伝説のバレリーナが世界バレエフェスティバルに12年ぶりに登場する。1963年生まれの大スター、アレッサンドラ・フェリ。【チケット情報はこちら】彼女が2013年に復帰したとき、「えっ」と驚いたバレエ・ファンは多かったはず。1980年代から第一線で活躍するイタリア人ダンサーで、振付家ケネス・マクミランのミューズだった。マノンやジュリエットもフェリが踊ると別の物語のように情熱的になり、音楽も深い陰影を帯びた。2000年のWBFでマラーホフと『椿姫』を踊ったときは妊娠中だったが、大胆なリフトにも怖気づかず、逆にマラーホフが彼女を気遣って神経質になっていたのを思い出す。英国ロイヤル・バレエ団の名花として活躍したのちアメリカン・バレエ・シアタ―に移籍し、ジゼルやジュリエットなど多くのドラマティックなヒロインを演じた。2007年に日本でも引退公演を行ったが、復帰後はノイマイヤー振付『ドゥーゼ』、ウェイン・マクレガー振付『ウルフ・ワークス』に出演。エルマン・コルネホとのパートナーシップで新たな黄金期を築き上げている。技術的な衰えが全く感じられないのが信じられないが、今の彼女でしか見られない深い表現力にも注目だ。フェリと同じく小柄な体格で、客席の視線を独り占めしてしまうダイヤモンドのようなダンサーが、大人気スターのアリーナ・コジョカル。今年5月に来日した英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団での『眠れる森の美女』のオーロラも記憶に新しいが、去年の秋に出産をして短期間で復帰を果たした奇跡のバレリーナでもある。古典からノイマイヤーの『リリオム~回転木馬』のような人間の心の痛みを描き切ったドラマティックなバレエまで完璧主義のテクニックで踊り、音楽性も演劇性も世界最高峰のレベル。愛らしいルックスと優雅なオーラは生まれつきのプリンセスのようだが、プリンシパルをつとめたキエフ・バレエを1年で退団したあと、英国ロイヤル・バレエ団に移籍してコールド・バレエから登り詰めたという叩き上げの経歴ももつ。現在はハンブルク・バレエとイングリッシュ・ナショナル・バレエに定期的に出演。舞台に現れただけで空間全体が明るく輝きだす存在感は、やはり神に選ばれたダンサーならではのもの。バレエ・ファンを魅了してやまない愛くるしさと、どこまでも求道的でストイックな生き方が魅力的だ。彼女が踊り続ける限り、1回でも多くその姿を目に焼き付けたいと思っているファンは多いはず。絶頂期のプリマの輝きを見逃すべからず。アレッサンドラ・フェリ、アリーナ・コジョカルが出演する第15回世界バレエフェスティバル(Aプロ、Bプロ)は8月1日(水)から12日(日)まで、東京・上野の東京文化会館大ホールにて。チケット発売中。文:小田島久恵
2018年07月09日映画『ボリショイ・バレエ2人のスワン』が、2018年7月7日(土)より全国で順次公開される。本作は、バレエの名門ボリショイ・バレエ・アカデミーで、頂点を目指す2人の少女の美しくも厳しい闘いを描いた青春物語だ。貧しい家庭で育った隠れた才能の持ち主ユリアと、裕福な家に生まれエリートダンサーとして期待を背負うカリーナ。境遇から踊りのスタイルまで全く異なる2人は、やがて親友として、そしてライバルとして、恋とバレエを競い合う。本作の見所は、世界で活躍する一流のダンサーばかりを集めた豪華なキャスト陣だ。主役ユリアには、数々の国際コンテストで優勝後、ポーランド国立バレエ団を拠点に活躍するマルガリータ・シモノヴァが出演。ライバルのカリーナには、実際にボリショイ・アカデミーを優秀な成績で卒業後、ロシア・ナショナル・バレエ劇場で古典的演目すべてに出演したアンナ・イサエヴァが抜擢された。さらに、2人が憧れる相手役は、史上最高と称されるダンサー、ニコラ・ル・リッシェが演じる。華やかな踊りの世界の人間ドラマはもちろん、世界最高峰のボリショイ劇場を舞台に繰り広げられるステージは圧巻だ。【詳細】映画『ボリショイ・バレエ2人のスワン』公開日:2018年7月7日(土) ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開監督:ヴァレーリー・トドロフスキー脚本:アナスタシア・パルチコヴァキャスト:ルガリータ・シモノヴァ、アンナ・ イサエヴァ、アリーサ・フレインドリフ、ニコラ・ル・リッシュ© Valery Todorovsky Production Company■ストーリーボリショイ劇場擁するバレエ・アカデミーに入学した2人の少女。貧しい炭鉱町出身で伸びやかな身体と才能を持つユリアと、お金持ちの家に生まれ美しく気高い容姿を持つカリーナ。カリーナの優雅で完璧な踊りは生徒の中でもひときわ輝き、講師陣期待のエリートとしてプリマ候補に。一方でユリアの隠された跳躍力や表現力を、かつて伝説のプリマで講師のガリーナだけは見抜き、才能を伸ばそうと手を差し伸べる。境遇もスタイルも全て正反対の2人が、最大の親友でありライバルとなり、過酷なレッスンに耐えながら、恋とバレエを競いあう。最後に主役の座をつかむのはー。
2018年07月08日6月下旬、ウラジーミル・ブルメイステルの振付・演出による『白鳥の湖』を上演する東京バレエ団がリハーサルを公開、その後の記者懇親会で斎藤友佳理芸術監督、主演の沖香菜子、宮川新大らが舞台への思いを語った。【チケット情報はこちら】公開されたリハーサルは第3幕。数あるヴァージョンのなかで特にドラマティックといわれるブルメイステル版ならではの、エネルギッシュな、独特の魅力にあふれた幕だ。ジークフリート王子の花嫁選びの舞踏会。次々と登場する各国の踊りのダンサーたちは、実は悪魔ロットバルトの手下という設定で、その踊りでジークフリート王子をじわじわと誘惑、宮川演じるジークフリート王子は、沖演じるオディールに心奪われ、ついには大切な女性オデットを裏切り、彼女を呪いから救うチャンスを失う──。東京バレエ団は2016年2月に本作をバレエ団初演。これを観た著作権保有者のナタリヤ・ブルメイステルが「(1953年の)初演を思い出した」と賞賛したという。とくにソリスト、群舞のダンサーたちが一体となってドラマを作り出すこの第3幕は圧巻で、今回の再演でも迫力の舞台が期待される。懇親会冒頭で「今回はこれを3キャストで上演、上野水香と柄本弾、川島麻実子と秋元康臣に加え、沖と宮川が初めて挑戦しますが、それぞれに全く違う良さがある。ぜひ全キャストを観ていただきたい」と話す斎藤。この春プリンシパルになったばかりの沖と宮川を、「そこで満足してほしくない。常にハングリーで、謙虚でいてほしい」と激励した。オデット/オディール役の沖は「この役にこうして取り組めることは奇跡。両役ともに私はどうしても幼くなりがちなので、初々しさの中にも大人っぽさが出せたら」、宮川は「これは(在籍していた)ダンチェンコ(モスクワ音楽劇場)で観て、『白鳥の湖』って面白い!と実感した版。振付のない部分、自分で作らなければならない部分は難しいが、幕があく最後の一秒まで突き詰めたい」と抱負をのべた。さらに「こんなに大変だと知っていたら、やらなかった(笑)」と斎藤が冗談をとばすのは、今回一新した衣裳のこと。ブルメイステルの演出意図にかなうものを、と初演時には装置をしつらえたが、今回は第1幕、第3幕の全衣裳を新製作。「これでいつでも好きな時に上演できるようなった。『白鳥の湖』はどうしてもそうしたかった」と思いを明かす。小物類も含めて200点ほどにものぼる衣裳のひとつひとつに、斎藤の、スタッフたちの強い思いが込められている。東京バレエ団公演ブルメイステル版『白鳥の湖』は、6月29日(金)から7月1日(日)まで、東京・東京文化会館にて上演。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2018年06月14日子どもたちに人気の習い事のひとつ「バレエ」。でも、必ず耳にするのが「バレエはお金がかかる」という言葉…一体どれくらいかかるもの?子どもから大人まで、長くバレエを指導しているクラシック・バレエ講師の四家恵先生に、金額の相場について聞きました!子どものバレエの「月謝」と「入会金」の相場は?子どもの習い事について親同士が話すときに、よく耳にする「バレエってお金がかかるから…」の言葉。豪華な舞台や衣装のためか、ほかの習い事に比べて、なんだかお金がかかりそうなイメージがありますが、本当にお金がかかるのでしょうか?「いくらぐらいを『高い』と取るかは、各ご家庭で異なると思いますが、ピアノや絵画、水泳、柔道、書道など、さまざまな習い事と比べて、桁外れに高いということはないと思います。普段のレッスンで必要なのは、お教室に払う月謝と、ウェアやシューズなどの消耗品。ただし、発表会に出演する場合は、その価格や頻度もお教室によって異なるので、イレギュラーな費用がかかってきます」(四家先生、以下同)まず、子どものクラスの月謝とは、いくらぐらいなのでしょうか?「幼稚園児の場合は大抵、週1回レッスンで、月謝(月4回)は7000~8000円程度。安いところでは5000円、高いところでは1万円のところもあります。年齢が上がるにつれて、週のレッスン回数が増えていき小学校低学年~中学年で週2回レッスンとなり、月謝は1万~1万2000円程度。小学校高学年になると、子どものレベルや本気度によって、レッスン回数が変わるので、月謝もそれに合わせて上がっていきます。ただし、この『相場』も先生や地域によって変動があります」なお、たまに「月謝をチケット制と勘違いしてしまう親御さんがいる」そうです。「月謝とは、毎月決まった固定額を納める制度なので、たとえ子どもが月3回しか受講できなかったとしても、月4回分の金額を納めていただくことになります。子どものクラスは、大人のクラスと異なり、チケット制を導入しているお教室は少ないので、基本的には『毎月、決まった額を払う』心づもりが必要です。ただ、子どもが長期的に休まないといけないなど、やむを得ない事情がある場合は先生に相談してみてください」最初は入会金がかかるのでしょうか?「ほとんどのお教室に入会金があり、5000~1万円程度のことが多いです。ただ時々、キャンペーン期間などで、半額または無料になることも。また、私の教室もそうなのですが、最初の1カ月は『お試し期間』として入会金はなしで月謝のみいただいて、2カ月目に月謝と合わせて入会金をいただくことも。最初の1カ月をかけて、そのお教室に合うかどうかを吟味できるので、このシステムを取っているところを選ぶと安心かと思います」消耗品のレッスンウェアやシューズはいくらくらいかかる?次に、普段のレッスンで必要になる消耗品について教えてください!「レッスンの際に必要なウェアは、女の子の場合はレオタードとピンクタイツ、男の子の場合はタンクトップやTシャツにタイツやスパッツが多いです。メーカーによって値段は変わりますが、幼稚園児から小学校低学年用の女の子用レオタードで、4000~8000円程度。高いものでは1万円を超えるものもあります。タイツは1足あたり2000円程度、ソックスは1000円程度です。男の子用のトップスは4000~6000円程度で、タイツやスパッツは3000~5000円程度が多いでしょう」幼いころは週1~2回のレッスンなので、何枚も購入する必要はないそう。育ちざかりなので、数年置きに買い替えは必要ですが、バレエのウェアは丈夫にできていることが多く、また伸縮性にも優れているので、意外に長持ちするそうです。「さらに、バレエを踊る際には、バレエ・シューズが必要です。シューズは男女とも、1足あたり2000~3000円程度。シューズは足にピッタリと合うものを履かないと、踊りにくいうえ、怪我につながることもあるので、足の成長に伴ってこまめな買い替えが必要になります。また、幼稚園児のときはシューズではなく、ソックスを指定するお教室もあります」ちなみに、バレエと言えば女性ダンサーが履くトウ・シューズ!「トウ・シューズは骨が成長し、履くための筋力を得た11~12歳ごろから、先生に許可をいただいてから履き始めます。メーカーによって金額に差があり、1足あたり5000~1万円程度です」なお、上記以外の消耗品としては、女の子が髪をシニヨン(お団子)にまとめるためのゴムやネット、ピン、スプレーなどがあります。気になる「発表会」の費用はおいくらが相場?「バレエにお金がかかる」と言われる理由は、おそらく発表会でしょう。発表会に出演するには、大体いくらかかるのでしょうか?「ひと口に発表会と言っても、その規模や頻度、出演する演目数、パートナーの有無によってもかなり変わります。一般的な発表会で、グループで踊る演目に2つほど出演する場合は、1回の発表会につき10万円程度が多いです。このなかには、普段のレッスンとは別に講師が指導するリハーサル代や衣装代が含まれています。なかには、20万円かかるお教室もありますが、一方で『おさらい会』のようにスタジオで行う小規模なパフォーマンスの場合は5万程度で済むこともあります」発表会は「生徒は必ず出なければいけない」というところもあれば、「希望者のみの自由参加」のところも、また発表会を開催しないお教室もあるそう。さらに、価格は安くても、頻度が高い場合も…。お金が気になる場合は、入会前に発表会の有無や金額をリサーチしておいたほうが安心でしょう。(取材・文:富永明子)
2018年06月04日子どもたちに人気の習い事のひとつ「バレエ」。いざお教室を選んで通わせようと思っても、何も準備がないと、親も子どもも心配になってしまうもの。子どもから大人まで、長くバレエを指導しているクラシック・バレエ講師の四家恵先生に、習い始める前の準備について聞きました!そもそも、子どもがバレエを習うメリットとは?バレエのレッスンは、厳しくてハードな印象があり、子どもがついていけるのか…と心配になるママパパも多いもの。子どものころにバレエを習うと、どんなメリットがあるのでしょうか?「バレエは美しい音楽に合わせて踊る芸術です。子どものころからレッスンを積み重ね、長い時間をかけてバレエを踊るために必要な筋肉をつけていきます。バレエは体の中心軸を引き上げて踊るので、正しくレッスンをすれば体幹が強くなって、まっすぐで美しい姿勢を身につけることができます。近ごろは、お子さんの姿勢が悪いとお悩みの親御さんが多いので、正しい姿勢に整えやすいのは大きなメリットです。また、筋肉をよく伸ばして踊るので、柔軟性を高め、怪我をしにくい体を作ることもできます」(四家先生、以下同)また「バレエを習っている子はお行儀がいい」と言われることも多いほど、礼儀作法をしっかりと教えてもらえるのも嬉しいところ。「ご挨拶から言葉遣い、立ち居振る舞いまで、普段のレッスンから礼儀作法を教えていきます。同じクラスにいる生徒たちとの協調性はもちろん、一緒に踊るためのコミュニケーション力を鍛えられることも。また、発表会になると年上の生徒たちとの交流もあり、さまざまな年代の人と触れ合うなかで身につくマナーも多いでしょう」さらに、美しい音楽を聴いて踊ることで音楽性やリズム感も鍛えられるそうです。お教室に通うとき、どんなものを準備すればいいの?では、子どもがお教室に通うときには、どんなものを準備すればよいのでしょうか?バレエショップに足を運ぶと、かわいいレオタードがたくさんあって目移りしそうですが…。「レッスンの際に必要なウェアは、女の子の場合はレオタードとピンクタイツ、男の子の場合はタンクトップやTシャツにタイツやスパッツのことが多いです。ただし、通い始める前に買ってしまわないこと!というのも、お教室ごとにウェアにルールを設けていることが多く、せっかく買っても無駄になる場合があるからです。子どものウェアはユニフォームのようなもの。先生が、生徒の体の使い方を見極めるため、あえておそろいで、体のラインがしっかり見えるウェアを指定することがあります。また、タイツも微妙に色合いが異なるものがあるので『ピンクであればよいだろう』と買うと、NGが出てしまうことも。幼稚園児はタイツではなく、ソックスを履かせるお教室もあります。購入前に、通うお教室の先生に必ず確認しましょう」また、シューズ選びも慎重におこないたいところ!「『子どもはすぐに成長するから』と、つい大きめのシューズを選ぶ親御さんは多いのですが、バレエを正しく踊るためには足裏を鍛え、床をしっかりとつかむ必要があります。そのため、大きすぎたり小さすぎたりすると、適切に鍛えることができないうえ、怪我につながることも。シューズはとても大切なので、先生に選んでいただくか、またはバレエショップのシューフィッターさんに選んでいただくなど、プロに任せたほうがよいでしょう」ちなみに、バレエと言えば思い浮かべる人の多いトウ・シューズですが、11~12歳ごろから履き始めるのがほとんど。骨が成長し、踊るために必要な筋肉を身につけてから、先生から許可をいただいて履くものです。子どもが憧れるあまり、先生の許可なく買ってしまう親もいるそうですが、怪我につながるので絶対にやめましょう。子どものバレエ・クラスでは、どんなレッスンを学ぶの?初めてクラスに参加するときは、緊張するもの。いったい、どんな内容のレッスンをおこなっているのでしょうか?「幼稚園児のクラスでは、ほとんどバレエらしい動きはありません。でも、その積み重ねが、ゆくゆくバレエを踊るための姿勢を身につけ、正しいポジションでさまざまなステップをこなすためには必要なのです。私のクラスでは、まずさまざまなストレッチやエクササイズをおこないます。たとえば、お尻歩きをすることで体幹を鍛えたり、足指じゃんけんをすることで足裏を鍛えたりします。また、ケンケンパーをしたり、スキップをしたり、背伸びしたりして脚力を鍛えていきます」通常、バレエのレッスンはまず、バーと呼ばれる棒につかまって「バー・レッスン」をおこない、その後、スタジオの中央で両手を離して踊る「センター・レッスン」へと進みます。しかし、体ができあがっていないうちは、まずバーを通して体の軸を整えていくそうです。「小学校低学年のうちは、両手でバーにつかまって、簡単な動きをおこないます。それに慣れてきたら、小学校中学年ごろから、片手でバーにつかまって踊るようになります。片手になると、片足で体を支える動きも増えてくるので、そこでブレずに踊るためには、まず両手バーできちんと姿勢や筋肉を身につけておくことが必要です。バレエの舞台は華やかですが、レッスンは決して派手なものではありません。幼いころから、小さな動きをコツコツ積み重ねることで、両手を離して舞台で踊れる体を養っていくのです」初めてバレエを習うお子さん向けの解説書もたくさんあり、さらにDVDやインターネットの動画でも、バレエ用語やレッスン内容を解説したものは多いです。レッスンに参加する前に観ておくと、子どもも安心して初レッスンに臨めるはず!適した教材がわからないときは、お教室の先生に尋ねてみてくださいね。(取材・文:富永明子)
2018年06月01日子どもたちに習わせたい人気の習い事ごとのひとつに「バレエ」があります。でも、少し調べてみるとさまざまな種類のお教室があり、ママたちは「どのお教室がうちの子に合うの?」と頭を悩ませることも…。子どもから大人まで、長くバレエを指導しているクラシック・バレエ講師の四家恵先生に、お教室選びのコツを聞きました!そもそも、バレエを習い始めるのに適した年齢とは?よく話題になるのが「バレエって何歳から習わせたらいいの?」ということ。3歳だと早すぎる気もするし、でも小学生からだと上達するには遅いのかもしれないし…。四家先生、バレエを始めるのに適した年齢はありますか?「3歳か4歳からクラスを開講しているお教室が多いです。でも、始めるのが早ければ早いほどよい、というわけではありません。たとえば、有名なダンサーの吉田都さんや熊川哲也さんは小学校中学年から始めた方々です。上達には本人のモチベーションが関わってきますので、急ぐ必要はありません。ただ、本気で取り組みたい場合はとくに、10歳くらいには始めておいたほうがよいでしょう」(四家先生、以下同)幼稚園生から始める場合、子どもを通わせられるかどうかは、次の基準をクリアできているとよいと四家先生は言います。「まず『立つ』『座る』など、簡単な日本語が伝わるかどうか。おしめが取れているかどうか。そして、40分ほどのレッスン中、ママやパパと離れていられるかどうか。この3つの基準がクリアできていれば、お子さんも苦痛なく、レッスンを受けられると思います。もちろん、講師としても子どもたちが飽きないように、さまざまな工夫をこらしますが、親御さんと離れて泣き通しの場合は『もう少し、大きくなってからのほうがよいかもしれません』と、お話する場合もあります」子どもに慣れていて、スムーズに会話できる先生を選ぶ!上記の基準をクリアしている場合、お教室を選ぶときは、どんな注意点があるのでしょうか?たくさんあるお教室から、子どもに合う先生を見つけるのは難しく、悩んでしまうママやパパも多そうです。「まず大切なのが、先生との相性。これは『子どもと先生の相性』もそうですが、実はそれ以上に『親と先生の相性』も大切なポイントとなります。幼いころのバレエは、普段のクラス中の態度など、教師から親へ伝えることも多いもの。また、その日の子どものコンディションを、親から教師へ伝える機会も多いです。さらに、発表会を開催するお教室の場合、発表会の練習が始まると普段よりも練習量が増え、さらに衣装の準備や本番当日の役割分担など、親と先生との間のコミュニケーションは密になります。そんなとき、会話の波長が合う先生だとお互いのストレスが減ります」つい「子どもが先生になじめるか」を気にしてしまいますが、見学や体験レッスンに行ったときには、親が先生と会話をしてみることも重要なようです。「あと、子どもに慣れている先生を選ぶとよいでしょう。子どものころのバレエは、情操教育の面があります。音楽を聴いて、楽しく踊りながら、正しい姿勢を身につけるとともに、マナーや礼儀作法を学びます。そんなとき、子どもの喜ぶツボを知っている先生だと、子どもも継続しやすいと思います。たとえば、私は右と左の区別がついていない子には、片方のシューズにキラキラ光るシールを貼ったり、姿勢をよくするために頭にリボンを結んで『引き上げる』感覚を養ったりします。子どもにとって、ひとつの場所で長い時間を過ごすのは大変なことなので、飽きずに楽しみながら学べる工夫をします」どんな規模のお教室に通わせたいかを見極めるほかに「入会前に確認したほうがいいポイント」は、どんなものがありますか?「バレエのお教室には、さまざまな種類があります。大きなバレエ団付属の学校のこともあれば、代表の先生の下に何人もの教師がついて構成している大中規模のお教室もあり、また基本的には先生ひとりで運営している個人教室もあります。大きなスクールだと、先生と親の間に事務局が入ることが多くなりますが、事務局があるからこそ、システムがきちんと成立しているメリットも。規模が大きめの個人教室の場合、親だけで構成するPTAのような『母の会』がある場合も。発表会のときだけ集まることもあれば、普段から季節ごとに催しをして、まさに学校のようなお母さん付き合いが発生します。先生ひとりの個人教室では、先生と直接会話をする機会が増えます」どの種類を選ぶかは、親次第。「母の会」で集うことが安心感につながる親もいれば、事務局に間に入ってもらうことで安心する親もいます。また、先生と直にやり取りをしたい親もいるので、どんなタイプのお教室だと安心して子どもを通わせられるか、じっくり見極めたいところです。「ほかにも、通いやすい場所にあるか?どのくらい細かくクラス分けしているか?先生が持っているスタジオか、またはレンタルスタジオか?週のレッスン回数と月謝はいくらか?発表会の有無と費用は?お試し期間を経てから入会できるか?など、確認したいポイントはたくさんあります。そのためには、事前に『子どもに、どんな先生のもとで、どんなふうにバレエを楽しんでほしいか?』を考えておくとよいですよ。かつて、名プリマのマーゴ・フォンテーンが『よい先生選びは親の責任』と語っているのを読んだことがあります。子ども自身が先生を選ぶことはできないので、代わりにしっかりと見学をしたり、先生と話したり、評判をリサーチしたりしてから決めましょう」一度お教室に入会したら、基本的にはほかの教室との「かけもち」はご法度の世界!またほかの教室への移籍もしにくいのが現実なので、最初が肝心です。選ぶポイントを決めて、じっくりとお教室選びをおこないましょう。(取材・文:富永明子)
2018年05月28日英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の日本公演がまもなく開幕、英国発のふたつの傑作バレエが上演される。主演ダンサーのひとり、プリンシパルの平田桃子に、上演作品の魅力、見どころについて聞いた。英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団チケット情報英国第二の都市といわれるバーミンガムを拠点とする彼ら。「年間130公演のうち、半分以上は英国内外をめぐるツアーなんです」と話す平田だが、3年ぶりとなる日本公演には、やはり格別の思いを抱いているよう。「前回とはメンバーもがらりと変わり、私はいまや年長のほう。皆を引っ張っていかねばというプレッシャーもあります」と、その重圧をはねのけるかのように、華やかな笑顔を見せる。前芸術監督、ピーター・ライトが手がけた『眠れる森の美女』で幕を開ける日本公演。平田はつづく後半の演目『リーズの結婚』に主演する。英国バレエの巨匠、フレデリック・アシュトン(1904~1988)の代表作のひとつで、「英国ならではの、ストーリー性の強い、楽しさにあふれたバレエ」とその魅力を説く。舞台は、のどかで美しい田園風景のなか。平田演じるリーズが、金持ちの息子との結婚をすすめる母シモーヌに反発、恋人コーラスと結ばれるまでの騒動を描くコメディ色たっぷりのバレエだ。「リーズは、ちょっと私と似ているかもしれません。天真爛漫で、恋におちたらもう──(笑)!地のままでいけるんじゃないかなって思います」と笑うが、「いろんな要素、いろんな魅力が詰まった作品。きっと楽しんでいただけます」とも。たとえば、入団した年(2003年)に初めてこの作品で踊った第1幕の雌鶏!「着ぐるみで踊る役なので、動きにくいし、前は見えないし(笑)。でもこれがまさに英国バレエならでは、大きな見どころ。アランの役者ぶりも、シモーヌの木靴の踊りも、コメディならではのタイミングで笑いを誘います。主役ふたりのリボンを使った踊りや最後のパ・ド・ドゥはしっとりと感動的だし、ダイナミックなリフトなどテクニックの見せ場もある」と、話は尽きない。コーラス役を踊るゲスト、マチアス・エイマンの登場も目が離せない。「パリ・オペラ座バレエ団のエトワールとして長年活躍されてきた方ですから、共演すると聞いた時はもう大喜びでした。先週初めて一緒にリハーサルをしましたが、その技術の精確さ、美しさに目が釘付けに。お互いに自然に出てきたものを返し合う──。いい手応えを感じています!」英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団日本公演は5月18日(金)から20日(日)が『眠れる森の美女』、5月25日(金)から27 日(日)が『リーズの結婚』、いずれも東京文化会館にて。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2018年05月10日世界的トップ・バレエ・ダンサーが集結した、豪華バレエ・エンターテインメント『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』が、7月7日(土)に日本公開されることが決定。併せて、本予告&本ビジュアルが公開された。■ストーリーボリショイ劇場擁するバレエ・アカデミーに入学した2人の少女。貧しい炭鉱町出身で伸びやかな身体と才能を持つユリアと、お金持ちの家に生まれ美しく気高い容姿を持つカリーナ。カリーナの優雅で完璧な踊りは生徒の中でもひときわ輝き、講師陣期待のエリートとしてプリマ候補に。一方でユリアの隠された跳躍力や表現力を、かつて伝説のプリマで講師のガリーナだけは見抜き、才能を伸ばそうと手を差し伸べる。境遇もスタイルも全て正反対の2人が、最大の親友でありライバルとなり、過酷なレッスンに耐えながら、恋とバレエを競いあう。最後に主役の座をつかむのは――。■現役ダンサー、元パリ・オペラ座のエトワール…本物バレエ・ダンサー集結!ゴールデン・イーグル賞にて最優秀脚本賞受賞と作品賞ほか6部門にノミネートされた本作は、ロシア国立ボリショイ・バレエ・アカデミーで頂点を目指す2人の少女の挫折と栄光を描く青春物語。貧しいながらも天性のバレエの才能を持つユリアを演じるのは、リトアニア出身でスウェーデンやフランスの国際コンテストで優勝後、ポーランド国立バレエ団を拠点に活躍中の現役ダンサー、マルガリータ・シモノヴァ。またライバルのカリーナを、実際にボリショイ・アカデミーを優秀な成績で卒業後、ロシア・ナショナル・バレエ劇場で「白鳥の湖」をはじめ古典的演目全てに出演したアンナ・イサエヴァが演じる。そして、2人が憧れる相手役アントワーヌを、元パリ・オペラ座のエトワールで、パリ・オペラ座と並ぶ世界3大バレエ団の英国ロイヤル・バレエ団やボリショイ・バレエ団で活躍。現在はスウェーデン王立バレエ芸術監督で、バレエ映画の名作『オーロラ』(’06)にも出演したニコラ・ル・リッシュが務める。■本格的なバレエシーンも! 予告編到着公開された予告編では、ユリアがかつて伝説のバレリーナだったガリーナからその才能を見出されるシーンからスタート。現役の一流ダンサーが演じるレッスン風景や、キラキラとしたボリショイの華やかな舞台と共に、ユリアの波乱の恋やライバルとの出会い、葛藤を通して、ダンサーとしてそして人として成長していく姿が映し出されている。『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』は7月7日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開。(cinemacafe.net)
2018年04月02日ダンス・エンタテインメント集団・梅棒の第8弾『Shuttered Guy』に、エグスプロージョンのまちゃあきが参加する。ダンスとお笑いを融合し、ポップな音楽に乗せて踊るエグスプロージョンのパフォーマンス『本能寺の変』は、YouTubeで再生回数が5700万回を超える大ヒット作。梅棒は、Jポップのヒット曲を巧みに使って物語を構成、ほぼセリフなしにダンスで表現する。カテゴリーは同じダンス・エンタテインメントだが、異色の2組。梅棒のリーダー・伊藤今人は、彼らの活躍ぶりを見ながら「まちゃあきさんなら、興味を持ってくれるかも」と参加を打診し始めた頃、まちゃあきは梅棒の第5回公演を初めて観劇「刺激だらけでした。ずっと出たいと思っていた」。互いの相思相愛に気づかぬまま時は過ぎ、ついに今回、双方の念願が叶った。その新作は、人情味あふれる商店街で巻き起こる大騒動を描く“エキセントリック・ハートウォーミング・コメディ”だ。梅棒 8th SHOW『Shuttered Guy』チケット情報今回の舞台は、男性10名の梅棒メンバーに11名のゲストが出演。梅棒が出来ないジャンルで、一芸を持っている人をバラエティ豊かに誘っている。まちゃあきは梅棒への印象を「Jポップとダンスと芝居、そこを完全にミックスさせた新たな色の舞台。普通の演劇を観るよりずっと感動の幅はデカイかな」と語る。彼の役柄は、商店街で八百屋を営む娘想いのお父さんだ。「商店街を愛していて、訪れたピンチを乗り切ろうと頑張るお父さんです。1977年発表の昭和歌謡で踊ってもらいます」(伊藤)。本作では24曲使い、緩急つけて場面を展開する。「新しい曲から古い曲まであるので、どんな方が観られても楽しめる舞台だなって思う。昔の歌謡曲の奥深さもメッチャ出てるし。で、このシーンにはこの曲っていうのが、バチッとハマる」(まちゃあき)。「ほんとは『三丁目の夕日』みたいなハートウォーミング・コメディを作ろうと思ってたんですけど、梅棒でやろうとすると自然とエキセントリックにならざるを得なかった(笑)。終盤はマジかよ!っていう展開になります。そこも楽しみにしていただければ」(伊藤)。学ランの印象が強いまちゃあきだが「学ランじゃない僕も観に来てくださいね。新しい自分にも挑戦できるなというところを見ていただきたいなと。20人で大阪に最高の“変”を巻き起こします。『梅棒の変』『エンタメの変』を楽しみに!(笑)」。3月28日(水)・29日(木)東京・THEATRE1010にてプレビュー公演、3月31日(土)・4月1日(日)愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール、4月6日(金)から8日(日)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、4月12日(木)・13日(金)福岡国際会議場 メインホール、4月18日(水)から26日(木)まで東京・世田谷パブリックシアターにて上演。チケットは発売中。取材・文:高橋晴代
2018年03月28日オスカー女優のジェニファー・ローレンスが、バレリーナから女スパイへと仕立て上げられる主人公を演じる映画『レッド・スパロー』。実は、ジェニファーはダンスが苦手だそうなのだが、今回トップバレリーナを演じるため決死のトレーニングを敢行。その姿にフランシス・ローレンス監督や本作にも出演する“バレエの天才”セルゲイ・ポルーニンも称賛の声を上げている。元CIA工作員ジェイソン・マシューズが実体験を基に書いた小説を原作に、ハニートラップと心理操作を武器としてミッションの遂行するスパイ(=スパロー)と、それを取り巻く陰謀と欲望の物語。『世界にひとつのプレイブック』でブラッドリー・クーパー演じる主人公とひょんなことからダンスコンテストを目指す情緒不安定な未亡人を熱演し、見事アカデミー賞主演女優賞に輝いたジェニファーだが、フランシス監督はジェニファーは“踊ることが得意ではない”と語っていたのだと明かしている。それゆえ、ダンスシーンでは代役が必要になると考えていたそうで、「バレエのトレーニングを受けたことがない人が、たった3か月の練習だけでトップバレエ団のバレリーナのように踊るなんて傲慢すぎるからね」と。しかし、ジェニファーは女優魂を燃やし、撮影が始まる前の3か月間、1日3時間のレッスンを行って本作に挑んでいたのだという。「私はダンスNGなの」と言うジェニファーだが、「苦手ながらに1日3時間練習して分かったことは、ダンサーの心得や鍛錬の仕方だったわ」とコメント。また、「ドミニカのスパイの資質がバレエから来ているからこそ、このトレーニングは必要だった。限界を超えても体を酷使し続けるのは、スパイの訓練にも全く同じことが求められるわ」とバレエのトレーニングはスパイへの役作りにも繋がっていたとふり返っている。そして、イギリスのロイヤル・バレエ団で史上最年少プリンシパルとなったセルゲイも、「僕はジェニファーがバレリーナにアプローチする姿を見ていた。とても良い勉強になったよ」と彼女の女優魂に脱帽。共演したバレエシーンについては、「これ以上は求められないほどのすばらしい機会になった」とふり返り、「彼女が出演する作品でまた共演してみたい」と再共演に意欲を示している。妖艶で過激な女スパイ姿と、トップバレリーナの華麗な姿。どちらのジェニファーも見逃せない。『レッド・スパロー』は3月30日(金)より全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:レッド・スパロー 2018年3月30日より全国にて公開© 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
2018年03月26日国際交流基金アジアセンターと株式会社パルコが2014年に立ち上げた「ダンス・ダンス・アジア~クロッシング・ザ・ムーヴメンツ~」。3月23日の東京公演開始に先立ち、3月15日にはダンス関係者へ向けた公開リハーサルが行われた。DANCE DANCE ASIA チケット情報集まったのはフィリピン、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、そして日本のダンサーたち。シアターで展開される彼らのダンスは、そのテクニックはストリートダンスをベースとしながらも、コンテンポラリーや演劇など他のアート分野と驚くべき幸せな邂逅を経て、新たな地平を切り開いている。まさに世界のムーブメントの“今”を感じられるステージとなっている。ラコステ、ディーゼルなどのショーやMV、CMなどの振付を多数手がけるヴィンス・メンドーザの作品は『Hilatas<君を導く光>』。2016年の東京初演以降、海外公演を経て、同名作品を長編化。今回は振付・演出補佐、ドラマトゥルクとしてピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団出身のファビアン・プリオヴィルが参加。リハーサルでは、印象的なリズムラインに導かれ、コンテンポラリー・アート作品としてのヒップホップの可能性を予感させるダンスが展開されていた。ユニクロのTVCMで、世界三大広告賞を含めた23タイトル受賞という快挙を成し遂げた気鋭のクリエイター黄帝心仙人の作品は『宇宙 -Space-』。舞台に設置された透明なドーム型の“宇宙船”の中で繰り広げられる船員達のドラマだ。音楽とダンスの驚くべき雄弁さによって、まるで台詞が聞こえてくるようだ。ストリートダンスのテクニックによって表現されながら、まさに演劇としてのパフォーマンスとなっている。インドネシアのダンス・アイコンとして名高いハムディ・ファバスの作品名は『Soul Train』。ストリートダンスの変遷を辿るショーケース的な構成は、さながらダンス番組『ソウル・トレイン』の“いいとこ取り”。多用されるダイナミックなブレイキングは、まるで舞台を彩る華のように咲き乱れる。ハムディ・ファバスによるストリートダンスの“今”の表現にも注目だ。公演は3月23日(金)から25日(日)の3日間、東京芸術劇場 シアターイーストにて合計4回開催される。各回、3作品全てが上演される。24日(土)、25日(日)の公演終了後には演出家・クリエイターによるアフタートークが決定しており、各回登壇する演出家は異なる。取材・文:yokano
2018年03月22日Kバレエカンパニーのプリンシパル、浅川紫織が今年11月の『ロミオとジュリエット』を最後に引退することになり、芸術監督の熊川哲也と浅川による記者会見と、その浅川も主演する今月末の『白鳥の湖』の公開リハーサルが開かれた。【チケット情報はこちら】浅川は引退のタイミングについて「いつ決意した、ということではなく、6年前に大きな怪我をした時から、明日歩けなくなるかもしれない、踊れなくなるかもしれない、という状況でした。カンパニーのプリンシパルとしては、自分だけが歩けなくなるまで踊ればいいという考えにはなれません。責任がある中でこの流れになりました」と語る。生え抜きのプリンシパルの退団に、熊川は「(引退は)ダンサーには必ず訪れる、避けられないことですが、これからさらに成熟して素晴らしい演技が期待できる時期だけに、切ない気持ち、複雑な思いがあります」と悲しみを隠さない。「本人が葛藤して決めたことなので、親心として、11月までの公演を成功させて大きな花束をあげたい」。その熊川から「『白鳥の湖』初演(2003年)の前、ダンサーを求めてイングリッシュ・ナショナル・バレエのスタジオに視察に行き、浅川という、17歳の輝く成熟したダンサーに出会ったことは今も脳裏に焼きついています。容姿、脚、精神など、トップバレリーナに必要不可欠な条件を備えたダンサーだった。バレエは過酷なアートで、崩れた形も魅力的な絵画や彫刻などと違い、美しく夢を与えなければならない。加えてアジア人というハードルもある。それらをいとも簡単に超えたのが浅川。僕にとって誇りであり芸術活動の結晶です。全ての芸術のモデルに当てはまってもおかしくない存在だと思う」と絶賛され、浅川が涙ぐむひとコマも。16年間の在籍での忘れられない瞬間を問われ、「たくさんあるのですが、1番は入団して初めて立った『白鳥の湖』初日の拍手。その場に自分がいるというあの感動を忘れることは一生ありません」と答えた浅川。その思い出の『白鳥の湖』で浅川が主役のオデット/オディールを踊るのも、今月末が最後となる。「オデットとオディールは私が大切に踊ってきた役。この舞台を去る時期に踊れることは幸せです。自分の全てを投じるにふさわしい作品とキャラクターなので、できることをお見せして感動を届けたいと思います」。公開リハーサルでは、オデット役の浅川紫織とジークフリート王子役の宮尾俊太郎、そしてロットバルト役の石橋奨也が、第2幕冒頭を披露。王子とオデットの、驚きと戸惑いに満ちた出会いから、次第に心を通わせていくまでが、しっとりと描かれる。中でも浅川の落ち着いた気品あふれる踊りが印象的。指先から足先まで神経の行き届いたその動きは、残された時間を慈しんでいるようにも見えた。Kバレエカンパニーによる『白鳥の湖』は東京・オーチャードホールで3月21日(水・祝) から25日(日)まで上演。チケットは発売中。取材・文:高橋彩子
2018年03月16日3年に一度、世界のトップダンサーたちが東京に集結、2週間にわたって豪華な競演を繰り広げる世界バレエフェスティバルが、今夏、開催される。3月5日に都内ホテルで行われた記者会見で、その詳細が明らかにされた。世界バレエフェスティバル チケット情報記者会見では、フェスティバルを主催する公益財団法人日本舞台芸術振興会(NBS)の高橋典夫専務理事が登壇。1976年に第1回が実現し、その後3年に一度のペースで開催、世界的にも注目されるこのフェスティバルについて、「今回が15回目の開催。世界バレエフェスティバルの生みの親である佐々木忠次が2年前に亡くなり、その没後初の開催でもあります」と話す。2020年、東京五輪での文化イベントを見据えて「これを機会にさらにバレエ界が盛り上がれば」とも。さらに、「今回初めて株式会社コーセーに特別協賛をいただきます。日本経済新聞社に加え、これまでの大半の公演を開催してきた東京文化会館(公益財団法人東京都歴史文化財団)と初めて共催することに」と、同フェスティバルの大きな節目を印象づけ、「これは日本が誇る文化資源のひとつ」との思いを明かした。高橋氏とともに登壇した株式会社コーセーの北川一也執行役員宣伝部長は、「世界中のトップダンサーが集う公演の、クオリティの高さとインパクト、本物の美しさが見える機会をスポンサードしたい」多くのファンが注目するのは出演ダンサーの顔ぶれだが、開幕を飾る全幕特別プロ『ドン・キホーテ』に主演する二組のカップル──ミリアム・ウルド=ブラームとマチアス・エイマンらパリ・オペラ座のふたり、イングリッシュ・ナショナル・バレエのアリーナ・コジョカルとセザール・コラレスをはじめ、ボリショイ・バレエ、ハンブルク・バレエ団、英国ロイヤル・バレエ団ほか、世界の檜舞台で活躍するスター、33名がずらりと並ぶ。会見の後半では、世界各地のダンサーたちから届いたメッセージ動画が紹介され、その多彩さ、豪華さに、会場からため息が漏れた。質疑応答で「出演ダンサーの世代交代が進んだのでは」との声が寄せられると、「世界バレエフェスティバルの使命として、新しいダンサーを紹介していくことも重要」と高橋氏。見ごたえある舞台が期待される。世界バレエフェスティバルは、全幕特別プロ『ドン・キホーテ』が7月27日(金)・28日(土)、Aプロが8月1日(水)から5日(日)、Bプロが8月8日(水)から12日(日)、いずれも東京文化会館にて。チケットは4月4日(水)に先行発売開始。8月15日(水)には1日限りの〈ササキ・ガラ〉も予定されている。取材・文:加藤智子
2018年03月07日ストーリー性のある演劇的な世界観を、ダンスとJ-POPで創り上げるダンスエンタテインメント集団・梅棒。その第8回公演『Shuttered Guy(シャッター ガイ)』が、3月28日(水)・29日(木)のシアター1010での東京プレビュー公演を皮切りに、4都市5会場で上演される。梅棒 8th SHOW『Shuttered Guy』チケット情報本作の舞台は、人情味あふれる商店街。ハートウォーミングなホームコメディを展開するべく、今回も多彩な顔ぶれがそろった。ゲストは、大久保祥太郎、佃井皆美、まちゃあき(エグスプロージョン)、YOU、RYO(Beat Buddy Boi)、泰智(KoRocK/ENcounter ENgravers)、古川小夏(アップアップガールズ(仮))、一色洋平、田中穂先(柿喰う客)、東理紗(ピヨピヨレボリューション/東東東東東)、ひこひこ。個性溢れる面々が、伊藤今人率いる梅棒メンバーと共にエネルギッシュなステージをお届けする!※ひこひこは伊藤今人とダブルキャストでの出演。梅棒 8th SHOW『Shuttered Guy』は、3月28日(水)・29日(木)東京・シアター1010(プレビュー公演)、3月31日(土)・4月1日(日)愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホール、4月6日(金)から8日(日)大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、4月12日(木)・13日(金)福岡・福岡国際会議場メインホール、4月18日(水)から26日(木)東京・世田谷パブリックシアターにて上演。東京公演のチケットは発売中、愛知・大阪公演は2月24日(土)10時より、福岡公演は2月17日(土)10時より一般発売開始。ぴあ関西版WEBでは今作のゲストについてご紹介!こちらもぜひチェックを。
2018年02月23日ハンブルク・バレエ団2018年日本公演が間もなく開幕する。1月29日に都内ホテルで行われた開幕記者会見には、ジョン・ノイマイヤー芸術監督とふたりのプリンシパルが登場、日本公演への思いを明かした。ハンブルク・バレエ団 チケット情報「あまり長くならないように、と言われています(笑)」と冒頭から穏やかな笑顔のノイマイヤー。「初来日(1986年)のずっと前から、私は日本に大きな影響を受け、ここではいつも特別な時間を過ごします。今回は私たちの、もっとも人気の高い作品を持って来ました。偶然にもひとつは女性が主役、もうひとつは男性のバレエです」と、自作について語り出した。公演期間前半に上演される『椿姫』は、世界各地の劇場で上演されている傑作だが、「どの公演も一度きり、ということを大切に演じてもらいたい。ここにいるアレクサンドル・トルーシュは、今回初めてアルマンを踊ります。パートナーはアリーナ・コジョカル。新たな組み合わせで見るということは、再発見ができるということ。彼らのリハーサルを見て、新たに気づいたり、新しい色付けをしたりしています」。もうひとつの『ニジンスキー』は、ノイマイヤーが「20世紀でもっとも重要なアーティストではないか」と信奉する天才ダンサー、振付家のヴァスラフ・ニジンスキーを題材としたバレエだけに、「話し始めたら朝までかかりますよ」とジョークを放つ。ニジンスキーという人物を描くバレエではあるが、「ドキュメンタリーではありません。彼の劇的な人生の断片を取り上げ、彼がいかに深い思いを持つ人間であったかということを表現したいのです」という。この日登壇したプリンシパルのひとり、アレクサンドル・リアブコは、2000年の初演時からニジンスキー役を踊っているが、「毎回、困難をともない、達成できるかどうか不安になる。全く他では体験したことのない特別な作品。皆さんの前で踊ることができて幸せです」と笑顔を見せる。一方のトルーシュは、「『椿姫』を最初に観たのは12~13歳の時。多分彼(リアブコ)が踊った舞台ですが、その時からこの役を踊ることを夢見ていました」と振り返る。『ニジンスキー』についても、「いろんな側面を持つ人物を表現できるのは、アーティストとして幸せなこと」と語った。期間中にはガラ公演『ジョン・ノイマイヤーの世界』も予定されている。ハンブルクの才能豊かなダンサーたちが総動員で紡ぐ、奇跡の舞台との呼び声も高い。公演は2月2日(金)から12日(月・祝)、東京文化会館にて開催。2月17日(土)にはロームシアター京都にて『ジョン・ノイマイヤーの世界』公演も。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2018年01月31日プーマ(PUMA)から、バレエにインスピレーションを得た「オンポイント(En Pointe)」コレクションが登場。展開されるのは、トレーニングやランニングなどワークアウトの時はもちろん、レイヤリングすることで日常のファッションスタイルにも取り入れやすいウェア&スニーカー。「バレエ」から着想した柔軟性「バレエ」からインスピレーションを得たウェアは、動きやすさを考慮したデザイン性が特徴。通気性の良いパワーメッシュ素材を取り入れたタイツやブラトップ、柔軟な動きに対応する長袖Tシャツなどが展開される。幅広のストラップやプリーツ、リブと様々なディテールが取り入れられた。サテン使いのスニーカースニーカーは、「バレエ」の世界観を彷彿させるサテン素材を使用した「フィナム サテン」「フィナム ロウ サテン」、柔らかくしなやかな着用感が特徴の新モデル「ミューズ エコー サテン」、ダンスシューズからインスピレーションを受けたシルエットの「ミューズ サテン」などが展開される。“ミレニアルピンク”カラーウェア&シューズは、いずれもフェミニンなパステルカラーの色味がポイント。ブラトップ、ロングTシャツ、ジャケット、スニーカーは“ミレニアルピンク”カラーで染められており、アクセントとして光るメタリックなカラーが随所に取り入れている。セレーナ・ゴメスが着こなす尚ビジュアルには、女優・シンガー・プロデューサーとして活躍するセレーナ・ゴメスが起用され、今回のオンポイント コレクションをスタイリッシュに着こなした。【詳細】オンポイント コレクション発売日:2018年1月18日(木)取り扱い:プーマストア、プーマ オンラインストア、プーマ取扱店の一部価格帯:・ブラトップ 3,780〜4,320円・ロングTシャツ 7,020円・タイツ5,400〜9,720円・スニーカー 9,720〜12,960円【問い合わせ先】プーマ お客様サービスTEL:0120-125-150
2018年01月22日Perfumeなどの振付家として知られるMIKIKOさんがプロデュースするダンスユニット、ELEVENPLAY。あの“恋ダンス”を踊る彼女たちは、レディー・ガガのオープニングアクトやリオオリンピック閉会式でもパフォーマンスを披露した、世界レベルで活躍するダンサー集団だ。――8人がそれぞれ個性的な分、チームでの調和が難しそうなのですが、ステージで抜群のチーム感を発揮する秘訣は?EMMY:同じ釜の飯を食べる、ではないですが、公演となれば朝から晩まで同じ時間を過ごしてきているので、空気感や、ひとつひとつの動きに対して熱量を共有していて、合わせやすいですね。NON:これはもう感覚だね。KOHMEN:ELEVENPLAYって、バラバラの個性が集まってひとつのアートになる、まるでステンドグラスみたいなチーム!MARU:8人とMIKIKO先生はもう、言葉で言い表せない、家族をも超えた深い関係です。信頼、絆、愛で結ばれています。YU:あと、ELEVENPLAYは、ONとOFFがはっきりしているよね。やるとなったら、最高のものを作るんだってお互い高め合うんだけど、ダンスモードから離れると女子高生みたいにキャッキャしてる(笑)。NON:大人と子供の心を持っていて、混じり合うと素敵な化学反応が起こる、ピュアなチーム。――チームの認知度が高まったのが、星野源さんと『恋』MVで踊った“恋ダンス”。あれほど人気になると思っていましたか?ERISA:まったく。ブームになっていると聞いても全然実感がわきませんでした。NON:あのMVは、リオから帰国してすぐの撮影だったよね。MIKIKOさんはリオからアメリカツアーに向かったので、日本の私たちにスカイプでダンスをつけてくださいました。KAORI:MIKIKOさんから対面で教われなかった初めてのダンスが“恋ダンス”でした。――他に、思い出深い活動は?ERISA:ELEVENPLAY×Rhizomatiks Researchで『ミュージックステーション』に出演したことです。歌手ではない私たちが、あの階段を下りる日がくるなんて!SAYA:私は、‘14年の「モザイク」公演。チームがぐっとひとつになれた感覚があり印象深いです。KOHMEN:ドローンと合わせて踊った初めてのリハーサルで、ドローンが暴走して。「いやー!!」って叫びながら逃げ回った(笑)。KAORI:まだドローンが今みたいに普及していなかった時代。SAYA:そうそう、最初はドローンのことを「ヘリ」って呼んでました(笑)。懐かしい!KAORI:風もすごいから、音楽も聞き取りにくくて…。ERISA:でも、慣れてくると動じなくなる(笑)。KOHMEN:成功したときの感動はひとしおだったね。MARU:カンパニー公演「phosphere」も忘れない。本番の緊張感、一体感、空気の動き…毛穴が開いていく感覚があった。YU:私も「phosphere」の印象が強いな。自分の課題ややりたいことが明確になったので。EMMY:みんなで細かいところまでストイックに詰め込んでいく作業をひとつずつ丁寧にクリアして。それをお客様に発表できたのは、幸せな時間だったよね。――今後どんなチームを目指す?NON:さまざまな活動を通じて、以前よりも互いを深く知れていますし、関係ももっと密になっています。さらに意見を出し合って、よいチームにしていきたいですね。KAORI:私は「phosphere」の再演がしたい!KOHMEN:そうだね、全員そろっての海外公演も!NON:世界も含め、いつかみんなでツアーできたらいいね。SAYA:いつか自分たちでも作品を作ってみたい。ERISA:それと、11月11日を勝手にELEVENPLAYの日と呼んでいるので、ポッキーのCMにも出たいな(笑)。KAORI:私も~♪イレブンプレイ世界的に活躍する演出・振付家MIKIKOが「心技体、そしてセンスの磨かれた素敵なダンサーが生まれますように」と、‘09年に立ち上げたダンスカンパニー。米オーディション番組にも出演。リオオリンピック閉会式に代表される、テクノロジーと融合した前衛的でアーティスティックなパフォーマンスから、日本中で一大ブームを起こした通称“恋ダンス”のような、誰もが踊れるキャッチーなダンスまで、振り幅の広いダンスで楽しませてくれるのがELEVENPLAY。「得意なジャンルがそれぞれ違う8人が集まっているのが、チームの強み。これからも、面白いものなら何でも踊っていきたいです」(NON)MARUダンス歴10 年。周囲からの評価は、しっかり者。「8人で歩く時は先頭きってます(笑)」SAYACMオーディションでMIKIKOさんと出会う。緊張しやすいが、本番の爆発力はピカ一!YUNY留学後、ELEVENPLAYに憧れて、育成クラスのオーディションを経てチーム入り。EMMYオーディションでチームに入り2年。ダンスのウリは「ジャンルレスに楽しく踊ること」。NON「モザイク」出演をきっかけにチーム入り。みんなを見守る「BIG SISTER」的な存在。KAORIMIKIKOさんのレッスンがどうしても受けたくて上京。「言う時は言う末っ子」。KOHMENダンス歴19 年。広島でMIKIKOさんにダンスを習っていたのを機にチームに入り7年目。ERISA高校時代からMIKIKOさんのレッスンを受けていた。グッズのデザインも担当。※『anan』2018年1月3・10日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・Yae-ponヘア&メイク・森ユキオ久保フユミ(共にROI)取材、文・小泉咲子(by anan編集部)
2018年01月02日ロシア国家劇場賞受賞、サンクトペテルブルグ都立最高劇場賞に輝いた注目のバレエ団、ロシア国立サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエが2年ぶりの来日中だ。マリインスキー・バレエのプリンシパルとして第一線で活躍し、惜しまれつつも引退したアンドリアン・ファジェーエフがトップとしてバレエ団を率いる。来日公演は12月22日「くるみ割り人形」より開幕。その直前リハーサルの様子を取材した。【チケット情報はこちら】クリスマスのパーティから物語が始まる「くるみ割り人形」。主人公の女の子クララがドロッセルマイヤーおじさんからくるみ割り人形をプレゼントに貰う。おもちゃの戦争に巻き込まれたり、王子様からお菓子の国へ誘われ、お菓子の精たちと楽しく過ごす「くるみ」の舞台は、さながら絵本から出てきた夢の国のようだ。序曲がはじまると、雪降る夜の町並みが舞台上に照らし出される。その道を様々な人々が通り過ぎてゆく。ある人は忙しそうに、ある人は楽しげに、そのひとりひとりに、それぞれのクリスマスの物語を感じさせる演出だ。ともすれば本編の入り口でしかないとも言える往来のワンシーンだが、監督であるファジェーエフはそれぞれを注意深く見つめ、気になればすぐさま「ストップ!」と声をかけ、自らスタイルを示し、そして舞台は、より生きたものに変化していく。開演直前のリハーサルにもかかわらず、わずか3分程度の序曲のリハーサルに費やした時間は正味15分。このディティールへのこだわりは全編を通して発揮されており、特にコールドバレエひとりひとりへの眼差しや指摘が印象に残った。開場直前ぎりぎりまでのリハーサルでも一切妥協しないその姿勢は、その日の観客の目にも納得のいくものであったに違いない。注目ダンサーはアレクセイ・ポポフ。ワガノワ・バレエ・アカデミーを卒業後、マリインスキー・バレエを経て、2016年のシーズンからファースト・ソリストとしてバイエルン国立バレエの団員となり、世界をまたにかけ活躍している。また同じくワガノワ・バレエの薫陶を受けた長澤美絵も出演。ドネツク国立バレエを経て、2010年にキエフ・クラシック・バレエに入団。2014年には、エストニア・タリン国際バレエコンクールにて賞に輝いた。来日公演は12月22日神奈川・藤沢市民会館大ホールでの「くるみ割り人形」で開幕。クリスマス後からは演目を「白鳥の湖」に変え、昭和女子大学人見記念講堂、オーチャードホール、大宮ソニックシティなどを巡演。1月14日(日)大阪・グランキューブ大阪メインホールまで。チケットは発売中。取材・文:yokano
2017年12月25日世界最高峰のカンパニーとの呼び声高いドイツのハンブルク・バレエ団が、2月に日本公演を行う。バレエ団を率いるのは、現代バレエの巨匠、ジョン・ノイマイヤー。今回上演されるドラマティック・バレエの傑作『椿姫』や、マーラーやバッハの音楽に振付けた大作(ガラ公演『ジョン・ノイマイヤーの世界』でも抜粋を上演)で、日本でも多くの観客の心を捉えてきた振付家だが、さらに注目すべきもう一つの上演作品が、『ニジンスキー』である。「振付家として、私はニジンスキーに感嘆するばかりだ」「初めて一緒に仕事をするカンパニーでは、毎回ニジンスキーのことを思う」というノイマイヤーが、渾身の力と情熱をこめて手がけた意欲作だ。ハンブルク・バレエ団「ニジンスキー」チケット情報『ニジンスキー』は、20世紀初頭にヨーロッパで一斉を風靡したバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)で活躍した天才ダンサー・振付家、ヴァスラフ・ニジンスキーとその作品の世界を舞台化したバレエ(2000年初演)。その幕開けは、1919年のニジンスキー最後の公演の場だ。ここでニジンスキーは、自身の人生の様々な場面、舞台を追体験する。彼の前には、興行主で愛人のディアギレフや妻のロモラ、また『薔薇の精』『牧神の午後』『春の祭典』など、ニジンスキーが演じたバレエの登場人物たちが幻となって現れ、やがて訪れる戦争の悪夢の中、彼は次第に狂気にとらわれてゆく──。米国ウィスコンシン州生まれのノイマイヤーは、小学校6年生の時、近所の図書館でニジンスキーについての書籍と出会い、その魅力に心を奪われたという。「私を惹き付けたのは、舞踊家としてのニジンスキーではなく、人間としての彼の運命だった」ともいうが、『ニジンスキー』で描かれるのは、華々しいスターの肖像というよりもむしろ、栄光と孤独のなかで苦悩する、人間=ニジンスキーの姿なのだ。ニジンスキー関連品の熱心な収集家としても知られるノイマイヤー。資料の散逸や投資の対象にされるのを避ける目的もあるというが、当時の絵画や彫刻、ポスター、様々な文書を手にするたびに、ニジンスキーの新たな面を見つけ、同時代の芸術家たちが彼をどのように見ていたのか、と思いをはせる。「ニジンスキーは時代──または彼に惹かれていた芸術家たちよりも、はるか先を歩んでいた」というノイマイヤー。『ニジンスキー』は、そんな熱烈な信奉者だからこそ描くことができる、心揺さぶるバレエといえるだろう。日本公演を、大いに期待したい。ハンブルク・バレエ団2018年日本公演『ニジンスキー』は2月10日(土)から12日(月・祝)まで東京文化会館にて。チケットは発売中。文:加藤智子
2017年12月12日12月22日(金)神奈川・藤沢市民会館大ホールより、4年ぶりの来日公演を開催するロシア国立サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエ。来日公演のゲストとして、長澤美絵の出演が決定した。【チケット情報はこちら】長澤は埼玉県出身。2005年に世界最高峰のバレエ学校と言われるワガノワ・バレエ・アカデミーを卒業。ドネツク国立バレエを経て、2010年にキエフ・クラシック・バレエに入団。2014年には、エストニア・タリン国際バレエコンクールにて賞に輝いた。現在はキエフ・クラシック・バレエを率いるプリンシパルとして、ウクライナ国内はもちろん、ヨーロッパでも活躍している。来日公演は12月22日(金) 神奈川・藤沢市民会館大ホールから1月14日(日)大阪・グランキューブ大阪メインホールまで。長澤は12月24日(日)・1月8日(月祝)東京・昭和女子大学人見記念講堂、12月27日(水)・28日(木)東京・オーチャードホール、12月30日(土)埼玉・大宮ソニックシティに出演。チケットは発売中。
2017年12月08日プーマ(PUMA)から新作スニーカー「プーマ ミューズ エコー」が登場。「プーマ ミューズ エコー」はマーシャルアーツやバレエのダンスシューズからインスパイアされており、幾何学的なシェイプと、対照的なフェミニンで柔らかな軽量素材を使ったデザインが特徴だ。シュータンが長めのミッドカットスニーカーとなっており、分割されたラバー素材のアウトソールや、かかとに施された未来的なメタリックのアクセントがポイントとなっている。インソールは取り外しが可能で、ミッドソールには軽量のIMEVAを採用。シュータンには、プーマキャットロゴが施された。ビジュアルには、モデル・女優・活動家、そしてプーマのブランドアンバサダーでもあるカーラ・デルヴィーニュが起用されている。【詳細】プーマ ミューズ エコー発売日:2017年12月1日(金)価格:12,960円(税込)取り扱い:プーマストア、プーマオンラインストア、プーマ取扱店の一部【問い合わせ先】プーマ お客様サービスTEL:0120-125-150
2017年12月07日お笑い芸人のゆりやんレトリィバァが3日、「全国小・中学校リズムダンスふれあいコンクール」の関東大会にサプライズ登場し、会場を盛り上げた。全国の小・中学校で必修となったダンスの授業"現代的なリズムダンス"をクラス単位で発表する同コンクール。3日までに行われた地方大会や映像審査を経て、全国大会へ出場する68チームが決定した。関東大会にサプライズゲストとして登場したゆりやんレトリィバァは、水色のレオタード姿で舞台に現れ、「"やること全てが裏目に出る女子"のユニット・非-girlsがリズムダンスコンクールに挑んだら・・・」というネタを、キレッキレのダンスを交えてパフォーマンス。演技を前に緊張していた中学生たちも大爆笑で、会場の雰囲気は一気に和やかになった。そして、司会の石井大裕TBSアナウンサーから「みなさんに、緊張をほぐすアドバイスを」と求められると、生徒たちに向かって渾身の「落ち着いていきや~!」を披露。さらに「緊張している人にも効果があると思います。一緒に言いましょう」と、壇上から降りて生徒たちの元へ。自ら音頭をとって、約500人の中学生たちとともに、「落ち着いていきや~!」の大合唱となった。関東大会では、全国大会に俳優の竹内涼真が登場することも発表。司会の山本里菜TBSアナウンサーが「現在、日曜劇場『陸王』に出演中の竹内涼真さんが・・・」と切り出すと、会場は興奮に包まれた。全国大会は、12月26日・27日に東京・赤坂のマイナビBLITZ赤坂で行われる。なお、TBSでは、全国大会の舞台裏も含め、ひたむきに頑張る生徒たちの姿を、来年1月2日(6:00~7:00)に放送する。
2017年12月04日ロシア国家劇場賞受賞、サンクトペテルブルグ都立最高劇場賞に輝いた注目のバレエ団、ロシア国立サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエが12月22日(金)より4年ぶりの来日公演を開催。ゲストソリストとして、アレクセイ・ポポフの出演が決定した。【チケット情報はこちら】アレクセイ・ポポフは2010年にワガノワバレエアカデミーを卒業。マリインスキー・バレエを経て、2016年のシーズンからファースト・ソリストとしてバイエルン国立バレエの団員となり、世界をまたにかけ活躍している。芸術監督のアンドリアン・ファジェーエフは、今回のアレクセイ・ポポフ起用について、「彼はロシアのバレエ学校のお手本と言えます。彼はワガノワ・バレエ・アカデミーを卒業し、マリインスキー・バレエに入団しました。マリインスキー・バレエで6年間ソリストを務めたのち、今はドイツ・ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場にてプリンシパルとして活躍しています。彼はクラシック・バレエの主要キャラクターを演じる事において感嘆するような才能を見せます。私は今回の彼の特別出演は、日本への来日ツアーをより素晴らしいものにしてくれると確信しています」とコメントを寄せている。来日公演は12月22日(金) 神奈川・藤沢市民会館大ホールから1月14日(日)大阪・グランキューブ大阪メインホールまで。チケットは発売中。
2017年11月16日ローザンヌを拠点とするモーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)が、単独では4年ぶりとなる日本公演を控え、来日した。巨匠ベジャールがオペラの舞台を丸ごとバレエにした『魔笛』(Aプロ)と、かの傑作『ボレロ』ほか3作品によるBプロとを携えてのこのツアーは、振付家ベジャールの没後10年を記念する特別なもので、彼の命日にあたる11月22日と翌23日には、兄弟カンパニー、東京バレエ団との特別合同ガラが予定されている。〈ベジャール・セレブレーション〉と名付けられたこの公演で上演されるのが、ベジャール作品の傑作集、『ベジャール・セレブレーション』だ。昨年12月にローザンヌで初演し、ツアーで上演を重ねたこの作品の、東京バレエ団との特別ヴァージョンの全貌が、14日の公開リハーサルで明らかとなった。モーリス・ベジャール・バレエ団 チケット情報冒頭で踊られるのは、ベジャール1989年の作品『1789…そして私たち』からの抜粋、音楽はベートーヴェンの第一交響曲だ。BBLと東京バレエ団のダンサーたちが渾然一体となって、ベジャールの世界への扉を開け放ち、これに『ヘリオガバル』『わが夢の都ウィーン』『ライト』『ハムレット』『バクチIII』といった傑作からの抜粋が続く。東京バレエ団のパートとして新たに加えられた場面も実に様々。躍動感たっぷりの『アレポ』や『バロッコ・ベルカント』のパ・ド・シス、また、同団のプリンシパル、上野水香と柄本弾がバッハの合唱曲で踊る『我々のファウスト』の美しいパ・ド・ドゥなど、見どころの連続だ。冒頭に対応するように、最後に配されたのが、やはりベートーヴェン。これも『1789…そして私たち』からの抜粋、第九交響曲の第三楽章だ。リハーサル終了後に囲み取材に応じたBBL芸術監督のジル・ロマンは、これについて、「プログラム全体が大きなアンサンブルとなるようなものを作りたかった」と話した。「ベジャールは振付家という枠組みを大きく超えた人物。深い教養があり、日本が大好きで、オペラや演劇、映画なども手がけた。観ればきっと何かを受けとっていただくことができるはず。ぜひ、劇場に観にきてください」とも。「ベジャールは師であると同時に、彼の作品を上演する時、常に一緒にいて、私を守ってくれる存在。だから命日の22日も、彼はもちろん来てくれるでしょう!」モーリス・ベジャール・バレエ団日本公演は11月17日(金)から26日(日)まで、特別合同ガラ〈ベジャール・セレブレーション〉は11月22日(水)・23日(木・祝)、ともに東京文化会館 大ホールにて。チケットは発売中。取材・文加藤智子
2017年11月15日ロシア国家劇場賞受賞、サンクトペテルブルグ都立最高劇場賞に輝いた注目のバレエ団、ロシア国立サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエが12月、4年ぶりに再来日を果たす。劇場の芸術監督を務めるのは、マリインスキーのプリンシパルダンサーとして人気を博したアンドリアン・ファジェーエフだ。ロシア国立サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエ チケット情報かつて、マリインスキー・バレエのプリンシパルとして活躍し、その麗しいスタイルとテクニックで世界を魅了したアンドリアン・ファジェーエフ。華やかな表舞台から惜しまれつつの引退をした彼が、今や歴史あるバレエ劇場のトップとして一団を率いての来日を果たす。若き芸術監督に、公演の見どころをインタビューした。上演するのは2演目。「『白鳥の湖』は世界の芸術において、最も完璧で有名な作品のひとつだと思います。昔からその音楽と振付は世界クラスの傑作とみなされ、ロシアの文化歴史上の優れた成功のひとつであると言えるでしょう。『くるみ割り人形』も同じく、ダンスの世界ではシンボル的な作品です」とファジェーエフ見どころについて「バレエの“言語”は世界共通です。伝統的な2作品に加えたわたしたちの現代的解釈は、価値観の異なるさまざまな人々に、広く受け入れていただき、評価いただきました。観客の皆さまには、有名なデザイナーが手掛けた豪華な衣装・舞台セットや努力を惜しまないダンサーの動きに感心するだけでなく、舞台上のダンサーたちの生命力、そして想像力に満ちた若い力に対し、プティパが生きた時代と同じくらい強烈に共鳴して頂きたいと思います」とアピール。バレエ団のメンバーに求めるのは向上心。「ダンサー一人ひとりが、日常のリハーサル時間以外において常に向上心を持っていること。また一方で、体の曲線美を維持し、ジョギングやジムで磨き上げる努力を惜しまず、また劇場へ観客として通ったりすることで人として成長をすること。鋭い知性と文化に対する興味は一人前のバレエダンサーにとても必要な要素なのです。これらの信条が、我々劇場の基盤を為しています」と言葉に熱を込める。「日本の人々の持つ、シンプルなものの中にある美しさを見抜く感性、そしてその感性をエレガントに表現する能力に畏怖の念を抱いています。世界は、この美しさに対する自然な受容力を持つ日本の観客のみなさまを求めているのだと感じています。だからこそ、私はいつも日本のみなさまにお会いすることをとても楽しみにしています」と日本の観客へメッセージを送った。本場ロシアの芸術をぜひ劇場で楽しみたい。≪公演日程≫12月24日(日)・1月8日(月・祝)昭和女子大学人見記念講堂 (東京都)12月27日(水)・12月28日(木)オーチャードホール (東京都)12月30日(土)大宮ソニックシティ大ホール (埼玉県)ほか全国にて公演
2017年11月07日女の子に人気の習い事のひとつがバレエ。ただ、「発表会にお金がかかりそう」「ママたちの関係が大変そう」というイメージもあるようです。先日、小学校3年生の娘の発表会が終わりましたので、母の会の活動やかかる費用など、バレエの発表会の舞台裏をご紹介いたします。衣装やヘアセット…。お母さん全員が発表会前にやらなければいけないこと今回は、発表会の2週間前に当日身につける衣装(レンタル品)を受け取りました。汚れたり切れたりしないようお母さんたちが着替えを手伝い、まずはサイズの確認。衣装をつけての動きに慣れるよう、普段の練習でも数回衣装でレッスンをします。サイズが小さすぎて着られない場合は交換になりますが、サイズが大きい場合はお母さんがお直しをします。娘は細身なので毎回“ムシ”と呼ばれるホックの受け部分を縫い付けて詰めます不器用な私が苦手なのがヘアセット。ワックスウォーター、水溶性のハードジェル、スタイリングスティック、ハードスプレー、ヘアネット、シニョンネットを駆使して乱れないようシニョンを作ります。娘は髪の量が多いのでつかみ切れず毎回大変。何度かやり直しをして、完成までに10分以上かかってしまうことも…。首を長く、頭を小さく見せるため、バレエのシニョンはなるべく潰します。後頭部に“お団子”ではなく“甘食”が張り付いているイメージが理想なのだそう発表会当日のベースメイクもお母さんの仕事。ドーランを、顔、首、肩、背中、腕〜手の甲に塗り、おしろいをはたきます。普段使っているファンデーションとは色味もテクスチャーもまったく違うドーランの扱いに、初参加のお母さんは苦戦!恐る恐る塗ってはムラになったところにドーランを足し、それがまたムラになってさらにドーランを足し…といつまでも仕上がらないので、ベテランのお母さんがお手伝いに入ります。その後で先生が舞台用のメイクアップをしてくれます。発表会を見に来てくれたおじいちゃん・おばあちゃん、お友達へのお礼やお返しも大切。私は、親戚には後日写真を、お友達にはハンカチや文具程度のミニギフトを渡しました。先生へのお礼の準備や撮影など。母の会の活動って何をするの?明確に「母の会」が組織されているバレエ教室もありますが、娘の教室は、発表会の前だけ長くいる保護者が中心となり連絡を取り合います。〈発表会前の母の会の活動〉・先生にお渡しするお礼の準備(商品券と花束。それぞれ5000円程度を家庭数でワリカン)・当日の持ち物や諸注意も経験者ママが早めに皆さんに連絡する・事前に場当たり稽古(=出演者の立ち位置や出ハケ、照明・音響など裏方の確認を行うもの。音には乗らずに場面ごとに確認をしていく)や、ゲネプロ(=リハーサル、通し稽古。衣装をつけ、本番と同じ条件で実施)がある場合は手伝いをする。具体的には、舞台袖で待機している子どものトイレや水分補給、出ハケのタイミングを教える、音出しなど〈発表会当日の母の会の活動〉・当日に場当たりやゲネプロがある場合は必要に応じてお手伝い・お教室単体の発表会の時は、先生や舞台監督、音響や照明さんなどスタッフのお弁当を買いに行く・代表者数名が撮影可となっている場合は撮影係を決めておき、撮影する・発表会後に先生にお礼を渡す・返却された衣装の汚れやほつれ、枚数などのチェック〈発表会後の母の会の活動〉・代表者が撮影をした場合、画像をクラウドにアップする、DVDにして配布するなどこうした活動を通して母同士も仲良くなりますし、子どもたちの成長を見守る仲間としての絆が強まります。発表会当日のタイムスケジュール発表会当日の流れは、その教室単体の発表会なのか、複数団体で構成される発表会なのかで異なります。今回の娘の発表会は市民会館で行われた複数団体参加のもの。待機時間が長くなりますし、ほかの団体と楽屋が一緒になるので、迷惑にならないよう気を遣いました。〈発表会当日のタイムスケジュール例〉・10時に楽屋集合・衣装に着替えて10時半からゲネプロ・参加全団体そろってのフィナーレの場当たり・12時近くに楽屋に戻り、練習用レオタードに着替えて昼食・12時半からメイク開始。終わり次第静かに待機・13時半頃、体にもドーランを塗り、おしろいをはたき、衣装をつける。以降飲食もトイレも厳禁・14時半から本番今回の発表会にかかった費用区民祭のプログラムへの参加だったので、参加費6000円(娘は1曲プラスフィナーレに出演)、衣装代送料込8940円。撮影も自由にできて写真やDVDの購入も無し。ほかは個人的に、新しいタイツ(800円)、バレエシューズ(1000円)、アンダーパンツ(820円)を購入しました。今回は格安!バレエを習うことを検討しているお母さんは、母親がどの程度お手伝いをするのか、発表会の頻度、発表会はどういう形態で行っているのか、費用はどのくらいか、確認できるとよいですね。独特のルールも多いバレエ。衣装のお直しやシニョンなど、面倒だなと思うこともありますが、場当たりやゲネプロなどは舞台ならではの貴重な経験!スポットライトを浴びて堂々と踊る娘たち、笑顔でステージから降りてくる姿、花束やプレゼントを抱えて嬉しそうな表情を見ていると習わせていてよかった、と思います。<文・写真:フリーランス記者森藤理絵>
2017年10月23日Kバレエカンパニーの新作『クレオパトラ』が開幕。これまで様々な全幕バレエに魅力的な再振付を施してきた熊川哲也が、満を持して、原作のない完全オリジナルの全幕作品創作に挑んだプロダクションだ。10月6日(金)の初日に先立ち、リハーサルの一部が公開された。Kバレエカンパニー「クレオパトラ」チケット情報第1幕第1場冒頭。舞台は紀元前1世紀、エジプトの首都アレクサンドリアの王宮の居間だ。山本雅也演じるプトレマイオス13世は、あどけない少年の風情。3人の官僚が彼の後見人として剣を教えるが、プトレマイオスにはまだ王としての自覚や能力が身についていない様子。そこに、中村祥子扮するプトレマイオスの姉で妻のクレオパトラが侍女たちを従えて現れる。その威厳に圧倒されるプトレマイオス。クレオパトラに太刀打ちできない彼の弱さが、踊りを通して浮き彫りになっていく。力なく去るプトレマイオスを尻目に、クレオパトラたちは、エジプト絵画さながらの横向きのポーズや独特の手つきで、妖しくエキゾティックな踊りを展開――。公開はここまでだったが、この先、クレオパトラとプトレマイオスの権力争い、カエサルやアントニウスとの恋愛などがどう描かれるのか、気になるばかり。デンマークの作曲家カール・ニールセンの劇的な音楽、斬新な空間使いが特長的なダニエル・オストリングの美術、華麗な中に現代的感性も光る前田文子の衣裳など、見どころ聴きどころは多そうだ。その後の囲み会見で熊川は本作創作の理由を「カンパニーを立ち上げて18年。バレエ団のレパートリーを蓄えていくという使命が、古典芸能を担う人間にはあります。バレエには古典と言えるものが、18世紀後半から1900年代頭までに作られた10数作と、オペラや音楽に比べて少ない。バレエを継承し、裾野を広げていく上では、新しいものにチャレンジしなければなりません」と説明。また、今回挑んだ異国情緒あふれる動きについて「エジプトの民族舞踊にもざっと目を通しましたが、バレエとはやはり違うので、それよりも、自分が培ったセンスや先人たちからお教えいただいたマナーなどを集約してひとつのピースにしました」とし、クレオパトラ像に関しては「国家を背負う女王という運命を背負った女性の賢さ、美しさを表現できればと。最終的には人間だから、そこに情や愛が存在しないといけませんが、愛され魅了されるべき女性に仕上がったのではないかと思います」と述べた。「ご覧いただいたのは作品のごく一片ですが、その後、ナイル川を渡る舟に乗ったり、オクタヴィアヌスがアントニウスを追って鬼気迫るバトルフィールドを展開したりと、興奮せざるを得ないシーンが続きます。満足できる作品が仕上がりました。Kバレエカンパニーから世界に発信できるレベルのものを作ることができたことを誇りに思います」と語る熊川の表情には、手応えと興奮が表れていた。熊川哲也 Kバレエカンパニー Autumn Tour 2017「クレオパトラ」は10月6日(金)、東京・オーチャードホールで開幕。取材・文:高橋彩子
2017年10月06日2018年2月、振付家ジョン・ノイマイヤーが芸術監督を務めるハンブルク・バレエ団が日本公演を行う。2016年春、7年ぶりに実現した日本公演は独特の熱気に包まれ、ノイマイヤー作品、またこのカンパニーの根強い人気を印象づけたが、彼らの代表作を携えての今回の来日は、その興奮を再びもたらすものと期待される。ハンブルク・バレエ団 チケット情報上演作品のひとつ、『椿姫』はパリ・オペラ座バレエ団による上演でも知られ、もっとも有名なノイマイヤー作品といってもいいかもしれない。ヴェルディのオペラ『椿姫』と同じく原作はデュマ・フィス。パリの高級娼婦と純粋な青年の悲恋を描いた傑作だが、ノイマイヤー版は全編ショパンの音楽を用い、原作の世界をより細やかに表現、物語バレエの最高傑作と賞賛されている。あらためて、ノイマイヤーのもとで切磋琢磨を続けるダンサーたちの演技で観たい作品だ。もうひとつは、伝説的ダンサー、ヴァスラフ・ニジンスキー(1890~1950年)の半生を描いた『ニジンスキー』。ウクライナに生まれ、ダンサーとして才能を開花、ディアギレフのバレエ・リュスに参加し、舞踊史に輝かしい足跡を残しながら、不遇のなかで生涯を終えた彼の数奇な運命を描いたバレエだ。作中には彼が演じた傑作の役柄が次々と登場、そこに立ち現れる、美しくも切ない天才ダンサーの姿が大きな感動を呼ぶことだろう。ガラ公演〈ジョン・ノイマイヤーの世界〉も見逃せない。前回の日本公演で初演され、その2日目には当日券売り場に長蛇の列ができたという、予想を遥かに超えた反響と感動が思い出される。ノイマイヤーの数々の傑作からの単なる名場面集にとどまらない、その作品世界の多彩な魅力を一夜にして体験できる、圧巻のスペクタクルである。これを踊るカンパニーのダンサーたちも、その実力は世界最高峰と評されるが、そこでの日本人団員の活躍も注目だ。2012年、ローザンヌ国際バレエコンクールで第1位入賞を果たして話題となった菅井円加は、現在このハンブルク・バレエ団でプロとして活躍、今回初めて『椿姫』への出演が決まり、ヒロインの友人プリュダンスという大役を任される。「一番好きな作品で、いつか関わりたいと思っていた」とインタビューに応えた菅井。「『ニジンスキー』にも何度か出演していますが、ラストシーンでのニジンスキーの狂気は、自分も出演していることを忘れてしまうほどの迫力」とダンサーの素晴らしさを強調、「両作品ともぜひ、キャスト違いもご覧になって、それぞれの魅力を味わっていただきたいです」と訴えている。公演は2018年2月2日(金)から2月12日(月・祝)まで、東京文化会館にて。チケットはチケットぴあにて9月29日(金)より先行発売。取材・文:加藤智子
2017年09月27日20周年を迎える新国立劇場に、世界的な評価を得る舞踏カンパニー「山海塾」が登場。11月に開幕する『海の賑わい 陸(オカ)の静寂―めぐり』を前に9月22日、主宰の天児牛大(あまがつうしお)が新国立劇場の舞踊芸術監督・大原永子と共に会見に出席した。山海塾「海の賑わい 陸の静寂-めぐり」チケット情報舞踏を「重力との対話」と捉え、誕生や死をテーマに作品を発表し続けてきた山海塾。設立から42年、ヨーロッパ進出から37年が経つが、新国立劇場登場は今回が初めて。大原芸術監督は以前から山海塾の評価をヨーロッパの現地の人々から耳にしていたそうで「日本人としてとても誇らしかった」と語り、新国立劇場での上演実現への感謝を口にした。今回の『めぐり』はパリ市立劇場、シンガポールのエスプラネイド・シアターズ・オン・ザ・ベイ、北九州芸術劇場との共同制作による作品であり、モチーフは“生きた化石”とも称される深海生物のウミユリ。舞台上にはウミユリを模した美術が置かれる。天児は「ツアーで海外を訪れたとき、自然史博物館に行くのが好きなんです。2億5千万年前に日本の海で繁栄していたウミユリが化石となって、いま我々と向かい合っている。“賑わい”とは生きていることの示唆であり、静寂は死した状態のこと。とてつもない時間を巡っていて、そこに不動のものはなく、常に揺れ動いているというのが私たちのベース。人、感情、希望、絶望を賑わいと静寂で対比させつつ、ひとつの作品として成立させました」と語る。7つの場面で構成され、天児を含む8人の踊り手が出演。音楽は数々の映画やTVの音楽を担当してきた加古隆、パーカッショニストのYAS-KAZ、そして山海塾の同カンパニーの活動初期から音楽制作に携わってきた吉川洋一郎の3人が担当しており、天児は「三者三様。彼らが作った音楽をどの場面で使用するかは私が決定しており、(タイプの)異なる音楽を使いながら作品を成立させています」と語った。40年以上にわたって活動し、世界的にも評価されているが、謎めいたイメージも強く、作品の制作過程などはあまり知られていない山海塾だが、天児は「テーマやタイトルはなく、稽古の最初に“今回はこういう形、方向性のものを作りたく、美術はこんな感じ”というレクチャーをします」、「稽古では基本、質問には答えるけど、質問される前に余計なことは言わない」、「稽古場には音がなく、鏡も使わない。はたから見たら何やってんのかわからない空間でしょうね(笑)」など、知られざる制作現場の一端を明かした。これまで世界46か国を回ってきたが「よくここまで続いたと思います。最初は男ばかり、白塗りの日本人ということで珍しさもあったろうけど、ここまで持続したということは、舞踊の一ジャンルとして、こういうアプローチもあると認められたのではないか」と感慨深げだった。『海の賑わい 陸の静寂―めぐり』は11月25日(土)・26日(日)に東京・新国立劇場 中劇場にて上演。チケットは発売中。取材・文・撮影:黒豆直樹
2017年09月25日こんにちは、島本薫です。男性がチュチュやトウシューズを身につけて躍る、男だけのコメディ・バレエがあるという話、どこかで聞いたことはありませんか?聞いたことはあっても、「観た」ことはない人が多いのではないでしょうか。ううん、それはもったいない。彼らの踊りはキワモノと決めつけるにはあまりに楽しく、意外な美しさがあるものなのですから……!今回は、爆笑しながら元気と感動をもらえるバレエ、トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団の魅力をお届けしましょう。■男だけのコメディ・バレエ「トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団」とは?“誰もが気軽に楽しめるバレエ”を目指し、1974年にニューヨークのオフ・オフ・ブロードウェイで産声を上げたトロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団(通称トロックス)。彼らがつくりあげたのは、世界初の「コメディ・バレエ」でした。舞台に上がるのは男性だけ。入念なメイクで女性に扮し、艶やかなチュチュをまとい、トウシューズを履いてポアント(つま先立ち)で舞う男性バレリーナに、世界が目を見張り、称賛の声を送りました。そこに繰り広げられていたのは、ただの女装バレエにとどまらない、バレエへの愛とリスペクトと遊び心あふれるステージだったからです。踊りをおろそかにすることなく、笑いの要素を取り入れる。女性のつもりで踊るのではなく、男性として、自分らしく女性の役を踊る。観客を楽しませ、自分たちも存分に楽しむ。そんな彼らの評判はすぐに海を越え、国内はもとより国外でのツアーもスタート。1982年には初の日本公演が行われ、追加公演を余儀なくされるほどの大盛況に。それ以来、日本はほぼ毎年ワールドツアーに組み込まれるようになりました。2006年には名誉ある「英国批評家協会ダンス賞」最優秀賞を受賞するなど、実力も折り紙付き。2016年にはトロックスのダンサー、チェイス・ジョンジーが「英国ナショナルダンスアワード最優秀男性ダンサー賞」に輝きました。性別を超えた役で評価を受けたのは、史上初のことです。そんな彼らが、どんなおもしろマジメな舞台を届けているのかといいますと……。■爆笑しながら元気と感動をもらえるバレエステージいっぱいにずらりと並ぶ、白い衣装のバレリーナたち。これから夢の舞台が始まるのかと思いきや、舞台袖から出てきたダンサーが男性役の隣でポーズをとるダンサーに歩み寄り、「ちょいとアンタ、そこはアタシの場所よ!」と、ひと騒動かましてくれるではありませんか。さすがはトロックス、出だしからやってくれます。音楽が鳴り、いざ踊りが始まると、誰もがトウで立つ男性バレリーナの迫力に圧倒されることでしょう(どう考えても2メートル以上はあるのですから……)。なのに、意外なほどの軽やかさとバレエらしさで魅せてくれるかと思うと、わざとドタドタ舞台を踏み鳴らしてみたり、すまし顔で女性役が男性役をリフトしてみたり。舞台の片隅には決めポーズで蹴飛ばされたダンサーがいたり、「何すんのヨ!」と小競り合いが始まったりと、踊りに笑いに全力投球。さあ気を取り直して、と言わんばかりにポーズを取り直すしぐさなど、もう爆笑もの。ただすべてがバレエとしての流れとテクニックの中で鮮やかに表現され、コメディでありながらアートと言うにふさわしいのです。頼りない王子様や、筋肉ムキムキのお姫様。女性顔負けのしなやかさを見せる白鳥の姫君もいれば、美しくも笑いあふれる踊りで観る者を瀕死の状態にいざなう白鳥もいて、バレエってこんなに楽しく素晴らしいものなんだと素直に思えてくるのです。トロックスの2017年オフィシャルサポーター、美川憲一さんは、その魅力をこのように述べています。「バレエはお行儀よく鑑賞するもの、という常識をぶっ壊したのが“トロ”なのよね。でもあそこまで壊しても成り立つのはやっぱり、基礎がちゃんとできているから」「好奇心が強い方が生きていて楽しいわよ。『バレエなんて』じゃなくて、そういうモノを一回見てみようっていう刺激って、生きてく中でとっても大切なことなのよ」隅々までバレエの愛と遊び心とファンサービスのあふれるトロックスの舞台。劇場で、あなたも愛と笑いと感動をもらってみませんか。トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団 2017年日本公演9月9日(土)~10月1日(日)まで、東京・大阪・九州など日本各地で公演オフィシャルサイト:
2017年09月23日