ゲッティ イメージズは、英国を代表する動物写真家のTim Flach(ティム・フラック)氏を迎えたトークショー「Tim Flachがやってくる!」を代官山蔦谷書店で開催した。ロンドンを拠点に活動する氏は、ゲッティ イメージズの契約フォトグラファーとしても活動し、インターナショナル・フォトグラフィー・アワード(IPA)やカンヌ広告祭で金賞などを受賞。英国王室写真家協会からは名誉博士号を授与されるなど、イギリスでも権威あるフォトグラファーのひとりと評されている。また、ゲッティ イメージズでは、現在665点の作品取り扱いがあり、一般から企業まで幅広いユーザーに活用されている。今回の来日は、第2回「KYOTO GRAPHIE 国際写真フェスティバル 2014」 におけるハッセル・ブラッド・ジャパンの招聘によるものであり、このトークショーが東京では唯一のイベントとなった。○ユーモラスさを介して問題定義を行う動物写真冒頭で「この場に立てて光栄です。作品を例に、私なりの写真に対する考えをお伝えします」と挨拶したティム氏。彼はこれまでにも遺伝学や外来種など生態系に関わる課題や人間中心主義の中で生じる問題について動物をモチーフに提示し、議論を巻き起こしてきた。そのテーマ性は、最新写真集「More Than Human」でも一貫している。一見美しい肖像画のような写真ばかりだが、例を挙げると、イスラエルで突然変異として発見された羽のない鶏とブロイラー種の掛け合わせから産まれた鶏を撮影している。独特なまなざしとバレリーナのような体形を人物写真風に際立たせて収めた映像を前に、「スーパーでパッキングされた鶏肉ではこの状況は見えません。動物を理解した気になっていても、まだまだ現実とは大きな乖離があるのです」と指摘する。さらにペットとして好まれる色や柄に調整されたベンガルトラの写真なども含め、利益優先の人間と動物によるいびつな関係と問題を提示している。また一方では、人の常識や認識と捉え方のずれの面白さを伝える作品も多い。一見すると象の目元に見える写真もあるが、実は豚の耳の裏をクローズアップしたもので、「本来目ではない所にも目があると思い込めてしまう」と、認識による錯覚の容易さを伝えた。さらに、「No.45(パンダの背中)」では、多くの人が実際には見たことがないはずのパンダの背中ですら、想像で補完し理解できてしまうことの不思議さを伝えた。そしてコウモリを撮影した作品について、「こうもりと私たち、どちらが逆さま?」と問いかける。もちろん逆さなのはコウモリだが、それを上下反転させ、直立しているかのように撮影したその姿を違和感なく捉えられてしまう理由を、「目は上、足は下」という造形に対する一般的な認識と、バットマンなどの作品によって擬人化されやすい対象であるがゆえの現象だと解説した。○意識の拡張と作り込みで実現する独特な作風このほか、同氏は撮影時のモットーや撮影環境へのこだわりも披露。「撮影する時は、自らの経験をいかに作品の中で拡張できるかを意識しています。ある一瞬を切り取ったり、本来とは大きく異なるサイズで表現することで、見る人にまったく新しい印象を与えたいと考えています」と説明した。赤と緑の色あいが美しい「アカメアマガエル」の作品だが、撮影時はかなり苦労したそうだ。「レンズに飛びつくのを捕まえては葉に戻し…と繰り返すうちに色が濁ってしまい、箱に入れて休ませていたら動かなくなってしまって。「モデルを殺してしまった!」と慌てましたが、幸いすぐに元気になってこんなにすてきな作品を撮ることができました」とユーモアを交えて紹介。「気むずかしいモデル」とのほほ笑ましいエピソードに会場では笑いが起こっていた。もう一点、撮影環境のこだわりを「スタジオや動物園、屋外など撮影場所がどんな場所でも、スタジオで撮ったかのように見せるのがモットー」と語ったティム氏。確かに、作品を一目見るだけでも独特な光加減や構成のつくり込みによる面白さが伝わってくる。「Equus」では、厩舎の窓を砂漠の絵画に見えるような構図で撮影を行ったほか、馬と山脈というダブルイメージの表現にも着手。建築家ミース・ファン・デル・ローエの言葉「Less is more.」を引用し、写真の空間と要素の引き算の実験についても言及した。最後は「私の作品は単なる擬人化ではありません。人間中心主義における動物の現状を、人間の立場から捉えて表現しています。動物がどんな形にあるべきか、人間が動物をどんな存在として認識していくべきかを問題定義したいと思っています」と作品すべてに通じる主張をあらためて伝え、約40分の講演を締めくくった。開催時は、京都では最新写真集「More Than Human」を中心とした展覧会の真っ最中だったティム氏。それだけに、同写真集への収録作品の解説はもとより、過去作品の紹介、世界観や発想法の解説、撮影秘話と非常に充実したトークショーとなった。
2014年04月28日台湾の人気ユニット・F4のメンバー、ケン・チュウ(朱孝天)が8月19日、東京・ラフォーレミュージアム六本木にて、約2年ぶりに日本でのコンサート(2回公演)を開催した。ケン・チュウのコンサートの写真同公演は、ケン自身が影響を受けた思い入れのある英語曲をカバーするというコンセプト。黒いカーテンとバックバンドのみというシンプルなステージに登場したケンは、にこやかに客席へ手を振ると、美しくのびのある歌声で『オーバー・ザ・レインボー』を歌い上げた。現在、中国で連続ドラマの撮影中であり、体力的には厳しいスケジュールの中でのコンサートとなったが、「僕はすべての困難をとっぱらって、今日を迎えました!」と力強く宣言。続けて、幼い頃にラジオから流れていて印象的だったというロバータ・フラックの『キリング・ミー・ソフトリー』や、15歳の頃に初めてバンドでカバーしたエクストリームの『モア・ザン・ワーズ』、さらに「いつも“本当の私”を支えてくれているみなさんに贈ります」と前置きして、シンディー・ローパーの『トゥルー・カラーズ』などを披露した。大人の色気が漂う甘い歌声に観客もうっとりと聴き入っていたが、トーク・タイムには扇子を取り出してパタパタとあおいだり、ジョーク好きでチャーミングな素顔をのぞかせる一幕も。中盤には、ケンから観客へ直接プレゼントが贈られるというサプライズもあり、場内はさらにヒートアップ。ステージにあげられたファンの中には感激のあまり泣き出してしまう女性もいたが、緊張をほぐすように優しく語りかけ、サインと握手、そしてハグという大サービスで客席に送り戻す紳士的なケンの姿に、会場からは感嘆の声が漏れていた。終盤にかけても、男っぽいロックなアレンジの『ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス』(ザ・ビートルズ)や、しっとり聞かせる『もう話したくない』(クレイジーホース)など印象の異なった楽曲で観客を楽しませ、「(僕にとって)本当に大切な人たちに感謝したい。それは、みなさんです」という言葉とともにラストナンバーの『ザッツ・ホワイ』(マイケル・ラーンズ・トゥ・ロック)を熱唱。さらに、アンコールでは鳴り止まない拍手に応えて、ペリー・コモが歌いヒットした、ドン・マクリーンの『アンド・アイ・ラブ・ユー・ソー』を披露し、「またすぐに会いましょう!」と再び日本でのコンサートを開催することを約束した。なお、ぴあでは、このイベントの様子をフォトカードにするサービス「メモカ」を9月19日(水)まで受付中。詳細は「メモカぴあ」(まで。また、ケン・チュウ主演ドラマ『五月に降る雪』のDVD-BOX1が11月2日(金)に、DVD-BOX2が12月5(水)に発売となる。取材・文:青柳麻理子
2012年08月21日