年中からサッカーしているのに3年生になっても未だにドリブルもリフティングもできないし本人も下手で向いてない自覚あり。自分も精神的に疲れてきた。体験でテニスに連れて行ったらサッカーより楽しそうだったし、新しい道を用意したうえで向いてないサッカーを辞めさせるのってあり?というご相談をいただきました。「向いてない」「周りより下手でつらい」という悩みを抱える保護者は多いと思います。向いていることをさせたら生き生き楽しそうになるのでしょうか。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、ご自身の体験とこれまでの取材で得た知見をもとにアドバイスを送ります。(構成・文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<発達がゆっくりで、からかいの標的にされる息子。私が辛いのでやめさせたい問題親が変われば子どもも変わる!?サッカー少年の親の心得LINEで配信中>><サッカーママからの相談>年中から習い事でサッカーをしていますが、3年生(9歳)なのに未だにドリブルもリフティングもできないし、強いキックもできません。本人も自分が下手で向いていない自覚があるようで、前向きに練習に取り組む様子がありません。帰宅時間ばかり遅くなり、練習をしないので疲れず寝るのも遅いです。私も精神的に疲れてしまい、辞めさせる方法を探しています。先日、テニスの体験に連れて行ったら「面白い!やってみたい」と笑顔で汗をかいていました。正直、サッカーでは汗をかくほど真剣に取り組んでいませんでした。新しいスポーツへの道を用意した上で、向いていないスポーツを辞めさせることは、やめ方としてありでしょうか。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。さまざまな葛藤があるなか、こちらを頼っていただきありがたいです。先に結論からお伝えしましょう。お母さんは、向いていないスポーツをあきらめさせ、他の競技に替えさせることに親が関与していいのかどうかを悩まれているようです。個人的にはOKだと考えますが、ひとつ条件があります。■転向するにしても、子ども自身サッカーが楽しいか、今のチームで続けたいか聞いてみて年齢的に3~4年生です。息子さん自身に「サッカーが楽しいかどうか」「今のチームで続けたいのかどうか」「他のチームで続けたいのかどうか」を尋ねてください。聞いてみた結果、お子さんが「楽しくない」と答えれば、「お母さんは、君が楽しいことをやってほしいと思うよ。楽しくやっている姿を見たいな」と話してはどうでしょう。そのうえで「こないだ行ったテニスをもしやりたいのなら、テニスに替えてみるのはどうかな?」と提案してもいいでしょう。また、両方やってもいいのです。■本人も向いてないのは自覚している、親が重ねて否定しないことそうではなく「楽しくないことはないんだけど......」と決めかねるようであれば、彼が自分で決めるのを待ってあげたほうがいいと思います。その際、ハッキリしなさいとか、努力してないよねといった否定する言葉を投げるのはやめてください。ご相談文にも「本人も自分が下手で向いていない自覚がある」と書かれています。なかなかうまくいかず自信がないことに取り組むことはそう簡単ではありません。できれば「毎回サッカー休まずに行って偉いね。何でも続けられるってすごいことだよ。でも、いやだったらいつでも言って来てね」といった話をしてあげてほしいです。つまりは、サッカーをやめるのも、テニスに転向することも、すべて息子さんに決めさせるのです。その際「テニスのほうが向いていると思うよ」とか「サッカーはこれ以上やっても無駄かも」などとネガティブなことを言ってはいけません。何かできないことや足らないことは本人がわかっています。前述したように、否定しないことが重要です。結論を伝えたところで、あと2つほどアドバイスさせてください。■アドバイス①ほかの子よりできないから辞めさせたいの?何のためにサッカーさせたのか今一度考えてみてひとつめ。サッカーを、何のためにやらせていますか?そこをぜひ考えてみてください。スポーツの語源は「遊び」です。英会話や習字はある程度上達を目的に取り組むことかもしれませんが、私自身はそれさえも小学校の間は遊び感覚でいいと思っています。子どもが自分がやっていることに対し、いつ目覚めるか、半端なく意欲的になるかはわかりません。子ども自身が「続けたい」と言う間は、経済的なことなど負担がOKであれば続けさせました。スポーツは特に、習熟度や達成度を他の子どもと争う側面が多々あります。なぜならば、お母さんが「ドリブルもリフティングもできないし、強いキックもでできない」と思っている息子さんより、もっと下回る子どもだっているでしょう。もしそんなふうに習熟度が遅い子どもたちが集まっていれば、その中で息子さんは「できる子」になります。習熟度を争うのではなく、好きなこと見つける季節だと考えませんか?何か好きなことがあれば、毎日ウキウキ過ごせて人生は充実します。学業やスポーツの習熟度など目に見える認知能力ではなく、積極的であったり、誰とでもかかわれる社会性があったり、思いやりといった非認知能力にも目を向けましょう。■アドバイス②向いてるか、向いてないかで決めるのはやめようふたつめ。お母さんの「辛さ」はどこからくるものなのでしょうか。ご相談文に「私も精神的に疲れてしまい」とあります。もし、お子さんがチームのエースでレギュラーなら疲れないのかもしれません。そう考えると、息子さんはテニスをやるにも何をするにも優秀でないと、お母さんはまた参ってしまいます。お母さんの気持ち、少しはわかります。私も子どもが試合に出られないと悔しく思いました。が、一番悔しいのは息子なのだと思い、そのような態度を出さないよう気をつけました。もちろん子どもはわかっていたと思います。そのように、親は愚かな生き物です。私自身、愚かな自分との戦いでした。したがって、子どものスポーツに対して「向いているか」「向いていないか」といった物差しを当てるのはやめましょう。「何か秀でたものを」と思うのは親心かもしれませんが、先ほど申し上げたようにスポーツをさせる意味を考えてください。物差しを当てられた子どもは、おのずと自己肯定感が下がります。楽しく意欲的に取り組めているかという点に注目してください。■寝る時間を早くするには、練習時間を確認してクラブを選んだほうがいい(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)また「帰宅時間ばかり遅くなり、練習をしないので疲れず寝るのも遅い」と書かれています。みんなと一緒に練習をしているはずなのに「練習をしないので」という意味がよくわかりませんでした。所属しているクラブでは上手な子にしか練習をさせないのでしょうか。また、「疲れていないから寝るのも遅い」とありますが、スポーツをしない子でも早寝早起きの習慣がついている子は早く寝られます。食事やお風呂の時間を早くするには、サッカーの練習が遅くまでやっているクラブは避けたほうがいいかもしれません。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキルビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。
2024年10月09日こんにちは、韓国在住ライターの二俣愛子です。「エアジェットリフティング」の施術をアイライン美容外科で受けてきました。効果・痛み・ダウンタイムはいかに?韓国美容施術レポ!新感覚すぎた「エアジェットリフティング」先日、何気なく友人が撮った写真を見て「うわぁ~」と恐れおののきました。そこには、顔の下半身がずどんとたれ下がって、疲れきっているおばさんがいました。そのおばさんは、そうです、この私です!日々の忙しさにかまけて、スキンケアや肌管理が少しおざなりになってしまっていたと自覚はしていたものの、ただ毎日鏡を見ているだけではわからない自分の老いをしみじみと感じ「こ、これはもう1ミリたりとも油断できんぞ!」と気を引き締めるのと同時に、自分の怠惰を呪いました。とにかく肌のたるみをどうにかしたく、韓国でリフティング施術「エアジェットリフティング」なるものを受けてきましたので、レポートしたいと思います。超個性的!エアジェットリフティングって知ってる?©二俣愛子今回は、今までよりもしっかりとリフティング効果が感じられるものはないかと、SNSを血眼になってリサーチ。すると、今まで私が受けてきた美容施術のなかでも異なるアプローチでリフトアップできるという施術「エアジェットリフティング」なるものにたどり着きました。「エアジェットリフティング」は、こめかみから薬剤を空気圧によって注入することで、薄くたるんだお肌でも真皮層のコラーゲンの再生を促してくれるため、たるんだ肌に弾力を与えてくれるというもの。また、一般的なリフティング施術とは異なり、エアガンのようなものでドスドスと打っていきます。そのため施術直後は、こめかみあたりに点状の傷がたくさんできるようなのですが、髪の毛で隠れるとのこと。実際に受けた人のレビューをのぞくと「瞬時にリフトアップして大満足!」と評価が非常に高く、さらに、痛みがひどくはない模様。そして、韓国の有名なYouTuberさんが、鼻息荒くおすすめしていたのが後押しになって、早速「エアジェットリフティング」ができるクリニックを探してみると、「エアジェット2」が最新のもので、さらにより効果を高めた「スリージェットリフティング」というものを提案しているところがあり、そちらで施術を受けてきました。カウンセリングがとても丁寧!©二俣愛子今回はお初のクリニック。足を運んでみると、雑居ビルの中にあるクリニックで施設自体も古め。最初は「大丈夫かな」と若干不安でしたが、カウンセリングを受けて印象がガラリと変わりました。カウンセリングは、知識豊富な女性の室長さん(ドクターではない)が担当してくださいましたが、私の肌悩みに本当に親身になって聞いてくれ、もともと肌が薄くたるみのある私の肌に合う施術について詳しく教えてくださり、今回受ける施術が、なぜ私の肌によいのか、理由をきちんと説明してくださったのでしっかりと理解した状態で受けられたのがよかったです。また、一般的なエアジェットは薬剤としてブドウ糖を注入しますが、ここはヒアルロン酸を注入することで持続期間を長く保つことができるのだそう。さらに、薬剤には麻酔成分も入っているので、痛みを感じにくいのだとか。今回のパッケージは、これに加えてお肌のタイトニング効果を高めてくれるスリーディープという高周波レーザーも一緒に当ててくれるものでした。期待が高まります!麻酔なしで打っていく。大きな音にびっくり!©二俣愛子レビューに書かれていた痛みの感じ方は人それぞれでしたが、大半がそこまで痛くないというもの。「待てよ!そこまで痛くないってことは、ある程度は痛いってことだよね?」と、覚悟をしてのぞみました。施術は、年配の男性の院長先生が担当してくださいました。一般的なクリニックだとカウンセリングをしてすぐに施術に入るということも多いのですが、まずは先生とも施術前に私の悩みをしっかりと共有して、どの部分を集中的に改善したいかについても鏡を見ながら親身に聞いてくださったので、本当に安心できました。先生いわく、10回までは痛いですよとのこと。早速エアジェットをこめかみに当てました。バチンバチン!と、衝撃音と言っても過言ではないくらい大きな音が耳元に響くのと、はじめは結構痛い!ただ、先生がおっしゃったように10回目までは痛いのですが、11回目から本当に痛みが和らいでいきました。麻酔が効き始めたよう。「先生、すご!」と心の中で思いつつ、片側100回ずつ打ちました。麻酔が効いたあと、まったく痛みがなかったというわけではないのですが、全然耐えられるレベルでした。寝ながら受けられる?スリーディープ©二俣愛子すでにエアジェットをしてこめかみ部分が腫れてお肌がひっぱられているような感覚がありながらも、そのまま別室に移動して、高周波のスリーディープを受けました。高周波レーザーといえば、LDMや美顔器のような機械でお肌に何度もすべらせるようにして熱を加えていきます。高周波系では過去に、ボルニューマとチタニウムリフトを受けたことがありますが、そのときよりも痛みはかなり少なかったです。ぽかぽかとあたたかなもので、ときどき「あつ!」と驚くことがある程度。時間は20分ほどしていたと思います。ビフォー&アフター大公開!©二俣愛子実際に受けた直後からリフティング効果がすごかった!上の写真は、施術直前と直後の写真です。写真で比較してみるとその差は歴然ですよね。©二俣愛子また、上の写真は、施術前~2週間後の経過を撮ったもの。先生によると4日目にはヒアルロン酸が一度下がってくるので、たるみを感じるとのことでしたが本当にその通りに。また、人によって効果の出方には差があるものの、効果がしっかりと感じられるのは2週間後。そこから4~6か月ほど持続するのだそう。私の場合は、2週間後に以前よりもほほがふっくらとしてきてコケていた部分が気にならなくなったと実感しました。ただ、直後のようなパンと張りついたような状態はキープできず、全体的なほほのたるみはもっと引き上げたいと思った次第です。ダウンタイムは約1週間!直後はカレーパンマンみたい!©二俣愛子私の場合、施術直後、こめかみあたりを中心に片側だけぷっくりと腫れ、一時的に顔がカレーパンマン状態に。レビューを見ると、ほとんど腫れがでなかった人も多いようです。また、こめかみにできた傷跡が思ったよりも目立ちました。©二俣愛子施術をした日は、帽子を目深にかぶりマスクをしてから保育園に子どもを迎えに行ったのですが、子どもがすぐに傷に気がつき「先生!ママのここ見…!」と、叫んだので慌てて子どもの口を押えて、そそくさと保育園をあとにしました。腫れは2日ほどで落ち着きましたが、傷は2~3日ほどでかさぶたになりぽろぽろ落ちはじめ、完全に綺麗になるまでには1週間ほどでした。即効性のあるリフトアップにおすすめ!「エアジェット2」と「スリーディープ」を組みわせたこのクリニックのオリジナル「スリージェット」のレポでした。40歳を超えた私のお肌ではレーザーでリフティングするのには限度があることは承知していましたが、この即効性には驚きました。ただ欲を言えば、もっと効果を実感したいというのが正直なところ。私に合う施術は何かを求めて、次回も気になる施術を受けてみようと思います。Informationアイライン美容外科住所:ソウル特別市江南区鶴洞路342 2階(203号)(203, 342, Hakdong-ro, Gangnam-gu, Seoul, Korea)営業時間:10:00~19:00(水14:00~19:00、土10:00~16:00)定休日:日予約:カンナムオンニ(アプリ)から可能<筆者情報>二俣愛子韓国・ソウルを拠点に、雑誌やWEBメディアでライターとして活躍中。コスメからグルメまで最新の韓国事情をインスタグラムでもお届け。ジュエリーショップ「owol.」(@owol__official)のディレクターも務める取材、文・二俣愛子
2024年06月04日リフティングなど技術が苦手なのに自主練を促しても「できない」と言う。上手くなりたいと言うのにアドバイスすると怒るし、褒めると調子に乗り練習しない。他の子はどんどん上手くなっているのに、自分の子は口だけで上達しないのでどうしたらいいかわからない。どうすればいい?というご相談をいただきました。スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見やご自身の体験をもとに、いまお母さんがどうすればいいか3つのアドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<他の子と差をつけられている息子、試合に出るとがっかりされるしツライ。我が子を心から応援できません問題<サッカーママからのご相談>初めまして。息子は小3年生でサッカーを始めて1年半になります。近所の子どもたちが集まっているサッカーチームなので、友達と一緒にできると言って通っています。リフティングなどの技術が苦手で、自主練をしようと言っても「できない」と言ってすぐに辞めてしまいます。試合や試合形式の練習では積極的にボールを行かずに来たボールだけ蹴るという感じなので、やる気がないと思われており、すぐにコートから出されてしまいます。本人に聞いても「やってるもん」しか言いません。親もサッカー経験がなく、仕事で時間がないため具体的なアドバイスができず。本人がもっと上手くなりたいというので別のサッカースクールにも通わせているのですが、そこでもすぐに友達と話したり、ドリブルでも最後までやらずに諦めてコースから外れてしまったりしています。親がサッカー経験のある方のお子さんはどんどん上手くなっているのに、うちの子は上達せず、本人も口だけでやらないので、どうしていいのかわかりません。ボールが怖いとか、うまい子ばかりで卑屈になっているのであれば辞めればいいとも言っているのですが、上手くなりたいとは言いますが、それに向けて練習をしようとはしないのでイライラしてしまいます。親がアドバイスを言わないほうがいい、褒めたほうがいいといいますが、アドバイスすると怒る、褒めると調子にのり、練習しないという感じになるので、どうしていいかわかりません。誰よりも上手になってほしい訳ではないのですが、試合中ぼーっとするのだけはやめてほしいのですが、どうすればいいでしょうか?<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。息子さんが自主練をしない、積極的にボールにかかわらない、スクールで友達とおしゃべりをする、ドリブル練習を最後までやらず諦めてしまう......目の前のわが子の立ち振る舞いにイライラしてしまう気持ち、とてもよくわかります。私の息子も、他の選手が一生懸命走っているのに走れない子でした。下を向いたまま歩く姿を一緒にビデオで観ながら「なんで地面見てるの?ボール見なきゃダメじゃん」と怒っていました。でも、そうやって怒ったことをあとで後悔し、私は自分を変えました。なぜならば、親がガミガミ言ったとて子どもが変わることはあり得ないことを、脳科学や心理学を学んで理解したからです。■「そんなことじゃ○○だよ」と発奮させる危機感をあおって頑張らせるやり方では、努力が長続きしない脳科学の先生に「一発学習」と「強化学習」の違いを教えてもらいました。別名「恐怖学習」と呼ばれる一発学習は、子どもがうまくいかないとき「そんなことでは万年補欠だよ」とか「次の試合に出て活躍しないとクラブはやめさせるよ」などと脅したり、恐怖をもって追い詰めることで子どもを発奮させて学習を頑張らせるやり方です。それをすると、一発で子どもが頑張って走ったり、勉強であれば一瞬成績がアップします。ところが、恐怖という刺激を与え続けなければ子どもは発奮しないので、長続きしません。しかも、与える恐怖はどんどん強度を上げなくてはいけません。子どものほうが怒られ慣れてしまうからです。一方の「強化学習」は、子どもが自分から取り組める環境を大人側が設定します。ミスを責めない。ほんの少しの進歩を褒めて認めることで、子どもが心地よく過ごせるよう努める。何かに対しなかなか取り組まなくても、自分でやり始めるまで待ってあげる。そのような大人の姿勢があってこそ、子どもは自分で主体的に動き、さまざまな学びを獲得するわけです。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!■親御さん自身の「気づき」がなければ、お子さんを変えることもできないそのような話をしても、お母さんには通じないかもしれないと私は考えています。恐らく「そんなきれいごとを言われても......」と困っているのではないでしょうか。私から「これが正しい子育てだからこうしなさい」と言われても、頭でわかっていてもできないよ~となっていませんか?お母さん自身が「今のやり方じゃダメだ。このままじゃ息子をつぶしてしまう。やり方を変えよう!」と自ら考えなくては、強化学習をほどこす親にはなれません。この感情は、実は息子さんも同じです。自主練も、練習を一所懸命にやることも、息子さんが「これをできるようになりたいから自主練しよう!」とか「このメニュー、面白いから、下手だけどやってみよう」となることが重要です。■アドバイス①いま目を向けるのは子どもではなくあなた自身「頑張れない子」を育てているのは誰?以下、三つほどアドバイスさせてください。ひとつめ。息子さんに対してではなく、自分に矢印を向けましょう。お母さんの相談を読むと、息子さんへの苦情がずっと続きます。「うちの子は上達せず、本人も口だけでやらない」「上手くなりたいとは言いますが、それに向けて練習をしようとはしない」「試合中ぼーっとするのだけはやめてほしい」お母さんは息子さんを「ダメな子」と感じているように映ります。15年ほど前になりますが、都内のサッカースクールで指導していた30代のコーチが私にこう言いました。「少年サッカーの現場では、指導者が子どもをめちゃくちゃ叱りつけています。馬鹿とか帰れとかめちゃくちゃですよ。試合になると、今度は親までが子どもに『なんで頑張らないの!?』と怒っています。でも、そういう子どもを育てているのは誰なんですか?って僕は思う。天に唾(つば)してるわけですよね?」とても言いづらいことですが、お母さんも同じかもしれません。天に吐いた唾は自分にかかってきます。まずは「どうしたら自分は良い親になれるのか」を学びましょう。例えばこの連載は今回で157回になります。良かったらアーカイブを読み返してみてください。お母さんと似た相談をしている人は少なくないので、必ずやためになるヒントが落ちているはずです。逐一息子さんができないこと、ダメなことに対して矢印を向けるのではなく「自分は親としてどうあるべきか」を考えてください。自分がどうあれば、目の前の子どもは伸びるのか?そこを考えましょう。■アドバイス②自己肯定感が身につけば自分からやり始める子どもを信じてひたすらまとう二つめ。具体的には、息子さんと距離をとることを勧めます。私の場合も「親は何もしない」でした。口出ししない。わが子を信頼して、本人がやり始めるまでひたすら待つ。こちらが信頼し始めると、親のこころの変化に敏感な子どもはそのことに気づきます。言語化はできないけれど、何となくママは自分を信じてくれている、と感じ始める。そのことが息子さんの自己肯定感につながります。自分を肯定して自信をつけた子どもは自走します。逆に、親から信頼されない子どもは、なかなか自分から取り組めないのです。■アドバイス③大人が変われば、子どもは変わる子どもを信頼すること(写真は少年サッカーのイメージご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)三つめ。私はダメな親なんだと落ち込む必要はありません。子育ては誰もが初心者です。仕事など、どんなことも経験を積みトライ&エラーを重ねてスキルを伸ばして一人前になりますよね。ところが、子育てはずっと初心者マークをつけたままです。第一子でも、第二子でも同じです。初心者マークははがれません。なぜならば、相手が違います。私たちは10人産んでも初心者です。だから、子育ては大変。ただ、だからこそ面白いのです。ただ、目の前の個体(子ども)は違っても、普遍的な子育ての軸は存在します。例えば、上述した「信頼する」ということ。そういったスキルを磨いてください。まずは何かを強制したり、指示命令するのをやめましょう。ボーっとしているのを見るのが嫌なら見なければいいのです。親御さんたちは「嫌なこともやらなきゃいけないこともある」と言って、子どもに強制しがちです。そうなると、大人は自分のやり方が間違っているのに「怒られ慣れちゃって、本当にダメなやつだ」と子どもを責めますね。いつまでたっても矢印は子どもに向いたまま。大人は変わることができません。30年間、育成や子育ての現場を見てきた私は断言できます。親が変われば、子どもは変わります。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『高学歴親という病』(講談社α新書)。
2023年05月10日認知して判断して状況によって動くという仲間がいて成り立つ「オープンスキル」でサッカーのゲーム(試合)は成り立っています。これまで池上正さんをはじめ、いろんな方がオープンスキルの重要性をお伝えしていますが、アンケートの回答で子どものサッカーの情報で求めているものとして「一人でできる自主練メニュー」(=クローズドスキル)を挙げる人が非常に多いのです。その理由は何なのでしょうか。以前サカイクでは、「一人でできる自主練メニュー」を求める理由についてツイッターでアンケートを実施いたしました。結果をご紹介いたします。サカイク公式LINEアカウントで子どもを伸ばす親の心得をお届け!・近所にサッカーをして遊べる友達がいない26.7%・止める、蹴るが出来ず周りとの連携プレー以前の問題23.3%・ミスをして友達に迷惑をかけるのが申し訳ないから3.3%・その他46.7%「近所にサッカーをして遊べる友達がいない」子どもたちのするスポーツも、都市部ではサッカー、野球、テニス、水泳、体操などをはじめ選択肢もたくさんあるので、近所にサッカーをする子がいないという環境もあるようです。それ以外にも、スポーツ以外にも習い事漬けになっていたり、親同士が知り合いでないご家庭の子とは遊ばせないなど、様々なトラブル回避などの理由から学校以外でお友達と遊ぶことが少ないという子も最近は少なくないようです。似たような理由で、お受験をして学区外の私立に行っているので近所の子とそれほど知り合いでないといった子も。自主練をするのはだいたい学校から帰ってからや、休日なのでお住いの地域や環境によって違いはあるものの、近所に気軽にサッカーができる子がいないとなると、どうしても一人でできる練習を求めてしまうのでしょう。「止める、蹴るが出来ず周りとの連携プレー以前の問題」「ミスをして友達に迷惑をかけるのが申し訳ないから」こちらは似たような理由ではありますが、そもそもの技術が周りより劣るのでオープンスキルどころではない。という考えや、ミスをして周りに責められて自信を無くすのも心配だから、ある程度技術が身についてからにしてほしいという親心のようです。また、学習ドリルのように「まずは基本から」という考えを持つ方も少なくないので、例えばキック一つをとっても、最初に足のどこで蹴るかの説明があって、そのあとボールに足を当てる練習に進み、それができたら対面でパス交換、といったふうに動き方の基礎から段階を踏んで進めるものと考える方もいて、かならずしも正確なキックの方法でなくても連係プレーはできることをイメージするのが難しいようです。また、最初に1人でできる基礎技術を身につけてから、複数人の連携にステップアップと認識している方が多い印象もあります。そういった前提もありつつ、お友達やチームメイトに迷惑をかけないように、との思いからまずは一人でできる練習メニューでスキルを身に付けてほしいという考える親御さんが多いようです。その他「その他」の意見で耳にするものには、「自宅周辺でできるから」といった空き時間に気軽にできるから、といったご意見や「自主練でリフティングの回数を増やしたい」と、一人で手軽にできる練習だと親としても楽というものが多数。最近ではチームに所属せずサッカースクールだけの子も増えてきており、そういったこの親御さんたちからは「チームに入ってないので連係プレーをすることがあまりない」「スクールで役立つキックやシュートを身に付けさせたい」という声を聞くこともあります。サッカーをする子たちの環境も多様になっておりますが、それぞれの事情で「一人でできる練習」を求めているようです。ボールの感覚をつかむこと、ボールを扱う楽しさを知るためにもクローズドスキルが全くいらないわけではありませんが、サッカーは1人ではなく複数人で協力し合うスポーツです。自主練で学んだことをコートの中で発揮し、仲間とサッカーを楽しんでほしいものですね。サッカー少年の親が知っておくべき「サカイク10か条」とは
2023年01月13日指導者が「リフティングが100回できた者からレギュラー」と言ったから一生懸命練習してチームで一番できるようになった。試合でも、一人でドリブルして相手を交わしてゴールを決めた。チームミーティングでも「別次元」と褒めたらしいのに、出場機会がどんどん減ってる。リフティングでレギュラーの話はどうなった?わが子が出場できない理由を聞いてもいいの?というご相談をいただきました。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの子育てと取材で得た知見をもとに、アドバイスを送ります。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<指導者が息子を劣等生扱いするのがツラいのでチームを辞めさせたい問題<サッカーママからのご相談>小学校5年生男子の母親です。地区のスポーツ少年団のチームに所属しています。3年時に指導者が変わり、4年生から試合に出る時間が少なくなり、現在公式戦はもちろんのこと、練習試合での出場時間もほとんどなくなりました。指導者は、常々「実力勝負」「勝ちにこだわる」ということを口にして、練習試合であっても下級生を連れてきてスタメンで使っています。少しでも試合に出れるよう、指導者に次の2点を尋ねて良いものか、逆恨みされないか、悩んでおります。1点目は、指導者の過去の発言について。指導者がリフティングに凝った時、「リフティングが100回できた者からレギュラーだ」と言ったことがあります。息子は一生懸命練習し、チームで唯一常時100回左右でできるようになりました。最高は250回です。チームには息子ほどできる子はいません。「レギュラーの話はどうなったのか」と聞くのは嫌味に聞こえるでしょうか。2点目は、選手起用の考え方についてです。我が子のみを見ていて目が曇っているのかもしれませんが、どうも指導者に好かれていないように思えてなりません。先日の試合で、息子は5年生で唯一公式戦に出してもらえませんでした。その後のフレンドリーマッチでも、公式戦で足を痛めた子が続けて出て、息子はその子と代わる形で後半から出場しました。息子は、得意のドリブルで相手をかわして前まで持っていきゴールを決めました。素直に上手でした。その後の全体ミーティングで、指導者は「凄かった。別次元の動きだった」と皆の前で褒めました。息子は「じゃあ、最初から出せ」と思ったそうです。「別次元の動き」と褒める割には、お情け程度(フレンドリーマッチの半分)にしか試合に出さない理由を尋ねて良いものでしょうか。不毛なことでしょうか。<島沢さんからの回答>ご相談いただき、ありがとうございます。試合に出られないわが子を見守るのは、親としても辛いものがありますね。私も親として同じ思いをしたので、お気持ち察します。■自分の当番日に出場できなかったから辞めさせた親もあるサッカークラブで、小学5年生からサッカーを始めたA君が入団して半年も満たずに辞めてしまいました。A君自身は続けたかったのですが、お母さんの一存で辞めさせたのです。ご自分が当番だった日にA君が公式戦に出られなかった。それが理由でした。ひとつ下の4年生の上手な子が数人出場していました。「みんな試合に出られると聞いていたのに、息子は出られなかった。言っていることとやっていることが違う。信用できません」お母さんは、周囲にそう漏らしていました。コーチらは試合後、プレー時間がなかったことをA君に謝り、次の練習試合でたくさん出られるようにするからと話していました。本人も納得して帰って行ったのですが、お母さんは納得していませんでした。コーチの方は「子どもとともに、母親にも話をするべきだった」と後悔していました。「まだサッカーを始めたばかりだから、出られなくても仕方がないと思ってくれると期待してしまった。5年生は高学年だしプライドもある。お母さんにもあったでしょう。そこを僕らが汲めなかった」これは10年ほど前。試合に全員出場させようといった機運はほぼなかった時代のお話です。サカイクで連載をされている池上正さんを始めとして「全員に出場機会を」の機運は少しずつ広がりつつありますが、10年経っても状況は劇的には変わりません。8,9割のチームが勝利するためにレギュラーメンバーをずっとプレーさせている。それが、さまざまな指導者や親たちに取材してきた私の実感です。サカイクの最新イベントやお得な情報をLINEで配信中!■わが子への「かわいそう」という感情は、くせ者。共感は良いが同化はダメとはいえ、A君のお母さんの行動は正しかったと思われますか?A君のお母さんは、息子さんが試合に出られずベンチでポツンと座っている姿を見るのが辛かったのだと思います。辛いだろう、悲しいだろうと思うと、かわいそうになりますね。しかし、親のわが子への「かわいそう」という感情は、実はくせ者です。得てして良い子育てに繋がりません。この連載で何度か申し上げているように、子どものつらさに共感するのは必要なことですが、子どもの気持ちと同化してはいけません。同化するとは、子どものつらさを、親がわがことのように受け止めてしまうこと。お母さんが「そんな子どもを見守っている私って、かわいそう」となりがちです。■コーチに質問したいのは、親御さんが自分の気持ちを鎮めたいからでは?かわいそうなままでは不安です。不安な親は、自分の不安を払拭したくて子どもに干渉したくなります。第三者がみれば過度な干渉でも、親御さん自身は「子どもに良かれと思って」世話を焼いてしまいます。「リフティングができたら試合に出すと言ったじゃないか!」「異次元の動きと褒めたのに、なぜレギュラーじゃないのか?」そのようにコーチに質問したくなるのは、息子さんに良かれと思ってでしょうか?もしかしたら、ご自分の気持ちを鎮めたいのではありませんか?実はストレスがたまった「自分に良かれと思って」考えたことかもしれません。子を想う親の気持ちは非常に複雑です。子どもに笑顔でいてほしい。努力が無駄にならずに済むようにしてあげたい。すべて親心です。■親が先回りしてしまうと、子どもは自分で思考することや課題解決の経験が積めないところが「良かれと思って」やったことはほとんどの場合、子どものためになりません。なぜならば、親が先回りすることで、子どもは何も考えず、何もやらなくて済みます。要するに、自分の課題解決をする経験を積めません。親心は時として暴走することがあります。そこに気をつけなくてはなりません。暴走しないためには、まず子育てをしている意味を考えましょう。お母さんが息子さんを育てるなかで、最も大事なのは何ですか?私は、まず子どもを死なせないことだと思います。私の子ども二人は兄妹ともサッカーをしていましたが、兄は割と鈍感なので心配しませんでしたが、生真面目で繊細な妹のほうはサッカーで気に病んでいそうなとき、命を絶ったりしないか彼女の表情を盗み見ていました。気になって寝室に見に行ったこともあります。■もう5年生、監督やコーチには自分で質問させよう次に大事なのは子どもの人としての成長を支えること。息子さんはもう5年生、高学年です。成長してほしいのならば、上述したように何事も自分で解決をする経験をさせてあげてください。「リフティングが100回できた者からレギュラーだ」と言ったコーチに対し、「僕は努力したのに。レギュラーの話はどうなったのか」と尋ねるのは、息子さんがやるべきです。少なくとも、お母さんではない。「聞いてみたら?」と話し、息子さんが「え~、聞けないよ」と拒むなら、まだその時期ではないということ。ほっとけばいいのです。選手起用についても、「別次元の動きだった」と皆の前で褒めたのなら、「じゃあ、最初から出してください」と自分で言えばいい。親としては「悔しいなら言ってみたらいいじゃん」くらいの態度で十分ではないでしょうか。なぜ試合に出られないのか。そこを自分で考えて策を講じる経験をさせてあげてください。それをせずに、親のほうが「なぜ出られないんだ?」と詰問するのは、子どもが成長する機会を奪うことになりかねません。■子どもに自信を持たせたいなら、親がいつまでも不安を抱えていないこと(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)そして最後に。お母さんがいつまでも不安に思っていては、息子さんは自分に自信を持てません。大好きなお母さんを「いつまでも不安がらせるダメな僕」であり続けるからです。子育ては、子どもへの「不安」を「信頼」に転換する旅なのです。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)。
2022年08月17日昔の子に比べると技術がありスマートなプレーをする子が多いが、平たんでないでこぼこピッチだと一気にプレーの質が落ちる。バランスを崩して転びやすくなる子も多くイレギュラーバウンドへの対応力がない。練習環境が良すぎる日本の環境が原因?遊びを取り入れながら、足場の悪い環境でのトレーニングもしたほうがいい?というご相談をいただきました。皆さんのチームではどうですか?今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、海外の育成環境の事例やJクラブトレーナーの言葉をもとにアドバイスを送ります。(取材・文島沢優子)池上正さんの指導を動画で見る>>(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<「元日本代表が教える」というのが売りのスクールで、新米女性コーチに保護者から不満の声。保護者を納得させる方法を教えて<お父さんコーチからのご質問>こんにちは。私は街クラブで教えている保護者コーチです。指導年代はU-10~U-12です。ご相談したいのは、足場の良くない場所での練習についてです。最近の子どもたちは、昔に比べて粗削りな選手が少なく、みんなスマートで上手な動きをしますが、それは整備されたピッチの上でのことであり、グラウンドコンディションが良くないところでのプレーだと一気に質が下がります。バランスを崩して転ぶことも増えます。静止した状態のリフティング練習と一緒で、きれいで平らなグラウンドでの練習だけではボールがちょっとずれたときの調整力など、試合で咄嗟の時に使う技術がなかなか身につかない気がしてます。もちろん今サッカーを楽しんで中学以降も続けてくれることが一番なのですが、今どきの子は細身で体幹が弱く、相手に当たられるとグラつく子も多いので、サッカーの時間の中で身体を強くする要素も入れられたらと思っているのです。海外ではデコボコのピッチが当たり前で、イレギュラーバウンドしたボールに食らいつくのでボディコントロールも上手になると聞くのですが、やはり練習環境が良すぎることの弊害などもあるものでしょうか。砂浜など足場が不安定な環境で、遊びを取り入れたトレーニングなども考えているのですが、池上さんはどう思われますか。<池上さんのアドバイス>今の子どもたちが育つ環境を考えると、野山を駆け巡るようなものではありません。サッカーコートは土か人工芝の整備されたところのみですね。彼らの遊び方も同様です。自然の中で走り回るとかではありません。私たち世代の子ども時代は鬼ごっこが遊びの中心でしたが、今はテレビゲームなど「静的な遊び」が多いようです。しかも、地方と都市部の違いはもうあまりなく、遊び方や環境は昔とは少し違います。とはいえ現実は受け入れるしかありません。■神経系が発達する幼少期は生活の中でいろんな動きができるのが理想神経系がどんどん発達する幼少期は、山を登ったり、坂を下ったり、飛んだり跳ねたりと、生活の中でいろんな動きができるのが理想です。サッカーのトレーニングのなかに「コーディネーション」と呼ばれる体をなめらかに動かすための練習を取り入れてもいいでしょう。そのあたりは、検索すれば動画サービスでもいっぱい出てきます。そういうものを取り入れてはどうでしょうか。イングランドは、育成年代のトレーニングにクロスカントリーを取り入れたりしているようです。地面に凹凸があるので、足首を鍛えることにはなりますね。ただし、大人がそういうところばかりに気をとられ、ストイックになりすぎてしまうのもどうかと思います。もちろん砂場の練習が悪いわけではないけれど、子どもたちにはサッカーをする時間は限られています。考え方は間違ってはいないと思いますが、そのことにあまり執着する必要はないでしょう。■「ズレが生じる」ようなリフティング環境を用意して、対応力を養う南米は主に芝のグラウンドを使います。地面に凸凹があっても芝生が生えていることでクッションになっているので、足がかかったりするなどイレギュラーなことは起こりません。以前、ジーコが「人工芝なんてグラウンドではない」と話していると聞いたことがあります。その一方で、オランダは「小学生の間は人工芝でやりなさい」とオランダサッカー協会が推奨しています。小学生までは良い環境で、きちんとした技術を身につけることが必要だという考えです。ご相談者様がおっしゃるように、子どもたちがバランスを崩すようならば、まずはコーディネーションのトレーニングを取り入れてみてください。加えて、静止した状態で行うリフティングは試合で使わない技術なので、例えば走りながらやったり、二人で前に進みながらパス交換しながらリフティングをするような練習をしましょう。ひとりでやるリフティングは、ほぼ予想した通りのところにボールが落ちてきますが、二人で行うとズレが生まれます。とっさに動く体の対応力も養えるでしょう。■どこに跳ねるかわからないボールで瞬発力を向上させるもうひとつの方法は、リアクションボールを使う練習です。リアクションボールは「凸凹がついたボール」です。サカイクを運営するE-3のショップで販売している「テクダマ」も、サッカー専用に開発されたリアクションボールの一つです。リアクションボールはどこに跳ねるかわかりません。そのボールをワンバウンドさせてみたり、投げてキャッチするトレーニングを行います。ボールがどこにいくかわからないので、瞬発力の向上に役立ちます。ダイレクトでキャッチするのではなくて、まずは「ワンバウンドで取ってね」と言ってワンバウンドしたボールをとってもらいます。そうすると、子どもはだんだん構え始めます。「腰を低くしろ」とか「構えろ」などとあらかじめ大人が教えてはいけません。本人たちがそれをやり始めたところで、「パスが来る時にそういう構えだと、多少ズレても受けられるよね」と説明すればいいだけのことです。■まずは遊びの雰囲気で行うことが大事。指導しようと真剣になりすぎないことまずは「ワンバウンドでいくよ」という話をするだけでいいのです。最初はとれなくても「ワンバンで取ってねっていったよ」などと、和やかに遊びの雰囲気で行ってください。日本のコーチは練習を「できるまでやれ」みたいに真剣すぎるところがあります。そうならずに、楽しくやらせてください。上述したように、「ワンバウンドでとって」と言いながらやっていくと、子どもは構えるようになりますが、それでも取れないこともあります。「構えてても取れないことがあるよね。でも、構えないと、もっと取れないよね。試合の中でも、いつもそんなことを考えてやろうね」と伝えてください。■子どもの運動能力が低下しているのは確かだが、工夫次第で足りない部分を補えるそもそも、日本と海外ではグラウンド環境に差があります。海外は天然芝が多いので、雨上がりはピッチがスリッピーになります。そうすると、練習や試合でワンバウンドのボールが予測よりも伸びてきます。南米や欧州の子どもたちは普段から当たり前のようにやっているのですが、日本の子どもは多くが土のグラウンドなのでそんな経験ができません。今日は芝が荒れているからどうするか?といったことを学べないわけです。それに、日本では雨が降ると使えない土のグラウンドもありますね。文部科学省からも、子どもの運動能力が低下しているデータ等が伝わってきます。冒頭でお話ししたように、子どもたちの育つ環境が変化しているからです。ただ、そのあたりの足らない部分を取り戻すことは決して難しくはありません。大人が考え過ぎず、コーディネーションの回数を増やすとか、複合的な動きをしてからボールコントロールをするといった工夫をしてあげてください。池上正さんの指導を動画で見る>>■小学生年代の体幹トレーニングについてJクラブトレーナーの見解は......(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)あるJリーグのトレーナーによると、小学生の体幹教室が流行っているそうです。でも、そのトレーナーは「小学生の間は走り回っていればいいんですよ」と話していました。例えば練習中のミニゲームで勝ち負けを意識して必死でやれば、おのずと体幹(※背骨の周辺部分の胴回りのこと)は鍛えられます。プロになったときに「身体のここが弱いね」と意識して鍛えればいいのです。「小学生の間は、普通に練習していればいい」が大方の見解です。結論として、少々ピッチが荒れてても、グラウンドは絶対きれいなほうがいいと私は思います。オランダサッカー協会の考え方と一緒です。そのなかでいい技術が磨ける。いい技術を出せる。コンディションが良好なグラウンドでいい技術をつけることを、まずは考えてください。池上正さんの指導を動画で見る>>池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2021年07月30日リフティングは、サッカーの基本技術の1つです。リフティングが上達すればドリブルを始めとしたサッカーのさまざまなプレーの上達が期待できるでしょう。この記事では、リフティングとドリブルの関係性について解説します。また、リフティングの目的や上達のポイントなどについても取り上げているため、ぜひ参考にしてみてください。リフティングとはリフティングとは、ボールを落とさないように、足や太もも、頭などでボールを扱う技術のこととです。サッカーの基本ともいえる技術の1つであるため、多くのチームでリフティング練習が取り入れられています。リフティングは、サッカーのスキルアップにつながる要素がたくさん含まれている点が特徴です。簡単に取り組めるため、ついつい何も考えず漠然と取り組んでしまいがちですが、工夫次第でドリブルやパス、トラップのレベルがさらにアップするでしょう。リフティング練習にも最適テクニック上達専用ボール「テクダマ」>>リフティングの目的リフティングをする目的は、リフティングを通してボールの扱い方を身につけることです。チームによっては「リフティング●●回を達成しよう」など、回数を増やすことを目的として掲げているケースもあるでしょう。確かにある程度継続してリフティングすることは大切です。しかし、何百回、何千回と過度に回数を追い求める必要はありません。回数を追い求めると、右足ではリフティングが何百回もできる一方で、左足ではできない、ヘディングではできない、インサイドだと続かないなど、特定の箇所を苦手としてしまう可能性があります。リフティングを行う際は、回数を追い求めるのではなく、さまざまな部位でボールを扱えるようにすることを意識してください。リフティングでボールの扱い方が向上する理由リフティングをするとなぜボールの扱い方が向上するのでしょうか。これは、リフティングを行うためには、ボールを正確に扱わなければいけないためです。例えば、リフティングの際にボールを蹴る位置を間違えると、ボールは思いもよらない方向に飛んでいくため継続できません。また、ボールを蹴る力が強すぎてボールが高く上がると、その次のボールコントロールは難しくなるため、やはりリフティングは続かないでしょう。このように、リフティングをある程度継続させるためには、ボールのどの部分をどのくらいの力加減で、足のどの部分で触れるのか、といったことを感覚的に身につけなければいけません。ボールの正しい位置を捉えるという点は、ドリブルやパスも同じです。ドリブルの際に足で触れるボールの位置を間違えると思ったような方向に進めません。また、パスの際に力が入りすぎると、味方にとってトラップしにくいパスとなってしまいます。このような点から、ボールの扱い方を覚えることがドリブルやパスの上達にもつながると考えられます。ボールの扱いを上達させるリフティングをするにはでは、ボールの扱いを上達させるためのリフティングをするにはどうすればいいのでしょうか。もっとも簡単な方法としては、決められたエリア内でリフティングを行うというものがあります。このルールであれば、エリアの外に出ないようにボールを扱うことを意識することができ、ボールに触れる位置や力加減を養うことができるでしょう。最初のうちはエリアを大きく設定し、慣れてきたら徐々に小さくしてみてください。また、さまざまな部位で行うことでどの部位でも安定してボールを扱えるようになるでしょう。まとめ今回は、リフティングの概要から目的、リフティングの上達がドリブルやパスの上達につながる理由などについて解説しました。リフティングは回数を増やすよりも、ボールを正確に扱えるようになることが大切です。ボールの扱い方が上手くなれば、ドリブルやパスの際のボールコントロールも上達すると考えられます。ぜひ、今回の内容を参考にリフティングに取り組んでみてください。リフティング練習にも最適テクニック上達専用ボール「テクダマ」>>
2021年05月19日小学生でサッカーを始めたばかりのお子さんの中には、リフティングの練習に取り組んでいる人も多いのではないでしょうか。この記事では、サッカーを始めたばかりの初心者に向けてリフティングのコツを解説します。ぜひコツを押さえて練習に取り組んでみてください。リフティングは回数は重要ではない小学生の場合、リフティングの回数が多くできる=サッカーが上手いと捉えているケースが少なくありません。確かにリフティングがたくさんできることは、サッカーの上手さの1つの側面ではあります。しかし、リフティングの回数が少ないからと言ってサッカーが下手なわけではありません。まずは、その点を理解しておきましょう。リフティングの目的は身体を上手に動かせるようになることリフティングで大切なのは回数ではなく、身体を上手に動かせるようになることです。小学生の中には、リフティングが何回もできる選手は少なくありません。回数だけ見ると、1,000回を超える選手もいるでしょう。ここで重要なのはその選手が、身体のどの部分でそれだけの回数をこなしているのかということです。もしかしたら、利き足のインステップだけ、太ももだけで1,000回をこなしている選手もいるかもしれません。しかし、このような場合だと、先ほどお伝えしたリフティングの目的「身体を動かせるようになること」を達成できていると言えません。利き足のインステップを中心として1,000回のリフティングを達成した選手に対して、インステップ以外の特定箇所でリフティングやってもらうと、おそらく多くの選手は続けられないはずです。なぜ続けられないのかというと、得意な部分以外に関しては自分の思うように身体を動かせていないためです。逆に言うと、部位に関係なくリフティングができるような選手は、回数をこなすことはできなくても、身体を上手に動かせていると言えます。そのような選手なら、試合中に急に来たボールに対しても、身体を上手に動かしコントロールして次のプレーに移ることができるはずです。サッカー初心者が押さえておきたいリフティングのコツここでは、サッカー初心者に向けて、リフティングのコツについて解説します。リフティングは毎日練習をすることが大切ですが、コツを押さえておくことで、上達速度が上がるはずです。ぜひ参考にしてみてください。インステップのコツリフティングで主に使用するのがインステップです。インステップのリフティングをする場合、足の甲のどこでボールを触るとボールが真上に上がるのか感覚をつかむことが大切です。インステップはボールに触れる位置が少しでもずれると、思いもしない方向に飛んでいってしまいます。そのため、甲の様々な部分にボールを当て、真上に飛ぶ部分を把握するようにしましょう。インサイドのコツインサイドのリフティングをする場合、インサイドをボールに対して平行にすることが大切です。ただし、平行にするために足の位置を高くすると、リフティングが安定しません。そのため、足の位置は低くして、膝を返したり足首を返したりすることで、平行を保つようにしましょう。アウトサイドのコツアウトサイドのリフティングをするときに、重要なのは軸足の膝のクッションを使うことです。アウトサイドを使ってボールを蹴り上げるというよりも、膝のクッションでボールを突くイメージを持ってください。太もものコツ太もものリフティングは、太ももをちゃんとあげることが大切です。十分に上がっていないと、ボールに当たる面が斜めになってしまうので、ボールが真上に上がりません。また、リフティングをするときは、体の中心を意識して行うようにしましょう。ヘディングのコツヘディングのリフティングをするときは、ボールの真下に入り額の中心にボールを当てることを意識しましょう。真下に入り、額にちゃんとボールが当たればボールが真上に飛びます。一方で、これがずれているとボールは前後左右に飛んでいってしまいます。また、リフティングの際には足を前後に開いておくと安定感が増すので試してみてください。自主練でリフティングは上達するリフティングを上達させたい場合は、こまめに自主練を行うことが大切です。1週間に1回の自主練で何時間も練習するより、毎日10分、15分でも練習する方が着実に上達します。先述の通り、リフティングは回数ではなく、身体を上手く使えるようになることが目的です。毎日少しずつ練習することで、様々な部位でのリフティングができるようになるでしょう。リフティングの練習には「テクダマ」がおすすめリフティングの練習をしたい人には「テクダマ」の利用がおすすめです。テクダマは、4号球と同じ重量でありながら、大きさは2号球サイズとなっているボールです。独自開発のバランス設定によって、不規則な回転やバウンドをするため扱うのは簡単ではありません。このテクダマでリフティングの練習をすると、ボールのイレギュラーな動きへの対応が求められるので、脳や神経系にたくさんの刺激を与えることができ、集中力が養われます。また、予測不能なボールの動きに合わせて身体を使わなければいけないので、身体を上手に動かせるようになるでしょう。ぜひ、リフティングの練習にテクダマを取り入れてみてください。まとめリフティングは回数に注目してしまいがちですが、その目的は身体を上手に動かせるようになることです。特定の部位だけでなく、様々な部位でリフティングできるようになれば、試合中でも自分の思ったようなボールコントロールができるようになるはずです。ぜひ、今回紹介したコツを参考にリフティングの練習に取り組んでみてください。
2020年10月30日監督がリフティングの規定回数を設けていて、達成できない子は試合に出さない。リフティング回数より試合経験を積む方が良いと提案しているが聞き入れてもらえない。保護者の中にも回数を重視している方も多く、「できてないのに試合に出すのか」という声も。どうして日本はこんなにリフティングの回数を重要視しているの?と悩むコーチからのご相談です。既定の回数を設けて評価することは、本来のリフティングの目的から外れるのでサッカーのスキル向上が望めないことや、子どもの自信喪失につながると池上正さんは言います。ではどんな改善を行えばいいのか。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが送るアドバイスを参考にしてみてください。(取材・文島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<6歳までに脳の神経系発達は90%に!?サッカーの時間にできる未就学児におすすめの脳を発達させるメニューはある?<お父さんコーチからの質問>U‐8年代の指導をしているのですが、リフティングの回数についてのご相談です。監督がリフティングの規定回数を設けていて、できない子は試合に出しません。既定の回数ができていなくても試合経験を積ませる方が良いのでは、と提案しているのですが、改善してくれません。確かにボールコントロールを身につけるのに役立つ練習ではありますが、同じ場所で回数を重ねるリフティングがサッカーの上達に大きく影響するとは個人的にも思いませんし、実際にプロ選手や指導者の方も回数は重要ではないと言っていますよね。監督もですが、保護者の中にもリフティングの回数を重視している方も多く、「できてないのに試合に出すのか」という感じの事を言う方もいます。子どもたちもリフティング練習が好きで、一人でやれる手軽さもあって家でもやっているようですが、海外では日本のようなリフティング練習は無いとも聞きます。プロ選手でも何十回もできない選手もいるようですし。どうして日本はこんなにリフティングの回数を重要視しているのでしょうか。根深い問題だと感じています。リフティング信仰から目を覚まさせるアプローチや、おすすめの練習などはありますでしょうか。<池上さんのアドバイス>ご相談いただき、ありがとうございます。欧州や南米の子どもはリフティングをして遊びますが、回数を数えません。しかも、リフティングをするのは基本的に小学生くらいの年代、子どもの間だけです。有名な選手がやっていたリフティングの技を真似して遊びます。ロナウジーニョ(元ブラジル代表)やネルシーニョ(柏レイソル監督)などでしょうか。そして、それらを選手が試合で使っていることを知っているので、自分たちも実際に試合でやるために練習するのです。■規定回数での評価はスキル向上につながらないしたがって、回数を数えてリフティングをするのは日本だけです。コーチに「百回目指せ」とか「千回できた人から試合に出します」などと回数を定められ、その目標に向かって黙々とやります。規定回数があるため、失敗したくありません。失敗しないために、ずっと利き足だけでやる。もしくはずっと同じ蹴り方、例えば全部インステップでやるという状況になりがちです。ボールを扱うスキルを向上させるために始めたはずが、途中で「決められた回数をやる」という本来の目的とは違うものにすり替わっていきます。欧州や南米はそうならないのに、なぜ日本だけがこうなってしまうのか。それは教育が関係しているようです。学校教育の特徴として、テストであれば100点を取ることが求められます。何か数字的な目標があって、そこに向かって突き進む。よって、リフティングも回数が決められてしまうのだと考えられます。スポーツが「評価されるもの」というとらえ方を大人がするので、子どもにとってスポーツをする楽しさがどんどん半減していきます。しかしながら、そうなってしまうと、もとの目的からどんどん離れてしまう。もっと言えば、サッカーでなくなってしまうわけです。スキルの向上は望めないうえに、決められた回数に届かない子どもは「ぼくはダメだ」と自信を失います。回数というわかりやすい指標があるため、子ども同士で比べあってぎくしゃくすることもあります。■スキルを磨くのは試合で使うため例えば、少しボール扱いはスムーズでなくても、空間認知の能力が高くいいところでボールを奪えたり、危険察知能力があってポジショニングが上手な子など、目に見えづらい力を持っている子どもたちがいます。そういう子どもが意欲をなくしたり、悪くすればサッカーから離れるといったリスクも考えられます。先日、中学生が「ヒールリフトを練習したので、見てください」と言ってやってきました。実際、彼はとてもうまくなっていました。「せっかくうまくなったんだから試合で使ってごらんよ」私がそう言うと、彼は「え~っ?」と驚くのです。「いや、何のために練習したの。ヒールリフトってどうしても抜け出せないときに、使うと便利だよね。コーチも練習して使ったよ」彼の反応からは、使う気がないけれど練習したことが伝わってきました。そんな子どもをブラジルのコーチが見つけると、「君はサーカスに行くの?」と言います。練習はあくまでサッカーの試合に出てくる技術を磨くのが目的です。そうすると、リフティングをする場面はどのくらい出てくるでしょうか。百歩譲ったとしても、浮き球のコントロール程度です。それを何千回もできる必要があるでしょうか。フットサル指導者のミゲル・ロドリゴさんも「リフティングは試合で使わない」とおっしゃっていました。立ったまま動かずにボールを何度もリフティングするような場面は、試合にはありません。スキルを磨くのは試合で使うためです。日本の指導者や子どもたちはそこをもっと意識すべきです。■利き足だけでなく、身体のいろんな場所でのコントロールを心がけることよって、リフティング練習は基本、必要ないと思います。ただ、リフティングをさせるのなら、回数を目指すのではなく、試合で使うスキルを向上させることを念頭においてください。まずは、二人でボールを交換する練習をしましょう。パスを受けたらリフティングして返す。ダイレクトで返す。左右交互に使う。もも、肩、頭、胸など身体のいろいろな場所を使ってコントロールすることを心がける。二人でパス交換しながら移動してもいいし、ひとりでやるのなら壁に充てたボールをリフティングする。また、お母さんやお父さんに投げてもらったボールをコントロールして返す。それも可能なら移動してやる。このような練習は、ボールコントロールのスキルだけでなく、身体のバランスをよくするコーディネーションにもつながります。神経系を刺激して自分の思うように身体をスムーズに動かす力を養います。そのためにも右も左もバランスよく使うことが肝要です。私は大学時代、インステップを左右、アウトサイドで左右、インサイド左右からヘディング、そしてまたインステップに戻る練習をひとりでよくやりました。このようにさまざまな蹴り方、運び方を何周もするのは容易いことではありませんでした。ひとりでやるときは、そんな方法もあります。次ページ:指導者が制限をかけるとサッカーの楽しみが減ってしまう■指導者が制限をかけるとサッカーの楽しみが減ってしまう(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)もうひとつ、指導者の視点で言うと、ある意味自分が見てなくてもいいのがリフティング練習です。100回やるよと指示して、できない子にハッパをかける。言い方は悪いかもしれませんが、コーチが楽をできる練習です。そうやって指導者が子どもたちに制限をかけていくと、サッカーの楽しさが減ってしまうでしょう。指導の場面にそぐわないように思います。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2020年09月11日「ケイ武居の美肌リフティング術」開催概要2018年5月20日(日)、生活の木 ハーバルライフカレッジ原宿表参道校において、「~目鼻立ちスッキリな小顔を手に入れる~ ケイ武居の美肌リフティング術」が開催される。「効果を感じられる」と話題のリフティング術は、誰でも簡単にでき、毎日のお手入れに取り入れやすい。セミナーは、肌診断からスタート。肌の触り方や、マッサージ術、クールダウンの方法、紫外線対策、アイケア、精油のブレンド術など盛りだくさんの内容を学ぶことができる。開催時間は、10:00から12:30まで。受講料は7,020円(税込み)。生活の木 ハーバルライフカレッジWebにて、申し込みを受け付けている。セラピスト ケイ武居ケイ武居は、IFPA(the International Federation of Professional Aromatherpists)認定セラピストや、CIDESCO認定国際エステティシャン、日本アロマ環境協会認定 プロフェッショナルアロマセラピストなどの資格を保有する一流セラピスト。Effective Touchのセラピストをはじめ、アロマチャームセラピーコース 専属講師、日本スパ振興協会 理事などとしても活躍する。「同行二人」のように、1人1人の心と身体に寄り添ったセラピースタイルが人気となっている。(画像は生活の木 ハーバルライフカレッジWebより)【参考】※生活の木 ハーバルライフカレッジWeb※Effective Touch
2018年01月30日2015年2月11日、欧州宇宙機関(ESA)は、再使用型宇宙往還実験機「IXV」の飛行試験に成功した。IXVは「リフティング・ボディ」と呼ばれる、胴体そのものが翼のような役目を果たす形をしており、未来の欧州のロケットや宇宙機の開発にとって重要なデータを集めた。IXVの飛行時間はわずか100分ほどであったが、欧州の宇宙開発の未来にとっても、そしてリフティング・ボディという「翼なき翼」の歴史にとっても、新たな章を刻むものとなった。○翼なき翼、リフティング・ボディ人類は古来より、鳥のように空を飛ぶことを夢見てきた。オットー・リリエンタールやライト兄弟がその夢を叶え、続いてその手が宇宙へと伸ばされたとき、しかし宇宙飛行において翼は必ずしも必要ではないことを知った。けれども、宇宙空間から地上のある一点を狙って着陸することを考えたとき、翼は依然として魅力的であり続けた。スペースシャトルなどが軒並み大きな翼を持っているのはそうした理由がある。だが、打ち上げや宇宙空間を飛行する際には、翼は役に立たず、単なる重荷でしかない。また宇宙船が大気圏に再突入する際、その速度は極超音速の、とてつもないものになるが、そのとき翼は大きな抵抗となり、また高熱からその翼をどうやって防護するかは難しい問題であった。さらに胴体から大きく張り出した翼は、構造的に弱点でもあった。そこで、翼がなくとも飛行を制御することができるよう、胴体そのものが揚力を生み出すような形をした機体が考えられた。それが「リフティング・ボディ」である。フティング・ボディは1950年代の米国で本格的に研究がはじまり、またソヴィエト連邦や欧州、日本でも研究が行われた。その過程でいくつかの実験機による飛行実験が行われたものの、すべて大気圏内の飛行であったり、あるいは宇宙空間には出たものの、軌道速度と比べ非常に遅い速度であったりと、純粋に「翼のないリフティング・ボディ機が宇宙を飛び、地球に帰還する」ことが実証されたのは、今回のIXVが世界で初めてのことであった。○IXVIXVが開発された背景には、ESAが2003年に立ち上げた「将来打ち上げ機準備計画」(FLPP:Future Launchers Preparatory Programme)というプログラムがある。これは将来のロケットにとって必要となる技術や要素を開発することを目的としたもので、例えば機体の信頼性の向上や製造や運用の簡略化、環境への影響の低減といった技術目標が立てられており、その中に「Reusability」、つまり再使用化も盛り込まれている。IXVという名前はIntermediate Experimental Vehicleの頭文字から取られているが、Intermediate(中間)という言葉が入っているのは、この将来の欧州のロケット開発に向けた長期的なロードマップの中の「中間的」な要素に、IXVが位置付けられているためだ。ESAやフランス国立宇宙科学センター(CNES)、ドイツ航空宇宙センター(DLR)では、2005年ごろからリフティング・ボディの実験機「PRE-X」や、再突入実験機の「AREV」、「EXPERT」の研究が行われており、IXVの開発にあたってはこれらの成果が受け継がれている。なおEXPERTは、実際にロケットに搭載して飛行試験が行われる予定だったが、打ち上げのために確保していたロシア製ロケットの都合で打ち上げが無期延期となっている。IXVはタレース・アレーニア・スペース社によって開発と製造が行われた。全長5.0m、全高1.5m、全幅2.2m、打ち上げ時の質量は1,845kgほどで、前述したように翼はなく、革靴のような姿かたちをしている。大気圏内での飛行制御には、胴体後部に装備された、足ひれのような2枚の板状の翼を使う。機体の姿勢制御はもちろん、飛行方向を左右に、距離にして400kmほど変えることもできるという。今回の飛行試験に先立ち、2012年には米国アリゾナ州のユマ実験場において、高度5,700mの高さからIXVの試験機を空中投下し、パラシュートを展開させる試験が実施された。また2013年には、地中海の上空3,000mから試験機を投下し着水させる試験も行われている。IXVは「ヴェガ」ロケットの先端部分に搭載され、現地時間2015年2月11日10時40分(日本時間2015年2月11日22時40分)、南米仏領ギアナにあるギアナ宇宙センターのヴェガ射場(SLV)から離昇した。当初、打ち上げは10時ちょうど(日本時間22時ちょうど)に予定されていたが、ロケットと地上設備との間のテレメトリーの接続が切れるという問題が発生したため、40分間延期されることになった。打ち上げ後、ロケットは順調に飛行し、17分59秒後に高度340kmの地点でIXVを分離した。IXVはそのまま慣性で上昇を続け、高度412kmまで到達した。そしてそこから下降をはじめ、やがて大気圏に再突入した。機体は高度120km付近で秒速7.5kmに達し、最大で摂氏1,700度もの高熱にさらされながら、大気を突っ切っていった。IXVのミッションは、地球周回軌道に乗ることを意図していなかったが、高度120km付近で秒速7.5kmというのは、宇宙船が地球周回軌道から離脱し、大気圏に再突入する際とほぼ同じ条件である。灼熱の環境を抜けたIXVは、大気圏内を滑るように飛行し、やがて速度がマッハ1.5にまで落ちたところで、最初のパラシュートが展開し、続いて2つ目のパラシュートも展開した。そして高度約26kmのところで主パラシュートが展開し、IXVは回収船の待つ海上へと降りていった。打ち上げから約100分後の日本時間2月12日0時19分ごろ、IXVはガラパゴス諸島のすぐ西の太平洋上に着水し、海上で待機していた回収船「Nos Aries」によって回収された。機体の状態は正常で、機体の各所には取り付けられていた、計300個を超えるセンサからのデータも予定通り得られ、ミッションは完璧な成功であったという。このあとIXVはESAの施設へと送られ、約6週間をかけて、初期分析が行われることになっている。ESAのJean-Jacques Dordain長官は「IXVは再突入と再使用の能力において、ESAのために新たな章を拓きました」と語った。(次回は2月24日に掲載予定です)参考・・・・・
2015年02月23日