作を丸尾丸一郎が、演出を菜月チョビが担い、数々のアツい青春劇を世に送り出してきた「劇団鹿殺し」。活動20周年記念公演vol.2『ランボルギーニに乗って』は、劇団としての今の鹿殺しの決意表明とも言える、意欲に満ちた新作だ。そこで丸尾と菜月、さらに主人公テルオを演じる松島庄汰の3人に、公演にかける現在の想いを語り合ってもらった。作っては壊しの20年。今は旗揚げのような気持ちに――活動20周年とのことですが、この20年で「劇団鹿殺し」は、どういった劇団へと成長してきたと思いますか?菜月鹿殺しは私と丸さん(=丸尾)のふたりで旗揚げして、当初13人ぐらい劇団員が入ったんですが、いきなり全員即辞める、みたいなことになりました(笑)。本当ここまで紆余曲折あったので、20年ずっと積み上げたというよりかは、作っては壊し、作っては壊し、みたいな20年だったなと。だからどんな劇団にしたいか、3年に1回ぐらい考え直す、みたいな。さらにコロナで、本当に演劇を続けたいのか、みんなの意思を確認し合いました。そこから今回の稽古が始まっているので、今は演劇をやること自体をみんなで楽しんでいる、旗揚げの時みたいな気持ちですね。丸尾これまでは「売れたい!」って気持ちがとにかく強い、野心の塊みたいな劇団だったと思います。でもコロナを経たことと、年齢的なこともあってか、今はもう少し楽な気持ちになっていて。だから「あそこに行ってやろう!」ではなく、「行きたくなった方向に向かえばいい」みたいな感覚。ここ数年で、ちょっと自由になれた気がします。――活動20周年記念公演第2弾となる『ランボルギーニに乗って』は、待望の新作となります。創作の起点になったことは?活動20周年記念公演vol.2『ランボルギーニに乗って』チラシ丸尾もともと書いてみたいものがあったんですが、庄汰が僕のお芝居を観に来てくれた時、「家族の話が観たい」と言ってくれたんです。それを聞いて「なるほどな」と。自分の原点に返った家族ものと、新しく書いてみたい要素。イメージとしては、それぞれ半分ずつ混ぜ合わせたような新作になったと思います。元ハンドボール部キャプテン松島が演じるイケてなさ――本作にも影響を与えた松島さんは、「OFFICE SHIKA PRODUCE」ですでに丸尾さんとはご一緒されています。ただ劇団公演への参加は今回が初。ここまでの稽古の感触は?松島今は劇団の稽古という環境に慣れることに必死ですが、とにかく劇団員の方が頑張っているなという印象ですね。菜月・丸尾(笑)。松島皆さんの頑張りが本当にすごくて!日々刺激をもらっています。丸尾本読みの段階から、庄汰に頼んでよかったなと思いました。自分の役割ってものをすごくよく理解してくれていますし、庄汰が真ん中にふわっと優しくいてくれるだけで、グッと物語が締まる。心から信頼出来る役者ですし、ここからチョビが庄汰にどういうリクエストをし、どんな新しい主人公像を見せてくれるのか。すごく楽しみです。――演じるテルオについて、松島さんはどういった人物として捉えていますか?松島気弱なキャラクターですね。でもちょいちょい外していかないと、単に陰にこもった役になってしまう。そこをどうバランスよく遊ぶのか、今悩んでいるところです。丸尾庄汰って学生時代はモテた?松島……いや、普通でしたよ。菜月これはモテてましたね(笑)。松島ハンドボール部のキャプテンだったんです。菜月そうなんだ!それはモテるね。丸尾でも今回の庄汰は、そんなキャプテンのイメージとはかけ離れていて。ものすごくイケてない、イケてなさがちゃんと出た人物になっているので、それは本当にすごいなと思います。劇団公演のメインは劇団員。その努力が報われて欲しい――演出家としてはここまでの稽古の感触、手応えのほどはいかがですか?菜月なんかいつも以上に丸さんが楽しそうでよかったです(笑)。ゲストさんとの相性もすごくよくて、リラックスしつつ、アイデアを出し合えている感じ。不安なのは、上演時間が結構長くなりそうなことくらいで……(苦笑)。松島このままだと3時間コースですよね(笑)。菜月その間、庄汰くんはほぼ出ずっぱりですし、ほかのゲスト陣も全然お客さんでいられないというか。ただ20周年なので、一緒に演劇の楽しさを味わえる、むしろ教えてもらえるぐらいの方とやりたいなと思って。それは庄汰くん、演劇集団キャラメルボックスの多田(直人)くん、河内(大和)さん、花組芝居の谷やん(=谷山知宏)、みんなそう。キャスティングの一番の決め手はそこでしたね。――そのゲスト陣の存在が、若い劇団員たちの刺激にもなっていそうですね。菜月その通りですね!――そして松島さんは、その劇団員たちから刺激を受けていると。松島はい!皆さん本当にすごいです!――劇団公演として、とても理想的な稽古場になっているかと思います。そこから立ち上がる作品が、お客様にとってどういった時間になればいいなと思いますか?松島劇団公演なので、やっぱりメインは劇団員の方だと思っています。その全員を生かしてあげたいという想いがあるからこそ、丸さんのホンも長くなってしまっているんでしょうし(笑)。丸尾それはあるね(笑)。松島だからみんなが活躍しつつ、お客様にも楽しんでいただきたい。それでこそ劇団員の皆さんの頑張りが報われるんじゃないかなと思います。丸尾見出しは「劇団員に報われて欲しい」だね(笑)。まぁこういう時期に劇場に足を運んでいただくからには、ぜひ皆さんと一緒に、楽しい時間を共有出来たら嬉しいですね。そしてこの舞台が、明日以降をちょっと前向きにさせてくれる、なにか“新しい靴”みたいな存在になれたらいいなと思います。菜月私は旗揚げの時から一番に思っていることがあって、それは「自分が客席にいたら救われるような作品を作りたい」ということ。だからダメな主人公が自分のダメさを変えることでうまくいく、もっと頑張れよっていう作品をずっと作ってきて。でもこの作品は、庄汰くん演じるテルオが変わらなきゃいけないんじゃなくて、この子の中にはすでに可能性があり、周りがそれに気づくことで世界はもっと広がっていく。つまり今までの鹿殺しからひとつシフトチェンジした、頑張れじゃないメッセージをこの作品からは届けられるんじゃないかと思います。取材・文=野上瑠美子<公演情報>活動20周年記念公演vol.2『ランボルギーニに乗って』【東京公演】2022年7月8日(金) ~7月18日(月・祝) あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)【大阪公演】2022年7月22日(金) ~24日(日) 近鉄アート館チケットはこちら:★劇団公式YouTubeチャンネルでは、活動20周年を記念して過去20作品を週替わりで連続無料配信中!(毎週日曜20時更新)詳細は下記サイトよりご確認ください。
2022年06月27日「劇団鹿殺し」約3年ぶりの新作本公演『傷だらけのカバディ』が11月・12月に東京と大阪で上演される。作・出演の丸尾丸一郎と、出演の椎名鯛造に話を聞いた。【チケット情報はこちら】丸尾丸一郎が作、菜月チョビが演出、オレノグラフィティが音楽を手掛ける本作は、インドの国技・ガバディを題材にした物語。2020年の東京オリンピックでミスし、日本国民を落胆させた元日本代表男子ガバディチームのメンバーが、10年後に場末のスナックで再会して…というストーリーだ。丸尾は「オリンピックを目標にしていた人たちの、その後の話です。これからどう生きようかとか、何に向かって走ればいいかわからないと思っているような人たちに向けて、何度でも立ち上がることを思い起こさせる作品になればいいなと思っています」。初めて劇団鹿殺しの公演に参加する椎名。今回、出演を依頼した理由は「去年、僕が脚本・演出を手掛けた舞台でご一緒したときに“なんでもできる、演技がうまい”という印象で。鯛造がもっとのたうち回るような、心に溜めているものを出すようなお芝居を見てみたいと思いました。だから今回は彼に“こんなはずじゃなかった!”とか言わせたい(笑)」。それを聞いた椎名は「それは僕も見たことのない僕です(笑)。そういうふうに悩めたら、それはそれで楽しそう。鹿殺しさんの公演には初めて参加するので、郷に入っては郷に従えではないけど、劇団員の一員のような感じで楽しめたらなと思っています」と嬉しそう。約3年ぶりの新作本公演であることについて丸尾は「この3年、劇団での新しい活動をあまりしていませんでした。僕の中で、劇団で作品をつくることの意味を探していました。見失っていたから。劇団が“売れなきゃ”っていう気持ちが強すぎたんだと思います。でも大前提として、劇団というのは夢を追いかける、共有するものだと気付いた。だから劇団をこれからも守っていきたいし、そのためには、劇団で作品をつくることを“年に1度のご褒美だ”ってくらい楽しめるものにしたい。その結果売れたらいいけど、売れるためにやることじゃないと今は思っています。今は旗揚げの頃のように“やりたい、お芝居をつくりたい”という気持ちです。それが舞台上でどう出るかはわからないけど、とにかくほとばしってるはずです!」椎名が「丸さん(丸尾)と、役者として絡むのも楽しみです。去年、演出を付けてもらったとき、“お芝居も上手い人だ”という印象があるので。演出のチョビさんと一緒にゴールに向かっていけたらと思っています」と意気込む『傷だらけのカバディ』は11月21日(木)から12月1日(日)まで東京・あうるすぽっと、12月5日(木)から8日(日)まで大阪・ABCホールにて上演。取材・文:中川實穗
2019年10月25日ミルク(MILK)原宿本店の地下1階「ヴィクセン・プロダクツ(VIXEN PRODUCTS)」にて、博覧会「丸尾末広博覧会」が開催される。期間は、2019年7月15日(月)から8月4日(日)まで。「丸尾末広博覧会」は、『少女椿』などで知られる漫画家・丸尾末広をテーマに、ファッション・カフェ・アートを融合させたイベント。丸尾末広の残酷ながら美しい世界を五感で体感することができる。会場では、過去にもコラボレーションした経験のあるミーウィー(MEEWEE)と丸尾末広が再びタッグを組み、アイテムの先行販売や受注受付を行う。先行販売されるのは、丸尾末広の絵をコラージュをプリントしたビックTシャツ。ワンピースとしても着られるオーバーサイズで、男性の着用も可能だ。また、タイツが先行販売されるほか、総柄ワンピースやスウェット、トートバックが受注商品としてラインナップする。併設のカフェスペースでは、丸尾末広の世界観を再現した限定メニュー「MARUO SUEHIRO SAVED ICE SET」が登場。血液を模したベリージュースに、『少女椿』のキャラクター・カナブンの目玉を表現したゼリーが入った血液ドリンク、汁が出るジュースカプセルや目玉ゼリーをトッピングしたかき氷などがセットになっている。アートでは、映画『少女椿』の美術を担当した佐々木健一によるインスタレーション作品を公開。その他、丸尾末広のジークレー作品の展示販売も実施される。【詳細】「丸尾末広博覧会」開催期間:2019年7月15日(月)~8月4日(日)営業時間:12:00~19:00(L.O. 18:30)会場:ヴィクセン・プロダクツ住所:東京都渋谷区神宮前6-29-3 KY ビルB1TEL:03-6419-7798■ミーウィー×丸尾末広 限定アイテムTシャツ 8,860円+税Tシャツ総柄 13,600円+税ワンピース2種 36,800円+税※先行販売:Tシャツ、タイツ※受注受付:ワンピース、スウェット、スカート、トートバック■カフェメニューマルオ スエヒロ シェイブ アイスセット 1800円+税
2019年07月20日劇団鹿殺しの丸尾丸一郎が脚本・演出を手掛ける舞台「山犬」が5年ぶりに上演される。本作に出演するAKB48 Team 8京都府代表/Team Bの太田奈緒と丸尾に話を聞いた。【チケット情報はこちら】本作は、人間の極限状態と純愛を描く“監禁劇”で初演は2006年。今回はメインキャストを男女逆転させた新バージョンとなり、メインを岩立沙穂(AKB48 TeamB)、太田奈緒(Team 8京都府代表/Team B)、谷口めぐ(AKB48 TeamB)が演じる。丸尾は「今回は彼女たちが等身大で演じられる設定に変えました。歌も入れたいと思っています。3人とは舞台版「マジムリ学園」(2018年/丸尾は脚本・演出を担当)を一緒に作った間柄で、役も当て書きです」ストーリーについて「ちょっとしたことの積み重なりで人が変わっていく様がすごく怖かった」と感想を語るのは太田。本作では、内気で歌と料理が好きな元コーラス部・山本雲雀を演じる。「すごく感情の高低差がある役柄なので、最初は“大丈夫かな?”と不安に思いました。だけど今まで演じたことのない役柄ですし、今回で自分の殻皮を破れたらと思っています」と楽しみにしているそう。丸尾も「奈緒が演じるうえで1番苦労するのは狂気じみたところなんじゃないかなと思います。僕の中で奈緒には、負けん気や人を蹴落とすようなイメージがないんですよ。だからこそ役ではそういうことをやってもらいたい。奈緒の汚いところが出ればなと思います(笑)」と期待する。これまで5作の舞台を経験し、そのうちの4作が昨年に集中している太田。その理由を、「将来的に女優の道を考えたがまずは実際にやってみて、自分がどう感じるか、向いているのかどうかを知ったほうがいいと思って。それで“舞台に出たい”と口に出すようにしたら、すごく充実した1年になりました」と明かす。その日々を経て「やっぱり楽しかった。難しいなと思うこともたくさんありますが、これからもやっていきたいです」と目を輝かせた。そんな1年で出会った丸尾の印象は「ひとりひとりと向き合ってくれる方で、それがすごく嬉しかった。今回もまた勉強になるんだろうなと思っています」。逆に丸尾から見た太田の印象は「女優としての偏差値が高い。何色にでも染まれるし素質があると思います」ホラーとも言われる作品だが、丸尾は「この作品をホラーにしたい気持ちはない」と語る。「作品のテーマは“僕たちは人殺しをしたことないですか?”ということ。“間接的にでももしかしたら人を殺しちゃってるんじゃないですか?”って。そういうことに気付いて、少しでも愛が大きくなった状態で劇場を出てもらえるような作品にしたいなと今は思います」舞台「山犬」は2月27日(水)から東京・池袋のサンシャイン劇場、3月6日(水)から大阪・ABCホールにて上演。取材・文:中川美穂
2019年02月19日「劇団鹿殺し」の代表・丸尾丸一郎による初めての小説(10月12日刊行)を原作にした舞台「さよなら鹿ハウス」が11月8日(木)に開幕する。小説の著者であり舞台では作・演出を手掛ける丸尾と、丸尾をモデルにした“角田角一郎”を演じる主演・渡部豪太に話を聞いた。【チケット情報はこちら】丸尾が「小説のお話をいただいたときに“自分しか経験していないことを書きたい”と思い、人生で1番濃い2年間を書きました」と語るように、本作は、劇団鹿殺しのメンバー7人が中古のハイエース1台で関西から上京し、「鹿ハウス」で共同生活をしながら“伝説”になるために心身を燃やし尽くした日々を描いた作品。小説を読んだ渡部は「すごく面白かったです。路上パフォーマンスをしたり警察のご厄介になったりとなかなかハードコアな生活なのですが、それを仲間の愛で乗り切ってる感じがやさしくて。丸尾さんの人柄が出てるなと思いました」と感想を語った。登場人物は、角田角一郎、鹿の子チョビン、オレノハーモニー、ジョン・J・ウルフ、入交ヨシキ、渡辺ダガヤ、山本サトル。微妙に名前を変えたのは「7人の思い出を自分の主観的な目で書くから」だそうだが、舞台化について「『劇団鹿殺し』の話にはならないと思います。こういう7人組がいた物語として捉えてもらえれば」と丸尾。演出するうえでも「自分の記憶とは完全に切り離してフラットにつくっていくと思います。“この劇団員はこういうヤツだった”とこだわるつもりもない。7人のキャラクターが立って、単純に劇として会話が面白くなればいいです」と構想を語る。それを聞いて渡部も「僕も“角田さん”を演じるのであって、丸尾さんを演じる感覚ではなかったので、今の言葉を聞いて“それでいいのだな”と思いました。丸尾さんには当時の出来事やみそ汁の匂いとかを教わって、役に繋げていこうと思っています」。脚本については「小説に書いていない日常生活を、会話劇でみせたいと思っています。でも日常会話ってすげー難しいの!」(丸尾)と頭を抱えつつも楽しそう。「いきいきとした7人の生活を表現したいから」と、今までやったことがないというエチュード(即興劇)を稽古に取り入れる予定だそう。渡部も「今は一緒に冒険に出られるというような気持ちです。劇中で劇団員になれるのも面白そう」と期待をのぞかせ、同じく楽しげな顔。そんなふたりを筆頭にどんな作品が生まれるのか、幕が開くのを楽しみに待ちたい。OFFICE SHIKA PRODUCE「さよなら鹿ハウス」は、11月8日(木)から18日(日)まで東京・座・高円寺1、11月22日(木)から25日(日)まで大阪・梅田 HEP HALLにて上演。
2018年10月26日劇団鹿殺しの丸尾丸一郎と松岡充が、新たな演劇ユニットを始動。OFFICE SHIKA PRODUCE VOL.Mとして『不届者』を上演する。一見意外な組み合わせにも思えるこのふたりが、なぜ共に新作舞台を創作するまでに至ったのか、話を聞く。【チケット情報はこちら】2012年の『リンダリンダ』で俳優として共演したふたり。お互いの第一印象を訊ねると、丸尾いわく「世間一般でいうチャラ男」、一方松岡は「稽古中は演出家の、公演中は観客の求めることが手に取るように分かるズルい男」と、決していいものではなかったよう。しかし「松岡さんはすごくストイックだし、お客さんに何か残さないといけないという意識がすごく強い」、「鹿殺しの作品を観続けていくうちに、鹿殺しとは、丸尾丸一郎とはってところがブレない人だと分かってきた」と続け、徐々にお互いに対するリスペクトの度合いを高めていった様子。丸尾は『不届者』創作の原点について、「『リンダリンダ』ではすごくポジティブだった松岡さんですが、僕はその腹の底にある、何か黒い部分を描いてみたくて」と明かす。さらにそれは、残忍な一面を隠し持っていたとも言われる“徳川吉宗”を松岡が演じることで、作品としての明確な輪郭をもち始める。そんな丸尾のアイデアに対し松岡は、「鹿殺しのファンだから」と切り出し、「僕は丸尾丸一郎の描く世界観というものにグッときているひとり。しかも丸くんは、“人間”というものをちゃんと描くことが出来る稀有な存在でもある。だから不安はありません」と、丸尾に全幅の信頼を寄せる。松岡が徳川吉宗を演じるということで、江戸時代が舞台の時代劇かと思えば、決してそうではないと丸尾は言う。「ある詐欺事件と吉宗のいる江戸時代の話がシンクロしていく、そんな劇構造にしようと思っています。だから時代劇でもないですし、恐らく着物も着ない。お客さんにいろいろ想像してもらって、最後には誰もが感じる怖さや情けなさ、生きたいっていう願望なんかが残る作品になればいいなと思います」。ふたりの創作は今後も続いていくのかと問うと、「そう思わせる作品にしないといけない」と丸尾。「松岡さんはもちろん、お客さんに対しても『丸尾と組むといろんな松岡充が見られるぞ』って思わせたいなと。ある意味、松岡さんのことが嫌いな人にも観てほしいです」と笑うと、「本当は俺のこと嫌いなんちゃう?(笑)」とすかさず松岡。だがそんなツッコミも、丸尾への期待の表れなのだろう。「やるからには松岡充の、丸尾丸一郎の代表作だって言えるものじゃないと嫌だからね!」と松岡が見つめた丸尾の顔には、一瞬の不安の後に、はっきりとした自信を見てとることが出来た。OFFICE SHIKA PRODUCE VOL.M 「不届者」は9月27日(水)から10月1日(日)まで、東京・天王洲銀河劇場で上演。チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2017年09月04日