誰もが夢見る幸せな結婚生活。だが世の中にはそんな幸せを食い物にするラブデストロイヤー、通称ラブデスが存在します。 ここはラブデスの生態を解明し、襲撃から身を守るよう警告を促すために設立された研究所。 我が研究所には日々、全国各地からラブデスの目撃情報が寄せられています。不幸にも既婚者の皆様……明日は我が身。心してご覧あれ……。文・イラスト 伊藤沙帆ラブデスファイル09「シンコンキラー」会社員の女性Aさん(当時28歳)は、大学のクラスメイトと在学中に交際を開始。交際6年目を迎えたとき、彼からプロポーズを受けました。歳月を経ても、彼のAさんへの愛情は薄れるどころか強くなるばかり。「私をこんなに愛してくれる人は、世界中のどこを探しても彼以外いないだろう」Aさんはそう思って、迷わずプロポーズを快諾したそうです。プロポーズから半年後、2人は都内某ホテルで結婚式を挙げました。愛する家族や友人に祝福され、それはそれは幸せな時間だったそうです。披露宴を終え、場所を移して行われた二次会には、さらに沢山の友人が集まり、盛り上がりました。二次会が中盤に差し掛かったところで、Aさんの大学時代の友人YがAさんのもとにやってきて言いました。「結婚おめでとう! 旦那さんが素敵な人で羨ましい! 私、彼と共通の友達がいるっぽいの。後でお話したいな」Yは学生時代から人見知りがちな性格で、目立たないタイプでした。Aさんは、そんなYが二次会の盛り上がりに気後れしていないかと心配していたので、喜んで彼女を夫に紹介したそうです。幸せに満ちた挙式から2ヶ月。それまでありあまるほどの愛情を注いでくれた夫は、仕事の付き合いと言いつつ、次第に帰りが遅くなり、ついに朝帰りをする日さえ出てくるようになりました。たまに過ごす夫婦の時間も、疲れた様子を見せるばかりの夫に、Aさんは不信感を抱き始めました。「結婚したばかりで信じがたいけど、ヤツには何か隠し事がある……」Aさんの悪い予感が的中したのは、その1週間後のこと。結婚式に参列していた親友のMから、Aさんのもとに一本の電話が……。「こんなことを伝えるのは気が引けるけど、私、昨夜Aの旦那さんを見かけたの。女性と手を繋いで歩いてた」新婚生活2ヶ月目にして突きつけられた衝撃の事実に、Aさんは言葉を失ったそうです。その夜Aさんは、彼を問い詰めました。人違いだと否定する夫に、Aさんは最後のカードを切りました。「じゃあ、スマホ見せてくれる?」一瞬戸惑いを見せた彼からスマホを奪い取り、メッセージを開くと、そこには動かぬ証拠の数々が。「昨日は楽しかったよ、ありがとう」「会いたくてたまらない」「愛しているよ」「私も」覚悟はしていたものの、衝撃の事実を目の前にしてたじろぐAさん。しかも不倫相手の名前は……。「なんでここにYの名前があるの? あなたの相手ってあのYなの?」そう。夫の不倫相手は、Aさんの友人のYだったのです。彼とYは、結婚式の二次会で盛り上がり、その場で連絡先を交換。翌日から連絡を取り合い、挙式の1週間後には関係を持ってしまったのだとか。Aさんは即座に離婚を決意。Yとは絶縁し、多額の慰謝料を手に入れたものの、人間不信に苦しんでいるそうです……。ラブデス研究所の見解これは、結婚間もない人間を狙うラブデス、その名も「シンコンキラー」ですね。新婚ホヤホヤで幸福の絶頂にあるカップルを好み、彼らを破滅に追い込む、残酷でタチの悪いラブデスです。そもそも、幸せ絶頂のはずの挙式当日に、シンコンキラーが入り込む“心のスキ”なんてあるのでしょうか?実は、覚悟が足りないまま結婚した人間の中には、「生涯のパートナーはこの人だけ。もう二度と自由に恋愛なんかできないんだ……」などと、独身への未練をかかえている者も多いもの。シンコンキラーはそんな弱い心を察知して、ハンティングを始めるのです。それにしても、挙式後1週間で不倫とは! シンコンキラーの行動力には脱帽ですが、それよりもAさん夫のだらしなさには呆れます。誠実さのカケラもないですね。自分の結婚式で他の女に心奪われるなんて、あなたそれでも夫ですか? 教会で立てた誓いはウソだったの!?……取り乱してしまいました。失礼しました。Aさんのように、夫や友人の裏切りに苦しみ、悲しむ被害者をこれ以上見たくない。我が研究所では、研究に研究を重ね、シンコンキラーから身を守るたった1つの方法を導き出しました。それはすばり、結婚しないこと!極めてシンプルですがこれに尽きますね。シンコンキラーはその名の通り、新婚の男女を食い物にするラブデスです。つまり、あなたのもとに新婚のパートナーがいなければ、当然襲撃されるはずはありません。結婚による幸せの絶頂こそないものの、ラブデスによって不幸のどん底に突き落とされることもない。結局のところ、淡々と日々を過ごす独身生活が一番いいのです。今回もこれにて無事解決。またお会いしましょう。
2019年11月29日誰もが夢見る幸せな結婚生活。だが世の中にはそんな幸せを食い物にするラブデストロイヤー、通称ラブデスが存在します。 ここはラブデスの生態を解明し、襲撃から身を守るよう警告を促すために設立された研究所。 我が研究所には日々、全国各地からラブデスの目撃情報が寄せられています。不幸にも既婚者の皆様……明日は我が身。心してご覧あれ……。文・伊藤沙帆ラブデスファイル08 「カネトールvsフリンジャー」メーカー勤務のKさん(当時28歳)は、バリバリ仕事をこなすキャリアウーマン。新卒で入社した会社ではどんどん出世し、男性陣顔負けのキャリアを積んでいました。仕事は順調そのものでしたが、次々と結婚し、子どもを授かっている同級生たちを見ていると、孤独を感じることも多くなっていました。ある日、Kさんは、上司と2人で残業をしていました。彼は、Kさんが入社直後から憧れていた上司でした。優しく紳士的でイケメン、しかも会社からの信頼も厚い上司に、Kさんは新卒時代から幾度となく救われていました。この人が結婚していなかったら良かったのに……と思うことも多々あったそうです。上司は、Kさんの元にやってきて言いました。「こんな時間までお疲れ様。今日は一杯おごるよ。どう?」憧れの上司にはじめて誘われ、気持ちが昂ぶるKさん。会社の外で話す彼は、普段とはちょっと違う雰囲気で、Kさんは彼を男性として強く意識してしまったそうです。その後、Kさんは週に1~2回の頻度で上司と飲みに行くようになりました。日に日に上司に惹かれていくKさんでしたが、上司は妻子ある人。家庭は上手くいっていないと聞いたけれど、決して一線は越えまいと意志を貫くつもりでした。しかしある夜、お酒が進み、酔いが回った2人は、ついに一線を越え、ホテルに行ってしまいました。「一線を超えたとはいえ、一度くらいなら隠し通せるはず……」そう自分に言い聞かせたKさんでしたが、2週間後のある日、会社にかかってきた1本の電話によって、突然修羅場は訪れました。「Kさん、××さんという方からKさんにお電話です」上司と同じ苗字にKさんはやや嫌な予感を覚えながらも、電話をとりました。すると、「私、××の妻です。旦那とあなたの関係は全て知っています。すぐに直接お会いできないようであれば、この電話で会社に全てをバラします。」まさかの事態にうろたえたKさん。平静を装いつつ、携帯電話のアドレスを伝え、2時間後に会う約束をしました。2時間後、Kさんが指定されたカフェで待っていると、上司の妻が幼い息子を連れて現れました。彼女は席に着くと、静かに話し始めました。「電話でお話した通り、旦那とあなたの関係は全て知っています。今後旦那と二度とふたりで会わないことを約束してください。了承いただけたら、こちらの誓約書にサインをお願いします」ノートに書かれた手書きの誓約書にKさんがサインを終えると、妻は続けて言いました。「慰謝料等は、今夜私が母親と話し合って決めますので、明日改めてご連絡します」話には聞いたことがあるけど、たった一度の過ちで慰謝料を請求されることになるとは……。Kさんは絶望でその場に立ち尽くしたそうです。翌日、上司の妻からメールが届きました。「母と話し合い、慰謝料を決めました。ご確認の上お振込みお願い致します」メールには請求書が添付されており、なんと200万円の請求額が記されていました。想像を遥かに超える請求額に焦ったKさんは、彼女に電話をかけ、慰謝料の減額を求めました。 しかし、昨日とはまるで別人のように泣き叫ばれ、話にならないまま電話を切られたそうです。Kさんは、その日会社に現れなかった上司にも連絡をしましたが、連絡がつかず、翌日以降も会社では無視され続けました。結局、Kさんと上司の妻は弁護士を通して話し合いをすることとなり、2年の時を経て、150万円の慰謝料を支払ったそうです。後日弁護士に話を聞くと、上司の妻は以前も、彼と関係を持った女性から慰謝料を受け取ったことがあったようです。また、Kさんの一件で夫との離婚を決めたと話してはいましたが、結局離婚も別居もしていないのだとか。上司に話を聞こうにも、会社では一方的に無視され、もはやいないも同然の関係に。上司と妻の関係は? 妻から上司への慰謝料請求は? 真相は闇に包まれたまま、Kさんは泣き寝入りをするしかなかったそうです。ラブデス研究所の見解これは、最も一般的なラブデスであるフリンジャーと、不倫の被害にあった妻との壮絶な戦いですね。まったく、何やってるんですかKさん。ただ、今回のケースは謎が多いですね。そもそも、上司夫婦は離婚していないようじゃないですか。夫婦が離婚も別居もしていない場合、慰謝料の相場は大体50万円~100万円と言われています。よってKさんは、相場よりも高い150万の慰謝料を支払ったことになります。また、妻が以前も他の不倫相手から慰謝料を取ったことがあるという実績も、何か恐ろしいものを感じます。まさか、彼女は夫を利用しているのでは……?もしそれが事実だとすれば、彼女は、パートナーをおとりにフリンジャーを罠にかけ、その財産を吸い取るラブデス「カネトール」かもしれません。このラブデスは、何度も不倫の被害にあった結果、愛情も憎しみすらも感じなくなった存在。ただ己の物欲にのみ従い、パートナーを“慰謝料を取ってくる道具”として使うようになった、悲しいラブデスなのです……。慰謝料を請求する方も、請求される方も、双方が悲しい経験をする不倫。そんな不倫に関わってしまう人をひとりでも減らしたい……。その一心で、我が研究所より皆様にお伝えしたいことがございます。それは「愛のある結婚生活なんて幻想」だということ。愛を誓ったはずの相手が、いつの間にか他の異性と関係を持つようになり、あなたを裏切るようになるんですよ!? 最初から傷つくことが分かっているなら、人を愛することそれ自体が、不毛な行為であると思わざるを得ません。わざわざ自分からいばらの道を歩むような選択をする必要はありません。気ままな独身生活を謳歌しましょう。今回もこれにて無事解決。 それではまたお会いしましょう!
2019年09月07日誰もが夢見る幸せな結婚生活。しかし、世の中にはそんな幸せを食い物にするラブデストロイヤー、通称ラブデスが存在します。ここはラブデスの生態を解明し、襲撃から身を守るよう警告を促すために設立された研究所。ここには日々、全国各地からラブデスの目撃情報が寄せられています。不幸にも既婚者の皆様。明日は我が身かもしれません。心してご覧あれ……。文・伊藤沙帆ラブデスファイル07「キューピッドモドキ」保険会社勤務の男性Yさん(当時29歳)は、来る日も来る日もひたすら働く仕事三昧の20代を過ごしていましたが、30歳を目前に結婚を意識し始めました。Yさんは、婚活パーティーに出向いたり、合コンに参加したり、婚活アプリを利用したりと、ありとあらゆる手を尽くしましたが、長い間恋愛から遠ざかっていたために、中々良い相手を見つけられずにいました。そんなYさんを見かねて、手を差し伸べたのは友人のK。証券会社勤務のKは、Yさんの大学時代からの大親友でした。ある日、Kは言いました。「俺の友達の女の子でYと合いそうな子がいるんだけど、会ってみない?」Yさんは、旧知の仲であるKの紹介ならば間違いないと快諾。紹介者であるKも含め、3人で会うことになりました。数日後。Kに連れられてやってきた彼女は、超がつくほどの美人。それでいて気さくなキャラクターに、Yさんは瞬時に心を奪われたそうです。その日から、Yさんは彼女に懸命なアプローチを続け、しばらくして2人は交際を始めることになりました。KはいつでもYさんの相談に乗ってくれて、時には手助けをしてくれました。1年後にYさんがサプライズでプロポーズをした時も、演出に協力してくれたのはKで、プロポーズが無事成功した時も、Kはまるで、自分のことのように喜んでくれたそうです。そんな友情関係に亀裂が生じたのは、Yさんが彼女と結婚して半年後のこと。妻が外出をしたある日の休日。一人家にいたYさんは、残した仕事を片付ける予定でいました。ところがYさんのパソコンに不具合が生じたため、急きょ妻のパソコンを借りることに。パソコンを開くと、デスクトップに何やら気になる写真フォルダが。家族とはいえ、勝手に見てはいけない……胸騒ぎを覚えつつ、葛藤していたYさんでしたが、興味に打ち勝てずフォルダを開いてしまったそうです。不幸にもYさんの悪い予感は的中しました。フォルダには男と並んでいる嫁の写真が何枚も……。しかも、よく見ると、写真の男はあのKだったのです。さらに、妻とKのツーショット写真の背景を見ると……。「これ、我が家じゃないか……」Yさんは妻の帰宅時間に合わせてKを呼び出し、2人を問い詰めました。動かぬ証拠を突きつけられたKと嫁は、弁解の余地なく不倫関係を認めました。Kの話によると、キューピッド役であったKは、結婚後も嫁の相談相手になっていたそう。初めは異性として意識していなかったようですが、頻繁に連絡をとるうちに、Kの方から嫁に惹かれてしまい関係を持ってしまったということでした。YさんはKとの友人関係を断ち、結婚生活は続けていくつもりでいたそうですが、妻がそれを拒否。最終的には妻から離婚を突きつけられ、その後すぐさまKと再婚したそうです。一方のYさんはと言うと、友情も愛情も信じられず、今も独身のまま苦しみ続けているのだとか……。ラブデス研究所の見解これはこれは!皆様、一度は少女マンガやドラマなどで見たことがあるでしょう?恋愛あるあるラブデスの「キューピッドモドキ」ですね。初めのうち、ヤツは恋のキューピッド役として活躍します。その後、男女双方からの信頼を十分に得たところで、片方の相談役に徹し、そのまま相手の心を打ちぬいてしまう、怪盗のようなラブデスですね。手荒な真似をすることはないものの、非常に巧妙な手段で襲撃をしてくるので、非常に恐ろしい存在です。今回のケースで特筆すべきは、キューピッドモドキ自身が、自らセッティングした環境の中で暴れまわったという点です。Yさんをおびき寄せ、そこに彼女を連れてきたのも、2人を結びつけたのも別れさせたのも、キューピッドモドキ自身です。初めはそんな気はなかったと弁解しているようですが、結果的にはキューピッドモドキ脚本・監督の舞台で踊らされていただけだったYさん……。すごいシナリオですね監督!あっぱれ!……失礼いたしました。Yさんお気の毒に。恋愛相談から恋愛関係に発展してしまうというパターンは、非常によく聞きますが、個人的には、お互いに少しそういう未来を期待していたでしょう!? 少なからず下心があったでしょう!?と思わざるを得ませんね。恋愛や夫婦間トラブルの相談は、せめて同性相手にしなさいよ。悪気がなくても相談された方は期待してしまうでしょう?我が研究所では、こういったラブデスによる襲撃から身を守る、たった1つの方法を導き出しました。それはずばり、無理に結婚しないこと!これに尽きます。そもそも無理に恋愛・結婚しようと苦労しているから、恋のキューピッドを装ったキューピッドモドキに襲撃されてしまうのです。早々に結婚は諦めて、悠々自適の人生を送りましょう!今回もこれにて無事解決。またお会いしましょう。
2019年08月18日誰もが夢見る幸せな結婚生活。だが世の中にはそんな幸せを食い物にするラブデストロイヤー、通称ラブデスが存在します。ここはラブデスの生態を解明し、襲撃から身を守るよう警告を促すために設立された研究所。我が研究所には日々、全国各地から目撃情報が寄せられています。既婚者の皆様……明日は我が身かもしれません。心してご覧あれ……。文・イラスト 伊藤沙帆ラブデスファイル06「ニジュウセイカツドン」Kさん(当時40歳)は、25歳で飲食店経営の男性と結婚、その後2人の子どもを授かりました。3歳年上の夫とは、交際期間も含めると19年目を迎える長い付き合い。新婚まもなく飲食店を開業した夫を、Kさんは献身的に支え続けました。誠実で家庭的な夫は、子ども2人の面倒も良く見てくれましたが、飲食店が繁盛し始めると、夫が家庭に割く時間は徐々に減っていきました。家族揃って食事をすることや、休日に遠出することがほとんどできなくなっても、夫を咎めなかったKさんでしたが、ある時を境に夫への不信感が芽生えました。それは半年も前から予定していた家族旅行の前日。ワクワクしながら、旅行のパッキングを進めていたKさんの元に、夫から1本の電話が。「申し訳ない。バイトが急病になって、仕事を休めなくなった。明日の旅行は俺抜きで行ってくれないか」突然の事態に愕然としたKさん。そもそもこの旅行は、日頃仕事に追われている彼が、久しぶりの家族サービスとして提案したものでした。仕方ないよね……。だって仕事だもの。Kさんは自分にそう言い聞かせ、子どもを落胆させたくない一心で、夫抜きの家族旅行を決行したそうです。数ヶ月後、お詫びの気持ちを込めてと、夫は再び家族旅行を提案しました。しかし、旅行の数日前になって、またもや夫から信じがたい言葉が…「厨房機器の修理日程が、旅行と被ってしまった。本当にすまないが、旅行は子どもたちと3人で行ってきてくれ」夫の2度にわたる家族旅行ドタキャンには、さすがに怒りを覚えたというKさん。それと同時に夫への疑念が芽生えたのは、言うまでもありません……その翌日。彼と話をしようと心に決めたKさんは、2人の子どもを寝かしつけ、彼の帰りを待ちました。しばらくしてインターホンが鳴り、Kさんが玄関を開けると、そこにはなんと知らない女の姿が。女はKさんに言いました。「××さん(Kさんの夫)の奥様ですよね? ××さんと離婚していただけませんか?」Kさんは、すぐに事態を把握できず、何も言えないままその場に立ち尽くしたそうです。ほどなくして夫が帰宅。不測の事態に動揺を隠せない夫とKさん。まるで絵に描いたような修羅場で、Kさんが彼に問いただすと、耳を疑うような衝撃の事実が……。彼らは、Kさんが交際を始めたのとほぼ同時期に関係を持ち、その関係は結婚後も継続。その女との間にも子どもを授かり、なんと19年間にも及ぶ二重生活をしていたということが判明したのです。Kさんと夫は即座に離婚。彼はもう一つの家庭に移動し、飲食店は愛人と2人で経営しているのだとか。一方のKさんはというと、今でも男性不信から抜け出せずにいるそうです……。ラブデス研究所の見解ついにお目にかかりましたね。ラブデス界最恐と言っても過言ではない「ニジュウセイカツドン」! 愛人を作ることだけでは飽き足らず、愛人との間に子どもまでもうけ、完全なる第2の家庭を築き上げてしまう、パワーに満ち溢れたラブデスです。ただでさえ恐ろしい威力を持ったラブデスなのですが、今回のケースで特筆すべきことは、19年もの長い間、ニジュウセイカツドンとして君臨し続けた、その調整力と持久力ですね。ブッキングしないようにするには相当困難を強いられるでしょうし、経済的にも圧迫されるに違いありません。なかなかやるな……いえ、失礼しました。Kさんの心中お察しします。ちなみに、ニジュウセイカツドンに対して“一昔前の昼ドラに出てくるような、豪快な遊び人”というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実は、それは大きな間違い。Kさんのケースを含め、研究所に届くニジュウセイカツドンの被害報告によると、そのほとんどが、家庭的で慎ましく誠実な夫の姿をしていたのです。そう、ニジュウセイカツドンの最も恐ろしいポイントは、家庭に難なく溶け込む擬態能力なんです。不倫の心配がないように見せかけて、何食わぬ顔でもう一つの家庭に……。実に残酷なラブデスですね。そこで、我が研究所は、これ以上ニジュウセイカツドンに泣かされる被害者を増やしたくない一心で、1つの防衛策を導き出しました。それはずばり、家庭を築かないこと!これより強力な策はありますか? 紆余曲折を経て、ようやく家庭的で理想の夫を見つけても、それが仮の姿かどうかなんて見極められますか? 人間の裏の顔まで見なければならないなんて、キリがありません。そんな面倒なことはやめて、潔く独身でいましょう。今回もこれにて無事解決。またお会いしましょう。
2019年07月15日誰もが夢見る幸せな結婚生活。だが世の中にはそんな幸せを食い物にするラブデストロイヤー、通称ラブデスが存在します。ここはラブデスの生態を解明し、襲撃から身を守るよう警告を促すために設立された研究所。我が研究所には日々、全国各地から目撃情報が寄せられています。既婚者の皆様……明日は我が身かもしれません。心してご覧あれ……。文・イラスト 伊藤沙帆ラブデスファイル05 「ツメアマインデスvsタンテイギドラ」銀行勤めのSさん(当時29歳)は、大学の同窓会で再会した同級生女性と結婚。家庭的で穏やかな彼女とは、喧嘩一つない円満な家庭を築いていたそうです。そんな2人の関係に歪みが生じたのは、結婚から2年目を迎えようとしていた頃でした。医療事務の仕事をしていたSさんの妻は、Sさんより早く帰宅することが常でしたが、その頃から残業や仕事上のお付き合いで、帰りが遅くなる日が増えました。妻の帰宅が遅いことに対して何も咎めなかったというSさん。それを良いことにS妻の行動は日に日にエスカレート。月に何度か外泊をするようになり、休日も家を留守にする日が増えました。さすがに何か怪しいと感じたSさんは、妻に問うべきか悩みました。彼女は、帰宅が遅いことや外泊を除けば、変わらず家事を完璧にこなし、Sさんへの態度に何ら変化もなかったからです。ここで妻を問い詰めて、関係をギクシャクさせたくない……。ただ、妻を疑ってしまうこの気持ちが嫌なんだ。真相を知って、安心したい。きっと、妻にはやましいことは何もないはずだから。葛藤の末、Sさんは探偵事務所を訪ねました。調査費用は50万。想像を上回る高額料金に躊躇したSさんでしたが、妻の潔白を証明し、家庭の平穏を保つためだと依頼を決意しました。素行調査当日。Sさんは、仕事の時間に空きが出来たのでランチをしようと妻を誘い、駅近くのレストランに入りました。レストランを後にし、仕事に戻るというていで別れた直後、Sさんは探偵に連絡を入れました。それが調査スタートの合図。彼女を信じたい気持ちと不安とが入り混じり、落ち着かないSさんは、喫茶店に入り探偵からの連絡を待ちました。絶対に絶対に絶対に大丈夫だ……。妻はそんな女じゃない……。祈る気持ちで待つSさんのもとへ、わずか30分も経たないうちに、探偵からの電話が。あまりの早さに胸騒ぎを覚えつつ、Sさんが出ると……。「Sさん、証拠つかみました。彼女は、あなたと別れた直後に男と駅ビルで落ち合いました。引き続き調査続行致します」あまりにもあっけなく妻の浮気を明かされたSさんは、呆然としてその場に立ち尽くしました。数日後、探偵事務所を訪れたSさんに突きつけられたのは、決定的な証拠写真の数々。男と腕を組んで歩く妻、男とショッピングを楽しむ妻、男とワインを傾ける妻、男とコンビニでコンドームを購入する妻、男とホテルに入る妻、男と電車のホームでキスする妻……。その夜、Sさんは持ち帰った証拠写真と共に妻を問いただしました。驚くべきことに、この期に及んでもSさんの妻への愛は揺らぐことがなく、離婚をするつもりはなかったそうです。弁解の余地もなく、彼女は浮気を認めました。Sさんは離婚をする気はないと主張しましたが、彼女はそれを拒否し、まもなく不倫相手の男性と再婚しました。一方のSさんはというと、ショックから立ち直れないまま、今も独身でいるそうです……。ラブデス研究所の見解これはこれは華麗な戦いを見せてくれましたね!狙った獲物は決して逃さない、タンテイギドラですね!不貞を働くわけでないので、タンテイギドラはラブデスではないのですが、ラブデスの悪行を暴く脅威の存在です。しかし残念なことに、今回は敵が圧倒的に弱かった。タンテイギドラへの対抗策を持たず、バレッバレの悪行を働くツメアマインデスだったんですね。もう少し健闘してくれたらアツい戦いを楽しめたのに。粘ってくれよツメアマインデス!……じゃなくて!Sさん、お気の毒に。心中お察しします。ラブデスの天敵、タンテイギドラですが、一度彼らにターゲットにされたらまず逃げられないと聞きますね。彼らは通常群れで行動します。Sさんの証言によると、駅ホームで撮られた証拠写真には、ターゲット2人と、その他数名の人物が写っていたようですが、ターゲット以外すべて仲間のタンテイギドラだったそうですよ!しかも、コンビニで購入したコンドームまで写真に収めていますからね。その追跡技術と情報収集力の高さに感服せざるを得ません……。一方のツメアマインデスは、タンテイギドラの前でこそ最弱のラブデスですが、このツメの甘さが逆に被害者を傷つけるのです。隠し事をするくらいなら最後まで隠し通せよ!知らぬが仏って言うだろう!……失礼しました。ここまでご紹介したツメアマインデスとタンテイギドラの戦い。遠巻きに見ているぶんには被害はありませんが、万が一巻き込まれてしまったら、ひとたまりもありません。これ以上かわいそうな被害者を増やしたくないという強い思いから、我が研究所はたった一つの防衛策を導き出しました。それはずばり、安易に結婚しないこと!これに尽きます。結婚前から相手がラブデスか否かを見極めるのは、不可能に近いと言われています。また、ラブデスに襲撃され、タンテイギドラに調査を依頼しても、その費用は決して安くありません。大金を支払ったあげく、自分が傷ついただけだった……というケースもあります。それならば、そもそも結婚などしなければよいだけの話。ラブデスからの攻撃を受けることもないですし、ラブデスを退治しようと追加費用を支払う必要もありません。シンプルかつ効果的な対策法ですね!というわけで、今回も無事解決。またお会いしましょう!
2019年06月20日誰もが夢見る幸せな結婚生活。だが世の中にはそんな幸せを食い物にするラブデストロイヤー、通称ラブデスが存在します。ここはラブデスの生態を解明し、襲撃から身を守るよう警告を促すために設立された研究所。明日は我が身かもしれません。心してご覧あれ……。文・イラスト 伊藤沙帆ラブデスファイル04 ゲンチヅマーBさん(当時31歳)は商社勤務の彼と結婚、ほどなくして娘を授かり、何不自由のない幸せな生活を送っていました。結婚から3年ほど経った頃、夫の海外赴任が決まりました。赴任先は東南アジアの某国。期間は2年から3年とのことでした。Bさんは、家族で移住すべきか夫に単身赴任させるか悩みましたが、知らない土地での子育てに不安を覚え、後者を選択しました。赴任当日の朝。空港まで見送りに行ったBさんと娘に、夫は「2年なんてあっという間だよ。半年に一度は必ず帰ってくるから。毎日連絡もするよ」と言いました。その言葉通り、最初の3ヵ月は毎日連絡がきていましたが、徐々に間隔が空くようになり、ついに、3日に1度のメールと週に1度の電話のみとなりました。それでもBさんは、彼は慣れない土地でハードな仕事をこなしているのだから仕方がない……と自分に言い聞かせ、夫を深追いすることはありませんでした。半年後。予定ではそろそろ夫の一時帰国のタイミング。夫の帰りを心待ちにしているBさんは、いつ頃帰ってこられるのか尋ねました。すると、「ちょっと今月は厳しいかもしれないな……。仕事が立て込んでいて。目途がたったら連絡するよ」という返信が。夫はさぞかし寂しい思いをしているだろう、家族と会える日を何よりも楽しみにしているだろう……と思っていたBさんは、夫の白けた態度に肩透かしを食らった気分になりました。それでも、Bさんは単身赴任の夫の苦労を思い、ただただ待ち続けたそうです。それから3ヵ月後。ようやく夫の一時帰国日に。夫が日本に到着して間もなくして、空港からBさんに電話がありました。「今着いたんだけど、大阪支店でトラブルがあって、直行するから今日は家に帰れない。明日また連絡するよ」とのこと。仕事と言われたら、受け止めざるを得ないBさん。彼の帰宅を待つことにしました。その翌日。東京のBさんの元へ帰って来た夫は、「一週間の滞在予定だったんだけど、赴任先でトラブルが発生して、明日すぐに日本を発たないといけないんだ。本当に申し訳ない」と言ってきました。たび重なる急用、そして、妻と娘との久々の再会を喜びつつも終始落ち着かない夫の様子に、不信感を募らせたBさん。それから半年後。夫の2度目の一時帰国が決まりました。帰国前日、またもや夫から急用メールが。「明日の朝着くけど、家に一旦帰ったら、その日のうちに名古屋支店に行かないといけない」とのことでした。間違いない、絶対に何かある……と確信したBさん。それを裏付けるかのように、その夜、Bさんの自宅に一本の国際電話が。相手は外国人女性で、何やら聞いたことのない言語でまくしたてられ、一方的に切られたそうです。翌日帰宅した夫に、Bさんが昨夜のことを話し、問い詰めると、その口からは衝撃の事実が。なんと彼は、赴任先の現地女性と恋に落ち、婚約・同棲までしていたのです。その後、家庭があることがバレ、彼は家族の元に帰ることを禁じられたのだとか。謎の国際電話は、夫の一時帰国に激昂した女性からの宣戦布告だったのです。間もなくBさんは彼に離婚を言い渡しました。そうして、彼は“(現地)妻”の元へと“帰って”いったそうです……。ラブデス研究所の見解出ました。これはまさしく『ゲンチヅマー』ですね! 世界中のどこにでも潜む、インターナショナルなラブデスです。攻撃性の高さには個体差がありますが、恐ろしいのは、海外のどこかで夫がゲンチヅマーに捕らわれたとしても、日本にいる妻は気づきにくいという点です。また、物理的な距離があるために、対策を講じることが困難であることも、ゲンチヅマーの脅威と言えるでしょう。それにしてもこのゲンチヅマーは手が早い! そして強気ですね! Bさんのお話から察するに、この男、赴任して半年後にはすでにゲンチヅマーと交際、ともすれば婚約していますよね。そして、日本の家族のもとに帰ってはならない、といった掟まで定められている。彼もここまでは想定外だったでしょうね。海外赴任をいいことに、現地女性とひと時のアバンチュールを過ごすつもりが、いつの間にかゲンチヅマーにがんじがらめに……。何やってんだよ!それにしてもBさん、突然の電話で謎の女性から外国語で罵倒されるなんて、さぞ恐ろしかったでしょう。心中お察しします。今回のケースは、これ以上は考察など必要ないでしょう。こんなアホ男、喜んでゲンチヅマーにくれてやりましょう!!!……失礼、少々感情的になってしまいました。さて、ゲンチヅマーは一見対処することが不可能に思える、手ごわいラブデスです。しかし、優秀な我が研究所の研究の結果、ゲンチヅマーへの対処法を発見することに成功しました!それはずばり、夫を持たないことです。常に見える範囲に置いておいたとしても、勝手にどこかに行ってしまったり、ラブデスに横取りされてしまったりするのが夫というもの。ましてや、目の届かない海外赴任なんてもってのほか。盗まれやすいものは、最初から持たないのが正解ですね!今回もこれにて無事解決。それではまたお会いしましょう!
2019年05月20日誰もが夢見る幸せな結婚生活。だが世の中にはそんな幸せを食い物にするラブデストロイヤー、通称ラブデスが存在します。ここはラブデスの生態を解明し、襲撃から身を守るよう警告を促すために設立された研究所。明日は我が身かもしれません。心してご覧あれ……。文・イラスト 伊藤沙帆ラブデスファイル03 コンヤクハッキンドラーYさん(男性/当時27歳)は、職場の同じ部署の後輩と2年間の交際を経て、プロポーズし無事婚約しました。彼女は、社内男性みんなが憧れる高嶺の花。そんな彼女を射止めたYさんは、鼻高々だったそうです。「1日でも早くYさんのお嫁さんになりたい!」という彼女の想いに応えるべく、プロポーズ後間もなく両家顔合わせを済ませ、式場探しを始めたYさん。彼女の希望は都内の某高級ホテルでした。Yさんは、愛する彼女のためなら……と、相当な出費を覚悟しつつも、迷わず予約しました。それからは、仕事と式の準備に追われる日々。それに伴い、彼女とのちょっとした揉め事が増えましたが、Yさんはよくあることだと思い、気には留めませんでした。式まで2ヵ月を切ったある日。Yさんは、彼女から電話で、近所の喫茶店に呼び出されました。待ち合わせ場所に向かうと、そこにはただならぬ雰囲気の彼女が。恐る恐る話を聞いてみると、彼女は「本当にごめんなさい……。婚約を、なかったことにさせてください……」と言いました。ここ最近、多忙な様子のYさんを見て、これからの結婚生活に不安を抱いてしまったとのこと。心優しいYさんは、己の至らなさを責め、彼女の思いを受け止めました。その後、2人は婚約関係を解消しましたが、交際自体は続けることに決めました。もちろん結婚式はキャンセル。しかし時期も時期なので、支払った前金は返還されず、キャンセル料も支払うことに……。婚約破棄から1年後、Yさんは懲りずに、再び彼女にプロポーズをし、彼女も快諾。彼女が2度目の式場に選んだのは、都内の某高級レストランでした。式まで1ヵ月を切ったある日、Yさんは彼女に呼び出されました。一抹の不安を抱えながら待ち合わせ場所に向かうと、そこには、やはりただならぬ雰囲気の彼女が。今回も、「ごめんなさい……。やっぱり私、あなたとは結婚できない……」と言いました。婚約解消の理由も、前回と同じだったようです。話し合いの結果、婚約は解消するものの、交際自体は続けることに。しかし、Yさんが頑張って貯めたお金は、再び水の泡になってしまいました。そして、2回目の婚約破棄から1年後、一向に懲りないYさんは、3度目(!)のプロポーズをしました。今回の挙式はハワイに決め、準備を進めている最中、またもや彼女からの呼び出しが。「ごめんなさい。結婚はなかったことに……。あと、別れてください……」3度の婚約破棄を経て、ついに2人は別々の道へ。その後、彼女はというと、なんとYさんの後輩と結婚したそうです。一方のYさんは、今でも女性不信で、結婚できていないのだとか……。ラブデス研究所の見解これはこれは……出ましたね。襲撃されれば相当なダメージを受けることになる、非常に凶暴なラブデス、その名も『コンヤクハッキンドラー』ですね。 ハッキンドラーに関しては、過去いくつかの被害報告がありますが、今回はその中でも最悪のケースと言えるでしょう!Yさんの場合、3回も同じハッキンドラーから攻撃を受けているんですね。いい加減学習せぇよ……失礼しました。Yさん、お気の毒に!ハッキンドラーの恐ろしいところは、被害者の心だけでなく、お財布にも大打撃を与えることなんです。婚約指輪はもちろん、式場のキャンセル料も相当な額になることでしょう。また、我が研究所に寄せられるハッキンドラーの被害報告なのですが、不思議なことに、被害者の多くがハッキンドラーに憎しみを抱いていないのです。心理的・経済的に深手を負ったにも関わらず、僕の方に悪いところがあったはずだ……と、被害者が自身を責めてしまうことが多いようです。被害者に被害者意識を感じさせずに攻撃する点も、ハッキンドラーの恐ろしい特徴だと言えるでしょう。それでは、我々は、どうやってハッキンドラーの襲撃から身を守ればよいのでしょうか。我が研究所の長年の研究の結果、ずばり、独身でいること が最も確実だという結果にたどり着きました!婚約というエサをチラつかせなければ、ハッキンドラーは決して襲撃してきません。しかし、お付き合いを続けている限り、いつかは婚約の話になります。つまり、ハッキンドラーの魔の手から逃れるためには、最初から誰ともお付き合いせず、独身を貫き通すのが一番なのです!みな様も、ハッキンドラーの餌食になってしまわぬよう、くれぐれもご注意を。それではまたお会いしましょう。
2019年04月17日誰もが夢見る幸せな結婚生活。だが世の中にはそんな幸せを食い物にするラブデストロイヤー、通称ラブデスが存在します。ここはラブデスの生態を解明し、襲撃から身を守るよう警告を促すために設立された研究所。明日は我が身かもしれません。心してご覧あれ……。文・イラスト 伊藤沙帆ラブデスファイル02「ダブルフリンジャー」Mさん(当時35歳)は、学生時代からお付き合いしていた彼と結婚。共通の趣味が多く仲の良いふたりは、周囲も憧れる“理想の夫婦”でした。結婚から約1年後、Mさん夫婦は揃って自宅近所にあるテニススクールへ入会しました。程なくして、Mさん夫婦と同じように、夫婦でスクールに入会してきたTさん夫婦と出会い、スクールで顔を合わせているうちに親しくなりました。あるとき、同じマンションに住んでいるということが発覚。やがて、両夫婦はお互いの家を行き来するようになり、かなり親密なご近所関係に。Mさんの夫が出張で出掛けている日の夜、Mさんは、Tさんから食事に誘われTさん宅を訪ねました。すると、出てきたのはTさんの夫。Tさんは同窓会で帰りが遅くなるとのことでした。奥さんがいないのであれば……と、帰ろうとしたMさんでしたが、せっかくなので一杯どうですかとTさんの夫に引き止められ、一緒に食事をすることに。夫以外の男性と2人きりという状況に背徳感を覚えつつも、徐々に気持ちが昂ぶるMさん。Tさんの旦那さんのこと、実は結構いいなと思っていた……。いや、こんなことは絶対にダメ!ダメだけど……。葛藤していたMさんでしたが、気がつけば、Tさんの夫と禁断の関係に。その3ヶ月後、Mさんは突如夫から離婚を切り出されました。……バレた? 細心の注意を払っていたはずなのに……なんで?動揺するMさんでしたが、夫の口から出てきたのは耳を疑うような事実。「本当にごめん。俺、Tさんのことを愛してしまった。君も気付いていたよな? 俺、嘘はつけないんだ」え? 嘘でしょ? そっちもそっちで!?そう、Mさんは、自分の秘密を夫に隠すのに夢中で、旦那の異変には気付けなかったのです。間もなくMさん夫婦は離婚。ほぼ時を同じくしてTさん夫婦も離婚。両夫婦はパートナーをチェンジする形で、それぞれ再婚したそうです。ラブデス研究所の見解ほう。なんて親密なご近所付き合い。仲良しでうらやましい……じゃなくて!これは度々目撃されるラブデス、“ダブルフリンジャー”ですね。 希少性はそれほど高くないですが、ダブルフリンジャー4頭が一堂に会しているのは中々のレアケースです。今回のケースの凄いところは、被害者が出ていない点なんですね。本来ダブルフリンジャーの餌食になるはずの人が、これまたダブルフリンジャーだったなんて! 夢の豪華共演にしびれます。しかし、本来ダブルフリンジャーは非常に恐ろしいラブデスです。自分の家庭を失いかねないリスクを負ったラブデスなので、派手に攻撃してくることはありませんが、巧妙な手段でじわじわと獲物の家庭を侵食します。気付いた頃はもう手遅れ、というケースが後を絶ちません。また、本来は必ず2名の被害者が出てしまうのも恐るべき特徴ですね。我が研究所では、長年に渡り“ダブルフリンジャーに狙われない研究”を重ねてまいりましたが、おそらく、この方法が最も確実だという結果にたどり着きました。ずばり、独身でいましょう!どんな相手をパートナーとして選んでも、ダブルフリンジャーの攻撃を受けないという保証はありません。常にその恐怖におびえながら生活しなければならないのです。また、忘れてはなりませんが、自分たち夫婦がダブルフリンジャーに変貌する可能性もあるのです。しかし、独身でいる限りは、ダブルフリンジャーに夫婦生活を壊されることも、自らがダブルフリンジャーに変貌してしまうこともありません。確実な対処法がこれほどシンプルだったとは……。“灯台下暗し”とはまさにこのこと!みな様も、ラブデスたちの餌食になってしまわないよう、くれぐれもご注意を。それではまたお会いしましょう。
2019年03月31日誰もが夢見る幸せな結婚生活。だが世の中にはそんな幸せを食い物にするラブデストロイヤー、通称ラブデスが存在します。ここはラブデスの生態を解明し、襲撃から身を守るよう警告を促すために設立された研究所。明日は我が身かもしれません。心してご覧あれ……。文・イラスト 伊藤沙帆ラブデスファイル01「ハネムンジャマー」Aさん(当時29歳)は、友人の紹介で出会った心優しい男性と結婚、ハネムーンでヨーロッパ一周ツアーに参加しました。ツアー参加者は20名弱。その中に単独で参加している若い女がひとりいました。行きの飛行機で、Aさん夫妻と彼女は席が隣りになりました。とても感じが良く可愛らしい彼女と、Aさん夫妻はすぐに打ち解け、旅行中も一緒に楽しい時間を過ごしたそうです。Aさんが夫の異変を感じたのはハネムーンから半年後のこと。残業という理由で夫の帰りが遅くなる日が増え、休日出勤も頻繁にするようになりました。以前と比べ、心なしか態度も素っ気ない気が……。誠実さと優しさがウリのうちの夫に限って何もないはず……と思いつつもこっそり夫の携帯を見てみると、そこには浮気の決定的証拠が。LINE履歴やカメラロールに出てきたのは、そう。ハネムーンで仲良くなったあの女でした。嘘でしょ……あの女がいつの間に?Aさんが怖いもの見たさでLINEのやりとりをさかのぼってみると、なんとこの女、機内でAさんがトイレに立ったすきに、夫の連絡先を聞き出していたのです。女はハネムーン中に何度も夫に連絡を取り、帰国後のデートの約束まで取り付けていました。そして帰国後間もなく2人の関係がスタートし、現在まで続いていたのです。夫に女との関係を問いただすと、彼はあっさり認め、結婚から1年足らずでスピード離婚。Aさんは今も男性不信に陥っているそうです。ラブデス研究所の見解ほう……これは中々希少性の高いラブデス、「ハネムンジャマー」ですね。ハネムーン中という、ラブデスにとっても非常に難易度の高い状況下でよく……じゃなくて! Aさんお気の毒に。心中お察しします。それにしても行きの飛行機の中で連絡先を聞き出すとは。瞬発力と攻撃力の高さに脱帽します。いや逆に、隙ありなのかもしれません。ハネムーンなんて幸せの絶頂ですよ。そこで夫が他の女にうつつを抜かすなんて……。今回のケースだと、確かに夫は悪い。だけどね、人間という生き物は、飽きやすく、目新しいものには興味を惹かれるもの。ラブデスの魔の手にかかってしまう可能性は誰にでもあるのです。このラブデスは、そういう人間の心の隙を狙って攻撃してくるんですよ。新婚だろうが、幸せ絶頂のハネムーン真っ最中だろうが、ニューカマーの新鮮味には敵わないのです。ほとんどの人が、相手のことを多方面でよく理解した上で結婚を決めるわけですから、言い方は悪いですが、結婚を決めた時点で、その相手は最も新鮮味のない異性となっているわけです。ハネムンジャマーは、新鮮味とミステリアスさを武器に攻撃してくるので、新婚カップルは格好の餌食となるでしょう! 既婚男性はハネムンジャマーのフレッシュな魅力に弱いのです……。ここまでハネムンジャマーの恐るべき生態について詳しく解説してまいりましたが、研究に研究を重ねた結果、「ハネムンジャマーに狙われにくい人の3大特徴」が判明しました。それは、「孤独そう・わびしそう・みじめそう」このようなカップルをハネムンジャマーは苦手としているんです! 他人の幸福を横取りするラブデスですからね。こんな人たちには見向きもしないでしょう。ただし、そんな不幸せな人は、現状ではごく少数に留まっています。ほとんどの新婚カップルは、ハネムンジャマーへの対抗策を持っていないのです。それでは、このラブデス相手に我々はどう対処すればいいのでしょう。ずばり、「そもそも結婚しない」ことがハネムンジャマーから身を守る唯一の方法なのです! 結婚しなければハネムーンに行くことすらないのですから……。(えっ、無理ですって?!)みなさまも、結婚されるときはくれぐれもご注意を。すぐ近くに計り知れない凶暴性を隠し持ったラブデスが潜んでいるかもしれません……。それではまたお会いしましょう。© Gladskikh Tatiana/ shutterstock
2019年02月21日