ニューヨークで毎年夏、セントラルパーク内にある野外劇場を舞台に開催される大人気の無料公演、『シェイクスピア・イン・ザ・パーク』。およそ60年に及ぶ歴史のなかで数々の名作を生んできた同シリーズが2013年、久々となるシェイクスピア原作のミュージカルを送り出した。それが、いわゆる“第四の壁”を取り払う斬新な演出で知られるブロードウェイの鬼才、アレックス・ティンバースの脚色・演出による『ラヴズ・レイバーズ・ロスト -恋の骨折り損-』。10月1日より、上田一豪が演出を手がける日本語版が東京・シアタークリエで上演される。「これより3年間は恋愛禁止、ひたすら勉学に身を捧げる」という誓いをたてた、ナヴァール王国の国王ファーディナンド(三浦涼介)とその同級生たち(村井良大、渡辺大輔、入野自由)。だがその矢先、4人が大学時代に淡い恋心を寄せていた相手、フランス王女(中別府葵)とその親友たち(沙央くらま、伊波杏樹、樋口日奈)が現れる。国王のまた別の同級生アーマード(大山真志)が、メイドのジャケネッタ(田村芽実)に送ったラブレターをきっかけに、若い男女の禁断の恋心に火がともる……。シェイクスピアの原作を大胆に脚色したスタイリッシュなラブコメディに、進境著しい若手ミュージカル俳優の村井、宝塚出身の沙央を中心に、声優界やアイドル界からも精鋭が集ったにぎやかな座組が挑む!シアタークリエにて10月25日まで上演の後、11月1日から4日まで兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、9日・10日に福岡市民会館 大ホール、16日・17日に愛知県芸術劇場 大ホールにて公演を行う。文:町田麻子
2019年10月01日こんにちは。アートディレクターの諸戸佑美です。ハリウッド大作などアメリカ映画は、日本でもおなじみですが、アメリカという国をより知る上で欠かせないのは宗教ですね。移民の国であるアメリカ合衆国は、国民の約80%がキリスト教徒であり、かつプロテスタントの比率が高く、多数のプロテスタント教派が存立、宗教や信仰心は日々の生活の一部となっているのだそう。日本でもキリスト教信仰に基づいた教育の学校は多いですが【シネマの時間】第63回は、現代アメリカの宗教の姿を描いたヒューマンドラマ、映画『魂のゆくえ』をご紹介します!本作は、『タクシードライバー』『レイジング・ブル』などの傑作を手がけた脚本家として知られ、監督としても『アメリカン・ジゴロ』などの映画史に残る作品を生み出してきたハリウッドの巨匠ポール・シュレイダーが、構想50年の末に完成させた話題作!戦争で失った息子への罪悪感を背負って暮らす牧師が、自分の所属する教会が社会的な問題を抱えていることに気づき、内なる怒りと葛藤を抱え、やがて狂気の淵に追い込まれていく姿を衝撃的に描いています。主人公のトラー牧師には、『6歳のボクが、大人になるまで』『しあわせの絵の具愛を描く人モード・ルイス』など名俳優として知られるイーサン・ホークが味わい深い演技で素晴らしい。彼を頼る妊婦の女性に『マンマ・ミーア!』『レ・ミゼラブル』などでスター女優のアマンダ・セイフライド。ヴェネチア映画祭でお披露目された本作は、ポール・シュレイダー最高傑作と評され、本年度の賞レースでも大きな話題を集めており、ゴッサム賞では作品賞、脚本賞、男優賞の最多3部門でノミネートされ、脚本賞と男優賞を受賞。ナショナル・ボード・オブ・レビューでは脚本賞受賞、ベスト10選出、インディペンデント・スピリット賞でも作品賞、監督賞、主演男優賞の3部門にノミネート。さらに本年度のアカデミー賞では、ポール・シュレイダー自身初となるアカデミー賞脚本賞にノミネートを果たしています。4月12日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほか全国順次公開中!どうぞ映画館でお楽しみください。■映画『魂のゆくえ』あらすじー現代アメリカの宗教をテーマに描いた社会派ヒューマンドラマニューヨーク州北部の教会「ファースト・リフォームド」で牧師を務めるエルンスト・トラー。彼は自分自身の考えや出来事を記録した日誌を1年間書き続けることを決めました。ある日、トラーはミサに来た若い女性メアリーから、環境活動家の夫マイケルが思い悩んでいるので相談に乗ってほしいと頼まれる。仕方なく出向いたメアリーの家でマイケルと話したトラーは、彼が地球の未来に思い悩むあまり、「こんな世の中に子どもを産み落とすのは、間違いだ」。メアリーのお腹の子を産むのに反対していることを知ります。「2050年、僕らの子どもは33歳になっている。そのとき地球はどうなっていると思う?温暖化は進み、多くの地球は海に沈み、アフリカは干ばつで穀物の収穫量半分に。この事態を回避できる期限は過ぎてしまい、もう止めることはできない」とマイケルはトラーに語りかけます。「人間は、ずっと生きる意味を問いかけてきた。でもメアリーのお腹の中で育っているのは命だ。これは君だけの問題じゃない」と必死に説得を始めるトラー。「私の父も私も従軍牧師で、私は息子にもそれを勧めた。妻は強く反対していたが、息子は結局入隊することになった。そして6カ月後、彼はイラクで死んだ。私は戦争に息子を送り込み、彼を殺したんだ。妻は私のもとを離れ、私は軍を辞めた。行き場がなくて困っていたところをアバンダント・ライフ教会の牧師に助けられ、ファースト・リフォームド教会の牧師になった。マイケル、約束する。君が子どもをこの世に産み落とすことにどれだけ絶望してようとも、それは子どもをこの世から奪い去ることの絶望とは比べものにならない」と自分自身の辛い体験を通して命の大切さを語ります。しかしながら教会に戻ったトラーは、これで良かったのかと思い悩みます。心の底ではマイケルに共感し、自分の説明に納得のできないもうひとりの自分がいるのでした。一方、トラーは、ジェファーズ牧師とともに教会の250年式典の準備に追われていました。用を足すと尿は血の色で体調も思わしくありません。病院で検査を受けると病名は、癌でした。ある日、メアリーから突然携帯に連絡があります。「すぐにきて。いますぐに」メアリーの家を訪れるとガレージに案内されました。「電池のストックを探していて偶然これを見つけてしまったの。マイケルがガレージで何か作っていると思ったら……」それは、爆弾を装着した自爆テロのためのベストでした。「このままにしていてはまずい。とりあえず私が持ち帰る」警察には通報しないと約束し、トラーは教会に戻りました。そんななか、彼は自分の所属する教会が、環境汚染の原因を作る大企業から巨額の支援を受けていることを知るのです。本当の正義とは一体何なのか?トラーの心は徐々に揺らぎ始め、やがて怒りにも似た感情が彼を蝕んでいくのでした…!■映画『魂のゆくえ』作品紹介映画『魂のゆくえ』2019年4月12日(金)、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー!公式サイト:原題:『First Reformed』監督・脚本:ポール・シュレイダー製作:クリスティーン・ベイコン、ダビド・イノホサ、フランク・マーレイ、 ジャック・バインダー、グレッグ・クラーク、ヴィクトリア・ヒル、 ゲイリー・ハミルトン、ディーパック・シッカ製作総指揮:ブライアン・ベックマン、フィリップ・バージン、ブルック・リンドン=スタンフォード、 マーティン・マッケイブ、ルカ・スカリージ、ミック・サウスワース、イン・イェ撮影:アレクサンダー・ディナン編集:ベンジャミン・ロドリゲスJR.美術:グレース・ユン衣装:オルガ・ミル音楽:ラストモード製作年:2018年製作国:アメリカ・イギリス・オーストラリア合作上映時間:113分映倫区分:G字幕:亀谷奈美字幕監修:森本あんり提供:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン配給:トランスフォーマー© Ferrocyanide, Inc. 2017. All Rights Reserved■映画『魂のゆくえ』キャストイーサン・ホーク=トラー牧師アマンダ・セイフライド=メアリーセドリック・カーン=ジェファーズビクトリア・ヒル=エスターフィリップ・エッティンガー=マイケル【シネマの時間】アートディレクション・編集・絵・文=諸戸佑美©︎YUMIMOROTO
2019年04月21日