現在、日生劇場で上演中の三島由紀夫没後50周年企画「MISHIMA2020」。4人の演出家が、それぞれの切り口で三島由紀夫作品を舞台上にアップデートするこのシリーズが、今週末9月26日(土)・27日(日)、いよいよ会期後半戦に突入し、残る2名の演出家が、作品を競う。その2名のうちのひとり、加藤拓也は、三島の短編小説「真夏の死」を舞台版にアダプトする。舞台の作・演出だけでなく、映像作品の監督や脚本提供など、幅広く活躍する気鋭のクリエイターは、なぜ、この作品を選んだのか。答えは明快だった。「三島由紀夫が27歳のときに書いた作品。今の自分と同じ年齢だったからです」。太平洋戦争終戦から7年後の1952年、27歳の三島由紀夫が、その年の終戦記念日に脱稿した心理小説を、平成生まれの26歳が読み解く。海水浴中の事故で、愛児ふたりと子守役の女性の命を奪われた若い夫婦の心理を、ルーペでのぞき、鋭いメスを入れるかのような小説である。不幸のどん底から、次第に平穏な日常を取り戻していく夫婦の虚ろさを冷厳にえぐる、それが、原作「真夏の死」。加藤拓也は、この作品の脚色にあたり、三島由紀夫の重厚華麗な三人称小説の文体を、現代の口語体に変換した。彼が舞台作品を手がけるときには、いつも使っている現代口語のセリフ文体へ。中村ゆりと平原テツが演じる令和の若い夫婦は、自分たちを襲った不幸について、心の内を露わにしながら延々と語り続ける。客席に対峙するふたりの告白を、息を詰めて見届ける舞台と言おうか。「コロナを経験しても、やれることをやろうという、自分の創作のスタンスは変わっていないつもり。ただ、感染拡大とともに、人間の命の価値や死の痛みが、感染者や重傷者や死亡者の数字に置き換わってしまったことへの違和感は、この作品にも共通しています。不幸な海難事故をめぐって、主人公夫婦の悲しみの体験と、彼らを取り巻く周囲の人たちとの関わりの間には、隔たりがある。その無意識な周囲の在り方は、コロナの今にもあるものです」。なお、「真夏の死」は、熊林弘高演出の「班女」とともに2作品続けて上演される。オンライン配信、アーカイブ配信もあるので、そちらもぜひチェックしてみてほしい。取材・文:戸塚成
2020年09月25日三島由紀夫、没後50年。1970年に割腹自殺を遂げた三島の生き方、主張、その存在に対し、4人の演出家がそれぞれの視点で三島作品を日生劇場の舞台に乗せた『MISHIMA2020』開幕した。【チケット情報はこちら】上演は前後半にわかれ、9月21日(月)~22日(火)に上演されたのは、野上絹代作・演出『橋づくし』と長久充作・演出『憂国』(『(死なない)憂国』)。それぞれ作家性が強く出た2作を堪能できる二本立てだ。『橋づくし』は、深夜に願掛けをする4人の女性の物語。7つの橋を渡り終えるまで誰とも話さず誰にも話しかけられなければ願いが叶うという。喋ってはいけないので、うち3名(伊原立花、井桁弘恵、野口かおる)それぞれの心の声は録音映像を用い、それに合わせて舞台上を動き回る。ひとつずつ橋を渡っていくうち「願い事がどんどん大切に思えてきた」「いや、そんなに大事じゃないかも」など心情は揺れ動く。しかし東北から東京へ出てきたばかりの女中のみな(高橋努)だけはなにを考えているのかわからず、不気味さが膨らんでいく。一言も交わさないのに変化する心情と関係性がドラマティックに展開。それぞれの佇まいが個性的な4人を、コミカルな振付と台詞で快快(ファイファイ)の野上が演出。願掛けへの切実さを抱えながらも、軽やかに逞しく表現した。『憂国』(『(死なない)憂国』)はライブハウスで知り合った新婚夫婦、信二(東出昌大)と麗子(菅原小春)の話。2020年、コロナウイルスの影響で危機に瀕したライブハウスに仲間達が立てこもるなか、警察官の信二は誘われず、むしろ逮捕する側として現場に召集される。「三島由紀夫の『憂国』と同じ状況だ」。『憂国』では、主人公は仲間や思想の対立に悩んだ末に、妻と心中する。では2020年を生きる自分はどうする……?泣き言をわめき散らす東出からは、自己憐憫、自己愛など弱さが際立つ。しなやかで生命力ある動きと声の菅原は、もがき生きようとする鬱屈さを感じさせた。映像作家として活躍する長久が、映像と舞台を融合させる。劇場がライブハウスのように感じられることもあれば、閉ざされた2人の心象世界のようでもある。しかし、世の中への直接的な訴えや、切り取られた空間や、2人が持つハンドマイクが、コロナ禍で自身を持て余す滑稽さと、閉塞感を増していた。9月26日(土)~27日(日)にかけては『真夏の死』(『summer remimd』)と『班女』を上演。オンライン配信は、『橋づくし』・『憂国』(『(死なない)憂国』)と『真夏の死』(『summer remimd』)・『班女』を発売中。文・取材/河野桃子
2020年09月23日三島由紀夫が残した4作品を、4人の演出家が舞台化する企画公演『MISHIMA2020』が9月21日(月・祝)に開幕する。戦後の日本文学界に鮮烈な爪痕を残した作家、三島由紀夫。壮絶な最期に多くの人が言葉を失った日から、ちょうど50年の月日が流れる。半世紀を経てもなお、多くの読者を魅了してやまない彼の作品を、大いにフィーチャーした企画公演が行われる。タイトルは『MISHIMA2020』。ここに集結したのは、三島作品に影響や刺激を受けながら創作を重ねる新進気鋭の演出家4名だ。全員が、三島の死後に生まれた世代。現代の感受性で三島作品を読み解き、舞台の上でそれを視覚化させる。日程を前後半に分けて、2作品ずつ上演する今回の試み。前半日程では野上絹代が手掛ける『橋づくし』と、長久允が手掛ける『憂国』を上演。後半日程は加藤拓也が手掛ける『真夏の死』と、熊林弘高が手掛ける『班女』を上演する。野上絹代作・演出『橋づくし』出演左から伊原六花井桁弘恵野口かおる高橋努長久允作・演出『憂国』(『(死なない)憂国』) 出演左から東出昌大菅原小春出演陣も実に個性豊かだ。『橋づくし』では、『ウエスト・サイド・ストーリー』でヒロイン・マリア役に抜擢された伊原六花が悲願の舞台に上がる。『憂国』では東出昌大と、NHK大河ドラマ『いだてん』で圧巻の演技を見せたダンサー・菅原小春が共演。『真夏の死』では数多の映画やドラマできらめく存在感を見せる中村ゆりと、劇団「ハイバイ」での怪演が光る平原テツが相まみえ、そして『班女』では、ありとあらゆる劇世界を軽やかに渡ってきた麻実れいと、ジャンルを超えて確かな実力を発揮する橋本愛、NHK朝の連続テレビ小説『エール』でも誠実な演技を見せた中村蒼が顔を揃える。なお、9月21日(月・祝)と27日(日)、PIA LIVE STREAMでのオンライン配信も決定。クリエイティブディレクターの鈴木健太と、アートディレクター・グラフィックデザイナーの田中せりによる、こだわりの映像に期待が集まる。公演は9月27日(日)まで日生劇場にて。加藤拓也作・演出『真夏の死』(『summer remind 』)出演左から中村ゆり平原テツ熊林弘高作・『班女』近代能楽集より 出演左から麻実れい橋本愛中村蒼三島由紀夫没後50周年企画『MISHIMA2020』・『橋づくし』/『憂国』9月21日(月・祝)17:00・22日(火・祝)12:00、16:00・『真夏の死』/『班女』 近代能楽集より9月26 日(土)18:30・27日(日)12:00、16:00会場:日生劇場ライブ配信日程『橋づくし』/『憂国』:9月21日(月)20:00『真夏の死』/『班女』:9月27日(日)16:00PIA LIVE STREAMにて各公演2日後の23:59までアーカイブ配信あり(視聴券は各公演2日後の20:00まで販売)文:小川志津子
2020年09月20日三島由紀夫没後50周年企画『MISHIMA2020』が9月21日(月・祝)から上演される。4人のクリエイターによるオムニバス形式で上演される本企画で、長久允が作・演出する『憂国』(『(死なない)憂国』)に出演する東出昌大に話を聞いた。【チケット情報はこちら】4つの作品がつくられ、2作品ずつ上演される本企画の中で、東出が出演する『(死なない)憂国』は、三島由紀夫の『憂国』を元に、コロナ禍でライブハウス消滅の危機に瀕する夫婦を描く作品。「原作の『憂国』は二・二六事件にまつわる話で、中尉である信二が、仲間を討伐するくらいならと切腹し、妻・麗子も自決する物語、つまり“死”を終着点にしています。今回の僕らの『(死なない)憂国』は、信二と麗子にとって唯一の生き甲斐であるライブハウスを、信二が警察官として取り締まらなければいけなくなり、(原作のように切腹はせず)ライブハウスに向かいます。だけどやっぱりそれでいいのか悩み、生きるとはなんぞや、死ぬとはなんぞや、というところに進んでいくストーリーです」(東出)と、大胆なアレンジが加えられるようだ。東出といえば大の三島ファンだが、台本はどのように受け止めたのか。「すごい台本だと思いました。ぶっ飛んでるのにまとまっていて。『早く稽古場に入りたい!』って心の底から、震えるほどに思いました」。作・演出は、映画監督、映像作家の長久允。「長久さんは舞台初演出なのですが、“感情”や“生きている”ということを大事に演出される方だという印象です。今は、“気持ちのままにお芝居をする”ということが最上なのではないかという話を菅原(小春)さんと3人でしながら稽古しています」。ふたり芝居で、麗子を演じるのは世界的ダンサーの菅原小春だ。「菅原さんは、舞台で台詞のあるお芝居をするのは初めてらしいのですが、こんなに“自分の言葉”として台詞を喋れる女優さんがいるのかと、目を見張るような思いでいます」と絶賛。「毎日稽古が楽しくて」と笑顔を見せる。東出が「稽古初日から3人で、作品について深く掘り下げる議論を重ねてきました。そこで出てきたものを反映したお芝居もあります。だからリアルで生々しい芝居になると思います。」と語る『(死なない)憂国』と、野上絹代 作・演出の『橋づくし』は9月21・22日に、加藤拓也 作・演出の『真夏の死』(『summer remind』)と、熊林弘高 演出「『班女』近代能楽集より」は9月26・27日に、東京・日生劇場にて上演。9月21・27日に配信もある(アーカイブ配信あり)。チケット発売中。取材・文:中川實穗
2020年09月17日子どもに「早寝早起き朝ごはん」を定着させようといろいろな運動が広がっている現代ですが、多忙な親の生活に合わせ、おのずと就寝が遅くなってしまっている現代っ子はまだまだ多いようです。しかし、早寝早起きが脳の発達にも影響すると聞けば、どうにか早寝をさせたくなるもの。夜遅くまで勉強机に向かっている姿に感心している場合ではないようです。ここでは、早寝のメリットと早寝をさせるためのコツについてまとめてみました。幼児期から遅寝の習慣がついている子も国立精神・神経医療研究センター病院の医師、三島和夫氏によると、現代っ子の4、5人に1人は、睡眠習慣の乱れや睡眠障害など何らかの睡眠問題を抱えていると言います。財団法人日本小児保健協会が実施した調査によると、「夜10時以降に就寝する子ども」の割合は、1歳6ヶ月・2歳・3歳で半数を超えており、子どもの生活時間の夜型化の実態が明らかになってきました。これは10年20年前に比べて、顕著に増加しています。また小・中・高校と学年が進むにつれて就床時刻が遅くなること、睡眠時間が少なくなり「睡眠不足を感じている児童生徒」の割合が増加していることなどが示されています。(引用元:厚生労働省e-ヘルスネット|睡眠不足や睡眠障害、子どもへの大きな影響)また、厚生労働省が行なっている21世紀出生児縦断調査では、4歳6ヶ月時点での最も多い就寝時刻は21時台(50.1%)、次いで22時台(21.9%)であり、21時前に就寝する子どもは5人に1人以下しかいなかったというデータも。これには、親が残業などで帰宅が遅いことも少なからず影響していると思われ、大人側のライフスタイルのほうを問題視する見方もあるようです。また、小・中学生となると、テレビ・ゲーム・勉強などに遅寝の原因を探しがちですが、「なんとなく夜更かししてしまう」子どもが最も多いことがわかっていると三島氏は言います。だからこそ、夜更かしは改善の余地があると言えるでしょう。遅寝・夜更かしが生む悪循環毎朝学校に行く時間は決まっているわけですから、遅寝をすれば寝不足になるのは当たり前。寝不足になると気分が悪く集中力がなくなります。それでも大人であれば、多少の寝不足状態でも理性が働き、ある程度抑えて取りなすことができますよね。しかし、未成熟な子どもは眠気をうまく意識することができず、そのせいで、イライラする、友だちと仲良くできない、多動・衝動行為などの心の問題が表面化してしまうことも少なくないのです。そして、睡眠時間の不足は、学力や記憶力にも悪影響を与えるようです。記憶のコントロールや、考えたり、学んだりと、脳の中でも、とても大切な働きをする「海馬」の体積が、睡眠時間によって変わってくる、ということが明らかになってきました。具体的には、8,9時間寝ている子どもたちは、5,6時間しか寝ていない子どもたちに比べて、海馬の体積が大きく、海馬による働きの能力が高いということがわかったのです。睡眠時間に関しては、寝る時間の遅い子どもや、睡眠時間の少ない子どもは、学校の成績がよくない、あるいは、記憶力があまりよくない、ということも、世界中から報告されています。(引用元:瀧靖之 (2019年),『最新の脳医学でわかった!こんなカンタンなことで子どもの可能性はぐんぐん伸びる!』, ソレイユ出版.)それに加えて、睡眠不足は成長の遅れや食欲不振・注意や集中力の低下なども引き起こします。また、将来の肥満の危険因子になることも示されているとあれば、睡眠時間を削ることは百害あって一利なし。では、早寝の習慣をつけさせるには、どのような工夫が必要なのでしょうか。まずは「早起き」から始めよう眠くないと言っている子どもを無理に寝かすのは難しく、親も子どももプレッシャーとなってストレスを抱えてしまっては本末転倒。まずは、起きる時間のほうを少しずつ早めるのが効率的のようです。「早寝・早起き」ではなく「早起き・早寝」から始めましょう。まず1週間、頑張って早起きをさせましょう。そして歯磨きでもしながらベランダに出て日光を浴びる。それが無理なら窓辺で顔を戸外に向けるのでも結構です(室内方向を見てしまうと体内時計の時刻合わせには不十分です)。1~2週間ほども続けると子どもたちの体内時計は徐々に朝型に変わり、早起きの辛さは減ってきます。早起きさせた分の睡眠時間は早寝になった分で取り返せるでしょう。早起きから始めることで、太陽と朝食を効果的に使って体内時計の時刻合わせを行うわけです。(引用元:厚生労働省e-ヘルスネット|子どもの睡眠)ただし、起きる時間をいきなり1時間単位で早めてしまうとお子さまの心身の負担も大きくなるので、15~30分単位で段階的に早めてあげましょう。早く起きたぶん、その夜は早く眠くなるはず。この好循環から規則的な生活につなげていければベストです。早寝を定着させるためにできること早起きするという取り組みとあわせて、早寝に向けてできることもたくさんあります。実践できれば気持ちよく早寝早起きができるようになるはず。明治薬科大学で心理学の教鞭をとる駒田陽子准教授によるお話を中心に、早寝のコツをまとめてみました。■日没後は白熱灯色の照明の部屋で過ごし、寝る前のスマートフォンやゲームも避けるスマートフォンやゲーム、パソコンなどから出るブルーライトを寝る前に見るのがよくないことは、広く知られています。それは、眠りを促すための「メラトニン」というホルモンの分泌を妨げ、体内時計を狂わせることにつながり、寝つきに影響が出てしまうため。また、子どもの目の水晶体は大人より澄んでいるため透過性が高く、光の影響をより強く受けてしまうことから、寝る直前に蛍光灯や明るい白色LEDの下で過ごしてしまうと体内時計が夜型化しがちになります。家では、日没後はできるだけオレンジ色がかった白熱灯色の光の間接照明やダウンライトなどを利用するのがおすすめです。■お風呂を夕食の前にしてみるヒトの1日の体温のリズムとしては、夕方に体温が高く、だんだん下がってくると眠くなってきます。そんなとき、熱いお風呂に入ると、下がりかけた体温がまた上がって眠りにくくなることも。寝つきが悪い場合は、夕食とお風呂の順番を逆にしてみるとうまくいくこともあります。寝る前のお風呂は、お湯の温度はぬるめにしましょう。■親も一緒に早寝をする夕食後は親と子どもが一緒に居間でテレビを見て過ごすことも多いかと思いますが、親が寝ないでテレビを楽しんでいれば、子どもも「まだまだ寝たくない」となるのは当然です。また、寝かしつけをしようとして親も一緒に寝てしまって、慌てて起き出して深夜に残りの家事を片付ける……ということもあるかと思いますが、ばらばらに分断された睡眠はかえってつらいもの。思い切って子どもと一緒に早く寝て、がんばって朝早く起きたほうが、まとまった睡眠時間が確保できてよいでしょう。■週末や長期休み期間中も夜更かししない週末や長期休暇中ならいいだろうと、夜更かしをしたり朝になってもダラダラと寝ていたりすると、時差ボケと同じような状態になってしまいます。体内リズムの乱れは翌週の前半まで続き、日中のパフォーマンスを低下させてしまいます。また、子どもの学習に影響が及ぶことも。休日だからと言って遅くまで寝ているのではなく、平日朝と同様の時間に起きて活動を始めるように心がけましょう。ただし、人は1時間程度であればその日のうちに体内時計の誤差を修正できると考えられているので、どうしても……というときは、1時間以内の寝坊に留めておけるといいですね。また、何かのきっかけで学校を休みがちになった場合でも、朝起きて、夜寝るというリズムを大切にするべきと言うのは、江戸川大学社会学部人間心理学科教授で同大学睡眠研究所所長の福田一彦氏。学校に行かないとなると、夜遅く寝て朝遅く起きるという生活になりがちですが、そうした生活が続くと、だるさが強くなり無気力になっていき、ますます学校に行けなくなってしまうそう。学校に行く日も行かない日も、生活リズムをなるべく変えないように気をつけましょう。****子どもの睡眠習慣は、大人のライフスタイルを映す鏡とも言われます。予定のない日も平日と同じ生活リズムで過ごしたり、早寝早起きのお手本を見せたりするなど、大人が率先して習慣作りをすることが一番の成功のコツ。家族みんなで意識を高めていけるといいですね。文/酒井絢子(参考)StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「昼寝のせいで夜なかなか寝ない」問題の解消法。朝のグズグズ防止にも効果大!StudyHackerこどもまなび☆ラボ|“世界一寝不足” な日本の子ども。「11時間37分」が示す、眠りにまつわる切実な問題StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「起きる時間」を意識させるだけ!子どもの早起きを楽にするちょっとしたコツベネッセ 教育情報サイト|子どもに早寝早起きの習慣を定着させるコツベネッセ 教育情報サイト|親と子、両者のために!早寝早起きのススメ【後編】規則正しい生活のポイント厚生労働省e-ヘルスネット|子どもの睡眠厚生労働省e-ヘルスネット|睡眠不足や睡眠障害、子どもへの大きな影響東京都生涯学習情報|早起き・早寝が大切なわけ東京都生涯学習情報|子どもの生活リズム改善作戦瀧靖之 (2019),『最新の脳医学でわかった!こんなカンタンなことで子どもの可能性はぐんぐん伸びる!』, ソレイユ出版.
2020年02月08日さまざまな角度から現代に生きる人々の姿を時に温かく、時々ヒリヒリと描き出す三島監督。最新作は、島本理生の同名小説を映像化した『Red』。主人公・村主塔子は商社勤務の夫・真と幼い娘の翠、真の両親と共に瀟洒な家で不自由なく、しかし夫や姑に気を遣いながら暮らしている。そんな折、かつての恋人・鞍田秋彦と再会。鞍田の勤務する会社に職を得た塔子は、働く喜びに目覚めると同時に、鞍田への思いを再燃させる。だが、鞍田にはある秘密があって…。現代女性の悩みを盛り込みつつ、一人の女性が自分の意思で人生を選択していく姿を描く。心から愛せるものを見つけた時、人は何を捨て、何を選ぶのか。日頃から社会の雰囲気やニュースを見るなか、ひとつ感じていたのが、自分の中に尺度を持てない人が増えていること。自分がどう感じたか、考えるより先にネットで世間の意見を調べて、それから自分はどうかを考える、というのが一般的になっている気がしていました。それとは別に、いつかロマンスを中心に据えた映画を撮らないといけないと感じていたんです。恋愛は、相手を知ると同時に、自分を知る作業にもなる究極のコミュニケーションだから。その話をしたプロデューサーの荒川優美さんから、島本理生さんの小説『Red』を教えてもらい、読んでこれはイプセンの『人形の家』の現代版だと思いました。周囲に合わせていた一人の女性が、自分の中に尺度を持ち始める物語で、日頃から自分が考えていたこととリンクしました。夏帆さんは前にご一緒してお芝居の力は知っていましたし、もっといろんな彼女を見せたかった。鞍田役は、人の人生を変えるほどの男ということで、妻夫木(聡)さんの演技力が必要だと思いました。私の場合、恋人を演じる二人には撮影前に時間を作ります。撮影前に、手を握ったりハグをしてもらったりもしますね。身体的接触があると距離感が全然違うんです。今回は妻夫木さんのアイデアで一緒に料理を作ったりしながら二人で過ごしてもらいました。塔子の母親の「どれだけ惚れて死んでいけるかじゃないの」という台詞は、私が先輩に言われた言葉です。心から愛せる人や仕事に出会った時に、何をどう選択するかは私も大事にしたいと思っています。昔なら人生ゲームのゴールは大金持ちになるとか結婚するなど分かりやすかった。でも今は、何をゴールにするか自分で決めるしかない。ロマンスも人生のすべてではなく、重要なひとつ。恋愛映画も、これまではお互いがお互いを見つめているものが多かったけれど、これからは、その先の「お互いが一緒に何を見たいのか」にスライドしていくんじゃないか。それを意識して作りました。名作映画が多くあるなかで、自分が撮る意味はあるのかと考えると、この時代に生きていることが一番の強みかなと思います。今の人が感じていることを、作品の形にして発信していきたいですね。恋愛にはその人の生き方が透けてくる。撮影は大雪の新潟の場面からスタートしたという。悪天候のために出張先から帰れなくなった塔子。そのことを電話で伝えた時、怒った真の口から飛び出した言葉とは…。原作では鞍田はIT企業勤務だが、映画では建築家に変更。10年前、彼の建築設計事務所でアルバイトしていた頃に塔子が描いた家のデザインが、物語の大切な要素に。間宮祥太朗さん演じる塔子の夫・真は裕福な家庭に育ち、一流商社に勤めるハイスペック男。性格が悪いわけではないけれど、妻に対しては無神経な言動も少なくない。©2020「Red」製作委員会三島有紀子監督1969年生まれ、大阪府出身。NHKでドキュメンタリー作品を企画・監督していたが、劇映画を撮るために退局。再婚者同士の家庭の苦悩を描く『幼な子われらに生まれ』で第41回モントリオール世界映画祭審査員特別大賞、第42回報知映画賞監督賞、第41回山路ふみ子映画賞を受賞。他の作品に、オリジナル脚本の『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』や、『繕い裁つ人』『少女』『ビブリア古書堂の事件手帖』など。今作『Red』は2月21日より公開。※『anan』2020年1月15日号より。写真・野呂知功(TRIVAL)ヘア&メイク・市橋由莉香インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2020年01月14日伊豆と箱根の中間に位置する、日本最長400mの人道吊橋「三島スカイウォーク」では、2019年6月8日(土)から7月28日(日)までの期間で「あじさい祭」を開催する。6月中旬から、170品種1万株のアジサイが見頃を迎える「三島スカイウォーク」。期間中は、2018年に三島スカイウォークオリジナル品種として植えられた「覇王」や「スカイウォーク」をはじめとする様々な品種のアジサイが楽しめる。また、「三島スカイウォーク」内にある飲食店舗では、アジサイをテーマにした期間限定の和菓子やスイーツを販売。スカイウォーク自慢のソフトクリームに薄紫色の寒天とブルーベリーソースをトッピングした「あじさいサンデー」や、アジサイに見立てた紫色のパンケーキと、ゼリーを入れることで色が変わるマロウブルーがセットになった「あじさいのパンケーキとマロウブルー」など、様々な“アジサイスイーツ”が味わえる。さらに、7月13日(土)と14日(日)には夜間特別営業を実施。竹灯籠の灯りがアジサイを優しく照らす幻想的な景色を、この機会にぜひ楽しんでみてはいかがだろう。【開催概要】「あじさい祭」開催期間:2019年6月8日(土)〜7月28日(日)※、7月13日(土)と14日(日)は夜間特別営業を実施。場所:三島スカイウォーク(静岡県三島市笹原新田313)施設入場料:大人 1,000円、中高生 500円、小学生 200円営業時間:9:00〜17:00※イベントや天候により変更する場合あり。休業日:年中無休【問い合わせ先】三島スカイウォークTEL:055-972-0084
2019年05月20日三島由紀夫の小説を原作にした2018 PARCO PRODUCE 三島×MISHIMA 『命売ります』が東京・サンシャイン劇場にて12月9日(日)まで上演中だ。【チケット情報はこちら】開幕を迎え脚本・演出を手掛けるノゾエ征爾は「三島由紀夫の驚きのパンクな小説。を演劇化したらこんな風になったと、別に奇をてらったようなことは何もしていませんが、ともかく面白な原作に面白な役者が乗っかったらこんなんになりました」、主演の東啓介は「三島由紀夫でありながらノゾエさんの脚本・演出で、とてもエンターテイメントな作品に仕上がっていると思います。山田羽仁男という人物が愛されるよう、僕はひたむきに演じていきます。キャスト、スタッフ全員で作り上げてきましたので、是非劇場でご覧ください!」、上村海成は「『半分、青い。』等、最近やらせていただいた役とかなり違うタイプの役柄で、しかも初のストレートプレイなのでとてもドキドキしていますが精一杯演じます!お客様に観ていただくのがとても楽しみです!」とそれぞれコメントを寄せた。ある日ふと「死のう」と思い立ち「命売ります」という新聞広告を出した羽仁男(はにお)のもとに、訳ありの人々が次々と訪れる物語。原作が「週刊プレイボーイ」に連載されたエンターテインメント小説ということもあってか、羽仁男を取り巻く人物たちはキャラが濃く、それを上村や馬渕英里何、莉奈、樹里咲穂、家納ジュンコ、市川しんぺー、平田敦子、川上友里、町田水城、ノゾエ、不破万作、温水洋一という個性的なキャスト達がより一層ポップに立ち上げる。そんな彼らに命を買われる羽仁男は、若く、“いい生活”をしている、いわゆるエリート。演じる東の抜群のルックスも相まって、登場人物がずらりと並ぶオープニングでも一人浮き上がって見え、そんな彼こそが自分の命を売っているのだという異常さが引き立つ。何度命を買われても生き残ってしまう羽仁男。生きたくないから命を売っているのに、その出会いや体験が彼を変えていくのを観ていると、なんとも言えない気持ちになる。オムニバスのように進んでいく物語は一つひとつが一癖ある展開なのだが、劇中でふと歌われる歌の歌詞がそれとは真逆のストレートさで、目の前の出来事の別の面を見せる。ポップで笑えて楽しい舞台だが、命とは、生きることとはなんだろうかということを考えずにはいられない、ちょっと不思議な感覚が味わえる作品だ。公演は、12月9日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて、12月22日(土)に大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。取材・文:中川 實穗
2018年11月27日2018 PARCO PRODUCE “三島×MISHIMA”シリーズの第二弾『命売ります』が11月24日に開幕。原作は三島由紀夫が1968年に「週刊プレイボーイ」に連載したエンターテイメント小説で、ある日ふと「死のう」と思い立った27歳の羽仁男(はにお)が新聞に「命売ります」という広告を出す。すると訳ありげな人間たちが次々現れ――という物語。脚本・演出はノゾエ征爾。その通し稽古に潜入した。【チケット情報はこちら】東啓介が演じる主人公・羽仁男と関わる人々は、上村海成が演じる吸血鬼の母親のために羽仁男の命を買う高校生・薫や、馬渕英里何が演じる間貸しする女・玲子、莉奈が演じる謎の老人の妻・るり子、樹里咲穂が演じる吸血鬼の女、家納ジュンコが演じる図書の貸出係の女など、役柄を並べるだけでも面白そうな本作。さらに、最初に羽仁男に接触する謎の老人を温水洋一、るり子を愛人にしている男を不破万作が演じるほか、市川しんぺー、平田敦子、川上友里、町田水城、ノゾエがさまざまな役柄で登場する。組まれたセットは上下2段で等間隔に並んだ扉と、同じく床に等間隔に並んだ長方形の台で、スーパーマーケットの売り場のようにも見える。オープニングではそこにキャストたちが等間隔に並び、オリジナルの曲を全員で歌った。「妻といい仲になって、嫉妬した愛人から殺されてほしい」など、依頼内容はどれも個性的。羽仁男は毎回命を懸けて遂行するもなぜか生き残ってしまうため、オムニバスのように次々と出来事が描かれていく。命を買いに来る人たちはユーモラスでありながら切実で、依頼のひとつひとつに人間の欲望や業がカラフルに詰まっている。そして個性的なキャストたちの芝居により、そこに人間の持つおかしさや愛おしさ、そして残酷さが感じられた。そのなかで東は、死が迫り妙に生き生きしたり、死にたいのに死ねず苛立ったり、出会いと別れを繰り返すうちにある変化が訪れたりと、あらゆる依頼を渡り歩く姿が危うくセクシーだ。エンタテインメント小説と呼ばれる原作とノゾエによる演出の掛け算で、物語はポップに進んでいく。だからこそ浮き上がってくる三島由紀夫の死生観は、芝居に笑わされながらも心にグイグイと迫ってくるため、観終わった後には何とも言い難い気持ちになった。ぜひ劇場で味わってほしい。公演は12月9日(日)まで東京・サンシャイン劇場、12月22日(土)に大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。取材・文:中川 實穗
2018年11月26日東出昌大の3年ぶり2度目の主演舞台となる『豊饒の海』が11月7日より東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて開幕した。本作は、三島由紀夫が自決する直前まで書いていた全四部からなる長編小説を、てがみ座・長田育恵が一つの演劇作品として練り直したもの。演出は、ロンドンで活躍するマックス・ウェブスターが担い、三島作品への新たな挑戦として、注目を集めている。ここでは、7日に行われた同劇場にて初日前会見と芝居の一部を披露する公開フォトコールについてレポートする。【チケット情報はこちら】元々、三島由紀夫の作品を愛読していたという東出は、今回は三島作品の「美」の象徴とも言うべき主人公・松枝清顕役に挑戦。公演に向けての意気込みを問われると、「三島作品というものを全く汚すことなく舞台上に表出させることができるという確信がある」と自信を覗かせた。東出演じる清顕の生まれ変わりである飯沼勲役を演じる宮沢氷魚は、「豊饒の海を全て舞台化するという無謀な挑戦ではあったが、稽古を通して素晴らしい作品になり、皆さんにお届けできるのがすごく楽しみになっていたので、初日を迎えられて嬉しい」とし、同じく生まれ変わりの安永透役を演じる上杉柊平は、「この作品は、僕にとっても、観に来られる皆さんにとっても、人生に持って帰っていただけるものと自信を持って言える」と各々作品の仕上がりについてアピールした。また、次々と生まれ変わる清顕の人生を見届ける本多繁邦を、青年期・中年期・老齢期に分けて3人の俳優が演じるのも本作の試みのひとつ。青年期を演ずる大鶴佐助が「興奮と恐怖が入り混じった気分であるが、言葉と頼もしい共演者を信じて、瞬間瞬間を楽しんでいきたい」と語ると、中年期を担う首藤康之も、「ひとつひとつの美しい言葉を、丁寧に喜びを持って発していきたい」と語った。老齢期の本多は、生前の三島と親交があり、実際に三島手ずから演出指導を受けたことがある笈田ヨシが演じる。「三島先生に最後にお会いしたときに、いろいろと先生のご決意などを伺い、それ以来早48年間の年月が流れ、先生の祥月命日である11月にこの芝居をやらせていただくのは、感無量である」と感慨にふけった。マックスの手により、四部作を通して三島が描いた人間の生きていく姿、その崇高さ、美しさが表現されているという本作。東京公演は12月2日(日)まで上演。その後12月8日(土)・9日(日)と大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演予定。チケット好評発売中。
2018年11月14日三島由紀夫がその思想と死生観のすべてを注ぎ込んだ長編小説であり、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺をする直前に、最終巻の原稿を渡したことでも知られる『豊饒の海』。この小説は『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の全4巻から成るが、根底に一貫して流れているテーマは“輪廻”だ。今回の公演では、文学作品の核心をすくいとり、舞台化する手腕に定評のある長田育恵が翻案と脚本を担当。さらに、昨年オールドヴィックシアター(ロンドン)のアソシエイトディレクターに就任したばかりの新鋭、マックス・ウェブスターが演出を手掛ける。長編小説をひとつの舞台作品として再構築するなか、三島の美しく深遠な世界観が、どのように立ち現われているのかに注目だ。いよいよ本日11月7日(水)に初日を迎えた本作で、華族の家に生まれ、幼馴染みの令嬢・聡子を愛しながらも、二十歳で世を去る松枝清顕を演じるのは東出昌大。物語が進むにつれ、清顕が転生する(と思われる)人物は別の役者が演じるが、もちろん東出の登場は序盤だけではないだろう。どういう形で舞台上に存在するのかも見どころだ。清顕の親友で、生涯を通して彼の転生に触れてゆく本多繁邦には、大鶴佐助(青年時代)と首藤康之(中年時代)、そして笈田ヨシ(老齢時代)と魅力的な配役が叶った。他にも、宮沢氷魚、上杉柊平、神野三鈴、初音映莉子ら盤石の役者たちがそろい、舞台を引き締める。本作のポスターには、海でたたずむ東出の写真と共に、「又、会ふぜ。きつと会ふ。」の文字が。その清顕の言葉がどんな意味を持つのか、ぜひ客席から見届けたい。12月2日まで紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAまで上演され、12月8日(土)・9日(日) には森ノ宮ピロティホールにて公演を行う。文: 佐藤さくら
2018年11月07日『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の4冊からなる、三島由紀夫の長編小説『豊饒の海』。その舞台化が、てがみ座の長田育恵の脚本、ロンドンを拠点に活躍するマックス・ウェブスターの演出により実現する。そこで美しき夭逝の青年・松枝清顕を東出昌大が、清顕の魂を受け継ぐ若者・飯沼勲を宮沢氷魚が演じる。【チケット情報はこちら】三島作品を愛読するという、三島ファンである東出は『豊饒の海』というタイトルを聞いた時、「その壮大なスケールに戸惑い、恐れのようなものを感じました」と明かす。また宮沢も「4作全部ということで、これをどう舞台化するのか。その疑問はなかなか拭えませんでした」と続ける。だが今ふたりは、不安よりも楽しみの方が大きいのだと言う。その理由が……。ひとつは演出のウェブスターの存在。本稽古前にワークショップを行った際、彼がこう切り出したそう。「僕はみんなよりもちょっと有利な部分がある」と。その時のことを東出は「日本人は“三島”というのを神格化している部分があるけれども、彼はそれを知らずに原作を読み、舞台化出来ると思ったそうなんです。さらに“やることは人間のドラマを描くことだ”と。まさしくそうだと思いますし、血の通った人間のドラマとして描くことで、より生き生きとした『豊饒の海』が出来るのではと思います」と期待する。さらにもうひとつの理由が、大胆に翻案した長田の脚本だ。「長田さんが本当に上手に、4作の素晴らしいところを汲み取ってひとつの作品にしてくださいました。まるで新しい作品にも思えるほどです」と宮沢。さらに東出も「原作は三島の遺作であり最高傑作なので、文学的な表現がブイブイ」と笑い、「ただ今回は舞台だけで絶対に伝わると思いますし、初見の方でも安心して観ていただけると思います」と太鼓判を押す。それぞれ演じる清顕、勲という人物をどう捉えているのか問うと、東出は「4作全部読んでもわからない。それが正直なところです。でもそのわからないってところが、多分に魅力的に映る人物なのだと思います」と、謎めいた清顕像を三島ファンらしく紐解く。また宮沢は、「勲は覚悟がはっきりしていて、ピュアで、正義感に溢れた人物。そういった部分は大事にしていきたいですし、青年から大人になっていく、その変化もうまく表現していけたらなと思います」と難役への意欲を見せた。彼らの肉体を通し、三島の魂がどう体現されるのか。11月の開幕が待ち遠しい。公演は11月3日(土・祝)から12月2日(日)まで、東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA、12月8日(土)・9日(日)大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。取材・文:野上瑠美子ヘアメイク(東出):廣瀬瑠美ヘアメイク(宮沢): 川端富生スタイリスト:林 道雄
2018年09月27日俳優・東出昌大が、11月より上演される三島由紀夫原作舞台「豊饒の海」で主演を務めることが決定。若手からベテランまで、東出さんとMISHIMAの世界を共に創りあげる共演者も発表された。本舞台は2018PARCO PRODUCE “三島×MISHIMA”シリーズの第1弾で、この秋、三島氏の絶筆の書である「豊饒の海」と、エンターテインメント性にあふれた「命売ります」の2作品の舞台化に挑む。第1弾を飾る「豊饒の海」は、第一部「春の雪」、第二部「奔馬」、第三部「暁の寺」、第四部「天人五衰」の全四作からなる長編小説だが、今回舞台では、全四作を一つの舞台作品として創作するという、前代未聞の意欲作。てがみ座主宰の長田育恵が脚本を手掛け、ロンドンのオールドヴィック・シアターのアソシエイト・ディレクターで、ロンドンのネクストジェネレーションのトップを走るマックス・ウェブスターが「メアリー・ステュアート」以来、3年ぶりに日本で演出。三島由紀夫文学作品を大胆翻案する。主演を務めるのは、現在主演映画『OVER DRIVE』が公開中、今後も『パンク侍、斬られて候』『菊とギロチン』『寝ても覚めても』など出演作の公開が続々と控えている人気俳優の東出昌大。三島由紀夫の「美」の象徴とも言うべき松枝清顕役という大役に挑む。今回、初舞台となった2015年上演の「夜想曲集」以来、3年ぶり2度目の舞台出演となる東出さんは、「思春期より三島由紀夫の虜になり、その作品の多くを読んできた私は、『豊饒の海』の舞台化を聞き震えました。役者になって最大の試練になると思います」と心境を明かし、「持てる全てを注ぎ込みます。三島世界の再現を、楽しみに待っていて下さい」と力強いメッセージを寄せている。また、清顕の影を追い続ける男・本多繁邦を、本作では青年時代、中年時代、老齢時代と3人の俳優が演じる。まず老齢の本多は、ベテラン俳優の笈田ヨシ。中年時代の本多は、バレエダンサーの首藤康之。そして若年時代の本多は、芥川賞受賞作家・唐十郎を父に持つ若手俳優の大鶴佐助がキャスティング。3つの黒子を持つ清顕の生まれ変わりとして登場するのは、ドラマ「コウノドリ」へに出演が話題となり、今年7月マームとジプシーの新作「BOAT」で初主演&初舞台を踏む宮沢氷魚、『一週間フレンズ。』『リバーズ・エッジ』などに出演する上杉柊平ら若手俳優が抜擢。さらに、神野三鈴、初音映莉子と実力派女優も参加する。第一部から第四部、それぞれが小説として完結しているが、この四作を通して通奏低音のごとく響くのは、「輪廻」という言葉。第一部「春の雪」で、「又、会ふぜ。きつと会ふ。滝の下で」ということばを残し、20歳で生命を落とした男・松枝清顕。彼の影に取り憑かれた男・本多繁邦。本多の人生に松枝清顕の生まれ変わりとして登場する3つの黒子の人々。四作を通して、夢と転生を描く壮大な物語だが、「清顕」を追い求めた本多にとって、彼の存在はなにを象徴していたのか、そしてなぜそこまで清顕に執着したのか――。60年後、晩年の本多は清顕との恋が成就せず、仏門に身をおいた聡子を訪るが、聡子は「清顕など知らない」と言う。全てが夢だったのか?自分のこれまでの清顕への執着は何だったのか?というのが「豊饒の海」の結末。本舞台では、清顕という美に憧れ続け、取り残されてしまった人間、本多繁邦を軸に、三島氏が最後に描いたこの「豊饒の海」という世界を、いまを生きている我々の人生という「普遍」の世界に投じていくという。2018 PARCO PRODUCE “三島 × MISHIMA”「豊饒の海」プレビュー公演は11月3日(土)~5日(月)、本公演は7日(水)~12月2日(日)紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演。12月8日(土)~9日(日)森ノ宮ピロティホールにて上演。(cinemacafe.net)
2018年06月27日日本一長い歩行者専用吊橋「三島スカイウォーク」に、新しく自然共生型アウトドアパーク「フォレストアドベンチャー・三島スカイウォーク」が2018年7月26日(木)にオープン。 「フォレストアドベンチャー・三島スカイウォーク」は、全長400m、日本一の吊橋「三島スカイウォーク」ならではの絶景体験を楽しめる施設だ。フランスを発祥とするフォレストアドベンチャーの“自然を活かした、樹上のアウトドアパーク”という理念に基づいた、33のアクティビティを設ける。北エリアの森林で繰り広げられるアドベンチャーコースには、自然の立木の地上2~15mの高さに設置されたプラットフォームから、別の木に移動する樹上体験を用意。長さ300mのロングジップスライドで、一気に地上へ滑り降りるスリルと爽快感が味わえる。このロングジップスライドは、2本のラインで設置されており、カップルやペアの2人1組で同時に滑走が可能。往路では日本一長い吊橋を潜り抜けて着地し、復路は富士山と三島スカイウォークに向かって滑り抜ける“絶景”ジップスライドを堪能できる。その他、森の中で約10メートルのクライミングを満喫できる「クリフチャレンジャー」などが登場し、森の中をセグウェイで駆け抜ける「セグウェイツアー」の全コースも完成。また、新築の受付棟ログハウス「ツリーツリーツリー(tree tree tree)」には、ピクニック気分が味わえるカフェ「Picnic Café」がオープンし、地元食材を使ったホットドッグやサンドイッチ、ドリンク、スイーツなどを提供する。さらに、資料館「スカイウォークミュージアム」やギフトショップを展開する。【詳細】フォレストアドベンチャー・三島スカイウォーク開業日:2018年7月26日(木)営業時間:9:00~17:00(最終受付15:00) ※荒天中止住所:静岡県三島市笹原新田313(三島スカイウォーク内) 三島スカイウォーク 北エリア料金:・アドベンチャーコース+ロングジップスライド 通常料金 3,600円/人・ロングジップスライド 通常料金 1,800円/人・クリフチャレンジャー 1,000円/10分※吊橋入場料別途。利用条件:身長140cmまたは小学4年生以上、体重130kg以下。※18歳未満は、保護者または同等の資格者の同伴が必要。■セグウェイツアー場所:三島スカイウォーク北エリア(吊橋を渡った先)コース長さ:約2.5km(所要時間約60分)料金:4,500円(吊橋料金別・16歳~70歳位までを推奨)※未成年は、 保護者の方の同意が必要。
2018年04月14日20代で箱根駅伝のおもしろさに目覚め、それから地元茅ヶ崎の沿道で応援を続けること、なんと50年以上。芸能界きっての駅伝ファンである徳光和夫さんに、箱根駅伝だけが持つ魅力をたっぷりと伺いました。お正月という絶好の放送タイミングで、ひとつのテレビを皆が囲める。その昔テレビといえば、家族揃って見るのがおなじみでした。「最近は、お一人でスマホを片手に“ながら見”される方が多いですよね。そんな中いまだに家族みんなで見る人が多いのは、箱根と紅白くらいなものでしょう。それは年末年始は家に人がいる時期だということもありますし、1月2日と3日という日程もいい。1日は、初日の出を見て二度寝しちゃったり、お年賀に出かけたり…と、なかなかゆっくりできないものですが、2日3日は意外と予定も入らず、落ち着く人も多いでしょう。そんな状況に箱根駅伝というコンテンツがぴったりなんです。箱根の高い視聴率は単に“ちら見”の数字ではなく、みんながガッツリ見たうえでの数字だと思います」日本人の心を打つ、チーム全員でつなぐ襷の重み。「日本人は、“絆”とか、“襷”といった言葉が好きですよね。もちろん私もそうなんですが。駅伝とはその最たるもので、江戸時代、東海道五十三次に駅を設け、そこに置いてある馬をつないで西を目指したことを“駅伝”と言ったわけですが、その頃から日本人には、“つなぐ”精神があったんでしょう。なので、箱根の“襷をつなぐ”というスタイルが響くのでは。またもう一つ、箱根駅伝には“チームワーク”という見どころもあります。仲間が支え合いゴールを目指すというその姿は、とても美しい。でも逆に、制限時間に間に合わず、ギリギリのタイミングで襷がつながらないシーンもある。その悲劇のドラマティックさも私たちの胸を打つんです」沿道の景色よりも美しい、箱根路にかける選手たちの思い。「個人的には、箱根駅伝は世界で一番風光明媚な陸上競技だと思っています。春陽を受けて光る海の水面、天気が良ければ往路は富士山に向かって走り、復路は富士山を背に江の島に向かって疾走する。でっかい風呂屋にいるみたいなんだよ(笑)。でもそれ以上に心を打つのが、そこを走る彼らの、箱根に至るまでの紆余曲折の物語なんですよ。箱根を走る大学に入れず、陸上を諦めた仲間がいるかもしれないし、箱根の後に実業団に行けるかどうかの瀬戸際の選手もいるかもしれない。走る後ろ姿に、そういう様々な思いやドラマ、そしてロマンを感じるんです。長距離をやる学生にとっては、ある意味、オリンピック以上の価値があるのが、箱根駅伝なんですよ」とくみつ・かずお1941年生まれ、東京都出身。’63年に日本テレビに入社後、退社してフリーとなった今に至るまで、アナウンサーとして数々の人気番組やスポーツ中継を担当。駅伝好きで知られ、中継に映り込む応援の姿を楽しみにするファンも多い。※『anan』2017年11月1日号より。写真・中島慶子スタイリスト・壽村太一イラスト・深川 優(by anan編集部)
2017年10月30日チューリップのリーダーでボーカルの財津和夫(69)が2日、公式サイトを通じて大腸がんであることを公表した。45周年メモリアルツアーのうち6月、7月の4公演を中止し、今後は治療に専念する。 公式サイトによると、5月下旬に腸閉塞の治療のために受けた精密検査で、大腸がんが発覚したという。 財津は、「しばらくの間ステージ活動を休ませて頂き、治療に専念させていただくことをお許しください」と謝罪するとともに「チューリップ45周年ツアーもラストスパートに差し掛かっていただけに心残りです。完走できなかった今回のツアーですが、来年にはチューリップの一員として新たなコンサートツアーを開始するつもりです。皆様とお会いできることを楽しみにしています」と復活を誓った。
2017年06月02日新国立劇場が30代の演出家を迎えて送るシリーズ「かさなる視点―日本の戯曲の力―」。第1弾は、近年高い評価を得てきた演出家・谷賢一が三島由紀夫の長編戯曲『白蟻の巣』に挑む。2月中旬に行われた通し稽古に足を運んだ。【チケット情報はこちら】三島がブラジルを訪れた経験を基に執筆し、昭和30年に刊行された本作。日本で名家に生まれるも没落し、ブラジルのコーヒー農園の経営者に収まった刈屋義郎(平田満)と妙子(安蘭けい)の夫婦、住み込み運転手で過去に妙子と心中未遂事件を起こした百島(石田佳央)とその事件を知りつつも彼と結婚した若き妻・啓子(村川絵梨)、農園の経営を任されている大杉(半海一晃)、女中・きぬ(熊坂理恵子)の6人が表面上は穏やかに暮らす邸宅。啓子のある“企み”に刈屋が乗ったことから、少しずつ屋敷を覆う空気、彼らの関係性が変化してゆく。谷はこの戯曲を選んだ理由として「感情の火柱が非常に太く、それがぶつかり合い、火花を散らしている」とその魅力を語ったが、登場人物たちの会話には表面上、奇妙な静けさが漂っている。この空気を担っているのが、平田演じる“旦那様”刈屋と安蘭が演じる妻の妙子の佇いである。刈屋は、妻と若き運転手の過ちを、彼特有の“寛大さ”で許しており、まるで何事もなかったかの様に、妙子と百島、啓子らとテーブルを囲む。妙子はどこか定まらない視点とじっとりとした口調が特徴的で、自らを「もう死んだ女」と語り、生ける屍のようにただ、そこにいる。妙子は夫の赦しを「寛大さの牢獄」と表現するが、谷は「優しさ、許し、寛大さがもたらす息苦しさ、辛さ、呪縛は、個人主義的に現代を生きる我々に響くテーマになる」と語る。そんなこの家の空気に唯一、まともに刃向かっている存在であり、刈屋をして「あんたは生きているよ」と言われるのが、百島の若き妻・啓子だ。彼女は百島と妙子の間の過去にもがき苦しみ、それを何でもない事の様に笑い話として話す刈屋に激しく詰め寄り、ある“策”を弄する。彼女の激情が、止まっていた時を動かし、少しずつそれぞれの心情、本音が蠢き、“牢獄”を飛び出していくが……。全編を通して印象的なのは俳優陣の声!刈屋の無関心と同義の諦念、妙子の死人の様な口調、啓子の激情、夫・百島の迷い、いつか再び日本の地を踏む事を叶わぬ“夢”として語る大杉…。それぞれの感情が見事なまでに彼らの声に乗せられて、“美しき不協和音”とも言えるような奇妙な音色を奏でる。昭和30年に書かれた戯曲は旧字体で書かれており、会話も決して現代の口語的とは言えないのだが、実際に通し稽古で展開される俳優陣のやり取りは、古臭さも不自然さも全く感じさせず、静かに、しかし、生き生きとした感情が伝わってくる。「三島特有の美しい言葉は魅力ですが、言葉はあくまでも氷山の一角。その裏に漂うドロドロとした感情、ピリピリとした関係性が伝われば」――そんな谷の言葉通り、ブラジルの明るい太陽の下で、たっぷりと湿気を含んだ、べっとりとした感情の戦いが繰り広げられていた。公演は3月2日(木)に開幕。取材・文・撮影:黒豆直樹
2017年02月24日三島由紀夫が残した最高傑作戯曲の一つ「黒蜥蜴」が、来年1月より上演されることが決定。主演“黒蜥蜴”役には中谷美紀、“明智小五郎”役には井上芳雄を迎えることも明らかになった。世界的宝石商・岩瀬庄兵衛は、愛娘・早苗の誘拐と岩瀬家の秘宝「エジプトの星」強奪を予告する女盗賊・黒蜥蜴に怯え、探偵・明智小五郎に警護を依頼した。岩瀬父娘は大阪のホテルに姿を隠したが、隣室には岩瀬の店の顧客、緑川夫人が泊っていた。実は彼女こそ黒蜥蜴だったのだ。黒蜥蜴は部下の雨宮を使って早苗をまんまと誘拐したものの、明智は機敏な処置で早苗を奪い返したのだった。それから半月後、厳重な警備が敷かれた岩瀬邸から、早苗が忽然と姿を消した。黒蜥蜴が家政婦ひなの手引きで、再び早苗を誘拐した。明智が駆けつけたとき、早苗と引換えに、「エジプトの星」を持参せよ、という紙が残っているきりだった。指示通り岩瀬は「エジプトの星」を黒蜥蜴に渡したが、早苗は戻らなかった。黒蜥蜴は早苗の美しさに魅せられていた。一方、そんな黒蜥蜴にひそかに恋焦がれている雨宮は、黒蜥蜴が明智を恋していることに気づき、嫉妬を感じる。その頃明智は、一度は黒蜥蜴の手にかかって殺されたと見せかけ、部下の一人に変装して本拠地に忍び込んでいた。彼もまた、純粋な美に生きる黒蜥蜴に恋していた。黒蜥蜴を捕える自信はあったが、世間の秩序の彼方に己れの倫理と美意識を築きあげている彼女を、一番深く理解し愛しているが故に葛藤する明智。本拠地には人間剥製の美術館があった。早苗もその一つに加えられようとしていた…。「黒蜥蜴」は、美貌の女盗賊“黒蜥蜴”と名探偵“明智小五郎”が繰り広げる耽美と闇の世界。怪奇小説を世に送り出した江戸川乱歩の傑作を、三島由紀夫が戯曲化した究極のエンターテインメントだ。今回主演の“黒蜥蜴”役には「ケイゾク」「私 結婚できないんじゃなくて、しないんです」など様々なドラマや映画に出演する中谷さん、黒蜥蜴の好敵手であり運命の恋人、探偵“明智小五郎”役にミュージカル界で活躍し、「わたしを離さないで」や、大河ドラマ「おんな城主 直虎」などドラマ出演も増えている井上さんが決定。さらに演出は、日本でも「テレーズ・ラカン」や「ナイン」、「ETERNAL CHIKAMATSU」など、数多くの作品を手掛けている英国人演出家・デヴィッド・ルヴォーが担う。今回の出演にあたって中谷さんは、「三島さんが巧みに描かれた文章を表現することは容易なことではないですし、とても大きな劇場で演じるということに恐れを抱き、逡巡もしたのですが、やはり心が動いてしまい、出演させていただくことを決めました」と出演決定理由を語り、ルヴォー氏演出だということで参加を決めたと言う井上さんは、「過去に『ルドルフ ~ザ・ラスト・キス~』での経験が素晴らしかったので、いつかまたご一緒したいという気持ちがあり、来日するたびに顔を見せに行き、『いつかまた一緒にやりたい』と言い続けてきました」と今回は念願の出演だと語っている。ルヴォー氏が1988年の初来日以来、日本で演出をし続けたいと願い、日本に魅了されている理由を、三島由紀夫作品と歌舞伎に出会ったことだと話す。黒蜥蜴についてルヴォー氏は、「まず目を見張るような絶世の美女でなければなりません。同時にある種の緊張感を持ち、何かに駆り立てられている女性で、謎めいており、この人のことを知りたいと、周囲に思わせる磁力の持ち主」、明智小五郎についても「完全にアウトサイダーであり、ハンフリー・ボガードのようなハードボイルドですが、まっとうなモラルも併せ持っています」と語っており、中谷さんと井上さん共に相応しい役どころだとコメントしている。舞台「黒蜥蜴」は2018年1月より日生劇場(東京)、2月上旬より梅田芸術劇場メインホール(大阪)にて上演予定。(cinemacafe.net)
2017年02月06日毎年上演される美輪明宏演出・主演による舞台が、今年は、三島由紀夫作、近代能楽集より『葵上・卒塔婆小町』に決まった。美輪×三島の幽玄的な世界が7年ぶりに立ち上がるとあって早くも期待が膨らむ。しかも、この演目の上演はこれが最後になるかもしれないと美輪は言う。その覚悟と作品への思いを聞いた。【チケット情報はこちら】美輪による『葵上・卒塔婆小町』を、三島は切望していたのだという。実現したのは、三島が亡くなった後の1996年。今度で5度目、7年ぶりの上演となる。不思議なことに、上演を決めた途端、未発表だった三島の肉声テープが見つかるというどこか因縁めいた出来事もあった。「それが亡くなられる9か月前のインタビューを録音したもので、演技論や小説のことなど、私によくおっしゃっていた話がそのまま入っていたんです。この舞台の宣伝のために出てきたとしか思えません(笑)」。そもそも三島が自身の作品を美輪に託したのは、その行間までをも表現し得る稀有な存在として認めたからだ。当初、なかなか当たらなかった三島の芝居は、美輪が『黒蜥蜴』に主演して、大評判を取るようになった。そこで次に三島が美輪に望んだのが、「近代能楽集」である。その短編戯曲集の中から、嫉妬心にかられて生霊となって不倫相手のもとに現れる女を描いた、小野小町と深草少将の伝説をもとに100歳の老婆の哀しい運命を描いた、この2作ならと美輪は答えた。「近代能楽集の中でも、このふたつはいちばん普遍性があると思ったからです。の描く不倫なんて、ギリシャ悲劇の時代から変わりません。美しく生まれついたがゆえに自分を美しいと言った男は死に、100年ごとに生まれ変わるという運命を背負うことになるはまさに“正負の法則”です。両方とも、愛、美、死、無常といったこの世の法則に則ったことが描かれているんです」。では、100歳の老婆から美しい小町へと早替りする美輪の演技術にも驚かされるはずだ。が、「腰を曲げて、歯の抜けたしゃべり方をする老婆からスッと美女になるのは、体力的にも大変なんです。これが最後になるかもしれないと思っています」と美輪。だからこそ、「三島という天才から託されたものを伝えていきたいと思います」と気持ちも募る。恐ろしくも切なく美しくドラマティックに。天才に信頼された美輪だから描けるエンターテインメントである。近代能楽集より『葵上・卒塔婆小町』は、3月26日(日)東京・新国立劇場中劇場より上演。その後各地を周る。取材・文:大内弓子
2017年02月02日今年も暑かった夏が過ぎ、眠りやすい季節になりましたね。寝具メーカーのテンピュール・シーリー・ジャパンは、「ビジネスパーソンに聞く、睡眠ライフスタイル調査」を実施しました。この結果から、ビジネスパーソンの睡眠時間の実態や、睡眠に対する不満が見えてきました。(調査期間:2016年8月18~20日調査対象:契約社員・派遣社員を含む、現在就労している全国のビジネスパーソン有効回答数:824名(男性412名、女性412名))平日の睡眠時間は6時間総務省統計局(平成23年社会生活基本調査)によると、日本人の平均睡眠時間は7時間42分。またNHK放送文化研究所(2015国民生活時間調査)による調査では、平日の平均睡眠時間は7時間15分でした。しかし、本調査の結果では、ビジネスパーソンの平日(仕事をしている日)の平均睡眠時間は約6時間5分となり、1時間以上も短い睡眠時間であることが明らかになりました。調査では、「あなたの平日の平均的な睡眠時間は何時間ですか?」と質問していますが、「6時間以下」が約7割(67%)に上り、睡眠時間の短さが目立ちます。また、現在の睡眠時間に対する不満も約6割(59%)となり、多くの人が睡眠について満たされていない現状が明らかになりました。男女別の比較では、不満足の男性が55.6%であるの対し、女性は62.1%と、より多くが不満を感じているという結果となりました。パフォーマンスへの悪影響を感じている人が6割「寝苦しい夜が続いていますが、通常と比べ良く眠れていますか?」という質問には、5割以上(54.2%)が「眠れていない:寝不足気味である」と答えています。男女別では、男性の50%に対し女性は58.5%と、こちらも女性の方が寝不足を実感しているようです。さらに、寝不足気味であると答えた人へ仕事への影響をたずねたところ、「仕事への影響がない」と答えた人はわずか36.2%。「仕事が全く手につかない」から「やや手につかない」人まで、自身のパフォーマンスが落ちていると感じている人は6割以上(63.8%)に上りました。「全く手につかない」(2.5%)、「ほぼ手につかない」(2.9%)という状態の人もおり、ここまでくると事態は深刻といえるでしょう。仕事への影響の内容は「眠くなる」という意見が圧倒的に多く、特に食後の眠気に悩まされている様子がうかがえました。これに関連し、「日本にもシエスタ(昼寝)を導入した方が良いと思いますか?」という質問には、約7割(68.8%)の人が「はい」と答えています。秘策は午前中の軽いうたた寝では、日中に強い眠気を催したり、仕事がはかどらなかったりする場合、どのような対策をすればよいのでしょうか?午後の昼寝ももちろん有効ですが、勤務体系やオフィス環境を考慮すると、ビジネスパーソンによっては現実的に難しいケースも多いでしょう。また、午後からの昼寝は、一定時間を超えると夜の睡眠に影響してしまいすっきり眠れず、翌日また眠くなってしまうという悪循環に陥るケースもあるようです。そんなときは、午前中に軽く眠ってみてはいかがでしょうか。午前中の睡眠といっても仕事中に眠るというわけではなく、おすすめは、通勤電車でのうたた寝です。通勤中に窓の外を見て光を浴びることは、目を覚ますためには大切です。しかし、日中の眠気があまりに強いという状況なら、夜間に影響を及ぼさない午前中の睡眠を、通勤電車で積極的にとってみてはいかがでしょうか。パフォーマンスが改善されるかもしれませんよ。photo by kleuske参考:テンピュール・シーリー・ジャパンプレスリリースビジネスパーソンに聞く、睡眠ライフスタイル調査川端裕人,三島和夫:8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識,2014,pp.181-182,日経BP社,東京
2016年10月06日ジェイク・ギレンホール主演の感動作『サウスポー』が来月3日(金)から公開になるのを記念して、徳光和夫が本作のボクシングシーンを実況し、作品の感動を伝える特別映像が公開になった。『サウスポー』特別映像本作は、“最強”の名をほしいままにしていた豪腕ボクサーが、愛する妻を失ったことを機に、愛する子や地位、名誉などすべてを失い、どん底から再び這い上がろうとする姿を描いた作品。関係者やマスコミ向けの試写会では「感動した」「泣けた」という声が多く寄せられていることから、本作の魅力をさらに多くの観客に伝えるべく、日本感動協会のチェアマンに就任した徳光が実況を担当した映像が製作された。実況ムービーでは、劇中に登場する試合を徳光が実況する場面や、徳光が映画を観賞して涙を流すシーンなどを収録。徳光は「感動がボディーブローのように効いてくる映画。私はこういった映画が本物の感動映画ではないかと思いますね」と語っており、力のこもった語りを堪能できる映像になっている。『サウスポー』6月3日(金)ロードショー
2016年05月31日“泣きの徳さん”ことフリーアナウンサーの徳光和夫が4月19日(火)、都内で行われた米映画『サウスポー』のPRイベントに出席。本作を鑑賞し、「これだけ涙腺を刺激される映画は久々。被災地にも感動を届けたい」と九州をはじめ、全国各地で試写会を行うことを発表した。怒りをエネルギーに、相手を打ち負かすボクシング王者ビリー・ホープは、思いもよらぬ形で訪れた妻の死を受け入れることができず、失意のどん底に。ボクシングにも身が入らず、荒れた生活を送り始める。そんな彼が伝説のトレーナーと出会い、怒りの封印を学びながら、闇からはい出ようとする姿を感動的に描く。主演はジェイク・ギレンホール。『スポットライト世紀のスクープ』のレイチェル・マクアダムスが妻を演じる。「感動がボディブローのように効いてくるんですよ。監督の力や現場の結束、何より役者さんがボクサーになりきっていますね」と魅力を熱弁する徳光さん。長年のアナウンサー人生を通して、有名無名のスポーツ選手と数多く交流をもち、「挫折から復活した人もたくさん知っているから、いろんな顔が思い浮かびましたね」としみじみ語り、「もしかすると作者は『あしたのジョー』を見ているのかな?」と分析していた。イベントには女子プロボクサーの高野人母美が駆けつけ、「リアリティがすごい。練習方法やリング上での動きなど、実際に参考になるシーンもあった」とプロ目線で映画に太鼓判。座右の銘は「口でウソはつけても、体はウソをつかない」だといい、徳光さんは「私なんて『行き当たり、ばったり』ですよ」と笑いを誘っていた。『サウスポー』は6月3日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年04月19日フリーアナウンサーの徳光和夫が4月19日に、都内で行われた感動のボクシング映画『サウスポー』のPRイベントに出席。同作公開をきっかけに誕生した日本感動協会のチェアマンに就任し、「感動の涙を流すことは素晴らしいこと。被災地の皆さんにもご覧いただき、支えになれば」と九州をはじめ、全国各地での試写会開催に意欲を燃やした。その他の写真失意のボクサーが再起をかけて奮闘する、ジェイク・ギレンホール主演作。自分の過ちで妻を失ったライトヘビー級元世界王者のボクサーが、娘との絆を取り戻すため、これまでの自分と向き合い、再びリングへ上がろうともがく姿を描いた。自身もボクサーだった経歴を持つアントワーン・フークア(『トレーニング デイ』『イコライザー』)が監督を務め、『スポットライト 世紀のスクープ』のレイチェル・マクアダムス、オスカー俳優のフォレスト・ウィテカーらが共演する。「これだけ涙腺が刺激されるのは久しぶり。監督の手腕や現場の結束はもちろん、主演の役者さんが体型も含めて、ボクサーになりきっていますね。単なるサクセスストーリーではなく、感動がボディブローのように効いてくる」と賛辞を惜しまない徳光。局アナ時代から、多くのスポーツ選手と親交があり、「一度、頂点から転げ落ちると、どんなに強くてもなかなか復活できない。そんな選手の姿を何人も見ているから、いろんな人物の顔が浮かんだ。だからこそ、新たな一歩を踏み出す姿が感動的」と熱っぽく語った。イベントには女子プロボクサーの高野人母美が駆けつけ、「まるで本物の試合と同じ雰囲気。練習方法やリング上での動きなど、実践できるものもたくさんある」と本作のリアリティに感心しきり。選手としての信条は「口でウソはつけても、体はウソをつかない」だといい、これには徳光も「僕なんて『行き当たりばったり』だからね…」とプロ選手のストイックさに敬意を示していた。『サウスポー』6月3日(金)ロードショー取材・文・写真:内田 涼
2016年04月19日フリーアナウンサーの徳光和夫(75)とモデルで女子プロボクサーの高野人母美(28)が19日、都内で行われた日本感動協会発足記者会見に出席した。このたび、俳優ジェイク・ギレンホールがアカデミー賞監督アントワーン・フークアとタッグを組む感動作『サウスポー』(6月3日公開)の公開をきっかけに、感動の輪を全国に広げることを目的とする「日本感動協会」の発足が決定。会見では、発足の発表と共に、涙もろく感動しやすい徳光のチェアマン就任が発表された。そして、プレゼンターの高野が、"日本感動協会チェアマン"と書かれたタスキを徳光に掛け、任命証を授与。徳光は「うれしいね。ハリウッド女優にいただいているような感じ」と目尻を下げた。高野は衣装について、「(主人公の)ビリーさんのグローブがレッドだったので全身赤にして、感動する映画だと聞いたので涙をイメージしたアクセサリーにしました」と説明。レース素材から美脚をのぞかせた。また、本作のボクシングシーンについて、「コンビネーションがすごかった。1、2、3からのアッパーとかボディとか」と話し、さらに徳光を相手に実践。パンチの動きを披露すると、徳光は「老人いじめだよね(笑)」と笑いを誘い、「突然、優しい目が変わるね」とうれしそうに話しかけた。会見前に本作を鑑賞して号泣した徳光は、ボクシングチャンピオンという栄光からどん底に落ちながらも再起を目指す主人公の姿が、実在のさまざまなスポーツ選手と重なると語った。薬物依存などを乗り越えボクサーとなった川崎タツキや、大けがを負うも奇跡の復活を遂げた巨人の吉村禎章、さらに、漫画『あしたのジョー』の矢吹丈の名前なども挙げた。(C)2015 The Weinstein Company LLC. All Rights Reserved.
2016年04月19日フリーアナウンサーの徳光和夫とタレントの田中律子によるテレビ朝日系の旅番組『路線バスで寄り道の旅』(毎週日曜15:20~)が、初めて単独でゴールデンタイムに進出することが6日、分かった。10日(20:58~23:10)に「徳さん&マル秘美女 春の箱根・熱海・南伊豆を制覇SP」と題して放送される。同番組は、徳光と田中が、路線バスでさまざまな街に立ち寄り、地元の人たちとのふれあいやB級グルメを楽しむ様子を放送してきたが、番組スタートから丸3年を記念して、ゴールデンタイムに進出。2014年3月にも『若大将のゆうゆう散歩』とともにゴールデンで放送されたが、単独では初めてとなる。今回は、熱海をスタートして、伊豆半島を回る2日間の旅。道中、羽田美智子、かとうれいこ、武田久美子、高島礼子、高岡早紀が、1人ずつバスの乗り込んできて、仲間を増やしながら旅を繰り広げる。中でも、武田とかとうは、伊豆長岡温泉でお色気たっぷりの入浴シーンを披露。ともに80年代にグラビアクイーンとして活躍し、今は子育てに奮闘している2人だが、当時のままのプロポーションを見せつける。一方の徳光は、混浴を夢見て貸切露天風呂を予約し、有名な武田の"貝殻ビキニ写真集"を手にホテルへ。しかし、いざ入浴すると1人きりで、「(田中、武田、かとうは)3人とも40(歳)越えて後半なんだしさ、一緒に入ったってなんてことないんだから。一緒に入ってくれりゃいいんだよね…」とボヤきだす。その頃、武田・かとうと入浴していた田中は「(もし徳光が)ここにいたら、うれしくて細い目がなくなっちゃう(笑)」と3人で笑い合っていた。徳光は、これがよほど悔しかったようで、「露天風呂が塀を隔てたつくりになっていて、せめてその塀の向こうから女優陣の声が聞こえてくれば、石けんを投げたりとかできたのになぁ(笑)」と恨み節。しかし、ロケ終了後にゲストの女性たちとハグしたそうで「女優とハグというのは、たまらないものがありますね。羽田さんとか高島さんとか…あ、高岡さんはハグしなかった(笑)。武田さんやかとうさんには、浴衣姿でハグしてもらいました。色っぽかったです」とご満悦だった。そんな武田は、徳光に「チャーミングで優しい方で、またぜひともご一緒したいな」、かとうも「放っておけなくて、愛くるしくて、"お父さん"みたいなところもありますね」と愛着がわいたようだ。
2016年04月07日三島由紀夫の最後の戯曲『ライ王のテラス』が、演出・宮本亜門、主演・鈴木亮平で、47年ぶりに上演されている。世界遺産「バイヨン寺院」を建設したカンボジア王の物語に三島が託したものは何だったのか。3月4日に開幕したばかりの舞台の模様を報告する。舞台『ライ王のテラス』チケット情報この戯曲が誕生したのは、三島がアンコールトムを訪れたことがきっかけだ。カンボジア最強の王と語り継がれるジャヤ・ヴァルマン七世の美しい彫像を目にした三島はすぐに、その完璧な肉体が病に冒されていく物語を着想したという。ゆえに、王を演じる鈴木に求められたのは、まずは肉体の美しさだった。幕が開くと、その期待は否応なく高まる。宮本が自らカンボジアでオーディションをして選んだダンサーたちが民族的な舞踊を見せながら、王が見事に戦勝した様子が影絵を使って語られるのだ。カンボジアの音楽が流れ、劇場が中世のカンボジアの空気に包まれるなか現れる凛々しい王の影。そしていよいよ、第二王妃(倉科カナ)と第一王妃(中村中)が待つところに、彫像のような肉体に仕上げた鈴木が登場する。説得力は十分である。しかし、真骨頂はそこからである。民のためにと「バイヨン寺院」の建設を始めるとともに病魔に冒される王。第二王妃は献身的に支え続けるも、王の美しさが蝕まれていくことに耐えられないと彼を避ける第一王妃が王の苦悩を深くする。舞台ではもちろん肉体自体を変えることはできない。にもかかわらず、その存在に何とも言えない心もとなさがにじむ。健やかで自信にあふれた大きな王から、瞬時に見せた鈴木のその変化。“演じる”ということが見せてくれるものの力を、改めて感じることができる。王の肉体が崩壊していくに従って、観世音菩薩を模したバイヨンが完成していく様を、三島は、自分の全存在を芸術作品に移譲して滅びてゆく芸術家の人生に重ねたのだそうだ。舞台の上で、なぜ自分は病になったのかと自問自答する王の姿は、人は何のために生きるのかと、観客に問いかけてくるようでもある。王の病を利用して国の転覆を目論む宰相(神保悟志)や、愛する息子が苦しむ姿を見ていられないと毒殺を企てる王太后(鳳蘭)の人間の業にも、揺さぶられる。宮本曰く、「人間の本質を見たくないところまでえぐり出す」という三島文学の魅力を、まさにナマの肉体が体現した舞台であった。公演は3月17日(木)まで、東京・赤坂ACTシアターにて。取材・文:大内弓子
2016年03月08日三島由紀夫の最後の戯曲『ライ王のテラス』が、演出・宮本亜門、主演・鈴木亮平で、47年ぶりに上演されている。世界遺産「バイヨン寺院」を建設したカンボジア王の物語に三島が託したものは何だったのか。3月4日に開幕したばかりの舞台の模様を報告する。舞台『ライ王のテラス』チケット情報この戯曲が誕生したのは、三島がアンコールトムを訪れたことがきっかけだ。カンボジア最強の王と語り継がれるジャヤ・ヴァルマン七世の美しい彫像を目にした三島はすぐに、その完璧な肉体が病に冒されていく物語を着想したという。ゆえに、王を演じる鈴木に求められたのは、まずは肉体の美しさだった。幕が開くと、その期待は否応なく高まる。宮本が自らカンボジアでオーディションをして選んだダンサーたちが民族的な舞踊を見せながら、王が見事に戦勝した様子が影絵を使って語られるのだ。カンボジアの音楽が流れ、劇場が中世のカンボジアの空気に包まれるなか現れる凛々しい王の影。そしていよいよ、第二王妃(倉科カナ)と第一王妃(中村中)が待つところに、彫像のような肉体に仕上げた鈴木が登場する。説得力は十分である。しかし、真骨頂はそこからである。民のためにと「バイヨン寺院」の建設を始めるとともに病魔に冒される王。第二王妃は献身的に支え続けるも、王の美しさが蝕まれていくことに耐えられないと彼を避ける第一王妃が王の苦悩を深くする。舞台ではもちろん肉体自体を変えることはできない。にもかかわらず、その存在に何とも言えない心もとなさがにじむ。健やかで自信にあふれた大きな王から、瞬時に見せた鈴木のその変化。“演じる”ということが見せてくれるものの力を、改めて感じることができる。王の肉体が崩壊していくに従って、観世音菩薩を模したバイヨンが完成していく様を、三島は、自分の全存在を芸術作品に移譲して滅びてゆく芸術家の人生に重ねたのだそうだ。舞台の上で、なぜ自分は病になったのかと自問自答する王の姿は、人は何のために生きるのかと、観客に問いかけてくるようでもある。王の病を利用して国の転覆を目論む宰相(神保悟志)や、愛する息子が苦しむ姿を見ていられないと毒殺を企てる王太后(鳳蘭)の人間の業にも、揺さぶられる。宮本曰く、「人間の本質を見たくないところまでえぐり出す」という三島文学の魅力を、まさにナマの肉体が体現した舞台であった。公演は3月17日(木)まで、東京・赤坂ACTシアターにて。取材・文:大内弓子
2016年03月08日『シェル・コレクター』で15年ぶりの映画主演を果たしたリリー・フランキーが、『紙の月』の吉田大八監督のもと、三島由紀夫の異色SF小説「美しい星」の映画化に主演。亀梨和也、橋本愛、中嶋朋子と“宇宙人”家族を演じることが分かった。本作は、“ミシマ文学”の中でも異色作とされている1962年発表のSF小説。核戦争勃発の恐怖に脅える冷戦下を背景に、「自分たちは地球人ではない。宇宙人だ」と突然目覚めたとある家族が、「我々の手で人類を救わねば!」と使命に燃えて奮闘するさまを風刺たっぷりに描いた。戦争や大規模災害など、世界に終末の匂いが色濃く漂う度に版を重ね、2011年の東日本大震災以降も部数を伸ばし、現在54刷45万部のロングセラーとなっている。今回、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』『クヒオ大佐』から『紙の月』まで、少々思い込みの激しい人々の誠実さと可笑しみを描きつづけてきた吉田監督が、自ら脚本も担当。学生時代に読んで以来、映画化を切望してきた原作の舞台を現代に移して大胆に脚色し、突如、宇宙人に覚醒したある家族が地球を守ろうと奮闘する話を作り上げた。そんな本作で、リリーさんが演じるのは、一家の父である“火星人”大杉重一郎。原作では「ごく短期間教鞭をとった以外は、大学卒業以来働いたことのない資産家で高等遊民」という設定だった中年男は、“当たらない”ことで有名なテレビのお天気キャスターに。家族にそれほど大きな問題もなく、若くて可愛い愛人もいて、ヘラヘラといい加減に生きてきたが、突如、情熱と使命感に燃える火星人に覚醒する。また、現在ドラマ「怪盗 山猫」で主演を務めている亀梨さんが演じるのは、長男・一雄。「モラトリアムを生きるシニカルな学生」という設定から、本作では大学卒業後も定職につかず、暗い野心をたぎらせるフリーターとなり、知性を司る水星人に覚醒。さらに、『シェル・コレクター』でリリーさんと共演している橋本さんは、「純潔に固執する潔癖症の女学生」という設定だった長女・暁子に。自分の美しさが最大のコンプレックスという圧倒的な正統派美人の女子大生に扮し、美を象徴する金星人に覚醒する。そして、山田洋次監督『家族はつらいよ』が控える中嶋さんが演じるのは、「大人しい献身的な専業主婦で木星人」という設定だった母・伊余子。なぜか彼女だけ覚醒せず地球人のままで、退屈と倦怠をもてあまし、怪しい“魔法の水”ビジネスにはまり込んでいくイマドキの主婦となる。地球という“美しい星”を舞台に繰り広げられる、大真面目に世界救済を模索する勘違い家族の珍道中。愛すべき彼らの大奮闘を期待して待っていて。<以下、キャスト&監督コメント>■吉田大八監督原作の精神を尊重しつつ、人類生き残りに有り金まるごと賭けて悔いなし、そんな宇宙レベルのエンターティンメントを目指します。物語の中心、大杉家のメンバーとして最高の4人が集まってくれたので、これからいったいどんな反応が起きて何が生まれるのか、想像するだけで恐怖のあまりワクワクします。公開までそのワクワクを時々思い出していただければ幸いです。あと、空で待ってる“スターマン”にちょっとだけ捧げます。■リリー・フランキー吉田監督作品は全部見ていて、大好きでした。そんな監督に主役のオファーをいただいて、嬉しさと驚きと、爽やかな印象のある気象予報士役が自分で良いのかな?と不安もあります。とはいえ「予報が外れてもアリなキャラクター」なら何とかなるかもしれません。そして何より、吉田監督がどのように映画を撮られるのか、その現場を見ることができるのが最大の楽しみです。学生のころから三島由紀夫のファンでしたが、脚本を読んでみたら原作とは異なる面白さが加わっていて、ワクワクしました。重一郎という役と自分は、思い込みの激しさが似ていると思います。UFOについて真剣に考えたことはありませんが、何かのきっかけで思い込んでしまうような存在な気はします。当然、宇宙人を演じるのは初めてですが、演技をするうちに、宇宙人を信じてしまいそうで怖いです(笑)。■亀梨和也脚本を読んで、いまの時代の問題意識が描かれており、僕自身もまさに実感しているものでした。役柄に関しては、年齢を重ねていく中で生まれていく責任感や何かを背負わないといけないという一雄の葛藤や焦りなどに共感しました。きっと僕だけではなく同世代の共通点なのかもしれません。無限の可能性を感じていた10代から年を重ねていく中で、自分の限界を広げてくれるものは自分の中だけではなく、仕事など巡りあわせによってどこにでもあるものだと感じています。今回は一雄という役に巡り合い、役を通して自分の可能性を広げていくことができたらと思います。そんな等身大(同世代)の役を演じることになりましたが同時に水星人でもありますので、しっかりとした水星人になれるように、もっともっと水星について勉強してみたいと思います(笑)!!■橋本愛吉田監督とは以前ご一緒させていただきましたが、今回は初めましての気持ちで臨みたいと思います。宇宙とか宇宙人とか非現実的なモチーフはあれど、そこからはあまりに現実的な人間臭さを感じました。頭の良い脚本と大胆で鋭利なテーマにくらっときていますが、美の昇華を一心に目指したいと思います。■中嶋朋子監督の『パーマネント野ばら』が好き過ぎます。いつか会えたら、話せたら!と思いつつ、その機会を得たらロクに話も出来なかったーー完全なるファンです。さらには、三島作品の「美しい星」!!!ですよ。まさか、この作品と関わりを持てる人生になろうとは!なんでしょう、大興奮です。あ、でも、私の役目は、地球人だからなぁ、地に足つけないとですね、かなり浮き足立ってますけど、私。“宇宙人”として考えると、合点がいくことって、世の中には結構ある。ちょっと「通じなそう」ってくらい、飄々としてる人。なにをされても、どうしてだか許せちゃう人。逆に、なにをされても腹が立つ人。いやがおうなく、目を奪われる人etc…。そっか、私の周りにいるあの人たちは“宇宙人”だったのだーーって。なんかほっとする。わかり合えないことが前提になると、なぜだか、俄然わかり合える気がしてくる、不思議だけど。ていうか、このキャストの方々は、“宇宙人”ですね。合点がいきます。私は地球人なので、その辺よーくわかります。『美しい星』は2017年5月、全国にて公開予定。(text:cinemacafe.net)
2016年03月01日三島由紀夫の最後の戯曲であり、“幻の名作”と称される『ライ王のテラス』。主人公であるカンボジア最強の王、ジャヤ・ヴァルマン七世王に扮する鈴木亮平を筆頭に力強いキャストが居並ぶ中、爽やかな存在感を放っているのが吉沢亮。『仮面ライダーフォーゼ』で注目を集め、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』『アオハライド』等々、話題の映画に次々と出演する若手注目俳優だ。大作に挑む現在の気持ちを「けっこう、不安です」と率直に語る彼に、作品のこと、そして俳優としての自身のこれからを訊いた。チケット情報はこちら最初にこの作品への出演が決まった時の心境を「三島由紀夫さんの戯曲を、宮本亜門さんが演出する。それだけで“すごいな”と思いましたし、僕が出て大丈夫なんだろうか、と不安がよぎりました」と振り返る。「でも間違いなく、今後役者として生きていく上で、絶対に勉強になる。これは挑戦してみようと思ったんです」。三島戯曲も、亜門演出も、初挑戦だ。「亜門さんの演出はすごく豪快で、パワーがある。物語の解釈も亜門さんは色々な角度から見ている。僕なんかの考えが及ばない瞬間ばかり。自分でもたくさん考えていたつもりなのに……って、ヘコみます。普段あまり不安や疑問をそれほど表に出さない方なのですが、今回ばかりは自分で溜め込んで解消できる問題じゃない気がする。亜門さんやまわりの人に助けを求めつつ、頑張ります」。そんな吉沢、もともとこの世界にはいったきっかけは「母親にオーディションを勧められたんです、賞金100万円だからやってみないかって(笑)。そんな始まりです」と笑いながら明かす。ただ、「今はもちろん役者で生きていければと思っています! できれば、この役は吉沢にしか出来ない、この役を吉沢にやってほしい……そういう風に思われる役者になりたいですね。それが難しいことだとは、わかっていますが」とこの道を進む決意を語ってくれた。インタビューの場でも取り繕うことなく、不安な気持ちもさらけ出す。その率直さが逆に魅力だ。今回吉沢が演じるのは、今も世界遺産として広く知られるアンコール・トムのバイヨン寺院を建設する石工役。「先輩の棟梁たちが“自分だったらこう作る”と細かく説明する中、僕の役は「千年のちまで、人があがめ、ひざまづき、涙をながすやうな、気高い美しいものを」と抽象的なんだけれど、大きなことを言うんです。それで王様から棟梁に抜擢される。想像力が豊かで、すごくストレートな青年。頭の中の理想と現実とで葛藤するところもありますが、想像を現実に変えていく役だと思っています」。その姿はどことなく、22歳現在、不安も抱きつつ前を見つめる吉沢の魅力に繋がっていくようにも思えた。公演は3月4日(金)から17日(木)まで、東京・赤坂ACTシアターにて。チケットは発売中。
2016年02月17日三島由紀夫の最後の戯曲であり、1969年と1974年には北大路欣也の主演で上演された“幻の名作”『ライ王のテラス』。カンボジア最強の王と呼ばれるジャヤ・ヴァルマン七世王を主人公にしたロマン大作だ。このたび久々に上演される本作で、鈴木亮平が扮するジャヤ・ヴァルマン王の第二王妃を演じるのが倉科カナ。彼女に話を聞いた。チケット情報はこちら出演を決めた最大の理由は「三島由紀夫さんの戯曲」だという。「三島さんの作品に出たい、という意識はずっとありました。三島さんの戯曲は、伝えていかなきゃいけないものだと思うんです。そして知るだけだったら誰にでも出来ますが、ちゃんと体験して自分の糧にし、“この道、知ってるよ”と誰かに伝えていくことが大切。“出なきゃ”と、直感的に思いました」。その憧れはどこから来たのだろう。「俳優の先輩方を見ていると、色々なことを知っていらっしゃるんです。三島作品ひとつとっても、白熱して演技論を交わしている。私は知らないことが多すぎて。一緒に語り合いたいとも思いますし、女優・俳優として同じ立場に立ちたい。先輩を追いかけたいし、いずれは自分も先輩という立場になって後輩に背中を見せないと。そのためには通らなければいけない道なんです」。演じる第二王妃は、王を心から愛する貞淑な女性。宰相の謀反に利用され、王から不義を疑われながらも、やがて病を得ていく王に寄り添い続ける。「清らかで、王の幸せを自分の幸せとする理想の女性。ずっと考えているのですが、そんな女性本当にいるのかなって(笑)。でもふと、慎ましく清らかでありたいと思う心の裏には、嫉妬や憎悪という感情があるんじゃないかなって思ったんです。つまりその裏の感情を自制する心の強さがあり、考えて行動できる女性。でも、お芝居をする上で“自制する”というのも、難しいんですよ。発散する方が伝えやすい。そういう意味でもやっぱりハードルが高い。セリフでも苦戦、心を探るのも苦戦してます」。そう苦笑するが、役への分析が冷静で、その語り口からすでに倉科の考える“理想の女性”第二王妃の姿が二重写しになってくるようだ。現在すでに稽古に入っているそうだが、実際に三島の紡ぐ言葉を口にして「手ごわいです」とも語る。「セリフ自体が綺麗なので、第二王妃が何を感じてその言葉を言うのか、自分の中に落とし込んでいかないと、言葉が流れていってしまう。とても難しい」と、覚悟していた壁に直面している。「そもそも舞台が苦手なんです(笑)。舞台は私にとって楽しいものというより、苦痛が伴うもの。もちろん、達成感ややりがいもありますが。でも私は女優としてこれからもやっていきたいので、そのためには好きなことだけをやっていては10年先はないと思います。辛い道も選んで、色々な刺激を受けないと」。柔らかな佇まいとは裏腹に、ストイックな言葉が次々と飛び出してくる。そんな彼女が覚悟を決めて挑む『ライ王のテラス』でどんな表情を見せてくれるのか、楽しみだ。公演は3月4日(金)から17日(木)まで、東京・赤坂ACTシアターにて。チケットは発売中。
2016年02月12日