かつて「好きになった人とすぐに暮らしたい」と言ったアイドル(のちに女優)がいました。彼女が結婚前に同棲したという事実こそありませんが、「好きになったら一緒に生活したい」という女性の願望を言い当てています。願望がやがて「好きな人とデートしているうちに、いつのまにか暮らしていた」が自然の流れですね。ところで「いつも一緒にいたいから同棲した」カップルが結婚に至った理由とはなんでしょう。同棲カップルが別れた原因を解き明かしていけば、同棲が得か損であるかが見えてきます。その前に、まず同棲の本質から紐解く“同棲で傷つかない方法”を提案しますね。同棲はあくまでも「お試し」期間結婚を前提に同棲するカップルにとって、同棲はあくまでも結婚のお試し期間、つまり結婚のインターンシップのはず。でもいつの間にかずるずるとマンネに陥り、結婚に至らないどころか「最近彼とセックスレス」と悩む女性もいます。同棲はあくまでも同棲。婚姻という制度を否定しているならまだしも「結婚を前提」なら、さっさと結婚すべし!でも恋愛感情をいつまでも大切にしたい人もいるでしょう。最初から同棲というスタイルを選ぶカップルは、結婚によって男と女の関係がマンネリにならないように、ある程度の緊張感を同棲をすることによってキープしたいという目的もあるのです。それなのに、同棲生活そのものがマンネリ化なんて、ものすごく最悪な状態といってもいいでしょう。一方、結婚ではなく同棲という関係によって、緊張感がキープされるため、同棲カップルを魅力的にさせる場合もあります。そのため他の異性からアプローチをかけられる“モテ男”“モテ女”に生まれ変わることも。該当する映画を挙げてみるなら、フランスの恋愛映画の巨匠の一人であるエリック・ロメールの「友達の恋人」(88年)この映画は20代の女性2人と、男性3人が登場。レアという自由奔放な女性と同棲する内気な男性・フェビアンを好きになるブランシェの葛藤が描かれています。とてもキュートな恋愛映画で、登場人物に共感する人も多いでしょう。 レアにとって、同棲は自由恋愛の一環。一緒に暮らしている男がいながら、恋愛も楽しんでいます。でもレアのように美味しいところだけゲットする女性が必ずしも幸せになれるかといえば、そうとも言えない。ちゃっかりした女性は、自分の本心よりもその場の状況で決めがちなのですから。同棲における男女関係のマンネリ化は最も危険PR会社勤務の小泉結衣さん(仮名・32歳)は、5年間の同棲にピリオド。相手は2つ上のエンジニアでジャニーズ系のイケメン。同棲生活1年目は二人で外出したり旅行に出かけるなど、とても楽しかったそうですが、2年、3年と経つうちに、すれ違いが増えてやがてセックスレス。「3年目の時に、話し合っておけばよかったと今でも後悔しています」と小泉さん。原因はSEの彼の仕事が激務になったため。忙しくなってきた3年目に、結婚を切り出せずに、いつの間にかすれ違いになっていったそうです。「いくらイケメンでも、セックスレスではただの同居人。出産を希望する私と、仕事優先の彼とでは、価値観が合わないことがわかりました」5年ぶりに一人暮らしに戻った小泉さん。早めに婚活をスタートさせたいそうです。小泉さんは「価値観が合わない」と別れましたが、それより辛いのは、結婚もしない、でも別れないという優柔不断な男性と同棲したケース。求人情報サイトの営業を担う戸塚佳奈さん(仮名・35歳)は同じ年の高学歴で大企業勤務の男性と同棲6年目を迎えました。彼からはプロポーズの気配もなく、セックスレス3年。しかも一人暮らしの男性の父親を男性が引き取り、一緒に介護をすることになったとか。「周りは『結婚もしないのに、同棲男のお父さんの介護だなんて』と呆れていますが、介護をきっかけにプロポーズしてくれたらと少し期待しています」常に受け身の戸塚さん。このままずるずると結婚しないかもしれないと時々不安になるそうです。戸塚さんはきっと怖いのでしょう。彼からプロポーズがないなら、同棲生活6年を否定されたような気がするのです。この同棲男性はしたたかというか、狡いですね。戸塚さんが今の現実に気づくには、彼に結婚の意思があるかどうかを問い正すか、それとも友達など第三者に間に入ってもらって、彼に結婚の意志があるかどうかを聞いてもらいことでしょう。同棲のマンネリを回避した“ウルトラC”の奇策一方、井上朱美さん(仮名・33歳・メーカー勤務)は、20歳の時から10年間同棲した5歳上のカメラマンと結婚。5年以上に渡るセックスレスで悩んだという朱美さんは、彼以外の男性を探そうと、合コンに参加するようになります。「7回目の合コンで、彼以上に素敵な男性はいなかったので、改めて彼のことが好きだとわかりました」同棲中の彼に結婚を決めさせよう!そこで井上さんはある策を講じます。「格安の中古の家を購入して、リフォーム。家を買うと、さすがに彼も覚悟を決めました」その後不妊治療を経て、妊娠した井上さん。「大きな買い物のおかげで好転しました」と嬉しそう。女も勝負に出るべき時があるのです!同棲するなら期間限定にする恋する男女は勢いで「一緒に暮らそう!」と同棲します。ところが期限を決めていないために、マンネリのずるずる同棲や、すれ違いによる別れが生じますね。リスクを回避するには、最初から「期限付き」のするか、途中から更新するなど、話し合うことが大事です。長く一緒に暮らしていると、熟した果実が地面に落ちて粉々になるように、男女の関係もいい加減なスタンスで曖昧にしたままだと、破局した挙句に相手を恨んでしまうことも。それだけは避けたいですね。私は同棲派よりも結婚派です。というのは、優柔不断な男性と暮らすことが時間の無駄と思い知ったからです。それも勉強になったので、男を恨むことなく別れました。同棲というスタイルを選ぶには、相手とよく話し合ってから暮らすべきです。また40代のバツイチ同士のカップルが、同棲から始めるケースも。バツイチ同士だから、暮らしてから決めるつもりなのでしょう。でもそこにはひょっとしたら“同棲における非婚の罠”が潜んでいるかもしれません。隠れ非結婚主義者から回避するにも、結婚を選ぶほうが賢明だと思いますね。(夏目かをる)
2018年04月17日●何もないところから一つの音楽ができあがる奇跡"アーティスト"という形容がこれほどふさわしい音楽家はいない。ストイックなまでに音楽と向き合うその姿勢。坂本龍一や小林武史ほか数多くのクリエイターと制作してきた作品のクオリティの高さ。ポップ・ミュージックを真の意味でアートにまで高めた数少ない一人だ。『Romantique』(1980年)『Aventure』(81年)『Cliche』(82年)の"ヨーロッパ三部作"を中心とした80年代の作品群は、いずれもJ‐POP史上に燦然と輝きを放っている。「ピーターラビットとわたし」(82年)や「みんなのうた」にもなった「メトロポリタン美術館」(84年)などを聴いて育ったリスナーも多いはず。『Shall we ダンス?』(96年)の同名主題歌、『東京日和』(97年)サウンドトラックをはじめ映画やTV、CMでの仕事も多い。シティ・ポップス・リバイバルのなか「都会」(77年)など初期の作品も新たな文脈のなかで再評価されている。山下達郎らと結成したシュガーベイブ解散後、ソロ活動をスタートしてから今年で40年。7月にはアニバーサリーボックス『パラレルワールド』をリリースした。12月22日には東京芸術劇場でアニバーサリーコンサートを開催する彼女の現在の心境とは?――ソロデビューから40年。大貫さんの音楽に向き合う姿勢はずっとブレずに来たようにお見受けします。最後の出口まで見届ける、というのが私の仕事の基本姿勢ですね。作品を作る過程で"ここやっておいて"と任せっぱなしにはしません。小さな後悔も自分の責任なので。それぞれ楽器の音色決めがとっても大切ですから、今ある楽曲に対して的確な音色を模索し作ってくれる演奏家と出会うことで、思い描くイメージ以上のものに仕上がることがあります。それが音楽のいちばんの喜びですね。亡くなったギタリストの大村憲司さんは"今日はやりたくないのかな?"と心配するぐらい、いつまで経っても音決めしているんですよね(笑)。でも、いざ決まると本当に素晴らしい音を出してくれた――"いい音"というのはたとえば名器を使っているとかそういうことじゃなくて…。音にこたわるミュージシャンは、楽器にも当然こだわっているので。こまかい改造を加えていたり、楽器のつくられた年代への思い入れもありますし、つねに探しています。そのうえでのその人らしい、吟味された音。一人一人がそういう音を出してくれれば全体もおのずとまとまるし、ミックスも楽です。でも、曲を作るのも詞を書くのも振り返れば辛い方が多い40年でしたね(苦笑)――というのは?毎回、新しいアルバムに向かう時は、もう書けないんじゃないかって、思うんですよね。どうやって書いてきたんだろうって(笑)。ピアノに向かってとにかく始めるんですが、できなくてできなくて、でもとにかくやり続けていると集中できる1点が生まれる。そこから入り口が見つかってメロディが形になっていくんです。なぜかお風呂に入っているときに浮かぶことが多くて、リラックスが大切なのかも。慌ててお風呂から脱出してピアノに向かうこともあります(笑)。歌詞を書くときの大変さはその100倍――でも、大貫さんの歌詞はロマンティックでイマジネーションをかき立てられます。もともとベッタリしたストーリーを歌うような歌詞が苦手で。男女問わず、どういう立場でも共感してもらえるような歌詞が理想です。聴いてくださる方が自由なイマジネーションで受け取っていただけるような世界。歌詞をあまり書き込まないぶん、私の曲では言葉の隙間を埋めるサウンドというか音の背景が大事なんです。メロディが浮かんだときは、コードも頭の中で鳴っているので。メロディーに対してどのコードを選択するかのこだわりはとくに強いですね。ぐっとくるコード展開が見つかった時は、出来た!っていう喜びがあります。アレンジャーに依頼するとき、それを「いいね!」ってほめられるとすごく嬉しいです。曲作りはしんどいですけど結局、音楽をやっているときが一番楽しいし、何より音楽が好きだし。さらにレコーディングはもっともわくわくする(笑)。スタジオでどんどん曲がかたちになっていって、いいグルーヴで録れたり、いいソロを弾いてくれたときなんて至福の時です! 何もないところから一つの音楽ができあがる…これは、わたしにとって奇跡です――その奇跡の積み重ねがソロデビュー以降の40年という時間なんですね。好きなことをやり続けるためには、楽しいだけじゃなく苦しみも伴う、と。就職や進学などライフステージのいろいろなシーンで参考になります。話は変わって、7月にリリースされたソロデビュー40周年BOXのCD DISC1は初のオールタイムベスト。選曲はどのように?今回は私自身がいまでも聴く自分が好きな曲を集めました。歌詞もサウンドもよくできていて、自分で安心して聴ける曲たちです。だから"大貫妙子といえばこれ"みたいな曲は少ないかもしれません。そういう意味ですごく個人的なベストなんですけど、かえって面白いんじゃないか、と――なるほど。「黒のクレール」や「新しいシャツ」「突然の贈りもの」などいわゆる"大貫妙子定番曲"は本作収録の『PURE ACOUSTIC』の初LP化音源や未発売スタジオライヴを収録したDVDで楽しめますしね。タイトルになった『パラレルワールド』とはSFやファンタジーで使われる"並行世界"のこと。たとえば"織田信長が本能寺で死んでいなかったらどうなっていたか"とか、いまいる世界と並行して存在するもう一つの世界です。この言葉が出てきたのは今回のDVDと絵本に収録されている「みんなのうた」にもなった「金のまきば」から。この曲ではバケツに開いた穴と自分の心に開いた穴を重ねているんです。バケツの穴をそのままにしておくと錆びて朽ち果ててしまうように、自分自身を見つめずに避けている間は心に穴が開いたまま。でも、見つめてみると穴の向こうに金のまきばが広がっているかもしれない。自分の生き方や考え方をちょっと変えるだけで世界は変わってくる。そういう場所を見つけて行き来することで、たとえば"これしかない""この生き方しかない"という辛さや絶望のなかで苦しむことはないですよね。何より、音楽自体がパラレルワールドなんです。過去も未来も空間も飛び超えていくものですから●メンバーもやる気満々だし、これはいまを逃しちゃまずいぞ、と――12月22日にはソロデビュー40周年記念プロジェクト第2弾として東京芸術劇場でコンサートが開催されます。大貫さんはポップス系アーティストとして初めてサントリーホールでコンサートを開いていますし、これが初のシンフォニックコンサートとは意外でした。アルバムでは何度もフルオーケストラで歌っていますし、今回アレンジと指揮をしてくださる千住明さんの個展コンサートでも歌わせてもらっていますしね。フルオーケストラで歌うのは気持ちよくて大好きなんですけど、コンサート全部自分の曲、という機会はなかったんです。でもこの年齢で、いまできるのはよかったな、と。以前より声も全然出るようになったし。何より、坂本龍一さんのピアノのみで歌った2010年の"UTAUツアー"が大きかった。大変でしたけど自信になりましたね――今回のコンサートはその坂本さんにアレンジを依頼する選択肢もあったのでは?全20曲弱のオーケストラアレンジと指揮は、そうとうな体力の消耗もありますし、この話が決まった時、坂本さんは静養中でしたので。そうでなくとも坂本さんは、お願いしても2年待ちというのが常ですので。坂本さんが書くオケの下のほうがぶ厚い感じは大好きですけれど。今回は、知り合って30年の千住明さんにお願いしました。坂本さんには私のアルバムでもたくさん弦のアレンジをしていただきましたが、クリスマスシーズンということもあって、また違うポピュラーなアプローチで楽しんでいただけたらと思います――フルオーケストラということで、クラシカルでヨーロッパ志向の音になるのかな、と。いえ、全部はそうはならないと思います。派手なアレンジというよりはエレガントな感じで。曲によってはベースとドラム、ピアノも入りますし。「ピーターラビットとわたし」を弦ヴァージョンにしたり、「黒のクレール」も久しぶりに歌います――それは楽しみですね。2005年リリースの『One Fine Day』以来のオリジナルアルバムも期待しています。いまのライブでのバンドがすごくいい状態なんですよ。メンバーもやる気満々だし、これはいまを逃しちゃまずいぞ、と(笑)。来年にでも制作に入ろうか、と思っていますがここはじっくりと、発売は再来年頃の予定です――小倉博和(g)、鈴木正人(b)、沼澤尚(ds)、林立夫(ds)、フェビアン・レザ・パネ(p)、森俊之(key)というそうそうたる顔ぶれですね。それとは別に、弦楽カルテットでのコンサート(="pure acoustic"コンサート)もやりたいし。一緒にやっていた(金子)飛鳥が子育ても終わって"またできるよ"と。なので来年そちらも是非やりたい!でも、音楽にかまけていると家のことが全然できなくて(笑)。亡くなった両親の部屋もまだ片付けていないし。庭の手入れや、猫の世話や家事全般。毎日けっこう大忙しなんです。ステージでスポットライトをあびている日もあるけれど、自分は特別な存在だと思ったこともないし、去年は町内会の班長だったので町内会費の集金もしていましたよ。ご近所づきあいは大事ですから(笑)大貫妙子(おおぬき たえこ)1953年生まれ。東京都出身。1973年、山下達郎らとシュガー・ペイブを結成。1976年に解散後、ソロ活動を開始し同年リリースの「グレイ スカイズ」でソロデビュー。以後、多くの作品をリリースしながら、CM・映画音楽など幅広く活動する。今年はソロデビュー40周年プロジェクトの第2弾として、12月22日にシンフォニックコンサートを開催。これに先駆け前日の21日にはコンサートでも披露する予定の6曲を収録したアルバム『TAEKO ONUKI meets AKIRA SENJU~Symphonic Concert 2016』がリリースされる。
2016年11月26日