現代アーティスト、パメーラ・ジューン・クルックの個展「Dear Ms.Crook〜パメーラ・ジューン・クルック展〜」が、2018年7月8日(日)から10月21日(日)まで、福島・諸橋近代美術館にて開催される。パメーラ・ジューン・クルック(1945〜)は、英国生まれの現代アーティスト。変形カンヴァスを効果的に活用し、額縁にまで画面を拡張させて描く独創的な手法で知られる。1996年にイギリスのプログレッシブロックバンド「キング・クリムゾン」のリーダーであるロバート・フリップと知り合って以降は、度々CDジャケットのカバーアートに彼女の作品が使用されており、その世界観が世界的に広まっていく1つのきっかけとなっている。その一方で、諸橋近代美術館の創設者でコレクターの諸橋廷蔵(1932年〜2003年)が作品を購入した経緯も運命的なものであり、クルックの名が世に知れ渡る大きな要因となっている。1995年に美術館創設に向けた作品購入のためフランス・パリに赴いていた諸橋は、偶然クルックの展覧会に立ち寄り、展示されていた全ての作品を購入。この偶然の出会いがクルックと諸橋近代美術館の友好関係の始まりであり、これらの作品は、美術館の創設時に諸橋からサルバドール・ダリをはじめとする近代絵画とともに寄贈されている。国内では5回目のクルック回顧展となる本展では、同館が所蔵するクルック作品全31点を一堂に展示。この中には、2016年の企画展「ハロー、クルック 〜共感する記憶〜」開催をきっかけに新たに寄贈された4点の版画作品や、また同展で好評を博し新たに購入された、最新作を含む4点の絵画も含まれる。会場では、クルックが前述の諸橋廷蔵と出会った「1995年」、国内で初のクルック回顧展が開かれた「2001年」、新作を迎えた4回目のクルック回顧展が開催された「2016年」という、同館とクルックの深い関係性を象徴する3つの年度を大きなテーマとし、彼女の作品の全貌を紹介する。【開催概要】「Dear Ms.Crook〜パメーラ・ジューン・クルック展〜」開催期間:2018年7月8日(日)〜10月21日(日)会場:諸橋近代美術館(福島県耶麻郡北塩原村大字桧原字剣ヶ峯1093番23)時間:9:30〜17:30 ※入館は閉館30分前まで観覧料:一般 950円、高校・大学生 500円 中学生以下 無料※20名以上の団体料金は各50円引き。※教育施設対象の観覧料免除制度あり。(要事前申し込み)※身体障がい者手帳、療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳の所有者と付添い者1名は無料。
2018年05月20日第24回東京国際映画祭が10月30日(日)に閉幕し、フランス映画『最強のふたり』が最高賞の「東京サクラグランプリ」を獲得。日本から出品された役所広司と小栗旬が共演している『キツツキと雨』は審査員特別賞に輝いた。東京・六本木のTOHOシネマズ 六本木ヒルズをメイン会場に9日間にわたって開催されてきた今年の映画祭。のべ315回の上映に41,000人超の観客が足を運んだ。15本のコンペティション作品の中から東京サクラグランプリの栄冠を手にしたのは、白人の富豪と黒人の介護者の交流をコミカルに描いた『最強のふたり』。W主演のフランソワ・クリュゼとオマール・シーが揃って最優秀男優賞を受賞し、2冠に輝いた。本国フランスでまもなく公開を迎えることから、監督、キャスト陣はプロモーション活動のため来日は叶わなかったが、「アリガトウゴザイマス!」とメッセージを寄せ、エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュ両監督は日本公開時に来日することを約束した。最優秀女優賞は、19世紀のアイルランドを舞台に、性別を偽って男性の執事として生きる女性の姿を描いた『アルバート・ノッブス』主演のグレン・クローズが受賞。グレンも人気の主演海外ドラマ「ダメージ」の撮影でニューヨークに滞在中で、授賞式は欠席となったが、ビデオメッセージで受賞の喜びを語った。唯一の邦画コンペティション出品作となった『キツツキと雨』は「僅差の2位」(審査員キース・カサンダー)でグランプリ獲得はならずも、審査員特別賞に。受賞が発表されると会場は大きな拍手に包まれた。壇上に上がった沖田修一監督は「びっくりして上手くしゃべる自信がないです」と緊張した面持ち。「日本映画が1本ということでプレッシャーを感じていました。みなさんに『頑張って』と声をかけていただきましたが、『映画なので、もう出来てるから頑張れって言われてもな…』と思って(笑)」と語り会場の笑いを誘った。「本当に多くの人の力を借りて作った映画です。またここに帰って来られるように頑張りたい」とさらなる飛躍を誓った。最優秀監督賞に輝いたのは、スウェーデンにおける少年たちのいじめ事件を鋭い視点で描いた『プレイ』のリューベン・オストルンド。審査員のひとり、小林政広監督は「個人的には最高賞をあげたかった。素晴らしい作品」と絶賛。オストルンド監督は、家族同伴での初来日の喜びを語ると共に「子役たちに感謝したい。彼らは大人でさえも難しい役どころを見事に演じてくれた」と感謝の思いを口にした。最優秀芸術貢献賞は急遽、2作品に贈られることになり、中国映画『転山』とエイドリアン・ブロディ主演の『デタッチメント』が獲得。『転山』のドゥ・ジャーイー監督は松葉づえをつきながらステージに上がり「全く映画の専門の勉強をしたことがない、ただ映画が好きで夢を持っていただけの私がこの賞をいただいてよろしいのでしょうか?みなさん、見る目がおありです(笑)」と挨拶し会場をわかせた。一方、来日が果たせなかった『デタッチメント』のトニー・ケイ監督は、撮影中に書いたという自作の曲の引き語りのビデオメッセージで喝采を浴びた。また、会場を訪れた観客の投票で最も多くの票を集めた観客賞には『ガザを飛ぶブタ』が受賞した。このほか、日本映画を対象にした「日本映画・ある視点」部門で最優秀作品に選ばれたのは小林啓一監督の『ももいろそらを』。「アジアの風」部門の最優秀アジア映画賞には『クリスマス・イブ』が選出。エコロジー、地球への関わり方、自然と人間の共生などをテーマに持つ作品の中から選ばれる「TOYOTA Earth Grand Prix」はインドネシアの海洋民族を描いた『鏡は嘘をつかない』が獲得したほか、同部門の審査員特別賞はシベリアを舞台にしたドキュメンタリー『ハッピー・ピープルタイガで暮らす一年』が受賞した。今年の審査員を務めたエドワード・R・プレスマン(映画プロデューサー)、キース・カサンダー(映画プロデューサー)、レイコ・クルック(特殊メイキャップアーティスト)、ファン・ビンビン(女優)、小林政広(映画監督)の5人は授賞式後に記者会見に出席。グランプリを始めとするコンペティション部門に関して審査員の意見が分かれ、議論は紛糾したそう。特に監督賞の『プレイ』、審査員特別賞の『キツツキと雨』、グランプリの『最強のふたり』に関して審査委員長のプレスマンは「『キツツキ』はグランプリを獲るにはあまりに軽すぎ、『プレイ』は逆にダークすぎる。相対的な評価で『最強のふたり』が選ばれました。一方で監督賞に関してはみんなが『プレイ』を推しました」と説明。小林監督からは「刺激的な作品、芸術性に富んだ作品がほとんどなかった。ウェルメイドな作品が多く、監督の立場から言うと決してハードルが高いとは感じなかった」という厳しい言葉も飛び出した。<受賞一覧>東京サクラグランプリ:『最強のふたり』最優秀監督賞:リューベン・オストルンド(『プレイ』)審査員特別賞:『キツツキと雨』最優秀男優賞:フランソワ・クリュゼ、オマール・シー(『最強のふたり』)最優秀女優賞:グレン・クローズ(『アルバート・ノッブス』)最優秀芸術貢献賞:『転山』、『デタッチメント』観客賞:『ガザを飛ぶブタ』日本映画・ある視点(最優秀作品賞):『ももいろそらを』アジアの風(最優秀アジア映画賞):『クリスマス・イブ』アジアの風(スペシャルメンション):『ラジニカーントのロボット(仮)』、『鏡は嘘をつかない』、『TATSUMI』TOYOTA Earth Grand Prix:『鏡は嘘をつかない』TOYOTA Earth Grand Prix(審査員特別賞):『ハッピー・ピープルタイガで暮らす一年』特集「東京国際映画祭のススメ2011」■関連作品:第24回東京国際映画祭 [映画祭] 2011年10月22日から10月30日まで六本木ヒルズをメイン会場に都内各所にて開催© 2011 Tokyo International Film Festival All Rights Reserved.キツツキと雨 2012年2月11日より角川シネマ有楽町ほか全国にて公開© 2011「キツツキと雨」製作委員会アルバート・ノッブス© Morrison Films / Chrysalis Films 2011■関連記事:【TIFFレポート】新垣結衣、阿部寛と溝端淳平の“職務質問”に「興奮しました」【TIFFレポート】西島秀俊、“力石”伊勢谷友介も認める体脂肪ゼロの役作り!【TIFFレポート】仲里依紗、“妊婦パワー”で「日本を元気に!」宣言名匠が被災地に捧げる3分11秒の短編が東京初上映!ワークショップも開催決定【TIFFレポート】岡田将生&原田泰造通訳付き映画祭公式上映にハイテンション!
2011年10月30日現在開催されている「第24回東京国際映画祭」のコンペティション部門で審査員を務めるエドワード・R・プレスマン(審査委員長/映画プロデューサー)、キース・カサンダー(プロデューサー)、女優のファン・ビンビン、小林政広監督、レイコ・クルック(特殊メイクアップアーティスト)の5名が23日に東京・六本木ヒルズで公式会見に臨んだ。世代や国籍、キャリアもまったく違う個性豊かな審査員たちは、どのような視点で出品中の15作品をジャッジするのか。30日に発表される最高賞「東京サクラグランプリ」の行方を占う上でも、注目すべき会見となった。その他の写真「全体的に技術面、例えばキャスティングや照明、音楽といった要素がうまく調和しているかで判断したい。個人的には時代考証がしっかりしていないとダメ」と断言するのはカサンダー氏。「だから妻には嫌われるんだけど」と笑いを誘ったが、プロデューサーらしい視点であることは間違いない。一方、女優のビンビンは「表現的なテクニックよりも、ストーリーに感じ入るものがあるかが重要だと思う」と表現者としての審査基準を示した。昨年『ブッダ・マウンテン』で第23回東京国際映画祭の最優秀女優賞を受賞。今回は、コンペ部門に2本の中国製作作品がエントリーしているが、「国際的な映画祭ですし、何より大切なのは公正性。もちろん中国の作品が受賞したら、嬉しく思いますが」と語った。小林監督は故・黒澤明監督が残した「一度見たら死ぬまで忘れられない映画を作るべき」という言葉を引き合いに、「それこそが我々が見たいものであり、作りたいと願うもの。テクニックがあれば、それなりの映画が仕上がるかもしれないが、それだけでは……」。クルック氏は「映画とは人生を描くもの。ただエモーショナルに訴えかけるには、テクニックも必要になる」と裏方として映画を支え続けた“匠”の視点を示した。「テクニックか、エモーションか」。今年のコンペティション部門では、この命題が熱く議論されることになりそうだ。最後に審査委員長のプレスマン氏は「映画とは、常に新鮮でオリジナリティあふれるものが、人々の心をつかんできた。時代が変化する中で、映画に対する感受性も変わってきているはず。この時代だからこそのオリジナリティが生まれれば」とコメント。審査員5名の発言から、受賞結果を予想すれば、東京国際映画祭をより一層楽しめるはずだ。「第24回東京国際映画祭」30日(日)まで開催中
2011年10月24日