日本にはこれからも受け継いでいきたい伝統や文化が数多くありますが、そのひとつに挙げられるのは、450年以上の歴史を誇る紅花。現在は日本農業遺産にも認定されているものの、継承の危機に瀕しながら、山形の小さな農村で密かに守られてきました。そんな知られざる真実を収めたドキュメンタリー『紅花の守人いのちを染める』がまもなく公開。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。今井美樹さん【映画、ときどき私】 vol. 517本作には、ナレーションとして参加することになった今井さん。紅花栽培の工程が描かれている1991年公開のアニメーション映画『おもひでぽろぽろ』では、主人公タエ子の声を務めていたことでも知られています。今回は、作品を通して強まった紅花への思いや60歳を目前にしたいまの心境、そして若い世代に伝えたいアドバイスなどについて語っていただきました。―まずは、オファーがあったときのお気持ちからお聞かせください。今井さん最初は、「私が紅花の映画に!?」とすごく驚きました。でも、私というよりも、タエ子ちゃんが呼ばれたんだなと。『おもひでぽろぽろ』という作品は、自分が思っている以上にいまでもたくさんの方の心に強く残っている映画なんだと改めて実感しました。―今井さんにとって、タエ子はどんな存在ですか?今井さん30年前の私はタエ子ちゃんとほぼ同じ年でしたが、20代後半くらいの頃は自分のことでいっぱいいっぱいなので、近くにいてくれる人のことがよく見えていないことってありますよね?タエ子ちゃんは、まさにそんな存在だったのかなと。タイプは全然違いますが、年齢を重ねれば重ねるほど、あのときのタエ子ちゃんを愛おしく感じています。ただ、実は当時の私には、なぜ彼女が紅花摘みに参加したのかはわかりませんでした。でも、思い通りにならない自然と向き合うことは、強い意志を持っていないとできないこと。だからこそ、自分がわからなくなっている女の子が自分を取り戻すために、高畑勲監督が紅花と引き合わせたんだろうなといまはそう思っています。継続しているものは、漫然と続いてきたわけではない―なるほど。また、本作では紅花の作業工程や歴史など、普段なかなか見ることができない様子が丁寧に映し出されていて、非常に興味深かったです。今井さん恥ずかしながら、私自身も知らないことだらけでした。「日本に昔からある文化のひとつですよね」と言いながら、当たり前にある色合いだと思っていましたし、意味合いも知ったつもりになっていましたが、こんなにも大変だったとは……。紅花に限ったことではありませんが、継続しているものというのは、ただ漫然と続いてきたわけではなく、いろんな人が陰になり日向になって努力をしてきたから。そのためには、たくさんの方の愛情と労力が必要なんだと感じました。今回のように映画という形にしてもらうことによって、いまの私たちだけでなく、後世にもきちんと伝えられるのはよかったなと思います。―そのなかでも、印象に残っていることはありましたか?今井さんそれはもう、全部です!本当に初めてのことばかりだったので。ただ、これだけ手がかかることなんだというのは驚きました。実際、作っている方も「じゃじゃ馬娘みたいで扱いづらい」と言っているほどですから。でも、やっぱり色が素晴らしいので、手塩にかけて育てていくのにふさわしいというか、憑りつかれてしまうんでしょうね。そういうものに出会った人の苦悩と幸せというのは、そこに向き合った人にしかわからないものだと思います。傷だらけになりながら生産している人たちのすごさがなかなか一般の人たちに伝わらないのは切ないですが、紅花を使った製品から別のストーリーが生まれ、毛細血管が広がっていくようにいろんな時代と場所に恩恵が広がっていくのを感じました。もっと胸を張って世界に打ち出したほうがいい―山形の景色など、懐かしさを感じる部分もあったのではないでしょうか。今井さん思い出したのは、『おもひでぽろぽろ』のなかで、朝早くに紅花摘みをしているシーン。だんだんと周りが朝日に包まれていく様子が描かれているのですが、本作のなかで同じような映像があり、こんなにも忠実に再現していたのかと驚きました。実際、完成した『おもひでぽろぽろ』を試写で観たとき、そのシーンでは声が上がったほどでしたから。あの一帯でしか見ることができない美しい自然の一部なので、現地で本物を見たらきっと胸がいっぱいになるんだろうなと思いました。―本作をきっかけに、紅花に対する見方が変わる方も増えるのではないかなとも感じました。今井さん私自身もこれまでに巾着やお守り袋とか、紅花を使った製品を手にしているはずですが、「紅花じゃないかな?」と思うくらいで、その特別さに気がついていませんでした。特に、日本人というのは謙虚なので、宣伝するのが下手ですからね。大げさにアピールしないまでも、もっと胸を張って世界に向けて打ち出してもいいものだと思っています。「言わなくてもわかってもらえる」みたいに、わかってくれる人だけを相手にしているとつなげていくことができないので、続けていくためにどうしたらいいかを考える必要はあるのかもしれません。一度終わってしまったら、そのままなくなってしまうものがあまりにも多いので。受け継いでくれる人を育てるのは難しいことですが、喜びがないと携わってくれる人も少なくなってしまうので、喜びを見い出しながら人に伝えていくことの大切さを改めて考えさせられました。走れるうちに走っておいてよかったと感じる―そうですね。『おもひでぽろぽろ』からは30年以上が経ちますが、改めて振り返ってみていかがですか?今井さん私は住まいをイギリスに移したので、大きく路線変更したように思われますが、まだまだ旅の最中ですね。みなさんも一人一人が自分だけの旅を続けているので、それと同じですが、生きるということは変化していくこと。そのなかで、自分らしさをキープするための努力も必要だと思っています。同じ日は繰り返されないので、いまでも新しい毎日にドキドキしてしまうほど。それは、航海しているのと似ていると感じています。たとえば、昔は毎日という目の前の道を瞬発力だけで走れていたけど、だんだん足がもつれてくる。そのときにこれまで蓄えてきた自分の感性や経験、そして反省や学習したことをどう生かしていくのかにかかっているのかなと。でも、今年の4月で59歳になったときに気が楽になったんです。おそらく来年は還暦ということもあって、嫌でも周りから年齢を自覚させられる年になりそうですが(笑)。でも、その一歩手前の中途半端ないまが意外と快適だなと感じています。―ananweb読者に向けて、20代や30代の過ごし方について、ぜひアドバイスをいただきたいです。今井さん私がその世代の頃は、仕事のために生きているようなところがあったので、「もっと勉強しておけばよかったな」とか「もっと体に気をつければよかったな」とかそういうことは山ほどあります。でも、振り返ると「走れるときに走っておいてよかったな」という気持ちです。やっぱりスタートダッシュできるときは、どこまで走れるかにチャレンジしたほうがいいのかなと。いまだったら、スタートした途端に転んでしまいそうですから(笑)。もちろん、私たちの頃とは時代が違いますが、子どもから10代になり、社会に出ていろんな経験を積んでいくなかで、「自分は何をしたいのか?」とわからないまま毎日を生きていくことがあるかもしれません。それでも、前に進まないといけないので、走れるうちは走ったほうがいい、と元体育会系の私は思います(笑)。何かのせいにしていることをやめると、風通しがよくなる―その当時の今井さんは、どんな意識を持っていましたか?今井さん私にも生意気な時期があったので、そのときは取材でも「人の意見は一切聞かなくていい」と読者の方にアドバイスしていたこともありました(笑)。でも、実際にいくらすごい名言があっても、タイミングが合わなければ入ってこないものは入ってこないので、まずはできるだけ自分の“アンテナ”を磨くことが大事かなと思います。―そういう時期に、救いになった言葉などもあったのでしょうか。今井さん私もいままで仕事でもプライベートでもいっぱい転んで泣いたこともたくさんありますし、逆に感謝していることもたくさんあります。でも、ある時期からひとつだけ思っているのは、「人のせいにしない」です。自分が予想していた結果にならなかったときでも、「あの人がこうしたから」とかではなく、「それを自分が拒否しなかったんだ」とか「それを選んだのは自分だから。じゃあどうする?」と考えるようになりました。なぜかというと、人を恨むことはものすごくエネルギーのいることですからね。そんなネガティブな気持ちに囚われるよりも、「知らなかった私がダメだったんだよね。これで学習したから次!」のほうがいいんじゃないかなと。決してすべてを背負えばいいと言っているわけではなくて、何かのせいにしていることをやめてみると風通しがよくなるので、それを知ってほしいです。「人のせいにしない」。これは学校の制服の内ポケットに刺繍しておいてもいいんじゃないかな(笑)。嫌なことも蓋をせずに、自分自身を知ることが大切―そういう前向きな心がけが、いつまでも変わらない秘訣のひとつなんですね。今井さんいやいや、それが変わるんですよ(笑)。実際、以前のようにいかなくて苦しくなった時期もありました。でも、そのときの自分は体力的にもビジュアル的にも昔の自分とは同じではないので、比べること自体が不毛だと数年前から考え始めるようになったのです。今回の紅花もそうですが、いろいろと変化していくなかで、毎年いい状態をキープするのに欠かせないのは、ものすごい労力と強い意志。私たちも歳を重ねることで変化をするのは当然ですが、できるだけ自分らしくいるためには覚悟も必要になってくると思います。かつての自分と一緒ではないと感じたり、足がもつれて走れなくなったりするときがいずれ来ますが、それも「変わっちゃった」ではなく、「じゃあどうすればいいかな?」と考えてほしいですね。―それでは最後に、今井さんのように素敵に歳を重ねたいと思うananweb読者にメッセージをお願いします。今井さん日本の女の子たちは、30歳になると落ち込みますが、30歳って花が一気に咲き始める頃。大変なのはそのあとですから(笑)。まず意識してほしいのは、自分をちゃんと見つめること。もしうまくいかなければ、それなりの理由があるはずなので、慌てずちゃんと対策をする。そこで嫌なことに蓋をしてしまうと、わからないままそれが雪だるま式に大きくなってしまうだけですから。怖がるのではなく、自分自身をその都度知ることのほうがポジティブで大切だと思っています。インタビューを終えてみて……。終始優しい笑顔を浮かべ、前向きなオーラがひしひしと伝わってくる今井さん。年齢を聞いて思わず驚いてしまいましたが、いつまでも輝き続けている理由がよくわかる取材でした。ためになるアドバイスの数々は、しっかりと自分のものにしたいところです。美しい紅花の裏に隠された苦労と喜びを知る!これまであまり語られてこなかった知られざる歴史にはじまり、紅花によって生み出される奇跡の瞬間が詰まった感動のドキュメンタリー。文化を継承する重みを学ぶだけではなく、伝統を守り続ける人たちの真摯な姿に同じ日本人としても心を動かされるはずです。写真・山本嵩(今井美樹)取材、文・志村昌美ストーリー室町時代に中近東からシルクロードを経て中国に渡り、日本に伝わってきた紅花。皇室で珍重されたその色は、安価な化学染料の台頭だけでなく、第二次世界大戦中に国によって栽培を禁止され、継承の危機に瀕していた。ところが、山形の小さな農村の片隅で密かに守り継がれていたことによって、いまでは世界的な農業遺産として注目され始めている。多くの人が手間暇を惜しまず栽培して生まれた紅の染料からは、ごくわずかな紅色しか取ることができない。利便性から遠く離れているにもかかわらず、紅花文化を慈しみながら守り継ぐ人々の姿。4年という長い歳月をかけて記録された奇跡の物語とは……。魅了される予告編はこちら!作品情報『紅花の守人いのちを染める』9月3日(土)より、ポレポレ東中野ほか全国順次公開配給:株式会社UTNエンタテインメント️©映画「紅花の守人」製作委員会写真・山本嵩(今井美樹)
2022年09月02日つねに変化する社会において、日本人としてだけでなく、国際人として活躍することを目指す人も多いと思いますが、そのために必要なものといえば、世界で起きている出来事にも目を向けること。そこで、同じアジアである香港の現状に切り込んだ話題のドキュメンタリーをご紹介します。『時代革命』【映画、ときどき私】 vol. 5112019年、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案が立法会に提出されたことをきっかけに、香港で民主化を求める大規模デモが起きた。激しく衝突する若者と警察の間には、催涙弾やゴム弾、火炎瓶などが飛び交い、ショッキングな場面も映し出される。自由や民主主義が損なわれる危機に直面するなか、声を上げ続ける若者たち。いつしか、香港の人口の約3割にあたる約200万人もの人たちがデモに参加する事態へと発展する。壮絶な運動を繰り広げた約180日間の最前線で起きていたこととは……。カンヌ国際映画祭でサプライズ上映された際、大きな反響を呼んだ本作。そこで、決死の思いで作品を完成させたこちらの方にお話をうかがってきました。キウィ・チョウ監督これまでに、“香港アカデミー賞”である香港電影金像奨で最優秀映画賞を獲得したのをはじめ、最優秀監督にもノミネートされた経験を持つチョウ監督。今回は、自身初となるドキュメンタリー作品に挑戦した背景や香港の厳しい現状、そして若者たちが政治に関心を持つようになった理由などについて語っていただきました。―この題材でドキュメンタリーを撮るということは、かなりの覚悟がないとできないことだと思いますが、映画を作るきっかけとなった出来事などはありますか?監督理由はいくつかありますが、2019年にデモが起きたとき、香港全土にいるいろんな職業の人たちがデモに参加していることを知りました。その様子を見て、自分も映画監督という立場からできることがあるのではないだろうか、と考えるようになったのです。そして、ある新聞のメディアがスマホでライブ配信していた映像で真実を目の当たりにしたとき、普段手掛けている劇映画ではなく、ドキュメンタリーを撮ることに決めました。とはいえ、そもそも民間人である僕たち一人一人にやるべきことがあると考えていたので、その責任を果たしただけとも言えます。ほかの国の観客にも、何かを思い出すきっかけになる―そんな思いで撮ったにもかかわらず、香港では上映ができない状況が続いているのだとか。監督少し前のことになりますが、あるテレビ局に務めていた方がこの映画のタイトルを言っただけで、クビになってしまったこともありました。それくらい敏感になっているので、香港のための映画を撮ったのに残念ではありますが、香港で上映できる自由はありません。それだけでなく、いまは「香港人」という言葉を使うだけでも危ない状況。先日も参加していたイベントの名前のなかに「香港人」と入っていただけで、圧力をかけられてしまい、中止になりました。そういったなかで、この映画では香港人の作品であることを強調しているので、上映は厳しいと思います。―とはいえ、カンヌ国際映画祭をはじめ、海外では大きな反響を呼んでいるそうですが、それに対してはどのように感じているのかを教えてください。監督いくつかの海外で上映をしましたが、特に印象的だったのは台湾での出来事。なんと、台湾の総統である蔡英文氏がこの作品を観たあと、映画を観るように人々に呼び掛けてくれたのです。国のトップが自分の映画を宣伝してくれるなんてことはいままでなかったので、本当にびっくりしましたし、かなりの反響もありました。「民衆運動について改めて考えさせられた」などいろんな感想が寄せられましたが、ほかの国の方にとっても、何かを思い出すような内容になっているのだと思います。若い世代の行動には、自分も驚かされた―作品を観ていて驚いたことのひとつは、10代や20代の若者たちが政治に強い関心を持ち、信念を掲げて闘っている姿。彼らの自立した精神力や行動力というのは、どのようにして養われているのでしょうか。監督正直に言うと、これに関しては「若い人たちがどうしてここまでするのだろうか」と僕自身も非常に驚きました。ただ、彼らにインタビューしていて気がついたのは、歴史や政治に関して僕たちの世代よりも勉強しているということ。今回のようなデモは2019年よりも前から行われていたので、そういった香港の様子を見ながら成長してきたこともあって、間違いなどにも敏感なのかもしれません。もちろん2019年の出来事をきっかけに目覚めた人も多くいますが、おそらくそれは自分の友人が逮捕されたり、おかしいと感じる経験があったりしたことがきっかけになっているのではないかなと。香港人というのは、もともと反応が早いところがあるので、そういったことから歴史や政治について勉強し始めたのだと思います。―ただ、そんな彼らに立ちはだかるのが警察の存在。民衆を激しく制圧する様子はかなり衝撃的でしたが、デモに参加する若者と警察に所属する若者をわけているものは何だと感じましたか?監督実は、警察に1人だけ知り合いがいるので、電話で話したことがありました。その人を理解するうえで徐々にわかってきたのは、警察のなかでかなり情報を制限しているということ。言い方は悪いですが、“洗脳”されているような印象すら受けました。というのも、誰が見てもわかるような事実をねじ曲げているところがあったからです。たとえば、ある駅でマフィアと警察が手を組んで行動していたという話をしたとき、映像も写真もあるにもかかわらず、その人はまったく信じてくれませんでした。おそらく、警察のなかでは、自分たちの都合のいいように物事を受け止めているのだと思います。映画は世界の共通言語だと日本で実感した―いっぽう、日本では以前から若者の政治に対する関心の低さが問題になっています。国の状況に違いはありますが、どうしたら香港の若者のように政治に参加する意欲を持つようになれると思いますか?監督やはり、一番の気づきになるものは、自分の身に降りかかるかどうか。香港の場合は、自分たちの生活に直接影響を与えていますからね。つまり、彼らにとっては「生活=政治」になっているのです。あとは、教育による部分もあるかとは思いますが、映画もひとつの手段になるのと考えてます。日本において、映画がどのくらい政治に影響を与えられるかはわからないですが、映像で見ることによって理解できることもあると思うので、映画でも変えられることはあるはずです。―ちなみに、日本に対してはどのような印象をお持ちですか?監督これまでに日本の映画祭で何度も僕の映画を上映してもらったことがあるので、仕事で来日したことがありますが、観光で訪れたこともあるくらい日本は大好きな国です。そのなかでも思い出に残っている出来事と言えば、映画祭に参加したときに、ある日本の女性から作品を褒めていただいたときのこと。そのときに映画というのは世界共通の言語なんだなと実感しました。覚悟を決めたいま、恐れはなくなった―そんななか、今後はどのような映画を作りたいとお考えですか?監督実は、今回の作品をきっかけに、撮ろうと考えていた劇映画の出資者が半分になってしまったり、出演する予定だった俳優から辞退したいと言われたりすることがありました。それでも、映画を作るうえでいま意識しているのは、自己検閲をしないことです。なぜなら、この映画を撮ると決めたときから、いつ逮捕されるかわからない覚悟をすでにしているので。一度そういった覚悟と責任を持つと、恐れはなくなるというか、ある意味で自由になれるので、これからもモチベーションを下げることなく映画作りを続けたいと思います。―それでは最後に、日本の観客に向けてメッセージをお願いします。監督この映画を観ていただくことで香港に関心を持っていただきたいですが、それだけでなく、一人一人の心ともっと対話をしてほしいと思っています。そして、本当の善良とは一体どういうことなのか。そういったことを考えながらご覧いただきたいです。民衆の力なしに革命は起こせない!香港の生々しい現実と思わず目を疑うような衝撃の光景から学ぶのは、声を上げて闘うことの意味。現代をともに生きる香港の若者たちと一緒に、自分たちの未来を守るためにいますべきことを考えさせられるはずです。取材、文・志村昌美釘付けになる予告編はこちら!作品情報『時代革命』8月13日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開配給:太秦️© Haven Productions Ltd.
2022年08月09日毎年8月は、平和に対する思いがいつも以上に強くなるときですが、そんななかでいま観るべき映画としてご紹介するのは、新たな視点で平和へのメッセージを訴えるドキュメンタリー『長崎の郵便配達』。今回は、こちらの方にお話をうかがってきました。イザベル・タウンゼンドさん【映画、ときどき私】 vol. 507映画『ローマの休日』のモチーフになったと言われている“世紀の悲恋”を繰り広げたタウンゼンド大佐を父に持ち、フランスでは女優として活躍しているイザベルさん。本作では、16歳のときに長崎で被爆した郵便配達員の谷口稜曄(スミテル)さんの記憶をノンフィクション小説として発表した亡き父の思いを探るため、長崎でさまざまな出会いと経験をする姿が映し出されています。そこで、日本に対する印象や改めて感じた平和の価値、そして日本の女性たちに伝えたいメッセージについて語っていただきました。―今回の映画制作に関しては、川瀬美香監督からお話があったことがきっかけだったそうですが、ご自身のなかでも以前から映画にしたいというお考えはあったのでしょうか。イザベルさん実は、川瀬さんから声をかけていただくまで、ドキュメンタリーにしようと考えたことはありませんでした。とはいえ、もともと私がコンタクトを取っていたのは、父の本を再販したいという出版社の方。本についての話をしていくなかで、その方の友人である川瀬監督がドキュメンタリーにしたいと思っていると聞き、絶対に会わなければいけないと思いました。その後、川瀬監督と初めて会ったのは、この本を書いたときの資料がたくさん置かれている父の書斎。とても素晴らしい瞬間でしたし、私たちは2人とも「ここには伝えなければいけない大切なメッセージがある」と直感したので、映画を作ることにしました。日本人は親切で、他人へのリスペクトがある―日本で撮影を行った際、多くの日本人と交流したと思いますが、どのような印象を受けましたか?イザベルさんまず初めに驚いたのは、日本のみなさんが本当に親切で、他人に対するリスペクトを日常生活のなかでも持っていることでした。人と話をするときも、熱心に聞いていらっしゃったので、みなさんのなかには人と共同作業する精神のようなものがあるのではないかと感じたのを覚えています。そのほかに印象的だったのは、東京でも長崎でも、日本には逆説的なところがあること。日本古来の物を大切にしながら、建築やファッションなどにおいて未来的な部分も持ち合わせていると感じました。モダンでありながら伝統をおざなりにすることなく、リスペクトしているということは素晴らしいと思います。―今回の旅行では、娘さんも同行されていましたが、若い世代の方々が歴史を知ることで変化したところもあったのでしょうか。イザベルさん私の2人の娘はとても真剣に観察していたので、1945年8月9日に長崎で何が起こったのかをはっきりと理解したようでした。日本でもヨーロッパでも、若い人たちにとっては当時起こったことを想像するのは非常に難しいことだと思います。でも、この映画を作ったことによって、それらの出来事を考えるための土壌を作り、彼らに“足跡”のようなものを残せたのではないかなと。今回の旅も、娘たちにとっては大切なプレゼントになったと感じるので、私もうれしいです。平和を求める権利は、誰にでもある―ただ、残念なことに現在も世界の平和を脅かすような戦争が起きています。このような状況のなかで、私たちはどのような意識を持って生きていけばいいとお考えですか?イザベルさん普段はあまり意識していないかもしれませんが、まずは“平和の価値”というものを日々考える必要があると思っています。そして、世界で起きている脅威や痛ましい出来事を知り、人間としてそれらを直視するべきではないでしょうか。私は女優という職業をしていることもあり、平和の大切さというのは、映画や演劇、本、造形美術、アートといった文化を通して伝達できるものだと考えています。私たち人間は、地球に生きている以上、平和を求める権利は誰にでもあるのです。実際、私の父は本を書くことで訴え、谷口さんは傷に苦しみながら闘い続けました。そんなふうに、それぞれが違うやり方で平和を希求し、平和がいかに大切であるかを伝える行動を起こしていけたらと。個人レベルでの働きかけというのは、とても大事なことだと思います。―この映画でもいろんな出会いを重ねていくうちに表情が変わっていくイザベルさんの姿が印象的でしたが、長崎での経験でご自身が得たものは何ですか?イザベルさん父が本を出版した当時、リアルタイムで読んだものの、内容について父と話すことはありませんでした。まだ22歳くらいで若かったこともありますが、あまりにひどい暴力性が信じられず、現実として受け止めることも、理解することもできなかったからです。ただ、今回の撮影を通して、父がどうしてあの本を書こうとしたのか、父と谷口さんの間にあった友情、そして何よりも“平和の価値”がどれほどのものかを知ることができたと思います。撮影中も父に見守られているような感覚がありましたが、父が私にバトンを渡してくれたのではないかなと。フランスでもこの経験をほかの人に伝えていきたいという思いが、自分のなかで生き続けているように感じています。女性が勇気を持っている姿は素晴らしいこと―それでは最後に、イザベルさんのように仕事と家庭を両立している女性を目指すananweb読者にメッセージをお願いします。イザベルさんとても大切なことを聞いてくださってありがとうございます。というのも、私自身も若い頃はどうやって仕事と家庭を両立させたらいいのかわからず、そのジレンマに悩まされていたからです。もし読者のなかで、同じ思いをしている方がいれば、仕事はぜひ続けてほしいと思います。なぜなら、情熱を持ってキャリアを追い求めていれば、その母親の姿を見た子どもたちにも人間としていい影響を及ぼすはずですから。とはいえ、仕事と家庭の両立をするうえでバランスをつかむことはとても難しいことであり、長い道のりでもあります。しかも、その大変さを周りに認識してもらえないこともありますよね……。ただ、それらを両立することは楽しいことでもありますし、努力する価値があるものだと考えています。女性ががんばって何かを見つけようとする勇気は素晴らしいことなので、私はみなさんを応援したいです。インタビューを終えてみて……。とても物腰の柔らかい方ですが、平和に対する思いを語る姿は父親譲りの強い意志を感じさせるイザベルさん。いろいろな気づきを与えてもらうとともに、モチベーションも上げていただきました。作品のなかで見せるイザベルさんのさまざまな表情からも、ぜひたくさんのメッセージを感じ取ってください。受け継いでいくべきは、平和への願い戦争が引き起こした悲劇と向き合い続ける意味、そして平和を守り続ける大切さなど、過去の歴史からいま学ぶべきことは何かを教えてくれる本作。言葉を超えて生まれた谷口さんとタウンゼンド氏の友情が、時を超えて私たちを正しい道へと導いてくれるはずです。取材、文・志村昌美ストーリー戦時中、英空軍のパイロットとして英雄となり、退官後はイギリス王室に仕えていたピーター・タウンゼンド氏。エリザベス女王の妹マーガレット王女と恋に落ちるも、周囲の猛反対で破局し、世紀の悲恋は世界中で話題となる。その後、世界を回り、ジャーナリストとなった彼が日本の長崎で出会ったのが、16歳で郵便配達の途中に被爆した谷口稜曄さんだった。タウンゼンド氏は生涯をかけて核廃絶を世界に訴え続ける谷口さんを取材し、1984年にノンフィクション小説「THE POSTMAN OF NAGASAKI」を出版する。そして、2018年8月。タウンゼンド氏の娘で女優のイザベル・タウンゼンドさんは、父親の著書を頼りに長崎へと向かい、父と谷口さんの想いをひもといていくことに……。多くの人に届けたい予告編はこちら!作品情報『長崎の郵便配達』8月5日(金)シネスイッチ銀座ほかにて全国公開配給:ロングライド️©The Postman from Nagasaki Film Partners
2022年08月01日刻々と変化する世界情勢のなかで生きる私たちにとって、学ぶべきもののひとつと言えば、過去の歴史的事実。そこで今回は、時代に翻弄された子どもたちの知られざる真実に迫っている必見のドキュメンタリー作品をご紹介します。『ポーランドへ行った子どもたち』【映画、ときどき私】 vol. 4941950年代、北朝鮮から秘密裏にポーランドへ送られていたのは、1500人にも上る朝鮮戦争の戦災孤児。何もわからない異国に移送された子どもたちを我が子のように受け入れたのは、ポーランド人教師たちだった。いっぽう、現代の韓国でつらい思いを語っているのは、10代という若さで命がけの脱北を経験した大学生のイ・ソン。孤児たちの悲痛な分断の記憶を巡るため、ポーランドへと向かうことに。いまでも子どもたちを懐かしく思い涙を流す教師たちの姿と戦争孤児たちの真実と向き合うなか、イ・ソンはいまも北朝鮮にいる家族のことを涙ながらに話し始めるのだった……。韓国でもほとんど知られていないという“歴史の闇”に迫り、異例の大ヒットを記録したことでも注目を集めている本作。そこで、各国でも絶賛評を得ている作品の背景などについて、こちらの方にお話をうかがってきました。チュ・サンミ監督女優としてさまざまな映画やドラマで活躍したのち、現在は監督としても才能を発揮しているチュ・サンミ監督。産後うつに悩まされるなかで偶然目にした北朝鮮の孤児たちの映像をきっかけに制作を開始し、映画のなかでは取材者として出演もしています。今回は、本作が観客に与えた影響や過去の事実から学ぶべきこと、そして自身の体験談などについて語っていただきました。―韓国での公開時にはかなり大きな反響があったそうですが、実際どのような反応が多かったのでしょうか。監督おそらく北朝鮮ではよく知られた話だと思いますが、韓国では一般の人だけでなく、政治に関わる人たちの間でも、ほとんど知られていないことでした。なので、観客のなかでは、初めて知る歴史的な事実に対する衝撃やショックを受けている方が一番多かったです。そのほかに上がったのは、「やっぱり私たちは同じ民族だと感じた」とか「なぜ統一したほうがいいかを考えるきっかけになった」という声でした。南北の分断が70年以上続いているので、若い人たちの間では統一に対する期待はほぼなくなっているというのが現状。それどころか、無関心になりつつあったので、そんなふうに言ってくれる方がいるだけでこの映画を作った甲斐があったと感じました。一ただ、国が積極的に明かしてこなかった事実について取り上げることに対する怖さもあったと思うのですが。監督もちろん、そういったことを映画にする負担みたいなものはありました。特に、私が取り組み始めた頃は、パク・クネ政権下で南北の関係もあまりよくない時期だったので、政権が変わっていなかったら公開すらできていなかったかもしれません。そのあと、ムン・ジェイン大統領になってからガラッと雰囲気が変わりましたが、オリンピックや南北首脳会談といった出来事によって時代の流れも変わったので、本作も多くの観客に受け入れられたのだと感じています。最初は不安もありましたが、みなさんからのフィードバックを見て安心しました。苦しみの克服に必要なのは“傷の連帯”―当初は産後うつを抱えていたそうですが、取材を進めるなかで心境が変化していくこともあったのでしょうか。監督私の場合、「自分はいいお母さんになれないのではないか」と考えるあまり、子どもに執着したり、不安に感じたりするような症状でした。ときには、子どもが巻き込まれる事件や事故のニュースを目にすると、彼らが感じる苦痛が自分の子どもと重なってしまって見ることすらできない状況に追い込まれることもあったほどです。そんなふうに、子どもたちの痛みに敏感だった時期に知ったのが、北朝鮮の孤児たちについて。彼らの親たちのことについてなど、いろいろと考えました。その後、脱北者の子どもたちから話を聞き、ポーランドの先生たちが持つ母性に触れるなかで、徐々に不安定な気持ちが変化していき、自然と産後うつを克服できたのだと思います。映画のなかでも“傷の連帯”という言葉を使っていますが、これらの経験こそがそれに通じているのではないかと感じました。―残念ながら、いままさにウクライナでも同じようなことが起きています。過去の出来事を知ったことによって、現代が抱える問題を見る目線も変わりましたか?監督そうですね。特に、子どもたちに対する見方は大きく変化したと思います。「今回の戦争でどれほどの孤児が出てしまうだろうか」と考えずにはいられないですし、多くの子どもが犠牲になったというニュースにも敏感に反応するようになりました。ただ、もしこのドキュメンタリーを撮っていなければ、それらは見逃していたことだったかもしれません。いまではいろいろな記事を積極的に読むようになりましたし、ウクライナからの避難民の世話をしているポーランドに対して誇らしく思う気持ちもあります。それはすべて、この作品によるものです。世界中の人々の連帯が強くなることを期待している―現在の私たちは国家の分断や戦争が起きている厳しい時代のなかで生きていますが、そのなかでどういった意識を持ったほうがよいとお考えですか?監督いまの時代というのはこれまでと比べると特別だと思いますが、その理由にはさまざまな戦争が起きていた時代と違って、SNSを通して全世界の様子が見えるようになったことが挙げられるのではないでしょうか。SNS上では国や政治家を批判したり、論争を繰り広げたりすることもありますが、それだけでなく、難民を助ける行動を起こすことも可能になりました。そんなふうに、ほかの国の状況まですぐに知ることができるようになったのは、大きなことではないかなと。どうしたら助けられるかを一緒に悩んだり、よりクリエイティブな発想で立ち向かったりできるようになったので、世界中の人たちの連帯が強くなることを期待できる時代になったと感じています。―監督は女優業を休止している間に、映画制作の勉強を始めたそうですね。作り手に回ろうと思ったのはなぜでしょうか。監督実は、若い頃は作家になるのが夢だったので、大学ではフランス文学を専攻し、文章を書いていたこともありました。その後、役者になり、20年近く仕事を続けていたのですが、ドラマなどで同じような役ばかりを求められるようになり、そのときに「これは自分が目指すものと違うのではないだろうか」と思い始めることに。それからしばらくは悩んでいたのですが、ちょうど体調も優れなかったときだったので、健康のためにも女優業を一旦休むことにしました。ところが、すごく暇になってしまって、やることがないなと(笑)。そこで、昔の夢を思い出したのですが、作家ではなく、役者としての経験を活かしたもので何かできないだろうかと考えました。そのときに、映画監督や脚本を書くことを思いついたので、大学院の映画演出科に進むことを決めたのです。日本とは傷を一緒に分かち合えると考えている―すごい行動力です。ちなみに、まもなく公開を迎える日本にいらっしゃったことはありますか?監督これまで日本には、6~7回ほど旅行で訪れたことがありますが、なかでも大分県の湯布院が大好きで3回は行きました。そのほかにもおもしろいと思っているのは、日本の神社。韓国にもお寺はありますし、隣の国ではありますが、文化はだいぶ違うと感じています。ただ、落ち着いて静かに話してくださる感じは、自分の性格とすごく合うので、私にとって日本は旅行していてもとても楽な気持ちでいることができる国です。それに、みなさんがとても親切ですよね。―ありがとうございます。それでは最後に、日本の観客に向けてメッセージをお願いします。監督日本も多くの戦災孤児がいた国だからこそ、ポーランドという遠い国で起きた出来事だと思うのではなく、日本ともつながっている歴史だと捉えていただきたいです。また、私がぜひ観ていただきたいと思っているのは、個人的な傷やトラウマを抱えている人たち。なぜなら、そういった方々が負った傷というのは、同じような傷を持っている人たちと理解し合えれば、お互いのことを慰め合える可能性もあるからです。そんなふうに、自分が社会に善なる影響力を与える人にもなれることを知っていただけたらと。そして、映画を観ることでその傷が癒されたらうれしいです。“過去の闇”に光を当てることの意味を知る異国で起きた過去の出来事ではあるものの、現代が抱える問題にもつながっていることに気づかせてくれる本作。同じ悲劇を繰り返すことなく、傷ついた子どもたちを守るためにも、まずは歴史の裏側にある人々の思いを知り、痛みや傷を共有することから始めるべきだと感じるはずです。取材、文・志村昌美胸に迫る予告編はこちら!作品情報『ポーランドへ行った子どもたち』6月18日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開配給:太秦️©2016. The Children Gone To Poland.
2022年06月17日映画を観たいと思っても、あまりに多くの作品を目の前にすると、どの作品から観たらいいかわからなくなってしまうことはありませんか?そこで、作品選びに新たな視点を与えてくれる“究極の映画オタク”による注目のドキュメンタリーをご紹介します。『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』【映画、ときどき私】 vol. 490毎年さまざまな映画が誕生するなか、本作がスポットを当てているのは、2010年から2021 年の公開作から厳選された傑作映画111 作品。そこには、『アナと雪の女王』や『ジョーカー』といったメジャー大作から、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督作『光りの墓』やアリ・アスター監督作『ミッドサマー』のインディペンデント作品まで、ジャンルを問わない世界中の映画が顔を揃えていた。時代とともにひも解く近代映画史の裏側とは……。「映画の見方を確実に広げてくれる」など、海外メディアからも絶賛の声が上がっている本作。今回は、発案から20年近くの年月をかけて作品を完成させたこちらの方にお話を伺ってきました。マーク・カズンズ監督ドキュメンタリー監督としてだけでなく、映画に関する著書の執筆や映画解説番組のMC、映画祭のプログラマーを務めるなど、映画にまつわる幅広い活動に取り組んでいるカズンズ監督。365日映画を観て過ごし、これまでに観た映画の本数は約16,000作品にも及ぶほどの映画マニアとしても知られています。そこで、ananweb読者にオススメしたい映画や日本映画に対する思いなどについて、語っていただきました。―作品からも監督の映画愛がひしひしと伝わってきましたが、そもそも監督と映画との出会いについて教えてください。監督僕が映画に恋に落ちたのは8歳半の頃。北アイルランドにあるベルファストで生まれ育ちましたが、1970年代当時は内戦が繰り広げられていたので、外は非常に重苦しい雰囲気が漂っていました。そんななか、映画のなかだけは光り輝いていて、とても大胆で自由な世界に感じられたのです。映画によって僕自身が救われたというか、広い世界があることを教えてもらうことによって僕の目が開かれていきました。そして、その感覚はいまでも続いていると言えると思います。だから僕にとって映画は、生涯にわたっての情熱なのです。―それではさっそくですが、“映画オタク”の監督にananweb読者に向けてシチュエーションに合わせたオススメ作品を教えていただきたいです。まずは、恋愛に悩んでいるときの映画といえば、何ですか?監督それは、1960年のアメリカ映画でビリー・ワイルダー監督の『アパートの鍵貸します』。出世のために自分のアパートを上司と愛人の密会場所として提供していた男が、想いを寄せる女性もアパートに出入りしていたことを知るロマンティック・コメディです。この作品からは、恋愛というのは甘くて喜びをもたらすものではあるけれど、同時に苦みやつらさももたらすものであるというのを感じられると思います。―続いては、仕事のモチベーションを上げてくれる1本を教えてください。監督こちらもアメリカ映画になりますが、1980年にジェーン・フォンダが主演を務めた『9時から5時まで』。それぞれに事情を抱えた女性たちが職場で搾取されている様子を映し出した作品で、モラルやジレンマもきちんと描きつつエンタメ度の高い作品となっています。日本には素晴らしい監督がたくさんいる―3つ目のテーマは、コロナ禍や戦争など厳しい社会状況のなかで生きる私たちがまさにいま観るべき映画です。監督2本ご紹介したいのですが、はじめは1947年の小津安二郎監督作『長屋紳士録』。戦後まもない頃に、ある女性が孤児を引き取ることになるところから始まります。最初は、2人の関係があまりうまくいっていないように見えますが、その裏には人間愛が満ち溢れているので、大変なときだからこそ生き抜く姿がいまに合っている作品ではないかなと。私は映画を勉強している学生にもこの作品を見せるようにしていますが、すべての行動は愛によるものだというのを知ってほしいです。そしてもう1本は、1993年に公開された相米慎二監督の『お引越し』。これは両親が離婚をした10代の子どもの目線で描かれていますが、これからの世界や自分の将来がどうなってしまうのかという部分を見せている作品です。その目線というのが、とても素晴らしいのでオススメしたいと思っています。―いずれも興味深い作品をありがとうございました。監督は、もしも世界で映画産業の発展を妨げるような脅威が発生したとして、たった1つの国の映画文化しか助けられないとしたら、迷わず「日本」と答えるそうですが、そこまで日本映画に傾倒するようになったのはなぜですか?監督まず、理由のひとつとしては、世界でも最高のドキュメンタリー映画は日本の作品だと思っているからです。特に、原一男監督や小川紳介監督による小川プロダクションの一派の作品は本当に素晴らしいと感じています。それから、子どもの映画を描かせたら日本映画の右に出る者はいないのではないかなというのもありますね。あと、みなさんは「クラシックな映画」と聞くと『カサブランカ』や『雨に唄えば』といったアメリカ映画を想起しがちですが、本当の古典作品というのは、日本の1930年代から50年代にかけて作られた日本の作品だと僕は思っています。30年代前後の清水宏監督や小津安二郎監督にはじまり、社会変革が起きた60年代には今村昌平監督や大島渚監督など、日本には素晴らしい監督がたくさんいるわけです。次の世代を育てるための流れを確立すべき―監督の日本映画愛は伝わってきましたが、本作で取り上げた日本映画は111本中『万引き家族』の1本のみでした。ここ10年ほどの日本映画に関しては、どのように捉えていますか?監督最初にお伝えしておきたいのは、イギリスで観られる日本映画は限られているので、どんなにいい作品があったとしても、すべてを観る機会がなかったからというのが理由としてありました。ただ、正直なお話をすると、かつては素晴らしい映画が作られていたけれど、最近は以前に比べて質が落ちている国もあります。たとえを挙げるなら、イタリア、ロシア、そして日本です。もちろんいい作品もありますが、かつてほどではないと感じる部分はあります。それが何によって引き起こされているのかを考えてみると、スタジオのシステムや映画教育の環境、そして社会的な変革によるものではないかなと。あとは、先輩の映画作家たちがこれから来るべき世代にメンターとして教える流れがうまく確立されていないようにも感じています。とはいえ、いまの時代における傑作のひとつ『ドライブ・マイ・カー』を生み出した濱口竜介監督や残念ながら最近亡くなられた青山真治監督など、映画に対して高い情熱を持っている方もたくさんいらっしゃいますからね。日本の映画教育において、過去の偉大な作品をきちんと教える必要性はあるということは言えるのではないでしょうか。知らない作品も、まずはお試しで観てほしい―そんななか、今後の日本映画界に期待していることはありますか?監督女性監督がもっと増えてもいいはずですし、作品のジャンルについてもより広いものを扱っていくほうがいいのではないかなと思っています。日本にはアニメがありますが、それとは別に映画の在り方そのものを見直すべきところもあるのかもしれません。あと、日本で映画を学んでいる学生と話していたときに感じたのは、日本には映画制作の助成金や支援制度が十分ではないこと。もっと若手を育てていくことに力を注ぐべきではないかなと感じました。―その通りだと思います。それでは、日本の観客へ向けてメッセージをお願いします。監督この映画は、感情をフル活用しながら、ぜひ子どもの目線で観てほしいと考えています。おそらくタイトルも聞いたことのない作品も含まれていると思いますが、それでも大丈夫です。ここではお試しみたいな感じで知ってもらえればいいので、ちょっとつまみ食いしてみて、おいしいなと感じたら、本格的にその映画を味わってもらえればと思います。奥深い映画の旅へと誘われる!知られざる映画の裏側を見せるだけでなく、新たな発見と驚きに満ちた必見のドキュメンタリー。まさに“映画の教科書”とも言える本作は、これからの映画鑑賞に多大なる影響を与えること間違いなしです。取材、文・志村昌美魅了される予告編はこちら!作品情報『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』6月10日(金)新宿シネマカリテ他、全国順次ロードショー!配給:JAIHO️© Story of Film Ltd 2020
2022年06月09日7月8日(金)公開の若き登山家に密着したドキュメンタリー映画『アルピニスト』が、第43回スポーツ・エミー賞最優秀長編スポーツドキュメンタリー賞を受賞した。世界的アルピニストのレジェンドたちからも一目置かれている命知らずの若きアルピニストがいた。彼の名はマーク・アンドレ・ルクレール。命綱無し、たった独り前人未到の挑戦ーー。世界でも有数の岩壁や氷壁、数々の断崖絶壁を、命綱もつけず、たった独りで登る無謀なフリーソロという登山スタイルを貫いた彼は、SNS社会に背を向けながらも、不可能とされていた数々の世界の山脈の難所に挑み、次々と新たな記録を打ち立てていく。だが、そんな偉業を成し遂げながらも、名声を求めない彼の性格から世間的な知名度はほぼ皆無だった。これまで数多くの登山にまつわるドキュメンタリー映画を製作してきたアウトドア・ドキュメンタリーの第一人者、ピーター・モーティマー監督が、自らの登山経験を駆使して映し出した驚異的な映像は、多くの人の感動と興奮を呼び起こし、放送映画批評家協会ドキュメンタリー賞で最優秀スポーツドキュメンタリー映画賞を獲得。さらに今回、第43回スポーツ・エミー賞の長編ドキュメンタリー部門、撮影賞にノミネートされ、見事、長編ドキュメンタリー部門に輝くことになった。授賞式に参加した本作プロデューサーのベン・ブライアンは「2年間にわたり、この作品に向き合ってくれた制作チームに感謝したい」と語ると、「そして何より、マーク・アンドレ・ルクレール、彼の家族、そして彼の友人たちに感謝したい。皆さんの協力がなければこの映画は実現しなかった。マーク・アンドレ、この賞は君が勝ち取った賞だ!」と喜びのコメントを寄せた。『アルピニスト』7月8日(金)公開
2022年06月01日今年のアカデミー賞を席巻したのは、作品賞を受賞した『コーダ あいのうた』ですが、それによって注目を集めた存在と言えば、タイトルにもなった「コーダ」と呼ばれる子どもたち。そこで、今回ご紹介するのは、知られざるコーダの文化や内に秘める苦悩に迫った話題のドキュメンタリーです。『私だけ聴こえる』【映画、ときどき私】 vol. 488「コーダ(CODA=Children Of Deaf Adults)」とは、耳の聞こえない親を持つ、耳の聞こえる子どもたちのこと。家では手話を使い、外では口語で話す彼らは、学校に行けば“障害者の子”として扱われ、ろう者たちからは耳が聞こえることで距離を置かれていた。そんななか、15歳という多感な時期を迎えたのは、「ろうになりたい」と願うあまり聴覚に異変をきたすナイラ、進学を決め、ろうの母から離れることに悩むジェシカ、そしてろう文化のなかでしか自由でいられず学校で孤独を味わっていたMJ。それぞれの葛藤を抱えるコーダの子どもたちが、3年間の撮影を通して語る心情とは……。2021年に北米最大のドキュメンタリー映画祭HotDocsに選出されるなど、各国で高く評価されている本作。コーダという言葉が生まれたアメリカにおいても、コーダ・コミュニティを取材した初の長編ドキュメンタリーとして話題となっています。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。松井至監督これまでも「聴きとりづらい声を聴くこと」をモットーにドキュメンタリー制作を続けてきたという松井監督。本作でも、丁寧な取材力と見事な手腕を発揮し、大きな反響を呼んでいます。今回は、コーダたちから学んだことや撮影秘話、そしていまの私たちにできることなどについて、語っていただきました。―まずは、コーダという存在について知ったのはいつ頃、どういったきっかけだったのでしょうか。監督2015年に、海外向けに東日本大震災の復興について発信する番組のディレクターになったのですが、そのときにふと耳が聞こえない人たちはどうしていたのだろうかと考えました。東北のろう者への取材を行うにあたって参加していただいたのが、本作にも出演しているアメリカ人手話通訳者のアシュリーでした。生き延びたろう者の方々と耳の聞こえる彼らの子どもたちから話を聞いていくうちに、なぜか段々とアシュリーが気を落としてきました。理由を尋ねると、「彼らはコーダという人たちで、私もその1人なんです」と。そのときに初めてコーダというのが1980年頃にアメリカで生まれた概念であることや、いまだに社会から認知されていないことなどを教えてもらいました。―その話を聞いて、すぐにドキュメンタリーの題材にしたいと思われたのですか?監督アシュリーから「コーダのドキュメンタリーを撮ってほしい」と頼まれました。コーダがどれだけストレスフルな生活を送っているのかを知ってほしいと。コーダは、体は聴者だけれど中身はろう文化で育ち、聴者の世界にも馴染めず、かといってろう者のなかに入ることもできない。両方の世界に入り切れず、居場所を失ったまま成長する子が多いことは大きな問題だとアシュリーが話してくれました。それらの話を聞きながら「もし自分がコーダだったら……」とイメージしました。まだ自分が子どもで、大きなショッピングモールで親とはぐれてひとりぼっちになってしまったとき、どれだけ泣いても親は気づいてくれないわけです。永遠に迷子になる感覚に近いイメージを持ちました。そのとき、この映画を作りたいと思うようになりました。実際に話を聞いて、苦悩を間近に感じた―ananwebでは『コーダ あいのうた』のシアン・ヘダー監督にも取材をさせていただいており、コーダの子どもたちが抱える重荷とコーダとしての誇りとの間に生じる矛盾に興味を持ったとお話されていました。監督が実際にコーダの方々と接してみて、印象に残っていることはありましたか?監督東日本大震災で命を落としたろう者の息子さんとお話する機会があったのですが、目の前に避難できる施設があったにも関わらず、ご両親は家の2階で手をつないだ状態で亡くなられていたそうです。そのときに、彼は「自分はろうである両親のことを最後の最後までわからなかった」と。そして、親に何か起きたとき駆けつけられる距離に自分がいなかったことに罪悪感を抱いておられるようでした。電話の涙声から、親と子同士がまったく異なる遠い存在としてすれ違っていったのではないかと思えて、コーダの苦悩を間近に感じました。―今回は、アメリカのコーダ・コミュニティを取材されていますが、日本と比べるとかなり進んでいるのでしょうか。監督アメリカはコーダという言葉の発祥の地なので、場が整っているのを感じました。子どもたちにはコーダのキャンプがありますし、10代後半になると世界各国でコーダ会議を開催して、3日間にわたって話し合うこともあるそうです。日本に比べると、アメリカはアイデンティティを重要視する文化なので、コーダの世界の確立が進展したのだと思います。日本にも「J-CODA」があり、同じ経験をしてきた仲間同士が話せる場を作っています。日本の場合は、まだ自分がコーダであることに気がついていない人が多い印象です。実際に話をすると、「世界で自分だけかと思っていた」という人もいます。コーダについて知り、仲間がいることがわかれば自分自身との付き合い方に良い変化もあるかと思います。日本で、どうやってコーダのアイデンティティを作っていくのかについては、コーダという言葉が広まってきたこれからが大事になってくると自分は感じています。コーダの言葉によって、人生が変わった―本作に出演しているコーダの子どもたちとは3年にわたって交流がありましたが、取材のなかで彼女たちから学んだことも多かったのでは?監督そうですね。特にナイラから最初に「コーダを理解できると思わないでほしい。私の物語は私のものです」と言われたのは決定的だったと思います。あの言葉がなかったら、僕は取材という名目で他人の苦労や人生を代弁してしまうような制作を続けてしまっていたと思うので。そう言われて以来、僕はこれまで積み上げてきた技術を一回すべて捨てなければいけなくなったので、人生が変わりましたが、すごく感謝しています。特にナイラの最初のインタビューで「わたしはろうになりたかった」という一連の感情の流れが撮れていなかったら、僕はこの映画を途中で辞めていたかもしれないと思います。あのときに一度しか撮れない圧倒的な語りでした。―制作するうえで、気をつけていたこともありましたか?監督コーダのみなさんからは「シンパシー(同情)はいらない。エンパシー(共感)がほしい」と言われたので、そのあたりも考えました。特に、近年アメリカでも“感動ポルノ”と言われるような作品は、障がいを持った人の物語を健常者が消費しているとして問題になっていますが、取材者が当事者のように語ってしまうことはすごく危険なことでもあります。マジョリティ側にいる自分は、何が差別なのか気づかない、その認識すらないので、自分自身の言動に気をつけました。実は、この作品も当初は聴者の視線で編集していました。手話のシーンがほとんどなく、言語優先の構成になってしまい、完成しませんでした。その構成自体が聴者による差別的な態度になっていることに気がついたので、全部イチから作り直すことにしました。そのあとに出来上がったものでは、言語は詩のように凝縮された断片として使い、手話を入れ、観た人が目で読むことで完成する映像を目指しました。観客のみなさんにも、少しだけ「目で読む」ろう者やコーダの感覚を知っていただける作りになっていると思います。他者と生きることは何かを感じてほしい―では、コーダのみなさんがより暮らしやすくするために、私たちができることがあれば教えてください。監督まずは、コーダの存在を知ることではないでしょうか。特に、教育者の方に伝えたいことですが、ろう者の家庭で育った場合、子どもは手話が母語になるので、口語を覚えられないまま学校に行くことがあります。アメリカのコーダの子たちは「移民の子と一緒に補習の授業で英語を覚えた」という子がたくさんいました。そうしたサポートが充実するためにも、まずは聴者の側がコーダのことを知ってほしいと考えています。これは人種差別やジェンダーの問題でも言えることですが、他者と生きることを学ぶ時代なのかと思います。つまり、自分から見えるものだけでなく、向こう側からはどう見えているのかという行き来を、つねに自分のなかに持っていることがこれからは大事になってくるのではないかなと。この作品では、聴者のみなさんが映画を鏡にして、自分自身の姿が見えるような経験になったらいいなと思っています。―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。監督日本社会のなかで、女性であるだけで生きづらさを強いられるところもあるように、さまざまな社会規範のなかで居場所がないと感じている人は多いと思います。僕自身も、社会にフィットできずに生きてきました。一見、健常者でも、細かく見ていくと、抑圧から無力感を味わい、居場所がないと感じている人もいます。それに気がついたとき属性で人を見ることをやめれば、バリアを解きほぐして人と人が近づいていけるのではないかなと。居場所がない者同士がどうやって生きていくかを真剣に考える時代だと思うので、この映画を通して他者と生きるという当たり前のことをもう一度想像してもらえたらうれしいです。“心の声”に耳を傾ける!コーダが味わう苦悩や葛藤だけでなく、コーダとして生きる喜びもリアルに映し出し、さまざまな発見を与えてくれる本作。新しい視野を得ることは、いままでの自分を振り返る機会となり、そしてこれからの自分の生き方についても改めて考えるきっかけを与えてくれるはずです。取材、文・志村昌美必見の予告編はこちら!作品情報『私だけ聴こえる』5月28日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開配給:太秦©TEMJIN / RITORNELLO FILMS
2022年05月27日米ドキュメンタリー視聴率NO.1を獲得した、ドキュメンタリー番組「ジャネット・ジャクソン私の全て」がCSヒストリーチャンネルにて6月12日(日)放送。この度、本日5月16日(月)ジャネット・ジャクソン本人の誕生日を記念し、本作の第1話から自身の生家を兄ランディと訪れる本編の貴重映像の一部と、新画像2点が初解禁された。アメリカのポップカルチャーを変えた伝説のシンガー“ジャネット・ジャクソン”が全てを語る本作。5年の歳月をかけて制作され、これまで語られることのなかったジャネットの50年余りの人生を、本人と著名な友人たちが語る完全保存版ドキュメンタリー。ジャネットが初めて語る複雑な幼少期、兄弟や親との関係、兄マイケルとの想い出。全盛期の未公開映像や、最も世間で話題になった瞬間映像をふり返りながら語るシンガーとしてのキャリア、そして、母となってからの人生観の変化など。これまでメディアに多くを語らなかったジャネットが、これほどまでに自身を解放したことはなく、彼女の口から語られるその半生は彼女自身の歴史のみならず50年間のアメリカのポップカルチャーを映し出す。今回解禁されたシーンはジャネット本人と、兄ランディ・ジャクソンがいまも残されている生家を訪れる貴重映像。生家はジャクソン通りという道路の近くに建っており、ジャネットは「私たちが由来だと思われているけど、もとからこの名前よ」と説明。兄ランディは生家の前で、「よくこの道で遊んだ。とても懐かしい。ジャネットとは特別に仲がよかった」と当時の様子を笑いながら懐かしむ。ジャネットも「ケンカしたし、からかわれたけど仲よしだった。ランディにマイケルと私。3人トリオだったのよ」と、彼女の印象も兄とまったく同じく仲が良かった様子。その後、家の前でジャネットは兄ランディと合流し、当時まだ小さく記憶が曖昧なジャネットのためにランディが家の詳細を説明する。「62平米くらいかな。9人兄弟でね。それに加えて両親。子供の頃は広く感じたな。ここで育ち遊び音楽を奏でた。この家が出発点だ」という説明に、ジャネットは感慨深い表情を浮かべ「かわいい家よね」とつぶやく。そして家の中へと入っていく2人。ジャネットは早速「びっくりするくらい狭いわ」と驚いた様子。ランディはこの狭い家でみんながどのようにして寝ていたか説明してくれる。「ここにソファがあって、女の子3人はここで寝てた」と語り、そこにジャネットの姉リビー・ジャクソンのインタビューコメントが入り「わたしが16歳の時、彼女が生まれた。妹ができて本当に嬉しかった。男の子たちは偉ぶるからもう一人妹が欲しかったの」と笑いながら当時の気持ちを語る。ジャネットとランディは部屋の中を進み、残り6人の男の子の子ども部屋を訪れる。「こっちが僕らの部屋。3段ベッドがあったんだ。ジャッキーが下で、マーロンと僕とマイケルが真ん中、残り2人が上だ」それを聞いてジャネットは「3人が1段に寝てたの?」と驚く様子も。自身のルーツに触れた貴重な映像となっている。「ジャネット・ジャクソン私の全て」は6月12日(日)~毎週日曜20時よりCSチャンネル「ヒストリーチャンネル」にて放送(全4話)。(text:cinemacafe.net)
2022年05月16日LiSAの10周年プロジェクトに密着したドキュメンタリー『LiSA Another Great Day』が、2022年秋にNetflixで独占配信されることが決定した。本ドキュメンタリーは、日本人ソロアーティスト初のNetflixオリジナル作品として配信され、昨年4月より続くLiSAのソロデビュー10周年企画“LiiiiiiiiiiSA”(10周年を記念して、LiSAが贈る10個のi=愛)を締めくくる企画。ソロデビュー10周年の日々に密着し、ここでしか見れないLiSAの素顔に迫るドキュメンタリー映像になっている。LiSAは、3月30日に自身のインタビューと連載を一冊にまとめた『10th Anniversary Complete Book LiS"A"ni!』を、4月13日にライブBlu-ray / DVD『LiVE is Smile Always~unlasting shadow~ at Zepp Haneda (TOKYO) 』をリリース。また、4月にはライブ『LiVE is Smile Always~Eve&Birth~』の開催を控えている。■佐渡岳利監督 コメントLiSAさんはトップスターですが、日常は不安で仕方ないごく普通の人間です。仕事をする時なぜかご本人にトラブルが起るのですが、それを克服し日々成長を続ける姿にはいつも共感させられます。そんな彼女の素顔を世界のNetflixメンバーにシェア出来るのは私の大きな喜びです。<番組情報>Netflixドキュメンタリー『LiSA Another Great Day』2022年秋 Netflixにて全世界独占配信出演:LiSA監督:佐渡岳利詳しくはこちら:<リリース情報>『LiVE is Smile Always~unlasting shadow~ at Zepp Haneda (TOKYO) 』2022年4月13日(水) リリース●完全数量生産限定盤 ※スペシャルBOX仕様(Blu-ray+ライブCD+オリジナル卓上カレンダー+ライブフォトブックレット)価格:11,000円(税込)『LiVE is Smile Always~unlasting shadow~ at Zepp Haneda (TOKYO) 』完全数量生産限定盤ジャケット●初回仕様限定盤(Blu-ray)価格:8,800円(税込)●初回仕様限定盤(DVD)価格:8,800円(税込)※在庫が無くなり次第「通常盤」に切り替わります。『LiVE is Smile Always~unlasting shadow~ at Zepp Haneda (TOKYO) 』初回仕様限定盤ジャケット『LiVE is Smile Always~unlasting shadow~ at Zepp Haneda (TOKYO) 』通常盤ジャケット【映像収録内容】※全形態共通■2021年2月22日(月) Zepp Haneda(TOKYO)M01. ASHM02. 紅蓮華M03. BRAND NEW YOUM04. 変わらない青M05. 蜜M06. シルシM07. 炎M08. unlastingM09. dawnM10. unlasting shadow medley ※M11. Rally Go RoundM12. やくそくのうたM13. ハウルEn1. サプライズEn2. best day, best way※unlasting shadow medley1. KiSS me PARADOX2. sweet friendship3. オレンジサイダー4. 妄想コントローラー5. say my nameの片想い6. 1/f7. リングアベル8. LOVER“S”MiLE【ライブCD収録内容】※完全数量生産限定盤のみM01. ASHM02. 紅蓮華M03. BRAND NEW YOUM04. 変わらない青M05. 蜜M06. シルシM07. 炎M08. unlastingM09. dawnM10. unlasting shadow medley ※M11. Rally Go RoundM12. やくそくのうたM13. ハウルEn1. サプライズEn2. best day, best way※unlasting shadow medley1. KiSS me PARADOX2. sweet friendship3. オレンジサイダー4. 妄想コントローラー5. say my nameの片想い6. 1/f7. リングアベル8. LOVER“S”MiLE【応募封入特典】完全数量生産生産盤と初回仕様限定盤のパッケージに同封されている応募はがきからご応募いただいた方の中から、抽選で下記賞品を差し上げます。A賞:LiSA直筆サイン入り『LiVE is Smile Always~unlasting shadow~ at Zepp Haneda (TOKYO) 』ポスター(100名様)B賞:LiSA直筆サイン入り『LiVE is Smile Always~unlasting shadow~ at Zepp Haneda (TOKYO) 』オフィシャルライブグッズ(10名様)応募締切:4月24日(日)まで【店舗別先着購入者特典】■オリジナルA5クリアファイル・Sony Music Shop・ANIPLEX+・タワーレコード全店(オンライン含む / 一部店舗除く)・HMV(一部店舗除く)/ HMVオンライン・TSUTAYA RECORDS(一部店舗除く)およびTSUTAYAオンラインショッピング・WonderGOO / 新星堂全店(一部店舖除く)および新星堂WonderGOOオンライン・全国アニメイト(通販含む)・ゲーマーズ全店(オンラインショップ含む)・とらのあな全店(一部店舗除く)・通信販売・ソフマップ・アニメガ(一部店舗除く)・楽天ブックス・セブンネットショッピング・Joshinディスクピア(Joshin webショップ含む)■Amazon.co.jp購入特典『LiVE is Smile Always~unlasting shadow~ at Zepp Haneda (TOKYO) 』ロゴトートバッグ(A4サイズ)※特典は無くなり次第終了となります。※一部の店舗では取り扱っていない場合がございますので、詳細は各CDショップにお問い合わせ下さい。『LiVE is Smile Always~unlasting shadow~ at Zepp Haneda (TOKYO) 』店舗別特典一覧予約リンク:『明け星 / 白銀』アナログ盤発売中価格:2,500円(税込)※完全生産限定盤LiSA『明け星 / 白銀』アナログ盤ジャケット(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable【収録内容】■A面M1. 明け星(作詞・作曲・編曲:梶浦由記)M2. 白銀(作詞・作曲・編曲:梶浦由記)■B面M1. 明け星 -Instrumental-M2. 白銀 -Instrumental-M3. 明け星 -TV ver.-M4. 白銀 -TV ver.-購入リンク:『LADYBUG』アナログ盤発売中価格:3,300円(税込)※完全生産限定盤LiSA『LADYBUG』アナログ盤ジャケット【収録内容】■A面M1. RUNAWAY(作詞:LiSA 作曲:LiSA 編曲:PABLO a.k.a. WTF!?)M2. Another Great Day!!(作詞:LiSA 作曲:TAK MATSUMOTO 編曲:TAK MATSUMOTO、YUKIHIDE "YT" TAKIYAMA)M3. サプライズ(作詞:LiSA 作曲・編曲:高橋浩一郎(onetrap))4. GL(作詞:薔薇園アヴ 作曲:薔薇園アヴ 編曲:女王蜂、塚田耕司)■B面M1. ViVA LA MiDALA(作詞:LiSA、MAH 作曲:MAH 編曲:MAH)M2. ノンノン(作詞:北川悠仁、LiSA 作曲:北川悠仁 編曲:野間康介(agehasprings))M3. Letters to ME(作詞:LiSA 作曲:LiSA 編曲:下村亮介(the chef cooks me))購入リンク:<ライブ情報>LiSA『LiVE is Smile Always~Eve&Birth~』■「the Eve」4月12日(火) 福岡サンパレスホテル&ホール開場 17:30 / 開演 18:304月28日(金) 仙台サンプラザホール開場 17:30 / 開演 18:30■「the Birth」4月19日(火)・20日(水) 日本武道館開場 17:30 / 開演 18:30特設サイト:<商品情報>『10th Anniversary Complete Book LiS“A”ni!』2022年3月30日(水) 発売初回生産限定版:4,950円(税込)通常版:4,070円(税込)判型:書籍 / 縦297ミリ×横235ミリ発行・発売:株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ『10th Anniversary Complete Book LiS"A"ni!』初回生産限定版スリーブケース【店舗別特典】アニメイト:クリアファイル(撮りおろしフォトA使用)ゲーマーズ:ブロマイド(撮りおろしフォトB使用)タワーレコード:ポストカード(撮りおろしフォトC使用)Amazon.co.jp:メガジャケ(表紙フォト使用)※MUSICストア内【Amazon.co.jp 限定】商品にのみ同封されています楽天ブックス:ブロマイド(撮りおろしフォトD使用)※特典は数に限りがございます。なくなり次第終了となります。関連リンクLiSA Official Website: Official YouTube: 10周年特設サイト:
2022年03月25日歌手のLiSAに密着したドキュメンタリー『LiSA Another Great Day』が、今秋にNetflixで全世界独占配信されることが25日、わかった。アニメ『鬼滅の刃』の主題歌「紅蓮華」や「炎」をはじめ多くのヒット曲で、日本のみならず世界にもファンを持つLiSA。日本人ソロアーティストとして初のNetflixオリジナルドキュメンタリーとなる同作は、LiSAの10周年の日々に密着し、昨年4月から始動したプロジェクト「LiiiiiiiiiiSA」の締めくくりとなる企画。様々な現実をつきつけられ失敗を重ねながら歩んできたLiSAの山あり谷ありの軌跡を踏まえながら、LiSAの根幹をなす「楽曲」と「ライブ」が生み出される創作の現場で素顔に迫っていく。
2022年03月25日ガールズグループ・TWICEのミナがスキンケアブランドSK-llのグローバルアンバサダーに就任し、ドキュメンタリー動画「#ピテラと私: TWICEのミナが語る新しい自分と、ピテラエッセンス」が17日より公開される。今回公開された同動画はセルフ撮影で行われ、招待状を受け取ったミナが、日常から離れた空間で自分を労わりながらリラックスする姿を披露。普段見ることのできない素の表情で、プライベートや目標について本音で語っている。焚火の前で温かい飲み物を片手に自身の人生を振り返ったミナは「新しいことに挑戦したくて、ダンスを始めたら人生が変わった」と明かし、また自身についても「本当に普通の女の子だと思います。人見知りでシャイなところもあるし」と客観視した。5月には同ブランドのTVCMも全国で放送予定。日本では初のCMソロ出演となる。■TWICE・ミナ インタビュー――アンバサダーになることについて心境は?とてもワクワクしています。私は25歳になるんですが、これからもっともっと、スキンケアも頑張っていかないとなと思っていたところなので、SK-llと一緒に、美容について色々学べることを楽しみにしています。――素肌の撮影と聞いてどう思われましたか?やっぱり、ここまでナチュラルな、ラフな姿での撮影は初めてだったので緊張したんですが、でも撮影していく内に段々リラックスして、ありのままの自分をたくさん見せれたんじゃないかなと思います。――スキンケアのステップで欠かせないものはなんですか?スキンケアはやっぱり保湿が大切だなと思っていて、メンバーとかメイクさんにも保湿は絶対にしないとダメだと、いつも言われているんですが、あんまりこだわって選んだことってなかったんですけど、今回、このピテラエッセンスを使ってみて、「あ、やっぱり違う」と思いましたね。――普段の生活で美を保つために気を付けていることはありますか?私は、もともと水を飲むのがすごく苦手だったんですけど、やっぱりお肌のためにも最近は水をたくさん飲むように心がけています。――今回ソロで活動する心境は?私はいつもメンバーと一緒だったので、やっぱりソロだと緊張するんですが、今回SK-llを通じて、私の、ミナの姿を皆さんにたくさんお届けできたらいいなと思います。――日本語で、しかも自分のことについて語るのはあまりない機会かと思いますがいかがですか?小さい頃から知っているSK-llというブランドを通して、私の言葉で、日本語で、皆さんに私のことについてこうやってお話しできるのは、本当にいい機会だと思うし、この機会をくださったSK-llさんに本当に感謝の気持ちでいっぱいです。――なぜ今回、セルフケア/自分のための時間を持つことを目標にしたのですか?やっぱり楽しい時間を過ごすことは、お仕事をする上でも、いいコンディションを保つ上でもすごく大事なことだと思っているので、これからはセルフケアをしっかりして、これからのお仕事も頑張っていきたいと思います。――自分のための時間を持つというのがミナさんの新生活ですが、自分のために具体的にどんなことをしたいと思いますか?自分の好きなもの、編み物だとかゲームだとか、そういう部分ももちろん伸ばしていけたら嬉しいし、なんならもっともっとアクティブなスポーツにも挑戦してみたいです。――お仕事で気合を入れるときのミナさんのルーティンを教えてください。前日にパックをしたりして、お肌のコンディションを整えるようにしています。お肌の調子がいいとやっぱり、気持ちも上がって自信につながるのでそういう風にしています。――このキャンペーンをご覧になる新生活を始めるかたへメッセージをください。新生活を始める皆さん、新しい生活に向けて緊張とかワクワクする気持ちとか色々あると思いますが、私も皆さんと同様に、新しいことに今年はたくさんチャレンジしようと思っています。不安になることもあるかもしれませんが、私も同じ気持ちです。一緒に頑張りましょう!
2022年03月17日アニメーションドキュメンタリー映画『FLEE フリー』が、2022年6月10日(金)に公開される。第94回アカデミー賞国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞ノミネート作品。ある青年が祖国からの脱出を語るドキュメンタリーアニメ映画『FLEE フリー』は、アフガニスタンで生まれ育ち、デンマークへと亡命した研究者アミンが、20年以上も抱え続けていた秘密を、親友である映画監督に初めて打ち明け、語るドキュメンタリー。主人公アミンをはじめ、周辺の人々の安全を守るため、ドキュメンタリーでありながらアニメーション作品として制作された。タリバンとアフガニスタンの恐ろしい現実や、祖国から逃れて生き延びるために奮闘する人々の過酷な日々、そして、ゲイであるひとりの青年が自分の未来を救うために過去のトラウマと向き合う物語を、アニメーションだからこそ再現できたアミンの過去の実景と繊細な心情描写とともに紡いでいく。<映画『FLEE フリー』あらすじ>アフガニスタンで生まれ育ったアミンは幼いある日、父がタリバンに連行されたまま戻らず、残った家族とともに命がけで祖国を脱出した。やがて家族とも離れ離れになり、数年後たった一人でデンマークへと亡命した彼は、30代半ばとなり研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚を果たそうとしていた。だが、彼には恋人にも話していない、20年以上も抱え続けていた秘密があった。あまりに壮絶で心を揺さぶられずにはいられない過酷な半生を、親友である映画監督の前で、彼は静かに語り始める…。第94回アカデミー賞3部門にノミネート映画『FLEE フリー』は、ドキュメンタリー、アニメーションというジャンルの垣根を越えて、各国の賞レースを席巻。2021年のサンダンス映画祭にてワールド・シネマ・ドキュメンタリー部門の最高賞であるグランプリを獲得、アヌシー国際アニメーション映画祭でも最高賞となるクリスタル賞ほか3部門を受賞。第94回アカデミー賞では、史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門同時ノミネートを果たしており、受賞にも期待がかかっている。個人的でありながら世界の人々に響く物語映画『FLEE フリー』が伝えるアミンの物語は、非常に個人的なものでありながらも、紛争、難民、人種差別、LGBTQ+など現代社会を覆う数々のテーマが内包されている。自身も迫害から逃れるため、ロシアを離れたユダヤ系移民であるヨナス・ポヘール・ラスムセン監督は、「難民であることはアイデンティティではありません。それは誰にでも起こりうる状況です。アミンは難民ですが、彼はそれだけではありません。彼は学者であり、家の所有者であり、夫なのです」とコメント。痛ましい争いや権力による武力行使が起こる今の世界において、アミンの苦しみは対岸の火事ではなく、いつか我々の身にも起こるかもしれない物語として世界中の人々の胸に響く。なお、製作総指揮は、『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』でムスリムとして初めてオスカー候補となったリズ・アーメッドと、ドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」のニコライ・コスター=ワルドーの2人。アミンの物語に心を打たれた2人が、エグゼクティブプロデューサーとして『FLEE フリー』をサポートしている。【詳細】映画『FLEE フリー』公開時期:2022年6月10日(金) 新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国公開監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン脚本:ヨナス・ポヘール・ラスムセン、アミン・ナワビ製作プロダクション:Final Cut for Real製作総指揮:リズ・アーメッド、ニコライ・コスター=ワルドー英題:FLEE製作国:デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フランス合作言語:デンマーク語、英語、ダリー語、ロシア語、スウェーデン語日本語字幕:松浦美奈後援:デンマーク大使館配給:トランスフォーマー■ムビチケ発売日:4月22日(金)・通常版 1,500円 ※数量限定、取扱有無は各劇場まで問い合わせ。・チャリティ付特製大きめエコバッグセット 2,000円 ※メイジャー通販サイト限定、売上から1枚につき500円が国連UNHCR協会に寄付。
2022年03月06日乃木坂46の5期生が出演するドキュメンタリー映像の第1弾が公開された。2月2日から新メンバーの情報が公開された途端、連日Twitterでトレンド入りするなど大きな反響を呼んでいる5期生メンバー。公開された映像は、3月23日にリリースされる乃木坂46のニューシングルに収録される特典映像「5期生ドキュメンタリー」の一部で、井上和、一ノ瀬美空、菅原咲月、小川彩が出演。地元の思い出の地を巡るメンバーやオーディションに応募した理由を語るメンバーなど、5期生個人個人のバックグラウンドに迫った内容となっている。なお本日2月18日には、冨里奈央、奥田いろは、中西アルノ、五百城茉央が登場するドキュメンタリー映像の第2弾が公開される。乃木坂46 5期生ドキュメンタリーダイジェスト映像 第1弾<リリース情報>乃木坂46 29thシングル『タイトル未定』2022年3月23日(水) リリース特典映像:5期生ドキュメンタリー※学業の都合で、一部収録されないメンバーがいます<イベント情報>お披露目イベント『5期生お見立て会』2月23日(水・祝) 11:00~ YouTubeチャンネル「乃木坂配信中」で配信される「乃木坂46時間TV」内にて開催関連リンク乃木坂46 公式サイト乃木坂46 Twitter乃木坂46 Instagramチャンネル「乃木坂配信中」
2022年02月18日いつの時代も、大きな関心を集めるものといえば、グルメに関する話題。そこで、破格の値段で取引されることもある“世界最高級食材”として注目を集めている白トリュフの知られざる真実に迫ったドキュメンタリーをご紹介します。『白いトリュフの宿る森』【映画、ときどき私】 vol. 456北イタリアのピエモンテ州でささやかれていたのは、夜になると白トリュフを探しに出かける妖精のような老人がいるという“言い伝え”。人の手によって栽培が行われたことがないアルバ産の白トリュフは、なぜそこに育つのか解明されていなかった。危険が多い森の奥深くで、訓練された犬たちとともに伝統的な方法で白トリュフを探す老人たち。まるで宝探しをするように楽しんでいたが、近年は気候変動や森林伐採によって収穫量が減少していた。トリュフが実る場所を決して誰にも明かさない彼らの“秘密”とは……。サンダンス映画祭を皮切りに、世界有数の映画祭で“異彩を放つドキュメンタリー”として大きな話題となった本作。今回は、舞台裏を知り尽くすこちらの方々にお話をうかがってきました。マイケル・ドウェック監督 & グレゴリー・カーショウ監督2018年の『THE LAST RACE(原題)』以来、2度目の共同監督を務めたドウェック監督(写真手前・右)とカーショウ監督(同・左)。謎に包まれていたトリュフハンターたちの日常に迫るため、3年もの歳月をかけたおふたりに、撮影秘話や現在取り組んでいる新たなプロジェクトについて語っていただきました。―家族にさえトリュフの場所を教えないほどの秘密主義であるトリュフハンターたち。そのコミュニティに部外者が入り込むのはかなり大変だったと思いますが、どのようにして彼らの信頼を勝ち取ることに成功したのですか?ドウェック監督まず言えるのは、ワインとエスプレッソはかなり飲んだということですね(笑)。というのも、ここではすべてのことが秘密なので、街に2軒ほどしかないレストランに通うところから始めたからです。メニューに載っているトリュフをどのハンターから仕入れているのかを尋ねても、最初は「父親の代から40年以上の付き合いだが、トリュフハンターには会ったことがない」と言われてしまうほどでした。―なかなか厳しい対応ですね。実際、彼らはどうやって取引しているのでしょうか。ドウェック監督夜中にお金を入れた木箱を外に出しておくと、朝には魔法のようにトリュフが入っているそうです。その後、店主が司祭をしているいとこなら何か知っているかもしれないからと紹介してくれました。そこで、「カルロという人が教会に来るときはいつもトリュフの匂いがするから彼がハンターじゃないかな」という情報を得て、今度はカルロを紹介してもらったのですが、彼からは「僕は違うけど、あの人が怪しいかも」と言われてしまったんです。そんな状況が3~4か月ほど続きましたが、それでも諦めずにいろいろな方に話を聞き続けました。その間はカメラを出さずに、ただ彼らから家族にまつわる思い出話を聞いたり、農場を見せてもらったりするだけ。かなり時間はかかりましたが、そんなふうに接していくなかで家族のような関係性を築くことができました。減少する白トリュフを保護する一助になりたい―その結果、実はトリュフハンターだったカルロさんはじめ、みなさんが出演してくださったのですね。ドウェック監督あとは、僕たちが滞在していたアパートの近くにお肉屋さんとチーズ屋さんがあったので、朝イチで大量のお肉とチーズを仕入れることも大事な日課。それを持って、行く先々の人たちとおみやげ交換をしていましたから。そうやって心地よい関係になってからカメラを入れたので、撮影を始めたときには彼らもカメラを意識することなく自然と進めることができたのだと思います。―ただ、そのいっぽうでトリュフハンターたちの背後に渦巻く深刻な問題の数々が映し出されており、衝撃を受ける場面もありました。カーショウ監督毎年トリュフの獲れる数が減っているにもかかわらず、世界的な需要がどんどん上がっているので、いまや白トリュフは金塊と同じくらいの値段で取引されることもるほどですからね。そういったことが大きなプレッシャーとなり、それまで起きなかった争いやライバルの犬を毒殺してしまうといったダークな部分を生み出しているのだと感じました。―それらの現実を目の当たりにして、監督たちの考え方に影響を及ぼすこともあったのでは?カーショウ監督僕たちも、白トリュフがこれほど稀有な食材となっていることを今回の撮影を通して知ったので、それがきっかけとなって始めたのが保護プログラム。集めた資金をトリュフハンターたちに渡し、彼らがトリュフハンティングしている土地を買えるようなシステムを作りました。そうすることで、危険にさらされているこの場所を永久的に保護できると考えているので、それが減少しているトリュフの問題を解決する一助になることを願っています。トリュフハンターたちから大きな影響を受けている―この伝統を守るために、消費者である私たちでもできることがあれば教えてください。ドウェック監督先ほどお話した保護プログラムとともに行っていることのひとつが、この地域で作られたトリュフハンターワインを生産すること。そこで得たすべての収益が彼らに還元されるようなシステムになっており、それによって現在までに52エーカーもの森林を守ることができました。なかなか難しいところですが、まずは森を守ることが一番だと考えています。―支援の第一歩として、トリュフハンターワインを買うことから始めるというのであればできそうですね。ドウェック監督今後は、これをお手本にしてほかの街や国がそれぞれの文化を保護する動きが活発になることを願っているところです。というのも、これらのプログラムは森林だけでなく、コミュニティなどの“文化的生態”を守るためのものでもありますからね。あとは、この映画にインスピレーションを受けて、新しい世代のトリュフハンターが生まれてくれることも願っています。―いろいろな形で広がっていくといいですね。また、個性豊かなトリュフハンターたちの“名言”も見どころですが、彼らと接するなかで感銘を受けたことといえば?ドウェック監督彼らが自然や犬と密接な関係を保ちながら過ごしているのを見て、「自分はこれからどういうふうに生きていけばいいのか」と考えるきっかけになったので、僕たち自身も大きな影響を受けました。すでにこの映画を観た方々からも、「生き方を変えようと思った」とか「自給自足の生活をしてみたい」といった意見がたくさん届いたほどです。カーショウ監督トリュフハンターのなかには、すでに90歳を過ぎている人もいますが、みんなエネルギーや喜びを持って生活している人ばかり。一緒にいると、若者と接している感じがしてとても驚きました。なかでも、カルロの奥さんが「年も取ったんだし、仕事はもう終わりにしてほしい」と言ったときに、カルロが「もしこれが人生の始まりだったらどうする?」と返した場面はすごかったですね。いくつになっても、人生のどのタイミングでも、「ここが始まりかもしれない」というのはとても美しい考え方だと思います。この作品が生活を見直すきっかけになってほしい―確かに、非常にステキな言葉だと思いました。では、まもなく公開を迎える日本に対しては、どのような印象をお持ちかを教えてください。ドウェック監督僕が初めて東京で写真展を開催したのは20年前ですが、それからだいたい年に1回は日本を訪れているくらい本当に日本が大好きです。特に、ものづくりや伝統では高いレベルを極めようとする姿勢がすばらしいなと。それは食文化においても言えることですが、食材や生産地にこだわり、自然をリスペクトしているところには感銘を受けています。今回は、映画の写真も含めた写真展を2月16日~4月24日まで東京のブリッツ・ギャラリーで行うので、そちらにもぜひお越しいただけたらと。コロナ禍が終わったら、なるべく早く戻りたいと思っているほど、僕にとって日本は大切な場所です。実は、いま検討している企画のひとつに日本が候補地に挙がっているものがあるので、ぜひ日本で撮影できたらいいなと考えています。―楽しみにしております。それでは最後に、本作を通して伝えたい思いをお聞かせください。ドウェック監督2年以上コロナ禍でみなさんも感じているかもしれませんが、デジタルメディアよりも、もっと自然と触れ合う時間を取るべきだと考えています。この作品が、デジタルメディアに支配されている自分の生活を見直すきっかけとなり、自然との関係性についても改めて考えてもらえたらうれしいです。カーショウ監督確かに、彼らはデジタルが介入する前の世界にそのまま残っている生活を送っていたので、僕たちも1960年代にいるような感覚を味わうことができました。映画を観ていただく方々にも、僕たちと同じようなタイムトラベルのマジックを体感してほしいですし、いまの時代ではなかなか見つけることができないような幸せや喜び、そして美しさを彼らから感じてもらえたらと思っています。“白トリュフの秘密”がいま明かされる!美しい森が生み出す神秘と、その裏に渦巻く欲望の世界を垣間見ることができる本作。人々を虜にする芳醇でミステリアスな白トリュフの香りに包まれながら、無垢なトリュフハンターたちの生き様に心が刺激される1本です。取材、文・志村昌美美しさに魅了される予告編はこちら!作品情報『白いトリュフの宿る森』2月18日(金)より、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント©2020 GO GIGI GO PRODUCTIONS, LLC
2022年02月17日ドキュメンタリー映画『白いトリュフの宿る森』が、2022年2月18日(金)より公開。ルカ・グァダニーノ製作総指揮の“おとぎ話”ドキュメンタリー映画『白いトリュフの宿る森』は、2021年1月、第36回サンダンス映画祭で披露されたことをきっかけに、批評家たちの間で“異彩を放つドキュメンタリー”として話題となった作品。製作総指揮を『君の名前で僕を呼んで』『サスペリア』のルカ・グァダニーノが務めている。『白いトリュフの宿る森』は、第73回カンヌ国際映画祭、第45回トロント国際映画祭など様々な国際映画祭で公式選出・正式上映され、計20部門にノミネート。史上初の快挙となる第73回<全米監督協会賞>と第35回<全米撮影監督協会賞>の同年同時受賞を果たし、アカデミー賞前哨戦のひとつとされる第92回<ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞>TOP5ドキュメンタリーにも選ばれた。白トリュフを探す“妖精のようなおじいさんたち”モチーフとなったのは、アルバ産・白トリュフを探しに、夜になると森に出てくる“妖精のようなおじいさんたち”。北イタリア、ピエモンテ州の名産であるアルバ産・白トリュフとは、世界で最も希少で高価とされる食材だ。栽培は行われておらず、どのように、なぜそこに育つのか解明されていない。危険のつきまとう森の奥深く、老人たちは犬と共に、まるで宝探しを愉しむように、何世代にも伝わる伝統的な方法で白トリュフを探し出すという。自然に寄り添う“美しい暮らし”を約3年間撮影“妖精のようなおじいさんたち”がいるというささやかな言い伝えを耳にし、ドキュメンタリー映画の製作を思い立ったのは、写真家でもあるマイケル・ドウェック監督。ドウェックは約3年間にわたり老人たちの生活に入り込み、信頼関係を得たうえで貴重な撮影に成功。彼らが大地に寄り添う姿や、時の流れが止まったような純粋で、美しい暮らしを映し出した。また、ドウェックのデビュー作である長編ドキュメンタリー映画『THE LAST RACE』でもタッグを組んだグレゴリー・カーショウが共同監督を務めている。【詳細】映画『白いトリュフの宿る森』公開日:2022年2月18日(金)監督:マイケル・ドウェック、グレゴリー・カーショウ製作総指揮:ルカ・グァダニーノ原題:The Truffle Hunters<映画『白いトリュフの宿る森』あらすじ>世界で最も希少で高価な食材、アルバ産の<白トリュフ>。その<白トリュフ>に隠された、まるでおとぎ話のような、実在する世界。北イタリア、ピエモンテ州で、夜になると森に<白トリュフ>を探しに出てくる、まるで妖精のようなおじいさんたちがいる……というささやかな言い伝えがあった。栽培は行われず、どのように、なぜそこに育つのか解明されていない<白トリュフ>。危険のつきまとう森の奥深く、老人たちは犬と共に、まるで宝探しを愉しむように、何世代にも伝わる伝統的な方法で<白トリュフ>を探し出す。気候変動や森林伐採により供給量が減り、トリュフ探しの極意を誰もが求める中、彼らはトリュフが実る場所を決して明かさない。それは長年連れ添った妻や友人にさえも、絶対に――。写真家のマイケル・ドウェックは約3年間にわたり彼らの生活に入り込み、信頼関係を得たうえで貴重な撮影に成功。そこに映し出されるのは、彼らの大地に寄り添い、時の流れが止まったような、純粋で、美しい暮らし。
2022年01月10日エドガー・ライト監督、初のドキュメンタリー映画『スパークス・ブラザーズ』が、2022年4月8日(金)に公開される。エドガー・ライト初のドキュメンタリー映画映画『スパークス・ブラザーズ』は、『ベイビー・ドライバー』『ラストナイト・イン・ソーホー』で知られるエドガー・ライト監督の最新作にして、初のドキュメンタリー映画。題材となるのは、兄ロンと弟ラッセルのメイル兄弟からなるポップバンド、スパークスだ。謎多きバンド・スパークスの真実に迫るスパークスと言えば、日本でも根強い支持を得る人気ポップバンド。直近では、2022年4月1日(金)公開のレオス・カラックス監督最新作『アネット』で原案・音楽を務めたことも話題となったが、いまだ謎の多いバンドでもある。そんなスパークスが、デビューから半世紀に渡って歩んできた道筋を明らかにするのが、映画『スパークス・ブラザーズ』。メンバーのロン&メイルや豪華アーティストたちのインタビュー、貴重なアーカイブ映像と共に、スパークスの真実に迫る。豪華アーティスト80組がスパークスを語るスパークスの魅力を語るのは、グラミー賞アーティストのベックや、スパークスとコラボレーションも果たしたフランツ・フェルディナンドのフロントマン アレックス・カプラノス、2021年にロックの殿堂入りを果たしたトッド・ラングレン、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのベーシスト・フリーなど80組ものアーティスト。2021年12月に日本最後の劇場ロードショーでも話題となった『ダンサー・イン・ザ・ダーク』で主演を務めるアイスランド出身歌手ビョークも、声で出演する。“熱狂的ファン”エドガー・ライト監督本人も出演エドガー・ライト監督本人も、“FANBOY(熱狂的ファン)”としてインタビュー出演。「初めて彼らを知ったのは1979年の活動期間だ。トップ・オブ・ザ・ポップス(BBCでOAされていた生放送音楽番組)で見た。シンプルでダイナミックだった。ラッセルは歌、ロンはシンセで当時流行の髪形でプレーしていたのを覚えている」と当時テレビ越しにうけた衝撃を語っている。また、エドガー・ライトは、オフィシャルインタビューにて「危機が何度も訪れたけどスパークスは運に頼らず才能で乗り切ったんだ。もうダメだというギリギリの場面で、2 人の飽くなき熱意に心動かされた人に助けられもした。自分たちの手で、スパークスは自分たちを何度も生まれ変わらせてきたんだ。意志の力だけでソレをやり遂げ続ける2 人に引き付けられてやまないよ!」ともコメント。熱狂的ファンである彼が、スパークスが辿ってきた道のりをどのように切り取るのか、注目したい。各映画賞で高評価映画『スパークス・ブラザーズ』は、2021年サンダンス映画祭でワールドプレミアを飾り、海外の批評家から高い評価を得た。ハリウッド映画批評家協会賞ドキュメンタリー映画賞にノミネートされたほか、5つの映画賞のドキュメンタリー映画部門にノミネートされている。(シカゴ映画批評家協会賞/ラスヴェガス映画批評家協会賞/デトロイト映画批評家協会賞/ポトランド映画批評家協会賞/フェニックス・オンライン映画批評家協会賞)【詳細】映画『スパークス・ブラザーズ』公開日:2022年4月8日(金)監督:エドガー・ライト出演:スパークス(ロン・メイル、ラッセル・メイル)、ベック、アレックス・カプラノス、トッド・ラングレン、フリー、ビョーク、エドガー・ライト※ビョークは声の出演。原題:The Sparks Brothers配給:パルコ ユニバーサル映画宣伝:スキップ
2021年12月31日いつの時代も美への飽くなき憧れは誰の心にもあるものですが、それによって数奇な人生を送ることになってしまった人たちが存在しているのも事実。そこで、ある少年が実際に経験した波乱に満ちた人生に迫った衝撃のドキュメンタリーをご紹介します。『世界で一番美しい少年』【映画、ときどき私】 vol. 4361971年、“世界で一番美しい少年”として一大センセーションを巻き起こしたのは、巨匠ルキノ・ヴィスコンティに見出され、映画『ベニスに死す』に抜擢された15歳の少年ビョルン・アンドレセン。その美しさは日本のカルチャーにも多大なる影響を与え、マンガ「ベルサイユのばら」の主人公オスカルのモデルともなった。それから約50年が経ち、伝説のアイコンは『ミッドサマー』の老人役としてスクリーンに姿を見せ、強烈なインパクトと驚きで話題となる。そして、いま明かされる『ベニスに死す』の裏側と、世界一の美少年と言われたビョルン・アンドレセンの栄光と破滅とは……。2021年サンダンス映画祭で上映された際に、大きな注目を集めた本作。そこで、5年にわたってビョルンさんを追いかけてきたこちらの方々にお話をうかがってきました。クリスティーナ・リンドストロム監督 & クリスティアン・ペトリ監督映画監督としてだけでなく、ジャーナリストや作家など、幅広いジャンルで活躍しているリンドストロム監督(写真・左)とペトリ監督(右)。今回は、日本で行われた撮影の裏側やビョルンさんが本作を通じて伝えたい思いなどについて、語っていただきました。―本作では、かなり真に迫る内容が多かったと思いますが、撮影を続けるなかで、ビョルンさんが躊躇するようなことはなかったでしょうか?リンドストロム監督今回は、5年という長い時間をかけ、ゆっくりとしたプロセスのなかで作っていたので、そういうことは特にありませんでした。どの段階においても確認していたのは、彼の準備が整っているかどうか、彼自身が見せてもいいと思っているかどうか。彼が望まなければ、そもそも撮影もしないスタンスでいたので、彼が途中で止めることはありませんでした。ただ、お母さまの死に関する報告書を警察で読んでいる場面では、彼が受け止めきれていないように見えたので、こちらの判断で撮影を止めたことはありましたが、そのくらいですね。美を求める気持ちには、破壊的な側面がある―天から与えられた美貌と才能が彼の人生を奪っていく様子は、ある意味では悲劇のようにも思いましたが、ビョルンさん自身は完成した作品をどのようにご覧になっていましたか?リンドストロム監督彼は「若い人たちが自分の人生を振り返るうえで、この映画が役に立てばすごくうれしい」と話していました。あとは、子どもや若者たちにとって、美への執着がいかに危険かをとても心配していましたね。特に、10代のころは内にある自分自身がまだ形成されていないので、彼らの持つ美が原因で周りの人たちから人生を奪われてしまう場合もありますから。そういったことを語るのは、非常に重要なことだと思っています。彼自身、いままで娘さんや妹とそこまで深い話をせずに来ていましたが、この作品を通して自分の過去と向き合うことができたので、それは彼にとって大きなものとなりました。―美への強迫観念についても本作では描いていますが、日本も外見へのこだわりやルッキズムが根強いところがあるように感じています。そういった問題と、どのように向き合っていけばいいとお考えですか?ペトリ監督確かに、とても危険なことですよね。私たちは、美を求める普遍的な気持ちや憧れというのを当然持ってはいますが、そこには同時に破壊的な側面があることをつねに意識していなければなりません。世の中には、注目されたいと思う若い男女がたくさんいますが、ビョルンから言わせると、そこには死の危険すらあるのだと。特に、いまはSNSが登場したことで、彼の時代よりも悪化しているようにも感じています。もちろん、周りにしっかりとした大人やいい友人がいる場合は、破滅的な人生を歩まずに済んでるかもしれませんが、いずれにしても危険であることに変わりがないというのは、忘れずにいてほしいです。映画を通して、観客に愛を与えることができた―ビョルンさんと長い時間をともにするなかで、ご自身にも影響を与えたことはあったのではないでしょうか。ペトリ監督映画を作るうえで、自分がすごく謙虚な気持ちになりましたし、ビョルンさんが持つ勇気には本当に感銘を受け、感嘆することばかりでした。もし自分だったら、彼のような経験をしたうえに、ここまでたくさんの人にそれを分かち合い、撮影を許可することはできなかっただろうと思うので。そう考えると、彼の姿から学ぶことはたくさんありましたね。今回、観客を入れた試写を行った際、上映後に20分ほどのスタンディングオベーションが起きたことも。彼はたくさんの努力をしてこの映画と向き合いましたが、最終的には観客に愛を与えることができたので、その苦労も報われたんだなと感じたときに、思わず泣きそうになってしまいました。ビョルンは、日本の文化も人々も大好き―本作では日本とビョルンさんの関係にも触れていますが、若い世代はビョルンさんが日本でここまでブームになっていたという事実に驚く部分もあるかと思います。ただ、いっぽうで日本もある意味では彼の美を“消費”していたところがあったように感じたのですが……。リンドストロム監督まず言いたいのは、彼が日本で経験したことと、日本という国とを一緒にしてはいけないということです。そもそもこれは異なる2つのことなのですから。彼もそう考えていたからこそ、日本の文化も人々も大好きだし、「日本に撮影で来れてよかった」と言っていました。ペトリ監督彼としては、日本での仕事は『ベニスに死す』の続きのような感覚だったようですね。もちろん、仕事においてストレスを感じていた部分もあったみたいですし、次に自分がどうなるかもわからない状況ではありましたが、それでも日本はすごく楽しかったと。だから、彼はずっと日本に戻りたいと話していたんですよ。その理由としては、10代で日本にいたときを思い返そうとすると、本当に自分は日本にいたんだろうかと思うくらい、とてもシュールな気持ちになるからだとか。だからこそ、本物の経験を改めて日本でしたかったみたいです。リンドストロム監督実際、今回の撮影で日本に行こうと話したらすごく喜んでいて、撮影中は本当に楽しんでいましたよ。大人たちは、本当に子どものためかを問いかけてほしい―その言葉が聞けてよかったです。では、監督たちにとって、日本はどのような印象ですか?リンドストロム監督これまでも何度か日本には行ったことがあり、森山大道さんなど、いろんな方を取材させていただいていたので、私たちにとっては慣れ親しんだ国と言えます。今回は、2週間という限られた期間で集中して撮影を行いましたが、いい経験になりました。ペトリ監督僕が一番長く日本にいたのは、以前『Tokyo Noise』という長編ドキュメンタリーを撮影したときのこと。実は、日本には1年ほど滞在していたんです。村上春樹さんや荒木経惟さんをはじめ、文化的に有名な方にたくさんインタビューをさせていただきました。しかも、その作品がYouTubeに上がったときには、すぐに何百万ものアクセスがあったほど好評だったので、日本にはいい思い出がたくさんありますね。そんなふうに、日本にはとても愛情を持っているので、旅行者ではなく、住人として日本の生活を味わってみたいと考えています。できれば、東京の富ヶ谷に住みたいですね(笑)。そうすることで、より日本の文化に沈み込んでいけると思うので、実はそのためにいま助成金の応募をしている最中なんですよ。―ぜひ、お待ちしております!それでは最後に、ビョルンさんからの言葉で忘れられないものや作品を通して伝えたいことをメッセージとしていただけますか?ペトリ監督たくさんあるんですが、そのなかでも彼が本気で伝えたいと思っていたのは、「親や大人たちがもっと子どものことを守らなければいけない」ということ。世の中には、自分の子どもをサッカー選手にしたいとか、ミュージシャンにしたいと思っている人もたくさんいますが、「それは子どものためではなく、自分のためにしていませんか?」というのを自分に問いかけてほしいのです。子どものことを本当に思って行動する大切さを教えてくれた彼の言葉は、僕のなかでも強く残りました。リンドストロム監督この作品では、美への強迫観念、欲望と犠牲、そしてルキノ・ヴィスコンティ監督が「世界一美しい少年」と宣言したことで人生が一変してしまった少年についての物語を描きました。他人によって作られたイメージ、アイコン、ファンタジーとなったことで青年期の人生を奪われることとなった1人の少年の物語に耳を傾ける機会を観客のみなさんに届けられたらと願っています。映画史の傑作に隠された衝撃の真実を知る世界を陶酔させる崇高な美で、人々を魅了した少年ビョルン・アンドレセン。誰もがうらやむ美しさの裏に隠された悲しみ、そして葛藤と孤独に触れたとき、人生において大切なものとは何かに気づかせてくれるはず。ふたたび立ち上がろうとする姿から、本来人間が持っている美しさを感じ取ってみては?取材、文・志村昌美衝撃が走る予告編はこちら!作品情報『世界で一番美しい少年』12月17日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ他にて全国順次公開配給:ギャガ© Mantaray Film AB, Sveriges Television AB, ZDF/ARTE, Jonas Gardell Produktion, 2021
2021年12月15日東日本大震災から10年という節目を迎えた今年、改めて命の重みや大切な人を亡くす悲しみと向き合った人も多いはずです。そんな思いに寄り添ってくれるのは、まもなく公開を迎える注目のドキュメンタリー『歩きはじめる言葉たち漂流ポスト3・11をたずねて』。そこで、本作についてこちらの方にお話をうかがってきました。升毅さん【映画、ときどき私】 vol. 420今回、2020年3月に急逝した映画監督で親友の佐々部清監督に縁のある場所を旅することになった俳優の升さん。本作では、東日本大震災の被災地で映画作りを考えていた監督の思いを胸に、岩手県陸前高田市の山奥へと向かい、亡くなった人へ宛てた手紙を受け取ってくれる「漂流ポスト3.11」と出会います。そのなかで知った悲しみとの付き合い方や佐々部監督への思い、そして自身のこれからについて語ってもらいました。―まずは、本作への出演を依頼されたときのお気持ちからお聞かせください。升さんもともとは劇映画の企画として関わっていたんですが、「漂流ポスト3.11」に手紙を書く人と管理する人を中心にしたドキュメンタリーに変わったと聞いていたので、一旦は僕の手から離れた作品でした。ところが、佐々部監督が突然亡くなってしまったことで、僕たち自身が手紙を書く側となり、すべて自分たちのこととして受け止めなければならなくなったのです。そこで、本作の野村(展代)監督が「自分たちの思いも乗せた映画として作りたい」ということで、僕を指名してくださいました。普通の映画のオファーをいただく喜びとは違う意味で、うれしかったですね。もし、僕以外の人がすると聞いたら、きっとすごく寂しい気持ちになったと思いますから(笑)。それくらいこの作品に声をかけてもらえたことは、ありがたいことでした。―とはいえ、カメラの前でご自身の悲しみと向き合うことに抵抗はありませんでしたか?升さんそれはなかったですね。というのも、佐々部監督が亡くなったことを受け入れられない日々がずっと続いていたので、この作品を通じて監督に関われる喜びのほうが大きかったからかもしれません。台本があるわけではないので、ただそこにいて感じることしかできませんでしたが、それでいいと言っていただいていたので、「カメラの前で何かをしなければいけない」という感覚は一切ありませんでした。悲しみには距離があることを知った―本作では、取材される立場でありながら、大切な人との別れを経験した方へ取材する立場も担っていらっしゃいました。そういった経験から得たものもあったのではないでしょうか。升さん今回、僕は“悲しみの距離”というものを知りました。それが時間によるものなのかは、いまでもわかりませんが、距離が取れるようになって初めて、ようやく思いを言葉にすることができるのではないかなと。そういった経験をされた方々の言葉は、本当に心に刺さるものがありました。ただ、僕はまだ悲しみとの距離が全然取れていないので、頭のなかでいろいろな言葉がめぐってはいるんですが、言葉として出てこないんですよね。そういったことを感じる瞬間は、撮影中もたくさんありました。―実際に「漂流ポスト3.11」に行かれてみて、印象に残っていることがあれば教えてください。升さんポストを管理されている赤川勇治さんから聞いて驚いたのは、そもそも手紙を書くことすらできない人が多くいるという話。だからこそ、その一歩を踏み出すことができた方々の手紙を見ることで人の強さに触れることができましたし、書いた方のことを考えるだけで僕のなかでもいろいろな感情が湧き上がりました。最初は「どうしていなくなってしまったの?」と書かれていた手紙が、だんだん「そっちはどう?」と変わっていく。そんなふうに、手紙を書いている方も、悲しみから生きていくほうへとシフトしていくんですよね。そういった手紙の数々を目にして、あのポストにはすごい力があるんだと改めて感じました。乗り越えようとしなくても、寄り添うだけでいい―コロナ禍では、大切な人と突然の別れを経験している人も増えていると思います。そういった悲しみを抱えている方に、升さんからどんな言葉をかけたいですか?升さん僕なんかが言えることなんてないですが、映画のなかで出会った住職から「悲しみを乗り越えようとしなくてもいい。寄り添っているだけでいいんですよ」という言葉をいただいたときに、僕自身は少し楽になりました。なので、いまつらい思いをしている方には、そのお話をしてくださった住職の力強くも優しい言葉をお借りして届けられたらいいなと。そういった考えに触れることで少しずつでも、変わっていってもらえたらと思っています。―家族との別れを経験している私も、升さんと同じくこの言葉には救われました。そのほかに、撮影中の忘れられない出来事などもありましたか?升さん本作で撮影と共同監督を務めたカメラマンの早坂(伸)ちゃんと野村監督と僕の3人は、2014年の『群青色の、とおり道』からの付き合いで、佐々部組では同期生なんです。そういったこともあって、すごくざっくばらんに撮影は進んだんですが、だからこそ時々2人が「このあと部屋に升さんだけ残してしゃべらせよう」とかきついことを要求してくるときもありましたね(笑)。ただ、そのなかで気がついたのは、言葉の重み。どうでもいい言葉はどんどん出てくるのに、本当に伝えたいことを言おうとすると、いろいろな映像や思いは浮かんできても「こんな言葉で言いたいんじゃない」と考え込んでしまい、なかなか口から出てこないんですよ。しかも、すごく時間をかけて出た言葉がものすごくシンプルな言葉だったりして……。そんな自分にがっかりしたこともありました。でも、「考え抜いて出た言葉は、何も考えずに出たものとは全然違う」と野村監督たちが言ってくれたので、これはこれでよかったのかなと。台本がないぶん、次に何が来るのか毎回ドキドキしていました。いい感じに歳を重ねられているのは、佐々部監督のおかげ―佐々部監督へ伝えたい思いについて触れるシーンでは、そういった時間をかけて出た言葉だからこそ、シンプルでも心に響くものがありました。では、この作品を経て、いま佐々部監督に伝えたいこととは?升さん映画を撮っていたときとあまり変われていない部分がまだあるので、いまでも「今度どこ行く?」みたいなことを言ってしまいそうですね。生前、これから一緒に撮ろうと話していた作品が2本ありましたが、野村監督がこの作品を形にしてくれたことで、佐々部監督と面と向かえるところはあるのかなと。とはいえ、できが悪かったら怒られるんでしょうけどね……。あとは、「升さんすぐ泣くから!」とからかわれそうです(笑)。でも、そういったことも酒の肴にしながら佐々部監督と一杯やりたいですね。―情景が目に浮かびます。改めて佐々部監督が遺してくれたものについて、どのように感じていますか?升さん作品を残してくださったことはもちろんですが、やっぱり佐々部組の仲間たちではないでしょうか。今回のことでより絆が強くなりましたし、どれだけみんなが監督のことを好きだったのかもよくわかりました。これからもそれはずっと続いていくものなので、僕たちにとっては財産でもありますね。もちろん監督にはまだまだいてもらいたかったですが、そういったことを強く感じました。―本作のなかで驚いたのは、初めて一緒にお仕事された際、これだけ長いキャリアのある升さんの演技に対して佐々部監督がかなりダメ出しをしたというエピソード。升さんにとっては転機のひとつになったと思いますが、そこで新たに見えたものもあったのでしょうか。升さん本当に、まったく違う世界が見えましたね。というのも、それまでやってきたことを間違っていると自分では思っていなかったですし、これからもそのスタンスで続けて行く予定でしたから。でも、佐々部監督と出会ったことで、60歳にしていままでやったことのない演技の仕方に挑戦することになりました。結果的にそれがいまにも、そしてこれから先にもつながっているので、そういったものをいただけてよかったなと。俳優としても、人としてもいい感じに歳を重ねられるようになったので、そのきっかけをくださったことには感謝しかないです。イケオジの先に、何かいいものを見つけていきたい―最近は、「イケオジ」としても注目を集めていますよね。ご自身ではこういう形で人気が出ることを想像されていましたか?升さんまず確認したいのは、「イケオジ」って「イケてるおじさん」ということですよね?パッと見はおじさんに見えているかもしれないですけど、僕はもう65歳のおじいさんですよ。だから、本当は「イケおじい」なんじゃないかなと思ったり(笑)。でも、そう言っていただけることはありがたいことですよね。あとは、役者として「この人が出てると安心する」とか「この人の表現がおもしろいな」と思っていただけて、それがイケてると感じていただけたら何よりもうれしいなと。もし、あのとき佐々部監督に出会わず、ダメ出しをもらっていなかったら、いまごろは「イケメンぶってる気持ち悪いおじさん」のほうのイケオジになってたかもしれないです(笑)。繰り返しにはなりますが、そういう意味でも監督には本当に感謝しています。―それによって、年齢を重ねることに対しての考えにも変化があったのではないかなと。升さんそうですね、年を取ることからくる豊かさみたいなものを感じることはありますね。1日1日がどんどん過去になっていきますが、昔のことも含めてすべてが財産。そういったものが自分のなかに残っていくというのは、すごくいいことだなと思います。―これから挑戦したいことなどもありますか?イケオジの先に目指してらっしゃることがあれば、教えてください。升さんイケオジの先……何があるんでしょうか(笑)。でも、何かいいものを見つけたいですね。もちろん、体力的に難しいこともあるかもしれませんが、いままでやってこなかったことは全部やってみたいという思いはつねにあります。毎年新しい自分に生まれ変わっているような感覚ですし、まだまだ全然やり切っていないという気持ちでいるので。具体的には決めていませんが、「その年齢でそれはできないでしょ!?」とみなさんが考えることに挑戦できたらいいなと思っています。インタビューを終えてみて……。愛情深くて、優しいオーラに包まれている升さん。放たれる言葉のすべてから佐々部監督への溢れる思いがひしひしと伝わってきて、こちらまで胸が熱くなりました。取材中、隣で微笑みながら話を聞いている佐々部監督の姿が見えるような感覚に陥ってしまったほどです。撮影では、お茶目な一面を見せるいっぽうで、ダンディな表情も決めており、さすがのイケオジっぷりを発揮。劇中でも、さまざまな表情を見せる升さんに注目です。言葉や手紙が持つ計り知れない力に救われる大切な人を失った悲しみを消すことはできなくとも、人はその思いとともに前へ進むことができるのだと教えてくれる本作。胸の奥に閉じ込めた言葉にできない気持ちを代弁し、寄り添ってくれる升さんとともに、自分なりの新たな一歩を踏み出す旅へと歩きはじめてみては?写真・北尾渉(升毅)取材、文・志村昌美ヘアメイク・白石義人、スタイリスト・三島和也コート¥39,600/BRU NA BOINNE(BRU NA BOINNE DAIKANYAMA 03-5728-3766)※その他スタイリスト私物心が動かされる予告編はこちら!作品情報『歩きはじめる言葉たち漂流ポスト3・11をたずねて』10月16日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開配給:アークエンタテインメント©2021 Team漂流ポスト写真・北尾渉(升毅)
2021年10月15日2019年、山形国際ドキュメンタリー映画祭にて優秀賞を受賞したブラジル発のドキュメンタリー『これは君の闘争だ』が11月より全国順次公開。この度、学校占拠、道路封鎖、学生たちが自ら学校を守るために奮闘するテン年代のリアルな学生運動を描いた予告編が完成した。初の極右政権成立にゆれるブラジル社会、高校生たちの言葉ラップで紡ぐ、青春群像ドキュメンタリーとなる本作。2013年6月、サンパウロで起きた公共交通料金賃上げに対する大規模な抗議デモは、初めはバス料金20セントに対する要求だったものが、次第に政治に対する深い嫌悪感のなかで、物価上昇や重税、LGBTQ+や女性の権利、人種差別など、様々な問題に対する抗議へと広がっていく。そして2015年10月、サンパウロの高校生たちが公立学校の予算削減案に抗して自らの学校を占拠、翌月には200以上の学校が占領されるまで発展、ブラジル社会で高校生たちによる大きな変革が起きようとしていたが…。本作で描かれる高校生たちによる社会への希望と不安、学生が自らの学校を守り、それぞれの想いをラップバトルのように衝突させていく様子をとらえた予告編。軽快なテンポと映画全体がヒップホップミュージックに包まれており、観る者にもその熱が伝わるものとなっている。『これは君の闘争だ』は11月、シアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:これは君の闘争だ 2021年11月、シアター・イメージフォーラムほか全国にて公開
2021年09月24日社会問題を知って考えを深める、社会派ドキュメンタリー。ニュースだけでは浮かび上がらない社会問題をさまざまな角度から見つめる。ジャーナリストの佐々木俊尚さん、音楽エージェントの竹田ダニエルさん、ファッションの楽しさを発信するシトウレイさんが傑作をセレクト。複雑な世界を捉え、斬新な視点を与える。フリーのジャーナリストとして、現代社会に深く切り込む佐々木俊尚さんは社会派ドキュメンタリーの魅力をこう語る。「さまざまな犯罪や災害、歴史的な出来事など世界で起きている事象について、ステレオタイプではない斬新な視点を与え、世界の断面を見事に切り取ってくれる。世界はどんどん複雑になり、以前のように単純な視点ではもはや認識できなくなってきています。古い世界観から脱却し、新しい“目”で世界を展望できるようにするためには、秀逸なドキュメンタリーで自分の“目”を磨くことが大切なのではないでしょうか」そして、作品をより楽しむためのアドバイスも。「ロシアを描いたドキュメンタリーだったら、現代のロシアが抱えている諸問題や政治状況などを、1960年代の黒人公民権運動を描いた作品なら、当時の運動がどのようなものだったかを知っておく。事前に調べておけば、より深く作品を楽しめます。また、“客観中立報道”とは異なり、製作者や監督の視点で事象を切り取り、一人の個人の見解であることを忘れないように。そうしないと、映し出されたものすべてが事実であるかのように混同してしまう。独特すぎて決して事実とはいえない視点を持ち込んでいる作品もたくさんあります。とはいえ、そういう作品のほうが面白かったりもするんですけどね」新しい生活様式、これからの働き方を問う。『東京自転車節』緊急事態宣言下の2020年5月、人けのない街を疾走するのは自転車配達員たち。その様子を収めようとドキュメンタリー作家の青柳拓自身がスマートフォンとGoProで自転車配達員として送る日々を記録。友人の部屋やホテルを転々としながら、セルフドキュメンタリー形式で日常をスケッチする。コロナ禍で仕事をなくし、ウーバーイーツの配達員になった若い映画監督の一人称で描いた作品。疫病と格差とギグワークの21世紀の現在をただ声高に言うのではなく、乾いたユーモアを交えてここまでリアルかつ情感たっぷりに描いた作品は類を見ない。多くの人が共感できると思う」(佐々木さん)監督:青柳拓2021年/全国公開中©2021水口屋フィルム/ノンデライコ児童の性的搾取をテーマにしたチェコの衝撃作。『SNS-少女たちの10日間-』成人の女優が少女のふりをして、綿密に作り込まれた子ども部屋のセットを背景に知らない相手とチャットをする。少女(と思い込んだ相手)にコンタクトしてくるのは2458人もの成人男性。現代の子どもたちが直面する危険をありのままに映し出し、本国チェコでは異例の大ヒットを記録。「少女に扮した成人の女優がSNSを開設し、そこに寄ってくる男たちとやりとりする様子をカメラで観察するという設定から不快ではあるのだが、あまりの衝撃に瞬きもできないぐらいの集中力で最後まで見入ってしまう。見たら嫌な気持ちになるのは請け合いだが中毒性も」(佐々木さん)監督:バーラ・ハルポヴァー、ヴィート・クルサク2020年/各種デジタル配信中©2020 Hypermarket Film All Rights Reserved.強制労働施設の過酷な実態を収容者が暴露。『馬三家からの手紙』“助けて”。アメリカに暮らす女性はスーパーで買った中国製の商品にそう書かれた手紙が入っていることに気づく。実はその手紙は中国の馬三家の「労働教養所」と呼ばれる強制労働施設から送られていたものだった。手紙を忍び込ませた一人の男性に焦点を当て施設での過酷な日々が映像で綴られる。「ごく普通の中国人男性が国家と時代にもみくちゃにされ、運命に翻弄されていく。『過酷』という言葉以上にこの映画について語るものはありません。これを映画化できたことこそが奇跡」(佐々木さん)。看守たちによる拷問はアニメーションで再現されているがあまりの非道さに言葉を失う。監督:レオン・リー2018年/DVD発売中、各種レンタル配信中(詳細はHP)©2018 Flying Cloud Productions,Inc.正義感が権力に勝つ爽快さがたまらない!『レボリューション―米国議会に挑んだ女性たち―』巨額の富を持つ現職議員に対抗し、志高く2018年の下院議員選に出馬した女性新人候補者4人の戦いぶりを追う。史上最年少の女性下院議員となったアレクサンドリア・オカシオ=コルテスをはじめ、マイノリティであり反体制であり、女性である政治家たちが一般市民たちと向き合い、権力に対抗していく。「巨大で強権的な既存勢力に立ち向かっていく姿には、勇気以上に敬意を強く感じられます。『普通の人』がどうしたら変化を起こせるのか。そのムーブメントを支援するために政治家が努力し、正義を勝ち取っていく。爽快であり感動的であり、何より政治の重要性を突きつけられる作品」(竹田さん)監督:レイチェル・リアース2019年/Netflix映画『レボリューション―米国議会に挑んだ女性たち―』独占配信中内閣総理大臣って本当はどんな人?『パンケーキを毒見する』“好物はパンケーキ”と話す現・内閣総理大臣、菅義偉とは一体どんな人物なのか。現役の政治家や元官僚、ジャーナリスト、各界の専門家が語り尽くし、これまで表に出てこなかった証言や過去の答弁を徹底検証。“庶民派”“苦労人”“無派閥のたたき上げ”と称される菅首相の知られざる素顔に迫る。「権力への批判を厭わない作品で知られるプロデューサー、河村光庸さんの頭の中が全開で表現されている。ジャーナリズムとしても、ドキュメンタリーとしても、攻めた描写や構成に男気を感じた。人生を賭けてクリエイションする人の作品は見る者の心に強い爪痕を残すものだと改めて実感」(シトウさん)企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸監督:内山雄人2021年/全国公開中©2021『パンケーキを毒見する』製作委員会ささき・としなお新聞記者、雑誌編集者を経てフリージャーナリストに。IT、政治、経済、食など幅広いジャンルで綿密な取材を踏まえた執筆を行う。映画.comでドキュメンタリー作品を紹介する連載を持つ。著書に『時間とテクノロジー』(光文社)ほか多数。たけだ・だにえるカリフォルニア州出身・在住のZ世代。フリーランスの音楽エージェントとして活動する傍ら、アメリカ事情、カルチャー、アイデンティティ、社会をテーマにライターとして雑誌やウェブで執筆活動も。シトウレイフォトグラファー、ジャーナリスト。ストリートスナップからコレクション取材まで独自の観点でファッションの現在を映し出す。写真集『STYLE on the Street:from TOKYO and Beyond』(Rizzoli)ほか、YouTubeチャンネルも人気。※『anan』2021年9月15日号より。取材、文・浦本真梨子(by anan編集部)
2021年09月11日アートの裏側を覗き見る、クリエイター密着ドキュメンタリー。多くの人を魅了するクリエイターやファッションをピュアに楽しむ人々。彼らを知ることで人生の喜びを捉え直す。きれい、だけじゃない。クリエイター魂の叫び。写真を通じて、ファッションの楽しさを発信するシトウレイさんもドキュメンタリーファンの一人。「ファッションはイメージが大事な世界だから、クリエイターの“白鳥の水かき”の部分はほとんど見せてくれません。ましてや当事者から語られることはほぼない。その点、ドキュメンタリーはクリエイター自身が驚くほどストレートに自分の考えやその時の状況を話してくれる。それによって違った視点で彼ら/彼女らの作品を捉え直すことができます」映し出されるのは、“きれいなもの”だけではない。「ため息が出るほど美しいものの裏側には作り手の壮絶な悲しみや苦しみがあり、コンセプチュアルで難解なクリエイションは“実はハプニングで生まれた”なんて驚きもあったりする。舞台裏にあるトラブル、苦労の裏にある信頼など、普段は見られない瞬間がほとばしるところを間近に見られることが、ドキュメンタリーの魅力」作り手の心に迫ることで、ファッションとの関わり方にも変化が。「クリエイションの背景を知ることは、小説でいう“行間を読む”ことだと思うんです。つまり、見た目のかわいさや世間の評判だけじゃなく、手に取ったアイテムに思いを馳せることができるようになる。ドキュメンタリーによって、デザイナーを身内のように感じられるというか、心理的距離が自ずと近づくような気がします」美しさを求めて街を歩く。ストリートスナップの元祖。『ビル・カニンガム&ニューヨーク』ニューヨーク・タイムズ紙の名物写真家ビル・カニンガム。彼はいつもブルーのユニフォームを身にまとい、有名無名問わず、琴線に触れた人々を街角で撮影していた。そんなファッションを心から愛し、そして、多くのファッショニスタから愛されたビルの生い立ち、私生活に迫る貴重な作品。「どんな信念を持ってストリートスナップを撮っていたのか、被写体の基準、そして、実際にどういうふうに撮っているのか。一匹狼でプライベートは謎に包まれていた、ビルの頭の中を垣間見ることができます。“おしゃれである、とはどういうことか”が、この作品を見るとわかる!」監督:リチャード・プレス2010年/各種レンタル配信中©2010 The New York Times and First Thought Filmsサクセスストーリーに秘められた光と影。『マックイーンモードの反逆児』23歳で失業保険を資金にファッションデザイナーとしてデビューし、瞬く間に成功を収めた、アレキサンダー・マックイーン。順風満帆な生活を送っているように見えた彼は突然、富と名声の絶頂で自ら命を絶ってしまう。彼は一体どんな人物で、どのようにして成功し、なぜ燃え尽きてしまったのか。「モードの反逆児であり、ファッションの寵児だったマックイーンが生み出す息を呑むほど美しい感動的なクリエイション。その陰で彼がどれほど苦悩していたかがヒリヒリするほど伝わってくる。クリエイションに本気で向き合うということは、“生”を削ることなのだと教えてくれます」監督:イアン・ボノート、ピーター・エテッドギー2018年/Blu-ray¥5,280DVD¥4,290発売元:キノフィルムズ/木下グループ販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング©2018 A SALON GALAHAD PRODUCTION. ALL RIGHTS RESERVED.ファッションの女王のロックな生き様を描く。『ヴィヴィアン・ウエストウッド最強のエレガンス』数々の伝説を生み出してきたデザイナー、ヴィヴィアン・ウエストウッドを3年にわたり密着。「過去の話は退屈よ」と前置きをしてから、自身の波瀾万丈な半生についてゆっくりと語り始める。ファッションウィーク前夜、「こんなクズ、ショーに出せないわ」と言い放ち、ヒヤヒヤする場面も。「ファッション好きならヴィヴィアンにかぶれなかった人はいないはず!とはいえ彼女がどんな人なのかを知ることはあまりない。この作品では彼女の自然体の姿を見ることができ、こんなに素直でまっすぐな人なんだという発見も。クリエイションの激しさとのギャップに驚き、改めて尊敬します」監督:ローナ・タッカー2018年/DVD¥5,170発売・販売元:KADOKAWA©VWI FILMS LTD 2018. All rights reserved.稀代のファッショニスタが教えてくれること。『アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー』1950年代からインテリアデザイナーとして活躍し、今も多くの有名デザイナーたちからリスペクトされ、NYのカルチャーシーンに影響を与え続けるファッショニスタ、アイリス・アプフェル。彼女は類稀なるセンスをどうやって身につけたのか。本人の格言やセレブらの証言から知られざる姿に迫る。「メゾンのコレクションピースから1ドルほどのチープなアイテム、美術館収蔵レベルの民族衣装から若手のアップカミングブランドのアイテムまで。ジャンルも年代もテイストも値段も、ましてや有名かどうかだなんて彼女には一切関係ない。フラットな視点でファッションを選ぶ方法が追体験できます」監督:アルバート・メイズルス2014年/DVD¥5,170発売・販売元:KADOKAWA©IRIS APFEL FILM, LLC.シトウレイフォトグラファー、ジャーナリスト。ストリートスナップからコレクション取材まで独自の観点でファッションの現在を映し出す。写真集『STYLE on the Street:from TOKYO and Beyond』(Rizzoli)ほか、YouTubeチャンネルも人気。※『anan』2021年9月15日号より。取材、文・浦本真梨子(by anan編集部)
2021年09月11日生き様をさらけ出す姿に共感する、音楽ドキュメンタリー。アーティストたちも煌びやかなだけではない、本音を語ってくれる時代に。彼ら/彼女らの姿から深刻な社会問題と向き合う。葛藤や悩みを隠さない。“素顔”に共感する。最近は時代を象徴するアイドルやシンガーに密着した作品も続々とリリース。なかには孤独やプレッシャーを切実に吐露するアーティストも。音楽エージェントの竹田ダニエルさんはこう説く。「今の時代、かっこいいところだけを切り取って神格化するような作品は、誠実さに欠けます。憧れや尊敬を抱く“スター”だって私たちと同じ人間。ゴシップやSNSでの断片的な切り取りではなく、自分自身の言葉で価値観やメッセージを伝えてくれるドキュメンタリーでなら、ファンとも信頼関係を築くことができると、今、一つの表現方法として見直されています。精神的な葛藤やリアルな悩みをさらけ出し、業界内でのジェンダー差別や性的暴行について声を上げることはむしろ、人々の共感を呼び、彼女たちの魅力の一つに。特に女性スターは、容姿や私生活に至るまで、社会から常に厳しい目を向けられてきました。フェミニズムや人権に関する理解が進み、彼女たちが不当な立場に置かれていること、彼女たちが受けている被害は許されるべきではないと認識されるようになり、ファンもその過酷な現実について、知る必要性を感じています。大人に操られるのではなく、問題に対して自分の意思を表明すること、そして“個人”として自由に活動することこそが、現代のアーティストにとって“表現”であり、“当たり前”のことになりつつあります」“いい子”をやめたテイラー・スウィフトの変化と成長。『ミス・アメリカーナ』シンガーソングライターとしてだけでなく、政治的発言にも注目が集まるポップアーティスト、テイラー・スウィフト。華々しいキャリアの裏ではルッキズムやセクハラ、SNSでのバッシングなどに苦しめられていた。スターの道を駆け抜けてきた彼女がありのままの姿をカメラの前にさらけ出す。「“パーフェクトなアメリカ人の模範例”として愛されてきたテイラー。しかし、マイノリティ差別や女性の権利剥奪など許しがたい現実に対し、彼女は自身の影響力をポジティブに活用することを選ぶことに。音楽業界の問題や社会的責任などを時にユーモラスに、時に真剣に語る姿に、リスペクトが湧きます」2020年/Netflix映画『ミス・アメリカーナ』独占配信中伝説のブラックミュージックフェスの映像から歴史を解く。『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』1969年、NY・ハーレムで、約30万人を動員した音楽フェス「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」。しかしこの歴史的な祭典は映像で記録されていたにもかかわらず、約50年間語られることはなかった。当時の映像をもとに、簡単に黒人の物語や文化を処分してきた歴史への疑問を投げかける。「音楽やファッション、アートや文化は、いかにして人々の心を動かし、社会や政治に影響を与えていけるのか。コンサートが開催された時代の社会問題が現在でも同じように続いているからこそ、フィルムに映る人々の『自由を求める』悲痛な叫びはきっと現代にも強く響くと信じたくなる!」監督:アミール・“クエストラブ”・トンプソン2021年/全国公開中©2021 20th Century Studios. All rights reserved.黒人の誇り、創作の喜びをパワフルなショーで伝える。『HOMECOMING ビヨンセ・ライブ作品』2018年、コーチェラ音楽祭で行われたライブの裏側を収めた作品。おなじみのヒット曲がビッグバンド仕様にアレンジされ、大きな高揚感に包まれる。偉人たちの言葉も引用し、黒人女性として、初めてヘッドライナーを務めたビヨンセがブラックカルチャーへの敬意とショーに込めた想いを語る。「言葉を失うほどのスケール感のパフォーマンスを楽しめるのはもちろん、出産後の育児の大変さやリハーサルの過酷さなど、華やかなだけではないビヨンセのストイックさにも胸を打たれます。また、裏方である舞台裏チームやパフォーマンスチームまで脚光を浴びせている点にも愛を感じる!」2019年/Netflix映画『HOMECOMING ビヨンセ・ライブ作品』独占配信中ごく普通の少女がいかにして世界を席巻する歌手になったか。『ビリー・アイリッシュ 世界は少しぼやけている』メッセージ性の高い楽曲を次々と放ち、グラミー賞主要4部門を史上最年少の18歳で獲得したビリー・アイリッシュ。成功の裏で彼女の世界は激変し、精神的、肉体的なストレスに徐々に蝕まれる。その中で、家族の愛が彼女を支えていた。自身の考えや家族をさらけ出した自著的ドキュメンタリー。「SNSに宿る暴力性や若くして著名になったことによるメンタルヘルスへの影響、鬱病や自傷行為、そして音楽との向き合い方を驚くほど率直に語る。彼女は自分のストーリーを自分の言葉で取り戻すために、あえて多くのことをオープンにします。まさに現代の自由で人間的なポップスターの姿」監督:R・J・カトラー2021年/Apple TV+で配信中©2021 Apple Original Filmsドラッグ、アルコールと闘った夭折の天才シンガー。『AMY エイミー』2011年、27歳という若さで急逝したイギリスのシンガー、エイミー・ワインハウス。圧倒的な歌唱力でスターダムに駆け上がるも、ドラッグやアルコールに溺れていくエイミー。貴重なプライベート映像や著名人のインタビューとともに、そのドラマティックな人生模様と知られざる素顔をひもとく。「エイミーの死後に公開され、彼女の薬物依存やアルコール乱用、摂食障害、恋愛関係や家族関係の問題などを赤裸々に取り上げている。今後エイミーのように命を落とすアーティストを減らすために、音楽業界やメディアはもちろん、ファンもどう向き合っていったらいいのかを強く突きつけられます」監督:アシフ・カパディア2015年/Blu-ray¥5,217DVD¥4,180発売元:KADOKAWA販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント©2015 Universal Music Operations Limited.たけだ・だにえるカリフォルニア州出身・在住のZ世代。フリーランスの音楽エージェントとして活動する傍ら、アメリカ事情、カルチャー、アイデンティティ、社会をテーマにライターとして雑誌やウェブで執筆活動も。※『anan』2021年9月15日号より。取材、文・浦本真梨子(by anan編集部)
2021年09月10日配信プラットフォームなどで気軽に作品を見られるようになり、いま勢いを増すドキュメンタリー。その魅力と楽しみ方を知るため、『ヤクザと憲法』『さよならテレビ』など話題作を次々と発表するテレビディレクターの圡方宏史さんと、映画好き芸人のこがけんさんに、作る人、見る人、それぞれの視点から話を聞いた。むき出しのリアルが持つ、圧倒的な強さ。©2018 A SALON GALAHAD PRODUCTION. ALL RIGHTS RESERVED.圡方さんは、小劇場で公開された作品がロングランになるなど、ドキュメンタリーに注目が集まっているのを肌で感じているそう。「テレビも含めてNetflixなど配信も加わり、映像作品が豊富にある中で、今エンタメは二極化しているように思います。膨大な制作費をかけて世界観を作り込んだ没入感のある作品か、反対にむき出しのリアリティで作るものか。『事実は小説よりも奇なり』といいますが、台本があってお決まりの展開で進んでいくものに視聴者が満足できなくなってきていて、実際に起きていることをもとにしたドキュメンタリーに、多くの人が惹きつけられているのではないでしょうか」作り物ではないリアリティだからこそ心を動かされるのであり、それこそがドキュメンタリーの神髄と、こがけんさんも話す。「僕が度肝を抜かれた最初のドキュメンタリー作品は『モハメド・アリかけがえのない日々』。リングの中で闘い、外でも社会と闘っているアリがとにかくかっこよくて。こんな人間がリアルに生きていたんだと思うだけで“オーマイガー!”です。ドキュメンタリーが映す世界は、時間や場所は違えど、自分が生きている現実の延長線で起きていること。そこに強いパンチ力と説得力がある」だからこそ、「想像していないことばかり起きる現実を、どう編集していくかに監督の手腕が出るのが見どころ」と続けます。「フィクションの映画は監督という神様がいて、すべてコントロールしますが、ドキュメンタリーは作り手が想定すらできない無秩序な世界。『FAKE』という佐村河内守さんに密着した作品では、最後の12分、監督・森達也さんの手から離れて、すごい展開になるんですよ。コントロール不能に陥った感じがまた面白いんです」また圡方さんも、最近は表現方法が多様になっていると語る。「従来のドキュメンタリー作品は勉強的要素が強く、比較的それがイデオロギーとくっつきやすかった。しかし、机上の空論を超えてくる現実に対して、最近は作り手も肩の力を抜いて、自分の立場を明確にせず、“視聴者にも考えてほしい”と答えを決めないまま提示してみたり、エンタメ性の高い作品も増えています。話が想像もしないほうに曲がっていく『イカロス』のような作品も出てくる。良質なドキュメンタリーとは“長時間の記録の中にドラマが浮き出てきたもの”だと思います。そこには明確な答えがあるわけでもないため、見た後にスッキリしないこともあると思うのですが、それはそれで楽しめばいい。最近では、ある議員に17年にわたって密着した『なぜ君は総理大臣になれないのか』も、政治ジャンルに括れないドキュメンタリーとして話題になりました」また、そんなドキュメンタリーを見る意義は“他者を知ること”だと続ける。「撮り手として大切にしたいのは、普通に生活している中では見られない人・場所に焦点を当てること。そこには、例えばヤクザのような一般的には理解しがたい、“異端”も含まれます。今は何でもラベルを貼って分類したがるけど、絶対にわかり合えないと思う人にも自分と重なる部分はあると知るだけで、分断された世界が繋がっているものだと示せるのではないでしょうか」一方、こがけんさんも作品から多くを学んでいるという。「忘れてはならないのは“カメラが写していない現実もある”ということ。だから、すべてを鵜呑みにせず、その前後を調べたり、裏を取る作業はしたほうがいい。これは、情報が溢れる今の時代にとても大切なこと。ドキュメンタリーに触れることで、その力が養われるのではないでしょうか」白か黒か、二者択一では決められないことはたくさんある。ドキュメンタリーは私たちに、他者を理解する大切さや、真実が曖昧なものであるというメッセージをも伝えてくれているのである。二人がすすめる必見作品『モハメド・アリ かけがえのない日々』数多くの逸話を残すボクサー、モハメド・アリの生涯を、“キンシャサの奇跡”と呼ばれたタイトルマッチの映像を基軸に辿る。第69回アカデミー長編ドキュメンタリー賞。1996年/DVDは現在廃版。『FAKE』「現代のベートーベン」とまで称賛された佐村河内守氏。2014年に「ゴーストライター問題」で世間を騒がせて以降、約1年半にわたって自宅で彼を密着し続けた問題作。2016年/各種レンタル配信中。『イカロス』ドーピングについて探るべく、アマチュア自転車レーサーであるブライアン・フォーゲル監督が自身を実験台にカメラを回し始めると、話はまさかの方向へ…。2017年/Netflix 独占配信中。『なぜ君は総理大臣になれないのか』大島新監督による最新作。衆議院議員・小川淳也氏を17年にわたって追い、高い志を持って政界に入るも、民主党解党などに翻弄される姿を描く。2020年/Netflixほか各種レンタル配信中。ひじかた・こうじ1976年生まれ。東海テレビ勤務。情報番組やバラエティ番組のディレクターを経験後、報道部に異動。『ヤクザと憲法』『さよならテレビ』など監督作の劇場公開が続き、注目を集めている。こがけん1979年生まれ。お笑い芸人。おいでやす小田とユニットを組み、「おいでやすこが」としても活動。年間100本以上の映画を観る映画好き芸人としても有名で、トークライブ「こがけんシネマクラブ」を度々開催。※『anan』2021年9月15日号より。取材、文・浦本真梨子(by anan編集部)
2021年09月10日英国のダイアナ元皇太子妃のドキュメンタリー映画『プリンセス・ダイアナ』が、2022年9月30日(金)に公開される。ダイアナ元皇太子妃の素顔に迫るドキュメンタリー映画2022年は、ダイアナ元皇太子妃の没後25年にあたる節目の年。パブロ・ラライン監督、クリステン・スチュワート主演で、ダイアナ元皇太子妃の“最後のクリスマス休暇”を描く映画『スペンサー ダイアナの決意』の公開も話題だ。映画『プリンセス・ダイアナ』は、過去に撮影された記録や未公開のフッテージのみで構成された、ダイアナ元皇太子妃のドキュメンタリー作品。2人の息子を育て、人道支援活動に心を注いだ「愛の人」として世界中の人々に希望を与えながら、36年という短い生涯を駆け抜けたダイアナ。そんな彼女を、これまで以上に新鮮で身近に感じられる構成となっている。なお、ダイアナを扱ったドキュメンタリー映画の劇場公開は日本では初めてのことだ。監督は『本当の僕を教えて』エド・パーキンズ監督を務めたのは、Netflixのドキュメンタリー作品『本当の僕を教えて』で評価を得ているエド・パーキンズ。制作陣は、映画『プリンセス・ダイアナ』の内容について、「イギリス王室ばかりでなく、より広い社会にパワフルな影響力を持っていたこの複雑な女性を出来る限り正直に描きたいのです。それはダイアナと王室、そしてダイアナと私達皆といった関係を描いたとても個人的で人間的な話ということになります」と語っている。<映画『プリンセス・ダイアナ』あらすじ>彼女を本当に“殺した”のは誰?世界中で大フィーバーを巻き起こし日本でも高い人気を誇ったダイアナ元皇太子妃のドキュメンタリー映画が没後25年となる今年、世界で初めて劇場公開される。歴史に残る結婚式。子供が生まれた日。離婚にまつわるスキャンダル。AIDSの子供を抱きあげる姿。そして彼女が亡くなった日――。カメラは全てを映し出していた。世界中で25億人が見たという、「ダイアナ元妃の葬儀」。むきだしの映像が、ダイアナ元皇太子妃の人生を物語る。【詳細】映画『プリンセス・ダイアナ』公開日:2022年9月30日(金)監督:エド・パーキンズ
2021年09月02日俳優・生田斗真が新作歌舞伎に挑戦する姿を追うNetflixドキュメンタリー映画『生田斗真ドキュメンタリー ~挑む~(仮)』が、2022年春にNetflixにて配信されることが決定した。1997年に連続テレビ小説『あぐり』で俳優デビュー以降、数々のドラマ、映画、舞台で唯一無二の役を演じ、2011年には初の主演映画『人間失格』と『ハナミズキ』でブルーリボン賞新人賞を受賞、その演技力が認められ、2019年には大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』に出演、2020年には向田邦子賞受賞作『俺の話は長い』で東京ドラマアウォード2020 主演男優賞に輝くなど着実にキャリアを重ねてきた生田斗真。そして2021年、生田が新たに挑戦するのは「新作歌舞伎」。生田の高校の同級生であり、親友の歌舞伎俳優の尾上松也が、2009年より主宰する歌舞伎自主公演シリーズの最終公演『「挑む」Vol.10 ~完~』に特別出演する。11才からジャニーズJr.として芸能活動を開始、アイドルとしてのスタートを経た後、俳優の道を極めてきた生田。そして、歌舞伎役者として5才で初舞台、歌舞伎のみならずドラマやミュージカルなどで幅広く活躍する松也。高校時代「いつか二人で同じ舞台に立つ」と約束したふたりが、2021年8月ついに新作歌舞伎で初共演、20年来の約束を果たす。生田はなぜ今、新作歌舞伎に“挑む”のか。そして毎回新たなチャレンジが行われてきた歌舞伎自主公演「挑む」シリーズ最終公演で松也が抱く覚悟とは。生田と松也、エンタメの世界で全く違う道程を辿った二人が歌舞伎役者として “挑む”舞台に立つ時、果たしてどのような化学反応が生まれるのか。本公演の地は演劇の街・下北沢の中心的存在である本多劇場、演目は新作歌舞伎「赤胴鈴之助」(あかどうすずのすけ)。松也の父である故・六代目尾上松助が子役時代の昭和30年代、同名漫画を原作としたテレビドラマ版の主役を務めた、松也にとって所縁の作品だ。64年前、テレビが録画ではなく生放送時代のドラマであり、父が演じた赤胴鈴之助を見ることが出来ないものの、松也にとっては亡き父を偲ぶ、思い入れ深い作品だ。この新作歌舞伎「赤胴鈴之助」で生田は、松也演じる赤胴鈴之助の兄弟弟子でライバルの竜巻雷之進(たつまきらいのしん)を演じる。Netflixでの配信が決定した本作は、初のかつら合わせをした日から公演を終えるまでの生田斗真の約2カ月半に完全密着。生田が初めての世界に飛び込む戸惑いや、懸命に稽古に向かう真摯な姿を描き出す。また生田と松也のインタビューでは、悲願でもあった舞台での共演を実現するに至った二十年来の友情を掘り下げる。さらに、人生の大半をエンタメの世界で生きてきた二人の軌跡を辿る。また、Netflixでは本ドキュメンタリーの配信に合わせ、8月13日に初日を迎えた新作歌舞伎公演の映像化作品の全世界配信も決定。映像は「劇団☆新感線」の舞台映像などで、映像×演劇の新たなエンターテインメントの世界を築き上げた「ゲキ×シネ」チームが手掛ける。生田は、現在も絶賛撮影進行中の本ドキュメンタリーと新作歌舞伎公演の映像化作品について「高校時代、教室の隅で松也くんと交わした約束が、時を経てこんなにも大きなプロジェクトになるなんて、あの頃の僕達に教えてあげても信じてもらえないだろうな」と盟友松也と過ごした日々を振り返る。松也は「一筋縄ではいかなかった公演ですが、我々二人と共演者、そしてスタッフの熱い思いを裏から表まで堪能していただけましたら幸いです」と、大舞台への抱負を語る。■生田斗真 コメント私、生田斗真のドキュメンタリー映画が制作され、Netflixにて世界190以上の国で同時配信される事になりました。そして、さらに『挑む』の舞台本編映像もNetflixで配信が決定しました。なんでしょう。。Netflixアザッス!プレミアム会員になってて良かったっス!『いつか一緒に舞台やろう』高校時代、教室の隅で松也くんと交わした約束が、時を経てこんなにも大きなプロジェクトになるなんて、あの頃の僕達に教えてあげても信じてもらえないだろうな。■尾上松也 コメントこの度、私が主宰しております歌舞伎自主公演「挑むVol.10 ~完~」がNetflixにて配信していただける事になりました。また、客演していただきました生田斗真さんの公演までの道のりを追ったドキュメンタリーも配信される事となり、この様な嬉しい事はございません。斗真さんとは中学時代から現在に至るまで、全てを共有してきた数少ない友人です。その盟友と学生時代から共に語り合っていたのが、歌舞伎作品でいつか一緒に舞台に立ちたいと言う夢でした。それが何十年越しに叶い、皆様にご覧いただけることはこの上ない喜びです。一筋縄ではいかなかった公演ですが、我々二人と共演者、そしてスタッフの熱い思いを裏から表まで堪能していただけましたら幸いです
2021年08月14日Netflixドキュメンタリー映画『生田斗真ドキュメンタリー ~挑む~(仮)』の配信が決定した。連続テレビ小説「あぐり」で俳優デビューし、以降、『人間失格』、『ハナミズキ』、『土竜の唄』シリーズ、「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」、大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」、など様々な作品に出演してきた生田斗真。今年、生田さんが新たに挑戦するのは、新作歌舞伎。高校の同級生であり親友の歌舞伎俳優・尾上松也が2009年より主宰する歌舞伎自主公演シリーズの最終公演「『挑む』Vol.10 ~完~」に特別出演する。高校時代、「いつか二人で同じ舞台に立つ」と約束した彼らが、この夏ついに新作歌舞伎で初共演、20年来の約束を果たす。今回の演目は、新作歌舞伎「赤胴鈴之助」。松也さんの父である故・六代目尾上松助が子役時代の昭和30年代、同名漫画を原作としたテレビドラマ版の主役を務めた、松也さんにとって所縁の作品。この舞台で生田さんは、松也さん扮する赤胴鈴之助の兄弟弟子でライバルの竜巻雷之進を演じる。しかし、生田さんはなぜいま、新作歌舞伎に挑むのか。毎回新たなチャレンジが行われてきた歌舞伎自主公演「挑む」シリーズ最終公演で、松也さんが抱く覚悟とは…。ドキュメンタリーでは、初のかつら合わせをした日から公演を終えるまで、生田さんの約2か月半に完全密着。初めての世界に飛び込む戸惑いや、懸命に稽古に向かう真摯な姿を描き出す。また、生田さんと松也さんのインタビューでは、舞台での共演を実現するに至った友情を掘り下げ、さらに、人生の大半をエンタメの世界で生きてきた2人の軌跡を辿る。本作について生田さんは「高校時代、教室の隅で松也くんと交わした約束が、時を経てこんなにも大きなプロジェクトになるなんて、あの頃の僕達に教えてあげても信じてもらえないだろうな」としみじみ。松也さんも「何十年越しに叶い、皆様にご覧いただけることはこの上ない喜びです。一筋縄ではいかなかった公演ですが、我々二人と共演者、そしてスタッフの熱い思いを裏から表まで堪能していただけましたら幸いです」と喜びを語った。なお「Netflix」では、ドキュメンタリーの配信に合わせて、新作歌舞伎公演の映像化作品の全世界配信も決定。映像は「ゲキ×シネ」チームが手掛ける。Netflixドキュメンタリー映画『生田斗真ドキュメンタリー ~挑む~(仮)』は2022年春、全世界同時配信予定。舞台公演「『挑む』Vol.10 ~完~」は2022年春、Netflixにて全世界同時配信予定。(cinemacafe.net)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-
2021年08月14日不平や不満を抱えていても、「自分ひとりでは世の中を変えることはできない」と諦めてしまうことはありませんか?そこで今回は、インターネットもSNSもない時代に、国家権力にひとりで立ち向かった沖縄のおばぁが繰り広げた衝撃の実話を基にしたドキュメンタリーをご紹介します。『サンマデモクラシー』【映画、ときどき私】 vol. 4001963 年、米軍の占領下にあった沖縄では、祖国復帰を願う人々が日本の味としてサンマを食べていた。サンマには琉球列島米国民政府の高等弁務官布令によって輸入関税がかけられていたが、関税がかかると指定されていた魚の項目にサンマの文字がないことが発覚。そこで声を上げたのは、魚卸業の女将である玉城ウシ。なんと、琉球政府を相手に徴収された税金の還付訴訟を起こし、現代の貨幣換算で7000万円もの額を要求することに。そして、ウシおばぁが起こした“サンマ裁判”は、いつしか統治者アメリカを追い詰める、民主主義を巡る闘いへと発展するのだった……。沖縄史のなかでも、埋もれていた“伝説”に迫っているノンストップドキュメンタリー。そこで、本作誕生のきっかけについて、こちらの方にお話をうかがってきました。山里孫存監督沖縄テレビで、長年にわたってさまざまな番組の企画や制作を手がけてきた山里監督。これまでも沖縄の歴史と向き合い続けてきた監督ですが、今回は沖縄の人たちでも知らなかった驚きの実話を切り口に、新たなドキュメンタリーを完成させました。そこで、取材を通じて得た気づきや次の世代に伝えていきたいことについて語っていただきました。―高校時代の同級生がFacebookに上げた投稿を見たことが本作のきっかけだったということですが、そのときのことを教えていただけますか?監督沖縄テレビに入社して以来、ずっと報道や制作の現場にいたので、沖縄のことなら大抵のことは知っているつもりでいました。そんななか、友達が「うちの亡くなった父は、“復帰運動の起爆剤”と言われているサンマ裁判を裁いた裁判官でした」と書き込んでいたんです。そこで、「サンマ裁判ってなんじゃそれ?」となって調べ始め、一気に企画書を書きました。ただ、最初は裁判官を主人公にした法廷モノのような方向性で考えていたんです。―では、そこからどのようにして、ウシさんへと繋がっていったのでしょうか?監督改めて調べ直したときに、サンマ裁判には第一と第二があることがわかり、そこで玉城ウシという魚屋の女性が起こした裁判があることを知りました。そこでもまた、「なんじゃそれ?」と(笑)。しかも、サンマ裁判を“ウシ”が起こしたなんて、それだけでおもしろいですよね。それをきっかけに、もっと庶民の側からの抵抗を描くものにしたいと思うようになりました。当時のエネルギーを若い世代にも知ってほしい―企画書を出したとき、すでに手ごたえもありましたか?監督そうですね。ウシさんが起こしたサンマ裁判については、沖縄に詳しい人や大学の教授でさえも知らない人がほとんどだったので、コンペでも「これはいいネタを見つけたね」という反応がありました。“掘り出し物”を見つけたなと思いましたが、それよりも僕自身がものすごく知りたいという気持ちのほうが強かったです。5月に沖縄で試写会をしたときには、復帰前のことを知らない人が増えているので、初めて知ることがたくさんあったという意見が多かったですね。沖縄が1972年に日本に復帰したとき、僕は小学2年生なので覚えていますが、そんなふうに実感を持って当時のことを話せるのは、僕らが最後の世代なんじゃないかなと。そういう意味でも、あの当時の戦っていたエネルギーみたいなもの若い人たちに伝えたいというのは、この作品を作りながら感じていたことでもあります。―当時をリアルに体感した世代として、次の世代に引き継いでいきたいという気持ちがより強くなったんですね。監督それはすごくありました。来年の5月15日で復帰から50周年となるので、個人的には勝手にこの作品も「復帰50周年記念作品」としています。そこに対するこだわりがあるので、先ほどの試写会も49年目となる5月15日に開催したほどです。いまから来年の5月に向けて、この作品をしっかりと日本各地に届けられたらと。復帰前の沖縄の姿と、復帰へと向かっていった沖縄の人たちの思いや現実をみなさんにも知っていただきたいです。―『サンマデモクラシー』というタイトルは非常にインパクトがありますが、どのようにして決められたのでしょうか?監督僕は普段からタイトルを先に考えるタイプなので、今回もタイトルから決めましたが、『サンマデモクラシー』というのはいい響きだなと思ったので、かなり早い段階でひらめきました。このタイトルに引っ張られる形で内容もポップな感じになっていったところがあるので、作品自体にもかなり影響を与えています。沖縄で決定権と発言権を一番持っているのは、おばぁ―時間が経っているだけに、ウシさんについてリサーチには苦労されたのではないですか?監督ウシさんのことを直接知っている人をなかなか見つけ出すことができず、断片的な証言やまた聞きした話などが多かったですね。だからこそ、「じゃあ、ウシさんが過ごしていた時代はどういう時代だったのだろうか?」というところからいろいろなデータを集めて調べ始め、落語をベースにして表現することを考えつきました。ウシさんを調べているつもりが、そこで見えてきたのは、当時の歴史的な事実やいろいろな人たちの生きていた時代。結果的にこの作品ではウシさんというひとりの沖縄の女性を通して、時代背景を全体的に見ることができるようになっていると思います。―不満があっても、政府を相手に裁判を起こすにはかなりの原動力がないとできないことですが、ウシさんを支えていたものは何だったのでしょうか?監督映画化するにあたって、僕もそこは強化しないといけないと感じていました。調べて行くと、ウシさんは娘を5歳で亡くし、夫と妹も亡くなっていたので、ひとりで生きていた女性。おそらく、多くのものをなくしてしまったからこそ、強くならざるを得なかったのだろうなと。僕はウシさんのことをそう理解したので、彼女の「相手がアメリカだろうが何だろうが、納得のいかないものはいかない」「もう私は何もなくしたくないんだ」という部分を描こうと思いました。―沖縄といえば、おばぁのイメージが強いですが、監督にとっておばぁはどんな存在ですか?監督僕が山里家の長男というのもありますが、うちのおばぁはとにかく厳しかったですね。ちなみに、沖縄ではどの家庭でも、だいたいおばぁが決定権と発言権を一番持っています。なので、おばぁが納得しないと何も前に進まないことも……。それは、伝統的におばぁや女性を敬う文化が沖縄にはあるからだと思いますが、沖縄の男がだらしないからというのもあるかもしれないですね(笑)。この作品を観ていただいてもわかると思いますが、沖縄で一番強いのはおばぁです。ただ、おばぁがいてくれるからこそ、受け継がれてきた沖縄のしきたりが次に伝えられているのだと思います。作品には、唯一無二の“川平節”が必要だった―そういった部分は、これからも引き継いでいってもらいたいですね。監督そうですね。おばぁは、沖縄ではある意味“アイドル”でもありますから。僕が立ち上げたバラエティ番組に沖縄あるあるを視聴者の方に投稿してもらう名物コーナーがありますが、お題として一番盛り上がるのは、おばぁにまつわる笑い話。ものすごくたくさんの投稿がありますし、どれもみんなで大笑いできるようなものばっかりなんですよね。―おばぁの力はすごいですね。また、劇中では、川平慈英さんのナレーションも素晴らしかったです。オファーされたきっかけは?監督慈英さんとは10年ほど前にも別の番組でがっつりと向き合ったことがあったので、お願いしました。それと、今回の作品は歴史的背景や沖縄が置かれていた状況を情報として詰め込んでいることもあり、普通にナレーションしていたら絶対に退屈してしまうので、唯一無二の“川平節”が必要だったというのもあります。「ムムッ」はこっちにとっておきましょうとか、現場でいろいろと話し合いながら慈英さんの感覚を取り入れてナレーションしていただけたのは大きかったと思います。―監督は大学時代に、慈英さんの叔父さんで沖縄の放送業のパイオニアとして活躍された川平朝申さんに卒論のインタビューをされていたご縁もあったそうですね。監督朝申さんは沖縄のマスコミ界のレジェンド的な方で、僕の質問に3日がかりで答えてくださいました。将来テレビに関わる人間になると想像はしていなかったと思いますが、沖縄のことを聞きに来ている目の前の学生にしっかりと答えようとしてくださったのではないかなと。僕にとっては、一生忘れられないインパクトのある出来事になりました。そんなふうに、川平家とは関わりがあったので、こうして一緒にお仕事できたのはものすごく感慨深かったです。恩返しというほどではありませんが、あのとき朝申さんが僕に伝えたかったことの一部でもこの映画で表現できていたらいいなと思っています。―ナビゲーターであるうちな~噺家の志ぃさーも印象的でしたが、落語の要素を取り入れた意図についても教えてください。監督落語は日本が磨いてきた話芸の最たるものだと思いますが、落語のスタイルを借りれば、宇宙の果てだろうが、江戸時代にでも未来にでも、どんな垣根でも自由自在に飛び越えていけるのではないかと感じたほど。改めて、落語のすごさを実感しました。沖縄にあることを知って、一緒に考えてほしい―劇中で高等弁務官のキャラウェイによる「自治は神話」「日本政府は二枚舌だ」という発言がありました。取材をするなかで、現代が抱えている問題に改めて気づかされることもあったのでは?監督それはすごくありましたね。知っていたことでも、当時のことを知っている方のお話をうかがうことで、自分の解釈や物の見方が変わることもありましたから。なかでも、今回の取材を通して、沖縄を統治する“めんどくさい部分”は日本政府に返して、基地だけを自由に使えるための復帰だったのかなと改めて感じました。もちろん、アメリカの高等弁務官を務めた方にも彼らなりの正義があったとは思いますが……。だからこそ、みなさんもこの作品を通していまの沖縄のニュースへの見方が変わってくれたらいいなと思っています。―今後の沖縄に期待していることはありますか?監督この作品で描かれているようなことはいまでもありますが、沖縄は民主主義から取り残されているように感じている部分が強いからこそ、日本のどこよりもそういった戦いがいまでも続いているんだと思います。沖縄のことを大好きだと言ってくださる方は多いですが、そういうところにはあまり意識が向かない方が多いのかなと。沖縄がどう変わりたいかということよりも、沖縄に起きていることを知ってもらい、少しでもみなさんに自分のこととして考えていただけたらと思います。―最後に、観客へのメッセージをお願いします。監督いまは復帰についてあまり知らない方も多いと思いますが、来年は50周年という節目の年でもあるので、こんな時代があったんだということをみなさんにもおもしろおかしく体感していただきたいです。この作品は何かを突き付けたりする意図はないので、気軽に観ていただけたらと。ただ、観終わったあとに沖縄に対しての気持ちが変わるのであれば、その思いを大事にまた沖縄と向き合っていただけたらうれしいです。未来のために、戦わなければいけないときがある!学校の教科書やニュースでは、知ることのできない沖縄のさまざまな実情を垣間見ることができる本作。信念を貫き通したウシおばぁのように声を上げることの大切さ、そしていまでも続いている戦いに私たちひとりひとりがもっと目を向けるべきだと感じるはずです。取材、文・志村昌美目が丸くなる予告編はこちら!作品情報『サンマデモクラシー』7月17日(土)ポレポレ東中野ほか全国順次公開配給:太秦©沖縄テレビ放送
2021年07月16日笑福亭鶴瓶のドキュメンタリー映画『バケモン』が、7月2日(金)より全国順次公開されることが明らかになった。本作は、様々なドキュメンタリー番組をディレクターとして手がけてきた山根真吾監督が、鶴瓶を17年間追い続けて撮影し続けた1600時間の映像を、一本の映画に編集したもの。すべての始まりは隠し撮りだったという。2004年、鶴瓶の落語『らくだ』初演を無許可で撮影したとき、その芸に衝撃を受けた監督は、「『らくだ』を追いかけたい」と正式に申し込み、「俺が死ぬまで世に出したらあかん」という条件付きで撮影を許された。その日から監督は、『らくだ』の他にも「鶴瓶噺」のステージから楽屋、打ち上げの席など、公私の境のない様々な人々との交流まで、ゴールを決めないまま追い続ける。そして2020年、様々なエンタテイメントが次々と中止になる中、4カ月ぶりの鶴瓶の舞台では、わずか19人の観客を前に『らくだ』が演じられた。山根監督は、その新たな境地に到達した芸を目の当たりにしたことで、17年間1600時間の映像を、一本の映画にすることを決断したのだという。本作の撮影・編集・構成・演出を山根真吾監督が務め、ナレーションを香川照之、音楽を服部隆之が担当した。また、本作品は映画館に無償で提供する目的で製作され、入場料はすべて映画館の収益となる。『バケモン』7月2日(金)より全国順次公開
2021年06月17日ABEMAオリジナルドキュメンタリー番組「MILLENNIAL /ミレニアル」の6月3日(木)配信回は、ニューヨーク在住の若者に人気の動画クリエイター・kemioが登場する。本番組は、ミレニアル世代の視聴者に向けて、ミレニアル世代の多様な生き様や価値観を追いかけて届ける、ミレニアル世代特化型ドキュメンタリー番組。第1弾では俳優・岡田健史を特集し、その後もアーティスト・YOSHI、バレエダンサー・永久メイの回を配信してきた。そして今回は、動画クリエイター・kemioさんに密着。10代の頃にVineに投稿した「高校生あるある」が話題となり、インフルエンサーの先駆けに。YouTubeでは、独特なワードセンスとユーモア溢れる日常の投稿が若者の共感を呼び、“デジタル世代のカリスマ”と言われるように。そんなますますの活躍が期待される中、2016年末にアメリカへ拠点を移し、2019年からはニューヨークでの生活をスタート。では、一体なぜ、移住を決意したのか?どんな価値観や信念を持ち、どんな煌めきを放つのか?kemioさんの日々に密着し、素顔に迫りながら等身大の姿を映し出す。「今まで、これくらい長く自分がやっていることを密着していただく機会がなく、ドキュメンタリーをつくるのも初めての経験で、どんなふうに完成するのかワクワクしていました」と語るkemioさんは、「『MILLENNIAL /ミレニアル』で、活躍している同世代の中に自分を入れていただけるのがすごく光栄でアガりました(笑)」とコメントしている。「MILLENNIAL /ミレニアル」は6月3日(木)23時~ABEMA SPECIALチャンネルにて配信。(cinemacafe.net)
2021年05月30日Nulbarichのドキュメンタリー映像「Beat × Beat」がApple MusicとYouTubeにて公開された。「Beat × Beat」は、オーディオブランド・Beats by Dr. Dreが手がけるドキュメンタリー映像で、世界のトップアーティストの音楽制作の舞台裏とそのインスピレーションを紐解いていく人気シリーズ。これまでセレーナ・ゴメス、アリアナ・グランデ、ケンドリック・ラマー、コールドプレイといった名だたるアーティストが出演しており、今回Nulbarichが選出された。今回の映像では、Nulbarichのミュージックビデオを数多く手がける木村太一がディレクションを務め、コロナ禍に起きている様々なことに向き合い創った最新アルバム『NEW GRAVITY』に収録されている「CHAIN」の制作舞台裏を撮影。JQが信頼を置くエンジニア、土岐彩香と一曲を創り上げていく制作のプロセスや楽曲に込めた思い、さらにJQと気心が知れた監督だからこそ、捉えられた自然体の素顔や普段では見られないありのままのJQの姿が垣間見られる貴重な映像に仕上がった。ぜひこの映像を通して、彼らの魅力を確かめてほしい。■Nulbarich「Beat x Beat: Nulbarich “CHAIN”」Apple Music - Nulbarich アーティスト・ページ【リリース情報】ニューアルバム『NEW GRAVITY』2021年4月21日リリースApple Musicにて4月21日より配信スタート「IN THE NEW GRAVITY 」特設サイト収録内容などの詳細はコチラをご覧ください。単独ライブNulbarich ONE MAN LIVE『IN THE NEW GRAVITY』情報も特設サイトでチェック!
2021年05月14日