「学校に行きたくない」と子どもに言われたら、多くの親御さんにとっては青天の霹靂です。本連載の最終回は、ママやパパがテンパらないために大切なことを3つにまとめてお伝えします。引き続き、花まるエレメンタリースクールの校長“はやとかげ”こと、林隼人先生にお話を伺いました。ヒント1.不登校の相談する先は学校以外にもある不登校が増加の一途を辿る中、関連情報は刻一刻とアップデートされています。楢戸:国の登校支援の考え方は「学校復帰が前提」から、学校以外の場での多様で適切な学習活動の重要性を認める方向に変化しています。学びは「(地元の)学校に行く」の一択ではないことを頭に入れ、フリースクールなど別の居場所についての情報もインプットしておくと選択肢が広がります。 【「国の登校支援の考え方」について詳しくはコチラ】また、そもそも不登校について相談する場所は、学校以外にもあるという「他の相談先の存在」を知っておくことも大切です。情報収集をするときに役立つサイトをピックアップして記事の最後につけておきました。情報収集をする中で、「こんな考え方があるんだ」「こんな場所があるんだ」「こんな活動をしている人たちがいるんだ」と知ることも閉塞感を和らげる一助になると思います。【POINT1】(地元の)「学校に行く」一択ではなく、「いろんな場での学び方を試してみる」という選択肢を国が認めていること、「学校以外にも相談先として頼りになる場所がある」ことを知っておく。ヒント2.「勉強の遅れが心配」で勉強させても意味がない楢戸:学校を休むとなると、「勉強が遅れてしまわないかが心配」というママも多いと思います。そこは、どんなふうにお考えですか?はやとかげ:不登校だった子が登校できるようになると、勉強の遅れが気になりはじめる方も多いです。そのときは、「もう(心配性や欲が)出ちゃっていますよ、お母さん」という話をします。保護者の方が、勉強のことを心配するのは当たり前のことです。けれども、「今、保護者が勉強のことを考えたからといって、彼ら・彼女たちの心のエンジンが動き出すのか?」という話です。心のエンジンは、ガソリンが満たされてから動くんです。勉強とは異なるモチベーションからでもエンジンが回りさえすれば、ボンと勢いがついて巻き返すことができます。だから、心のエンジンが回っていないのに、「勉強が遅れるのが心配だから」という理由で勉強をさせようとしても、正直なところ、あんまり意味がないというか…。楢戸:そうは言っても、周りに遅れを取っているのが不安になってしまうんですよね…。はやとかげ:保護者の切実な心配も理解できますから、面談で対話をしながら時間をかけて丁寧に伝えていくこともよくあります。たとえば、本を読み出すタイミングって、人それぞれです。小学校のときから読んでいるからOKという訳でもなくて、高校になってから急に読みはじめる子もいます。それは、なぜか? といったら、自分で「これだ!」と思ったからなんですよね。「宇宙飛行士になりたい」という目的が見つかって、「この中学に行くんだ!」「この高校に行くんだ」となれば、本人に「何のために勉強するのか」というモチベーションがしっかりあるので、必要だと思えば勉強はします。実際に、入学当初は勉強に強い拒絶反応を示していてプリントにはまったく見向きもしなかった子が、「ここに行きたい!」という中学校を見つけたことがきっかけで夢中になって勉強をするようになったということもありました。そういった内なる動機づけがなく、「心配だから勉強をやる」というのは大人でも難しいと思います。勉強は、「その子のヤル気スイッチが、いつONになるか?」という話です。楢戸:「ヤル気スイッチ」は、保護者の永遠のテーマです。はやとかげ:スイッチがいつONになるのか? ということで言えば、いろんな機会、いろんな体験をする中で、心が本当に「私、これやりたいんだ!」に出会うかなんだと思います。気になったことを調べてすぐ芽が出ることもありますが、それだけでなく、大人になってから「こういうことだったのか」と面白さに気づくこともとても大切です。芽を出すタイミングはその子によってバラバラですが、見たり、聞いたり、触れたり、感動したりしたものは、その子の心の中に種がまかれています。今、私たち大人が子どもたちにできることは、できるだけ多くの種をまくことだと思って、いろいろな体験の機会をつくるようにしています。■ひとりの友だちがいればすべてを超えるはやとかげ:不登校の場合は、それ以前の話として、その子が悩んで、心のエンジンが動かなくなっていないかを考える必要があります。そう考えていくと、根本は「人生、今、楽しいな」って思えるか? 1番は、そこの部分です。そして、それは何かといったら、「ひとりの友だちがいるかどうか」なんです。信頼できる仲間と出会えれば、すべてを超えてしまうんです。心のエンジンさえ動けば、彼ら・彼女らは、僕らが想像しないことを成し遂げていく…。僕らは、そんな卒業生を見てきました。楢戸:花メンの第1回の卒業式に臨席しました。卒業証書を受け取った後、卒業生がひと言ずつ話す場面がありましたが、みんな自分の言葉をしっかりと持っていました。はやとかげ:うちには、3~4年間くらい学校に行っていなかった子も多数在籍していますが、勉強についてはまったく問題ないです。これは、全員に断言できます。【POINT2】勉強は心のガソリンを満たして動き出してから! いろんな体験をして、ひとりでいいので信頼できる友だちを作ることが大切!ヒント3.子どもが変わるきっかけは家の中にはない…!?楢戸:最後に、ママたちに「これだけは伝えたい!」ということはありますか?はやとかげ:不登校が長引いてしまった場合、彼ら・彼女らが変わるときは、おそらく家の中ではないんです。変わるときは、何か機会が与えられて、「きっかけ」が生まれたときです。たくさんの不登校の子どもたちと出会ってきた僕は「不登校が長引いてしまった場合は、放っておいて治るということはない」と考えています。そのまま放っておくだけだと、「ただ家にいる」という状態が年単位で続くこともあります。「トラウマだから家で休んだ方がいい」と勧める医師がいたり、勇気を出してバスに乗ったら、やっぱり怖くなってパニックになってしまったり…ということもあるでしょう。でも、やっぱり僕は人が変わるときは、家の外で何かが起こっているときだと思うのです。「今日を凌ぐこと」だけに終始していたら、子どもはあっという間に大きくなります。気がつけば数年経っていた、となったときに、「家で休んだ方がいい」と言っていた人が責任を取ってくれるのだろうか? そこは冷静に考えた方が良いと思います。焦る必要はありませんが、このことは忘れないでいて欲しいです。【POINT3】焦りは禁物! でも、今の状況を変えるきっかけは「家の外にある」というのを頭においておくこと。■不登校の子どもの課題がわかる…花メンの学び楢戸:花メンには、数年単位で不登校だった子どもたちが毎日楽しそうに登校しています。どのような学びが行われているのでしょうか?はやとかげ:漢字や計算といった基礎学習の時間は、全体の20%くらいです。その他の比重イメージとしては、PBL(プロジェクトベースドラーニング・課題解決型学習)が20%、体育が20%、畑が20%、宿泊学習といった野外学習が20%といった学びの中で子どもたちは育っています。いろんなタイプの授業をやってみると、その子が抱えている課題がわかるんです。ある長期不登校の子は、1年生からまったく学校に行っていませんでした。中学年になった今年から花メンに通うようになりましたが、その子の今の課題は、(PBLの一環である)フリマ(フリーマーケット)で見えたんです。課題が見つかったら職員室の全員で、その子のことを話し合います。■多種多様な生きた学びを子どもたちに!楢戸:花メンの職員室に伺うと、いつもいつも、子どもたちのことを話し合っています。はやとかげ:花メンをつくる前に、みんなで「どんな学校をつくりたい?」ということを話し合いました。結論、「職員室を、日本一子どもたちのことを話している職員室にしたい!」となりました。花メンは、不登校に特化した学校としてつくった訳ではないんです。そうではなく、「(既存の学校にはない)独自の子どもの伸ばし方をガンガンやろう!」という気持ちで、毎日子どもたちと向き合っています。英語、スポーツ、農業と、僕らが今までやってきたことすべてを注ぎ込んだ学校で、いわば「日本版インターナショナルスクール」というイメージです。花メンの開校時間から考えると、不登校の子どもたちが通ってくれることは僕たちの思惑通りです。楢戸:取材当日、商店街で「一番好きな夏の歌」について街頭インタビューをしている花メンの子どもたちにばったり会いました。子どもからお年寄りまで世代の違う人に声をかけるのは勇気がいることだと思いますが、臆することなく話しかけていく姿に人間としての力強さを感じました。こうした多種多様な生きた学びで個性がどんどん発揮されていくのだなと感じました。いかがでしたか? 長年、花まる学習会の高濱先生を取材してきました。花メンを運営している花まる学習会グループは、「新しい学びを追求しよう!」というエネルギーに満ち溢れていますが、そのエッセンスを濃縮したのが、花メンだという気がします。子どもが不登校になるかもしれないという状況に動揺する親御さんもいらっしゃるかもしれません。しかし、 発達障害と診断された息子を育てた筆者 は、子どもが「ふつう」から外れたときこそ、親子ともども世界が広がるチャンスなのだと実感を込めて思います。ぜひ、多くの学びの選択肢にアンテナを伸ばしてみてくださいね!■不登校に関する情報収集で役立つサイト【学校以外の子どもの居場所】● フリースクール全国ネットワーク 日本全国の子どもの居場所・フリースクールをつなぐネットワークのサイト。「加盟団体一覧」を見てみると、「新しい学びの可能性に挑戦している団体が、こんなに世の中にあるのか!」と驚く。地域毎に分かれているので最寄りのフリースクール探しに役立ちそう。【学校以外の不登校についての相談先】● こころもメンテしよう(厚生労働省) 国が作った若者を支えるメンタルヘルスサイト。「困ったときの相談先」をクリックすると、若者向けのサイトなので「どんなふうに相談すればいいの?」と初めて相談をする時の心の持ち方を知るコンテンツもある。「こころの相談窓口」には、地域の保健所や保健センターなど、公的な相談先が多数紹介されている。● 児童相談所一覧(こども家庭庁) 不登校の相談は、児童相談所でも受け付けている。都道府県別の対応窓口の電話番号が出て来るのでアクセスしやすい。● カタリバ相談チャット 不登校支援の名著「不登校親子のための教科書」を作ったNPOカタリバのサイト。他の保護者の話が聞けるオンライン(Zoom)でゆるやかにおしゃべりする会を定期的に開催して」いるそう。不登校傾向で悩んでいる保護者を対象に、30分のオンライン面談も行っており、利用は無料。【花まるエレメンタリースクールとは?】花まるエレメンタリースクール(通称・花メン)は、学校に行かない選択をした子どもたちのためのフリースクールです。写真は実際の花メンの子どもたち。全員が不登校の経験があるとは信じがたい、生き生きと自信にあふれた表情です。●「花メン」の日々の様子: インスタグラム 林 隼人(はやし はやと)プロフィール花まるエレメンタリースクール校長、ファッションブランド「ノットイコール」代表、農業×ビジネス教室「みんなビレッジ」主宰。元中学校教諭、サッカー日本代表 川島永嗣と立ち上げたグローバルアスリートプロジェクト学長を経て、高濱正伸との運命的な出会いがあり現在に至る。親と離れて暮らす社会的養護の子どもの人権活動にも取り組んでいる。
2024年08月30日近年は、「(地元の)学校に通うことだけが選択肢ではない」といった視点が主流になりつつあると話すのは、花まるエレメンタリースクールの校長“はやとかげ”こと、林隼人先生。子どもが学校に行かなくなった時に親がどうすればいいのかお話を伺います。■子どもが学校に行かないのは母親のせい?楢戸:子どもが「学校に行きたくない」と言いはじめたとき、ママは「私の育て方が悪かったからではないか」とか「辛い気持ちに気がついてあげられなかった私が悪い」と、自分を責めてしまうことも多いと思います。はやとかげ:そんなことは、全然思わなくていいですね。まったく‼ こう僕が声を大にして伝えたいのは、「学校に行けない子どもに遠慮している親御さん」に数多く出会ってきたからなんです。「学校に行きたくない」と言われれば、誰もが不安になるでしょう。でも「学校に行けない」という問題はあるかもしれないけれど、卑屈になる必要はまったくありません。「そうか、学校に行きたくないんだね」と、落ち着いて事実を受け止めて欲しいと思います。不登校の根底の原因は、多くの場合は人間関係です。人間関係での傷は、人間関係でしか癒やせないんです。だから、お母さんひとりだけで抱え込んでどうにかなる話ではないということは、心しておいて欲しいと思います。楢戸:では、親は何もできないのでしょうか?はやとかげ:何かできるとすれば、お母さんの失敗談や辛かったときのことを話すのがいいと思います。たとえば、「お母さん、小学校のときにグループのなかで仲間外れにされたことがあってね。そのことを高校生のときまで誰にも言えなかったんだ」。こんな話をしてあげられたら、子どもは安心して、もしかしたら本音が出てくるかもしれません。■不登校の理由に嘘をつく子どもはやとかげ:一方で、もうひとつお伝えしたいことがあります。それは、子どもの言うことをすべて真に受けないということです。楢戸:子どもが言うことを真に受けてしまうのは、良くないのでしょうか?はやとかげ:時にはクリティカルシンキング(批判的思考)も必要だという話です。たとえば、不登校の「表向き」の理由で多いのは、「うるさい音が苦手」や「先生と合わない」といったことです。音に対しての感覚過敏や先生という理由は、子どもにとって言いやすいんです。「何と言えば大人が納得するのか」ということを、子どもは真剣に考えています。僕らは子どもたちと接するときに多大なリスペクトを持っていますが、「子どもは嘘をつく」という大前提も忘れてはいません。だから、「これは、嘘だな」とわかるんです。楢戸:子どもは嘘をつく!?はやとかげ:僕も「元・子ども」なので、よくわかります。子どもの頃は、その場逃れの大嘘をよくついていました。僕の周囲にいた友だちだってそうです。そして、(嘘をついていることを)気づいてもらえると、じつはホッとしたりもしていました。だから僕らは子どもと接するときに、本当にド直球で「それ、違うだろ」と真実を突いて、彼ら・彼女らを解放してあげることもあるんです。これは、子どものためです。子どもの側も、嘘を見抜いてもらえないと大変です。最初は少しごまかすつもりが、気づいてもらえないと、雪だるま式に嘘をつき続けなければなりません。想像してみてください。嘘に嘘を重ねていく時間の重さを。真実を突いてもらえれば、そんな時間からは解放されます。だから、僕らが気づいてあげて、「いや、お母さん。これはそんな大きな話ではなくて、シンプルな話です」と実情を話しつつ、状況を整理していくこともあります。昔は、子ども同士で結構そういうことをやっていたんです。リーダー格の子が、「お前、嘘つくなよ」などと言ってくれた。それに似た感覚で、真実を突き、本人を解放してあげることで状態が良くなる子もいます。■学校を休む目安は?楢戸:今みたいなエピソードを伺うと、「たしかにママだけでは難しいな」と感じます。「(学校以外の)他の選択肢を探す」という段階と、「ちょっと学校を休ませて、少し様子をみてみる」という段階。この時期の見極めは、どうしたらいいでしょうか? はやとかげ:1ヶ月半をひとつの目途にしてください。学校を休んでゆっくりさせたのは良かったけれど、1ヶ月半を過ぎてくると、「ここからはコンディションが下がってしまう一方」みたいな段階が来ます。楢戸:学校に行かない期間が長引くと、保護者にも焦りが出てくると思います。はやとかげ:1ヶ月半が経ってしまう前から、(学校以外の)他の選択肢に目を向けはじめるという感覚を持てていると、楽ですね。「地元の学校に通う」ということが野球だとしたら、スポーツはサッカーやバスケット、バレーやテニスなどいろいろある、そんな感覚です。継続的に通うかどうかは一旦置いておいて、学校以外の居場所に見学に行ってみることもおすすめしています。学校に「行く」「行かない」という2択の中で子どもを追いつめるのではなく、他の選択肢があることを知るだけで、「やっぱり学校に行くわ」と言い出す子どももいます。「海外に行ってみたら、日本の良さがわかった」というのに似たイメージかもしれません。 視野を広げるという意味でも、家に閉じこもりっきりになるのではなく、さまざまな教育機会に触れるのは良いことだと思います。【POINT】不登校はけっして本人やママのせいではない! 学校に行きたくない理由は嘘をつくこともあるので、クリティカルシンキング(批判的思考)も忘れずに。最初の1ヶ月半の間に学校以外の居場所を探してみよう!経験値に基づいたはやとかげ校長の言葉には、説得力がありました。次回は、ママやパパがテンパらないために大切なことをまとめてご紹介します。【花まるエレメンタリースクールとは?】花まるエレメンタリースクール(通称・花メン)は、学校に行かない選択をした子どもたちのためのフリースクールです。写真は実際の花メンの子どもたち。全員が不登校の経験があるとは信じがたい、生き生きと自信にあふれた表情です。●「花メン」の日々の様子: インスタグラム 林 隼人(はやし はやと)プロフィール花まるエレメンタリースクール校長、ファッションブランド「ノットイコール」代表、農業×ビジネス教室「みんなビレッジ」主宰。元中学校教諭、サッカー日本代表 川島永嗣と立ち上げたグローバルアスリートプロジェクト学長を経て、高濱正伸との運命的な出会いがあり現在に至る。親と離れて暮らす社会的養護の子どもの人権活動にも取り組んでいる。
2024年08月29日夏休みも終わりが見えてきました。お子さんは、2学期を楽しみにしていますか? じつは、この時期は「学校に行きたくない」と言いはじめる子どもが多い時期でもあるのです。 もし、子どもから「学校に行きたくない」と言われたら、どうしたらいいのでしょうか? 学校に行かない選択をした子が通うフリースクール「花まるエレメンタリースクール」の校長“はやとかげ”こと、林隼人先生にお話を伺いました。林 隼人(はやし はやと)プロフィール花まる学習会の30年のノウハウが詰め込まれた「花まるエレメンタリースクール」校長で、ファッションブランド「ノットイコール」代表、農業×ビジネス教室「みんなビレッジ」主宰。元中学校教諭、サッカー日本代表 川島永嗣と立ち上げたグローバルアスリートプロジェクト学長を経て、高濱正伸との運命的な出会いがあり現在に至る。親と離れて暮らす社会的養護の子どもの人権活動にも取り組んでいる。【花まるエレメンタリースクールとは?】花まるエレメンタリースクール(通称・花メン)は、学校に行かない選択をした子どもたちのためのフリースクールです。写真は実際の花メンの子どもたち。全員が不登校の経験があるとは信じがたい、生き生きと自信にあふれた表情です。花メンでの学びについては、連載3本目でご紹介します。●「花メン」の日々の様子: インスタグラム ■「学校に行きたくない」は誰にでも…!? 不登校の現状楢戸:子どもに「学校に行きたくない」と突然言われたら、保護者は驚きます。そんなとき、まずはどんな声かけをするのがいいのでしょうか?はやとかげ:大前提として最初に知っておいて欲しいことは、「学校に行きたくない」という状態は、誰にでも起こりえるということです。近年、不登校は増加の一途で、社会的認知も進んできました。楢戸:たしかに、そうですね。内閣府の資料(※1)にもあるとおり、不登校の子どもたちは約30万人に達しており(令和4年度)、前年度から約22%も増加しています。小学校35人学級で考えてみると、不登校・不登校傾向の子は4.5人、約12%を占めることになります(※2)。特別支援教育が必要な子どもたちよりも数としては多いのですが、これまでは可視化されてきませんでした。はやとかげ:大人は、子どもが「学校に行きたくない」と言いはじめたら、理由を探したくなりますが、本人も理由が言語化できていない場合も多々あります。「社会に出たら、嫌なことはいっぱいある。頑張って学校に行きなさい」などと励ますお父さんもお見受けしますが、いまの時代、(地元の)学校に通うことだけが学びの選択肢ではないということは知っておいて欲しいと思います。■国が認めてる「学校以外」の選択肢楢戸:国の方向性を知っておくことも大切ですね。少し難しい話となりますが、大切な部分なのでご紹介すると、2017年に施行された通称「教育機会確保法」(※3)では、国や自治体に下記の措置を求めています。●学校以外の場における不登校児童生徒の学習活動、その心身の状況等の継続的な把握に必要な措置●学校以外の場での多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の休養の必要性を踏まえ、不登校児童生徒等に対する情報の提供等の支援に必要な措置要は、教育機会確保法成立以後は、国の登校支援の考え方が「学校復帰が前提」から、「学校に行けない子どもに休養を与え、学校以外の場での学びの重要性を認識していく」という方向に変化しているんです。【POINT】(地元の)「学校に行く」一択ではなく、「いろんな場での学び方を試してみる」という選択肢を国が認めていることを知っておく。■学校を休ませたら癖にならない?楢戸:国の方向性を理解した上で、具体的なケースで考えてみます。「おなかが痛くて学校を休みたい」と本人が言っていても、親なら明らかに仮病だと気づく場合もあります。そんなとき、「1回休ませたら、それが連続するんじゃないか」という不安はあると思います。はやとかげ:ひとつ言えるのは、「おなかが痛いから休みたい」と言っているときは、子どもにとってはすでに結構ギリギリのSOSだということです。「仮病でしょう」などと言って本人の気持ちを真っ向から否定するのではなく、まずは「どうしたの? 何があったの?」と聞いてみて欲しいと願います。■不登校の理由を一番知られたくないのは?はやとかげ:たくさんの不登校だった子どもと出会ってきた肌感覚から話をさせてもらいます。最初の面談で、「どうして学校に行きたくないの?」と聞いたときと、子どもが元気になってから本音を聞けたときとでは、学校に行きたくない理由が違うんです。本音を聞いている僕らからすると、学校に行きたくない理由の根底には、人間関係の問題があります。でも、子どもの立場からすると、人間関係で苦しんでいることを一番知られたくないのが、お母さんなんです。自分がいじめられている、仲間外れにされているということを、子どもは隠します。楢戸:本当の理由を言ってくれない場合もあるのですね。はやとかげ:当初は、言ってくれない場合の方が多いかもしれませんね。だからこそ、子どもに「学校に行きたくない」と言われたら、ひととおり理由を聞いたあと、いい意味で深追いはせず「うん、じゃあ、今日は休もうか」。最初のひと言は、これがいいと思います。【POINT】子どもが「学校に行きたくない!」と言ったら、「どうしたの?」と理由をひと通り聞いたあと深追いはせず、「今日は休もうか」と第一声は子どもの気持ちを受け止める。今回は、国の登校支援の方向性を理解した上で、初動について伺いました。次回は、百戦練磨のはやとかげ校長に、子どもの心の内を伺います。※1:出典 文部科学省「 令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果 」※2:出典 内閣府「 総合科学技術・イノベーション会議 資料 」※3:出典 文部科学省「 教育機会確保法 」
2024年08月28日「IPUアワーユニバース」が『居場所づくり』や『学習サポート』や『農業体験』などを支援!学生の力で創る「フリースクール」が、2024年5月2日にプレオープンしました。運営は、夢の実現に向かって挑戦しているIPU生で組織された「アワーユニバース」。彼らがメンターとして児童・生徒に寄り添い、「夢、挑戦、 達成」を支援し、自己肯定感を高め、社会的自立に繋げます。メインキャンパス「学習サークル」(JR瀬戸駅から徒歩5分)では、子どもたちの『居場所づくり』や『学習サポート』が、IPUキャンパスでは、『本気のスポーツ』『学術的研究』『表現教育』『メディア研究』が、金山寺キャンパス(JR玉柏駅かた車で10分)では『農業体験』『古民家再生』『カフェ経営』などが提供されます。不登校や別室登校の児童・生徒にとって、未来への架け橋となる「志」を育む場となります。学習サポートの場学習サークル金山寺キャンパス【募集人数】最大40名【対象者】不登校児童・生徒、不登校気味の児童・生徒※自分で通学できることが基本【開講場所】IPU学習サークル(瀬戸駅から徒歩5分) IPU・環太平洋大学(岡山市東区瀬戸町観音寺721) 金山寺(〒701-2151 岡山県岡山市北区金山寺481) 【特徴1】IPU学習サークルでの個別学習サポート①独自の基礎学力カリキュラムの設計(外部委託)②教員志望学生による、在籍学校に準じた個別サポート③課外活動とリンクした学習サポート④学習心理支援カウンセラー資格を取得した学生による支援【特徴2】IPUキャンパスでの高等教育体験①表現教育(歌って踊って自己表現)②本気のスポーツ(IPU体育会の全面協力)③学術的研究(社会学、スポーツ分析など)④サークル活動とのコラボ(メディアラボ、eスポーツなど)【特徴3】金山寺キャンパスでの課外活動体験①大工職業体験(古民家再生)②DIY・デザイン(リフォーム会社経営者との実践)③エクステリア体験(庭のデザインと管理)④カフェ経営(管理用使途の協同メニュー開発)⑤農業のIT化による農作物栽培(ECサイトでの販売)⑥マイ田んぼ(農業経営)【特徴4】ハイブリッド課外活動※20名程度オンラインでのゼミ活動(オンサイトでの食・住の実体験)農業体験の準備中!【卒業後の進路】進学を希望する高校の入試に対して全力サポートを行ないます。※児童・生徒個別の状況にあわせ、在籍校への報告を行う事で出席扱いになる場合があります。※進学校の受験を希望する場合は、進学塾と連携して全力サポートを行います。※半年以上の在籍で、IPUの系列高校であるクラーク国際記念高校への進学が確約されます。問合せ先担当:影山 ipu-manaviva@ipu-japan.ac.jp アワーユニバース 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2024年05月06日こども支援事業を行う特定非営利活動法人アライブワンでは、不登校児童がひきこもりになる前に何とかしたい、学校の代わりに過ごせる新しい居場所、フリースクールを2023年6月、神戸市兵庫区に開校いたします。親子相談■背景コロナ禍で子供達の意欲を奪い、学校に行くことに否定的な子供が増えてきました。いわゆる不登校児童です。理由も曖昧でなんとなく「行きたくない」から不登校は始まります。コロナ禍で同じような事を言ったら「うつったら困るし、休めば…」という言葉が徐々に学校に違和感を抱いていた子供に拍車をかけてしまった気もします。そして、不登校児童は家族にも影響が。例えば子供が家にいることで、母親は付きっ切り。パートに行けず世帯収入が激減。そこにきてこの物価高。母親の悩みは子供の不登校に目が向くようになります。そうなると不登校から「ひきこもり」に変わっていき家族の望みとは逆の方へと状況が悪化していきます。そこでフリースクールが子供たちに新しい居場所づくりをします。■スクールの特徴*フリースクール(通学型)フリースクールに否定的なYouTubeを見ますが、フリースクールを過小評価している気がします。子供たちはゆっくり指導すればできる勉強もクラスみんなと同じペースだと身につかない事等でクラスに馴染めず、それゆえ担任教員との関係性も悪くなり学校を否定的に感じる子が多いと聞きます。我がフリースクールでは一日の時間割は朝に自分で決めます。また水曜日には地域の様々な職種の方を講師に招き体験学習をします。ここでは体験学習などから達成欲求を刺激し人間的な強さを身に付けて社会復帰できるように支援します。*デリバリースクール(訪問型)「ひきこもり」に片足が入りかけている児童と個別に時間を過ごす活動です。学習支援、軽スポーツ、ゲームの対戦相手やおつかいなど家族以外と過ごす時間を通して日常を取り戻すように支援します。■スクール概要店舗名 : FREE SCHOOL あらいぶ開校日 : 6月1日(木)所在地 : 〒652-0015 神戸市兵庫区下祇園町36-5アクセス: 地下鉄山手線「大倉山」駅 徒歩10分市営バス9系「家庭裁判所前」下車 徒歩2分営業時間: 平日 10:00~16:00定休日 : 土・日・祝席数 : 12席URL : ■会社概要商号 : 特定非営利活動法人アライブワン代表者 : 理事長 西尾 実所在地 : 〒652-0061 神戸市兵庫区石井町1-4-14-401設立 : 2023年1月事業内容: こども支援事業・カウンセリング事業・女子サッカーチームURL : 【本件に関するお客様からのお問い合わせ先】特定非営利活動法人アライブワン お客様相談窓口TEL:070-8595-2403 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年04月12日わが子にとっての「あたりまえ」とは?を考えるーー『自閉スペクトラム症の太郎とやさしい世界』この本では、発達ナビの連載ライターである「まゆん」さんと、自閉スペクトラム症があり特別支援級に在籍する息子の「太郎」くんの温かい日常のエピソードが描かれています。太郎くんとの生活は驚きの連続。ふとしたときに独特の感じ方、考え方を見せる太郎くんの特性を、まゆんさんも、まゆんさんのご両親やお姉さんも、否定することなく、やさしく受け止めてくれます。自閉スペクトラム症がある太郎くんのエピソードが中心に描かれていますが、そのほかにも看護師として夜勤で働くまゆんさん自身のお仕事のお話や、若くして亡くなったまゆんさんのお兄さんや病気が見つかったお姉さんのお話、先生や友達との人間関係などを含めて、「自閉スペクトラム症のある子どもの子育て」というテーマに限らず、生きるとは、子どもを持つこととは、その人にとっての「あたりまえ」とは、お互いを思うこととは、といった幅広いテーマについてじっくりと考えられる一冊になっています。感覚過敏、癇癪、抽象的な概念の理解の難しさなど、さまざまな特性があるものの、ときに大人が気づかないようなハッとするようなことを口にしたり、周りの人の言葉や行動を自分なりに解釈してやさしい言葉をかけてくれる太郎くんとの関わりを通して、太郎くんだけでなく、まゆんさんや太郎くんの周りの人が成長していく様子も垣間見ることができます。やさしさあふれる太郎くんとあたたかいご家族の日常から、自分にも人にもやさしくなれる生き方のヒントが得られるのではないでしょうか。一人にしない、立場を超えた対話の重要性ーー『対話から始める脱!強度行動障害』強度行動障害とは、他害や自傷など、周囲の人の暮らしに影響を及ぼす行動を著しく高い頻度で起こすために、特別に配慮された支援が必要な状態を指します。近年、医療、教育、福祉、行政など、それぞれの分野でさまざまな取り組みが進められているものの、まだまだ家族や施設で孤立し、困り果ててしまうケースが多いといわれています。この本では、ライフサイクルを見据えたうえで、1. 思春期、2. 思春期~青年期、3. 成人期~高齢期と3つのパートに分け、強度行動障害の背景、予防のための工夫や支援、家族との関係性や自立生活のための支援についてなど、それぞれの時期にぶつかりやすい困りごとやその対処法について、座談会も交えながら、児童精神科医や介助職の方など幅広い立場の専門家により書かれています。大切なのは支援者も当事者も孤立させないこと。それぞれの立場を超えて対話を重ね、教育、福祉、医療など分野を超えて連携し、包括的に支援を行っていくことが強度行動障害を抜け出すための一歩になるのではないでしょうか。強度行動障害についてさまざまな悩みに直面したとき、この本は必要な情報を提供してくれるかもしれません。フリースクールについての疑問に答えてくれる一冊ーー『フリースクールを考えたら最初に読む本』近年では、不登校の子どもの数が年々増加し、フリースクールなど家や学校以外の「第三の居場所」の需要が高まっているといわれています。いざ子どもが不登校になり、フリースクールに通うという選択肢を考える段階になったときに、そもそもフリースクールとはどんな場所で、どんなスタッフがいるのか、どのように選べばいいのか、といったことについて情報を得ることが難しいという課題があるそうです。この本では、不登校新聞編集長の石井志昂さんにより、不登校について、フリースクールの必要性について、運営やスタッフについて、選び方についてなど、フリースクールに関して知りたい情報が分かりやすくまとめられています。Q&Aや当事者、保護者の方の体験談も掲載されており、幅広い視点から「フリースクールとはどんな場所か」について学ぶことができるような一冊となっています。不登校は決して他人事ではなく、何かのきっかけで急に学校に行けなくなってしまうことはいつでも起こりうることだと言えるでしょう。子どもが不登校になったとき、フリースクールは一つの選択肢になるかもしれません。フリースクールと言っても、中身はさまざま。子どもにとって最適な選択ができるよう、この本は必要な情報を提供してくれるのではないでしょうか。現在不登校状態にある方も、フリースクールについて知っておきたいという方も、さまざまな方におすすめの一冊です。強迫症の正しい理解と治療のためにーー『強迫症を克服するー当事者と家族のための認知行動療法』強迫症とは、自分の意思とは関係なく、ある考えやイメージが頭に浮かんで離れなくなり(強迫観念)、そこで生まれた不安を払拭するために同じ行動を何度も繰り返すこと(強迫行為)で日常生活に支障が出てしまう不安障害の一つです。強迫症は本人の生活に支障をきたし、そのことを自分で責めたりしてしまったり、家族や近くにいる人も巻き込まれてしまったりするケースが多く、とても苦しい病気であるといわれています。この本では、「洗浄強迫」「確認強迫」「整理整頓型強迫」「想像型強迫」などそれぞれのタイプごとに症状や原因が説明されているほか、強迫症の治療、家族の対応、関連するほかの障害などについて詳細に語られており、自分の症状に合った対処法を見つけることができるようになっています。強迫症の治療は「ひたすら我慢する」「ひたすら嫌なことをする」と考えられていることも多いですが、このようなイメージは誤解であるとこの本では述べられています。病気の実態や治療について正しい知識を得たいと思ったとき、この本はそっと寄り添ってくれるのではないでしょうか。誰もが参加し楽しめる、新しい体育のあり方ーー『合理的配慮にも活用できる!アダプテッド・スポーツで誰もが主役の楽しい体育』アダプテッドスポーツとは、身体活動をする際に配慮が必要な方(障害児者、高齢者、妊婦など)に対し、用具、ルール、環境などを工夫することで、誰もが身体活動に参加できるようにするための取り組みを指す言葉です。この本では、年齢、性別、障害などを問わず楽しめるアダプテッド・スポーツの考え方をベースに、誰もが主役になれる体育の在り方が分かりやすく解説されています。第1章では、理論編として、体育やアダプテッドスポーツの基本的な考え方を、第2章では、実践編として、器械運動、陸上運動、ボール運動など、それぞれの分野ごとにさまざまな運動の実践例が紹介されています。運動の効果・効用や評価の仕方など、実際に授業をデザインする際に参考になる内容もたくさん盛り込まれています。教室の中には、運動が苦手な子ども、身体を動かすことに制約がある子どももたくさんいるでしょう。体育の授業の時間に、誰かが我慢したりつらい思いをしたりする必要がない環境づくりのためには、みんなで楽しめる体育の授業を考えていくためには、どのようなことが必要なのか、この本と共に考えてみてはいかがでしょうか。「令和の日本型学校教育」と知的障害教育はどう交わる?ーー『知的障害教育における「個別最適な学び」と「協働的な学び」』2021年1月に中央教育審議会から「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」が答申されました。この本では、答申の中で示された「個別最適な学び」と「協働的な学び」というキーワードについて、これらを知的障害教育においてどのように実現していくかについての提案がなされています。Ⅰ章で「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」が示す内容を読み解き、Ⅱ~Ⅳ章では、知的障害教育の歴史、「学校生活の集団化と個別化」、教育目標「自立」をめぐる議論をもとに「個別最適な学び」と「協働的な学び」の在り方が検討されています。さらにⅤ章では「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現する授業づくりについて、Ⅵ章では今後の課題と望ましい方向性について述べられています。知的障害教育の歴史を振り返ると、すでに「個別最適な学び」「協働的な学び」の多様で豊かな蓄積があることが示されています。今後の教育が目指す「令和の日本型学校教育」と知的障害教育はどのように結びつき、関わっていくのでしょうか。知的障害教育という観点からの「個別最適な学び」と「協働的な学び」について知りたい方、「個別指導」と「集団指導」、また教育目標「自立」との関係について考えたい方におすすめの一冊です。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2023年01月14日フリースクールに通う子どもたち、合宿を計画!?理由は「楽しいIFラボを、もっと知ってほしいから!」2018年4月から発達に個性のある子たちのフリースクール「IFラボ」を開いています。前回までのコラムで、息子が不登校になって素敵な居場所を見つけ、フリースクールをたちあげようという気持ちにいたるまでや、実際にフリースクールを運営するようになってからの子どもたちとの日々を紹介しました。今回は、フリースクール「IFラボ」に通う子どもたちが計画した合宿でのエピソードを紹介します。この合宿は、「楽しく過ごせるIFラボを宣伝したい」という子どもたちの思いからスタートしました。参加者募集開始!でも、申し込みが来ない合宿は2泊3日。子どもたちたっての希望で、1日目はフリースクール泊。屋内でできるワークショップを開いたり、夜ごはんをつくったりして過ごします。2日目からは軽井沢に場所を移して、テントを広げてアウトドアキャンプの予定です!しかし!肝心の参加者が集まりません(汗)不登校の子どもたちのなかには、外出に不安を抱えている子や、母子分離不安のある子など、外泊が難しい子がいることも関係しているかもしれません。合宿に興味はあるけれどやはり外泊はできないと、興味を持ってくれたものの参加を断念する子もいました。それでもIFラボの子どもたちは、どうしても合宿を実行したいと、以前体験に来てくれた子や、他の学外プログラムで出会った友だちを誘うなど、積極的に勧誘。IFラボに通う子のきょうだいや、私の息子のチー坊なども含め、最終的には子ども9人という大人数でキャンプを行うことに決定♪合宿当日の朝、みんな来ないそして迎えた夏の暑~い朝、IFラボ合宿が始まりました!ワクワク!がっ!合宿当日の朝!子どもたちが来ない…時間通りに来た子どもは1人だけ(笑)「オレは行けるぜ」と余裕を見せていたのに、当日朝に「やっぱり行かない。疲れている」と家ですったもんだして、3時間以上遅刻してくる子。「遅刻したから部屋に入りづらいんじゃないか」とお母さんと一緒に心配しながらやってくる子、などなど…。みんなにとって、初めて会う友だちとの合宿。知らないことに飛び込むのには少し時間がかかるようです。計画してくれたYくんとSくんも、家では「俺は準スタッフだから」と準備を頑張っていたようなのですが…やっぱり来ません(笑)実は、YくんとSくんは学校でケンカをしてしまい、IFラボで仲直りの場をつくって解決はしたものの、やはり気持ちの切り替えができないでいるのも原因のようでした。Yくんは「もう一生仲直りはできないから、あいつが来るなら合宿には行きたくない」と、朝どうしても家を出られず、結局夕方から参加することに。Sくんも「俺が行くとYくんがいやがるかも」と不安を抱えていながら、1時間半ほど遅刻してやってきました。本当は仲良くしたいのに「うまく仲直りできなかったら」という心配で、一歩前に踏み出せない2人。実は合宿前の活動日も「あいつが来るならIFラボには行かない」とお互いが来る日にはIFラボをお休みしていたのです。でも仕方なく顔を合わせてみたら、2人の心配はどこへやら!?いつの間にか一緒にいるではありませんか。そっと見守っていると、なんの問題もなく笑い合いながら楽しく遊んでいました。Yくんは「僕は絶交という言葉はもう使わない」とお母さんに話したそうです。ワークショップやみんなで入るお風呂に大興奮だった初日Upload By 赤沼美里初日は、ワークショップにカレーづくりにみんなでお風呂と盛りだくさん。午後には「スペシャルな人に会おう!」ワークショップを行いました。IFラボはシェアオフィスの一角を間借りしていて、オフィスではいろんな業種の方が仕事をしています。今回はデザイナーの方にお願いして美術のワークショップをしてもらうことにしました。ひとつのものも、視点やアイディアを変えればいろんなものになることを学んだあとは、お絵かきタイム。初めて目にする本格的な色鉛筆やペンにみんな興味津々です。いつもの色鉛筆よりずっと塗りやすく、思い思いの絵を描きました。ワークショップ中、Wくんはそばにお母さんがいることに気づきました。するとWくん「なんでお母さんがいるの。早く帰って!」…お母さん、びっくり(笑)1年前のWくんは、お母さんがそばにいないと不安で、お母さんのそばを片時も離れたことがなかったそうです。「キャンプに参加したい」と自分から希望してきてくれたWくん。友だちとの遊びに夢中になって、お母さんが帰っていくのを見送りもせず、お母さんを嬉しくも寂しがらせたのでした。Upload By 赤沼美里とにかくみんな、楽しくて仕方がないみたい!お風呂の順番決めのじゃんけんも大絶叫と大笑いの嵐。最初は新しいことに飛び込む勇気が必要だったけど、今、すごく楽しいんだろうなぁと、こちらまで笑顔になりました。カレーづくりや、お風呂、寝袋での就寝もスムーズ!こんなに計画通りに進むとはスタッフは思っていませんでした。みんな楽しみにしてくれていて、しおりも熟読してくれたのかしらと嬉しい気持ちで合宿1日目が終わりました。しかし興奮しすぎて、眠れない様子。音が気になってしまう子もいるため、寝つきは悪かったよう。これは次回の課題になりそうです…。合宿2日目、みんな朝からハイテンションUpload By 赤沼美里夜寝られずに苦労した子もいたはずなのに、みんな時間通りに目覚めて朝から走り回っています。なんて元気なの…しかも、こちらから伝える前にすでに、2日目の目的地・軽井沢のキャンプ場へ出発するための荷造りが完了している子もいました!駅までの道のり、重い荷物を背負いながら歩きます。小学2年生で、体も一番小さな私の息子・チー坊は、寄り道しながら進むこともあって集団からおくれがち。すると6年生の男の子が、遅れるたびにチー坊のところまで戻って「大丈夫?荷物もってあげようか」と声をかけて一緒に歩いてくれました。チー坊の通うフリースクール(※)の先生は、「異年齢・異質な集団」が教育の大切な要素だと常々おっしゃいます。その良さって、きっとこんなところなんだろうなと胸が温かくなりました。チー坊も優しくされた分、大きくなってこんなふうに誰かに手を差し伸べられるといいな。(※)チー坊は通常、「IFラボ」とは別のフリースクールに通っています。子どもたちは信じられないくらいに元気です。道中の新幹線では、1両目から最後尾まで車内観察に出かけ、しばらく帰ってこない子もいました。キャンプ場に到着しても、その元気は続きます。キャンプ場では、インターハイ出場の学生スタッフDがオニとなりどろじゅん(どろけい・けいどろ)が開始されました。私は、もちろん見学です(笑)。東京よりも涼しくて、段違いにおいしい空気を吸いながらが延々と続くどろじゅん。みんな本当に元気でした!さて、めでたくスタッフDに全員捕まった後は、テント設営です。設営にも個性が光ります。・まず説明書を熟読し、幕をピンと張って見た目もキレイなAチーム・とりあえず広げてみて、試行錯誤を繰り返すBチーム・他のチームの完成を横目で見ながら、効率よく張っていくCチーム・最後みんな面倒くさくなって、幕がゆるくなっているDチーム(私のチームです)無事テントまで完成しました~!「マイペースがいいね」と言ってくれる大人に見守られてUpload By 赤沼美里テントが完成したら、いよいよ今日のビッグイベント「薪のお風呂に入ろう」です。みんな薪のお風呂は初めて!興味津々で薪をくべます。そして男の子全員でザブン!気持ち良さそう~!お風呂というより、芋洗いプールのように1時間近く遊んで、彼らが遊びに遊んだあとのお湯は濁っていました(笑)屋内の活動と違って外では子どもたちの遊びが広がり、時間になってもバーベキューが始まりません…。でもお世話をしてくれた方も、「みんなそれぞれにマイペースなところが良いねぇ。バーベキューの時間だけど放っておいていいんでしょ?」と微笑んでしました。「マイペースが良い」って素敵な表現です。きっと学校ではその「マイペース」でうまく周りに合わせられなかった経験があるはず。チー坊も学校でみんなに合わせられずに怒られてばかりでしたから。でもこうやって、その子の「マイペース」が素敵だと認めてくれる人もたくさんいるのです。いろいろな機会を通じて、たくさんの大人に出会い、成長を見守られる環境を大切にしていきたいなと思っています。友だちがいたから挑戦できたアドベンチャーUpload By 赤沼美里最終日の午前中は、アドベンチャーに挑戦!初めての人も、そうでない人も3人組になって2時間以上のコースをまわります。Sくんは、キャンプ3日前に左手首を骨折。キャンプも来られるか分からない状況でした。ところが、今日のアドベンチャーには左手首を負傷したまま挑戦!友だちに手伝ってもらいながら、無事コース完了しました!いつも少し偉そうにしゃべるYくんが、今朝はちょっと違います。腰が引けて、動きもかなり緩慢(笑)。でもすべてのコースに一生懸命、挑戦するYくんがかわいらしかった。実は3月に家族旅行で別のアドベンチャーに挑戦していたYくん。今回よりも難易度がずっと低く行程も短かったにもかかわらず、怖くて途中でリタイヤしたそうです。今回は前にも後ろにも一緒に挑戦する友だちがいました。後ろから愛あるヤジ「何やってんだよ、早く行けよー!」が飛んできたことで頑張れたそう。Yくんに聞くと「来年はアドバンストコースにチャレンジする」と宣言!来年が楽しみです。子どもたちの個性、「見方」を変えてみるとUpload By 赤沼美里最終日、「あぁ、帰りたくない」と何度も口にする子どもたち。本当だね、すっごく楽しい合宿だったね。みんなの笑顔がキラキラ輝いていたよ。私はみんなを眺めているだけで、なんだか涙が出そうになったよ。帰りの電車に向かう途中、エスカレーターでSくんと話していたら、急に黙るTくん。しばらくすると「ねぇ!今のアナウンス聞いた?〇〇線は7を【しち】って言ってたでしょ。〇×線は【なな】って言ってたんだよ!」と大興奮で教えてくれました。ワタクシ生まれてウン十年、まったく気づきませんでしたよ。Tくんはいつもいろんなことに興味がうつり、実際に行動に移しては新しい発見をしていて楽しそうにしています。残念ながらTくんの好奇心は、学校では座っていられないという問題行動としてとらえられていました。でもIFラボの活動では、ずっと座っていないから問題になることはありません。それに、見方を変えれば、Tくんはほかの人が気づけないことに気づける力があるってこと。合宿中にも、困っている人にすぐ気づいて、さりげなく助け船を出すのは、いつもTくんでした。Tくんに限らず、私たちスタッフは素敵な個性を見逃さず「素敵だよ」って声をかけていきたいなと再確認するきっかけとなりました。来年も合宿したいね!Upload By 赤沼美里子どもたちが声をそろえて「楽しかった!来年も行きたい!」と答えてくれた2泊3日の合宿。1泊をIFラボ、1泊をキャンプ場で過ごした子どもたちに「やっぱりIFラボに泊まっちゃうとテント泊が短かったね。来年は2泊テントが良いんじゃない」と聞くと「IFラボに泊まるのも超楽しかったから、来年はIFラボ1泊、テント2泊にしたらいいんじゃない!?でも3泊4日でも少ないから、5泊6日にしよう」「いいね!いいね!」という答えがかえってきました。来年はどうなっちゃうんでしょうか?大人の体力が持つかしら(笑)今回の合宿で子どもたちはどんな風に成長したんだろうって、ずっと考えていました。とりたてて大きな事件も出来事もなく、みんな笑顔で元気に終えられたキャンプだったから。何か成長はあったかな、といろいろ考えるうち「子どもたちが合宿に参加できたってこと、それ自体が大きな成長だったのではないだろうか」ということに気づきました。IFラボを宣伝したいといって計画を立ててくれたSくん。お母さんから「すぐに興味がうつってやり始めるけど、最後まで頑張れない」と聞いていました。だけど、骨折をおして参加してくれました。怪我をしているから、リュックの紐を結べず友だちに頼むのは恥ずかしいと行きしぶってもいたSくん。最終日には、躊躇せず友だちに頼むことができていました。修学旅行を楽しみにしていたのに、うまく眠れないためにドクターストップがかかって行けなかったTくん。キャンプに参加できるのがうれしくて楽しくて、2日間ともみんなと一緒に寝られました。アドベンチャーで思いっきり体を動かして帰宅した夜も、ぐっすり眠れたそうです。エネルギー不足でほんの1年前にはキャンプなんて考えられなかったWくん。話の合うお兄ちゃんと一緒にいつも笑顔で過ごしていました。本当に元気がなかったのかな、と思えるほど元気いっぱいに走りまわり3日間を過ごしてくれました。IFラボキャンプには、子どもたちのいろんな状況と思いがつまっていました。参加の一歩を踏み出せたこと、笑顔で3日間を過ごせたこと、楽しい気持ちを子どもたちで共有できたこと、気の合う仲間がいるんだって思えたこと、帰りたくないって思えたこと…そんな小さな一つひとつが、IFラボキャンプに参加したみんなの成長だったのではないかなと思っています。
2018年10月16日フリースクールを立ち上げたい!その思いは大きな流れになって2018年4月から発達に個性のある子たちのフリースクール「IFラボ」を開いています。前回のコラムでは、息子が不登校になって素敵な居場所を見つけ、フリースクールをたちあげようという気持ちにいたるまでをお伝えしました。最初は不登校の息子に合う場所をつくりたいという一心でしたが、実際にフリースクールを立ち上げ、子ども達が通ってきてくれるようになると、いつの間にか自分では止められない大きな流れに…。ここでは、試行錯誤した準備や、運営開始してからの様子をご紹介します。どんなフリースクールにする?出典 : フリースクールを立ち上げようと考えた私は、同じ思いの仲間をみつけ、設立に向けて準備を始めました。まず、フリースクール設立に興味のある大人だけで、どんなフリースクールにしたいかを話し合いました。療育施設ではないけれど、発達に個性がある子を受け入れる場合にどんな課題が考えられるのか?どんな形式のフリースクールにするのか?などなど、何度も議論を重ねました。その結果、「何でも好きなことをしてもいい居場所ではなくて、プロジェクト形式で学びを広げ深めていける場所にしよう」「私たち大人は先生ではなく伴走者になろう」という方針を決めました。しかし!大前提の結論は…「子どもが来てみないと分からないんじゃない(笑)」!?確かにそうなのです。大人が寄り集まって議論をしても、実際の子どもたちの反応はまったく分かりません。そこで、一緒に運営にかかわってくれているお母さんの子ども、Yくんに運営スタート前のフリースクールに、テストとして週1回、来てもらうことにしました。子どもと一緒にフリースクールをつくろう出典 : はじめて遊びに来てくれたYくん、恥ずかしそうにしていて、あまり話もしませんでした。しかし何回か一緒に過ごすうちに、「ここはなんだか落ち着く~」と打ち解けてくれるように♪プログラミングではコンテストの受賞歴もあるYくん。でも、プログラミングに限らずどんな分野の話にも興味津々です。フリースクールを手伝ってくれている大学生が、試験勉強のために統計の本を読んでいると統計の話が広がり、心理学の話になれば目を輝かせてIQについて質問をします。「大人が設定しなくても、子どもたちが抱く興味から学びは広がる」私たちはそう確信し、大人がプロジェクトを設定するのではなく、子どもの興味で生まれたプロジェクトに寄り添いながら進めていくことにしました。お互いの「好きなもの」を尊重しあえる仲間ができたUpload By 赤沼美里さて、子どもが主体的に学んでいく過程を確認できましたが、子どもたちが増えるとどんな風になるんだろう…子どもひとりではイメージがつかめません。そこで、Yくんと同じ学校に通っていて、Yくんの隣のクラスに在籍しているSくんを招待することにしました。SくんもYくんと同じように学校になじめないでいたそうです。Y&SコンビはIFラボにくるなり、すぐに打ち解けて仲良しに!Yくんが好きなのはプログラミング、Sくんはドローンです。2人の興味は異なるものの、互いの興味あるものを見せあって話しあって…楽しそう!あとで聞くと、学校ではカリキュラムがキチキチと決まっていて、自分の好きなことを自由に話す時間がなかったそうです。また、たとえ時間があっても、分かってもらえる友だちが見つからないので話しも盛り上がらず、毎日がつまらなかったと言っていました。「ずっと大人しか話し相手がいなかったから」といったYくんはニコニコ笑顔でした。友だちが見つかってふたりとも本当に楽しそうで、私まで嬉しくなった瞬間でした。大人は伴走者。プロジェクトは子ども主体でUpload By 赤沼美里IFラボの活動日は子どもたちの状況を考えて、週1から始めることにしました。オープン時間は、10時から15時まで。朝の会、午前の活動、お昼休み、午後の活動を行います。ワークショップや図書館に行くなどの活動がある場合以外は、当日の朝にその日にやることを確認します。朝みんなが集まったら、まずは朝の会です。当日やることを決めるほか、この1週間で楽しかったことや嬉しかったことをシェアします。最初は「ゲーム」だけだった回答が、今では「〇〇に行ってきた」とか「〇〇して楽しかった」とか、たくさんの楽しかったことを教えてくれるようになりました。朝の会でやることを決めたら、早速活動開始です!現在は、複数の子どもたち協働で「エレベータープロジェクト」がすすめられています。このプロジェクトでは、プログラミングを活用して制御可能なミニチュアエレベーターをつくってみようと、まずは段ボールで試作品をつくることからはじめました。このエレべープロジェクトのほかにも、さまざまなプロジェクトが立ち上がって動き出しています。ドローンで短編映画がつくりたい、自作PCをつくってみたい、ドローンで大会に出たい、プログラミングコンテストに出たい、会社をつくりたい、段ボールでシミュレーションゲームをつくりたい、飛行機の揚力を調べたい…などなど。週1の活動日では足りないくらい、子どもたちのやりたい気持ちはあふれています。私たちが口を挟む必要のないくらい、子どもたちの学びたい気持ちが大きいので、子どもが増えてもプロジェクト設定に問題はなさそう!むしろ、子どもたちが出会うことでどんな化学反応が起きるのか楽しみなくらいです。ただ、プロジェクトをすすめていくのには、やはり大人の伴走が必要です。1日の見通しが立たないと、何をしたら良いか分からなくなって不安になってしまう子や、時間の使い方が苦手な子、次の作業に切り替えるのが難しい特性のある子が参加しています。そのため週1の短い活動時間をどのように配分するのか、ToDoリストなど視覚的なツールを活用しながら、子どもたちが達成感を得られるように寄り添う努力をしています。ぼくたちがIFラボを宣伝するよ!自分たちでつくりあげるキャンプUpload By 赤沼美里そんななか、Y&Sくんがおもむろに「キャンプ計画を立ててもいいですか」と聞いてきました。「こんなに楽しいIFラボをもっとみんなに知って欲しい。夏休みにIFラボのキャンプで過ごして、9月からIFラボに来て欲しい。もしIFラボに来なくても、キャンプの楽しい思い出を胸に学校で頑張って欲しい」という子どもたちの願いから生まれた計画です。スケジュールから、ホームページでの告知まで、みんな子どもたちが企画・実施しています。1泊はIFラボで泊まりたいから、2泊目をアウトドアでキャンプにするという計画を立てていた子どもたち。2泊ともアウトドアが良いんじゃないかしら…とやんわり提案するも、「これがいい!」とのことで譲りません(笑)「自分たちで好きにやりたい」ということなので、失敗もふくめてたくさん経験してもらえたら良いなと思っています。キャンプがどうなったか、それは次回の記事でのお楽しみに!!「学ぶ場をつくりたい」という私の思いは、みんなの願いにUpload By 赤沼美里子どもたちも少しずつ増え、9月からは週に2回の活動日にしていく予定でいます。毎回、試行錯誤で「次はこうしていったら良いね」と子どもも含めた話し合いを大事にしています。IFラボを始めるまでは不安や心配の方がが多くて、「つくりたい」と考えてはいるものの、きっと実現できないだろうなぁとどこかで思っていました。でも、自分の気持ちを表明すると、賛同する仲間が集まってくれました。いつの間にか、私の希望や願いが他の人の希望や願いと重なり合って、小さな流れができていたのです。小さな流れができると、その流れを知った新しい仲間が賛同してくれて、さらに大きな流れになりました。そのうち、自分ではもう止められない流れになっていました。最初は息子・チー坊の学び場をと悩んできたことが、いつのまにかIFラボにきてくれている他の子どもたちの人生にも大きくかかわり、子どもたちの家族にもかかわるようになったことを痛感します。子どもたちの笑顔に接するたびに、この場を大切に育んでいかなくてはと強く思うようになりました。「ここに来るとなんだか落ち着く」「楽しくて、帰りたくない」「毎日オープンしないの?オープンしたら毎日来たいよ」「お母さん、僕生まれてはじめて毎日が楽しいんだけど、これってずっと続くのかな」「週1度、IFラボにくるのを楽しみに、毎日学校に行ってた」IFラボに来てくれている子どもたちの言葉は、私の宝物です。IFラボ(Infinite Future Lab)という名前は、子どもたちの無限の未来を願ってYくんと一緒に考えたものです。「学校が合わなくても、その子にあった居場所はきっとある」という信念は、変わっていません。だってIFラボにきてくれている子どもたちは、すごく楽しそうに自分から学んでいるから。学校以外の学ぶ場所や居場所がもっともっと増えて、子どもたちの笑顔が増えることを願っています。ラボ
2018年08月30日発達障害のある息子、学校になじめない出典 : 小学校2年生になる息子チー坊は、入学後1ヵ月もしないうちに行き渋りが始まりました。校門までは手をつないでニコニコで行けるのに、校門をくぐった瞬間に座り込んでしまう。最初の1か月半ほどは朝から給食が始まるまで付き添いを続けていました。しかしお母さんがいると甘えてしまうとのことで、ほどなく付き添いをやめることに・・・仰向けになって「行きたくない!」と泣き叫ぶ息子を、副校長先生が抱き上げて教室に連れて行くのを胸を痛めながら見送っていました。息子の通う小学校は5月に運動会があるため、先生方もなんとか息子を運動会に参加させてあげたいと、息子の気持ちが落ち着くまで隣の空き教室で本を読ませてくれるなど、一生懸命心をくだいてくれていたようです。でも、朝行きたくない気持ちを切り替えられない、みんなと一緒の行動ができない、休み時間に本を読むと集中しすぎて授業に戻れない、お友達にちょっかいを出す、授業が簡単すぎてつまらない、知っている字なのにドリルをやる意味が分からないので取り組まない、聴覚過敏など、さまざまな理由が重なり、なかなか学校になじめませんでした。息子、不登校になる出典 : 入学後しばらく経つと、息子の体に異変が起こります。夜になるとじんましんが出るようになってしまったのです。最初は疲れているのかな、とじんましんの出た翌日は休ませるようにしました。しかし次第に学校に行った夜にじんましんが出るように…これは息子のSOSなのではないだろうか…「息子からSOSが出ている、でもそうだとしたら私はどうしたら良いのだろう」不登校を決断するまで、とてもとてもとても悩みました。お世話になった保育園の先生からは「合わない居場所に1日いるのは、大人が思っているよりも本人にとってずっとずっと長い時間だから、チー坊にとってはすごくつらいと思う」とアドバイスを受けたり、息子を知る方々にも「チー坊に合った居場所が必ずあるよ。今の学校だけが学ぶ場所ではないから、あきらめないで居場所を探して」と励まされたりしているうちに「体にサインが出るほどつらいのに、無理して学校に行くことはないよね」そう考えるようになり、6月からは学校に行かない選択をしました。息子、本当は学びたい出典 : 不登校のあいだに息子をじっくりと観察して確信したこと、それは「息子は学校に行きたくないだけで、学びたくないわけではない」ことです。息子は知的好奇心がものすごく旺盛で、興味のあることにはごはんを食べることを忘れるくらいにとことん集中します。2歳くらいから好きになった魚から始まり、恐竜、宇宙、人体、元素、三国志など、知りたいことがあると親が何も言わなくても自分で学びを広げ、深めていました。不登校中に博物館に出かけたり、家で本を読んだり、アクティブラーニングの学習塾で授業に参加したり・・・息子の目はいつもと変わらずキラキラと輝いていました。こうして「学校に無理に合わせるのではなく息子に合った居場所を探そう」と、家族で息子の居場所探しが始まったのです。息子、素敵な居場所を見つける出典 : フリースクールのなかには、学校とは違う学びを目指しているところがあり、まずは体験に行きました。ところが、息子の個性がそことは合わず、ほかの居場所を探した方がいいのではとやんわり断られてしまいました(ちなみに、息子もそのフリースクールが合わなかったようで相互にお断りという結果でした)。ひとつめのフリースクール見学だったのに、「もうチー坊が行けるフリースクールはないかも」と、泣きながら帰ったことを覚えています。ふたつめのフリースクールを見学すると、チー坊は「ここにする!」と即決。1年生の6月から自宅から電車で1時間半ほどの距離にあるフリースクールに通うことになりました。息子の通うフリースクールは、まさに「みんな違ってみんな良い」。障害の有無にかかわらず、少人数で異年齢のいろんな子どもたちが通っていて、それをみんな当たり前のように受け入れて生活しています。放課後にフリースクール近くの公園で遊んでいる様子を眺めていると、複雑なルールの理解が難しい子のために子どもたちは理解しやすいルールをつくって、どの子も楽しめるように工夫して遊んでいました。このフリースクールでは、問題が起こったら先生と一緒に「どうしたらみんなが気持ちよく過ごせるか」についてミーティングを重ね、みんなで解決しているそうです。驚くことに、学校に通っていたときは毎日のように出ていたじんましんも、普段はまったく出なくなりました。好きなことを伸ばしてあげたら良い出典 : フリースクールの先生は「よく学校で座っていられたね。学校は無理だったんじゃないかな」と驚いていました。体験初日、あらゆるものに興味がうつり、引き出しすべてを開けて室内を走り回っていたとのこと…そして先生はこうもおっしゃいました。「チー坊の動いちゃうのは性質で、仕方のないことだと思う。学校で無理に座らせて苦手なことを克服するより、好きなことや得意なことを伸ばしてあげたら良いと思うよ」フリースクールの先生は、子どもたちの興味に合わせて小学校1年生から中学生に授業をしてくれます。博物館の特別展(古代アンデス文明展)に行く前には南米の地理や歴史、古代文明について授業をしてくれ、息子は古代文明好きに。毎週お散歩の授業があり、博物館に行ったり、アスレチック公園に行ったり、山登りしたり…お散歩での発見から次の授業が広がるなど、子どもたちは体験を通して楽しく学んでいるようです。チー坊がニコニコしながらフリースクールに通うようになって、私の心も本当に軽くなりました。心が元気になって、フリースクールに通う元気な子どもたちをみるたびに「人にはいろいろな学び方がある。学校だけが学ぶ場所ではない。こんな素敵な場所がたくさんあったらいいのに」そんな風に考えるようになりました。学校になじめない子が学べる場所が、日本には少ない出典 : フリースクールを探す過程で、息子のように学校になじめない子がたくさんいること、小学生の居場所が少ないこと、学べる場所が本当に少ないことを知りました。通級の先生は「学力支援や凸凹の凹(苦手)の部分を支えるものはあります。しかしチー坊のように、凸が高すぎるための凸支援は残念ながら日本にはありません。本当ならば良いところ、得意なところを伸ばしてあげたいのですが」とおっしゃってくださいました。そうか、ないのか…。そうだ、夫が借り上げた仕事場にはスペースがある。家賃の問題はクリアしている。ないなら、つくっちゃえばいいのかもしれない。そこで、わが家と同じように、発達が個性的なために学校で生きづらく不登校を経験したお母さんを誘って口説き落とし、教育に興味のある学生さんと一緒にフリースクールをつくろうということになりました。「大人だったらどうする?」で考えてみるUpload By 赤沼美里ここまでが、私がフリースクールをつくることになった、きっかけ。息子が不登校になったとき、「自由に育てているから、学校に合わない」とか「休みたいといったから休ませるなんて、わがままにさせていいのか」とか「ここは日本なんだから順応させるべき」とか、状況をなかなか理解してもらえず、傷ついたこともたくさんありました。でも私の悩んだときの基準は、「これが大人だったらどうするかな」です。会社環境が合わないために、じんましんが出るほどをつらい思いをしている友人がいるなら、きっと休職か転職をすすめるのではないでしょうか。不登校から1年、フリースクール歴1年。アンケートで「毎日の満足度を教えてください」という問いに「99点。今日はゲームをしていないから1点引いた」と答える息子(笑)笑顔で毎日を過ごす息子を見るたびに、不登校を選択して良かったと心から思っています。そして息子の通うフリースクールのような素敵な居場所が日本にひとつでも多く増えてほしい、学校になじめない子どもたちがひとりでも多く笑顔になってほしいと願って、フリースクールを立ち上げることに。次回は、どんなフリースクールを立ち上げたのかをお伝えしますね!
2018年08月21日小学校から不登校だった娘のフリースクールでの過ごし方出典 : アスペルガー症候群の診断を受けている中学校3年年生の娘は、小学校2年生のときから学校には通っていません。自宅でもほとんど勉強をしてこなかった娘ですが、「高校には行きたい」と自ら訴え、特別支援コーディネーターの先生にも相談し、来年からは通信制高校に行くことが決まりました。合わせて、自宅から通える場所にある、技能連携校にも通うことに。技能連携校というのは、通信制高校の分校のようなところで、通信制高校と技能連携校の両方に入学することで、技能連携校の方で卒業に必要な出席日数、レポート提出、試験をすべて済ませることができるそうです。娘が通う予定の技能連携校では、フリースクールとしての機能も持っており、高校入学までのあいだは、ここに通うことになりました。フリースクールでの1日はというと出典 : 娘の行くこのフリースクールでは、ピアノ教室と提携していて生徒は無料でレッスンを受けることができます。好きな曲をピアノの先生に聞いてもらって、 それを先生が聴き取って、弾き方を教えてくれます。先生のモットーは「音楽は楽しむもの。 譜面も見ないで自分の好きな曲をまずは弾いて楽しむ」なんだとか。だから、みんなピアノの時間が大好きだそうです。娘もまずは15分ほど先生とピアノを弾きます。特にピアノに興味がなかった娘ですが、自分の大好きなゲーム音楽を弾けるようになるのは楽しいようです。それから学習スペース(特に決まってないのですが)で、校長先生か教頭先生と一緒に勉強します。2人とも元小学校の先生で、塾講師のキャリアも長いので教え方が上手。学校と比べて生徒の自主性を重んじ、いくらできなくても決して声を荒げるようなことはありません。なので、怒られることが怖くてたまらない娘も安心して教わっています。小学校2年生で学力が止まっている娘は、レベルにあったプリントを1枚ずづ取り組んでいきます。たとえば、1桁 + 1桁の計算問題、また別の日は4年生くらいの漢字の読み問題。時間にしてわずか20分くらいで終わってしまう内容です。時にはほかの生徒さんも交えておやつタイム。ジュースとお菓子を頂きながらホッコリと休憩。そして1日は終了。滞在時間は全部合わせて1時間程度です。1回20分の勉強って効果があるのだろうか?出典 : 娘は満足そうなのですが、親としてやはり気になるのが勉強時間。「え、こんなちょっとでいいの?」と思うのが正直なところです。「ただでさえ人より遅れてるのに」って。でも、校長先生が言うには「学校のように、1日6時間も座って興味のないことも勉強するより、こうやって少しずつ集中して勉強したほうが効率がいいんですよ。」この言葉に疑いを持ったわけではありませんが、どうしても腑に落ちず、娘の主治医である思春期外来の先生にも勉強時間について聞いてみたのです。すると、「娘さんのような子どもたちは、普通の学校のようにカリキュラムを組んで、これをこなさないと次にいけないとなると絶望的な気持ちになります。 今のやり方がいいと思いますよ」とのこと。そういえば、以前娘の支援に関わってくれた先生にも同じようなことを指摘されたことを思い出しました。その人が言うには、ただ漫然と課題を与えられても、いつまでやり続ければいいのかわからず、不安になってしまう。だから、全体図を見せて今はここをやっているんだよと教えてあげることが大切だと言うのです。確かに、今の娘の学習の遅れは大きく、どれくらい勉強したら追いつけるのか本人も分からず不安になっている様子が見受けられます。だからこそ、フリースクールでの小学校1年生レベルから徐々に始められる環境、先生が「大丈夫、ちゃんと追いつくからね」と言ってくれる環境があることで、過度な負担や不安に悩むことなく学習を進めることができるのだと気づくことができました。在校生・卒業生たちとの交流も!出典 : フリースクールも技能連携校も、スペースやスタッフはみんな同じです。なので、娘が勉強している側で高校生や、遊びに来た卒業生が娘に勉強を教えてくれることもあります。また、先日は卒業生に仕事の体験談を聞いたりして、とても話が盛り上がっていたそうです。そうして世代を超えた交流ができるのも魅力の1つだと感じました。また、そうやって高校生たちと交流することで、実際に通うことになる技能連携校に馴染んでいくことができるのも、校長先生の狙いだけあって、さすがと思います。実際、娘はフリースクールに入ってから「学校(フリースクール)の予定表ちょうだい」と言ってくるようになり、すっかりフリースクールに所属意識を抱いているようです。思い返せば、小学校を卒業するときには、中学生になる不安で体調も悪かった娘。でも中学を卒業する今回は、気持ちもすこぶる安定していており、私もホッとしています。あきらめないでよかった出典 : このフリースクールに出会うまでには、さまざまな機関を頼り、そして失敗を繰り返してきました。今回やっと娘に合うところに出会うことができ、あきらめずチャレンジを続けてきたことは間違いではなかったと思うことができます。娘に起こったなによりの変化は、「私には行くところがある」という安心感による気持ちの安定だと思います。また、同時に、来春から通う技能連携校の様子を内部からまじまじと見て、見通しがたったことも大きな理由でしょう。こうした要素が合わさったことによって、娘は希望を持って、春を迎えることができると思います。小学校から中学校に進学する際、不安から体調やメンタルを大きく崩した経験があるだけに、中学3年生になるのが怖かった私。でも、笑顔でいつも通り過ごしている娘を見て、本当によかったと胸をなで下ろしています。
2017年10月23日フリースクールとは?出典 : フリースクールは法や制度などによって定められた学校でないため、その定義はさまざまですが、文部科学省は以下のように定義しています。「フリースクール(フリースペースを含む)」とは、不登校の子供を受け入れることを主な目的とする団体・施設を指す。つまりフリースクールは社会において「不登校の子どもたちの居場所」という役割を果たしています。それぞれの施設の運営は個人や民間の企業、NPO法人によって担われおり、様々な規模や形態のフリースクールが存在します。フリースクールは学校教育法上の公的な学校とは認められていないため、義務教育課程の子どもであれば、もともと通っていた小中学校に籍をおいたままフリースクールに通うことが通常です。フリースクールの最大の特徴としては・入学資格を設けていないこと・異なる年齢・年代の子どもが集まっていること・決まったプログラムやカリキュラムを持っていないことが挙げられます。授業内容は学校教科の学習ばかりではなく、他者との交流を行いながら自分の好きなことを自由に学ぶことができる場所であることが多いです。「もちつき大会」のような季節に合わせた行事を自分たちで企画したり、ハイキング、潮干狩りなどのレジャー活動、運動会、劇や合唱の発表会、料理、旅行などを行ったり、その活動内容は実に様々です。また、自由や個性を重んじながら、施設のスタッフやほかの子どもと接することのできるフリースクールは、不登校の子どもたちにとって社会との接点をもつ場所であり、ソーシャルスキルのトレーニングの場ともなっています。参考:フリースクールが担う不登校支援の可能性についてフリースクールは、1975年頃から増加していく不登校を背景に80年代半ばから徐々に市民の手で広がっていきました。1992年には国も「不登校は誰にでも起こりうること」という認識を示し、フリースクールに通う日数も学校の出席日数として認められる事例も増えていきました。今日、フリースクールは、2015年に行われた文部科学省の調査によって把握されているだけでも、北海道から沖縄まで全国474ヶ所が確認されています。出典:「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査」その数を見てもわかるように、フリースクールは今や子どもが学び育つ場として必要不可欠な場となっています。また、不登校の子どもを預かるフリースクールは、子どもたち本人のみならず、彼らと24時間ともに過ごす保護者や家族の精神的疲労を軽減する役割も果たしています。2015年度現在、不登校児童生徒数は、小学校27,581 人、中学校98,428 人、小・ 中の合計では126,009 人にものぼります。その数は前年度と比べ3,112人も増加しており、 フリースクールのニーズは今後も増えていくと考えられます。出典:平成 27 年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」以上のように社会的なニーズはあるものの、社会におけるフリースクールへの理解や支援は未だ不十分といえます。以下で説明する出席認知と通学定期以外の公的支援はほとんどないため、運営の財源探しに苦心するフリースクールが多いようです。国も、フリースクールで学ぶ子どもや保護者への支援を検討しはじめています。フリースクールにはどんな子が通えるの?主として、何かしらの理由で学校に行っていない子どもが通います。理由は様々で、いじめに遭って学校に行くのが怖くなってしまった子や、学校生活にうまく馴染めない子、学校の授業についていくことが難しい子、受験競争のストレスで疲弊してしまった子などがいます。それぞれ、自分の目的に合った形態のフリースクールに通っています。また、上記のような例の中には広汎性発達障害(PDD)やADHDなど、発達障害のある子どももいます。広汎性発達障害やADHDの子どもは共同生活におけるコミュニケーションを苦手と感じることも少なくなく、発達障害のない子どもよりも不登校になる可能性が比較的高いと言われています。同じように学校に籍をおきながら通える形態として「サポート校」の存在があります。フリースクールが主に精神面のサポートを行い、広く不登校の子供たちを対象としているのに対して、サポート校は主に学習支援に軸足を置いており、学習塾という色合いが強いです。そのためサポート校の対象は高等学校通信教育を受けている者(高等学校における「通信制の課程」に在籍している者、または、中等教育学校の後期課程における「通信制の課程」に在籍している者)や高等学校卒業程度認定試験合格を目指す人に限られる傾向にあります。フリースクールへの出席は学校への出席日数として認定されるの?出典 : フリースクールに通う子どもの出席認定は、小・中学生については1992年から、高校生についても2009年から実施されています。フリースクールに通うことを在籍校の出席扱いとするかどうかは在籍校の校長先生の判断に委ねられ、校長先生がそのフリースクールが「不適切」だと判断しない限り出席扱いになります。児童の不登校の問題に関して、文部科学省は以下のような姿勢を示しています。不登校児童生徒の中には、教育支援センター(適応指導教室)やいわゆるフリースクールなど、学校外の施設において相談・指導を受けている者もおり、このような児童生徒の努力を学校として適切に評価し、学校復帰などの社会的自立を支援するため、小・中・高等学校の不登校児童生徒が学校外の機関で指導等を受ける場合について、一定要件を満たすとき校長は指導要録上「出席扱い」にできることとしている。日本国憲法では義務教育について以下のように示されています。憲法第26条第2項で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」と規定されており、また、教育基本法第5条第1項に「国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。」一般的に義務教育といわれているものは、保護者が負っている「教育を受けさせる義務」(教育義務)によって子どもが受ける教育のことをさします。保護者は、児童を小中学校などに通学するように取り計らう「就学義務」という義務を負っています。一方、子どもには、基本的人権の一つである教育を受ける権利があります。しかし義務教育は「子どもが学校に行かなくてはいけない」という義務があるということは意味していません。フリースクールの費用はどのくらい?出典 : フリースクールは学校教育法上で公的に認められた学校ではないため、費用は自己負担となります。また、費用は施設によって金額差があります。平成27年3月に行われた文部科学省による調査では、1~3万円・3~5万円とする団体・施設がそれぞれ4割弱、平均額は約3万3千円でした。無料から5万円以上まで施設ごとに大きく異なり、入会金で10万円以上必要な場合もあります。1~3万円とする団体・施設が約3割で、平均額は約5万3千円です。出典:「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査」現行の制度では、政府によるフリースクールへの助成はおこなわれていません。そのため、不登校の子どもが高校生である場合、保護者は在籍している高校とフリースクールの両方に学費を納めなければならず、経済的負担は少なくありません。今後、公的支援の導入によってフリースクールの費用が下がる可能性はありますが、現時点でははフリースクールを検討する上で家庭の経済状況の考慮も必要となります。フリースクール卒業後の進路は?学歴はどうなるの?出典 : フリースクールに通う子どもたちは、義務教育期間中はもともと通っていた学校に籍をおいたままフリースクールを利用することになります。在籍校の校長による許可が出ればフリースクールへの登校も義務教育上の出席日数として承認される場合もあり、卒業に必要な単位が出席日数単位を満たすことができれば、義務教育上の小中学校の卒業資格を得ることができます。籍をおいている高校の卒業資格については、高校卒業程度認定試験(高認)を取る、フリースクールと定時制高校や通信制高校を併用するなど、様々な方法で取得することができます。フリースクールを検討する際のポイントは?出典 : 不登校の子どもを支援する施設やサービスは数多く存在します。その中で、親子にとって最善の居場所はどこか?と悩みながら情報収集されているご家庭も多いかもしれません。ここでは、そんな不登校の子どもの居場所のひとつとしてフリースクールを検討する上で、どのようなことができるかを紹介します。フリースクールとひとことで言っても、授業内容や雰囲気はさまざまです。さまざまな施設の情報を集めるとよいでしょう。インターネット検索や資料請求によって各フリースクールの具体的な費用や概要について知ることができます。参考:発達ナビ > 地域情報 > フリースクール参考:NPO法人フリースクール全国ネットワーク実際に子どもをフリースクールに通わせていたり、通わせた経験がある保護者、あるいはフリースクールで働くスタッフの話をきくことで実情を知ることができます。参考:「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」多くのフリースクールが、入学前の見学を歓迎しています。実際にフリースクールを訪れ、そこに通う子どもたちの様子を見たり、指導員の話を直接聞くことで雰囲気を知ることができます。また、お子さんにポジティヴな刺激を与えられる可能性もあります。まとめ出典 : フリースクールは主として不登校の子どものための居場所です。全国に約474ヶ所あり、規模や形式、提供する授業内容、費用などはそれぞれ異なります。公的な学校ではありませんが、在籍校の校長による許可が出ればフリースクールへの登校も義務教育上の出席日数として承認される場合もあります。社会からの理解は未だ不十分ではあるものの、フリースクールを必要とする人が多いことは確かで、今後公的支援の拡充がおこなわれる可能性も大いにあります。本人に合っているというのが大前提ですが、不登校の子どものためのさまざまな選択肢のひとつとして、フリースクールを検討してみてはいかがでしょうか。
2017年01月30日