メジャーリーガーのロッカールームで繰り広げられるドラマを描いた「Take Me Out 2018」が現在、東京・DDD青山クロスシアターにて上演中。本作は2003年のトニー賞で演劇作品賞など2部門受賞した作品で、日本では2016年12月に初演され、今回はその再演となる。前作に引き続き翻訳は小川絵梨子、演出は藤田俊太郎が手掛けるほか、キャストは栗原類、味方良介、小柳心、Spi、章平、吉田健悟、竪山隼太、田中茂弘が続投。さらに今作から玉置玲央、浜中文一、陳内将が参加する。【チケット情報はこちら】物語は、メジャーリーグの黒人プレイヤー・ダレン(章平)がメディアを通して「自分はゲイである」と告白することから始まる。ダレンの告白に理解をみせる者、差別する者、拒絶する者、さまざまな人間が現れるが、スタープレイヤーのダレンは「自分のアイデンティティに苦しんでいる子供の励みになれば」と意に介す様子はなかった。しかし、二軍から上がってきた抑えの投手・シェーン(栗原)がインタビューで語った言葉がある事態を巻き起こす――。メジャーリーグチームのロッカールームという野球だけが共通項の人間が集まる閉鎖的な空間で、人種、LGBT、宗教、教育、家柄…などさまざまな要素が絡み合い、登場人物たちの正義や価値観、考え方、性質が浮き彫りになっていく作品。客席が舞台と地続きで両側から覗き見るような構造は、登場人物の感情の揺れが「今ここで起きていること」として生々しく感じられ、客席までロッカールームが広がってくるような感覚にも陥る。再演ということもあり、深みを増した芝居も魅力。新キャスト続投キャスト関係なく、キャスト一人ひとりの芝居がより繊細に、そしてより明確にこの世界をつくりあげており、伝えることへの強い意思を感じた。ダレンの会計士・メイソン役の玉置は、作品の中では唯一野球の外側にいる人間であるメイソンがダレンにもたらすものをくっきりと鮮やかに見せ、それがダレンの心の動きをも際立たせる。また、ダレンのチームメイト・キッピー(味方)のくせものぶりも見事。キッピーが上手に隠すさまざまな“意図”を、小劇場ならではの繊細な芝居によって初演以上にしっかりと伝えていた。また今回は作品の舞台が2003年であること――2001年にNY同時多発テロが起き、イラク戦争が開戦したという時代背景を意識すると、台詞の端々に込められたものもより深く理解できるはず。公演は5月1日(火)まで。チケットは発売中。取材・文:中川實穂
2018年04月03日ダンス×演劇×J-POPで唯一無二のステージをつくりあげるエンタテインメント集団「梅棒」の8th SHOW『Shuttered Guy(シャッターガイ)』が3月31日(土)に開幕。3月から4月にかけて愛知、大阪、福岡、東京凱旋と巡演する。開幕に先がけて行われたプレビュー公演に潜入した。【チケット情報はこちら】昔懐かしい商店街を舞台に繰り広げられる、想像を超えた大スペクタクルという本作。梅棒メンバー10名に加え、大久保祥太郎、佃井皆美、まちゃあき(エグスプロージョン)、ダンサーのYOU、RYO(Beat Buddy Boi)、泰智(KoRocK/ENcounter ENgravers)、古川小夏(アップアップガールズ(仮))、一色洋平、田中穂先(柿喰う客)、東理紗(ピヨピヨレボリューション / 東東東東東)、ひこひこ(※梅棒・伊藤今人とのWキャスト)と、幅広いジャンルのゲストが出演する。開演前、ひこひこ演じる知事が登場し、今作の舞台となる“ネコダ銀座商店街”の魅力を大いに語るところから物語はスタート。古き良き空気を残したこの商店街には、ラーメン屋、果物屋、美容室などが並び、超濃厚な登場人物たちが毎日賑やかに暮らしていた。そんなある日、商店街の近くにセレブ姉妹が経営する高級デパートの出店話が持ち上がり大騒動が巻き起こる――。梅棒らしさがたっぷり詰まった、大笑いできるコメディ作品。言葉をほとんど使わず、音楽とダンス、そして演劇的要素で伝える独自のスタイルで、ときにまさかの展開、ときに芝居の面白さ、ときに選曲の妙、ときに歌詞と動きの絶妙な組み合わせによってドカンドカン笑いを生み出していく。もちろんただ笑えるだけではなく、例えば遠藤誠(梅棒)とゲストの佃井というアクション畑のふたりが見せる抜群のアクションシーンであったり、芝居の印象が強い大久保の生き生きとしたダンスであったり、ゲストそれぞれが普段活躍するフィールドではなかなか見せない姿や、逆にもともと持っている魅力が、本作ならではのカタチで色鮮やかに届けられる。“ダンスの力”“演劇の力”“音楽の力”のひとつひとつが際立って感じられた今作。それに加え、さまざまなカタチで感じられる”愛の力“もとても素敵。何も考えずに楽しめて、観れば必ずまた観たくなる梅棒の公演をぜひ劇場で体験して!公演は3月31日(土)・4月1日(日)に愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール、4月6日(金)から8日(日)に大阪の梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、4月12(木)・13日(金)に福岡・福岡国際会議場 メインホール、4月18日(水)から26日(木)まで東京・世田谷パブリックシアターにて上演。取材・文:中川實穂
2018年03月30日毎年話題を呼ぶエフティ資生堂のボディケアブランド「シーブリーズ」のCMシリーズ。このたび、初々しい高校生カップルを演じてきた広瀬すずと中川大志が、20歳を目前に控え、私服姿で“大人な大学生カップル”を演じる新TVCMが登場、その発表会が行われた。高校生キャストに新たに池間夏海、古川毅を迎え、「Little Glee Monster」によるタイアップソング「CLOSE TO YOU」が起用されている新TVCM「デオ&ウォーター/ボディシート近づく距離」篇に続き、3月30日(金)よりオンエアされるのが新TVCM「デオ&ジェル好きだから」篇。10代から熱い支持を受けたCM共演から4年!今回は“大人のラブストーリー”広瀬さんと中川さんは初々しい高校生役での共演開始から早くも4年が経ち、2人とも20歳目前!今回のCMでは、海辺のカフェを舞台にすっかり大人になった2人が大学生カップルを等身大で演じ、“キュンとする甘酸っぱい青春ストーリー”から、大学生に向けた“ドキドキする大人な恋”を描いたストーリーに挑んでいる。また、CMタイアップソングには、大原櫻子による「大人な恋愛」をテーマにした書き下ろし新曲「泣きたいくらい」が起用された。この日、広瀬さんは大人っぽいメイクと白のレーストップスに真っ赤なスカートを纏い、ネイルやアクセサリーをあしらった大人の女性らしい姿、中川さんは爽やかなブルーシャツという実際のCM衣装で登場。大人な大学生カップルを演じた新CMの感想や撮影秘話などのトークセッションを行った。広瀬すず、2015年の過去写真に思わず「誰?」2015年から「シーブリーズ」のCMに出演してきた2人は、それぞれ映画・ドラマで大活躍を見せ、存在感を示してきた。現在、広瀬さんは『ちはやふる-結び-』、中川さんは『坂道のアポロン』と代表作ともいえる出演作が公開中だ。発表会内では、“大人なカップル”役に挑戦したことにちなんで2015年のCM写真を公開。広瀬さんは、初々しい過去写真に恥ずかしそうで、思わず「誰!?」とコメントしていた。また、揃って6月に20歳を迎える2人。今回のCMコンセプトでもある“大人”(20歳)になったら何をしたい?という質問に、広瀬さんは「ドラマの打ち上げなどでお酒で盛り上がっているときに同じテンションで話したい」と回答。中川さんは、契約を自分の手ですることに憧れがあると語り、「保護者のサインなしで、まずは携帯の契約から」とまさに等身大のひと言。中川大志、CM中の鬼キュンセリフ「すずだけだよ」を生披露さらに、大人のカップルらしい「すずだけだよ」というCM内でのセリフを、MCからの振りで中川さんが大照れになりながらもカッコ良く披露!会場を沸かせた。また、この「すずだけだよ」というセリフにちなみ、シーブリーズCM共演4年目を迎える2人が、お互いについて「~~なのは○○だけだよ」というトークセッションを実施。広瀬さんは「50年くらい一緒にいる感覚なのは、大志だけだよ」と答えたのに対して、中川さんは「いつも小魚を食べてるのはすずだけだよ」と珍回答(?)。最初は不満げだった広瀬さんも「この姿を知ってるのは中川さんだけなので」と話し、CMさながらの仲の良を見せていた。今回のCMにコメント到着広瀬すずいままでより2人の距離がグッと近づいて、大人になった新CMになりました。お馴染みのスタッフの皆様との撮影が楽しくて。新しいシーブリーズの雰囲気を楽しんで頂けたらと思います。中川大志シーブリーズのCMに出演させて頂いて今年で4年目になり、自分自身も今年で20歳になるということで、いままでよりもちょっと大人になった姿や表情を見せれたら良いなと思い撮影に臨みました。海辺ではしゃぐシーンや、駆け引きをするようなドキドキのセリフに、キュンキュンして頂けたら嬉しいです。大原櫻子初々しい2人の恋心を歌いました。大切な人との1秒1秒のトキメキと喜びを感じてもらえたら嬉しいです。シーブリーズ新TVCM 「デオ&ジェル 好きだから」篇は3月30日(金)よりオンエア。(text:cinemacafe.net)
2018年03月28日台詞を使わず身体表現とヒット曲で物語を紡ぐエンタテインメント集団「梅棒」の最新作8th SHOW『Shuttered Guy(シャッターガイ)』のプレビュー公演が3月28日(水)に開幕する。その稽古場に潜入した。【チケット情報はこちら】「踊りは気持ちだ!」をコンセプトに、ストーリー性のある演劇的な世界観をジャズダンスとJ-POPでつくりあげる梅棒。笑いと感動が一気に味わえるステージはエンタテインメント界でも注目度が高く、劇団☆新感線のいのうえひでのりやプロフィギュアスケーターの鈴木明子らも絶賛。今作は過去最大スケールで全国4都市5会場でのツアーとなる。その最新作『Shuttered Guy』は、寂れかけた商店街で巻き起こる家族や町の人との絆を描く“ドタバタ・ハートウォーミング・ホームコメディ”。出演者は梅棒メンバーに加え、俳優の大久保祥太郎や、アクション女優の佃井皆美、「本能寺の変」でお馴染みエグスプロージョンのまちゃあき、アップアップガールズ(仮)の古川小夏ら幅広いジャンルから集う。稽古場では、作・総合演出を務める梅棒のリーダー・伊藤今人が、10人以上で踊るシーンの微調整を行っていた。ダンスとしては既に揃っているように見えたが、伊藤は目線の持っていき方や間(ま)などを細かく細かく詰めていく。これによって梅棒ならではの、楽しいだけでなく感動するステージに研ぎ澄まされていくのだと感じた。また、複数人が登場する舞台上でも、台詞があれば話している人に自然と視線が集まるが、梅棒の“ダンス×演劇×J-POP”という表現では、演出によって視線を集める必要がある。稽古場ではそのアイデアをキャストが提示することも。梅棒メンバーだけでなく、ダンサー、俳優みんなでアイデアを出し合い、各ジャンルの知恵がひとつの動きに集結するのはこのカンパニーの魅力だ。とはいえメイン以外のメンバーも魅力的な動きをしているのでそこもぜひ注目して。次にキャストの前に立ったのは梅棒の鶴野輝一。梅棒では、曲ごとに振付と演出をメンバーで振り分けている。鶴野はまずキャストに「この場面はこういう雰囲気」と話し、キャストはそれを理解した動きをみせる。身体能力と表現力がものをいう瞬間だ。ほんの20秒ほどのシーンを何度も繰り返し、ときに爆笑しながら、ときにディスカッションしながらシーンをつくっていく時間は誰もが楽しそう。その間、メンバーが「自分もこのダンスに参加したい!」と伊藤に訴えていたり、そのシーンでは出番のない梅棒の遠山晶司と田中穂先(柿喰う客)も、別のシーンの振りを入念に確認していたり、梅棒作品同様、賑やかで熱量の高い現場。幕が開くのを楽しみに待ちたい。公演は3月28日(水)・29日(木)に東京・シアター1010にてプレビュー公演上演後、愛知、大阪、福岡、東京凱旋公演を巡演。取材・文:中川實穂
2018年03月28日花總まりが主演を務める「ミュージカル『Romale』~ロマを生き抜いた女 カルメン~」が、東京芸術劇場プレイハウスにて上演中だ。【チケット情報はこちら】本作は、オペラとしても有名なメリメの小説「カルメン」をベースに、次々と男性を翻弄し“魔性の女”と呼ばれるカルメンが、ロマ(ジプシー)として当時の社会でどのように生き抜いてきたかを演出・振付の謝珠栄の視点で描く作品。10年前に謝珠栄の演出・振付で上演された『Calli~炎の女カルメン~』をもとに台本・音楽を一新したもので、何もかもが違う白人男性への恋の苦しみや葛藤、そしてロマの女への差別など、カルメンの別の一面が描かれる。カルメンを演じるのは花總まり。カルメンによって人生が変わるドン・ホセを演じるのは松下優也。カルメンに翻弄される、ホセの上司スニーガを伊礼彼方、カルメンの夫ガルシアをKENTARO、イギリス貴族のローレンスを太田基裕が演じる。物語は、カルメンの真実を研究する社会人類学者ジャン(福井晶一)が、カルメンを知っているという老人(団時朗)と出会うことから始まる。「あの女と暮らしたジプシーから聞いた」と話し始める老人。そこで語られるのは、白人の衛兵ホセがロマの女カルメンと出会い始まった宿命の恋だった。カルメンに身も心も溺れ、「私って女はきっとあんたを不幸にする」と告げられながらも共に生きることを選んだホセ。だが、その狂おしいほどの想いはいつしか嫉妬で乱れ、カルメンが関わる別の男たちに手をかけるようになっていく――。カルメンをロマの女として“自分のもの”にしたがる男たちの中で、すべてを飛び越えひとりの女性として恋するホセ。松下の真っ直ぐに伸びる歌声や、わき目もふらず彼女を愛する芝居はホセという男の心情だけでなく、カルメンがこれまで男たちにどう扱われてきたのかをもあぶり出す。そんなホセを嫉妬させる男たちを演じる伊礼やKENTARO、太田は、傲慢さやしたたかさを感じさせながらも、それぞれが違うタイプの男性としての魅力や色気も漂わせる。そしてその中で踊るように自由にふるまう、花總のカルメン。男に取り入る姿や、情熱的なフラメンコダンス、自分を殺せとホセに迫る姿など、いわゆるカルメン像が描かれながらも、この作品ではその一歩奥へと踏み込んだ想いや視点が存在する。花總が演じるカルメンは、定番のカルメン像とリンクさせながらも本作ならではの魅力や美しさが鮮明に表現されていた。舞台となるスペインのテイストが取り込まれた音楽やダンス、華やかな殺陣も注目の公演は、4月8日(日)まで東京芸術劇場プレイハウスにて上演中。その後、4月11日(水)から21日(土)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。取材・文:中川實穂
2018年03月26日日本が誇るエンターテイナー・玉野和紀が若い才能とつくりあげるSHOW HOUSE『GEM CLUBⅡ』のプレビュー公演が東京・シアター1010にて開幕。3月24日より東京・日比谷シアタークリエで上演中だ。【チケット情報はこちら】本作は、玉野が立ち上げたエンターテインメント・ショー『CLUB SEVEN』シリーズのDNAを受け継ぐ“新世代”のショー・ステージ『GEM CLUB』シリーズ第二弾。出演は、作・演出・振付も手がける玉野に加え、メンバーの中河内雅貴、東山光明、原田優一、壮一帆のベテランキャストと、木戸邑弥、多和田秀弥、本田礼生、松田岳、古田一紀とWキャストの三森すずこ・新垣里沙(取材時・三森出演)という若手キャスト。才能の原石(=GEM)たちが集うショーハウス「GEM CLUB」を舞台に、夢を追い求め、ぶつかり合いながらも切磋琢磨する彼らの姿を描く。内容は、スケッチミュージカル(一幕)とショー(二幕)の二部形式。一幕では、伝説的なSHOW HOUSE「GEM CLUB」の総支配人・玉野や新オーナーの壮、中河内、原田が新人をスカウトしに街に出かけるところからスタート。弾き語りしている歌手、ショップ店員、ダンス芸人、メイドカフェで働く者、映画のエキストラ…そんなGEMたちと玉野らが出会うさまざまな状況を描く中で、歌やダンス、アクションなど、彼らの魅力を見せていく。もちろん玉野ならではの楽しい演出も数多く盛り込まれており、笑いどころもたっぷり。高い身体能力を持ったメンバーがみせるコミカルなシーンの数々は、見た目と動きのギャップに心を掴まれる。二幕は、そうやって集ったメンバーたちによる「GEM CLUB」でのショー。ベテランキャストと若手キャストが入り乱れ、あらゆるジャンルのパフォーマンスをギュギュッと詰め込んだステージになっている。ベテラン&若手、ベテランのみ、若手のみなど、いろいろな組み合わせで披露されるパフォーマンスは、ベテランの存在によって若手の熱量やがむしゃらな姿勢が浮かび上がり、原石だった彼らがひときわ輝く瞬間が目に飛び込んでくるようだった。と同時にベテランメンバーの“背中の大きさ”も自然と感じられ、若いからこその魅力、経験を重ねたからこその魅力、世代を超えて一緒にやるから生まれる魅力など、生のエンターテインメント・ショーの醍醐味でもある“今この瞬間”の貴重な輝きを実感できる。今しかない「GEM CLUB」をぜひ堪能して!公演は、4月5日(木)まで東京・日比谷シアタークリエ、4月14日(土)・15日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼ、4月18日(水)に愛知・日本特殊陶業市民会館にて上演。取材・文:中川實穂
2018年03月26日現在、東京・日生劇場にて上演中の『ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち』。本作は、鹿賀丈史と市村正親が最強の夫婦愛で導く"家族の絆"を描いたミュージカルコメディで、鹿賀と市村は2008年の初タッグから4度目の夫婦役。さらに愛原実花、真島茂樹、新納慎也、香寿たつき、今井清隆、森公美子が続投で、新キャストとして夫婦の息子役に木村達成が出演する。演出は山田和也。【チケット情報はこちら】開幕に際しての囲み取材には鹿賀と市村が揃って登場。夫婦役10周年を迎えるふたりだが、女装した市村が「みんなに化け物って言われるんじゃないかと思って」と心配すると鹿賀が「大丈夫、きれいよ」と答え、変わらぬ仲を披露。そんなジョルジュ(鹿賀)とアルバン(市村)の夫婦について鹿賀は理想の夫婦像と重ね「アルバンがワガママを言ったりするのですが、ジョルジュはそれを半分聞き流してるというか。そういうところで、よくできた愛し合ってる夫婦だなと実感します。言いたいことは言ったほうがいいですよね」と語った。ふたりの付き合いは劇団四季以来45年。鹿賀は「いっちゃん(市村)がまたパワーアップしてるなと思いました。その力がどこから湧き出てくるかわからない。歌ってるときも、芝居してるときも、随所ですごいパワーを感じます。尊敬します」と語る。市村が「20代前半から一緒にやってますからね。いろんな作品で丈史の目を見てきていますが、今回は特にずーっと見る役なのでね。彼も45年、僕を見ているだろうし。20年連れ添った夫婦を演じるうえで、45年間知ってるというのは大きな強みだなと思っています」と語ると、鹿賀も「本当にそう」と頷き、「芝居も安心してできます。球を投げれば、それにちゃんと答えが返ってくるという関係ですので。毎日非常に新鮮で面白いですし、そういう相手役はなかなかいないと感じます」と感慨深そう。再演を重ね続投キャストも多い本作だが進化は止まらず、市村は「再演を重ねるごとに演出家もいろんなことに気づくので、それをどんどん増やして深めていく感じかな。でも、(ブラッシュアップは)日々のことです。今日発見があったら明日それをやってみるとかね」と話した。アルバンとジョルジュの倦怠期ながらも愛が滲み出る甘くかわいい姿や、そんな彼らに愛情たっぷりで育てられたジャン(木村)による騒動の顛末、そして彼らを取り巻く人々の温かで賑やかな愛と、さまざまな愛のカタチに心揺さぶられる本作。胸の奥まで沁みる歌唱、華やかで賑やかなショー、そして素晴らしい芝居と、演劇の楽しさが十二分に味わえる作品だ。ぜひ劇場に足を運んで!公演は3月31日(土)まで東京・日生劇場にて上演後、福岡、静岡、大阪を巡演。取材・文:中川實穂
2018年03月23日あるメジャーリーグチームのロッカールームを舞台に巻き起こるさまざまな出来事を描いた「Take Me Out 2018」が3月30日(金)に開幕する。その稽古場に潜入した。【チケット情報はこちら】本作は2003年のトニー賞で演劇作品賞など2部門受賞した作品で、日本では2016年12月に初演され、今回はその再演。前作に引き続き、翻訳は小川絵梨子、演出は藤田俊太郎が手掛けるほか、栗原類、味方良介、小柳心、Spi、章平、吉田健悟、竪山隼太、田中茂弘が出演。さらに今作から玉置玲央、浜中文一、陳内将が参加する。立ち稽古が始まって2日目というこの日の稽古は、オープニングからスタート。今回も舞台は中央に設置され、両側に客席があるというつくり。ロッカールームをイメージした可動式のセットも健在で、パズルのように動かすことでさまざまな表現に活用される。“再演”と銘打たれてはいるが、芝居や音楽も一変していた。稽古中、例えば陳内の動きを見て藤田が「今のいいね!」とすぐに取り入れるなど、キャストと演出家の間で積極的にアイデアをやり取りしながら、シーンがどんどんブラッシュアップされていく。そうやって全員で新しい「Take Me Out 2018」をつくりあげようとしていることが伝わってくる。この日は稽古の最初に藤田から「“言葉の演劇”にしたい」という話があり、稽古中も、台詞の奥にあるものや台詞の表現の意味を丁寧に確認し合う姿、台詞をきちんと伝えるために動きを工夫する姿などが見られた。アメリカのメジャーリーグという日本とはどこか違う環境の物語だからこそ、そこがくっきり伝わると印象や理解度は大きく変わってくる。また、両側にある客席から選手のロッカールームを覗き見しているような感覚になる構造は、この作品の魅力のひとつ。ただ、そのロッカールームでキャスト達は着替えなども行うため、舞台上でさまざまなことが同時に起きることになり、そこは本作の面白さでもあるのだが、ともすれば中心で起きている出来事を見逃しかねない。しかし藤田が、ストーリーを進める俳優以外に“今求める動き”を丁寧に解説し、俳優たちもそれに高い能力で応えるため、シーンを重ねる度に出来事がよりクリアに浮かび上がってくる印象を受けた。稽古中、藤田の口から何度か「お客さんを当事者にしたい」という言葉が俳優たちにも伝えられ、そのための演出もつけられていた。思想や宗教、見た目も違うさまざまな人種が、野球をするために集まっているロッカールーム。スター選手のある告白を機に巻き起こる出来事は遠い世界のはずだったのに、覗き見しているうちにいつの間にか自分自身がそこにいた…そんな感覚をぜひ劇場で体感してほしい。公演は、3月30日(金)から5月1日(火)まで、東京・DDD青山クロスシアターにて。取材・文:中川實穂
2018年03月20日3月18日に放送された「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)で、春日俊彰(39)が芸人仲間であるウーマンラッシュアワーの中川パラダイス(37)の“夜バイト”を明らかにした。「最近顔を合わせる芸人」をテーマに話していたときのことである。 「パラダイスさんも夜、バイト始めたから、なかなか……」 若林正恭(39)が「春日は今、やっぱりパラちゃん(中川パラダイス)が一番遊ぶの?」と尋ねたところ、春日はこう回答した。思わず若林は「マジで!?」と驚きを隠せない様子だった。 春日によると中川はしばらく前から、生バンドのいるカラオケ店でアルバイトをしているという。主に「手を叩いて店内を盛り上げる」という仕事内容で、「朝まで」しているそうだ。 春日曰く「知り合いの社長さんにね、相談したら『やんないか?』って言われて……」と、中川がアルバイトを始めた経緯を説明していた。Twitterではファンからの心配の声が上がっている。 《ザマンザイのチャンピオンがアルバイトをしているとはなんとも複雑だ》《あんなに売れてたのにな―》《バイト始めたって聞いて普通に悲しくなった》 中川も自身のTwitterで“バイト開始”を1月22日に宣言している。《暇すぎて》《バイトすることになったよ》と明かしていた。 実に10年ぶりのバイトということで中川も当初は緊張していたようだが、同月26日には《3日間の研修をうけて、仕事が完璧すぎるので今日は一日店長になりました》と“出世”を報告している。《営業ではありません、バイトです》と中川本人も発言しているように、トイレ掃除などもこなしているという。 中川は、バイトを続けるなかで「思い出した」こともあるとTwitterで語っている。ライブ終わりに先輩からご飯を誘われたが、断ってしまったときのことだ。 《バイトなんかせずに先輩と飯行けるようになりたいから早よ売れたい!!って時の頑張ってた昔の気持ち思い出した!!ちょっと忘れてた思いハングリー精神復活!!ラーメン食べてからバイト行きます》 休みの日にも店に遊びにいったり、店長のバンドのライブを観に行ったりと“バイト生活”を謳歌しているようだが――。“バイトリーダー”への道が拓けたか?
2018年03月19日魔夜峰央の人気ギャグマンガを原作にした舞台「パタリロ!」★スターダスト計画★が3月15日に開幕。それに先がけ初日会見と公開ゲネプロが行われ、会見には主演の加藤諒、青木玄徳、佐奈宏紀、脚本の池田テツヒロ、演出の小林顕作、そして魔夜峰央が登壇した。【チケット情報はこちら】舞台「パタリロ!」シリーズ第2弾となる本作。会見では、原作者である魔夜が「前作がとにかくむちゃくちゃ面白かったですから。今作それを上回ることは間違いない」と太鼓判を押す。今作で描かれる、原作でも人気の高いエピソードについて池田は「かなり泣けるお話ですし、原作を知らない方でも楽しんでもらえるはず」と自信をのぞかせた。初演に引き続きギャグマンガである原作の独特の世界観を見事に再現した小林は「1番稽古しているのは“間”。どうでもいいようなギャグばかり稽古してみんなを困らせています(笑)」とエピソードを披露した。初演から主人公・パタリロを演じ、魔夜にも「パタリロを演じられるのは諒くんしかいない」と言われた加藤は「いろんな人たちを巻き込んでいくお芝居を顕作さんから伝授していただきました。キャストも観客も巻き込むようなお芝居ができたら」、バンコラン役の青木は「2作目ということで少しのプレッシャーはあったのですが、稽古場でいつものメンツとさらに増えたキャストやスタッフの皆さんと、力を合わせて面白いものがつくれたと思います」、マライヒ役の佐奈は「今作はストーリーが動くのですが、そんなの全然どうでもいいっていうか、関係ないって感じで、僕はただただバンコランのためだけに生きようと思っています!」とそれぞれコメント。さらに会見後は、この秋の映画化が発表され、タマネギ部隊らと共ににぎやかにお祝いした。抜群のギャグセンスとダンス、歌でみせる耽美な世界はそのままに、今作はよりストーリー性の高い内容に。ロビー少尉(三津谷亮)がやさしく「♪Fly me to the Moon」と口ずさむシーンから始まる物語は、ときに切ないエピソードも描かれ、初めてみせるパタリロの姿も。それと同時にビョルン&アンドレセン(小林亮太)の強烈なキャラに、前作から一歩進んだバンコランとマライヒの関係性、タマネギ部隊11号(石田隼)がロビー少尉の前でみせるオフの一面、今回も大活躍の魔夜メンズ、突然挟まれる白泉社(原作の出版社)ネタ、そして本作ならではの楽曲&ダンスの数々と、ギャグとシリアスを高速移動するように展開し、あっという間にラストまで連れていかれる。このとにかく濃厚な時間をぜひ体感して!公演は、3月25日(日)まで東京・天王洲銀河劇場、3月30日(金)から4月1日(日)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。(C)魔夜峰央/白泉社取材・文:中川實穂
2018年03月16日1981年にベルリン芸術祭でデビューして以来、世界中で6,000を超える公演を行ってきた太鼓芸能集団「鼓童」。今年2月のエジプト公演で世界50か国公演を達成したほか、石川さゆりやAI、初音ミクらアーティストとのコラボや、坂東玉三郎が芸術監督を務める(2012~2016年)など、幅広く注目を集め続けている集団だ。【チケット情報はこちら】6月に開幕する『鼓童特別公演 2018「道」日本ツアー』について、鼓童代表で本公演の演出を務める船橋裕一郎に話を聞いた。「道」は、鼓童の前身・佐渡の國鬼太鼓座時代(1971~81)から継承されてきた、鼓童にとって“古典”ともいえる演目で構成された公演。船橋は「秋冬には新作『巡』もやりますが、そこで表現される新しさと、この古典ともいえる『道』。その両輪が自分たちのこれからの軸になると思います」と語る。「今回の『道』が、『何を以て鼓童なのか』も見えてくるような舞台になるといいなと思っています」という重要な意味を持つ公演。なぜ今のタイミングでそこに取り組んだのか尋ねると、今回の出演メンバーにヒントがあった。今作では、鼓童の根幹を作り上げてきたベテラン、それを継承し発展させてきた中堅、これからの鼓童を担う若手の3世代でツアーを回る。「以前、『村や共同体は、4世代目からがその真価を問われる』と言われたことがあって。鼓童は今、最初の世代を直接知らないメンバー、つまりその4世代目がだんだん入ってきているんです。だからこそ60代となった第1世代が引退する前に一緒にやりたかった。その中で、先輩から後輩に伝えてもらいたいし、後輩から先輩にどんどん聞いてもらいたい。ツアーを一緒に回ることで得るものもたくさんあると思いますし。鼓童は続けることに価値が出てきていると思うので、今この舞台を通して、次の第4世代に残せるものをつくっていきたいなと考えています」。もちろんただ受け継ぐためだけの舞台ではない。「ここ何年か玉三郎さんに斬新で自由な舞台をつくっていただいて、さまざまなものを取り入れた今、脈々と続いてきたものをやるとどういった表現になるのかを感じたい」と言い、「3世代が揃うことで今の解釈での『道』を作る」と各世代がアイデアを出し合いながら稽古中だ。船橋自身が楽しみにしているのは何かと聞いてみると「自分が思う“鼓童のかっこよさ”を体現できる舞台なんです。『血湧き、肉躍る』という言葉がチラシにありますが、これは自分が初めて太鼓を聞いたときの感情で。そういう、一歩踏み出すパワーを肌で感じられる舞台になると思います」と笑顔を見せた。公演は6月20日(水)から24日(日)まで東京・浅草公会堂で上演されたのち、8月まで全国を巡演。取材・文:中川實穂
2018年03月13日脚本・作詞・演出・石丸さち子×音楽・和田俊輔によるRock Musical『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』が、4月3日(火)にKAAT神奈川芸術劇場 中スタジオで開幕する。それに先駆け、稽古場にて公開稽古が行われた。Rock Musical『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』チケット情報シェイクスピアの恋愛悲劇「ロミオとジュリエット」を下敷きに、舞台を現代として血縁や国境、性別、人種、宗教、経済など見えない“ライン”に隔てられた若者が、その“ライン”をも飛び越え命を燃やした5日間の恋を描くオリジナルミュージカル。主演は東啓介、ヒロインは豊原江理佳、そして柳下大、中山義紘、大山真志、マルシアが出演する。楽曲を中心に披露した公開稽古。一曲披露するごとに石丸は、例えば主人公・ハワル(東)とヒロイン・リェータ(豊原)が恋の喜びを歌う楽曲で、東と豊原に「ハワルの台詞(恋にまつわるある台詞)は世紀の大発見なの。その発見の喜びの中で歌い始めて!」と伝えたり、“ライン”上に暮らす女・ドゥーシャ(マルシア)が恋するふたりを祝福する楽曲についてマルシアに「果実がはじける瞬間を思い出しながら、若い恋が温かく育まれることを祈るように。それでいて自分の中に“かつて激しい恋をした人”と“母”を両方抱えておいてほしい」と話したり。熱く、俳優たちの心を揺さぶるように演出をつけていく。それに応えながら自身もアイデアや疑問をどんどん出していくキャストの姿も石丸の稽古場の特徴のひとつ。そうやってみんなでつくりあげていくのだ。この日はまだ稽古2日目であったが、和田ならではの耳に残るメロディと、石丸の脚本と演出、そして俳優たちの歌唱力、表現力が化学反応を生み、既にこのカンパニーだけの新しい世界が立ち上がりかけているように感じた。稽古後、東は「石丸さんの演出と和田さんの音楽で、すごく新しい『ロミオとジュリエット』ができているのではないかと思います!」、豊原は「演出の石丸さん、音楽の和田さんと共にこの6人のキャストでいい作品にしたい…革命を起こしたいです」、柳下は「石丸さんは本当に世界を変えようとしているんじゃないかなっていう熱量なので。僕たちはそれに乗っかって、ミュージカル、演劇の新しいものをつくっていけたら」、中山は「今、毎日の稽古やこの6人のキャストの皆さんに会えるのが、すごく楽しいです」、大山は「ミュージカルとお芝居の“線”をなくした作品になるんじゃないかなと思います」、マルシアは「とにかくすべてが新しい。みんなでひとつになってお客様の心に残る何かが届けられたら」とそれぞれコメントした。公演は4月3日(火)から23日(月)まで神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオにて。撮影・取材・文: 中川實穂
2018年03月09日魔夜峰央の同名ギャグマンガの舞台化第2弾新作公演、舞台「パタリロ!」★スターダスト計画★が3月15日(木)に開幕する。その稽古場に潜入した。舞台「パタリロ!」★スターダスト計画★ チケット情報マリネラ王国国王のパタリロが巻き起こす騒動を描く本作。第2弾となる今回は、ビョルン&アンドレセン(小林亮太)やロビー少尉(三津谷亮)が登場する人気エピソードを基にしたストーリーとなる。キャストは、パタリロ役の加藤諒、バンコラン役の青木玄徳、マライヒ役の佐奈宏紀ら初演キャストに加え、小林亮太と三津谷亮、蒼木陣、富岡晃一郎が初参加。初演に続き脚本は池田テツヒロ、演出は小林顕作が務める。稽古場に入ると、パタリロとタマネギ部隊のかけ合いをつくっている最中だった。漫画のシーンが思い浮かぶコミカルな芝居に、演出の小林(顕作)はときに大笑いしながらも、台詞に合わせたポーズをつけたり、動きのリズムを整えたり、タイミングを調整したり…。細部にこそ徹底的に演出をつける姿が印象的だ。稽古は、シーンを通すたびに笑いが生まれる和やかで自由な雰囲気。中でも加藤の濃い芝居に小林(顕作)やキャストが吹き出し、小声でツッコむ姿がよく見られ、その空気もパタリロの愛らしくクレイジーなキャラをのびのびと育てているように感じた。また、初演で恋が始まったバンコランとマライヒは、今作では一歩進んだ関係に。力関係が若干変わった(!)新たなふたりが楽しめそうだ。稽古中、バンコランの歌&ダンスを見学しながらマライヒ役の佐奈が踊る様子にも、ふたりならではの関係性が感じられる。この空気感はそのまま舞台で堪能できるはず。初演でも好評だった音楽は、今作のための新曲もたっぷり。例えばビョルンの登場シーンなどは、自信過剰な美少年キャラ満載の歌&加藤をはじめとしたダンスが楽しい。楽曲により、原作を知らずともすぐにキャラクターが掴めるのも魅力だ。休憩中に三津谷が歌うと小林(亮太)と佐奈がハモり始める場面も見られた。美しいハーモニーが楽しめそう!全員同じビジュアルで登場するタマネギ部隊も、今作では一人ひとりのキャラが初演より濃厚に。「パタリロ!」で最もシリアスと言われるロビー少尉にまつわる物語にも大きく絡むので、その活躍にも期待してほしい。さらに、魔夜メンズ(魔夜峰央の世界観すべてを表現するスペシャルエキストラ)のスゴさも健在!あらゆるシーンで絶妙な存在感を放ち笑いを生んでいた。小林(顕作)は魔夜メンズの笑いに特に熱く指示を出していたので、そこもぜひ注目して。公演は3月15日(木)から25日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場、3月30日(金)から4月1日(日)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。取材・文:中川實穂
2018年03月09日発達障害を抱えるピアニスト・野田あすか初の全国ツアー『野田あすかピアノ・リサイタル ~全国ツアー2018~』が3月から開催される。野田あすかピアノ・リサイタル チケット情報昨年、「金スマ」(TBS系)でも紹介され話題を呼んだ野田。22歳で生まれつきの脳の障害・発達障害と診断されるまで、人とコミュニケーションをうまくとれないことに本人も家族も苦しんできた過去を持つ彼女が奏でるピアノは、その温かくやさしい響きで多くの人の心を掴んでいる。初の全国ツアーへの想いを聞いた。ツアーが決定しての感想を尋ねると「全国ツアーってテレビで見るような人がやるものだと思ってた」と笑う野田。「去年は、私がしあわせな気持ちで弾いて、お客さんもしあわせになってくれるといいなと思ってやっていました。だけど最後の浜離宮朝日ホール(東京凱旋公演)では『私がいっぱい希望をもらったリサイタルだったな』と思ったら泣いちゃって。そういう気持ちを東京や大阪の大きな街だけじゃなくて、いろんなところに届けられるのはすごくしあわせだし、楽しみです」リサイタルは第一部はクラシック曲、第二部は自作の曲を披露する二部構成。第一部の曲は「光」をテーマに選んだと言い、「去年、お客さんに希望をもらったから、その希望が出す“光”をテーマにした曲を弾きたくて」と、『月光ソナタ(ピアノソナタ第14番)』全楽章(ベートーヴェン)や『月の光』(ドビュッシー)を披露するという。中でも『月光』への挑戦は野田にとって大きく、「今まで私はソナタ全楽章を人前で弾いたことがなくて。ソナタの全楽章を人前で弾くのはすごく大きなチャレンジなんです。と語り、「だけど温かい気持ちで見守って下さい!」とニコリ。第二部では『心がホッとするCDブック』収録曲のほか新曲『木もれびの記憶』も披露予定。これも「光」にまつわる曲で「小学生の頃、昼休みに先生が『みんな外で遊びなさい』と言うんだけど、私は『遊びなさい』だけじゃ何をしていいかわからなくて。大きな楠の木の下に45分座って、みんなを眺めていました。楠の木に寄りかかっていると、木と話しているような気がして。上を見ると楠の木は緑が薄いから、太陽が当たると緑色の光になって私を照らして。自分を守ってくれてるような気がしていたのを思い出して、タイトルにつけました」。「来たときより少しだけにっこりして帰ってくれるような演奏会になると思います」という全国ツアーは3月21日(水・祝)にスタート。島根、新潟、高知、静岡、愛知、大阪、兵庫、宮崎とまわり、東京では紀尾井ホールにて7月13日(金)に開催。取材・文:中川實穂
2018年02月08日「至上の印象派展ビュールレ・コレクション」が2月14日(水)から5月7日(月)まで東京・国立新美術館にて開催される。至上の印象派展 ビュールレ・コレクション チケット情報絵画収集に傑出したコレクターであったスイスの大実業家エミール・ゲオルク・ビュールレ(1890-1956年)のコレクションを紹介する本展。絵画史上、最も有名な少女像ともいわれるルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》や、スイス国外に初めて貸し出されることになった4メートルを超えるモネ晩年の睡蓮の大作など、近代美術の精華といえる作品約60点を展示し、その半数は日本初公開となる。そこで自身初の音声ガイドナビゲーターを務める俳優・井上芳雄に、収録を終えての感想を聞いた。「読んでいて楽しかったです。僕が読むからそうしてくださったのかわからないですが、ときどき画家の言葉がセリフのように挟み込まれているので、そこはちょっとお芝居するような感じで読ませてもらったりして」と井上が言うように、音声ガイドで紹介するのはルノワールやセザンヌ、モネ、ファン・ゴッホなど展覧会に揃う作品の画家たちのストーリー。「もちろん主役は絵画なので、僕の個性を出すよりはプロのアナウンサーのようにと思って読みました。だけどその中でも(ガイドで)その世界に入り込めるほうが見やすいんじゃないかなということは、やってて思いましたね。一瞬、描いた人が喋り出したのかなってくらいの…錯覚というかマジックがあったほうがいいのかなって。舞台もそうですけど、いかにその世界に入り込むかが面白みであり楽しさであると思うので」。本展の魅力について「絵画自体と絵画の変遷で、二度楽しめます。(ひとりの画家の作品展ではなく)誰かのコレクションがくるというのは、そういう意味で面白いことだなと思いました」と井上。中でも絵画の変遷は演劇との共通点を感じたといい「最初はきっと物を正確に描くことがメインだったと思うのですが、『それだけじゃ面白くない』と違う形で表現する発想とか、それをやり始めた人の困難もあっただろうし、それが認められるようになったり、ビュールレのような人が買うことでも発展したでしょうし…。表現にはこんなに選択肢があって、いろんなトライをしてきた人がいるんだって思うとすごく面白いことだなって。演劇との共通点も感じました」。「舞台もそうですけど、生の迫力ってやっぱり違うと思うんですよ。特に油絵なんかは『こんなに絵の具を塗ってるんだ』とか、大きさとか、質感とか、生で見ないとわからないし」(井上)。そんな本物ならではの迫力を味わえる展覧会。音声ガイド(一台 520円/税込)と共にぜひ堪能して!取材・文:中川實穂
2018年02月01日レズビアンの主人公とゲイの父親の別れと再生を描き、ブロードウェイで絶賛を浴びたミュージカル『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』が、2月7日(水)に日本初演を迎える。ミュージカル『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』チケット情報本作は2013年にオフ・ブロードウェイで初演され、2015年にブロードウェイに進出、同年のトニー賞では5部門を受賞(作品賞、脚本賞、作曲賞、主演男優賞、演出賞)した傑作ミュージカル。今作が日本初演となり、小川絵梨子が初めてミュージカルの演出を手掛ける。主人公・アリソンは現在を瀬奈じゅん、大学時代を大原櫻子、幼少期を笠井日向・龍杏美(Wキャスト)の3人で演じ、父ブルースを吉原光夫、母ヘレンを紺野まひる、ベビーシッター兼庭師のロイを上口耕平、アリソンの大学の友人で恋人のジョーンを横田美紀、弟クリスチャンを楢原嵩琉・若林大空、弟ジョンを阿部稜平・大河原爽介(それぞれWキャスト)が演じる。その稽古場に潜入した。最初に登場するのは、漫画家となった現在のアリソン。父が亡くなった年齢(43歳)に差し掛かった彼女は、自ら命を絶った父と自分、そして家族のことを描き始める。そこに現れる、子供時代のしあわせな家族の姿。“調和が取れていてとてもおだやか”な光景に、現代のアリソンはジッと目を凝らす。時の経過によって変色した記憶の断片を見つめなおすために――。幼少期~学生時代の記憶を、現代のアリソンと共に追体験していく本作。けれどただ再現シーンをつなげていくのではなく、そこには案内人(現代のアリソン)がいて、例えば思わず微笑む家族の団欒シーンも、ふと現代のアリソンに目を向けると観客とは違う顔で見つめている。その表情は別の予感を漂わせ、観客の心をざわつかせ、後の衝撃につながっていくのだ。記憶が明らかになるほど「よくある」とは言い難くなっていく物語にグッと引き込んでくれるのは、瀬奈や吉原、大原、紺野、上口、横田と実力派揃いの俳優陣。ひとつの楽曲の中でもグラグラ上下する想いを繊細に表現する歌唱に加え、歌も台詞もない芝居に心を震わされる瞬間も度々あった。また、子供時代のアリソンをはじめ子役たちののびのびとした演技も魅力。稽古前に大人のキャスト達と楽しそうに遊ぶ姿を見かけたが、その関係性が芝居から伝わってくるようだ。作家アリソン・ベクダルによる自伝的グラフィックノベルをもとにした本作。セクシャルマイノリティの父と娘の物語であるが、“理想的な父親”が最後にみせる姿に、誰かを“思い遣る”ということについて、強く問いかけられたように感じた。舞台は2月7日(水)から26日(月)まで東京・日比谷のシアタークリエにて上演。その後、兵庫、愛知を巡演。稽古場映像は左記リンクからご覧いただけます。取材・文:中川實穂
2018年01月30日「ふぉ~ゆ~」の辰巳雄大主演の三人芝居『ぼくの友達』が1月10日に開幕した。それに先駆け公開舞台稽古と囲み取材が行われ、取材には辰巳、田中健、香寿たつきが出席した。舞台「ぼくの友達」チケット情報本作は、マフィアのボス・フランキー(田中)と陽気な妻・シャロン(香寿)の暮らす家に、見知らぬ青年・トニー(辰巳)が訪ねて来ることから始まるハードボイルドコメディ。ジェイソン・ミリガン作「ANY FRIEND OF PERCY D’ANGELINO IS A FRIEND OF MINE」が原作で、翻訳を小田島恒志、演出を元吉庸泰が務める。フランキーの古い仲間パーシー・ダンジェリーノの知り合い、という理由で厳重な警備をくぐりぬけ、彼の家に入ることができたトニー。しかし、話し始めるとパーシーの話題もあやふやで、どこかおかしなムードが漂う。そんな彼を怪しみ、ある“仕事”をさせてみるフランキー。その結果、信用を得たが、トニーが「フランキーの人生の映画化」についての話題を持ち出すと、フランキーは激怒。彼は大の映画嫌いだった――。辰巳にとっての初の単独主演となる本作。ゲネプロ後の囲み取材では「初主演の作品が三人芝居っていう。僕が願っていたものが一気にきた感じで。願いって叶うんだなと思いました。今は、稽古でやってきたことを思い切りやるだけだなと思っています。トニーとして生きることを楽しんでいきたいです」と笑顔。ベテランの田中と香寿との共演については「ふたりの胸を借りて思い切りやっていきたい」と話しつつ「(三人が)親子に見えたり、大親友に見えたりっていう瞬間のある作品なので、稽古中も三人の距離が近くなっていくことを感じました」。そんな辰巳について田中は「すごくがんばってますよ。楽屋が一緒なんですけど、その中でいろんな話ができてね。『やりたかったこと』と言ってたから、この機会は無駄にしちゃいけないよね」、香寿は辰巳と昨年8月の舞台『GACHI(ガチ)』から続けての共演ということもあり「彼がこんなにやる人だっていうのはわかっていたけど、改めて感動しています。最後、泣きそうになっちゃう」と語ると田中も「そうだよね」と共感するなど、三人のチームワークが垣間見える会見となった。どんでん返しに次ぐどんでん返しによって最後まで結末がわからないストーリーを、3人でテンポよく描いていくコメディ。予想外の展開の連続だが、芝居としても「まさかこんな姿が見られるとは」という予想外の姿も見られ、あっという間の1時間45分が楽しめる作品となっている。公演は、2月4日(日)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATERにて上演中。取材・文:中川實穂
2018年01月15日「少女☆歌劇 レヴュースタァライト ―The LIVE―」#1 revivalが1月6日から8日まで東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて上演された。本作は、ミュージカル×アニメの新感覚エンターテインメントプロジェクト第1弾の再演。1部は“スタァ”を目指す9人の“舞台少女”の物語を描くミュージカル、2部は舞台少女たちによるライブというステージは好評を博し、昨年9月の初演からわずか4か月での再演となった。演出は児玉明子、脚本は三浦 香。名門音楽学校を舞台に、そこで学ぶ舞台少女の夢を追う姿を描いた本作。メインキャストの9人はアニメ版(2018年夏・放送開始予定)と同じメンバーが演じる。W主演を務めるのは、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」でセーラーマーキュリーを演じた小山百代(愛城華恋役)と、抜群の歌唱力を持つ声優・三森すずこ(神楽ひかり役)。そのほか声優、俳優とさまざまなジャンルで活躍する面子が揃い、迫力のアクションや歌、ダンス、ライブをリアルで繰り広げた。今作は、華恋とひかりの再会を描くストーリー。幼いころ、歌とダンスのレヴュー「スタァライト」に心を奪われ「いつか必ずふたりであの舞台に立とうね!」と約束し合うもはなればなれになったふたりが、華恋の通う“俳優育成科”にひかりが転校してきたことで、運命が動き始める。ひかりの態度に戸惑う華恋と、ライバルが増え動揺するクラスメイト達。そんな中、突然不可思議なオーディションが開催され、“トップスタァ”の座をかけたバトルロイヤルが始まる――。“舞台に立ちたい”“トップスタァになりたい”という少女たちの夢、その育成学校で巻き起こる出来事を描く本作。椎名へきる演じる学年主任で学校OGでもある走駝紗羽による厳しい教えは、舞台ファンにとっても興味深いもの。観客は、キャラクターたちと共に舞台に立つうえで必要なものをひとつひとつ知ることになり、そこで教えられるものが今まさに舞台上で見えるものと重なる構造が面白い。今作では劇中で何度も“キラめき”というものが問われたが、その中で俳優たちが舞台上で歌い、踊り、激しいアクションを繰り広げながらリアルに放つ“キラめき”を体感できるのが、ミュージカル版ならではの魅力のひとつだろう。新曲『スタァライトシアター』を含む全7曲が披露された2部では、9人全員で歌う曲からユニット曲まで、“少女歌劇”ならではの美しさ、愛らしさ、華やかさが満載。細部までこだわられた衣裳にもぜひ注目したい。この日の公演のBlu-rayは6月27日(水)に発売される。10月には新作公演の開催が決定。また、同公演より誕生した9人組ユニット、スタァライト九九組の1stライブが6月23日(土)に東京・オリンパスホール八王子で開催される。取材・文:中川實穂
2018年01月11日ネルケプランニングによるアイドルステージ第4弾「アンプラネット」の新作『アンプラネット―Back to the Past!―』が、1月5日に開幕。それに先駆け、公開ゲネプロが行われた。【チケット情報はこちら】準惑星アイドル「アンプラネット」はこれまで「少年ハリウッド」「プレゼント◆5」「三日月」「CHaCK-UP」といったグループを世に送り出した、ネルケプランニングによるアイドルステージ第4弾。第一部では物語を、第二部ではライブパフォーマンスを披露するステージで、脚本・演出は亀田真二郎(東京パチプロデュース)。美波日音(冥王星人☆ポミィ)の中に眠る姉の魂をすくいあげるべく、日々奔走する近江 蒼(準惑星ケレス人☆セシィ)、黄楊いるか(準惑星マケマケ人☆マーニィ)、瀬南千翠(準惑星ハウメア人☆サティ)。そんなとき、彼らが通う芸能の名門校・私立SOJ学院に特別講師としてやって来た貴公子系アイドルユニット「三日月」の青羽 要が着けているブレスレットに、姉にまつわる石を見つける。そこである事実に気付いた3人は、秘蔵のオーパーツを使って過去のアメリカに行ってみることに。しかし「三日月」の大ファンという3人組や、濃厚キャラの外国人カップルに絡まれ――!?「アイドルとは一体何なのか、一緒に考えてみよう」という要の言葉から始まる物語。日音の意外な過去なども描かれ、その中に大切な問いかけが流れているストーリーとなっており、アンプラネットの面々がそれをどう受け止め、考え、どんな答えを出すのかは見どころのひとつだ。とはいえ基本的には本シリーズらしい賑やかで楽しい舞台。登場人物たちは全員濃厚で、アンプラネットの面々はもちろん、KIMERUと川上将大による外国人のジェニファー&ジェームズなどは存在感抜群!コミカルな芝居が作品を盛り上げる。また、第二部のライブでは、日替わりゲストとともに10曲以上の楽曲を披露。意外なユニットなども登場し、それぞれがキャラクターを生かしたパフォーマンスで客席を楽しませる。さらに客席参加型の曲もあるので、ぜひペンライトやうちわを使って彼らを応援して!公演は1月14日(日)まで東京・品川プリンスホテル クラブeXにて上演中。取材・文:中川實穂
2018年01月10日吉崎観音がコンセプトデザインを手がけ、昨年放映されたアニメも大きな話題になった「けものフレンズ」の舞台(再演)が2018年1月13日(土)に開幕する。その稽古場に潜入した。舞台「けものフレンズ」チケット情報ヒトの姿をした “アニマルガール”が集まる巨大動物園“ジャパリパーク”を舞台に、フレンズたちの大冒険をオリジナルストーリーで描く本作。2017年6月の初演同様、サーバル役の尾崎由香、フェネック役の本宮佳奈、アライグマ役の小野早稀らアニメと同じ声優が役を演じるほか、今作ではアニメでマーゲイを演じる山下まみがイワトビペンギン役で友情出演することも決定している(1月13日(土)・14日(日))。脚本・演出は舞台『ママと僕たち』シリーズの村上大樹。物語の中心となるのは、ジャパリパークの記念祭で行われるアイドル対決。サーバルがペンギンアイドルユニット・PPP(ペパプ)の公式ライバル”サバンナガールズ”を結成することになり、メンバー集めに奔走する――というストーリーで、この日は歌とダンスのシーンを中心に稽古が行われた。和やかな空気の中、アニメの主題歌『ようこそ!ジャパリパークへ』や『けものみち』など初演で好評を博した楽曲をはじめ、今作の新曲『われらじゃぱりびん』『けものとおどろう』(舞台「けものフレンズ」サウンドトラック収録曲)も披露。『われらじゃぱりびん』はフェネックとアライグマのかわいらしいデュエット&振り付けが魅力だが、そんなふたりに対する他キャラクターの反応も愛らしさ抜群。サバンナガールズとPPPによる『けものとおどろう』は元気で盛り上がる曲。エアギター(!)も披露されるので、ぜひ注目してほしい。芝居についても、初演を参考にしながら再演ならではの一歩踏み込んだ演出がつけられ、小さな仕草から登場&退場の仕方まで各キャラクターらしさを大切につくっていく様子が印象的。キャスト陣も積極的に意見を出し合い、芝居を磨いていく姿からは「今作も観客に楽しんでほしい」という思いが伝わってくる。曲中で客席がノリやすい煽りなども真剣に話し合われていたので、劇場でそんな想いをキャッチしたらぜひひかるぼーで応えて!公演は、2018年1月13日(土)から21日(日)まで東京・AiiA2.5 Theater Tokyoにて。1月13日(土)・14日(日)にマーゲイが出演するほか、16日(火)・19日(金)は日替わりのフレンズたちによる見送り、17日(水)・18日(木)はジャパリパークで記念撮影(抽選10名)なども行われる。取材・文:中川實穂
2018年01月10日2018年4月に上演される「PHOTOGRAPH 51(フォトグラフ51)」の囲み取材会が行われ、演出のサラナ・ラパイン、主演の板谷由夏、翻訳と芸術面をサポートするドラマターグの芦澤いずみが出席した。【そのほかの画像はこちら】本作は、2015年にウエストエンドにてニコール・キッドマン主演で上演され、好評を博した舞台作品の日本初演。実在する科学者ロザリンド・フランクリンを主人公にした物語で、「世紀の大発見」とも言われる“DNAの二重らせん構造”の発見に貢献したにも関わらずノーベル賞を受賞しなかったロザリンドと、彼女を取り巻く5人の男性の姿を描いていく。板谷のほかに神尾佑、矢崎広、宮崎秋人、橋本淳、中村亀鶴が出演する6人芝居。今回が舞台初主演・初挑戦となる板谷は「すべてのことが楽しみ」と笑顔。サラナは本作を「何年もやりいたいと思ってきた作品」だと言い「ハードなストーリーでありながら、すごく詩的で抒情的な言語を使う。描かれ方や構成そのものも詩的」と魅力を語る。そんな戯曲を初めて日本語に訳した芦澤は「サラナと何度もミーティングを重ね、一言一句に含まれる意味やリズム、演出家の意図を確認していきました」と、英語の台詞に込められた魅力を繊細に反映していったことを明かす。日本語の芝居を初めて手掛けるサラナと俳優の間に言語の違いがあるが、先日、稽古に先行して行われたリーディング(読み合わせ)では「(サラナは)英語の台本を読みながら、私たちの日本語の芝居に一緒に笑っていた」と板谷。言語の違いについて「むしろラッキーだと感じています。言葉が通じないからこそ、なんとなくわかった感じにはならず、絶対にわかるまで、わかり合えるまで探ると思うので。そしてサラナはそういった私の好奇心や質問にきちんと返してくださる方。しかも“プラスα”を足して返してくれるという信頼もあります」。サラナも「“わからない”ということにワクワクしています。なぜなら全然違う視点で(芝居を)見たり聞いたりすることができるから」と語り、このカンパニーならではの深みが生まれそうだ。板谷は自身の演じるロザリンドについて「ストイックさとか強さとか、私に足りないものも持っている人。ものごとに夢中になっていく子供っぽさ、無邪気さ、突進していく集中力に憧れますし、そこは彼女を通して体感したい部分です。人として教わることがすごくある気がしているので、すごく楽しみ」板谷が「人間って面白いなと思ってもらえるし、いろんな発見があると思う」と話す公演は4月6日(金)から22日(日)まで東京・東京芸術劇場 シアターウエスト、25日(水)・26日(木)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。取材・文:中川實穂
2017年12月28日舞台「パタリロ!」の第2弾新作公演、舞台「パタリロ!」★スターダスト計画★が来年春に上演される。マリネラ王国国王のパタリロが巻き起こす騒動を描いた魔夜峰央の同名ギャグマンガを舞台化した本作で、パタリロを演じる加藤諒、マライヒを演じる佐奈宏紀、バンコランを演じる青木玄徳に話を聞いた。舞台「パタリロ!」★スターダスト計画★ チケット情報2016年12月に上演された第1弾から続投の3人。新作について加藤が「初演でみんなで築き上げた『パタリロ!』の世界を、今作でさらに広げていきます。前回よりもストーリー性が強くなると思うので、その辺りも楽しみです」とキッチリ語れば、美少年マライヒ役の佐奈は「僕はまあ、マライヒの他に(登場人物に)美少年?が増えるらしいので。かかってこいよって感じですけど。絶対負けないので」と発言。それを聞いて青木が大笑いするなど、和やかさに初演のカンパニーの空気の良さが滲み出る。初演に続き脚本を池田テツヒロ、演出を小林顕作が手掛ける今作。ストーリーについて「ロビー少尉が出るってことはあの話でしょ?」(加藤)「うわー!泣いちゃうよ!」(佐奈)とキャストも期待大な様子。加藤は「タイトルになっている『スターダスト計画』とともに、ロビー少尉のエピソードは原作でもすごく人気がありますし、少しシリアスなお話で。その部分をしっかりみせるためにもギャグパートをもっと面白くして、ちゃんとギャップをみせられたら」と意気込む。そんな加藤の演じる主人公・パタリロを青木は「顕作さんは僕らメインキャラクターより周りのタマネギ部隊や魔夜メンズにいっぱい演出をつけるのですが、諒くんに限っては全然違って。弟子と師匠みたいな関係性で、自分の技をどんどん諒くんに注ぎ込む顕作さんを見て『すごいな』と思ったし、ちょっと羨ましい部分もありましたね」。初演で濃厚なバンコラン&マライヒ像を披露した佐奈は「マライヒって、バンコランとの出会いで性格や考え方も変わっていくキャラクターなんですけど、それと同じように(青木が)的確に僕を変えていってくれた」、青木も「佐奈くんのマライヒには感謝しかないです。役をつくるうえでバンコランはマライヒなしには存在しないと思いました」と振り返り、今作でも「バンコランは渡さない!」(佐奈)と熱い関係がみられそうだ。青木が「前作の千秋楽でパタリロにハプニングが起きてお客さんが腹がよじれるほど笑ってたんですけど、僕、あんなにお客さんが笑ってるのを舞台上から見たことがなかったから。あれをもう一回見たい」と話し、加藤も「代表作になるようにがんばりたい」と意気込む今作。公演は2018年3月15日(木)から25日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場、3月30日(金)から4月1日(日)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。取材・文:中川實穂
2017年12月27日太鼓芸能集団「鼓童(こどう)」の2017年ラストを飾る『打男 DADAN 2017』が12月20日(水)から24日(日)まで東京・文京シビックホール 大ホールにて上演される。鼓童「打男 DADAN 2017」チケット情報本作は、鼓童の芸術監督を勤めた坂東玉三郎が演出を手掛ける作品の中でも、あくまで「叩く」ことにこだわった人気作品。選りすぐりの奏者が太鼓をひたすら叩く“和太鼓の力”を柱としており、2009年の初演以来、フランス公演、香港公演、ブラジル公演、そして今年のアメリカ公演も成功をおさめ、“日本再上陸”して10月から全国27都市を巡っている。初演から出演する坂本雅幸、この作品に挑むのは今回が初となる小松崎正吾に話を聞いた。初めて参加する小松崎が「すごく“打つ”ことに特化した、太鼓打ちとして広い音の表現をする作品で。今回出演させてもらえることになって、やっときたか!という感じです」と意気込む本作。坂本も「鼓童の作品は基本的に笛が入ったり、踊りがあったりするのですが、この作品はとにかくずっと打ちっぱなし。メロディ楽器も入るのですがそれも打楽器なんですよ(笑)」と言うように、休憩込みで2時間とにかく“打つ男”が楽しめる。2時間打ちっぱなしの演奏は「後半は体力的にはかなり辛いのですが、やっぱりそれが魅力でもあるので」(坂本)と“全身全霊で打つ姿”こそが作品そのものだという。「特に雅幸さんはクライマックスの演目でギリギリまで叩くのですが、見ていて『限界なんじゃないか』と思うところからもう一押しするんですよ。そこで生まれる何かがお客様と共鳴していくような空気もあって。僕らも気合いが入ります!」(小松崎)。そんなギリギリの状態でなお“もう一押し”することについて坂本は「経験というより気持ちの部分が大きい。だから稽古でそこまで持っていくのはなかなか難しいんですよ。やっぱり本番のテンション、お客様の存在が大きいので」。演出の玉三郎からは「とにかくニュアンスを大事にと言われます。打楽器だけで見せるぶん、単調になると面白くなくなっちゃいますから。でも奏者はどんどん打ちたくなってしまうような演目なので。そこを指摘され、修正するんですけどまた気付いたらやりたい放題やりだして、怒られるという繰り返しです(笑)」(坂本)。「その“やりたい気持ち”を抑えられてるからこそ出るエネルギーというのも、すごく魅力的なんですよね。自分たちのエネルギーと比例してお客様の熱量が上がるのがどの作品よりわかりやすく感じます」(小松崎)。2006年から鼓童で活躍してきた坂本にとってラストでもある公演は、12月20日(水)から24日(日)まで東京・文京シビックホール 大ホールにて上演。取材・文:中川實穂
2017年12月08日岸谷五朗と寺脇康文による演技ユニット「地球ゴージャス」のプロデュース公演Vol.15「ZEROTOPIA(ゼロトピア)」の製作発表会見が開かれ、岸谷と寺脇、W主演を務める柚希礼音と西川貴教、新田真剣佑、宮澤佐江、花澤香菜が登壇。さらにナビゲーターとして水田航生と植原卓也が登場した。地球ゴージャス チケット情報作・演出を手掛ける岸谷が「これが15作目となりますが、僕らの1作目は何もない空間に舞台をつくって、ビール瓶で客席をつくって上演しました。今回そこに立ち返りたい。もう一度ゼロに戻ってみたいという思いがあります」と語った本作。「ZEROTOPIA」というタイトルについては「この作品の舞台となる色彩もなにもない“ゼロ”の島は果たしてユートピア(理想郷)か、ディストピア(地獄郷)か? という思いでこのタイトルにしました。その答えは登場人物たちが決めていくのだと思います」と解説した。それぞれの役柄について語られた会見。主演の柚希は罪を抱えたミステリアスな女という役どころで「勇ましく戦う役かな?と想像していたら、その予想を五朗さんは裏切ってくださいました。楽しみです」と言う柚希に、岸谷は「礼音ちゃんはいつも本当にいい笑顔なんです。この裏に潜むものを出していきたい」と話す。柚希と共に主演を務める西川はまさかの河童役。「与えられた役を全身全霊で受け止め、できるだけ役に近づけて魂を河童に…」と真顔で挨拶する西川に会場は爆笑。岸谷は「西川くんはとんでもない役です。ZEROTOPIAという無人島を支えて立ち上がる“男の中の男”を演じていただきたい」と解説した。新田は自らの役を「つらい過去を抱えていて、唯一、恋愛要素がある」とコメント。岸谷が「めちゃめちゃ踊ります、歌います!」と紹介すると、地球ゴージャスのファンの新田は嬉しそうな笑顔を見せた。Wキャストとして出演する宮澤と花澤は、「実は最も怖い役かもしれない」(岸谷)というお嬢様役。岸谷が「舞台の天才」と称した宮澤は「天才の宮澤です(笑)。お嬢様…わたくしが。ナチュラルにお芝居ができるようにがんばりたいです」、「皆さんの知らない花澤香菜ちゃんが見られます」と紹介された花澤は「声優をしているときはキャラクターと二人三脚ですが、今回は“自分が表現する”ということでドキドキします」と挨拶した。岸谷との息ピッタリのやり取りで会見を盛り上げた寺脇は「おちゃらけた役」(岸谷)だといい、「日々重苦しいことがたくさんありますが、それを乗り越えていく希望に満ちた話になると思います」とコメントした。公演は2018年4月9日(月)から5月22日(火)まで東京・TBS赤坂ACTシアターにて上演後、愛知、新潟、福岡、広島、大阪を巡演。東京公演のチケット一般発売は12月9日(土)午前10時より。取材・文:中川實穂
2017年12月07日ユーミン×帝劇 vol.3『朝陽の中で微笑んで』が11月27日に開幕。それに先駆け、公開ゲネプロと囲み取材が行われ、取材には松任谷由実(ユーミン)、寺脇康文、宮澤佐江、六平直政、斎藤洋介、脚本・演出を手掛ける松任谷正隆が登壇した。ユーミン×帝劇 vol.3『朝陽の中で微笑んで』チケット情報ユーミンの歌、俳優の演技、劇場空間が一体となる、ミュージカルとも従来の音楽劇とも違う舞台「ユーミン×帝劇」シリーズの第3弾となる本作。幕が開くと、帝国劇場の空間全体を使った舞台美術や美しいパフォーマンスが幻想的な世界をつくりだし、歌とストーリーテリングを担当するユーミンが観客を物語の世界へと連れていった。シリーズで初めて、キャストが決まったうえで脚本を書く“あてがき”で書かれた、寺脇と宮澤の純愛物語。舞台は500年先の世界だが、描かれているのはどんなに進化しても変わらない“人と人との交わり”。生命の時間すらデータでわかる時代の中で、登場人物たちの“生きる”姿が熱演されている。そのさまざまなシーンに寄り添うのが、本作の最大の魅力とも言えるユーミンの歌だ。タイトルでもある「朝陽の中で微笑んで」をはじめ、「Autumn Park」「未来は霧の中」など全14曲の歌唱が、そこに生きる人々をやさしく包み込んでいく。特に今作はこれまで以上に歌と芝居が重なり合った印象で、物語や芝居と歌がシンクロし、より深い感情を生み出していた。会見で、寺脇が「僕らの芝居がユーミンさんにエネルギーを与えられて、ユーミンさんが芝居に魔法の粉をかけてくださって。ライブでもない、芝居でもない、新しいエンタテインメント」と評した本作。ユーミンはゲネプロを終えての感想として「もう胸が詰まって声がかすれたりして…。これは素晴らしい演技のせいにできるなって(笑)。もちろん真面目に丁寧にアップしてお届けしようと思っていますが、そのくらい演技から影響を受けて歌っております」と熱く語る。芝居の中で唯一ユーミンと目が合うシーンがある宮澤が「そのときだけはどこかで『由実さんと目が合って今、ステージにいる』と客観的に見えてる自分がいます。心から出てくる感情が毎回違って、ワクワクするシーンです」と明かすと、六平も「ユーミンさんが、素晴らしい歌手が出てきて歌っているのではなくて、ひとつ“役”に見えるところがいっぱいある」とその不思議な存在感を熱弁。正隆も「“作品”が主役で、由実さんが主役ではない。そういう芝居だと僕は思っているので、今のバランスはものすごく自然」と、歌と芝居が混じり合う本作ならではの魅力を伝えた。公演は12月20日(水)まで東京・帝国劇場にて上演中。取材・文:中川實穂
2017年11月28日お米を擬人化した“米(コメ)ディ”『RICE on STAGE「ラブ米」~Endless rice riot~』が11月17日に開幕。それに先駆け初日会見と公開ゲネプロが行われ、会見にはひのひかり役の田村升吾、ささにしき役の星乃勇太、ネリカ役の健人、平山役の川上将大、白瑞光役の白柏寿大、兄鴨役の滝口幸広、演出家の村井雄が登壇した。舞台「ラブ米」チケット情報本作は、今年4月にアニメが放送され、WEBコミック「GANMA」でも連載中の、独特な世界観が人気を集める「ラブ米」の初舞台化。穀立(こくりつ)稲穂学園を舞台に、アニメでお馴染み“ひのひかり”や“ささにしき”らメジャーな米の5人組「ラブライス」、舞台オリジナルキャラクターの“ネリカ”ら陸稲米(おかぼまい)の5人組「ST☆RICE(スターリッス)」と、“白瑞光”ら古代米の3人組「GAZEN BOYS(ガゼンボーイズ)」、そして合鴨農法に必須の「合鴨ブラザーズ」によってストーリーが繰り広げられる。脚本・演出・作詞は、国内外で評価の高い劇団「KPR/開幕ペナントレース」の村井雄。会見では村井が「不条理な面白いアニメが原作なので、舞台も不条理な作品に仕上げようと思ってやってきました。現実社会のほうが不条理なことがあったりもするので、お客様の心に響くのではないかと思います」と挨拶。田村は「村井さんをはじめキャスト一同でつくり上げてきたものを舞台上で炊き上げるだけです!僕たち粒揃いのお米を、グルメ(=観客)の皆さんに味わっていただければ」とお米役ならではの意気込みを。星乃も「ささにしき役として、錦を飾らせていただきます!」、健人は「雨の日も風の日もお米として必死に育ってきました!」、川上は「今までに見たことのない米(コメ)ディです!」、白柏は「グルメの皆さんが元気になってくれたら!」、滝口は「炊き上げたアツアツのお米のような作品になったと思います!」とそれぞれお米らしい米(コメ)ントを述べた。ステージとショーの2部構成となる本作。1部のステージは、原作のポップな世界観と村井ならではのシュールさが混ざり合った、2.5次元作品ではなかなかない間(ま)と空気感。各キャラクターの個性は強烈だが絶妙な温度で演じられており、最後まで目が離せない独特の魅力を放っていた。また、台詞には「米(マイ)ッたね!」「みんなまとめて炊いてやる~!」など米ダジャレが大量に組み込まれるほか、アニメの主題歌でもある米米CLUB「浪漫飛行~ラブ米ver.~」の歌&ダンスなど、“米”に次ぐ“米”の世界。原作ファンはもちろん、シュールなコメディ好きにもオススメだ。2部のハーベストショーは、打って変わってポップなショーで盛り上がる時間。ぜひペンライトを用意して。11月26日(日)まで東京・品川プリンスホテル クラブeX にて上演中。取材・文:中川實穂(C)RICE on STAGE「ラブ米」
2017年11月21日ユーミン×帝劇 vol.3『朝陽の中で微笑んで』が11月27日(月)に開幕する。本作は、松任谷由実(ユーミン)の歌、俳優の演技、劇場空間が一体となる舞台作品「ユーミン×帝劇」シリーズの第3弾。脚本・演出を松任谷正隆が手掛け、今作では500年先の未来を舞台に、寺脇康文と宮澤佐江による時を超えた純愛物語が描かれる。ユーミン×帝劇 vol.3『朝陽の中で微笑んで』 チケット情報出演者の寺脇康文、宮澤佐江、六平直政に話を聞いた。稽古が始まっての感想を尋ねると「俺は名作になると思う」と六平。「もちろん由実さんにとってもいい舞台になると思うけど、寺ちゃんと佐江ちゃんの当たり役になると思う。芝居がいい。俺、稽古場で毎回泣いてるんだから」と語る。寺脇と宮澤は互いに恋をする役柄。「これまた一筋縄ではいかない恋なのでね」と寺脇が語るように、親子ほど年齢の離れたふたりの、ある秘密を抱えた純愛。実際に演じるうえで宮澤は「寺さんと一度お仕事をさせてもらっていたことがすごく大きかったです」と笑顔を見せた。宮澤の初舞台は、寺脇と岸谷五朗が主宰する演劇ユニット「地球ゴージャス」の公演『クザリアーナの翼』(2014年)。「公演期間も長かったので、稽古も合わせると5か月くらい一緒にいさせてもらったし、それ以降もかわいがってもらっていて。だから『どんな私でも受け入れてくれるよね、寺さん!』っていう。宮澤佐江からの愛のアプローチが役にも入ってます」。稽古では「正隆さんは『僕のことは気にしないで好きにやって』っておっしゃるんですけど(笑)、今は全員で正隆さんのイメージを追い求めています」と話す寺脇。そのイメージとはどのようなものなのか。「『生命』です。その神秘と活力と悲しさと。生命は永遠ではない。だから生まれて亡くなるまでをどう生きるかというのは非常に大きなテーマで。そこをこの作品は大きく包んでいます。その部分はやっぱりなにか表していきたいですね」。そして本作におけるスペシャルな存在は、ユーミンの歌唱だ。寺脇は「芝居と同時進行するというのかな。普通は芝居中に歌詞の入った音楽が流れると台詞とぶつかって喧嘩しちゃいますよね。だけどこの作品はそこがぶつかることで生まれるものがある」。六平も「芝居と歌がお互い火に油を注ぎ合ってるようなものだよ」と熱く語る。歌うユーミンと目を合わせるシーンがあるという宮澤は「この歌を私に捧げてくれているんだということをすごく感じさせてくださるんですよ。私は笑顔のシーンなんですけど、心の中はギューッとくる。すごくいいシーンになると思います」。六平が「新しい舞台芸術」「客席で観たかった」と絶賛する本作は、11月27日(月)から12月20日(水)まで東京・帝国劇場にて上演。撮影:中川實穂
2017年11月20日11月10日に舞台『誰か席に着いて』のプレビュー公演が開幕。それに先がけて公開稽古(一部シーン)と囲み取材が行われ、取材には田辺誠一、木村佳乃、片桐仁、倉科カナが登壇した。舞台『誰か席に着いて』チケット情報本作は、舞台『家族の基礎~大道寺家の人々』(作・演出)やNHK「LIFE!~人生に捧げるコント~」(脚本)などさまざまな作品を手掛ける倉持裕(劇団「ペンギンプルペイルパイルズ」)の作・演出による新作コメディ。2組の夫婦を中心としたストーリーで、映画プロデューサー・有園哲朗を田辺、その妻で売れっ子脚本家・織江を木村、売れないギタリストで作曲家・染田奏平を片桐、その妻で元プロダンサー・珠子を倉科が演じ、そこに福田転球と富山えり子が加わる6人芝居となっている。囲み取材では、まず田辺が「みっちり1カ月稽古したので、お客さんがどう楽しんでくれるか楽しみです」とコメント。木村は「久しぶりの舞台なので緊張しています!」と笑顔を見せ、「浮気があったり、借金があったり、盗作があったり、横領もあるけど、それでもコメディなんです」と作品を紹介するも勢いよくネタバレをしてしまい、片桐からツッコミをうける和やかな場面も。片桐は「和気あいあいと稽古してきたので、本当に(役柄同様)“家族”って感じになってきてる」と振り返り、「お客さんに観てもらって、笑ってもらって、はじめて答えが出る作品です。緊張はしますが、早くお客さんの前でやりたい」と本番が待ちきれない様子。それに対して倉科は「本当に稽古場が穏やかで。その延長線で進んでしまって今、緊張感がない(笑)」と笑いつつも、「これから“稽古がこういうところに生きてる”と実感していくんだろうなと思います」と語った。また取材には、愛嬌のある画風で人気の“田辺画伯”による描き下ろしイラストがプリントされた、“誰も席に着けない”グッズ(トートバッグ・Tシャツ)も登場。田辺はイラストについて「それぞれに秘密があって“席に着けない”お話なので。その心のぽっかりした穴を椅子で表現しました」と解説した。崇高な芸術とその未来について大いに語り合うはずが、実際は目の前の現実で精一杯な2組の夫婦の姿が描かれる本作。膨大な台詞の応酬からじわじわと浮かび上がる現実は意外に重いが、登場人物の魅力によってつい笑わされてしまった。どんどん露になる問題のその先に描かれるものはなにか――ぜひ劇場で確認して!『誰か席に着いて』は、プレビュー公演後、石川、大阪、静岡、福岡、広島を巡演し、11月28日(火)から12月11日(月)まで東京・シアタークリエにて上演。その後も、新潟、山形、福島にて上演される。撮影・取材・文:中川實穂
2017年11月14日中川晃教のコンサート「I Sing~time to come~」が開催される。中川が歌に真正面から向き合うべく13年からシリーズ化している「I Sing」だが、今回は中川の誕生日イブと誕生日当日である11月4日(土)・5日(日)に行う特別なものとなる。【チケット情報はこちら】「『I Sing』シリーズを始めたのは、様々な活動をする中、今の自分の歌というものを実感し、より多くの人達に届けたいと考えたから。歌うことは僕にとって生きることに繋がるので、このシリーズでは、炎のように燃え上がったり収束したり、あるいは呼吸したりといった、瞬間瞬間を生きる感覚を、ステージ上からお客様に届けてきました。勿論、それはどのコンサートも当てはまることですが、『I Sing』を始めたことでシンガーとしての自分を今一度自覚することができたので、いわば僕の原点なんです」今回の“time to come”という副題には、シンガーソングライターとして16年、俳優として15年という歳月を経てたどり着いた中川の“今”が表されている。「僕は01年にシンガーソングライターとしてデビューし、02年にミュージカルデビューしました。当初、ミュージカルはエンタテインメントの中では万人に受ける世界ではないということで、音楽業界の人に反対もされたんです。でも僕は初めてミュージカルを観た時、音楽でここまで物語や感情を表現できるんだ、と感動したし、実際にやっていくうち、そこには色々な方法論や背景や物語があることを知りました。ミュージカルは僕が好きなブラックミュージックやポップスと無関係ではなく、例えばマイケル・ジャクソンだってフレッド・アステアから影響を受けているし、近年ではミュージカルにもフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズを描いた『ジャージー・ボーイズ』やキャロル・キングの半生を扱った『ビューティフル』など、ポップスが主役の作品も増えてきている。だから、かつては自分の中に二つの道があるように感じて悩んでいた音楽とミュージカルも、今では切っても切り離せないものになっています。そうした中で培ってきた声を、音楽を、センスを、表現したいですね」セットリストは、これまでのコンサートで発表してきた楽曲をまとめて昨年リリースした『decade』と新曲とで構成。中川のこれまでと今、そして未来を味わえるプログラムになりそうだ。そして、このコンサート中に、中川は35歳を迎える。「誕生日とその前日にコンサートを行うのは初めてなんです。母によれば、4日に陣痛が始まり、5日の2時頃に病院へ行き、その数時間後に僕が生まれました。だからどちらの日も、僕にとっては生まれるまでの時間。この2日間に『decade』と新曲とを、新たなミュージシャンと編成による今の音で、皆様に届けていく。僕自身もやっていて特別な感情が湧き起こるでしょうし、この日、この瞬間でなければ味わえないコンサートになると思います」公演は東京・新国立劇場中劇場にて。チケット発売中。取材・文:高橋彩子
2017年11月02日同名のテレビアニメを原作にした舞台『ACCA13区監察課』が、11月3日(金・祝)に開幕する。その稽古場にて主演の荒木宏文と丘山晴己に話を聞いた。舞台『ACCA13区監察課』チケット情報本作は、13区に分かれた王国にある統一組織・ACCA(アッカ)を舞台に描かれる、男たちの“粋”様(いきざま)の物語。各自治区に不正がないか視察する監察課副課長で「もらいタバコのジーン」の異名を持つ食えない男ジーン・オータスを荒木が、ジーンの友人で物語のカギを握る男ニーノを丘山が演じる。脚本・演出は石井幸一。始まったばかりの稽古の感想を「パフォーマンスはまだ20%にも満たない段階ですが、もう感動できるものになっています。すごい人たちと一緒につくってるんだなというのを感じますね」と荒木。本作では2.5次元作品では珍しい、今村ねずみや鈴木省吾、平川和宏、鷲尾昇、伊藤明賢らベテランが多く出演しており、「懐の深さと安心感と緊張感のバランスがすごくて!稽古していて『こういう人たちと(芝居で)会話ができるのは、こんなにも面白いことなんだ』って感じるんですよ」。オノ・ナツメの人気漫画を原作とし、今年1月にはアニメ化も好評だった本作。その舞台化を丘山は「男たちの絆や騙し合い、視線や罠…そういうものが目の前で起きている、しかも劇場という狭い空間で。そのエネルギーを感じてほしいです。また新しいACCAに出会えると思います」と語る。淡々と静かな雰囲気が魅力の作品。中でもジーンは感情を表に出さない役柄だが、舞台での表現は難しくないか尋ねると、荒木は「僕は、動かなくても成立する、その人がただ立っているだけでお客さんに伝わってしまう、というような表現ができないと、(芝居として)できることが限られてしまうんじゃないかと思うんです。だからその技術を身につけなきゃと常々思っていて。もちろん石井さんの演出と合えばですが、そこもチャレンジしたいです」。丘山は役を演じるのとはまた違う役割を担っているといい「この舞台では、ジーンが13区をまわっていく“ロードムービー”のレンズを覗いているのがニーノで、同時にそれを見せていくのもニーノなんですよ。高度なことですが、だからこそやりがいがあるし、お客様に楽しんでもらえるようにがんばりたいです」。親友役だが「舞台上では遠いよね」と話すふたり。「余計なことを喋らず、もっと違うところで繋がってる感じがふたりらしいなって思います。このふたりが15年以上一緒にいられるのはこういうことなんだろうなというような距離感を舞台上でこう見せるんだ、というところも楽しんでほしいです」(荒木)。公演は11月3日(金・祝)から12日(日)まで東京・品川プリンスホテル クラブeXにて。取材・文:中川實穂
2017年10月31日