5月頃から、屋外で雨に打たれながら、裸足でバレエを躍る少年の動画がソーシャルメディアでで話題となっている。しなやかな肢体と美しい回転に目を奪われるが、彼の周囲を見ると地面は未舗装で泥だらけ。いびつな塀の傍らには空きビンやバケツが積まれている。彼はナイジェリアの貧困地区にあるバレエ教室「リープ・オブ・ダンス・アカデミー」の生徒、アンソニー・ムメソマ・マドゥくん(11)。同校は独学でバレエを学んだダニエル・アジャラ・オウォセニさんが、貧しい子どもたちにバレエという芸術に触れる機会を持ってもらうため’17年に設立した。レッスンは無料で、運営費はオウォセニさんが貯金を切り崩して賄っているという。学校のInstagramアカウントでは、子どもたちのレッスンの様子を動画や写真で紹介。マドゥくんの動画も、このアカウントから発信されたものだったが、この1本の動画が彼の人生を大きく変えることとなった。Instagramでは31万回以上再生され、世界中からバレエ用品の寄付や支援金の申し出が多数寄せられた。Twitterでは女優のヴィオラ・デイヴィスが彼のダンスを絶賛。そして、米国で最も有名なバレエスクールから奨学金のオファーも舞い込んできたのだ。世界最高レベルのバレエ団アメリカン・バレエ・シアター(ABT)のジャクリーン・ケネディー・オナシス・スクール。芸術監督を務めるシンシア・ハーヴェイは「英国の友達がこのビデオを送ってくれたの。すぐに彼を見つけようと動いたわ」とCincinnati Enquirerに語る。ハーヴェイは、マドゥくんがABTの3週間の集中プログラムに参加できるよう全額奨学金の手配をしたという。また、オウォセニさんも、インストラクションの技術を磨く2週間のトレーニング・カリキュラムへ招待。ハーヴェイは「これほど熱心な子どもには手を差し伸べるべきです。世界が私たちに教えてくれたことがあるのだとすれば、私たちはあらゆる種類の人を鼓舞し、お互いに多くのことを学ぶべきだということです。ダニエルとアンソニーに機会を提供するのは正しいことだと思います」とコメントした。
2020年08月05日新国立劇場がこどものためのバレエ劇場として、オリジナル作品「竜宮」を上演する。新作の世界初演まであとわずか。振付・演出を手がける森山開次がインタビューに答えた。実は、「シンプルな話なのでバレエにはしにくい、と候補から外していた」と、モチーフとなった浦島太郎の物語について語る森山。「が、昔話にはいろんな伝わり方があって面白い。『御伽草子』の浦島太郎は、彼がおじいさんになって終わるのではなく、鶴の神に変化すると書かれている!」という。バレエの副題は、「亀の姫と季(とき)の庭」──。『御伽草子』をもとにしたこのバレエでは、太郎が助けた亀は実はプリンセスで、彼が招かれた竜宮城には、春夏秋冬の美しい四季が堪能できる不思議な季(時)の部屋が登場する。「『御伽草子』に出会って、これは“時の話”だったんだ、とても深い話だったんだと思ったのです。これならばバレエにできると。竜宮は、ある種の桃源郷、異世界の一つの象徴と考えています。そこにある季の部屋というものを表現することで、日本の四季のうつろいの美しさ、素晴らしさをもう一度見つめ直してもらえたら」コンテンポラリー・ダンスの世界で、ダンサー、また振付家として活躍、子ども向けの舞台、映像にも積極的に取り組んできたが、「ちゃんとバレエを創りたい、という思いがあります。バレエのファンの方や子どもたちが観て、バレエっていいなと思ってもらえるよう、バレエの醍醐味をしっかりと伝えたい。バレエには懐の深さ、広さがあります。また、トウシューズならではの表現や、バレエダンサーの持つ身体の軸の強さに、僕は惹かれるのかもしれません」そう話す森山の手には、自作の可愛らしい亀の模型が。美術、衣裳のデザインでもその才能を発揮、おもてなし担当のお茶目なフグ、タンゴを踊るイカの三兄弟など、遊び心満載のキャラクターを生み出した。森山ワールドとも呼ぶべきそのユニークな発想の源は──?「妄想、です(笑)。語呂合わせや駄洒落で遊び、出演者の皆にも楽しんでもらいたいと思っているんです」主演は米沢唯と井澤駿、池田理沙子と奥村康祐、木村優里と渡邊峻郁という3組のカップルだ。「バレエ団のモチベーションは高まっている。新型コロナウイルスのことがあって、自粛生活があって、皆さんの中で時間の感覚に対する意識が変わった部分があるのでは。劇場は玉手箱、時を封じ込めた場所でもある。時とともに、皆の思いも閉じ込めたこの劇場に、足を運んで頂けたら嬉しく思います」公演は7月24日(金・祝)から31日(金)、東京・新国立劇場オペラパレスにて。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2020年07月20日リノ(LENO)は、2020年秋冬の新作バレエシューズを2020年7月末に発売する。リノのバレエシューズは、日本人の足に合うよう木型からオリジナルで製作したこだわりのシューズ。丸みのあるフォルムとパテントレザーの艶やかな質感が、華やかなフェミニンさを演出する。2020年秋冬コレクションではさらに改良を重ね、革やライナーも丁寧に作り込んだ。アッパーには、高度な技術を持つ工場に特注したパテントレザーを採用。きめ細かく、滑らかな手触りのカーフレザーを用いて仕立てた。内側には、柔らかい革に沿うよう伸縮しやすいライナーを組み合わせている。インソール全面にクッションを入れ、アウトソールにはヴィブラムのラバーを配しているため購入後すぐに履けるのも嬉しいポイント。履き口に1周通っているリボンを結びなおせば、フィット感の微調整をすることもできる。また、アッパーに使用しているパテントレザーはケアも簡単。汚れ・水濡れはすぐにふき取ることで、ツヤのあるきれいな佇まいをキープすることができる。【詳細】リノ 新作バレエシューズ発売時期:2020年7月末展開店舗:リノ アトリエ アンド ショップ、リノ アップステアーズ 他価格:28,000円+税カラー:グレージュ、ピンク、グリーンサイズ:36(22-22.5cm) / 37(23-23.5cm) / 38(24-24.5cm) / 39(25-25.5cm) 40(26-26.5cm)
2020年07月06日新国立劇場(所在地:東京都渋谷区)は、4月10日より「巣ごもりシアター」ページを開設し、新国立劇場主催公演の記録映像を劇場サイト上で無料配信するサービスを行っております。そしてこの度、5月1日(金)からの追加配信内容が決定、新国立劇場バレエ団による珠玉のバレエ公演2作品を、皆様のご自宅でご覧いただけます。 5月の第1週(5月1日 15時~5月8日 14時)の配信作品は、情感あふれるドラマチックな振付で知られる英国の巨匠ケネス・マクミランによる「マノン」。本作品は、新国立劇場バレエ団にとって8年ぶりとなる待望の再演として、去る2020年2月に上演されましたが、残り2公演を前に、残念ながら公演中止となりました。バレエ団プリンシパル:米沢唯と、英国ロイヤル・バレエ・プリンシパル:ワディム・ムンタギロフの卓越した技術力はもちろんのこと、今まさにその時代の人物が生きているかのような表現力と役柄への深い解釈で、作品の世界観を眼前に繰り広げ、当日はスタンディングオベーションが湧き上がりました。新国立劇場屈指の名舞台となった本公演を、ご自宅で、配信期間中何度でもご観劇いただけます。5月第2週(5月8日 15時~5月15日 14時)にお届けする作品は、スペインの港町を舞台とし、セルバンテスの名著を題材としたクラシックバレエの名作「ドン・キホーテ」です。今年のゴールデンウィーク中(5月2日~10日)に上演を予定しておりましたが、新型コロナウイルスの影響により上演を断念しました。スカッとするような超絶技巧を披露する見せ場が随所に散りばめられ、そして新国立劇場バレエ団が誇る美しいコール・ド・バレエ(群舞)も存分に堪能できる、目にも楽しい古典バレエの大人気作は、晴れ晴れとした初夏のご観劇にふさわしいプログラム。異国情緒あふれる音楽とカラフルな舞台美術・衣裳も相まって、きっと、おうち時間を過ごす皆様を軽快なお祭り気分へといざなってくれることでしょう。ぜひ 「#巣ごもりシアター」「#nnttathome」のハッシュタグと共にご感想をお寄せください。●「巣ごもりシアター」のご案内ページはこちら:※動画視聴に伴う通信料は、お客様のご負担となります。<配信ラインアップ&スケジュール>◆バレエ『マノン』(2020年2月23日公演)配信日:2020年5月1日 15:00~5月8日 14:00◆バレエ『ドン・キホーテ』(2016年5月5日公演)配信日:2020年5月8日 15:00~5月15日 14:00※5月15日以降も映像配信を予定しております。近日詳細発表いたします。<配信予定公演詳細>◆ バレエ『マノン』(2020年2月23日上演)【音楽】ジュール・マスネ【編曲】マーティン・イェーツ【振付】ケネス・マクミラン【出演】米沢唯、ワディム・ムンタギロフ、木下嘉人、中家正博、木村優里、本島美和、福田圭吾、貝川鐵夫 ほか【指揮】マーティン・イェーツ【管弦楽】東京交響楽団アベ・プレヴォーによって書かれたマノン・レスコーの物語を、英国バレエの巨匠ケネス・マクミランがバレエ化した、ドラマティック・バレエの最高傑作のひとつです。愛ゆえにひたすら破滅へと落ちていくマノンとデ・グリューの美しくかつ壮絶な物語。デ・グリュー役には英国ロイヤル・バレエ プリンシパルのワディム・ムンタギロフを迎え、8年ぶりに上演し、大喝采を博しました。【配信日時】2020年5月1日 15:00~5月8日 14:00◆バレエ『ドン・キホーテ』(2016年5月5日上演)【音楽】レオン・ミンクス【振付】マリウス・プティパ/アレクサンドル・ゴルスキー【改訂振付】アレクセイ・ファジェーチェフ【出演】米沢 唯、井澤 駿、貝川鐵夫、高橋一輝、菅野英男、マイレン・トレウバエフ、長田佳世、本島美和、細田千晶、五月女 遥 ほか【指揮】マーティン・イェーツ【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団セルバンテス著「ドン・キホーテ」のエピソードを原作にした、楽しさと活気に溢れた古典バレエ。闘牛士たちによるスペイン舞踊、風車のエピソード、ドン・キホーテの夢の中で繰り広げられる美しい群舞、そして最終幕の恋人たちによるグラン・パ・ド・ドゥまで、古典バレエの美しさと陽気で楽しい踊りの数々を堪能できる人気演目です。このたび敢え無く5月公演が中止となった本作の、2016年公演の映像をお届けします。【配信日時】2020年5月8日 15:00~15日 14:00~巣ごもりをもっと楽しく!関連動画~新国立劇場のYouTubeチャンネルでは、バレエ鑑賞の予習にぴったりな「3分でわかる!」シリーズや、その他公演の名場面集などを多数ご紹介しております。「巣ごもりシアター」での配信2演目についても、ぜひ“ご鑑賞”前の予習として、関連動画をご活用ください。◆『マノン』◇新国立劇場バレエ団 3分でわかる!『マノン』◆『ドン・キホーテ』◇新国立劇場バレエ団 3分でわかる!『ドン・キホーテ』新国立劇場 「巣ごもりシアター」とは新型コロナウイルス感染症対策に係る政府等の要請及び緊急事態宣言を受け、現在新国立劇場は2月26日の公演を最後に、主催公演を全公演中止しております。お客様を劇場にお迎えできないこの状況下においても、新国立劇場を応援してくださる皆様と常に共にありたいという思いから、“巣ごもりシアター”として名付けたオンラインでのサービスを、まずはオペラ公演3作品の無料配信から、4月10日より開始いたしました。配信初作品のオペラ『魔笛』の再生回数は、配信期間1週間のうちに3万回以上に達し、そして第2作の『トゥーランドット』も4万回弱と、舞台芸術ファンはもとより、「日ごろ劇場に足を運ぶ機会は少ないけれど、ちょっと見てみたい!」という方にも、今だからこそできる「おうちでできる体験イベント」としてご好評をいただいております。また、新国立劇場の演劇作品もご自宅でお楽しみいただくべく、“巣ごもりシアター おうちで戯曲”が4月23日から始動。当劇場のために書き下ろされた戯曲を、2週間限定で劇場ウェブサイトにて公開をしております。演劇の土台であり、稽古場での設計図である戯曲を、自分流に楽しむことができる試みとして、話題となっています。再び安心して新国立劇場に御来場いただける日が訪れるまで、舞台芸術の力を支えに「巣ごもり」をしていただければと願っております。●「巣ごもりシアター」総合案内ページはこちら:●「巣ごもりシアター おうちで戯曲」はこちら:~新国立劇場について~新国立劇場は、 日本唯一の現代舞台芸術のための国立劇場として、オペラ、 バレエ、 ダンス、 演劇の公演の制作・上演や、 芸術家の研修等の事業を行っています。Web: Page: 企業プレスリリース詳細へ本記事に掲載しているプレスリリースは、株式会社PR TIMESから提供を受けた企業等のプレスリリースを原文のまま掲載しています。FASHION HEADLINEが、掲載している製品やサービスを推奨したり、プレスリリースの内容を保証したりするものではございません。掲載内容に関するお問い合わせは、株式会社PR TIMES()まで直接ご連絡ください。
2020年04月28日「可愛いチュチュを着て舞台で踊ってみたい」「レオタードを着てバーにつかまってみたい」――このように、華やかなバレエの世界に憧れる子どもは多いことでしょう。しかし、実際に習い始めると、「なかなかトウシューズをはかせてもらえない」「レッスンが厳しくてついていけない」といった壁にぶつかる子もいるかもしれませんね。35年以上バレエ界の第一線で活躍してきた草刈民代氏は、自身のエッセイ本『バレエ漬け』で、「バレエの舞台は華々しいが、ダンサーの日常は地道なことの積み重ねだ」と述べています。憧れの世界の舞台裏には、さまざまな悩みや苦労があることが伺える言葉ですね。では、もしも子どもから「バレエの練習がつらい」「バレエを辞めたい」と言われたら、親はどのように対応すればいいのでしょうか?親ができる声かけや対処法について説明します。子どもが「バレエを辞めたい」と言ったら、まずはこう声かけをバレエに限らず、習い事には練習がつらい時期や辞めたくなる時期があります。小学館の子育てサイト『HugKum』が、子ども(0~10歳ぐらい)に習い事をさせている保護者115人を対象に調査したところ、46.1%と約半数の子が、一度は「習い事を辞めたい」と言ったことがあるとわかりました。習い事が嫌になる時期というのは、ほぼ2人に1人が通る道。では実際に子どもがバレエなどの習い事を辞めたそうにしたら、親はどうしたらいいのでしょう?『子どもの能力を決める 0歳から9歳までの育て方』の著者で、家庭教育の専門家・田宮由美氏は、子どもにまずは次のような声かけをすると良いといいます。■「なぜ、辞めたいの?」と理由を聞く「どうしてバレエのお教室に行きたくないの?」「なぜ、お稽古がつらいの?」など、まずは子どもがバレエの練習がつらいと訴える理由を聞いてあげましょう。バレエの練習がつらい理由が「通うのに時間がかかり体力が持たない」「先生や友だちと合わない」であれば、レッスンの曜日を変えたり、別の教室を探したりすれば解決する可能性があります。「脚が上がらない」といったテクニック的なことであれば、親からも先生に相談することで解決の糸口が見つかるかもしれません。人間関係の悩みを抱えている場合など、時には子ども側にも歩み寄りが必要なこともあるでしょう。しかし、まずは「そうだったのね」と共感することが大切だと田宮氏は言います。そのうえで、どうすれば改善できるのかを親子で考えていくのが理想的です。■「よく頑張っているね」と子どもの努力を認める「こんなに上達したんだね」「ここまでよく頑張ってきたね」など、子どものこれまでの頑張りを認めてあげましょう。たとえバレエが嫌になってしまっても、親から努力を認めてもらい褒められると、子どものやる気が復活することもあると田宮氏は言います。「アン・オー(手のポジション)が指先まできれいね」といったように、具体的に褒めるとよりよいとのこと。そのためには、親もバレエにこれまで以上の関心を持つことが大切ですね。■「発表会まで頑張ってみようか」と目標を話し合う前向きな声かけをしても、子どものバレエを辞めたい意志が強いこともあります。しかし、「イヤなら辞めればいい」というのが当たり前になると、逃げ癖がつきかねません。そこで田宮氏は、辞める前に目標を設定して、それを達成したら辞めるように話し合うといいと言います。バレエなら、「次の発表会まで頑張ろう」といったような目標を決めることができますね。目標達成の過程でスキルが向上すれば、もっと頑張りたいと考え直すこともあり得ます。特に、トウシューズをまだ履いたことがない子どもなら、初めてトウシューズを履くお許しが出たときこそ心境が変化するチャンス。「辞めたい」といくら強く思っていても、考えが変わる可能性はあるのです。これらの声かけは、バレエの習い事に限らず有効です。子どもに習い事を辞めたい様子が見られたら、ぜひ実践してみてください。「上達できないから辞めたい」子には、レッスン外で親がサポートを「バレエがうまくならない」「練習がつまらない」などの理由で子どもがバレエを辞めたがっている様子なら、親が練習のサポートをしたり、バレエのレッスンが好きになれるように働きかけたりすることで、子どもの気持ちは変わるかもしれません。バレエの上達に必要なのは、お稽古場でのレッスンだけではありません。レッスン以外の時間で培った経験が能力を高めたり、バレエへの情熱を強くしたりする可能性があります。お父さん・お母さんがお子さんと一緒にできる、バレエの練習が好きになる対処法を説明しましょう。■読書で集中力を高めるパリ・オペラ座バレエ学校などでバレエ教授法を学んだ千田裕子氏によると、レッスンの悩みで多いのは「コンビネーション(アンシェヌマン)がなかなか覚えられない」「体が思い通りに動かない」「すぐに反応できない」といったことなのだそう。レッスンを重ねてもこれらの悩みが解決されない場合、集中力が足りない可能性があると千田氏はいいます。レッスンのときは、自分の意思で体をきちんと動かそうとしなければ、なかなかじょうずになりません。レッスンに集中できるかできないかが、あなたの上達に大きく影響するのです。(引用元:千田裕子著(2009),『きれいをつくるバレエ習慣』, 新書館.)※太字は筆者が施した頑張って練習しているつもりでも、うまくなったという実感がなければ、モチベーションが下がるのも無理はありませんよね。モチベーションが下がれば、集中力がさらに落ちて悪循環に陥ることも考えられるでしょう。だからこそ、子どもがバレエの練習に集中できるよう、親がサポートする必要があります。そのために千田氏がすすめる身近な方法は読書です。文字や絵など、本から得た情報は脳を刺激し、考える力を高めます。考える力が高まると、レッスン中も「膝がゆるむ癖があるから、腰をまっすぐ伸ばすように意識しよう」といったように、自分で上達に必要なことを考えられるようになり、同じ失敗を繰り返さないようになります。このように、自分で考え、意識して体を動かすことこそが「集中力」であり、それを高めるには読書が有効だと、千田氏は言っているのです。本を読みながら頭の中で情景を思い浮かべると、想像力がつき、バレエの表現力を高めることにもつながるので、一石二鳥ですね。■五感を鍛え、表現力をつけるバレエに必要な表現力を養うには、日常生活で五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)を鍛えることも大切です。夜空を見上げる、川のせせらぎに耳をすませる……こうしたことでも子どもの五感は鍛えられると千田氏は言います。たとえば、花に触れて花びらの柔らかさを知っていると、『ジゼル』に出てくる花占いの表現に役立ちます。このように、日常の体験がバレエに役立つこともあるので、練習がつらいときは少し足を止めて、五感を刺激する経験をさせてあげるのもよいでしょう。より実践的なことをしたいなら、「マイム(身体や表情による表現)」の練習が有効です。『白鳥の湖』など有名な作品には長いマイムがあり、言葉に頼らないぶん、より高度な表現力が求められます。名門イングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクールでは、友だち同士での「おはよう」のあいさつにもマイムを用いるほど重要視されているそうです。ジャンプや回転と違い自宅でも練習しやすいので、「わたし・あなた」「愛」といった基本的な表現を子どもに見せてもらいましょう。子どもがマイムで何を表現しているのか、どんな感情を込めているのか、お父さん・お母さんが想像してみると、親子で楽しい時間が過ごせそうですね。■バレエの名作を鑑賞し、作品について勉強するバレエ講師の厚木彩氏は、多くの作品を積極的に見て、たくさんの踊りに触れることが大切だといいます。特に、『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』『ドン・キホーテ』『ジゼル』といった有名な作品の見どころを知っておくことは、踊るうえでの必須項目とのこと。たとえば『眠れる森の美女』では、オーロラ姫が4人の求婚者からバラの花を受け取りながら踊るローズ・アダージオなどの見どころがあります。これらの作品をスクールの発表会で見るのもいいですが、プロのダンサーが集まるバレエ団の公演で見てほしいと、前出の千田氏は言います。最高の舞台を見ることで、本当のバレエがどんなものか知ることができ、バレエを見る目が養われるためです。また、緊張感あふれるプロの舞台を見てバレエ鑑賞のマナーが身につくと、会場全体の雰囲気を感じられるようになるとのこと。たとえば、演目によっては幕が下りるまで拍手をせず、余韻を楽しむこともあるのだそう。そのようにしてプロの舞台ならではの雰囲気を全身で味わうことは、バレエの上達に役立つだけでなく、バレエへの憧れの気持ちを再燃させることにもつながるでしょう。***華やかそうに見える裏で、地味な練習や悩みも多いバレエの習い事。しかし、親の声かけや対処法によっては、子どもが改めてバレエの良さに気づき、より練習熱心になる可能性があります。もちろん、無理強いはしないように。子どもの様子を見ながら適切に対処してあげてくださいね。ぜひ、親子でバレエの世界と向き合ってみましょう。文/かのえかな(参考)草刈民代著(2006),『バレエ漬け』, 幻冬舎.HugKum|子どもが「習い事を辞めたい」と言ってきたら・・・続けるべき?辞めるべき?対処法は?ママパパに徹底調査!All About|子どもの習い事は無理にでも続けさせた方がいい?ARUHIマガジン|「習い事やめたい! 」と言われたら!? 親がサポートする時のポイント千田裕子著(2009),『きれいをつくるバレエ習慣』, 新書館.ジェーン・ハケット著, 白川直世訳(2008),『Ballerina―バレエのためのステップ・バイ・ステップ・ガイド』, 文園社.厚木彩監修(2017),『ジュニアのための バレエ上達 パーフェクトレッスン』, メイツ出版.
2020年02月22日バレエは、親が子どもにさせたい習い事のひとつとして根強い人気がありますよね。華やかだというだけでなく、習うと姿勢や身のこなしが美しくなることも、バレエの魅力ではないでしょうか。そんなバレエは何歳から習い始めるのがいいのか、悩むお父さん・お母さんは少なくないはずです。このコラムでは、子どものからだの成長を踏まえた「バレエを習い始めるベストなタイミング」を説明しましょう。バレエスクールに入学できるのは何歳から?子どもがバレエを習うことができる最低年齢は何歳なのか調べてみたところ、多くの幼児向けバレエスクールが3歳以上を対象としているようです。3歳といえば、自分の意志でトイレに行きたいと伝えられるようになる年齢。バレエを習い始めるのは早くても3歳からという見方が一般的だといえます。また、3歳以後何歳までが習い始めに適しているのかも気になるところ。本場パリで研鑽を積んだ講師陣が教える「堀文雄クラシックバレエ・スタジオ」や、創立60年以上の伝統を持つ「渡バレエ学校」をはじめとした複数のバレエスクールは、「本格的にバレエを身につけたいのであれば、小学校低学年(6歳~8歳)までに習い始めるのが理想的だ」としています。つまり、子どもにバレエを習わせるなら3~8歳ごろがベストだと考えられているのです。3歳から、踊りが好きならいつでも始め時です。小学生低学年までに始められると良いでしょう。(引用元:堀文雄クラシックバレエ・スタジオ|よくあるご質問)バレエスクールの多くは、子どもの年齢に沿った複数のクラスを用意しています。前出の2つのスクールでは未就学児か小学生かでクラスが分かれます(小学生以上は、経験や学年によりステップアップ)。ほかには、未就学児をさらに細分化してクラス分けしているスクールも。たとえば、英国ロイヤル・バレエ団元プリンシパルの熊川哲也氏が率いるKバレエスクールの子ども向けバレエ教室では、3~4歳が対象の「Toddler Class」、5~6歳が対象の「Kids Class」、7~10歳が対象の「Junior Class」と3つのクラスが用意されています。バレエを「低学年までに」習い始めるべき理由とは?次に、多くのバレエスクールが「バレエは小学校低学年までに習い始めるのが理想的だ」とする理由を掘り下げてみましょう。これには、子どもが運動能力の基礎を築くうえで重要な「ゴールデンエイジ」と「プレ・ゴールデンエイジ」が大きく関係しています。■ 一生に一度しかこない「ゴールデンエイジ」ゴールデンエイジとは、9~12歳ごろにおとずれる、運動能力が著しく発達する時期のことです。その根拠は、アメリカの医学者・人類学者のスキャモンが発表した「スキャモンの発育発達曲線」(下図)によって説明することができます。(画像引用元:国立スポーツ科学センター|女性アスリート指導者のためのハンドブック 1 発育・発達について)スキャモンの発育発達曲線では、人間の器官を一般型、神経型、生殖型、リンパ型の4つに分類し、それぞれが100%に成熟するまでの発達の仕方が曲線で示されています。このうち「神経型」の青い線を見ると、10歳ごろまでに大人と同等のレベルまで発達することがわかります。神経型は脳や神経の働きのことであり、スポーツの面ではすばやい身のこなしや反射神経といった重要な能力に関与しています。この能力が10歳ごろまでに完成することから、9~12歳ぐらいのゴールデンエイジは運動能力の基礎を築くうえで重要な時期だと言われているのです。ちなみに、ゴールデンエイジは一生に一度しかやってきません。「神経が急激に発達するこの時期に運動することで、スポーツがうまくなる」という、まさに「黄金期」なのです。■ 年中~低学年にあたりにやってくる「プレ・ゴールデンエイジ」このゴールデンエイジの前段階が「プレ・ゴールデンエイジ」です。リオ五輪で陸上日本代表のコーチを務めた堀籠佳宏氏によると、プレ・ゴールデンエイジは骨も筋肉も発達途上な時期。この年齢のうちに競技を問わず幅広い運動経験をすることが、のちの運動能力の基礎になるのだそう。ゴールデンエイジを最大限充実させるには、プレ・ゴールデンエイジからの運動経験が重要なのです。そんなプレ・ゴールデンエイジがやってくるのは、5~8歳ごろ。年中~低学年ごろにあたる時期です。運動能力を高める一生に一度のチャンスを最大限に活かすためにも、プレ・ゴールデンエイジにしっかり運動経験を積むべきである……。これが、3歳~低学年ごろまでにバレエを習うべきとされる理由だというわけです。8歳を過ぎてからバレエを習い始めたら、遅すぎるの?では、子どもが8歳を過ぎてからバレエに興味を持ち始め、習いたいと思っても、それでは遅すぎるのでしょうか?答えは「ノー」です。老舗バレエ用品メーカーのチャコットによると、8歳以降から始める子どもたちは、“憧れの○○さんのように踊りたい”など目的意識がはっきりしているため、バレエを習う意義は十分にあるのだそう。本人にしっかりと意思があれば、遅めのスタートでも問題ないのです。現に、8歳以降からバレエを習い始めた方でも活躍している人はいます。たとえば、熊川哲也氏の習い始めは10歳。英国の2つのロイヤル・バレエ団でプリンシパルを22年間にわたって務めた吉田都氏も、9歳から習い始めたそうです。また、43歳で引退するまでバレエの第一線で活躍し続けた草刈民代氏も8歳からバレエを習い始めたので、比較的遅いスタートだったと言えます。子どもが「バレエを習いたい」という高い意欲を持っていたら、年齢に縛られず、ぜひ挑戦させてあげてください。***華やかな舞台が、大人も子どもも惹きつけるバレエ。頑張ってレッスンを積み重ね、初めてトウシューズを履けるようになったら感動もひとしおでしょう。3歳を過ぎたら、レッスンを始めるかどうか、ぜひご検討ください。文/かのえかな(参考)Kバレエスクール|熊川哲也のキッズ・バレエ Ballet Garden堀文雄クラシックバレエ・スタジオ|よくあるご質問渡バレエ学校|よくあるご質問松山バレエ団|松山バレエ団に関するよくある質問チャコット株式会社 公式Webサイト ニュース|これからバレエをはじめたいキッズ&ママ・パパへ株式会社 明治|成長期に必要なトレーニング~「敏しょう性」~Hanako ママ web|あらゆるスポーツの基礎を作る、プレ・ゴールデンエイジって?国立スポーツ科学センター|女性アスリート指導者のためのハンドブック 1 発育・発達についてDews (デュース)|引退を発表したバレリーナ吉田都の魅力をバレエ経験者が解説!STAGE(ステージ)|〈草刈民代〉キャリア35年のバレエを完全引退。女優道をまい進する彼女が見出した試行錯誤の人生とは…
2020年02月20日2月22日(土)から、新国立劇場バレエ団がケネス・マクミラン振付による物語バレエの傑作、『マノン』を8年ぶりに上演する。アベ・プレヴォーが18世紀に書いた小説『マノン・レスコー』を原作に、マクミラン率いる英国ロイヤル・バレエ団が1974年に初演した作品。オペラや映画、絵画の題材としてたびたび取り上げられてきた“運命の女”マノンの壮絶な物語を、マスネの音楽と見事に融合した、マクミランの独創的な振付がドラマティックに描き出す。パリ近郊の宿屋で出会って恋に落ち、駆け落ちをした美しい少女マノンと若い神学生のデ・グリュー。しばし共に暮らすふたりだったが、デ・グリューの留守中に富豪のムッシューGMとマノンの兄レスコーが現れ、大金を餌にマノンを説得、彼女を愛人として連れ去ってしまう。ムッシューGMのパーティーで再会し、逃げ出すマノンとデ・グリュー。だがムッシューGMに見つかったマノンは、売春婦としてアメリカに送られてしまう……。マノンとデ・グリューを演じるのは、米沢唯&ワディム・ムンタギロフ(22、23日)、小野絢子&福岡雄大(26日、1日)、米沢唯&井澤駿(29日)の3組。主役ふたりによる“寝室のパ・ド・ドゥ”や“沼地のパ・ド・ドゥ”は、ガラ公演で踊られる機会も多いバレエ史上屈指の名シーンだが、物語バレエのパ・ド・ドゥはやはり全幕で観てこそ。この機会に、愛と破滅の物語にどっぷりと浸かりたい。文:町田麻子
2020年02月20日昨年創立20周年を迎えたKバレエ カンパニーの21年目の幕開けを飾る公演、『白鳥の湖』が1月29日(水)から2月2日(日)まで東京・Bukamuraのオーチャードホールで上演される。このクラシックバレエの代名詞の、熊川哲也演出・再振付版の初演は2003年。英国を代表する舞台美術家ヨランダ・ソナベンドが手がけた美しい舞台装置や、熊川による巧みなストーリーテリングが好評を博し、初演以来たびたび上演されてきたプロダクションだ。毎回大きな話題になるのはやはり、白鳥オデットと黒鳥オディールという、相反するキャラクターを演じ分ける主演ダンサー。今回も、Kバレエ カンパニーならではの豪華な競演が実現する。まずは、今作に主演するのは5年ぶりとなる、世界最高峰の舞姫・中村祥子。そして、熊川をして「天才」と言わしめる若きプリンシパル・矢内千夏。さらには、2018年の公演で急きょ代役を務めて高い評価を得た小林美奈に、今回が初役となる成田紗弥。彼女たちがそれぞれのパートナー、遅沢佑介、高橋裕哉、堀内將平、山本雅也とともに織りなす、ドラマティックな『白鳥の湖』の世界に期待したい。文:町田麻子
2020年01月28日英国ロイヤル・バレエ団が誇る不朽の名作、ケネス・マクミラン振付のバレエ「ROMEO AND JULIET(原題)」が、映画『ロミオとジュリエット』として2020年3月6日(金)に日本公開される。20世紀バレエの最高傑作『ロミオとジュリエット』がスクリーンへケネス・マクミラン振付の『ロミオとジュリエット』は、イギリスの劇作家シェイクスピアによる『ロミオとジュリエット』をベースとした作品。官能的かつ感情的な作品を得意とするケネス・マクミランは、シェイクスピアの戯曲とは異なり、悲劇の物語における2人の心理的側面を強調することで、リアリティや登場人物たちの感情を存分に表現するバレエ作品を作り上げた。1965年、マクミランの『ロミオとジュリエット』は、コヴェント・ガーデンで初演され、実に40分間も拍手が鳴りやまず、43回ものカーテンコールが行われるという大成功を収めた。ロイヤル・バレエにおいて上演された回数は400回以上。20世紀バレエの最高傑作と言っても過言ではない。16世紀ヴェローナの街を再現初演から50年以上の時を経て、2020年、短い生を情熱的に駆け抜けたロミオとジュリエットの恋の物語は、名曲プロコフィエフの音楽に乗せた現代的な演出と、劇場用映画ならではのカメラワークによって、これまでになくドラマティックに表現される。映画『ロミオとジュリエット』は、16世紀のヴェローナの街を再現したオールロケで撮影された。ストーリー物語の舞台はイタリア・ヴェローナの街。そこでは、敵対し争いを繰り広げる2つの名家、モンターギュ家とキャピュレット家があった。モンターギュ家の1人息子ロミオは、親友ベンヴォーリオ、マキューシオと、キャピュレット家の仮面舞踏会に忍び込む。そこで出会ったキャピュレット家の1人娘ジュリエット。運命に導かれるように2人は惹かれ合った――。英国ロイヤル・バレエ団を代表するダンサーたちが集結キャストには、主役から脇役に至るまで英国ロイヤル・バレエ団を代表するダンサーたちが集結。映画『キャッツ』で白猫ヴィクトリア役を演じたプリンシパル・ダンサー、フランチェスカ・ヘイワード、そして期待の若手ファースト・ソリストのウィリアム・ブレイスウェルが、運命に翻弄された恋人たちを演じる。また、敵役のティボルト役は、マシュー・ボーン版の『白鳥の湖』で男性の白鳥として主演を務め、今やバレエ界で最も熱い視線を浴びるプリンシパル、マシュー・ボールに決定。さらに本作では、原作の登場人物の実年齢に近い、若いダンサーたちが主要なキャストとして選ばれており、演技と共にバレエの超絶技巧も披露する。作品詳細『ロミオとジュリエット』公開時期:2020年3月6日(金) TOHOシネマズシャンテ 他 全国ロードショー監督:マイケル・ナン撮影監督:ウィリアム・トレヴィット振付:ケネス・マクミラン音楽:セルゲイ・プロコフィエフ美術:ニコラス・ジョージディアスキャスト:フランチェスカ・ヘイワード、ウィリアム・ブレイスウェル、マシュー・ボール、マルセリ-ノ・サンベ、ジェームズ・ヘイ、トーマス・ムック、クリストファー・サウンダース、クリスティン・マクナリ-、ベネット・ガートサイド、金子扶生 ほか
2019年12月30日東京バレエ団が、長年上演を重ねてきた『くるみ割り人形』を刷新し、新演出で上演する。初日を2週間後に控えた11月末、リハーサルが公開された。【チケット情報はこちら】チャイコフスキーの音楽による『くるみ割り人形』は、クリスマスの風物詩として高い人気を誇るバレエ。この日は、本作の改定演出・振付を手がけた斎藤友佳理芸術監督の陣頭指揮で、クリスマスの夜、主人公マーシャが夢の世界を旅する第2幕の稽古が繰り広げられた。その後行われた記者懇親会で、「東京バレエ団の従来のヴァージョンを、自分がダンサーとして踊っていた時、“もっとこうだったら”と感じていたことを思い出しながら、アレンジしてみました。でも実際に作業をしてみると、ゼロから新しく、まったく違う『くるみ割り人形』を創ったほうがもっと簡単だっただろうと、つくづく感じているんです」と笑う斎藤友佳理芸術監督。新しい『くるみ』に着手するにあたり、「ここでまったく新しい何かを誕生させなければ意味がない」と、毎日、自宅の大きなクリスマスツリーを眺めて考えていたという斎藤。そんなとき、家族にすすめられて、ふと、ツリーに頭を入れて、中の空間を覗いて見た。「こんな世界があったんだ!」とその光景に感激した彼女は、「すべての物事はクリスマスツリーの中で起きていて、マーシャたちは、ツリーのてっぺんにあるお菓子の国を目指す、という発想にたどり着いたんです」という。この日のリハーサルでマーシャ役を踊った川島麻実子は、「皆とコミュニケーションをとりながら創っていますが、これを踊りきることができたら、自分にとって大きな糧になるのではないかと思います。最初、マーシャは7歳という設定ですが、王子と出会って、精神的にも少しずつ成長し、最後のグラン・パ・ド・ドゥではさらに成熟を見せる──。私たちも、そう踊っていきたい」。くるみ割り王子役の柄本弾も、「これまで彼女と組んで踊った舞台の中で、いちばんいいものをお届けしたい。自分たちの気持ち、内面を、お客さんに伝えるためにはどうしたらいいかと、たまに言い合いをしながら創っている。いい舞台が出来上がると確信しています」と思いを明かした。ふたりが登場するのは公演初日。新たにロシアで製作した装置・衣裳も、この日お披露目となる。魅力的な主人公たちはじめ、表現力豊かなカンパニーが一丸となって取り組む新制作。見応えたっぷりの舞台となるだろう。公演は12月13日(金)から15日(日)は東京文化会館、22日(日)はロームシアター京都、24日(火)がよこすか芸術劇場。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2019年12月05日世界屈指の名門、英国ロイヤル・バレエ団の一員として数々の主要な役柄を踊り、2018年10月、惜しまれながら同団を引退した小林ひかるが、来春上演のガラ公演〈輝く英国ロイヤルバレエのスター達〉で初めてプロデュースに挑戦する。【チケット情報はこちら】現役を退き、「生活のリズムががらりと変わりました!」と、インタビューにこたえる小林。「現役時代からオンラインの大学でスポーツサイエンスを学び、指導者として活動する準備を進めてもいました。同時に、日本のダンサーたちの活躍の場をもっと広げたいという思いから、より多くの方々にバレエを楽しんでもらえる公演を実現したいと考えていたんです。プロジェクトは4年先まで考えているけれど、これはそのスタートとなる公演なんです」ローレン・カスバートソン、ヤスミン・ナグディ、高田茜、平野亮一、ワディム・ムンタギロフら、ロイヤルのスターたちが次々と登場する豪華さに加え、誰もがバレエに親しめるようにと独自の工夫を散りばめる。「バレエは言葉なしに伝えることができる芸術だけれど、様々な作品の抜粋が次々と上演されるガラ公演は、初めての方にとってわかりにくいことも多いでしょう?この公演では、各上演作品の上演前に短い解説の映像をお見せします。語るのはダンサー自身。話すのが得意ではない人もいて、収録は大変ですが(笑)」プログラムの組み方も独創的だ。「ダイナミックさが感じられるもの、演劇的なもの、神秘的な物語と、テーマの異なる3つのプログラムを、1公演につき2プログラムずつ上演します。バレエにはいろんな要素があるということをお伝えしたくて!」小林の夫君、ロイヤルの人気プリンシパルのフェデリコ・ボネッリも登場、「めったに抜粋上演されない、マクミランの『レクイエム』から、男性のソロを踊ります。またメリッサ・ハミルトンは、ロイヤルのレパートリーにない、ベジャールの『ルナ』を踊るんですよ」。『ルナ』は、100年にひとりとうたわれた天才ダンサー、シルヴィ・ギエムが踊ったことで知られる傑作だが、「最近自覚したのですが、こうした作品の上演許可を取るのってすごく大変なんですね!」と、尻込みすることなく、日々挑戦を続けている。12月にBBCで放映される『ロミオとジュリエット』で主役を演じるウィリアム・ブレイスウェル、今シーズン、ファースト・ソリストに昇進し、活躍の幅を広げているアクリ瑠嘉など、将来が楽しみなダンサーも登場、「ダンサーたちそれぞれの、奥深い部分まで見ていただけるはず。ぜひ注目してください」公演は2020年1月31日(金)、2月1日(土)、昭和女子大学人見記念講堂。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2019年11月22日プロジェクションマッピングを使用したバレエ「くるみ割り人形」が、2019年12月21日(土)、22日(日)に新宿文化センターにて開催される。プロジェクションマッピングで“名作バレエ”をカラフルにこれまで100年以上もの間、世界中で上演され続けてきた古典バレエの代名詞「くるみ割り人形」。埼玉で活動するNBAバレエ団による「くるみ割り人形」は、バレエとプロジェクションマッピングが融合したカラフルな演出で、大人から子供まで楽しめる作品となっている。バレエ作品は通常、シーンが移り変わる場面で装置の入れ替えが行われる。それにより、どうしても物語の雰囲気が途切れてしまうのだが、本作では装置転換時に、色鮮やかで存在感のあるプロジェクションマッピングを投影。作品全体に華やかさが増し、より没入感のあるバレエを楽しむことができる。オリジナル演出の「葦笛の踊り」もまた、原作にアレンジを加えたユーモアあふれる演出も。原作にある「葦笛(あしぶえ)の踊り」の場面では、3匹のねずみが、魔法によって人間の姿になり登場し、オリジナルのストーリーが展開されていくという。誰もが知る名作とは一味違う“カラフル”なバレエで、素敵なクリスマスを過ごしてみては。【詳細】NBAバレエ団「くるみ割り人形」公演日:2019年12月21日(土)18:00(開場17:30)、12月22日(日)15:00(開場14:30)公演場所:新宿文化センター 大ホール住所:東京都新宿区新宿6丁目14−1チケット価格:S席10,000円、A席8,000円、B席5,000円/親子ペアS席15,000円/シニアS席9,000円※親子ペア席は大人1名+中学生以下の子供1名、各回50セット限定。※シニアS席は60歳以上。身分証の提示を求める場合あり。※3歳未満は入場不可。チケット取り扱い場所:NBAバレエ団(月~金 9:00~17:00)、チケットぴあ、イープラス【問い合わせ先】NBAバレエ団TEL:04-2924-7000
2019年11月17日新国立劇場バレエ団がケネス・マクミラン振付『ロメオとジュリエット』を上演する。シェイクスピアの悲劇のバレエ化で、1965年の初演以来、世界中で愛されている名作だ。新国立劇場では2001年以来レパートリーに加わり、今回で5演め。押しも押されもせぬ人気演目となっている。主演3キャストのうち木村優里・井澤駿組の、舞台上での衣裳付きリハーサルに潜入した。【チケット情報はこちら】ジュリエットの木村は初役、ロメオの井澤も前回(2016年)は怪我で降板したため、共に観客には初お目見えのフレッシュなコンビとなるふたり。スラリとした容姿が実に舞台映えする。見学した3幕は、ロメオとジュリエットが初めて一夜を過ごしたあとから始まる。ロメオはその前の2幕でジュリエットの従兄ティボルトを殺害してヴェローナの町を追放となり、ジュリエットと離れなければならない。指揮者が振るタクトに合わせ、オーケストラではなくピアノがプロコフィエフの音楽を奏でるという、リハーサルならではの光景の中で展開するのは、愛と嘆きがない交ぜになった切ないパ・ド・ドゥだ。去ろうとするロメオのマントを脱がせ、別れを惜しむ木村ジュリエット。そのジュリエットを切なげに抱きしめ、抱き上げる井澤ロメオ。マクミランの振付は、演劇のように自然かつドラマティックで、ジュリエットの踊りにも両手で手を覆って嘆くなどの仕草が組み込まれるのだが、そうした動きと共に木村の悲しげな息遣いが聞こえてきて、真に迫る。別れの時が来てロメオが去ると、入れ替わりにジュリエットの両親、乳母、そして、婚約者パリスが入ってくる。意に沿わない結婚に抵抗し、懇願するジュリエットだが、両親も乳母も取りつく島がない。そのことを悟ったジュリエットがベッドの上で身じろぎせず何秒間も座り続ける場面があるのだが、彼女が覚悟を決め、結果的に悲劇へと向かう前のこの姿には、心打たれずにはいられない。教会へ出向き、ロレンス神父から仮死状態になる薬を渡されたジュリエットが自室に戻ると、再び両親やパリスが現れる。ここでパリスと踊るジュリエットは、うつろな、まるで魂の入っていない人形のよう。さらに必見なのは、薬を相手に彼女が繰り広げる、怯えや恐怖、決意の表現。木村の瑞々しい表現力が光る。こうしてドラマは、ジュリエットが死んだと思い込んだロメオの自殺、そのロメオを見たジュリエットの慟哭、そして自害まで一気に駆け抜けていく。愛し合いながらすれ違い、それでも互いを想いながら果てる恋人たちの姿を、悲しく美しく描き上げたマクミランの傑作の開幕は間もなくだ。取材・文:高橋彩子
2019年10月17日東京バレエ団が、世界的に活躍する振付家、勅使川原三郎に委嘱した『雲のなごり』を世界初演する。約2週間後に初日を控え、勅使川原によるリハーサルが公開された。この作品には、東京バレエ団から5人のダンサーたちが出演、演出助手で共演もする佐東利穂子とともに、勅使川原との創作に取り組んでいる。リハーサルの冒頭、「いま私たちは、音楽に対しての理解を、誤差のないように、ともに同じ身体言語で捉えようと稽古しています」と語った勅使川原。音楽は、武満徹の『地平線のドーリア』(1966年)と『ノスタルジア-アンドレイ・タルコフスキーの追憶に-』(1987年)、本番ではオーケストラの生演奏が実現する。その独特のサウンドがスタジオに響くと、ダンサーたちはたちまち身体を反応させる。2016年の勅使川原演出のオペラ『魔笛』に出演し、彼の世界は経験済みというダンサーもいるが、皆一様に手探りの状態でのスタート。そんな中にも時折、目を見張るほど美しい瞬間が立ち現れる。創作のプロセスは順調に進んでいるようだ。【チケット情報はこちら】リハーサル後の記者懇親会で、「このような機会をいただき、とても嬉しい。悩むことなく武満さんの音楽でいきたいと思った。『地平線のドーリア』には、独特の、直観的な、身体的な感じを受けていた」と話す勅使川原。藤原定家の歌「夕暮れはいずれの雲のなごりとてはなたちばなに風の吹くらむ」に着想し、「はじまりもおわりもないことがありうるのではないか」と、創作にのぞむ。佐東も、「武満さんの音楽を初めて聴いた瞬間、身体が衝撃を受けたことを思い出します。あらためてこの音楽を捉えなおし、向き合いたい」という。同席した東京バレエ団の斎藤友佳理芸術監督は、「東京バレエ団での新作の初演は、ノイマイヤー振付『時節の色』以来19年ぶり。創立55年でようやく日本人振付家の方に振付をお願いできることになった」と感無量の様子。ダンサーたちも、「どれだけ新しい世界に自分が入ることができるか、挑戦です」(沖香菜子)、「苦戦と模索の日々だが、作品ができる場にいられることは、ダンサーにとっていい経験」(柄本弾)、「稽古場で勅使川原さんが言われる言葉を素直に受け取り、自然と作品になっていくことを目指したい」(秋元康臣)と意欲的。勅使川原も「私が上から色を塗るのではなく、皆の中から何かを引き出すことがこの作品の第一の目的」と、彼らの可能性に賭ける。同時上演は、バランシン振付『セレナーデ』とベジャール振付『春の祭典』。勅使川原の新作とともに、趣の異なる現代の傑作がずらりと並ぶ。公演は10月26日(土)、27日(日)、東京文化会館にて。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2019年10月15日熊川哲也率いるKバレエカンパニー『マダム・バタフライ』が開幕。プッチーニのオペラに熊川独自の目線を加えて送る新作だ。初日のもようをレポートしよう。【チケット情報はこちら】舞台上には、月岡芳年や喜多川歌麿の美人画を思わせる洋装と和装の女性が二重写しになった、オリジナルの幕。実際、和洋の対比は、この作品の大きな特徴となっている。プロローグで、目隠しをした少女の傍らでひとりの武士が短刀で自害する。この少女こそ幼き日のバタフライ。蝶々夫人の父が帝から短刀を下賜されて切腹して娘に短刀を遺し、その短刀で蝶々夫人が自害するというオペラのエピソードを発展させた場面だ。続く1幕1場の舞台は、アメリカ海軍士官学校。卒業を控えた水兵の卵達が、若々しく喜びに満ちた踊りを見せる。教官のピンカートン(堀内將平)が颯爽と登場。敬礼も織り交ぜたダンスが小気味良い。やがて、ピンカートンの恋人のケイト(小林美奈)、さらに色とりどりのドレスに身を包んだ女性達も現れ、男女の踊りの輪が広がっていく。だがピンカートンには長崎行きの辞令が下る。1幕2場は、来日したピンカートンが仲間と遊郭を訪れる場面。小部屋に入った女性達が買い手を待っている。女性達をきびきびととりまとめるスズキ(荒井祐子)。やがて花魁道中が始まった。優美に扇をひらめかせる夜の蝶達の中心にいる花魁(中村祥子)は、憂いを帯びた圧倒的な美しさだ。と、そこにバタフライ(矢内千夏)が飛び出してくる。さくらさくらのメロディで天真爛漫に踊るバタフライに、すっかり魅了されるピンカートン。道化的な斡旋人ゴロー(石橋奨也)の仲立ちで二人の”結婚”が決まり、その場は祝祭モードに。ここまでが、オペラにはない、いわば熊川が創った前日譚だ。2幕以降はオペラをベースに、クライマックスまで、息を呑むような美しく哀しい人間ドラマが展開する。バタフライとピンカートンの結婚式。矢内のバタフライからは、これまで信じてきた宗教を変える戸惑いと、アメリカ人の妻としての誠を捧げようと心を決めるいじらしさが手に取るように伝わってくる。幼馴染のヤマドリ(小林雅也)も祝福するが、バタフライの叔父ボンゾウ(遅沢佑介)はピンカートンに刀を向ける。すると、バタフライがその前に立ちはだかり、さらにあの小刀がボンゾウを止めるのだった。その後のバタフライをいたわるピンカートンとの甘やかなパ・ド・ドゥは感動的。しかしそれは束の間の愛に過ぎず、ピンカートンは帰国。洋装もすっかりさまになったバタフライは、愛の結晶である一子を育てながらその帰りを待つが、彼女を待ち受けるのは悲しい運命だったーー。バタフライが凄絶な覚悟を決めるラストシーンでの、能さながらの舞は必見。なお、この日のレッドカーペットには、三田佳子、コシノ・ジュンコ、斉藤由貴、トリンドル玲奈、デヴィ・スカルノ、瀧川鯉斗も登場。『マダム・バタフライ』世界初演という特別な日を彩った。10月10日(木)~10月14日(月・祝)まで東京文化会館大ホールにて公演。チケット発売中。取材・文:高橋彩子
2019年10月04日つい先日『カルミナ・ブラーナ』という大作を世に送り出したばかりの熊川哲也が、早くも次なる新作を発表する。プッチーニのオペラ『蝶々夫人』を全幕バレエ化する『マダム・バタフライ』だ。『カルミナ・ブラーナ』がBunkamura開業30周年記念公演なら、こちらはKバレエ カンパニーの20周年記念公演。本日9月27日に東京・オーチャードホールで幕を開けたあと、10月10日(木)からは東京文化会館 大ホールでも公演を行う。過去には『カルメン』でもオペラのバレエ化に挑んだ熊川。その時はオペラの物語に忠実に沿う形だったが、今回は肉付けを施すと言う。開国まもない長崎で、遊女見習いのバタフライと米兵ピンカートンが出会い、つかの間の結婚生活を送る……という骨子はそのままに、ピンカートンのアメリカ時代や、彼がバタフライを見初めた過程などを追加。アメリカのシーンではドヴォルザークの音楽も使うなど、演出・振付・台本をひとりでこなす、熊川ならではの手法で悲恋物語を描き出す。舞台美術を手がけるのは、オペラやミュージカルでも多くの実績を持つダニエル・オストリング。西洋で生まれた日本が舞台のオペラを、日本人振付家が西洋人デザイナーとともに、西洋の踊りであるバレエで表現する本作。和と洋がどのように融合するのかにも注目だ。文:町田麻子
2019年09月27日熊川哲也率いるKバレエカンパニーが、新作『マダム・バタフライ』を初演する。原作は、ジョン・ルーサー・ロングの小説に基づくプッチーニのオペラ。長崎の元芸者バタフライ(蝶々さん)がアメリカ人海兵ピンカートンの現地妻となって一子を設けるが、アメリカに帰国し本妻ケイトを伴って再び現れたピンカートンに子供を渡し、自害するという物語だ。この題材を熊川は独自のバレエとして生まれ変わらせる。公演を前に、リハーサルのもようが公開された。【チケット情報はこちら】初めに報道陣に対し、熊川が作品への思いを説明。「『マダム・バタフライ』は、米兵と日本女性とのわずか1か月の出来事を描いたピエール・ロティの小説『お菊さん』に、ルーサー・ロングがロマンを加え、美しいストーリーに仕立てたものだと言われていますが、僕は長崎へ行き、これはフィクションではなくノンフィクションだと考えるようになりました。当時の芸者の女性が笑顔も作らずアメリカ人と写っている写真を見た時、“悲しい、ではなく、信念をもって生き抜いたんだと思わないといけないんだな”“日本女性は素晴らしい”と思ったのです」そしてまず公開されたのは、バタフライ(矢内千夏)とピンカートン(堀内將平)が初夜を迎えるパ・ド・ドゥ。直前には、バタフライの改宗に怒った伯父ボンゾウが乗り込んできて、結婚式を台無しにしたところだ。哀しみや不安を湛えて正座するバタフライを、ピンカートンはいたわるように後ろからそっと抱きしめる。その優しい求愛に、バタフライの表情も徐々にほぐれていく。ピンカートンにリフトされ、ひらひらと手を羽ばたかせるバタフライ。やがて愛の喜びの中、バタフライはピンカートンに肩を抱かれ、奥へと消えていく。15歳のバタフライの可憐さと心の繊細な移ろいを、余すところなく踊る矢内。堀内演じるピンカートンの紳士ぶりも印象的だ。続いて披露されたのは、花魁道中。熊川は、ピンカートンとバタフライの出会いの場として遊郭の場面を作った。色とりどりの扇を立体的にひらめかせる女性達。その中央に立つのが、山田蘭演じる花魁だ。笑顔を見せない彼女の表情は憂いを帯び、冒頭で熊川が語った写真を思い起こさせる。女性達の艶やかな色香にすっかり当てられてしまった様子のピンカートン。ダメ押しのように、花魁は彼に流し目をするのだった。日本的な所作を学ぶため、日本舞踊や歌舞伎の映像を参考にしたという矢内はパ・ド・ドゥについて「心の中では色々な感情が渦巻いているのですが、感情をぐっとこらえることで伝えられるものもあるのではないかと思って演じています」。プッチーニの音楽を聴いて今回、余計な振りは要らないのではないかと感じたという熊川は「愛国心とはなかなか言いづらい時代ですが、この作品を観て、同じ日本人として、心を豊かにする清い水のような感覚を味わってほしいと思います」と語った。公演は、9月27日(金)~29日(日)までBunkamuraオーチャードホールにて、10月10日(木)~14日(月・祝)まで東京文化会館大ホールにて上演。チケット発売中。取材・文:高橋彩子
2019年09月19日9月に初来日する、ヨーロッパで今最も注目を集めるバレエカンパニー、「バレエ・アム・ライン」。芸術監督を務めるマーティン・シュレップァー氏に、『バレエ・アム・ライン』、また公演する『白鳥の湖』の魅力について聞いた。【チケット情報はこちら】2009年より同バレエ団の芸術監督を務めるシュレップァー氏。すでに名のあるバレエ団ではあったが、氏の改革以来、大きく飛躍してきた。氏が芸術監督となってから変わったことは「アーティスティックな状況の変化」と語る。「新しく5つのスタジオがある”バレエハウス”を作ったこと、そしてカンパニーの名前が変わりました。美徳の部分を変えたと言えるのではないでしょうか。純粋なダンスに目を向けたというのは、決してストーリー性があるバレエをしないとか、嫌いとかではなく、アーティスティックな観点からの変革を続けてきたことで、我々のカンパニーに対する外からの評判や印象が変わったのではないでしょうか」また『白鳥の湖』は日本でも良く知られる古典だが、今作は2018年の同バレエ団の新作。氏が制作する中で一番のインスピレーションとなったのは、小澤征爾のチャイコフスキーだという。「私個人として大型の古典的な作品を取り扱うことを長くテーマにしていたのですが、その準備に3、4年は必要だと思っていました。『白鳥の湖』と『眠れる森の美女』で迷っていたとき、小澤征爾のチャイコフスキー原典版の録音を聞き、倒れてしまうぐらいの衝撃を受け、それが最後の決め手になりました」と話す。また優雅な踊りをイメージするバレエとは違い、同バレエ団の『白鳥の湖』はスピーディな動きも特徴だ。「私のレッスンというのはとても独特ですが、常識外れではない。音楽的なダイナミックさに合わせてすばやく激しく動くことを求めています。私のカンパニーのダンサーは、体格も違うし年齢も国籍も多種多様。日本人では加藤優子さんという素晴らしいダンサーがいて、彼女は47歳ですが偉大なアーティストです。私の作品は身体への要求は高いと思いますが、振付はいつもハーモニー(調和)なものではなく、私自身ヨーロッパ人なのでレジスタント(抵抗性)も好きですし、舞台上でのフリクション(衝突)を大事に思います。舞台上ではハーモニーたっぷりな作品よりドラマがあるほうが面白いものになりますね」公演は9月20日(金)・21日(土)、東京・Bunkamura オーチャードホールにて、9月28日(土)兵庫・兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールにて。
2019年09月04日ドイツのバレエ団“バレエ・アム・ライン”が、昨年初演した芸術監督マーティン・シュレップァー振付の話題作『白鳥の湖』を引っさげて初来日する。この有名作が1877年に世界初演された際の台本および音楽の構成に立ち返りつつ、物語よりも人間の心理に焦点を当てて送る、現代的、独創的な作品だ。9月の公演を前に、カンパニー所属の日本人ダンサー、中ノ目知章の取材会が行われた。【チケット情報はこちら】「この『白鳥の湖』の見どころは、音楽の美しさが前面に出ていて、その音とダンスが合っていること、そしてキャラクターそれぞれの個性が出ていることだと思います」と中ノ目は言う。「マーティンが重視したのは、クラシカルな美だけでなく、陰と陽両方の美しさ。この作品ではオデットの継母が悪役として登場し、僕はその継母の側近役を初演から踊っているのですが、演じるにあたっては、悪く見せるのではなく、自分の中に存在する悪い部分をエネルギーとして出すよう努めました」2015年に入団し、現在27歳。シュレップァー監督下で着実に成長してきた。「芸術監督が直々にレッスンを指導することは珍しいと思うのですが、マーティンは週1回ほど見てくれるので、皆、気合が入りますね。彼のレッスンは、ただのウォーミングアップではなく、常に自分の肉体の限界まで行き、そこからさらに高めていくことを求められる。僕は“せっかく良い脚を持っているんだから、もっときちんと使って欲しい”と、毎回のように彼から骨盤の引き上げ方、付け根からの伸ばし方を指導してもらってきました。脚が伸ばせるようになるとしっかり立てるし、上半身もより使えます。マーティン自身、フィギュアスケートの経験があり、ダンスの訓練だけをしてきた人より筋肉が強く素晴らしい踊り手で、ダンサーにもそれを求めるので大変ですが、彼とリハーサルする時は彼より上手に踊るよう心がけています(笑)」せっかくの日本公演だけに「やはり王子を踊りたかった」との思いも口にした中ノ目。「シュレップァー版の王子は、強さだけでなく弱さや、心の変化といったものが、従来版以上に描かれていて、とても人間味があるんです」。とはいえ、2020年よりマニュエル・ルグリの後任としてウィーン国立バレエ団の芸術監督に就任するシュレップァーに誘われ、中ノ目もウィーンへの移籍が決まっているのは、その実力が評価され、期待されている証だ。「マーティンに『良いダンサーだから』と評価してもらえたことは、僕の力になっています。彼はウィーンのバレエ団をヨーロッパ一、世界一のカンパニーにすると言っていて、それはきっとバレエ・アム・ラインでも彼が目指していたこと。なので僕は、彼のもとで世界一のダンサーになるのが目標です」まずは、シュレップァーと中ノ目のバレエ・アム・ラインでの集大成と呼べそうな日本公演、見逃せそうにない。公演は9月20日(金)・21日(土)、東京・Bunkamura オーチャードホールにて、9月28日(土)兵庫・兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールにて。取材・文:高橋彩子
2019年08月22日ヨーロッパで今最も注目の高いバレエカンパニー、「バレエ・アム・ライン」による初来日公演が、今年9月20日(金)・21日(土)に東京、9月28日(土)には兵庫にて開催される。【チケット情報はこちら】その演目はバレエを見たことがない人でも知っている有名な演目《白鳥の湖》だ。マニュエル・ルグリの後任として2020年シーズンよりウィーン国立バレエの芸術監督就任が決まっている鬼才マーティン・シュレップァーが世界初演時の原典譜と台本を用いてチャイコフスキーが理想とする《白鳥の湖》を新演出。ファンタジーよりリアリティを追求した物語性豊かな作品は、見慣れた≪白鳥≫のイメージをガラっと変える。日本公演のアンバサダーに就任したのは、元宝塚歌劇団花組男役トップスターで、現在は女優として活躍する真飛聖。真飛は公演の見どころについて、「セットがシンプルで、衣装もチュチュや白タイツは登場しない。人間がシンプルな姿で表現することで、観る者の想像力を掻き立てる演出になっている」と語る。また、ドイツ・デュッセルドルフを訪れ現地でバレエ・アム・ラインのレッスンを見学した真飛。「バレエダンサーは華奢なイメージだけど、バレエ・アム・ラインのダンサーたちは裸足で踊ったり、アクロバティックな振付が多いので、筋肉がすごい!女性ダンサーも肉体がバレリーナというよりアスリートという感じで、バレリーナであんなに筋肉質なダンサーは初めて見ました」とダンサーたちの肉体美を絶賛。自身も小さな頃からバレエをやっていたというが、新しい世界観での《白鳥の湖》に驚きを感じたと言い、「ちょっと敷居が高いなと思う人でも、彼らのスタイリッシュで力強いパフォーマンスを観たら衝撃を受け、その肉体表現にさらに興味が湧いて、もっとバレエを観たいと思ってもらえると思う。これまでバレエを観たことがなくても、気軽に劇場に来ていただけたら」とメッセージを送った。公演は9月20日(金)・21日(土)、東京・Bunkamura オーチャードホールにて、9月28日(土)兵庫・兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールにて。またアンバサダーの真飛がドイツ・デュッセルドルフを訪れ、同公演を紹介する特別番組「恋するバレエ~真飛聖魅惑のドイツ旅~」が、8月4日(日)朝5時15分より関西テレビ放送にて、8月25日(日)15時30分よりBS日テレにて放送される。チケットはいずれも発売中。
2019年08月02日熊川哲也が英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルとして活躍後、Kバレエ カンパニーを設立したのは1999年のこと。古典作品を独自の視点で演出した作品群のほか、稀有なダンサーである熊川の審美眼によって創り出される意欲作も、Kバレエの魅力だ。2014年にはオペラ原作の『カルメン』、2017年には台本や音楽などすべての構成を担当した『クレオパトラ』を世界初演。毎日芸術賞特別賞を受賞するなど、高い評価を得ている。そして今年、カンパニー創立20周年を迎えた熊川が次に挑戦するのは、オペラ『蝶々夫人』の全幕バレエ化だ。都内で行われた制作発表に足を運んだ。【チケット情報はこちら】物語は明治時代、開国間もない頃の日本で展開する。長崎の武家に生まれたバタフライ〔蝶々〕(矢内千夏、中村祥子、成田紗弥のトリプルキャスト)は、家が没落したことで、今では遊女見習いとして遊郭にいた。その頃、海軍士官としてアメリカから赴任してきたピンカートン(宮尾俊太郎、山本雅也、堀内將平のトリプルキャスト)は、たまたま訪れた遊郭でバタフライと出会う。可憐な一輪の花を思わせるバタフライに惹かれ、ピンカートンは港を見下ろす邸宅に彼女を住まわせることにする。ピンカートンに一生を捧げるものと信じて、嫁入り道具や父の形見の短刀を携えやってきたバタフライだったが……。会見では熊川と矢内、中村、成田、そしてピンカートン役のほか本作では振付補佐も務める宮尾が登壇。 和と洋が融合する新たなバレエの舞台を、今まさに制作中という熊川は、「自分自身に“必ず成功する!”と言い聞かせているところ」と笑わせながらも、「非常に悩みましたね」とクリエイティブの苦労を明かす。「我々ダンサーは“アウト”(身体や脚を常に開くバレエの基本)にするという西洋の伝統を受け継いできたわけで、対照的な日本の“イン”の動きを同時にするのは、やはり難しい。なので、日本的な要素はスピリットなものに込めようと思っています」と熊川は語る。その“イン”の象徴ともいえるバタフライ役の矢内は、昨年プリンシパルに昇格したばかり。「日本人だからこそ感じ取れる心情はあると思うので、そこを大切に演じたいです」と真剣な面持ちだ。一方、同じバタフライ役でも、ベルリン国立バレエ団やハンガリー国立バレエ団でプリンシパルの経験を持ち、スケールの大きさが魅力の中村。「自分と一致する部分があまりないので大変ですね」と笑いつつ、熊川の振付には「いつも感銘を受けています」と新たな挑戦を楽しんでいる様子だ。また注目のホープ、成田は「国籍や身分の違いも超える愛を、ステップや音楽に乗せて演じられたら」と初々しく語った。「バタフライが物語でどう見えるかを考え、客席からブーイングが起きるほどのピンカートンにできれば」と話す宮尾ともども、意気込みは充分。Kバレエならではの『マダム・バタフライ』の誕生を、今から楽しみに待ちたい。9月27日(金)から29日(日)までオーチャードホール、10月10日(木)から14日(月・祝)まで東京文化会館大ホールにて上演。取材・文/佐藤さくら
2019年08月01日現代のバレエ界において“レジェンド”という言葉がもっとも相応しいダンサー、アレッサンドラ・フェリとロベルト・ボッレ。彼らが9人のゲストたちと展開する〈フェリ、ボッレ&フレンズ〉。その開幕を前に、ふたりに公演の見どころを聞いた。【チケット情報はこちら】ふたりは今回、Aプロで上演されるアシュトン振付『マルグリットとアルマン』で共演。オペラ「椿姫」と同じ、デュマ・フィスの小説を原作とした35分ほどの作品だ。「私の大好きなバレエなの。これより先に、ジョン・ノイマイヤーが振付けた『椿姫』でもマルグリットを踊っているけれど、おかげでアシュトンのマルグリットでも、そのキャラクターの陰影を心の底から理解して演じることができているわ」と話すフェリ。ボッレは、彼女が演じる高級娼婦マルグリットに恋する純粋な青年、アルマンを踊る。「非常に密度の濃いバレエです。この作品を核に、いくつもの宝石をちりばめるようにしてプログラムを組みました」と話す。その美しい容姿から、イタリアの貴公子と呼ばれてきた彼だが、長く芸術監督を務める〈ボッレ&フレンズ〉の初の日本公演となる今回、実に対照的なふたつのプログラムを組んできた。「いっぽうのBプロは、(ジョン・ノイマイヤーが芸術監督を務める)ハンブルク・バレエ団のダンサーたちも参加して、敬愛するジョンにオマージュを捧げるプログラムに。僕が踊る『オルフェウス』は彼が僕に振付けてくれた作品だし、アレクサンドル・リアブコとは、ジョンが振付家ベジャールの70歳の誕生日に捧げた『作品100~モーリスのために』を踊ります」(ボッレ)。フェリも、「今回は私たちが80歳を迎えたジョンへのお祝いと、感謝の気持ちを込めたいわ。私も『バーンスタイン組曲』でハンブルクの彼らと共演し、また、私にとって極めて特別な作品、『フラトレス』を踊ります」。イタリアの伝説的女優、エレオノーラ・ドゥーゼを題材とし、フェリのために創作されたバレエ『ドゥーゼ』、その第2幕に配された場面だ。「瞑想的で、スピリチュアルな作品です。それは死後の世界であり、すべてがゆるやかに進む、まるで禅の庭のような美しさです」(フェリ)『ロミオとジュリエット』や『マノン』などのドラマティックな役柄で一世を風靡したフェリ。44歳で1度引退するも50歳で見事に復帰、多くの人々を魅了し続ける彼女の、まさに新境地だ。ボッレも、「Aプロ、Bプロと全く違う世界をお見せすることになるから、両プログラムとも観ていただかなきゃ、損ですよ!」と笑顔を見せた。公演は7月31日(水)~8月4日(日)、東京・文京シビックホールにて。チケットは発売中。取材・文;加藤智子
2019年07月26日他の追随を許さぬエレガンスで世界のバレエシーンの最高峰であり続けるパリ・オペラ座バレエ団より、エトワール(最高位ダンサー)のドロテ・ジルベールやマチュー・ガニオら、トップダンサー5名が来日して日本初演の2作を披露した『ル・グラン・ガラ』から1年半。新たに3名のオペラ座ダンサーが加わるなど、さらにパワーアップした『ル・グラン・ガラ2019』が、7月23日(火)に文京シビックホール 大ホールで開幕する。まず上演されるAプロは、昨年にはなかったクラシック作品を中心としたガラ公演。ヌレエフ版の『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『ライモンダ』に加え、フォーサイスからローラン・プティ、マクミラン、バランシン、プレルジョカージュまでの名作が並ぶ、バレエ初心者でも楽しめること間違いなしのバラエティ豊かなラインナップだ。そしてBプロは、昨年の2作が好評を博した振付家、ジョルジオ・マンチーニが出演ダンサー8名とともに目下創作中の『マリア・カラスへのオマージュ』と、バランシンの『ジュエルズ』より“エメラルド”と“ダイヤモンド”。世界初演の新作と、すでに定評ある作品を続けて観ることができる、こちらも魅力的なプログラムとなっている。日本にいながらにして、世界最高峰のバレエ団の“今”を心ゆくまで堪能できる公演となりそうだ。文:町田麻子
2019年07月23日ロシア・バレエ界の巨匠振付家ボリス・エイフマン率いるエイフマン・バレエが21年ぶりに来日。東京公演を控えた7月17日、在日ロシア大使館にて記者会見が行われ、エイフマンをはじめ、ダンサーのリュボーフィ・アンドレーエワ、オレグ・ガブィシェフ、リリア・リシュクが出席した。【チケット情報はこちら】この日、日本に到着したばかりだというエイフマンは「成田からここに来るまで、車窓を眺めながら昔のことを思い出していました」と感慨深げ。1990年代初頭、祖国が困難に見舞われる中、日本からの招聘に応じ来日を果たしたが「日本での公演は、私たちの選んだ道が間違っていない、正しい道を進んでいるという自信を授かった大切なツアーとなりました」と振り返る。そして、最後の来日公演から20年もの時を経て、再び日本での公演を迎えるがエイフマンは「日本に“戻ってきた”のは私エイフマンだけであり、バレエ団はみなさんがまだ知らない、新たなエイフマン・バレエです」と過去とは切り離された新たなバレエ団であることを強調。「私たちが世界中で受け入れられるその秘密は、肉体を言葉として、人間の心理を表現することができるからです」と語り、“古典”と“モダン”という言葉で比較されがちなエイフマン・バレエのスタイルについても「感じてほしいのは私たちの芸術。モダンでも古典でもなく、すべてを含んだ新しい、私たちのスタイルです」と唯一無二のオリジナリティへの強烈な自負をのぞかせた。今回、トルストイの傑作小説をチャイコフスキーの音楽に乗せて描く『アンナ・カレーニナ』と“考える人”で知られる彫刻家ロダンと彼が愛した女たちの物語『ロダン ~魂を捧げた幻想』が上演される。既に滋賀、静岡での公演が行われたが、ロダンを演じるガブィシェフは「ロダンを踊りながら、聴衆が集中し、ロダンの苦悩を共に受け止めてくれているのを感じました」と嬉しそうに語る。既に8年にわたりこの演目に向き合ってきたが「日本で踊るロダンは、日本人似のロダンになる気がしています(笑)」と語っていた。今回、初来日となるアンドレーエワは、ロダンの弟子であり恋人でもあったカミーユを演じるが、静岡での公演での日本の観客の反応に「温かく受け入れ、理解していただけたことに安堵を覚えました」と笑顔を見せる。改めて、ダンサーとしてエイフマン作品に参加する醍醐味を尋ねると、「新たな演目、役柄に出会うたびにワクワクし、役柄を通して自分さえも気づかなかった自分を発見しています」と力強く語った。そして、ロダンの内縁の妻・ローズを演じるリシュクは作品について「ありふれた伝記ではなく愛憎劇です。いまの時代、CGで何でも作ることができますが、私たちは肉体で素晴らしい彫刻を作ることができ、それは人々の心を動かすのではないかと思います」と語った。東京公演は7月18日(木)~21日(日)まで東京文化会館にて開催。取材・文・撮影:黒豆直樹
2019年07月18日今年7月、21年ぶりの来日公演が行われるエイフマン・バレエ。その公演を控えた6月2日、上演作品の『アンナ・カレーニナ』『ロダン~魂を捧げた幻想』について、文学、美術の専門家を講師に招いた「エイフマン・バレエ来日記念講演会」が開催された。【チケット情報はこちら】『アンナ・カレーニナ』についての講師は、東京外国語大学教授でロシア文学研究者の沼野恭子。まず小説に登場する3組の家庭の関係性の解説から始まり、冒頭の有名な一文「幸福な家庭はどれもみな似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」を引用。小説では「幸福と不幸」「都会と田舎」「生と死」など対比のコントラストが効いていることを紹介した。また機械文明の象徴として「鉄道」が物語の伏線となっている点など、小説を読み解くヒントを提示し「当時のロシア社会がリアリスティックに、端整な文体で描かれている。読書の快楽を味わうことができる名著」とその魅力を語る。さらに小説とバレエでは描かれ方が違うことに触れ「小説がどのように“アダプテーション”(原作を映画や舞台に脚色、翻案すること)されているかを観るのがもっとも楽しい。バレエという身体言語で文学をどのように表現しているのかも見どころ」と締めくくった。続いて、彫刻家オーギュスト・ロダンの創作魂に迫る『ロダン~魂を捧げた幻想』にちなみ、ロダン・コレクションで知られる静岡県立美術館の上席学芸員、南美幸が登壇。ロダンが一躍有名になった作品「青銅時代」について、そのリアルさが物議を醸したことや、代表作「地獄の門」「カレーの市民」の制作過程について、写真を交えながら解説した。またバレエでも描かれている、妻ローズと助手で恋人のカミーユとの三角関係に言及し、カミーユがロダンとローズを揶揄して描いたデッサンや、3人の関係を表現した彫刻「分別盛り」など、愛憎うごめく作品も紹介。晩年のロダンがニジンスキーの『牧神の午後』を賞賛し、彼をモデルにした彫刻を作っているという話もバレエファンにとって興味深い内容だった。最後にサンクトペテルブルクで『ロダン』を鑑賞し、バレエ団の稽古も見学した舞踊評論家の桜井多佳子が登壇。長身の美しいダンサーたち(ダンサーの採用基準は男性が184cm、女性は173cm以上)がアクロバティックな動きを繰り広げる興奮と、音楽の効果的な使われ方の面白さについて臨場感たっぷりに語った。文学、美術講座としても知識欲を刺激する贅沢な内容の2時間で、バレエファンはもちろん、文学、アート好きにとっても楽しめる公演になることを確信する講演会だった。公演は7月13日(土)に滋賀・滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール、7月15日(月)に静岡・グランシップ(静岡)中ホール・大地、7月18日(木)~21日(日)まで東京・東京文化会館にて行われる。取材・文:郡司真紀
2019年06月12日バレエ、カッターシューズの新作が発売2019年5月31日、株式会社チヨダよりオリジナルブランド「cloverleaf(クローバーリーフ)」の新作が3タイプ発売される。定番デザインのフラットバレーシューズである品番CL-1001は、ブラック、ブラック/エナメル、レッド/エナメル、シルバー、ブルー/パイソン、ピンク/パイソンの6色展開。サイズは22.0~25.0cm(ブルー/パイソン、ピンク/パイソンは23.0~24.0cm)となっており、本体価格は3490円。ヒールの高さが3cm、美しく足を演出するバレーシューズである品番CL-1002は、ブラック、ブラック/エナメル、レッド/エナメル、ベージュ/シルバー、グレー/シルバーの5色展開。サイズは22.0~25.0cmとなっており、本体価格は3490円。かかと部分にパットが備わった、フィット感が心地よいカッターシューズの品番CL-1003は、ブラック、ブラック/パイソン、ゴールド/パイソン、シルバー、サックス/スエード、ピンク/スエードの6色展開。サイズは22.0~25.0cm(サックス/スエード、ピンク/スエードは23.0~24.0cm)となっており、本体価格は2890円。全国のシュープラザ、東京靴流通センター、靴チヨダ、CHIYODA HAKI-GOKOCHI、クローバーリーフ、公式オンラインショップにて販売される。嬉しい機能が備わった万能アイテム今回発売される品番CL-1001、品番CL-1002、品番CL-1003には抗菌防臭加工クッションインソールが備わっており、衛生面が気になる女性には嬉しい仕様となっている。また、バレエシューズタイプの品番CL-1001、品番CL-1002には足にフィットするよう、つま先部分のリボンに工夫が施されている。キャッチコピーである「ふらっとふんわりちょうどいい」を再現したバレエ、カッターシューズは、コーディネートに合わせて何足もそろえたくなる万能アイテムだ。(画像はプレスリリースより)【参考】※株式会社チヨダのニュースリリース
2019年05月30日熊川哲也のKバレエがおくる『シンデレラ』は2012年に初演された。誰もが知るシンデレラの物語を、美しさと上質なユーモア溢れる演出で見せる今舞台が5月24日(金)から上演される。その公開リハーサルでは、今シーズンにプリンシパル・ソリストとして入団し、初主演に抜擢されたふたりの稽古シーンがお披露目された。【チケット情報はこちら】シンデレラを演じる成田紗弥は、韓国のユニバーサル・バレエ団から移籍。芯の通った身体と儚げな表情の、健気なシンデレラだ。1幕より『シンデレラと継母たち』の場面では義姉妹(杉山桃子、高橋怜衣)と義母(ルーク・ヘイドン)にこき使われ、働かされる。布、ほうき、鞄、ドレスなど小道具の多いシーンで、段取りが難しい。指導の浅川紫織が「火を焚く時はオーバーに全身を使って小道具を見せて」と示すと、とたんに客席からも見やすくなる。自然な動きを心がけ、物語を繋いでいく浅川の指導を受け、成田は「振付を覚えるのと、表現力をつけるのが大変」とくらいついていく。働かされ耐え忍ぶシンデレラだが、ひとりになると亡き母親の形見を取り出し、幸せだった思い出に浸る。その時間だけは、愛された少女のように軽やかだ。成田の持つ儚さとあいまって、幸せと寂しさを同時に表現する。2幕より披露されたのは『シンデレラと王子のパ・ド・ドゥ』。矢内千夏の明るいシンデレラに対し、高橋裕哉の王子は少し控えめで初々しい。指導する遅沢佑介が高橋に「相手の体重が右肩に乗るまで待って」「ここはシンデレラの動きに自分の動きを重ねて」と、身体の状態を具体的に示していく。ハンガリー国立バレエ団から移籍したばかりの高橋は「的確にステップを押さえていかないと綺麗に見えない」と、演技よりもまずひとつひとつの振りを身体に落とし込んでいく。高橋の身体が安定感を増せば、矢内が輝いて見える。そのシンデレラを見つめて嬉しそうに笑う王子。ふたりの表現がなめらかに重なり合い、恋人たちのうっとりとした場面ができあがっていく。本番にはほかプリンシパルの宮尾俊太郎、中村祥子らが出演。4人のシンデレラと4人の王子によるKバレエ『シンデレラ』は、5月26日(日)まで東京・東京文化会館、5月31日(金)から6月2日(日)まで東京・Bunkamura オーチャードホール、6月4日(火)に静岡・アクトシティ浜松、6月6日(木)に大阪・フェスティバルホールにて上演。熊川独自のアイデアが光る夢のような『シンデレラ』の世界へ誘う。取材・文:河野桃子
2019年05月20日デュッセルドルフとデュースブルグの2か所に本拠地を置くライン・ドイツ・オペラのバレエカンパニー、バレエ・アム・ラインの初来日公演が決定!演目は作曲家・チャイコフスキーの中でも特に有名なバレエ作品である『白鳥の湖』で、9月20日(金)・21日(土)東京・オーチャードホール、9月28日(土)兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホールにて上演される。バレエ・アム・ライン「白鳥の湖」チケット情報バレエ・アム・ラインでは、スイス出身の振付家であるマーティン・シュレップァーがチャイコフスキーの原典版音楽(通常バレエに使用されているのは変更、削除、他曲が挿入され、ほぼ30%が原典版と異なる)を使用し、台本は世界中で上演されている“プティパ・イワーノフ改訂版”ではなく改変前のオリジナルを使用。『白鳥の湖』おなじみの白タイツやチュチュを衣装に取り入れず、陰影を際立たせる演劇的要素の強い照明や多国籍なダンサーたちの個性を生かした振付で、これまでにないスタイリッシュで力強くスピード感のある新しい『白鳥の湖』を創り出した。このシュレップァー版『白鳥の湖』は2018年6月、ドイツで世界初演を迎え、その個性的なダンスをはじめ、衣装や照明、美術、そして“古典”と“モダン”を融合させた斬新な演出が話題を呼び、チケットは即日完売、連日観客を熱狂させ大成功を収めた。ヨーロッパで強烈なインパクトを与え続け、いま最も注目されているバレエの革命集団のが創り出す“究極のアート”の世界をぜひ体感してほしい。チケットは5月25日(土)10:00より一般発売開始。一般発売に先駆け、東京公演は5月24日(金)23:59まで、兵庫公演は5月23日(木)23:59まで先行先着プリセール実施中。
2019年05月17日女性らしさと快適な履き心地を同時に実現するバレエシューズ。高さがないのに華やかで、ガーリーなスタイルはもちろん、ハンサムなきれい目コーデにもお似合い。長時間ヒールを履いた後、足をいたわるサブシューズとしても活躍してくれます。かさばらないので、持ち歩いて履き替えてもいいですね。 定番のブラックで、気分はパリジェンヌADAM ET ROPE’ FEMME - メタリックバレエ ¥12,960(税込)まずは定番、エレガントなブラックのバレエシューズ。内側には「保温性・吸汗性・防汚性・速乾性」に優れたやわらかな素材を用い、履き込むほど足になじんでフィット。ベーシックなデザインに甲浅のシルエットが、まるでフランス女優のような飾らない美しさを叶えてくれます。 とにかく使える、スタイリッシュなシルバーPORSELLI - NORMAL VAMP シューズ ¥33,480(税込)毎シーズン即完売、イタリア老舗ブランド『PORSELLI』のバレーシューズ。新色のシルバーは、スタイリングのポイントに最適。シボの入った革素材が大人っぽい一足です。履いていることを忘れてしまいそうな軽い履き心地で、重たくなりがちな今時期の着こなしから重宝します。 ありそうでなかった配色に夢中!Le Talon GRISE × 竹下玲奈さんコラボ - ポインテッドバレエ ¥10,584(税込)ヘルシーかつ個性的なファッションと、小粋なライフスタイルで注目を集めるモデル・竹下玲奈さんとのスペシャルコラボ。パイピングのパープルが効いたイエローは、ありそうでなかったアートな配色。パッと視線を集める、春らしい足もとをつくってくれます。トレンドのポインテッド・トウに、華奢で女性らしい極細のリボンもこだわりのポイント。 フェミニンな透け感を楽しんでSPELTA - メッシュバレエシューズ ¥23,760(税込)大胆なメッシュ使いが新鮮なバレエシューズは、エアリーな素材感がシーズンムードたっぷり。小さなリボンと、かかとのレザー使いも印象的です。素足にペディキュアでセンシャルな雰囲気を演出したり、カラータイツやソックスで遊ぶのもまた乙。涼しげな印象で、夏まで大活躍の予感! 赤エナメルのツヤでいっそう華やかにLe Talon - ポインテッドエナメルバレエ ¥8,424(税込)華やかさのあるエナメル素材で、大人の女性に似合う上品な一足。深みのあるレッドは、エレガントな差し色として、シーズンレスに使える便利なカラーです。ブランド定番のやや甲浅シルエットで、指のまたがのぞく感じが絶妙。インソールに低反発クッションを使用し、足あたりやわらかなのも嬉しいですね。 長時間にわたって足を酷使する1日に、ヒール靴は現実的ではありませんね。そんな時バレエシューズなら、リラックス感のある履き心地に加え、程よい「きちんと感」が付いてきます。幅広い相手に好印象を与えてくれる便利なアイテムです。 text : FACY LADY 編集部 【関連記事】 ※ 買い逃せない!人気ショップの売れ筋「春コート&リネンアイテム」 ※ ロング丈がトレンド。春ムードを盛り上げる「大人の花柄スカート」 ※ ミリタリー初心者にも◎ 大人っぽく着られる「ショートモッズコート」
2019年04月24日バレエイベント「上野の森バレエホリデイ2019」の一環として、クイーンのフレディ・マーキュリーに捧げられたバレエ作品「バレエ・フォー・ライフ」の特別野外上映を、東京国立博物館にて、2019年4月26日(金)・27日(土)の2日間で行う。同演目は、クイーンを代表する17の名曲に20世紀最大の振付家モーリス・ベジャールが振付けたダンス・パフォーマンスで、ダンサーたちがお馴染みのヒット曲に合わせてエネルギーに満ち溢れた踊りを披露する。1997年に名門モーリス・ベジャール・バレエ団によって初演された際には、カーテンコールにブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、エルトン・ジョンが登場。「ショウ・マスト・ゴー・オン」をライヴ演奏したという、クイーンお墨付きの作品だ。実はクイーンのフレディ・マーキュリーは、当時バレエタイツを衣裳として着用していたり、英国のバレエ団の舞台に立ったこともあるというエピソードが残っている。作品中にはレザージャケットやバレエタイツを身に着けた“フレディ”も登場するほか、「クイーン・ライヴ!! ウェンブリー1986」や「ライヴ・キラーズ」といった伝説のライヴの音源も交えるなど、さながらコンサート会場と劇場を行き来するような感覚が楽しめる。この作品は90年代に一度映像化されたものの、その後絶版となった「バレエ・フォー・ライフ」は、現在モーリス・ベジャール・バレエ団の公演でしか接する機会のない幻の作品。この機会に、重要文化財である表慶館の前に設置された特別スクリーンで、『ボヘミアン・ラプソディ』のヒットで沸くクイーンとバレエの魅力に触れてみてはいかがだろう。【開催概要】上野の森バレエホリデイ2019 野外シネマ「バレエ・フォー・ライフ」開催日:2019年4月26日(金)・4月27日(土)時間:19:00〜上映開始(20:45 終了見込み)※雨天中止。※18:50〜19:00まで、小田島久恵(音楽ライター)によるプレトークあり。会場:東京国立博物館 表慶館前(東京都台東区上野公園)料金:無料※東京国立博物館の入館料が別途必要※高校生以下、および満18歳未満、満70歳以上は無料。座席:250名※座席が満席となった場合は、芝生や周辺に座る事が可能。【問い合わせ先】NBSチケットセンターTEL:03-3791-8888(平日10:00-18:00/土曜10:00-13:00/日祝休)
2019年04月19日