『愛のひみつ』というちょっとドキッとするタイトル通り、ハンバートハンバートの新作はLOVEが溢れるアルバム。テーマは全曲LOVE。さまざまな愛の物語を奏でます。「曲が出そろったところで、テーマを探ったらLOVEだな、と思いまして」と全曲の作詞・作曲を担当する佐藤良成さん。その12曲はさまざまな愛のカタチ、恋人、夫婦、家族、ときどき片思い。「ドラマの配役を決めるように、この曲は主役、こっちは三枚目の役とか、バリエーションが出るように曲を配していますね」(佐藤)一曲一曲がまるで一編のショートムービーのような物語がある愛の歌を、佐野遊穂さんのふんわりしたボーカルでしみじみと聴かせてくれる。「ずっと仕事部屋にこもって作曲しているので、知らないメロディが聞こえてくると、新しい曲できたな、って。気付いても、いつも何も聞かないんですけどね」(佐野)「詞がついてからはじめて聴かせます。ボツになることもあるし、書き直しもあります。けっこう手厳しいんですよ(笑)」(佐藤)「歌い手というより、リスナーの気持ちで、ここまで言っちゃったらつまらないよとか、そんなアドバイスをしていますね」(佐野)佐藤さんと佐野さんは夫婦デュオ。自宅に仕事部屋があり、3人の子供たちと家族として日々生活する中で曲が生まれ、ハンバート ハンバートの作品になる。そんなほっこりしたイメージや、佐野さんのキュートな歌声と相まって、ふたりの音楽に癒される!という人も多いけど、このアルバムには、ちょっと後ろめたい“闇”や“深淵”を覗いてしまったような瞬間もある。詞の世界にもじわりと浸りたい作品なのだ。「作詞は苦行ですね。ただ自分の実体験というわけではなく、人生において見聞きしたものを引っ張ってくることが多いかもしれない」(佐藤)結成して22年間、トラックは佐藤さんがアレンジし、楽器演奏もほぼひとり。アレンジは何十パターンも作るそうだ。選び抜いたアレンジに、多彩な音色の楽器を駆使して作られる独特のサウンド。そこに佐野さんの歌が乗ってハンバート ハンバートの世界に到達。そんな制作過程を聞くと『愛のひみつ』の秘密にグッと近づく感じがする。「今回、アニメ作品のために書いたテーマ曲を2曲セルフカバーしました。細かくオーダーされる制作が、僕たちにハマったというか、すごく楽しかったんです。オリジナルはどうしてもシブくなる傾向があるので、ポップなハンバート ハンバートも味わって欲しいですね」(佐藤)10th album『愛のひみつ』10月21日発売。【初回限定盤CD +特典DVD】おしゃべり+撮り下ろしでアルバム収録曲を演奏した映像を収めたDVD付き。¥3,500、【通常盤CD】¥2,800(SPACE SHOWER MUSIC)ハンバート ハンバート1998年結成の佐藤良成と佐野遊穂によるデュオ。オリジナル作品と並行してテレビ、CM 、映画などに数多くの楽曲を提供している。今年8月、閉園間際の『としまえん』で無観客生配信ライブを行い、話題となった。※『anan』2020年10月21日号より。写真・土佐麻理子ヘア&メイク・橘 房図取材、文・北條尚子(by anan編集部)
2020年10月14日心温まる優しいハーモニーが魅力的な夫婦デュオ、ハンバート ハンバートのお二人。公私にわたって良き関係性を築く秘訣とは。「時間をかけて相性を深めてきたと思います」――デュオを組むことになったのは、どんな経緯でしたか?佐野:もともとは大学生の頃に良成が始めたバンドで、メンバーは6人くらいいたんです。最初はデュオとしてやっていくつもりは全然なくて。佐藤:当初は自分だけで歌っていたんですけど、もっと大所帯の華やかなバンドにするために、女性コーラスを3人くらい入れようという話になって。佐野:その1人目でした(笑)。――佐藤さんは、なぜ佐野さんに声を掛けようと?佐藤:友達の友達だったんですけど、バンドのベーシストが「このあいだ、遊穂とカラオケに行ったら、めっちゃ歌うまかったよ」って。じゃあ、誘ってみるか、と。――そこからなぜ、遊穂さんがメインで歌う今のスタイルに?佐藤:スタジオに入って練習をしているうちに、「お前じゃなくて遊穂が歌ったほうがいいんじゃないの?」という話になって。佐野:それで、曲によっては私がメインで歌うようになり、だんだん歌うバランスが同じになってきて、いつの間にか逆転して…という感じでしたね。そうこうしているうちに他のメンバーが就職活動で抜けて、人数も2人だけに。――その後、お二人はプライベートでもパートナーになられたわけですが、距離が近くなればなるほど、お互いの才能に嫉妬のような感情を抱くことはありませんか?佐藤:たぶんお互いに曲を作っていたら自分にない才能を感じたりするのかもしれないですけど…。佐野:曲を作るのは良成なので、同じハンバート ハンバートの中でも役割は全然違うんです。だからなのか、そういうのを感じたことはまったくなくて。私は、“作ってない係”なんですけど…(笑)。佐藤:味見係だよね(笑)。佐野:ゆるキャラ係とかね(笑)。――制作を進めていく中で、衝突したりすることはありませんか?佐野:詰めてやるときはぶつかることもあるんですけど、あまりぶつかっていると作業が進まないので…。それで意識的に気持ちを切り替えることはありますね。良成はすごく短気なんですよ(笑)。佐藤:そうですね(笑)。佐野:私はあまり言い返したりしないので、受け流してます(笑)。――上手に受け流すことも、いい関係性を作る秘訣ですよね(笑)。佐藤:確かに、喧嘩している場合じゃないことが多いんですよね。結局協力しないと仕事も進まないし、いいライブもできないですから。家事も同じで、二人とも仕事をしているので一緒にやらないとなかなか終わらないんです。佐野:よく「仕事でも家庭でも一緒で喧嘩にならないんですか?」って聞かれるんですけど、いつも一緒にいるからこそ、スケジュールが頭の中で共有されているので、今は喧嘩してる場合じゃないなってことがよくわかるんですよね。佐藤:それはそうだね。佐野:気持ちも状況も把握できているし、お互い大変そうなところを見ているからこそ、そんなときに無理な要求はしないし、逆にそんな中で何かをしてくれたら素直に感謝の気持ちも持てるんです。――その境地に達するまでには、やはり時間がかかりましたか?佐野:そうですね。佐藤:もう20年も一緒にやっているので、最初からバランスがうまくとれていたというよりは、時間とともに相性が合ってきた感じです。音楽もプライベートも。特に歩み寄ったつもりもないんですけど、長い時間一緒にいると、お互いの得意不得意が言わなくてもわかるようになってきて、パズルの凹凸のようなものが自然とうまくハマってくるんです。靴が足の形に馴染んでくる感覚に似ているかもしれません。音もそんな感じなんですよね。始めた頃は曲によってどちらかがメイン、どちらかがコーラスになっていたので、ハモっているんだか、ハモっていないんだかよくわからないものもあったりして。それが10年前くらいから、いい感じに声を合わせられるようになってきて。僕らのファンの方が思う“ハンバートの響き”みたいなものなんですけど、目指す響きを見つけられたり、練習中にアレンジが決まったりするとすごく気持ちが良くて。その気持ちよさを二人で共有しているからこそ、喧嘩をしたり大変なことがあっても、どうでもよくなってしまうんです。ハンバート ハンバート1998年結成。佐野遊穂(左)がメインボーカルを、佐藤良成(右)がボーカル&ギターを務める。夫婦でもあり、現在は3児を育てる5人家族。7/25に結成20周年記念盤『FOLK 2』を発売。8月16日より、全国10都市を回る記念ツアー「FOLK IS MY LIFE 2018」を行う。さとう・りょうせい1978年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学卒。ボーカル、ギター、フィドル、ピアノほか、作詞、作曲担当。さの・ゆうほ1976年生まれ、東京都出身。和光大学卒。ボーカル、ハーモニカ担当。「ゆるキャラ係」※『anan』2018年8月1日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)取材、文・菅野綾子(by anan編集部)
2018年07月26日