2021年4月、 新国立劇場で三好十郎の『斬られの仙太』が上演される。本作は江戸末期から明治にかけての動乱期を舞台に、農民上がりの博徒・仙太郎が水戸天狗党の乱に関わるようになるも、組織の理想と現実の間で翻弄される物語。この度、本作の演出を手掛ける上村聡史と主人公の仙太役を演じる伊達暁が、『斬られの仙太』の舞台となる水戸・筑波を訪ねた動画の後編が公開された。前編では上野駅からスタートし、筑波神社から仙太の出身地である真壁に移動。後編では那珂湊反射炉跡から、水戸志士が幽閉された蔵が移築された回転神社、そして水戸殉難志士の墓、那珂川と本作に出てくる場所をめぐる。江戸末期に思いを馳せるふたりの様子をご覧いただきたい。■新国立劇場の演劇『斬られの仙太』筑波水戸紀行~前編■新国立劇場の演劇『斬られの仙太』筑波水戸紀行~後編【公演概要】『斬られの仙太』会場:新国立劇場 小劇場公演日程:4月6日(火)~25日(日)作:三好十郎演出:上村聡史芸術監督:小川絵梨子 / 主催:新国立劇場出演:青山 勝、浅野令子、今國雅彦、内田健介、木下政治、久保貫太郎、小泉将臣、小林大介佐藤祐基、瀬口寛之、伊達 暁、中山義紘、原 愛絵、原川浩明、陽月 華、山森大輔チケット発売中料金(税込):A席7,700円 / B席3,300円公演詳細: チケットに関するお問い合わせ:新国立劇場ボックスオフィス(03-5352-9999 / 10:00~18:00)Webボックスオフィス:
2021年03月19日世田谷パブリックシアターが2021年度ラインナップを発表した。国内演劇創作では、ワジディ・ムワワド×上村聡史「約束の血の4部作」、待望の第3弾となる『森 フォレ』を皮切りに、『チック』に続き小山ゆうながドイツ発の同時代戯曲に挑む『愛するとき 死するとき』、栗山民也と瀬戸山美咲による初の強力タッグで送る『彼女を笑う人がいても』(仮題)、フィリップ・リドリー×白井晃の衝撃作『マーキュリー・ファー Mercury Fur』の再演を届ける。さらに恒例企画では、芸術監督・野村萬斎の総合演出で斬新な狂言2作を上演する『狂言劇場 その九「法螺侍」「鮎」』をはじめ、夏の「せたがやこどもプロジェクト」では、サーカス、落語、ジャズコンサートを、秋の「世田谷アートタウン」では、おなじみの『三茶 de 大道芸』に加え、「フランス フェスティバル 2021-2022」公式プロジェクトとして国際共同制作によるサーカスやダンスを上演するなど、バラエティー豊かな内容となった。このほか、従来の公演形態に捉われない新たな若手演劇人育成プログラムも始動するなど、普及啓発・人材養成事業にもさらに力を入れていくとのことだ。【世田谷パブリックシアター 2021年度主催事業】ホームページ: <国内演劇創作事業・海外招聘>●4月〜5月『フリーステージ 2021』4月29日(木・祝)~5月5日(水・祝)会場:ダンス部門 世田谷パブリックシアター音楽部門:シアタートラム / 出演:世田谷区民団体約50組●6月『狂言劇場 その九「法螺侍」「鮎」』会場:世田谷パブリックシアター総合演出:野村萬斎 / 出演:野村万作 野村萬斎 野村裕基 石田幸雄 ほか万作の会●7月『森 フォレ』会場:世田谷パブリックシアター作:ワジディ・ムワワド / 翻訳:藤井慎太郎 / 演出:上村聡史『せたがやこどもプロジェクト 2021』《ステージ編》フォルモサ・サーカス・アート(FOCA)『悟空~冒険の幕開け~』7月28日(水)・7月29日(木)会場:世田谷パブリックシアター出演:フォルモサ・サーカス・アート(FOCA)●8月『せたがや 夏いちらくご』8月8日(日・祝)会場:世田谷パブリックシアター出演:春風亭一之輔 ほか『日野皓正 presents “Jazz for Kids”』8月15日(日)会場:世田谷パブリックシアター出演:日野皓正 ほか『せたがやこどもプロジェクト 2021』《ワークショップ編》●9月世田谷アートタウン2021『三茶 de 大道芸』10月16日(土)・10月17日(日)会場:キャロットタワー周辺出演:国内外のパフォーマー約50組世田谷アートタウン2021関連企画「フランス フェスティバル 2021-2022」公式プロジェクトFrench Circus Focus 2021 / フランス×日本 現代サーカス交流プロジェクト『フィアース5』10月9日(土)~10月11日(月)会場:世田谷パブリックシアター演出・振付:ラファエル・ボワテル / 出演:日本のサーカスアーティスト5名世田谷アートタウン2021関連企画「フランス フェスティバル 2021-2022」公式プロジェクトFrench Circus Focus 2021『ぶくぶくマリンパレード』10月16日(土)・10月17日(日)会場:キャロットタワー周辺アーティスティックディレクター:ギヨミット出演:プラスティシアン・ヴォランほか世田谷アートタウン2021関連企画「フランス フェスティバル 2021-2022」公式プロジェクト日仏国際共同制作ダンス公演『ゴールドシャワー』10月15日(金)~10月17日(日)会場:世田谷パブリックシアター構想・出演:フランソワ・シェニョー、麿赤兒『MANSAI◉解体新書 その参拾弐』10月27日(水)会場:世田谷パブリックシアター出演:野村萬斎 ほか●11月〜12月『愛するとき 死するとき』会場:シアタートラム作:フリッツ・カーター / 翻訳・演出:小山ゆうな出演:浦井健治ほか『彼女を笑う人がいても』(仮題)会場:世田谷パブリックシアター作:瀬戸山美咲 / 演出:栗山民也出演:瀬戸康史、木下晴香、渡邊圭祐、近藤公園ほか世田谷パブリックシアター 若手演劇人育成プログラムHatch Out Theatre ハッチアウトシアター2021『子どものためのリーディング公演+ワークショップ』会場:シアタートラム●2020年1月〜3月『マーキュリー・ファー Mercury Fur』会場:世田谷パブリックシアター作:フィリップ・リドリー / 演出:白井晃翻訳:小宮山智津子 / 出演:吉沢亮 北村匠海ほか『地域の物語 2022』会場:シアタートラム
2021年03月01日女優・那須佐代子が支配人をつとめる小劇場「シアター風姿花伝」の年末恒例「風姿花伝プロデュース」公演が今年も本日12月4日(金)に開幕する。日本演劇界で活躍する俳優・スタッフ陣での密度の高い演劇作品の創作をモットーに、2014年よりスタートした同企画。昨年上演された『終夜』では主演の岡本健一が菊田一夫演劇賞を受賞するなど、これまでスタッフ、俳優共に数々の演劇賞を受賞している演劇ファンには見逃がせない公演だ。今回上演される『ミセス・クライン』は、実在の精神分析学者メラニー・クラインをモデルにした作品で、風姿花伝プロデュースでは初の評伝劇となる。フロイトに影響されて精神分析を学び、児童の精神分析の臨床研究における第一人者となったメラニー・クラインは、自身の子供たちをも研究対象としており、同じく精神分析学者となった娘・メリッタとは学説をめぐり激しく対立する関係になり、今作もその母と娘の断絶をベースに描かれている。舞台は第二次世界大戦前の1934年、春のロンドン。ミセス・クラインの息子でメリッタの弟であるハンスが山で事故死した数日後のある一晩の出来事を、ユダヤ人である3人の生活環境や、当時の精神分析のあり方を織り交ぜながら、肉親の死に際して一線の分析家でさえ制御しきれない精神活動の複雑さ、そのおかしみや母と娘という根源劇な立ち位置、その絶対性と不安性を描く。登場人物はミセス・クラインと娘メリッタ、同じく精神分析学者でクラインの信奉者であるポーラの女3人。那須佐代子、伊勢佳世、占部房子の実力派女優3人が演じる。演出は風姿花伝プロデュースでは『終夜』『悲しみを聴く石』『ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる』の3作を手がけている気鋭の演出家・上村聡史。精神の機微を学問する女3人の緻密な会話劇に期待が高まる。上演は12月20日(日)まで。風姿花伝プロデュース『ミセス・クライン』作:ニコラス・ライト演出:上村聡史出演:那須佐代子 / 伊勢佳世 / 占部房子2020年12月4日(金)~12月20日(日)会場:東京・シアター風姿花伝
2020年12月04日アイドルグループ・V6の坂本昌行が、舞台『Oslo(オスロ)』主演を務めることが14日、明らかになった。同作は2017年にトニー賞、オビー賞、ドラマ・デスク賞と、数々の演劇賞を総なめにしてアメリカ演劇界を席巻した話題作で、この度日本初演を迎える。1993年、世界中の注目が集まるなか、イスラエルとパレスチナの指導者たちは握手を交わした。両代表が初めて和平交渉に合意した「オスロ合意」が成立した歴史的な瞬間までに、何が行われていたのか、道程に大きく寄与した1人の男と、彼の熱意に突き動かされた人々の5カ月を描いた人間ドラマとなる。主演の坂本はノルウェーの社会学者テリエ・ラーシェンを演じる。仕事上イスラエルやPLO(パレスチナ解放機構)に知り合いが多く、風土や人々を魅力的に感じていた彼は、2人の少年がにらみ合って武器を手にしている光景を見かけ、「中東に和平を。少年同士がこんなことをしないで済むところへ」と決意を固める。テリエ・ラーシェンの妻で外交官のモナ・ユール役に元宝塚トップスターの安蘭けい、イスラエル側の新代表で外務省事務局長のウリ・サヴィール役に福士誠治、モナの上司であるノルウェー外務副大臣のヤン・エゲラン役にA.B.C-Zの河合郁人が決定した。演出は、第22回読売演劇大賞最優秀演出家賞、第56回毎日芸術賞・千田是也賞を受賞するなど手腕が高く評価されている気鋭の演出家、上村聡史が手掛ける。東京公演は新国立劇場 中劇場の2021年2月6日~23日、宮城公演は東京エレクトロンホール宮城にて2月27日・28日、兵庫公演は兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて3月3日~3月7日、福岡公演は久留米シティプラザザ・グランドホールは3月13日・14日、愛知公演は日本特殊陶業市民会館ビレッジホールにて3月20日・21日。○演出:上村聡史 コメント今から約30年前の中東といえば、緑の閃光蠢く湾岸戦争の空爆映像が強烈だったことを記憶しています。その強烈なイメージに隠れてしまったのか、現代史的にも奇跡的な出来事であった93年の「オスロ合意」の記憶は、おぼろげです。この歴史を題材にした本作は、人間性の豊かさや対話の奥行といった硬軟併せ持つ色彩で綴られます。決して大国とは言えないノルウェーの中立の立場で、信念を貫く社会学者テリエ・ラーシェンを演じる坂本昌行さんの力強い眼差しとおおらかなリーダーシップ、その妻で国際社会に切り込んでいくモナ・ユールを演じる安蘭けいさんの勇姿ある佇まい、合意という困難な壁に挑む登場人物たちを、14名の頼もしいキャストの魅力を活かして、今に再生したいと思います。この座組みなら、こんな時代だからこそ、絶望に差し込む光を身近なものとして、忘却されてはならない真実として、お見せすることができるでしょう。○坂本昌行 コメントちょうど僕がニューヨークに行っていたときに上演されていたのがこの『Oslo(オスロ)』で、とても話題になっていたのを覚えています。題材になっているオスロ合意に関してはニュースでしか知らなかったので、色々と調べていくうちに、様々な背景がある作品にお声がけいただいたんだなと改めて認識しました。当時の新聞記事に「忍耐と信頼」とありました。僕らも良く使う言葉だけれど、実際に経験された方から出る、重みを感じます。人が動くことで国をも動かす大きな話ですが、その人物の根底にある、軸にあるものを表現できたらと思います。河合くんとは、作品で共演するのは今回が初めてです。同じステージに立ったら、当たり前のことですが、先輩後輩は関係なく、一役者として向き合いたいので、自由にやって欲しいですね。舞台上で生きる、生でストーリーが展開していくというのは、唯一無二の機会だと思います。その喜びを感じながら、この作品のストーリーをお客さんにお届けできたらと思います。○安蘭けい コメントこのような作品に呼んでいただき大変嬉しく思っています。この作品の世界観を表現できるよう、よりわかりやすく伝えられるよう、世界の情勢も学びながら、稽古場で話し合いを重ねて作っていきたいです。遠く離れた国に起こった実話で、なかなか馴染みのない話かもしれませんが、坂本昌行さん演じるテリエと私の演じるモナという夫婦の、ふたりで世界を変えようと一歩踏み出した“信念”の物語でもあります。国や世界という大きな話ではなくとも、自分ではなく人のために、という想いはきっと皆さん持っていらっしゃると思います。ぜひ劇場で、同じ時間を共有しながら、彼らの熱い想いを一緒に感じてください。○福士誠治 コメント歴史的にこういうことがあったと演劇を通して知っていただけることや、立場の違う人たちが色々な感情をむき出しにしながら良き答えを導き出そうと繰り広げる討論、会話劇はとても魅力的で、刺激的な舞台になると思います。難しく考えずに、劇場に足を運んでいただけると嬉しいです。キャストの皆さんとの関係性、人間性の化学反応も楽しんでいきたいです。舞台が出来なかった期間を経て、演劇をライブでお客様に届けるという行為が、とても贅沢な時間だと改めて知りました。来ていただくからには、非現実の世界を味わって楽しんでいただきたいと思います。僕もあまりプレッシャーに感じず、キャスト・スタッフとともに楽しんで、挑んでいきたいです。○河合郁人 コメント台本を読み進めていく中で、セリフの量はもちろん、長セリフが数多ある事に驚きました。しかも二役。二役とも交渉を行っていくという責任感のある役ですが、実際の生活では経験したことが少なく、使う事の少ない言葉も出てきますが、僕の役どころ、キャラクターを考えると、明るく出来るのかな、と想像しています。あまり硬くなりすぎずに、決めるところは決める、というのを出せたらいいなと思います。また、坂本さんという舞台界において一流の先輩とご一緒できるのも心強いです。これまでミュージカルや舞台で沢山経験されたお話を聞かせて頂き、近くで勉強したいと思います。今年に関してですが、生で演じる舞台でお客様がいらっしゃると嬉しい、楽しいというよりも、観劇しに来て下さると"安心する"と今年の舞台では感じられました。観に来られる方にも、安心して楽しんで頂ける様に努められればと思います。
2020年11月14日東京富士美術館にて、『上村松園・松篁・淳之 三代展 〜近代が誇る女流画家とそれに連なる美の系譜』が2月29日(土)に開幕。4月12日(日)まで開催されている。明治後期から昭和初期にかけて、美人画の傑作を生み出した日本画家、上村松園(うえむらしょうえん)(1875〜1949)。明治8年に京都で生まれ、鈴木松年、幸野楳嶺、竹内栖鳳らに師事した松園は、京都の風俗、歴史、謡曲の物語等に取材した気品ある格調高い女性像を描き、1948年には女性として初めての文化勲章を受章。彼女の息子である上村松篁(しょうこう)、孫の上村淳之(あつし)もまた日本画家として活躍した。同展は、そんな松園から三代にわたって続く美の系譜を辿るもの。奈良県奈良市にある松伯美術館(上村松園・松篁・淳之の作品を収集・保管・展示する美術館)所蔵の作品を中心に、約80点におよぶ作品や資料が紹介される。展示は「第1部:上村松園」「第2部:上村松篁」「第3部:上村淳之」の3部構成。中でも「第1部」では、上村松園の生涯を大きく「建設期(=明治期)」「模索期(=大正期)」「大成期(=昭和期)」の3つの章に分け、折々のエピソードや松園自身の言葉、遺品なども交えて代表的な作品が並ぶ。明治・大正・昭和と時代が劇的に変化を遂げる中で、女流画家としての矜持を持って生き抜いた松園。その作品に込められた思いと、彼女が貫いた信念、人間性に迫っていく。「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである」(『青眉抄』より)松園が残したこの言葉のように、時代に流されない敬虔な眼差しで突き詰めた理想の女性の美、そしてそれに連なる美の系譜を堪能してほしい。なお、3月2日~3月16日は新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡散防止のため休館となる。【開催情報】『上村松園・松篁・淳之 三代展 〜近代が誇る女流画家とそれに連なる美の系譜』2月29日(土)〜4月12日(日)まで東京富士美術館にて開催※3月2日~3月16日は新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡散防止のため休館【関連リンク】 東京富士美術館()上村松園《楊貴妃》大正11年(1922)松伯美術館上村松篁《万葉の春(右)》昭和45年(1970)近鉄グループホールディングス株式会社上村松篁《万葉の春(中)》昭和45年(1970)近鉄グループホールディングス株式会社上村松園《わか葉》昭和15年(1940)名都美術館上村松園《青眉》昭和9年(1934)松伯美術館上村淳之《四季花鳥図(左)》平成 22年(2010)近鉄グループホールディングス株式会社上村淳之《四季花鳥図(右)》平成 22年(2010)近鉄グループホールディングス株式会社上村松篁《万葉の春(左)》昭和45年(1970)近鉄グループホールディングス株式会社
2020年02月29日新国立劇場の2020/2021シーズンラインアップ発表会見が1月8日に行われ、演劇部門の芸術監督の小川絵梨子、新たにバレエ・ダンス部門の芸術監督に就任する吉田都らが出席した。英国のロイヤルバレエ団で長年にわたりプリンシパルとして活躍してきた吉田監督は「(新国立劇場の)20年以上の積み重ねを大切にしつつ、新たなチャレンジをしていきたい」と意気込みを語る。就任1年目は『白鳥の湖』(新制作)で幕を開け、『くるみ割り人形』など古典作品が続くが「古典をすることで基礎の大切さ、テクニックの向上、スタミナ・筋力の強化ができる」とベース部分の底上げを図る。一方で「世界的にコンテンポラリーの比重が大きくなっていて、(古典とコンテンポラリー)両方、踊れることが求められる」とも。また「振付家の育成・発掘」も大きな課題とし「なぜロイヤルバレエ団が世界3大バレエ団と呼ばれるようになったか? 優秀な振付家を育てて素晴らしい作品を作ったから。新国立劇場から世界に発信できる作品を作りたい」と“世界”を見据えての育成を掲げる。「吉田都セレクション」と銘打った公演では、世界的に活躍する振付家デヴィッド・ドウソンがバッハのピアノコンチェルトに振り付けた『A Million Kisses to my Skin』、ピアソラのタンゴとバレエを融合させた『ファイヴ・タンゴ』などを上演する。演劇は、パリのオデオン劇場からの招聘作品で、世界的演出家イヴォ・ヴァン・ホーヴェ、主演に仏の国民的女優イザベル・ユペールを迎えての『ガラスの動物園』で幕を開ける。また、2009年より続いてきたシェイクスピアの歴史劇シリーズは『リチャード二世』で遂に完結を迎える。「人を思うちから」と銘打って日本で愛されてきた名作3作を届けるシリーズでは、第1弾で三好十郎作の『斬られの仙太』を上村聡史の演出によりフルオーディションで、第2弾では世界的人気を誇る故・今敏監督によるアニメーション映画を新国立劇場初登場の藤田俊太郎の演出で舞台化する『東京ゴッドファーザーズ』を、そして第3弾では小川監督自身の演出で井上ひさしの名作『キネマの天地』が上演される。小川監督は同企画について「損得とか正しいとか政治的に合っているとかじゃなく、根本に“人を思うちから”をみんなが持っているはず。それを改めて感じてもらえたら。人の“情”のお話であり、3作とも欧米では絶対に書かれない作品だと思います」と言葉に力を込めた。取材・文/黒豆直樹
2020年01月09日山種美術館では1月3日(金)〜3月1日(日)まで、同館が広尾に移転して開館してから10周年を迎えた記念特別展として『上村松園と美人画の世界』が開催される。生涯にわたり美人画を描き続けた日本画家、上村松園(1875〜1949)。京都府画学校を卒業後、早くから頭角を現した松園は、江戸や明治の風俗、和漢の古典に取材した女性像を描き、文展や帝展など数々の展覧会に出品を重ね活躍した。美人画の名手として高く評価され、1948(昭和23)年には女性として初めて文化勲章を受章。「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである」と語った松園が描き続けた気品ある美人画は、今なお多くの人々に愛されている。山種美術館の創立者で初代館長の山﨑種二(1893〜1983)は、松園と親しく交流しながら作品を蒐集。《蛍》《砧》《牡丹雪》などの代表作を含む計18点の作品は、山種美術館が所蔵する屈指の松園コレクションとして知られている。同展では、そんな松園の作品全18点を約3年ぶりに一挙公開。また、松園と同時代に活躍し「西の松園、東の清方」と並び称された 鏑木清方や、その弟子の伊東深水の美人画、さらに村上華岳、小倉遊亀、橋本明治などが手がけた美人画の名品も紹介する。季節を感じさせる衣装や丹念に描かれた日本髪、繊細な表情をみせる目元や指先など、松園芸術の粋を堪能するとともに、近代・現代の画家たちがそれぞれに趣向を凝らして描き出した美人画の世界の豊かな広がりや、その表現の展開を楽しんでほしい。【開催情報】『上村松園と美人画の世界』2020年1月3日(金)〜3月1日(日)まで山種美術館にて開催【関連リンク】 山種美術館()上村松園《蛍》1913(大正2)年絹本・彩色山種美術館上村松園《桜可里》1926-29(昭和元-4)年頃絹本・彩色山種美術館上村松園《新蛍》1929(昭和4)年絹本・彩色山種美術館上村松園《春のよそをひ》1936(昭和11)年頃絹本・彩色山種美術館上村松園《砧》1938(昭和13)年絹本・彩色山種美術館上村松園《春芳》1940(昭和15)年絹本・彩色山種美術館上村松園《春風》1940(昭和15)年絹本・彩色山種美術館上村松園《つれづれ》1941(昭和16)年絹本・彩色山種美術館上村松園《娘》1942(昭和17)年絹本・彩色山種美術館
2020年01月03日舞台『正しいオトナたち』が、11月28日(木)に東京・光が丘IMAホールのプレビュー公演で幕を開ける。ここ数年、フランスの劇作家ヤスミナ・レザの戯曲は、日本でも上演が相次いでいる。フランスの作家らしいシニカルな視点とウィットに富んだ会話が魅力で、本作はローレンス・オリヴィエ賞など多数の演劇賞を受賞。ジョディ・フォスターが主人公の女性作家を演じた映画版『おとなのけんか』(ロマン・ポランスキー監督、2011年)が話題を集めたのも記憶に新しい。今回の翻訳上演では、その女性作家役に真矢ミキを配し、岡本健一、近藤芳正、中嶋朋子という実力派が集結する。物語は、アフリカに関する著書をもつ作家ヴェロニック(真矢)と、小売業を営むミシェル(近藤)のウリエ夫妻、そして弁護士アラン(岡本)と資産運用の仕事をしているアネット(中嶋)のレイユ夫妻という、“知的階級のオトナ”4人の会話で展開する。場所はウリエ夫妻の居間、息子が同級生にケガをさせられたというので、その加害者側の親であるレイユ夫妻を自宅に呼んだのだ。最初は冷静さを装って“知的に”話し合いを始める4人だったが、そんな場でも仕事の電話に出るアランに、妻アネットの怒りが爆発!一方のヴェロニックとミシェルのほうも、次第に日頃のうっぷんが噴き出して……!?本作の見どころは、なんといっても丁々発止の会話の応酬だろう。子供のけんかについての両家の対立は、ふとした瞬間に妻対夫、さらには女性対男性など、多様なフェーズを迎え、飲み込みながら(時には飲み込めないまま)テンポよく進んでゆく。いかに“オトナ”とは、日々さまざまな事情を抱えながら、平静を装い過ごしていることか。彼らの姿を「あるある」と笑いつつ、割り切れない世のことわりに思いを馳せれば、ビターだけれど味わい深い、本作ならではの魅力に気づくはずだ。演出は、海外戯曲を読み解く手腕に定評のある上村聡史。5年ぶりの舞台出演となる真矢は、純粋なストレートプレイは意外にも今回が初めてとか。宝塚時代はシリアスからコメディまで、ひとりの人間を生ききる“芝居の人”として知られていた真矢。演技巧者の3人と共に、満を持しての舞台姿に期待したい。文:佐藤さくら
2019年11月28日小劇場の緊密空間で、上質のドラマがもたらす衝撃に震える。そんな演劇体験を提供してきた「風姿花伝プロデュース」の第6弾、『終夜』が9月29日(日)に東京・シアター風姿花伝にて開幕する。プロデュース第1弾(2014年)『ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる』の作者、スウェーデン作家ラーシュ・ノレーンが1983年に発表した、日本初登場の戯曲である。『ボビー・フィッシャー~』の演出も手がけた上村聡史が、岡本健一、栗田桃子、斉藤直樹、那須佐代子の、際立つ個性と実力を誇る4人の俳優とともに、ノレーンの怪作に再び挑む。「不思議な作風に惹かれます」と語るのは、シアター風姿花伝の支配人であり、これまでの6作品すべてに出演してきた那須だ。ノレーン戯曲の魅力、稽古の手応えについて聞いた。「上村さんは留学中にノレーンの作品に出会ったそうで、第1弾は候補作のひとつとして『ボビー・フィッシャー~』を提案してくださいました。でもご自身としては恐る恐る……というか、たぶん別の作品になるだろうと思っていたようです。大体の戯曲は、何かしらの完成形がイメージできるけれど、『ボビー・フィッシャー~』はあまりに難解で、まったくそれが見えなかった。でも、これはひょっとしたら面白いんじゃない?と私が言ったら、上村さんが“まさか選ぶとは”とびっくりして(笑)。ヘビーな話でしたから。でも結果的には良かったなと思います」父、母、娘、息子の家族4人、それぞれが内なる思いを激しく噴出させる壮絶な会話劇『ボビー・フィッシャー~』は、プロデュース公演の始まりを強烈なインパクトで彩った。今回の『終夜』は兄と弟、それぞれのパートナーによる同じく4人芝居。執拗に繰り返される兄弟、夫婦の衝突によって、人間の愛の渇望、究極の孤独が浮き彫りになっていく。「作家というものは、“これを届けたい”という思いを持っているものだと思うんですが、ノレーンの場合はそれが本当にわかりにくい。劇構造を安易に提示することを嫌悪している、そんなふうに書いてもいる作家なんですよね。わかりやすいものを客に持ち帰ってもらう、なんてことに嫌悪感がある。劇構造を裏切っていきたい思いがあるのでしょう。今回の作品は夫婦喧嘩が延々と続くんですが(笑)、ノレーンは詩人でもあったので、言葉が面白いんですね。どんどん喧嘩が煮詰まっていくけれど、そこにちょっと抜け感があるというか。どこかで“え?”と肩透かしされるような、ユーモアと言っていいのかわからないけれど、不思議な風通しの良さがあるんです」母親の葬儀を終えて帰宅した精神科医ヨン(岡本)とその妻シャーロット(栗田)。そこへヨンの弟アラン(斉藤)とその妻モニカ(那須)が訪れる。不仲の兄弟、そして夫婦の間に沸き起こる不協和音はさまざまな組み合わせによって反響を繰り返して……。それぞれの抱える不安、不満、鬱屈が暴力的に露出していく展開を追っていくのは何とも息苦しいが、那須の言葉通り、ところどころで吹く渇いた風が頬を緩ませ、笑いが心を救っていく。「母親の死の後、というところが大きなポイントでしょう。身近な人が亡くなった後には、人間の内側にあるものが表に出ちゃったり、何かが起きますよね。今、稽古をしていて思うのは、この4人がすごく可愛らしいなと。シャーロットなんて本当にくどくどとうるさくて半分クレイジーに感じる女だから、やり方によっては嫌われる役だと思うんです。でも栗田さんが演じると、彼女の持つピュアな雰囲気によって嫌いにならない。生命力を強く持った女性として、シャーロットをとてもチャーミングに演じてくださっています。岡本さんも、私は彼のことをすごく色っぽい人だと思っていて。これまでシェイクスピア作品などでご一緒することが多かったんですが、今回はわりと等身大の役で、このヨンという人は自分から発信していくというよりは、受け身の立ち位置にいるんですよね。そんなキャラクターに、岡本さんの色気がとても発揮されていると思います。斉藤さんは踊りをやっていらした人で身体表現がすごく上手だから、アランが最後、崩壊していくところなんて、もう無茶苦茶な感じが体全体から滲み出て、滑稽で笑えるくらい。私が演じるモニカもこれまでやったことのない役で、ちょっと不思議な女の人です。この戯曲、ものすごく重くて暗い話にもできるし、コメディっぽく作ることもできる。誰が演じるかによっても大きく違って見えるから、“今、この座組で作るこの作品をどう届けるのか”ということを、上村さんが一生懸命に考えてくださっています」『ボビー・フィッシャー~』では、読売演劇大賞において作品賞、出演の増子倭文江が優秀女優賞、上村が最優秀演出家賞を受賞し、以降の風姿花伝プロデュース作品でも俳優、スタッフに賞をもたらしている。小劇場のプロデュース公演という稀な形態で輝かしい実績を生み出したのは、那須の奮闘はもちろんのこと、もうひとりのプロデューサーの尽力も大きかった。「一昨年に亡くなられた俳優の中嶋しゅうさんがこの劇場を気に入ってくださって、“2019年まではプロデューサーとして関わる”と言ってくださっていたんですね。それでいろんな方に声をかけてくださった。岡本さんもそうですし、昨年の第5弾『女中たち』演出の鵜山仁さんや、今回なら照明の沢田祐二さんなど、一流のスタッフの方々が関わってくださるのも、しゅうさんのおかげです」名プロデューサーがつなげた豊かな人脈によって、今年も風姿花伝に骨太の大作が立ち上がる。予告された上演時間は、実に4時間半だ。「原作は7時間くらいあるんです」と聞いてさらに驚く。現状は、「今の稽古の感触では、休憩含めても4時間以内に収まりそう」とのこと。この空間だから成立する濃厚なドラマセッションに、観客としてぜひ参戦したい。「今回は一日一回公演しかできません。岡本さんは“3カ月くらいやろうよ”と最初は言ってたけど(笑)。第6弾を迎えて、ありがたいことに“見応えのあるストレートプレイをやっている”イメージが定着してきているので、4時間も何のその!といった気持ちで来てくださるといいなと思っています(笑)」取材・文:上野紀子
2019年09月27日上村祐翔、梅原裕一郎、河本啓佑、小林裕介、白井悠介、本城雄太郎、山本和臣と、いまをときめく男性声優たちが集結したイベント「声優男子の夏休みですが…?」が8月18日に実施。そこで、劇場版の製作も発表され、どよめきと大爆笑が起こった。ファミリー劇場オリジナル番組「声優男子ですが…?」のイベントとしては、2016年11月に開催された「声優男子学園スペシャル参観日ですが…?」以来、今回約3年ぶりにメンバー7人全員が揃い踏み!タイトルにちなんで、キャストたちが浮き輪や虫捕り網、空気入れなどを片手に登場した。今年で5周年を迎える本番組。イベントでは、7人の絆を改めて確かめるべく、数々の試練を用意。最初に行われたのは「全員正解クイズ」。“2016年のイベントにて上村が描いた作品は?”という問題には、正解となるフラミンゴのポーズを全員で一斉に取るシュールさと、上村さんの画力にツッコミを入れる展開に。また、絆があれば目隠しをしてもアクションだけでメンバーを当てられるはず…ということで、「利き声優男子」に挑戦。目隠しした山本さんが、握手するだけで誰なのかを当てるという難問だったが、手の感触だけで河本さんだと見事正解を導き出した。ほかにも、「お絵描きしりとり」や「みんなで団結!スイカ割り」など、5年分の絆を確かめる企画盛りだくさんのイベントとなった。そして全ての試練が無事に終わると、会場のスクリーンに劇場版の製作決定が映し出され、会場からはどよめきと笑いが。「どういうこと?(笑)」「バラエティ番組でしょ?(笑)」「どうなるのかね」と出演者も戸惑いを隠せない様子。まず、上村さんが「まさかの劇場版。笑っちゃった。皆さんの応援でここまできました。今までと違った姿が見せられると思うので、これからも応援してください」と呼びかけ、梅原さんも「劇場版でも面白いものを作れたらなと思います」、本城さんも「まさかこの番組が映画化するなんて。自分の中でもどうなるかなって整理がつかない。精一杯頑張ります」と意気込み。白井さんは「劇場版は皆が応援してくれたからこそ。集大成みたいな意味もあるけどそこで終わらせたくない。10年くらい続けたいです」と感謝とさらなる意欲を述べ、河本さんは「前回海外ロケも経験して、みんなのイイ緊張感が出せるようになってきたので、その良さを消さないように劇場版も頑張っていきたいと思います」とコメント。そして小林さんと山本さんも「劇場版はどうなるか僕たちも未知ですし、皆さんも未知ですし。でも今日やってみて5年続くのはすごいし、培ったものがあることが確認できた」(小林さん)、「改めて何も言わなくてもわかるような雰囲気があって、皆で作ってきた空気感が劇場版発表の爆笑につながった。感慨深い」(山本さん)とそれぞれ劇場版への思いを語り、イベントは大盛況の中終了した。劇場版『声優男子ですが…?』(タイトル未定)は2020年公開予定。「声優男子ですが…?」最新のシーズン4などは会員制サービス ファミリー劇場CLUBにて配信中。(cinemacafe.net)
2019年09月04日2014年に蜷川幸雄演出の『皆既食』で初舞台を踏んで以来、年1回ほどのペースで舞台に立ってきた岡田将生が、今年は5~6月の『ハムレット』に続いて早くも2作目の舞台主演を果たす。シェイクスピアの古典劇から松尾スズキ作・演出の新作までを演じ切る彼が今回挑むのは、『プライド』(2008年)でオリヴィエ賞にも輝くイギリスの劇作家、アレクシ・ケイ・キャンベルによる2013年初演のサスペンスドラマ、『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~』。12歳の少年の霊に取り憑かれる22歳の青年、テレンスを演じる。舞台は1937年のイギリス、ヨークシャー州。裕福な炭鉱主ハロルド・プリチャード(益岡徹)と妻のエリザベス(木村多江)は、10年前に一人息子のエドガーを事故で亡くしていた。ふさぎ込むエリザベスを励まそうとプリチャード家を訪ねてきたのは、かつて一家と家族ぐるみで親しくしていたものの、事故をきっかけに疎遠になっていたエイブリー家の面々。エドガーの親友だったエイブリー家の一人息子テレンスは、やがてエドガーの霊に取り憑かれ、事故現場である廃坑ブラッケン・ムーアへと向かう……。ホラーであり人間ドラマでもありそうな戯曲を演出するのは、過去に『弁明』などのキャンベル作品も手掛けた経験のある上村聡史。岡田、益岡、木村いずれも彼とは初顔合わせで、その化学反応にも期待が高まる。注目の舞台は、8月2日(金)から4日(日)までプレビュー公演として東京・THEATRE1010で上演された後、各地で公演を行う。文:町田麻子
2019年08月02日イギリス人劇作家アレクシ・ケイ・キャンベル作の『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~』の日本初演が、今夏、上村聡史の演出により、日比谷・シアタークリエで幕を開ける(プレビュー公演あり)。そこで主演の岡田将生に話を聞いた。【チケット情報はこちら】2014年の初舞台から、年にほぼ1本のペースで舞台経験を重ねてきた岡田。だが今年は『ハムレット』に続き、早くも2本目の舞台出演となる。「初舞台の時から勉強させてもらうことがたくさんあり、舞台への想いがどんどん強くなっていきました。舞台は今回で6本目ですが、自分の中で100点が出たことはまだ1度もありません。大千秋楽を迎える度に、いつも少し後悔している自分がいて。でも年に1本だとどうしてもそういう感覚は忘れてしまいがちなので、今回間を空けずにまた板の上に立てるのはすごく嬉しいです」物語の舞台は1937年のイギリス・ヨークシャー州。かつて事故によりひとり息子のエドガーを失ったプリチャード夫妻のもと、エイブリー一家が訪ねてくる。岡田が演じるのは、エイブリー家のひとり息子で、エドガーと親友だったテレンス。「まずはホンが本当に面白いと思いました。人間の愚かさや想像力の豊かさなど、無限の可能性を感じて。僕が演じるテレンスにしても、いろいろな演じ方があると思っています。テレンスはエドガーの霊に憑りつかれてしまうのですが、それこそ僕はふた役だと思っています。しかも共演者の皆さんは、僕が何をやっても受け止めてくださるような方ばかり。胸をかりるくらいの気持ちでやらせてもらえたらと思います」“ふた役”と言えば、前作で岡田が演じたハムレットにもふたつの顔があり、また非常に頭がいいなど、テレンスとの共通点は多い。「たぶんそういう役どころが好きなんでしょうね(笑)。人って多面性を持っていて、自分がお芝居をやっていて見せたいと思うのはそういうところ。テレンスにしろハムレットにしろ、いろんな演じ方、可能性があることに、僕は楽しさを感じているんだと思います」『ハムレット』という大作を経て、岡田はどんな成長を見せてくれるのだろうか。「『ハムレット』をやる前と後では、このホンの印象が全然違いました。やっぱり無駄なことって何もなくて、ひとつずつ丁寧にやることで自分の視界も広がっていくし、物事の考え方も深くなっていくんだなと。本当にいいタイミングでこの作品に出合えたと思いますし、『ハムレット』を終えてよりやりがいを感じています」公演は8月2日(金)東京・THEATRE1010より。その後、静岡、愛知、東京、大阪を巡演する。取材・文:野上瑠美子ヘアメイク:三宅 茜スタイリスト:大石裕介衣装協力:コート・・HENRIK VIBSKOVシャツ&ショーツ・・HAUDシューズ・・Parabootソックス・・スタイリスト私物
2019年06月26日公演初日を迎えた舞台『オレステイア』のフォトコール&囲み取材が6日、東京・初台の新国立劇場 中劇場で行われ、主演の生田斗真をはじめ、音月桂、趣里、横田栄司、神野三鈴が出席した。同舞台は、世界から注目されているイギリスの作家・演出家であるロバート・アイクによる『オレステイア』の日本初演。アイスキュロス作の『オレステイア』三部作(『アガメムノン』『供養する女たち』『慈悲深い女神たち』)を軸に、ギリシャ悲劇を換骨奪胎して大胆に再構成した意欲作だ。 主人公のオレステス役にあは生田斗真、演出には近年話題作を発信しつづける上村聡史が担当している。主演の生田斗真は、演じるオレステスというキャラクターについて「基本的にずっと悩み続けていて、何が現実で何が夢の中で何が頭の中の話なのか、ひたすら思い悩んでいるという感じです」と説明し、「4時間半舞台上にいるというのが、今回一番大変なところだと思います。細かな表情だったり声色の変化を出していけたらと思います」と見どころを語った。4時間半という長丁場については「インスタグラムやYouTubeで短い映像が多く見られると思いますが、その時代と逆光して4時間半もあって、4時間半僕はずっと出ずっぱり。僕の腰が壊れるか、お客さんのお尻が壊れるかガチンコ勝負ですよ(笑)」と笑いを誘いつつも、「良いクッションを用意していますので安心かなと思いますが、お尻にはぜひ気をつけてください」と観客を気遣った。前日には生田の高校の1年後輩にあたる蒼井優が南海キャンディーズの山里亮太と結婚を発表。それをニュースで知ったという生田は「ビックリしました。あっ! (相手が)山ちゃん! ってビックリしましたよ」と驚いたといい、「(蒼井のことを)すごく良い奴ですよね。いい子というよりは、いい奴というイメージです。山ちゃんも大ファンですし、ハッピーな話題は僕たちもうれしくなりますよ」と祝福。蒼井にはまだ連絡はしてないそうだが、「芸能ニュースを見て連絡するのもミーハーみたいで恥ずかしいですから、会った時にでも言おうかなと思っています」と再会を楽しみにしている様子だった。舞台『オレステイア』は、6月6~30日(10・17・24日は休演)に東京・初台の新国立劇場 中劇場で公演される。
2019年06月06日「乃木坂46」堀未央奈が映画初出演にして初主演を務める映画『ホットギミック』(山戸結希監督)に、桜田ひより、上村海成、吉岡里帆が出演していることが新たに分かった。堀さん演じる主人公・初が、幼なじみの橘亮輝(清水尋也)、小田切梓(板垣瑞生)、兄・成田凌(間宮祥太朗)の間で“本物の恋”を求めて揺れ動く、現代の女の子の葛藤と成長を描く青春映画。そんな若手俳優たちがメインキャストとして出演する本作をさらに盛り上げる、注目の3名がこのほど明らかに。桜田ひより、主人公の妹役に『脳内ポイズンベリー』『ういらぶ。』などに出演、ミスセブンティーン2018に選出されモデルとしても活躍中、また『東京喰種トーキョーグール2(仮)』『男はつらいよ おかえり 寅さん』と大きな作品への参加も発表され、今後の活躍も見逃せない桜田さん。Aimerの「Ref:rain」のMVに続いて2度目の山戸監督作品となる彼女が今回演じるのは、初とは正反対の性格で、早熟で初よりもどこか大人っぽく見える初の妹・茜。初の恋にどう関わってくるのか注目だ。コメント山戸監督とお仕事をさせて頂くのは、以前ご一緒したMVの撮影以来2回目となります。私の意見を尊重して頂きつつ、また繊細なところまで演出をして下さいました。とても演じやすい環境を作ってくださったので、のびのびと成田茜を演じることが出来ました。感謝の気持ちでいっぱいです。上村海成が主人公の幼なじみ役初の同級生で同じマンションに住む幼なじみの八木すばるを演じるのは、2010年「ニコ☆プチ」でモデルデビューし、「ミュージカル・テニスの王子様3rdシーズン」『ちはやふる』に出演した上村さん。昨年放送された連続テレビ小説「半分、青い。」では、永野芽郁演じるヒロインの弟・草太役を演じたことも記憶に新しい彼が、今回オーディションでこの役に抜擢。初への恋心を秘めつつも、茜の猛烈なアプローチに不思議と惹かれていき、初と茜の間で揺れ動く複雑なキャラクターに挑戦する。コメント山戸監督と初めてご一緒させていただいたのですが、細かく演出していただき、納得いくまで演技に向き合うことができ、とても勉強になりました。演じることがすごく楽しいと思える現場でした。吉岡里帆、影のある一面も見せるマネージャー役「メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断」「カルテット」をはじめ、続々とドラマに出演、ヒロイン役で出演する『パラレルワールド・ラブストーリー』がもうすぐ公開を迎える演技派女優の吉岡さん。今回彼女は、板垣瑞生演じる小田切梓が所属するモデル事務所のマネージャー・葛城リナ役で出演。演じるリナは、マネージャーとして梓を支えているように見えるが、実は生い立ちの似ている梓に依存し支え合っているという複雑な役どころ。時折、影のある一面も見せるリナという女性の繊細な表情にも注目。コメント山戸監督にしか思いつかない独特な世界観。思い描いている映像を皆で具現化しようとする結束力を感じる現場でした。繊細かつ妥協を許さない監督と一緒に、1カット、1カット噛みしめながら撮影していました。私は短い時間でしたが、ティーンの甘酸っぱさや苦味に遠目から触れる事が出来て、大人冥利に尽きる役でした。久しぶりの悪役、楽しかったです!『ホットギミック』は6月28日(金)より全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:ホットギミック 2019年6月28日より全国にて公開Ⓒ 相原実貴・小学館/2019「ホットギミック」製作委員会
2019年03月16日日本でも『ART』『大人は、かく戦えり』(ロマン・ポランスキー監督で「おとなのけんか」として映画化)などが上演されているフランスの女性劇作家ヤスミナ・レザの最新作『大人のけんかが終わるまで』が、6月30日・7月1日の東京・THEATRE1010でのプレビュー公演を皮切りにスタートした。キャストは、メインとなる不倫中のカップルに鈴木京香と北村有起哉、彼らが出くわす夫婦に板谷由夏と藤井隆、その姑に麻実れいという“大人の”充実した顔ぶれ。そんな5人の浅いような深いような会話で編み上げたレザ戯曲を、自身のセンスも交えて上演台本にしたのは岩松了。今春に文学座を退座し新たな一歩を踏み出した演出家・上村聡史が、それらを束ねて人間くさくも洒落た悲喜劇に仕上げた。チケット情報はコチラローリング・ストーンズ「サティスファクション」が流れる冒頭。シングルマザーのアンドレア(鈴木)と妻子持ちのボリス(北村)は粋なレストランでデート中だが、些細なことから口論が始まる。帰ろうと車を発進させたそのとき、ある奇妙な老女と接触。その女性・イヴォンヌ(麻実)は、ボリスの妻の親友・フランソワーズ(板谷)の夫(厳密には内縁関係)・エリック(藤井)の母であり、彼らもイヴォンヌの誕生日を祝いに、このレストランを訪れていた。「一杯だけでも」とアンドレアたちを誘ったエリックの一言で、2組のカップルと老女が織り成す嵐のような一夜が始まる……。タイトルにあるごとく、劇中の会話の7割は“けんか”。大げさかもしれないが、体感としてはそんな印象だ。アンドレアvsボリスだけでなく、対戦カードはめまぐるしく入れ替わる。会社経営者のボリス、弁護士のエリックら登場人物は皆ハイクラスの人間。だがひと皮むけば、ボリスは破産寸前だし、フランソワーズは認知症傾向にある義母イヴォンヌの世話でストレスが溜まっている上に、夫の関係も安泰ではない。それらがわかると、縁遠いセレブ層の物語と感じていたであろう観客との距離はどんどん縮まり、仮面を脱ぎ出した彼らも、元も子もない「みんなクソッタレだ!」発言や大人気ない取っ組み合いで、真の姿に近づいていく。その意味では、パートタイマーでシングルマザーのアンドレアは唯一最初から取り繕っていない人物。己の欲望に忠実すぎる奔放な女性像は日本の観客に受け入れられるのが難しいようにも思えるが、鈴木の柔らかな持ち味で包むことにより、その正直さが好感を与えるキャラクターに着地した。それにしても……ナイフも銃も登場しないが、言葉はかくも人を傷つけ、(心を)血みどろにするのかと思い知る。イイ大人たちの、100分間の仁義なき口げんか!その結末は劇場で。公演はこのあと、7月14日(土)から29日(日)の東京・シアタークリエほか、愛知・静岡・岩手・大阪・広島・福岡・愛媛・兵庫でも上演される。(取材・文:武田吏都)
2018年07月04日『大人のけんかが終わるまで』のプレビュー公演が6月30日、7月1日にシアター1010で上演された。愛知、静岡、岩手ののち、7月14日(土)から29日(日)まで東京・日比谷・シアタークリエ、その後、大阪、広島、福岡、愛媛、兵庫と続く。【チケット情報はコチラ】フランス発の“滑稽な大人のコメディ”に挑戦するのは、気鋭の演出家、上村聡史。ある一夜に偶然出会った大人たちの、切実かつしょうもないけんかを描く。不倫中のアンドレア(鈴木京香)とボリス(北村有起哉)は、お洒落なレストランの駐車場で大げんか。奥さんの勧めたレストランに連れてきたことを「デリカシーがない!」と非難され、嫌気がさしたボリスは「もう帰ろう」と車を発進させる。しかしその時、誤って老女イヴォンヌ(麻実れい)を轢いてしまう!?しかも居合わせた老女の息子エリック(藤井隆)の嫁フランソワーズ(板谷由夏)は、ボリスの妻の親友だったので、大変!不倫関係を誤魔化そうとするボリス。蔑ろにされヒステリックになるアンドレア。認知症のイヴォンヌ。その母を甘やかすエリックと、母子に振り回されるフランソワーズ……5人の勝手な思いが混線し、それぞれ我慢していた感情が浮き彫りになっていく。大人たちの身勝手なやり取りを笑っているうち、ふとこちらも真顔になってしまう瞬間が恐ろしい。作品の魅力について、鈴木は「どのキャラクターにもイヤな人がいない、どこか共感してもらえるところがある」とコメント。北村は「大人のコメディと銘打っていますが、それだけではなくて、もっとたくさん色々なお土産が出来る、色んな想いを残して余韻に浸れる舞台」と寄せた。初日前日のコメントで、藤井は「緊張感がいまMAXの状態です。なんとかこの場に慣れるように、努めます!」と緊張のようす。一方の板谷は「いざ舞台に立つと、空気感といいますか、自分の中の何かが変わるのを感じ、一生懸命に稽古したことや、稽古のとき以上のものを出せるように、頑張るしかない」2組のカップルの中でひとり異なるポジションの麻実は「ちょっと辛口の楽しい作品」との前置きに続き「是非ご夫妻でらっしゃるととても面白いと思います」とコメントした。みっともないけど目が反らせない大人のコメディ。岩切正一郎の瑞々しい翻訳に、岩松了の深部をくすぐる脚本。節々の音楽が5人の感情の疾走感を増す。上村聡史の肉感的かつ冷静な演出が小気味良く、終盤は文字通りハッと息を飲んだ。取材・文:河野桃子
2018年07月03日『大人は、かく戦えり』や『ART』で知られるフランス人作家、ヤスミナ・レザの最新作となる舞台『大人のけんかが終わるまで』が日本初上陸。演出に上村聡史、上演台本に岩松了を迎え上演される。そこで7月の開幕を前に製作発表が行われ、出演者の鈴木京香、北村有起哉、板谷由夏、藤井隆、麻実れいの5人が登壇した。【チケット情報はこちら】不倫中のアンドレアとボリスが偶然レストランで出くわしたのは、ボリスの妻の親友のフランソワーズ。彼女の内縁の夫エリックと、その母親イヴォンヌとともに5人で食事をすることになるのだが、徐々にそれぞれの不満があふれ出し…。会見ではまず、欠席の上村からのコメントが披露された。本作について上村は、「相当面倒くさい大人たちのけんかになることが予想されます」と前置きした上で、「ですがそれは失われてしまった青春を取り戻すかのような狂乱のセレモニーのようで、ある美しさも兼ね備えた作品になるかと思います」と解説。上村の骨太な演出により、フランス発の大人のコメディがどう仕上がるのか、期待は高まる。続いてキャスト陣の挨拶へ。アンドレア役の鈴木は、上演台本を読み終わった時のことを「大人って切ないなって、ちょっと胸がキュンとしたんです」と振り返り、「本当にいいお話ですし、すべての大人の方に観ていただきたいです」とアピールする。一方ボリス役の北村は、「読みながら吹き出してしまうくらい楽しいホン」と笑い、「これをどこまで攻め、どこまで安定したところで皆さんとやれるのか、本当に楽しみです」と抱負を語る。フランソワーズ役の板谷は、これが2本目の舞台。緊張の面持ちながら「裸で飛び込みたい」と切り出し、「あまり脳みそで考えず、体で感じたまま先輩方についていきたいです」と意気込む。エリック役の藤井は、「皆さんとの稽古を存分に楽しませていただいて、それでお客さまに笑っていただけたら、こんなに幸せなことはありません」と期待で胸をふくらませる。そしてまだらボケのイヴォンヌを演じる麻実は、「周りの仲間に“こういうお役をいただいたのよ”と話したら、“あなたは何もつくらず、そのままやればいい”と言われたんです」とクスリ。会場の笑いを誘っていた。また会見の後半には、心理テストをもとにしたキャストの“けんか力”を発表。けんか上級者から初心者までの4タイプのうち、北村以外の4人は中級者。唯一の初心者と診断された北村は、「お手柔らかにお願いします」と苦笑いを浮かべていた。舞台『大人のけんかが終わるまで』は6月30日(土)・7月1日(日)に東京・シアター1010で行われるプレビュー公演を皮切りに、全国各地を巡演。取材・文:野上瑠美子
2018年05月11日2月20日にシアタートラムで開幕した『岸 リトラル』。この舞台から発せられる熱量は何なのだろう──。父親の遺体を埋葬するために、旅に出た息子。現実と空想が入り混じり、生と死のはざまで国境も越え、時空をいともたやすく超えてしまう、荒唐無稽な物語の幕がおりたときの客席も巻き込んだ高揚感。『岸 リトラル』は決して万人に喜々として迎えられる芝居ではないかもしれない。が、死してなお息子に悪態をつく父親、息子の空想上の親友である騎士たちも含め、確かにそこには人間が存在する。研ぎ澄まされた深い愛を感じずにはいられない。 刺激的な3時間半の初日の舞台を終えた出演者は言う。舞台『岸 リトラル』チケット情報「旅が始まった!という気持ちです。『お客様が受け止めてくれている』『一緒に旅をしている』という実感が波のように襲ってきました。そして自分たちでは見つけられないゴールに、急に連れて行ってくれた感じがして、とても嬉しかった」と母親ジャンヌと歌う娘シモーヌ役の中嶋朋子。騎士ギロムランと映画監督、盲目の老人の3役をやり終えた大谷亮介は「ほぼ全員が何役も演じるので出ずっぱり、セットも入り組んでいるというハードな芝居をやりきったのは、いろんな感慨があります。特に抽象的なギロムランをどう演じるか、稽古場では苦労しましたが、でも実際に人間には現実だけでなく、頭のなかには空想が常にある。現実をただ辛く描くだけではないこの作品でも、必要な登場人物だと思って演じました」と。ほぼ出ずっぱりの息子役、亀田佳明は「明日またどういう風に挑めるか、ウィルフリードとしては、写し鏡のように相手役の方と向き合うことでしか演じられないと感じています。千秋楽までとにかく瞬間瞬間、高みを目指してウィルフリードとして存在していきたいです」と気持ちはすでに前へ。そして「しゃべる死者」である父、岡本健一は、「いまここに生きている自分たちへのメッセージを、この作品は伝えてくれるような気がしています。この登場人物たちは様々な人との出会いによって人生がいい方向に変わっていく。それと同じように、僕たちも上村くんが船頭となって導いてくれる船に、みんなで全身全霊を込めて信じて乗っかっていく」と、『炎 アンサンディ』でもタッグを組んだ上村聡史の演出力をたたえる。その上村は「難しいか難しくないかでいうと、難しい芝居かもしれないです。でも心地よい爽快感もあって、感覚的に伝わることが大事な作品でもありますので、最後のシーンでのお客様の反応を見て、それを受け取っていただけたのかなと感じています」ほかに、栗田桃子、小柳友、鈴木勝大、佐川和正も時に応じてひとり何役も演じ、レバノン出身の作家、ワジディ・ムワワドの誌的なセリフを劇場に響かせる。果たして父子は、魂の還る場所にたどりつけるのだろうか。3月11日(日)までシアタートラムにて上演、3月17日(土)に兵庫公演。
2018年02月26日1月11日、新国立劇場2018/2019シーズンのラインアップ説明会が行われ、舞踊芸術監督の大原永子、次期演劇芸術監督の小川絵梨子が、それぞれ新シーズンの方針を語った。4期目を迎える舞踊芸術監督の大原は英国ロイヤル・バレエで初演され、演出の斬新さや多様性ある振付で注目を集めた『不思議の国のアリス』をオーストラリア・バレエと共同制作のもと、日本のバレエ団として初めて上演することを発表。『くるみ割り人形』『シンデレラ』など新国立劇場を代表するような演目も並ぶ。また、新国立劇場バレエ団所属のダンサーたちの成長にも触れ、「彼らの踊りをみてほしい」と語る。さらに海外で実力をつけたダンサーたちのなかにも、この劇場に立ちたいと熱望している人々がいることを明かし、「20年の歴史は海外のナショナルバレエ団に比べると浅いけれども、一生懸命走って追いつこうとしている」と話した。30代にして演劇芸術監督に就任した小川は「幅広い観客層に演劇を届ける」「演劇システムの実験と開拓」国内外の作り手との交流による「横の繋がり」を方針に掲げ、全キャストをオーディションで選ぶ鈴木裕美演出の「かもめ」、1年間をかけて作品を育てていく「こつこつプロジェクト」など特徴ある試みを発表。かねてよりファンだったという少年王者舘の新作公演や、同世代で信頼をおいている上村聡史演出によるギリシャ悲劇「オレステイア」の日本初演など、魅力的な演目が並ぶ。また、小川自らの芸術監督就任後初演出作品としては登場人物が3人のみのデイヴィッド・ヘアの「スカイライト」を蒼井優主演で上演することも発表された。オペラ部門の芸術監督に就任する大野和士は「オペラ、バレエ、演劇の部門を横断し、ひとつの作品をそれぞれで上演するようなこともできたら」と新たなコラボレーションが生まれる可能性を示唆。新シーズンを迎える新国立劇場に期待が募る。説明会後の演劇記者懇親会に参加した小川は「自分の任期だけでなく、50年後を見据えて長い目で取り組みたい」と表明。上演の有無さえ決めず、じっくりと時間をかけて作品と向き合う「こつこつプロジェクト」について問われると「自分も参加したいほど。私自身、千秋楽の日に“ここから稽古を始めたい”と思うことがあるんです!」と熱弁。さらに「たくさんの観客を呼べる公演と、練り上げることを第一とした公演、両極端のものをやりたい。それは決して相反するものではないとも思う」と意欲を見せた。2018/2019シーズンは10月からスタートする。取材・文/釣木文恵
2018年01月12日レバノン出身の劇作家ワジディ・ムワワドが執筆し、数々の演劇賞に輝いた『炎 アンサンディ』に続き、上村聡史が演出を手掛ける『岸 リトラル』が東京・シアタートラムで上演される。舞台『岸 リトラル』チケット情報生きる意義を見いだせない青年・ウィルフリードと自らの死を受け入れられない父親・イスマイルの魂が、死体を埋葬すべき場所を求めて旅するさまを描く本作。ウィルフリードの死んだ母親や父子が旅路で出会う“歌う娘”など4役を演じるのが、上村作品初出演となる中嶋朋子だ。8年前に初めて本作を読んだという上村。改めて本を読み返し「荒唐無稽に突っ走りながら、古代と現代を行き来するような叙事詩のような質感が面白いと感じた」と明かす。『炎~』を含めたムワワドの“「約束の血」四部作”の第一作目に位置づけられ、作者が28歳の時に書いた作品だが、いま読んで、強く感じたのは若さゆえのエネルギーだという。「何かを創造し、世界を変革するには、このエネルギーは必要なんだと感じました。個人史的な部分から、大きな歴史――『オイディプス王』からシェイクスピアの『ハムレット』、ドストエフスキーの『白痴』まで様々なモチーフを抱えながら、大きな物語に展開していく。いまだからこそ、それをやりたいと思った」中嶋は、上村の舞台を観て「個人的で、でもすごく大きな物語があると思う」とムワワド作品と重なるものを感じているようだ。中東の荒野で展開する壮大な物語に圧倒されつつ、ワクワクした気持ちも抱いている。「『炎~』もそうなんですが、どうやって稽古から作っていったの? と感じさせるんです。今回、オファーをいただいて、掴み切れないような大きさを感じつつ、でも『あぁ、演劇するってそういうことなんだ』とどこかで思わせてもらいました。いまは『上村さんにすごい切符をもらったぜ!』と思ってます(笑)。私にとって新たな格闘のスタイルになると思うし、地球の硬い核のような深い部分まで掘り起こさないといけない何かがあるはずで、そこに触れた時、私はどうなるんだろう? という気持ちです。いまはまだ、全く想像がつかないですけど、生命として海から陸に上がって、肺呼吸になるくらいの変革、衝撃があるんじゃないかと思ってます」そんな中嶋に対し、上村は彼女の発する声、言葉に特別な“何か”を感じたという。「言葉が美しいんですよね。リアルなお芝居でも古典でも、発語された言葉が透明感をもって伝わってくる。愛することや憎しみ、その葛藤や、静謐さが時に荒々しさをもって、中嶋さんの声を通して伝われば」と期待を寄せる。その発言を受けて中嶋は「未知数です」と苦笑しつつ、歌で世界を変えようとする難役に対し「彼女の歌は歌唱というより、魂の響き。だから、きっと大丈夫」と語る。「俳優の身体を通した言葉に明かりを当てる」――。これは上村が信頼を置く照明の沢田祐二に言われ、自らの核としてきたという言葉。中嶋の歌声がどんなパッションを帯びて発せられるのか。楽しみだ。公演は2月20日(火)から3月11日(日)まで。取材・文:黒豆直樹
2017年12月28日役と声優のケミストリー。キャラと声の親和性の高さで評判を呼んでいる、『文豪ストレイドッグス』。その秘密を声優の上村祐翔さんに直撃。声で人々を惹きつけている背景には、巧みなテクニックとたっぷりの愛情が溢れていました。僕も、敦と共に成長したと信じたい上村祐翔さんが演じたのは、孤児院を追い出されヨコハマを徘徊していたところ、風変わりな男・太宰治と出会い、〈武装探偵社〉に入社することになる青年・中島敦。この作品で初めて“主役”に抜擢されたそうで、後日、監督に選んだ理由を聞いてみると…、「“天性のヘタレ感”と言われました(笑)。僕は経験も浅いですし、共演した先輩方に比べたら実力も低い。そんな自分が全力でオーディションに挑んだ結果、そのがむしゃらな姿勢が、一見気弱だけれどいざとなると大胆な主人公の中島敦とかぶるところがあったと、五十嵐卓哉監督と、若林和弘音響監督から聞きました。役作りするにあたり、あまり作りすぎず、思いきり本能的に演じてほしい、と。それを毎話積み重ねることで、敦と一緒に成長してほしい、と言っていただいたのを覚えています」アフレコの現場は、役者が作ってきたものが生かされる場合もあるけれど、それとはまったく違うリクエストをされることも多く、それに応える力が必要と上村さん。「アフレコに入る前に、毎回台本と映像をもらい、僕らはそれを見て役作りをしていくのですが、いざ現場で監督や若林さんに話を聞くと、まったく解釈が違うことも多々あって、自分の台本の読みの甘さを何度も痛感させられました。でも、そういった現場での指導や、共演した先輩方の演技が重なることで、どんどん新しいものが生まれていくのが、アフレコの面白さだと思うんです。声も、一人ではなく、みんなで芝居を練りながら作リ上げるものなんだと、改めて実感しました。その現場の熱量が、皆さんに伝わると嬉しいです。来年公開する劇場版では、2クールを経て羽ばたいた敦同様、大きく成長した僕を見せられるよう、頑張ります!」『文豪ストレイドッグス』中島敦、太宰治、芥川龍之介など実在した文豪がキャラクター化され、彼らが著作にちなんだ異能力を用いて、架空の都市・ヨコハマという街を舞台にバトルを繰り広げる。荒事を解決する〈武装探偵社〉と、凶悪な集団〈ポートマフィア〉。対立する両組織の戦いと、次々と起こるミステリアスな事件。シリアスな雰囲気の中に洒脱なギャグが織り込まれた作品は、’16年にTV アニメが2 クールにわたって放送され、大ブレイクした。うえむら・ゆうと1993年10月23日生まれ。俳優、声優。劇団ひまわり所属。ファミリー劇場『声優男子ですが…?』出演中。来年1月よりTOKYO MXほかで放送のアニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』に出演。ニット¥79,000(MARC JACOBS/マーク ジェイコブス カスタマーセンター TEL:03・4335・1711)※『anan』2017年12月6日号より。写真・岡本 俊スタイリスト・山本隆司ヘア&メイク・shibuya(vitamins)取材、文・河野友紀(by anan編集部)
2017年12月02日「[企画展]上村松園 -美人画の精華ー」が東京都・山種美術館で開催される。開催期間は2017年8月29日(火)から10月22日(日)まで。会期中、一部展示替えもある。今回開催されるのは生涯を通じて「清澄な女性」を描き続けた上村松園に焦点を当てた企画展。上村の友人であった山種美術館創設者の所蔵品から、上村松園作品を中心に巨匠たちの描いたバラエティ豊かな日本の美人画・浮世絵のコレクションを公開する。最大のみどころである上村松園作品は、《蛍》《つれづれ》《砧》といった代表作を含む18点を展示。上村の描く品のある美しい色使いの女性たちの絵画を存分に楽しむことができる。また、同時公開される浮世絵コレクションも必見だ。喜多川歌麿や月岡芳年の作品のほか、世界で数枚しか現存が確認されていない希少な鈴木春信《梅の枝折り》などが展示される。また、日本人画家による女性を描いた洋画の展示も。和の美しさに溢れた近代の女性たちの姿を鑑賞してみてはどうだろう。【詳細】「[企画展]上村松園 -美人画の精華ー」期間:2017年8月29日(火)~10月22日(日)※会期中、一部展示替えあり。前期 8月29日(火)〜9月24日(日)、後期 9月26日(火)〜10月22日(日)。場所:山種美術館住所:東京都渋谷区広尾3-12-36開館時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)入館料:一般1,000(800)円、大高生800(700)円、中学生以下無料※()内は団体・前売り料金※着物着用、使用済み入場券の展示で団体料金適用出展作品数:約90点(内上村松園作品18点)【問い合わせ先】ハローダイヤルTEL:03-5777-8600(8:00~22:00)
2017年07月23日3人の30代の演出家が昭和30年代に書かれた戯曲に取り組む「かさなる視点―日本戯曲の力―」の第2弾として、上村聡史が安部公房の「城塞」に挑む。開幕まで1か月を切った3月中旬、稽古場に足を運んだ。【チケット情報はこちら】軍需産業で成り上がった“男”(山西惇)には、“拒絶症”を患う父(辻萬長)がいる。拒絶症とは、ある時から自分の中の時間を止めてしまう病。発作時だけかつてのように正気を取り戻す父に、男は妻(椿真由美)や従僕(たかお鷹)を巻き込み、終戦直後のある一日を再現してみせる。幾度も繰り返されるそんな芝居にうんざりした妻は、父を精神病院に送る計画を立てる。男は妻に代わりストリッパーの女(松岡依都美)を雇い、最後の芝居を打つが……。上村は「“戦後”と対峙したいという思いでいくつかの戯曲を読んだ中で、この作品から“いま”を感じた」と語る。「登場人物たちが、戦争の被害者意識と加害者意識を巧みに、無自覚に使い分けているさまが、すごく利己的であり、どこかで現代と繋がっている気がしました。“忘却”は日本人の特性かもしれないけど、終戦から時間を経て、僕らはどんどん忘れていく。そこでいま一度、この作品を通じて日本を批評したい」とこの戯曲を選んだ意図を明かす。稽古を見ると、上村はとにかく頻繁に芝居を止め、演出席から舞台へと足を運び、立ち位置、動き、セリフのニュアンスまで幾通りも試していく。「俳優たちと一緒に批評性を持って作っている」「稽古中はとにかくみんなうるさい(笑)」という上村の言葉通り、俳優陣からも次々と質問や提案が飛ぶ。特に、精神を患い幼児のようになった父を演じる辻、そんな彼を世話する従僕を演じるたかおのベテランコンビは、毎回のようにセリフに込める感情から動きまで変化させ、“怪演”と言うにふさわしい変幻自在の芝居を見せる。まさに病める父親に振り回される邸内の者たちといったところだが、山西、椿、松岡もさすがの反射神経でベテランふたりの好きにさせまいと応酬する。山西演じる“男”は、父親を病院に入れなければ禁治産処分(※財産を自由に処分する権利を失う措置)にすると妻から脅され、なんとかそれを回避しようと奔走するのだが、忌まわしい過去の“記憶”に囚われ、本当に病んでいるのは父ではなく自分なのではないかと苦悩する。男のモノローグは、辻とはまた違った鬼気迫るような圧巻の存在感を放つ。そこから、物語はクライマックスへ――。病んだ父を外へと引きずり出し、また再び時計の針を“あの時”へと戻し、父と息子の対峙へと向かうのだが、このふたりのやり取りはどこへ向かい、たどり着くのか……。それぞれに言い訳、自己弁護、理由を抱えた者たちが“芝居”の力を借りて、自らを正当化しようと戦う――日本人…いや、人間の本能のぶつかり合いが心に突き刺さる。「城塞」は4月13日(木)より東京・新国立劇場小劇場で上演。取材・文・撮影:黒豆直樹
2017年03月24日新国立劇場にて来春「かさなる視点-日本戯曲の力-」と銘打ち、近代演劇の礎となった昭和30年代に発表された3本の戯曲を、30代の3人の演出家の手で上演することが決定した。三島由紀夫の『白蟻の巣』を演出する谷賢一、安部公房の『城塞』を上演する上村聡史、田中千禾夫の『マリアの首-幻に長崎を想う曲-』の演出を務める小川絵梨子、同劇場の芸術監督を務める宮田慶子が出席しての取材会が行われた。【チケット情報はこちら】宮田は“国立”の劇場として「日本の戯曲を大切にしたいとずっと思っていた」と語る。2010年の芸術監督就任から「JAPAN MEETS…-現代劇の系譜をひもとく-」シリーズでは近現代の海外戯曲の新訳などを上演してきたが、満を持しての国内の名作の上演。「脂の乗った30代の演出家たちが、あの時代の日本の戯曲にどう向き合うか見てほしい」と期待を寄せた。3作品は、いずれも昭和30年代に発表されており、宮田はこの時代を「戦後10年以上が経って、焦土から復興を遂げ、そろそろ高度経済成長が始まる頃であるけど、戦争の跡と新しい時代の狭間で軋んでいた時代」と語る。『白蟻の巣』は三島の初長編戯曲。ブラジルの農園を舞台にした人間ドラマで、戦後の空虚感が色濃く描き出される。谷は「当時の現実にベッタリとへばりつく必要はない。34歳の僕がいま読んでピンと来た、現代と重なる部分を立てるような形で演出していきたい」と意気込みを口にした。『城塞』は、ある一家の姿を通して安部公房が戦争責任を問うた作品だが、上村は「“戦後”をテーマに掲げて上演したい」と語る。「いま、グローバルな価値観と、民族性や国民性といったドメスティックに根付いている日本人のローカルな価値観が軋み始めている印象があり、不穏な音を立てている気がしています。演劇でそのこととどう対峙できるか? 敗戦後の再生の陰で変わらなかった日本人の精神、戦争責任の所在に目を向けることで、その軋みをひも解く糸口になるのではないか? いま、上演されて真価が発揮される作品だと思います」と自信をのぞかせた。小川は宮田から、被爆地・長崎を舞台にした『マリアの首』を勧められ、目を通して「直感で、やってみたいと思った」と明かす。これまで翻訳劇が多かったこともあり「挑戦であり、プレッシャーや不安もあるし、難しい作品だと思います」とも。本作に挑む上でとっかかりとして挙げたのが「当時、大人とは言えないまでも、既に息づいていた」75歳の自身の父親の存在。「市井の人々の話であり、生活臭をちゃんと描くことが大事だと思っています。そこにあった“ニオイ”を私も体感したい」と語った。同世代の演出家が、同じ時期に発表された名作を演出するということで「比べられる(苦笑)」(小川)、「一生懸命、ケンカしたい(笑)」(谷)など、互いを意識する発言も。「次の時代を拓き、日本の演劇界を引っ張っていく三人」(宮田)がどのように“戦後”に挑むのか?楽しみに待ちたい。公演は3月から5月まで順次上演。いずれも新国立劇場小劇場にて。取材・文・撮影:黒豆直樹
2016年12月05日11月に日本初演を迎える『ミュージカル★マーダー・バラッド』の製作発表会見が10月10日、都内ライブハウスにて行われた。90分ノンストップ、全編歌で綴る刺激的な作品に、中川晃教、平野綾、橋本さとし、濱田めぐみの4人が挑む。『ミュージカル★マーダー・バラッド』舞台はNY。ナレーター(濱田)が物語を誘っていく。俳優を夢見ていたトム(中川)と歌手を目指していたサラ(平野)は恋に落ちたが、時を経てサラは詩の博士号を持つマイケル(橋本)と結婚。日々の生活に追われ、サラはかつて燃える恋をしたトムを恋しく思い、トムが新しくオープンしたクラブを訪ねてしまう。一線を越えてしまったふたりにマイケルも気付き、ついにクラブに3人が揃った時、殺人事件が起きる…。愛憎と裏切り、そして殺人事件。パワフルでロマンチック、セクシーな物語だ。この日の会見はミニライブからスタート。本番同様のフルバンドとともに、モノトーンの衣裳でクールにセクシーに決めた4人が、劇中歌から5曲を披露。それぞれ日本ミュージカル界が誇る抜群の歌唱力を持つ彼ら、さすがの迫力だ。中川も「ハーモニーはかなり美しい。この4人が集まった、というのが何よりも最大の魅力じゃないかな」と自信のほどを話しつつも、「でもただ美しいだけでなく、ザラっとした、もっと内面から出てくるものを前面に押し出し、バンドのサウンドを借りながらロックミュージカルならではのライブ感を出していけば、このハーモニーは最強・最高になるんじゃないかな」と、さらによいものを求めて稽古をしているよう。そして“誠実な夫”役の橋本は「今回の僕の課題は、どれだけ地味キャラでいられるか(笑)」と会場を笑わせつつも、「全編歌ですが、コンサートではなく、歌の中にきちんとドラマ性を出していきたい」と意気込みを。平野は「台本上にあるものを感じ取ったらストレートに進む話なのに、“ひょっとしてこれってこういうこと?”と一度思ってしまうと、色々なパズルのピースが嵌りだす。私たちも色々な可能性を演じたいと思うので、みなさんも色々な妄想を膨らませて観ていただけたら」とアピールする。またナレーター役の濱田からは「謎の存在を演じます。ストーリーテラーみたいな感じですが、たまに(ほかの)3人の時間軸に入ったりします」と意味深な説明も。ひと筋縄でいかない作品になりそうだ。演出は、これが初のミュージカル演出となる文学座の上村聡史。「殺人をめぐる愛憎の物語ですが、それぞれのキャラクターの過去への思い、ほとばしるような情愛がポイントになる。41曲のロックチューンに乗せて、スタイリッシュなモノクロ映画を観ているような感覚でお届けできれば」と演出プランを語った。公演は11月3日(木・祝)から6日(日)まで兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、11月11日(金)から27日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて上演。チケットは発売中。
2016年10月12日新国立劇場の2016/2017シーズンのラインナップ発表会見が開催され、バレエ・ダンス部門の舞踊芸術監督・大原永子、演劇部門の芸術監督・宮田慶子が出席し、それぞれ来季の演目について説明した。バレエでは『ロミオとジュリエット』を皮切りに、12月にはクリスマスの定番『シンデレラ』、2月には新旧の名作で構成される『ヴァレンタイン・バレエ』、その後も『コッペリア』、『眠れる森の美女』、『ジゼル』と計6演目が上演される。大原氏は、新国立劇場バレエ団を成長途上にあるとし、過去のシーズンでも上演してきた「同じ演目をどう続けていくか」と継続の重要性を強調する。それは、新制作の作品が上演されないことも意味するが「消化不良になってしまったら無駄になる」といまはその時期ではないと説明。特に日本人ダンサーが国民性として宿命的に持つ、感情表現の乏しさという弱点を克服するためのプログラムであると先を見据えた。演劇部門では、過去に同劇場で『ヘンリー六世』三部作、『リチャード三世』が上演されたが、2016年がシェイクスピアの没後400年にあたることから、11月、12月の2か月で『ヘンリー四世』の第一部・第二部を連続上演。前の二作に続き小田島雄志の翻訳に鵜山仁の演出のコンビで、浦井健治、岡本健一、ラサール石井、中嶋しゅう、佐藤B作ら実力派が集う。上演に際しては第一部、第二部を単独で上演するだけでなく、第一部、二部を通しで上演する日も設ける予定。オープニングを飾るのは、一昨年の『永遠の一瞬』、昨年の『バグダッド動物園のベンガルタイガー』に続き、日本未発表の欧米の同時代作品を上演する企画で、アニー・ベイカーの2014年ピュリッツァー賞受賞戯曲『フリック』。マキノノゾミの演出で送り出す。また、3月以降は「かさなる視点 -日本戯曲の力-」と銘打ち、昭和30年代の名作に30代の新鋭演出家が挑む。三島由紀夫初の長編戯曲『白蟻の巣』を谷賢一、安部公房の『城塞』を上村聡史、田中千禾夫が戦後の長崎を舞台に書き上げた『マリアの首』を小川絵梨子がそれぞれ演出を務める。このほか、日本の近代演劇に大きな影響を与えた海外戯曲を新たな翻訳で蘇らせるシリーズ企画では、こちらもピュリッツァー賞受賞のウィリアム・サローヤンの『君が人生の時』、そして戦後、英国の演劇の歴史を塗り替えたジョン・オズボーンの『怒りをこめてふり返れ』を上演。『怒りを――』では俳優のみならず演出家としても際立った才能を見せる千葉哲也を演出に迎える。シェイクスピアから国内の名作、海外戯曲と多彩な演目が並ぶが、宮田氏は「いまの日本を強く見つめる作品群」と意気込みを口にしていた。取材・文:黒豆直樹
2016年01月18日音楽家・大沢伸一とボンジュールレコード(bonjour records)のバイヤー・上村真俊によるDJデュオ・オフザロッカー(OFF THE ROCKER)が、最新MIX-CD「SOFA DISCO 15FW」のリリースパーティー「SOFA DISCO」を9月12日に代々木Village Music Barにて開催する。“ソファーで聴くダンスミュージック”がコンセプトの「SOFA DISCO」。シリーズ1、2は代官山の高感度セレクトショップ・ボンジュール レコード(bonjour records)で累計売り上げ約800万枚を記録するヒット作となっている。第3弾となる今回は、オフザロッカーのオリジナルトラックに加え、ジョルジオ・モロダー(Giorgio Moroder)の「Right Here, Right Now feat.Kylie Minogue」のリミックスや、国内外の新進気鋭アーティストの新曲を中心にミックスしたCDと、UN-MIXのトラックを収録したCDの2枚組み。東京・代々木で12日に行われるイベントは、オフザロッカーの他、YOSA、DJ RUBY、K (Play decibel)、FLASH BUG (Mistsuharu Kitago + Kazuma Takahashi)をセレクターに迎えて開催。なお、10月3日には、大阪・東心斎橋のseven HOUSEでも開催を予定している。【イベント情報】SOFA DISCO会場:代々木Village Music Bar住所:東京都渋谷区代々木1-28-9会期:9月12日時間:20:00~料金:男性2.000円、女性1,000円(1ショット+1ドリンク付き)
2015年09月09日レバノン出身の作家ワジディ・ムワワドによる戯曲を麻実れい、岡本健一ら実力派キャストを迎え、話題作を次々と手掛ける文学座の新鋭・上村聡史の演出で上演する『炎 アンサンディ』東京・三軒茶屋のシアタートラムにて9月28日に開幕を迎えた。舞台『炎アンサンディ』チケット情報内戦が続くレバノンからカナダに移住したムワワドの人生が反映された原作は『灼熱の魂』の邦題で映画化もされ、アカデミー賞外国語映画部門にノミネートを果たした。亡くなった母・ナワルの遺言で、双子の姉弟のジャンヌ(栗田桃子)とシモン(小柳友)は母の故郷・中東にいるという、その存在さえ初めて知らされた兄と父への手紙を託される。心を閉ざしたまま亡くなった母への反発を覚えつつも彼の地へ旅立ったふたりは、そこで内戦に翻弄された母の壮絶な半生を知ることに…。舞台装置はごくシンプルで、四角い舞台の左右後方と中央奥に出入口があるのみ、少し傾斜のついた床は舗装されていないデコボコの砂地のようになっており、そのシンプルな作りとも相まって内戦で荒廃した大地を思わせる。また横からの強い照明による登場人物たちの巨大な影が、その時々の彼らの心情を言い表すかのように印象的に壁に映し出される。少女期から晩年までのナワルを演じる麻実、ナワルの若き恋人役に始まり複数の役を演じ分ける岡本をはじめ、それぞれの俳優が抱えるセリフは膨大だが、複雑ながらも詩的で深遠な言葉の数々は見る者の胸に沁み、怒りや哀しみ、激しい憎悪、そして愛、慈しみといった感情をしっかりと伝えてくる。中でもやはり圧巻は、実に自身と50歳差となる14歳から60代までのナワルをひとりで演じ切る麻実の存在。特徴的で不思議な響きを持つ“声”を最大限に生かし、純粋に世界を信じる少女、強い意思を持って生きる女性、慈愛にあふれる母親を見事に体現している。やがて、登場人物たちはそれぞれにある“真実”に行き当たる。ある者は法廷で、ある者は旅路の中で、ある者はナワルが託した手紙で…。想像を絶する真実を前にした瞬間、人はどのようにそれに向き合い、受け止めるのか?物語の最後で、ナワルと家族たちがまるで集合写真のように舞台中央に並び立つ。その時、彼らがどのような表情を見せているのか――過酷な現実の中から彼らが導き出す“答え”を見届けてほしい。10月15日(水)までシアタートラムにて上演。10月18日(土)には兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールでも上演。取材・文:黒豆直樹
2014年10月01日