初の黒人メジャーリーガーとして、数々の差別を跳ね返し、“ヒーローになった男”・ジャッキー・ロビンソンの真実を描いた『42~世界を変えた男~』。ロビンソンを強力なリーダーシップで引っ張る、ブランチ・リッキーを演じたハリソン・フォードの貴重なインタビュー映像がシネマカフェに届いた。彼が演じたブランチ・リッキーは、ブルックリン・ドジャース(現:ロサンゼルス・ドジャース)のジェネラル・マネージャーで、メジャーリーグで初めて黒人選手ジャッキー・ロビンソンと契約を結んだ人物だ。彼は契約を結んだだけでなく、ロビンソンと共に“やられても、やり返さない”勇敢さで人種差別と戦い、スポーツ界、そして世界を変えることとなる。ハリソン・フォードと言えば、『スター・ウォーズ』シリーズのハン・ソロや、『インディー・ジョーンズ』シリーズのインディアナ・ジョーンズがあまりにも有名だが、『今そこにある危機』のジャック・ライアン、『ブレード・ランナー』、『逃亡者』、『エアフォース・ワン』などアクションやSFで主演の活躍が目立つ、世界で最も有名なヒーロー俳優のひとり。ところが、彼自身は「あまり映画に興味がない」とそっけない。「本当は自分の個性を活かした性格俳優になりたかった。主演は才能があって見た目が良い奴がやるものだと思う」と映画や演技に対し消極的な発言をし、話題を呼んだこともある。また、その演技は、“どの映画でも同じ演技で、ちょっと困ったような、難しい顔をしている”などと呼ばれながらも、不思議と人気が落ちない大スターだ。そんな消極的な印象のハリソン・フォードだが、本作に対する意気込みはかなりのものだ。インタビュー映像では、出演を決めた理由を「まずは非常にいい脚本だった。とても力強い文学になっており、脚本を読んでいて、この役がもらえるなら、素晴らしいストーリーを語る絶好の機会になると思った」と熱弁をふるった。「ストーリーにはドラマもあり、強力な情緒もあり、役柄も今まで演じてきたものとはかなり対照的なものだった。ブライアン・ヘルゲランドの作品も何本か見ていて良いと思っていたし、とにかく脚本がよかった」と脚本にべた惚れなのだ。しかも、監督からのオファーではなく、実は監督の知らない所で自ら脚本を手に入れ「ブランチ・リッキーを演じたい」と逆オファーをしたそう。あまりに有名すぎる彼はふさわしくないと、断ろうとした監督には、「髪の毛も薄くし、ファットスーツを着て実際よりも30ポンド重いように見せかけ、ふさふさの目眉毛も付け、声を変えてやりたい」と直訴。結局、「“ハリソン・フォード演じるブランチ・リッキー”という方向性でやってしまうと映画にとってプラスにはならないから。観客には私の過去作品の影響を受けてほしくなかった。私と関連づけることなく、純粋のこのキャラクターを見てほしいと思った」という彼の言葉が決め手となり、この役を手に入れることになった。ジャッキー・ロビンソン夫人(91才)は、特殊メイクをし、声と話し方を研究したハリソン・フォードと初めて会ったとき、「当時のブランチ・リッキーにそっくり」だと本当に驚いたという。「私がキャリアをスタートさせたときに、主演俳優のチャンスがあるなんて全く思っていなかったし映画だけで食べていけるなんて考えもしなかった」というハリソン・フォードの考え方とは裏腹に、出演した『スター・ウォーズ』、『インディー・ジョーンズ』のシリーズはアメリカ国内だけでも、トータル約20億ドルの売り上げを叩きだしている。そんな彼が、これまで「あまり映画に興味がない」と語っていたとは思えないほど、強い入れ込み方で観客達や批評家達を唸らせ、アメリカ、さらには日本でも既に、賞レースに絡むだろうと多くの声が上がる本作。彼の映画人生を変える1作になることは間違いないだろう。『42~世界を変えた男~』は11月1日(金)より全国にて公開。(小泉浩子(cinema名義))■関連作品:42~世界を変えた男~ 2013年11月1日より全国にて公開(C) 2013 LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.
2013年10月31日日本時間の本日22日、ついに日米通算4,000安打を見事成し遂げたメジャーリーガー選手・イチロー。その彼も、いや全メージャーリーガーが年に1度、背番号「42」を背負う日がある…初の黒人メジャーリーガーを称えて。このほど、奇跡の実話を描いた『42~世界を変えた男~』の予告編が解禁となった。本作はただ一人、メジャーリーグ全球団の“永久欠番”となった史上初の黒人メジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ボーズマン)とドジャースのジェネラル・マネージャー、ブランチ・リッキー(ハリソン・フォード)が、白人選手以外には開かれることのなかったメジャーリーグ界の堅牢な門戸をこじ開け、“本当の自由とは何か?”“差別に屈しない強さとは何か?”を世界に示した真実のドラマ。公開された予告編では、オープニングから背番号「42」番を背負ったNYヤンキースのイチロー選手の姿が映し出される。実は、イチローとジャッキーには不思議な縁がある。2001年、当時シアトル・マリナーズに在籍していたイチローは「首位打者」と「盗塁王」を同時に獲得しているが、この2部門の同時獲得は1949年のジャッキー以来、実に52年ぶりの快挙だったのだ。だが、予告編前半で描かれるのは、トイレは白人選手とは別、シャワーも一人、観客からは大ブーイングを受け、街では住民たちに狙われ、敵チームからは野次られ、バッターボックスに立てば頭を狙われ、チームメイトからも煙たがられる…ジャッキーが受けた差別の数々が苦悩と共に描かれる。そんな、周りすべてを敵に回した中で、彼を支え、導いたのがハリソン演じる球団オーナー、ブランチ・リッキーだった。「必要なのは“やり返さない勇気”を持つことだ」「相手の低いレベルに自分を落とすな」など、リッキーが語るメッセージは現在を生きる私たちの心にも響き、深い感動を予感させる映像に仕上がっている。何より今回話題となっているのが、名優・ハリソンの熱い演技だ。これまで実在の人物を演じたことがなかったハリソンは、脚本段階でブランチに魅了されリサーチに没頭、自身の提案で特殊メイクも行ったという。その熱演ぶりは相当な入れ込み方で、海外では多くの観客や批評家を唸らせており、すでに今年の賞レースに絡むのでは?とのうわさまで。「本当にいい映画は、個人的な体験の視点で描かれるものではなく、歴史・真実を知り、何が人を動かすか、何が人に影響を与えるか、ということが理解され描かれたものだと思う」と本作について語るハリソン。「いい映画は普通の観客がこの映画を観たときに、ストーリーを体験し感情移入できるものだ。『42』はすべての要素を備えている。この映画で真実を知り、認識してほしい」と意欲的にアピールする。全米そして世界を感動させ、いまもなお伝説として語られる“やり返さない勇気”を示したヒーローたちの真実を、ぜひこの予告編から確かめてほしい。『42~世界を変えた男~』は11月1日(金)より全国にて公開。(上原礼子(cinema名義))
2013年08月22日キリンビールは、甘くなく、香味豊かなジンベースのストロングRTD「キリンドライ リッキードライジン&ライム/ドライジン&グレープフルーツ」が7月16日に発売されるのを記念して、7月15日(月・祝)、山手線車両を一編成貸し切った1日限りの「爽快DRY RICKEY BAR」をオープンした。近年、アルコール度数7%以上のストロング系RTD(Ready To Drinkの略。栓を開けてそのまま飲めるアルコール飲料)の伸張や本格的な食事とお酒が楽しめる立ち飲みスタイルのお店が人気になるなど、若年層や女性を中心に「気軽に、サクッと短い時間で効率的に食事とお酒を楽しむ」スタイルが注目されている。今回のイベントは、アルコール7%の満足な酔いをもたらすドライリッキーでトレンドの”サク飲み”を楽しみために、「SCRAP」が手掛けたリアル脱出ゲームで真夏の暑さを脱出し、香味豊かな爽快冷涼なジンのお酒を体験できる、史上初・山手線車内の1日限りの「爽快DRY RICKEY BAR」が企画された。イベントに参加した帯包彩加さんは「これまで何度かリアル脱出ゲームに参加しましたが、山手線貸し切りのような、こんな非日常の体験は初めてです。ゲームはなかなか難しかったですが、解きごたえがありました。駅の外に出ていたヒントに気づかなかったのが残念! タイムリミットギリギリで脱出した後のBARで飲んだドライリッキーは、スッキリ、甘くないという特徴がとても分かりやすいお酒で、本当に爽快でした!」とコメント。リアル脱出ゲーム初参加の森大典さんは「集合場所で『山手線一周貸し切って行う』と聞いた時、耳を疑いました。僕は初めてリアル脱出ゲームに参加したのですが、まさか一番に脱出できると思わず、最初にBARに入ったときはものすごくうれしかったです! ドライリッキーはまさに『ガッツリ、スッキリ、甘くない』! 山手線の中で飲めるなんてなかなかない機会でおもしろかったです!」と満足げな表情を浮かべた。なお、7月15~31日まで、「ドライリッキーからの挑戦」としてSCRAPによる難問を解くとドライリッキー100本などが総計2,050名に当たる「暑さを脱出せよ! 第2弾爽快体験キャンペーン」も実施されているので、こちらもチェックしておきたい。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2013年07月19日マーヴェル・スタジオのスーパー・ヒーロー・シリーズ、『マイティー・ソー』、『アベンジャーズ』のロキ役で一躍女子のハートを虜にしたトム・ヒドルストンが、今度は声優として“声”で魅了することが明らかになった。作品はディズニー製作の『ザ・マペッツ』(’11)の続編、『The Muppets…Again!』(原題)で、トムはグレート・エスカポという役を演じるとのこと。それ以上のキャラクターの説明はまだベールに包まれたままだ。『ザ・マペッツ』は、引退した人気マペットたちが、かつて一世を風靡したマペット・ショーの殿堂「マペット・スタジオ」の危機を前に再結集して救済に奔走する姿を、結婚間近の人間のカップル、ゲイリーとメアリー、そしてマペットたちとの絆を軸にユーモラスかつ華麗な歌と踊り満載で描き出した作品。その続編である『The Muppets…Again!』(原題)では、マペット界のカリスマ、カーミットたちがワールドツアーに乗り出すところからスタートし、ベルリン、マドリッド、ロンドンなどヨーロッパ主要都市でソールドアウトのショーを繰り広げていくが、そこに、カーミットのドッペルゲンガーである世界一の悪党・コンスタンティンが現れたことから大騒動になるというもの。トム・ヒドルストンは、すでに出演が決定しているリッキー・ジャーヴィス、ティナ・フェイ、タイ・バレル、レイ・リオッタらに名前を連ねることになる。(C) Getty Images(text:Mieko Nakaarai)■関連作品:アベンジャーズ 2012年8月14日より全国にて公開TM&(C) 2012 Marvel & Subs.
2013年03月26日バラク・オバマ米大統領の再選に早速セレブたちが喜びの反応を示している。今月6日(現地時間)行われたアメリカ大統領選挙で民主党現職のオバマ大統領が共和党のミット・ロムニー候補を破って再選し、オバマ大統領自身が「我々は1つです。それが我々の選挙活動の仕方であったし、1つであることがアメリカそのものなのです」とツイートしている。これに対し、米メディアが現地時間23時20分頃にオバマ大統領の再選を一斉に伝えると同時に、アメリカのセレブたちが大統領選への反応をツイートしている。映画界からは、ウーピー・ゴールドバーグが「オバマ大統領が勝ったようでとっても嬉しいわ。差別主義者や辛辣で嫌味な人間はみんなその嫌味も全部持ってどっかへ行ってしまって!私たちアメリカ国民はやるべき仕事があるから、あんたたちのバカバカしいことに付き合ってる暇はないの。オバマ大統領が勝ったからって、悪態ついて泣いてるような輩はこれからも絶対成功しないわ」とロムニー陣営に敵意むき出しでオバマ陣営の勝利を賞賛し、マイケル・ムーアも「これこそ…アメリカなんだ。2012年、旧態依然とした時代と政治手法はもうこれで正式におさらばしたんだ。これこそ真のアメリカの姿。世界のみなさんはまだ心配かもしれないけどね…」とツイートしている。さらに音楽界からは、レディー・ガガが「コロンビアでちょうどコンサートのステージから降りたとこよ!オバマ大統領、おめでとう!今夜、私たちはアメリカ人であることを誇りに思うわ!やった!!やった!やった!!世界に自由が満ちてくれて、これほど幸せなことはないわ」と大興奮で、リッキー・マーティンも「ミットさんよ、支持率47%だってことをお忘れなく。後4年間はオバマ大統領の時代さ!」と綴っている。また、テレビ界からはイギリス人のリッキー・ジャーヴェイスが「よくやった、アメリカ。あんたたちがちゃんとしてくれるって最初から分かってたよ。オバマ勝利!」とツイートし、ケリー・オズボーンも「神様に感謝。オバマ大統領が圧勝してくれたから、私は安心よ。これで第3次世界大戦はなくなっただろうし、同性愛のみんなもついに結婚できるのよ!勝利!」とオバマ大統領の再選に喜びを示している。さらに、熱狂的なオバマ支持者として知られるエヴァ・ロンゴリアも親友たちと共にオバマ大統領の勝利パーティーを開催していて、喜びに沸く写真と共に「友達と一緒に勝利に酔いしれているわ!泣いちゃったくらい!この国を前進させましょう!オバマ!」、「やったわ!オバマ再選!イエス!Yes We Can!」とツイートしている。
2012年11月08日ティナ・フェイとエイミー・ポーラーのコメディー女優コンビが2013年度ゴールデン・グローブ賞で共同司会を務めることになった。米コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」での共演経験があり、親友同士でもあるティナとエイミーが司会を務める同賞の授賞式は2013年1月13日(現地時間)に米NBC局で放送される予定だ。また、2010年から2012年まで3年連続でホストを務めたリッキー・ジャーヴェイスは、2011年には客席にいる複数のセレブを賞の最中に侮辱したことで批判を浴びており、翌年の2012年の授賞式後に自身の公式ブログで、同賞が終わる最後まで楽しめないことを理由に「4度目の司会はしない」と明言していた。「もう今年で終わりだよ。もう十分楽しませてもらったさ。これまで3回連続で司会をやらせてもらって嬉しかったよ。でも、オレのエージェントにもうこの仕事を二度と引き受けないように言っておいたんだ。スカイダイビングみたいなもんだよ。無事に生還できたって後からふり返るから、楽しめるんだ。素晴らしい体験だったよ」と語っている。さらにリッキーは2012年の授賞式でジョディ・フォスターのセクシャリティーや、ジャスティン・ビーバーの隠し子スキャンダルをネタにブラックジョークを連発していたが、「(同賞の)視聴者は素晴らしいよ。彼らはオレのジョークがただちょっと無礼で意地悪ってなだけで、全然人を怖がらせるものじゃないってことはちゃんと分かってると思うんだ」と語っていた。
2012年10月17日間もなく開催されるヴェネチア映画祭、カンヌ映画祭、そしてベルリン映画祭の世界三大映画祭で喝采を浴びながら、国内ではまだ日の目を浴びていない傑作映画を集めた、映画ファン垂涎の特集上映イベント「三大映画祭週間2012」が現在、ヒューマントラストシネマ渋谷を会場にして開催されている。その中でも目玉作品として注目を集めているのが、フランスの鬼才フランソワ・オゾンの日本初登場作品『ムースの隠遁』。女性を描くことに定評のある彼がかねてより切望していた「妊婦」の女優を起用した異色作。彼が妊婦を撮ることに衝動を駆られる理由とは?「僕はずっと、妊娠中の女優と映画を撮るのが夢だった。母性というテーマはよく取り上げてきたけど、妊娠に焦点を当てたことはなかったんだ」と語るオゾン監督。彼が言うとおり『8人の女たち』や『しあわせの雨傘』、『Ricky リッキー』など女性を家族の中心に据えた作品が印象的だが、これは明らかにそれとは異なる挑戦だった。「キャスティング担当のサラ・ティーパーが知らせてくれたんだ。『いまパリには妊娠中の女優が3人います。1人はイザベル・カレです』ってね。イザベルの若々しいイメージは想像を掻き立てる。僕には彼女が大人の女性にすら見えないよ。すぐに彼女に電話して、会って映画のことを話したんだ。彼女は2日考えてからOKしてくれた。それから3ページの概要を読んでもらって、定期的に会いながら脚本を書いた。彼女は妊娠6か月で、僕はいま感じている感情や感覚を聞かせてくれ、と言ったよ。僕にはある程度の直感はあるけど、具体的で詳細なことが知りたかったんだ。この動作ができるか、何を食べているか、どうやってベッドから出るか、どんな夢を見たか。(主人公)ムースと彼女は全然違うけれど、イザベルは本当にストーリーを豊かにしてくれたし、僕らに刺激を与えてくれた」。では何故、オゾン監督は「妊婦」を撮りたいと思うのか?監督を虜にするその魅力とは――。「体型が変わって、丸くなる…魅力的で、セクシーで、不思議だよ。みんなが妊婦に触りたがる!イザベルには初めに言ったよ。『君の体、君のお腹をエロティックに撮りたい。それが目の前に存在している必要がある。僕は君のお腹を撮ったり、撫でたりするよ。それがこの作品のテーマなんだ』ってね。新たなスタートがこのお腹から始まる。ムースとポールの関係は、このお腹を中心にして形作られるんだ。お腹が、2人の繋がりの根底にあるんだよ」。イザベル・カレが演じる女性・ムースは愛する恋人・ルイの子供を宿していることに気づく。だが、それはルイがドラッグの過剰摂取で命を落とした後のことだった。恋人を失い、途方に暮れた彼女は遠く離れた郊外へと逃げ出し、一人きりの生活を始める。だが、そこへルイの弟・ポールが訪れ、いままでに感じたことのない感情が、彼女の中に芽生える――。「監督にとって、女優が自制心を失う瞬間を捉えるのは、とても心打たれることだよ」と話すオゾン監督だが、イザベルとの共同作業はどんなものだったのか?「準備期間中は、イザベルは自分自身とムースのキャラクターを簡単に区別できた。でも撮影が始まると、それが難しくなってきたんだ。彼女はセリフを言ったり、場面を演じている自分と、自分自身の妊婦体験とがズレていることに気づいた。例えば、私生活で彼女はいつもお腹の赤ん坊とコミュニケーションを取り、お腹に触ったり話しかけたりしているのに、撮影中のムースは胎児には全く無関心だし、たまたま妊娠しただけで、赤ん坊のことは主として自分が愛して失った男に繋がるものとしてお腹に置いている。やがて彼女の中で、役と彼女自身の境界が曖昧になってしまい、よく不安定になったよ。肉体的あるいは精神的に、最後までやれないんじゃないかと思ったんだ。でも僕は信じていた。彼女は信頼できる女優だからね。女優が自制心を失う瞬間はとても心打たれる。感情が本人の意思から外れてしまい、それに抵抗しようとするけど結局は諦める。この貴重でうそのない、ごく私的な部分を見せてくれるんだ」。母になること、そこに横たわる「母性本能」の捉え方についてもオゾン流の問いかけがなされている本作。主人公・ムースの妊娠というプロセスは、「一時的な通過点、中継地点でしかない」という、その真意とは?「僕らの社会では、母性がひどく理想化されて、すごくポジティブなイメージと結びつけられている。でも僕は、実際はもっとずっと複雑な場合があるということを示したかった。母性本能というのはあって当然のものじゃない。ムースは自分の妊娠を、子孫を残すためのプロセスだとは思っていない。彼女にとってこの妊娠は、何よりもルイの死を受け入れるための手段であり、哀悼の道具なんだ。命を宿し、産むということが、恋人を亡くした痛みや理不尽さを和らげる手段になる。この作品は、僕にとって“癒し”のプロセスの物語さ。映画の終わりには、ムースは自分に“生きる”とか“愛する”という選択ができることを知り、ポールは自分の過去を理解して意味を見出す。ムースの物語が彼の物語にもこだましているんだ」。失った命、新たな命を通して芽生える優しい瞬間、そして気づく“不在の絆”。ちなみにこの失われた命、ムースの恋人・ルイを演じるのは、『ぼくを葬る(おくる)』に続くオゾン作品となるメルヴィル・プポー。「彼に電話するのは少し気が咎めたんだ。僕は『ぼくを葬る(おくる)』で既に彼を死なせている。なのにまた彼を殺すんだ、しかも今度は始まって15分でね(笑)!だけど、この役にはほかの誰もイメージできなかった」は監督の弁。幸いメルヴィルはこの話を即答で引き受け、冒頭から最後まで、たしかな余韻を本作に残している。オゾン監督が「妊婦」を通して描く永遠のテーマ。ぜひこの貴重な機会に確かめてみては?「三大映画祭週間2012」は8月24日(金)までヒューマントラストシネマ渋谷にて開催中。「三大映画祭週間2012」期間:8月24日(金)まで会場:ヒューマントラストシネマ渋谷※テアトル梅田ほか全国にて順次開催公式サイト:■関連作品:ムースの隠遁 2012年8月4日(土)より24日(金)までヒューマントラストシネマ渋谷にて公開© Eurowide-FOZ
2012年08月08日1980年代から“RUN DMC”や“Beastie Boys”、アンディ―・ウォーホル(Andy Warhol)といった名だたるアーティストの撮影に携わったことで知られる、ニューヨークを拠点に活動中のストリートフォトグラファー・Ricky Powell(リッキー パウエル)の個展が、東京・六本木のメルセデス・ベンツ・コネクションにて開催される。氏の個展が東京で開催されるのは今回が初となり、メルセデス・ベンツ日本株式会社主催のもとメルセデス・ベンツ G-classによってコラボレーションにて実現されたもの。Mercedes-Benz G-class初日にはリッキー本人による写真説明“WORLD FAMOUSRICKY POWELL SLIDE SHOW”も行われる。さらに、個展の開催を記念してファッションブランドとのコラボレーションアイテムをZOZOTOWN内にて販売。レディースブランドからはプランピーナッツ(plumpynuts)ほか、メンズブランドからはフェノメノン(PHENOMENON)、アタッチメント(ATTACHMENT)、ベドウィン&ザ・ハートブレイカーズ(BEDWIN&HEARTBREAKERS)といったいずれも東京を代表するブランドたち。アイテムは6月15日(金)まで受注を受け付け中。是非 特設サイト でチェックしてみよう。【イベント概要】開催日時:2012年6月8日(金)~15日(金) ※2012年6月7日はレセプションのみ会場:Mercedes-BenzConnection住所:東京都港区六本木7-8-1コラボレーションブランド・ATTACHMENT・BEDWIN&HEARTBREAKERS・COREMETALCRAFT・DELUXECLOTHING・FRANK・METAFHOR・MOM AVANTGARDE・PHENOMENON・plumpynuts・SWAGGER BLACK PLATINAM・TwoPoleRhythmkingRicky Powell : Photographerリッキー パウエル : 写真家1980年代後半から、ニューヨークを拠点に活動中のストリートフォトグラファー。写真の世界に魅入られたRicky Powellは、知り合いで当時はまだ新進気鋭のアーティストだったBeastie Boysと単なる遊び仲間として行動を共にし、彼らのプレイに顔を出したりしていた。その後Beastie Boysがフロリダで行われるRaising HellツアーでRun DMCと共演することになったのを聞いた彼は、かき氷の行商人の仕事を辞め、Beastie Boysのツアーバスに乗り込んだ。彼の撮ったツアーの写真は反響を呼び、その後’87年のLicense to Illツアー、Run DMCとのTogether Foreverツアー、そして‘92年のCheck Your Headツアー、‘94年の Lollapaloozaでの大成功へとつながることとになる。Rickyは非公式なDef Jamのクロニクル編集者として認知されており、また周知の通りLicensed to IllとPaul’s Boutiqueの時代の4番目のBeastie Boysメンバーとして知られている。彼の作品はNew York Times、New York Post、Daily News、Village Voice、Time、Newsweek、VIBE、Source、Rolling Stoneその他数多くの媒体で出版されている。最近ではWest Villageを拠点に活動している。これまでにそれら作品を編集した写真集を3冊出版している。そして、プロとしての活動25周年を祝した個展が各地で開催され好評を得ている。 リッキー パウエル公式サイト
2012年05月21日ゴールデン・グローブ賞授賞式開催記念特集最終回は、授賞式での素敵モーメントをふり返っていきます。ハリウッド中のスターが一堂に会する中、やはり注目を集めたのはコメディ・ミュージカル部門の作品賞に輝いた「glee/グリー踊る♪合唱部!?」の面々。同じくドラマ部門で作品賞を受賞した「BOARDWALK EMPIRE」は製作総指揮のマーティン・スコセッシが新作映画の撮影で欠席、また主演男優賞を受賞したスティーヴ・ブシェミに次ぐメインキャストのマイケル・ピットやマイケル・シャノンも参加しておらず、少々淡々としたものがありました。一方、「glee/グリー踊る♪合唱部!?」の面々はスタッフからキャストまでが大集合し、作品賞受賞の際には壇上が関係者であふれかえったほど。さらには、クリス・コルファーの助演男優賞受賞にリー・ミッシェルが感激の涙を浮かべ、ジェーン・リンチの助演女優賞受賞と小粋なスピーチに脚本家が歓喜。今回の授賞式の泣き所は全て「glee/グリー踊る♪合唱部!?」にアリ!とも言えるかもしれません。それ以外の泣き所と言えば、ミュージカル・コメディ部門主演男優賞受賞の瞬間も!同賞に輝いたのは「ビッグバン★セオリーギークなボクらの恋愛法則」で天才物理学者のシェルドンを好演しているジム・パーソンズですが、彼の受賞を発表したのは共演者のケイリー・クオコ。ドラマ内ではシェルドンの隣人にして、彼から馬鹿にされてばかりの美人ウェイトレス、ペニーを演じているケイリーが、自ら開けた封筒に書かれている受賞者名に言葉を失う光景はまさに素敵モーメント。壇上に上がってきたジムとの長い抱擁も会場を感動に包みました。また、素敵モーメントならぬ小粋モーメントの筆頭に挙げられるのは、映画部門の脚本賞発表時。この日は、辛辣ジョークをこよなく愛するコメディ俳優にして司会のリッキー・ジャーヴェイスがありとあらゆるスターをメッタ刺しにしていましたが、そんな彼に対し、最もスマートな切り返しを見せたのが脚本賞プレゼンターのスティーヴ・カレルとティナ・フェイでした。スティーヴは降板を表明している「The Office」で主演男優賞、ティナは「30 ROCK/サーティー・ロック」で主演女優賞にノミネート。毎年、授賞式で笑い所を提供してくれる彼らだけに、いつまでもゴールデン・グローブ賞に関わる存在であってほしいです。ちなみに、「30 ROCK/サーティー・ロック」と言えば、ドラマ内で超ポジティブなテレビ局案内係ケネスを演じているジャック・マクブレイヤーも授賞式に参加していたのですが、時折映し出される彼の笑顔の素敵なこと、素敵なこと…。自分には全く関係ない部門でも、受賞者を讃えて満面の笑み&大きな拍手!ケネスはテレビ局の外に出てもケネスでした。最後に、笑顔と言えば、授賞式には進行のアシスタントを務めるミス・ゴールデングローブが毎年スターの子供たちの中から選ばれますが、今年のミスは「クリミナル・マインド」のロッシことジョー・マンテーニャの娘ジア。娘の活躍を見守る父マンテーニャのニコニコ顔も微笑ましい限りでした。(text:Hikaru Watanabe)© ロイター/AFLO■関連作品:30 ROCK/サーティー・ロック [海外TVドラマ]© 2006/2007 Universal Studios. All Rights Reserved.クリミナル・マインド [海外TVドラマ]© ABC Studios and CBS Studios, Inc.glee/グリー踊る♪合唱部!? [海外TVドラマ]© 2009-2010 Twentieth Century Fox Film Corporation.All Rights Reserved.ビッグバン★セオリーギークなボクらの恋愛法則 [海外TVドラマ]■関連記事:シネマカフェ的海外ドラマvol.182いま熱い!米ドラマ界の若手スターたち「glee」がGG賞2年連続作品賞で3冠!アル・パチーノ、S・ブシェミらも受賞シネマカフェ的海外ドラマvol.1812011年ゴールデン・グローブ賞の注目ポイント!マドンナ、ガガの次は誰に期待?「glee」で“聴いてみたい曲”投票発表!ベッキークリスマスイブのプロポーズに答えは…?相手はあのM-1敗退芸人
2011年01月27日繊細で美しい映像と愛情とユーモアにあふれるストーリー展開で日本でも人気の高いフランス人監督フランソワ・オゾン。ベルリン国際映画祭でコンペティション部門に出品され、喝采を浴びた『Ricky リッキー』で彼が描いたのは“家族”そして“母性”。翼の生えた赤ん坊・リッキーの存在を通じて、それまでバラバラに、自分本位で生きてきた一家が互いに向き合い、不器用ながらも少しずつ本当の家族となっていく姿を描く。このファンタジーを通じてオゾンは何を訴えかけたのか?その思いを語ったインタビューが到着した。ひとり娘を連れて再婚し、息子を生むも育児に追われイライラする母・カティ。仕事に行き詰まりカティと衝突を繰り返した挙句に家を出る夫のパコ。母の再婚と弟の誕生で母親を取られたような気持ちを抱える娘のリザ。そんな状況でなぜか、赤ん坊のリッキーの背中に天使のような翼が!いつものようにと言うべきか、本作でも監督お得意のファンタジー要素とユーモアがたっぷりと盛り込まれ、それぞれが複雑に絡み合う。監督の意図は?「ローズ・トレメインによる今回の原作小説には、僕が好きな皮肉が散りばめられていて、映画の中でもそれらを残したいと思っていたんです。物語がファンタジーになり過ぎたり、ハッピーになり過ぎたりしたら、ユーモアを挟んでテンションを和らげ、シーンにある一定の効果を持たせました。リッキーはほかの赤ちゃんとちょっと違いますよね。そんなリッキーを、カティとリザが大喜びで世話をするんです。この映画に込められた皮肉は、非現実的な状況なのに、ありきたりな母性を見せるところから生まれているんです。どんな親でも、子供が何かできるようになった瞬間を目にすると大喜びしますよね。例えば、子供が最初に笑うときやゲップをするとき、それに、最初の一歩を踏み出すときなど。親というのは赤ちゃんの体を敬愛するものです。リッキーの背中の翼は、そんな親たちの気持ちや行動を強調しているのです。カティにとって、リッキーの翼はハンディキャップではないんです。それは贈り物で、価値のあるものなんですね。彼女はその翼を面白がっているし、気に入っているんです」。「僕は女性を描くのが好きなんです」と監督。確かに本作は家族の物語であると同時に女性を魅力的に描いた作品でもある。監督は、自身の初期の作品『海をみる』を引き合いに、こう説明する。「『海をみる』とは違う形で“母性”をテーマにした作品を撮りたかったんです。『海をみる』では、良き母と鬼のような母という正反対の女性を通して、2つの母性本能を描いたんです。今回の作品では、この2つの要素がカティというひとりの女性の中に描かれていて、彼女の複雑な母性の変化が表現されているんです」。ちなみに監督自身は“母性”と“父性”の違いについてどのように感じているのだろう?「子供は母親の体から生まれるので、母親は子供のことを自分の一部のように考えることが多いのではないでしょうか?この生理学的な面と身体的な関係はとても興味深いと思います。原作小説の中で、パコという男は、お金をむしり取りに戻ってくるような、とても感じの悪い男として描かれていますが、映画の中では複雑なキャラクターとして描かれています。僕は、この男女の関係を小説よりも詳しく描きたかったんです。パコはリッキーを使って、ジャーナリストからお金を稼ごうとします。でもこれは、単に図々しいのではなく、正当な理由があるからなんです。家を買うためとか、良い環境でリッキーを育てるためのスペースを得るため、とか。確かに、パコが(家出から)戻ってくるのは、リッキーが珍しい子供だと分かってからだけれど、彼には父性を発達できるような機会も時間も与えられなかったんです。彼は、リッキーが生まれてすぐにカティに追い出されてしまったのですから。“男が父親になれるチャンスはどのくらいあるんだろうか?”、というのがこの映画が問いかけるテーマのひとつでもあるんです」。母そして女の視点で観るか?それともオトコ目線で観るかによっても作品の捉え方は変わってきそう。もちろん、複雑な内面を宿した登場人物たちを見事に体現したキャスト陣にも注目してほしい。もちろん、リッキーの愛らしさにも!■関連作品:Rickyリッキー 2010年11月27日よりBunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開© Eurowide Film Production - 2008 - Tous droits reserves
2010年11月29日