松下奈緒が主人公を演じる「スカイキャッスル」の1話が7月25日に放送。戸田菜穂演じる香織の一家を襲ったまさかの展開に「不穏すぎる」といった声が上がっている。韓国の同名人気ドラマをリメイクした本作は、受験を迎えたセレブたちによる泥沼劇を描いたサスペンスドラマ。松下奈緒、比嘉愛未、高橋メアリージュン、木村文乃、小雪の5人の豪華俳優陣が、高級住宅街「スカイキャッスル」で波乱を巻き起こす。スカイキャッスルの住人・浅見紗英を松下奈緒、紗英の娘・瑠璃を新井美羽、紗英の夫で外科医の英世を田辺誠一、息子を帝都医大附属高校に合格させた冴島香織を戸田菜穂、香織の息子・遥人を大西利空、香織の夫で外科部長の哲人を橋本じゅん、スカイキャッスルに住む二階堂杏子を比嘉愛未、夏目美咲を高橋メアリージュン、スカイキャッスルに引っ越してきた南沢泉を木村文乃、泉の息子・青葉を坂元愛登、泉の夫で医師の公平を大谷亮平、受験コーディネーターの九条彩香を小雪が演じている。※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。セレブが集まる高級住宅街「スカイキャッスル」。ここに暮らす冴島香織(戸田)の息子・遥人(大西)が、超難関の帝都医大付属高校に合格した。受験を翌年に控えた我が子を同校に入れたいスカイキャッスルの住人、浅見紗英(松下)、二階堂杏子(比嘉)、夏目美咲(高橋)の3人は、成績優秀とは言えなかった遥人の逆転合格に騒然とする。何が何でも合格の秘訣を聞きだそうと食い下がる紗英、杏子、美咲に根負けし、香織は“受験コーディネーター”の存在を明かす。受験コーディネーターとは、あらゆる手を尽くして生徒を合格へ導いてくれる特別な存在。しかし彼らとは、ごく限られたVIPのみが参加できる“秘密の教育セミナー”でしか接点をもてないらしい。それでも諦められない紗英は、抜け駆けして香織に媚を売り、1枚しかないセミナーの招待チケットを譲ってもらう。ところが会場へ行くと、そこには杏子と美咲の姿もあった。紗英は警戒心を募らせながら、何人ものコーディネーターの中から遥人を担当した合格率100%の九条彩香(小雪)を選び、契約をしようとするが――というのが1話の展開。夫の指示で杏子も九条を選ぶが、九条と契約できるのはどちらかひとりのみ。それぞれ九条の質問に答えるが、最終的に紗英が契約を結ぶことになる。その後、香織が一緒に行った母の体調不良を理由に、お祝いのエジプト旅行から急遽帰国する。しかし香織も薬を飲んでおり、普段の様子とは違っていた。そんな中、幸せの最中にいたはずの香織が突然自殺してしまう。そして夫の哲人(橋本)も病院を辞め、スカイキャッスルを去っていく。あまりにも突然の展開に、SNSでは「突然の自殺……不穏すぎる」、「幸せを手にした(はず)の冴島家の突然の凋落は何を意味する?」などの声が。その後、香織の家には紗英の娘・瑠璃(新井美羽)の同級生で学年トップを競う南沢青葉(坂元愛登)が引っ越してくる。引っ越しの挨拶に家庭菜園のトマトを持参した南沢泉(木村文乃)に「以前どこかでお会いしてません?」と聞かれ「人違いじゃないですか?」と答え怪訝な表情で対応する紗英だが、彼女が自分の連絡を無視していた青葉の母だとわかり、態度を少し軟化させる。新たな嵐が巻き起こりそうな対面に「泉さん、紗英さんの過去知ってんの?わくわく」や「紗英と泉のバチバチ感良いな~!!!」、「紗英さんのイビリに微塵も動じず逆に一撃をくらわす泉、強い」などの声が上がっている。【第2話あらすじ】息子・遥人(大西利空)が超難関の帝都医大付属高校に合格し、“幸せの絶頂”にいたはずの冴島香織(戸田菜穂)が選んだ“自死”という選択。高級住宅街「スカイキャッスル」のセレブたちに動揺が走る中、浅見紗英(松下奈緒)は香織に貸したタブレットに格納されていた遥人の日記を読み、言葉を失う。香織を追い詰めたのは、人格をも踏みにじって受験勉強を強要した両親への憎悪の念が書き殴られた、遥人の日記だった。しかも、そこには遥人が受験コーディネーター・九条彩香(小雪)に悩み相談をしていたことも綴られていた。つい先日、帝都医大付属高校を目指す長女・瑠璃(新井美羽)のため、有能な九条との契約を勝ち取り、優越感に浸っていた紗英。しかし一転、家庭の問題には関与しないと断言していた九条への猜疑心を募らせ、契約解除を決断する。ところが、この選択に瑠璃は猛反発。一方、九条の争奪戦で紗英に負けた二階堂杏子(比嘉愛未)は、今度こそ契約をしようと動き出す。同じ頃、冴島家が逃げるように去った家に引っ越してきた南沢泉(木村文乃)は、香織の自死の真相を突き止め、同様の悲劇を食い止めるための小説を書こうと決意。香織と懇意にしていた紗英、杏子、夏目美咲(高橋メアリージュン)から話を聞こうとするが、紗英に協力を拒絶される。しかし、この時紗英が放った痛烈な一言がやがて、彼女のセレブ人生において命取りとなる事態を招き――。「スカイキャッスル」は毎週木曜21時~テレビ朝日系にて放送中。(シネマカフェ編集部)
2024年07月26日7月25日(木)より放送開始の木曜ドラマ「スカイキャッスル」の新たなキャストが発表され、橋本じゅん、戸田菜穂、大西利空、松田有咲が出演することが分かった。松下奈緒、木村文乃、比嘉愛未、高橋メアリージュン、小雪ら、豪華女性キャストが集結する本作は、美しきセレブ妻たちのドロ沼マウントバトルを描く、予測不能なサスペンスミステリー。韓国の高視聴率ドラマ「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」をリメイクしたドラマだ。この度キャストが明らかとなったのは、松下さん演じる浅見紗英ら「スカイキャッスル」のセレブ妻たちが羨望の眼差しを向ける《冴島家》の面々。夫・冴島哲人(橋本じゅん)は名門「帝都病院」の脳神経外科部長で、次期院長と目されるダントツのエリート。成績が振るわなかった息子・遥人(大西利空)も超難関の「帝都医大付属高校」に逆転合格し、熾烈なマウントバトルを制した妻・香織(戸田菜穂)は《幸せの絶頂》を享受。ところが…誰もがうらやむ超エリート家族も、実は砂上の楼閣だった…?ある日、スカイキャッスルで発生した《謎多き事故》を機に、冴島家はみるみる崩壊の一途をたどっていくことに。どういうわけか半年前に突然、冴島家を去っていた元家政婦・秋川さくら(松田有咲)も含め、《一家が抱えていた闇》が次々と露呈しはじめる。謎多き事故から五転六転、《想像をはるかに超えた嵐の連鎖》へスカイキャッスルの住人たちを導いていく冴島家。全てのトリガーとなる《冴島家の秘密》、そこから巻き起こる未曾有の事態とは一体? 最後の最後まで息をのむミステリー展開に期待が高まる。また、ミステリーを左右する人物として、藤真利子、前原滉、内藤理沙、映美くらら、小野武彦も出演。藤さんが演じるのは、紗英の夫である英世(田辺誠一)の母・浅見雪乃。さらに合格率100%を誇る受験コーディネーター・九条彩香(小雪)の敏腕秘書・永峰泳児を前原さん、我が子の受験バトルでスカイキャッスルのセレブ妻たちを出し抜こうとする加藤玲を内藤さん、スカイキャッスルの子どもたちと同級生の苦学生・山田未久(田牧そら)の母・山田希美を映美さん、そして、夫たちの出世バトルの鍵を握る帝都病院の病院長・大河内隆を小野さんが演じ、物語を翻弄していく。はたして彼らはどんな形で、スカイキャッスルの住人たち、そして物語に一石を投じていくの。予断を許さない彼らの一挙手一投足からも目が離せない。木曜ドラマ「スカイキャッスル」は7月25日(木)より毎週木曜21時~テレビ朝日系にて放送(※初回は拡大スペシャル)。(シネマカフェ編集部)
2024年07月03日映画『沈黙のパレード』(9月16日公開)の)ジャパンプレミアイベントが31日に都内で行われ、福山雅治、柴咲コウ、北村一輝、飯尾和樹、戸田菜穂、田口浩正、川床明日香、出口夏希、岡山天音、檀れい、椎名桔平、西谷弘監督が登場した。同作は東野圭吾による人気シリーズの実写映画第3弾。変人でありながら天才的な頭脳を持つ物理学者・湯川学(福山)の活躍を描き、2007年より連続ドラマ『ガリレオ』(第1シーズン・第2シーズン)、映画『容疑者xの献身』(興行収入49.2億円)、『真夏の方程式』(興行収入33.1億円)とヒットを続けている。作品のイメージカラーにちなんだ"イエローカーペット"にリムジンで駆けつけたキャスト陣。柴咲は大きく背中の開いたドレス、戸田は真っ赤なドレス、檀はシースルーでシックにまとめたドレスと、華やかに登場する。柴咲は「帰ってまいりました! みなさんと直接お会いできて本当に嬉しいです」と喜び、「出来上がった作品を観た時に、心の奥底のあたたかい部分が震えまして、人を愛すること愛されること、それが貫けないことの悲しみ憎しみ、いろんな思いが湧き起こって、いろいろな感覚を揺さぶられるような映画になっていると思います」と自信を見せる。映画の出来については、北村も「この映画、最高です」と太鼓判。「ここにいるみんなが試写を見た時にグータッチするくらい、最高の出来になっています」とアピールした。
2022年08月31日舞台『Another lenz』が東京・新宿FACEにて開幕中だ。本作は、新しい演劇のあり方を追求した「AD(Another Demention=別次元)×STAGE」の第一弾で、同じ作品を自分の目で見るか(生観劇するか)、配信のカメラを通してみるか(生配信を見るか)で全く異なる作品に見えるという“別次元舞台”となっている。初日を前にした、劇場でのゲネプロ(舞台通し稽古)を見た。劇場の中央に舞台があり、観客は「北」と「南」と2つに分かれた客席から観劇する。観客の左右両側(劇場でいえば東西の方向)にスクリーンがあり、その場で撮影されているレンズ越しの映像が放映されている。とある廃墟で、新感覚ハリウッドホラーの生ライブドラマを撮影しようとしている監督や俳優たちの物語。最大の見せ場は、なんと言っても、劇中にノーカットで撮影される生ライブドラマだろう。パネル式の舞台装置を素早く動かしながら、カメラクルーと俳優が移動して、ドラマが進んでいく。息のあった連係プレーは見事で、レンズ越しからは決して見えない、裏側の世界を垣間見るのが楽しい。ただ、単なるバックステージものというには惜しい。徐々に明らかになる複雑な人間関係や、人間の表の顔と裏の顔の変化など、あらゆる要素が相まって、多くの観客は、何が「リアル」で、何が「フェイク」なのか、どこまでが「俳優」で、どこまでが「役」なのか、ある種の混乱状態に陥るだろう。俳優としても活動している磯貝龍乎が手掛けた斬新な脚本と演出に思わずうなる。このコロナ禍で、配信される演劇作品は増えたが、これまでの配信作品とは確かに一線を画するとだけ示しておきたい。なお、個人的には、生配信を見てからの生観劇という流れがおすすめしたい。初日を前にした囲み取材では、本作の見どころについて、出演する太田将熙は「見どころは全部と言いたい」と作品に自信を覗かせ、菊池修司は「個性豊かなキャラクターたちはもちろん、配信と観劇と両方の視点で楽しめること」と語った。また、伊崎龍次郎は、配信ではほとんど出演しない山沖勇輝の名前を挙げて「ぜひ劇場で活躍と勇姿を見てほしい」。稽古で一番苦労した点については、碕理人は「膨大なセリフ量と、生配信における時間調整」を挙げ、AKB48の北澤早紀は「血糊もタバコもアクションも男性とのハグも初めて」と初めてづくしの現場だったことを明かした。上演時間は約2時間。公演は5月23日(日)まで。休演日の5月20日(木)には、一部キャストによるスタジオツアーも実施される。なお、製作側からは「一部、暴力やグロテスクな表現が含まれております。ご観劇、ご視聴の際にはご注意ください」というアナウンスがある。コメディタッチの場面もあるが、ホラーサスペンスの要素も存分に含まれているので、苦手な人は自身の体調などと相談しながら観劇しよう。取材・文・撮影:五月女菜穂
2021年05月18日ブロードウェイミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』〜あの頃の僕たち〜が東京・新国立劇場 中劇場で上演中だ。ブロードウェイのショービジネス界が舞台。フランク(平方元基)、メアリー(笹本玲奈)、チャーリー(ウエンツ瑛士)の3人の人生を中心に、現在から過去へと約20年間を“逆再生”で描いていく。『スウィーニー・トッド』などで知られるスティーブン・ソンドハイムが作詞・作曲を手掛け、本作のメアリー役を演じた女優のマリア・フリードマンが演出を担う。日本では8年ぶりの上演だが、今回は「新演出版」という位置づけ。平方、ウエンツ、笹本のほか、昆夏美、今井清隆、朝夏まなとら実力派キャストが顔をそろえている。初日前のゲネプロ(総舞台通し稽古)を見た。恋愛関係にしても、友情にしても、仕事にしても、どうしてこうなったのか、なぜあのときあの道を選んだのかと考えることはきっと誰にでもあるだろう。人生に「正解」も「不正解」もないだろうし、振り返ったとて過去は変えられないのだが、確かにその後を決定づける分岐点はある。そんな人生の切なさと、人間の不器用さやたくましさ、そして人々の絆を思わせる、ちょっぴり大人なミュージカル。ソンドハイムの珠玉の楽曲とともに、存分に味わってほしい。上演時間は2時間50分(休憩20分)。ただし、18時半公演の回は休憩15分。東京公演は31日(月)まで。愛知公演、大阪公演も予定されている。キャストのコメントは以下の通り。■平方元基今までのどの作品よりも大変でした。あまりの大変さに先輩に弱音を吐いたら、「大変な分、いい作品になるさ」。心がスッと明るくなりました。このカンパニーとだから、今日までこれました。どうか皆様、作中、沢山の沢山の小さな大きな発見をしてみてください。それはどれも間違いでなく正解でもなく、あなただけに送られたギフトになると思います。■ウエンツ瑛士まずは、この様な状況下で舞台の幕を開けられる事に心から感謝しています。そしてなによりも足を運んで下さるお客様へ、我々はその気持ちに応えられる作品をご用意しました。お互いの顔もハッキリと認識できずに、リモートでの稽古でどこまで行けるか不安でしたが、胸を張ってお客様をお出迎え出来ます。万全の感染対策をしてお待ちしてます。■笹本玲奈この作品をお客様のいらっしゃる前で生でお届けできる事を信じて、キャストスタッフ一同、厳しい感染対策の中、心を一つにお稽古してまいりました。家族や友人と会えなかったり、お互いの表情を見て会話する事も、お互いに触れる事も許されない今、舞台が大好きなお客様が明日からまた元気に生きていこう!と思って下さる様、最高の舞台をお届けしてまいります。取材・文:五月女菜穂
2021年05月18日渡辺謙が主演する舞台『ピサロ』が東京・PARCO劇場で開幕した。本作は、16世紀に寄せ集めの兵を率いて、2400万人のインカ帝国を征服した、成り上がりのスペインの将軍ピサロの物語。ピーター・シェーファーによる傑作戯曲を、ウィル・タケットが演出する。昨年3月、PARCO劇場オープニング・シリーズ第一弾公演として華々しく開幕する予定だったが、緊急事態宣言の発令などにより、45回上演予定のところがわずか10回の上演に。観劇が叶わなかった観客の声に応え、この度の“アンコール上演”が決まったという背景がある。「もうちょっとで手が届きそうな、掴みかけるものがあったときに公演が中止になった」。初日を前にした会見で、そう当時の悔しさを語った渡辺謙。再び本作を上演させたいという強い思いがあったといい、「また稽古が始まった時に、本当に時計が動き始めた感じがした」と話す。出演する宮沢氷魚も「中止になって悔しい思いをしたし、その思いをどこにぶつけていいか分からないこともあった」と振り返るが、渡辺がカンパニーに「またやりましょう」と言った言葉を支えにしてきたという。「その時の言葉を思い出すと、とても前向きになれる自分がいて。1年経って、またこうやって皆さんの前でこの作品を披露できることをとても幸せに思う」。本作の日本初演は1985年、PARCO劇場。36年前の初演では、山﨑努がピサロ、当時はまだ無名だった渡辺がインカ帝国王・アタウアルパを演じていた。本作を通じて「俳優を一生の仕事とする」覚悟を決めたという渡辺が、今度はピサロとして帰還し、成長著しい宮沢がアタウアルパを演じる。渡辺が演じた役を引き継いだ宮沢だが「僕はあえて参考にしないでおこうと思って。当時謙さんが演じられたものと、今回僕が演じるものとでは、全然キャラクターも存在感も違う。僕は僕にしか演じられないアタウアルパをつくりたいと当初から思っていた」と語る。渡辺からのアドバイスも「『当時僕がそうだったから、こうした方がいいよ』というものではなく、僕が考えるきっかけを与えてくれるアドバイス」だといい、互いが真摯に役と向き合っている様子が伺えた。初日を前にしたゲネプロ(総通し舞台稽古)を見た。渡辺のピサロは、周囲を惹きつけるカリスマ性と野心を持ちながらも、古傷が時折痛み、老いや死への恐怖を感じているという実に人間臭いピサロ。宮沢のアタウアルパは、その出立ちと、静かながらも確信に満ちた語り口が、とても神々しく見えた。ウィルの演出もいい。舞台一面を取り囲む巨大スクリーンに、色彩豊かな映像を映し出し、場面ごとに世界観を切り替える。大階段の舞台は可動式で、時に宮殿の階段に、時にアンデスの山々に姿を変えていく。巧みな身体的な表現も随所に見られ、舞台作品としての完成度を上げた。上演時間は約2時間50分。6月6日(日)まで。圧巻の歴史劇をぜひ生で感じてほしい。取材・文:五月女菜穂
2021年05月17日東北を中心に活動する劇団 短距離男道ミサイルによる『みちのく超人伝説「北天鬼神譚アクロオー阿弖流爲Z」Episode Final さらば愛しき人よ』が2021年5月27日から宮城・せんだい演劇工房10-BOX box-1で上演される。劇団 短距離男道ミサイルは、東日本大震災直後の2011年4月に「仙台、東北、そして日本を笑顔にしたい」「なにか自分たちにできることはないだろうか」という想いのもと、仙台の若手男優によって結成された劇団。本作は、同劇団の「36発目」の作品となる。舞台は、核戦争が勃発した西暦700年代の東北。みちのくのヒーローである阿弖流爲(あてるい)がその戦禍に巻き込まれながらも、敵対するはずの相手と友情を築き、東北で生きる術を見い出そうとするストーリー。ちなみにタイトルに「Episode Final」とあるが、作・演出を務める本田椋によれば「スター・ウォーズのような展開を考えていて、本作は1作目」とのことだ。開幕前の5月5日、オンライン上で配信された製作発表会見と公開稽古を見た。会見で、本田は本作に込めた想いについて「劇団結成10周年、震災から10年目。みなさんに喜んでいただけるようなエンターテイメント作品を作りたい、そして、豊かな伝統芸能や文化がある東北に根ざした作品を作りたいという思いがあった」と語る。現在のコロナ禍との状況も絡め、「震災の時とある種近いような、息苦しい空気感を感じているが、そんな中だからこそ、阿弖流爲というヒーローに会いにきてくれたら。皆さんの背中を押せるように、一生懸命、作品を作っている。ぜひご期待いただきたい」と話していた。約20分間、行われた公開稽古。正直で冷静な感想を言えば「大の大人がバカなことをやっている」と思う。でも、きっと、それがいい。彼らが一生懸命に汗水流しながら役を演じ、観客はそれを生で見て、何も考えずにげらげらと笑う。それが劇団 短距離男道ミサイルらしさなのだろう。現に、同劇団員の武長慧介は「劇場で見て楽しいと思える作品を作りたい。映像で見ていても伝わらないもの、観客と一緒に楽しめるものを作りたい」と話しているし、同じく劇団員の小濱昭博は「旗揚げ公演を見たときに、震災の1ヶ月後だったけれど、周りの観客と一緒に笑った。そこで気づけた感動と幸せがあった」と振り返っている。劇団10周年という節目の年。これから10年後をどう考えるかという質問に、劇団員の武者匠は「演劇界に革命を起こす」、小濱は「劇団員が1000人」、本田は「みちのく文学堂に改名して、服は脱がない」、武長は「世界ツアーを開催」と、それぞれが大きな夢を描いている。公演は6月7日までの全16公演。出演は、小濱、武長、武者、本田のほか、斎藤拓海、神﨑祐輝、三澤一弥。一般前売3500円、学生前売2500円。チケット発売中。※写真は、撮影のためマスクを外しています。取材・文:五月女菜穂
2021年05月07日ミュージカル『ALTAR BOYZ(アルターボーイズ )』が東京・新宿FACEで上演中だ。本作は2004年にアメリカで初演され、翌年05年にベスト・オブ・オフ・ブロードウェイベスト賞に輝く。アメリカでのツアー公演のほか、韓国やハンガリー、フィリピンなど世界各国で上演され、日本初演は09年。日本版の上演は今回で7回目だ。アルターボーイズとは、神と司祭に仕える美しき男子たちのこと。5人の使徒たちがボーイバンドを結成し、“福音”の歌とダンスで愛を説いて、観客の魂を“浄化”してきた。今回は、2021年世界ツアーの、日本ファイナル公演という設定。はたして、この5人は日本ファイナル終了までに観客たちの魂を全員救うことができるのかーー。人種差別や移民差別といった現代社会の課題が知的な比喩に姿を変えて、ファンキーでコミカルな愛と希望にあふれたミュージカル全編にさりげなく散りばめられている。バラード、ゴスペル、ラテン、ラップなど、多彩な楽曲とダンスが何とも楽しい。これまで舞台上に観客を連れ出し、目の前でラブソングを歌うなど、観客と近距離でやりとりすることが本作の大きな特徴であったが、それらの演出はコロナ禍でやむなく中止に。その代わりに、あえて「会えない寂しさ」を観客に向かって歌ったり、コールアンドレスポンスではなく拍手を求めたり、恒例の“懺悔”をオンライン上で事前に募集したりと、工夫を凝らしていた。今回は、チームLEGEND、チームGOLD、チームSPARKという3チーム制での上演。4月9日に行われたチームLEGEND(東山義久、植木豪、中河内雅貴、良知真次、浅川文也)によるゲネプロ(最終舞台通し稽古)を見た。浅川は今回が初参加だが、それ以外の4人は初演から出演し、2017年の公演で一旦は“卒業”した「伝説のメンバー」。それぞれが第一線で活躍しているため、歌でもダンスでもしっかり魅せてくれるのだが、何よりメンバー同士の仲の良さや信頼感が垣間見えるのがいい。初演から10年以上経つが、19年には共に作品を作ってきた森新吾さんが亡くなるという悲しみや、このコロナ禍を経験したことで、メンバー同士の絆が深まり、舞台に懸ける思いがより一層強まった印象があった。東山義久はゲネプロのカーテンコールで「キャスト・スタッフ一丸となってコロナ対策を徹底し、チームLEGEND、チームGOLD、チームSPARKの3チームとともに、千秋楽まで一人でも多くの皆様の魂をお救いできる作品を作ってまいりたいと思います」と挨拶した。上演時間は約2時間。公演は4月30日まで。なお、5月3日〜5日には、東京・恵比寿ガーデンホールで、3チーム全キャストが参加するスペシャル合同公演の開催も決定した。チケットの一般発売は4月24日10:00開始。こちらもぜひチェックしよう。取材・文・撮影:五月女菜穂
2021年04月13日アメリカのシカゴで実際に起こった殺人事件を題材にしたミュージカル『スリル・ミー』が東京芸術劇場ウエストで上演中だ。舞台は、監獄の仮釈放審議委員会。収監者である「私」の5回目の審議が始まり、34年前、19歳の「私」と幼なじみの「彼」が犯した罪が静かに語られていく。舞台上にあるのは、1台のピアノと少しばかりの小道具。ヒリヒリとした緊張感と美しいピアノの旋律が流れるなか、明かされる真実。たった2人の俳優が、100分間、ノンストップで展開する衝撃作だ。2005年にニューヨークのオフ・ブロードウェイで初演されて以降、世界中で上演されている本作。日本版初演は、11年に栗山民也が演出を手掛け、田代万里生×新納慎也、松下洸平×柿澤勇人のペアで上演。その後、キャストを替えて再演を重ねてきた。今回は、日本初演10周年を記念した公演で、初演以来のタッグである田代×新納ペア、18〜19年公演で初登場して大反響だった成河×福士誠治ペア、そして、オーディションで選ばれて、初めて本作に挑戦する松岡広大×山崎大輝ペアの3組が出演する。松岡×山崎ペアのゲネプロ(総通し舞台稽古)を見た。ニーチェの信奉者で、自らを“超人”として犯罪を犯すことに快感を得る「彼」を山崎が、「彼」を愛していた「私」を松岡が演じた。実年齢が23歳の松岡と25歳の山崎が、等身大に演じる「私」と「彼」は、いい意味で若さを味方につけた。若さゆえの狂気や暴走っぷりが感じられて、妙な説得力があった。本作に出演してきた歴代の俳優陣と比べると、舞台のキャリアが浅いため、きっとプレッシャーに感じた部分もあっただろうが、周囲に流されることなく、「私」と「彼」の物語に新風を吹き込んだと感じた。初日の幕が開き、松岡は「個人的には本当に色々とまだまだだな、と思うこともありますが、本日出来る限りのことをお客様に向けて、そして『彼』に向けて存分に演じられたらと思います。これからも慢心せず、慢心していきたいと思います」とコメント。山崎は「今までで一番緊張する作品でした。今回、やれる限りのことは出来ましたが、もっと詰めていくことはたくさんあるので、今作ったものをさらに突き詰めていきたいと思います。ここから約1ヶ月以上ありますが、どのような風に僕たちのペアが進んでいくのか、ぜひ皆さま気にしてくださると嬉しいなと思います」と話している。それぞれのペアで全く印象が異なる三者三様の『スリル・ミー』。東京公演は5月2日まで。5月4、5日は群馬・高崎芸術劇場スタジオシアター。5月15、16日は愛知・ウインクあいち大ホール。5月19〜23日は大阪・サンケイホールブリーゼで上演予定。ぜひお見逃しなく。取材・文:五月女菜穂
2021年04月07日ミュージカル『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』が3月30日(火)から東京・日比谷シアタークリエで開幕した。1950年の連載開始から70年の時を超えて世界中で読み継がれている、チャールズ・M・シュルツ著のコミック『ピーナッツ』が原作。1967年に米オフ・ブロードウェイで初演され、日本版初演は1977年まで遡る。村井良大がチャーリー・ブラウン、中川晃教がスヌーピーを演じた2017年の上演が記憶に新しい。初日を前に、囲み取材とゲネプロ(総通し舞台稽古)が行われた。チャーリー・ブラウン役を演じる花村想太は、自身の初主演ミュージカル『RENT』が新型コロナウイルスの感染拡大の影響で一部公演中止になったことに悔しさをにじませつつ、「今回は必ず完走したい。皆さんに1公演でも多くハッピーを届けられるように、開演できることが当たり前ではないという思いをしっかりと胸に刻みながら、1公演1公演命懸けでやっていけたら」と語った。ちなみに花村が語る自身の見どころは「声の高さ」だという。17年に引き続き、スヌーピー役を愛らしく演じる中川晃教は「完成・完璧を追求して、進化し続けてきた。いつも新しい何かを発見することができる。すごく深い題材で、ミュージカルの奥深さを味合わせていただいているような作品」と話す。その上で、「そんな素敵な作品に全身全霊で私たちが向かっている姿、そして、かわいらしさがみなさんに届いたら」と意気込んだ。チャーリー・ブラウンやスヌーピー、その仲間たちの日常がスケッチとして切りとられて、構成されている本作は、まるで原作の4コマ漫画『ピーナッツ』を読んでいるかのよう。明るくポップなテイストながら、時々、考えさせられる人生訓が散りばめられているので、「子ども向け」と括ることなかれ。花村のチャーリー・ブラウンは、優しさがにじみ出ていて、日常のささいなことで悩んだり困ったりする姿が特に可愛らしい。定評のある歌唱力で、しっかりミュージカルとしても楽しませてくれた。中川のスヌーピーは、衣装やメイクの変更があったからか前回よりも「犬」感は減少したように感じたものの、それでもちゃんと「犬」に見えてくるから不思議だ。本作を代表する楽曲のひとつである『サパータイム』では、中川の実力とその魅力を存分に発揮していた。宮澤佐江のルーシー、岡宮来夢のライナス、林愛夏のサリー、植原卓也のシュローダーもそれぞれのキャラクターの性格をよくつかんでいて、いい配役。たった6人の出演者ながら、『ピーナッツ』の世界観をよく体現していたと思う。上演時間はおよそ2時間15分(途中休憩あり)。見終わった後にどこか優しい気持ちになるミュージカル。ぜひお見逃しなく。取材・文・撮影:五月女菜穂BROADWAY MUSICAL『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』原作:チャールズ・M・シュルツ脚本・音楽・詞:クラーク・ゲスナー追加脚本:マイケル・メイヤー追加音楽・詞:アンドリュー・リッパ訳詞・演出:小林香出演:花村想太 / 岡宮来夢 / 宮澤佐江 / 林愛夏 / 植原卓也 / 中川晃教【東京公演】2021年4月11日(日)まで会場:シアタークリエ【大阪公演】2021年4月15日(木)~2021年4月18日(日)会場:サンケイホールブリーゼ【愛知公演】2021年4月20日(火)会場:日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール【長野公演】2021年4月23日(金)会場:長野市芸術館メインホールチケット情報はこちら
2021年04月01日韓国発のミュージカル『INTERVIEW〜お願い、誰か僕を助けて〜』の日本人キャスト版初演が2021年3月24日(水)、東京・品川プリンスホテル クラブeXで開幕した。本作は、2016年5月に韓国で行われた2週間のトライアウト公演が大盛況となり、同年9月に京都で初演。以降、韓国で2ヶ月のロングランに成功し、17年には米国オフブロードウェイに進出している。日本では、16年9月の京都劇場初演から、17年3月に東京・大阪での公演を経て、18年には新たなキャストを加えて東京で再び上演されているなどしてきたが、これらは全て韓国人キャストによるもの。今回の公演が、初の日本人キャストによる上演となる。殺人を犯したひとりの少年。彼は自らを罰するべく自死を選ぼうとするが、自らも知らないうちに記憶を改ざんし、死を逃れ、生き延びる。そして10年後。青年となった殺人犯の少年は、記憶が蘇り、罪の意識から今度は連続殺人犯となっていったーー。ベストセラー推理小説『人形の死』の作家であるユジン・キム(松本利夫 / 丘山晴己)の事務所へ、作家志望の青年シンクレア(糸川耀士郎 / 小野塚勇人)が訪ねてくる。ユジンは、自殺を企てた連続殺人犯が書いた遺書を差し出し、シンクレアに物語を作ってみろと促す。そこから10年前の殺人犯の真犯人を探すふたりの男の「インタビュー」が始まる。初日を前にゲネプロ(総通し舞台稽古)が行われ、筆者はTeam RED(松本、糸川、伊波杏樹)バージョンを観た。円形の舞台を360度ぐるりと客席が取り囲む。どの角度から観ても、物語に入り込めるよう、細かな気配りのある演出。出演は各チーム3人の俳優のみだが、物語の筋書きが複雑で多層的なので、1回観ただけではなかなか全てを理解しづらいかもしれない。推理小説の中に飛び込んだような、噛みごたえある物語を、ストレートプレイではなく、20曲もの楽曲で織りなすミュージカルに仕上げたことで、よりドラマチックになっていると感じる。本作で「ほぼほぼ初めての歌唱」を披露したEXILEの松本。ゲネプロ後に行われた取材会で、音符を覚えるところから始めて、常に歌と音楽を流しながら、できる限りの練習を重ねて、稽古に臨んだことを明かす。「『もう2度とやるか!』と思うぐらい本当に苦労しています」と本音を漏らしつつ、「お芝居を1番初めにしたときもそうだった。『もう、やるか』と思ったけど、そこからのめり込んで10年以上、お芝居をやらせてもらっている」と振り返る。そして、「今まで挑戦できていなかったことに挑戦させていただいたというのはありがたく思っていて。学ぶことと楽しさを同時に味わえて、成長ができたんじゃないかな」と前向きに語っていた。同じ脚本でも、俳優によって解釈やアプローチが異なるため、チームで全く違う作品にみえるという。出演者らによると、Team REDが「パッション」だとすると、Team BLUE(丘山、小野塚、山口乃々華)は「大人な感じ」。両チームを見比べるのも面白いだろう。上演時間は約1時間40分(予定)。公演は4月4日(日)まで。取材・文・撮影:五月女菜穂公演情報ミュージカル『INTERVIEW ~お願い、誰か僕を助けて~』原作:チュ・ジョンファ作曲:ホ・スヒョン日本語台詞/演出:田尾下哲日本語訳詞:安田佑子出演:【Team RED】松本利夫(EXILE)/ 糸川耀士郎 / 伊波杏樹【Team BLUE】小野塚勇人(劇団EXILE)/ 丘山晴己 / 山口乃々華2021年3月24日(水)~2021年4月4日(日)会場:東京・品川プリンスホテル クラブeXチケット情報
2021年03月26日今年1月に開館5周年を迎えたロームシアター京都(京都市左京区)が2021年度の自主事業ラインアップを発表した。2021年度のテーマは「声」。《自分たちの「声」(=活動)を取りもどすこと》と《声なき声に耳を傾けること》というふたつの意味を持たせているという。同劇場のプログラムディレクター小倉由佳子氏は「新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大によって、舞台芸術は活動停止・縮小を余儀なくされた。舞台芸術の醍醐味と言える、集うこと、殊に声を出すことが制限された」とコロナ禍における現状の厳しさを述べた上で、「ロームシアター京都では、状況に応じた上演・創作環境のなかでも、自分たちの表現を追い求め、場をつくり出し、観客との関係をあきらめないアーティストたちとの協働によって、プログラムを展開していく」などと語った。自主事業ラインナップは、「作品創造」「京響プログラム」「伝統芸能の継承」など、6つのカテゴリーに分けて紹介された。ラインナップは以下の通り。1.作品創造・Sound Around 001。7月17、18日。ジャンルや固定観念にとらわれない「音楽」を軸とした表現活動を行うアーティストによるパフォーマンスを紹介する新シリーズ。出演は「いまいけぷろじぇくと」ほか。市原佐都子「妖精の問題」Photo:Kai Maetani・レパートリーの創造 市原佐都子/Q「妖精の問題」リクリエーション。2022年1月下旬。作・演出は市原佐都子。・レパートリーの創造 関連プログラム「シーサイドタウン」を振り返る。6月上旬。登壇者は松田正隆、村川拓也ほか。・レパートリーの創造 ダムタイプ創設メンバー・髙谷史郎の新作準備のためのトークシリーズ。4月9日ほか全4回。トーク出演は高谷史郎、東岳志ほか。・小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩⅧ ROHM CLASSIC SPECIAL。3月18日、20日。音楽監督は小澤征爾、管弦楽は小澤征爾音楽塾オーケストラほか。ダミアン・ジャレ×名和晃平クリエーション(c)Yoshikazu Inoue・ダミアン・ジャレ×名和晃平 「PLANET[wanderer]」クリエーション。京都発の彫刻家と、世界で脚光を浴びる振付家によるコラボレーション第2弾。7月上旬〜中旬、本番2022年4月下旬。振付はダミアン・ジャレ、舞台美術は名和晃平。・ロームシアター京都レパートリー作品ジゼル・ヴィエンヌ、エティエンヌ・ビドー=レイ「ショールームダミーズ #4」パリ公演。11月10日〜13日。演出・振付・舞台美術はジゼル・ヴィエンヌ、エティエンヌ・ビドー=レイ。・アンディ・マンリークリエーション。イギリス国内外で公演を行うアンディ・マンリーによる子ども向け新作。11月中旬〜12月初旬。アンディ・マンリー2.京響プログラム・京都市交響楽団×藤野可織 オーケストラストーリーコンサート「ねむらないひめたち」6月20日。・広上淳一×京響コーラス「フォーレ:レクイエム」。8月9日。・京都市交響楽団コンサート 京都市交響楽団×石丸幹二音楽と詩(ことば) メンデルスゾーン:「夏の夜の夢」。9月5日。・京都市交響楽団コンサート 京響クロスオーバー オーケストラ・プレミアム 作曲家・編曲家プロジェクト「大島こうすけ×西川貴教×京都市交響楽団」。10月10日。3.伝統芸能の継承・市民寄席。5月25日ほか。・能の世界へおこしやす〜京都薪能鑑賞のための公開講座〜。6月1、2日。・第71回京都薪能ー地・水・火・風・空ー。6月1、2日。・能楽チャリティ公演〜祈りよとどけ、京都より〜。8月25日。・《継承と創造》1 「宮古・八重山・琉球の芸能」(仮)。2022年2月11、12日。・伝統芸能入門講座。2021年秋開講予定。案内人:木ノ下裕一。京都薪能4.ロームシアター京都セレクション・ロームシアター京都×京都芸術センター U35創造支援プログラム“KIPPU”。参加アーティスト:(1)福井裕孝 (2)敷地理。(1)7月2〜4日(予定)(2)2022年2月(調整中)。・[フェスティバル]KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭2021 AUTUMN。10月1〜24日。・ぐうたららばい vol.2「海底歩行者」。10月30、31日。作・演出・音楽は糸井幸之介。・太陽劇団「金夢島 L’ÎLE D’OR」(仮題)。11月6、7日。演出はアリアーヌ・ムヌーシュキン。・ピチェ・クランチェン・ダンスカンパニー「No.60」。12月3、4日。5.ラーニング・劇場の学校プロジェクト。7〜8月、12月。・新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室2021「ドン・パスクワーレ」。10月26、27日。・小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅩⅧ 子どものためのオペラ ローム クラシック スペシャル。2022年3月。・リサーチプログラム。通年(2022年3月に最終報告会を予定)。・ロームシアター京都×京都市ユースサービス協会連携事業 未来のわたし - 劇場の仕事 - 。通年。6.コミュニティ・プレイ!シアターin Summer 2021 ステージプログラム『快傑ゾロ』アルファ人形劇場 from チェコ共和国。8月8日。・プレイ!シアターin Summer 2021 ロームシアター京都×京都市文化会館5館連携事業「シアターデビュー!」促進プログラム。日程未定。・プレイ!シアターin Summer 2021 オープンデイ。8月14、15日。・プレイ!シアターin Summer 2021 京都市交響楽団0歳からの夏休みコンサート 京都市動物園コラボレーションスペシャル。8月14 日。・ホリデー・パフォーマンス。6月27日、12月(予定)。・OKAZAKI PARK STAGE 2021。10月1日。・地域の課題を考えるプラットフォーム「仕事と働くことを考える」。7月〜2022年1月(計4回開催)。・機関誌「ASSEMBLY(アセンブリー)」。発行メディア・発行時期検討中。・「いま」を考えるトークシリーズ。年4回開催。・アセンブリープログラム。ロームシアター京都 プログラムディレクター 小倉由佳子取材・文:五月女菜穂
2021年03月19日ブロードウェイ・オリジナルミュージカル『BARNUM』が東京芸術劇場プレイハウスで上演中だ。ヒュー・ジャックマン主演のミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』(2017)と同じく、サーカス に命を賭けた興行師P.T.バーナム(1810-1891)の半生を描き、1980年にブロードウェイで初演された本作。日本初上演となる今回は、フィニアス・テイラー・バーナム役を加藤和樹が主演し、妻チャイリー・バーナム役を朝夏まなとが演じる。バーナムは、美術館であり水族館であり劇場でもあったといわれる「アメリカ博物館」を30代前半で設立し、まだ娯楽が文化として認められていなかったアメリカに一石を投ずると、その後はさまざまな見世物ショーやコンサートを提げて国内外を巡演。興行師のほかに、政治家、慈善家、奴隷解放運動家などいくつもの顔があり、コネチカット州ブリッジポートの市長を務めたことも。本作では、そんなP.T.バーナムが最初の妻チャリティ(本作ではチャイリー)とともに歩んだ半生が、概ね史実に沿って描かれている。3月13日17:00回(Wキャストは綿引さやか、内海啓貴)を見た。シルク・ドゥ・ソレイユなどで活躍したフィリップ・エマールが映像で登場したり、アンサンブルキャストを中心にさまざまなジャグリングの技を披露したり、サーカス小屋を模した舞台装置だったりと、ミュージカルでありながら、本物のサーカスを見ているようなワクワク感がある演出だった。主演の加藤は、歌って踊って芝居をして、ほぼ出ずっぱり。タップを踏んだり、「博物館ソング」など難易度が高くも楽しい歌を聞かせてくれたり、エンターテイナーっぷりを存分に発揮。妻チャイリーを演じた朝夏との相性もよく、思考回路は真逆でも、互いを尊敬し、愛しあっている夫婦を好演した。特に、ミュージカル『ローマの休日』(2020-2021)でアン王女とジョー・ブラッドレーを演じた加藤と朝夏の間柄を見ている観客にとっては、いろいろとギャップがあって、新鮮に見えることと思う。藤岡正明の降板を受け、急遽、リングマスター、ジェームズ・A・ベイリー、「親指トム将軍」という3役を演じることになった矢田悠祐も健闘していた。上演時間は2時間20分(途中休憩あり)。そのほかの出演者は、フランク莉奈、原嘉孝(以上Wキャスト)、中尾ミエほか。東京公演は3月23日(火)まで。兵庫公演は3月26日(金)〜28日(日)、県立芸術文化センター阪急中ホール。神奈川公演は4月2日(金)、相模女子大学グリーンホール。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2021年03月15日スペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤの激動の半生を描くオリジナルミュージカル『ゴヤーGOYAー』が2021年4月8日から日生劇場ほかで開幕する。本作が復帰後初主演となる今井翼が主人公のゴヤを演じ、小西遼生がゴヤの親友・サパテール、清水くるみがゴヤの妻・ホセーファをそれぞれ演じる。開幕まで1ヶ月を切った3月9日、東京都内で製作発表会見が行われた。この日は、出演する今井、小西、清水のほか、原案・脚本・作詞を担当するG2、演出の鈴木裕美、作曲・音楽監督の清塚信也が出席。本作の出演にあたって今井は「僕が日本の次に愛するスペインを舞台に、世界を代表するゴヤを演じられることを本当にありがたく思っています。僕自身、病を経験して、おかげさまで今を迎えられる喜びを感じておりますが、紆余曲折したゴヤの人生を丁寧かつ大胆に。また、熱く、エネルギッシュに演じていきたいと思っています」と意気込んだ。スペインの画家であるダリが好きで、「自宅のトイレがダリの作品だらけで、通称ダリ便と言われている」ことを会見で明かした今井だが、ゴヤという人物については「これまで造詣深かったわけではないんですけど、今回、自分なりにいろいろな資料を見て勉強していくなかで、ゴヤが持つ“我が道を行く熱き魂”に共感するところがあって。彼にしかない感性を大切にしていきたいと思った」とコメント。劇中では、フラメンコを披露するという今井。「フラメンコは怒り、喜び、悲しみ、そういったものが体の芯から湧き上がってくる舞踊なんです」と熱っぽく語る。本来ならば稽古前にスペインに渡航して、現地の空気感を感じようと考えていたようだが、それもコロナ禍で断念。「僕自身がスペインで経験したことを今一度振り返りながら、しっかりとその匂いや空気感をしっかりと表現していきたい」と話していた。そんな今井のゴヤを、演出の鈴木は「声がとても魅力的で、ゴヤとすごく合うなというのが第一印象。ゴヤはエネルギッシュで、社会への視線の中に“怒り”という感情を多く持つが、個人的には今井翼さんも相当“怒り”を持っていらっしゃる方なので、そこもとても合う」と評していた。また、出演が決まった時の心情を問われた際、サパテールを演じる小西が「ほぼ世代として、翼くんはずっと見ていたスター。今回は“コニツバ”と言われるように、頑張りたいと思います」と話し、会場を笑わせていた。そのほか仙名彩世、塩田康平、天宮良、キムラ緑子らが出演。東京公演は4月8日(木)から29日(木・祝)まで。名古屋公演は5月7日(金)から9日(日)まで、御園座。チケット発売中。取材・文・撮影:五月女菜穂
2021年03月12日人気キャラクター・スヌーピーでおなじみの漫画『PEANUS』(チャールズ・M・シュルツ著)を原作としたミュージカル『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』が2021年3月30日(火)からシアタークリエで開幕する。初日まで3週間と迫った3月9日、チャーリー・ブラウン役の花村想太(Da-iCE)、スヌーピー役の中川晃教ら出演者が、東京・南町田グランベリーパーク内にあるスヌーピーミュージアムで行われた取材会に出席した。2017年に引き続きスヌーピーを演じる中川は「“犬”として舞台上で見えた景色が今でも焼きついている。物語の中で大活躍するスヌーピーを役者として、人間として、全身全霊で体現したい」と意気込む。また、ミュージカル出演が本作で2作目となる花村は「毎日ワクワクしながら過ごしている。小さな幸せにも大きな幸せにも気づける作品。このご時世で恐縮ですが、劇場に足を運んでくだされば」と話していた。3月11日で東日本大震災から10年となることや、このコロナ禍で感じたエンターテイメントのあり方について報道陣から問われると、中川は、自身が仙台市出身で、父の故郷が宮城県気仙沼市だということを明かした上で、「この経験においては、あっという間だったという言葉がどうしても出てこない。復興という言葉の通り、明るい未来を信じて、でもどこかで現実も見つめながら。なんとか一歩一歩向かっている」と語った。「未来に向かって、歌い続けていきたい。頑張り続けていきたい」と思いを新たにした。一方の花村は、幼少期に阪神淡路大震災で被災し、10年前の東日本大震災も経験。「両方を経験している若い世代として、その恐ろしさや当時の大変さを下の世代に伝えていくことは大切だなと思う。当時はデビュー前で、何もすることができなかったらこそ、今このエンターテイメントでたくさんの方に希望を与えられるような存在になれていたら」と話していた。花村のコメントを受けて、中川は「僕たちは『世を幸せにする』という共通の使命を持っているんですね」と語りかけていた。そのほかの出演者は岡宮来夢、宮澤佐江、林愛夏、植原卓也、大和悠河(声の出演)。東京公演は4月11日(日)まで。大阪公演は4月15日(木)〜18日(日)、サンケイホールブリーゼ。愛知公演は4月20日(火)、日本特殊陶業市民会館ビレッジホール。長野公演は4月23日(金)、長野市芸術館メインホール。チケット発売中。チケットぴあでは東京公演の2021/3/11(木) 10:00よりポストカード(メインビジュアル)付チケットを販売中。取材・文・撮影:五月女菜穂
2021年03月11日ジャニーズの人気グループ「ふぉ〜ゆ〜」の辰巳雄大が主演を務める舞台『ぼくの名前はズッキーニ』が2021年2月28日(日)から、東京・よみうり大手町ホールで開幕した。2002年にフランスで発行され、世界中でベストセラーになった同名小説を世界で初めて舞台化。養護施設に連れてこられた孤独な少年・ズッキーニ(辰巳雄大)が、厳しい現実の中でも前を向いて生きようとする姿が描かれている。ズッキーニだけでなく、リーダー格のシモン(稲葉友)、父親が逮捕されたアメッド(上村海成)、両親が失踪したジュジュブ(本多力)、迎えにこない母を待つベアトリス(三村朱里)、叔母の家で虐待をうけているカミーユ(川島海荷)といった“複雑な”背景を持つ子どもたちの日常や葛藤、そして、子どもを見守る養護施設の職員や警察官ら大人たちなりの事情もあわせて語られる舞台だ。あらすじだけ聞くと重い作品に思えるかもしれないが、全体的にポップな仕上がり。田中馨が手掛けた音楽やカラフルな衣装もさることながら、一番の理由は美術とそれを生かした演出にあろう。壁と床が黒板のようになっており、俳優たちはチョークを使って、役名や話のキーとなるモノなどを描き加えていく。脚本と演出を手がけるノゾエ征爾が、自身が主宰する劇団「はえぎわ」の『ガラパコスパコス〜進化してんのかしてないのか〜』(2010)などで編み出してきた演出手法を取り入れた形だ。開場時は何もなかった舞台が、最後には1枚の楽しいスケッチブックのようになっていく。自由な「子ども心」が見て取れて、面白かった。初日を前にした取材会で、辰巳は6歳の子どもを大人たちが演じることについて、「自分が愛している演劇をやらせていただいているなと実感した。どんどんスタートから終わりにかけて完成していく、自分たちで作品を作っていくという感じが強い作品。僕にとってターニングポイントの作品になると思った」と語っていた。辰巳自身、6歳の姪っ子がいるといい、その動画を見ながら“子どもらしさ”を研究したことを明かす。「稽古の序盤は逆に子どもらしくしすぎる芝居をしてしまったが、稽古を重ねていく上で、どんどん要らないものを削ぎ落とした方が、一番子どもっぽくなる。僕らは今、飾ってしまっているんだなと感じた」などとも話していた。東京公演は3月14日(日)まで。大阪公演は3月19日(金)〜21日(日)まで、COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール。取材・文:五月女菜穂
2021年03月03日俳優の小沢道成が、作・演出・美術までも手がける演劇プロジェクト「EPOCH MAN」。2019年に初演されて好評を博した舞台『夢ぞろぞろ』が2021年2月19日(金)から、下北沢・シアター711で上演される。本作は、小沢と田中穂先(柿喰う客)による二人芝居。とある駅の売店で働く60歳の夢子(小沢)と、ある日電車に乗ることができなくなった27歳の夏目(田中)の物語だ。呼吸が荒く、何やら様子がおかしい夏目。駅の売店に立ち寄って、飲み物を買おうとするが、いくら呼んでも店員はいない様子。困った彼はカウンターにお金を置いて、お茶を飲み干す。すると突然、店員の夢子が現れて、夏目が万引き犯だと騒ぎ立てる。くすりと笑わせるコメディ作品。かと思いきや、過去と現在を鮮やかに行き来して、一気に緊張感が走る場面もあって……。コロナ禍ですっかり忘れていたが、思えば、街には、見知らぬ者同士が交わす他愛もない会話であふれていた。電車で隣に居合わせた人、落とし物を拾ってくれた人、同じ空間で同じ作品を楽しんだ人。たまたま交わした会話で、心が温かくなったことも、背中をそっと押されたこともあった。本作の夢子と夏目のような会話が懐かしくも、羨ましくも、微笑ましくも思えた。脚本は初演の時から変えていないそうだが、初演をご覧になった方でも、きっと違う見え方をするのではないか。小沢が手がけた美術もいい。舞台中央に、どでんと置かれた箱型の売店。飲み物やお菓子などが所狭しと陳列されていて、壁には「カラオケ1曲30円」なんていう貼り紙も見える。精巧に作り込まれた「箱」がくるくる回転することで、過去と現在を行ったり来たりしながら、物語は加速していく。物語をより魅力的なものにさせる美術だった。なお、パンフレットも力作である。小沢自身の創作日記が書かれているほか、宮崎吐夢との対談もあって、読み応え十分。本作の「続編」で、昨年6月に本多劇場での一人芝居無観客生配信「DISTANCE」内で上演された『夢のあと』(小沢出演・脚本・演出)の脚本も併せて掲載されている。作品が生まれていった過程が垣間見えるので、観劇の際はぜひ合わせて読んでみてほしい。上演時間は約75分(“換気タイム”はあるが、休憩はない)。公演は28日(日)まで。チケット発売中。取材・文・撮影:五月女菜穂
2021年02月22日ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』が2021年2月6日(土)から東京・日生劇場で開幕した。1905年、帝政ロシア時代のアナテフカという寒村が舞台。牛乳屋を営む父親・テヴィエと、その妻ゴールデ、5人の娘というユダヤ人一家の愛と絆を描いた作品。本作は、1964年にブロードウェイで初演され、トニー賞ミュージカル部門の最優秀作品賞、脚本賞、作曲賞など7つの賞を獲得している。日本では、1967年の初演以降、再演が繰り返されている。主人公のデヴィエ役は、森繁久彌、西田敏行と引き継がれ、2004年からは、“21世紀版”『屋根の上のヴァイオリン弾き』と銘打って、市村正親が演じている。市村は今回で6回目のテヴィエ。2009年からゴールテ役を演じる鳳蘭のほか、長女ツァイテル役を凰稀かなめ、次女ホーデル役を唯月ふうか、三女チャヴァ役を屋比久知奈が演じる。初日のカーテンコールで、市村は「コロナで世界のエンターテインメントが苦しんでおります。ブロードウェイも、ウエストエンドもまだ再開の見込みが立っておりません。その中で、初日を迎えられたことは、奇跡でございます」と感謝を述べた。そして、感染対策のためマスクをつけたままの稽古だったことを明かし、「ツレちゃん(鳳の愛称)はすぐ分かるけど、新しいメンバーがたくさんいて。どんな顔をしているのか、ようやく顔を見ることができました。非常にうれしかったです。本当はお客様の顔も見たいんですけど、ここはもう少しということで、頑張っていきたいと思っています。ワクチンも開発されましたし、治療薬もできると思っています。そのときには、また劇場で顔と顔を突き合わせて、お芝居を見てもらえたら」と挨拶した。ユダヤ教の“しきたり”を重じているテヴィエ。父の希望をよそに、長女は貧しい仕立て屋のモーテル(上口耕平)、次女は革命を志す学生のパーチック(植原卓也)、三女はロシア人青年のフョートカ(神田恭兵)とそれぞれ恋に落ちて……。しきたりと娘の願いを叶えてやりたいという思いの間で板挟みになりながら、さらにゴールデに頭が上がらないテヴィエの姿は、非常にコミカルで、見ていて飽きない。一方で、ユダヤ人排斥(ポグロム)の動きが村に忍び寄る様子も描かれている。家族がだんだん離れ離れになり、土地を追われる姿は心苦しく、胸を打つ。上演時間は約3時間25分。東京公演は3月1日(月)まで。3月5日(金)から愛知公演、3月12日(金)から埼玉公演。ぜひお見逃しなく。取材・文:五月女菜穂
2021年02月10日“M・A”という同じイニシャルを持つ、王妃マリー・アントワネットと庶民の娘マルグリット・アルノーの数奇な運命を描いたミュージカル『マリー・アントワネット』が2021年1月28日(木)から東急シアターオーブほかで上演されている。本作は、『エリザベート』や『モーツァルト!』などの作品を手掛けたミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイが、遠藤周作の小説『王妃マリー・アントワネット』から着想を得て生み出した、日本発のオリジナルミュージカル。2006年の初演以降、ドイツや韓国で上演され、今回は、新曲を追加した新演出版(2018)の再演となる。18年公演に引き続き、花總まりと笹本玲奈がマリー、ソニンと昆夏美がマルグリットを演じる。加えて、田代万里生と甲斐翔真がマリーの恋人・フェルセン伯爵、上原理生と小野田龍之介が王家の失脚を狙うオルレアン公、上山竜治と川口竜也が革命派のジャック・エベールとして出演する(いずれもWキャスト)。28日に行われた、笹本、昆、甲斐、小野田、上山のキャストによるゲネプロ(総通し舞台稽古)を見た。王妃としての矜恃がありつつも、どこか人間臭さもある笹本マリーと、パワフルさと知性を感じさせる昆マルグリット。王妃と庶民という決定的な立場の違いがあり、対照的な運命をたどる2人ではあるが、その人生が交錯するときに、ふと浮かび上がる「共通点」の見せ方が見事で、不思議な説得力があるペアだった。東京公演は2月21日(日)まで。大阪公演は3月2日(火)から11日(木)まで梅田芸術劇場メインホールで上演される。初日に向けたキャストのコメントは以下の通り。■花總まり今回はコロナ禍での上演ということで特別な想いをキャスト一同が抱いてでの舞台になります。この舞台をご覧頂きたい、成功させたいという気持ちで各自様々な感染予防対策を精一杯行ってまいりました。観客の皆様におかれましてはどうぞこの特別な『マリー・アントワネット』をお楽しみ頂ければ幸いです。残念ながら観劇が叶わなかった方々にもこの舞台上から熱いメッセージをお届けする気持ちと全てに感謝して演じたいと思っております。■笹本玲奈徹底された厳しい感染対策の中で進めてきたお稽古を経て、今日無事にこの日を迎えられることを心から嬉しく思っております。今後どのような状況になるかは誰にも分かりませんが、1回1回の公演を『今日と言う日は今日しかない』という心持ちで務め、劇場にお越しくださったお客様に最高の舞台を全身全霊でお届けします。取材・文・撮影:五月女菜穂
2021年02月01日男女の混声コーラスグループ「フォレスタ」が2020年12月10日(木)、Bunkamuraオーチャードホールでコンサートを開く。ニューアルバム『フォレスタ珠玉の名曲集vol.1~あなたといるとき~』に収録されている曲を中心に披露する予定だ。BS日テレ『BS日本・こころの歌』(毎週月曜夜7時から放映中)の出演などで知られるフォレスタ。男性5人、女性6人からなるコーラスグループで、メンバー全員が音大出身だ。これまで毎週のようにコンサートを行なってきたフォレスタだが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、今年はコンサートが中止にせざるを得なかった。そのため今回のコンサートに懸ける思いは強く、メンバーの澤田薫は「3月から約半年間、皆様の前で歌う機会が全然なかった。全力で歌って皆様に楽しんでほしい」と意気込む。吉田明未は「初めてオーチャードのステージに立たせていただいた時のことをよく覚えている。また再びその場に立たせてもらえる喜びと、コンサートを通じてお客様とコミュニケーションがとれる嬉しさを感じながら、1曲1曲大切に歌いたい」。小笠原優子も「オーチャード公演は、フォレスタにとって、まさに毎年1年の締めくくる位置づけの公演だった。今年は誰しもが味わったことない経験をして、大変な1年だったし、これからどうなるかも分からないけれど、ウキウキしたり、ワクワクしたりするような気持ちをなくしたくない」と語っていた。本公演は、11月4日にリリースされたニューアルバム『フォレスタ珠玉の名曲集vol.1~あなたといるとき~』に収録されている曲を中心に披露。『浜辺の歌』や『紅葉』といった叙情歌、『イヨマンテの夜』や『琵琶湖周航の歌』、『高原列車は行く』といった歌謡曲、恒例のカンツォーネメドレーなどを歌うという。大野隆は「僕たちのコンサートではあらゆるジャンルをやっているので、老若男女、幅広い世代の方に楽しんでいただけると思う。どの世代の人にも刺さる曲が必ずあると思うので、ぜひ皆様の心の歌を見つけに来ていただけたら」と話した。公演は12月10日(木)14時開演、東京・Bunkamura オーチャードホールにて。チケットは全席指定7000円。本公演はPIA LIVE STREAMによる配信(視聴券3500円)も実施。配信は12月16日(水)23:59までアーカイブ視聴が可能となる。いずれもチケットは発売中。取材・文:五月女菜穂
2020年12月03日アメリカのシンガーソングライター、キャロル・キングの半生を彼女自身がつくった名曲とともに綴るミュージカル『ビューティフル』が2020年11月5日(木)から帝国劇場で開幕した。3年ぶりの再演だが、主演の水樹奈々と平原綾香をはじめ、メインキャストは日本初演のメンバーが全員揃った。舞台は、ニューヨークに住む16歳のキャロル(水樹奈々/平原綾香※Wキャスト)が、教師になることを勧める母のジニー(剣幸)の説得を振り切って、プロデューサーのドニー・カーシュナー(武田真治)に曲を売り込みに行くことから始まる。ドニーに認められて作曲家としての一歩を踏み出したキャロルは、カレッジで出会ったジェリー・ゴフィン(伊礼彼方)と恋に落ち、作曲家・作詞家としてコンビを組むことに。そして、妊娠、結婚。キャロルは、ヒット曲を作りながら、仕事と子育てに奮闘する日々を過ごす。2人は、ドニーがプロデュースする作曲家バリー・マン(中川晃教)と作詞家シンシア・ワイル(ソニン)のコンビと互いにしのぎを削り、1960年代のアメリカ・ヒットチャートの首位を争う。すべてが順調に思われたが、時代が変わり、ヒット曲を書き続けなければならないという焦燥感からジェリーが精神的に追い詰められて……。『A Natural Woman』や『The Locomotion』、『You’ve Got A Friend』などのヒット曲を作曲したキャロル・キング。本作は、60~70年代のアメリカのみならず、世界中でヒットした彼女の楽曲が散りばめられた、いわゆる「ジュークボックス・ミュージカル」だ。楽曲の素晴らしさはもちろんだが、キャロルの波乱の半生を軸に、作詞家・作曲家のクリエイターたちの音楽が生まれるまでの苦悩、当時の音楽業界の内情なども丹念に描かれており、芝居としても非常に見応えがある作品といえる。11月4日(水)夜に行われたゲネプロ(総通し舞台稽古)を観劇した。前回2017年の本作出演が初舞台だった水樹奈々は、再演となる今回、キャロル役が板につき、舞台を心から楽しんでいる様子が印象的。6日には第1子妊娠を公表したが、変わらず迫力ある歌声を披露していた。母になるということで、キャロル役をまた別角度から深めたような気もする。伊礼の演じるジェリーは、自身の才能の限界を感じながら、それを突破しようと刺激を求めて遊びに繰り出す。その焦りやどこか哀愁漂う芝居が特別いい。中川のバリーと、ソニンのシンシアのペアも、初演以上に息があっていて、作品を明るくする存在だった。上演時間は約2時間55分(休憩30分含む)。公演は28日(土)まで。取材・文:五月女菜穂
2020年11月09日舞台『真夜中のオカルト公務員』が2020年10月29日(木)から東京・新宿FACEで開幕した。たもつ葉子による同名漫画を初めて舞台化。初日を前にした28日(水)、公開舞台通し稽古(ゲネプロ)が行われ、主演の谷水力は「(コロナ禍の)このご時世で舞台ができることをありがたく思う。こういうご時世だからこそ、元気を与えられる舞台になれば。千秋楽まで怪我なく走り抜けたい」と挨拶した。原作は、KADOKAWAのWebコミック配信サイト「コミックNewtype」で連載中で、テレビアニメ化もされている。舞台はまさに新宿。主人公の宮古新(谷水力)が新宿区役所の「夜間地域交流課」に配属されるところから物語が始まる。同課は東京都内の各区に配置され、妖精や天使、悪魔といった超常的存在の「アナザー」が関与するオカルト的事象を解決する任務を負っている。新は、同僚の榊京一(磯野大)や姫塚セオ(とまん)とともに任務をこなすうち、自分は安倍晴明の血筋で、アナザーの声を聞き取れる「砂の耳」という特殊能力を持つことが分かる。そして、災の神であるウェウェコヨトルや天狗、蚕神らアナザーが次々と目の前に現れて……というあらすじだ。約2時間の上演時間の中で、原作漫画に基づいたエピソード数話が盛り込まれている。ひとつひとつのオカルト的事象の解決が軸ではあるが、同時に、新の持つ能力や、とある未解決事件の謎などについても随所で触れられており、次作への期待も膨らむ。音響や照明、映像、舞台装置をフルに活用しながら、非常にテンポ良く進むが、キャラクターや特殊な用語の説明は台詞の中で丁寧になされていた印象。原作ファンはもちろん、原作を知らない観客でも十分に楽しむことができるはずだ。新宿区役所、新宿御苑、戸山公園の箱根山、都庁と、実在する地名やスポットが多数出てくるのだが、それらと徒歩圏内の場所にある劇場新宿FACEでの上演というのもいい。観劇後は、現実とフィクションが心地よく混ざり合い、自分も「アナザー」たちが見えるような気さえしてくる。脚本は守山カオリ、演出は扇田賢。そのほかの出演は田中稔彦、釣本南、瀬戸啓太、永瀬千裕、毎熊宏介、石賀和輝、竹鼻優太、斎藤直紀、倉田瑠夏ら。衣装やメイク、俳優らの役の理解により、原作やアニメのキャラクター再現度も比較的高いように思った。舞台ならではのライブ感をぜひ楽しんでほしい。公演は11月7日(土)まで全13公演。チケット発売中。取材・文・撮影:五月女菜穂
2020年11月02日ミュージカル 『35MM: A MUSICAL EXHIBITION』が2020年10月31日(土)と11月1日(日)、TBS赤坂ACTシアターで上演される。全4公演で、10月31日18時公演はBlinky Live配信、11月1日17時公演はPIA LIVE STREAM配信も予定されている。「35MM:A MUSICAL EXHIBITION 」の好悪円情報はこちら開幕を目前に控え、通し稽古の様子が公開された。ブロードウェイの名作舞台の写真を多く手掛ける写真家マシュー・マーフィーと、彼の夫であり新進気鋭の作詞作曲家ライアン・スコット・オリヴァーのコラボレーションによって生まれた“ミュージカル” 。ミュージカルとはいうが、 本作は1曲1話完結型のオムニバス形式で紡がれる「ソングサイクルミュージカル 」。幕間曲も含めておよそ20曲。ポップから、ロック、R&Bとジャンルも幅広く、ノンストップのコンサートのように、次から次へと音楽が奏でられる。カメラを持った鞘師が客席に向かってシャッターを切り、舞台が始まる。通し稽古では示されなかったが、写真がテーマということで、舞台上にはそれぞれの曲を象徴する「写真」が映し出されるのだろう。写真から何を想像し、どんな物語が紡がれ、どんなメロディに乗って届けられるのか。次々とスケッチが続くので、一言で説明するのは難しいのだが、劇中にこんな歌が出てくる。「説明させるな/アートに理由を求めるのをやめろ/ルールは壊すもんだろ/説明させるな/何故作らなきゃいけない/型にハマったアートを/捉え方は自由だろう/言ってることは/言ってることは/言いたいことは見て/Hold(考えるな)/Still(考えるな)/and focus(考えるな)」(M12 Why must we tell them why?より)なるほど、と思う。型にハマったミュージカルではない、とにかく感じてほしい。そんなメッセージに思えた。出演するのは、ストレートのみならずミュージカルにも精力的に出演している成河、元モーニング娘。のメンバーで今秋から芸能活動を再開した鞘師里保ら、フレッシュさと実力を兼ね備えた7人。普通のミュージカルのように、何か決まった役があるわけではなく、曲ごとに年齢も役割も関係性も変わるのが面白い。通し稽古では、互いの呼吸と目線を感じあいながら、丁寧に1曲1曲を歌い上げる姿が印象的だった。稽古の段階では新型コロナウイルス感染拡大防止のためマスクを着用しながらのパフォーマンスだったが、それでも十分な熱量。リズムをとりたくなるようなノリのいい曲もあれば、じっくりと聞き入ってしまう曲もあり。歌唱力に定評のある面々ぞろいで、なかなかに贅沢な音楽体験だった。舞台上で、この聴覚と視覚がどう融合し、どう化学変化を起こすのか。楽しみたい。上演時間は約80分(予定)。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2020年10月28日ダニエル・キイスの同名小説を原作にしたミュージカル『アルジャーノンに花束を』が10月15日(木)から、東京都中央区の博品館劇場で開幕した。32歳になっても幼児並みの知能しかないパン屋の店員チャーリィ・ゴードン(矢田悠祐)。「賢くなりたい」と願う彼は、アリス・キニアン先生(水夏希)と出会う。そして、ストラウス博士(戸井勝海)、ニーマー教授(大山真志)らの研究チームの目に留まり、人為的に知能を誘発する手術を受けることに。術後、訓練を受けながら、劇的に知的水準が上昇するチャーリィ。周囲と軋轢が生まれたり、新しい感情が芽生えたりするなかで、自分の中にいる「本物の」チャーリィの存在に気がついて……。ミュージカル『アルジャーノンに花束を』舞台稽古より撮影:宮川舞子本作は、2006年に初演。まだ宝塚歌劇団に在籍中だった荻田浩一が脚本・作詞・演出、斉藤恒芳が音楽を担当し、浦井健治がチャーリィ役を演じた。その後、14年、17年と再演され、今回は4回目の上演となる。ミュージカル『アルジャーノンに花束を』舞台稽古より撮影:宮川舞子17年の上演に引き続き、チャーリィ役を演じる矢田悠祐。初日前の公開舞台稽古では、ひたすらに純粋無垢な姿から、自身の過去や感情に葛藤する姿まで、チャーリィの人生をまさに体当たりに表現した。矢田は「このような状況の中、初日を迎えることが出来まして、ひとまず安心しております。公演日程はかなりハードですが、毎公演この作品で何か一つでも感じていただければと、チャーリィとしての人生を毎回歩んでいます。万全の対策でお待ちしておりますので、是非劇場までお越しください」とコメントしている。ミュージカル『アルジャーノンに花束を』舞台稽古より撮影:宮川舞子同じく17年から続投しているアリス役の水夏希は、確かな歌唱力で存在感を放ちながら、チャーリィへの複雑な感情を丁寧に演じていた。水は「アルジャーノンに花束を。いよいよ開幕しました。初演の博品館劇場に戻ってまいりました! やる度にチャーリィの魅力に虜になり、チャーリィの生きる様が胸に刺さります。美しい音楽と、沢山のメッセージが込められた台詞の一言一言に揺さぶられる2時間半。存分に浸っていただきたいと思います」と話している。ミュージカル『アルジャーノンに花束を』舞台稽古より撮影:宮川舞子/p>ミュージカル『アルジャーノンに花束を』原作:ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」(ハヤカワ文庫)脚本・作詞・演出:荻田浩一音楽:斉藤恒芳11月1日(日)まで、東京・博品館劇場にて取材・文:五月女菜穂
2020年10月16日ゲイの男性が育児放棄された障がいを持つ子どもを育てたという実話に着想を得て制作された映画『チョコレートドーナツ(原題:ANY DAY NOW)』が宮本亞門の演出で、2020年12月~2021年1月、初めて舞台化される。舞台は1979年のウェスト・ハリウッド。シンガーを夢見ながら、ショーパブの口パク・ダンサーとして日銭を稼ぐルディ(東山紀之)と、正義を求めながらも、ゲイであることを隠して生きる検察官のポール(谷原章介)は、母の愛情を受けずに育ったダウン症のある少年マルコ(高橋永/丹下開登のWキャスト)を愛し、大切に育てた。ある日、ルディとポールがゲイのカップルであることが周囲に知られてしまう。2人の関係を偽っていたことが原因で、マルコは家庭局に連れて行かれる。「今こそ、法律で世界を変えるチャンス」と差別と偏見で奪われたマルコを取り戻すために裁判に挑むことを決心するが……というあらすじだ。演出をする宮本亞門は、原作の映画に「大感動した」といい、「米国でもメジャーなハリウッド映画ではないが、テーマ性があって、意義深い作品。特にルディを演じたアラン・カミングの演技は凄まじかった」と語る。今回、そのルディを演じるのは東山紀之。宮本は「よくぞ引き受けてくれたなと驚いた。アランの演技をみたら、普通だと怖いのではないかと思う」と話しながらも、「でも、そこに飛び込んできてくれた。社会に戦い続け、悩み、歌を歌うルディのような役は、彼も経験がないはず。役者冥利に尽きるし、役者としての評価が試される役」と期待を寄せる。また、ポールを演じる谷原章介については、宮本は「谷原さん自身とても真面目で、優しくて、理知的。ポールと似ているところがある」。そして、「ポールは、ゲイであることをカミングアウトできずに悩んでいるとき、ルディとの出会い、彼の心の旅が始まる。そこをうまく表現できたら」と述べた。コロナ禍での稽古、そして上演。宮本は「コロナの影響で、いろいろなことが浮き彫りになったし、社会の断絶も感じる。だからこそ僕は、愛にあふれた作品を舞台として出すことで、我々が忘れてはならないものや必要なものを感じてほしい。難しい政治の話ではなく、愛の話。エンターテインメントの色合いも含めながら、ぜひ劇場に来ていただければ」と呼びかけた。東京公演は2020年12月7日(月)~30日(水)までPARCO劇場。そのほか、上田市、仙台、大阪、東海市で上演される予定。チケット発売中。取材・文・撮影:五月女菜穂
2020年10月13日玉野和紀が脚本・作詞・演出・振付を手掛けたミュージカルコメディ『Gang Showman(ギャング・ショーマン)』が2020年9月18日(金)から東京・日比谷シアタークリエで開幕する。【チケット情報はこちら】舞台は1942年のニューヨーク。マンハッタンのダウンタウンの外れにある「Club Smile」は、70年続く小さなショーの店。急逝した父に代わって新オーナーになった娘のメアリー(平野綾)は、残ったメンバーとともにショーを完成させ、店の再開を目指している。そこへ、ヴィンセント一家のギャング・ジェイムズ(屋良朝幸)らが借金の取立てにやってくる。借金返済の条件としてヴィンセント家のボスが提示したのは、ジェイムズをショーの主役に据えて、彼の意見に従うこと。店を守るために、メアリーは止むを得ず条件を飲む。そして、ストリップダンサーのリンダ(妃海風)や、メアリーの亡き父が姿を変えて別人となったリチャード(中山秀征)、店を愛してやまない振付家のフランク(玉野和紀)も加わって、ショーのリハーサルが進んでいくが……という物語。と、ここまで言えば「普通」のミュージカルなのだが、玉野はこのコロナ禍を逆手にとった設定を盛り込む。屋良が演じるジェイムズを「潔癖症で高所恐怖症で金属アレルギーのギャング」という設定にして、いわば「ソーシャルディスタンスミュージカル」に仕上げたのだ。激しいタップダンスとともに、玉野が作り上げた世界観を堪能しよう。玉野とは3度目のタッグを組む屋良は「今の状況を逆手にとる発想が玉野さんらしい」と、初日を前にした記者会見でコメント。そして、「(コロナ禍で)本当にどうなるか分からないまま稽古をしていた。こうしてステージを見せられるのがうれしい。(自分は)ステージで生きる人間なのだなと改めて感じた」とも話していた。また、自粛期間中に、タップダンスの自主練習をするなど、自分なりに準備してきたという中山だが、実は11年ぶりの舞台出演。「(ゲネプロでも)最初から緊張で心臓が飛び出そうだった」と告白していた。最後に、玉野は「舞台ができるという喜びに尽きる。とにかく千秋楽まで無事に上演することが一番の目標。今回はマスクの下で笑っていただいて、いつかまた(観客の)マスクをとった笑顔に会えたら」。屋良は「この状況で劇場に行くことが心配な方はいると思うが、こちらは万全の体制で迎える。笑わせて、泣かせてという玉野さんマジックが伝わると思うので、安心して来場してほしい」と語った。上演時間は2時間(休憩なし)。東京公演は10月3日(日)まで。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2020年09月19日9月に日生劇場(東京都千代田区)で連続上演される、三島由紀夫没後50周年企画『MISHIMA2020』の合同取材会が、2020年9月9日に行われた。【チケット情報はこちら】本企画は、4人のクリエイターがそれぞれの目線で演出する三島作品をオムニバス形式で上演する。野上絹代が作・演出する『橋づくし』には伊原六花、井桁弘恵、野口かおる、高橋努が出演し、長久允が作・演出する『憂国』(『(死なない)憂国』)には東出昌大と菅原小春が出演。加藤拓也が作・演出する『真夏の死』(『summer remind』)には中村ゆりと平原テツ、熊林弘高が演出をする「『班女』近代能楽集より」には麻実れい、橋本愛、中村蒼がそれぞれ出演する。この日の取材会では、伊原、菅原、中村、橋本、麻実が出席した。伊原は『橋づくし』の見どころについて「数学的面白さというか、見れば見るほど発見がある」と話す。コロナ禍での上演となるが「今、舞台に出演させていただけること、そして作品をお客様にお届けできるという環境を幸せに思っております。今の時期だからこそ伝えられることを伝えられたらと思っております」ともコメントしていた。「三島さんという方に、魂でぶつかっていけたらいいなと思います」と語ったのは、菅原。出演する『憂国』(『(死なない)憂国』)については「憂国というものを愛した二人が、全力で、どろどろになりながら、三島さんが本当に守りたかったこの国って何なんだということを、全力で、細胞一つ一つが踊っちゃうような感じで、やっていく作品」と表現していた。中村は、演出家の加藤について触れ、「70年前に書かれた作品を、26歳の加藤さんが現代の話に書き換えた。三島さんの本を読んだ時よりも、より豊かなものに仕上げたところが新しい才能だなと感じました」。そして「(コロナ禍で)演劇もいろいろ厳しいなかで、やはり演劇を無くしたくないなという気持ちで、こうして舞台に立てることがありがたい」とも話していた。舞台が2作目だという橋本は、自らを「新参者」とした上で、「(演出家の)熊林さんと麻実さんのそばで、ゼロから。演劇って本当に深くて奥ゆかしくて最高という毎日を過ごさせてもらっていて、幸せです」。一方の麻実は「何回も三島文学に挑んでいますが、手強いことはすごく手強くて。今回の役も、ものすごく難しい。でも、とても素敵なメンバー(座組み)なので、このご縁を大切に、私たちだけの『班女』を作り上げて、日生の舞台からお届けしたいと思います」と貫禄あるコメントをした。『橋づくし』と『憂国』は9月21日(月・祝)〜22日(火・祝)、『真夏の死』と『班女』は9月26日(土)〜27日(日)。ぴあの「PIA LIVE STREAM」でのオンライン配信も決定している(9月21日20:00〜、27日16:00〜。アーカイブ配信あり)。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2020年09月11日女優で作家の岸惠子が、2020年10月3日(土)の新宿文化センター大ホールでの公演を皮切りに、スペシャルトークショー『岸惠子 いまを生きる』を全8回開催する。【チケット情報はこちら】岸のユーモアとエスプリが詰まった、単独トークショーは毎年恒例になりつつある。これまでのトークショーでは、映画の撮影秘話や海外で遭遇した出来事を語るほか、自身が書いた物語『わりなき恋』の一人芝居を上演するなど、毎回毎回趣向を凝らしてきた。8月14日に行われた取材会で、現段階の構想を尋ねると、「今は本を書くことに夢中で。私、2つのことを同時にできないの。舞台で話すことはこれから考えようと思います」と素直に話してくれた。8月11日に88歳になった岸。決意や目標を聞くと「何歳になったから、今日から決意するなんていうことはなくて。私はいつも一生懸命に生きてきた。私、めげない人間だと思っているのね。誰かに頼ったことがない。そういう生き方をしてきたので、決意なんて何もありません」。そして、その若々しさと美しさの秘訣を問うと「88歳に見えないという褒め言葉しかないのですか?(笑)。秘訣は、自然体で暮らすこと。見栄を張らず、自分にできることを誠心誠意やろうと思っているだけです」ときっぱりと語った。今年は、新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界が大きく変化した。岸は「私が恐れている唯一のことは、各国が地域主義になって、国際的な感覚がなくなって、世界中が非常に閉じこもってしまうこと。それが一番怖いですね」と述べる。そして「電車に乗るのもタクシーに乗るのも怖いので、うちにこもっています。なので、劇場にみなさんにおいでくださいというのは、ちょっと気が引けるのですが、来てはいただきたいです」と複雑な心境も明かした。このコロナ禍が収束したら何かしたいことはあるのか。記者からそう問われた岸は、福山雅治がNHKの番組でブラジル大西洋岸に広がる太古の森・マタアトランティカを旅したことを例に挙げ、「(福山は)好奇心と冒険心があり、素晴らしい仕事をしていらっしゃる。私、文明の栄えていないところにすごく惹かれるんですね。今の私は(福山と同じような旅は)できないけれど、若かったらああいう仕事をやってみたかったです」。10月3、4日は新宿文化センター大ホール、10日は相模女子大学グリーンホール 大ホール、11日は川口リリア・メインホール、14日はオリンパスホール八王子、18日はなかのZERO大ホール、24日は習志野文化ホール、26日は神奈川県民ホール大ホール。上演時間は約60分。料金は前売4800円、当日5000円(全席指定・税込)。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2020年08月26日1976年に誕生し今年3月に閉館した、「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」が、「SOMPO美術館」と館名を改めて、2020年7月10日(金)に新しくお目見えした。「珠玉のコレクション-いのちの輝き・つくる喜び」と題した開館記念展では、ゴッホの《ひまわり》など約70点を見ることができる。当初5月28日にオープンする予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期。入場を日時指定制とし、体温検査・消毒液の設置といった対策を講じて、開館の運びとなった。旧美術館は、1976年に開館し、現在の損保ジャパン本社ビルの42階に位置していたが、新美術館はビルの敷地内に新たに建設された。東郷青児の作品からインスピレーションを受けたというやわらかな曲線が特徴的な地上6階建てのビルで、1階がエントランスホール、2階がミュージアムショップと休憩スペース、3階から5階が展示室となっている。正面前庭にはゴッホの《ひまわり》を複製した陶板、外周には東郷青児の《超現実派の散歩》をモチーフとしたロゴのフラッグが設置され、新宿のアートランドマークとしての文化的空間を演出している。開館記念展の「珠玉のコレクション-いのちの輝き・つくる喜び」。「四季折々の自然」「『FACE』グランプリの作家たち」「東郷青児(1897-1978)」「風景と人の営み」「人物を描く」「静物画-花と果物」の全6章で構成され、ゴッホやゴーギャン、ユトリロ、セザンヌ、ピカソ、東郷青児、東山魁夷、平山郁夫、藤田嗣治など、選りすぐりの約70点を紹介している。見どころは、世界に7点しかないと言われるゴッホ《ひまわり》。1987年にコレクションとして加わり、アジアで唯一ゴッホの《ひまわり》を見ることができる美術館だ。仮反射のガラスケースで常設展示され、これまでよりも近い距離で鮮やかな色彩を見られるのがうれしい。古いニスの除去によって本来の明るい色彩を取り戻したルノワール《浴女》、全面的な修復を終え約10年ぶりのお披露目となる山口華楊の四曲一隻屏風《葉桜》、ゴーギャン《アリスカンの並木路、アルル》、セザンヌ《りんごとナプキン》なども見逃せないだろう。開館記念展は9月4日(金)まで。月曜休館(ただし8月10日は開館)。開館時間は午前10時から午後6時(最終入館は午後5時30分まで)。本展は日時指定入場制。入場料は大人1000円、大学生700円、高校生以下無料。また、10月6日(火)からは「ゴッホと静物画-伝統から革新へ」が開催される。17世紀オランダから20世紀初頭までのヨーロッパの静物画の流れの中にゴッホを位置づけ、ゴッホが先人たちから何を学び、それを作品にどう反映させ、次世代の画家たちにどのような影響を与えたか探る。《ひまわり》や《アイリス》をはじめ、ゴッホが描いた静物画26点などが展示される予定だ。本展も日時指定入場制で8月中旬よりチケット販売。こちらもお見逃しなく!取材・文・撮影:五月女菜穂
2020年07月17日三谷幸喜の新作舞台『大地(Social Distancing Version)』の東京公演が7月1日(水)からPARCO劇場(東京都渋谷区)で開幕した。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当初予定されていた公演スケジュールや劇場の座席配置が見直され、キャスト同志の接触をなるべく避けた演出や舞台構造になっているという。初日を前に1日、報道陣向けのフォトコールが行われ、序盤の約20分間のシーンが公開された。『出口なし!』(1994年)の書き下ろし以降、同劇場をホームグラウンドとして新作を発表し続けている三谷による新作。とある共産主義国家の独裁政権下で、反政府主義のレッテルを貼られ、「演じる」ことを禁じられた俳優たちが収容されている施設が舞台となっている。俳優たちは、政府の監視下で、広大な荒野を耕し、農場をつくり、家畜の世話をするという過酷な生活を送る。役者としてしか生きる術を知らない俳優たちが極限状態の中で織りなす群像劇だ。この日、前説に登場した三谷は「舞台俳優たちは今、なかなか舞台や演劇に携わることができなくて、演劇関係者はすごく苦労しているところでございますけれども、(この舞台は)それとほぼ同じような設定で、『演じることができない』人たちが集まっている。本を考えたのは去年なのですが、我ながらなんという先見の明なのかと…」と話し、笑いを誘っていた。また三谷は、1924年に誕生した築地小劇場では銅羅の音とともに幕が開けたことを引き合いに出し、「(新型コロナウイルスの感染拡大の影響で)なかなか舞台が、芝居が、できない状況にありますけれども、必ずまた芝居ができるいつもの状態に戻りたいと思っております。僕らがその先陣を切ることになりました。ということで、今回の芝居は、銅羅の音から始まります」とも話していた。東京公演は8月8日(土)まで。大阪公演は8月12日(水)から23日(日)、サンケイホールブリーゼ(大阪市北区)で上演される。出演は大泉洋、山本耕史、竜星涼、栗原英雄、藤井隆、濱田龍臣、小澤雄太、まりゑ、相島一之、浅野和之、辻萬長(※「辻」は一点しんにょう)。なお、PARCO劇場では、本作『大地』に続き、『ショーガール』(2020年7月27日~8月7日)、『其礼成心中』(8月13日~20日)の3作品連続で三谷作品の上演が予定されている。第2クール(公演期間:7月14日(火)~7月26日(日))の一般発売は7月5日(日)より。第3クール(公演期間:7月28日(火)~8月8日(土))は7月11日(土)11:00~7月13日(月)23:59にてプレリザーブを受付、7月19日(日)10時より一般発売予定。取材・文・撮影:五月女菜穂
2020年07月01日