ミュージカル『GHOST』が3月、東京・シアタークリエで上演される。原作は1990年に公開された映画『ゴースト/ニューヨークの幻』。暴漢に襲われた恋人モリーを助けたサムが、犯人追走ののちモリーのもとに戻ると、そこには血だまりに沈む自分がいて……。死してなお事件の真相を突き止め恋人を守りたいサム、突然いなくなった恋人への思いを捨てられないモリー、映画版にもましてふたりの深い愛が感動を呼ぶと評判を呼んだミュージカルの、待望の再演だ。主人公サム役の浦井健治、ヒロイン・モリーをダブルキャストで演じる咲妃みゆ、桜井玲香に話をきいた。作品の見どころは「人と人の繋がり、寄り添う心のすばらしさ、そういうメッセージが込められているのが第一の魅力。このコロナ禍の時期だからこそ伝えられるものがあると思います」と浦井。咲妃は「楽曲での心情表現がかなり色濃く提示されます。映画とは違う角度からこの作品を楽しんでいただけるのでは」とミュージカル版ならではの魅力をアピールした。2018年の日本初演では、日本版ならではの繊細な役作りにも評価が高かった。演じるサムについて浦井は「モリーを本当に愛しているのですが、言葉はなくても行動で示しているから伝わるよね、というタイプ。男性特有のわがままではありますが、照れもあるんです。そういう純粋さがある男です。右脳派左脳派でいったら右脳派、感覚人間」と分析。初演を経ての今回のサムは「今回、友人のカールを演じる水田航生君が、サムもモリ―も甘えられるカールという役作りをしています。そのトライアングルの中にいると、これくらい自由にいられるんだ、と楽しい。一方で直感的に動くサムにカールはかなわないと思っている、というのが面白い」と話した。モリーについて「芯の強い女性というのは大切にしていかなければいけないところ」と話すのは咲妃。「ただ、我の強い女性ではない。サムのことを一途に愛していますが『幸せいっぱい!』という女性ではないのかなと思っています。アーティストとしても成功していきたいという強い気持ちがある。安定を幸せとしない女性なのかな」と話した。一方で桜井は「芯が強いだけじゃなくて優しさもあるので、ただ強い女性と表現しちゃいけないなと。でもまわりの人を動かす力がある女性ですよね。彼女が強い意志で何かを追求しようとしたからこそ、幽霊となったサムのことも感じられるんだと思います」。今回初参加、「難しい役です」と言葉を選びながら話す桜井に、「私もまだまだ研究段階」(咲妃)、「それぞれが、人間味あふれているよね」(浦井)と優しく声をかける先輩ふたりの姿も印象的だった。「映画のもともと良いところを“良いとこどり”した上に、素晴らしい楽曲があわさり、さらに舞台ですから目の前で行われている分、ぐいっと一歩深く『GHOST』の世界に入り込めます」と桜井。公演は3月5日(金)から23日(火)までシアタークリエにて。その後愛知、大阪公演もあり。(取材・文:平野祥恵)
2021年03月01日2006年初演で、2018年に新曲を加えた新バージョンとして上演されたミュージカル『マリー・アントワネット』が、東急シアターオーブでの東京公演を終え、3月2日(火)より大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演される。2018年からアントワネットの恋人でスウェーデンの貴族フェルセンをWキャストで務める田代万里生に話を聞いた。ミュージカル「マリー・アントワネット」チケット情報幼少の頃からピアノやヴァイオリンを習い、大学在学中にオペラデビューを果たした田代。今作で描かれるフランス革命については、モーツァルトやグルックの音楽を通して触れていたという。「モーツァルトはアントワネットとほぼ同世代で、貴族から注文を受けて貴族のために作曲していました。一方、アントワネットとルイ16世が結婚した年に生まれたベートーヴェンは、自分がやりたい音楽や貴族に支配されない音楽を作りたかった人。貴族と平民が対立していたのは音楽的にも同じ。革命後、フェルセンは民衆が怖くなり、壮絶な人生を送るんです」。今作は、遠藤周作の小説『王妃マリー・アントワネット』をベースにしたオリジナル作品。豪華絢爛の生活を送っていたアントワネットが、同じMAの名を持つ庶民のマルグリット・アルノーとの出会いや、フェルセンとの悲恋を通して、革命の渦にのみ込まれていく様が描かれる。脚本や音楽を手掛けるのは、『エリザベート』でおなじみのミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイだ。「リーヴァイさんは、クラシックもロックも自由自在に作曲されますが、フェルセンに関しては、クラシカルな歌唱を求められる。僕が学んできたルーツをとても生かせる役柄です。ただ、アントワネットへの無償の愛ゆえに常に自制している役ですが、その表現が難しい。僕は『エリザベート』のフランツ・ヨーゼフや、『ラブ・ネバー・ダイ』のラウルなど自制する役を演じることが多くはあるのですけどね(笑)」。張りのある歌声と端正なルックスで貴公子的な存在だ。そのイメージを裏切ってみたくはならないのだろうか。「自分であまり決めないようにはしています。演出家によって自分の知らなかった部分を引き出してもらえる経験をしてきたので、得意なものだけで勝負しようとは思わないし、ないものを出そうとも思わない。目の前にある役に必死に向き合うことで、必然的に出るものが大事だと思っています。今回も新たにわきあがる感情を大切にしたいと思います」。前回は、『ラブ・ネバー・ダイ』に出演するため、大阪と名古屋公演でフェルセンを演じることがかなわなかった。「アントワネット役の笹本玲奈ちゃんに『万里生君はクリスティーヌの元に行ってしまうのね』と言われて(笑)。今回は大阪でもしっかりと務めますので、楽しみにしていてください」。大阪公演は、3月2日(火)から11日(木)まで、梅田芸術劇場メインホールにて。チケット発売中。取材・文:米満ゆう子
2021年02月25日「はい、全員優勝ー!」と声高らかに、勝利のラッパを吹き鳴らしたくなる。主演の山田孝之“王様”を筆頭に、仕込みかアドリブか、キワキワ路線を攻めるでお馴染みの演出家・福田雄一がタッグを組んだミュージカル『モンティ・パイソンのSPAMALOT』が絶賛、大阪・オリックス劇場で開幕中だ。出演者が全30曲、生オーケストラの演奏で歌い踊る。お気楽なのに見応えたっぷり、聴きごたえ満点な約3時間が楽しめる。ミュージカル「モンティ・パイソンのSPAMALOT」featuring SPAM(R)の公演・チケット情報本作は、福田監督が敬愛する『コメディ界のビートルズ』こと、イギリスの人気コメディ・グループ“モンティ・パイソン”の大ヒット映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(1975年公開)を元にミュージカル化したもの。メンバーのエリック・アイドルが脚本・作詞を手掛け、2005年にブロードウェイ初演。奇抜な発想で本場の観客から爆笑をさらい、トニー賞14部門ノミネート、最優秀ミュージカル賞を含む3部門を受賞した、紛れもない名作だ。日本では福田演出で2012年初演、2015年再演を経て、この度キャストを一新し、6年ぶり3度目の上演が実現した。ヨーロッパの有名な物語『アーサー王と円卓の騎士』をモチーフにした……、あたりですでに瞼が重くなり始めた嬢ちゃん、坊ちゃん、歴史や古典が苦手でも大丈夫。「アーサー王が忠誠を誓った騎士たちと聖杯探しの旅に出る」と、順調に進めば5分程度(は言い過ぎにしても)で終わる単純な物語を約3時間の超大作たらしめる理由は、その大半がコントで構成されているから。しかも通常は台詞の変更が認められにくいブロードウェイ作品にあって、「笑いにこそ文化の違いが出やすい」とお察しのエリック・アイドル様から、アレンジ許可が下りているというから凄い。当然、日本の時事ネタ満載の本作は、言うなれば「福田雄一お笑いショー」。そう断言できるかは、ぜひ劇場で確認してほしい。主演の山田孝之はどんな小ネタもイケボと真顔で対応、その頑なさが笑いを誘う。新妻聖子はドーム級の声量で、頓珍漢な歌詞も一大ミュージカルソングに仕立てる凄技を連発。賀来賢人はそろそろ俳優兼芸人としても異論はなさそうなほどの尺を任され、しっかり期待に応える活躍ぶり。安心感では、お笑いコンビ「シソンヌ」の存在が頼もしい。じろうと長谷川忍のテンポ感が物語に弾みを付けるから、何事も「初めまして」な矢本悠馬、小関裕太、三浦宏規らと絡む場面は想像以上に見もの。予測不可能な緊張感が伝わり、違った意味で見応えがある。全編を通し、演者自身が作品を楽しんでいるのが伝わってくる。ライブ感溢れる演出で、笑う楽しさを味わわせてくれる。大阪公演は2月23日(火・祝)までオリックス劇場にて上演中。取材・文:石橋法子
2021年02月19日「Daiwa House Special Broadway Musical『The PROM』Produced by 地球ゴージャス」の製作発表が行われ、主人公カップルを演じる葵わかな・三吉彩花らキャスト10人が登壇した。2018年に米ブロードウェイで上演され、翌年のトニー賞で7部門にノミネートされた本作。メリル・ストリープやニコール・キッドマンが出演した映像化作品がNetflixで配信され話題を集めたミュージカルの日本版を、地球ゴージャス主宰の岸谷五朗による脚本・訳詞・演出で届ける。同性の恋人アリッサ(三吉)と参加しようとしたダンスパーティー“プロム”が中止になり、その原因になったといじめを受けるエマ(葵)の存在を知ったブロードウェイの元スターたちは、自分たちの話題づくりのためにエマを助けようとして──。製作発表の冒頭で行われたパフォーマンスでは、葵とアンジー役の霧矢大夢が「ZAZZ」で、D.D.アレン役をトリプルキャストで務める大黒摩季、草刈民代、保坂知寿らが「目立ちたくないのよ!私」で歌声を披露。三吉のソロで始まった「It’s time to dance」ではホーキンス校長役をWキャストで務める佐賀龍彦(LE VELVETS)とTAKE(Skoop On Somebody)も加わり、ラストは全員で力強いハーモニーを響かせた。レズビアンの女子高生であるエマを、葵は「複雑な環境に身を置いている役」と表現。「自分にとっての当たり前を貫くためにどうしたらよいか葛藤し、成長していく彼女の“強さ”を表現したい」と覚悟を覗かせると同時に、「アリッサとの恋路に邁進する、10代のキラキラした要素も見せていけたら」と意気込む。これを受けた三吉も「わかなちゃんとは初共演ながら、波長が似ていると感じたんです。周りからもそう言われる機会が増え、カップルらしさが出てきたようで嬉しかった」と続く。そして「何といっても女子高生役。演じる私たちは20代前半ですが落ち着いて見られるので、もっとフレッシュさを出していけたら」と笑顔を見せた。バリー・グリックマン役としてキャストに名を連ねる岸谷は、2018年のトニー賞ノミネート作品を現地で10本近く鑑賞。その中に本作も含まれており、「帰り際の観客がいちばん幸せそうな顔をしていたから」という理由で日本版の上演を決意した経緯を語る。その提案を受けた岸谷の盟友で、トレント・オリバー役の寺脇康文も「地球ゴージャス25周年を終えたあとの展望に新しい風が吹く予感がした」と劇団名義で初となる海外作品への挑戦に向けた思いを述べた。公演は3月10日(水)〜4月13日(火)に、東京・TBS赤坂ACTシアターにて。その後、5月9日(日)〜16日(日)に大阪・フェスティバルホールと巡演する。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2021年02月17日ミュージカル『ALTAR BOYZ(アルターボーイズ )』のメインビジュアルが公開され、詳細情報が発表された。『ALTAR BOYZ 』は、2005年ベスト・オブ・オフ・ブロードウェイベスト賞に輝いたミュージカル作品。神と司祭に使える美しき男子たち“アルターボーイズ”が、ボーイバンド(ダンスボーカルグループ)を結成し、“福音”の歌とダンスで愛を説き、観客たちの魂を救っていく。2004年の初演は、ニューヨーク・シアター・フェスティバル47丁目劇場にて上演。2005年Dodger Stagesにて始まり、通算2000回以上の上演記録を誇る。アメリカでのツアー公演のほか、シカゴ、韓国、ハンガリー、フィンランド、オーストラリア、カナダ、フィリピンなど世界各国で上演されている。日本では2009年に初演され、今回で7回目の上演。「LEGEND(レジェンド)」、「GOLD(ゴールド)」、「SPARK (スパーク)」という3チームで構成され、初演からほぼ変わらないメンバーが出演する「レジェンド」は4年ぶりの“復活”となる。「LEGEND」として、東山義久、植木豪、中河内雅貴、良知真次、浅川文也。「GOLD」として、大山真志、法月康平、松浦司、石川新太、若松渓太。「SPARK」として、小林亮太、米原幸佑、和田泰右、川原一馬、北乃颯希がキャスティングされた。公演は、4月9日(金)から4月30日(金)まで、新宿FACEにて全35公演を上演。チケットは3月27日(土)より一般発売が開始される。「ALTAR BOYZ(アルターボーイズ) 」作:ケビン・デル・アギラ作詞・作曲:ゲイリー・アドラー&マイケル・パトロック・ウォーカー演出:玉野和紀台本・翻訳:北丸雄二出演者:東山義久、植木豪、中河内雅貴、良知真次、浅川文也大山真志、法月康平、松浦司、石川新太、若松渓太小林亮太、米原幸佑、和田泰右、川原一馬、北乃颯希公演日程:2021年4月9日(金)~4月30日(金)会場:新宿 FACE
2021年02月12日ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』が2021年2月6日(土)から東京・日生劇場で開幕した。1905年、帝政ロシア時代のアナテフカという寒村が舞台。牛乳屋を営む父親・テヴィエと、その妻ゴールデ、5人の娘というユダヤ人一家の愛と絆を描いた作品。本作は、1964年にブロードウェイで初演され、トニー賞ミュージカル部門の最優秀作品賞、脚本賞、作曲賞など7つの賞を獲得している。日本では、1967年の初演以降、再演が繰り返されている。主人公のデヴィエ役は、森繁久彌、西田敏行と引き継がれ、2004年からは、“21世紀版”『屋根の上のヴァイオリン弾き』と銘打って、市村正親が演じている。市村は今回で6回目のテヴィエ。2009年からゴールテ役を演じる鳳蘭のほか、長女ツァイテル役を凰稀かなめ、次女ホーデル役を唯月ふうか、三女チャヴァ役を屋比久知奈が演じる。初日のカーテンコールで、市村は「コロナで世界のエンターテインメントが苦しんでおります。ブロードウェイも、ウエストエンドもまだ再開の見込みが立っておりません。その中で、初日を迎えられたことは、奇跡でございます」と感謝を述べた。そして、感染対策のためマスクをつけたままの稽古だったことを明かし、「ツレちゃん(鳳の愛称)はすぐ分かるけど、新しいメンバーがたくさんいて。どんな顔をしているのか、ようやく顔を見ることができました。非常にうれしかったです。本当はお客様の顔も見たいんですけど、ここはもう少しということで、頑張っていきたいと思っています。ワクチンも開発されましたし、治療薬もできると思っています。そのときには、また劇場で顔と顔を突き合わせて、お芝居を見てもらえたら」と挨拶した。ユダヤ教の“しきたり”を重じているテヴィエ。父の希望をよそに、長女は貧しい仕立て屋のモーテル(上口耕平)、次女は革命を志す学生のパーチック(植原卓也)、三女はロシア人青年のフョートカ(神田恭兵)とそれぞれ恋に落ちて……。しきたりと娘の願いを叶えてやりたいという思いの間で板挟みになりながら、さらにゴールデに頭が上がらないテヴィエの姿は、非常にコミカルで、見ていて飽きない。一方で、ユダヤ人排斥(ポグロム)の動きが村に忍び寄る様子も描かれている。家族がだんだん離れ離れになり、土地を追われる姿は心苦しく、胸を打つ。上演時間は約3時間25分。東京公演は3月1日(月)まで。3月5日(金)から愛知公演、3月12日(金)から埼玉公演。ぜひお見逃しなく。取材・文:五月女菜穂
2021年02月10日宝塚歌劇団で再演を重ねるたびに注目を集めてきたミュージカル『ロミオとジュリエット』が、8年ぶりに星組により上演される。2013年の新人公演でロミオを演じた礼真琴が、星組トップスターとして再びロミオ役に挑む。公演に向けて稽古を重ねる礼に話を聞いた。宝塚歌劇星組 宝塚大劇場公演 三井住友VISAカード ミュージカル『ロミオとジュリエット』ぴあ貸切公演チケット情報本作は、ウィリアム・シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を、2001年にフランスの作詞家・作曲家・演出家のジェラール・プレスギュルヴィックがミュージカル化。2010年に潤色・演出を小池修一郎が手掛け、日本初演。本作へは2010年、2013年に続き、3度目の出演となる礼は、今回の出演について楽しみな反面、プレッシャーも感じているという。「初演ではダンスで心情を表現する“愛”を演じさせていただき、皆様に名前を知っていただくきっかけになりました。2013年の再演ではロミオの親友ベンヴォーリオと“愛”を役替わりで、また新人公演ではロミオを演じさせていただき、もし出会わなければ今の私はいないと思う大切な作品。今回演じるにあたり、これまでとどう変えていくのか、どうすれば超えていくことができるのか、全員でもがきながらお稽古しています。役替わりで演じる人たちが多い中、私がロミオとしてしっかり立って、みんなを支えたいです。また、演出の小池先生が、私と舞空(瞳)の演じるロミオとジュリエットとして、お芝居の中で新たに動きをつけてくださっていますので、自分の身体に入っている経験と感覚を大事にしつつ、新たなものも取り入れていけたらと思います」。恋に落ちる若いふたりの愛の物語を軸に、モンタギュー家とキャピュレット家の対立や仲間との絆など、さまざまな視点から楽しめる本作。印象に残る場面や楽曲も多い。「ロミオのモンタギュー家は仲間同士の仲がいいイメージがあるので、そこを唯一出せる『世界の王』のシーンで、しっかり表現したいです。また、争いや憎しみ合う場面が多い分、ジュリエットと一緒に歌う『Aimer(エメ)』は心が救われる感覚になります。お客様にとってもホッとしていただける場面だと思いますので、その温かい部分を大切に演じたいです」。昨年2月より宝塚大劇場で行われたトップお披露目公演から約1年。コロナ禍で公演や稽古ができない期間もあったが「今年は皆様に感謝の気持ちをお返しできれば」と思いを語る。「4か月の自粛期間を経て舞台に立ったとき、これまでに味わったことのないほど、心の底から幸せを感じました。このような状況になり、皆様がさまざまな思いで戦いながら過ごす中でも、宝塚歌劇に想いを寄せてくださったり、励ましてくださったり。皆様に支えていただきながら公演を再開できていることを、一人ひとりが感じながらお稽古しています。今年はその感謝の気持ちを目いっぱいお返ししていきたいですし、昨年以上に笑顔があふれる瞬間がたくさんある一年にできればと思います」。公演は2月14日(日)から3月29日(月)兵庫・宝塚大劇場、4月16日(金)から5月23日(日)東京宝塚劇場にて。取材・文:黒石悦子
2021年02月09日美弥るりかによるステージthe wonder「MIYA COLLECTION」が2月19日に開幕する。昨年2月に上演予定であったがコロナウィルスの影響で延期し、1年越しに上演が叶う本作について美弥に話を聞いた。昨年、開幕2日前というタイミングで公演中止となってしまった本作。美弥は当時を振り返り「受け入れるのに少し時間がかかってしまう出来事ではありました。でもこうして1年後にカタチになったこと、皆様にそのお知らせができたことが、何よりも嬉しいです。待っていてくださった方には感謝の気持ちでいっぱいです」と明かす。河原雅彦が演出を手掛けるステージとなるが「河原さんも初めて音楽公演を演出されますし、私も宝塚歌劇団を退団(’19年6月)してからこのようなコンサートをするのは初めてなので、ザ・コンサートじゃないものにしたいですねと話してつくりました。第一部はストーリー性を感じられるような、そしてメッセージ性もあるようなステージになる予定です。逆に第二部はちょっとリラックスして、お客様とのコミュニケーションも取れたらいいなと思っています」と語る。音楽に関しても「河原さんとお互いのオススメ曲を出しながら考えました」と言い、「振付も刺激的。今までにやったことないようなジャンルのダンスもあります。そんな動きしたことない!と身体が驚いていました(笑)」と、これまでにない美弥が観られる公演になりそう。日替わりゲストは東山義久、平方元基、伊礼彼方。それぞれの印象を尋ねると、東山は「東山さんにしか出せない色気と言いますか、不思議なオーラがあります。東山さんといえばダンスなので、コラボをさせていただけたらと思っています」。伊礼は「すごく端正で“リアル王子様“という印象があったのですが、お話するとすごく面白い方で(笑)。昨年、稽古でご一緒したときはその声量や表現が素晴らしくて刺激を受けたので、今回も楽しみです」、新たにゲストに加わった平方は「昨年夏に別の公演で初めてご一緒したのですが、稽古場でのお芝居にとても感動しました。ミュージカルって、こうやって芝居と歌が奇跡のように一致しているから、こんなに人の心に響くんだよな、と感じました。ぜひまた共演できたらと思いお願いしました」と、どの公演も魅力的なコラボになりそう。美弥が「観劇できない時代だからこそ、充実感や納得や幸せ……そういう何かチケット代以上のものを届けられる人でいたいと改めて考え直した」と語る今だからこそのステージが届けられる本作は、2月19日(金)から21日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホール、2月25日(木)から28日(日)まで東京・日本青年館ホールにて上演。ライター:中川實穂カメラマン川野結李歌ヘアメイク:清原貴絵スタイリスト:清原愛花ジャケット¥36,000/BASE MARK(エム)、その他/本人私物(問い合わせ先 エム 03-3498-6633)
2021年02月09日ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』の東京公演が、2月3日に開幕。これに先駆け、報道陣にゲネプロが公開された。ミュージカル・ゴシック「ポーの一族」の公演情報はこちら萩尾望都の人気マンガ『ポーの一族』を舞台に──と30年以上も企画を温め続けた小池修一郎の演出によって2018年に宝塚歌劇花組でミュージカル化され、今回の再演にいたった本作。不老不死のバンパネラ(吸血鬼)一族として孤独に生きる主人公エドガー・ポーツネル役を、明日海りおが続投する。そのエドガーが、千葉雄大演じる少年アラン・トワイライトらを仲間に加え、孤独や哀しみを滲ませながら時空を超えた旅を続けるファンタジーだ。人間の血を求めるポーの一族は社会に拒絶され、時代を超えて各地を放浪することに。生きる道を見失ったエドガーは寂しさのあまり妹を一族に加え、後悔に苛まれる。対するアランは裕福な名家に生まれながらも母に愛されず、家の都合で結婚相手が決まる人生に嫌気がさしていた。やがて出会った二人は互いに強く惹かれ、支え合う。我々は生前どこにいて、死後はどこへ向かうのか。なぜ生きるのか──。この世に生まれし者が抱える根源的な問いが、自らの意に反して永遠の時を生き長らえなければならないバンパネラ一族の葛藤を通じて炙り出される。明日海はトップスター時代と変わらぬ艶かしい佇まい。ハリのある伸びやかな歌声で、エドガーの悲哀を立ち上げる。オペラグラスを覗けば、揺れ動く思いを表情に乗せる繊細な演技が見て取れた。彼女がつくり出す圧倒的な劇空間をより魅力的にしようと、ミュージカル初出演の千葉は懸命に追走し、時に重厚な低音を響かせる。映像の世界にいながら舞台に挑戦するその姿は、人間からバンパネラの“異世界”に飛び込んだアランと重なって見えた。発表時に話題となった金髪碧眼のビジュアルも抜群にハマっている。なおPIA LIVE STREAMでは、明日海(エドガーアングル)、千葉(アランアングル)それぞれに迫るライブ配信を実施。通常アングルでは映しきれなかったエドガーとアランの表情や仕草に迫り、新たな切り口で作品の魅力に迫ることができる。上演時間は約170分(休憩含む2幕)。公演は2月17日(水)まで、東京・東京国際フォーラム ホールCにて。その後、23日(火・祝)〜28日(日)に愛知・御園座と巡演する。ぴあではGoToイベントキャンペーンのもと、ライブ配信のチケットを販売中だ。公演プログラムの郵送サービス付きチケットも。■PIA LIVE STREAM2021年2月7日(日)12:30開演回通常アングル2021年2月13日(土)12:00開演回エドガーアングル2021年2月13日(土)17:00開演回アランアングル2021年2月28日(日)12:00開演回大千秋楽取材・文:岡山朋代
2021年02月05日ミュージカル『僕とナターシャと白いロバ』が2/3(水)に浅草九劇にて開幕した。「やあ、君、今帰ったよ」──愛する人との別れから50年、年老いた女性ジャヤの目の前に現れたひとりの男性。彼は若きに深く愛した詩人ペクソク、その人だった。そこから始まる恋人たちの記憶を巡る旅をペクソクの詩を交えた美しい台詞と音楽で綴る韓国国内で高い評価を得た韓国創作ミュージカルの日本版初演となる。オフホワイトの三つ揃えに身を包み、知性と洗練された香りが漂うペクソクにはHoney L Daysでボーカルを務め、本作がミュージカル初主演となる東山光明。“貧しき詩人”は、東山のもつチャーミングな魅力で素朴な愛おしさを放つ。柔らかなナンバーコミカルなナンバー、さらにおしゃれなショーナンバーまで、確かな実力で大役を務め上げる。50年の時を隔てた、若き日と現代のジャヤを行き来するという難役を演じるのは、宝塚歌劇団出身のAKANE LIVと月影瞳(Wキャスト)。AKANE LIVの丸みを帯びたあたたかな声質は包容力を、月影の儚げな佇まいは内に秘めた強さを感じさせる。タイプの異なる二人のジャヤが放つ愛を受け、ペクソクがどう変化するかも楽しみのひとつだ。二人の恋物語に登場する数多のキャラクターを演じるマルチマンにはミュージカル初挑戦の伊藤裕一。ペクソクの親友で恋のキューピットとなる男、二人の交際を反対する父親、冷酷な借金取り、そしてペクソクの詩の朗読も担う。トリッキーな存在に終始しがちなポジションだが、物語との距離感の取り方を絶妙に変化させることで見事に成立させている。日本版初演の脚本・演出を手掛けるのは、繊細で美しい世界を立ち上げる名手・荻田浩一。また、作品の色を担う音楽、振付には福井小百合、港ゆりかという荻田作品ではおなじみのクリエイターが並ぶ。感染防止対策として客席間はパーテーションが施され距離が保たれた状態。また、舞台と客席の間にはビニールシートが配され、観客はビニールシート越しに舞台を見ることになるのだが、まるで夢と現の境界線のように新たなる効果を生み出している点に唸った。光のマジックでふとした瞬間にクリアな視界となり、登場人物が目の前に現れるような驚きも。本作タイトルは、ジャヤへの溢れんばかりの愛が込められたペクソクの代表的な詩だ。「しんしんと降る雪の情景」が美しく描写されている、この一編の詩の世界が眼前に現れるようなラストシーンは秀逸。彼女が「共に生きた」ペクソクと彼の詩の物語が美しく儚く描かれるミュージカル『僕とナターシャと白いロバ』は東京・浅草九劇にて2/28(日)まで上演中。
2021年02月04日第二次世界大戦下のアメリカで強制収容所に入れられた日系家族の実話を元にした物語、ミュージカル『アリージャンス~忠誠~』が、日本キャストでの初上演を迎える。物語の中心人物となる姉弟役を務める、濱田めぐみと海宝直人に話を聞いた。ミュージカル『アリージャンス~忠誠~』の公演情報はこちら本作への出演が決まった際の心境を、主人公ケイを演じる濱田は、「出演のオファーをいただいたとき、『少し考えさせてください』と申し上げたんです」と明かす。「この作品は本当にデリケートな世界を描いています。これまでも差別を扱った作品に出演したことはありますが、本作はまた違うものだと感じました。お話しをいただいた当初は、なかば封印されてきた日系アメリカ人差別を描いた作品を、今の日本でやる意義がわからなかったんです。何度かプロデューサーの方とお話をさせていただく中で、出演を決心しましたが、世界が大きく変わったとき、『あ、これだったのか』と思いました。この作品の“自分とは何か”“生きるとは何か”というテーマが、目の前にはっきりと現れたんです」描かれるのは、アメリカが犯した史上最悪の市民権侵害と呼ばれた歴史の1ページ。濱田の弟・サミー役を演じる海宝直人は「本作で描かれる内容について、ほとんど知識がありませんでした」と話す。「決して古い話ではないのになぜだろうと調べていくうちに、いろいろなことがわかってきました。この作品の内容は、アメリカにとっては決して誇れるものではないはずです。差別の歴史でもあるわけですから。だからこそ、ブロードウェイで上演され高い評価を得たのは素晴らしいことだと思いますし、日本で、日本人キャストがやることにも大きな意味があると思っています」ケイとサミーの姉弟。共演経験はあるものの、ふたりがこれほど濃密な関係を演じるのは初めて。しかし、ふたりの間には姉弟といっていいほどの歴史がある。「弟役が直人だと聞いてフフッてなっちゃいました。ケイの楽曲に『膝小僧をすりむいていつも走り回っていた弟』というような歌詞がありますが、そのままなんですよ。『ライオンキング』のヤングシンバ役だったころの直人が、はだしでバーッと走り回ってコケているのを見ていましたからね(笑)。やりやすいを超えてドンピシャです」(濱田)、「決まった時は嬉しかったです。ちっちゃい頃を知っていただいているからこそ、遠慮なくぶつかっていける。受け止めてくださるのもわかっていますし、カッコつけようがないですから(笑)」(海宝)。公演は3月12日(金)から28日(日)まで東京・東京国際フォーラム ホールCにて上演後、名古屋、大阪を巡演。文:中川實穗
2021年02月02日“M・A”という同じイニシャルを持つ、王妃マリー・アントワネットと庶民の娘マルグリット・アルノーの数奇な運命を描いたミュージカル『マリー・アントワネット』が2021年1月28日(木)から東急シアターオーブほかで上演されている。本作は、『エリザベート』や『モーツァルト!』などの作品を手掛けたミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイが、遠藤周作の小説『王妃マリー・アントワネット』から着想を得て生み出した、日本発のオリジナルミュージカル。2006年の初演以降、ドイツや韓国で上演され、今回は、新曲を追加した新演出版(2018)の再演となる。18年公演に引き続き、花總まりと笹本玲奈がマリー、ソニンと昆夏美がマルグリットを演じる。加えて、田代万里生と甲斐翔真がマリーの恋人・フェルセン伯爵、上原理生と小野田龍之介が王家の失脚を狙うオルレアン公、上山竜治と川口竜也が革命派のジャック・エベールとして出演する(いずれもWキャスト)。28日に行われた、笹本、昆、甲斐、小野田、上山のキャストによるゲネプロ(総通し舞台稽古)を見た。王妃としての矜恃がありつつも、どこか人間臭さもある笹本マリーと、パワフルさと知性を感じさせる昆マルグリット。王妃と庶民という決定的な立場の違いがあり、対照的な運命をたどる2人ではあるが、その人生が交錯するときに、ふと浮かび上がる「共通点」の見せ方が見事で、不思議な説得力があるペアだった。東京公演は2月21日(日)まで。大阪公演は3月2日(火)から11日(木)まで梅田芸術劇場メインホールで上演される。初日に向けたキャストのコメントは以下の通り。■花總まり今回はコロナ禍での上演ということで特別な想いをキャスト一同が抱いてでの舞台になります。この舞台をご覧頂きたい、成功させたいという気持ちで各自様々な感染予防対策を精一杯行ってまいりました。観客の皆様におかれましてはどうぞこの特別な『マリー・アントワネット』をお楽しみ頂ければ幸いです。残念ながら観劇が叶わなかった方々にもこの舞台上から熱いメッセージをお届けする気持ちと全てに感謝して演じたいと思っております。■笹本玲奈徹底された厳しい感染対策の中で進めてきたお稽古を経て、今日無事にこの日を迎えられることを心から嬉しく思っております。今後どのような状況になるかは誰にも分かりませんが、1回1回の公演を『今日と言う日は今日しかない』という心持ちで務め、劇場にお越しくださったお客様に最高の舞台を全身全霊でお届けします。取材・文・撮影:五月女菜穂
2021年02月01日劇団四季『ロボット・イン・ザ・ガーデン』が現在、東京・自由劇場で上演中だ。原作はイギリスの作家デボラ・インストールの小説。2016年のベルリン国際映画祭では「映画化したい一冊」に選ばれた、世界中で愛されている物語を、台本/作詞・長田育恵、演出・小山ゆうなという、今もっとも演劇界で注目される気鋭のクリエイターが舞台化。劇団四季のオリジナルミュージカルとしては、ファミリーミュージカルをのぞき、16年ぶりの新作となる。アンドロイドが人間の仕事を担い、その恩恵に預かる人もいる一方、職を奪われた人もいる近未来のイギリス。両親を事故で失ったことから無気力に日々を過ごしているベンは、庭に旧式のロボットが迷い込んだのを見つける。タングと名乗ったその壊れかけのロボットになぜか心惹かれるベン。一方で妻エイミーはそんなベンに愛想をつかし家を出ていってしまう。喪失感や葛藤を抱えながらも、このままだとまもなく止まってしまいそうなタングを修理するために、ベンはタングとともに旅に出る……。近未来を舞台にしながら、描かれるのは、自分の思いを大切にすることだったり、相手を思いやることだったりと、アナログでプリミティブなテーマ。旅の中で様々な人や出来事と遭遇し、自分の人生に背を向けていたベンは少しずつ再生していく。ベンを演じる田邊真也は、四季の看板俳優のひとり。もともと芝居力の高い人だが、傷を抱えながらも心優しい青年という役どころを力みなく演じていて、魅力的だ。四季の地力が発揮されるダンスシーンなどの華やかさと、丁寧に紡がれていく登場人物たちの感情の繊細さが見事に融合し、質の高いオリジナルミュージカルが誕生した。そして何といっても秀逸なのは、ロボットのタングだ。大きな四角い頭、まんまるレンズの目、無骨な鉛色の3頭身くらいの身体……まずビジュアルが最高に可愛らしい。その上、時に癇癪を起こすし、暴走もする、何ならちょっと拗ねたりもする、なんとも人間臭いところもいい。照明の光が反射しキラキラ輝くその目には、時折涙すら見えるような気すらしてくる。パペットデザイン&ディレクションは『リトルマーメイド』も手掛けたトビー・オリエ。俳優2名が息を合わせ操るさまも見事で、ちょっとした動作ひとつとっても感心しきり。それにしても、心のないはずのロボットにここまで感情移入をしてしまうのはなぜなのだろう。無機物に心があるように感じるのは、観る側の勝手な妄想か。いや、勘違いでもいいじゃないか。勝手に人間側がタングに影響されて、何かを教えられたような気になってしまった、それでもいい。タングは、こんがらがってしまった人間関係や、こんがらがってしまった心を優しくほぐす。そして、一歩ずつでも地に足をつけて歩き出すことの大切さを教えてくれる。そこには温もりが確かにある。とにかく可愛いタングに会いに、ぜひ、劇場へ。東京公演は3月21日(日)まで同劇場にて、チケットは発売中。(取材・文:平野祥恵)
2021年01月29日我々はなぜ生きているのか―――。深淵なテーマをはらみ、半世紀もの間愛され続ける萩尾望都の人気漫画を舞台化したミュージカル・ゴシック『ポーの一族』を1月23日、ライブ配信で観劇した。開演15分前には主演の明日海りおのコメント動画が流れる特典付きだ。ミュージカル・ゴシック「ポーの一族」チケット情報永遠の時を彷徨うバンパネラ(吸血鬼)となった少年エドガーの愛と成長を描く物語。30年以上も前から企画を温め続けた小池修一郎の脚本・演出で2018年、宝塚歌劇花組公演として初演。原作者の萩尾も足繁く劇場へ通うなど大成功を収めた。ほどなく明日海は宝塚歌劇を退団するが、熱烈な再演コールに応え、このたび、新たな座組での上演が実現した。配信では、冒頭から多彩なカメラワークと迫力ある楽曲に引き込まれた。カメラは引きやアップ、上下左右の視点を使い分け、漫画のコマ割りさながらに、ドラマチックに場面を運ぶ。とりわけ明日海エドガーが感情を吐露する場面では、ズームアップで表情に迫り、瞳に宿る感情の揺れまでをも映し出す。肉眼では捉えきれない繊細な表現と、原作から抜け出たような妖艶さに何度も心を掴まれた。そんな唯一無二のオーラを放つエドガーと惹かれ合うアラン役には千葉雄大。ミュージカルは初挑戦だが、持ち前の愛くるしさで金髪碧眼の少年役がピタリとはまる。思春期特有の危うさや切なさも瑞々しく表現する。バンパネラ一族からは福井晶一、涼風真世の存在感が光る。凄みのある歌声と佇まいで作品世界を牽引する。共に中盤ではまったく毛色の異なる役柄で登場するのも楽しい。エドガーの“家族”となるポーツネル家の人々には、ミュージカル界で活躍する小西遼生、共に元宝塚トップ娘役の夢咲ねね、綺咲愛里と贅沢な顔ぶれ。さらに、歌舞伎界のプリンス、中村橋之助は色気たっぷりに魅惑の青年医師を演じ、元乃木坂46の能條愛未は、無垢な新妻と物語の口火を切るストーリーテラーの2役を担う健闘ぶりを見せた。照明や映像を効果的に使った幻想的な演出、可能な限り原作の台詞や名場面を踏襲した脚本、感情を揺さぶる楽曲や振付の数々。画面がアップになるたび、レースや刺繍が施された衣裳の豪華さにも目を奪われ、作品の世界観を隅々まで堪能した気分だ。劇場で味わう生の一体感と配信ならではの視点と、その両方でエドガーが辿る愛の旅路を見届けてほしい。公演は1月26日(火)まで梅田芸術劇場メインホールで上演後、2月3日(水)から17日(水)まで東京国際フォーラム ホールC、2月23日(火・祝)から28日(日)まで御園座にて上演される。さらに、東京、名古屋公演でのライブ配信が決定。詳細は公式サイトにて。取材・文:石橋法子
2021年01月26日OSK日本歌劇団を率いるトップスター桐生麻耶が1月に大阪松竹座で「レビュー 春のおどり」に主演する。当初の予定より9か月遅れでの上演を前に会見が行われた。冒頭で桐生は「またチャンスが巡ってくるとは思わなかった。与えて頂いた機会に全身全霊で向き合い初日を迎えたい」と挨拶した。OSK日本歌劇団「レビュー春のおどり」チケット情報今回のレビューは和洋の2部構成。第1部『ツクヨミ ~the moon~』は尾上流四代目家元、尾上菊之丞の構成・演出・振付。月をテーマに日本の飛鳥、戦国、江戸の3つの時代でドラマを綴る。それぞれの時代で美しき悪役の蘇我入鹿、人気戦国武将の伊達政宗、決闘に挑む武士の堀部安兵衛の3役を演じ分ける桐生は「入鹿の宿命を背負う悲しみ、OSKらしい賑やかな総踊りで魅せる正宗の楽しさ、人のために動ける安兵衛の義理人情、この3つの思いを届けたい」と語る。第2部は宝塚歌劇団出身の荻田浩一作・演出による勝利の女神ヴィクトリアを題材にしたレビュー『Victoria!』。カジノでの決闘や初のボリウッド風群舞など見どころは多いが、桐生の一押しは96期の初舞台生も参加するラインダンス。「何度見ても飽きない素敵な振付です。できれば(自分も)出たいほど!」。自身はラインダンスの導入部分で踊る「応援団のような振付が一番楽しい」と笑顔。フィナーレ前には男役に囲まれながら手ごわい楽曲の歌唱に挑戦することも明かした。いわく「コミカルからシリアスまで盛りだくさんに詰め込まれたレビュー・ショー」に期待が高まる。コロナ禍で舞台に立てない日々が続き、エンタテインメントの存在意義を自問する中、ひとつの答えにたどり着いた。「大げさかもしれませんが、人間が幸せであるためには自分らしくなれるモノやこと、場所が必要だなと。自分を信じて待っていてくださる方がいる限りは存在し続けていいとポジティブに思えました」。あり余る時間を得て、いつも以上に楽譜を深く読み込むなど収穫もあった。「やはり『春のおどり』は年に一度しかできない貴重な公演なので、OSKを選んでよかったと思ってもらえるような舞台にしたいなと思います」。公演は1月28日(木)から31日(日)まで大阪松竹座にて上演。チケットは、大阪松竹座公式サイトにて発売中。取材・文:石橋法子
2021年01月18日『劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~』が1月10日、新劇場・JR東日本四季劇場[春]で開幕した。東京竹芝の「ウォーターズ竹芝」に生まれたこの劇場は、1998年に開場し、2017年まで同地で稼働していたJR東日本アートセンター四季劇場[春][秋]の後継となるもの。劇団四季の新たな拠点の幕開けは、舞台芸術への愛情と、四季の理念である「人生は素晴らしい。生きるに値する」というメッセージを詰め込んだ、希望に満ちた華やかなショウになった。劇団四季といえば『キャッツ』や『オペラ座の怪人』『ライオンキング』といった海外ミュージカルの日本版上演という印象を持つ人も多いかと思うが、実はショウ作品も人気が高い。これまでも劇団の節目ごとにオリジナルの名作ショウをいくつも作り上げてきた。本作『The Bridge』は本来は昨年7月、JR東日本四季劇場[秋]の開幕を飾る予定だったが、コロナ禍のスケジュール見直しにより変更、このたびの[春]のこけら落とし公演になった。劇場や上演時期の変更、また90分休憩なしという四季のショウとしては珍しいスタイルであることなど含め、開幕まで紆余曲折があったことは想像に難くない。だが、そうして誕生したステージは、斬新でありつつも、四季らしい、四季ならではのものになっている。内容は、『リトルマーメイド』『アラジン』といった人気ミュージカルのナンバーを本番とは違うアレンジ、ダンスで魅せ楽しませるのはもちろん、ファミリーミュージカルや“昭和三部作”といったオリジナル作品の名曲も丁寧に織り込まれる。さらには、劇団の出発点であるストレートプレイ、ジロドゥの『オンディーヌ』、アヌイの『ひばり』といったセリフ劇の要素も組み込み、改めて劇団四季が自分たちのアイデンティティを噛みしめているかのよう。そんな様々な要素をつなぎ、「劇場は夢を見るところ」という力強い思いが全編を貫く。選曲も、祈りや希望を謳うナンバーが揃い、コロナ禍という逆風の中に伝えるべきメッセージを丁寧に選んでいるのがわかる。ことに終盤で歌われる『美女と野獣』の「人間に戻りたい」 ――これは劇中、魔法によって“モノ”に姿を変えられてしまった野獣の城の召使いたちが「人間に戻ったらあれをしたい、これもしたい」と歌う楽曲である―― は、「世の中が落ち着いたら日常を楽しもう、それまで希望をなくさず頑張ろう」というエールに聞こえ、胸にしみた。公演は2月11日(木・祝)まで同劇場にて、チケットは発売中。東京公演の他、3月14日(日)~3月28日(日)までは福岡・キャナルシティ劇場で上演後、4月16日(金)より全国を巡演予定。なお最後に、客席は上演中はもちろん開幕前も私語はほとんどなく、観客も感染症対策にしっかりと協力していたことも特記したい。取材・文:平野祥恵
2021年01月13日東京・明治座のミュージカルコンサート『NEW YEAR’S Dream』が、エンターテイナーの玉野和紀による構成・脚本・演出・振付・出演で2021年早々に幕を開ける。キャストの一人である平野綾、そして本作のすべてを司る玉野本人に、新春のステージをどのように彩るか尋ねた。歌・ダンス・芝居とあらゆる要素を次から次へと繰り出し、キャストの個性を存分に活かすエンターテイメントショー『CLUB SEVEN』シリーズで知られる玉野。明治座で2019年8月に上演されたミュージカルコンサート『Summer Night’s Dream』を手がけるなど、同劇場との縁を順調に育んでいる。「明治座エンタメショーの新たな“名物”にできたら」と玉野が掲げるのは、昭和歌謡や平成のJ-POPがふんだん散りばめられたスケッチ・コメディー(コント仕立ての芝居)と、オリジナルのショートミュージカルだ。取材日時点での楽曲リストを目にした平野は「最近若い子に昭和歌謡が浸透しているから、どんな年齢層の方でも一緒に盛り上がれそうですね!」と目を輝かせる。「歌詞のストーリー性が豊かで名曲揃い」と日本の歌謡曲に対する想いを語った玉野は「パートでつないで芝居をつければ一本の作品にできる」とヒットソングを前面に打ち出す構想への手応えを口にした。リストにはシブがき隊やキャンディーズといった昭和期のアイドルから山崎まさよしや西野カナら平成に活動したアーティストまで、多彩な顔ぶれが20組ほど並ぶ。今回、玉野のもとに集まったキャストは平野のほか、大野拓朗、新納慎也、吉野圭吾、渡辺大輔、咲妃みゆ、北翔海莉の7人。このうち、山口百恵の楽曲に挑戦する平野は「聴くだけで場面の情景が思い浮かぶミュージカルナンバーと日本の歌謡曲は似ており、歌い手としてすぐ楽曲の世界へ入り込めるんですよね」と相性のよさを強調した。百恵の別ソングを咲妃も披露する予定。昭和歌謡で魅せる芝居歌に注目したい。なお、日本の歌謡曲をふんだんに盛り込んだコーナーだけでなく、もちろん、著名なミュージカルナンバーが目白押し。セレクトの基準はキャストの出演作以外に、各人からの「これを歌ってみたい」というリクエストも盛り込んだという。タップダンスの第一人者である玉野は「これまで指導した中でいちばん上手」と北翔のステップに期待を寄せ、「みっちゃん(北翔の愛称)には本人が希望してきた『メリー・ポピンズ』の“あれ”で高速タップを踏んでもらおうかな」と不敵な笑みを浮かべた。キャストそれぞれに対して玉野が課した“挑戦”の行方を見届けがてら、正月は明治座から観劇初めをしてみては。コンサートは2021年1月5日(火)~11日(月・祝)まで。ぴあでは座席指定できるチケットを販売中だ。取材・文:岡山朋代
2020年12月28日国内外のトップスターとフルオーケストラの競演(共演)が人気のミュージカルコンサートシリーズ『ミュージカル・ミーツ・シンフォニー』。2021年3月19日(金)と20日(土)、東京芸術劇場コンサートホールでの開催が決定しました。今回は、1970年代を中心に活躍し、ミュージカル界にも多大な影響を与えている世界的グループのABBA(アバ)にスポットを当てた特別企画で、2019年に続いて2度目の開催となります。再演を望んだ多くの声に、さらにパワーアップしたステージで応えます。出演は舞台、テレビで活躍する新妻聖子、クリスタル・ケイ、サラ・オレインの3名に加え、ABBAメンバーが楽曲を手掛けたミュージカル『CHESS』のコンサート版に出演していたケリー・エリスがイギリスから来日予定。ミュージカル・ミーツ・シンフォニーでは初となるオール女性キャストでお送りします。公演では、「Mamma Mia」や「Dancing Queen」など、誰もが一度は聴いたことのある大ヒットナンバーはもちろん、ABBA好きにはたまらないあの曲まで…ミラーボールが光り輝くディスコ風の会場演出は前回からそのままに、約半数は前回披露できなかった楽曲による新たな構成で全員歌唱、ソロ、デュエット、盛りだくさんでお届けします。世界中で愛され続けるABBAソングの数々を、ワールドクラスのDIVAたちの歌声と読売日本交響楽団の演奏でご堪能ください。【公演概要】『ミュージカル・ミーツ・シンフォニー THE GREATEST HITS FROM ABBA 2』日時:2021年 3月19日(金)19:00、3月20日(土・祝)12:00と17:15出演者:ケリー・エリス / 新妻聖子 / クリスタル・ケイ / サラ・オレイン読売日本交響楽団(演奏)円光寺雅彦(指揮)吉川恭子、舩山智香子、増山航平、吉田純也(コーラス)会場:東京芸術劇場コンサートホール(東京・池袋)
2020年12月25日19世紀半ばにアメリカで大きな成功を収めた興行師、P.T. バーナムの半生を描いたブロードウェイ・オリジナルミュージカル『BARNUM』が、2021年3月より東京・兵庫・神奈川で上演されることが決定した。本作はブロードウェイでの上演後にロンドンでも上演された人気作で、日本で上演されるのは今回が初となる。伝統的なミュージカル劇場の雰囲気に、サーカスの光景が重なるゴージャスな作品となっており、劇中では 感染症対策を考慮しサーカスシーンを映像を駆使して展開。主人公フィニアス・テイラー・バーナム役に加藤和樹、バーナムを妻として支えるチャイリー・バーナム役に元宝塚歌劇団宙組トップスターの朝夏まなとを迎え、華やかなやダンスや歌唱シーンも見所となるエンタテインメントを届ける。そのほか、矢田悠祐、フランク莉奈・綿引さやか(ダブルキャスト)、藤岡正明、中尾ミエなど豪華キャストが出演。追加キャストも近日発表予定とのことなので、期待してほしい。また日本版演出を荻田浩一が担当する。チケット発売日などの詳細は公式HPにて随時解禁となるので、続報を待とう。<加藤和樹コメント>映画 『グレイテスト・ショーマン』と同じく、P.T. バーナムの半生を元にした、1980年初演のミュージカル『バーナム』。台本を読み、彼の半生に触れることで“サーカスこそ人生だ”この言葉がぐっと胸に響きました。サイ・コールマンの楽曲は胸が高鳴り、ワクワクを抑えきれなくなる曲ばかりで、誰もがその魅力に引き込まれることでしょう。史上最高のグレイテスト・ ショーであるミュージカル『バーナム』...ご期待ください。<朝夏まなとコメント>台本を読むだけで、どんな舞台になるのかいろんな想像が膨らんでとても楽しみです。バーナムの妻チャイリーは夫を深く愛している女性なので、陰で支える女性を魅力的に演じたいです。素晴らしい共演者、スタッフの皆さまと作り上げるイカサマと夢の世界をお楽しみに!【公演概要】ミュージカル『BARNUM』Music by CY COLEMAN / Lyrics by MICHAEL STEWART / Book by MARK BRAMBLE公式HP: <会場 / 日程>・東京:東京芸術劇場 プレイハウス / 2021年3月6日(土)〜3月23日(火) ※20ステージ・兵庫:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール / 2021年3月26日(金)〜3月28日(日) ※4ステージ・神奈川:相模女子大学グリーンホール / 2021年4月2日(金) ※1ステージ<チケット料金>・東京・神奈川:S席 10,500円(税込)/ A席 7,000円(税込)全席指定・兵庫: 10,500円(税込)全席指定
2020年12月18日宝塚歌劇花組で舞台化され、好評を博したミュージカル・ゴシック『ポーの一族』が来冬に蘇る。主人公エドガー・ポーツネル役を続投する明日海りお、今回新たにキャスティングされた千葉雄大、そして宝塚版に続いて脚本・演出を手がける小池修一郎の3人に話を聞いた。萩尾望都の人気マンガ『ポーの一族』を舞台に──と30年以上も企画を温め続けた小池によって2018年にミュージカル化され、再演が決定した本作。永遠に年を取らずに生き永らえるバンパネラ(吸血鬼)の一族となったエドガーが、千葉演じる少年アラン・トワイライトらを仲間に加え、孤独や哀しみを滲ませながら時空を超えた旅を続けるファンタジーだ。原作さながらのビジュアルと巧みな表現力が話題となった宝塚版を経て、「明日海エドガー復活を」という願いは小池と萩尾の共通項となった。2019年11月に退団し、代表作ともいえる『ポーの一族』で舞台復帰を迎える明日海は「永遠のお別れをしたはずのエドガーに、また巡り合えて嬉しい」と笑顔を見せ、「初演時に萩尾先生から頂戴した“夢のようでした”という言葉を糧に、その続きをご覧いただけるよう精進したい」と意気込む。ミュージカル作品に初挑戦となる千葉は、今から歌やバレエのレッスンに励むなど稽古前から準備を欠かさない。「恐れるもの、失うものは何もない」と新たなチャレンジに潔さを見せた千葉に対して、明日海は「シャッター音のたびにどんどん表情を変えて、活き活きとしたアランをつくり出していらっしゃいました」とビジュアル撮影時のエピソードを紹介。小池は「数多の中から選ばれし者の魅力を見せつけられました」と撮影での印象を振り返った。ストーリー展開も脚色も、宝塚版を活かして構成される本作。初演と異なるポイントを尋ねると、小池は「宝塚歌劇の華麗な虚構から離れ、男女キャストが織り成すリアルな世界で躍動する登場人物をご覧いただければ」と呼びかける。さらに「今度は現実の中に夢が入ることになる明日海エドガーと、千葉アランの未知なる初ミュージカル挑戦を楽しみにしている」とキャスト2人に期待を込めた。公演は2021年1月11日(月・祝)~26日(火)に、大阪・梅田芸術劇場 メインホールで。その後、2月3日(水)~17日(水)に、東京・東京国際フォーラム ホールCと巡演する。チケットの一般発売は、大阪公演が2020年12月12日(土)10時、東京公演が19日(土)10時にスタートする。取材・文:岡山朋代
2020年12月18日King&Princeの岸優太・神宮寺勇太が2年連続で出演する舞台「DREAM BOYS」が12月10日、初日を前に報道陣にゲネプロを公開した。本作は2004年の滝沢秀明主演の「ドリームボーイズ」以来、ジャニーズでも数々の先輩が演じ継いできた。初演以来の作・構成・演出をしていたジャニー喜多川氏をエターナル・プロデューサーとしてクレジットし、昨年より演出協力をしていた堂本光一が本作では演出に就任。堂本光一がプロデュースした新曲も披露。その中で岸は登場するロープを自身の筋力だけで昇るアクロバットに挑戦した。囲み取材ではこの技について岸は「力岸(りきし)」と名付け笑いに包まれた。ロープに近づくと緊張すると言いながらも何度も稽古を詰んだので見てほしいと語った。劇中ではアクロバットだけではなく、登場人物の気持ちを表現しつつ、ダンサブルなシーンも増え、堂本光一らしさも入ったショーアップされた「DREAM BOYS」が完成した。取材で初日を迎える思いとして岸は「今まで当たり前と思っていたが、生でエンターテイメントを届けられることに感謝をしています。沢山の人に支えられてできるステージなので感謝を感じながらステージに立ちたいと思います。」神宮寺は、344日ぶりのパフォーマンスに驚きつつも「初日までも油断ができずこれからも油断ができない。岸の言う通り改めて今までが当たり前ではなかったということを感じています。」と述べた。また神宮寺は初日の本日もよりよいものをお客様に届けるために修正点が入ったことを暴露し、ジャニー喜多川氏と堂本光一が重なる部分があると思いを馳せた。今回始めての「DREAM BOYS」で岸の弟役を演じた美少年の那須は演出の堂本光一から役を演じているうえで気づかなかった盲点などの指摘をもらい、舞台の動きからや痛みの表現など細かい部分もレクチャーがあったことを披露。同じく美少年の岩崎大昇もミュージカル全てに通じる役を演じる上での大切さを学んだと同意した。「DREAM BOYS」は年明け2021年1月27日まで東京・帝国劇場で上演中。
2020年12月15日エーゲ海に浮かぶ小島を舞台に、1970年代を代表するポップグループ“ABBA”のナンバーにのせて母娘の絆や友情を描くミュージカル『マンマ・ミーア!』。主人公ドナの娘・ソフィ役を演じるひとり、若奈まりえに舞台の見どころや、コロナ禍で舞台に立つ心境などを聞いた。「この作品は誰にでも共感できる身近な物語で、至るところに小さな“マンマ・ミーア!(なんてこった)”な出来事が潜んでいます。一番の魅力は、作品全体にポジティブなエネルギーがあふれているところ。“人生は何度でもやり直すことができる”と、いい意味で開き直ることができます。役者とお客様が一体となってそんな想いや空間を共有できるのが舞台ならではの魅力。役者もパワーをもらえる作品です」2011年から16年まで、リサ役で本作に出演。その後、『リトルマーメイド』のアリエル役等を経て、ソフィ役で出演した彼女。「最初、ソフィの候補にもなったのですがチャンスをつかめず、親友役で出演することに。ですから念願の役でした。舞台はソフィが歌う『夢があるから(I Have A Dream)』で始まって同じ曲で終わるのですが、私にとっても、まさに“I have a dream”。 夢のために勇気を出して一歩前に進む姿は、自分の9年間の成長にも重なります。今回、稽古に入る時、先輩たちがすごく応援してくれて。皆が家族のように見守ってくれていたことに改めて気づいて感激しました」ソフィ役を演じるのが、楽しくて仕方ないと語る若奈さん。お気に入りのナンバーは、母親のドナにドレスを着せてもらう時の『手をすり抜けて (Slipping Through My Fingers) 』。演じるたびに感極まってしまうシーンで、甘えたくなる自分の気持ちを抑えながら役と戦う苦労もあるそう。また、ドナ、ターニャ、ロージーが3人で『チキチータ』と『ダンシング・クイーン』を歌うシーンは、ドナを思う親友2人の友情をひしひしと感じて、稽古場でも観るたびに感動するのだとか。現在はコロナ対策でマスクを着用しての稽古。「肺活量は鍛えられましたが口元も荒れてきて大変。開口・発声(四季の訓練法)のためにはどのマスクが一番いいか?皆で情報交換しながらの日々です」と笑う。そんな苦労を経ての公演だからこそ、舞台に立てる喜びもひとしお。「舞台に立てることが当たり前ではないんですよね。舞台を通してお客様と共有できる時間は、何物にもかえがたい特別なものだと改めて実感しています」客席も一体となって盛り上がれる、本作ならではのカーテンコールも大きな魅力。「今は一緒に歌ってもらうことはできませんが、自分を解放して心から自由に楽しんでください!ペンライトを振ってくださる方も多いのですが、舞台の上から見ると本当に綺麗で役者にとって最高のご褒美。劇場でも販売していますので、ぜひ(笑)」公演は、福岡・キャナルシティ劇場にて来年1月3日(日)まで上演中。1月27日(水)から京都・京都劇場で上演。チケット発売中
2020年12月14日12月9日(水)より、浅草九劇にてショーライブ『I’ll Be Home For Christmas~クリスマスは家にいて~』が開催される。〈Family〉〈Couple〉〈Life〉の3チームに分かれた少人数のキャストが、それぞれ異なるストーリーの中でクリスマスソングを歌うショー。Coupleに出演する沙央くらま、Takayuki、舞羽美海の3人に話を聞いた。まだ稽古初期段階での取材にもかかわらず、3人の息の合った掛け合いや楽し気な笑顔に驚かされる。それもそのはず、沙央と舞羽は宝塚歌劇団在団中、同じ雪組で何度も相手役を務めた間柄。「しかも住んでいたマンションが一緒で、家族ぐるみで仲良くしていました。一緒に旅行へ行ったりも」と沙央が言えば、舞羽も「コマさん(沙央)は先輩なのですが、敬語を忘れちゃうくらい仲良くさせていただいています。もちろん礼儀はわきまえつつ、ですが(笑)」。そしてオペラ歌手としてボストン、ハワイを軸に活動しているTakayukiは沙央の実弟。「姉弟で共演したことがなかったので、すごく嬉しい。僕は子どものころからお姉ちゃんっ子だったのですが、姉は僕が小学生の時に宝塚に入ってしまったので、思春期を共にしていない。いい距離感だったのか、ずっと仲がいいんです。美海ともいつか共演できたらいいねと話していたので、実現するものなんだなと(笑)」(Takayuki)。「おふたりと歌うとすごく安心感があるし、最初の歌稽古から楽しかった。歌というのはやっぱり楽しいんだなって素直に感じられました」(舞羽)。ストーリー上は、沙央とTakayukiが夫婦、舞羽が沙央の後輩でTakayukiの元カノ…というちょっとアヤシイ三角関係。演出の菅野こうめいがそれぞれに当て書きしたと思われるキャラクターたちだ。舞羽は「独身女性の代表のような。私も思うようなことがそのまま言葉になっています。でもコマさんが大きな愛で包んでくれている…というストーリーは、本当に実際もそのまんまなんです!」と熱弁。沙央は「弟と夫婦役なので役に浸らないとやっていられないのですが(笑)、自然体でできるようにしないと」と話した。チームごとにアレンジャー、演奏家も異なるのも注目ポイント。Coupleは園田涼が音楽を手掛ける。「園田さんのアレンジは難しいけれど、本当にとってもお洒落。」(Takayuki)、「譜面をいただいた瞬間の3人の衝撃はすごかったよね(笑)。でもこれが綺麗にハマったらクリスマスならではの素敵な音階になると思います」(沙央)。色々あった2020年だけど、クリスマスはやっぱり楽しく、そして素敵な音楽とともに過ごしたい。そんな人にぴったりのこの公演は12月9日(水)から20日(日)まで。Couple、Lifeは生配信、またCouple、Life、Familyのアーカイブ配信も実施。配信はPIA LIVE STREAMにて。視聴券は発売中。取材・文:平野祥恵
2020年12月10日ディズニープラスオリジナル作品「ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル」より、ホリデーシーズンに向けた特別編となる「ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル ホリデー・スペシャル」を独占配信する。本作では、「ディス・クリスマス」「フェリス・ナビダ」や、特別版の「ハヌカ・メドレー」、リッキー役ジョシュア・バセットが作曲し、演奏するオリジナルのホリデーソング「パーフェクト・ギフト」など、イースト高校演劇部の部員たちが新旧織り交じったクリスマスソングを披露。オリジナル同様に、いまや全米を魅了するトップアイドルに成長したキャストたち。書き下ろし楽曲「All I Want」がTikTokで大きな話題となっているオリビア・ロドリゴ(ニニ役)、アーティストとしても活躍する実力派ジョシュア・バセット(リッキー役)、EJ役のマット・コーネット、ジーナ役のソフィア・ワイリーら注目キャストたちが、クリスマスプレゼントや、家族との写真など、子どもの頃のホリデーシーズンにまつわるとっておきのエピソードを語っていく。さらに、ドラマの撮影秘話も…ここでしか観られないスペシャルな映像となっている。「ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル」は、オリジナル作品と同じく、イースト高校を舞台に、演劇部のメンバーがあの「ハイスクール・ミュージカル」を新作ミュージカルとして企画していく様子を描くドラマシリーズだ。「ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル ホリデー・スペシャル」は12月18日(金)よりDisney+にて独占配信。(cinemacafe.net)
2020年12月04日ミュージカル『17 AGAIN』の製作発表が行われ、主演の竹内涼真をはじめ、キャストのソニン、エハラマサヒロ、桜井日奈子、有澤樟太郎、水夏希、翻訳・演出の谷賢一が登壇した。ザック・エフロンが主演したコメディ映画『セブンティーン・アゲイン』(2009年)が、マルコ・ぺネットの脚本、アラン・ザッカリーとマイケル・ウェイナーによる作曲・作詞でミュージカル化される本作。世界初演となる今回の上演版では、“負け組”としての人生を甘んじて受け入れていた35歳の男がバスケットボールのスター選手だった17歳の姿に戻り、家族の絆を取り戻そうと奮起する姿が描かれる。製作発表の冒頭で、主人公のマイクとして歌唱パフォーマンスを披露した竹内。約190人の一般オーディエンスを前に、まず女性アンサンブルと「#brandnewday」をハツラツと歌い上げた。ソロナンバーの「The Greatest Prize」ではパワフルな歌声を響かせながら、明るく前向きなメッセージを観客に届ける。本作が初舞台となる竹内は、会場となったZepp Tokyoの広さに驚き「ステージ空間をどう活かしながら歌えばいいか……」とビギナーならではの率直な感想を明かすと、妻スカーレット役のソニンは「(ミュージカル経験者の)私たちですら稽古が始まっていない状態での歌唱は緊張するのに、素晴らしかったです!」と絶賛。「人生で一度きりの初舞台って“勢い”という武器になると思います」と竹内にエールを贈った。17歳に戻ったマイクが通う高校の校長マスターソン役を務める水も「これまで映像の世界で培ってきたご経験が、舞台上でリアリティを出すにはすごく重要」と竹内に視線を送りつつ、「芝居のハートを持っていらっしゃる竹内さんが舞台空間の使い方を手に入れたら無敵ですよね!」と温かく語りかける。娘マギーを演じる桜井が実際にあった反抗期のエピソードを明かすと、竹内は「娘に疎まれる父マイクに説得力を出すためのヒントになりますね」と反応。それぞれが竹内に持ち寄れる知恵を授ける中で、親友ネッド役のエハラは「とにかく大きな声とオモロい顔!」と強調し、会場全体を和ませた。マイクの天敵となるマギーの彼氏スタンに扮する有澤は「物語をかき乱す役なので、竹内さんと張り合えるよう心身を鍛えたい」と抱負を述べる。一連のやり取りを見守っていた谷は、本作の魅力を「身近な存在の価値を再発見し、自分が大切なものをたくさん持っていたことに気づかせてくれるようなハッピーな作品」と紹介し、会見を結んだ。公演はまず5月16日(日)~6月6日(日)に、東京・東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)にて。その後、7月にかけて兵庫・佐賀・広島・愛知と巡演する。取材・文:岡山朋代
2020年12月02日トニー賞にもノミネートされたブロードウェイの大ヒットミュージカル[title of show]のクリエイター陣が手掛ける「Now. Here. This.」が11/28(土)博品館で幕を開けた。物語の主人公は自然史博物館のツアーに参加した4人の男女。おちゃらけた若者、真面目な青年、ワーカホリックの女性実業家、表現者を目指す女性。友人同士だが、タイプはバラバラの彼らが、地球の起源から生物の誕生や進化、ヒトが誕生するまで…という「生命の神秘と歴史」に触れ、そこから自分自身のアイデンティティにも思いをはせる。今まで経験した偶然や必然、迷い悩み選択した結果、今の自分は生きている――。小さな舞台の上から、生命と人間にまつわる大きな世界を発信するユニークなミュージカル。頑張るすべての人類へのエールが詰まっている作品だ。ミュージカル「Now. Here. This.」の公演情報はこちら主演を務めるのは、演技力や歌唱・ダンスのスキルに高い評価があり、ミュージカルからストレートプレイまで精力的に活躍する浜中文一。浜中以外のキャストは、[earth][water]の2パターンで入れ替わる。[earth]には元宝塚歌劇団トップスターで、退団後も女優として多彩なジャンルの舞台で活躍を続ける壮一帆、数多くのミュージカル作品に奥行きと深みをもたらす演技巧者・鈴木壮麻ら、[water]には得意のダンスを武器に多数の舞台に出演し、注目を集める寺西拓人(ジャニーズJr.)ら、実力派が顔を揃える。同じ戯曲でも組み合わせが変わることで起こる化学反応に、注目したい。【浜中文一コメント】お客様がどういう風な気持ちでどんなことを感じてくださるのか、また、僕たちがどんな風にこの作品を伝えられるか、それが今、不安でもあり、楽しみでもあります。この作品は、ストーリーが起承転結で進んでいく、というより、シーンごとにその場その場で出てくる感情や、描かれる情景を表現しています。『ああ、自分にもこういうことあったなぁ』と思い出すところも。時系列が行ったり来たりするので、なるべくわかりやすく、演出や舞台セットの力を借りながら、お客様に伝えられればと思います。人は、それぞれに色々なストーリーや経験があって、本当に様々、あると思うんです。それでも、自由に自分に自信を持って、生きることが大事と思わせてくれる作品だと思います。今回2チームでの上演で、初めての形式でしたが、楽しんでやらせていただきました。皆様も、楽しみにいらしていただければと思います。<ミュージカル「Now. Here. This.」(フレキシブルバージョン) 上演日程>■東京公演上演中~12/13(日) 博品館劇場■埼玉公演12/16(水) 東松山市民文化センター■大阪公演12/19(土) COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール■名古屋公演12/27(日) 愛知県産業労働センターウインクあいち
2020年12月02日1998年、アン王女役に大地真央、ジョー・ブラッドレー役に山口祐一郎を迎え、世界で初めて日本でミュージカル化された「ローマの休日」が、新キャストで装いも新たに登場。2020年10月の東京、12月の名古屋公演を経て、2021年元日からは福岡・博多座で上演がスタート。年の始まりにふさわしい華やかな同作の魅力を、アン王女役のひとり、朝夏まなとが語ってくれた。「映画『ローマの休日』は、大好きな作品のひとつ。まさか自分がアン王女を演じる時が来るなんて。驚くと同時にとても光栄に思いました」ヨーロッパのとある国の王女が、滞在中の大使館を抜け出し、新聞記者の青年に出会い、束の間の自由を謳歌する物語。わずか1日の間に、市場を散策し、名所を巡り、船上でのパーティに参加するなど、主人公たちがローマの街を楽しみ尽くす。「“街感”がどんな風に表現されるのだろう、と思っていたのですが、舞台上には見事にローマの街が再現されていて驚きました。特に、オートバイのベスパで駆けるシーンは必見。客席にいる皆さまにも、ローマにいる気分を味わっていただけると思いますよ」場面ごとに、作曲家・大島ミチルが手掛けたメロディが重なりながら物語が展開してゆく。歌詞は作詞家としても活動する女優・斉藤由貴が担当した。「日本生まれのミュージカルなので、登場人物の思いを日本語の歌詞で素直に表現できるところも魅力ですね。大島さんのメロディと共に、すーっと自然に受け止めていただけるのではないかと思います」また今回は、Wキャストで土屋太鳳がアン王女役を演じるほか、相手役のジョー・ブラッドレー役には朝夏が「安定感抜群」と信頼する加藤和樹、ジョーの友人でカメラマンのアーヴィングには、ミュージカル経験豊富な太田基裕と共に、お笑い芸人の藤森慎吾という異色のキャスティングも。「今回は、アン王女とアーヴィングがWキャストなのですが、組み合わせによって舞台の雰囲気が変わるのも魅力のひとつ。一度はもちろん、二度、三度と、様々な組み合わせで観ていただけたら嬉しいです!」公演は12月19日(土)~25日(金)は愛知・御園座。チケットは発売中。1月1日(金・祝)~12日(火)は福岡・博多座。チケットは11月28日(土)発売開始。
2020年11月27日ドルチェ&ガッバーナは新プロジェクトとして、公式ウェブサイトおよびソーシャルメディアでのみ公開される初のデジタルファッションショー”DG デジタル ショー”を発表した。©DOLCE&GABBANAドルチェ&ガッバーナは新プロジェクトとして、公式ウェブサイトおよびソーシャルメディアでのみ公開される初のデジタルファッションショー”DG デジタル ショー”を発表。メンズ、ウィメンズ コレクションの発表と同時に、ショーに登場した製品はオンラインで購入可能となる。また一部の製品は店頭でも発売予定だ。©DOLCE&GABBANA©DOLCE&GABBANA©DOLCE&GABBANADG デジタル ショー プロジェクトの皮切りとなるのは、ウィメンズ コレクション。「ウォーキング イン ザ ストリート(Walking In The Street)」をテーマに掲げ、ブランドのDNAが持つユニークな特徴と、カジュアルでリラックスしたアーバンスタイルをミックスしたスタイルが多く登場した。ボーイフレンドデニムやスニーカーなど90年代のストリートを感じさせる雰囲気の中に、サルトリアの技術を駆使したジャケットやジレを合わせることで唯一無二のルックを演出している。ライブで味わう体験をデジタル技術とうまく調和させ、グローバルなコミュニケーションへと発展させるまさに今の時代ならではのプロジェクトと言えるだろう。モデルのウォーキングが、フィジカルなショーさながらのダイナミックな背景とともに表現されるとき、ルックは生き生きと輝くードルチェ&ガッバーナは、こうした背景すべてがコレクションのメッセージをより強いものにし、ファッションが素晴らしい体験であることを改めて伝えようとしている。DG デジタル ショーの模様は、公式YouTubeチャンネルで観ることができる。企業プレスリリース詳細へ本記事に掲載しているプレスリリースは、株式会社PR TIMESから提供を受けた企業等のプレスリリースを原文のまま掲載しています。FASHION HEADLINEが、掲載している製品やサービスを推奨したり、プレスリリースの内容を保証したりするものではございません。掲載内容に関するお問い合わせは、株式会社PR TIMES()まで直接ご連絡ください。
2020年11月17日城田優が主演するミュージカル『NINE』が、11月12日に開幕。これに先駆け、報道陣にゲネプロが公開された。アーサー・コピットが脚本、モーリー・イェストンが作詞・作曲を手がけた本作は、フェデリコ・フェリーニの自伝的映画『8 1/2(はっかにぶんのいち)』を原作としたミュージカル。1982年の初演はトニー賞10部門にノミネートされ、作品賞、作詞・作曲賞、助演女優賞、衣装デザイン賞、演出賞の5部門で最優秀賞を獲得した。今回の上演版は、藤田俊太郎が演出を務める。城田が演じるのは、創作スランプに陥り迷走する映画監督グイド・コンティーニ。離婚を切り出してきた妻ルイザ(咲妃みゆ)との関係修復とスランプ打開のため、グイドはベネチアの温泉へ向かう。しかし、愛人カルラ(土井ケイト)や脚本の催促に訪れたプロデューサーのラ・フルール(前田美波里)らの登場で休まる暇もない。4日後に迫る撮影を前に現実から幻想の世界へ迷い込むと、これまで彼の人生を翻弄した女性たちとのエピソードが幕を開け──。公私ともにトラブルを抱え、絶体絶命のグイド。城田はワイルドな無精ひげをたくわえ、落ちくぼんだ目元を覗かせながら、疲労困憊の中にもイタリア中年男の絶妙な“色気”を醸し出す。上演にあたって「この2020年にふさわしい様々な国の言葉や字幕を使った、多言語のエンターテインメントな内容」とコメントを寄せる通り、冒頭の「Guido’s Song」全編を英語で艶っぽく歌唱。ステージ上の様子を収めるライブカメラの映像がスクリーンに映し出される演出に、観客はグイドを主人公とする“映画”の世界へ自然と誘われていく。グイドを取り巻く女性陣の緩急自在なパフォーマンスからも目が離せない。妻を演じる咲妃は「My Husband Makes Movies」で、夫に対する諦念を落ち着いた低音に滲ませた。すみれは、グイド作品の主演女優にして彼のミューズであるクラウディア役。不覚にも彼を愛したものの、別れを決意する思いを「Unusual Way」に乗せて歌い上げる。特筆すべきは、ショーアップされたラ・フルールの「Folies Bergeres」。脚線美を余すところなく披露した前田が、持ち前のレビュー精神を発揮して歌い踊るさまは必見だ。幼いグイドに性の手ほどきをした娼婦サラギーナ役の屋比久知奈も、「Be Italian」の野性味あふれる歌声で客席を魅了していた。上演時間は約155分(休憩含む2幕)。公演は11月29日(日)まで、東京・TBS赤坂ACTシアターにて。12月5日(土)~13日(日)に大阪・梅田芸術劇場 メインホールと巡演する。11月20日(金)13時公演はぴあ貸切公演を実施。ぴあ貸切公演限定で13列目以内の当日引換券も11月13日(金)10:00より発売開始。取材・文:岡山朋代
2020年11月12日現在上演中のミュージカル『プロデューサーズ』において、開幕2日目の公演を観劇する機会に恵まれた。1968年の映画をもとに、2001年に米ブロードウェイで舞台化された本作は、トニー賞12部門で最優秀賞を獲得した大ヒットミュージカル。英ウエストエンドなど世界各国で上演を重ね、05年にはブロードウェイのオリジナル主演キャストによる映画も製作された。 “史上最低”のミュージカルをつくってボロ儲けを狙うプロデューサーコンビの顛末が、今回の日本版では福田雄一の演出によってコミカルに描かれる。破産寸前で落ちぶれ気味のプロデューサーこと主人公マックスを演じるのは、井上芳雄。彼に巻き込まれながらもタッグを組む気の弱い会計士レオを、ミュージカル初挑戦の吉沢亮と、米ニューヨーク留学帰りの大野拓朗がWキャストで演じる。取材日は“大野レオ”の初日だった。失敗作ほど利益を生む──と帳簿から確信したマックスとレオは、ナチス・ドイツの指導者アドルフ・ヒトラーを愛するフランツ(佐藤二朗)が書いた荒唐無稽な「ヒトラーの春」を脚本に選ぶ。演出にロジャー(吉野圭吾)と助手カルメン(木村達成)というクセ強めのゲイカップルを迎えると、マックスは出資者を募るためにホールドミー・タッチミー(春風ひとみ)ら資産家の老婦人から色仕掛けで小切手をかき集める。小賢しくもどこか憎めないマックスを、井上はユーモアたっぷりに演じる。二幕で会計上の不正が警察に見つかり投獄された彼が、これまでの計画を回想すべく歌とダンスで一人“高速”ダイジェストを繰り広げるパフォーマンスは見どころだ。ひたすらボケ倒す登場人物をすべて受け止める、ウィットに富んだツッコミにも注目したい。大野は、周りの“濃い”キャラクターに翻弄されるレオを表情巧みに造形。特に、英語の話せない女優志望ウーラ(木下晴香)のセクシーな魅力に抗えず、悩殺される様は前方席であってもオペラグラス持参でチェックされたし。コミカルな一面以外にも、伸びやかな高音が甘く優しく響く歌声はプリンス然としており、スマートかつ無邪気なレオ像を印象づけた。この日のカーテンコールは、カンパニーの中で唯一初日を迎えた大野を祝福するムードに突入。MCと化した井上からコメントを求められると、ゲネプロの機会がなく「初めて通しました!」と明かす大野に観客から大きな声援と拍手が送られた。約1年半ぶりという舞台出演、留学を経てパワーアップした彼の雄姿を見届けに劇場へ足を運んでみては。上演時間は約190分(休憩含む2幕)。公演は12月6日(日)まで、東京・東急シアターオーブにて。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2020年11月11日