『モルガン・スタンレー 最強のキャリア戦略』(カーラ・ハリス著、堀内久美子訳、CCCメディアハウス)は、モルガン・スタンレー資産管理部門のバイスチェアマンであり、キャリアアドバイザーによる著作。自分のコンテンツ(=売りとなるもの)の見つけ方、成果貯金(=信用・評判・強み)を使ったさらなる成果の出し方、そして人間関係貯金(=昇進するために必要な人間関係)の貯め方と効果的な使い方を解説しています。そして著者は、本書を通じて多くのビジネスパーソンが、景気や社内政治の状況に振り回されることなく、成功の高みへと登っていくために必要な対策と手段を見つけられることを願っているのだとか。今日はステップアップについて書かれた第1部のなかから、「成果貯金」という考え方をご紹介したいと思います。■成果をあげて得た信用が成果貯金に成果貯金とは聞きなれない言葉ですが、著者によればそれは、職務をきちんとこなし、個々の仕事ですぐれた成果をあげることで生じる信用や評判、強みのこと。「予想より早く仕事を終えた」「求められている以上の分析や考察を加えた」「創造的で明快、建設的な方法で情報を提示した」など、常に期待される以上の結果を出すと、「成果という貨幣」の貯金ができるという考え方です。つまり、成果貯金=(知性+経験+効果的な実行)×頻度となるわけです。ウェブスターの辞書では、「貨幣」は「交換の媒介物として流通しているもの」と定義されているそうです。つまり評判がよく、すぐれた成果を上げたという実績があれば、それと「交換」できるものを持っているということになるのです。それは、誰もが就きたがる社内のポスト、昇給、上級幹部への紹介、意思決定会議で尊重される発言権、大きな取引で担当チームに加わること、顧客の前でプレゼンテーションする機会、ミスをしたときの埋め合わせをするチャンスなど。■成果貯金がなければ前進できない!著者によれば成果貯金はきわめて有益で、なににも代えられないもの。組織内で政治力がなく、特に際立った地位でもない場合には、特に重要になるといいます。なぜなら駆け出しのころは、どんな組織にいたとしても、その種の力は持っていないものだから。そこで新しい組織に入ったら、早いうちに点数を稼ぎ、成果貯金を手に入れることが大切。具体的には、与えられた仕事をきちんと実行し、その仕事ぶりを上司とまわりの人に認めてもらう必要があるわけです。成果貯金がなくては、昇進もなければ、組織内での認知度を上げるような任務に抜擢されることもないからです。そして成果を出したことは、上司か、もしくは組織内で信用と権限を持つ人物に承認してもらうことが必要。そうして初めて、成果貯金に価値が生まれるからです。いくら自分で素晴らしい仕事をしたと思ったとしても、誰もそれに気づいてくれなかったり、組織が努力や仕事を評価してくれなかったりしたら、昇進や昇給、異動のチャンスのきっかけとはなりません。上司が成果を認める機会や方法はさまざまですが、重要なのは、自分が組織に対してしたことが、組織内の人から評価され、期待どおりかそれ以上の成果を出したといわれること。■新環境で成果貯金を手に入れる方法組織に新人が入ると、その人の品定めがはじまるのは人の世の常。そして「新しい環境に馴染むのに苦労している」とか、「よそよそしい」と思われたりしたら、成果貯金をはじめる前から成果という貨幣価値が下がることになるのです。また、はじめにあまりミスをしすぎると、期待以下の人間だと決めつけられ、場合によっては「組織にふさわしくない」という烙印を押されることも。人はすぐに思い込みや決めつけをするものなので、一度誤解を受けると自分の貨幣価値が傷つき、貯金が難しくなりかねないということ。そこで新しい仕事をはじめたり、新しい環境に入ったりするときは、必ず最初の24時間から48時間で手早く点数を稼げる方法を見つけたほうがいいと著者はいいます。そして同時に、「約束は小さく、成果は大きく」の考え方を実践することも重要。つまり、どんな仕事であっても、求められたことより大きな成果を出すよう努力すべきだということ。たとえば上司から「午後2時までに仕事を上げるように」といわれたら、午前11時までに仕上げるようがんばってみる。ある企業に関する調査報告を作成するようにいわれたら、その企業の最大の競合企業についても調べ、簡単に2社の比較分析をしてみる。そうした努力をするのです。まったくなじみのない環境や業界に入った場合、簡単に成果貯金をはじめるには、自分の仕事について知的で鋭い質問を同僚に投げかけてみることだといいます。一緒に働く人に、そうした“考えさせるような質問”をすれば、自分が仕事についてよく検討し、どうすれば成功するかを考えていることが伝わるから。つまり、「きちんと仕事をする人なのだろう」という認識と期待が生まれるわけです、*このように、著者の主張は力強く、そして明快。そのすべての方法論が日本の企業でのビジネスに応用できるとは限らないかもしれませんが、それでも役立つ部分は多いはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※カーラ・ハリス(2016)『モルガン・スタンレー 最強のキャリア戦略』CCCメディアハウス
2016年09月13日誰でも1着は持っているユニクロの服。ベルメゾン生活スタイル研究所が20~60代の女性を対象に行った調査によると、直近1年間に購入したブランドで最も多かったのは「ユニクロ」で、全体の71%にものぼりました。そんなユニクロの服を上手に着こなす女性たちは「ユニジョ」といわれ、インスタグラムで日々コーディネートがポストされ盛り上がりを見せています。『ユニジョ×リアルコーデBOOK』(扶桑社)は50人のユニジョのリアルコーディネートが満載。どれもプチプラに見えない着こなしばかりです。今回は本書の中から、コーディネートの色使いのコツをご紹介します。■1:抜け感を出すには「白」を追加するコーディネートに使うのは3~4色までにするのが基本ですが、色ものばかりだと暑苦しい印象になりがち。そこで抜け色である「白」を取り入れましょう。例えばピンクのシャツとブルーデニムのコーディネートの場合、シャツのボタンを3~4つあけて、インナーの白を見せます。カチッとしたシャツとパンツのスタイルなら白ニットを肩にかけて結びましょう。これだけで抜け感を出すことができ、明るさとメリハリが生まれます。また、抜け感を出したいときは手元、足元、首元の肌見せも効果的。パンツをロールアップする、袖を折る、髪をまとめるなどしてみましょう。■2:しっかり締めたいときは「黒」を取り入れる甘すぎる印象を避けるには黒を取り入れましょう。例えばチェック柄のシャツを選ぶときも、黒が入ったものにするとカジュアル感が抑えられて幼く見えません。■3:小物を同系色で合わせるとまとまりが出るベージュのパンツにはベージュの靴など、ボトムスと靴を同系色で揃えると縦のラインが強調されて脚長効果が生まれます。また、靴とバッグを同系色でそろえるのも統一感が出ておしゃれです。■4:「青」と「黄色」の組み合わせはハズレなし!系統の違う色を組み合わせるときは、反対色の組み合わせがおすすめだそう。特に便利なのは青×黄色のコーディネート。青系はネイビーやデニムのブルー、黄色系はベージュやキャメルなど使い勝手のよいアイテムがたくさんあります。薄いブルーのストライプシャツとベージュのパンツなどはオフィスにもぴったり。また使い勝手のよいキャメルのニットにはゴールドのアクセサリーが相性のいい組み合わせです。■5:ワントーンコーデには濃い色の小物を使うワントーンや淡い色どうしのコーディネートはメリハリが少ないので、濃い色や反対色の差し色を。ただし、悪目立ちしないようにベルトや小さなバッグなど面積の少ないもので取り入れるのがコツです。また、白のワントーンコーデにネイビーのハットなどでコントラストを出すとぼやけた印象になるのを防ぐことができます。■6:赤ニットはデニムと合わせるのが王道赤ニットは着るだけで気持ちの上がるアイテム。赤のVネックニットに少しゆるめのデニムを合わせると女性らしく着こなせます。また赤のケーブルニットもコーディネートに取り入れやすく人気。ニットはネックの形状やサイズ感で印象が大きく変わります。ビッグサイズでゆったり着る、ジャストサイズで女性らしく着るなど、自分の作りたいイメージにあったものを選びましょう。■7:キッズアイテムは色のコントラストをつけすぎないユニクロのメンズアイテムやキッズアイテムをコーディネートに取り入れるのも人気。ただし、アイテムの合わせ方によっては野暮ったくなってしまうので要注意。例えばキッズサイズのスカートは上下でコントラストをつけすぎると子どもっぽく見えます。セットアップ風に同系色でまとめるか、タイツとスカートを同じ色でまとめて落ち着いた印象にしましょう。ストールやサングラスなどの大人っぽい小物を投入するのもおすすめ。*ユニクロの服はシンプルだからこそ「いかにもプチプラ」にならないようなアイテムの組み合わせや色使いの工夫が必要ですね。おしゃれなコーディネートを見ていると、すぐにでもユニクロに行きたくなるのではないでしょうか。今まで着たことのないようなアイテムも思い切ってチャレンジしてみては?(文/平野鞠) 【参考】※扶桑社 編集部(2016)『ユニジョ×リアルコーデBOOK』扶桑社※「ファッション」に対する意識や価値観、購入の実態等調査-ベルメゾン生活スタイル研究所
2016年09月13日これまでに何度かご紹介した「『やるじゃん。』ブックス」は、社会人なら知っておきたい基本を身につけることを目的とした“フレッシュパーソンのためのあたらしい教科書”。『世界一わかりやすい ビジネス最重要ワード100』(ディスカヴァークリエイティブ著、ディスカヴァークリエイティブ)はその最新刊で、今回はビジネスに欠かせない重要ワードがテーマになっています。きょうはCHAPTER 5「金融経済基本ワード」のなかから、いくつかのキーワードを引き出してみましょう。■1:景気「景気」とは、経済活動の活発さを示す言葉。つまり、「市場全体で、どれだけお金が回っているか」ということです。ものがよく売り買いされ、活発にお金のやりとりが行われていれば「好景気」で、行われていなければ「不景気」ということになるわけです。だから、ひとつの会社だけが儲かっていたとしても、他が停滞していれば「景気がよい」ことにはならないということ。好景気のときは、市場にお金がある状態。お金があると自然にものが売れるため、値段が上昇。すると人は「時間が経つと値段が上がりそうだ」と判断するので、さらにものを買うようになります。逆に不景気のときは、あまりお金がない状態。人は「少しでも安いものを買おう」と判断するので、価格の低いものがよく売れるようになるわけです。つまり企業としては、好景気のときには価格の高い商品、不景気のときには価格の安い商品を販売したほうが、より売上を伸ばせるのです。なお景気は一定ではなく、常に変化するもの。そんななか、好景気であるか不景気であるかは、企業の設備投資の動向や求人状況、物価やGDP(国民総生産)の変化、家計の収入と消費の割合などを調査して判断することが可能。■2:インフレ・デフレ「インフレ」と「デフレ」は、どちらも物価の変動を表した言葉。インフレは「インフレーション(Inflation)の略で、物価が持続的に上昇していくこと。デフレは「デフレーション(Deflation)の略で、物価が持続的に下落していく状態。どちらもネガティブな意味で使われがちですが、どちらにもメリットとデメリットがあるといいます。まずインフレになると、ものの値段が上がるので、商品が売れれば企業の売り上げも伸びていきます。すると社員の給料も増え、市場に流れるお金も増え、経済か都度いうが活発になるわけです。しかし急激にインフレが進むと、市場にお金が流れる前に、ものの値段が上がりすぎてしまいます。こうなると消費者はものが買えなくなり、企業にもお金が入らなくなって、経済活動に歯止めがかかることになるのです。一方、デフレの状態ではものが安く買えるため、物価が高いときよりも多く売れるようになります。企業の売り上げが伸び、社員の給料が増えるので、経済活動が活発になります。しかしデフレが続くと、消費者はより安いものを求めるようになります。企業は値下げを続けなければ他社との競争に勝てなくなるため、どんどん物価を下げるようになります。すると売り上げは落ち込んでいき、経済活動が停滞します。つまりインフレもデフレも「適度なら経済活動を活発にするけれど、急激に進んだり、長く続いたりすると、経済活動を停滞させてしまう」という意味で、同じメリットとデメリットを持っているということ。だからこそ、どちらかに偏りすぎないようにすることが重要であるわけです。■3:円高・円安日本を含むほとんどの先進国は、市場の需要によって通貨の交換レートを変更する「変動為替相場制」を取り入れています。そのため、1ドルを何円で交換できるかは、交換するタイミングによって異なるわけです。そして、それまでにくらべ、1ドルの交換にかかる円が少ないときが「円高」で、1ドルの交換にかかる円が多いときが「円安」。1ドル=80円の円高になると、輸出においては1,000円のバッグを800円で売ることになりますから、200円の損。一方、輸入の場合は1,000円のバッグを800円で買うことになるので200円の得。1ドル=120円の円安になると、輸入では1,000円のバッグを1,200円で売ることになるので200円の得。輸入の場合は1,000円のバッグを1,200円で買うことになるため200円の損。基本的に、商品を輸入するときは円高のほうが得で、輸出するときは円安のほうが得になります。また円高のときには、国内の海外製品の値段が下がります。すると国内製品も値下げせざるを得なくなるため、全体として物価が下がり、経済はデフレ化していきます。円安の場合はその逆で、インフレ化していくということ。つまりは円とドルの交換レートが変動すると、国内経済にもかなりの影響が出るのです。*新人であろうとベテランであろうと、「あの言葉の意味を知りたいけど、人に聞くのは恥ずかしいなぁ」と思ってしまうことはあるもの。しかし、これさえあればそんな悩みを解消できるはず。そういう意味では、年齢やキャリアに関係なく読める内容だといえます。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※ディスカヴァークリエイティブ(2016)『世界一わかりやすい ビジネス最重要ワード100』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年09月12日呼吸とは、単に「息を吸う・吐く」ということだけではなく、筋肉や関節、内臓や免疫、循環、体と心のすべてに対する根本的な用途として関わってくるもの。『なにもしていないのに調子がいい ふだんの「呼吸」を意識して回復力を高める』(森田敦史著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は、そう主張します。13歳でクローン病という腸の難病(特定疾患)を患い、チック症、自損、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・腰椎椎間板ヘルニア、両股関節骨折、関節の炎症や変形など、数々の病気を経験してきたという人物。壮絶というしかありませんが、そんななか、ある呼吸の仕方で苦痛が和らぐことに気づいたのだとか。そして呼吸を整えて過ごすと、ひどかった症状は1年も経たないうちにほとんどなくなってしまったというのです。しかもそれ以来、15年以上、症状が出ることはなく、仕事のパフォーマンスも上がったのだというのですから驚きです。そんな経験があるからこそ、著者は「息を吸って、吐く」ことの意義を強調します。ただそれだけの呼吸に、体調や体質、仕事のパフォーマンスに関わる多くの情報が隠れていると断言するのです。そして重要なのが、自分の呼吸の幅をつかむこと。そのために大きな意味を持つという、「5つのステップ」をご紹介しましょう。■1:自分の呼吸のエリアを知るやり方は簡単。まず、息をはなから吸えるだけ吸ってみてください。しかも胸式・腹式といった意識はなくし、自然呼吸法で自然に吸うというのです。そして、「もう吸えない」というところまで吸ったら、今度は口から「スーッ」と、もうこれ以上吐けないというところまで空気を吐く。この作業でわかるのは、これ以上吸えないという「最大吸気点」と、これ以上吐けないという「最大呼気点」。この呼吸幅が、自分の呼吸のエリアだというわけです。■2:呼吸による「脹らむ力」と「しぼる力」をつかむ次にもう一度、同じように息を鼻から吸ってみましょう。吸えば吸うほどに体の内側から外側に張るような力、つまり「脹らむ力」を感じるはず。吸いきったところは、その脹らむ力のピークです。そして今度は、ゆっくりと口から「スーッ」と吐いていく。すると体が脹らむ力の分だけ、息が自然に出ていくわけです。少しずつ吐いていくと、脹らむ力が弱くなっていき、やがて自然に息が履けなくなります。そして、一定以上吐いていくと、下腹部がへこみ、体がしぼむような力を感じるといいます。吐けば吐くほど、しぼむ力は強くなり、吐ききったところがその力のピーク。感じたのは、呼吸による「脹らむ力」と「しぼむ力」、そしてその強弱。この力をいかに繊細に感じ取れるかが、自分の体を知る上で重要だといいます。■3:脹らむ力としぼむ力の切り替わり、中心をつかむ息を最大吸気点まで吸い、吸いきったところからゆっくり吐いていきます。吐いていくに従い、脹らむ力は弱くなり、どこかの時点で脹らむ力を感じなくなり、自然に息が出て行かなくなり、それ以上吐くとしぼむ力が働きはじめるのだとか。その切り替わりポイントが「中心」なのだそうです。■4:呼吸エリアを4分割する次は呼吸エリアを、1~4までに4分割するステップ。息を吸いきったところと、息が自然に出ていき、脹らむ力を感じなくなったところの中間が上半分の中心。感覚としては、胸や肩に張る力を強く感じるところ(エリア1)、脹らむ力は感じるが胸や肩に張る力をそれほど感じないところ(エリア2)の境あたり。そして、自然に出ていく息がなくなったところから、ほんの少し吐いてみます。すると、しぼむ力が少しだけ働き、肩や胸、背中の力がふっと抜ける感覚が来るそうです。そこがエリア3。そこからさらに吐いていくと、下腹部がへこむような力が働きはじめ、そこから履けば履くほどに息を吸いたくなる欲求が強くなるといいます。そこがエリア4。この「下腹部がへこむような、しぼられるような力が働きはじめるところが、呼吸の下半分。すなわちエリア3とエリア4の境だというわけです。■5:呼吸エリア3の上限と下限をつかむところで私たちはふだん、どの呼吸エリアで吸ったり吐いたりしているのでしょうか?体調や体質に大きな影響を与えるため、これは極めて重要なポイントだと著者は強調します、そして答えから先にいうと、人間にとって、もっとも体に負担をかけない呼吸エリアは「エリア3」なのだそうです。息を吸って、脹らむ力を感じ、そこから自然に吐けている最終地点が上限。これ以上履こうとすると、意図的に履かなければならないところだそうです。別な表現を用いるなら、体が脹らむ力を感じなくなったところ。そして、吐いていく息でお腹がへこむような、しぼられるような力が生まれる手前が下限。この下限と上限の間の呼吸エリア3が「呼吸のニュートラル」。これは体に負荷を与えずに、適度な体の緩みが実現できるところ。精神にも落ち着きをもたらす、自然治癒力がもっとも働きやすい呼吸状態の場所だとか。だからこそ、「日常のなかでこの上限と下限のエリアを起点として呼吸できているか?」ということが重要になってくるのだそうです。*呼吸エリア3を意識することは、日々のコンデイションを整えるために重要。そこで、この5ステップを実践し、感覚をつかんでみてはいかがでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※森田敦史(2016)『なにもしていないのに調子がいい ふだんの「呼吸」を意識して回復力を高める』クロスメディア・パブリッシング
2016年09月11日『人生が劇的に変わる脳の使い方』(加藤俊徳著、PHP研究所)の著者は、脳の専門家として活躍する医学博士。これまでにも、『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』(あさ出版)など多くのベストセラーを生み出しています。そんな著者は現在50代。30年以上にわたる脳研究の結果、「すべては『脳の使い方』で決まる」という結論に達したのだそうです。そしてそれが、本書のテーマにもなっています。ほんの小さな変化の積み重ねが自分の行動を変え、やがて自分の脳を変えていくというのです。そればかりか、いずれは他人の行動をも変えていくことになるのだとか。そして著者は、脳の成長にとって重要なのは「勉強」ではなく「経験」だとも主張しています。小さな気づきが、“経験=日常のすべて”を脳の成長に変えるという考え方。「脳の使い方」とは、「他人につけられるスコアではなく、自分で自分にスコアをつけて脳をデザインする」こと。いいかえれば、「学校脳」から「社会脳」への転換を図ることが大切だというのです。学校を卒業して自由なはずなのに、学歴や他人の評価ばかりを気にして、自分らしい生き方をできていない……。そういう現実が、多くの人々を苦しめる脳のクセだということ。そのために必要なメソッドを、ひとつご紹介しましょう。■「未来から来た人になる」思考をすべし成長を続けるためにもっとも大切なことは、「未来から来た人になる」思考をすることだと著者はいいます。すなわち、自分が設定したゴールから、すべての行動を完全に逆算して考えていくということ。なぜなら目標が具体的でないと、脳はいつまでも取りかかる準備をはじめないから。そのため、締め切り間際になってようやく取りかかり、「あと1週間あればなんとかなったのに……」と、いつも後悔してしまうわけです。別な表現をするなら、脳は漠然と考えているだけでは、いつまでたっても行動に移そうとはしないということ。「最近体力が落ちてきたから、体を動かさないとな」「やっぱり英語くらいは話せるようにしておかないとな」などと、あいまいに「そのうち」「いつか」で考えているだけでは、脳は働かないのです。大切なのは、1年後(あるいは10年後)の自分が「マラソンを完走する体力をつけている」「TOEIC(R)で800点をとっている」などの具体的なゴールを設定すること。そして、目標を達成している“未来の自分”が、“いまの自分”になにをやってもらいたいのかを考える。それが、「未来から来た人になる」という発想。■数値化すればいまの状況が正確にわかる具体的にいえば、自分の置かれた状況を必ず「数値」に置き換えて、できる限り正確につかむということ。著者の場合は、目標までの日数と月数を正確に数え、「きょうは345日目で12カ月前だ」とか、「あと408日で14カ月を切った」というように管理しているそうです。上記のTOEIC(R)の例について「TOEIC(R)で800点をとる」という目標を設定したとしましょう。目標を達成するための問題集を買い、試験日から逆算して○月○日までに計3回演習しようと計画を立てたなら、「1日あたり○ページ」という数値が出ます。そして、これを遂行するにあたっては、・現在、目標達成率は何%か・予定スケジュールから何%遅れて(進んで)いるか・遅れを取り戻すにはどうすればよいかというようなことを定期的にチェックすることが大切だというのです。■最低でも週1で目標数値はふり返るべしまた、それらの具体化した数値を手帳に書き込むなどして、できれば毎日、少なくとも週に一度は振り返るようにすることが大切。そうすることで、新しい気づきが生まれるからです。さらに残りの日数もつけると、1日のモチベーションを保つことができるので、できるだけ細かい進捗状況を記録していくと効果的だそうです。いわば定期的に目標達成率をふり返り、少し遅れがあるならペースを上げるなど対処することによって、締め切り間際に焦るというようなことがないように自分を律していくということです。なお、「いますべきことが見当たらない」のであれば、「夏季休暇でスウェーデン旅行へ行くために12カ月(1年)で50万円貯める」などの目標でもかまわないそうです。趣味であっても、数値で客観的に把握する習慣が身につけば、仕事においても「やる気が出ない」「追い込まれてテンパッてしまう」という事態を回避できるようになるわけです。*全体的に「学校脳」の人と「社会脳」の人を対比しながら話が進められるので、とても理解しやすい内容。脳を使いこなすために、ぜひ読んでみてください。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※加藤俊徳(2016)『人生が劇的に変わる脳の使い方』PHP研究所
2016年09月11日『なぜ、あなたは変われないのか?』(古川武士著、かんき出版)のテーマは、「ビリーフ」。聞きなれない言葉ですが、著者によればそれは、私たちの行動や感情を突き動かす思考習慣。幼少期からずっと、私たちの無意識下で行動・感情を操ってきた、「心のずっと奥にある根深い思い込み」なのだそうです。つまりは過去の失敗体験や嫌な記憶が悪循環のスパイラルを生み、自分自身を苦しい人生へと導いてしまうということ。ビリーフを変えることができなければ、いつまでもずっと同じパターンを繰り返すことになるというのです。しかし、だとすれば、もしビリーフ(根深い思考習慣)を上手に扱うことができれば、何十年と繰り返してきたイライラや自己嫌悪・不安・徒労感から解放されるということになるはず。本書も、そこに焦点を当てているわけです。著者は、「習慣化コンサルタント」として活躍している人物。10年前までは「“こうなりたい!”という理想がありながらも実現できない」状態だったそうですが、ビリーフを扱えるようになった現在は、状況が一変したのだといいます。たとえば本を書いたり、国内外で講演を行ったり、多くの人とプロジェクト型で仕事をしているものの、イライラすることはほぼ皆無だというのです。なぜなら、イラッとすることはあっても思考でコントロールすることができるから。それが、ビリーフの力。なんでも「完璧にしなくてはいけない」という強迫観念が消え去り、力の入れどころと抜きどころがはっきりし、その結果として仕事ではメリハリがつくようになったからこそ、疲れることはないのだということ。ビリーフのこうした効力を前提としたうえで、本書のなかから興味深いエピソードを抜き出してみましょう。■30件アポ電すれば1回は反応がある著者は新人時代、情報システムの営業部に配属され、新規顧客開拓担当になったことがあるそうです。会ったことすらない企業に電話をかけるところから仕事がスタートするわけで、当然のことながら、電話をかけてもそっけない態度で断られることの連続だったといいます。だから「こんなことをやっていても、会ってくれる会社はないよ」という気持ちを抱えながら電話をしていたそうですが、15社目の担当者が「じゃあ、一度話だけ聞きましょうか?」といってくれたというのです。そして、以後も毎日アポ電話をかけ続けた結果、わかってきたことがあったのだといいます。それは、「30件に1回はアポが取れる」という確率。そのように考えれば、29回そっけなく断られることのダメージが少なくなるということ。なお大量に電話をかけ続けた結果、2期連続でトップの営業成績になったというのですから、そこには強い説得力があります。■1冊目は33の出版社に企画書を郵送著者は13冊もの本を書いてきた人物で、いまでも多くの執筆依頼を受けるそうですが、6年前に初めての本を出したとき、出版業界に知り合いはひとりもいなかったのだそうです。そんなときにも、役に立ったのがビリーフ。具体的にいうと、「人生における願望は、大量行動すれば実現する」というビリーフを適用したというのです。そこで、まず考えたのは、多くの出版社に自分の本のアイデアを見てもらおうということ。自分の本棚に並ぶ、大好きな本を出版している会社をリストアップし、計33社に一気に企画書を郵送してみたのだそうです。すると、2日後に2件、面会の連絡が。さらにはその2にも4件と、次から次に連絡が来て、最終的に11社からのオファーを受けたというのです。大量行動をした結果、新人でありながら出版社を選べる立場でスタートできたということ。そんな経験があるからこそ、著者は、「大切なことは確率論で考え、大量行動する」ことの大切さを訴えているのです。■まずは量を試せば可能性が開けてくる「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」ということわざがありますが、著者もまた、「量を試せば可能性が開けてくる」というポジティブビリーフを持っているということなのでしょう。自分がすでに体験し、経験から信じているポジティブビリーフを、人生の要所要所で適用するという考え方が、人生によい影響をもたらすというわけです。だからこそ著者は、「まず自分の成功体験を具体的に思い出してみてください」と読者に呼びかけています。きっと、好ましいビリーフが眠っているはずだから。*このように本書では、著者やさまざまな人の成功体験を引き合いに出しながら、ビリーフの重要性を説いています。手にとってみれば、そこから新しい道が開けるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※古川武士(2016)『なぜ、あなたは変われないのか?』かんき出版
2016年09月10日『ライザップはなぜ、結果にコミットできるのか』(上坂徹著、あさ出版)は、「結果にコミットする」でおなじみライザップのビジネスモデルを明かした書籍。本書を書くにあたり、著者は2ヶ月間にわたって実際にライザップを体験したというので、文字どおりのドキュメンタリーだといえそうです。■国内会員数は前年の2倍に増加している2015年12月末時点でのライザップの累計国内会員数は、前年の同時期にくらべて2倍以上に増加。それどころか、店舗によっては1ヶ月待ち、2ヶ月待ちのところもあるのだとか。そんなこともあって現在、店舗数の拡大や採用・研修の強化を行い、少しでも早くゲスト(ライザップでは、通っている顧客のことをこう呼ぶそうです)にトレーニングを開始してもらえるようにしているのだといいます。初年度に10店舗からスタートした店舗数も、現在は全国主要都市78店舗(2016年7月現在)に増加し、出店ラッシュはいまも続いているというのですから驚くしかありません。■ライザップの事業はボディメイクであるゲストの男女比は4対6で、年齢層は30代から40代が中心。しかし著者によれば、実際にはもっと幅広い層の人たちがライザップを利用しているのだとか。そして特徴的なのは、通いはじめる人の目的の大半がダイエットではあるもの、「ダイエットをする必要があるのか?」と思えるような細身の女性までもがゲストとして通っていることだといいます。実際、女性では20代も多いそうですが、それは、痩せるためにというよりも、「メリハリのある美しいボディになりたい」という人が多く存在するから。つまりライザップが手がけているのは、ゲストに痩せてもらうことだけではなく、本人が求める健康的かつ魅力的なボディに生まれ変わらせることだというのです。細身の女性であれば、トレーニングによって筋肉をつけることで、その姿を変えていくわけです。ライザップが自分たちの仕事を「ボディメイク」と呼んでいるのは、そんな理由があるから。文字どおり、ゲストの「ボディをつくっている」わけです。■メタボ対策のために利用するシニア層もそして、もうひとつ特筆すべきことがあります。60代以上のシニアも、男女ともゲストの4%以上存在するというのです。最近はメタボリックシンドローム対策を含め、健康になるため、あるいは運動不足解消のためにライザップを使うという人が増えているというのです。実際、ゲストのなかには生活習慣病に悩まされている人も多いのだとか。これは、少しばかり意外な事実でもあるのではないでしょうか。加えてシニア層からは、「長い人生を見越して、足腰の筋肉をいまのうちにしっかり鍛えておきたい」という声も多数。つまりライザップは外見のボディメイクを実現したいというニーズのみならず、内側から健康な身体をつくっていきたいというニーズをも引きつけていることになります。■不満なら全額返金がハードル高い印象にいうまでもなく、ライザップ人気を支えているのは、一度見たら忘れられないテレビCMでもおなじみの「結果にコミット」。目指すべき目標を、確実にクリアさせるという宣言です。そして、大きなインパクトを感じさせたことがもうひとつ。もし、そのプロセスに満足できないのであれば、1ヶ月目までに申し出れば、支払った全額が返金されるという「無条件全額返金保障」がそれです。そこまで自信があるということなのでしょうが、その一方、ライザップに「厳しい」というイメージがつきまとっていることもまた事実。それが少なからず、「やってみたいけど、ちょっと……」という気持ちにつながっているであろうことも否定はできないわけです。■約7割の会員が終了後もサービスを延長ところが著者は、取材時に聞いた話に驚かされたのだといいます。ライザップでは定めた一定期間のプラン(たとえば2ヶ月など)を終えたあと、継続のプログラムや、月に数回程度の安価な延長プログラムが用意されているのだそうです。そしてゲストの実に約7割が、サービス延長を申し込むというのです。そればかりか、新しいゲストの約3割は、紹介や口コミによるものだとか。もし、最初の2ヶ月程度の期間が、噂どおり厳しくひどい状況だったとすれば、延長をしたり、人を紹介したりしようなどとは思わないはず。しかも本人は、きちんと「結果にコミット」しているのだから、目標は達成できていることになります。にもかかわらず、どうして延長するのかといえば、「もっと上の新たな目標」ができるから。ライザップで成功できた自信から、さらに新しい挑戦に踏み出したくなるわけです。それだけの自信を手に入れることのできるメソッドが、ライザップにはあるということ。*こうした事実を立証すべく、以後の章には著者自身の体験記も収録されています。事実に基づいているだけに、説得力抜群。多少なりともライザップのことが気になっている人は、まず本書を読んでみるべきかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※上坂徹(2016)『ライザップはなぜ、結果にコミットできるのか』あさ出版
2016年09月10日「どれだけ眠っても疲れがとれない」「集中力が続かない」……。そんなことを感じる人は脳が疲労している証拠。『世界のエリートがやっている 最高の休息法』(久賀谷亮著、ダイヤモンド社)によると、睡眠をとったり、ゆったりと過ごすなどしたりしても脳の疲れは回復することはないといいます。脳は体重の2%ほどの大きさでありながら、身体が消費するエネルギーの20%をも消費しています。しかも、脳の消費エネルギーの60~80%はデフォルト・モード・ネットワークという、脳が意識的な活動をしてきないときにも動き続ける脳回路に使われているのです。そのため、ただ何もせずぼんやりしていても脳はどんどん疲れていくそう。そんな脳を休息させることができるのが「マインドフルネス」。これは、瞑想などを通じた脳の休息法の総称。Googleをはじめ、有名企業でも多く採用されているこの方法の効果は科学的な裏付けが進みつつあります。今回は本書の中から、その一部をご紹介します。■1:脳が疲れたら「現在」を意識する注意散漫になったり、無気力になったりするのは脳が疲れているサイン。このような状態のときは「こうすればよかった」や「こうなったらどうしよう」などと知らず知らずのうちに意識が過去や未来にばかり向かっています。このように意識が「いまここ」にない状態が続くと、心はどんどん疲弊していくのです。そんなときは、「マインドフルネス呼吸法」が有効。椅子に座って背筋を軽く伸ばし、お腹はゆったりとリラックスします。次に自分の身体の感覚に意識を向けていきます。足の裏が床に触れている感覚や、手が太ももに触れている感覚を感じてみます。そして、次は呼吸に意識を向けます。深呼吸ではなく自然な呼吸で、空気が鼻を通る感覚や胸が膨らむ感覚、吸う息と吐く息で温度が違うことなど細かく注意を向けていきます。その間に、他の考えが浮かんでしまうこともありますが、それに気づいたらまた静かに呼吸に注意を戻せばOKです。なぜこんなに呼吸を意識するかというと、「いまここ」に注意を向けるため。それにより脳を休息させることができるのです。脳は習慣を好むため、これを1日5分でも毎日、同じ場所、同じ時間に行うことが大切です。■2:マルチタスクが多いときは自分の動きに注意を向ける何かをしながら、別のことをするようなマルチタスクの状態が続くと注意力や集中力が低下することがあります。莫大な仕事量を効率よくこなせる人ほど、実は集中力を1箇所に固定することができなくなっています。そういう人には「歩行瞑想」がおすすめ。歩いているときに自分の手や足の動き、地面と接触する感覚などに注意を向けていくのです。そして自分の動き一つ一つに「右」「左」や「上げる」「下げる」などラベルを貼るように意識するとさらに効果的です。このように自分の動きに注意を向けて「いまここ」を意識する方法は、Googleの社員研修プログラムでも取り入れられているそうです。歩行だけでなく、歯を磨くときや服を着るときなどにも応用することができます。毎日決めたタイミングで行いましょう。■3:自分の心は「プラットホーム」だとイメージする頭の中が様々な雑念でいっぱいの状態を「モンキーマインド」といいます。脳は莫大なエネルギーを消費するため、モンキーマインドの状態だと疲れやすくなります。反対に、この状態を脱することができれば、集中力や判断力、創造性などを高めることができるのです。そのためには、考えに対して「傍観者」であることが大切。自分の心は電車が行き交うプラットホームであり、様々な考えは電車のように一時的に駅に停車してもまたすぐに去っていくもの。そのようにイメージして「考えている自分」と「考えていること」を同一視しないようにしましょう。そうすることで心の中にスペースを持つことができるでしょう。■4:怒りが湧いてきたら4つのステップで処理する怒りは、脳が自分を守るために発動させる「緊急モード」のようなもの。アドレナリンが分泌されて脳の思考活動が抑制されるため、前後の見境がなくなることもあります。怒りや衝動を抑えられないときは、以下の4つのステップが有効。英語の頭文字をとって「RAIN」といわれています。(1)認識する[Recognize]自分の中に怒りが起きていることを認識しましょう。その際、「怒り」と「怒っている」自分は同一視しないことが大切。(2)受け入れる[Accept]怒りが起きていることをそのまま受け入れます。(3)検証する[Investigate]自分の身体にどのような変化が起きているか検証します。心拍はどうなっているか、どこが緊張しているかなど観察してみましょう。(4)距離をとる[Non-Identification]自分の感情を個人的なものとして捉えず、「他人事」のように考えてみます。この4つのステップは怒りだけでなく、甘いものを食べたいというような衝動にも有効。禁煙にも効果があるといわれています。*本書はストーリー仕立てで構成されているので、実際にレクチャーを受けているような気分になれるはず。マインドフルネスを継続すると、一時的な疲労解消ではなく、疲れづらい脳が手に入るといいます。少しの時間でも毎日の習慣に取り入れてみてください。(文/平野鞠) 【参考】※久賀谷亮(2016)『世界のエリートがやっている 最高の休息法』ダイヤモンド社
2016年09月08日普通、移住しようということになったら、まずはしっかり下調べをするもの。ところが『幸福度No.1☆「沖縄移住」でワクワク楽園生活!: ツテなし・カネなし・資格なし ゼロからはじめた私の方法』(峯田勝明著、合同フォレスト)の著者は、かなり事情が異なるようです。そのタイトルから想像できるように、まったく「ゼロ」の状態で沖縄へ移住してしまったというのですから。そもそも著者は、立ち会い出産を経験し、育児の時間を確保するために会社勤めを辞めて自営業をはじめたという、その点においてもちょっとユニークな経歴の持ち主。しかし、住んでいたのが茨城県だったこともあり、東日本大震災で大打撃を受けて廃業せざるを得ない状況に。その結果、放射能汚染から家族を守るため、2012年に沖縄へ移住したというのです。つまり本書では、そんな実体験に基づき、沖縄へ移住するために必要なことを明かしているというわけです。きょうはそのなかから、なにかと気になる「お金」についての記述をご紹介したいと思います。■1:移住費用を事前に計算しておくべし当たり前ですが、沖縄への引越しが普通のそれと異なるのは、「必ず海を渡らなくてはいけない」ということ。つまり、引越し料金はとても高くつくというわけです。そこで必要になってくるのは、少しでも節約すること。そこで著者は、いらない荷物はなるべく処分することを勧めています。思い入れのあるものや特別高価なものは別としても、それ以外は現地で買ったほうが安いというのです。ほとんどのものは沖縄にも売っているそうなので、きっぱりと処分できるものは処分したほうがよさそうです。■2:自家用車で引越し料金を節約すべしまた、引越し料金は運ぶ量や距離、業者によっても違い、さらに3~4月のハイシーズンは高くなるものです。そこで予算を節約するために、自分の車に荷物を詰め込み、船で送るという方法を利用するのもいい方法。著者は5ナンバーの普通乗用車と軽自動車を送ったそうですが、どちらもワンボックスタイプの乗用車だったので、荷物を満載したのだといいます。宅配便では送れない荷物を優先的に車に詰め込み、自分たちはあとから飛行機で沖縄入りして、那覇新港へ引き取りに行ったというのです。ちなみにワンボックス車でも、貨物車の4ナンバーや1ナンバー登録では料金が高くなるといいます。気になる乗用車輸送運賃(全長4メートル以上5メートル未満)は、東京有明埠頭から那覇新港が5万9,500円~で、大阪から那覇新港が5万5,000円~。東京→沖縄、大阪→沖縄がいずれもドア to ドアで7万7,112円~だそうです。いずれにせよ、そうやって工夫をすることは、決して無視できない節約術だといえるかもしれません。■3:口座はゆうちょ銀行に集約すべし!ところでお金に関しては、意外な落とし穴があるようです。というのも沖縄には、本土の都市銀行が「みずほ銀行」しかないというのです。しかも、宝くじを発行する関係で、かろうじて1店舗あるだけ。なお、これまでは地元地銀の「沖縄銀行」「琉球銀行」「沖縄海邦銀行」と「みずほ銀行」による寡占状態が続いていたそうですが、沖縄経済の活況に目をつけた「鹿児島銀行」が、2015年9月28日、那覇市に沖縄視点を開設したのだとか。まず力を入れているのは個人ローンで、特に際立っているのは住宅ローン。貸出金利を本土並みに低く設定し、地元の3行より優位に立つ戦略をとっているのだといいます。沖縄で安心なのは、「ゆうちょ銀行」だそうです。理由はいたってシンプルで、日本全国どこにでもあり、手数料をかけることなく出し入れができるから。なにかあったときは、本土でも沖縄でも窓口に行くことができるわけです。そのため、移住の際はいったんすべてを「ゆうちょ銀行」に集約し、沖縄で生活をはじめてから他の口座を開設するのがいいと著者は提案しています。また、イオンの店舗も多いため、「イオン銀行」を利用するという選択肢も。ただし各店舗にあるのはATMで、窓口があるのはイオンモールだけ。沖縄では「イオンモール沖縄ライカム店」のみだそうですが、年中無休で営業しているのがいいところだといいます。*こうした話は、実際に移住経験のある人でないとわからないもの。しかも著者の場合は「ゼロ」からスタートしたわけですから、なおさらリアリティがあります。沖縄への移住を漠然と考えている方は、まず手はじめに本書を手に取ってみてはいかがでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※峯田勝明(2016)『幸福度No.1☆「沖縄移住」でワクワク楽園生活!: ツテなし・カネなし・資格なし ゼロからはじめた私の方法』合同フォレスト
2016年09月07日『できる大人の「見た目」と「話し方」』(佐藤綾子著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、日本における「パフォーマンス学」の第一人者である著者が、「見た目」と「話し方」についてのエッセンスをまとめた書籍。パフォーマンス学とはあまり聞き慣れませんが、説明によればそれはパフォーマンスを日常生活における自己表現と位置づけた考え方。そして著者は35年間もの長きにわたり、自己表現を「科学」として研究してきたというのです。■人は34秒以上笑顔で快適になる話を聞いてくれている相手が微笑むと、自分が受け入れられたような気持ちになってうれしくなるもの。しかし逆に、無表情でただ話を聞いているだけだったとしたら、気詰まりで話すのをやめたくなったとしても無理はありません。このように笑顔には、相手の話を弾ませたり、あるいは止めたりする「言語調整動作(レギュレーターズ)」という役割があるわけです。では私たちは、人前でどのくらいの時間笑っているのでしょうか?このことについて著者は、二者間での対話の実験をしたことがあるそうです。相手と話していて「快適な会話」の笑顔の時間を調べた結果、1分間あたり平均34秒だったのだというのです。つまり半分以上の時間、相手が笑顔であれば快適に感じるということ。■意識的なスマイルの表情が大切!口のまわりの筋肉は、「あいうえお」という音と言葉の使い分けのため、縦に長くなったり、あるいは閉じたり、いろいろな形に動くもの。とはいえ、ただ話すためだけに口のまわりの筋肉(口輪筋)を動かすだけでは不十分。たとえば相手に「おもしろい話ですね」と楽しさや喜びの感情を伝えるためには、発声のための動きだけではなく、唇の両サイドをほんの少し上に引き上げる“意識的なスマイル”の表情が必要だという考え方です。笑うことに使う筋肉は、総称して「笑筋(しょうきん)」と呼ばれるそうです。つまり、口のまわり、目のまわり、頬の筋肉、これらが緩んでいるのがスマイルだということ。そして笑顔などの表情を意図的につくることが、「表情統制(フェイシャルコントロール)」。モデルさんが微笑んでいるポスターの写真を見てみると、口はたしかに笑っているのに、目が妙にキツかったりします。そんなところからもわかるとおり、楽しい気持ちがまるでないのに、表情筋を無理やりコントロールしてつくった笑顔には、わざとらしさを感じる場合があるわけです。■日本語のわからない人にも笑顔で「おはよう」「こんにちは」など日本語のわからない外国人に挨拶をする際には、にっこりと微笑みかけ、挨拶の気持ちを伝えることが大切だと著者はいいます。そんな場合は、笑顔が親しみの言葉や挨拶の代行をすることになるわけです。このような笑顔は、相手と親しくなりたいという親密欲求が出ているので、自然なります。先に触れたとおり、笑顔は秒数を守ることも大切。しかし本当に楽しいという気持ちや感謝、親しくなりたいという気持ちを込めて、すべての表情筋を動かすことがもっとも重要だというのです。■笑いと楽しい気持ちはワンセットさて、ここで持ち出されているのは、「笑い講」という日本の古い祭についての話題です。本当におもしろいことがあるわけではないのに、「ワッハッハ」と声を上げて笑うというもの。はじめはぎこちなくても、目の前の人の奇妙な顔を見たり、自分の顔も変だろうなと想像したりするうちに、だんだん本気で笑ってしまうというのです。「笑う」という動作は、喜びや楽しさ、滑稽さやおもしろさなどの感情が心のなかにこみ上げてくること。脳から表情筋に対して「動け」と命令が行き、引き起こされるのだそうです。しかし「笑い講」は、逆方向で成り立っているわけです。おもしろくなくても大笑いするうちに楽しくなり、連体感にまでつながってしまうということ。「笑い講」で使うのは、とびきり大きなスマイル。なぜなら相手と「ここはひとつ、一気に仲よくなろう」というときに、小さなスマイルでは不十分だから。ケラケラと笑う、あるいはおなかを押さえて笑い転げるくらいの大きなスマイルが有効だということです。笑っているうちに気持ちも楽しくなり、さらに笑いが広がるということ。いってみれば、「笑い」と「楽しい気持ち」は、いつもワンセットなのです。*他にも本書では、相手と共有関係を築くために必要なコツが数多く紹介されています。どれもすぐに試せることばかりなので、きっと役に立つはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※佐藤綾子(2016)『できる大人の「見た目」と「話し方」』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年09月07日『老活弁護士(R)が教えます! わかりやすい遺言書の書き方』(大竹夏夫著、週刊住宅新聞社)の著者は、自称「老活弁護士」。「老活」とは、「老後に備える準備活動」のこと。数年前に流行語となった「終活」とも似ていますが、終活は死んだ後のことが中心。対して老活は、自分が死ぬ前のことに焦点を当てているわけです。死んだ後よりも老後のほうが大変だからこそ老活は欠かせず、なかでもとても重要なのが「遺言書の作成」だというのです。そんな考え方は、著者が弁護士として多くの相続トラブルや訴訟に関わってきたからこそ到達したもの。つまり遺言書がないと、相続争いが起きやすくなってしまうのです。遺言書で「誰がなにを相続するのか」が示されていなかった場合、亡くなった方の財産(遺産)は、法律であらかじめ定められている相続人に対し、法律で定められている割合で引き継がれるそうです。この、法律で定められている相続人が「法定相続人」で、法律で定められている割合は「法定相続分」。■1:妻・夫と子どもがいる場合亡くなった人の妻または夫(配偶者)と子どもがいる場合、妻・夫と子どもがいる場合は、妻・夫と子どもの全員が相続人。この場合の相続分は、妻・夫が2分の1、子どもが2分の1。ちなみに子どもが2人いる場合は、子どもの相続分2分の1を2人で均等に分けるのだとか。つまり、子どもは4分の1ずつになるということ。同じように子どもが3人いる場合は6分の1ずつ(2分の1を3等分)、4人いる場合は8分の1ずつ(2分の1を4等分)になるわけです。逆にいえば、子どもが何人いても妻・夫の相続分は2分の1なのだそうです。■2:子どもが親より先に亡くなっている場合相続人になれるのは生きている人だけで、亡くなった親よりも先に亡くなっている子どもは相続人にはなれません。ただし、その子どもの子ども(亡くなった親から見ると孫)がいたら、相続人になるのはその孫。これは「代襲相続」と呼ばれています。その孫の相続分の割合は、亡くなっている子ども(孫から見れば親)の相続分をそのまま引き継ぐのだそうです。孫が2人以上いる場合は、その相続分を均等に分けるわけです。同じく、その孫が先に亡くなっている場合で、その孫に子ども(亡くなった方のひ孫)がいたら、そのひ孫が相続人になり、孫の相続分をそのまま引き継ぐことに。■3:妻・夫と親がいる場合亡くなった方に、妻または夫がいるけれど子どもがいない場合、亡くなった方の親が生きていれば、相続人になるのはその親。この場合の相続分は、妻・夫が3分の2、親が3分の1。子どもがいるときよりも、妻・夫の割合が増えるわけです。父と母の2人とも生きていれば、子どものときと同じように、親の3分の1を2人で分けることになります。■4:妻・夫と兄弟姉妹の場合亡くなった方に、妻または夫がいるけれど、子どもがいなくて両親も他界している場合、相続人になるのは妻や夫。しかしこの場合は、亡くなった方の兄弟姉妹も相続人になるのだそうです。この場合の相続分は、妻・夫が4分の3、兄弟姉妹が4分の1。兄弟姉妹が2人以上いるときは、この4分の1を均等に分けるわけです。例えば兄と妹がいる場合は2人ですから、8分の1ずつになるということ。ほとんどの財産が夫名義になっていたご夫婦の夫が亡くなったとき、そのことを知らなかった妻が路頭に迷ってしまうというケースも少なくないのだとか。■5:甥・姪の場合亡くなった方が高齢のケースでは、兄弟姉妹が先に亡くなっていることも少なくないといいます。兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、相続人になるのはその子ども。亡くなった方から見れば、甥・姪だということで、これも「代襲相続」。先に亡くなった兄弟姉妹に子どもがいなければ、その兄弟姉妹はいなかったものと考え、残りの兄弟姉妹で4分の1を分けるそうです。■6:子どもだけの場合妻・夫に先立たれていて、子どもがいる場合、相続人になるのはその子どものみ。子どもが1人のときは、その子どもがすべてを相続。子どもが2人以上いる場合は、均等に分けることに。子どもが2人の場合は2分の1ずつ、子どもが3人いる場合は3分の1ずつ、4人いる場合は4分の1ずつになります。■7:親だけの場合亡くなった人に妻・夫がいない場合(もともと結婚していない、結婚したことはあるが離婚していた、妻・夫が先に亡くなっている場合)で、子どもも孫もいないとき、相続人になるのはその人の両親だけ。両親とも健在であれば、父と母が2分の1ずつ相続。どちらかが先に亡くなっている場合、相続人は1人だけになり、すべてを相続するそうです。■8:兄弟姉妹だけの場合亡くなった人に妻・夫も、子どもも孫もいなくて、両親も先に亡くなっている場合、相続人は兄弟姉妹だけ。兄弟姉妹が1人なら、その人がすべてを相続。2人以上いるときは、均等に分けるわけです。■9:相続人がいない場合亡くなった人に妻・夫も、子どもも孫もひ孫も、両親も兄弟姉妹も甥・姪もいない場合、相続人はいないことになります。この場合、亡くなった人の遺産は国庫(政府)に取られてしまうそうです。遺産のすべてが財務省に引き継がれるわけですが、政府はそもそも、相続人のいない相続財産の存在を知りません。そこで、このような場合は相続人にならない親族(叔父・叔母・いとこ)などが家庭裁判所に申請し、相続財産管理人を選んでもらうのだそうです。その管理人が名義変更等の手続きや、未払いの料金等の支払いをし、残ったら国に納めるわけです。*法律が絡む書籍には、難解にならざるを得ない部分があります。が、本書はかなりできる限り読みやすくしてあるので、抵抗なく読み進めることができるはず。将来のために、ぜひ目を通しておくべきだと思います。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※大竹夏夫(2016)『老活弁護士(R)が教えます! わかりやすい遺言書の書き方』週刊住宅新聞社
2016年09月07日今やスマホは生活になくてはならないもの。現在20代の9割、10代の63%がスマホを使用していて小学生の間でもLINEがコミュニケーションツールとして使われているそうです。しかし、今回ご紹介する『やってはいけない脳の習慣』(川島隆太(監修)/ 横田晋務(著)、青春出版社)によると子どもたちのスマホ使用は成績の低下を招き、脳にも悪影響を与える可能性があることが明らかになりました。これは子育て中の人は知っておきたいデータです!さっそく詳細を見ていきましょう。■スマホの長時間使用で学習効果が半減する仙台市で7万人の小中学生の学力調査と学習習慣などを聞くアンケートを分析したところ、スマホの使用時間と成績の関係について驚くべき結果が明らかになりました。この調査では家庭での勉強時間を、30分未満、30分~2時間、2時間以上という3つのグループに分けたうえで、それぞれテストの平均正答数を出し、グラフ化しました。すると、3つのグループすべてでスマホの使用時間が長くなるにつれ正答率が下がるという結果になりました。さらに興味深いのは、勉強時間が「2時間以上」でスマホ使用が「4時間以上」の子どもの正答率は55%でしたが、勉強時間が「30分未満」でスマホを「まったく使用しない」という子どもの正答率は60%であったということ。「2時間以上勉強しても、4時間以上スマホを使う子ども」は、「勉強はほとんどしないけれどスマホをまったく使わない子ども」の成績と同じになってしまうのです。また、この傾向はLINEなどの通信アプリを使った場合にはより顕著になるといいます。勉強時間に関わらず、スマホや通信アプリの使用時間が長ければ、せっかくの学習効果が消えてしまうことになるのです。■スマホで脳の一部の働きが低下する可能性も!長時間勉強している子どもでも学習効果が下がるということは、「スマホのやりすぎで勉強の時間がとれていない」という理屈では説明がつきません。脳科学的に見ると、これは「前頭葉の活動低下」が引き起こされている可能性が高いそう。テレビを見たり、ゲームをしたりすると、物事を考えるときに使う脳の前頭前野という部分の働きが低下することがわかっていますが、それと同じことがスマホの使用でも起こっているのではないかということです。テレビを見たり、ゲームで遊んだりした後30分~1時間くらいは前頭前野が十分に働かず、この状態で本を読んでも理解力が低下してしまうというデータもあるのです。実際に感じたことのある人もいるかもしれませんが、LINEなどの通信アプリを使っていると勉強に集中することができなくなります。勉強をしようと思っても頻繁にメッセージが来たり、自分が送ったメッセージに返信があるかどうかが気になったりして集中が妨げられてしまいます。パソコンでの単純な作業中にLINEの通知音が鳴った場合と、アラーム音が鳴った場合で比較する実験を行ったところ、LINEの通知音が鳴ったときのほうが集中力が途切れやすいという結果が出ました。アラーム音なら無視することもできますが、LINEの通知音が鳴れば「どんなメッセージがきたのだろう?」「早く返信しなければ」など色々な考えが頭に浮かんでしまいます。特に思春期の子どもたちは、友達から仲間はずれにされることに不安を持ちやすいため、本来勉強に使うべき集中力が、LINEの方へ向かってしまいがちです。さらに恐ろしいことに、パソコンやスマホを長時間使うことによって脳の形が変わってしまう可能性があるといいます。これらの機器の使用習慣の強さと、脳内の「前帯状回」という部分の小ささが関係していることは既に明らかになっています。「前帯状回」は注意の集中や切り替え、衝動の抑制を行う機能に関わる重要な領域。LINEも長時間、習慣的に使用していると脳への悪影響が考えられます。■子どものスマホ使用は1時間未満を心がけよう子どものためにできる対策としては、子どもにスマホを持たせない、持たせることを考えている場合は導入を遅らせることが一番だといいます。既にスマホを持っている子どももできるだけ使わせない、もし使わせるとしても1時間未満に抑えることが大切です。調査では、スマホの使用時間が1時間未満と答えたグループが最も成績がよいことがわかりました。これは単に使用時間が短いというだけでなく、スマホを持っていても、自分自身で使い方をコントロールできるということ。このような自制心や親との関係がいい影響を与えていると考えられます。ルールを子どもだけにしいて、親が好きなだけスマホを使っていれば子どもは必ず不公平感を抱きます。親の方が積極的にスマホとの健全な付き合い方を示していきましょう。*この分野の研究はまだまだ始まったばかりだといいますが、普段何も気にせず使っているスマホにこんなに大きなリスクが潜んでいるとはショックです。身近な存在であるスマホとの付き合い方について、一度自分なりのルールを考えてみてはいかがでしょうか。(文/平野鞠) 【参考】※川島隆太・横田晋務(2016)『やってはいけない脳の習慣』青春出版社
2016年09月07日『世界ナンバーワンの日本の小さな会社』(山本聖著、クロスメディア・パブリッシング)は、日本が誇る世界ナンバーワン企業の「ニッチ・トップ戦略」を徹底的に取材し、そこから「小さな会社がすべきこと」を探った書籍。世界的に注目されているジャパニーズ・ウィスキー『イチローズモルト』を生んだ埼玉県秩父市のベンチャーウイスキーや、宮内庁御用達・日本唯一の馬具メーカー・ソメスサドルなど、小さいながらも大きく成長した企業の成功例が紹介されています。しかし気になるのは、小さな会社になぜ世界ナンバーワンを目指せるのかということ。著者によれば、地元に愛され、独り立ちするブランドづくりに必要な10か条があるのだそうです。■1:ニッチ・トップ戦略ニッチ・トップ戦略とは、「比較的規模の小さい市場において圧倒的なシェアを誇る企業」のこと。ただし、どれだけニッチな市場であれ、大企業や海外企業の参入は世の常。そこで、「圧倒的なシェアは永遠に続かない」「或る日突然競合が参入してくることはあり得る」ということを前提に、ニッチ・トップ戦略に肉づけをしていくことが重要だといいます。そこで、中小企業事業者の強みを加えて3つの定義づけをしたうえで、このニッチ・トップ戦略を推奨しているのだとか。(1)【一般的定義】比較的小さい市場において圧倒的なシェアを誇る事業の創造(2)【新定義】事業者と消費者がお互いに顔の見える「圧倒的な超特定顧客」の獲得(3)【新定義】事業者の都合で成り立つ「のれん商売できる屋号」の確立■2:アイデンティティー注目が集まっているクラウドファンディングがそうであるように、「まだ商品は影も形もない」状態であっても、思い描いている情熱や夢をしっかりとプレゼンテーションできれば、応援してくれる人が現れる可能性があるということ。■3:社会貢献法政大学大学院の坂本光司氏のベストセラー『日本でいちばん大切にしたい会社』(あさ出版)の中には、企業の社会貢献についての次のような記述があるそうです。「会社の社会的貢献とは、お客様にとって、社員にとって、そして地域にとって存在価値のある、なくてはならない会社になることです。地域社会に住んでいる方々が幸せを感じられるような存在になる使命と責任が、会社にはあるのです」地域内で愛されない企業は、地域外から愛されることはないもの。実際に愛されるための努力をしている企業こそ、地域外からも応援されるようになり、結果的にそれが会社の成長につながるということです。■4:団体戦市場展開に際しての中小企業のネックのひとつは、商品の数で勝負ができないこと。そのため生産量やマンパワーの弱点を補える可能性がある戦術が必要になるわけで、それが「団体戦」だというわけです。具体的には、特定のテーマに合わせて複数の企業を集め、統一のブランド戦略(共通の屋号)のもと、商品開発と流通を行っていくことが大切だという考え方。■5:メイドインジャパン全国で注目されているのが、地域特性を活かしたブランディング手法。かつては首都圏のマーケットに商品を合わせて売り込む一方通行のスタイルが定石でしたが、いまは地域色を出したほうが支持される時代になったということ。そして、そうだとすれば当然のことながら、「メイドインジャパン」であることが大きな力になるわけです。■6:マーケティング経営者にとっての重要な能力は、“市場を読み解く肌感覚”。そのためにも日ごろから現場に出て市場を知り、本物を体験し、時代を感じることが欠かせないと著者は主張します。そしてカルチャー&クオリティの消費マインドへのシフトは、「上質かつ普遍的な商品」の領域での競争となるため、日本全国の地域ブランド、ファクトリーブランド、中小の製造業にとって勝機がある分野だといいます。■7:ターゲティング「この商品、誰が買うんだろう」と思ってしまうような、ターゲットがぼやけた商品は、バイヤーにも消費者にも注目されることはないもの。しかし、あえてターゲットを狭く定めると売り場や売り方のイメージが湧いてくるため、逆算して商品開発をするのが理想的なものづくり。端的にいえば、ターゲットは狭くてよいわけです。■8:品質とデザイン消費者は、常に新しいものを求めているもの。だからこそ注目されやすいのは、「日本唯一の馬具メーカーが手がけるバッグ」「戦後日本で初めて認可された小規模蒸留所でつくられる個性的な国産ウイスキー」など「意味」をもたせた新しい商品。「新しいデザイン」と「新しい商品」は、複眼的・多層的なものとして注目に値するそうです。■9:シーズンディレクション「できたときが売りどき」では、なんの計画性もなし。「売りたいとき」を定め、そこに生産計画や販売計画をあらかじめ細かく想定しておく「シーズンディレクション」が重要だといいます。■10:成長戦略自社ブランドを立ち上げたら、いきなり東京に直営店を構えるようなやり方はリスクが大きすぎるもの。むしろ自社ブランドを立ち上げようとしている中小企業の方に対して著者は、「まずは工場にショールームをつくってはどうですか?」とアドバイスしているそうです。商流を整備するときは、地に足をつけた成長戦略を描くことが望ましいということ。*具体的な成功事例が豊富に盛り込まれているため、大企業主導型の従来的な手法によってではなく、「自分たちにできる範囲で」成功を望んでいる小さな会社にとっては、とても役に立つ内容。企業人のみならず、「地方から発信していきたい」という意思を持つ個人に取っても、参考になる部分が多いと思います。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※山本聖(2016)『世界ナンバーワンの日本の小さな会社』クロスメディア・パブリッシング
2016年09月05日『オラクル流 コンサルティング』(キム・ミラー著、夏井幸子訳、日本実業出版社)の著者は、オラクル社に置いて独自のコンサルティングスキル研修を開発し、さまざまなアイデアとスキルを活用しながらオラクルの販路拡大に貢献してきたという人物。本書においてはまず、オラクルという会社が持つ大きな特徴を紹介しています。オラクルでは、ITソフトウェア業界で必要な技術的スキルとソフトスキルの研究を全社員に提供していて、コンサルタントが、クライアントやパートナー企業向けのどんな研修も無料で受けられるようにしているというのです。つまりオラクルのコンサルタントが優秀だといわれるのは、競合企業も利用する教材にいち早く触れられるからだということ。社員教育に力を注ぎ、社員の意欲と満足度の向上に重きを置いているわけです。そんな社風に基づいて、オラクル独自のコンサルティング論を明かした本書から、「オラクルのコンサルタントの“30秒”の生かし方をご紹介しましょう。■エレベーターピッチを徹底的に練習せよコンサルタントなら、エレベーターピッチを徹底的に練習することが必要だと著者はいいます。ご存知の方も多いと思いますが、エレベーターピッチとは、自身のことや自社の製品、プロジェクトの方法論、テクノロジーなど、聞き手が知りたがることを簡潔にまとめたセールストークのこと。この出来不出来が、製品乗っ取り弾きや口コミにつながることもあるといいます。■エレベーターピッチは30秒間に伝えるエレベーターピッチと呼ばれる理由は、エレベーターで最上階まで上がる「30秒」ほどの間に説明を済ませられるように、いいたいことを要約するから。そのため、どんな状況にもマッチするように、エレベーターピッチは何種類も用意しておくことが大切だといいます。エレベーターピッチの目的は、役職名と仕事内容、そして会社の業務内容を聞き手に伝えること。そこで、十分な情報を盛り込み、最後にどんな用件か必ず伝えることが重要。そうすれば、聞き手も話しやすいわけです。そして車内での肩書き関わったら、エレベーターピッチの内容もその都度変えることが大切。■オラクルがどんな会社か30秒で答える仕事と製品について話を聞いた相手は、会社のことも知りたくなるもの。著者もオラクルについてよく聞かれるため、次のように答えるようにしているそうです。「オラクルは、データベース、ミドルウェア、ハードウェア、アプリケーションを扱う世界最大手企業のひとつで、社員にとっても働きがいのある職場です。オラクルの製品は、ほぼすべての業界で使われています。ここ数年、吸収合併を繰り返して事業を拡大していますが、それは、ゼロベースでつくり上げるよりコスト効率が高いからです。それで、本日のご用件はどのようなものでしょうか?」なるほどここには、オラクルという会社の将来性や企業買収に熱心な理由が凝縮されています。相手からすれば聞きづらい質問でも、こちらから先に情報を提供すれば、相手の質問をしやすくなるわけです。■事前に用意をすべきエレベーターピッチまた、自分の専門外のことについて聞かれてもあわてないように、次のようなエレベーターピッチを用意しておくことも大切だといいます。「申し訳ありませんが、その製品は私の専門外ですのでわかりかねます。我が社では専門分野のエキスパートの養成に力を入れているものですから。給与業務に関しては私でお役に立てますが、その後質問に関しては、担当のAを紹介させていただいてもよろしいでしょうか?この者からお電話を差し上げるよう手配いたしますので、お電話番号を押せていただけますか?私の名刺をお渡ししておきますね」わからないことはわからないと正直にいって構わないけれども、あとで勉強して自分の知識不足を補っておくこと必要だそうです。これらは一例にすぎませんが、つまり状況に応じたさまざまなエレベーターピッチを用意しておくことが大切だというのです。■いいエレベーターピッチは先輩から盗めいいエレベーターピッチをつくる最大のコツは、マネジャーやベテランコンサルタントからヒントをもらうこと。経験豊かなコンサルタントがクライアントと交わす話に耳を傾けていれば、会話のどこにセールストークを織り交ぜればいいのかわかるようになるといいます。自分の個性や経験談を盛り込みたい場合は、先輩たちの話をベースにし、そこに自分らしさをプラスすればOK。そして自分のスキルが上がったら、エレベーターピッチも更新することが大切。さらにいえば、なによりも大事なのは、完璧に暗記できるまで、練習に練習を重ねること。なぜなら、しどろもどろでは、相手に誠実な印象を与えることなどできないからです。*もちろんこれはほんの一例ですが、ここからもわかるとおり、本書の内容はオラクルでの時連れに基づいているだけにとても実践的。あらゆる会社の、あらゆるシチュエーションに応用できるはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※キム・ミラー(2016)『オラクル流 コンサルティング』日本実業出版社
2016年09月04日「寝不足で疲れがとれない」「眠気がつきまとって集中できない」「ベッドに入っても、しばらく眠れない」……。日本のビジネスパーソンの3人に1人は、このような睡眠に関する悩みを抱えているといいます。『一流の睡眠「MBA×コンサルタント」の医師が教える快眠戦略』(裴英洙著、ダイヤモンド社)では、医師であり経営者、コンサルタントでもある著者が、忙しいビジネスパーソンでも現在の生活スタイルを大きく変えることなく、効率的に睡眠をとるための方法を解説しています。どれも医学的な根拠に基づいているので、いままで睡眠の改善がうまくできなかったという人も効果が期待できそうです。今回は本書のなかから、「午後2時~4時」の睡魔に打ち勝つ方法をご紹介します。■1:午後2時~4時の間に単純作業をしない車の居眠り事故が多いのは、「夜半~早朝」と「午後2時~4時」の2つの時間帯だということが調査によって明らかになっています。この時間帯は誰でも眠気が強くなる「魔の時間帯」なのです。ですから仕事をスケジューリングする際は、この時間に単純作業を持ってくるのはNG。ますます眠気が強くなりパフォーマンスが上がりません。パソコンのディスプレイをずっと見るような仕事や、資料を読み込む仕事も眠気を誘います。この時間をうまく使うには、コピーをとる、営業に出る、他部署にヒアリングに行くなど、体や口を動かす「アウトプット」の仕事にあてることがポイント。会議ではメンバーが緊張感を持って参加できるよう、積極的に意見を促しましょう。どうしても眠くなるなら、思い切って立って会議をするのもひとつの手です。■2:コーヒーを9時・12時・15時に飲むカフェインを摂ると、睡眠誘発作用のある「アデノシン」という物質の働きをブロックすることができます。それにより自然な眠気を抑えることができるのです。カフェインの効果が出やすいのは、アイスコーヒーよりもホットコーヒー。アイスコーヒーは冷たいため吸収が遅くなりがちなので、あまり即効性は期待できないということ。そしてコーヒーはガブガブ飲むのではなく、カフェインの血中濃度が薄くなるタイミングで飲むのがいちばん効率的。健康な人の場合、2時間半~4時間半くらいで血液内のカフェイン濃度が最高値の半分になるため、「9時・12時・15時」の3回コーヒーを飲むのがおすすめだそうです。ちなみに飲み物100mlあたりのカフェインの含有量はコーヒー60mg、栄養ドリンク50mg前後、紅茶30mg、煎茶・ほうじ茶20mgとなっています。■3:周囲の目を気にせず20分間昼寝をするカフェインの摂取よりも眠気覚ましに効果があるのは、「昼寝」だといいます。午後2時~4時は人間の生体リズムとして、眠くなることが避けられません。さらに昼食をとることによって、目を覚ます働きのある「オレキシン」というホルモンが抑制されてしまうので、ますます眠気を感じるというのです。ですから、午後によいパフォーマンスをするためには、昼食を腹八分目にすること。そして昼寝をすることが有効。昼寝に必要な時間は25分。実際に寝るのは20分で、残りの5分は冷たい水で顔を洗ったり、階段を1フロア分上がったりするなどして完全に覚醒させるために使います。昼寝の時間は20分を厳守しましょう。20分以上寝ると脳は熟睡モードに入り、昼寝後も眠気が続いたり、かえって疲労が増したりします。とくに若い人は入眠から深い睡眠に入るまでの時間が比較的短いため、30分で熟睡してしまう可能性が高いとか。体内リズムが乱れる原因にもなるので、必ず20分を守りましょう。会社で昼寝をして「周囲からどう見られているだろうか」と気にしていると、効果は半減してしまうそうです。「午後からのパフォーマンスを落とさないために昼寝している」と考え、勇気を持って昼寝しましょう。■4:ミント系のガムを10分間しっかり噛む手っ取り早く眠気を覚ましたいなら、ガムも有効。ガムを噛んでいるときと、噛んでいないときに簡単な記憶テストをすると、ガムを噛んでいるときは脳の中で記憶や学習をコントロールしている前頭前野の脳血流量が増えている部位があったそうです。またミント系のガムはストレスを緩和させることもわかっています。10分以上連続で咀嚼することで効果が高まるので、集中したいときやストレスを和らげたいときはミント系のガムを10分間噛むのがおすすめです。*ランチを食べた後の会議やパソコン作業で、思わず眠りそうになった経験は誰にでもあるはず。午後2時から4時は誰でも眠くなるものであるならば、それを見越したスケジューリングを心がけたいですね。著者は「睡眠」は、最短で一流のビジネスパーソンに近づくための、最強のスキルだと述べています。これを身につけない手はありません!(文/平野鞠) 【参考】※裴英洙(2016)『一流の睡眠「MBA×コンサルタント」の医師が教える快眠戦略』ダイヤモンド社
2016年09月03日2016年は有名人の不倫が次々と発覚し、話題となっています。しかし、一般の人の間でも不倫のハードルは年々下がっているといいます。一昔前にくらべ、女性の間でも「結婚と恋愛は別もの」という考え方が浸透してきているのも特徴だそう。『人はなぜ不倫をするのか』(亀山早苗著、SBクリエイティブ)は、ジェンダー研究や昆虫学、動物行動学など8つのジャンルの学者が、著者との対談形式でそれぞれの専門分野の見地から不倫を解説した書籍。「なぜ不倫は悪なのか?」「なぜ悪だとわかっていて不倫をしてしまうのか?」と、いろいろな視点から見ること二よって、不倫の根本的な問題が見えてくるかもしれません。今回は本書のなかから、3つのジャンルをピックアップしました。■1:オスとメスは別々に行動すると浮気する(動物行動学)哺乳類で一夫一妻の形をとる動物は約3~5%だといわれているそうです。チンパンジーは乱婚的でゴリラは一夫多妻、テナガザルは一夫一妻。哺乳類のオスは子育てに関わらないことがほとんどですが、一夫一妻の場合はメスが他のオスに取られないように、夫婦がいつも一緒にいるのが普通だといいます。鳥は90%近くが一夫一妻で、巣づくりも餌取りも夫婦一緒に行います。しかし、そのような活動の最中に別行動をとるとオスメスともに浮気をすることがあるといいます。四六時中一緒にいないと浮気を防ぐことができないのです。メスは本能的に、いまの相手よりも免疫力が高い「いい遺伝子」を持つ相手がいれば、それを取り入れようとします。オスはいい遺伝子の象徴として、美しい羽や長い尾羽をアピールします。動物は自分の遺伝子を滅ぼさないために本能的に行動しているというのです。これは動物学的には「不倫」ではなく「浮気」といえるでしょう。オスは射精しても比較的早く精子が回復するため、数を撃ってチャンスを追求する傾向にありますが、メスは妊娠・出産・子育てに年単位の時間を要するので、軽率に相手を選ぶわけにはいきません。だからこそメスはいい遺伝子を見極めることが重要で、浮気であろうと夫より質のいい遺伝子がほしいというのが本能なのです。■2:現在の不倫は「個人」によって罰せられる(宗教学)日本では第二次世界大戦が終わるまで姦通罪が存在しました。これは「夫のいる女性」と「その女性と性的関係を持った男性」に適用されるもの。当時の日本は家父長制が強く、男は妻の面倒を最後まで見る義務があるとともに、妻は夫の財産としての扱いでもありました。そのため夫の「所有物」である女に手を出したり、夫の庇護下にある女が別の男と関係を持ったりすることは「所有物の侵害」になり、罪となっていたのです。また、仏教の五戒(信者が守る基本の5つの戒)には「不邪婬戒」(不道徳な性行為を行ってはいけない)というものがあります。このような仏教の思想や姦通罪の影響により、近代以降「不倫はいけない」という考え方が浸透していきました。しかし、いまの日本では不倫は宗教でもなく法律でもなく、「人」によって罰せられるものになっています。「不倫はいけない」と誰もがなんとなく思ってはいるものの、なにに基づいていけないとされているかは曖昧です。現在は宗教や法律の縛りがないからこそ、不倫が発覚すると個人の判断ややっかみなどによってバッシングされてしまうのです。■3:不倫だからこその「安心感」で抜け出せなくなる(心理学)既婚者とつきあう独身女性には、「最終的に自分は選ばれない」とわかっているからこそのめり込んでしまうというケースも多いそうです。もちろん本当は選ばれて結婚したいという思いはありますが、「選ぶ」という行為には必ず「結果」がついてきます。それが怖いから逃げようとしてしまうということ。また、恋愛にはつきものの「ひょっとしたら選ばれないかもしれない」という不安ではなく「最終的なパートナーとしては選ばれなくて当然」という安心感があるからこそ、どっぷりと不倫に浸かってしまう人もいます。恋愛の場合はつきあっていくうちに、「こんな人だとは思わなかった」という場面に遭遇するもの。そのときには別れるか、相手の真の姿を受け入れるかを選択して次のステージへ進んでいくでしょう。しかし、不倫の場合はいつも一緒にいられるわけではないので、相手の嫌な部分や、自分と合わない部分を発見しづらいのです。パートナーとして次の段階に進むことなく、いつも刺激的な関係でいられるので、なかなか抜け出せなくなってしまいます。心理学的に、不倫によって自分の心のバランスを保ったり、不足を補ったりということもなくはありませんが、ずるずる続けているとよい結果にはならないでしょう。*著者は17年にわたり一般の人の不倫について取材をしていますが、「誰にでも不倫をする可能性はある」といいます。恋愛に関してハードルが低い人も、絶対に不倫はいけないと思っている人も、家族の不倫で悩んだ人でさえも不倫をしてしまうことがあるそうです。しかし、いうまでもなく不倫は大きなリスクを伴うもの。取り返しのつかない事態を招きかねないことをお忘れなく。(文/平野鞠) 【参考】※亀山早苗(2016)『人はなぜ不倫をするのか』SBクリエイティブ
2016年09月03日『47原則―――世界で一番仕事ができる人たちはどこで差をつけているのか?』(服部周作著、ダイヤモンド社)のもとになっているのは、マッキンゼー・アンド・カンパニーでさまざまなプロジェクトに従事してきた著者によるメモ。ただ書きためるだけではなく、おぼえやすいように工夫した図表をつけて記憶するという方法でつくられたもので、「ルールブック」と呼んでいるのだとか。つまり本書は、著者がルールブックに書きためて実践し、「成果が上がった」と実感した仕事の進め方や、社内外のリーダーがさりげなくこなしている効果的な手法を聞き出し、「47原則」にまとめたもの。きょうはそのなかから、「3秒」の重要性に関する記述をご紹介したいと思います。■わざと立ち止まって3秒待つべしビジネスにおいて、大きな利害が関わっている場合は、質問への回答に迷うことがあるものです。「(こう答えたら)さらに難解な質問を浴びせかけられるのではないか」と不安になってしまったり、はるか上の上司たちの視線が背中に突き刺さるのを感じたり、あるいは、「全員に印象づけなければ」と焦ってしまうこともあるでしょう。しかも、相手が経営幹部レベルの重役や、重要なクライアントである場合は特にプレッシャーが大きくなるため、「さっさと答えてしまいたい」衝動にかられもします。しかし、そんなときこそ、わざと立ち止まり、「1、2、3……」と3秒数え終わるまで待つことが大切だと著者はいいます。■答える前には間をおくといい理由著者がマッキンゼーで教わった最善のアドバイスのひとつが、「難しい質問に答える前には必ず間をおくこと」。そして間をおく理由は、おもに3つあるそうです。(1)反応し、考え、最良の回答を考えるための時間を稼ぐ(2)沈黙はあなたの回答の重みを増すので、聞き手はより高い価値を感じる(3)劣勢の場合や緊迫した状況では過剰に反応しやすいため、間をおいて気を静めるまた、質問を分類ごとに把握しておくことが、常に聞き手に先回りするコツ。たとえばプレゼン後の典型的な質疑応答の場面では、質問はだいたい次の4つに分類できるといいます。(1)事実確認・情報収集型「X社の市場占有率は何%ですか?」「稼働率が75%未満の工場はいくつありますか?」(2)発見型「いますぐとるべき行動はなんですか?その優先順位は?」「『デジタル化したほうがいい』とおっしゃるなら、当社にどんな能力が必要ですか?(3)評価・比較型「2つのベンチマークを比較する場合、成功の主要因はなんですか?」「Cに与えるインパクトをどう評価しますか?」(4)挑戦型「なぜXについて調べなかったのですか?」「なぜもっと洞察力に優れた成果を出せなかったのですか?」■100%正しく回答しなくていい事実確認のための質問から、発見型、評価型、最後の挑戦型の質問に移るにつれて、回答にかける時間を増やすよう調整するといいそうです。そうすれば、適切な見地から回答することができ、「経験豊かで信頼できる」という印象を強く抱いてもらえるから。なお回答がいちばん難しいのは、理由や正当性を求める質問。そして陥りやすい落とし穴は、防戦に回ってしまうことだといいます。また、「その場で100%正しく回答する必要のない質問もある」ということを頭に入れておくといいそうです。マッキンゼーではこれを「回答の術(art of evasion)」と呼んでいたのだとか。大切なのは、難しい挑戦的な質問に対しても、まごつかずに答えられること。いかにも難しそうですが、著者によれば、これは誰にでも習得できるスキル。ただし、忍耐力と自信が必要。■相手の本当の望みを見抜くべし!たしかに、挑戦的な質問をしてくる人は、その場で正しい解答を期待しているとは限りません。むしろ大切なのは、相手の本当の望みを見抜けるようになることで、それが成熟したリーダーとしてひと皮むけるために必要なことだといいます。質問にすぐ飛びついて中途半端な解決策を提示するよりも、先送りするほうが賢明だということ。より優れた判断と適切な言い回しを使って、できるだけ好印象を与えるように回答することが重要なのです。そして最後の大切なポイントは「自信」。なぜなら、言葉に説得力をもたらすものは、得てして自分に対する自信だから。そういう意味では、会議室に足を踏み入れた瞬間から、自信に満ちた態度を示すべき。結局のところは、それがいちばん重要なことかもしれないと、著者は記しています。*他にも「心の持ち方」「考え方」「コミュニケーション法」「思いやりの持ち方」など、「47原則」は多岐にわたっています。だからこそ、役に立つ部分が必ず見つかるはず。ぜひ一度、手にとってみてください。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※服部周作(2016)『47原則―――世界で一番仕事ができる人たちはどこで差をつけているのか?』ダイヤモンド社
2016年09月02日『人気管理栄養士が教える 頭のいい子が育つ食事』(小山浩子著、日本実業出版社)は、育脳から認知症予防まで、あらゆる視点で食のアドバイスを行っている管理栄養士による新刊。これまでにも食に関する興味深い著作を数多く送り出してきましたが、今回は「育脳」がテーマ。「毎日のごはんが、子どもの脳をつくる」という点に着目しているのです。■脳が大きく発達するのは6歳まで「頭のいい子になってほしい」という思いは、親なら誰もが持っているもの。そこで、小さいうちから子どもの教育に熱心に取り組んでいる方も少なくありません。ちなみに脳の発達という観点からいうと、これは効果的なことなのだそうです。人間の脳はお母さんの胎内にいるときからつくられはじめ、もっとも大きく発達する時期は「生まれてから6歳まで」。つまり、頭のいい子をつくるため、赤ちゃん期、幼児期に脳に刺激を与える「育脳」はとても大切だというわけです。■脳も食べものでつくられている!ただし、かしこい脳を作るためには、学習などの外からの刺激だけではなく、脳細胞がすくすく育っていくための材料も重要。栄養を内側から与えてあげる必要があるということで、具体的には、いい脳をつくるための栄養をきちんととることが欠かせないわけです。成長期の子どもは、大人以上に栄養が大切。それは、いまさらいうまでもないことかもしれません。しかし、そこで忘れるべきでないのは、骨や筋肉だけでなく、「脳をつくっているのも食べもの」だということ。でも著者によれば、そのことを意識している人は驚くほど少ないのだそうです。■基本は3歳ごろまでにできあがる脳の成長の時期は、たいへん早く訪れるものだといいます。脳の神経がつくられはじめるのは、赤ちゃんがお母さんの胎内にいるとき、だいたい妊娠2カ月目ごろから。そして生まれてからは猛スピードでぐんぐん発達し、3歳ごろまでには大脳、小脳、脳幹という基本構造がほぼできあがるというのです。脳は、目や耳などの感覚器官から入ってくる情報を受け取って分析したり、記憶したり、思考や感情、行動を生み出したりする、とても高度で複雑なネットワークシステム。そして脳の中心となっているのが、重さの85%を占める大脳で、左右2つの脳半球に分かれています。脳半球にはそれぞれ、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つの葉があり、たくさんの働きを分担しているわけです。■脳の場所ごとで大きく異なる役割額のすぐ後ろにある前頭葉は、記憶、注意といった基本的な作業の他に、計算したり意思決定をしたり、問題を解決したり、社会的行動などの作業に関わったり、その人のパーソナリティやコミュニケーションスタイルをつくっています。皮膚を通じた感覚的な情報(気温、触感な土)や、空間的情報(大きさ、距離など)の処理に関わっているのが、前頭葉の後ろにある頭頂葉。そして側頭葉には海馬や扁桃体があり、記憶をコントロールしたり、長期の記憶を保管したりするそうです。音声情報や嗅覚情報を受け取ったり、解釈したりするのもここ。このように、脳はそれぞれの場所で決まった役割を果たすようになっているため、関連する情報はそれぞれの場所へ運ぶ必要があるわけです。すなわち、それが脳の活動。そして、そうした脳活動を素早く、確実に行うためには、脳内のネットワークシステムである神経細胞がしっかりと密に張り巡らされていることが重要。■よく働く脳をつくる食事が大切!しかし、ここにとても重要なポイントがあります。脳の神経細胞がもっとも発達するのは、3歳までだというのです。そして、6歳で大人の脳の90%にまで成長し、12歳にはほぼ完成。つまり脳の成長期は、お母さんの胎内にいるときからはじまって、赤ちゃん期~幼児期がピーク、小学校卒業までにほぼ終了するということ。いってみれば、将来かしこい人になれるかどうかは、この時期の脳の発達にかかっているというわけです。だからこそ、この時期にしっかりとした、よく働く脳をつくるための食事を子どもにつくってあげることが大切だということ。それこそが、本書を通じて著者が投げかけているメッセージなのです。*こうした基本的な考え方に基づいた本書では、「乳児期・離乳期」「幼児期(1歳半〜5歳)」「小学生(6歳〜12歳)」「中学生(13歳〜15歳)」とそれぞれの時期に合わせ、その年代にとって必要な脳をつくるための食事が解説されています。レシピはもちろん、冷凍食品の活用法なども紹介されているため、基本的なことを理解できるだけでなく、とても実用的な内容だといえます。お子さんをかしこく育てるために、手にとってみてはいかがでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※小山浩子(2016)『人気管理栄養士が教える 頭のいい子が育つ食事』日本実業出版社
2016年09月01日9月1日は防災の日。今年は熊本地震や台風などで大きな被害があり、多くの人が普段とは異なる生活を余儀なくされています。『子どもを守る防災手帖』(MAMA-PLUG著、KADOKAWA)は、東日本大震災や熊本地震などで被災した1,089人のママの体験談をまとめたもの。テレビなどで報道される情報とは違う「生の声」を知ることで、自分や家族にとって必要なものはなにか、災害が起こったときはどうするべきかが見えてくるはずです。今回は本書のなかから、体験談をもとにした緊急時の備えをご紹介します。■1:避難バッグは「3種類」用意しておく避難バッグは、「常時持ち歩くもの」「緊急時に持ち出すもの」「備蓄用(自宅の安全が確保できたら取りに帰るもの)」の3種類に分けておくといいそうです。食料は緊急持ち出しのバッグは3日分、備蓄用は2~3週間分を用意しましょう。自分と家族の1日の生活を振り返って、必要なものを備えます。子どもがいる人は以下の項目をチェック!(1)乳児震災後は母乳が出なくなったり、量が少なくなったりしたという人も多くいます。母乳育児をしていても「哺乳瓶粉」「粉ミルク」「乳児用の飲料水(軟水)」は必ず備えておきましょう。紙コップを使ってスプーンで飲ませることも可能です。離乳食を食べる赤ちゃんは、ベビーフードも必要。大人用の食事は塩分や脂肪分が多いので注意しましょう。ベビーカーでの避難は危険なのでNG。抱っこ紐などを使い、歩ける子の場合は靴をバッグに入れておくのを忘れずに。(2)幼児子どもは食べ慣れないものを受けつけないこともあるので、腹持ちするお菓子などを普段からバッグに入れておきましょう。お気に入りのおもちゃや絵本があると安心につながることも。(3)小学生はぐれてしまったときのために、最低限の非常グッズをリュックに入れて背負わせましょう。非常食や、水、好きなお菓子のほか、名前や血液型、連絡先、アレルギーなどを書いた「パーソナルカード」や母子手帳・保険証のコピーも入れておきます。ただし、防犯上名前は外から見えないところに記入します。■2:生理用品や尿漏れシートも用意しておく女性の体験談では「プライバシーがない」「女性の必需品がない」「女性特有の疾患になった」という3つが被災後に困ったこととしてあげられています。震災のストレスから急に生理になったり、尿漏れが起こったりということもよくあるそう。生理用品とは別に尿漏れシートを用意しておくとよいでしょう。しばらくシャワーを浴びることができないと、下半身の疾患にもかかりやすくなるため携帯用ビデがあると便利だそうです。また、「サイズのあるもの」は遅れてくる支援品のため、ブラジャーも忘れずに。■3:非常用トイレの使い方を練習しておく非常グッズとして用意したものを使ったことがない人も多いはず。非常用トイレは、簡易的なものだと子どもが使いづらいということもあるので、一度試しておくとよいでしょう。実際に使ってみると、目隠しが必要だということにも気づくはず。テントがあればいいですが、ない場合はレインコートやポンチョなど代用できるものを探しましょう。また、救助を呼ぶためのホイッスルは小さい子どもだとうまく音が出せないことがあるので、練習しておきましょう。少ない息でも音が出るものや、子ども用のものもあります。■4:非常食が好みに合うか確認しておく「避難所での食事は偏りがあった」「ぐちゃぐちゃになった家のなかで食べ物を探すのが大変だった」という声があります。災害の発生当日から避難生活をイメージして、家族にはどんな非常食が必要か検討しましょう。乾パンやシリアルバー、ゼリー飲料など「そのまま食べられるもの」、アルファー米など「水があれば食べられるもの」、インスタント麺や粉末スープ、レトルト食品など「熱源があれば食べられるもの」の3種類を用意します。家族の味の好みに合っているか、腹持ちはするかなどを、試食して確認しておきましょう。温かい食事は消化吸収がよく、心を安定させるのでガスバーナーやカセットコンロがあると安心です。また、防災訓練の一環として「昼食をおにぎり1個で過ごす」という日をつくり、子どもと一緒にチャレンジしてみるのもよいでしょう。*非常時に必要な備えは、それぞれの家族によって異なるもの。ある人にとっては便利なものが、他の人には不要なこともあります。いろいろなケースの体験談を読み、自分ならどうするのか、子どもをどうやって守るのかを一度じっくり考えてみてはいかがでしょうか。(文/平野鞠) 【参考】※MAMA-PLUG(2016)『子どもを守る防災手帖』KADOKAWA
2016年09月01日「疲れがなかなか取れない」「だるくてやる気が起きない」「むくみが気になる」……。これらの症状が1つでも当てはまる人は、腎臓の働きが弱っている可能性があります。「腎臓の働き」といわれてもピンとこない人も多いかもしれませんが、実は腎臓は体内の老廃物を排出してくれる、とても大切な臓器なのです。今回は『疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい』(寺林陽介&内野勝行著、アスコム)から腎臓を健康にするための生活習慣をご紹介します。腎臓が元気になれば、身体の疲れが取れ、むくみや冷えの改善にもつながります。日頃不調を感じている人は、ぜひ毎日の生活に取り入れてみてください。■腎臓の働きと疲れには深い関係がある!腎臓は老廃物の混じった血液をろ過し、身体にとって不要なもの(老廃物)だけを尿として排出するという働きをしています。そのため腎臓の働きが悪くなると、必要なものが排出されてしまったり、老廃物が身体や血液中に溜まり血液がドロドロになって血行が悪くなったりします。このような状態になり、身体に必要な酸素や栄養が行き渡らなくなると、身体が疲れを感じるのです。さらに、血管や心臓に負担がかかり動脈硬化や心臓病などの病気を招く恐れもあります。■腎臓を元気にして疲れをとる6つの習慣(1)就寝2~4時間前はものを食べない起きている間に働き続けた内臓は睡眠によって疲れをとり、調子を整えます。そのため、一晩あたりの睡眠時間が5時間以下の女性は、7~8時間の女性に比べて腎機能が早く衰えるリスクが65%も高いことがデータから明らかになっています。腎臓を休ませるためには寝る前2~4時間前はものを食べないことも大切。食べ物が体内にあると、腎臓は睡眠中も水分や塩分の調整をしなければいけません。就寝前は入浴などで体を温め、血流をよくするのがおすすめだそうです。(2)身体を冷やさない特に東洋医学では「腎は冷えに弱い」といわれています。身体が冷えると血流が悪くなり、老廃物がうまく流れなくなるため腎臓の働きが妨げられます。それにより、尿がうまく作られなくなり、頻尿になったり、尿の回数が極端に減ったりしてしまいます。排出できなかった老廃物により尿道炎になることもあります。冷房に当たりすぎないなど、外側から冷やさないための工夫をすると同時に、温かい飲み物を飲むなどの内側からのケアも心がけましょう。(3)激しい運動は避ける適度な運動は血流をよくし、ストレスを緩和するので腎臓にとって良い効果があります。しかし、激しい運動をすると、エネルギー消費の老廃物である「尿酸」が大量に発生してしまいます。普段あまり身体を動かしていない人が急に激しい運動をすると尿酸値が2倍近くになることがあり、腎臓にとって負担となります。さらに、汗を大量にかくと体内の水分バランスを調整するために腎臓がたくさん働かなくてはいけなくなります。運動をするなら、うっすら汗をかく程度にとどめ、のどの渇きを感じる前にしっかり水分補給を。長時間立ったままでいるのも腎臓にとって負担になるので注意しましょう。(4)1日1.5リットル以上の水分をとる腎臓にとって大切なのが水分。体内の水分量が減ると、老廃物の割合が高くなってしまいます。老廃物が多く含まれる血液をろ過するのは腎臓にとって負担になります。健康な人は1日1.5リットル~3リットルの水分をとりましょう。また食事ではカリウムが多く含まれるものを食べると腎臓の働きを助けてくれます。アボカド、ほうれん草、カボチャ、いも類などの野菜や、豆類、海藻類を摂りましょう。ただし、腎機能が低下しているときはカリウムの摂取を控えた方がいい場合もあります。(6)塩分は控える塩分を摂りすぎると、腎臓は体内の塩分濃度を下げるためにたくさん働かなくてはいけません。それでも処理しきれず、余計な塩分が体内に残ると、むくみや高血圧の原因になることも。味付けの濃いものや、塩分の多いスナック菓子などは極力避けるようにしましょう。(7)尿の異変をチェックする腎臓の働きが悪くなると、まず尿に変化が表れます。健康な人の尿は透明な淡い黄色ですが、尿の色が濁っている場合は「タンパク尿」の可能性があります。この場合は腎臓のろ過機能に問題があるかもしれません。また血液が混ざる「血尿」は急性腎炎や腎臓がんが疑われることもあるので早めに病院で診察を受けましょう。また、健康な人が尿をする回数は1日3~10回程度です。これより多かったり少なかったりする場合は腎機能が低下している可能性があります。これらのサインを見逃さず、気になる異変があれば病院を受診するようにしましょう。*本書では、腎臓を元気に保つための「腎マッサージ」が写真つきで解説されています。このマッサージは腎臓と副腎(左右の腎臓の上にあり、体内の環境を保つためのホルモンを分泌する臓器)を活性化させるツボを刺激するもので、1回につき1分行うだけで血流がよくなり、腎臓の働きがアップするそう。「人にしてあげるマッサージ」も掲載されているので、疲れた家族や友人にマッサージしてあげるのもおすすめです。(文/平野鞠) 【参考】※寺林陽介&内野勝行(2016)『疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい』アスコム
2016年08月31日簿記の資格を取りたいと思っている人も多いことでしょうが、その一方に「簿記の勉強をはじめてみたものの、難しくて挫折してしまった」という人が少なからずいるのも事実ではないでしょうか?しかし結論からいえば、簿記の基本ルールは、100円のパンを買ったら、ノートの左側に「パン100円」と書いて、右側に「現金100円」と書く。ただこれだけだと断言するのは、『これだけは知っておきたい「簿記」の基本と常識』(椿勲著、フォレスト出版)の著者です。■手に入ったものは「左」と覚えようもし、ひとりひとりが好き勝手に右側に「パン」と書いたり、左側に「パン」と書いたりしたら、統一されていないだけにわかりにくくて当然。だから、「パンと書くときは、みんな同じように左側に書きましょう」と決めたのが簿記だということ。だから、手に入ったものは「左」、出ていったものは「右」と単純におぼえておけばいいそうです。そもそも「簿記」とは、「帳簿の記録」のこと。帳簿の「簿」に記録の「記」で簿記だというわけで、ルールに従って帳簿を記録すること。別な表現を用いるなら、「お金やモノの出入りを記録する方法」です。■個人的なお金の管理なら単式簿記で「お金やモノの出入りを記録する」といえば、身近なところですぐに思いつくのは、こづかい帳や家計簿ではないかと思います。しかも著者によれば、こづかい帳や家計簿も、簿記のルールでお金の出入りを記録しているのだそうです。このルールが、「単式簿記」と呼ばれるもの。単式とは、1万円借りたら、「現金が1万円増えた」という部分だけを記録する方法。個人でお金を管理する場合は、給料が入ってきて、そのお金で必要なモノを買ったり、貯金をしたりと作業は単純であるはず。そこで、単式簿記でも十分だというわけです。■会社でお金の管理するなら複式簿記しかし会社の場合、「商品を渡したけれど、お金はあとで払ってもらう」という場合もあるものです。また、取引先に小切手を渡すなど、複雑なやりとりも多くあります。当然、これらの記録は、単式簿記では間に合わないことになります。そこで必要になってくるのが「複式簿記」。複式簿記では、1万円を借りた場合、「現金が1万円増えた」という面と、「借金が1万円増えた」という両方の面を記録しておくわけです。そうすれば、お金の出入りをはっきりさせることができるから。いわば、お金の出入りを二面的に考えるのが複式簿記だということ。一般に簿記といえば、この複式簿記を指し、企業などで使われているのもすべて複式簿記だそうです。■500円のお弁当を買った場合は?ここで例題をひとつ。昼食に500円のお弁当を買ったとします。さて、これを二面的に考えるとどうなるでしょうか?答えは、「500円のお弁当を手に入れた」という面と、「現金が500円減った」という面の2つ。そして冒頭で触れたように、これをノートに書くときは、ページの左側に「500円のお弁当を手に入れた」、右側に「現金が500円減った」と記入するということ。このように左と右に分けて記入するのが、簿記の基本だということです。■ゲームソフトを人に売った場合は?もう一例。いらなくなったゲームソフトを友だちに5,000円で売った場合はどうなるでしょうか?ここには「現金が5,000円増えた」という側面と、「ゲームソフトがなくなった」という側面があるわけです。だからこのときにも、ノートの左側に「現金が5,000円増えた」と書いて、右側に「5,000円のゲームソフトがなくなった」と記入すればいいわけです。これが簿記の基本だというわけで、なるほど、身近な話題に当てはめて考えれば、とてもシンプルだということがわかります。■簿記を身に付けて得られるメリットでは、実際に簿記を身につけたとき、具体的になにができるようになるのでしょうか?ビジネスパーソンとしての最大のポイントは、会社の「経営状況」と「儲け」を知ることができることだといいます。たとえばA社の金庫には現金500万円が入っていて、B社の金庫には1000万円が入っている場合、どちらの経営状態がいいかといえば、単純に考えればB社です。しかし、もしB社には借金が800万円あり、A社は借金ゼロだったとしたら?この場合、答えは金庫を見てもわかりませんが、帳簿を見ればわかるわけです。B社の帳簿には、「借金(負債)800万円」ときちんと書いてあるから。つまり正確には、A社のほうが経営状態がいいということ。帳簿を全く知らない人はB社のほうが儲かっていると考えてしまうけれども、簿記を理解している人は、A社のほうが経営状態がよいことにすぐ気づけるのです。なるほど、そう考えると、簿記の重要性が分かる気がします。*簿記の入門書である本書のもうひとつの強みは、簿記に無関係な人にも理解できる点。いわば「資格を取る気はないけれど、簿記の基礎くらいは頭に入れておきたい」という方にも最適だというわけです。ここに書かれているような基礎知識をストックしておくことによって、将来的なビジネスチャンスを広げることもできるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※椿勲(2016)『これだけは知っておきたい「簿記」の基本と常識』フォレスト出版
2016年08月31日銘柄の選び方、食事との合わせ方、マナーなどなど、お酒を選ぶ際にはなにかと知識が必要になるもの。しかし、それらはなかなか人に聞きづらくもあります。そこで参考にしたいのが、『世界で一番わかりやすい おいしいお酒の選び方』(山口直樹著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)。著者は高級フランス料理店、一流店でのバーテンダーなどを経験したのち、日本酒業界に貢献できる仕事をしたいと一念発起したという人物。現在は、銀座の日本酒専門店「方舟」を運営する会社で支配人を務めています。「日本酒学講師」「酒匠(さかしょう)」「FBO専属テイスター」「調理師免許」「ワインソムリエ」などさまざまな資格をも持つという、いわば酒文化・食文化のプロフェッショナル。そんなキャリアに基づき、お酒について知っておきたいことを指南してくれているわけです。きょうはそのなかから、ワインに関する豆知識をご紹介したいと思います。■「誰々がほめた」は無視して大丈夫近年は輸入食品を扱っているお店も増え、スーパーやコンビニなど、ワインを買える場所も格段に増えてきました。とはいえ、そのなかから「これ!」と思えるワインを選ぶのは難しいことでもあります。「〇〇賞受賞!」などの謳い文句もよく見かけますが、ワインには数え切れないほど多くの賞があり、そのレベルもピンキリ。著名な評論家が勧めているといっても、好き嫌いは人それぞれ。それだけでは、自分の好みに合うかどうかはわからないわけです。だからますますわかりにくくなるのですが、基本的には受賞歴や「誰々がほめた」というような要素は除外して考えるべきだと著者は断言しています。ヴィンテージも、よほどの玄人でなければ混乱するだけなので、まずは無視して構わないのだとか。■大切なのは品種とシチュエーションでは、なにを重視すべきかといえば、大事なのは品種。また、宅飲みワインを選ぶときには、シチュエーションにも注目すべきだともいいます。簡単にいえば、「どんな仲間と飲むのか?」「先輩の人がいるのか?」などを考慮することが重要だということ。「飲み慣れている人が多いのか少ないのか」に注目すると、宅飲みワインはグッと選びやすくなるというのです。そしてここでは品種ごとに、2,000円の予算内での選び方を紹介しています。■予算内でおいしいワインを選ぶコツ(1)スパークリングワイン「モエ・エ・シャンドン(Moe & Chandon)」「ヴーヴ・クリコ(VEUVE CLICQVOT)など有名なものは予算オーバーですが、「カヴァ(cava)」と書いてあるものであれば、1,000円前半からいいものがあるのだそうです。「カヴァ(cava)」はスペイン語で、「瓶内二次発酵しているスパークリングワイン」という意味。つまり、炭酸がしっかり溶け込むように、「シャンパンと同じつくり方をしたスペイン産のスパークリングワイン」だということ。だからこそ、予算2,000円以内でスパークリングワインを選ぶのなら、「カヴァ」で決まりだといいます。(2)白ワイン白ワインと赤ワインを選ぶとき、まず注目すべきはボトルの形。なで肩は渋味(タンニン)が少なくて柔らかく、いかり肩はしっかりとタンニンを感じるタイプ。そして白ワインを選ぶとき、普段あまりワインを飲まない人がいるなら、シュッと細長いドイツの白ワイン「リースリング」がいいそうです。理由は、クセがなく、嫌いな人が少ないから。そして女性が多いのなら、「甘口」と書いてあるものを選ぶほうがいいとか。逆に先輩の方やワインを飲みなれている人が多そうな場合は、少し予算をオーバーして3,000円以上のフランスワインを選んだほうがいいかもしれないといいます。なぜなら、年配の方にはまだまだ「チリワインなんて三流」という先入観を持っている人も多いから。無難なところではフランス産のシャルドネ、やや値段は上がるものの3,000円程度のニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランはほぼ間違いなくおいしいそうです。とはいっても、最近は特に輸入食品店では目利きがバイヤーを務めているため、1,000円代でも大きく外すことはないはず。(3)赤ワイン赤ワインの場合も、飲みなれていない人がいるなら「なで肩」ボトル。ピノ・ノワールあたりがいいと著者はいいます。飲み慣れていない人は多くの場合、渋味が苦手なので、香りが華やかでスルスル飲めるワインを選ぶほうがいいという考え方。カリフォルニアのピノ・ノワールは、コスパがいいそうです。一方、飲み慣れている人が多い会であるなら、「いかり肩」ボトルにすべき。少し予算に余裕があればフランスの黒ワイン、別名「カオール(CAHORS)」がおすすめだと著者。色の濃さから想像できるとおり、渋味が十分で玄人受けするのだそうです。コスパ重視でいくのなら、お店で飲むときと同じくフランスやイタリアなどの旧世界を外し、ニューワールドもの(オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン、アメリカなど)を。うまくいけば、予算3,000円で2本買えるかもしれないといいます。*ワインや日本酒だけでなく、カクテルの選び方、頼み方、飲み方なども解説されているので、それほどお酒に強いわけではないという人でも楽しめる内容。お酒とともに心地よい時間を過ごすために、目を通してみてはいかがでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※山口直樹(2016)『世界で一番わかりやすい おいしいお酒の選び方』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年08月31日そのタイトルからもわかるように、『ひとり社長の経理の基本』(井ノ上陽一著、ダイヤモンド社)は「ひとり社長」が知っておくべき、経理の基本を解説した書籍。つまり基本的には経営者が対象になっているわけですが、すべてのビジネスパーソンにとっても有効な内容だと断言できます。なぜなら経理の基本を知っておくことは、どんな仕事をするうえでも欠かせないから。そこで今回は第1章「9割の社長が知らない『経理のホント』」のなかから、経理についての基本的な考え方を抜き出してみたいと思います。■経理とは「経営管理」の略称である経理は、「税務署や銀行のためにやるもの」だと考えてしまいがちかもしれません。しかし著者は、その考え方をきっぱりと否定しています。なぜなら、それは自分のため、自社のためのものだという考えを持っているから。経理とは「経営管理」の略称で、いわば経営の舵取りをするもの。決して“作業”などではなく、イメージとしては「経理=お金、会計、税金のバランスをとる仕事」なのだというのです。お金を貯めるには、支払う税金を減らす、つまり「節税」が不可欠です。また税金を減らすには、会計の仕組みを知っていることが必須。そして会計の仕組みがわかれば、お金の効果的な使い方がわかるというわけです。■経理がわからないと会社は潰れる!経理は毎日、毎月やるものですが、決算は通常の場合、年に1回行うものです。決算書をつくり、1年の業績を確定させ、税金を計算するわけです(各会社の決算月に応じ、時期は変わります)。そして税金を確定させたら、決算の日(事業年度終了の日)の翌日から原則として2か月以内に、税務署へ税金を支払うわけです。これが、「決算・申告」。なお、ここで重要なのは、決算・申告の土台となるのが経理だという事実。経理をないがしろにすると、決算の仕事が大変になり、作業に追われることになってしまうのです。また、経理の状況が適当だと税務署に目をつけられることになり、経理が間違っていたら「本来なら払わなくていい税金」を払ってしまうこともあるといいます。いわば、経理がいいかげんだと、決算・申告もボロボロになってしまうということ。■手間いらずの方法は3ステップ経理術しかし、そもそも経理とはなにをすることなのでしょうか?この問いに対して著者は、「ひとり社長の経理でやるべきことは、『1.集める、2.記録する、3.チェックする』だと主張しています。ITの発達によって簡略化が進んだとはいえ、いまだに「手書きの伝票を扱う」と言った古い考え方がはびこっているだけに、経理の仕事をまともにやったら大変。そこで、手間をかけない新しい経理の方法として、この「3ステップ経理術」が力になるというのです。[ステップ1]集める「集める」は、レシートや領収書、あるいは請求書などを集めるステップ。スタートラインであるわけですが、実はもっとも重要なステップでもあるのだそうです。なぜなら、この「集める」という作業をおろそかにしてしまうと、極端な話、「余計な税金を払う」「税務署から税務調査に入られる」といったことが起こる可能性があるから。そして、ここで決め手になるのが「証拠と理由(ストーリー)」。たとえば「本を書くための資料として、専門書を買った」とします。この場合、「本を買ったときのレシート」が証拠、「本を書くための資料として買った」が理由になるわけです。つまり、証拠と理由をしっかり集めておかなければ、「なにに、どれだけのお金を使ったか」「なにをやって、どれだけ儲けたか」がわからなくなってしまうもの。すると正しい経理ができず、決算・申告の際に税務署から「この会社は怪しい」と目をつけられてしまうというのです。だからこそ、最初のステップである「集める」が重要なのだということ。[ステップ2]記録する「記録する」は、集めたレシートや領収書、請求書などをデータとして記録するステップ。ちなみに、昔はこの作業を手書きで行っていましたが、現在はPCで簡単にできるそうです。[ステップ3]チェックする「チェックする」は、記録した数字(売上、経費など)に問題がないかを確認するステップ。「売上は順調か」「経費はどれくらいかかっているのか」「税金はどれくらいかかっているのか」といったことをチェックし、問題があれば修正していくわけです。この作業は、最低でも毎月1回はやることが大切。手間なく効率よく集計し、毎月の業績をできるだけ早く把握するためです(業種によっては、毎日把握すべきものもあるのだとか)。毎月のチェックを適当にやっていると、「1年が終わって計算してみたら、大きな赤字だった」「経費を使いすぎた」ということになりかねないというわけです。■1日5分の「習慣」を身につけるべし大まかにご説明すると、これが3ステップ経理術。なお、「集める」が重要だと書きましたが、それはいちばん大変なことでもあるそうです。ただし、きちんと資料を集めて整理していれば、経理はそれほど難しくはないと著者はいいます。ポイントは、「毎日やること」「毎月やること」「1年に1回やること」を頭に入れておくこと。そして書類をためてしまわないように、まずは「毎日やること」を続ける「1日5分の習慣」を身につけることが大切だといいます。*実際に携わっている仕事とは直接関係なかったとしても、経理の基礎を頭に入れておくことは決して無駄にはならないはず。本書を教科書として活用すれば、いつか必ず役に立つと思います。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※井ノ上陽一(2016)『ひとり社長の経理の基本』ダイヤモンド社
2016年08月31日「1日2時間かかっていた作業を5分で終わらせる時短のコツ」というキャッチフレーズからもわかるとおり、『絶対残業しない人がやっている 超速Excel仕事術』(奥谷隆一著、あさ出版)は、Excelで時間短縮するためのコツを明かした書籍。著者は、クライアント先の外資系企業でExcelを利用したシステムを構築・運用するプロジェクトに従事したことをきっかけに、現在まで20年以上にわたり、Excelを活用した業務の効率化を推進しているという人物です。しかし、なぜExcelで時短が可能になるのでしょうか?■少し工夫するだけで大幅な時短が可能企画書や提案書、さらには決算書類まで、ひと昔前まではデスクワークのほとんどは紙の作業で行われていました。いまは、それら多くの作業がExcelに置き換えられたわけです。しかし、紙で手書きしていたことを、単純にExcelへの入力に置き換えただけでは、まだまだExcelを有効活用できているとはいえないと著者は主張します。もともとExcelとは、仕事の作業効率をアップするための「道具」。にもかかわらず多くのビジネスパーソンは、Excelのことをわかったつもりでいながら、「Excelを使う」ことにばかり気持ちを奪われてしまいがちだというのです。その結果、平気で延々と手作業で入力したり、データのコピペを繰り返したりして何時間も浪費することになってしまうということ。しかし、それらの作業のほとんどは、Excelの使い方を少し工夫するだけで、数分で片づくようになるといいます。■Excelの作業に共通するプロセス著者によれば、Excelを学ぶ最大のメリットは「時間が手に入る」こと。入力作業にやたらと時間がかかったり、コピー&ペーストをしたら罫線まで消えてしまってなんども罫線を引きなおしたり、似たような表をたくさんつくった結果、どのデータが正しいのかわからなくなってしまったり……。そんな経験のある方も少なくないと思いますが、そうしたムダな1~2時間が、たった数分で済むようになるわけです。作業時間を短くできない人は、「時間がない」といいながらいつまでも作業をやっているもの。その結果、知らず知らずのうちに家族と過ごす時間や趣味の時間などを失い続けることになります。でも、そういう人たちは、Excel業務になぜそんなに時間がかかってしまうのでしょうか? そのことを解き明かすためには、Excelの作業に共通する仕事の流れを把握することが大切だといいます。1.ファイルを開く(あるいは新規作成する)2.数字、文字、図(グラフを含むオブジェクト)などの編集作業をする3.書式設定で形を整える4.印刷する5.ファイルを保存して閉じる印刷しなかったり、図形を使わなかったりする場合もあるとはいえ、それ以上のプロセスが発生することはないわけです。■時間短縮の鍵は「ピボットテーブル」なお、このプロセスを時間がかかっている順に並べ替えると、2.[編集] → 3.[書式] → 4.[印刷] → 1.&5.[ファイル操作]の順になります。そしてExcelをうまく活用している人は、特にこの上位2つのプロセス[編集]と[書式設定]に関する操作を上手にこなしているというのです。そして、この[編集]と[書式設定]の役割を同時に行う最強の機能が「ピボットテーブル」(データをさまざまな形に加工、分析する機能)。ピボットテーブルをうまく活用することが、「残業をしない人」への近道になるということ。現代の企業においては、スピードが最優先されるもの。会議で質問が飛んできたときにも、迅速な対応が求められます。だからこそ、そんなとき、映していたパワーポイントからサッとExcelのデータに切り替え、ピボットテーブルで大量のデータをまとめなおし、リアルタイムに回答できれば評価も高まるはず。また、会議前に自分でデータ分析をする際にも、ピボットテーブルは役立つそうです。切り口を一瞬で変更しながら情報を見ることができるので、短時間で臨機応変なチェックが可能。■使いこなして圧倒的な結果を出すべししかもピボットテーブルは、決して難しい作業ではないといいます。それどころか、難しい数式や関数を使うことなく、マウスのドラッグ&ドロップだけで直感的に扱えるため、Excel初心者でも積極的に活用できるというのです。もちろん、Excelをうまく使ったからといって、それ自体が評価されるわけではないでしょう。しかし、Excelを使いこなして圧倒的な結果を出せば、楽に時短ができ、周囲からの評価もアップするというわけです。*こうした考え方を軸とした本書では、ピボットテーブルの機能を中心に、Excel業務効率化のカギとなる[編集]と[書式設定]における時短のワザが紹介されています。それらをここでご紹介するわけにはいきませんが、図版も豊富も盛り込まれていてわかりやすい内容。デスクサイドに置いておけば、いざというとき役に立ってくれそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※奥谷隆一(2016)『絶対残業しない人がやっている 超速Excel仕事術』あさ出版
2016年08月29日『図解 ダイエットは運動1割、食事9割』(森拓郎著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、シリーズ15万部突破のベストセラーとなった『ダイエットは運動1割、食事9割』のイラスト図解本。イラストをふんだんに盛り込み、文章を簡潔にまとめることにより、オリジナル版のエッセンスをわかりやすく伝えています。大ヒット作であるだけに、もうご存じの方も少なくないとは思いますが、まだ読んだことがないという方に向け、きょうはカロリーについての基本的な考え方を抜き出してみたいと思います。■とにかく「運動すれば痩せる」はウソいうまでもなくダイエットでは、摂取カロリーを消費カロリーが上回る状態をキープする必要があります。つまり運動をしても痩せられない人は、食べている分を運動量で超えることができていないということ。もちろん原因は「食べすぎ」です。しかし、そうであるにもかかわらず、多くの人は「消費カロリーを稼いで帳尻を合わせよう」とするのだといいます。ところが、食のことには目を向けず、おなかがすくまで運動すれば痩せるというほど、エネルギー代謝の仕組みは単純ではないと著者は断言しています。痩せたいと考える人は短期間で結果を出したがる傾向があるため、運動の量や強度を極端に増やしてしまいがち。しかし運動の問題点は、たいして消費カロリーを稼げないにもかかわらず、達成感だけは大きいということなのだそうです。■運動してもカロリーはさほど減らない通常、体重50キログラムの人が時速8キロで30分間ランニングをした場合、消費できるのは200キロカロリー程度。毎日がんばったとしても、1か月で6,000キロカロリーしか消費できないということです。しかし体脂肪は、1キログラムあたり7,200キロカロリーのエネルギーを持っているといわれているので、1か月で1キログラムも減らないということになるわけです。しかも、大きな問題は「達成感」だといいます。運動して汗をかくと達成感が得られるため、ご褒美として「少しぐらい多く食べても大丈夫」と思ってしまいがちだということ。これはとても納得できる話ではないでしょうか?■30分泳ぎ続けても効果はあまりなしそして、さらにダイエットの失敗に拍車をかけるのが、「ダメなら運動の種類を変えようとする」発想なのだとか。たとえば「ランニングよりも水泳のほうが消費カロリー多い」という情報を得ると、水泳に変えるというようなことです。でもクロールで30分泳ぎ続けたところで、消費できるのは約250キロカロリー。ほとんど変わらないのです。にもかかわらず、水泳をすると、ランニングとは比較にならないほどおなかがすくもの。これは、運動強度が上がり、カロリー消費が増えたぶん、食への欲求が増してしまうからなのだそうです。その結果、食べれば食べるほど、食べたいという欲求はさらに大きくなることに。運動が、痩せるために抑えている食への欲求を、つらい方向に導いてしまうという悪循環です。■有酸素運動は「時間効率が悪すぎる」ところで脂肪燃焼のための運動といえば、酸素を利用して体内のエネルギーを消費する「有酸素運動」が有名です。この運動は、長い時間をかけて行うことのできる強度の低い運動であればあるほど、酸素を使う効率(有酸素性)が高まるのだそうです。たとえばウォーキングとランニングでは、ウォーキングのほうが運動強度が低く長い時間行えるので、有酸素性の高い運動となるわけです。しかし、だからといって、ランニングよりウォーキングのほうがダイエットに適しているというわけでもなさそうです。なぜなら、運動の強度が低ければ、そのぶん運動量は減ってしまうから。効果を出すためには、運動時間を長く取る日強があるということです。また、体脂肪が燃えやすいといわれる有酸素運動でさえ、消費するカロリーの約半分は糖質なのだとか。ランニング30分で200キロカロリーを消費するうち、脂肪は100キロカロリーしか消費されないわけです。いわば有酸素運動は、ダイエッターにとってかなり時間効率が悪いということ。■痩せたいなら食事コントロールが大切ちなみに運動した直後に体重を計ったら2キロ痩せていたりして、うれしくなることがあります。が、それは水分量の変化であり、体脂肪が2キログラム燃焼されたわけではないのだといいます。だからこそ、そんな現実を踏まえたうえで著者は、体の痩せるメカニズムを考えると、食事のコントロール以上に効率的なダイエット方法はないと主張しているのです。「食事のコントロールに、必要なぶんの運動を足す」という考え方こそが適切だということ。*フィットネストレーナー、ピラティス指導者、整体師、美容矯正師として活躍する著者は、ファッションモデルや女優などの著名人に対してもボディメイクやダイエットを指導していることで有名。そんな実績があるからこそ、本書の主張にも強い説得力があります、一項目1見開きで読みやすくもあるので、ダイエットを真剣に考えている方は、ぜひ一度チェックしてみてください。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※森拓郎(2016)『図解 ダイエットは運動1割、食事9割』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年08月29日『短時間で「完全集中」するメソッド』(佐々木正悟著、大和書房)の著者は、20代後半から30代にかけてアメリカに留学し、実験心理学を専攻してきたという心理学ジャーナリスト。その際、「ブラック・ルーム」という無音で真っ黒な部屋に被験者を閉じ込め、自分にお好きなことを徹底的に考えてもらうという実験をしてみたことがあるのだそうです。その結果としてわかったのは、どんな人でも、その気になればわずか1分で極端な集中状態に入ることができるということだったのだとか。そこで本書においても、「ブラック・ルームほど大がかりではないけれど、しかし『たった1分』で自分を変えられる集中法」を紹介しています。■まずは1分だけ集中してみるべしこの話題について語るにあたり、著者は、ある瞑想の指導者が「1分間瞑想法」というものを提唱したときのエピソードを引き合いに出しています。いうまでもなく「1分間だけ瞑想してみましょう」ということで、それだけでも効果があるというのです。しかし当然のことながら、彼のセミナー参加者からは「たった1分の瞑想で効果があるわけがない」という疑問が出たのだといいます。すると、その瞑想の指導者は、次のような説明をしたのだそうです。「瞑想の習慣を持っていない人に対して、『毎日30分、1時間瞑想しましょう』といったところで、そんな習慣はつきっこない。だったら、全然やらないよりは、1分間でも毎日やったほうがいい」このエピソードを通して著者が訴えようとしているのは、「瞑想をしない人は、『瞑想なんて、たいして意味がない』と思っていること。そして、同じことが「集中」にもいえるというのです。つまり「集中力」も、くだらないと思われがちなのです。だからこそ、「1分間だけ」集中してみることをおすすめしたいというわけです。1分間だけであれば、その内容がどうであれ、集中することはさほど難しくはないはず。しかも、特別な技能やツールも必要ないわけです。たとえ1分だけでも、毎日「集中しよう」と思って実践するなら、そこには大きな意味があるということです。■次は1分プラスして2分集中するさて、「1分だけ集中する方法」に続き、本書では集中を続ける時間を2分にしてみることも心がけてみようと提案しています。そして、ここで興味深い指標として紹介されているのが、ブログやオンラインマガジンを「文章を読ませたい」と思っている人たちが調べている「直帰率と滞在時間」。読者はそれらの文章を読むか読まないかを一瞬で判断し、わずかな時間を割いて情報を汲み取っていくということです。しかしじっくり読んでいる時間はないので、約8割の人は一瞬記事を眺めただけで読まずに他へ移動してしまうもの。これが直帰率ですが、直帰率はよくても70%、悪ければ90%を超えるというのです。つまり大半の人は、インターネット使用時に集中などしていないわけです。■直帰率と平均滞在時間が示すものでは、直帰しなかった人は、どのくらいの間、文章を読んでくれるのでしょうか?これは、「平均滞在時間」で計ることができるといいます。具体的には、1記事につき2分読まれれば「非常によい」といわれているというのです。インターネットは比較的新しい技術環境ですが、人間の自然な欲求をかなり満たしてくれるものでもあると著者はいいます。私たちは、よほど自分にマッチしたものでない限り、自然に集中して取り組んだりはしない。そのことを、「直帰率と平均滞在時間」という統計が教えてくれるということ。そして、それはおそらく新聞や雑誌についても同じだろうと著者は推測しています。■2分間だけ集中することに価値がしかし、そこで重要な意味を持つのが「2分間」です。つまり逆にいえば、2分間だけ同じものに集中していられるのであれば、それは「集中力が持続している」と考えることができるわけです。著者が「1分間」と同時に「2分間」にもこだわるのは、そんな理由があるからです。なんに対しても一瞬でどんどん目移りしてしまう習慣になんとか歯止めをかけ、「2分間だけ」集中して読んだり書いたりすることができるのであれば、それが意味を持つということ。集中力に関してはそこから一段階、新しいゾーンに踏み込むことができるというわけです。*本書で著者がその重要性を強調しているのは、「時間を忘れるほど没頭してしまうこと」の意味。そこにはたしかに、短時間で完全集中するためのヒントがありそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※佐々木正悟(2016)『短時間で「完全集中」するメソッド』大和書房
2016年08月29日わが子の可能性をできるだけ広げてあげたいと思うのが、親心。「でも、わたしも算数は苦手だったし、うちの子にもあんまり期待できないわ……」なんて、最初からあきらめてしまっているママはいませんか?それは大きな勘違い。子どもが暗算や計算を上手に早くできるかどうかは、先天的なものとはまったく関連がないことが最新の脳科学研究で明らかになっています。それどころか、小さいころから「数」を意識した生活を送ることで、子どもの社会性や思いやりといった情緒面の発達も促すことができるというのです。『小学校前にみるみる算数力がつく15の習慣』(久保田カヨ子・久保田競共著、ダイヤモンド社)から、算数力が子どもの発達によい影響を与える理由、そして算数力を伸ばすトレーニング4つをチェックしてみましょう!■数字を教材にすることで「脳」が育つ本書は、脳科学に基づいた独自の育児法が人気の“カヨ子ばあちゃん”こと久保田カヨ子さん、夫で脳科学の権威・久保田競さんの共著。数の概念を扱う力=算数力が脳に与える影響が、最新の脳科学研究に基づいて解説されています。「数字」を扱うことで鍛えられるのは、脳の前頭前野と呼ばれる部分。しかし本書によれば、この前頭前野がよく働くことのメリットは、単に「計算ができるようになる」「算数の成績がよくなる」ことだけにとどまりません。社会性をもったひとりの人間としてバランスよく成長するために、おおいに役立つことがたくさんあるのです。■前頭前野を鍛えてバランスよい人間に前頭前野の働きには、具体的にどんなものがあるのでしょうか。たとえばなにかの作業をする際に、その方法や時間配分を考え、ダンドリよくする能力。おおまかな塊からおよその量の見当をつける「概算」も前頭前野の領域です。寿司職人が手の感覚で正確にシャリの量をつかみ取ることができるのは、この働きによるもの。子ども同士の場面でも、たとえばおやつをみんなで分けるときなどに活きてきます。さらに、美しいものを見て感動する感性が育ちます。脳科学の実験では、優れた数学者が数式や数の配列を見て美しいと感じているとき、前頭前野の前の内側部分が働いていることが判明しました。そして、これは普通の人が美しい芸術作品を見たり、美人の顔を見たりした時に働く場所だったのです。前頭前野がよく働くと社会性が生まれ、人づきあいがうまくなります。相手の気持ちもわかるようになり、情緒や思いやりも生まれます。ひいては就職や結婚もうまくいったり、健康で長生きする傾向もあったりすることが、最新の脳科学研究で裏づけられています。■算数力アップする4つのトレーニングこのように、「算数力」のアップはひいては人間としての成長も大きく促してくれます。本書で紹介する「算数力アップのトレーニング」のなかから、1~3歳ごろから取り入れられる4つのエッセンスを抜き出してみましょう。(1)できるだけ両手を使う手先を使うことは、脳の発達に大きな影響を与えます。1~3歳頃は、利き手を意識せず両手両足を同じように動かすことが重要。両手が十分に使えるようになったあとで、おのずと「使いやすい手」が決まってきます。使いやすい手が決まっている場合も、反対の手をしっかりと使うよう意識してあげましょう。(2)「時計の針」を意識した言葉がけ幼児には、目で見た情報が伝わりやすいもの。リビングなどにアナログ時計を置き、「針がここまできたら、お片付けね」などと語りかけて時間感覚を身につけさせましょう。「もう3時だから、おやつね」「2時から1時間も寝ていたね」など、数字を入れて言葉をかけてあげると、さらに効果的です。(3)「タイマー遊び」で時間感覚を磨く秒針のあるアナログ時計を使い、1分間「アーーー」と声を出し続ける遊びです。日常にあるもっとも身近な数字は「時間」です。1分の長さを体感することで、時間というもの自体の意味をつかむ手助けになります。息が続かなくても大丈夫。「ちょっとお休みして、また声を出してね」と声がけし、親子で楽しく声出し遊びをしてみましょう。(4)ひとケタのたし算・ひき算の「お経式暗算法」ひとケタ同士、答えもひとケタのたし算、ひき算をお経のように唱えるトレーニング。暗算をくりかえすと、神経細胞のつながり(シナプス)ができて関連細胞の数も増え、前頭前野がよく働きます。本書には、おふろに貼ってたのしめる「お経式暗算法」ミラクルシートがついていて、すぐに取り入れることができるのも、うれしいですね。*脳のトレーニングは早いほどいい、ということも、脳の研究から明らかになっています。脳は外からのはたらきかけによって刺激を受け、神経細胞の間にシナプスというつながりができていきます。この刺激への反応がもっとも活発になるのが1~3歳ごろなのです。本書には、すぐに取り入れられる「算数力アップ」の習慣が数多く登場します。すべて著者ご夫婦、競さんの視点から見た脳科学的根拠と、カヨ子ばあちゃんの子育て経験、育児メソッドに裏付けられたもの。わが子の可能性を大きく広げてあげるためにも、手に取ってみたい1冊です。(文/よりみちこ) 【参考】※久保田カヨ子・久保田競(2016)『小学校前にみるみる算数力がつく15の習慣』ダイヤモンド社
2016年08月27日みなさん毎日しっかり野菜を食べていますか?最近はカフェやファミレスでも野菜たっぷりのメニューがあったり、コンビニで色々な種類の野菜サラダやスープなどが売られていたりするので、手軽に野菜を食べることができますよね。カゴメ株式会社の調査でも32.6%の人が「普段の食事で野菜は足りていると思う」と答えました。しかし、さらに調べてみると実際に成人1日の野菜摂取量(350g)を食べている人はわずか4.2%だということがわかったのです。野菜不足は健康を損なうだけではなく、太りやすい体質を作ってしまうので要注意!『10日間でやせ体質に生まれ変わる野菜レシピ』(岸村康代著、アスコム)は3日間集中的に野菜をたっぷり食べることで、やせやすい体質を手に入れる「ズボラベジダイエット」を解説しています。実際にフードプランナーであり管理栄養士、シニア野菜ソムリエでもある著者もこの方法で15kgのダイエットに成功したそう。いったいどんな方法なのでしょうか?早速内容を見ていきましょう。■まず3日間はベジシャワーで食欲リセット「ズボラベジダイエット」は、最初の3日間にたっぷり野菜を食べるだけ。普段の食事がスポイトの水滴程度の野菜だとしたら、シャワーのように野菜を体内に取り入れます。それにより、栄養を体の隅々まで行き渡らせ、食欲スイッチを正常に戻すことができるのです。この3日間は炭水化物をなるべく控え、生野菜と加熱野菜をとにかくたっぷり食べましょう。リバウンドを防ぐためにタンパク質はきちんと摂ってください。1日3食以外の間食は禁止ですが、どうしても我慢ができなくなったら、ミニトマトやリンゴ(半分~1個)、トマトジュース(200ml)、豆乳(200ml)などをゆっくり食べてお腹を満たしましょう。■その後7日間ゆるく「やせグセ」をつける3日間の集中リセットの後、7日間はルールを少し緩やかにして「やせグセ」をつけます。この方法でストレスなく、やせやすい食習慣を身につけることができるのです。野菜をたっぷり食べるのは最初の3日間と同様ですが、朝食と昼食には炭水化物を摂ってもOK。どうしても外食をしなければならない場合は、その前後の食事は特に野菜を摂るように気をつけましょう。コンビニなどで買う場合は野菜がたっぷり入ったサンドイッチと豆乳の組み合わせがおすすめです。■3種の「ベジ技」を使って野菜を食べよう野菜を使った料理というと味付けもヘルシーにしがちですが、同じような料理ばかりでは飽きてしまいます。野菜の摂取量を増やすにはバリエーションを増やすのがコツ。著者おすすめのテクニック「ベジヌードル」「ベジ丼」「ベジ肉」を使って美味しく野菜を取り入れましょう。(1)ベジヌードルズッキーニ、ニンジン、大根などをスライサーなどで麺のように細長くスライスします。たとえばニンジンのベジヌードルを電子レンジで加熱し、他の具材とナポリタン風に炒めるとボリュームたっぷりの一皿に。大根はスライサーを使うときしめんのようになります。電子レンジで加熱し出汁をかけて食べましょう。(2)ベジ丼ご飯の量を半分にし、千切りのキャベツやレタスなどで「かさ増し」します。ご飯をただ減らすのではなく野菜を増やすことで食べ応えアップに。麺料理ならモヤシやエノキ、切り干し大根でかさ増し可能です。(3)ベジ肉肉の代わりに野菜を使います。ナスをみじん切りにすればひき肉の代わりに。オリーブオイルで炒めてトマトソースに絡めればパスタソースにぴったりです。ズッキーニのベジヌードルにかけるのがおすすめ。また、ナスを厚めに切って蒲焼風にするとウナギのような食感を楽しめます。■つくりおきもフル活用して野菜を食べよう野菜をたっぷり食べるには、つくりおきを活用するのが便利。ピクルスやナムル、オリーブオイルあえなどは箸休めになり、毎日食べても飽きません。また、葉物野菜は下ゆでをしておけば料理の時短に。多めの塩を入れた熱湯で30秒ほどゆで、ザルにあげて冷ましたら水気を切って保存袋に入れて冷凍庫で保存します。一つの鍋で順番に数種類の野菜の下ゆでをしてもよいでしょう。そしてきのこは、数種類を手でほぐして保存袋に入れて冷凍しておくと旨味がアップします。炒め物や味噌汁などに入れるとボリュームアップに。凍ったまま調理できるので便利です。*本書では1日3食×3日分の野菜レシピもついていますので、そのまま作れば3日間の「ベジシャワー」はばっちりです。うっかり暴飲暴食してしまった日の翌日も「ベジシャワー」の食事をするのがおすすめだそう。野菜不足になっている人ほど食生活が大きく変わり、効果も出やすいのではないでしょうか。(文/平野鞠) 【参考】※岸村康代(2016)『10日間でやせ体質に生まれ変わる野菜レシピ』アスコム※野菜摂取実態に関する意識調査-カゴメ株式会社
2016年08月26日『走れば脳は強くなる』(重森健太著、クロスメディア・パブリッシング)の著者は、脳科学とリハビリテーションの分野で研究を重ね、現在はおもに運動の視点から「脳を鍛える、若返らせる」ことをテーマに活動しているという人物。つまり本書では、そんな実績を軸として、脳科学の知見からランニングの効能と賢い走り方を明かしているわけです。■人は1日何km走れば痩せられるのかところで、太ってしまったとき、「走って痩せよう」と思うことがありますよね。あるいは、「太らないために走ろう」と考えることもあるでしょう。しかし実際のところ、どの程度の距離を走れば同じ体重を維持できるのでしょうか?その点を解き明かすために、本書ではアメリカでの研究結果が紹介されています。BMI(体重と身長の関係から肥満度を示す体格指数)が25以上の中高年(40~65歳)260名を、運動量と運動強度の違いから、次の4グループに分けて分析したというのです。(1)とくに運動をしないグループ(2)運動の量は少なく、強度が中程度のグループ(週に12マイル(19.2㎞)のウォーキング/ジョギング、最大酸素摂取量の40~55%の強度)(3)運動の量は少なく、強度が高いグループ(週に12マイル(19.2㎞)のウォーキング/ジョギング、最大酸素摂取量の65~80%の強度)(4)運動の量が多く、強度の高いグループ(週に20マイル(32㎞)のウォーキング/ジョギング、最大酸素摂取量の65~80%の強度)■1日2km以上走れば体重は増えない8ヶ月間におよぶ実験の結果、(1)のグループは体重が増加し、運動をした(2)と(3)と(4)のグループでは、運動量と運動強度の多い順に体重が減少したそうです。そして、同じ体重を保持できるのは1週間に8マイル(12.8㎞)のウォーキングかジョギングを余分にする必要があると結論づけられているのだといいます。8マイルを1日に換算すると2㎞程度。つまり、2㎞程度余分に運動していれば、体重が増えることはない。さらにいえば、それ以上に実施すればそれだけ減量できるわけです。とはいえ、同じ運動をしたとしてもその効果には個人差があるもの。そこで普段から体重を管理し、効果を測定することが必要。■1万歩あるけば肥満の防止につながる次に、「歩く」ことについての話題にも触れてみましょう。ここで紹介されているのは、歩数計を使って、肥満との関係を調査した研究です。この実験は、80名の平均年齢50.3歳の女性に、7日間歩数計を装着してもらい、1日の平均歩数を算出するというもの。まず参加者を、歩数によって次の3グループに分けたそうです。(1)6,000歩未満(2)6,000~9,999歩(3)1万歩以上さて、結果はどうだったのでしょうか?まず体脂肪率で見てみると、(1)のグループ44.2%(2)のグループ35.1%(3)のグループ26.4%と、明らかに1日あたりの歩数の少ないグループのほうが高いことがわかったそうです。BMIでも、歩数の少ないグループのほうが高く、(1)のグループでは、30に近い平均値だったとか。つまり、1万歩という大台を目指して歩くことは肥満の防止につながるわけです。また、ウォーキング雑誌購読者3,578名への郵送調査で、歩数と肥満の関係について調べた研究結果も紹介されています。1週間に歩く距離別にBMIを見てみると、年齢にかかわらずBMIは1日の歩数とともに曲線的に減少することがわかったといいます。要するに、そこからも1万歩という大台を目指して歩くことは肥満の防止につながるということがわかるわけです。■生活のなかで歩く機会をつくるべし!そして、これらの結果を踏まえたうえで著者は、「前向きに考えれば、わざわざ運動する機会をつくらなくてもいい」と主張しています。つまり、歩いて行けるところへは電車を使わずに歩いたり走ったりしてみたり、あるいはエレベーターを使わずに階段を使う。そんなふうに生活のなかで歩く機会をつくるだけで、健康につながるということ。たしかにそう考えたほうが、長続きしそうではあります。*他にも体を鍛えることについて、さまざまな角度からの検証がなされています。しかもアプローチが柔軟で読みやすいだけに、無理なく知識をつけ、脳を強化していくことができそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※重森健太(2016)『走れば脳は強くなる』クロスメディア・パブリッシング
2016年08月26日「最近法律が変わって、海外資産にも課税されるようになった」と聞く機会がよくあります。しかし実際には、以前から海外の資産から生じる所得などについては、課税の対象となるケースがほとんどだった……。このように主張するのは、『海外資産の税金のキホン』(信成国際税理士法人著、税務経理協会)の著者です。詳しくいえば法律が変わったのではなく、日本の税務当局が海外資産に対する課税を強化・把握するようになったということなのだそうです。また、パナマ文書のように、ペーパーカンパニーを利用した資産隠しも明らかになるケースが増えているのだとか。2018年からは海外の金融講座情報なども日本と海外の税務当局間で交換されることが想定されており、「海外に資産を移せば日本の税務当局に把握されない」という時代は終わりを告げようとしているというのです。そこで本書では、個人で注意しなければならない国際税務の基礎を開設しているわけです。■世界の税務当局の動きが変わってきている個人が国境を飛び越えて経済的に活動することは珍しくなくなりましたが、かといって、一国の税務当局がすぐにそうした活動を把握できるというわけではありません。そこで税務当局はこれまで、課税漏れを見逃す、あるいは税法の制約を逆手にとった個人の租税回避行為を許してしまうことがあったのだそうです。そのため近年、世界の税務当局は、個人の経済活動や財産の状況をきちんと把握し、課税漏れや租税回避行為を防止しようとしているというのです。もちろん日本も例外ではなく、近年は「国外送金等調書制度及び国外財産調書制度」の創設や、相続税法の改正、出国税の導入などにより、個々人の財産の動きをチェックし、適切な課税を行おうと全力を挙げているのだといいます。また、富裕層の行きすぎた節税行為に対し、世界各国の税務当局が共同で、不透明なお金の流れについて情報開示を行うことも予定されているといいます。つまり海外移住や海外投資を検討している人は、こうした世界的な流れを把握し、納税について知り、対策を講じる必要があるわけです。■他にも海外資産の税制について知る意義がそして、海外資産の税制について関心を高める意義がもうひとつ。それは自国や他国の税制についての知識を蓄え、理解を深めることにより、ムダな納税を防止することです。事実、自国と他国の税制や租税条約を知らなかったために、税金の申告や農夫の場面で次のような損をするケースも。(1)外国税額控除という制度を知らずに損をしているケース海外に所有している不動産を賃貸に出している場合、その所有者が日本在住の人なら、その不動産がある国と日本の両方で、その不動産に課せられる税金を納めなくてはなりません。海外と日本とで、1つの所得に対して2つの税金を納めているわけで、これを二重課税と呼ぶそうです。しかし二重課税は、「外国税額控除」という制度を用いれば過払いを防ぐことが可能。なのにこの制度を知らず税金を納めていたのでは、不動産投資が財産を食いつぶすことになってしまいかねないということ。さらに国によっては、不動産収入から税金を直に源泉徴収する場合もあるとか。税金が源泉徴収されていると、個人のお財布や口座から出ていく痛みを伴わないので関心が向かず、自分の損失に気づきにくくなってしまうというのです。(2)税務対策を取らずに損をするケースいまは国外送金等調書制度や国外財産調書制度などにより、海外資産から生じる所得についての無申告や申告漏れは容易に発覚するそうです。そして税務署はいったん把握すると、納税者に対して「お尋ね」という事実確認の信書を出すもの。納税に関心の高い人なら、この時点で税理士などの専門家に相談するのですが、そうでない人の場合、そのまま税務署に足を運ぶことに。そして後日、税務調査を受け、本税のみならず、無申告加算税や過少申告加算税、延滞税といった「そもそも適正に申告納税をしていれば、払わなくて済んだ税金」ををムダに払う羽目になってしまうというのです。■「海外に投資をすれば大丈夫」は過去の話冒頭の話題にもかかわることですが、かつて海外投資を普及させるための謳い文句として、「海外に投資をすれば日本の税金はかからない」というものがありました。けれど、もうすでにそんな時代は終わっているということ。つまりは日本にいる以上、海外資産についてもなんらかの税金をきちんと申告し、納税しなくてはならないということ。そして税務署が海外の税務当局と連携し、対策を取っている以上、「知らなかったのだから仕方ない」では済まされなくなっているのです。*税法の知識がない人でも理解できるようにと、わかりやすく説明されているところが本書の魅力。そのため、「数字のことは苦手」という方でも無理なく基礎を学ぶことができるでしょう。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※信成国際税理士法人(2016)『海外資産の税金のキホン』税務経理協会
2016年08月24日