11月9日、ミュージカル・ピカレスク『LUPIN~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』が東京の帝国劇場で開幕した。日本でも長く親しまれてきたモーリス・ルブランの人気小説「怪盗ルパン」シリーズをベースに、小池修一郎が脚本・歌詞・演出を手がけ、小池とは『1789 ―バスティーユの恋人たち―』でもタッグを組んだ、フランスの作曲家ドーヴ・アチアが音楽を担当している。日本発の新しい冒険活劇ロマンの誕生だ。小池の書き下ろし作品が帝国劇場で上演されるのは今回が初めてで、同じく帝国劇場では単独初主演となる古川雄大が、主人公アルセーヌ・ルパン役に挑む。そのほか、カリオストロ伯爵夫人や令嬢クラリス、悪役ボーマニャン、高校生探偵イジドール、ガニマール警部、名探偵シャーロック・ホームズなどなど、シリーズ中に登場する馴染みのキャラクターが、ひとつの物語の中、新たな視点で描かれている。今は廃墟となったテンプル騎士団の教会跡。舞台中央には、騎士団に伝わる7本枝の燭台“生命の樹メノラー”が置かれている。財宝の在り処を教えてくれるというこの燭台の失われた7本の枝を巡って、登場人物たちが駆け引きを繰り広げるのだ。教会を再建して施療院を作る計画の会見で、デティーグ男爵令嬢クラリス(真彩希帆)が、燭台の由来と、院長に就任する決意を歌う(「願いが叶う日」)。真彩は美しいソプラノで、キーが高い難曲を伸びやかに歌いこなしている。そこへ枝の1本と思われる棒を鑑定した考古学者マシバン博士が現れ、枝は本物だと告げた。クラリスは年老いた博士をいたわるが、計画の中心人物で、テンプル騎士団研究会会長を名乗るボーマニャン(黒羽麻璃央/立石俊樹)は、傲慢な態度でその枝を取り上げ、去っていく。ひとり残された博士は、本物は自分が持っていると告白。しわがれ声は若く張りのある声に変わり、鮮やかに変装を解いてルパンが姿を現す。巧みな変装で観客の目も欺き、「俺はルパン」と歌う颯爽とした古川の怪盗紳士ぶりが、なんともカッコいい(「Je m’appelle LUPIN」)。また、デティーグ男爵(宮川浩)の屋敷で開かれた夜会では、アメリカ帰りの実業家ヴァルメラに変装し、ボーマニャンとの婚約を迫られて拒否するクラリスの信頼を得る。ルパンの時とは打って変わった古川のキザで大げさな物言いが、笑いを誘う。そこに色男のジェブール伯爵が登場。女性たちの心を捉えるが、彼の正体は謎の美女カリオストロ伯爵夫人(柚希礼音/真風涼帆のWキャスト)だった。夫人はルパンの名をかたって男爵所蔵の絵画と燭台の枝5本、そしてクラリスを奪い去る。ボーマニャンや部下のレオナール、ルパンやホームズまでをも虜にするこの魔性の女役をゲネプロで演じた柚希礼音は、元男役の経験を生かしながら、男役時代とはまた違う独特の妖しい美しさで、男たちだけでなく、観客をも魅了した。盗難騒ぎで混乱する屋敷には、ルパンを追うパリ警視庁のガニマール警部(勝矢)がやってきて捜査を開始する。消えたクラリスを思い、今まで出会ったどの女性とも違うと歌う古川の歌声がせつない(「白いバラのような君」)。翌日、男爵邸に集まった記者たちの中には、変装したルパンの姿があった。髪の色や服装だけでなく、声色や仕草、喋り方まで変えてみせる古川は、変幻自在の活躍で大いに楽しませてくれる。屋敷にはルパン・マニアを自認するイジドール(加藤清史郎)も紛れ込み、独自の推理を語る。ついにはイギリスからシャーロック・ホームズ(小西遼生)も到着するが、大真面目なところが逆におかしいこの有名な探偵を、小西が絶妙な味わいで演じているのも見どころのひとつだ。2幕では、婦人参政権運動の活動家たちによるオークションが開かれ、男子禁制の会にルパンやホームズ、イジドールが潜り込むのだが、その場面のルパンの変装、そしてダンスも必見だろう。彼が心を通わせるクラリスと、ひとつのナンバーをキーの高さで歌い分けてみせるのも楽しい。後半は物語がどんどん動き出し、最後のどんでん返しまで息もつかせぬ展開が見逃せない。帝国劇場公演は11月28日まで。その後、名古屋・御園座、大阪・梅田芸術劇場メインホール、福岡・博多座と続き、来年2月11日に、古川の出身地、長野の長野ホクト文化ホールで千秋楽を迎える予定だ。取材・文:原田順子<公演情報>ミュージカル・ピカレスク『LUPIN~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』脚本・歌詞・演出:小池修一郎(宝塚歌劇団)音楽:ドーヴ・アチア出演:アルセーヌ・ルパン:古川雄大クラリス・デティーグ:真彩希帆ボーマニャン:黒羽麻璃央(東京公演のみ)/立石俊樹 ※Wキャストイジドール・ボートルレ:加藤清史郎ガニマール警部:勝矢シャーロック・ホームズ:小西遼生カリオストロ伯爵夫人:柚希礼音(東京・名古屋・大阪・福岡公演のみ)/真風涼帆 ※Wキャスト他2023年11月9日(木)~11月28日(火)会場:東京・帝国劇場【全国ツアー公演】2023年12月7日(木)~12月20日(水)会場:愛知県名古屋・御園座2023年12月29日(金)~2024年1月10日(水)会場:大阪・梅田芸術劇場メインホール2024年1月22日(月)~1月28日(日)会場:福岡・博多座2024年2月8日(木)~2月11日(日)会場:長野・ホクト文化ホール大ホール公式サイト:
2023年11月16日古川雄大がアルセーヌ・ルパン役で主演を務めるミュージカル・ピカレスク『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人~』のメインビジュアルが公開された。11月に東京・帝国劇場にて上演される本作は、フランスの小説家・モーリス・ルブランによる「アルセーヌ・ルパン」シリーズを下敷きに、自由な発想で、各キャラクターが入り乱れる冒険活劇ロマン。宝塚歌劇団の小池修一郎が脚本・歌詞・演出を務め、音楽はドーヴ・アチアによる書き下ろしとなり、日仏のミュージカル界を代表するクリエイターのタッグで贈る新作ミュージカルとして大きな注目を集めている。公開されたメインビジュアルは、話題を呼んだキャストソロビジュアルに引き続き、世界的写真家・レスリー・キー撮影による、絵画を思わせるエレガントでゴージャスなビジュアルに仕上がった。東京公演後は愛知、大阪、福岡、長野に巡演予定。出演は古川のほか、真彩希帆、黒羽麻璃央(東京公演のみ)、立石俊樹、加藤清史郎、勝矢、小西遼生、柚希礼音(東京・名古屋・大阪・福岡公演のみ)、真風涼帆ら。<公演情報>ミュージカル・ピカレスク『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』脚本・歌詞・演出:小池修一郎(宝塚歌劇団)音楽:ドーヴ・アチア【キャスト】アルセーヌ・ルパン:古川雄大クラリス・デティーグ:真彩希帆ボーマニャン:黒羽麻璃央(東京公演のみ)/立石俊樹イジドール・ボートルレ:加藤清史郎ガニマール警部:勝矢シャーロック・ホームズ:小西遼生カリオストロ伯爵夫人:柚希礼音(東京・名古屋・大阪・福岡公演のみ)/真風涼帆ほか【東京公演】11月9日(木)~28日(火) 帝国劇場【全国ツアー】2023年12月 名古屋・御園座2023年12月~2024年1月 大阪・梅田芸術劇場メインホール2024年1月 福岡・博多座2024年2月 長野・ホクト文化ホール 大ホールチケット情報公式サイト:
2023年08月24日