●関係者交え開発秘話を語りつくす2015年2月23日、Engadgetの主催によるau Firefox OS搭載端末「Fx0」トークセッションが秋葉原アートスペース3331にて緊急開催された。本誌でも取り上げているが、auのFirefox OS搭載端末Fx0が2014年12月に販売開始となった。そのFx0の使い勝手や魅力について、語り尽くすのが今回のトークセッションである。参加者は、モデレーターでEngagetの津田啓夢氏、KDDI 商品企画部 Fx0担当の上月勝博氏。そして、Geek寄り女子の池澤あやか氏、ガジェットモンスターのジェットダイスケ氏、Mozilla Japan モバイル&エコシステム マネージャ浅井智也氏である。○デザイン端末にこだわったFx0Fx0の特徴は、なんといってもそのデザイン性にある。スケルトンボディを採用し、部品配置、ネジにまでこだわった端末である。ネジは通常の40倍の価格となったが、上月氏は、Fx0の値段が高いのはそれが理由と指摘されるが、せいぜい1本何円。何十円、何百円レベルはあるが、そんな影響していないとのことだ。それよりも、とにかくめだつこと、他の端末との差別化を図ったとのことである。結果、製品発表後、海外のSNSなどで、ここまで注目されたのはKDDIとして初めてであった。デザインについて、ジェットダイスケ氏は、金色といってもそんなに派手ではない。やはりバブル期のようなハデハデは避けたい、これくらいならば十分持てるでしょうと語る。○スーパーローコストではなく、高スペックな端末としてFirefox OS搭載端末は、当初、ウルトラローコストと呼ばれる低価格帯の端末のOSとして採用されることが多かった。しかし、日本で発売されたFx0は、デザイン、機能ともにハイレベルな点が特徴である。池澤氏は、そこがすごく気になっていたと語る。なぜ、ネジにまでこだわったハイレベルな方向に舵を切ったのかと質問した。浅井氏は、そもそもFirefox OSは廉価版端末専用OSと思われるほうが心外と語る(笑)。安く作ることもでき、最初はたまたま安い端末となった。非力な端末で動くOSでも、ハイエンドな端末を作れば、カッコいい端末になる。それを採用したのがKDDIさんなんですと語る。上月氏は、スケーラビリティは最初から理解していましたが、最初は市場の関係でシンプルで普及価格帯を考えていた。しかし、社長から王道で行けとなり、方針を変換したと当時の状況を説明してくれた。実際に、クワッドコアのCPU搭載するFirefox OS端末はFx0だけである。CPUはMSM8926で、最近の端末でも採用される。ジェットダイスケ氏は、このCPUだとおサイフケータイなどを搭載する端末が一般的だが、なぜFx0では? と尋ねた。残念ながら、そこまでの対応するといつまでたっても出すことができなかったと上月氏は弁解をしていた。最初から機能を満載にしてしまうと、出すものも出せない。そこで、ベース部分をしっかり作り込み、次に考えていきたいと抱負を語った。○アプリ開発をめぐって池澤氏は、この後少し余裕ができるので、開発にチャレンジしたい。HTMLなどのWebと同じ技術でできるので、開発者としては、もう1つプラットフォームが増えたという印象と語る。そして、新興国の人にも使ってもらえるアプリを作れるのか? との質問に、浅井氏は、以下のように答えた。もちろん可能です。現在、29か国、15キャリアからFirefox OS端末が提供されています。Mozilla Japanのメンバーが音楽アプリを作ったところ、スペイン語でフィードバックがきました。Webで翻訳して、苦情ではないかドキドキしながら確認しています。日本で、AndroidやiOS向けのアプリを出しても、海外まで届きません。しかし、Firefox OSならば、本当に必要としている人にいいフィードバックがもらえて、開発者としても楽しいと思います。ついでにスペイン語の勉強もできます(笑)。もし、わからなければ、Mozillaがサポートします。コミュニティのメーリングリストや勉強会もあります。ぜひ聞きにきてください。KDDIでは、2月半ばに新たなポータルサイトを設置した。これはユーザーの要望に応えるものだ。端末だけで作ったアプリなどを手軽にアプリをアップし、他の人に使ってもらいたい、評価してもらうものである。KDDIでは、公序良俗に反しない程度の確認を行って公開している。上月氏は、それ以外にもバグの報告がある。オープンソースの醍醐味というか、自分たちが気が付かないバグを指摘してくれ助かる。KDDIとしても今までにない取り組みが可能となるだろうと語る。○従来の開発や開発者のイメージを超えてジェットダイスケ氏も、HTMLやJavaScriptでアプリが作れるならばやってみたいと積極的な姿勢を表明する。そこで、カメラアプリもできる?と尋ねると、浅井氏は以下のように答えた。JavaScriptでフィルタ効果を、HTMLでSDカードの読み書きも可能です。従来、ネイティブでしかできなかったといわれるようなことも、可能になっています。それどころか、新しい知識がなくても、モバイルのWebサイトを作っている人ならば、テキストファイルを1つ足しただけで、Marketplaceにアップできるようなアプリが作れます。アプリのなかには、すべてをWebから読み込むようなアプリがあります。Webビュー専用に書かれていますが、Firefox OSでは、アプリとWebサイトの区別がまったくない、同じ書き方ができます。一方、iOSやAndroidでは、アプリをダウンロードしないと何もできない端末が多いです。PCならば、ブラウザを開きURLを入力すれば、ゲームもできる、表計算もできる、なんでもできます。でもなぜかアプリだとダウンロードして、専用の操作をしないといけません。これは、Webページだったらホームページにしか行けない、どんなURL書いても/ルートにしか行けないものが、iOSやAndroidのアプリだったりするんです。ならば、Webとアプリの区別のない環境を作ったほうが幸せでしょうということです。さらに、Firefox OSでは、Framinを使えば、プログラムを知らなくてもアプリを作成できます。池澤氏も、写真を切り替えたり、時間がきたらお知らせするアプリなら、1分でできたという。そして、端末性能が進歩すれば、ネイティブでなくても十分、高速な動きが期待でき、実用になるだろうと予測する。印象として、従来の開発や開発者とはイメージが異なる人たちがアプリを提供してくる感じである。そこまでいかなくても、自分好みのカスタマイズが可能な点も大きいだろう。●参加者の声や、当日の展示物も面白い○参加者の声今回のトークセッションの参加者の声とその回答を紹介したい。多分、多くのユーザーが持つ意見や疑問だと思う。まずは、新機種を含む今後の予定であった。これに対し上月氏はまったく決まっていない。まずは、フィードバックを取り込みたい。さらに、毎シーズン新機種の投入といったことはないだろうとのことである。浅井氏も、発表できるものはないが、いろいろ検討いただいていると語った。次は、スケルトンのライトなイメージがあるが、使ってみると重量が重いように感じたという意見である。上月氏は、今の機種と比較すると厚いので重さもあるが、丈夫な構造にしていることも理由と語る。さらに、パーツ1つ1つの具がしっかりしている(笑)とのことだ。Fx0では、電池の持ちがよいとの評価があるので、今後の機種によっては少し電池を小さくする可能性もあるとのことだ。また、開発者や好きな人以外では2台持ちは考えられない、普通のユーザーならば1台持ちであろう。そのあたりの方向性はいかがかという質問もあった。上月氏は、現状は2台を意識せざろうえないが、1台持ちにできない理由はない。しかし、今は、他と競合しない部分にあえて出させていただいていると答えた。今後、会社としての対応は、未定とのことである。さらに浅井氏は、自分の母親に機種変更で、初めてのスマフォでFx0を使わせているとのことだ(笑)。メールやカメラが使えれば問題なく、唯一の苦情は、キー入力が使いにくいで、それもハードキーがないことが理由とのことだ。1台持ちでもなんとかなると思うと語った。最後の質問は、ブラジルなどでFirefox OS端末がどう利用されているのかであった。浅井氏は、現地に赴いたわけではないが、ブラジルやインドなどでは、2台、3台持つような金銭的余裕はない。Android端末は通信料も多く、従量課金では使用料も高額になるが、Firefox OSではそのようなことがないので受け入れられているとのことだ。日本ではWeb接続は水道と同じようなイメージである。しかし、水道も完備していない、Webも繋がらないことが多いといった環境では極限まで安く、Webが速い端末を提供することで、社会的インフラとして普及している印象と語った。上月氏は、ブラジルなどでは、FMラジオが必須なんですと語る(笑)。浅井氏は、バージョン1.0の頃には、NFCがないのにFMラジオの機能があった。国によって違いがあり、その国のユーザーが使いやすい端末を、キャリアが自由に開発できることから、Firefox OSを採用している。単純にこれまでの端末と同じものを出しても、売れないこともあるだろうと語る。そして、上月氏も本当に好き勝手にやらせてもらえたし、なによりも、ここにいらしている皆さんと一緒にやりたかったと、うれしい台詞で締めくくった。トークセッション終了後、懇親会となり、自由な雰囲気のなかで、歓談が進む。イベントの最後はじゃんけん大会となった。Mozilla、Firefox OS関連のイベントは、とにかく楽しく、遊び心に溢れている。まじめな勉強会もあるが、楽しむみながら学ぶことが基本となっている。この雰囲気からか、普段聞けないような話も飛び出す。そんな話を聞けることもうれしい。○当日の展示物から会場では、デモ用にFx0が5台展示され、自由に使うことができた。筆者も初めて実機に触れることができた。印象であるが、想像以上に動作が軽かった。30万円かかる試作を10回も繰り返したというネームキーの感触もよかった。隣りでは、3D PRINT LAB.の展示が行われていた。これは、2015年1月より開始されたサービスで、3Dプリンタを使いオリジナルのスマホケースの製作・購入ができるものだ。あらかじめひな型が用意されており、そこに文字を入れたり、立体スタンプで造形していく。申し込みは、Webサイトから行う。使う3Dプリンタは、DMM.comの粉末焼結積層造形式の高性能プリンタで、スマフォケースならば1cmに1分ほどかかるとのことだ。納期は2週間程度で、費用は送料込みで3980円(税抜)である。ちょうど横に、ジェットダイスケ氏がおられたので「やはり透明タイプもほしいですよね」と聞いたところ、うなづいていた。着色していない無垢の白とかもおもしろいだろう。Fx0専用ではなく、他の機種にも対応する。さらに、データさえあればいいので、iPhone4Sのような、旧い機種にも対応するとのことだ。そして、Firefox OS搭載炊飯器である。半分、ジョークのような企画であるが、見ていておもしろかった。すでにPanasonicがCESでFirefox OS搭載TVを発表している。今後も、注目である。○コミュニティイベントも多数予定Fx0販売開始以降、Mozilla JapanやKDDIなどの主催するイベントも開催されているが、さらにコミュニティやメディア主催のイベントも予定されている。いくつか紹介すると、まずは毎月定期的に開催されるのが、Firefox OS のソースコードを読んだり、語らったりする「ゆるふわ」なFxOSコードリーディングミートアップである。また、Firefox OS勉強会も関東、関西にて、回数を重ねてきており(ほぼ2カ月おきに開催)、今後も開催予定である。ハンズオンも東京だけでなく、名古屋、高崎などでも開催を予定する。こちらは、初心者向きのイベントも多数ある。Firefox OSアプリを作成してみたいと思うならば、要チェックだろう。本誌も含め、現状のFx0の問題点として、アプリの数の少なさを指摘する意見が少なくない(特に、ゲーム系)。だからこそ、アプリ開発の幅も広いといえるのではないか。自分がほしい機能をアプリとして実現する。ひょっとしたら、それがキラーアプリになる可能性も潜んでいる。やってみようという意識さえあれば、いいだろう。これらの開催予定などは、上述のMozilla Japanのブログにて随時発表される。実際、Fx0に触れる機会やその中身などを知るとなると、個人だけでは難しい。そこで、こういったコミュニティイベントは、大きなチャンスといえるだろう。興味を持たれたのであれば、参加してみてはいかがだろうか。
2015年02月24日