すでに多くのメディアが取り上げているのでご存知かと思いますが、2016年4月から、電力自由化がスタートしました。簡単にいえば、これまでとは違い、一般家庭でも電力会社を自由に選ぶことができるようになったわけです。ただ、「そこでなにが変わるのか?」については、詳しいことがわからないという方も少なくないはず。そこで目を通しておきたいのが、『電気の選び方-わが家の電力自由化ガイドブック-』(電気新聞著/編集、日本電気協会新聞部)。一般家庭を対象に、失敗しない電気の選び方を紹介した書籍です。電気を選べるようになったのだとしたら、いちばん気になるのはやはり料金。そこで本書から、電気料金について覚えておきたいことを抜き出してみましょう。■電気料金が規制料金から自由料金へ!2016年3月まで、一般家庭の電気料金は、国のチェックを受けた料金だったのだそうです。これは一般的に「規制料金」と呼ばれているもの。一方、電力小売全面自由化が決まった2016年4月以降、新しい電力会社や、地域の電力会社から提供される電気料金は、国の規制を受けない「自由料金」。自由料金の特徴は、料金を上げるのも下げるのも電力会社次第で、国のチェックが入らないということ。そのため、多くの会社が参入し、さまざまな電気料金メニューをアピールしているわけです。■とくに切り替えない場合は従来のままでは、2016年4月以降も電力会社や電気料金メニューを変更しなかったとしたら、どうなるのでしょうか?その場合は、自由化前まで地域の電力会社と契約していたメニュー(従量電灯Bなど)が、自動的に継続されることになるのだといいます。なお自動的に継続される自由化前の電気料金メニューのうち、従量電灯などの標準的な規制料金メニューは、競争が進むまでしばらくの間は維持されることになっているのだそうです(正確には、地域の電力会社の「特定小売供給約款」に記されたメニュー)。これらのメニューでは新たに電気を使いはじめるときに選ぶこともできますし、電力会社を切り替えたあとで、再度戻ることも可能。ただし特定小売供給約款には、自由化前にあったオール電化住宅用の料金メニューや、季節別時間帯別料金メニューなどはないそうです。自由化前に契約していた人はそのまま継続利用できるものの、新たに契約を結ぶ場合は、自由化後にできた電気料金メニューのなかから自分の使い方に合ったものをチョイスすることになるわけです。■把握しておきたい電気料金の基本とはところで新しい電力会社の多種多様な料金メニューも、実は従来の電気料金をベースに設計されているのだといいます。そこで、まずは電気料金の基本的なしくみを把握しておくことが大切。月々の電気料金は、地域によって使用する電気の容量(アンペア=A)で決まる「基本料金制」か、一定の使用量まで定額の「最低料金制」に分かれます。一般に電気料金は、この「基本料金(最低料金)」と、電気の使用量(kWh)によって計算される「電力量料金」との組み合わせで計算されるのだそうです。電力量料金は、使用する電力量に応じて料金単価が3段階に分かれ、使用量が多くなるにつれて単価が高くなっていきます。つまり、経済的に余裕のない人でも電気を利用できるようにしているわけです。なお電力量料金では、使用量に応じて「燃料費調整額」が加算または差し引かれるのだといいます。さらに、使用量に応じた「再生可能エネルギー発電促進料金」も加算されることに。■新しい電力会社の多種多様なサービスまた電力自由化後に登場した電気料金メニューではまったく同じしくみのもののほか、電力量料金単価が2段階になっているものや、基本料金がないものなど、異なるしくみのメニューも登場しています。他業種の参入や企業間の提携により、多種多様なサービスも生まれているとか。安さで勝負する電気料金メニューはもちろんのこと、セット割引、ポイント付与などのメニューが豊富に揃い、新しい体系の電気料金も登場。それだけでなく、ガス、通信、石油元売りなど異業種の参入により、各社の強みを生かした「セット割引も。さらには「Tポイント」「Ponta」「dポイント」など各種のポイントカードと提携し、電気料金の支払いによってポイントを貯められるサービスも登場しています。当然のことながら、ポイントの還元は電気料金の割引とも考えられるので、意識しておいて損はないかもしれません。いずれにしても、ライフスタイルを振り返ったうえで、自分に適した電力会社およびメニューを選ぶことが重要だということです。*他にも電気の選び方や使い方について覚えておきたいことがコンパクトにまとめられているため、きっと役立つはず。電力自由化のメリットを得るためにも、ぜひ読んでみてください。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※電気新聞(2016)『電気の選び方-わが家の電力自由化ガイドブック-』日本電気協会新聞部
2016年08月06日どんなオフィスにも、「仕事が速い人」と「仕事が遅い人」がいるものです。しかし、その差はどこから生まれるのでしょうか?あるいは、自分自身の仕事のスピードを上げるためにはどうしたらよいのでしょうか?その答えを見つけるため参考にしたいのが、きょうご紹介する『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』(木部智之著、KADOKAWA)。著者は、ITエンジニアとして日本IBMに入社し、14年間のキャリアの大半をシステム開発のプロジェクトに費やしてきたという人物。現在は大規模で困難なシステム開発プロジェクトで、数百人の開発チームのプロジェクトリーダーとなっているそうです。つまり本書では、そのような経験を軸として、仕事が速くなるためのコツを紹介しているわけです。■仕事を速くこなすための3つの要素「仕事が速い人」と聞くと、「手の動きが速い」というようなイメージを抱くかもしれません。「デキる人」=「次から次へと猛烈なスピードで仕事を処理する人」とでもいうように。しかし、必ずしも本質はそれだけではないのだと著者はいいます。仕事の速さには「速くやる」「ムダを省く」「確実にやる」という3つの要素があり、仕事が速い人はそれらを兼ね備えているというのです。(1)速くやる「速くやる」とは文字どおり、「動き」を速くすること。たとえばマウスを使わずにショートカットで操作をしたり、あるいは手の動きそのものを速くするというような動きのことです。そんなことかと思われるかもしれませんが、1回1回がほんの数秒の違いであったとしても、そのテクニックを「知っているか、知らないか」「やるか、やらないか」でどんどん差が開いていくということ。だからこそ、いろいろなテクニックを覚えさえすれば、誰にでも速さを追求できるわけです。(2)ムダを省くムダな時間とは、著者の言葉を借りるなら「やらなくてもいい作業をしてしまった時間」。ひとりでやる作業、誰かとのやりとり、考えることなど、どんなことについても、仕事が速い人はムダなことをしていないというのです。しかし対照的に、仕事が遅い人はそれらの「ムダ」に気づいていないことが多いもの。だとすれば「どんな作業がムダなのか」を見極め、それらを取り除けば仕事が速くなるという考え方です。(3)確実にやる確実にやろうとすれば、逆に時間がかかってしまいそうです。しかし、それが速さにつながるのだと著者は主張するのです。理由はシンプルで、もしもやったことが間違っていたとしたら、やりなおさなければならなくなるから。厳密にいえば、「どこからやりなおすか」を考えること自体にも時間がかかってしまうということ。つまり、速くやってミスを増やすよりは、ゆっくり確実に進めて間違いのない状態にしたほうが、最終的には時間を短縮できるという考え方です。■2回目までは力技で様子を見るべしビジネスパーソンは、この2つのタイプに分けられると著者は分析します。・あまり深く考えず、とにかく行動して最後に帳尻を合わせる「力技タイプ」・事前にいろいろ作戦を練って、計画どおりに実行する「頭脳タイプ」そして自身は、最速で仕事を終わらせるために、この2つの人格を自分のなかに持つようにしているのだといいます。1回しかしない仕事で、かつ1時間で済むようなものは、あれこれ考えたり、効率的な方法を調べたりしてから着手するより、力技で1時間で片づけてしまったほうが速い場合も。たとえば「テキストを打ち込むだけ」「ひたすらホチキス留めをするだけ」と言ったような作業です。こういう作業については、「どうやったら効率的にできるか?」「ムダな作業はないか?」などと考えている時間それ自体がムダだということ。そういう仕事は力技でこなせばいいので、1時間でやってしまうのがいちばん効率的だというわけです。しかし、1回だけだろうと思って受けた仕事を、「もう1回やって」とふたたび頼まれることもあるでしょう。そんなときは、2回目までは力技で様子を見るべき。しかし、さらに「もう1回やって」と頼まれて、同じ仕事を3回やらなければならなくなった場合は、以後も4回、5回と繰り返す可能性が高くなるはず。そこで、3回目になった時点で、以後の効率化を考えることが重要。効率化するにあたっては調べる手間がかかることもありますが、その手間は先行投資と考えるべきだと著者はいいます。*このように、効率化についての徹底した視点を備えているところが著者の強み。そして、こうした考え方に基づいて、メールやエクセルのショートカット、ものの考え方や伝え方、任せ方、果ては思考法までを効率化する方法が紹介されているので、とても実践的な内容。すぐに使えるアイデア満載です。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※木部智之(2016)『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』KADOKAWA
2016年08月05日『なぜ、お客様は「そっち」を買いたくなるのか?』(理央周著、実務教育出版)の著者は、コンサルタントや研修講師として多くの企業を見てきたという人物。そのなかには、毎年過去の業績を上回る収益を上げている企業もあれば、うまくいかずに事業を縮小する企業もあったのだといいます。そして、数多くの企業を見てきた結果、売れない企業には理由があることを発見したのだそうです。それは、「売ろう」とするから「売れない」ということ。つまり、お客様も“売るための広告”に慣れているからこそ、「買ってください」と売り込むよりも、お客様のほうから「そんなにいいものならほしい」「行ってみたい」と思ってもらえるようにすることが大切だという考え方です。ちなみに、成果を出しているお店のオーナーや企業経営者に共通しているのは、「熱心」「素直」「早い」の3つなのだそうです。知らなかった重要なことを「熱心に」聞き、思い込みや過去の成功体験などにとらわれることなく「素直に」受け止め、市場のスピードやお客様に置いていかれないように「すばやく」動くということ。そこで本書では、身近な事例をもとにして「なぜ売れるのか?」をマーケティングの考え方によって解説しているわけです。きょうはそのなかから、ロールケーキの値段についてのクイズをご紹介したいと思います。■フルーツケーキが売れないとき値下げするべきか?【クイズ】ご自分が、都心にあるケーキショップのオーナーパティシエだったとします。目玉商品としてフルーツロールケーキを開発し、まわりの店の相場と同じく、1本1,500円で売り出しました。ところがまったく売れなかったため、価格変更を検討しています。さて、このとき、お求めやすく1,000円に値下げするか、いっそのこと値上げするか、どちらにすべきでしょうか?この問いへの答えを導き出すにあたって著者は、ファンに愛されるブランドを形成する5つの資産を紹介しています。(1)ブランドへの「忠誠心」があること(2)ブランドが「認知」されていること(3)ブランドが消費者に「価値があると見られている」こと(4)ブランドのイメージが「れんそう」できること(5)その他の知的所有権のある無形資産(特許、商標、取引関係など)この5つの資産があればあるほど、強いブランドになるのだといいます。「認知」されていることは必須の条件で、「見た目の価値」が高ければ買ってもらう理由に直結。ブランドが「連想」されればポジティブなイメージを持ってもらうことができ、「忠誠心」が強ければ長く買ってもらえるというわけです。顧客はブランドの資産価値が高まれば自信を持って買うことができ、満足度もアップするもの。企業は高いブランド価値をつくり出すことができれば、徐々に広告を出さなくてもよくなり、効率よくマーケティング活動ができるということです。■4倍に値上げしてから売れはじめたガトーショコラそして、ここで引き合いに出されているのが、東京・新宿のガトーショコラ専門店「ケンズカフェ東京」。オーナーシェフである氏家健治氏の著書『1つ3000円のガトーショコラが飛ぶように売れるワケ』によると、このガトーショコラの価格は次のように変遷しているのだそうです。500グラム1,300円で販売↓半分の250グラムにして1,500円に値上げ↓250グラムで2,000円に値上げ↓250グラムで3,000円に値上げ最初とくらべると半分のサイズになっているので、実質約4倍の値上げ。それでも、3,000円に値上げしてからは飛ぶように売れているのだとか。当然のことながら、ただ価格を上げるだけではなく、素材やレシピを含めた味を最高級のものにするための努力をしていることが大前提ですが。■自分だけの製品をブランド化することで利益を得るどちらかといえば、ビジネスの調子が落ちるとすぐに値下げして、買いやすさをアピールしようというのが一般的な考え方かもしれません。しかし「戦略なき値下げ」をすると、営業利益と「見た目の価値」が同時に落ちてしまうことに。ケンズカフェ東京の例でいえば、お客様にとっては1,500円のガトーショコラよりも3,000円のガトーショコラのほうが「ありがたみ」があり、よりおいしく感じられるということ。もちろん、必ずしも高価格に設定することが正しいわけではないでしょう。ただし、「ライバルよりも安ければより多く売れる商品」とは、どこでも買えて、独自化されていない製品やサービスだけ。少なくとも中小企業や個人事業主がすべきことは、自分だけにしかできない質の高い製品をブランド化することによって価格を設定し、十分な利益を確保することだといいます。よって、この問題の正解は「いっそのこと値上げする」になるわけです。*このように身近な話題を題材にしているだけに、マーケティングの本質を無理なく理解できるはず。「売り方」で悩んでいる人には、特にオススメです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※理央周(2016)『なぜ、お客様は「そっち」を買いたくなるのか?』実務教育出版
2016年08月04日いまや介護は誰でも避けては通れない問題。平成27年の厚生労働省の調査では、85歳以上の60.3%は介護が必要な状態であることがわかっています。家族の介護には多額の費用が発生しますが、それだけでなく、介護する側が仕事を辞めたり、休職したりせねばならず、収入が減ってしまうこともあります。このような状態で徐々に家計が圧迫され、「介護破産」に陥るケースも近年増えているといいます。収入が減っても住宅ローンなどは払い続けなくてはならないため、事前にきちんと資金計画をしていないと、後で取り返しのつかないことになってしまうかもしれません。そこで目を通しておきたいのが、『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本』(太田差惠子著、翔泳社)。介護が必要になった場合の施設の選び方から、かかるお金、契約についてまでが具体的に説明されています。今回は本書のなかから、施設入居を計画する際に知っておくべきポイントをご紹介します。■1:親が「100歳になるまで」を想定して計画する高齢者施設に入居するにあたって必要な費用は、大きく分けて「入居一時金(前払金)」「月々必要な料金(居住費・食費・サービス費など)」「その他の費用(医療費・生活用品・小遣いなど)」「予備費」となります。入居一時金は無料~1億円、月額費用は5~40万円と施設によってかなり幅があるため、「いくらかかるか」というより「いくらかけられるのか」という視点で検討していく必要があります。資金計画を立てる際は、親が100歳まで生きると想定して計算します。入居一時金などのまとまったお金は貯蓄から、月々の支払いは年金などの収入から支払うのが基本です。たとえば、1,000万円貯蓄があるAさん(80歳)の場合、一時金200万円、緊急の出費に備えた予備費を200万円とすると残りは600万円になります。100歳まであと20年間生きるとすると、年間で使えるお金は30万円で、月額にすると25,000円。毎月10万円の年金があるとすると、12万5,000円までは支払えるということになります。まずは早い段階で、親の貯蓄と毎月の収入を把握しましょう。資産状況がわからないまま施設探しをすると、あとあとやりくりができなくなってしまう恐れがあります。■2:月額利用料の他にかかる費用にも注意する特別養護老人ホームや老人保険施設など、介護保険で入れる「介護保険施設」では、おむつ代や食事用エプロン代など細かなものまで介護費に含まれています。しかし、介護付き有料老人ホームなどの民間施設の場合、おむつ代は原則有料。持ち込みをした場合でも廃棄料金が必要になる施設もあります。通院への付き添いや買い物代行なども費用がかかります。また、民間施設入居中に病院に入院する場合、食費以外は継続して支払わなくてはいけません。このような状況になると「施設費用」と「入院費用」が二重にかかり、厳しい状況になります。そのため、あらかじめ予備費をとっておかなくてはいけません。■3:利用料金に合ったサービスかどうか確認する民間施設の利用料金を大きく左右するのは、「立地」「設備」「人件費」の3つ。一般不動産と同様、立地条件のよいところは施設料金も高くなる傾向があります。建物についても新築は割高で、中古物件をリノベーションした施設は割安になっています。共用施設の広さや豪華さも注意したいところです。また、人員体制も確認しましょう。国の指定基準は要介護者3名に対して職員1名となっていますが、民間施設では2.5:1や2:1となっているところもあります。また、介護職員よりも看護職員の方が人件費が高くなるため、看護師が24時間体制で常駐する施設では利用料金が高くなります。比較検討する際は、なにが必要でなにが必要ではないのかをしっかり見極めることが大切です。■4:自分自身も年金生活になる可能性を想定する親の貯蓄や年金で費用が十分にまかなえない場合、子からの支援が必要になることもあります。しかし、現在は働いていて収入が十分にある人でも、将来は年金生活になるということを意識しておかなくてはいけません。自分自身が介護される身になった、もしくは先に自分が亡くなってしまった場合は次の世代に大きな負担をかけることになってしまいます。親の支援をする場合は、子の生活設計も考え、できる範囲で行うことが大切です。■5:「共倒れ」になる前に生活保護も視野に入れる介護疲れで、共倒れ寸前のような状態になると「お金はあとでなんとかなるはず」と考えて、とにかく施設入居の契約をしてしまう人がいます。しかしこれは危険。途中で経済状況が厳しくなり、施設を退去しなくてはならない事態に追い込まれることもあります。それを回避するには、まず担当のケアマネージャーに相談し、在宅のままショートステイを連続30日間利用する、3ヶ月間老人保健施設に入居してもらうなど一時的に親と離れ、冷静に考える期間をもうけましょう。親の経済状況がかなりひっ迫している場合は、親に生活保護を申請することも一案です。施設の月額利用料を生活保護の「生活扶助」「住宅扶助」で賄える可能性があります。実際生活保護を受けながら、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で生活している例も珍しくありません。*介護にかかる費用は施設によって大きく異なるので、資料などを取り寄せてしっかりと比較検討することが大切。親が元気なうちはまだまだ大丈夫と思いがちですが、元気なうちだからこそ、しっかりと話し合っておきたいですね。(文/平野鞠) 【参考】※太田差惠子(2016)『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本』翔泳社※介護や支援が必要な人の割合はどれくらい?-公益財団法人 生命保険文化センター
2016年08月02日「まるで別人?」と思うほどの変貌ぶりを遂げた、モリタクこと経済アナリストの森永卓郎さん。テレビ番組の企画でパーソナルトレーニングジム『ライザップ』に挑戦し、目標をクリアすれば賞金500万円(CM出演料)をゲットできるという金額に惹かれ、低糖質ダイエットへの挑戦がはじまりました。これは、2015年10月のことです。当時の森永さんの体重は89.8kg、体脂肪率30%超え、ウエストは114cmという極度の肥満体。加えて7年前より糖尿病と診断され、毎日のインスリン注射と大量の薬の服用が欠かせず、医療費は月に1万2,000~3,000円はかかっていたといいます。しかし4ヶ月で、体重19.9kg減、ウエスト23cm減、体脂肪半減を実現したというから驚きです。一体どうすれば低糖質ダイエットがうまくいくのか?森永さんの著書『モリタクの低糖質ダイエット』(SBクリエイティブ)から探っていきましょう。■甘い糖質も甘くない糖質もカットする!低糖質ダイエットのルールは、とてもシンプルです。日々の食事から糖質を大量に含む食べ物をカットするだけ。そのため、どんな食べ物に糖質が多く含まれているかを知ることはとても大切なことです。糖質には、「甘い糖質」と「甘くない糖質」があります。甘い糖質には、「ブドウ糖」「果糖」「砂糖(ショ糖)」「乳糖」などがあり、お菓子や甘い炭酸飲料などで使われています。一方、甘くない糖質の代表は、「デンプン」。米、小麦、トウモロコシなどの穀類、イモや根菜などに含まれている糖質の主成分です。甘い糖質は減らそうと意識しやすいのですが、甘くない糖質である、ご飯やパン、ラーメン、うどんなどの麺類も低糖質ダイエットではカットします。■角砂糖16個分の甘い炭酸飲料をやめる森永さんいわく、「糖尿病になると、のどが渇いてしかたなくなる」のだそうです。糖尿病がもっともひどかったとき、毎日5Lくらいの水分を摂取していたといいます。成人の水分補給は1日平均1~1.2Lとされているので、およそ4~5倍の水分を摂取し、しかもそのほとんどがコーラやサイダーのような甘い炭酸飲料だったといいます。甘い炭酸飲料には、砂糖などの糖質が10倍の濃度で入っているため、500mlのペットボトルには角砂糖16個分、およそ50gもの糖質が入っている計算になります。健康な人であったとしても、森永さんと同じ量を摂取していればリスクは増えることでしょう。■1日の糖質摂取量を「5g以下」にする500万円という賞金が鼻先のニンジンとなり、低糖質ダイエットに真面目に取り組み始めた森永さんは、短期間に最大限の効果を得るため、1日の糖質摂取量を5g以下に設定。日本人が1日に摂っている糖質は280g前後であり、ダイエット前は平均の約3倍の、840gの糖質を摂取していた森永さんが、5g以下に抑えるというのですから、かなり大胆なシフトチェンジです。糖質の摂取量を、これまでから168分の1に抑える食事の内容とは、どんなものでしょうか。まずは1日5食を1日3食に改善し、間食のお菓子も潔く卒業。甘い炭酸飲料もやめました。「お腹がすいてたまらないのでは……?」と、空腹を心配していた森永さんですが、実際にはひどい空腹感に悩まされることもなく、それどころか糖尿病が改善し、それと同時にのどの乾きもなくなってきたといいます。3食でも間食でも糖質を摂らない食事をすることで血糖値は安定し、血糖値の急激な低下に伴う空腹感が起きなくなっていったのです。人間の体って、じつに不思議ですよね。■お金をかけずに低糖質ダイエットをする低糖質ダイエットは効果が高いけれど、お金がかかるといわれることもありますが、森永さんは「週1,500円」で食費をまかない、見事に低糖質ダイエットを実践。そこには、4つの工夫がありました。(1)豆腐を食べる痩せやすい体をつくるには、筋肉の分解を防ぐために、肉や魚、豆腐や納豆などの大豆食品などタンパク源の摂取を重視します。タンパク源のなかでもダントツに安いのが豆腐。木綿豆腐なら1丁(300g)でタンパク質20g、糖質5g。絹ごし豆腐は1丁でタンパク質15g、糖質6gなので、低糖質ダイエット中は木綿豆腐を選ぶと効果的です。(2)卵を食べる豆腐とともにおすすめしたいタンパク源が、卵。ダイエット中の卵の値段は、LLサイズが10個入りで100円、1個たったの10円だったそうです。しかも、LLサイズ(約70g)の卵は1個でタンパク質7g、糖質はわずかに0.2gです。栄養素も豊富で、調理法も多く、どんな料理にも合うので低糖質ダイエットの強力な味方といえる食材です。(3)胸肉を食べる豆腐と卵に肉と魚を加えれば、バラエティが豊かになり、飽きずに続けられます。肉も魚もタンパク質が豊富で、糖質はごく微量。難点は、値段が少々高いことです。しかし、鶏肉の胸肉なら、森永さんの事務所付近のスーパーでは、100g当たり77円というお手頃価格だとか。タンパク質は鶏肉100gに20gも含まれています。豚肉も牛肉も部位によって異なりますが、タンパク質は100g当たり15~20g前後は含まれるようです。アジ、イワシ、サンマ、サバなどの大衆魚も1切(80~100g)でタンパク質は10~20g摂れます。(4)生野菜を食べるタンパク源を確保したら、野菜、キノコ、海藻を組み合わせて、栄養バランスを整えましょう。糖質が少なく、不足しがちなビタミンやミネラルがバランスよく含まれ、さらに食物繊維も豊富です。厚生労働省は、1日350gの野菜摂取をすすめています。生野菜なら両手にのる量で100g、過熱した野菜ならこぶし大で100gが目安です。毎食100g以上食べるようにしたいものですね。*低糖質ダイエットが終了後、ラーメン店に行った森永さん。なんと麺を3分の1も食べ終わらないうちにギブアップしてしまったといいます。胃が小さくなったのか、体が糖質に対して拒否反応を起こしたのか、原因は不明ですが、デブ時代のような食生活には戻らないだろうと実感しているそう。19.9kgも体重が減った4ケ月の体験が、森永さんの外見はもちろん、食生活も健康への意識も大きく変えたようです。こんなに変わるのなら、気になりますよね。ぜひ『モリタクの低糖質ダイエット』を参考に、低糖質ダイエットをはじめてみては?(文/山本裕美) 【参考】※森永卓郎(2016)『モリタクの低糖質ダイエット』SBクリエイティブ
2016年08月02日「たとえ無一文になっても、自分はいつでもお金を生み出すことができる自信がある」と語るのは、『大人女子のお金レッスン』(五丈凛華著、フォレスト出版)の著者。和菓子職人から料理教室運営会社の営業に転職し、独自のマーケティング理論を確立して年間売り上げ全国1位を獲得したという人物です。独立後は、起業家育成コンサルタントとして、500人に対し500 種類の起業モデルを提供し、独立をサポートしているのだとか。つまり本書では、著者が15年におよぶ経験によって培った知恵や知識を明かしているわけです。■5年後にリッチになれる人となれない人「想像してみてください。5年後のあなたはなにをしていますか?」著者はよく、この質問をクライアントにするそうです。そんなとき、男性よりも女性のほうがはるかに早く答えることができ、しかも、その描写はリアルなのだといいます。「白い高級タワーマンションで夜景を見ながら、優雅にワインを飲んでいます」というような感じで、想像しているときも、とても楽しそうなのだそうです。ところが、現実に戻ったとき「落差」に直面し、大きなダメージを受けてしまうのも、イマジネーション力が高い女性ならではの特徴。年収1,000万円を夢見ていても、現実は300万円だったとき、「やっぱり私には無理」と簡単に結論を出してしまうことが往々にしてあるというのです。特に、夢に描く自分ははっきりしていても、資金・環境・時間などの「現実的な制約」が立ちはだかったときに夢を諦めてしまいがち。たとえば天然酵母パンのお店を開きたくて、味にも自信はあるのだけれど、場所がそもそも人のあまり通らない田舎で、しかも資金が足りない……というようなケースです。イマジネーションの世界では空を飛ぶこともできるけれど、現実の世界では、道をまっすぐ歩いているだけでも石ころや電柱に当たってしまうもの。■魔法のフレーズ「じゃあ、どうする?」しかし、ここで著者は真っ当な指摘をしています。つまり、「現実とは“制約”があって当たり前」だということ。起業とは、制約がある現実と向き合っていくこと。だとすれば、それをクリアできさえすれば、夢はどんどん実現していくというわけです。とはいっても、想像力あふれる女性の思考は、理想と現実のギャップに耐え切れず「やっぱり無理」とフリーズしてしまいがち。しかし、そんなときにオススメの「魔法のフレーズ」があると著者はいいます。しかも、それは驚くほどシンプル。なにしろ、「じゃあ、どうする?」だというのですから。試しに、自分に対してこう問いかけてみましょう。「お金はいまより欲しいけれど、方法がない。じゃあ、どうする?」たったこれだけのことを考えるだけで、なんらかの映像が頭に浮かんだのではないでしょうか?「会社で役職についている姿」「起業するためにセミナーに参加している姿」など、不思議とポジティブな映像が“答え”として出てくるものだというのです。■イマジネーション力をプラスに活用する女性がビジネスをするときに、思わぬところで足を引っぱるのが「イマジネーション力」なのだと著者は指摘します。なぜならイマジネーション力は、ネガティブなことすら存分に映像化してしまうから。しかし、「じゃあ、どうする?」と前向きな言葉を投げかけることによって、その力を“別の方法”を探し当てるために使えばいいということ。たとえば、先ほどの天然酵母パンのお店の件、「田舎だし、お店を開く資金もない」という状況下で「じゃあ、どうする?」と考えてみれば、「お店を開かずに、通信販売をする」というアイデアに行き着くことも可能であるわけです。■シンデレラは超ポジティブ思考だった?ところで、どん底から成功への階段を一気に駆け上がることを「シンデレラ・ストーリー」といいますが、このことについて著者が興味深いことを書いています。本当のシンデレラは、普段から超ポジティブ思考だったのではないかと推測しているのです。義理の姉たちにいじめられながらも、前向きに生きてきたからこそ、舞踏会で王子様に見初められたのではないかということ。そして、こうも記しています。「じゃあ、どうする?」は、魔法使いのおばあさんが見すぼらしいシンデレラをお姫様に変身させた魔法の呪文「ビビディ・バビディ・ブー」と同じ、夢を現実にする力を備えたフレーズだと。だからこそ、理想と現実の狭間で夢を諦めそうになったら、「じゃあ、どうする?」と自分を前向きにする魔法の呪文をかけるべきだといいます。そうすれば、現実でなにをすればいいかがわかるようになり、「リッチな5年後」が近づいてくるというのです。*実際に「月給13万円」の現実から抜け出してきた人だからこそ、著者の言葉には強い説得力を感じるはず。いまよりお金を稼ぎたいという女性は、ぜひ読んでみてください。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※五丈凛華(2016)『大人女子のお金レッスン』フォレスト出版
2016年08月02日『〈マンガとQ&Aで楽しくわかる〉1人でできる子になる 「テキトー母さん」流 子育てのコツ』(立石美津子著、日本実業出版社)の著者は、子育てに関する著者、講演家として精力的に活動している人物。教育現場での経験に基づいた講演には定評があり、自身が自閉症児を育てる母親でもあります。前作『『1人でできる子が育つ「テキトー母さん」のすすめ』も話題を呼びましたが、新作である今回も、テーマにしているのは子育てにおける“テキトー”の重要性。というのも、著者が“テキトー”を強調することには大きな理由があるのです。■子育てはテキトーなくらいがちょうどいい子育て経験のある方ならおわかりになると思いますが、子どもに向き合って一生懸命になればなるほど、「いいママにならなくちゃ」「いい子に育てなくちゃ」という“いいママプレッシャー”にがんじがらめになってしまうもの。理想を追い求め続け、つい完璧主義になってしまうわけです。事実、かつては著者もそうだったといいます。しかし、そんな状態だと、親も子どもも不幸になってしまって当然。そのことに気づいてから、“テキトー”な子育ての重要性を実感したというのです。つまり“テキトー”とは“いいかげん”ということではなく、肩の力を抜いた“ちょうどよい状態”だということ。そして、そのような考え方をもとに、本書では6歳までの子育てアドバイスを紹介しています。■ちょうどよい状態のテキトー母さんタイプとはいえ、“テキトー”になるのは、そうそう簡単なことではありません。そもそも、どんな人が「テキトー母さん」なのか、基準がよくわからないという方もいらっしゃることでしょう。では、どうすればちょうどいい「テキトー母さん」になれるのでしょうか?著者によれば、テキトー母さんとは次のような人だそうです。(1)期待しない人期待しすぎてハードルを上げると、子どもも親もしんどくなってしまってしまうもの。だからこそ、過度に期待しない人になることが大切だというわけです。(2)くらべない人親としては、つい他の子のことが気になってしまいます。とはいえ、よその子やきょうだいとくらべずに、子ども自身の昔といまを比較することができる人になることも重要。(3)あるがままを受け入れる人たとえいい子でなかったとしても、わがままをいっても、子どものあるがままを受け入れることが大切。つまり、世界中を敵に回してでも子どもの味方になる人になるべきだということ。■子育ての成功は子どもが自分を好きか否かでは、子育てに成功と失敗はあるのでしょうか?このことについて著者は、「子育てが成功したかどうかは、その子が“自分のことが好きかどうか、自尊感情が育っているかどうか”に尽きるのではないか」と記しています。よくないのは、親が自分の理想像を追って「まだうちの子にはこれが不足だ。あれもできない、これもできない」と引っ張りまわしたり、追い立てたりしてばかりいる状態。そんな状況のなかにいると、子どもは「どうせ自分なんかダメな人間なんだ……」と自分自身を好きになれず、人生を楽しめなくなってしまうというのです。いってみればテキトー母さんは、その逆。親の価値観を一方的に押しつけることなく、子どもにないものを嘆くこともせず、あるがままをすべて受け入れる子育てだということ。そうやって育てられた子どもは、大人になったとき、他人を妬んだりすることなく、「自分は自分、生きているだけで幸せ」と思えるようになるといいます。そして、人生でどんな壁にぶち当たったとしても、乗り越えられる力がつくとも言います。つまりテキトー母さんになると、子どもも親も幸せになれるということです。■テキトー子育てなら自分自身も苦しまない著者は幼児教育の仕事を通じ、30年以上にわたり、多くの子どもたちと接してきたそうです。そしてそんななかで、「こうあるべき」「こうあらねば」と、子どもに自分の理想を押しつけ、子どもの成長の芽を摘んでしまっているママを数多く見てきたのだといいますしかし、立派な花を咲かせようと鉢に水をやりすぎてしまうと、根腐れして枯れてしまうもの。子育ても同じで、あれこれ手をかけすぎると、子どもの可能性を潰してしまうということです。だからこそ著者は、「どこへ出しても恥ずかしくない子に育てなきゃ」「人に迷惑をかけない、いい子に育てないと」、だから、そのために「自分もいいママにならないと」という完璧な子育てを目指し、子どもだけではなく自分も苦しめているママに、「テキトー」な子育ての大切さを伝えたいのだそうです。*Q&A形式になっているのでわかりやすく、自分の子どもに当てはめて考えることができるはず。子育てのストレスに悩んでいる方にとって、本書は大きな力になってくれることでしょう。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※立石美津子(2016)『〈マンガとQ&Aで楽しくわかる〉1人でできる子になる 「テキトー母さん」流 子育てのコツ』日本実業出版社
2016年08月02日2013年に、『100%好かれる1%の習慣』がベストセラーとなりました。12年間にわたりANA客室乗務員(以下CA:キャビンアテンダント)を務め、現在はマナー講師として活躍する著者が、人間関係の法則を説いた著作。きょうご紹介する『1秒で「気がきく人」がうまくいく』(松澤萬紀著、ダイヤモンド社)は、そんな著者による新刊。今回は、「気がきく人」になるために必要な習慣を説いています。著者は本書において、CA時代にも、マナー講師となってからも、出会った経営者、芸能人、同業他社の方々などにはひとつの共通点があることに気がついたと記しています。それぞれの業界で成果を上げている人たちはみな、ほんの一瞬、ほんの「1秒」という短い時間のなかで判断をくだし、「気がきく習慣」をいつも実行しているということ。99%の人がやっていないそれは、やろうと思えば誰でも実行できる、たった「1%の習慣」でもあるのだとか。また、「1秒」意識することではじめられる習慣でもあるので、本書では「気づかい」「機会」「習慣」「言葉」「行動」という5つの観点から、このことについて解説しているのです。■コミュニケーションの「3かけ」が大切!ほんの少しのさりげない「声かけ」が、相手の心を元気にしたり、励ましたり、あたたかくすることがあるもの。実際、CAはいつも、機内のお客様との「スポット・カンバセーション」を心がけているのだとか。スポット・カンバセーションとは、「短い会話」のこと。そして、このことに関連して、著者は過去の自分位影響を与えた人物のエピソードを引き合いに出しています。それは、著者が卒業した中学校の西谷先生という方。西谷先生は、生徒ひとりひとりに寄り添う教育を信条としていて、「3かけ」を実践されていたのだそうです。「1:目をかけ、2:気にかけ、3:声をかけ」というもの。「目をかけ」とは、子どもたちを「見る」こと。とはいえ、ただ目を向けるだけではしての心の機微に気づくことができないので、思いやりを持って「気にかけ」ながら、「目をかけ」ることが大切だという考え方。そしてこれは、子どもに対することだけではなく、あらゆるコミュニケーションにとっても重要だというのです。私たちは誰でも、「自分のことを知ってもらいたい」「自分の存在に気がついてもらいたい」という「承認欲求」を持っているので、いつも声かけをして「あなたのことを気にかけていますよ」という気持ちを示してあげることが大切だということ。■コミュニケーションの「3かん」も大切!ところで著者は、コミュニケーションで大切なのは相手の「味方」になることだと説いています。相手から、「この人だったらわかってくれる。この人だったら信頼できる」と感じてもらうことが重要だということ。でも、どうしたら「味方」になれるのでしょうか?その答えとして著者は、西田先生が実践していたという「3かん」(3つのきょうかん)によるコミュニケーションを紹介しています。コミュニケーションの「3かん」とは、以下のようなもの。(1)「共感」子どもたちの思いに共感する(2)「共汗」子どもたちと一緒に汗を流す(3)「共歓」子どもたちと一緒に喜び楽しむこれら他人への「きょうかん」が、人と人との結びつきを強くするというのです。それぞれについて、詳しくご説明しましょう。■相手に寄り添う気持ちを持つだけでOK!「共感」とは、他人の意見や感情に「そのとおりですね」と寄り添うこと。否定してしまうのではなく、同じ思いを示すことが大切だという考え方です。「共汗」とは、一緒に汗を書く、つまり手伝うこと。「お手伝いできることはありませんか?」のひとことは、「人と人をつなぐ言葉」だと著者は考えているそうです。なぜならそのひとことは、「あなたと一緒に汗をかきますよ」という「信頼」につながるから。そして最後は「共歓」。自分が「うれしい」と思ったとき、相手も自分のことのように「一緒に喜んでくれる」と、もっとうれしい気持ちになるものです。喜びを人と分かち合うと、喜びが2倍になるといっても過言ではないわけです。だから相手が喜んでいたら、一緒に喜んであげることが大切だということ。他人に「きょうかん(共感/共汗/共歓)するとは、いいかえると「相手の立場になる」こと。「3かん」を心がけて人と接すれば、相手の気持ちがわかるようになり、「味方」になることができるというわけです。つまり、特別なことをする必要はないのです。寄り添う気持ちを持って「同じ感情を分かち合う」だけで、相手から「この人だったらわかってくれる」と思われる人になれるのだから。そしてその結果として、多くの人が「味方」になってくれるということです。*決して難しい主張をしているわけではなく、アプローチはシンプルで柔らか。だからこそ、「気がきく人」になるためのメソッドを無理なく理解することができるはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※松澤萬紀(2016)『1秒で「気がきく人」がうまくいく』ダイヤモンド社
2016年08月02日『1週間で8割捨てる技術』(筆子著、KADOKAWA)の著者は、カナダで暮らしている50代のミニマリスト。「持たない暮らし」や節約に励む日々のこと、海外ミニマリストに関する情報などを、ブログで発信中です。と聞くと、いかにもミニマルな生活が身についていそう。しかし実際には20代のころからずっと、モノが中心の部屋に住んできたのだとか。でも20代後半のあるとき、部屋にあふれるモノの多さに愕然とすることになり、それがきっかけで。「持たない暮らし」を目指しはじめることに。とはいえ、なかなかうまくいかなかったのだといいます。現在は50代半ばにして“自分が中心”の部屋に住めるようになっているそうですが、そこに到達するまでの30年間は、モノを捨てたり、増やしたりの繰り返しだったというのです。つまり、そんな経験を経てきたからこそ、本書が生まれたのだといえるかもしれません。■シンプルな15分で「27個捨てる」方法著者はここで、「いますぐなにかを捨てたくて、うずうずしている人」に最適な方法を明かしています。アメリカの『FlyLady,net』という無料のお片づけお助けサイトの方法を参考に、片づけに利用していたという「15分で27個捨てる方法」というもので、やり方は次のとおり。(1)タイマーを15分にセット(2)ゴミ袋をつかむ(3)タイマーをスタート(4)家中を走り回って、捨てるものをゴミ袋に放り込む(5)27個集まったら、袋ごと、ゴミ箱に捨てるあまりにもシンプルなので驚きを隠せませんが、「15分で27個捨てる方法」は、「捨てる」加速がつくメソッドなのだといいます。もったいなくて、モノがなかなか捨てられなかった人でも、「不用品だったら自分だって捨てられる」と自信を持ち、捨てる快感を味わうことができるというのです。なお、捨てる27個はテーマを決めてもいいそうです。たとえばゴミではなく、「その部屋にあるべきではないもの」や「寄付するもの」を集める、というようにするわけです。著者も、27着の服、27枚のCD、27冊の本など、テーマを決めてモノを捨てたことがあったといいます。種類別にするとハードルが高くなるものの、捨てる効果は抜群だとか。いずれにしても、ルールはできるだけシンプルに。やりすぎない手段で、とにかく15分間だけ捨て続けてみるといいそうです。■誰でも必ず捨てられる6つの典型的なモノ「27個捨てる方法」で手が止まってしまう人は、簡単なモノを捨てて、経験値を高めるのがいいとか。ちなみにどれほど捨てるのが苦手な人でも、必ず捨てられるモノがあるといいます。たとえば次のようなモノが、典型的な「限りなくゴミに近いモノ」。(1)明らかなゴミ誰が見ても明らかなゴミは捨てられるはず。空のペットボトルから紙くず、残っていない調味料など、見渡せば多くのいらないものが見つかるはず。(2)期限切れのモノ調味料や乾物、缶詰などを入れてあるスペースをチェックし、賞味期限切れのものは手放すと決めてしまうこと。賞味期限切れの商品がたくさんあるのは、消費しきれない量をストックとして買い込みすぎているということなので、そこに気づくことが大切。(3)サンプル、無料のモノ化粧品売り場のカウンターやドラッグストアでもらったサンプルは、もし全然手つかずの状態だったなら、思い切って捨ててしまうべき。重要なポイントは、無料でもらったモノは大事にしないという事実。そもそも自分が気に入って買ったものですら持て余しているのだから、無料のモノを入れておくスペースの余裕はないと考えるべきなのです。(4)空き箱、あきびん、空き袋これらは、「なにかに使えるかも」と思って保存しがち。しかし、そもそも本体(中身)を家に運び終わったら使命を終えるもの。パッケージがほしくて買ったわけではないので、3か月以内に使う見込みがなければ捨てるべきだという考え方です。(5)壊れているもの壊れたドライヤー、時間がどんどん遅れるめざまし時計、ヒビが入った鏡、ふちが欠けた食器、取っ手が取れてしまったお鍋など、部分的に壊れていて、だましだまし使っていたモノはすぐに捨てられるはず。(6)ダブっているもの同じものが2つ以上あったとしたら、使いやすいほう、好きなほうを残し、あとは捨ててしまうことが肝心。とりわけ缶切り、ハサミ、ヘアブラシなどの雑貨は粗品でもらうことも多いので増えてしまいがちですが、引き出しのなかをていねいに調べ、間引き捨てをすることが重要だといいます。*上記からもわかるとおり、著者が勧める「捨てる技術」はとてもシンプルで実戦的。すぐに応用できるので、部屋をスッキリさせたい人は必読です。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※筆子(2016)『1週間で8割捨てる技術』KADOKAWA
2016年07月30日「低カロリー」「食べごたえも十分」「食物繊維が豊富」「インスリンの分泌を抑える」「リバウンドしにくい」など、さまざまな効果があるということで、「もち麦」ダイエットが話題になっています。食事制限なしで体重を4kgも減らすことができるとなると、それはやはり気になってしまうところ。しかし、気になるからこそ、正しい知識を身につけておくことは大切です。そこでお勧めしたいのが、『腸内環境を整えながら健康的にやせる!2週間で体が変わる「もち麦」ダイエット』(小林弘幸著、KADOKAWA)。ご存知の方も多いと思いますが、著者は消化管機能不全や便秘症の治療に定評があり、現在、便秘外来の初診は7年半待ちだという順天堂大学医学部教授。つまり、ここではそのようなキャリアを軸としながら、「もち麦」ダイエットの基本や活用法を説いているのです。■もち麦の食物繊維量は白米の25倍!もち麦とは大麦の一種で、コメや小麦と同じ穀類に分類されるもの。ちなみに「もち麦」と呼ばれているのは、ずばり「もち性」の大麦だから。米にうるち米ともち米があるように、含まれているデンプン(アミローストアミロペクチン)の割合によって、大麦もうるち性ともち性に分類されるのだそうです。うるち性の押し麦はプチプチとした食感が、もち性のもち麦はモチモチとした食感が特徴だとか。もち麦の食物繊維の量は、白米とくらべて約25倍。しかもそれでいて、カロリーは白米よりも少ないというのですから、まさに優良食です。また食物繊維には「水溶性」と「不溶性」がありますが、その両方をバランスよく含んでいるのがもち麦。また、あらゆる食べもののなかでも、水溶性食物繊維の量がもっとも多いという特徴も。それが糖質の消化・吸収をゆるやかにし、血糖値の上昇を防ぎ、腸内環境を整えながら、腸からやせやすい体を作ってくれるというのです。■大人気もち麦ダイエット2つのルール(1)もち麦を1日2回食べるだけ「もち麦」ダイエットとは、ふだん不足しがちな食物繊維をとり、特に水溶性食物繊維の血糖値の少々を抑える、腸内環境を整える、などの働きを効率的に取り入れる方法。そのため目標にすべきは、もち麦を1日2回食べること。たとえば米2:もち麦1の割合で炊いた「5割もち麦ごはん」であれば、朝食と夕食でそれぞれお茶碗1はいずつが目安量だといいます。ずいぶん簡単ですが、これにはしっかりとした根拠があるのだと著者はいいます。つまり、白米を食べるよりも糖質を減らすことができ、さらには食物繊維を十分に取れるというわけです。(2)とりあえず2週間続けるだけもち麦の食物繊維は腸内で善玉菌を増やし、やせやすい体へと体質改善してくれるのだそうです。しかも、腸内環境は約2週かんで改善されるというのですから驚きです。にわかには信じられませんが、具体的には次のような段階を経て変化が起こるのだとか。1.もち麦を食べる↓2.食物繊維で善玉菌が増える↓3.腸内環境がよくなる↓4.消化・吸収や血流など、体内環境がアップする↓5.便秘が解消されるそしてその結果、“溜まりにくい”体になるというわけです。つまり、腸の特徴を活かしているからこそ、無理することなくやせられるということ。■もち麦ダイエットなら挫折しにくい!「もち麦」ダイエットは、以下の項目に当てはまる人にオススメだそうです。・炭水化物が大好き・糖質制限ダイエットはうまくいかなかった・食物繊維が不足していると思う・食事を減らすのはツライ・つねに便秘がち・早食い傾向がある何項目かに当てはまるという方も少なくないはず。しかし「もち麦」ダイエットは、リバウンドとも、厳しい食事制限とも無縁。だからこそ、無理なく続けることができるということです。*こうした基本的な考え方を軸とした本書には、「もち麦スムージー」「もち麦サラダ」「もち麦スープ」「もち麦ごはんアレンジ」など、さまざまなもち麦レシピも掲載されています。つまり、難しく考えることなく、すぐに「もち麦」ダイエットを実践できるわけです。気になっていた方は、一度手に取ってみてはいかがでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※小林弘幸(2016)『腸内環境を整えながら健康的にやせる!2週間で体が変わる「もち麦」ダイエット』KADOKAWA
2016年07月30日『会話ははじめの4分がすべて――相手とうちとける最短・最速のコミュニケーション術』(箱田忠昭著、フォレスト出版)というタイトルは大胆なようにも思えますが、そこには明確な理由があるようです。なぜなら著者は、「会話ははじめの3分33秒で決まる」と考えているから。つまり、“およそ4分”だということです。そして重要なポイントが、そのわずかな時間の扱い方によって、その後4分以降の相手との関係性が決まってしまうということ。そこでうまくいかなくなると、相手から好印象を持ってもらえず、面接や営業などの場面においては“それっきり”になってしまう確率が高いというのです。しかし、だとすれば気になるのは、「その4分の間になにをすればいいのか」ということであるはず。とはいえ著者によれば、それはさほど難しいことでもなさそうです。なにしろ、大切なのは「雑談」だというのですから。■「雑談」はコミュニケーションの潤滑油雑談とは、コミュニケーションの潤滑油だと著者は主張します。なぜなら雑談をすることによって空気が緩み、互いをよく知ることができるようになり、それが相手に対する好感につながるから。つまり「3分33秒」の内訳は、こうなるわけです。第一印象:3秒あいさつ:30秒雑談・世間話:3分とてもシンプルな考え方ではないでしょうか?いってみれば著者は本書において、こうした考え方を軸にコミュニケーションのあり方を説いているわけです。しかしコミュニケーションについて考えるとき、大きな壁になるものがあります。それは「初対面では、いったいなにを話したらいいのか?」という問題。話し上手な人からすれば当たり前すぎることかもしれませんが、実際のところ、そのことで頭を悩ませている方は少なくないはずです。ある程度ネタを仕込んで行ったとしても、必ずしも現場でそれが使えるとは限りません。かといって「どうせ雑談だから」と、話の構成をないがしろにしていいというわけでもないでしょう。しかし、だからこそコミュニケーションに際して意識しておきたいのは、「3Kの法則」なのだとか。■相手に好かれたいなら「3Kの法則」を3Kとは、「好意」「好感」「好印象」の頭文字をとったもの。そして、まず真っ先にすべきことは、自分が相手に対して「好意」を持つ努力をすることだといいます。もちろん、もともと嫌いだったり苦手だったりする相手に好意を持つことは容易ではありません。でも初対面であれば、いい意味で相手のよさも悪さもわからない状態。だからこそ、それは好意を持つためのチャンスになるわけです。なお、見た目に注目しすぎると、好き嫌いがはっきり分かれてしまうことがあるので注意。そんなときは、「きっと人格的にすばらしい人のはずだ」「彼から学ぶべきことがあるはずだ」というような姿勢になることが大切だといいます。自分のことを好きになってもらおうと努力する前に、まずは自分から先に好意を抱く。それが大切だということです。■人は自分に好意がある人を好きになる!不思議なことに、心に抱いている感情は必ず相手に悟られてしまうもの。たとえば誰かと接した際、「この人、自分に興味がないな」「私のこと、好きじゃないな」と感じた経験は、多かれ少なかれ誰にでもあるはずです。しかも困ったことに、人はネガティブな感情ほど察してしまうものだと著者は指摘しています。たしかに、そのとおりかもしれません。だとすれば、逆から考えた場合、自分が心のなかで「こいつ、イヤなやつだな」とか、あるいは「この人、いい人だな」と思えば、それは必ず相手に伝わるということになります。そして当然ですが、人は自分に対して好意を持っている人に好感を抱くもの。そしてその好印象は、のちのちまで残ることになります。そういう側面があるからこそ、初対面のときは、好印象を残していくことだけを考えるくらいでちょうどいいというわけです。*本書の魅力は、コミュニケーションを「最短・最速」という観点から捉えている点。たとえばそのいい例が、「3Kの法則」だということです。いいかえれば、コミュニケーションは決して難しいものではないということ。本書を読むと、きっとそんなことを実感できるはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※箱田忠昭(2016)『会話ははじめの4分がすべて――相手とうちとける最短・最速のコミュニケーション術』フォレスト出版
2016年07月30日あなたは「右脳タイプ」ですか? それとも「左脳タイプ」ですか?一般的に右脳タイプの人は直感的に物事を捉えたり、感覚的に表現するのが得意で、左脳タイプの人は論理的に考えたり表現するのが得意とされています。人によっては、考えるのは左脳、表現は右脳という場合もあるでしょう。Jタウン研究所が行った調査によると、「左脳で理解し、左脳で表現する」という人は21.2%で、他の組み合わせにくらべて少ないことがわかりました。この結果は県民性によっても違いがあり、大阪は関東よりも「左脳人間」が多いそう。『スタイルを持ち、身軽に暮らす』(石原左知子著、SBクリエイティブ)によると、キッチンは合理的で数字的な「左脳収納」をすると、ものが多くてもすっきり見えるそうです。キッチンは食事のたびに使う場所なので、感覚的に片づけているとすぐに散らかってしまいます。でも自分の動線や空間の使い方を論理的に捉えれば、使いやすく片づいたキッチンをキープすることができるでしょう。そこで、「左脳収納」のためのルールを見ていきましょう。■ルール1:「動線」を重視して収納する収納全般にいえることですが、特にキッチンの収納においては特に「動線」を意識するのが大切だといいます。なにかをするときの自分の動きを考えて、「必要なところに」「必要なものを」「取り出しやすい形で」収納。これがいちばん合理的なのです。たとえば著者の場合、お茶を淹れようと思ったら、シンクの横にあるいちばん下の引き出しから茶葉を取り出し、同じ場所に立ったまま上のつり戸棚からカップや湯のみを取り出します。この縦のラインの収納で、無駄な動きがなくなるのです。茶葉は向こうの棚、カップはリビングなどとバラバラに収納されていると、無駄な動きが増えるうえ、片づけるのが面倒になって部屋が散らかることに。動線を考えた収納をするだけで、部屋は自然に片づくようになるといいます。■ルール2:最初に「いちばん多いもの」の収納を考える収納を考えるときは、自分の持ち物のなかでいちばん多いものの置き場所から決めていきます。著者の場合、いちばん多いのは器。そのため大きな納戸に、自分で棚板を取り付けて食器を収納しているそうです。いちばん多い数のものの収納から決めると、あとの収納がグンと楽に。コレクションしているものなら「見せる収納」にしてもいいですし、本のように大量にあるものなら専用の部屋をつくってもOK。無理に減らそうとせず大胆に場所を確保することで、すっきりと暮らすことができるでしょう。■ルール3:キッチンは「見せる収納」を活用するキッチンツールや器などは自分が把握できていないと、いつの間にか使わなくなってしまいます。戸棚に収納した器も、扉を開け他とき、なにがどこに入っているか一目瞭然の状態にしておきましょう。またキッチンハサミやおたま、トングなどは引き出しに入れておくとガチャガチャして取り出しにくいですよね。いろいろな形のものがあるので、なにかに立てて入れるのも厄介。そのため、これらのものはつり下げておくのが便利。著者はガス台の近くにワイヤーを取りつけ、それぞれの道具をS字フックでつり下げているそうです。ワンアイテムにつきワンフックと決めておけば、いつも片づいた状態を保てます。キッチンツールを同じメーカーで揃えると、見た目もすっきり。■ルール4:調味料は同じ形の容器に移し替える調理中に「扉を開けて調味料を出す」のは意外と面倒。動線を考えて収納するなら、調味料はキッチンに出しっぱなしにするのがいちばん使いやすいでしょう。しかし、色も形もさまざまな入れ物をそのまま並べておくと、ごちゃごちゃした印象に。そのため、著者は調味料類を同じ容器に入れ替えているそうです。たとえば、酒・オイル・酢など液体のものは透明のガラス瓶に、塩や砂糖などはプラスチックのケースに入れてガス台の近くに。同じ容器で高さをそろえるだけで、すっきりと見せることができるわけです。■ルール5:シンクの下は「縦収納」にするシンクの下の空間は高さがあり、なかなかうまく使えないもの。そこで著者は事務用の縦のファイルケースにラップやまな板、洗剤などを「縦入れ」し、それでも余った空間は木板を使って棚にしているといいます。そこにはボウルやはかり、ふきんを入れた箱など雑多なものが収まり便利です。また、調理台の下などに、大きな縦空間がある場合は、扉をつけずにゴミ箱を入れるとすっきり片づきます。*いままでなかなか片づかなかった人は、右脳を使っていたのかもしれません。「左脳収納」はシンプルなルールなので、誰でもすぐに取り組めそうです。ものを減らさなくてもいいのもうれしいところ。毎日使うキッチンが動きやすく、使いやすくなるはずです。(文/平野鞠) 【参考】※石原左知子(2016)『スタイルを持ち、身軽に暮らす』SBクリエイティブ※あなたはどっち? 「右脳タイプか左脳タイプか」地域別に調べました-Jタウン研究所
2016年07月30日『背骨から自律神経を整えるねじるだけで体と心が変わっていく!』(石垣英俊著、清流出版)は、2014年にベストセラーとなった『背骨の実学』(池田書店)の著者による新刊です。根底にあるのは、骨や関節、筋肉のトラブルはもちろん、内臓、自律神経、メンタルの不調など、あらゆる不調は背骨に現れるという考え方。そこを軸として、健康な背骨づくりによって自律神経を整え、不調を改善し、老化を防ぐためのノウハウを明かしているのです。きょうはそのなかから、本書の核のひとつである「中医学」についての記述を引き出してみたいと思います。中医学の基本的な考え方を知ると、体の関係する部位や改善法が理解しやすくなり、健康な体づくりにも役立つというのです。■西洋医学と中医学の違いとは中医学は、中国の伝統的な医学。古来4000年もの昔から経験的に伝えられていた医学で、1973年ごろに系統立てられ、理論化されたのだそうです。ご存知のとおり、西洋医学(現代医学)は病気の直接原因を立つことや、症状を抑えることが中心。それに対して中医学は、その人の体質や状態によって対処法を変え、自然治癒力を高めながら回復に導いていくのだといいます。中医学の基本が、「陰陽五行論」。自然や宇宙、人間の体、起きている現象など、この世にあるすべてのものは表裏一体の関係にあり、5つの性質に分けられるという理論だと著者は解説しています。いうまでもなく、陰陽は正反対の性質を持つものを指します。たとえば、表と裏、男と女、昼と夜、上と下、興奮と抑制など。正反対のものでありながら密接に関係し、つながっていると考えるのです。どちらかが強すぎたり弱すぎたりすると偏りが出るため、陰陽のバランスが大切になるということ。中医学では、外部環境と内部環境のバランスがうまく整っている状態を「健康」と考えるのだといいます。外部環境である自然とのつきあいが上手になったり内部環境のバランスがいい状態であれば、ちょっとしたストレスや外部環境の変化にも、うまく適応できるようになるのだとか。このような考え方が、「整体観念」です。■自然界の性質5つとの関係性そして陰陽五行論は、「木・火・土・金・水」という自然界の性質5つに、体にあらわれる現象や部位、方角や季節といった自然を分類するもの。それらは絶えずつながりあい、影響しあっているという関係性があるのだそうです。たとえば「水は木を養い、木は燃えて火になるというような協力的な働きかけ(相生関係)をする一方で、「水は火を消し、木は土から養分を奪う」といった抑制する(相剋関係)を持ちながら影響しあっているという考え方。よく聞く「五臓六腑」という分け方も、この陰陽五行論に基づいたもの。中医学では、人間の体や生理活動を「五臓六腑」に分類して考えるのだそうです。五臓は「肝・心・脾・肺・腎」、六腑は「胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦」を指し、五臓と六腑は表裏関係にあるのだといいます。これら五臓六腑も、「木・火・土・金・水」の性質に分けられ、中医学では体に起こるすべてのことは密接につながりあっていると理論づけているわけです。■西洋医学とは根本的に違う!なお中医学における「肝」や「腎」は、西洋医学の肝臓や腎臓とイコールではないとか。ひとつの内臓器官を指すのではなく、代表的な内臓を中心に関わり合って生まれる生理現象や働きを意味しているというのです。たとえば「肝」の働きを見てみると、「肝」は「胆」と表裏一体関係にあるため、肝が病んでいるときには怒りっぽくなり、また怒りの感情は肝を痛める原因にもなるのだというのです。そして肝の状態が悪いときは、目に症状が表れやすく、涙が出やすくなったり、爪がもろくなるなどの傾向も見られるのだそうです。そこで、目の症状に対して肝の状態を改善させる治療を並行して行うことが往々にしてあるのだとか。■体はすべてがつながっている五気の「風」は、風を避けたほうがいいという意味。しかし「風」には揺れ動くという意味もあり、つまり、めまいなどの症状を意味する場合もあるといいます。また、五色の「青」は皮膚の病色であると同時に、その色の食品を食べるといいともいわれているのだそうです。こうやって見ていくと、体はすべてがつながっていて、なにひとつとして無駄に表れている現象はないということがわかるわけです。そしてもちろん、それらが背骨とも密接に関係するということ。*このように本書では、背骨を軸としながらも、それ以外の「つながった」物事がわかりやすく解説されています。イラストをふんだんに取り入れた各種チェックも実用的。手元に置いておくと、きっと役に立つと思います。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※石垣英俊(2016)『背骨から自律神経を整えるねじるだけで体と心が変わっていく!』清流出版
2016年07月29日「腸がよろこぶ料理」と聞いて、どんなメニューを思い浮かべますか?じつはこの言葉、『食のギャラリー612』の代表、たなかれいこさんの新刊本のタイトルです。幼少時から病弱で、小児リウマチなどを患っていたたなかさんは高校生のとき、「薬をいくら飲んでも治らないのならやめてみよう」と思い、きっぱりとやめたのだそうです。すると意外にも少しずつ元気になり、食欲も出てきたとか。その後30年以上、自分の食欲にしたがって、伝統的製法の調味料を使い、季節の食材を手間ひまかけずに調理する暮らしを続けてこられた結果、ますます体調はよくなり、心身の健康を日々実感しているとか。そして、そんなご自身の経験から気づいたのは、心身ともに健やかで美しくいられるのは腸内細菌のおかげだということ。著書『腸がよろこぶ料理』(リトルモア)にも、たなかさんが実践している「腸に効く75のレシピと食への思い」が詰まっています。「腸をよろこばせるには、よいものを食べるより、腸内細菌が苦手なものを遠ざけるほうが近道」とたなかさんは語ります。そんな考え方を軸とした、「腸内細菌が苦手とする5つのもの」をご紹介しましょう。■1:腸内細菌は冷えが苦手おなかを冷やす食べ物をやめてみると、自然と体調がよくなってくるはず。内蔵のなかでも腸は、とくに冷えが苦手だそうです。ビタミンやホルモンの合成、コレステロールの代謝、免疫力の発揮などは、いずれも腸内の善玉菌の活躍によるもの。その善玉菌が好きな温度は約37℃。おなかを触ってホコホコ温かい状態が目安です。逆に、悪玉菌が好きな温度は約35℃。悪玉菌が優勢になると、有毒ガスのアンモニアなどが発生し、健康を害するというのです。そこで、生野菜サラダを食べるときも冷蔵庫から早めに出して常温に戻してから食べるとか、ジュースやお茶も常温で飲むとか、乾杯のビールも4~8℃で楽しむなど、冷たいものをとらないように工夫してみましょう。それでも冷えてしまったら、お湯を飲んだり、温かい食べ物を食べたりしておなかのなかから温めてみてください。■2:腸内細菌は食品添加物や農薬が苦手たなかさんが無農薬野菜や食品添加物を使わない食べ物を選び、食べてきたのは、おいしいという理由から。ちなみに人類が食べ物に化学物質を使うようになったのは、わずか戦後70年の話。とくにここ10~20年は、さらに加速していると感じるそうです。酸化防止剤、発色剤、保存料など食品添加物の種類は多く、ひとつの食品に目的別の添加物が20~30以上重ねて使われていることも珍しくないようです。日本で認められている食品添加物の数は、なんと千の単位にのぼるとか。善玉菌を優勢にして元気に暮らすには、食品添加物や農薬を減らす選択をすることが大切。ご飯を炊いて、味噌汁と漬け物だけの食事で、腸は十分喜んでくれます。無理のない範囲で、まずは市販のお惣菜や加工食品をできるだけ減らす生活を始めてみましょう。■3:腸内細菌は砂糖が苦手料理に砂糖を使わないというたなかさん。コンビニのスイーツなどが大好きな暮らしをしている身には、かなりハードルの高い話です。しかし砂糖の弊害を知れば、今日からの購買行動が少し変わってきそうです。人間の体に糖分は必要ですが、体に適した糖分は砂糖ではなく、炭水化物などの形で体内に入り、唾液などの消化酵素でゆっくりと糖化されたもの。砂糖は必要以上に血糖値を上げ、腸内の悪玉菌を増やす作用があるとか。その結果、慢性疲労、不眠症、自律神経失調症、アトピーなどの症状を引き起こすというのです。たなかさんは、砂糖の代わりにはちみつやメイプルシロップ、ココナッツシュガーを使用したり、塩やしょう油を上手に活用してサツマイモやリンゴなど素材の甘さをおいしく引き出したりしているそう。素材の力と智恵を生かしたレシピ、挑戦してみたくなりますね。■4:腸内細菌は抗生物質が苦手抗生物質と食品。病気でもないのに、「いったいなんの関係が?」と思われるかもしれません。でも現実には、牛、豚、鶏などの飼育に抗生物質は欠かせないようです。動物に与えられた抗生物質が、食品として私たちの体内に入ってくるとしたら、ちょっと怖いですよね。抗生物質は、悪い菌もよい菌も等しく抑えてしまうので、腸内はガタガタに。健康的に飼育された肉や卵、動物性の肥料を使っていない野菜など、どんなものを選んで食べているのか、意識するだけでも食生活は変わっていきそうですね。■5:腸内細菌は小麦食品が苦手パン、ケーキ、パスタ、うどん、そしてビールやウイスキー、しょう油など。私たちが口にする食べ物で、小麦を使っていないものを探すのは難しいかもしれません。それほど身近にある小麦が、腸に悪影響を及ぼすなんて、にわかには信じたくないのですが……。たなかさんによれば、品種改良を施していない小麦は、わずか2、3種。古代から続く小麦栽培は1960年代以降、急激な変化を遂げ、いまでは数え切れないほどの品種があるとか。その大半が、人工的に遺伝子操作されていると聞けば、ぞっとしますね。そうした現代の小麦は、アレルギーや糖尿病、高血圧など、いろんな病気に関係しているともいわれています。下痢をよく起こす人は、小麦で腸の粘膜が炎症しているからかもしれないのです。しかも、小麦は砂糖以上に急激に血糖値を上げるため、高血糖と低血糖の変化が急すぎて体は疲れやすくなるといいます。試しに1週間、小麦粉を断ってみて、体調の変化を感じてみませんか?できるだけ主食はご飯にし、おやつにはナッツやドライフルーツがおすすめ。同じ小麦でも少々お高いですが、古代小麦や国内産小麦の在来種を使用したものに代えるのもひとつの方法です。*この5つは、たなかさんが普段から口にしている「腸がよろこぶ食べ物」に共通しているお話です。ちょっと難しく感じるかもしれませんが、米、芋、野菜、味噌、しょう油、梅など、腸をいたわる食材を使ったかんたんレシピなども収録されているので、できることからはじめてみてはいかがでしょうか?腸がよろこぶ食べ物をおいしく食べれば、体調の変化に気づけるかもしれません。(文/山本裕美) 【参考】※たなかれいこ(2016)『腸がよろこぶ料理』リトルモア
2016年07月27日仕事とプライベートのバランスをとるのって難しいですよね。「残業ばかりでなかなか自分の時間をとれない」という人も少なくないでしょう。そんな悩みを解消するために欠かせないのが、「段取り術」。転職サービス『DODA(デューダ)』が20~49才のビジネスパーソン1,000人に「ビジネスシーンにおいて必要だと思う知識・スキル」を調査したところ、女性の38%が「段取り力・タイムマネジメント力」と答えました。特に女性は家事や育児と仕事の両立が課題となるため、うまく段取りをして効率的に仕事をこなしたいと考える人が多いのでしょう。そこでご紹介したいのが『能力以上の成果を引き出す本物の仕分け術』(鈴木進介著、青春出版社)。これは、仕事や人間関係、お金などの問題を仕分けして、頭の中をシンプルにするという思考法について書かれたものです。今回は本書の中から「仕事の仕分け」を取り上げます。仕事を仕分けすることによって無駄のない段取りができ、効率的かつ圧倒的な成果を生み出すことができるといいます。それではさっそく見ていきましょう。■1:日々の業務は項目を小さくしてから始める漠然とした問題を仕分けていくと、具体的な課題へと落とし込むことができます。それによって「今、何をすべきか」が見えてくるのです。これはスティーブ・ジョブズやドラッカーも重要視していた考え方。シンプルライフやミニマリストが流行しているように、頭の中も「大切なものが1つだけ」の状態になっているのが理想だといいます。他に選択肢がなければ決断がブレることもなく、すぐに行動を起こすことができるからです。日常の業務も、大きな目標から気軽に取りかかれるレベルまで項目を小さくしていくことで、今何をすべきかが見えてくるはずです。■2:「やること」ではなく「やらないこと」を決める抱えている業務が多いときは、時間軸を「今」に限定して、今集中するべきもの以外は「いったん捨てる(保留)」か「捨てる」という選択をしましょう。例えば、上司への報告を「今、一番に行う」と決めたら、提案書の作成はいったん捨てて明日午前中に行うなど、「今」か「今ではない」かという目線で仕分けていきます。そうすると、今やるべきことがシンプルに見えてくるでしょう。そのように決めたスケジュールは必ず手帳やGoogleカレンダーなどで管理することが大切。ToDoリストを使う人もいますが、時間が意識しづらいので、カレンダーで一元管理するのがおすすめだそう。「いつから行うのか」「どのくらいの期間で行うのか」「いつまでに行うのか」の3点を切り口に入力しましょう。■3:ルーティーンは自動的に行えるように習慣化する「やらなければいけないけれど面倒」と感じる業務は、ルーティーン化して省力化します。機械的に業務に取り掛かることで心理的な負担も減らすことができます。「毎日やること」「毎週やること」「毎月やること」に仕分けしたものをリストにして持ち歩いたり、Googleカレンダーに入力したりしましょう。■4:1日は4つの時間帯に仕分けてタスクを入れる1日を、朝・午前中・午後・17時以降の4つに仕分けてそれぞれの時間帯に最適なタスクを入れます。例えば「企画書作成は17時以降」など、今までの自分の経験から「この時間にはこのタスクが向いている」というものを当てはめていきましょう。■5:1時間ではなく15分単位で業務を区切って管理する業務の効率を上げるには、時間を15分単位で区切るのがコツ。1時間単位で区切っている人が多いですが、このやり方では、実際はもっと短い時間で終わる仕事をダラダラ行ってしまう危険があります。■6:余ったタスクは金曜夜ではなく「水曜夜」に解消するできなかったタスクが出てしまった場合は、水曜日の夜を使って解消させましょう。金曜日に1週間分のだぶついた仕事を片付けようとすると、時間が足りない場合があります。月・火・水にできなかった分は水曜に、木・金にできなかった分は土日で解消と考える方が効率的です。■7:寝る前に「翌日の重要業務ベスト3」を仕分ける就寝前に翌日の段取りをすることでイメージトレーニングになり、翌朝バタバタすることが避けられます。Googleカレンダーをチェックして、明日行う重要業務ベスト3を仕分け、メモ帳に書き出しましょう。手で書くことにより、「明日はこの3つを片付ける」と意識することができます。できれば成果や目的、ゴールは何かもメモに加えられるとより集中できるでしょう。■8:月2回ジブン会議を行って頭の中を仕分けるまた、定期的に自分だけの会議の時間を強制的にとりましょう。これで頭の中を仕分けることができます。今取り掛かっている仕事の段取りから、長期的な目標まで重要な項目を確認していきます。おすすめは月に2回、計1時間程度。日曜か月曜の朝に行うこと。他の用事を入れないようGoogleカレンダーに入力しておきます。■9:段取りはゆるめに設定して失敗したら軌道修正する100%完璧な段取りをして、絶対に成功させようと考えるのは逆効果。計画が崩れたときにモチベーションが下がってしまう恐れがあるからです。仕事はやってみないとわからないことが多いもの。「段取りはたたき台」と考えて、行動しながら調整していきましょう。「失敗したら軌道修正すればいい」というスタンスでPDCAのサイクルをガンガン回していく人が成果を生み出すことができるのです。*具体的な方法ばかりなので、明日からでもすぐに取り組めそうですよね。特に著者がおすすめしている「ジブン会議」のより詳しい方法は本書を参照してみてください。頭の中をスッキリさせて仕事もプライベートも充実させていきましょう!(文/平野鞠) 【参考】※鈴木進介(2016)『能力以上の成果を引き出す本物の仕分け術』青春出版社※ビジネスシーンにおいて必要だと思う知識・スキルに関する調査-DODA(デューダ)
2016年07月26日『チームを動かすファシリテーションのドリル』(山口 博著、扶桑社)の著者は、ビジネスパーソンに対する能力開発プログラムを数多く実施してきたという人物。その能力開発プログラムは、「ビジネスパーソンが体得するべきスキルを分解し、1分間の反復練習により身につけられる形式であること」が特徴です。本書は、そんな能力開発プログラムのなかから、「強いチームをつくるために必要な、ファシリテーション(会議などがスムーズに進むように支援すること)を高めるスキル」に焦点を当てたもの。そのなかから、きょうは、プレゼンテーション時にわずか30秒で効果を発揮するという「BIGPR」をご紹介したいと思います。■BIGPRは聞き手の関心をつかむスキル著者によれば、「BIGPR」はわずか30秒で聞き手の関心をつかみ、聞き手をこちらの話に集中させることができるパワフルなスキル。面談でも、電話でも、会議でも、プレゼンテーションでも、その他のどのような場面においても活用できるのだといいます。ちなみにこれは、Background(背景)、Introduction(自己紹介)、Goal(目的)、Period(時間)、Role(役割)の5つの頭文字をとったもの。プレゼンテーションの冒頭に、「そのプレゼンテーションを行う背景」「自分自身の紹介」「プレゼンテーションの目的」「必要な時間」「相手に期待する役割」を伝えることだというわけです。この手順を踏むことにより、プレゼンテーションのセットアップを効果的に行うことができるのだとか。BIGPRを実施することにより、「この人は、こういう目的で説明してくれているんだな」「30分、聞かせて貰えばいいのだな」「この人は、私にA案がいいかB案がいいか判断してほしいのだな」というようなことがわかるため、聞き手は安心してプレゼンテーションを聞きはじめることができるというわけです。逆にこれを行わないと、聞き手は「いったいこの人は、どういう目的で話しているんだろう?」「私にどうしろというのだろう?」というようなことが気になったまま、話に集中できないという状況が生まれてしまうことに。■BIGPRでプレゼンが成功するポイントBIGPRのB(背景)とI(自己紹介)は、簡潔に行うことがポイント。「前回、語彙論を多数いただきましたので、再度整理してプレゼンテーションさせていただきます(B=背景)、販売部の山田太郎です(I=自己紹介)」という具合です。お互いに顔と名前が一致するメンバーばかりのなかでプレゼンテーションする場合は、「前回の続編を実施させていただきます。この製品開発担当となり張り切っています。よろしくお願いします」というように、現在の心境を入れることも効果的。そしてG(目的)とP(時間配分)は、連動させて話すとスムーズに表現できる場合が多いといいます。「本日は競合会社の類似商品の特徴を(G=目的)、30分でご紹介させていただきます(P=時間配分)というようにつなげるわけです。■BIGPRでいちばん難しいのが役割のR残るR(役割)とは、聞き手に期待する役割。このプレゼンテーションを聞いて、どういう役割を果たしてほしいのかを伝えるのです。たとえば、「気軽にお聞きになって、自由に感想をおっしゃっていただければ幸いです」「ニーズに合うかどうかの意見をお聞かせください」「本日は、買うか、買わないかの判断をしていただきたいと思います」といった内容。なおBIGPRのなかで、修得にいちばん時間がかかるのがRだといいます。日本のビジネスパーソンには、これを冒頭から伝えることに抵抗を感じる人も多いというのですが、なんとなくわかる気もします。とはいえ、このRをクリアに示すことができるようになると、プレゼンテーションの目的に加え、さらに一歩踏み込んで「聞き手にどうなってほしいのか」「何をしてほしいのか」を伝えられるため。目的が果たされやすくなるのだそうです。■電話でBIGPRを使うときはシンプルに電話での会話の冒頭に行うBIGPRは、さらにシンプルに行うことが大切。電話の場合は、このBIGPRができるかどうかで、その後の話が続くかどうかが大きく左右されるのだいいます。具体的には、「〇〇しました(背景)、橋本です(自己紹介)」と、背景と自己紹介をワンセンテンスで表現するのがポイント。さらに「〇〇のために(目的)、○分(時間配分)、〇〇していただきたく(役割)お電話しました」という具合に、目的と時間配分と聞き手に期待する役割を、これもワンセンテンスで表現するわけです。*ここではご紹介できませんが、実際には冒頭で触れたとおりの「1分間の反復練習」も豊富に掲載されています。そのためシンプルかつ実践的に、ファシリテーション力を向上させるためのスキルを身につけることができるのです。著者によれば、「1日1分」を30日間続ければ、30日後にはファシリテーションに必要な能力が身につくのだとか。だとすれば、ビジネススキルを高めたい人には最適な内容であるといえそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※山口博(2016)『チームを動かすファシリテーションのドリル』扶桑社
2016年07月26日会社で働く人にとって上司との関係は避けて通ることができないもの。運が良ければ、人生の目標となるような上司に出会えることもありますが、そうではないことのほうが多いのも現実。日本能率協会グループが全国のビジネスパーソン1,000人を対象に行った調査でも「上司と仕事以外で付き合いたくない」と回答した人は67.7%でした。管理職以外の一般社員だけに絞って見てみるとさらに割合が増え、70.1%という結果になりました。これは、日頃から上司とのコミュニケーションが上手くいっていないということの表れとも言えるのではないでしょうか。『なぜか人はダマされる心理のタブー大全』(おもしろ心理学会著、青春出版社)は、日常で使える心理テクニックがたっぷりつまった1冊。今回は本書の中から、苦手な上司とのやりとりで使える方法をピックアップしました。■1:知ったかぶり上司は「幼稚な子ども」と思うべし会社で役職についている人が全て有能で仕事ができる人かといえば、そうではありません。現場の知識が浅いのに、部下に対して横柄な態度であれこれ口出しし、そのうえ何か起きたときに責任をとらないという厄介な上司に当たるとイライラしてしまいますよね。こういった口ばかりの上司は、「幼稚な子ども」だと思って、こちらが親のような気持ちで接すれば、必要以上にイライラすることを避けられるでしょう。専門知識は浅いのにまるで専門家のように口を挟む上司には、「それは違いますよ」と反論するのではなく、「私も何かの聞きかじりですが、最近の傾向は◯◯らしいですよ」というようにさりげなくフォローしてあげましょう。それによって上司はあなたのことを「味方だ」と捉えるため、その後の関係が有利になるでしょう。■2:上司との会話に困ったら「子どもの話」をふるべしとっつきにくい上司と2人きりになると何を話していいか、話題に困ってしまいますよね。当たり障りないのは仕事の話ですが、移動中などはあまりベラベラ話すわけにはいきませんし、プライベートな話はどこまでつっこんでいいのか分からない……。そんなときは子どもの話がベスト。「そういえば、お子さんっておいくつですか?」と聞けば、上司のほうからどんどん話をしてくるでしょう。■3:上司の批判は自分の武器にするべし部下の意見に対して批判的だったり、新しいチャレンジをしようとするとネガティブな見方をしたりして、なかなかOKを出してくれない上司。嫌がらせをしているのかと思うかもしれませんが、そういう人は常に最悪な事態を想定することに長けているということもできるのです。誰でも自分の意見を否定されるのは嫌なものですが、そこはグッとこらえてその上司の意見にも少し耳を傾けてみましょう。「なぜ、そう思われるのでしょうか?」と質問すると、思いもよらない落とし穴に気づくことができるかもしれません。■4:カラオケでは「癒されます」と褒めるべし上司とのカラオケって気をつかいますよね。上司が気持ち良く歌っているのに、それが全然うまくなかったりすると、何と声をかけていいのか迷うところです。そんなときは「いやぁ、癒されます!」「何だか元気が出ました!」というポジティブかつ当たり障りのない言葉でOK。他のバリエーションとしては、「この曲のサビ、いいですよね」や「この曲懐かしいです!」なども上司が満足する一言といえます。■5:情報を伝えるときは「分析」を付け加えるべしライバル会社の情報などを耳にしたとき、そのまま上司に伝えるのではなく、一言自分なりの分析を付け加えると、上司の記憶に残りやすくなります。例えば、「A社は◯◯に新しい土地を購入したそうです」というだけではなく、「規模や立地から考えて新しい工場を建設するようです」と一言加えるのです。そうすると、「土地を購入」だけの情報よりも重要度が増すため、「あいつはなかなかの情報通だ」という評価を受けることになるでしょう。■6:上司から頼まれた仕事は「1日早く」提出するべし上司から頼まれた資料作成やリサーチ。「5日で仕上げて」と言われたら、4日目に提出しましょう。これでかなりの高評価につながります。ただし、早ければいいというわけではありません。あまりにも早いと「本当に大丈夫なのか?」「手を抜いているんじゃないか?」と逆に疑われ、細かくチェックされることに……。ここでミスが発覚するとかなりのマイナスになってしまいます。■7:怒った後の上司には助け舟を出すべし上司が部下に対して思わず声を荒げてしまったとき。その後気まずい思いをしているのは、怒った側である上司のほう。「言いすぎただろうか」「不快感を与えただろうか」と弱気になったり、遠慮がちになったりしているものです。そこで思い切って上司に声をかけられる部下は、上司にとっては有難い存在。「よくぞこの気持ちを汲み取ってくれた」と感謝されるに違いありません。*飲みに行くと上司の愚痴ばかりこぼしてしまうという人は、是非一度これらのテクニックを使ってみてはいかがでしょうか。部下の接し方ひとつで、上司の態度が変わることもあるかもしれません!(文/平野鞠) 【参考】※おもしろ心理学会(2016)『なぜか人はダマされる心理のタブー大全』青春出版社※第6回「ビジネスパーソン 1000 人調査」【人間関係と貯蓄編】-一般社団法人日本能率協会
2016年07月26日『これが「買い」だ私のキュレーション術』(成毛眞 著、新潮社)の著者は、マイクロソフトの社長を務めたのちに独立し、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立した人物。現在は早稲田大学客員教授、スルガ銀行社外取締役、そして書評サイト『HONZ』代表としても知られています。そんな著者による『週刊新潮』の人気連載を単行本化した本書は、情報に流されることなく、あらゆるものを的確にキュレーション(情報を集め、まとめる)する術を明かしたもの。最先端IT機器やアプリ、果ては住まいの選び方、あるいはSNS活用法、投資先、遊び場所、接待手段、人物やニュースの見分け方まで、モチーフもさまざま。そして、「手に入れるなら、世間の逆を行け」という“逆張り”の選び方を貫いている点が最大の特徴だといえます。きょうはそのなかから、時間についてのユニークな記述を引き出してみたいと思います。■ぼんやりする時間を持つべし!ご存知のとおり、昨今は電車の中で本や雑誌を読む人が少なくなり、代わりにスマートフォンでゲームをしている人をよく見かけるようになりました。それは悪いことのようにいわれていますが、著者の意見は少し違うようです。「ゲームによっては、脳にとってむしろいいことなのではないか」と思っているというのです。そしてもうひとつ重要視しているのが、「ぼんやりする時間」を持つことだといいます。ボーッとして過ごす時間が大切だということはよく聞きますが、ボーッと草原で大の字になっているとき、温泉に浸かっているときなどには、心身ともにリフレッシュしていると感じられるもの。だから著者もかねがね、ぼんやりする時間をつくってきたそうです。■ぼんやりするためにゲームするとはいえ現実的には、ぼんやりするために草原に出かける時間を捻出したり、温泉を探したりするだけでも大仕事。しかしここで注目すべきは、「なので、私はタブレットでゲームをしている」という著者の記述です。草原で寝転んだり温泉に浸かったりする代わりに、タブレットでゲームをするとは、意外過ぎる発想ではないでしょうか?ただしゲームといっても、一時期流行した脳をトレーニングするようなタイプのものではないだそうです。また、世界征服を企む敵と戦い続けたり、迷宮を探検し続けたりするためにプレーヤーとして成長し、さまざまな決めごとをおぼえ、戦略を練らなくてはならないような複雑なゲームでもないのだとか。かつては長時間拘束されるタイプのゲームにハマり、起きている時間のほとんどすべてをつぎ込んだことが著者にはあるそうですが、そんな経験を持ってしても最近のゲームは複雑すぎ、わからないことが多いのだといいます。はじめたとしても、悶々としながらスタート地点に佇むことになるだろうから、脳は休まることがないわけです。ちなみに余談ですが、そんななか、新版になってもさほど難易度を上げない任天堂の『ゼルダの伝説』シリーズは評価に値するそうです。■予定調和的なゲームでぼんやりしかし、将棋やオセロのように、コンピュータや対戦相手と真剣勝負をするようなものもしないのだといいます。その理由は、著者がビジネスを対戦型ゲームだと思っているため。つまり実際に対戦型ゲームをはじめたら、つい本気になってしまって「間違いなくぼんやりできない」というのです。そこで著者が移動中や待ち時間にしているのは、まず『Hidden Object Games』と呼ばれるジャンルのゲームなのだそうです。なかでも好ましいのは、一枚の大きなイラストのなかに潜んでいるアイテムを探すタイプ。と聞くと思い出すのは、樹木のシルエットのなかに隠されている動物を探すような昔ながらのゲーム。しかし、それよりもずっと単純だというのです。なぜなら、画面になにが隠れているのか、文字でヒントが表示されるから。そのため、文字を見ると反射的に手が動くというわけです。正直なところ、そう説明されても、なにが楽しいのかわからない部分はあります。でも、予定調和的に身をまかせることは、思いのほか快適だというのです。つまり、気分よくぼんやりできるということ。■ぼんやりのための手間をかけるなにもしない、ぼんやりできる時間をつくるのは、意外に難しいもの。しかし著者は、ゲームというツールを用いることによってそれを確保しているというわけです。そして、そんなことをしているからこそ、「いろいろなものに追われる現代日本では、せめて電車のなかくらいは、ぼんやりするためにゲームをしてもよいのではないか」という発想になるというわけです。だから著者自身も、ゲームをするのはたいてい移動中。そして飽きたら、ボーッとするための新しいゲームを懸命に探すのだそうです。そして、「ぼんやりするため、この程度の手間は惜しんではならない」とも記しています。*このトピックからもわかる通り、著者の発想は実にユニーク。適度のユーモラスでもあるので、他の項目も含め、リラックスしながら読み進めることができるはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※成毛眞(2016)『これが「買い」だ私のキュレーション術』新潮社
2016年07月25日程度の差こそあれ、人は面倒なことを先送りしてしまいがち。「なんとかしなくては」と感じてはいても、なかなか理想どおりにはいかないものです。そこでご紹介したいのが、『「すぐやる人」になれば仕事はすべてうまくいく』(金児昭著、あさ出版)。信越化学工業で38年間にわたり、経理・財務の仕事を進めてきたという人物(2013年没)が、経験に基づく考え方をまとめた書籍です。■上司から教わった3つのモットー著者は新入社員時代から課長になるまでの15年ほどの間に、3つの「モットー(日常生活における努力の目標として掲げる言葉)」を上司から教えられたそうです。1.正確さ(アキュラシー=accuracy)2.迅速さ(スピード=speed)3.誠実さ(インテグリティ=integrity)この3つは、著者の会社人としての行動の指針となってきたのだとか。ひとつひとつを確認してみましょう。(1)正確さ正確さとは、著者が携わってきたような経理・財務ではいちばん大切。会社の決算書は、企業経営の事実に合っている規則に則った正しい計算でなければ、信用されることはないわけです。だからこそ、「正確な記述」「正確な記録」を心がけることはなによりも重要だということ。(2)迅速さ迅速さは、すばやく物事を処理したり、物事の進み具合や人の行動などが滞ることなく進行すること。もちろん、速さを追求するあまり安全性を無視するわけにはいかないでしょう。しかし、迅速さが安全性の担保や、大きなチャンスを逃さないことにつながるのも事実だといいます。(3)誠実さ最後の誠実さは、経理・財務だけでなく、経営トップをはじめとしてすべてのビジネスパーソンが必ず心がけなければならないこと。仕事の進め方の基本というよりも、人間としてのあり方の基本といってもよいだろうと著者は記しています。いずれにせよ著者は、この3つを心に据えながら、日々、目の前にあるひとつひとつの仕事を「すぐにやる」ことを実践してきたということです。しかし、そのことを踏まえながら本書を読み進めると、ひとつの重要なことに気づきます。著者が「すぐにやる」ことをステレオタイプに把握するのではなく、“深く”理解しているということ。たとえばそのいい例が、「5分間の原則」についての考え方です。■約束の「5分前」に到着する理由著者は、人と会うときは、遅くとも約束の時刻の5分前には面会場所に到着するという習慣が身についているそうです。かつて自分が他の人と待ち合わせたとき、相手の人が5分遅れてきたら、15分も20分も待たされたように長く感じたことがたびたびあったのだとか。特に若いころは、そうした他人の遅れを「許せない」と感じたこともあったといいます。しかし商談をするにしても、会食をするにしても、スタート前から相手に「許せない」と思われては、話が気持ちよくスムーズに進むはずもありません。だから、「自分は人からそのように思われたくない」「スタートから負い目を感じたくない」という思いから、5分前に到着する習慣を身につけたというのです。陸上のトラック競技や水泳では、スタート・ダッシュに失敗すると、その後、いくら懸命にがんばっても最初の出遅れを取りも載せないことがあるもの。同じように「約束の時間」は、それ単独で存在するわけではありません。その後に10分間、30分間、1時間、それ以上かかるかもしれない仕事が待っている。そのことを忘れるべきではないと著者はいいます。約束の時間は、あらゆる仕事がはじまるスタート時間でもあります。事実、著者も約束の時間に遅れないことで、よいスタートを切ることができ、仕事がうまくいった経験が何度もあるそうです。■人に待たされることも悪くない!ここで著者は、官庁へ審査を受けるための書類を提出しに行った時のエピソードを紹介しています。審査担当者のところへも約束の5分前に行くわけですが、担当者に急用ができ、15分、30分、ときには1時間待たされることもしばしばあったのだそうです。相手が遅れるのが常習なら、遅れることを想定し、少し遅く行くほうが効率的だという考え方もあるでしょう。しかし著者は、いくら相手が遅れても決して短気を起こさず、催促もせず、じーっと座って待ち続けるようにしていたのだといいます。理由は、それが審査の結果によい影響を与えることに気づいたから。誰しも、人を待たせると後ろめたい気持ちになり、相手に対して少しやさしくなるもの。お役人も例外ではなく、少し長く待つだけで、気持ちのうえでも仕事のうえでも、こちらが有利になることがあったというのです。少なくとも、審査がスムーズに進むことだけはたしかだったとか。そして、この体験がべースとなって、30代以降の著者は「人に待たされることも決して悪いことではない」と思えるようになったのだそうです。そして「5分間の原則を守る」ことで、仕事によい結果を生み、時間を有効に使えるのだといいます。*上記の話は、一見すると「すぐにやる」こととは無縁のようにも思えます。しかし、その根底にあるものが「正確さ」「迅速さ」「誠実さ」であることを思い出してみれば、すべての考えが線としてつながることがわかるはず。つまり、まず守るべき「3つのモットー」があって初めて、「すぐにやる」ことを現実化できるというわけです。これは、仕事と向き合ううえで、とても大切なことではないでしょうか?(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※金児昭(2016)『「すぐやる人」になれば仕事はすべてうまくいく』あさ出版
2016年07月25日『脳が勝手に記憶するユダヤ式英語勉強法』(加藤直志著、サンマーク出版)の著者は、オンライン英語塾「加藤塾」主宰にして「ユダヤ英語コーチ」。本書で提唱する「ユダヤ式英語勉強法」を通じ、これまでに1万8,000人以上にインターネットで英語を指導してきたそうですが、その主張は想像以上に大胆です。なにしろ「記憶の民」といわれるユダヤ人の究極の記憶法は、「体をキツツキのように揺らしながら、口を動かしてつぶやくこと」にほかならないというのですから。にわかには信じられないような話ですが、事実、彼らはそうやって、1,000ページ以上もある聖書のなかの「トーラー」と呼ばれる部分を全文記憶しているのだとか。3、4歳から体をゆらゆらさせながら、ブツブツ聖書をつぶやく……すると、いつの間にか「トーラー」を記憶できているというのです。■体と口を動かしながら覚える理由では、なぜ彼らは聖書を記憶する際に体を前後させるようになったのでしょうか? それは、「聖書の数が足りなかったから」なのだといいます。奴隷として扱われたり、ひどい迫害を受けてきた彼らはその昔、日常的に聖書を燃やされたり捨てられたりされていたのだそうです。そのため聖書の数が慢性的に足りなくなり、みんなで一冊の聖書を読もうとしたため、見えるように体を動かす習慣がついてしまったということ。そしてその結果、「ひょっとしてこれは画期的な記憶法なのでは?」と気づいたというのです。さらには「体を動かすことで体温が上がり、血行がよくなる」というメリットにも気づいたため、この記憶法が広まっていったのだとか。■音読と反復による暗記練習が肝!だから、「英語をどのように勉強すれば、いちばん効果があると思いますか?」という問いに対しても、著者はまず「つぶやくこと」だと断言するといいます。ただし、それだけでは不十分。「体を動かしながら」という要素が加わって、初めて効果的な「ユダヤ式英語勉強法」が完成するというわけです。<学ぶ(ミシュナ)というのは、繰り返し朗読をし、繰り返し書き写し、そして繰り返し考えることである>というユダヤの格言があるそうです。そして著者もまた、ユダヤ関連の本を読みあさり、ユダヤ人が多く通っていたニューヨーク州立大学で彼らと共に学んだことから、「音読と反復による暗記練習が英語を身につけるうえでは最大のポイント」だと確信したのだといいます。なぜなら、単純なリズム運動が加わることで、英語が脳に勝手に定着してくれるから。いわば「単純なリズム運動」と「つぶやくこと」が英語学習にとってはもっとも大切だということ。なお、ユダヤ人の語学学習に関する考え方は、次の「5つの基礎」にまとめられるそうです。■ユダヤ人「語学学習」5つの基礎(1)とにかくワクワクすることからはじめるユダヤ式勉強法によってふたたび英語を学びたいなら、まずは心が踊るくらいワクワクすることからはじめるべき。なぜなら、興味が持てないことや難解なことからはじめても、すぐ嫌になってしまうから。だから自分の好きなものが題材になっていて、「簡単そう」「いますぐ取り組めそう」と思える教材を選ぶことが大切なのだといいます。そしてもちろん、「楽しむ」ことも不可欠な要素。(2)体を動かしたり、歩いたりしてリズムをつけて学ぶ「体をキツツキのように揺らしながら、口を動かしてつぶやくこと」が大切だといっても、そもそもその動きは“昔からのなごり”。つまり、同じような動きをしなければいけないという意味ではなく、とにかくじっとさえしなければOKだといいます。別ないいかたをするなら、英語学習においては、とにかく“動き”を取り入れることが大切だということ。(3)声に出して、つぶやきながら学ぶつぶやくことには抵抗があるという方もいるかもしれませんが、これにも明確な根拠が。声に出せば、自分の声を聞くことになります。視覚だけではなく聴覚も使っていることになるため、記憶に厚みが増すというのです。(4)最高の「つぶやき」環境を整える多くの情報や物質であふれ返る現代社会は、集中を妨げる要素がたくさん。そんななか、それらの原因と向き合い、うまく対処する方法のひとつは「感情が乱れて気が散っている状態で勉強しない」ということ。そしてもうひとつは、「自分にとって集中できる時間帯とその時間を把握する」こと。一切の心配と悩みを遠ざけ、環境を整えたうえで勉強に集中すべきだという考え方です。(5)反復練習や復習をすぐに行う<学んで復習しない者は、種をまいて刈り取らないのに等しい>というユダヤの格言があるそうですが、たしかに復習しなければ、どんなに努力したところで実を摘み取ることは不可能。英語学習はまず復習しなければ意味がなく、復習にこそ、英語学習の本当の意義があるといっても過言ではないそうです。*こうした考え方を軸として、以後は「単語力」「英文法」「リスニング力」「リーディング力」「スピーキング力」「ライティング力」、そして「資格試験勉強法」まで、ユダヤ式のさまざまなメソッドが紹介されています。それぞれが実践的なので、きっと役立つはず。英語学習で悩んでいる人にとって、大きな助けになるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※加藤直志(2016)『脳が勝手に記憶するユダヤ式英語勉強法』サンマーク出版
2016年07月25日『今いる仲間で「勝手に稼ぐチーム」をつくる』(池本克之著、日本実業出版社)の著者がいう「勝手に稼ぐチーム」とは、メンバーひとりひとりが自分で考えて行動できるチームのこと。リーダーが常に仕事の進捗状況を気にして、チームにあれこれ指示を出しているようでは、たとえ売り上げがアップしても「勝手に」稼いでいるとはいえません。リーダーがチームの状況を気にすることなく、自分がやりたいことに時間を使えるようになって初めて、「勝手に」稼ぐチームだといえる。そして、それこそが企業に求められるべきものだという考え方です。ところで「2:6:2の法則」をご存知でしょうか?組織内で優秀な人は2割、普通の人は6割、仕事のできない人が2割という割合に分かれているという法則。どんなに優秀な人を採用しても、この割合は変わらないのだとか。だとすれば、2:6:2のメンバーで「勝手に稼ぐチーム」をつくるしかないわけです。難しそうにも思えますが、著者はどんなチームでも勝手に稼ぐチームにレベルアップできると確信していると断言します。そのために必要なのが、チームの「課題発見力」を高めること。そしてチームの課題発見力を高めるには、次の5つの要素が不可欠だと主張します。■第1の要素:鳥の目を持つ「鳥の目、虫の目、魚の目」が重要だといわれることがあります。「鳥の目」とは、ターゲット全体を高い位置から見渡す視点。「虫の目」とは、近づいてターゲットをあらゆる角度から細かく見る視点。そして「魚の目」とは、ターゲットを時代や社会の傾向といった「流れ」に照らし合わせて見る視点。リーダーは当然、すべての目が揃っているのが理想ですが、メンバーにもそれを強いるのが難しいのも事実。そこで、ひとつだけ選ぶとしたら、部下には「鳥の目」を持足せるべきだといいます。メンバー全員が「鳥の目」を持っていないと、リーダーはずっと鳥になって監視していなければならず、それでは勝手に稼ぐチームになれないから。そして大切なのは、全体思考。会社全体の業務を把握し、すべてが自分とつながっているのだと考えられるようになると、全体思考ができるようになるそうです。■第2の要素:チーム全体で学ぶ力をつけるこの場合の「学ぶ」とは、「課題を発見して解決するようなチームのつくり方」を学ぶこと。そしてそのためには、チームのメンバー全員でチームシップ学習をするのがいちばんだといいます。簡単なことで、つまりは社長から幹部、チームのリーダー、新入社員までが同じことを理解し、学ばなければ「勝手に稼ぐチーム」にはなれないから。具体的には、実際にそのチームが抱えている課題を洗い出し、解決策を考えて実施する。そのプロセスを全員で話し合いながら進めるうちに、チームはひとつになっていくというわけです。■第3の要素:メンバー個人の自己成長力を育てる課題発見力を養うためには、ひとりひとりの「個」の力を伸ばしていくのも重要なポイント。自分がそのチームでなにをすべきかを考え、行動する。仲間が困っているときは一緒に解決策を考える。それがチームシップで大切な「個」。そして「個」を育てるためには、次の3つの方法が意味を持つのだとか。(1)自分事にさせる:他人事だった仕事を自分事として考える(2)学ぶ精度を上げる:習慣化し、学ぶ精度を高める(3)発信させる:自分の考えを自分の言葉で発振する力を養う■第4の要素:チームメンバーがお互いを理解しあうメンバー同士がわかりあえないということは、往々にしてあるもの。しかし重要なのは、わかりあえなかった問題をそのままにしておかないことだといいます。ただし「相手の立場に立って考える」ことは、実際にはなかなか困難。そこで著者は相互理解を深めるためのトレーニングとして、「ストーリーテリング」を勧めています。・まずはテーマや目標をつくり、それを実現するまでの未来を、参加者に自由に描いてもらう。・次に参加者を何人かのグループに分け、描いたストーリーを持ち寄る。・そしてそれを1本のストーリーにまとめる作業をしてもらい、配役や小道具をつけて、即興で演じてもらう。このプロセスを形にすることが大切だというのです。突拍子もないように感じても不思議はないかもしれませんが、きちんと根拠があるようです。それぞれがまったく違う目的で同じ会社にいることを認識し、お互いの立場、相手の考えを受け止められるようになることが目的だというのです。■第5の要素:全員で同じ方向を向く会社やチームで一体感を持つためには、セクショナリズム(縄張り意識)は最大の敵。そしてセクショナリズムをなくすためには、会社が向かう方向性をひとつに定めることが大切。そして、そのために必要なのは・ミッション:企業が社会に対して果たしたい使命・ビジョン:「こうなりたい」という将来像・バリュー:社会に提供し、貢献する価値この3つを共有することだといいます。ミッション・ビジョン・バリューを共有すると、リーダーがそばにいなくても、それぞれのメンバーが「うちの会社ではこれが大事だ」と判断しながら行動できるようになるというのです。*ここでご紹介したのは、あくまで一部、しかしこれだけでも、著者の意図するものが伝わるのではないでしょうか? 「勝手に稼ぐチーム」のつくり方をさらに深く知りたい人は、ぜひ手にとってみてください。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※池本克之(2016)『今いる仲間で「勝手に稼ぐチーム」をつくる』日本実業出版社
2016年07月22日キャリアや仕事に関する価値観が大きく変わるなか、ぜひ読んでおきたいのが、る『WORK MODELS 世界で働く日本人から学ぶ21世紀の仕事論』(太田英基著、いろは出版)。世界を旅しながら「サムライバックパッカープロジェクト」という試みを通じ、世界を舞台に奮闘する人たちと出会ってきたという著者が、新たなワークスタイルを実践する13人にスポットを当てた書籍です。その根底に根ざすのは、「世界と時代の最先端で働く彼らの仕事観やキャリア観には、これからの時代を生きていく日本人にとっての多くの学びがあるはずだ」という思い。そもそも著者本人がグローバルの「グ」の字も持たないような、「海外」や「世界」という言葉とは遠い場所で生きてきた人間だったと言いますが、だからこそ、「彼らの生き方からは、きっと多くのものが学べるはずだ」と確信しているのだそうです。きょうはそのなかのひとり、Amazonブラジルでプロダクトマネージャーを務めているという石丸浩司さんのケースから、年齢に関する2つの質問をピックアップしてみましょう。妻と子ども3人を残し、40歳でブラジルに単身赴任したという人物です。■1:転職のデッドラインは何歳でしょうか?石丸さんは、35歳までに転職を経験しないと、とても環境の変化にはついていけないと考えていたのだそうです。なぜなら、新しい職場に対応する能力は、年齢とともにどんどん低下していくから。また同時に、「unlearn(アンラーン=過去に学んだことを壊す)」には年齢の限界があるともいいます。著者が35歳で転職したコンサル会社では、徹底的に経験や実績を「ゼロ」にするように仕込まれたのだとか。なぜなら、「昔はこうやっていたんで、こういうのがいいと思います」「私の経験上、こういうのがいいと思います」といったことは、コンサルの世界では通用しないから。そして、いまブラジルという異国の地でどんなことにも対応できているのは、35歳で「unlearn」の機会があったからだといいます。また注目すべきは、Amazonもほとんどの社員が35歳以下で転職してきているという点。それを踏まえたうえで著者は、世界的に見れば「日本は転職をしなさすぎている」と指摘します。清い転職であれば、それはキャリアを形成するうえでとても重要なステップだというのです。ただし、日本でキャリアを積むうえでも、ひとつだけ重要なことがあるとも主張します。それは、35歳までに転職経験を持つこと。次の職場が海外であるか日本であるかは関係なく、35歳を超えても転職のないキャリアでは、新たな職場で成功するためには苦労が多くなるというのです。■2:40歳までのキャリアをどのように描いてきましたか?40歳までのキャリアをどう描くべきか?この点については、ポイントが2つあると石丸さんはいいます。まずひとつは、「自分のものさしはなにか」ということ。もうひとつは、「自分の給料は自分で決める」ということだとか。石丸さん自身は、キャリアを描く際には、直感ではなく、ものすごくいろいろな選択肢を考えるのだそうです。そのとき忘れてはならないのが、「自分のものさしはなんだろう?」ということ。たとえば、それまで勤めていた公団を辞めてコンサルに転職する際、「お前は残っていれば20年後には社長になれるのに」と多くの人にいわれたのだといいます。ところが、20年後に社長になるということは、自身の価値基準(ものさし)においては高いものではなかったというのです。そもそも、20年後に会社があるかどうかもわからない。だったらそれよりも、別の可能性にかけることを選んだというわけです。一方の「自分の給料は自分で決める」は、当たり前のようで、しかし日本人があまり意識できていない点だと指摘します。大学の同期で公務員として働いている人と話すと、来年の給料がどうなのかをすごく心配しているのだそうです。公務員の場合、翌年の給料は人事院の勧告で決まりますが、キャリアを自分でしっかりと描くことができれば、自分の給料を自分で決めることは可能。もちろん実際は自分が決めたり、自分で交渉したりするわけではありませんが、いまの職場の待遇に満足できないのであれば、他に移ればいい。つまり、「いつだってもっと高いところにステップアップすることを選べる」という意味においては、自分で給料は決められるということになるという考え方です。そして給料だけではなく、海外に住むかどうか、はたまたいつ帰ろうかなど、さまざまな選択もまた、自分で決められるということです。*こうした考え方からもわかるとおり、本書に登場する13人の生き方には、ひとつの共通項があります。日常的に世界と対峙しているからこそ、揺るぎない自信を身につけているということ。そしてそれこそが、本書の提示する「ワークスタイル」の本質なのかもしれません。だからこそ本書は、読者の知的好奇心を強く刺激してくれることでしょう。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※太田英基(2016)『WORK MODELS 世界で働く日本人から学ぶ21世紀の仕事論』いろは出版
2016年07月22日現在、世界には約7,000もの言語が存在しているそうです。なかには、説明すればなんとかニュアンスは伝わるけれど、それ以外の言葉では表せないような言葉もあるのでしょう。創元社から今年4月に発行された『翻訳できない世界のことば』は、著者のエラ・フランシス・サンダースさんが世界から集めた52の「翻訳できない」言葉のコレクション。ユニークなイラストもエラさんによるもの。この素敵な本について、著者のエラさんにお話をうかがうことができたので魅力をご紹介します。■ほかの言葉に翻訳できない言葉の魅力とはまず、どのようにして52の言葉たちを集めたのかをお聞きしたところ、「普遍的なおもしろさ」を基準にしたと教えていただきました。「本で知ったり、人から聞いたり、インターネットなどでふと目にした言葉を集めてリストにしたんです。200種のなかから、普遍的なおもしろさがあるかどうかを考えて厳選しました。それから、言葉にあったイラストが描けるかどうかもポイントでしたね」確かに、イラストがあるだけで言葉の意味の伝わりやすさが変わりますよね。それでは、これらの言葉のなかで特に「翻訳できない」言葉にはどんなものがあるのでしょうか。「この本にはイラストがついているので、その言葉がどんなふうに、どんなシチュエーションで使われるのかはわかりやすいと思います。ただ、スウェーデン語のfika(フィーカ)は、ニュアンスを伝えるのが難しい言葉です。スウェーデン人にとってはこれがなくてははじまらないくらいの、しきたりみたいなもの。本には書かなかったのですが、fikaは別にコーヒーがなくてもいいし、ひとりでもいいし、日常のなかの束の間の休息も、カフェで本を読んでいても、fikaです。もちろん、fikaにコーヒーはぴったりですけどね」また、ドイツ語でぬるいシャワーを意味する言葉warmduscher(ヴァルムドゥーシャー)については、どちらかといえばよくない言葉なんだそうです。「これは、“少々弱虫で、自分の領域から決して出ようとしない人”のことをいいます。平坦ですが、意味深長な罵りの言葉です」こんなにおもしろい言葉を翻訳できないなんて、なんだかちょっともったいないような気もしますよね。■実は日本人がなにげなく使う言葉が魅力的とはいえ、私たち日本人にもっとも親しみがあるのはやっぱり日本語です。そこで、エラさんに日本語のイメージについてうかがってみました。「とても美しく、詩的で、歴史的なルーツを内包している言語だと思います。まだ数えるくらいしか日本語の言葉や概念(たとえば、間など)を知らないのですが、いつかもう少し学んでみたいと思っています」ちなみに、本書に載っている数ある言葉のなかからお気に入りの言葉をお聞きしたところ、なんと日本語の「Boketto(ぼけっと)」がダントツでお気に入りだとのことでした。なにをするでもなく、ぼんやりとしているさまを表すものですが、日本人がなにげなく使っている言葉に、イギリス人のエラさんが惹かれるのはうれしい驚きでした。本書には、他にもいくつかの日本語が紹介されています。ですが、どんな言葉が載っているのかは、お楽しみということにしておきます。■ほかの言葉に翻訳できない言葉が消滅中!じつは、世界では2,500もの言語が消滅の危機に瀕しているといわれています。本書のなかでも、イディッシュ語やヤガン語、ゲール語といったあたりは危険なカテゴリーに入ります。その言葉でしか表しきれないニュアンスを持つ言葉が消えゆく運命にあるとしたら、それはとても大きな損失なのではないでしょうか。たとえば、チリのティエラ・デル・フエゴの近辺にくらす原住民の話すヤガン語には、こんな素敵な言葉があるそうです。「Mamihlapinatapai(マミラピンアタパイ)」・・・同じことを望んだり考えたりしている2人の間で、なにもいわずにお互い了解していること(2人とも言葉にしたいと思っていない)なにごとも言葉や論理に頼る現代社会においては、この言葉の意味する行為はむしろ洗練されているとさえ感じます。お互いへの揺るぎない信頼がなくては成立しない言葉ともいえるかもしれません。*一部の言語が消滅の危機にあると知って、「もし日本語がなくなってしまうのであれば、自分はどんな言葉を残したいだろうか」なんてことを考えてしまいました。エラさんの素敵なイラストと共に言葉の説明がついている本書は、すでにアメリカでベストセラーになっており、世界七か国語に翻訳もされています。自分のなかにたしかにある、だけど言葉にならない想いにぴったりはまる言葉が、もしかしたら外国語のなかからみつかるかもしれません。(文/石渡紀美) 【取材協力】※エラ・フランシス・サンダース・・・20代の著者、イラストレーター。さまざまな国に住んだことがあり、一番最近ではモロッコ、イギリス、スイスなど。フリーでスタイリッシュなイラストレーションの仕事をしながら、本を作りたいと思っている。質問も受け付け中。 【参考】※エラ・フランシス・サンダース(2016)『翻訳できない世界のことば』創元社※世界の言語の百科事典Ethnologue※UNESCO Atlas of the World’s Languages in Danger
2016年07月20日男性は、女性よりも情報収集が苦手。有限会社Imagination Creativeが全国20~59歳の男女358人に調査したところ、情報を見つける“調べる力”は女性が10ポイント以上高い、という結果になっています。また、1回の情報収集にかける平均時間は10分が最多だそうです。しかし、情報収集は夢につながるものと思い、もっと時間をかけてもいいかもしれません。『とことん調べる人だけが夢を実現できる』(方喰正彰著、サンクチュアリ出版)の著者は、「リサーチ力」に定評があるというビジネスコンサルタント、コンテンツプロデューサー。「調べる習慣」が人生を変えると確信しているそうで、現在はブランディングを軸として、企業向けコンサルティングや新規事業のプロデュース、個人向けパーソナルブランディングの構築などを行っているのだといいます。ユニークな点は、タイトルにもあるとおり、「調べること」と「夢の実現」を同列で捉えていること。夢へと続く道は、まっすぐな一本道ではないからこそ、「情報」こそが夢を実現できるかどうかを左右するカギになるという考え方です。そして、「情報」がそれほど大事なものであるからこそ、まずは「調べる習慣」をつけてほしいと訴えているのです。なぜなら、「調べる習慣」がある人とない人とでは、人生で大きな差がつくものだから。だからこそ、それが「夢までの距離が近くなるか、遠くなるか」の差につながっていくということなのかもしれません。■夢につながる情報を調べていると思え夢を実現できる人に共通しているのは、知りたい情報や気になる情報があったら、「すぐに調べる」ことだと著者はいいます。では、情報収集にはどのくらいの時間をかければいいのでしょうか? いうまでもないことですが、その答えは「必要な情報が見つかるまで」。探している情報によっては、時間がかかることもあるでしょうが、それは情報を得るために必要な「コスト」として受け入れることが大切なのだそうです。タイミングなどによっては、すぐに調べるのが難しいときや、情報収集を中断しなければならないときもあるかもしれません。しかしそんなときでも、「自分は、夢へとつながる重要な情報を調べている最中だ」ということを忘れてはいけないといいます。■情報収集は優先順位を高いままキープもしかしたら大げさだと感じられるかもしれませんが、本気で調べた経験がある人なら、こう強調する著者の気持ちはわかるのではないでしょうか。ときには、調べることが精神的苦痛を伴うこともあるからです。でも、それを乗り越えなければならないということ。そして、日々の雑事に追われ、なにを調べていたのか忘れてしまわないように、「調べること」の優先順位を高いままキープすることが大切だといいます。なぜなら優先順位さえ高ければ、ちょっとしたスキマ時間を利用して、情報収集を再開することができるから。■時間が足りないときは有料サービスをしかし、それでも情報を探すための時間が足りないのであれば、以下のような有料サービスを利用することを検討するのもひとつの手段だそうです。・日経テレコン21国内外のメディアや調査会社が有料で提供するコンテンツを、データベース化したサービス。オプションを活用することにより、専門家によるリサーチ代行を依頼することも可能。・ジャパン通信社新聞、雑誌、テレビ、ウェブなどの情報を、自分に必要なテーマに応じてクリッピングしてくれるサービス。・各種インターネットリサーチ自分自身でウェブを通じてアンケートができるサービス。各サイトの登録者のなかから特定層を絞り込んでリサーチができる。■クラウドソーシングも利用価値が高い他にも、インターネットを利用して不特定多数の人に業務を発注できる「クラウドソーシングサービス」を活用し、個人にリサーチや情報収集、データのまとめを依頼する方法もあるのだとか。日本人登録者が多いサービスとしては、『ココナラ』『クラウドワークス』『ランサーズ」などが有名。また『Workshift』『Freelancer』は、日本語でサービスを提供しているものの、海外の登録者数が多いサービスなので記憶しておいて損はないといいます。情報収集をするうえで重要なのは「どんな情報を探すか」であり、「誰が情報を探すか」ではないと著者はいいます。時間は有限だからこそ、夢を実現するために、「なにを優先すべきか」を常に考える習慣をつけるべきだということです。*「ウェブ」「本・雑誌・新聞・テレビ」を通じての情報収集法、そして「人」に情報を聞くコツなど、情報収集をさまざまな角度から掘り下げた一冊。「夢の実現につながる、自分にとって必要なもの」を見つけ出すにあたっては、大きな力になってくれそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※方喰正彰(2016)『とことん調べる人だけが夢を実現できる』サンクチュアリ出版
2016年07月19日『伝説の秘書が教える「NO」と言わない仕事術』(フラナガン裕美子著、幻冬舎)の著者は20年以上にわたり、銀行や証券会社などの外資系企業と日本企業の双方で活躍するエグゼクティブたちの秘書を務めてきたという人物。「外資系エグゼクティブの秘書」というと、なんだかすごい人というようなイメージがありますが、実際にはドラマのような難題珍問題の連続。毎日が上司や仕事相手との真剣勝負だったといいます。事実、仕事をはじめたころは、パワハラで胃が切れたり、1円ハゲができてしまったり、失敗して怒鳴られることもしばしばだったとか。しかしそんななかでいつも思っていたのは、「どうせ働くのであれば、少しでも楽にストレスなく働きたい」ということ。そして工夫を重ね、ちょっとでも毎日が楽になるような働き方を探してきたというのです。つまり本書では、そうやって身につけた「ちょっとしたコツ」を明かしているわけです。きょうはそのなかから、「時間」についての考え方を抜き出してみたいと思います。■長時間プレゼンをしてはいけない!ダラダラした説明や、無意味に長いプレゼンテーションがあるものです。しかし当然ながらどちらも、相手をイライラさせるだけ。それどころか、「結局、要点はなんなのか?」と問い返されることになる場合もあるかもしれません。しかも、罪はそれだけではないと著者は指摘します。なぜならそれらは結果的に、相手の貴重な時間を無駄づかいしていることになるから。上司や仕事相手の「1分いくら」の時間が、ただ長いだけの説明の間にどんどん失われていくということです。■1分1万円の時間が10分も無駄に著者も実際、厳しいことで有名な上司からこういわれたことがあるのだそうです。「君はいま、1分1万円の私の時間を10分も無駄にしたのだ。いったいどうやって補填するんだ?」そのとき著者は、上司からの予想外の質問に答えられず、手元の資料を見ながらつっかえつつ説明したのだとか。そのため余計な時間がかかってしまい、批判されたというわけです。どこのオフィスにもありそうな光景であるだけに、他人事とは思えない部分があるのではないでしょうか?■上司も自分の「お客様」と同じ存在しかし、だからこそ、上司も自分のお客様だと考えるべきだと著者は主張しています。いうまでもなく、お客様は自分に利益をもたらしてくれる存在。つまり、その大切なお客様の時間はお金のようなもの。粗末に扱えば、立派な時間泥棒だというのです。なぜなら、部下たちが無駄づかいしてしまったその時間で、彼らはさらなる利益を生み出したり、会社を守ったりすることができるから。著者に厳しい言葉を投げかけた上司がいったとおり、どうやってもその時間は補填できないわけです。■時間の無駄遣いをなくすためには?そんな考えがあるからこそ、上司を含めたお客様と接するときには、必ず「相手の時間=お金」と思わなければいけないと著者は記しています。そして、決して無駄遣いをしないように、次のことに注意する必要があるともいいます。(1)常に話は短く要点のみ(2)話をする前に、相手からくる質問を想定して準備しておく(3)上司やお客様の時間=お金が減れば、自分の利益も減ると心得る相手の時間を大切にするクセがつけば、自分の時間に対する考え方も変わると著者はいいます。そして、時間を無駄づかいしないクセは、仕事においてもプライベートにおいても、必ずプラスにつながるものだと断言しています。■1分1万円はワンランク上の考え方「1分1万円の私の時間を10分も無駄にした」などといわれたとしたら、「なんてひどいいいかたをするんだ」「パワハラだ」などと考えてしまっても不思議ではありません。しかし、著者はそんなふうに受け止めず、ワンランク上の考え方をしていることがわかります。その客観性があるからこそ、伝説の秘書として外資系エグゼクティブたちからの信頼を勝ち取ることができたのでしょう。*著者は、仕事をロールプレイングゲームのようなものだと考えるべきだと主張しています。毎日新しい「お題」が与えられ、それを自分の知恵と経験によって乗り切り、最後にはステージクリアするというようなイメージ。そう考えると、日々の仕事場で苦手だと思っていたことも、ちょっと楽しいチャレンジに変わるというのです。だからこそ、本書も自分のためのロールプレイングゲームのマニュアル感覚で読んでほしいのだといいます。著者自身が、ここに書かれている方法によって、「常にベストなレベル」を求めるモンスター上司たちからサバイバルしてきたというだけあって説得力抜群。成果は実証済みだということですから、きっと応用することができるはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※フラナガン裕美子(2016)『伝説の秘書が教える「NO」と言わない仕事術』幻冬舎
2016年07月17日仕事中は、一日中ずっとパソコンに向かっているという人も少なくないはず。しかしそうなると必然的に、肩こりの症状も悪化していくものです。そこで、肩こりの改善を願っている方にぜひお勧めしたいのが、『1日10分歩き方を変えるだけでしつこい肩こりが消える本』(宮腰圭著、サンマーク出版)。とはいえタイトルを目にしただけでは、「1日たった10分でよくなるなんて、そんなことあるはずがない」と思っても無理はないかもしれません。しかも、驚くほどシンプルなメソッドを、1日わずか10分程度行うだけでいいというのですから。しかし読み進めていくと、本書に展開されている考え方が理にかなっていることがわかります。著者は、これまでに39,000人の体の悩みを解決してきた整体師。その活動プロセスにおいて、肩こりに悩む人を改善に導いてきたメソッドが、2006年の夏に考案されたという「こりとりウォーク」なのだそうです。■両手首の向きを90度変えるだけ!著者によれば、肩こりをゆるめ、根治に結びつけるスイッチ(肩ゆるスイッチ)の入れ方は驚くほどシンプル。なにしろ、「両手首の向きを90度変えるだけ」だというのです。つまり手のひらを正面にし、手の甲を後ろに向けた状態。そうして歩くだけで、内に巻いていた肩が自然に矯正され、内側に凹んでいた胸部が前方に突出。自然と胸を張った状態になるため、猫背はもちろん、猫背によって引き起こされるストレートネックも改善されるということです。■両手首の向きで肩こりが消える理由手の甲が正面に向いてしまっていると、それだけで肘には内向きの回転がかかってしまうというのがその根拠。そうなると、肩にも内巻きの回転が加わってしまうというわけです。事実、その場で両腕をだらんと下に垂らした状態で、手にひらが後ろになるように手首の向きを変えてみると、手首を回したとき、肘にも内向きの回転が加わることがわかります。しかも、そのとき同時に肩にも、少し内向きの動きが加わるというのです。ちなみに静止している状態ではそれほど強い力はかからないものの、歩いている状態だとこの作用は顕著になるのだそうで、ここがポイント。そこで、姿勢改善も含め、肩や背中のこりをとるには、静止している状態よりも動いている状態で治したほうが効果が出やすいということ。だから、この歩き方が効果的だというわけです。肩よりも肘、肘よりも手首といったように、肩からの距離が離れれば離れるほど、4つの動き(遠心力・向心力・てこの原理・振り子の原理)は大きくなるもの。いってみれば腕のつけ根から遠くにある場所ほど、内側に巻いていく作用も強まるということ。だとすれば歩行時に、手のひらが正面になるように向きを変えて歩けば、内へ内へと回転する腕の動きが抑止されることになるでしょう。そして、それにともなって、内側に巻いてくる方の動きも抑制されるというわけです。このことについては、通常の歩行をイメージするとわかりやすいようです。人が歩くとき、まず手を前に出すことで、腕に外側へ向かう「遠心力」が発生して肘が外方へ向かうことになります。そして次に中心へ向かう「向心力」が発生し、肘と手首には内向きの回転がかかります。しかし、手のひらを正面にして歩くことで、その働きが抑制できるというのです。■人体すべての骨格は連結している!次に腕を後ろに降ったとき、手の甲が正面(手のひらが後ろ)に向いたままだと、あまり後ろに手を振れなくなるため、肩が内側に残ったままになるのだとか。でも手のひらを正面位すれば、後ろに腕が振りやすくなり、肩を後ろまでしっかりと動かすことができるということ。そうすることで手首から肘、肘から肩へと、逆行的な外巻き方向への連鎖が発生するわけです。肩からの距離が離れた場所ほど、回転や「てこの作用」が強まります。それを逆手に取ることで、外へ外へと回転していく力を、下から上に作用させる。これが、手のひらを正面へ向ける狙いだと著者は記しています。重要なポイントは、人体すべての骨格は連結しているという事実。だからこそ、たった1ヶ所が改善されるだけでも、そこに関わる周囲に変化が生まれるということです。著者はそれを「まるで『スイッチ』のように、オセロの黒が、白に変わる」と表現していますが、たしかにそんなニュアンスかもしれません。ひとつの小さな変化が、その周囲の変化を誘するため、他の部分もどんどんよい方向に矯正されていくということです。*必要以上の方法論を絡めることなく、シンプルに徹しているからこそ、説得力は抜群。本書を参考にしながら1日10分のエクササイズを続ければ、肩こりが改善されるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※宮腰圭(2016)『1日10分歩き方を変えるだけでしつこい肩こりが消える本』サンマーク出版
2016年07月17日いま、多くの人が親の老後に不安を感じている時代。実際、オウチーノ総研が20~49歳までの男女741人に「親の介護について考えているか、不安はあるか」アンケート調査したところ、不安を感じている人は81.0%もいるとの結果が出ています。なかでも親の認知症介護は、誰にとっても他人事では片づけられない問題ですよね。だからこそ参考にしたいのが、きょうご紹介する『医者は知らない! 認知症介護で倒れないための55の心得』(工藤広伸著、廣済堂出版)です。著者は、介護ブログ「40歳からの遠距離介護」で生計を立てながら、家族の介護をしているという人物。40歳のとき、祖母(要介護3)が子宮頚がんで余命半年と宣告されたことを契機に介護離職。現在も、認知症が発覚した母(要介護1)とのダブル介護を行っているのだそうです。つまり本書では、そんな経験から得た認知症介護のノウハウを明かしているわけです。本書によると、介護には「魔の3大ロック」といわれるものがあるのだとか。身体を拘束する「フィジカルロック」、薬で抑えつける「ドラッグロック」、言葉で圧力をかける「スピーチロック」がそれ。その一方、著者を含めた介護者も、実はいろいろなものに「ロック」されているのだといいます。■介護の魔の3大ロック(1)マネーロックまずは「マネーロック」。住宅、教育ローンなど固定された支出が多くなり、金銭的に身動きが取れない状態を指した、著者の造語。というのも認知症介護をしていると、想定外の手術、施設への入所、リフォーム費用など、突然の出費が多いものなのだそうです。(2)タイムロック次にタイムロック。本来の意味は「時計錠」ですが、これも著者の造語。勤務時間がキッチリ決まっていて、通勤時間も2時間かかるなど、日常が「自由度のないタイムスケジュールになってしまっている状態」を指すものです。「認知症の人が徘徊して警察に呼ばれてしまった」「下の世話に1時間以上かかってしまった」「デイサービスに行きたくないといいだした」など、介護をしていると予想外のトラブルが発生することになります。そんなとき、仕事に行けなくなってしまったりしたら、そのフラストレーションを認知症患者本人にぶつけてしまうことになったりもするとか。つまり、それはタイムロックが原因だということ。ちなみに著者の場合は、祝業をフリーランスにしたため、タイムロックはほとんどないのだといいます。お母さんの妄想に30分以上つきあうこともあるそうですが、イライラしていないので気持ちに余裕があるのだそうです。それは、とても大切なことであるはず。つまり介護をするにあたっては、なんらかのかたちでタイムロックから自分を解き放つことが必要なのでしょう。(3)常識ロックそして最後は常識ロック。これは介護者が、「まわりのみんながそうしている」という意識から、自らをロックしてしまうことを指すのだといいます。少しわかりにくいかもしれませんが、「みんなすべて自分の手で介護している。他人に頼るなんてもってのほか」という“常識”にとらわれすぎている介護者が、本当に多いというのです。もしかしたら、日本では家事も育児もすべて自分でやる人が多いという現実が、介護にも影響しているのかもしれない。著者はそう分析しています。また、崩れつつあるとはいえ、「介護は女性がするのが当たり前」という幻想もいまだ根強いのだとか。しかし、介護をアウトソーシングしてなにがいけないのでしょうか?そんな疑問を投げかけている著者も、週2回のデイサービス、ゴミ捨てなどの訪問介護、週1回の訪問リハビリ、隔週での訪問看護など、アウトソーシングをしているといいます。■自分の手で解除しようまた、「介護でタイムロックされている人は大変な思いをしているから偉い」と尊敬され、自分の時間をつくり出そうとしている人は尊敬されないというのも不思議な話だと著者。たしかに私たちは苦労を尊敬の対象にしがちですが、そういうものではないはずです。だからこそ、そういった「常識ロック」を自分の手で解除すべきだと著者は主張します。そうすれば、介護の幅が広がり、孤独からも解放されるというのです。アウトソーシングしていると親戚から文句をいわれることもあるでしょうが、大切なのは「介護者が主体的であること」だからです。見るべき方向は「世間やみんな」ではなく、認知症の人ご本人、そして介護者自身。認知症の人ご本人には「介助」が、介護者には「ロックの解除」が必要だといいます。*当然のことながら、介護には、つらく苦しいものというイメージがあります。たしかに、それは事実なのでしょう。しかし本書の魅力は、著者がそういった被害者意識とは別の場所にいることです。「わたし自身、認知症介護は4年目に突入しました。もちろん、悩みはあります。しかし、思ったほど悩みは深くなく、『しれっと』介護ができています。『しれっと』とは、何ごともないかのような状態のことです」(「はじめに」より)この記述からもわかるとおり、決して悲観的ではないのです。だからこそ本書を読んでみれば、絶望的なものとして語られがちな認知症介護を、もう少し広い視野で眺めることができるようになるはずです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※工藤広伸(2016)『医者は知らない! 認知症介護で倒れないための55の心得』廣済堂出版
2016年07月17日『圧倒的な勝ち組になる効率のいい考え方と仕事の仕方』(天明麻衣子著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者はフリーアナウンサー。東京大学文学部卒業後にNHK仙台放送局にキャスターを務め、その後JPモルガンへ転職。弁護士の夫と結婚し、スペインで1年弱を過ごし、帰国後にフリーアナウンサーとして活動を開始したというエリートです。印象的なのは、「いまどき“勝ち組”しかも“圧倒的な勝ち組になる”ってなんだよ(笑)」という意見に対して、「そんなのは所詮キレイごと」だと真正面から反論している点です。結果を出した人はきちんと評価され、大きな見返りを得ることができる。望むと望まないとにかかわらず、現実には勝ち負けがあるのだから、どうせなら圧倒的に勝ちたいという考え方なのです。そこで本書でも、独自の「必ず結果を出す法則」を記しているわけです。■数字はゴールまでの道しるべゴールへの道の途上には、いくつか指標となる数字を置いたほうがいいと著者はいいます。たとえば、将来的にもっと英語を仕事で活用するためにTOEICに挑戦するとします。900点を目指していてもまだ400点だったとしたら、「まだまだだな。もっと勉強時間を確保してがんばろう」と喝を入れる必要があります。しかし、もし800点まで来たら、「あともうひと息。ここからはがんばりすぎず、無理のないペースで」ということになるでしょう。つまり、数字があればこのように、その時点での自分に合った戦略の立て方がわかるということ。数字は道しるべのように「いま、ゴールを目指す道のりの、このあたりにいます」と示してくれるので、より効率的に努力することができるというのです。■数字がやる気スイッチになる数字を設定することのもうひとつのメリットは、数字が「“わかりやすいやる気スイッチ”になってくれる」ことだそうです。「次のTOEICの点数を10点上げる」というような小さなことでも、達成できたら嬉しいもの。そのとき数字があれば、自分がなにかを達成したと実感しやすくなるわけです。成功体験は、重要なモチベーションになると著者はいいます。成功体験を積み重ねていくことによって、「やればできるんだ。今度は30点上げたい」と、やる気スイッチが自然と入るもの。それだけではなく、計画の途中でだらけそうになったときも、数字を意識すれば「先は長いのに、時間を浪費している場合じゃないよね」と罪悪感や危機感が大きくなっていくので、そのぶん重い腰を上げやすくなるというメリットも。■大きすぎる数字を設定するなただし、気をつけなければならないこともあるといいます。それは、適切でない数字を指標として設定してしまうこと。大きすぎる数字にしてしまうと、達成が難しくなり、燃え尽き症候群になる可能性を否定できないというのです。なんとか達成するために、持てるすべてのエネルギーと時間を集中的に費やし、「よかった、なんとか達成できた……とホッとした瞬間に燃え尽きてしまうということ。そうなってしまうと、ふたたびやる気を奮い起こして次の数字を目指すまでに、長い時間がかかってしまいます。10日で100点を取って、そのあとの10日間なにもしないより、8日で70点を取ることを2回繰り返したほうがいい。そうすれば、結果的には16日間で140点取れるからです。そう考えてみても、無理のしすぎは逆効果だということがわかるのではないでしょうか?■小さすぎる数字の設定もダメとはいえ、能力にくらべて小さすぎる数字も、それはそれで考えもの。たとえば、本当は10日間で80点取る力があるのに、「まぁ、ここは60点くらいかな」と無駄にハードルを下げたりすることがそれにあたるわけです。それよりも、もし60点を目指してみた結果、「意外とつらくないぞ」と感じたなら、思い切って80点を目指すのも手だということ。自分の限界を低く見積もりすぎると、結果的に自分が損をしてしまうことになると著者は主張します。そういう意味ではむしろ、「もう無理だ」と感じるくらい、「時間とエネルギーをすべて費やしたらどこまで達成できるのか」を一度試してみるのもいいかもしれないとか。もちろんそれは楽なことではないでしょう。しかし、そうすることによって、「次からはその少し下くらいが数字目標としてちょうどいい」という感覚がつかめるというわけです。*「圧倒的な勝ち組」を目指すことだけが人生の選択肢ではないので、本書の内容がすべての人に当てはまるかどうかはわかりません。しかし、その点を踏まえたうえで目を通してみれば、参考になる箇所を見つけることはできるかもしれません。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※天明麻衣子(2016)『圧倒的な勝ち組になる効率のいい考え方と仕事の仕方』ディスカヴァー・トゥエンティワン
2016年07月16日いま大人気の「腸活」をご存知ですか?腸を元気に活動させることで、ガンや認知症、メタボを遠ざけるだけでなく、体の内外ともに若々しさを取り戻せる健康法のことです。そのために重要な役割を担っているのが、腸内細菌。私たちの腸には、3万種1000兆個もの共生菌がすみ、腸と協力して体と心によい働きをしてくれます。ただしそれは、腸内細菌を喜ばせる食事をし、彼らを元気にする生活をしているときだけに得られるパワーのようです。ならば、腸内細菌に働いてもらうにはどんな腸活を行えばよいのでしょうか?その点について知るためには、76歳のいまも現役で、腸研究の第一人者として活躍する藤田紘一郎さんの『50歳から若返るための1分間「腸」健康法 ―老化を防ぐ決め手は“腸活”です!』(ワニブックス)が役立ちます。ご本人が毎日実践し、若返りによいと実感しているという39項目の方法のなかから、簡単にできそうな6つの方法をご紹介いたしましょう。■1:1回につき1分間の深呼吸を繰り返す「若々しくあり続けるために、第一に必要なものはなんですか?」と問われたら、どう答えるでしょうか?答えは、なんと「性ホルモン」。ちょっとエッチな響きに感じるかもしれませんが、性的魅力を高める性ホルモンも、50歳を過ぎれば若々しく長生きする源泉となるというのです。そんな性ホルモンを枯渇させないためには、腸を鍛えることがいちばん。なぜなら性器は、腸からできているからです。意外な関係性にちょっとびっくりするかもしれませね。じつは、イソギンチャクやクラゲのような原始的な動物には、脳も心臓もなく、生殖活動もすべて腸が行っています。進化の過程で、腸がさまざまな臓器などに分化しました。私たち人類も例外ではありません。その分化の様子がわかるのが、お母さんのおなかのなかにいる胎児。胎内で最初に作られる臓器は腸であり、約8週間後に、腸だった組織にくびれができて性器へと発達します。命の神秘を感じますね。そこで、性ホルモンの分泌量を盛んにするには、リラックスして腸や性器が活発に活動できるようにすることが不可欠。それには深い呼吸が有効です。1回につき1分間、腸に新鮮な空気を送り込むつもりで深呼吸を繰り返しましょう。■2:夕食に「体がなにを欲しているか」1分間考える「若返るためになにを食べようか」「体がなにを欲しているか」、1分間でよいので、メニューにこだわることが大切。しかし1日3食ともにこだわるのは大変なので、夕食を大事にしましょう。なぜなら、腸の吸収力がいちばん高まるのは夜、眠っている時間帯だから。夕食に必ず摂りたい栄養素の第1位は、腸の働きを活性化する食物繊維。そして第2位は、性ホルモンの原料となるコレステロール。卵黄やレバー、ウナギ、魚卵、肉などに豊富に含まれています。しかも、人体を構成する37兆個の細胞の新陳代謝にも、コレステロールは欠かせない栄養素だといいます。■3:たんぱく質とネバネバ食品を一緒に食べる食事で摂った肉や魚、卵、大豆、乳製品などのたんぱく質は、腸で20種類のアミノ酸に分解されます。このうち、体内で十分な量を合成できないため、食事からとくに摂取する必要のある9種類を必須アミノ酸と呼びます。この必須アミノ酸をもとにつくり出されるのが、幸福感や満足感の源泉である「幸せホルモン(セロトニンやドーパミン)」です。そんな幸せホルモンの分泌量を増やすには、腸内で合成されるビタミンCや葉酸、ビタミンB6などのビタミン類の働きが欠かせません。腸内細菌の数と種類を増やし、豊かな腸内環境を築くことで、ビタミン類の合成力は高められます。そのためには、水溶性の食物繊維を積極的に摂ることが大事。ワカメなどの海藻類、オクラや長いも、納豆、メカブ、コンニャクなどに多く含まれます。こうしたネバネバ食品とたんぱく質を一緒に摂ることで、幸せホルモンの量も増えるというのです。■4:良質な油を1日に2~3杯程度摂取する亜麻仁油やエゴマ油、青背の魚の刺し身など、新鮮なオメガ3脂肪酸を毎日摂ると、腸の働きがよくなるそうです。さらに、オメガ9脂肪酸という栄養素を含むオリーブ油も腸の働きをよくします。オリーブ油の利点は2つ。1つは、酸化しにくいので、過熱調理にも向くこと。2つめは、腸内環境を改善する効果を期待できることです。保温効果があるので、温かい食べ物にオリーブ油を加えると、腸内をポカポカ温め続けてくれ、便秘改善効果もあります。とはいえ、摂りすぎは逆効果。著者は、1日2~3杯を目安に摂取することをおすすめしています。■5:食物繊維や発酵食品をたっぷり摂取する私たちの腸には3万種、1000兆個の腸内細菌がいますが、生まれながらに腸にすみついているわけではありません。赤ちゃんは、母親の体内にいるときは無菌。誕生とともに外界にいる細菌とふれあい、腸に取り込んでいきます。そうして生後1年かけて取り込んだ腸内細菌たちが、その人の健康状態を生涯にわたって左右する腸内細菌叢の組成を決めているのです。決まってしまった腸内細菌叢の組成は変えられませんが、諦めることはありません。食物繊維や発酵食品をたっぷり摂る食生活は、腸内細菌叢の善玉菌の数を増やし、免疫力を高めてくれるからです。■6:「ひと口ゆっくり30秒」をふた口だけ行う腸の健康のために、積極的に摂りたいのは、オリゴ糖。オリゴ糖は、ビフィズス菌など善玉菌の大好物だからです。オリゴ糖を毎日摂取すると、大便中のビフィズス菌が40%も増えるというデータもあります。ただし、オリゴ糖の摂取を怠ってしまえば、わずか1週間で元の状態に戻ってしまいます。続けることが大事です。そんなオリゴ糖を豊富に含むのが、玉ネギ、ゴボウ、ニンニク、アスパラガス、納豆などの大豆食品、バナナ、ハチミツなど。一方、避けたいのが、白い主食や白砂糖。白い主食とは、白米や白い小麦粉で作ったうどんやパスタなど。主食にはブドウ糖が豊富に含まれますが、脳の栄養源にはなっても腸の栄養源にはなりません。それどころか、ブドウ糖が大量に腸に運ばれると、小腸は真っ先にブドウ糖の消化に働かなければならず、疲れきってしまいます。ご飯を玄米や五穀米にするだけで、腸の調子は変わってくるはず。50歳を過ぎたら、ご飯はお茶碗に半分程度にし、ひと口をゆっくりと30秒くらいかけて噛んでよく味わいましょう。唾液もたっぷり出て消化もよくなりますよ。食事すべてにひと口30秒をかけるのは大変なので、ふた口だけ1分間かけてよく噛んでみませんか?*人間は加齢を避けることはできませんが、老化を遠ざけることはできます。老化とは、加齢の結果ではなく、衰えだからです。腸内細菌を元気にする生活を心がけて、老化のスピードを遅らせましょう。腸内環境の改善のためにできることから始めてみませんか?(文/山本裕美) 【参考】※藤田紘一郎(2016)『50歳から若返るための1分間「腸」健康法 ―老化を防ぐ決め手は“腸活”です!』ワニブックス
2016年07月15日『リストマニアになろう!理想の自分を手に入れる「書きだす」習慣』(ポーラ・リッツォ著、金井真弓訳、飛鳥新社)の著者は、テレビ界のアカデミー賞とも称される「エミー賞」の受賞歴を持つアメリカの著名TVプロデュ―サー。それだけでも特筆に値しますが、さらに注目すべきは「リストマニア」であること。「いまの自分があるのはリストのおかげ」と信じて疑わないとすらいうのです。リストマニアといわれてもいまひとつピンときませんが、これは「リストづくりへの情熱を持っている状態」「リストづくりに異常なほど惹かれる状態」と定義されているのだとか。「たかがリストで大げさな」と思いたくもなりますが、著者は「エミー賞を受賞できたのもリストがあったから」だとすら断言しています。そればかりか、締め切りに追われていても、リストを使うことでさらに多くの仕事を進めることができ、海外での結婚式を計画し、引っ越し先を見つけることもできたのだというのです。リストを書くだけでそこまで変わるというのは、驚きではあります。ちなみに、リストをつくるプラス面は6つあるのだそうです。■1:不安が減って時間が増えるやらなければならないことが山積みになっていて、どうしたらいいかわからない。しかしそんな不安も、リストをつくれば和らぐということ。やるべきことを紙に書きはじめて(またはスマートフォンに入力しはじめて)頭から追い出したとたん、ストレスのレベルが下がるということです。それに、そもそも人は忘れる生き物。だからこそ、なにかを思いついたら、目立つように書いておくことが大切だといいます。■2:脳のパワーが高まるリストをつくるときに使う脳の一部は、普段は使わない部分なのだそうです。だから、人生をきちんと整理しながら、脳の力をアップさせて冴えた状態でいられるというわけです。別な表現を用いるなら、脳を活性化できるということになるのでしょう。■3:目的に集中できるたとえば、いろんなところから次々とメールが届いたり、忙しい生活を送っていると、物事に集中することが難しくなってくるもの。しかしリストがあれば、邪魔が入ったとしても、それまで自分がやっていた作業に戻るのが簡単になるそうです。つくったリストを手引きにすれば、目的を確認し続けられるということ。焦点をはっきりさせられるため、1日にやるべきことを前よりもたくさんできるようになり、しかも心から好きなことをする時間もあるということに気づくといいます。■4:自信が高まるやり終えた項目をリストから外していくと、達成感という素晴らしい感覚が味わえるといいます。そしてそれが自信につながるため、やる気も計画性も持続できるわけです。積極的に自分の人生に参加すると、さらに力を得られるもの。多くのことを片づけられるようになれば、「自分は成果をあげられる人間で、より有能だ」と思えるよいうになるだろうという考え方です。■5:思考を整理できる困難な決断をしなければならないときや、休暇の計画を立てるといったときも、著者は思いついたことのすべてを紙に書くことにしているのだそうです。リストを書き、目標の達成に役立つあらゆるステップを考えると、これから待ち受けているものに立ち向かう用意ができたように感じるのだといいます。そして当然のことながら、リストをつくって心のなかを片づければ、混乱状態になることも減っていくわけです。■6:心の準備ができるこのことを解説するに際して、著者はガールスカウトの公式モットーを引き合いに出しています。それは、「備えよ、常に」というもの。ガールスカウトに入っていようがいまいが、このモットーはとても大切だというのです。人生は、いつ、なにが起きるかわからないもの。だからこそ、自分にとっての優先事項をチェックできるリストが必要だということです。ちなみに著者は本書において、独自の「リストフル・シンキング(リスト活用思考)」を克明に解説しています。そして、それを身につけると、たとえば次のようなメリットがあるといいます。・職場でも家庭でも、もっと生産的で効率よくなれる・新しい戦略がわかり、悪いリストづくりの習慣が改められる・心からやりたいと思っていることに使える時間をより多く確保できる・いつもなにもかもやらなくてもいいように、人生のさまざまな面をアウトソーシングする方法がわかる・時間ができるので、もっとすてきなプレゼントをしたり、もっとすばらしいパーティを開いたり、もっとなにかに打ち込めるようになる・ストレスが減る*いわば本書を通じて著者が訴えかけているのは、より快適で効率的なライフスタイルの実現。そしてそのためには、リストを活用することがとても大きな意味を持つということです。本書は、日々のタスクに追われて疲れ切っている方の強い味方となってくれそうです。(文/作家、書評家・印南敦史) 【参考】※ポーラ・リッツォ(2016)『リストマニアになろう!理想の自分を手に入れる「書きだす」習慣』飛鳥新社
2016年07月15日