中京大学 スポーツ科学部 渡邊航平教授の研究グループは、6-12歳の子どもを対象とした力の正確性と運動神経活動との関連について調査し、力の正確性に関わる運動神経活動の変動性は、この年代の子どもの成長過程において顕著な変化を示さないことを明らかにしました。本研究結果は、中京大学 スポーツ科学部 渡邊航平研究室、特任助教・奥平柾道氏(現・岩手大学・教育学部・講師)を筆頭著者として、国際学術雑誌Pediatric Exercise Scienceに掲載されることが決定しました。【本研究成果のポイント】●これまで小学校年代の子どもにおいては、神経系の発育発達が顕著であると考えられ、各種運動プログラムに反映されてきました。●神経系の働きを生理学的指標である運動神経活動を用いて検討したところ、6-12歳の子どもにおいて、年齢に関連した変化は観察されませんでした。●この年代において特に発達すると考えられてきた神経系の特性に基づいて、調整力などを向上させるためのトレーニングが広く行われていますが、その生理学的根拠には検討の余地が残されている可能性があることが明らかになりました。【背景】6-12歳の年代はゴールデンエイジとも呼ばれ、神経系の発育発達に由来する基本的な動作の習得が重要な時期であるとされてきました。しかしながら、これらは解剖学的な側面に関連したものであり、機能的な側面に関する発達過程については不明な点が多く、さらに調整能力などの運動能力とどのように関連しているのかについては明らかになっていませんでした。【内容】本研究では小学校年代の子ども58名を対象とし、一定の力で膝を伸ばす運動を行わせた時の力の正確性を測定し、調整能力を評価しました。同時に、膝を伸ばす筋肉から高密度表面筋電図の測定を行い、特殊なアルゴリズムを用いて、神経から筋肉への最終的な指令を伝達している運動神経活動を評価しました。その結果、年齢と力の正確性との間には有意な負の相関関係が認められたことから、成長に伴って力の調整能力は向上することがわかりました。また、運動神経活動の変動性と力の正確性との間にも有意な負の相関関係が認められたことから、神経から筋肉への指令の変動性が小さい者ほど、力の調整能力が高いことがわかりました。しかしながら、年齢と運動神経活動の変動性との間には有意な関連が認められず、成長に伴って神経から筋肉への指令の変動性が小さくなる傾向は認められませんでした。これらの結果は、小学校年代の子どもにおける筋力の調整能力の個人差を、神経系における機能的な側面と関連付けることは難しいことが示唆されました。本研究は、愛知県みよし市にある「みよしスポーツアカデミー」の協力を得て実施されました。図1【今後の展開】今回行った横断的な研究に加えて、縦断的な調査を行うことで、調整力のような運動能力が、いつどのように獲得されていくのかについて、神経と筋の発育発達の観点から調査していきます。また、この時期に実施されている“運動神経”をよくするとされる運動が、本当に運動神経に作用しているのか?という点にも生理学的な観点から研究を進めていきたいと考えています。【研究者のコメント】神経系の発育発達が顕著とされ、ゴールデンエイジと呼ばれる年代において、調整能力に関わる運動神経活動が年齢と関連しないことを明らかにした点が、本研究の新規性であると思います。小学校年代の子どもに対して、調整力のような巧みな運動能力の改善を目的とした運動プログラムが、多く取り入れられていますが、その意義や効果について、生理学的な観点から詳細に検討する必要があると考えています。【用語解説】高密度表面筋電図:複数の電極が高密度に配置された表面筋電図。皮膚表面から非侵襲的に時空間的な筋の活動パターンを計測できる。運動神経 :α運動ニューロンとも呼ばれる、筋が力を発揮するための最終的な指令を行う神経細胞。【論文情報】雑誌名 :Pediatric Exercise Scienceタイトル:Motor Unit Firing Properties during Force Control Task and Associations with Neurological Clinical Tests in Children著者 :Okudaira, M., Takeda, R., Hirono, T., NIshikawa, T., Kunugi, S., and Watanabe, K. 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年06月30日革靴メーカーのマドラス株式会社(愛知県名古屋市、代表取締役社長:岩田達七、以下 マドラス)は、中京大学 坂田隆文ゼミの学生のアイデアにより製品化した革小物3種類を7月1日(土)よりクラウドファンディングサイトのMakuakeにて販売を開始いたします。このプロジェクトは、「靴を製造する際に余った革をどのように再利用するか」をテーマに、2022年9月から始動しました。マドラス社と中京大学坂田隆文ゼミの学生たちで何度も打ち合わせを重ね、1000以上のアイデアや提案の中から、環境にも配慮された革小物の製品化に絞り込まれました。靴の残革を再利用することで、新たな価値観でのモノ作りを具現化いたしました。自分用やギフトにはもちろん、一部アイテムはオプション(要追加料金)を注文するとレーザー加工で文字や企業ロゴを追加することができるので、受付カウンター等に置いてさりげなくお店や事務所などをリッチな雰囲気にすることも出来ます。【Calenther(カレンザー)】《 学生からの提案 》Calendar(カレンダー) + Leather(レザー)= Calenther「お店の雰囲気をいつもよりリッチに出来る、革製の卓上カレンダーです。たくさんの人が出入りするお店に置いてもらえたらマドラスの革製品をより多くの人に見てもらえるのではないか、というアイデアから提案しました。」《 商品情報 》販売価格:¥10,000文字入れオプション付き:¥13,000・本体サイズ:幅 20.5cm 高さ 8cm 奥行 4cm・重さ:70g・カラー:ブラック、ブラウン、ホワイト・材質:牛革・月、日付、曜日パーツを土台の穴にセットし、毎日パーツを入れ替えて使用します。・応援購入後は専用のボックスにキットが入った状態で購入者のもとへ送られるので、ご自宅用やオフィス用だけでなく、そのままギフトとしてプレゼントすることも出来ます。・オプション(要追加料金)付で注文すると写真の赤枠内にレーザーで文字を印字できます。(20文字以内 / 裏側には「madras」ロゴが印字されます)【Cocolot(ココロット)~幸運を呼ぶ家の守り神~】《 学生からの提案 》「『人生の大きな節目を迎えるタイミングで両親や大切な人からもらったら嬉しい物』を大学生目線で考案したのがこのCocolot。インテリアとして置ける革製の立体パズルは幸運のシンボルをモチーフにしているので、経年変化を楽しむうちに愛着もわいてくるギフトアイテムです。」《 商品情報 》販売価格:¥6,000革製台座、文字入れオプション付き:¥8,000・本体サイズ:幅 10cm 高さ 7cm 奥行 7cm・重さ:52g・カラー:ハリネズミ … ブラック/ブラウン コンビカラー、ネイビー/ブラウン コンビカラーヒツジ … ブラック/ホワイト コンビカラー・材質:牛革オプション台座・カラー:ホワイト、ブラック、ブルー・サイズ:幅 12cm奥行 10cm厚さ 3mm・付属の説明書を見ながら組み立てれば約10分程で完成。(所要時間には個人差があります)・オプションの台座にはレーザー加工でお名前やお祝いメッセージなどを入れることも出来ます。(要追加料金、20文字以内)・応援購入後は専用のボックスにキットが入った状態で購入者のもとへ送られるので、そのままプレゼントすることが出来ます。・ハリネズミはヨーロッパ地方では家の庭や公園で見かけると幸運に恵まれると言い伝えられ、日本でいうところの白蛇やてんとう虫のような存在として親しまれています。・ヒツジは群れを成して行動することから家族安泰を表すほか、「未年」と書くのに使われる「未」には「これから」や「未来」という意味が含まれているので、ヒツジのモチーフにはしばしば「将来運気が上がるように」という意味も込められます。【Tetote(テトテ)】《 学生からの提案 》「一番印象に残る嬉しいプレゼントはやっぱり思いがこもった手作りのプレゼント。そこで私たちが考えた商品は似顔絵レザークラフトキットです。プレゼントを贈りたい人の似顔絵を描いてデータを送り、後日似顔絵がプリントされた革でキーホルダーを作成したらプレゼント。革製なら経年変化を楽しみながら長く使い続けることができ、また似顔絵もレーザー加工なので消える心配はありません。お子様からのプレゼントに特におすすめのギフトアイテムです。」《 商品情報 》販売価格(レーザー加工、キーホルダー用キット込み):¥4,000・本体サイズ:幅 4.5cm 長さ 8cm 厚さ 4mm・重さ:8g・カラー:レッド、ブルー、ブラウン、オレンジ、ブラック・材質:牛革《 作り方 》【STEP 0】紙に似顔絵を描く*白い画用紙に描き、黒の太い油性ペンで濃くはっきり描くときれいなデータを作成できます【STEP 1】スキャンした似顔絵のPDFデータをMakuake実行者へ送付*似顔絵のPDF化の詳しい方法はMakuakeページからご確認ください【STEP 2】キットに沿ってキーホルダーを作成データを送付後、後日似顔絵が刻印された状態でキット一式が届きます。同封の手順書に沿って作成したら世界に一つだけのキーホルダーが完成!*針を使用しますので、お子様が作成される場合は保護者の方と一緒に作成してください・応援購入後は専用のギフトボックスにキット一式が入った状態で購入者のもとへ送られるので、ボックスはキーホルダーを作成した後にキーホルダーと一緒にプレゼントすることが出来ます。(写真右)【クラウドファンディングプロジェクト概要 】『【産学連携】マドラス×中京大学 坂田隆文ゼミ革製品のギフトアイテム』募集期間:2023年7月1日 (土) 17:00 ~ 7月30日 (日) 18:00目標金額:100,000円クラウドファンディングサイトURL: *クラウドファンディング期間中はサンプル商品を以下の店舗にて展示いたします。・マドラス ヤエチカ店・マドラス 栄地下店(一部サンプルのカラーは現物の代わりにスワッチを展示いたします)【大学・企業情報 】中京大学総合政策学部 坂田隆文ゼミ 中京大学 坂田隆文ゼミは、マーケティングの知識と理論をベースに、産学連携による商品企画提案を行っています。そこでは学生ならではの努力が徹底的に求められ、一つのテーマに対して合計何百、何千という案を出し、4桁を超える市場調査やアンケートを行うこともあります。「学生の枠に囚われられない」レベルでの活動を目指してきたことにより、過去には様々な企業・団体で商品化やキャンペーンを実現してきました。マドラス株式会社 イタリアの靴づくりの伝統を踏襲しながらも、日本人の求める快適な履き心地と機能性、そして美しいデザインを追求し続けてきました。100年以上続く靴づくりのノウハウは、今もなお受け継がれ、進化し続けています。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年06月29日このたび、元「RIP SLYME/SU」こと、大槻 一人が、美容事業を主体とする株式会社SEA(所在地:愛知県名古屋市昭和区、資本金:900万円、代表取締役:大槻 一人)を2022年11月24日に設立。2023年3月3日に美容室「sea(シー)」をグランドオープンいたします。詳細URL: 元RIP SLYME/SU(代表取締役 大槻 一人)「中京大学 総合政策学部 坂田隆文ゼミ」と産学連携し、学生を始めとした消費者ニーズに応えるべく、マーケティング・商品企画戦略、イベント企画・商品開発等を手掛け、初年度売上 5,000万円を目指します。(5年後…売上:5億円、店舗数:5店舗目標)美容室sea 外観■美容室「sea」概要所在地 :愛知県名古屋市昭和区広路町字北石坂102-76TEL :052-861-7008アクセス:地下鉄鶴舞線八事駅6番出口より徒歩2分営業時間:10:00~19:00座席数 :7席 スタイリスト5名■コンセプトS=SENSE(センス)E=ENJOY(エンジョイ)A=ATTRACTIVE(アトラクティブ)“LOVE for all すべての仲間&お客様に愛を!”初めてきたのにずっと前から知っているような都会の中の癒し空間。美容室「sea」が持つニュートラルな優しさから、いつも穏やかな懐かしい空気がながれている。シンプルなこともspecialに。ワクワクするような、ホッとするような場所。店舗内 シャンプースペース店舗内 カウンタースペース■会社概要商号 : 株式会社SEA代表者: 代表取締役 大槻 一人所在地: 愛知県名古屋市昭和区広路町字北石坂102-76TEL : 052-861-7008URL : ■坂田 隆文教授 プロフィール中京大学 坂田隆文教授所属 :中京大学 総合政策学部 教授研究分野:マーケティング論、商品企画論、マーケティング教育学所属学会:商業学会、消費者行動研究学会、経営史学会、医療マネジメント学会、日本マーケティング学会(理事)受賞歴 :2021年度 日本マーケティング学会 ベストポスター賞2022年度 日本マーケティング学会 トップダウンロード賞 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年02月22日中京大学工学部 野浪 亨教授の研究グループは、一般住宅やホテル、車両、建築物など様々な場面で実用化されている光触媒材料「アパタイト被覆酸化チタン*1」の機能を更に向上させる技術を開発し特許出願および研究発表を行いました。なお、本研究成果は、国際学術雑誌『Ceramics International』にて掲載予定です。【発表のポイント】●酸化チタンなどの光触媒は、太陽光を当てることで強力な酸化還元反応(光触媒反応)を起こし、空気中の有害物質やウイルス・菌類を不活性化する性質を持ちます。●野浪教授の研究グループは、この酸化チタンの粒子に、細菌を引き寄せる性質を持つアパタイトをコーティングした「アパタイト被覆酸化チタン*1」を開発し、すでに一般住宅やホテル、車両など、様々な場面で実用化されています。●この「アパタイト被覆酸化チタン」は従来の光触媒と比較して、室内光ほどの低光量でも光触媒反応を起こす点と、夜間(暗所)でも菌やウイルスなどの有害物質を引き寄せる点に特徴があります。●今回、研究グループは、この「アパタイト被覆酸化チタン」の光触媒活性を更に向上させる技術を確立しました。●今後は、太陽光というクリーンエネルギーを使用し、更に低光量や暗所でも効果を発揮する「アパタイト被覆酸化チタン」の、環境浄化分野、建設分野、医療分野などあらゆる場面での応用利用が予想されます。(1) これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)光触媒には、酸化タングステンや酸化亜鉛などの金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物など、いくつかの種類が報告されています。これらの光触媒の中で、最も一般的に使用されているのが、コストと実用性の面で優れている酸化チタンです。酸化チタンのアナタース相は、約380nm未満の波長の光と反応し、表面付近で酸素と水と反応して活性酸素種を生成します。これらの活性酸素種の非常に高い反応性により、酸化チタンは水と二酸化炭素分子に多くの有機化合物を分解することができます。しかし、酸化チタンは吸着能力が低いため、有機化合物の処理には効率的ではありません。その一方で、アパタイトは吸着力に優れた素材です。人間の歯や骨の主成分であり、さまざまな物質、特に細菌やウイルスを吸着することができます。そのため、アパタイト製のフィルターはマスクや空気清浄機に応用されています。ただし欠点として、吸着された物質がアパタイトに残ることがあげられます。そのため、長期間使用するとフィルターが飽和するため、フィルターを交換する必要があります。我々は、酸化チタンをアパタイトで被覆するアパタイト被覆酸化チタンを開発しました。アパタイト被覆酸化チタンは、酸化チタンの吸着性能の低さをアパタイトで補い、アパタイトの欠点である吸着の飽和を酸化チタンで補うという優れた性能を持つ素材として大きな注目を集めています。酸化チタンに合化するアパタイト以外の材料として、カーボン、シリカ、活性炭などが報告されていますが、アパタイト被覆酸化チタンと他の複合材料との主な違いは合成方法にあります。アパタイト被覆酸化チタンは、生体模倣(バイオミメティック)プロセスにより室温および常圧で合成でき、この方法は他の複合材料の合成法と比較して、環境への影響が大幅に低いです。さらに、アパタイト被覆酸化チタンの光触媒活性は、酸化チタン単独の光触媒活性よりも高いです。(2) 今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと酸化チタンの光触媒活性を向上させるためには酸化チタンの結晶内の欠陥量を低減して結晶性を高める必要があります。そのためにはエネルギーを与えて結晶を構成する原子を再配列する必要がありますが、それは同時に酸化チタン粒子の粒成長、比表面積値の低下を助長してしまいます。比表面積が大きいことと結晶性を向上させることはトレードオフの関係にあり、両者をバランスさせた酸化チタンを製造することは容易ではありません。そこで、我々は、アパタイトを被覆した複合材料を熱処理することで、酸化チタン単体と比べて酸化チタンのアナタース相のルチル相への転移温度の上昇、および比表面積減少の抑制が同時に実現できることを見出しました。色素を分解する実験ではアパタイト被覆酸化チタンは、加熱していないアパタイト被覆酸化チタンと比べて約3倍の脱色速度がありました。加熱によりアナタース相の結晶性が向上し、光触媒活性が向上したと想定できます。(3) 研究の波及効果や社会的影響当グループが開発したアパタイト被覆酸化チタンは、太陽光の届きにくい室内や、蛍光灯の光でも作用するという特徴から、すでに、建造物の外壁のみならず、室内の壁や床、カーテンや観葉植物、空気清浄機のフィルターといった、既存の光触媒では実用困難であった箇所での実用化が始まっています。今回の研究成果により、アパタイト被覆酸化チタンの光触媒活性が上昇したことで、活用の幅は更に広がりました。また、新型コロナウイルスをはじめとしたウイルスや菌への有用性も示されていることから、上記のような環境浄化分野のみならず、白衣やマスクなどをはじめとした医療分野や、農業分野における鳥インフルエンザウイルスの防疫など様々な技術応用が見込まれます。光触媒反応による有害物質の分解は、あらゆる生活空間において応用が可能です。また、太陽光を使用して反応を起こすため、枯渇性エネルギーを使用せず環境への影響が少ないという特徴があります。Withコロナ社会、持続可能な社会の実現が求められる昨今において、当研究成果が社会にもたらす影響は非常に大きいと考えます。(4) 今後の課題今回、加熱処理によってアパタイト被覆酸化チタンの光触媒活性が大きく向上することが明らかになりました。今後は適切な条件の検証を行い、製造コストの減少を目指します。(5) 研究者のコメント今まで様々な分野で用いられてきた光触媒の一つである、アパタイト被覆酸化チタン光触媒の光触媒活性向上が製造プロセスを検討することで実現できました。「Withコロナ」の社会を実現するための安心・安全な環境の構築のためなどへの貢献が期待されます。(6) 用語解説*1 アパタイト被覆酸化チタン酸化チタン光触媒の表面をアパタイトで覆うことにより、アパタイトが細菌や有機物質を吸着して酸化チタンが分解する多機能性セラミックスです。アパタイトは生体内で生成されることから、アパタイトができやすいようにPHや組成を調整した擬似体液を調製し、体温に近い37℃に設定し酸化チタン粉末や薄膜を浸漬することで表面にアパタイトを析出させます。酸化チタンの光触媒機能に加え、アパタイトのタンパク質やアンモニア臭、NOxなどの吸着機能を付与することで、光の有無に関わらず細菌やウイルスを吸着する事が可能になりました。吸着した物質は、光が当たると酸化チタンの作用により分解されるため、アパタイトの吸着能力はその都度回復します。さらに、アパタイトがスペーサーとなり酸化チタンが直接媒体と接触しないことにより、従来不可能であった有機系の媒体(繊維、樹脂、プラスチックス、木材、紙等)に練り込んだり被覆することもでき、光触媒の応用範囲を飛躍的に拡大する可能性があります。(7) データFig. 1 800℃で加熱したアパタイト被覆酸化チタン(ApTi800)および従来のアパタイト被覆酸化チタン(ApTi)のSEM画像アパタイト被覆酸化チタンを加熱した材料では新たに、粒子表面上に分散した無数の0.5 μm程度の粒状の生成物が確認されます。板状結晶であったアパタイトの表面が一部融解し球状に変化したものと考えられます。Fig. 2 酸化チタン(Ti;数字は加熱温度)を焼成して得られた各試料のXRD図形Fig. 3 アパタイト被覆酸化チタン(ApTi;数字は加熱温度)を焼成して得られた各試料のXRD図形Fig. 2より、酸化チタンと単体で加熱した場合、700℃まではアナタースの単相ですが、800℃でルチル相が出現しています。一方、Fig. 3より、アパタイト被覆酸化チタンを加熱した場合、酸化チタンの結晶相は1,000℃でまでアナタース相で、ルチルが確認されたのが1,100℃で加熱した場合あることから、アパタイトの存在がアナタースからルチルへの転移を抑制していることが示唆されます。Fig. 4 アパタイト被覆酸化チタン(ApTi)および酸化チタン(TiST)の加熱温度と比表面積Fig. 4にアパタイト被覆酸化チタンおよび酸化チタンを焼成して得られた各試料の比表面積を示します。酸化チタンは300oCから比表面積が減少することがわかります。一方で、アパタイト被覆酸化チタンは500oC以降から比表面積が減少しました。このことから、アパタイトの存在が加熱に伴う酸化チタン粒子同士の凝集による比表面積の低下を抑制したと考えられます。 また、アパタイト被覆酸化チタンの加熱時における比表面積の低下の抑制は、 酸化チタン粒子間の原子の移動の抑制を示唆しており、これにより加熱時における酸化チタンのアナタース相からルチル相への転移温度の上昇が生じた可能性があります。Fig. 5 アパタイト被覆酸化チタンおよび従来の酸化チタンの加熱温度と色素脱色速度の関係光触媒活性を紫外光照射時における色素脱色能から評価しました。加熱していないアパタイト被覆酸化チタンと比べると、加熱温度500℃までは緩やかに脱色速度が大きくなる傾向が見られました。800℃で加熱することで約3倍に向上しました。(8) 論文情報雑誌名 :Ceramics International論文名 :High activation of apatite-coated titanium dioxide using heat treatment執筆者名:Shogo Saeki、Ikumi Nishimura、Ryushin Ono、Nanase Tsunekawa、Toru Nonami 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年11月28日