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サッカー大国として知られるドイツ。ワールドカップ優勝4回、ブンデスリーガも隆盛を誇っています。最近の対戦では日本代表が2勝していますが、歴史と実績のあるドイツサッカーから学び、参考にできることはたくさんあります。2023年8月、サカイクキャンプ、シンキングサッカースクールでチーフコーチを務める菊池健太コーチが、ドイツのグラスルーツ年代を視察に行ってきました。ドイツでは子どもたちのサッカーに「フニーニョ」が導入されていますが、その有効性について、菊池コーチに話をうかがいました。(取材・文鈴木智之)フニーニョをする子どもたちとピッチのそばで見守る保護者達<<視察レポート②:「子どもの試合はワールドカップではない」各地のグラウンドに設置されたドイツサッカー界で有名な標語の意味サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■ドイツサッカー協会主導で導入している「フニーニョ」とはドイツの育成年代で導入されている「フニーニョ」。英語のFun(楽しむ)とスペイン語の「子ども」(Niño)をあわせた言葉で、「3対3の4ゴールゲーム」を指します。菊池コーチによると、「ドイツは協会主導でフニーニョが導入されている」そうで、各クラブには、フニーニョ用のミニゴールが常備されているようです。赤い丸で囲ったミニゴールを使ってフニーニョを行う「コートはフルピッチを4分割して作るので、大人用のグラウンドで4面作ることができます。3対3なのでボールに関わる回数、シュートの場面も多いです。ゴールが2つあるので、コーチが指示しなくても『人が少ない、空いている方へ行こう』と考えることができるのも、フニーニョの良いところです」フニーニョ関連記事:サッカー強国ドイツが導入を決めた3vs3のミニゲーム「フニーニョ」とは■U-6でも結果は協会のホームページに掲載、更新しないと罰金も菊池コーチが視察したのはU-6の試合で、フニーニョの結果は協会のホームページに掲載されるそうです。「ホームページにスコアまでは載せないそうですが、コーチが投稿して更新しないと、罰金があるそうです。それも厳格なドイツらしいですよね」シュート意識を高めるのにぴったりな2m×1mのアルファゴールはこちら>>■原則的にはロングシュートは禁止フニーニョでは「シュートゾーン」が設けられていて、ロングシュートは原則なしになっていますが「試合によってはアレンジしていて、ロングシュートを打っている子もいました」とのこと。「ロングシュートが決まったら、コーチも『ナイスゴール!』と褒めていて、そのあたりの運用は柔軟にしている印象を受けました」■2対1を作りやすく、局面を打開する練習になるコートは25m~30mのサイズで、菊池コーチは「パスやドリブルが無理なくできる、絶妙なサイズ感」と評していました。「1チーム3人なので、ボールを持っている人に対して、他の2人がサポートする形が自然とできます。基礎である三角形も作りやすいですし、相手にマンツーマンでつかれたときに、どこかで2対1を作ることで、局面を打開する練習になります」■サカイクキャンプやシンキングサッカースクールでも変則的なフニーニョを導入菊池コーチがメインコーチを務める、サカイクキャンプやシンキングサッカースクールでは、変則的なフニーニョを導入しているそうで「コーンを3つ立てて3ゴールにしてて、真ん中のコーンに当てたら2点というルールでやっています。ゲーム形式なので、子どもたちも楽しそうにやるんですよね」と笑顔を見せます。■人数の少ないチームでも簡単に取り入れやすいトレーニングといえる昨今の少年団には、所属選手の人数が少ないクラブもありますが、フニーニョであれば6人からできるトレーニングなので、導入しやすいのもメリットです。「ドイツでは小さなゴールを使っていましたが、ゴールがなければコーンでもいいと思います。学校の校庭の限られたスペースやフットサルコートでもできるので、取り入れやすい練習だと思います」■スペースや味方を見つけやすい、指導者にとっては褒めるポイントが増えるのも良いところ菊池コーチはフニーニョについて「シュートチャンスが多いので、指導者からすると、褒めるポイントが増えるのも良いところ」と話します。「ナイスシュート! ナイスチャレンジ! と声をかけやすいので、子どもたちのモチベーションアップにもつながります。ゴールが2つなので、シュートチャンスが多く、ゴールを決める喜びを感じやすいのもいいですよね」低学年の場合、上手な子がドリブルで突き進み、シュートを打つ場面がよくありますが、フニーニョはゴールが2つあるので、スペースや味方が見つけやすいのもポイントのひとつ。「ドリブルで相手を引き付けておいて、空いているスペースにいる選手にパスを出すとか、『なんのためのドリブルなのか』を、考えなくても自然とできるような設定です」■低年齢から「どうやって相手を崩すか」を理解できるドイツでU-6のフニーニョを視察した菊池コーチ。印象的だったのが「みんなが楽しんでいたこと」と語ります。「日本の場合、ボールを持ったら離さずに、1人でゴリゴリ行くような子もいるのですが、そのような子はほとんどいませんでした。もちろんチャンスにはドリブルで仕掛けますが、ただドリブルしていくような選手は少ないように見えました。どうやって相手を崩していくかを、この年代から考えてやっているんだなという印象です」ルールや設定によって、低学年で身につけておきたいサッカーの原理原則を体感できるフニーニョ。ミニゴールがなければコーンでも代用できるので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか?きっと新たな発見や気づきが得られることでしょう!サッカーする子どもを伸ばす親の心得「サカイク10か条」とは
2023年11月06日海外では7歳から2対1の「数的優位」を学ぶという。相手のマークをはがして、引き付けてボールを出す動きを身につけさせるにはその年代から、と書いてあったが、日本の子ども達にどんな風に指導すればいい?2対1の状況でどんな動きをするのか、どこを見て、どんなことが見えていればいいのか、意識させる指導の方法を教えて、というご相談です。ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、数的優位の作り方を理解させる7つのコツを教えます。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<守備時のフィジカルコンタクトを怖がったり、ポジショニングを理解してない小6年代に守備の目的と原則を教える方法は?<お父さんコーチからのご質問>池上さんこんにちは。私は教員で、学校の少年団の指導も担当しています。指導年齢は、連載のカテゴリでいうとU-8になります。自分自身サッカー経験はあるものの、自分の時代とは色々変わっていると思うので、池上さんの発信や書籍、Webなどで情報収集しつつ、現代の指導を学んでいます。今回質問したいのは、2対1についてです。海外(私が読んだ情報はスペインで指導された方の記事)では、数的優位について学ばせるために7歳から2対1をやっているとありました。相手のマークをはがして、引き付けてボールを出す動きを7歳ぐらいからやらないと。とのことでした。日本では低学年だと個人技の習得がメインのチームもあると思いますが、海外の指導を読んで個人的にはかなり共感できました。そこで、各エリアで数的優位を作り、相手を引き付けてパスを出す動きを身につけるための指導のコツ、2対1の状況でどんな動きをするのか、どこを見て、どんなことが見えていればいいのか、この年代に意識させるにはどんなことをすればいいのかアドバイスいただけませんでしょうか。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。それでは、指導する際のコツを7つお伝えします。■まずは攻撃の成り立ちを理解しやすくする低学年で2対1の練習をするとき、最初の段階ではディフェンス(人)の代わりにコーンを置きます。コーンは動かないので、攻撃の成り立ちが理解しやすくなります。コーンが自分と、ボール保持者の間にある場合「そこにいたら、パスがもらえるかな?」と尋ねましょう。子どもたちは「ここに行けばいい」とか「いや、こっちだ」言い出します。そこで、「でも、ゴールに向かって行きたいよね?どこがいいかな?」と良いポジションを探ってもらいます。その段階が終わったら、実際にディフェンス(人)をつけて2対1をやってもらいます。その際「ディフェンスは相手のボールをとらなくていいから。そのまま立っていて」と伝えます。コーンが人に替わるだけで、子どもがもつイメージは違ってきます。一度やったら、次は「ディフェンスは足だけ出していいことにします」と話します。ディフェンスに近いボールは足が出されて止められます。そこまできたら、その次はディフェンスは動いてOKにします。ここで初めて通常の2対1に。そのような段階を踏ませてあげてください。どのトレーニングも同じですが、子どもに技術を身に付けてほしいと思ったら、それを身に付けるためにトレーニングをどう分解するか。これが1つめのコツです。それをコーチが自分なりに見つける必要があります。■ボールをもらうためにどんな動きをして、何が見えているかを整理2つめ。目の前で起きていることを鮮明にし、整理することです。最終形の2対1に入ったら、子どもがボールをもらうためにどんな動きをして、何が見えているのかを、指導者自身のなかで鮮明にする必要があります。そうすると、(自分の味方を見てないな)(ディフェンダーばかり見ているな)などと、さまざま発見、気づきが生まれたら、そこを伝えてください。時には来た道を戻ってもいい。例えば「足だけ出して動かないディフェンス」の2対1を再びやってみます。■どこを見て、どんなことが見えて、どんな動きをすればいいのか。正解を見つける時間をあげる3つめは、自分なりの正解を「見つける時間」をあげること。2対1の状況でどんな動きをするのか、どこを見て、どんなことが見えていればいいのかを認識させたら、その次に見るのは、ディフェンスがどのくらいの距離にいるかを認識させます。次にどこでどのタイミングでパスするのか?もしくは、自分でドリブルで進んでいくのか?プレーの選択です。そういった順番で丁寧に伝えてください。味方はどこにいるほうがいい?どんなときにパスは成功する?パスを出すタイミングはいつでしょう?ここを一緒に考えてあげるのです。どんなときに成功したか。それを順番に分解し、みつける時間をあげましょう。■プレー中にどこでどんなことを考えるか、を伝える4つめは、「どう考えるか」を伝えること。先日、私がアドバイザーを務めている小学5年生の試合を観に行きました。終わった後、話をする場を与えられたので「試合中は、何を考えていましたか?」と尋ねました。すると、子どもたちは「う~ん」と首をひねるばかりで何も出てきませんでした。指導者の皆さんは、子どもたちに「考えろ」と伝えています。が、プレー中にどこで、どんなことを考えるのか?何を見て、どう考えるか?を伝えているでしょうか。例えばコーチは「状況を見ろ」と言うけれど、その状況をどんなふうに理解するか?そのときに数的優位になっているのかどうかなど気づけるよう育てる必要があります。具体的なものの見方、考え方を整理せずに、ただ「考えろ」と言ってはいませんか。そのようなことを子どもたちが理解しやすくするために、ドイツは3対3のフニーニョを推奨しています。相手も見方も3人ずつなので、見るものが少なくてすみます。そのなかでどう考えるか。それを積み重ねていけば、理解が深まります。ところが、日本は小学1年生から8人制をやっています。10年ちょっと前までは11人制でした。都道府県協会の方のなかには「でも、サッカーは11人制だろ」とおっしゃって、いくら説明してもなかなか移行が進まない。そんな時期もありました。ドイツが推奨するフニーニョとは......■練習はうまくできなくてもいい、ととらえること5つ目は「練習はうまくできなくてもいい。簡単なほうに戻ってもいい」ととらえること。育成を担当する皆さんは、練習が上手くできないといけないと思い過ぎるのではないでしょうか。子どもたちは、頭の中で想像して、体で表現します。その順番を分解してあげて経験させていかなければ「頭ではわかっているけれど体が動かない」という状況になってしまいます。そして、そんな状況が続くならば、上述したように「簡単なほうに戻る」ことをやってください。3歩進んで2歩下がるようなことになりますが、それでも一歩前進しています。そのくらいの気持ちでゆったりとみてあげましょう。急がず慌てず丁寧に指導することを心がけてください。■練習でやったことを試合の中で使う、ということを意識させる6つ目は、試合で使うことを意識させること。練習でできても、試合のなかで使えないと意味がないことを子どもたちと共有してください。例えば、ミニゲームをして2対1の状況を作るため「ワンツーを使おう」と働きかけます。例えば、「ワンツーをどこかで使わないと、シュートが決まっても得点にしない」といったルールにします。ワンツーからシュートでもいいし、その前の段階でどこでやってもいいことにします。相手のプレッシャーから逃げるためのワンツー。ゴール前でフリーになるためのワンツー。何でもいいです。池上正さんの指導を動画で見る>>■どうして成功したか、どんな時に成功したか、を認知させる(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)7つ目は「どうして成功したか」を認知させること。どんなときに成功するか。そういう状況やタイミングがあります。それを子どもたちに伝えましょう。なんだか知らないあいだに成功している。それが子どもです。そこで、「どうして成功したんだと思う?」と問いかけながら認知させることが重要です。オシムさんのインタビューの映像を見返すと、こんなことを言っています。「私は、サッカー小学校の教師のつもりでやっている。小学生の判断がいつも正しいわけではない。だから伝えてあげなくてはいけない」オシムさんも選手(子ども)たちの成功を、ちゃんと解説してあげていました。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年05月27日3、4年生からサッカーを始める子も多いチーム。サッカー初心者が最初に覚える技術や戦術は色々あるけど、オフザボールの動き、チームとしての連動を覚えてほしい。パスを出した選手、パスを受けた選手、近くにいる味方で連動して相手を交わしていく動きを教えたい。いわゆる「3人目の動き」を教えるいい方法はある?というご相談。今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、子どもたちが頭の中で3人目の動きを理解できるようになるアプローチを教えます。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<狭いところでも「止める」「蹴る」ができるようになる方法を教えて<お父さんコーチからのご質問>池上さんこんにちは。学校の少年団で指導しています。指導しているのは中学年です。田舎だからか、小学3、4年からサッカーを始める子も珍しくなく、初心者が多いチームです。(未就学からスイミングに通っている子は多いのですが、少年団に入るのは3、4年生からというのが多いです)ご相談内容は、チームとしての連動、オフザボールの動きです。「3人目の動き」とでもいうのでしょうか。パスを出した選手(1人目)、パスを受けた選手(2人目)、それ以外の近くにいる味方選手(3人目以降)で連携しながら相手守備を突破する動きを教えたいのですが、良い方法はありますか。初心者も多いので、プレーの流れのイメージがつかめないのと、初心者ゆえトラップやコントロールが落ち着かないこともあり、動きが止まってしまいスムーズに連携できないのです。アドバイスいただけると幸いです。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。少年サッカーの試合を見ていると、ベンチから「サポート!」「周りが動いて」「もらう人いないよ」といった声が飛びますね。大人たちは懸命に声をからしてアドバイスしますが、それを受ける子どもたちがどの程度理解しているのか。この点を考えなくてはいけないと私も感じています。彼らに三人目の動きを理解してもらうには、まず頭の中で絵を描ける、イメージできるよう指導してください。■ゲームを一時的に止めて、頭で理解する時間を作るまず、ミニゲームなどの場面でフリーズさせて(プレーを一時的に止めて)話をします。「ボール持ってる子どもがいます。パスが欲しい子どもがいます。でも、二人の真ん中には相手ディフェンスがいます。その場合、どうしたらパスできますか?」仮に、子どもから「受ける側が右か左に動いて、味方が見えるところに行けばいい」といった意見が出るとします。私「でも、受ける側が動かなかったら?」子ども「ボールを持っている側が動けばいい」つまり双方がパスを通すために移動することを考えなくてはいけないことを、まず理解してもらいます。ここでトライアングル、つまり3人目の動きの説明ができます。ホワイトボードを使って、「相手のディフェンスは、A君とB君の間にいます」と3人の関係を説明し、「さて、どうしたらいいかな?」と発見させてもいいでしょう。■3人目の動きが出てこないのは「頭の中」の問題3人目の動きが出てこないのは、子どもたちの頭の中の問題です。ほかにも、例えば「シュートを打ちたいけれど、前にディフェンスがいてA君は打てない。じゃあ、どうしたら打てるかな?」と問いかけます。いろんな答えが出てくるでしょう。サッカーの点の取り方がそれぞれ違うように、いろいろな答えが出てきます。それを試してみよう、と言ってあげてください。頭の中の問題なので、初心者であっても、幼稚園からしていたとしても関係ありません。上述した程度のことであれば、子どもたちは理解できます。間にディフェンスいたら出せない。じゃあ、どうしたらいいか? それを発見できるようになることがまず重要です。その次に、冒頭のミニゲームのように実際に2人と間にディフェンスがいる状態で立たせてみて、どこに立つとパスできる?と考えさせます。子どもたちに、サッカーはボールをもっていないときに動かないといけないスポーツで、動きながらどうするか?を考えるスポーツだということを頭と体で覚えてもらいます。そうするために、ドイツは3対3のフニーニョを小さいときからやることをドイツ中に広めようとしています。そうすれば、3人目の動きが常に出てくるので、知らず知らずのうちに体得するのです。※フニーニョとは?ドイツが育成年代に導入しているフニーニョとはこんなルール>>■子ども自身で考えて選択したものは浸透する私が地元大阪で行っている1年生から6年生まで一緒に練習する「プレイパーク」でも、そのあたりを説明をします。池上「あそこにパスしたいんだけど、邪魔する人がいます」子ども「こっちに動けばいい」池上「ほかに方法はないかな?」子ども「(ボールを持っている)池上コーチが動けばいい」そのように、子ども自身が考えて選択したものは浸透します。「コーチの言う通りに動きなさい」と教え込まれていくものは「その子たちのもの」になりづらく、またそこから発展しません。そのことをぜひ心にとめて指導してください。■「3人目の動き」が分かってくる初心者向けにおすすめのメニュー練習メニューはネットや書籍でいくらでも学べるかと思いますが、初心者向けにひとつユニークなメニューを紹介しましょう。8人グループで行います。半径6メートルほどのサークルに8人が立ち、パス交換をします。AがBにパス。その際「C君!」と3人目の名前を呼びます。BからもらったCはDにパスをしながら「E君!」と呼ぶ。そうすると、蹴る子も3人目を誰にするかを意識しなくてはなりません。名前を呼ばれた子も意識します。中高校生にやらせてもいい練習です。3人目のもらい方がわかってくると、パスがどんどん続くようになります。そうなったら、「サッカーは何が一番の目的なの?」と尋ねます。子どもたちは「ゴール」だとわかっています。そこで「できるだけ早くそこにいけるにはどうしたらいいか?」を求めていくのです。フニーニョをやりながら、時折止めて解説すると理解が増すでしょう。■「うまくできない」が大事、最新のコーチング理論で分かったこと気をつけたいのは、その練習がうまくできるまでやってしまわないことです。コーチが「ほら、うまくできてないよ!」と指摘する声をよく聞きますが、何度も反復させてできるようになるまでやらせる必要はありません。うまくできていないことが実は大事です。なぜならば、最新のコーチング理論「運動学習理論」では、反復練習は初期段階では効果があるが、それを長く続けても効果はないということがわかっています。そうではなく、メニューをポンポン変えて複合的な動きをやっていくと技術の獲得が上がっていくというのです。そうすれば伸びるスピードは落ちません。これを「非線形理論」といいます。一からコツコツ積み上げていく「線形理論」はごく初期段階での考え方です。「今まではこうやってきた」という経験則ではなく、根拠のある指導方法を選択しましょう。いろんなことをやっていくことで目標に到達していくことを、ぜひ覚えておいてください。池上正さんの指導を動画で見る>>■成長のチャンスを子どもに自ら獲得させることが大事(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)また「トラップやコントロールが落ち着かないこともありスムーズに連携できない」といった旨が書かれています。しかし、子どもがパスをしようとしていたのなら「よく見えてたね」「いいところに動いていたね」とまずは認めましょう。次に「今トラップが大きくなっちゃったね。今のプレーが上手くいくには、どうしたらいいかな?」と問いかけてください。すると、ボールコントロールの練習を自ら始めるはずです。成長のチャンスを子どもに自ら獲得させることが大切です。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2022年04月22日1対1を仕掛けるとき、相手の逆をつくのが苦手な子どもたち。低学年なのでまだまだ自分で仕掛けることも多いけど、動きが素直ですぐ取られる。「相手の動き意識する」「相手の動きを予想する」動きを身につけさせるためにはどんな練習をすればいい?とのご相談をいただきました。今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、お勧めの練習法とその根拠などを教えます。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<「うちの子はMFに向いている」など親が子どものポジションに口出し。様々なポジションをさせる重要性をどう説けばいい?<お父さんコーチからのご質問>スポ少で指導をしています。指導年齢はU-8です。サッカーはチームプレーで、仲間との連動が大事ですので、個人技の質問はあまりよくないかもしれませんが相談させていただきたくご連絡しました。普段の練習では、数的優位を作って連携することを意識させているつもりですが、行けそうなときは1対1をしかけることも教えています。その際に、相手の逆をつく動きがまだまだ苦手な子が多いように見えます。年齢的に相手を意識するより一人でドリブルを仕掛ける方が多いので、「相手の動き意識する」「相手の動きを予想する」ことができないのだと思います。足の速さや体の強さがなくても相手を交わすことができるよう、相手の逆をつく動きを身につけさせたいと思っているのですが、どんな風に教えたらいいでしょうか。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。三つアドバイスさせてください。■「逆を突くといいことが起きる」状況をつくるまずは練習メニューを工夫することをお勧めします。つまり、「相手の逆をつくといいことが起きる」状況をつくるのです。例えば、この連載の前回でポジションの話をした際にお伝えした「フニーニョ」の話を覚えていますか?ドイツの小学校低学年の子どもたちが行う3対3のミニゲームのことで、同国サッカー協会が小学生の指導者に推奨しています。このメニューの何が良いのかといえば、攻める際ゴールが左右に1つずつあるので、まるで右のゴールを狙っているかのように見せて、左に行く。そのように相手の逆をとるプレーをすると相手をかわせるし、だませるので数的優位がつくりやすい。ゴールにつながる体験を一度でもすれば、子どもたちは逆をつくプレーをやり始めます。また、そのように攻撃の自由度というか、選択肢を広げてあげられるのが、このフニーニョの良さです。右に行く恰好をして、左に行く。そういうことが試せる練習環境を作ってください。2年生レベルですから、いっぱいミスは出るかと思います。でも、たくさんミスすればいいのです。そのなかで「右も左もみてごらん。君がドリブルしながら右を向くと、相手はどう?」と問いかけてください。子どもたちは「右に行く」と答えるでしょう。私はそこで「そうそう。そういうことを考えてサッカーすればいいよね」と声掛けをします。■一対一で行けそうかどうかは子ども自身の判断によるふたつめ。このコーチの方は「一対一のときは仕掛けて」と伝えている、とおっしゃっています。それはいいのですが、あくまで行けそうかどうかはその子の判断です。コーチが判断するものではありません。実際に相手と対峙している子どもたち自身が「相手のほうが強いな」と思えば、一対一でいかないほうがいいでしょう。逆に「僕はこの子を抜けるかも!」と思うかもしれない。さらにいえば、わざと一対一を仕掛けるような恰好をして、反対側の味方にパスできる。そんな選手を目指してほしいと思います。一対一で行くようなふりをして、逆ゴールに向かっていく選手にパスを出そうとしたら、相手守備がそのパスを察知したとします。そうなったら瞬時にプレーの選択を変えて自分で行く。もしくは、まったく別の選手がスペースに走り込んでいたのなら、その選手を生かす。そんな判断ができるようにしてほしいのです。過去よく行われてきた一対一をしてボールを失ったらそれで終わりといった練習では、上述したような選手は生まれません。メニューや指導の仕方を考え直しましょう。1~3年生ならば、4対1でゆっくりと問題を解決しながら、子どもにサッカーのやり方を伝えてください。自分がボールを持っている。自分がどこに行くとパスができますか?両サイドにいる味方の選手が前に広がったスペースに走ってくれると、守備がボールを取りにくくなりそうだし、チャンスが生まれそうだ。だとしたら、ボールを持った自分はどこにどんなふうにドリブルを運んで、どこを見ればいいのか。味方を助けるにはどうしたらいいか。そういったことを少しずつ丁寧に教えます。■慌てずゆっくり理解させることが大事先日も、ある県で行った講習会で、4対1を行いました。コーチの方にいろいろな練習を見せたいので、いつも短い時間で区切ってさまざまなメニューをやります。でも、その時は4対1を珍しく時間をかけて子どもたちにやってもらいました。完全にできるようになるために時間をかけたわけではありません。子どもたちの「変化」をコーチの皆さんに見てほしかったのです。練習を進めていくと、子どもたちの頭の中に少しずつ攻撃のイメージができてきたようで、最後に3対3をしたら、逆サイドで「パス!」と呼ぶ子どもがどんどん増えてきました。そして、ボール保持者も、自分で一対一で行くよりもパスを選択する変化が見られました。つまり、子どもたちが変わったのです。見学されていた指導者おひとりが「こうやって時間をかけるんですね」と感想を述べておられました。私の意図が伝わったのだと思います。「慌てずにゆっくりやることが大事」と理解してくださったようでした。■普段の遊びの中でも「逆を取る」動きを磨くことができる三つめ。逆をとる動きを磨くためにできることはほかにもたくさんあります。鬼ごっこなどの遊びでも養われます。二対一で、わざとドリブルをしてひきつけてからパスをするという動きも同じですね。低学年の上手な子の多くは相手の逆をとれますが、パスを出せばいいところでパスしません。自分で行ってしまいます。3対2、4対2とか4対3になると次のカバーの子がきますが、その子もかわそうと無理やり自分で行ってしまいます。そういう子には「いま、相手をかわしたね。次に何をしたいからかわしたの?」と尋ねてあげてください。そして、そのようにごぼう抜きを目指すプレーは「うまいけど賢くはない」ということを教えてあげましょう。池上正さんの指導を動画で見る>>■「うまいけど賢くない」子が少なくない(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)大人にも、この「うまいけど賢くはない」ということはなかなか理解してもらえません。「池上さんはパスサッカーなんですね?」と言われます。でも、私は「パスしかダメ」とは言ってません。「パスしたほうが簡単でしょ?」ということを伝えたいのです。ひとり抜いても、次の相手(カバー)が来たらどうするか? を考えて工夫してほしいのです。低学年でも同じです。したがって、「そんな年代でパスを教えるんですか?」と言われたりします。でも、「サッカーってそういうものですよね?」と言います。そうすると「でも、この子達は止めて蹴れないんです」となる。では、止めて蹴られるようになるまでその練習ばかりしていたらゲームになりません。まわりをみて判断してプレーするのがサッカーなのに、止める蹴るばかりやってしまうといつサッカーを覚えるのでしょうか。1年生でも判断や考える要素が入ったメニューをしてもらいます。考えなくてはいけないけれど、一方で技術練習にもなっています。やり続けると、いつの間にかパスが巧くなっていきます。「ミスパスが多いから止めて蹴る練習を長くする」という考えはやめましょう。そうしなくては、試合で味方やスペースを見つけて判断することを覚えない、経験しないまま上のカテゴリーにいってしまう。それは、今の日本の育成の大きな課題だと感じています。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2021年12月27日親がわが子のポジションに口出ししてくる。「うちの子は足が速いのでFW向きだと思います」「ボールコントロールが得意な方なのでMFが適正では」など親がさせたいポジションを指定。低学年ではポジションを固定しなくていいと思うが、保護者達にどう説明すればいい?というお悩み。わが子のポジションを指定してくる親御さん、どうやら最近増えてきているようです。今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、ポジション固定しない方がいい理由とお勧めの練習メニューを教えます。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<飛び込んで交わされたり、バランスを崩して転ぶ1対1の守備を身につけさせるにはどうしたらいい?<お父さんコーチからのご質問>池上さん、こんにちは。私はわが子(小6)のチームで指導している保護者コーチです。といっても、人数が足りなくて低学年(U-8)を見るのを手伝っている程度で、ちゃんとライセンスを持っているコーチが何人もいるので指導内容はその方たちが方針を決めています。相談したいのはポジションのことです。子どもの頃はいろんなポジションをさせた方が良いと聞きますが、保護者がわが子にさせたいポジションがあるのか口を出してくることがあります。(私がコーチ陣の中では若い方なので言いやすいのだと思います)「うちは足が速いのでFWが合っていると思います」「ボールコントロールが得意なので...(要は『MFが適正だと思う』という主張)」など、多くは前目のポジションをさせたがります。先日、野球の新庄剛志監督も選手たちにいろんなポジションを体験させて、相手のことを理解させるトレーニングをしているとニュースで拝見し、様々なポジションを経験することはチームで連携するうえで大事なことなのかなと思いました。低学年ではまだポジションは固定する必要がないと思いますが、保護者に理解いただけるようにするにはどうすればいいか悩んでいます。池上さんはこれまでどのように対応(または説明)してきたか、教えていただけますと幸いです。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。親御さんはわが子に成長してもらいたいと願っていますが、指導者も当然ではありますが自分の教え子を伸ばしたいと思っています。目標の着地点は同じなのに、向かうプロセスがちょっと違うようです。それを踏まえ、このポジション問題については指導者から親御さんに説明する必要がありそうです。■同じポジションを続けた方が上手くなる、と思っている理由「フォワードならずっとフォワードと、低学年から高学年までずっと同じポジションをやったほうがサッカーが上手くなる」例えば、そのように多くの保護者は考えています。そのほうが手っ取り早いと思っているようです。親御さんだけでなく、指導者においても長い間そう考えられてきました。「ひとつのことを長くやればやるほどうまくなる」スポーツでも、習い事でも、似た教育観が根付いていました。ところが、サッカーではさまざまなポジションを経験したほうが、どこが自分に合ったポジションなのかがわかる。そうやって積み上げてきたものが有効に働くと、今は考えられています。私は北海道から沖縄まで全国各地の少年サッカーコーチの方と交流がありますが、近年は「小学生の間はいろんなポジションをやらせる」とおっしゃる方が断然増えています。■成長すると「ポジションの適正」が変化する小学生のうちにポジションを限定しないほうがいい理由は、中学生になって第二次性徴期に入ると体格などが大きく変化するからです。身長がぐんと伸びる子、伸びない子の差が出てきます。体格が変わるので、小学生の時に足が速かった子があまり目立たなくなったり、そうでもなかった子が図抜けて速くなったりします。つまり、個々が持つ「ポジションの適性」が変化します。これらのことを踏まえると、小学生の間にポジションを決めるのは非常に危険だと言えます。私がJリーグ2クラブで育成に携わった10数年間だけでも、ジュニアユースやユースの選手をよく見ると、個々の適性がポジションと合っていないケースは少なくありませんでした。■「うちの子は○○のポジションでプレーしてほしい」という親の望みが重圧になるこれは子ども自身の希望があるのかもしれません。であれば、子どもたちの希望を聞きすぎてしまうのも問題かと思います。しかしながら、その背景には相談者さんが訴えている保護者の存在がありそうです。親御さんの「うちの子は前めのポジションでプレーしてほしい」という望みが、子どもの重石になっていることも少なくないはずです。この親子の希望に加え、子どもの成長より勝利を優先しがちな指導者のエゴも作用します。こうなってしまうと、子どもの将来のためになりません。サッカーをずっと続けてもらうためにも、サッカーのすべてのポジションを理解している、体験したことのある子どもに上のカテゴリーにあがってきてほしい。このようなことを、親御さんにも理解してもらうことが大事です。■保護者にも学んでいただくこと。ともに学びあうことが大事日本のサッカーでは、保護者の啓もうやきちんとした学びの場が設けられていません。仕組みがないので、各チームの指導者が伝えていくことが重要になります。そのためにも、指導者は勉強しなくてはなりません。「学ぶことをやめたら指導者ではない」の言葉は、どのスポーツでも言われていることです。今はインターネットで世界中からあらゆる情報を入手することができます。ネットの記事や書籍などでも、最新の育成方法が紹介されています。そういったものをコーチの方が保護者や他の指導者に伝え、ともに学び合うことが大事です。ご相談者様は幸い、「低学年ではまだポジションは固定する必要がないと思う」と理解してもらっているようです。理解していますが、保護者に理解いただけるようにするにはどうすればいいか悩んでいます。また、相談者は北海道日本ハムファイターズの新庄監督のことを例に挙げられていますが、この練習はプロ選手に向けたもので「他のポジションの選手の気持ちを知る」という目的のようです。少年サッカーでさまざまポジションをプレーすることの目的はそこではないので、上述したように違う事例をもって伝えましょう。池上正さんの指導を動画で見る>>■さまざまなポジションを経験できる練習メニュー(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)さまざまなポジションを経験できるメニューと言えば、ドイツの小学校低学年の子どもたちが行う「フニーニョ」という3対3のミニゲームがあります。ゴールは左右に2つずつ。4つあります。小さな簡易ゴールやコーンにバーをのせた小さなもので十分です。相手に攻撃されて守備に戻る際もゴールが2つあるため、3人で力を合わせて守らなくてはなりません。全員に守る習慣が植え付けられます。一方で、相手からボールを奪った瞬間、さあどこから攻撃したらいいか。最もいいポジションにいる味方にパスを出す判断をしなくてはならないので、そこで試合を組み立てる中盤の経験ができます。そうやって、シュートまで持ち込むプレーを3人全員が経験できます。ドイツサッカー協会は、フニーニョをやっていくとフォワード、中盤、バックとすべてのポジションを全部経験できることを、実際にデータを取って検証しています。そのエビデンスに基づいて、協会はこのメニューを推奨しているのです。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2021年12月10日どんな練習をしても楽しそうじゃない子。練習強度に物足りなさを感じているわけでもなさそう。練習についてこれなくてツライ、という感じでもない。頼まれて昨年からコーチを引き受けたばかりで、どんな対策をしたらその子たちのテンションを上げられるのかわからなくて......。楽しくボールを蹴ってほしいけど、どうすればいい?とお悩みのお父さんコーチ。みなさんならどうしますか?これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、楽しんでできる練習メニュー例や楽しめてない子への個々のアプローチをアドバイスします。参考にしてください。(取材・文島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<相手にボールを奪われると取り返しに行けない子、ボールの奪い方をどう理解させたらいい?<お父さんコーチからの質問>初めまして。これまで池上さんの本を何冊か読み、とても勉強になりました。ありがとうございます。私は10歳の息子をもつ父で、昨年から少年団のコーチを頼まれてチームに関わっていますが、指導方法で悩みがあります。私は細かい技術指導と言うよりも、楽しく、これから先ずっとサッカーを続けて欲しいと願い、子どもたちと一緒になってボールを追いかけてサッカーを楽しんでいます。ですが、1、2名全然楽しそうでない子がいます。ハッキリ言ってうまい子たちという訳でもないので、練習強度に物足りなさを感じているわけではないと思います。なので、練習内容のレベルを下げてみても楽しそうにボールを蹴ってくれません。そういった選手のテンションの上げ方や、楽しめる練習方法などアドバイスを貰えたらと思います。お忙しいところ恐れ入りますがよろしくお願いします。<池上さんのアドバイス>ご相談ありがとうございます。小学生は、いかにサッカーに興味をもってもらうか。そこが、その後も長く競技を続けてもらえる入り口だと考えます。その点から、ご相談者さまが、ひとりか二人の子どもについて「どうも楽しそうじゃないぞ」と気づいてくださり、そこをご自分で考えた末に私に相談してくださったことをうれしく思います。■一人ひとりがサッカーを始めたきっかけを知ることが大事子どもたちがサッカーを始めるきっかけは、さまざまです。自分から興味を持つ場合もあるし、友達に誘われたり。サッカー経験者やサッカーファンの親御さんから勧められることも多いです。ただし、親に連れてこられたから難しい、というわけではありません。入り口はそうだったとしても、そこからその子自身にサッカーを心から好きになってもらえるかどうか。そこがジュニアの指導者の腕の見せどころです。その点から言うと、コーチは子ども一人ひとりがどんなきっかけでサッカーを始めたのか、また、自分たちのチームを選んだのかを知っておく必要があるでしょう。■最初はシュート練習など初心者が楽しめるものをそのうえで、子どもたちの状況を踏まえながら、サッカーがどんなものなのかを伝えていきます。最初は鬼ごっこをしたり、ドリブル競争をしたりと、ボールを扱って遊ぶことを楽しんでもらう。そういったプログラムから入ってください。最初から技術練習から入ると、楽しくありません。初心者がサッカーをして、まず最初に「楽しい!」と感じられるのは、シュートが決まった瞬間だと思います。したがって、ボールをもらってシュートするような場面がたくさん出てくる練習をやらせてあげてください。ゴールを決めると楽しくなり、もっとサッカーをしたい、うまくなりたいと思うものです。フットサル日本代表元監督で、ジュニアの指導にも詳しいミゲル・ロドリゴさんと何度か話す機会があったのですが、彼は「ジュニアには、一日の練習で必ず全員が得点する状況をつくってほしい」と話していました。■楽しんでできる練習メニュー例いただいたご相談の中で「楽しめる練習方法などアドバイスを」とあります。実際にそのチームの練習を見ないとわかりませんし、こんな練習が楽しいですよと言っても、そこにいる子どもたちに合うかどうかわからないのが悩ましいところです。そのことを踏まえて、以下のメニューを参考にしてみてください。1.二人でドリブル競争・シュートゲーム皆さんにいつもお話ししていることですが、私の経験上、競争のあるメニューにすると子どもが楽しく取り組めると考えています。2.フニーニョドイツが育成段階でやろうとしている3対3。ゴールが4つあり、ボールを触る回数、シュートを打つ回数も増える。サッカー強国ドイツが導入を決めた3vs3のミニゲーム「フニーニョ」とは■子どもたちがサッカーを好きになるような指導を心がけましょう繰り返しになりますが、ご相談者さまが考える「子どもを楽しませる指導」はとても重要です。一国のサッカーを強くしたいと考えたら、プロや日本代表といったトップだけを鍛えようとしても実現しないでしょう。サッカーに出会う子たちが、いかにサッカーを好きになってくれるか。ファンをつくらなくてはいけません。そう考えると、ドイツのようなすでに4回もW杯を手にした(西ドイツ時代を含め)強豪国でも、子どもたちがより楽しくなる方法を模索しつつ普及への努力を惜しまない。その姿を見ていると、子どもたちみんなが上手くなること、底上げがいかに重要なのかがよくわかります。対する日本は、1993年にプロ化したばかりで、W杯も最初の出場は98年フランス大会からというサッカー後進国です。私たち指導者は、多くの子どもたちがサッカーを大好きになってくれるようにもっと努力しなくてはいけないと思います。もっと他のメニューや、詳しいやり方や他のメニューを知りたい場合は、手前みそではありますが、私の本を手に取ってみてください。練習方法に触れているものとしては、『池上正の子どもが伸びるサッカーの練習 』(池田書店)『「蹴る・運ぶ・繋がる」を体系的に学ぶ ジュニアサッカートレーニング』(カンゼン)の2冊があります。無論ですが、ネットその他でも情報は得られるはずです。■楽しそうじゃない子たちから好みの練習を聞きだすしつもん次に、子どもたち個々への接し方についてお話しします。私は基本的に、楽しくやっている子、集中できている子にはあまり声をかけません。その部類の子どもたちは、自分で勝手に上手くなっていく要素がすでにあります。したがって、楽しそうじゃない子や、難しい顔つき、困ったような様子の子どもに積極的に話しかけます。例えば、「こうしてみたら?」「こんなことはどう?」とかかわります。彼らとの時間を増やします。「こんな練習はどう?」「どんな練習が好き?」と彼らの好みや気持ちを聞きます。そうやって手厚いサポートをしてあげてほしいと思います。決して、「これは楽しい(はずだ)からやってごらん」と一方的に押し付けたり、「これができるようにならないと」など抑圧的にふるまってはいけません。■子どもたちのテンションの上げ方は......(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)技術面も丁寧に指導します。例えばキックが上手いけれどドリブルが下手な子には、ドリブル練習の時は一緒についてあげます。でも、キックが多く出てくる練習の時は、その子は得意なわけなので構わなくていい。キックが上手く蹴られない子のところに言って、一緒にどうやったらうまくできるかを考えます。最後に、選手のテンションの上げ方は?という質問ですが、周りがワイワイ言っても子どものテンションは上がりません。練習メニューを試しては、探っていくしか方法はないのです指導者は、子どもたちがハマりそうなメニューを見つけるためにも、たくさん引き出しをもてるよう勉強してもらえるとうれしいです。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2021年01月15日世間はお盆休みですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。休暇をとられている方も、世間のカレンダーとは逆にお仕事の方も、お子さんが夏休みのこの時期に色々と考えることがあるのではないでしょうか。本日は、ジュニアサッカー(少年サッカー)の保護者向け情報サイト「サカイク」で2020年1月から7月に配信した記事の中でみなさんの注目度が高かった記事をランキングでご紹介します。サッカーを通してわが子を成長させる親の接し方について参考になることがたくさんありますので、ぜひいま一度ご覧ください。第5位上手い子だけボールを触れればいいの? サッカー強国ドイツが導入を決めた3vs3のミニゲーム「フニーニョ」とはわが子を含めチームメイトの子どもたちも、好きでやっているサッカーなのに試合中1度もボールに触れない子がいて良いと思いますか?それで「楽しい」という気持ちをもち続けられるでしょうか。スポーツ本来の楽しみ方を全員に感じてもらう、みんながボールに触れる環境がチーム全体のレベルアップにつながります。少年の全国大会がないドイツで、ドイツサッカー連盟が9歳以下の試合に導入を推奨したことで注目されるようになったミニゲーム「フニーニョ」が、チームの底上げにおすすめな理由とは。ドイツで長く指導者を務め、フニーニョ導入の経緯や実際の現場を知る中野吉之伴さんに教えていただいたフニーニョのメリット記事を読む>>第4位新年度から8人制にも本格適用! 新ルールをおさらいしよう!! <前編>すでにJリーグでは取り入れられているサッカーの新ルール。まだ小学生年代では適用しきれていないかもしれませんが、もともと日本サッカー協会が「遅くとも2020年4月1日」と8人制サッカーのルール改正適用の時期を定めていました。すべての大会で新ルールが適用されるのですが、今年は新型コロナウイルスの影響などでチーム活動停止の期間などもあり、まだ新ルールに慣れてないチーム、子どもたちも多いのでは?酷暑の時期、涼しい場所での座学でサッカーへの理解を高めるのもお勧めです。ハンドや交代など多くのルールが改正された今回の新ルールについて今のうちに覚えておきましょう記事を読む>>第3位夏休み短縮、炎天下の登校...今年の夏、子どもたちの学校生活で心配なことトップは?3位にはこの夏の心配事のアンケート結果がランクインしました。多くの学校で夏休みが短縮され、例年は夏休みだった時期も登校になり、マスクをしての授業など、親も子も先生方も経験したことがない今年の夏への不安など、忌憚なきご意見が寄せられました。保護者のみなさんが心配しているのはどんなことなのか、外出の際に子どもに気を付けてほしいことは・・・記事を読む>>第2位「うちの子運動神経が悪くて」と悩む親必見!「サッカー以前」に必要な運動スキルとは「運動能力」の記事に関心の高い親御さんはとても多いです。運動ができる子と苦手な子の違いは何でしょうか。親御さんたちの中にも自分の幼少期に比べ、わが子の運動体験が少ないかも......と潜在的に感じている方もいらっしゃると思います。そもそもいまの子どもたちはサッカーをするための基礎的な運動体験から得られる体力運動能力が低いので、サッカーのスキル習得を中心とした練習や運動をしても上手く習得できないのだ、といわきスポーツクラブアカデミーアドバイザーを務める小俣よしのぶさんが教えてくれました。身体活動の基礎となる姿勢維持の力が弱い子も増えているのだとか。「走る運動も身体を支える力が必要です。走るフォームを直してほしいという要望をよく聞きますが、走る運動は総合的な体力運動で、子どもにとっては高負荷の運動なんです」運動が苦手なお子さんの運動機能を向上させるために、家庭でもできる「身体機能を整える運動」を教えてくれたので参考にしてください記事を読む>>第1位高校サッカー選手権優勝の静岡学園が、部員が多く1日2時間半程度しか練習できないからこそ身につけたタイムマネジメント術毎年注目度の高い高校サッカー選手権大会。今年優勝した静岡学園は南米のサッカースタイルをベースに世界で活躍できる選手育成を目指し、足元のスキルなど個人技に優れた静学スタイルは多くのファンを魅了しました。昨年度の部員は260名。なのに練習グラウンドはフルコート1面と小コート1面という環境。グランドを使える時間が限られているなかでサッカーも勉強も両立するために選手たちがどんな工夫をしているか、齊藤興龍コーチにお話を伺いました。サッカーに勉強にと忙しい選手たちのタイムマネジメントに関心のある保護者の意見も多く寄せられます。近年では現役サッカー部員で東大合格者も生んだ静岡学園の選手たちが、どんな風に時間を使って高いレベルでタイムマネジメントをしているか、ご覧ください記事を読む>>いかがでしたでしょうか。これからも親御さんご自身が考えるきっかけになったり、チームがよくなるきっかけになる記事を配信していきますので、ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。【保護者、指導者の皆さんへ】連日猛暑続きで夏バテが続いている方もいらっしゃるのではないですか?まだまだ暑い日は続きますが、お父さんお母さんの疲労回復のためにこちらの記事をご紹介しますので、参考にしてリフレッシュしてくださいね。バスクリンのお風呂博士に聞いた「正しい入浴と睡眠の知識」>>
2020年08月11日