数々の古典をレパートリーに持ち、多くの観客の心を掴んでいる東京バレエ団が、いま、新たな全幕古典作品『海賊』に取り組んでいる。ダイナミックな技や華やかな群舞にあふれた、見応えあるバレエだ。本番まで約1か月となった2月7日に開催された、公開リハーサル、記者懇親会の模様をレポートする。【チケット情報はこちら】この日は前半の主役を初日キャストの上野水香と柄本弾が、後半を2日目に登場する沖香菜子と秋元康臣が踊り、その他ソリスト役では今回大抜擢を受けた若手団員も大いに存在感をアピール。新作ならではの緊張感と意欲がみなぎる、熱い稽古が展開された。19世紀半ばにパリで誕生した『海賊』はその後、ロシアでマリウス・プティパが手がけた改訂版をもとにした様々なヴァージョンが上演されている。とくに、大スターたちの競演で知られるアメリカン・バレエ・シアター(ABT)の舞台は、映像化されて広く人気を得ているが、今回上演されるのはこれと同じアンナ=マリー・ホームズ振付の『海賊』だ。懇親会には、東京バレエ団で指導中のホームズも出席。ボストン・バレエの芸術監督時代に、ロシアの恩師ナタリア・ドゥジンスカヤから『海賊』の上演機会が少ないことを憂えていると聞かされ、「この作品の権利を買い、ボストン・バレエで上演、その後、世界中で『海賊』を指導しています。当初はもっと長い作品でしたが、ドゥジンスカヤに許しをもらい、少しカットしたり変更を加えたりもしています」と話した。ロシアの偉大なバレエ教師に学んだという共通のバックグラウンドを持ち、ホームズに親しみを感じるという斎藤友佳理芸術監督も、「彼女の『海賊』はシンプルでわかりやすく、ユーモアもあり、私が大切と思うキャラクターの踊りも残している。やるならこれしかないと思いました」と明かす。「それぞれの個性を活かしきる」ことができるかどうかも、作品選びの重要な条件という斎藤。ヒロイン、メドーラ役の上野水香は、「表現の余地のある役。自分なりのメドーラ像を作りたい」、ギュルナーラ役の川島麻実子も「どう捉えて踊るか、先生に意見を伺いながら取り組んできます」。また「男性ダンサーにとって憧れの全幕バレエ!皆で鼓舞し合いながらいい舞台に」と話すのはコンラッド役の柄本弾。その手下のアリ、奴隷商人ランケデムの2役を踊る宮川新大も、「ABTの映像の衝撃は大きかった。2役踊れるのはありがたいこと」と語った。多彩なキャラクターとコール・ド・バレエが活躍する、パワフルで疾走感たっぷりの舞台に期待したい。公演は3月15日(金)から17日(日)まで、東京・東京文化会館にて。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2019年02月13日新国立劇場の2019/2020シーズンラインアップ発表記者会見が1月17日に行われ、大原永子舞踊芸術監督が任期最終年を迎える【バレエ&ダンス】部門は『ロメオとジュリエット』『くるみ割り人形』などバレエ6演目、中村恩恵の振付による『ベートーヴェン・ソナタ』などダンス計3演目が上演されることが発表された。【チケット情報はこちら】1999年から新国立劇場バレエ団のバレエ・ミストレスを11年務め、その後、芸術監督補を経て、2014年に芸術監督に就任した大原は、バレエ文化を日本により根付かせるため、従来より「観客動員」「公演内容」「ダンサーの強化」の3項目をテーマに掲げてきた。「“演じる”ということを大事にしてきて、この6シーズン目はその集大成」と語るが、その最終シーズンのオープニングを飾るのは『ロミオとジュリエット』(振付:ケネス・マクミラン)。続いて「海外ではクリスマスの定番となっている」という『くるみ割り人形』がクリスマスシーズンに上演されるが「クラシカルな従来のものと違って、モダンな要素が入って技術的にも難しくなっており、ダンサーとしても挑戦的な“ネオクラシック”となっている」と語る。年が明けて1月の『ニューイヤー・バレエ』に続けて、2月から3月にかけては若き男女の破滅的な恋を描く『マノン』を上演。「純真な『ロメオとジュリエット』と違って悲惨な恋であり、そういうドラマチックな部分をダンサーがどう表現するか?」と期待を寄せる。さらに5月、6月には『ドン・キホーテ』、新国立劇場初演時に大好評を博した『不思議の国のアリス』を上演する。ダンス部門では、中村恩恵×新国立劇場バレエ団による『ベートーヴェン・ソナタ』の再演で幕開け。年が明けて3月の「DANCE to the Future 2020」は遠藤康行をアドヴァイザーに招き「ダンサーだけでなく振付をやりたい人を育てるためのプロジェクトになっている」と語る。そして6月には小野寺修二の構成・演出・振付による『ふしぎの国のアリス』が上演される。さらに「こどものためのバレエ劇場」として2020年8月には、森山開次が振付を務め、日本を題材にしたバレエが制作されることも明らかになった。大原は「(新国立劇場に携わった」この20年、(日本のバレエは)少しずつ成長していると思います。これだけの組織と条件がそろっているのはダンサーにとって、幸せなこと。このまま止まらず成長を続けていける状況になることを望んでいます)と語った。取材・文・撮影:黒豆直樹
2019年01月25日“ニュー・イヤー・バレエ”と聞くと、お馴染みのクラシック演目が並ぶ華やかなガラ公演を思い浮かべがちだが、今年の新国立劇場バレエ団はひと味違う。20世紀初頭に革新的なバレエでヨーロッパを席巻したバレエ・リュスの傑作が2作と、現代の舞踊界をリードする中村恩恵が振付ける新作という、一歩踏み込んだラインナップだ。バレエ・リュスの傑作、『レ・シルフィード』と『ペトルーシュカ』はともにミハイル・フォーキンの振付だが、趣は大きく異なる。前者は森の中で詩人とシルフィード(空気の精)たちが幻想的な情景を繰り広げる、ショパンの名曲の数々をそのまま視覚化したような美しい作品。一方の後者では、見世物小屋にかけられた人形ペトルーシュカの哀しい恋物語が、ストラヴィンスキーの一種不気味な音楽に乗せて描かれる。そして、そのストラヴィンスキーの組曲『火の鳥』に今回挑むのが中村恩恵だ。新国立劇場バレエ団に振付けるのは、2017年に好評を博した全幕ダンス作品『ベートーヴェン・ソナタ』以来。『火の鳥』といえばフォーキンやモーリス・ベジャール振付版がよく知られるなか、果たして中村版はどのような作品になるのだろうか。バレエの多彩な魅力に触れられそうなトリプル・ビル、新国立劇場バレエ団『ニューイヤー・バレエ』は、本日1月12日(土)から14日(月・祝)まで新国立劇場 オペラパレスにて上演される。文:町田麻子
2019年01月12日シャネル(CHANEL)のビューティ アンバサダーに、バレエダンサー飯島望未が2019年1月より就任することが発表された。飯島望未 / © CHANEL大阪出身の飯島望未は、1991年生まれ。6歳からバレエをスタートし、13歳でNYのバレエコンクール「ユース・アメリカ・グランプリ」へ3位入賞し、15歳で単身渡米。その翌年に、アメリカの5大バレエ団の一つである名門、ヒューストン・バレエ団とプロ契約を果たす。2014年に、同バレエ団のソリストに昇格をし、現在もファースト ソリストとして米国を拠点に挑戦し続けている。2016年には「シャネル N°5 ロー」グローバルプロジェクトに参加し香りの世界観をダンスで表現し、多くの人々を魅了した。2018年にはウォッチ コレクション「コード ココ」のアンバサダーに抜擢されたり、「ルージュ アリュール」「ヴィタルミエール グロウ」 のデジタルキャンペーンにも起用されたりと、これまでにもメディアに多く取り上げられてきた、今シャネルが注目するイットな存在。今後のさらなる活躍に期待したい。
2018年12月19日フラットのシューズは一見ラクそうに見えるのですが、長時間履いていると意外と疲れると感じている人も多いのではないでしょうか。その要因は靴底。靴底が薄いフラットシューズは衝撃吸収力が弱く、足裏に負担がかかりやすくなっています。フラットタイプで女性らしい足元を作ってくれるバレエシューズも、ポインテッドヒールよりは断然ラクだけどモノによっては痛くなったりすることも。そんなお悩みを解消しながら、フレンチなムードもキープしたバレエシューズが、遠くモロッコのブランドにありました。 2つの文化が出会う場所、カサブランカのシューズブランド 『REVE D’UN JOUR(レーヴ ダン ジュール)』は、モロッコ・カサブランカのシューズブランド。かつてフランス領だったカサブランカは、今もフランス文化の影響が色濃く残っている都市で、本来のエキゾチックなムードとフレンチシックのミックスしたスタイルが新たな魅力です。レーヴ ダン ジュールもそうした背景を感じる、“カサブランカに漂うリラックスしたフレンチスタイル”をコンセプトに。 自社工場でオールハンドメイドのバレエシューズ ブランドのシグネチャーである、バレエシューズは一足一足すべて自社工場でのハンドメイド。伝統的なサケット製法が、疲れやすさを解消するカギとなっています。サケット製法では歩行時の衝撃をやわらげるクッション入りの中敷とアッパーを縫い合わせ、袋状にして木型に合わせて固定。ソールの反りがよく、歩いたときに足の動きにしなやかにフィットしてくれます。 アッパー素材にはソフトなゴートレザーを使用し、アウトソールはラバーソルで補強されているので履き心地も快適です。 先端が丸みを帯びたスクエア型なので、大人っぽいシルエットがスタイリングをリラックスしすぎず仕上げてくれます。足元もすっきりと見せてくれるので、甲の幅が広めな日本人にはうれしいかぎり! レーヴ ダン ジュールはフランス語で“夢がかなう日”という意味するそう。あなたの夢をかなえる一足をこの冬にぜひ。 バレーシューズ¥17,000/レーヴ ダン ジュール(ビームス ウィメン 原宿) ビームス ウィメン 原宿03-5413-6415:kimyongduckstyling:Mari Nagasakahair&make:Daisuke Yamada(Cake)model:Rio Kajiyamatext : Momoko Yokomizo
2018年12月01日『美女と野獣』『シンデレラ』など、名作の実写化を次々と成功させているディズニー。『くるみ割り人形と秘密の王国』は、チャイコフスキーのバレエ組曲である『くるみ割り人形』の原作『くるみ割り人形とねずみの王様』に着想を得たファンタジー大作です。ディズニーが贈る、新たな『くるみ割り人形』主人公は、愛する母を亡くし、心を閉ざした美少女クララ。彼女は父から、母が遺したものとして、鍵のかかった卵型の入れ物をプレゼントされます。箱の中には、「あなたに必要なものはすべてこの中にある」という謎めいた言葉が。クリスマス・イヴの夜、クララは母の言葉に隠された真実を突き止めようとするうちに、不思議な世界へ迷い込みます。そこには、色とりどりの花と緑に満ちた“花の国”、キャンディやマシュマロで飾られた“お菓子の国”、雪と氷が輝く“雪の国”、そしてかつて“遊びの国”だった荒地“第4の国”からなる〈秘密の王国〉が。やがて、この世界を創り上げたのが亡き母であることを知ったクララは、母が愛した王国を救うため、自ら行動を起こします。あらすじからも読み取れるように、この映画はバレエや原作の『くるみ割り人形』を忠実に再現したものではありません。随所に『くるみ割り人形』へのオマージュをちりばめながら、ディズニー独自の解釈が加わった新たな物語を楽しむことができます。本作を語るうえで欠かせない要素は、音楽とバレエ。ウォルト・ディズニーは、チャイコフスキーの大ファン。クラシック音楽とアニメを融合させた『ファンタジア』(1940年)では、バレエ組曲「くるみ割り人形」を使用。『眠れる森の美女』(1959年)ではチャイコフスキーが手掛けた同名タイトルのバレエ組曲から「ガーランド・ワルツ」のメロディを引用し、「いつか夢で」を生み出しました。本作に、『ファンタジア』へオマージュを捧げたシーンが登場するのも頷ける、深いつながりを感じます。劇中のバレエ・シーンでは、超一流のダンサー、ミスティ・コープランドとセルゲイ・ポルーニンが豪華共演。卓越した表現力で観客を圧倒します。さらに、エンドクレジットで流れるのは、世界最高峰のテノール歌手アンドレア・ボチェッリが、息子マッテオとコラボした新曲「フォール・オン・ミー」。親子の普遍的な関係を表現した歌詞はクララと母に重なり、深い余韻を残します。衣装を手掛けたのは、アカデミー賞衣装部門に2度輝いたジェニー・ビーヴァン。クララの衣装は彼女の心情によって変化し、ヴィクトリア朝時代のドレスや軍服にインスパイアされた華麗な衣装の数々に目を奪われます。また、キーラ・ナイトレイ演じるシュガー・プラムは、クララが受けた忠告「見た目に惑わされるな」を体現したキャラクター。綿菓子のようなふんわりヘアにメタリック・オーガンザのドレスをまとった彼女は見た目も喋り方もキュートなのに、性格はとってもエキセントリック。これまでのイメージを覆すキーラの怪演は必見です。近年、こういった役柄はシャーリーズ・セロンの独壇場でしたが、今後はキーラがその座を脅かす存在になるかも!?煌びやかな映像に加え、音楽、バレエなど、超一流の娯楽が詰まった本作。一足早く届いたクリスマス・プレゼントのような映画です。『くるみ割り人形と秘密の王国』『くるみ割り人形』を原作に、美少女クララの冒険を描くファンタジー大作。監督/ラッセ・ハルストレム、ジョー・ジョンストン出演/マッケンジー・フォイ、キーラ・ナイトレイほか11月30日(金)より全国公開。©2018 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.※『anan』2018年12月5日号より。文・田嶋真理(by anan編集部)
2018年11月30日11月28日夜の『ドン・キホーテ』で華やかに開幕したマリインスキー・バレエ日本公演。その本番を前に、28日午後、東京文化会館で舞台稽古が公開され、本番さながらの熱のこもったステージが繰り広げられた(衣装付きの稽古は一幕のみ)。舞台リハーサルを行ったのは、29日(木)のキャストで、キトリ役はレナ―タ・シャキロワ、バジル役がティムール・アスケロフという新鮮なコンビ。エスパーダにロマン・ベリャコフ、街の踊り子はプリンシパルのエカテリーナ・コンダウーロワが華を添える、サプライズのような豪華さだ。シャキロワは強靭な足と柔らかな上半身で踊りが大きく、明るくお茶目なキトリのキャラクターがぴったり。跳躍はフワッと軽く、回転もスピード感があり、三幕のグラン・フェッテでは扇を持った手を上げる超絶技巧を見せていた。アスケロフは美しいつま先、長い足がノーブルな雰囲気で、シャキロワを献身的にサポート。リハーサル中もよく声をかけ、確認しあっている場面が見られた。街の踊り子のコンダウーロワは、ポンパドール風に盛り上げたヘアスタイルの効果もあり、うっとりするほど艶やか。コケティッシュな踊りで場をさらう。ベリャコフは、男性陣の中でもひときわ長身のスタイルと大きな手が魅力的。マントを翻してフェロモンたっぷりにエスパーダを踊った。花売り娘(キトリの友人)には石井久美子が登場し、チャーミングな笑顔に溌剌とした踊りで場面を盛り上げる。登場シーンも多く大活躍だ。作品の肝となるドン・キホーテ、サンチョ・パンサ、ガマーシュもそれぞれが愛すべきキャラクターで目が離せない。ファテーエフ芸術監督は、列の並び、音楽のテンポなどを細かくチェックしながら客席からマイクで指導をし、時には立ち上がって指示をだす熱の入れよう。群舞の場面は繰り返して行い、ダンサーたちも疲れを見せずにそれに応えていた。二幕では、アムール(キューピッド)に永久メイ、森の精の女王には今年入団し、ソリストとなったマリア・ホーレワ、ドルシネア(キトリ)のシャキロワという今後のマリインスキーを背負う若手が並んだ。永久はひときわ細く可憐なスタイルでキューピッドの愛らしさを表現し、個性を発揮していた。マリインスキーがゴールスキー版『ドン・キホーテ』を日本で上演するのは実に22年ぶり。舞台装置や衣装も美しく、二幕の夢の場面の満開の桜のような装置、三幕のランタンが灯る奥行きのある背景は、どこか日本的な情緒を感じさせるのが不思議だ。またマリインスキー歌劇場管弦楽団が層の厚い演奏を聞かせ、バレエがとびきり贅沢な総合舞台芸術であることの喜びを改めて感じさせてくれる。目の肥えた日本の観客にとっても新しい発見に満ちた公演となりそうだ。マリインスキー・バレエ日本公演は12月9日(日)まで上野・東京文化会館にて行われる。取材・文/郡司真紀
2018年11月30日ロシア・サンクトペテルブルクを拠点とする世界最高峰のバレエ団、マリインスキー・バレエの3年ぶりの日本公演がいよいよ始まる。翌日からのツアー開幕を前に記者会見が行われ、ユーリー・ファテーエフ芸術監督のほか、プリンシパルダンサー5名、ソリスト2名が登壇。公演への意気込みを語った。【チケット情報はこちら】ウラジーミル・シクリャローフは稽古着姿のまま参加。前回はケガのために『ロミオとジュリエット』の公演を降板したことに触れ「今回は全ての演目に出演して、踊りを全うしたいと思います。全力を尽くして、観客の皆さんの心に残るようにしたい」と話し、今や看板プリマのヴィクトリア・テリョーシキナは「日本の皆さんがマリインスキーの古典を正しく評価してくださっているのがうれしい」とコメント。「日本の皆さんはフェッテ(回転技)が大好きですよね。今回の演目はフェッテが満載で見ごたえがあると思いますよ」と場を和ませる。キミン・キムは今年5月、ウィーン国立バレエ団来日公演でゲストとして踊ったことにふれ「観客の方たちにとても気持ちよく迎えていただき、また日本で踊りたいと思いました」。また日本凱旋公演にのぞむ永久メイを気づかい、自身の経験を踏まえて「母国での公演は緊張するもの。僕たちが全力でサポートしたい」と温かい一言を。来日公演が9年ぶりとなるアリーナ・ソーモワは、ふたりの子供の母となり、家族には海外では踊らないと宣言していることを告白。「でも日本の温かい観客の皆さんが待ってくださっているので、来てしまいました。今回は貴重な機会になります」。前回に続いて『白鳥の湖』を踊るエカテリーナ・コンダウーロワは、「『白鳥の湖』は観れば観るほど面白くなる演目」と話し、マリインスキーの魅力を「バレエはソリストだけで成り立つものではない」と、コールド(群舞)の揃った動きの美しさを挙げた。今後を担う若手ソリストの筆頭、レナータ・シャキロワは10年以上前のワガノワ・バレエ・アカデミーの日本ツアー以来。「バレエ団のメンバーとして初めての来日で、ドキドキとワクワクでいっぱい」とにこやか。そしてマリインスキー団員として初の日本公演となる注目の永久メイ。「東京文化会館で踊るのは初めて。こんなに大きな劇場で踊ることに緊張しています」と初々しく話し、マリインスキーの魅力を「スタイルが完璧に揃っていますし、上半身の使い方が素晴らしい。私は今も勉強中です」と挙げた。ファテーエフ監督は、ガラの演目について触れ「バレエ団では若い振付家を養成する活動を行っており、若い振付家にチャンスがあることが劇場全体の高揚感にもつながっている」と話し、他国出身のダンサーが増えていることについては「過去にはダンサーが西側へ出て行く現象がありましたが、今は逆のことが起きている。海外で学び、マリインスキーで成長したいと思う才能あるダンサーが増えているのは喜ばしいこと」とコメントした。本公演は11月28日(水)から12月9日(日)まで上野・東京文化会館にて行われる。取材・文:郡司真紀
2018年11月28日バレエ史料・美術・衣装などを展示する展覧会「薄井憲二バレエ・コレクション特別展 The Essence of Beauty バレエー究極の美を求めてー」が、横浜・そごう美術館にて開催される。期間は2018年11月23日(金・祝)から12月25日(火)まで。「薄井憲二バレエ・コレクション」とは日本バレエ協会前会長の薄井憲二が収集した「薄井憲二バレエ・コレクション」は、バレエの始まりから現代までを広くカバーする世界でも有数のコレクション。ダンサーたちの自筆の手紙やメモ、写真、当時の公演プログラム、台本、美術的価値の高いリトグラフや絵画、ポスター、陶器、絵はがき、書籍や雑誌といった文献資料など、6500点を超える貴重な史料が揃う。史料・美術・衣装など約300点を展示「薄井憲二バレエ・コレクション特別展 The Essence of Beauty バレエー究極の美を求めてー」では、このコレクションの中から、バレエの歴史・バレエ美術・チャイコフスキー三大バレエに関する品を約300点セレクト。衣装や、映像なども交えて、バレエの美の世界を紹介していく。展示されるのは、マリー・タリオーニが踊ったバレエ作品『ラ・シルフィード』を表現したアンティークプリントや、"日本バレエの母"とも称されるエリアナ・パヴロバの遺品、東京シティ・バレエ団の再演で注目を集めた藤田嗣治『白鳥の湖』の草案模写・舞台模型といった舞台美術など。牧阿佐美バレヱ団のチャイコフスキー三大バレエ『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』から約30点におよぶ衣装や、『瀕死の白鳥』を代表作に持つバレリーナ アンナ・パヴロワの映像も紹介する。【詳細】薄井憲二バレエ・コレクション特別展 The Essence of Beauty バレエー究極の美を求めてー会期:2018年11月23日(金・祝)~12月25日(火) ※会期中無休開館時間:10:00~20:00(最終入館は閉館の30分前まで)会場:そごう美術館(神奈川県横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店6階)入館料:大人1,000(800)円、大学・高校生800(600)円、中学生以下無料※全て税込。( )内は前売および20名以上の団体料金。ミレニアム/クラブ・オンカード持参者は( )内の料金にて入館可。障がい者手帳各種持参者と同伴者1名は無料。前売券取扱場所:そごう美術館、セブン-イレブン、ローソンチケット、イープラス、チケットぴあ【問い合わせ先】TEL:045-465-5515
2018年11月24日日本のバレエ人口は世界一ともいわれるが、世界三大バレエ団のプリンシパルはまさに憧れの頂点。ただその舞台に立ち続けるには血のにじむような努力が必要だった――。世界三大バレエ団のひとつで、名誉総裁をチャールズ皇太子が務める「英国ロイヤル・バレエ団」。全団員89人中、最上位のプリンシパルは17人だけだ。平野亮一(35)と高田茜(28)は、2年前の’16年に2人同時にプリンシパルに昇格した。そして、平野は10月8日、今シーズン開幕の演目『マイヤリング(うたかたの恋)』で初日の主役を飾った。いわば、これは“英国ロイヤルの顔”となったことを意味する。英国ロイヤル・バレエ団は、1931年創設。ニジンスキーの再来と言われたルドルフ・ヌレエフやシルヴィ・ギエムらが在籍。古典となった名作『リーズの結婚』や『マノン』『マイヤリング』などを生み出した。日本人プリンシパルとして次期新国立劇場芸術監督である吉田都(53)が’95年から15年間、Kカンパニー主宰の熊川哲也(46)が’89年から10年間在籍した。日本を代表する2人のバレエダンサーとはいえ、かの英国ロイヤル・バレエ団の屋台骨を背負う存在になった今、そのプレッシャーはどれほどのものなのか。本誌記者が、英国「ロイヤルオペラハウス」リハーサル・ルームで練習中の2人を訪ねると、いかにも“楽しんでいます”といった爽やかな笑顔で迎えてくれた。高田「私たちは同じ日本人でローザンヌ(国際コンクール)からロイヤル入りした経験も同じ。共通点が多いんです」平野「とくに2年前、同時にプリンシパルに昇格してからは一緒に取材を受けることも増えました。でも僕がおしゃべりだからいつも茜ちゃんが“そうですね” で終わっちゃう。今日は気をつけるよ」高田「そうですね(笑)」それにしても、今回の平野さんの“開幕ダンサー”デビューは、日本のファンの方たちも驚いているのではないでしょうか?平野「僕もです。初日の10日前に突然指名されたので、喜んでいる暇などまったくなかった。パートナーは約1カ月間、別の人と稽古を重ねていたので、早く追いつかなければと、とにかく必死でした」高田「そんな、そんな。英五大新聞からタブロイド紙まで『ダイナミック』『ファンタスティック』と大絶賛だったじゃないですか。同じ日本人として、誇らしかったです」平野「『マイヤリング』では茜ちゃんもヒロインのマリーを踊った。相変わらずテクニックは完璧でした」高田「でも、本番前はいまだに緊張します。今回もソイラテ飲みながら舞台袖をウロウロと……」平野「そうなの?僕はキャサリン妃が来ようが、ウチの両親が居ようが、全然あがらない(笑)」高田「それは天性のもの。羨ましすぎます」平野「ただプリンシパルになってからは、格段に練習量が増えました。どんな役を振られても“できて当たり前”ですから」高田「私も100%の力で稽古に臨まないと、本番が不安で」平野「普通の人は稽古80%、本番で100%なのにね。そんな一切手を抜かない茜ちゃんだから、踊りの統制が取れていて、パートナーも合わせやすい」高田「いえいえ、いつも自由にさせてくださるから」平野「男性ダンサーに求められるのは、まず相手役の信頼を得て安心して身を任せてもらうこと。つま先立ちでスピンし、全身を投げ出して飛んでくるプリマたちを、男性ダンサーがしっかりと空中でキャッチする。このとき、何があっても支えるぞという心構えに加え、プリマをより優美に見せる技術も必要です。ただ残念なことに、僕たちはまだ1度しかペアを組んだことがないんだよね(’16年12月『くるみ割り人形』ロンドン公演)」高田「20センチ以上の身長差がありますから(162センチと185センチ)」平野「確かに、その差は様式美的にどうなのかなとなったらしい(笑)」バレエは人間の体を極限まで鍛える芸術。ときには体に無理な動きをさせることもあり“ケガの恐怖”が常につきまとう。稽古中の事故の話になると、2人は、とたんに、当時の痛みを思い出したかのような険しい表情に――。高田「今年8月の東京での『レイヴン・ガール』で、久しぶりに共演できましたね」平野「実はあれは、2年前にバレエ人生で最悪の“地獄”を味わったいわくつきの演目なんです。5分以上相手をリフトし続ける場面があって、初演のときはカーテンコールの後に舞台袖で動けなくなってしまった。腕が痙攣して。その点、体重が軽い茜ちゃんと踊ったときは、天国みたいでした」高田「男性ダンサーは気をつけないと腰をやっちゃうでしょう?」平野「ほかにも、ステージでボキッといったまんま動けなくなったことがある。衣装を着たまま救急車で運ばれて(診断はギックリ腰)」高田「私はひざに問題を抱えたままずっと踊っているので、あまり無理しないようにしています。最近はこれ以上稽古をやると“くる”というのがわかってきましたが」平野「僕はすねが疲労骨折するんじゃないかと心配。どこか体を壊して引退を決意するケースは、周りを見ていても多い気がしますね」今年8月、英国ロイヤル・バレエ団が’19年6月21日から3年ぶりの日本公演を行うことが発表された。もちろん、2人の日本人プリンシパルも出演する予定だ。高田「演目は『ドン・キホーテ』。宿屋の看板娘・キトリを披露します」平野「また2人の演技を直接日本のお客さんに見てもらえるのはとても楽しみだね」
2018年11月17日まもなく開幕の〈20世紀の傑作バレエ2〉公演で、現代バレエの巨匠による4作品を上演する東京バレエ団が公開リハーサルを実施、同時に催された記者懇親会で、斎藤友佳理芸術監督、主演ダンサーの川島麻実子、柄本弾が意気込みを語った。【チケット情報はこちら】この日スタジオで公開されたのは、ドラマティック・バレエの傑作『椿姫』などの作品で知られる振付家、ジョン・ノイマイヤーによる『スプリング・アンド・フォール』のリハーサル。公演ではこのほか、ジェローム・ロビンズ振付『イン・ザ・ナイト』、イリ・キリアン振付『小さな死』という、同団が昨年初めて取り組んだ2作品と、彼らの代表的レパートリーであるモーリス・ベジャール振付『ボレロ』の全4作が上演されるが、国内カンパニーでこれほどの巨匠の作品を一挙上演する例は珍しく、20世紀バレエの豊かさ、奥深さを俯瞰させてくれる貴重な機会となる。2000年に彼らのレパートリーに加わった『スプリング・アンド・フォール』は、ドヴォルザークの〈弦楽セレナーデ〉にのせて17人の男女が紡ぐ、瑞々しい魅力に溢れたバレエ。具体的な筋書きはないが、バレエ・ミストレスの佐野志織が主導するリハーサルでは、感情の動きが大いに重視され、そこここに立ち現れる若い男女の出会いや語らいのイメージに、しばしばハッとさせられる。自身も本作の東京バレエ団初演を踊り、「思い入れのある作品」と語る斎藤。彼女が「ぜひ大きな舞台で観ていただきたい」と配した2組の主役のうち、初日と最終日に登場するのが川島と柄本だ。「入団間もない頃に観て、とても印象的でいつか踊りたいと思った。携わることができて幸せです」と話す川島は、『イン・ザ・ナイト』第2、第3パ・ド・ドゥにも取り組み、様々な表情を見せる。いっぽうの柄本は、「主役として皆をひっぱっていくことが大事。体力強化が重要と痛感」と笑う。ほかに『イン・ザ・ナイト』『ボレロ』と全3作に出演、『ボレロ』は野外ステージやファミリー向け公演で踊る機会はあったが、こうしたバレエ団公演の大舞台での主演は初だ。「自分らしさを出せるようになってきたかな、と思っています」と、胸の内を明かす。この3年、様々な挑戦を重ねた斎藤だが、「今回はその集大成。これまで取り入れてきたもの、その一部をお見せしたい」と自らの仕事を振り返り、「これらの作品に一度に携わることができる今のダンサーたちは、なんて幸せだろうと思います」と笑顔。見応えある舞台が期待される。東京バレエ団〈20世紀の傑作バレエ2〉は、11月30日(金)から12月2日(日)、東京文化会館にて。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2018年11月15日映画『ホワイト・クロウ伝説のダンサー』が2019年5月10日(金)、全国ロードショーされる。“伝説的バレエダンサー”の半生を描く映画『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』は、ニジンスキーの再来と言われたロシア人バレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフの半生を描いた作品。20世紀最高のダンサー・振付家として活躍したルドルフ・ヌレエフは、幼少期よりバレエに魅了され、キーロフ・バレエに入団。1961年、キーロフのパリ公演直後に空港で突然の亡命を果たすなど、私生活でも舞台同様、激しく情熱的に生き抜いたことで知られている。監督・出演はレイフ・ファインズ監督を務めるのは、『007 スペクター』『グランド・ブダペスト・ホテル』などの出演で知られるレイフ・ファインズ。また、本作への出演も兼任する。主演のルドルフ役は、現役のトップダンサーであるオレグ・イヴェンコが演じるほか、アデル・エグザルホプロスや、ラファエル・ペルソナなど、期待のヨーロッパ俳優たちも出演する。ストーリーキーロフ・バレエのソリストとして世界を魅了していたにも関わらず、その激しい性格と反抗的な態度から政府に警戒されていたルドルフ・ヌレエフ。舞台上・日常を問わず情熱的で大胆だった彼の素顔と、海外公演の途中にパリでドラマチックな亡命を果たすまでの半生を描く。【詳細】映画『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』公開日:2019年5月10日(金)全国ロードショー監督:レイフ・ファインズ出演:オレグ・イヴェンコ、セルゲイ・ポルーニン、アデル・エグザルホプロス、チュルパン・ハマートヴァ、レイフ・ファインズ
2018年10月29日今年6月、ロシアの名門マリインスキー劇場バレエの研修生、永久メイがセカンドソリストとして正式入団したというニュースは、多くのバレエファンを驚かせた。230年余の歴史があり、伝統と革新を続けるバレエの殿堂で、日本人がソリストになるのは異例のことだ。11月のマリインスキー・バレエ日本公演で、初めてバレエ団員としての凱旋舞台に立つ永久メイに話を聞いた。【チケット情報はこちら】「バレエ団の秘書の方から“ウェブサイトを見てごらん”と言われ、セカンドソリストのところに私の名前と写真があるのを見て初めて知りました。大々的に貼りだされるわけでもなく、あっさりしているんです。でも突然のことでうれしくて信じられなくて、家族に伝えて泣いてしまいました。練習内容や役は、研修生のときからソロの役をいただいていたので、特に変わらないですね」。指導教師は、プリンシパルのエカテリーナ・コンダウーロワも教えている、元プリマのエルヴィラ・タラソワ。バレエ団からの期待のほどがうかがえる。モナコのプリンセス グレース アカデミーに留学中の2015年、参加していたサマースクールでの踊りがユーリ・ファテーエフ芸術監督の目に留まったことが入団のきっかけ。2017年、17歳でマリインスキー・バレエに研修生として入団後は数多くのソロを踊ってきた。「入団した頃は、ロシアで私のことを知ってる人は誰もいないし、楽しく踊るだけ!と緊張もせずに踊っていましたが、今は知らない間に私の踊りの動画があがっていたりして、誰かが見てると思うと、少しずつ緊張するようになってきました」芸術の都、サンクトペテルブルクに住み、人々のバレエへの関心の高さも肌で感じている。「毎日公演があるのに、毎回客席が満席になるんです。そのことに驚きましたし、常連の方も多いので、拍手する場面も他の国と違います。たとえば『白鳥の湖』では、4幕の幕が開いて、白鳥の群舞の美しいポーズに対して拍手が起きるんです。バレエをよく観て分かっているからこそだなと感じます」。客層も幅広く、老若男女さまざま。「中にはかなりの高齢で、歩くのにサポートが必要なほどの方もいらっしゃって、それでもバレエを観に来たい、と思ってくださることに感動します。そういう方たちのために踊るのは本当にすごいことなんだ、と感じますね」バレリーナになりたかった母に連れられて3歳でバレエをはじめ、気付いたら踊っていた。今は母から託された夢を叶えている。「舞台で踊っているときは、役のことしか考えていないですね。衣装を着て生の演奏で踊ると、稽古場とは違うテンションになり、役になりきれるのが楽しくて」。長い手足に恵まれた美しいライン、天使が舞い降りたかのような輝く舞台姿は、観客から愛される天性のオーラを纏っている。憧れの役は『ジゼル』。「マリインスキーに入ったからには、ロシアンバレエに溶け込み、でも自分の個性は失わずに、ロシアの観客の方たちに納得してもらえるようになりたいですね」公演は11月28日(水)より東京・東京文化会館大ホールにて。チケット発売中。取材・文:郡司真紀
2018年09月14日バレエ界の鬼才マシュー・ボーンが演出・振付を務めた「Mattew Bourne’s Cinderella」(原題)が、『マシュー・ボーン IN CINEMA/シンデレラ』の邦題で公開されることが決定。ボーンのバレエを撮影した作品を劇場で観ることができる。■“英国バレエ界の奇才”マシュー・ボーンとは?マシュー・ボーンはローレンス・オリヴィエ賞を5回受賞、トニー賞の優秀振付賞と最優秀ミュージカル演出賞の両方を受賞した唯一のイギリス人。これまで、日本でも話題となった白鳥役を全員男性が演じた「白鳥の湖」をはじめ、「眠れる森の美女」や「くるみ割り人形」のように、童話という古典作品をユニークな手法を用いて演出してきた。■新作は“新解釈”の「シンデレラ」マシュー・ボーンが今回手掛けたのは、世界で最も古い童話の一つ「シンデレラ」。世界中に様々なバリエーションが派生した名作の舞台を、第二次世界大戦下のロンドンに変え、大胆にアレンジ!第二次世界大戦の真っ只中、シンデレラと1人の若いイギリス空軍のパイロットが出会い、瞬く間に2人は恋に落ちていった。ときを同じくして、ドイツ・ナチス軍による大空襲により、ロンドンが恐怖で脅かされ、運命によって結ばれたはずの2人は引き裂かれる…という物語。■戦争×童話の世界観がマッチしたビジュアル劇場公開に併せて公開されたビジュアルは、戦争を連想させる暗い街並みとロマンティックな宮殿が同時に描かれた背景が印象的。そんな中に眩いドレスをまとったシンデレラと、イギリス空軍のパイロットが抱き合う姿は、戦争と童話という世界観のギャップを見事になくし、いままでにない異色の世界観を表現している。マシュー・ボーンがトニー賞最優秀衣装デザイン賞を受賞したレズ・ブラザーストンとのバレエ界最強タッグで挑んだ本作は、セルゲイ・プロコフィエフの名曲の魅力が活かされ、斬新かつスリリングで刺激的なラブストーリーに仕上がっている。『マシュー・ボーン IN CINEMA/シンデレラ』は11月3日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2018年08月26日ドイツの名門バレエ団、シュツットガルト・バレエ団が11月の日本公演開催を前に記者会見を行った。かつて同団のスター・ダンサーとして活躍し、この9月に芸術監督に就任するタマシュ・デートリッヒをはじめ、まさにこの日も公演日となっていた世界バレエフェティバルに参加中の同団のアリシア・アマトリアン、エリサ・バデネス、フリーデマン・フォーゲル、ゲストのパリ・オペラ座バレエ団エトワール、マチュー・ガニオが登壇、意気込みを語った。シュツットガルト・バレエ団 チケット情報冒頭、「芸術監督就任後初のツアー、日本で公演ができることをとても嬉しく思う」と挨拶したデートリッヒ。同団の日本公演は1973年以来、今回で何と11回目となるが、芸術監督着任を前に、カンパニーの創設者で20世紀を代表する振付家、ジョン・クランコのバレエを継承しながら、新プロジェクトにも意欲的に挑戦していく姿勢をアピールした。今回上演するのは『オネーギン』と『白鳥の湖』の2作品、いずれもクランコの代表作である。「世界でもっともポピュラーな『白鳥の湖』と、私たちの十八番である『オネーギン』を皆さんにお見せできることに、感謝して踊りたい」と語ったのはカンパニーを代表するスター、フォーゲル。アマトリアンも、「この『白鳥の湖』の第4幕は、私の知るすべてのテクニックを駆使しないと演じることのできない、非常に美しく感動的な幕。すべてを捧げて踊ります」という。往年の大スター、ナタリア・マカロワが「これを踊らずして引退したのが残念だと話すほど、素晴らしい、クランコならではの幕」とデートリッヒも自信たっぷりだ。いっぽうの『オネーギン』は20世紀ドラマティック・バレエの不朽の名作として知られるが、ヒロインのタチヤーナ役について、「夢見ていた役柄。細かなところまで配慮しないと踊れない、成熟した女性像、描けるかどうかチャレンジ」とバデネス。そのパートナーを務めるガニオは「(原作の)プーシキンの詩の世界を身体の動きで表現する素晴らしい作品。オネーギンは神話的ともいえる特別な役柄、もっと深めていきたい。偉大なカンパニーと共演でき、とても楽しみ」と満面の笑顔を見せた。『オネーギン』にはマリインスキー・バレエのディアナ・ヴィシニョーワも客演予定、華やかな競演が期待される。シュツットガルト・バレエ団日本公演は11月2日(金)から4日(日)が『オネーギン』、9日(金)から11日の(日)が『白鳥の湖』、いずれも東京文化会館。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2018年08月21日プリティ・バレリーナ(Pretty Ballerinas)の2018-19年秋冬シューズが登場。プリティ・バレリーナとは?プリティ・バレリーナは、バレエシューズ、バレエパンプス、フラットシューズを中心に展開するブランド。始まりは、1918年スペイン・メルノカ島に誕生したハンドメイドのバレリーナシューズ工房から。その伝統へのオマージュを捧げるため、プリティ・バレリーナは設立され、今も変わらず、裁断から縫製までの工程をメルノカ島内の工場が担当している。プリティ・バレリーナ18年秋冬今季は「ラグジュアリーカジュアル」をキーワードに。可愛らしくロマンティックなスタイルを得意とするプリティ・バレリーナだが、今季はちょっぴり大人っぽいエレガントなスタイルにシフト。グリーンやパープルなどディープカラーをキーカラーに、カジュアルさを兼ね備えた大人のシューズを提案する。また、秋冬らしいベルベット・ファーといった暖かみのある素材を部分的に取り入れているのもポイントだ。ベルベット&ファーで楽しむ秋冬の足元「Audrey ヤバスハート」は、レオパードベルベットの下地に赤いレザーのハートモチーフをのせて、レオパードの強い印象からフェミニンに。ブラックスエードをベースにした「 Ella スエードファー」は中央に優しいピンクのファーをデコレーションした。リボンがアイコンの「Nicole」シリーズにもスエードモデルがラインナップ。ビビットからソフトまで様々なピンクカラーで染め上がてチャーミングに仕上げた。ヒールシューズの「Lindsay」はキーカラーのパープルをリボンに、グリーンをトゥにのせてポップな配色を楽しんだ。リボンがレッド、トゥがブラウンで彩ったモデルも揃っている。5周年記念カラースワロフスキーシューズまた、2018年でショップオープン5周年を迎えるプリティ・バレリーナ青山店では、5周年記念限定モデルを2018年9月28日(金)より発売。バレエシューズ、キッズモデルともに、全面に散りばめられたカラースワロフスキーが特徴だ。スエードタイプとベルベットタイプが揃うので、結婚式やパーティーなど華やかな場に合わせるのもオススメだ。【詳細】プリティ・バレリーナ2018-19年秋冬コレクション※2018年8月現在発売中。取り扱い店舗:プリティ・バレリーナ青山、銀座、難波、オンラインショップその他セレクトショップ・百貨店価格帯:20,000円~50,000円■期間限定ストア※新作先行販売・8月8日(水)~8月19日(日)日本橋三越本館 3F住所:東京都中央区日本橋室町1丁目4-1・8月22日(水)~9月11日(火)名古屋三越栄店 3F住所:愛知県名古屋市中区栄3丁目5-1・8月29日(水)~9月11日(火)銀座松屋 3F住所:東京都中央区銀座3丁目6-1■プリティ・バレリーナ青山店5周年記念モデル・バレエシューズ型:スエード 32,000円+税、ベルベット 29,000円+税・キッズ 22,000円+税発売日:9月28日(金)取り扱い店舗:プリティ・バレリーナ青山
2018年08月19日1976年以来3年に1度の開催を続け、世界でも類を見ない規模と伝統を誇る催しとして知られる世界バレエフェスティバルの開幕記者会見が、7月30日、まさにその会場となっている東京文化会館大ホールの舞台上で、華々しく行われた。【チケット情報はコチラ】直前の週末には、フェスティバルの前夜祭ともいわれる全幕特別プロ『ドン・キホーテ』が上演され、いよいよAプロの初日を2日後に控えたタイミングでのこの会見。まずは主催の公益財団法人日本舞台芸術振興会・高橋典夫専務理事と、公演を特別協賛する株式会社コーセーの小林一俊代表取締役社長が登壇。主催者の立場から、また支援する企業の立場から、フェスティバルへのあつい思いを明かした。近年、テレビでバレエが紹介される機会が増え、「追い風を感じる」と話す高橋専務理事は「42年前に始まったこのフェスティバルが、日本のバレエ界に与えた影響は極めて大きいと自負している」とコメント。また、過去にバレエ公演を支援した実績のある小林社長は「美の創造企業として、ひとりでも多くの方にバレエを観ていただき、心を豊かにしていただけたら」と話すとともに、今回、初の試みとして「コーセー U29シート」と銘打った安価なチケットを販売したことに触れ、「若い方々が本物のバレエを楽しみ、身近に感じていただきたい」と力強く述べた。会見後半では、Aプロに出演する34人ものダンサーたちが次々と登場。ひとりひとりが各国を代表する一流カンパニーのトップダンサーというだけあって、彼らがずらりと並ぶと、舞台上はえもいわれぬきらびやかな雰囲気に。最初にマイクを手にしたパリ・オペラ座バレエ団芸術監督、オレリー・デュポンは「7回目の参加ですが、このフェスティバルに参加することは大きな喜び」と満面の笑顔。続いて同団のエトワールたち、またロシア語圏出身のダンサーたち、さらに英国、米国などのカンパニーを中心に活躍するダンサーたちが、皆口々に「ここでの体験はとても貴重」、「いい演技をしたい」とコメントした。今回はフェスティバルの創始者である佐々木忠次が2年前に亡くなってから最初の開催となるだけに、彼を直接知るダンサーたちからは、今回の舞台を「佐々木さんに捧げたい」(アレッサンドラ・フェリ)といった言葉も。世界の舞台でしのぎを削るライバル同士というよりも、同じ思いで結ばれたファミリーのような温かさを感じさせる彼ら。これも、世界バレエフェスティバルの伝統だろうか。ほかでは得がたい、充実の舞台が期待される。世界バレエフェスティバルは、Aプロが8月1日(水)から5日(日)まで、Bプロが8日(水)から12日(日)まで、東京・東京文化会館で開催。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2018年07月31日映画『ボリショイ・バレエ2人のスワン』が、2018年7月7日(土)より全国で順次公開される。本作は、バレエの名門ボリショイ・バレエ・アカデミーで、頂点を目指す2人の少女の美しくも厳しい闘いを描いた青春物語だ。貧しい家庭で育った隠れた才能の持ち主ユリアと、裕福な家に生まれエリートダンサーとして期待を背負うカリーナ。境遇から踊りのスタイルまで全く異なる2人は、やがて親友として、そしてライバルとして、恋とバレエを競い合う。本作の見所は、世界で活躍する一流のダンサーばかりを集めた豪華なキャスト陣だ。主役ユリアには、数々の国際コンテストで優勝後、ポーランド国立バレエ団を拠点に活躍するマルガリータ・シモノヴァが出演。ライバルのカリーナには、実際にボリショイ・アカデミーを優秀な成績で卒業後、ロシア・ナショナル・バレエ劇場で古典的演目すべてに出演したアンナ・イサエヴァが抜擢された。さらに、2人が憧れる相手役は、史上最高と称されるダンサー、ニコラ・ル・リッシェが演じる。華やかな踊りの世界の人間ドラマはもちろん、世界最高峰のボリショイ劇場を舞台に繰り広げられるステージは圧巻だ。【詳細】映画『ボリショイ・バレエ2人のスワン』公開日:2018年7月7日(土) ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開監督:ヴァレーリー・トドロフスキー脚本:アナスタシア・パルチコヴァキャスト:ルガリータ・シモノヴァ、アンナ・ イサエヴァ、アリーサ・フレインドリフ、ニコラ・ル・リッシュ© Valery Todorovsky Production Company■ストーリーボリショイ劇場擁するバレエ・アカデミーに入学した2人の少女。貧しい炭鉱町出身で伸びやかな身体と才能を持つユリアと、お金持ちの家に生まれ美しく気高い容姿を持つカリーナ。カリーナの優雅で完璧な踊りは生徒の中でもひときわ輝き、講師陣期待のエリートとしてプリマ候補に。一方でユリアの隠された跳躍力や表現力を、かつて伝説のプリマで講師のガリーナだけは見抜き、才能を伸ばそうと手を差し伸べる。境遇もスタイルも全て正反対の2人が、最大の親友でありライバルとなり、過酷なレッスンに耐えながら、恋とバレエを競いあう。最後に主役の座をつかむのはー。
2018年07月08日6月下旬、ウラジーミル・ブルメイステルの振付・演出による『白鳥の湖』を上演する東京バレエ団がリハーサルを公開、その後の記者懇親会で斎藤友佳理芸術監督、主演の沖香菜子、宮川新大らが舞台への思いを語った。【チケット情報はこちら】公開されたリハーサルは第3幕。数あるヴァージョンのなかで特にドラマティックといわれるブルメイステル版ならではの、エネルギッシュな、独特の魅力にあふれた幕だ。ジークフリート王子の花嫁選びの舞踏会。次々と登場する各国の踊りのダンサーたちは、実は悪魔ロットバルトの手下という設定で、その踊りでジークフリート王子をじわじわと誘惑、宮川演じるジークフリート王子は、沖演じるオディールに心奪われ、ついには大切な女性オデットを裏切り、彼女を呪いから救うチャンスを失う──。東京バレエ団は2016年2月に本作をバレエ団初演。これを観た著作権保有者のナタリヤ・ブルメイステルが「(1953年の)初演を思い出した」と賞賛したという。とくにソリスト、群舞のダンサーたちが一体となってドラマを作り出すこの第3幕は圧巻で、今回の再演でも迫力の舞台が期待される。懇親会冒頭で「今回はこれを3キャストで上演、上野水香と柄本弾、川島麻実子と秋元康臣に加え、沖と宮川が初めて挑戦しますが、それぞれに全く違う良さがある。ぜひ全キャストを観ていただきたい」と話す斎藤。この春プリンシパルになったばかりの沖と宮川を、「そこで満足してほしくない。常にハングリーで、謙虚でいてほしい」と激励した。オデット/オディール役の沖は「この役にこうして取り組めることは奇跡。両役ともに私はどうしても幼くなりがちなので、初々しさの中にも大人っぽさが出せたら」、宮川は「これは(在籍していた)ダンチェンコ(モスクワ音楽劇場)で観て、『白鳥の湖』って面白い!と実感した版。振付のない部分、自分で作らなければならない部分は難しいが、幕があく最後の一秒まで突き詰めたい」と抱負をのべた。さらに「こんなに大変だと知っていたら、やらなかった(笑)」と斎藤が冗談をとばすのは、今回一新した衣裳のこと。ブルメイステルの演出意図にかなうものを、と初演時には装置をしつらえたが、今回は第1幕、第3幕の全衣裳を新製作。「これでいつでも好きな時に上演できるようなった。『白鳥の湖』はどうしてもそうしたかった」と思いを明かす。小物類も含めて200点ほどにものぼる衣裳のひとつひとつに、斎藤の、スタッフたちの強い思いが込められている。東京バレエ団公演ブルメイステル版『白鳥の湖』は、6月29日(金)から7月1日(日)まで、東京・東京文化会館にて上演。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2018年06月14日子どもたちに人気の習い事のひとつ「バレエ」。でも、必ず耳にするのが「バレエはお金がかかる」という言葉…一体どれくらいかかるもの?子どもから大人まで、長くバレエを指導しているクラシック・バレエ講師の四家恵先生に、金額の相場について聞きました!子どものバレエの「月謝」と「入会金」の相場は?子どもの習い事について親同士が話すときに、よく耳にする「バレエってお金がかかるから…」の言葉。豪華な舞台や衣装のためか、ほかの習い事に比べて、なんだかお金がかかりそうなイメージがありますが、本当にお金がかかるのでしょうか?「いくらぐらいを『高い』と取るかは、各ご家庭で異なると思いますが、ピアノや絵画、水泳、柔道、書道など、さまざまな習い事と比べて、桁外れに高いということはないと思います。普段のレッスンで必要なのは、お教室に払う月謝と、ウェアやシューズなどの消耗品。ただし、発表会に出演する場合は、その価格や頻度もお教室によって異なるので、イレギュラーな費用がかかってきます」(四家先生、以下同)まず、子どものクラスの月謝とは、いくらぐらいなのでしょうか?「幼稚園児の場合は大抵、週1回レッスンで、月謝(月4回)は7000~8000円程度。安いところでは5000円、高いところでは1万円のところもあります。年齢が上がるにつれて、週のレッスン回数が増えていき小学校低学年~中学年で週2回レッスンとなり、月謝は1万~1万2000円程度。小学校高学年になると、子どものレベルや本気度によって、レッスン回数が変わるので、月謝もそれに合わせて上がっていきます。ただし、この『相場』も先生や地域によって変動があります」なお、たまに「月謝をチケット制と勘違いしてしまう親御さんがいる」そうです。「月謝とは、毎月決まった固定額を納める制度なので、たとえ子どもが月3回しか受講できなかったとしても、月4回分の金額を納めていただくことになります。子どものクラスは、大人のクラスと異なり、チケット制を導入しているお教室は少ないので、基本的には『毎月、決まった額を払う』心づもりが必要です。ただ、子どもが長期的に休まないといけないなど、やむを得ない事情がある場合は先生に相談してみてください」最初は入会金がかかるのでしょうか?「ほとんどのお教室に入会金があり、5000~1万円程度のことが多いです。ただ時々、キャンペーン期間などで、半額または無料になることも。また、私の教室もそうなのですが、最初の1カ月は『お試し期間』として入会金はなしで月謝のみいただいて、2カ月目に月謝と合わせて入会金をいただくことも。最初の1カ月をかけて、そのお教室に合うかどうかを吟味できるので、このシステムを取っているところを選ぶと安心かと思います」消耗品のレッスンウェアやシューズはいくらくらいかかる?次に、普段のレッスンで必要になる消耗品について教えてください!「レッスンの際に必要なウェアは、女の子の場合はレオタードとピンクタイツ、男の子の場合はタンクトップやTシャツにタイツやスパッツが多いです。メーカーによって値段は変わりますが、幼稚園児から小学校低学年用の女の子用レオタードで、4000~8000円程度。高いものでは1万円を超えるものもあります。タイツは1足あたり2000円程度、ソックスは1000円程度です。男の子用のトップスは4000~6000円程度で、タイツやスパッツは3000~5000円程度が多いでしょう」幼いころは週1~2回のレッスンなので、何枚も購入する必要はないそう。育ちざかりなので、数年置きに買い替えは必要ですが、バレエのウェアは丈夫にできていることが多く、また伸縮性にも優れているので、意外に長持ちするそうです。「さらに、バレエを踊る際には、バレエ・シューズが必要です。シューズは男女とも、1足あたり2000~3000円程度。シューズは足にピッタリと合うものを履かないと、踊りにくいうえ、怪我につながることもあるので、足の成長に伴ってこまめな買い替えが必要になります。また、幼稚園児のときはシューズではなく、ソックスを指定するお教室もあります」ちなみに、バレエと言えば女性ダンサーが履くトウ・シューズ!「トウ・シューズは骨が成長し、履くための筋力を得た11~12歳ごろから、先生に許可をいただいてから履き始めます。メーカーによって金額に差があり、1足あたり5000~1万円程度です」なお、上記以外の消耗品としては、女の子が髪をシニヨン(お団子)にまとめるためのゴムやネット、ピン、スプレーなどがあります。気になる「発表会」の費用はおいくらが相場?「バレエにお金がかかる」と言われる理由は、おそらく発表会でしょう。発表会に出演するには、大体いくらかかるのでしょうか?「ひと口に発表会と言っても、その規模や頻度、出演する演目数、パートナーの有無によってもかなり変わります。一般的な発表会で、グループで踊る演目に2つほど出演する場合は、1回の発表会につき10万円程度が多いです。このなかには、普段のレッスンとは別に講師が指導するリハーサル代や衣装代が含まれています。なかには、20万円かかるお教室もありますが、一方で『おさらい会』のようにスタジオで行う小規模なパフォーマンスの場合は5万程度で済むこともあります」発表会は「生徒は必ず出なければいけない」というところもあれば、「希望者のみの自由参加」のところも、また発表会を開催しないお教室もあるそう。さらに、価格は安くても、頻度が高い場合も…。お金が気になる場合は、入会前に発表会の有無や金額をリサーチしておいたほうが安心でしょう。(取材・文:富永明子)
2018年06月04日子どもたちに人気の習い事のひとつ「バレエ」。いざお教室を選んで通わせようと思っても、何も準備がないと、親も子どもも心配になってしまうもの。子どもから大人まで、長くバレエを指導しているクラシック・バレエ講師の四家恵先生に、習い始める前の準備について聞きました!そもそも、子どもがバレエを習うメリットとは?バレエのレッスンは、厳しくてハードな印象があり、子どもがついていけるのか…と心配になるママパパも多いもの。子どものころにバレエを習うと、どんなメリットがあるのでしょうか?「バレエは美しい音楽に合わせて踊る芸術です。子どものころからレッスンを積み重ね、長い時間をかけてバレエを踊るために必要な筋肉をつけていきます。バレエは体の中心軸を引き上げて踊るので、正しくレッスンをすれば体幹が強くなって、まっすぐで美しい姿勢を身につけることができます。近ごろは、お子さんの姿勢が悪いとお悩みの親御さんが多いので、正しい姿勢に整えやすいのは大きなメリットです。また、筋肉をよく伸ばして踊るので、柔軟性を高め、怪我をしにくい体を作ることもできます」(四家先生、以下同)また「バレエを習っている子はお行儀がいい」と言われることも多いほど、礼儀作法をしっかりと教えてもらえるのも嬉しいところ。「ご挨拶から言葉遣い、立ち居振る舞いまで、普段のレッスンから礼儀作法を教えていきます。同じクラスにいる生徒たちとの協調性はもちろん、一緒に踊るためのコミュニケーション力を鍛えられることも。また、発表会になると年上の生徒たちとの交流もあり、さまざまな年代の人と触れ合うなかで身につくマナーも多いでしょう」さらに、美しい音楽を聴いて踊ることで音楽性やリズム感も鍛えられるそうです。お教室に通うとき、どんなものを準備すればいいの?では、子どもがお教室に通うときには、どんなものを準備すればよいのでしょうか?バレエショップに足を運ぶと、かわいいレオタードがたくさんあって目移りしそうですが…。「レッスンの際に必要なウェアは、女の子の場合はレオタードとピンクタイツ、男の子の場合はタンクトップやTシャツにタイツやスパッツのことが多いです。ただし、通い始める前に買ってしまわないこと!というのも、お教室ごとにウェアにルールを設けていることが多く、せっかく買っても無駄になる場合があるからです。子どものウェアはユニフォームのようなもの。先生が、生徒の体の使い方を見極めるため、あえておそろいで、体のラインがしっかり見えるウェアを指定することがあります。また、タイツも微妙に色合いが異なるものがあるので『ピンクであればよいだろう』と買うと、NGが出てしまうことも。幼稚園児はタイツではなく、ソックスを履かせるお教室もあります。購入前に、通うお教室の先生に必ず確認しましょう」また、シューズ選びも慎重におこないたいところ!「『子どもはすぐに成長するから』と、つい大きめのシューズを選ぶ親御さんは多いのですが、バレエを正しく踊るためには足裏を鍛え、床をしっかりとつかむ必要があります。そのため、大きすぎたり小さすぎたりすると、適切に鍛えることができないうえ、怪我につながることも。シューズはとても大切なので、先生に選んでいただくか、またはバレエショップのシューフィッターさんに選んでいただくなど、プロに任せたほうがよいでしょう」ちなみに、バレエと言えば思い浮かべる人の多いトウ・シューズですが、11~12歳ごろから履き始めるのがほとんど。骨が成長し、踊るために必要な筋肉を身につけてから、先生から許可をいただいて履くものです。子どもが憧れるあまり、先生の許可なく買ってしまう親もいるそうですが、怪我につながるので絶対にやめましょう。子どものバレエ・クラスでは、どんなレッスンを学ぶの?初めてクラスに参加するときは、緊張するもの。いったい、どんな内容のレッスンをおこなっているのでしょうか?「幼稚園児のクラスでは、ほとんどバレエらしい動きはありません。でも、その積み重ねが、ゆくゆくバレエを踊るための姿勢を身につけ、正しいポジションでさまざまなステップをこなすためには必要なのです。私のクラスでは、まずさまざまなストレッチやエクササイズをおこないます。たとえば、お尻歩きをすることで体幹を鍛えたり、足指じゃんけんをすることで足裏を鍛えたりします。また、ケンケンパーをしたり、スキップをしたり、背伸びしたりして脚力を鍛えていきます」通常、バレエのレッスンはまず、バーと呼ばれる棒につかまって「バー・レッスン」をおこない、その後、スタジオの中央で両手を離して踊る「センター・レッスン」へと進みます。しかし、体ができあがっていないうちは、まずバーを通して体の軸を整えていくそうです。「小学校低学年のうちは、両手でバーにつかまって、簡単な動きをおこないます。それに慣れてきたら、小学校中学年ごろから、片手でバーにつかまって踊るようになります。片手になると、片足で体を支える動きも増えてくるので、そこでブレずに踊るためには、まず両手バーできちんと姿勢や筋肉を身につけておくことが必要です。バレエの舞台は華やかですが、レッスンは決して派手なものではありません。幼いころから、小さな動きをコツコツ積み重ねることで、両手を離して舞台で踊れる体を養っていくのです」初めてバレエを習うお子さん向けの解説書もたくさんあり、さらにDVDやインターネットの動画でも、バレエ用語やレッスン内容を解説したものは多いです。レッスンに参加する前に観ておくと、子どもも安心して初レッスンに臨めるはず!適した教材がわからないときは、お教室の先生に尋ねてみてくださいね。(取材・文:富永明子)
2018年06月01日子どもたちに習わせたい人気の習い事ごとのひとつに「バレエ」があります。でも、少し調べてみるとさまざまな種類のお教室があり、ママたちは「どのお教室がうちの子に合うの?」と頭を悩ませることも…。子どもから大人まで、長くバレエを指導しているクラシック・バレエ講師の四家恵先生に、お教室選びのコツを聞きました!そもそも、バレエを習い始めるのに適した年齢とは?よく話題になるのが「バレエって何歳から習わせたらいいの?」ということ。3歳だと早すぎる気もするし、でも小学生からだと上達するには遅いのかもしれないし…。四家先生、バレエを始めるのに適した年齢はありますか?「3歳か4歳からクラスを開講しているお教室が多いです。でも、始めるのが早ければ早いほどよい、というわけではありません。たとえば、有名なダンサーの吉田都さんや熊川哲也さんは小学校中学年から始めた方々です。上達には本人のモチベーションが関わってきますので、急ぐ必要はありません。ただ、本気で取り組みたい場合はとくに、10歳くらいには始めておいたほうがよいでしょう」(四家先生、以下同)幼稚園生から始める場合、子どもを通わせられるかどうかは、次の基準をクリアできているとよいと四家先生は言います。「まず『立つ』『座る』など、簡単な日本語が伝わるかどうか。おしめが取れているかどうか。そして、40分ほどのレッスン中、ママやパパと離れていられるかどうか。この3つの基準がクリアできていれば、お子さんも苦痛なく、レッスンを受けられると思います。もちろん、講師としても子どもたちが飽きないように、さまざまな工夫をこらしますが、親御さんと離れて泣き通しの場合は『もう少し、大きくなってからのほうがよいかもしれません』と、お話する場合もあります」子どもに慣れていて、スムーズに会話できる先生を選ぶ!上記の基準をクリアしている場合、お教室を選ぶときは、どんな注意点があるのでしょうか?たくさんあるお教室から、子どもに合う先生を見つけるのは難しく、悩んでしまうママやパパも多そうです。「まず大切なのが、先生との相性。これは『子どもと先生の相性』もそうですが、実はそれ以上に『親と先生の相性』も大切なポイントとなります。幼いころのバレエは、普段のクラス中の態度など、教師から親へ伝えることも多いもの。また、その日の子どものコンディションを、親から教師へ伝える機会も多いです。さらに、発表会を開催するお教室の場合、発表会の練習が始まると普段よりも練習量が増え、さらに衣装の準備や本番当日の役割分担など、親と先生との間のコミュニケーションは密になります。そんなとき、会話の波長が合う先生だとお互いのストレスが減ります」つい「子どもが先生になじめるか」を気にしてしまいますが、見学や体験レッスンに行ったときには、親が先生と会話をしてみることも重要なようです。「あと、子どもに慣れている先生を選ぶとよいでしょう。子どものころのバレエは、情操教育の面があります。音楽を聴いて、楽しく踊りながら、正しい姿勢を身につけるとともに、マナーや礼儀作法を学びます。そんなとき、子どもの喜ぶツボを知っている先生だと、子どもも継続しやすいと思います。たとえば、私は右と左の区別がついていない子には、片方のシューズにキラキラ光るシールを貼ったり、姿勢をよくするために頭にリボンを結んで『引き上げる』感覚を養ったりします。子どもにとって、ひとつの場所で長い時間を過ごすのは大変なことなので、飽きずに楽しみながら学べる工夫をします」どんな規模のお教室に通わせたいかを見極めるほかに「入会前に確認したほうがいいポイント」は、どんなものがありますか?「バレエのお教室には、さまざまな種類があります。大きなバレエ団付属の学校のこともあれば、代表の先生の下に何人もの教師がついて構成している大中規模のお教室もあり、また基本的には先生ひとりで運営している個人教室もあります。大きなスクールだと、先生と親の間に事務局が入ることが多くなりますが、事務局があるからこそ、システムがきちんと成立しているメリットも。規模が大きめの個人教室の場合、親だけで構成するPTAのような『母の会』がある場合も。発表会のときだけ集まることもあれば、普段から季節ごとに催しをして、まさに学校のようなお母さん付き合いが発生します。先生ひとりの個人教室では、先生と直接会話をする機会が増えます」どの種類を選ぶかは、親次第。「母の会」で集うことが安心感につながる親もいれば、事務局に間に入ってもらうことで安心する親もいます。また、先生と直にやり取りをしたい親もいるので、どんなタイプのお教室だと安心して子どもを通わせられるか、じっくり見極めたいところです。「ほかにも、通いやすい場所にあるか?どのくらい細かくクラス分けしているか?先生が持っているスタジオか、またはレンタルスタジオか?週のレッスン回数と月謝はいくらか?発表会の有無と費用は?お試し期間を経てから入会できるか?など、確認したいポイントはたくさんあります。そのためには、事前に『子どもに、どんな先生のもとで、どんなふうにバレエを楽しんでほしいか?』を考えておくとよいですよ。かつて、名プリマのマーゴ・フォンテーンが『よい先生選びは親の責任』と語っているのを読んだことがあります。子ども自身が先生を選ぶことはできないので、代わりにしっかりと見学をしたり、先生と話したり、評判をリサーチしたりしてから決めましょう」一度お教室に入会したら、基本的にはほかの教室との「かけもち」はご法度の世界!またほかの教室への移籍もしにくいのが現実なので、最初が肝心です。選ぶポイントを決めて、じっくりとお教室選びをおこないましょう。(取材・文:富永明子)
2018年05月28日英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の日本公演がまもなく開幕、英国発のふたつの傑作バレエが上演される。主演ダンサーのひとり、プリンシパルの平田桃子に、上演作品の魅力、見どころについて聞いた。英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団チケット情報英国第二の都市といわれるバーミンガムを拠点とする彼ら。「年間130公演のうち、半分以上は英国内外をめぐるツアーなんです」と話す平田だが、3年ぶりとなる日本公演には、やはり格別の思いを抱いているよう。「前回とはメンバーもがらりと変わり、私はいまや年長のほう。皆を引っ張っていかねばというプレッシャーもあります」と、その重圧をはねのけるかのように、華やかな笑顔を見せる。前芸術監督、ピーター・ライトが手がけた『眠れる森の美女』で幕を開ける日本公演。平田はつづく後半の演目『リーズの結婚』に主演する。英国バレエの巨匠、フレデリック・アシュトン(1904~1988)の代表作のひとつで、「英国ならではの、ストーリー性の強い、楽しさにあふれたバレエ」とその魅力を説く。舞台は、のどかで美しい田園風景のなか。平田演じるリーズが、金持ちの息子との結婚をすすめる母シモーヌに反発、恋人コーラスと結ばれるまでの騒動を描くコメディ色たっぷりのバレエだ。「リーズは、ちょっと私と似ているかもしれません。天真爛漫で、恋におちたらもう──(笑)!地のままでいけるんじゃないかなって思います」と笑うが、「いろんな要素、いろんな魅力が詰まった作品。きっと楽しんでいただけます」とも。たとえば、入団した年(2003年)に初めてこの作品で踊った第1幕の雌鶏!「着ぐるみで踊る役なので、動きにくいし、前は見えないし(笑)。でもこれがまさに英国バレエならでは、大きな見どころ。アランの役者ぶりも、シモーヌの木靴の踊りも、コメディならではのタイミングで笑いを誘います。主役ふたりのリボンを使った踊りや最後のパ・ド・ドゥはしっとりと感動的だし、ダイナミックなリフトなどテクニックの見せ場もある」と、話は尽きない。コーラス役を踊るゲスト、マチアス・エイマンの登場も目が離せない。「パリ・オペラ座バレエ団のエトワールとして長年活躍されてきた方ですから、共演すると聞いた時はもう大喜びでした。先週初めて一緒にリハーサルをしましたが、その技術の精確さ、美しさに目が釘付けに。お互いに自然に出てきたものを返し合う──。いい手応えを感じています!」英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団日本公演は5月18日(金)から20日(日)が『眠れる森の美女』、5月25日(金)から27 日(日)が『リーズの結婚』、いずれも東京文化会館にて。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2018年05月10日世界的トップ・バレエ・ダンサーが集結した、豪華バレエ・エンターテインメント『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』が、7月7日(土)に日本公開されることが決定。併せて、本予告&本ビジュアルが公開された。■ストーリーボリショイ劇場擁するバレエ・アカデミーに入学した2人の少女。貧しい炭鉱町出身で伸びやかな身体と才能を持つユリアと、お金持ちの家に生まれ美しく気高い容姿を持つカリーナ。カリーナの優雅で完璧な踊りは生徒の中でもひときわ輝き、講師陣期待のエリートとしてプリマ候補に。一方でユリアの隠された跳躍力や表現力を、かつて伝説のプリマで講師のガリーナだけは見抜き、才能を伸ばそうと手を差し伸べる。境遇もスタイルも全て正反対の2人が、最大の親友でありライバルとなり、過酷なレッスンに耐えながら、恋とバレエを競いあう。最後に主役の座をつかむのは――。■現役ダンサー、元パリ・オペラ座のエトワール…本物バレエ・ダンサー集結!ゴールデン・イーグル賞にて最優秀脚本賞受賞と作品賞ほか6部門にノミネートされた本作は、ロシア国立ボリショイ・バレエ・アカデミーで頂点を目指す2人の少女の挫折と栄光を描く青春物語。貧しいながらも天性のバレエの才能を持つユリアを演じるのは、リトアニア出身でスウェーデンやフランスの国際コンテストで優勝後、ポーランド国立バレエ団を拠点に活躍中の現役ダンサー、マルガリータ・シモノヴァ。またライバルのカリーナを、実際にボリショイ・アカデミーを優秀な成績で卒業後、ロシア・ナショナル・バレエ劇場で「白鳥の湖」をはじめ古典的演目全てに出演したアンナ・イサエヴァが演じる。そして、2人が憧れる相手役アントワーヌを、元パリ・オペラ座のエトワールで、パリ・オペラ座と並ぶ世界3大バレエ団の英国ロイヤル・バレエ団やボリショイ・バレエ団で活躍。現在はスウェーデン王立バレエ芸術監督で、バレエ映画の名作『オーロラ』(’06)にも出演したニコラ・ル・リッシュが務める。■本格的なバレエシーンも! 予告編到着公開された予告編では、ユリアがかつて伝説のバレリーナだったガリーナからその才能を見出されるシーンからスタート。現役の一流ダンサーが演じるレッスン風景や、キラキラとしたボリショイの華やかな舞台と共に、ユリアの波乱の恋やライバルとの出会い、葛藤を通して、ダンサーとしてそして人として成長していく姿が映し出されている。『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』は7月7日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開。(cinemacafe.net)
2018年04月02日Kバレエカンパニーのプリンシパル、浅川紫織が今年11月の『ロミオとジュリエット』を最後に引退することになり、芸術監督の熊川哲也と浅川による記者会見と、その浅川も主演する今月末の『白鳥の湖』の公開リハーサルが開かれた。【チケット情報はこちら】浅川は引退のタイミングについて「いつ決意した、ということではなく、6年前に大きな怪我をした時から、明日歩けなくなるかもしれない、踊れなくなるかもしれない、という状況でした。カンパニーのプリンシパルとしては、自分だけが歩けなくなるまで踊ればいいという考えにはなれません。責任がある中でこの流れになりました」と語る。生え抜きのプリンシパルの退団に、熊川は「(引退は)ダンサーには必ず訪れる、避けられないことですが、これからさらに成熟して素晴らしい演技が期待できる時期だけに、切ない気持ち、複雑な思いがあります」と悲しみを隠さない。「本人が葛藤して決めたことなので、親心として、11月までの公演を成功させて大きな花束をあげたい」。その熊川から「『白鳥の湖』初演(2003年)の前、ダンサーを求めてイングリッシュ・ナショナル・バレエのスタジオに視察に行き、浅川という、17歳の輝く成熟したダンサーに出会ったことは今も脳裏に焼きついています。容姿、脚、精神など、トップバレリーナに必要不可欠な条件を備えたダンサーだった。バレエは過酷なアートで、崩れた形も魅力的な絵画や彫刻などと違い、美しく夢を与えなければならない。加えてアジア人というハードルもある。それらをいとも簡単に超えたのが浅川。僕にとって誇りであり芸術活動の結晶です。全ての芸術のモデルに当てはまってもおかしくない存在だと思う」と絶賛され、浅川が涙ぐむひとコマも。16年間の在籍での忘れられない瞬間を問われ、「たくさんあるのですが、1番は入団して初めて立った『白鳥の湖』初日の拍手。その場に自分がいるというあの感動を忘れることは一生ありません」と答えた浅川。その思い出の『白鳥の湖』で浅川が主役のオデット/オディールを踊るのも、今月末が最後となる。「オデットとオディールは私が大切に踊ってきた役。この舞台を去る時期に踊れることは幸せです。自分の全てを投じるにふさわしい作品とキャラクターなので、できることをお見せして感動を届けたいと思います」。公開リハーサルでは、オデット役の浅川紫織とジークフリート王子役の宮尾俊太郎、そしてロットバルト役の石橋奨也が、第2幕冒頭を披露。王子とオデットの、驚きと戸惑いに満ちた出会いから、次第に心を通わせていくまでが、しっとりと描かれる。中でも浅川の落ち着いた気品あふれる踊りが印象的。指先から足先まで神経の行き届いたその動きは、残された時間を慈しんでいるようにも見えた。Kバレエカンパニーによる『白鳥の湖』は東京・オーチャードホールで3月21日(水・祝) から25日(日)まで上演。チケットは発売中。取材・文:高橋彩子
2018年03月16日3年に一度、世界のトップダンサーたちが東京に集結、2週間にわたって豪華な競演を繰り広げる世界バレエフェスティバルが、今夏、開催される。3月5日に都内ホテルで行われた記者会見で、その詳細が明らかにされた。世界バレエフェスティバル チケット情報記者会見では、フェスティバルを主催する公益財団法人日本舞台芸術振興会(NBS)の高橋典夫専務理事が登壇。1976年に第1回が実現し、その後3年に一度のペースで開催、世界的にも注目されるこのフェスティバルについて、「今回が15回目の開催。世界バレエフェスティバルの生みの親である佐々木忠次が2年前に亡くなり、その没後初の開催でもあります」と話す。2020年、東京五輪での文化イベントを見据えて「これを機会にさらにバレエ界が盛り上がれば」とも。さらに、「今回初めて株式会社コーセーに特別協賛をいただきます。日本経済新聞社に加え、これまでの大半の公演を開催してきた東京文化会館(公益財団法人東京都歴史文化財団)と初めて共催することに」と、同フェスティバルの大きな節目を印象づけ、「これは日本が誇る文化資源のひとつ」との思いを明かした。高橋氏とともに登壇した株式会社コーセーの北川一也執行役員宣伝部長は、「世界中のトップダンサーが集う公演の、クオリティの高さとインパクト、本物の美しさが見える機会をスポンサードしたい」多くのファンが注目するのは出演ダンサーの顔ぶれだが、開幕を飾る全幕特別プロ『ドン・キホーテ』に主演する二組のカップル──ミリアム・ウルド=ブラームとマチアス・エイマンらパリ・オペラ座のふたり、イングリッシュ・ナショナル・バレエのアリーナ・コジョカルとセザール・コラレスをはじめ、ボリショイ・バレエ、ハンブルク・バレエ団、英国ロイヤル・バレエ団ほか、世界の檜舞台で活躍するスター、33名がずらりと並ぶ。会見の後半では、世界各地のダンサーたちから届いたメッセージ動画が紹介され、その多彩さ、豪華さに、会場からため息が漏れた。質疑応答で「出演ダンサーの世代交代が進んだのでは」との声が寄せられると、「世界バレエフェスティバルの使命として、新しいダンサーを紹介していくことも重要」と高橋氏。見ごたえある舞台が期待される。世界バレエフェスティバルは、全幕特別プロ『ドン・キホーテ』が7月27日(金)・28日(土)、Aプロが8月1日(水)から5日(日)、Bプロが8月8日(水)から12日(日)、いずれも東京文化会館にて。チケットは4月4日(水)に先行発売開始。8月15日(水)には1日限りの〈ササキ・ガラ〉も予定されている。取材・文:加藤智子
2018年03月07日ハンブルク・バレエ団2018年日本公演が間もなく開幕する。1月29日に都内ホテルで行われた開幕記者会見には、ジョン・ノイマイヤー芸術監督とふたりのプリンシパルが登場、日本公演への思いを明かした。ハンブルク・バレエ団 チケット情報「あまり長くならないように、と言われています(笑)」と冒頭から穏やかな笑顔のノイマイヤー。「初来日(1986年)のずっと前から、私は日本に大きな影響を受け、ここではいつも特別な時間を過ごします。今回は私たちの、もっとも人気の高い作品を持って来ました。偶然にもひとつは女性が主役、もうひとつは男性のバレエです」と、自作について語り出した。公演期間前半に上演される『椿姫』は、世界各地の劇場で上演されている傑作だが、「どの公演も一度きり、ということを大切に演じてもらいたい。ここにいるアレクサンドル・トルーシュは、今回初めてアルマンを踊ります。パートナーはアリーナ・コジョカル。新たな組み合わせで見るということは、再発見ができるということ。彼らのリハーサルを見て、新たに気づいたり、新しい色付けをしたりしています」。もうひとつの『ニジンスキー』は、ノイマイヤーが「20世紀でもっとも重要なアーティストではないか」と信奉する天才ダンサー、振付家のヴァスラフ・ニジンスキーを題材としたバレエだけに、「話し始めたら朝までかかりますよ」とジョークを放つ。ニジンスキーという人物を描くバレエではあるが、「ドキュメンタリーではありません。彼の劇的な人生の断片を取り上げ、彼がいかに深い思いを持つ人間であったかということを表現したいのです」という。この日登壇したプリンシパルのひとり、アレクサンドル・リアブコは、2000年の初演時からニジンスキー役を踊っているが、「毎回、困難をともない、達成できるかどうか不安になる。全く他では体験したことのない特別な作品。皆さんの前で踊ることができて幸せです」と笑顔を見せる。一方のトルーシュは、「『椿姫』を最初に観たのは12~13歳の時。多分彼(リアブコ)が踊った舞台ですが、その時からこの役を踊ることを夢見ていました」と振り返る。『ニジンスキー』についても、「いろんな側面を持つ人物を表現できるのは、アーティストとして幸せなこと」と語った。期間中にはガラ公演『ジョン・ノイマイヤーの世界』も予定されている。ハンブルクの才能豊かなダンサーたちが総動員で紡ぐ、奇跡の舞台との呼び声も高い。公演は2月2日(金)から12日(月・祝)、東京文化会館にて開催。2月17日(土)にはロームシアター京都にて『ジョン・ノイマイヤーの世界』公演も。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2018年01月31日プーマ(PUMA)から、バレエにインスピレーションを得た「オンポイント(En Pointe)」コレクションが登場。展開されるのは、トレーニングやランニングなどワークアウトの時はもちろん、レイヤリングすることで日常のファッションスタイルにも取り入れやすいウェア&スニーカー。「バレエ」から着想した柔軟性「バレエ」からインスピレーションを得たウェアは、動きやすさを考慮したデザイン性が特徴。通気性の良いパワーメッシュ素材を取り入れたタイツやブラトップ、柔軟な動きに対応する長袖Tシャツなどが展開される。幅広のストラップやプリーツ、リブと様々なディテールが取り入れられた。サテン使いのスニーカースニーカーは、「バレエ」の世界観を彷彿させるサテン素材を使用した「フィナム サテン」「フィナム ロウ サテン」、柔らかくしなやかな着用感が特徴の新モデル「ミューズ エコー サテン」、ダンスシューズからインスピレーションを受けたシルエットの「ミューズ サテン」などが展開される。“ミレニアルピンク”カラーウェア&シューズは、いずれもフェミニンなパステルカラーの色味がポイント。ブラトップ、ロングTシャツ、ジャケット、スニーカーは“ミレニアルピンク”カラーで染められており、アクセントとして光るメタリックなカラーが随所に取り入れている。セレーナ・ゴメスが着こなす尚ビジュアルには、女優・シンガー・プロデューサーとして活躍するセレーナ・ゴメスが起用され、今回のオンポイント コレクションをスタイリッシュに着こなした。【詳細】オンポイント コレクション発売日:2018年1月18日(木)取り扱い:プーマストア、プーマ オンラインストア、プーマ取扱店の一部価格帯:・ブラトップ 3,780〜4,320円・ロングTシャツ 7,020円・タイツ5,400〜9,720円・スニーカー 9,720〜12,960円【問い合わせ先】プーマ お客様サービスTEL:0120-125-150
2018年01月22日奇跡のバレエ団として名高いバレエ・リュスの、実在の人物をモデルに描く『バレエ・リュスニジンスキーとディアギレフ』の著書・桜沢エリカさんにお話を伺いました。バレエに疎くても、ニジンスキーというダンサーの名前は聞いたことがあるだろう。とはいえ彼が活躍したバレエ・リュスを知っている人は、バレエ好きでもそう多くないかもしれない。しかし、シャネル、ピカソ、マティス、コクトーなど錚々たる芸術家とコラボしたバレエ団と聞けば、俄然興味が湧くはずだ。「私自身、バレエが大好きなのですが現代モノしか観ていなかったので、バレエ・リュスのことは知りませんでした。調べてみたら、今あるバレエの大本になっていると言っていいほどすごいバレエ団だったんです」物語の軸になるのは、ニジンスキーと、ディアギレフという天才プロデューサー。ニジンスキーはディアギレフと出会ったことで、ヨーロッパで一躍スターに。ふたりは同性愛の関係にあり、これまで描かれていたディアギレフ像は、良くも悪くもニジンスキーを支配する意地の悪いオジサンというイメージが強かったそう。しかしながら桜沢さんの描くディアギレフには、人間らしい魅力が。「いわゆるオネエだったと思うんですけど、自分の目指す世界観を完成させるための冷徹さを持ちつつ、占いを異様に信じていたりして、なんだかかわいらしいんですよね」ニジンスキーはというと、バレエ・リュスに在籍した期間が実際はそう長くなく、のちに精神を病んでしまうのだが、伝説化されている人物だけに描き方を悩んだようだ。「写真で見ると役柄によって全然雰囲気が違うし、スタイルも現代の感覚からするとあまりいいとはいえない。でもバレエシーンには、やっぱり力が入りましたね。若い頃はベッドシーンを描くのが好きだったんですけど、今はバレエシーンがそれに代わった気がします。体を描くのが好きなんでしょうね、きっと」陰のキーパーソンであるミシアというパトロネスとシャネルの描き方も効いていて、彼女たちの物語ももっと読みたくなる。事実とは信じがたいほど濃密な時代を知る入門編としては、申し分のない一冊だ。さくらざわ・えりか漫画家。10代でデビューして以来、恋愛マンガの名手としてコミック誌やファッション誌など多方面で活躍。『メイキン・ハッピィ』『天使』など著書多数。奇跡のバレエ団として名高いバレエ・リュス。史実としても楽しめるし、友情そして恋愛物語としても味わい深い。実在の人物をモデルに描くのは初だそう!祥伝社 1200円(C)桜沢エリカ/祥伝社フィールコミックス※『anan』2017年12月27日号より。写真・水野昭子(本)インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2017年12月26日ロシア国家劇場賞受賞、サンクトペテルブルグ都立最高劇場賞に輝いた注目のバレエ団、ロシア国立サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエが2年ぶりの来日中だ。マリインスキー・バレエのプリンシパルとして第一線で活躍し、惜しまれつつも引退したアンドリアン・ファジェーエフがトップとしてバレエ団を率いる。来日公演は12月22日「くるみ割り人形」より開幕。その直前リハーサルの様子を取材した。【チケット情報はこちら】クリスマスのパーティから物語が始まる「くるみ割り人形」。主人公の女の子クララがドロッセルマイヤーおじさんからくるみ割り人形をプレゼントに貰う。おもちゃの戦争に巻き込まれたり、王子様からお菓子の国へ誘われ、お菓子の精たちと楽しく過ごす「くるみ」の舞台は、さながら絵本から出てきた夢の国のようだ。序曲がはじまると、雪降る夜の町並みが舞台上に照らし出される。その道を様々な人々が通り過ぎてゆく。ある人は忙しそうに、ある人は楽しげに、そのひとりひとりに、それぞれのクリスマスの物語を感じさせる演出だ。ともすれば本編の入り口でしかないとも言える往来のワンシーンだが、監督であるファジェーエフはそれぞれを注意深く見つめ、気になればすぐさま「ストップ!」と声をかけ、自らスタイルを示し、そして舞台は、より生きたものに変化していく。開演直前のリハーサルにもかかわらず、わずか3分程度の序曲のリハーサルに費やした時間は正味15分。このディティールへのこだわりは全編を通して発揮されており、特にコールドバレエひとりひとりへの眼差しや指摘が印象に残った。開場直前ぎりぎりまでのリハーサルでも一切妥協しないその姿勢は、その日の観客の目にも納得のいくものであったに違いない。注目ダンサーはアレクセイ・ポポフ。ワガノワ・バレエ・アカデミーを卒業後、マリインスキー・バレエを経て、2016年のシーズンからファースト・ソリストとしてバイエルン国立バレエの団員となり、世界をまたにかけ活躍している。また同じくワガノワ・バレエの薫陶を受けた長澤美絵も出演。ドネツク国立バレエを経て、2010年にキエフ・クラシック・バレエに入団。2014年には、エストニア・タリン国際バレエコンクールにて賞に輝いた。来日公演は12月22日神奈川・藤沢市民会館大ホールでの「くるみ割り人形」で開幕。クリスマス後からは演目を「白鳥の湖」に変え、昭和女子大学人見記念講堂、オーチャードホール、大宮ソニックシティなどを巡演。1月14日(日)大阪・グランキューブ大阪メインホールまで。チケットは発売中。取材・文:yokano
2017年12月25日