(4)書字表出の困難さ(例:文章の中で複数の文法または句読点の間違いをする、段落のまとめ方が下手、思考の書字表出に明確さがない)(5)数字の概念、数値、または計算を習得することの困難さ(例:数字、その大小、および関係の理解に乏しい、1桁の足し算を行うのに同級生がやるように数字的事実を思い浮かべるのではなく指を折って数える、算術計算の途中で迷ってしまい方法を変更するかもしれない)(6) 数学的推論の困難さ(例:定量的問題を解くために、数学的概念、数学的事実、または数学的方法を適用することが非常に困難である)B.欠陥のある学業的技能は、その人の暦年齢に期待されるよりも、著明にかつ定量的に低く、学業または職業遂行能力、または日常生活活動に意味のある障害を引き起こしており、個別施行の標準化された到達尺度および総合的な臨床消化で確認されている。17歳以上の人においては、確認された学習困難の経歴は標準化された評価の代わりにしてよいかもしれない。C.学習困難は学齢期に始まるが、欠陥のある学業的技能に対する要求が、その人の限られた能力を超えるまでは完全には明らかにはならないかもしれない(例:時間制限のある試験、厳しい締め切り期間内に長く複雑な報告書を読んだり書いたりすること、過度に思い学業的負荷)。D.学習困難は知的能力障害群、非矯正視力または聴力、他の精神または精神疾患、心理社会的逆境、学業的指導に用いる言語の習熟度不足、または不適切な教育的指導によってはうまく説明されない。(日本精神神経学会/監修『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院/刊p65より引用)ディスレクシアの診断に関する相談先出典 : ディスレクシアかな?と疑問を持った場合、いきなり専門の医療機関に行くのは難しいので、まずは身近な専門機関の相談窓口で相談するようにしましょう。児童相談所や発達支援センターなどで知能検査や発達検査を受けられることもあります。発達障害の疑いがある場合には専門医を紹介してくれます。子どもか大人かによって、行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など知能検査や発達検査は児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、障害について相談することも可能です。その他、発達障害者支援センターで障害についての相談ができます。自宅の近くに相談機関が無い場合には、電話で相談に乗ってもらえることもあります。以下は小児神経学会が発表している、発達障害診療医師の名簿です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」ディスレクシアの診断の流れ、必要な持ち物は?出典 : ディスレクシアの場合、ディスレクシアがあるかどうかを調べて診断するだけでなく、どのような特性や困りごとがあり、どのような支援を必要としているかアセスメントを行うことが重要だと言われています。医療機関によっても異なりますが、まずは問診で現在の症状や困りごと、赤ちゃんの時から今までの生育・養育歴、既往症や家族歴などを調べていきます。脳波検査、頭部のCT、MRIなどでてんかんや脳の器質的な病気といった異常がないかを検査します。そして知能検査や認知能力検査などの心理検査を行います。知能検査では「WISC-Ⅳ」が代表的です。「WISC-Ⅳ」では本人のもつIQ水準をチェックし、言語理解、知覚推理などを検査します。(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月の幼児の場合は「WPPSI」、5歳から16歳11ヶ月の子どもは「WISC」、16歳以上の成人の場合は「WAIS」という知的検査を受けることによって検査結果がでます。)認知能力検査には日常生活や学校で習得できた知識や情報を認知的に処理する能力を調べ、神経心理学的な立場から認知的な処理能力と習得度を評価できる「KABC-Ⅱ」や「DN-CAS」などもあります。また、読むときの流暢性など読みに関する検査や、サッケード反応など視覚機能に関する検査が実施されることもあります。これら様々な情報を元に、総合的に学習障害やディスレクシアがあるかを判断するのです。また、こうした過程でADHDや高機能広汎性発達障害などが合併していないかも確認します。診断に必要な持ち物は診断する専門機関によって多少異なりますが、学習にどのような困りごとがあるかわかるように、学校や家庭で使ったプリントやノート、宿題帳、作文などを持っていくとよいでしょう。WISCやK-ABCなどの知能検査では基本的に持参するべき持ち物はありません。病院などの場合は保険証を持っていく必要があります。また、生育歴(子どもの発育記録)を聞かれることもあるため、気になった点などをメモしていくとよいでしょう。心配な方は事前に電話して必要な持ち物を聞くこともおすすめです。検査が困りごとを解決するきっかけになります出典 : 読み書きが困難であることは共通していますが、ディスレクシアの症状は様々で、一人ひとりに合う支援方法も異なります。自分の子どもは怠けている、自分の子育て方法が間違っていると思わず、ディスレクシアの特徴が現れていないか観察してみてください。少しでも兆候があるようであれば、専門機関で相談したり、検査を受けることをおすすめします。早めに気づいてあげることが、今後の学習支援や子どもの心のケアの面でも大切です。参考:ディスレクシア・ツールキット参考:一般社団法人日本ディスレクシア協会HP
2016年09月12日