写真家マルク・リブーの写真展が、ライカギャラリー東京&京都で開催される。期間はそれぞれ、2017年9月22日(金)から2018年1月14日(日)、2017年9月23日(土)から2018年1月18日(木)まで。20世紀を代表する写真家の一人であり、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ロバート・キャパらとともに、写真家集団マグナム・フォトの名を世界に知らしめる礎となった写真家、マルク・リブー。今回の展覧会では、ライカギャラリー東京は「マルク・リブーの世界」、ライカギャラリー京都は「マルク・リブーが見た日本の女性」と題し、それぞれ異なる作品を展示する。ライカギャラリー東京「マルク・リブーの世界」展ライカギャラリー東京での「マルク・リブーの世界」展は、独自の詩情あふれるドキュメンタリーを築き上げた、マル ク・リブーの代表作で構成。1953年に『LIFE』誌に掲載され、リブーがマグナム・フォトに参加するきっかけにもなったエッフェル塔のペンキ塗りの写真など、生前に「暴力より世界に存在する美により惹かれる」と語っていたリブーの世界観を直截的に伝える作品14点を展示する。ライカギャラリー京都「マルク・リブーが見た日本の女性」展そして、ライカギャラリー京都での「マルク・リブーが見た日本の女性」展では、日本国内でまとめて発表されることがなかったシリーズ「Les Femmes Japonaises」から精選した15点の作品を展示。マグナム・フォトの写真家の例にもれず、世界を駆け巡り撮影を行ったマルク・リブーは、40年にわたって断続的に撮影を続けた中国やインドをはじめ、アジア諸国においても多くのルポルタージュを残しており、日本もその例外ではない。特に、マルク・リブーが初めて日本を“発見”した1958年に集中的に撮影された日本女性のルポルタージュは、写真家の観察眼と美的感覚とが絶妙に融合したもので、リブーの作品の中でも独特の場所に位置している。この「Les Femmes Japonaises」には、伝統と変化をもっとも体現する存在であったとも言える、高度成長期における日本の女性たちが様々な場所で写し出されている。開催概要マルク・リブー写真展■ライカギャラリー東京 (ライカ銀座店 2F)タイトル:マルク・リブーの世界期間:2017年9月22日(金)〜2018年1月14日(日)住所:東京都中央区銀座 6-4-1TEL:03-6215-7070■ライカギャラリー京都(ライカ京都店 2F)タイトル:マルク・リブーが見た日本の女性期間:2017年9月23日(土)〜2018年1月18日(木)住所:京都市東山区祇園町南側 570-120TEL:075-532-0320
2017年08月26日シャネル銀座ビル4階に位置し、昨年末で10周年を迎えたシャネル・ネクサス・ホール。若手音楽家をサポートするクラシック音楽のコンサートや、意欲的な展覧会を開催しています。2015年は、「ボヤージュ(旅)」をテーマにした展覧会が企画されています。新年の幕開けを飾るにふさわしい展覧会は、20世紀を代表する写真家の一人である、1923年フランス・リヨン生まれのマルク リブーが、約60年前に秘境アラスカを旅して撮影した貴重な作品によるものです。リブーの「アラスカ」シリーズは日本初公開となります。写真ににじみ出るリブー独特の詩情が魅力ここは……雪原? 展覧会場に足を踏み入れた瞬間、白一色でデザインされた見事に潔い空間が、決して広くはないのに果てしなく続く雪原のように見え、テンションが上がります。アンリ カルティエ=ブレッソンやロバート キャパとともに、写真家集団マグナムの一員として活躍したマルク リブー。彼は1958年、ジャーナリストのクリスチャン ベルジョノーと「パリ・マッチ」誌特派員として、目的地アラスカを目指しデトロイトを出発しました。フェアバンクスとコッツビューに1週間ずつ滞在した後、2ヶ月かけて終着地メキシコへ南下する旅を敢行します。そんな今回の展示作品は、「写真を撮ることは旅すること」と語っていたリブーらしい、アラスカ縦断中の驚きに満ちた旅の記録であり、写真史に残る名作です。走行中は、絶えず車のフロントガラスから氷を削り取らなければならず、パンクしたら凍え死ぬといわれていた過酷なアラスカ・ハイウェイ約2500キロの道程。その広大な未開の風景を、白いキャンバスに描かれる点描のようにレンズで切り取り、現地に暮らすエスキモーの生活を生き生きと活写しています。零下34度の中、氷に穴を開けて魚を釣る姿や、凍結した馬の死体が横たわる写真など、目を奪われずにはいられません。それはリブーの視点が、フォトジャーナリストとしてだけでなく、ヒューマニストとしても卓越しているからでしょう。同時に、リブーの美意識が反映された白と黒の絶妙なバランス、幾何学的なグラフィックとしての斬新さは非常に現代的であり、私たちをみることへの情熱で釘づけにします。「リブーの写真を“芸術作品”に昇華させているのは、そのイメージに色濃くにじみ出る独特の詩情である」とは、本展覧会のキュレーターである佐藤正子さんの言葉。その詩情をぜひ、展覧会場を訪れて実際に体感してみてはいかがでしょう?ココ シャネルの美意識とメセナ精神を踏襲する展覧会写真のみならず、空間全体もそこに漂う空気感も含め、透徹した美意識がすべてに行き届いた、こんなにも完成度の高い写真展が日本で楽しめるとは驚きです。(しかも無料で!)今さらながら、ピカソ、コクトー、ストラヴィンスキーら若き芸術家たちを支援し、革新的であることを追及し続けたシャネル女史のエスプリが、現在も脈々と受け継がれているのを感じ、白銀の世界が熱気で満たされる思いでした。リブーご本人は、高齢のため来日なさいませんでしたが、息子さんで建築家のテオ リブー氏がオープニングに際して挨拶し、「私はアラスカで、生涯一番寒い日々を過ごした」「世界の暴力より美しいものを撮りたい」というお父様の言葉を紹介。フランスの連続銃撃テロの直後だけに、「父がもし若かったら、レピュブリック広場に駆けつけて、デモに参加したでしょう」「リブーは自由な人々の味方です」と語り、やはり熱い想いを感じました。本展覧会は、2015年4月18日(土)~5月10日(日)、國際写真フェスティバル京都グラフィーの公式展覧会として、京都に巡回されます。京都展にもぜひ訪れたいと思います。
2015年01月21日