ストーリー性のある演劇的な世界観をジャズダンスとJ-POPで創り上げるエンタテインメント集団「梅棒」による第10回公演『OFF THE WALL』が2月6日(木)、こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都渋谷区)で開幕した。第4回公演『クロス ジンジャー ハリケーン』(2015)以来4年ぶりに、梅棒のメンバーのみが出演する公演だ。【チケット情報はこちら】2001年に日本大学芸術学部のダンスサークル『BAKUの会(現:Dance Company BAKU)』内で結成された、梅棒。09年にストリートダンス界最大のコンテスト『JAPAN DANCE DELIGHT vol.16』で特別賞を受賞し、2012年に国内最大の振付作品コンテスト『Legend Tokyo chapter.2』で最優秀作品賞とオーディエンス賞を同時受賞。以降、活動の中心を劇場公演に移し、2018年度は2万5000人超の動員を記録。劇場公演以外でも、話題のテレビドラマやミュージカル、アーティストのライブやミュージックビデオなどの演出・振付を数多く手掛けている、いま注目の集団だ。メンバー全員が30代になった今、選んだテーマは「小学生」。作・総合演出を担当する伊藤今人が「我々を生み、育んでくれた『昭和・平成』という時代への讃歌です」と語るように、本作では、昭和の名曲から、誰もが一度は聞いたことがあるであろう人気アイドルグループの平成のヒットソングなど、カーンコールも含め20曲以上が次々と流れる。それらの“懐メロ”で表現されるのは、子どものころに全力で遊んだゲームや遊び、小学校の日常風景、そして少しのファンタジー。小学生に扮装したメンバーらが全力で踊り、表現するその姿を見ていると、懐かしさが込み上げてきたのと同時に、あの頃に感じたワクワクした気持ちやどこか切ない感情も蘇った。伊藤は「僕らギリギリ昭和世代が子どもの頃は、J-POPが全盛で流行した曲はみんな知っていてみんな歌える時代でした。対して今は、国民全員歌えちゃうようビッグヒットは生まれにくい状況にあります。楽曲に限らず、あらゆるものを消費者側が選んで入手できるようになった現代において、幼い頃の”あるある”みたいなものも人それぞれ。今の子供たちは大人になった時の思い出話に花が咲きにくいんじゃないかなあって思ったりします」とコメントした上で、「令和になった今だから、そしてこの11人だけだからこそできる、ノスタルジーと馬鹿馬鹿しさに満ちた我々梅棒の全力投球を、ぜひ劇場で堪能してください!」と語っている。公演は2月16日(日)まで。上演時間は約1時間45分(途中休憩なし)。出演は、伊藤今人、梅澤裕介、飯野高拓、鶴野輝一、遠山晶司、遠藤誠、塩野拓矢、櫻井竜彦、楢木和也、天野一輝、野田裕貴。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂写真:(C)角田大樹
2020年02月07日舞台『効き目の遅い薬』の東京公演が2月12日(水)より赤坂RED/THEATERで上演される。Team337の第4回公演で、阪神タイガースOBで俳優の嶋尾康史が演出を担当する。主演する柊子に、本作の見どころ、そして、自身の俳優としての展望を聞いた。【チケット情報はこちら】本作は、『アンソロジー 嘘と約束』(アミの会(仮)編、光文社)の中にある、福田和代作の小説『効き目の遅い薬』を舞台化したもの。製薬会社の研究室に勤務しているアンクルこと井川由紀(柊子)のもとへ、大学時代からの友人、もっさんこと望田遼平(生田拓馬)がやってきて、とある頼みごとをする。井川は望田の熱意に押されて、その頼みごとを引き受けるが、すれ違う想いに小さな嘘が重なり、ふたりの運命は大きく変わっていって…。謎解きの要素もありながら、切なく複雑な恋模様を描いた作品になりそうだ。柊子は「原作を読んだとき、すごく切ない気持ちになりました。ぎゅっと世界観が凝縮されている短編小説なので、舞台化は難しいかもしれないと思ったのですが、Team337らしさをプラスして、原作とはまた違う良さをお届けできたらと思います」と意気込む。チームとしては珍しく恋模様を描いた作品に挑戦ということで、「情感を大切にして演じたいです」とも話した。現在28歳の柊子。舞台はもちろん、映画やドラマ、ラジオに出演し、作詞や小説執筆にも取り組み、活動の幅を広げる。「20代前半までは勢いや若さで何とか押し切ってきたものが、今は少し落ち着いて物事を考えられるようになりました。いただいたお仕事ひとつひとつに向き合いながら、そして出会いを大切にしながら、ひとつの枠にとどまらずにいたいです」。そのなかでTeam337の公演は、柊子にとって「原点」のような存在でもある。「お芝居って楽しいなと純粋に思っていた頃の気持ちを思い出させてくれる場所ですね。Team337として年に1度しか公演ができていないけれど、各々のメンバーが別の現場でステップアップして帰ってくるので、毎年毎年、より良い公演ができていると信じています。続ける難しさもありますが、もっと頑張りたいと思います」と話す。すでに大阪公演を終え、まもなく東京公演が開幕する。柊子は「今まではほっこりしていただけるような作品が多かったTeam337が、今回は切ない恋模様を描いた作品に挑戦します。一度でも見にきてくださった方はもちろん、これまで知らなかった方にもぜひ足を運んでいただきたいです。必ず損はさせないという気持ちで舞台を作っていますので、ご来場をお待ちしています!」と呼びかけた。公演は2月12日(水)~16日(日)まで、東京・赤坂RED/THEATERにて。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2020年02月06日殺陣やアクションを中心に新しいジャンルの舞台演劇を追求している「30-DELUX(サーティーデラックス)」と、愛知県を中心に活動する応援合戦チーム「青春応援団 我無沙羅(ガムシャラ)」他、複数のアーティストがコラボレーションする舞台『デラ・ガムシャラ2020~僕らのアオハル日記~』が2月11日(火・祝)、日本特殊陶業市民会館ビレッジホール(名古屋市中区)で上演される。【チケット情報はこちら】2017年7月にフランスで行われたJAPAN EXPOで出会って意気投合した30-DELUXと青春応援団 我無沙羅は、2019年1月に初めてコラボレーションした舞台『デラ・ガムシャラ』を上演。その公演について30-DELUXの田中精は「ふたつの団体の魅力をトークを交えながら展開して、イベント的な要素が強かった」と語っているが、今回は高校を舞台にした青春ストーリーを軸にしており「前回とは随分と見え方が変わると思う」と話す。今回は、ふたつの団体のほか、米ニューヨークのアポロシアターにゲスト出演を果たした実力派アニメーションダンスチーム「タイムマシーン名古屋(544 6th Ave.)」、黄帝心仙人がプロデュースする謎のナース軍団「オシリーズ(O series)」、2010年に結成された東海エリア出身・在住のメンバーで構成されたエンターテイメント集団「BOYS AND MEN」の弟分「BOYS AND MEN 研究生関西」より内海太一、岡大和のふたりが出演。殺陣、アクション、芝居、応援合戦、ダンスが融合する舞台になりそうだ。中村悠希(30-DELUX)は「我無沙羅さんのパフォーマンスに圧倒され、刺激を受けた。僕達も見せつけてやろうと燃えた」と前回を振り返りつつ、「今回は特にお芝居を見てほしい。熱いものを本番にぶつけられたら」と話す。また、村瀬文宣(同)は「いろいろな団体がいて、タイトルだけ見るとよく分からないかもしれないが、楽しんでいただけるものになる自信があるので、とにかく劇場に来てほしい」今回初出演する、内海(BOYS AND MEN 研究生関西)は「ゲストといえども、中心的な役割をやらせていただく。周りに埋もれないように、むしろ僕らが引っ張っていくぐらいの勢いでいきたい」と意気込み、岡(同)は「僕たちがいつもやっていないようなことに挑戦させていただくので、どれだけこの舞台で爪痕を残せるか。1日限りの舞台だが、お客さんからもう1度見たいと思ってもらえるような姿を見せたい」と語った。構成・演出を担当する30-DELUXの田中は「テーマは青春(アオハル)。若い人たちの輝きを感じ取ってほしい気持ちもあるが、僕たち大人もいくつになっても青春を感じられるということを伝えたい」と話した。公演は昼の部(12時開演)、夕方の部(17時開演)の2回公演。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2020年02月04日1組の男女が時を超え、性別も超えて織りなす舞台『春母夏母秋母冬母』が2月13日(木)からCBGKシブゲキ!!(東京都渋谷区)で上演される。FUKAIPRODUCE羽衣の糸井幸之介が作・演出・音楽を手がけ、オリジナルキャストの森下亮(クロムモリブデン)と深井順子(FUKAIPRODUCE羽衣)に加え、土屋神葉(劇団ひまわり)と上西星来(東京パフォーマンスドール)が本作に初挑戦する。登場するのは、深夜の公園で遊ぶ「こなこ」と「ユキユキ」の中学生カップル。そのシーンの中に、こなこと母、ユキユキとママの、幼年期・思春期・壮年期の物語が挟み込まれ、それぞれの「母」との関係性が描かれる。1組の男女が、母と子を自在に演じ分け、こなことユキユキのさまざまな年齢の物語が展開される。2018年5月に吉祥寺シアターで初演。「母」という普遍的テーマや、韻を踏んだ歌詞と耳に残るメロディ、詩的な世界観が評価され、今回の再演に至った。オリジナルキャスト同士、新キャスト同士、そして新旧キャストが入り混じる公演と、計4パターンでの上演が予定されている。初日まで2週間ほどとなった1月下旬、都内で行われている稽古を見学した。この日、行われていたのは、中学生になったこなこと母のシーン。母の帰りを待ちながらどこか寂しさを感じるこなこと、酔っ払いながら一人本音を漏らす母を描く場面だ。糸井の作品は、ミュージカルならぬ「妙ージカル」と称される、芝居と歌を融合させた独特な作風が特徴。どんな稽古をしているのか想像がつかなかったのだが、細かく場面を区切りながら、糸井が気になったポイントで、適宜修正点を提示して、再度芝居をするという、意外とスタンダードな手法をとっていた。キャストの組み合わせを代えて稽古をしていくので、自然と互いの芝居を見合う。40代のオリジナルキャストの森下と深井が、20代のフレッシュな新キャストの土屋と上西に動線や演技のアドバイスを伝えたり、若手の土屋と上西も自分らしさを出そうと動きやセリフの言い回しを少し変えてみたり。キャストによって演出が大きく変わることはないようだが、それぞれの創意工夫が見られたのが面白かった。初演をご覧になった方も、ご覧になっていない方も、楽しめる舞台になりそうだ。公演は2月19日(水)まで。チケット発売中。取材・文・撮影:五月女菜穂
2020年02月03日国際アート・カルチャー都市構想のシンボルで、年間1000万人の集客が見込まれる「Hareza 池袋」の中核をなす劇場として、昨年11月に開館した「東京建物 Brillia HALL」(豊島区立芸術文化劇場)。そのこけら落としシリーズとして、4月に上演される手塚治虫原作の舞台『新 陽だまりの樹』に出演する俳優の上川隆也が、公演プロデューサーでキョードーファクトリー代表取締役社長の前田三郎氏とともに、高野之夫・豊島区長をこの度表敬訪問した。【チケット情報はこちら】文化創造都市宣言をするなど、文化芸術に対して積極的に受け入れ活動をしている豊島区で、6期目を務める高野区長。就任当初から財政健全化に力を入れつつ、閉塞感を打破するために、文化や芸術を育む政策を打ち出したことを語る。「街が賑わうとき、そこには文化がある。文化がないと賑わいというものは生まれない。財政再建は苦しかったけれど、文化・芸術による街づくりをしたい。苦しい時こそ文化を育てていければ、豊島区の未来像が作れるのではないかと思った」。それに対して、上川は「高野区長の長年の思いが結実していると感じる」と返す。自らが役者としてキャリアをスタートさせた、演劇集団キャラメルボックス(現在活動休止中)がサンシャイン劇場で公演を頻繁に行なっていたことや、昨年12月までNODA・MAP第23回公演『Q』で東京芸術劇場プレイハウスの舞台に立っていたことを挙げて、「思い返すと、舞台のキャリアの大部分を僕は池袋で過ごしている。僕にとって池袋という街のイメージは、まさに演劇もしくは芸術という街だというイメージ。高野区長が21年間継続されてきた思いが、僕の中にあるイメージと合致した」と語った。昨年11月に開館した、東京建物 Brillia HALLは、豊島区が東池袋の旧豊島公会堂跡地に設立した公立劇場で、三層1300席の客席と間口9間(16.4m)の舞台を有している。上川は「役者は数多いるが、劇場のこけら落としに携われることは滅多にない。自分自身、想像もしていなかったが、本当に光栄なことだ」と感謝の意を述べつつ、「豊島区一丸となった力をぜひ追い風として、一身に浴びながら、座組み、スタッフ一同出来る限りの芝居を作っていきたい」と意気込んだ。また、豊島区で生まれ育った前田氏は「自分の生まれた街の新劇場で芝居を作れることはとても光栄なこと。上川くんをはじめ、うまい役者たちが演じる『新 陽だまりの樹』を僕は早くみたいし、区民の皆さんにも見ていただければ嬉しい」と述べた。『新 陽だまりの樹』は2020年4月3日(金)~19日(日)まで。上川隆也のほか、中村梅雀、葛山信吾、緒月遠麻、山田菜々、風間杜夫らが出演。チケット発売中。取材・文・撮影:五月女菜穂
2020年02月03日大阪を拠点に活動するシンガーソングライターのairlie(エアリー)。現在25歳の彼女は、これまで数多くの自主企画イベントを開催し、さまざまなジャンルのバンドやシンガーソングライターと共演してきた。【チケット情報はこちら】昨年10月には、『Night&Loop』や『革命の前兆』など全4曲を収録したE.P.『Days』をリリース。「愛や恋、虚無感や反骨心、諦めや悩みといったふと浮かんでは消える日々の中に潜む気持ちたちを切り取って、忘れないように歌にしています。曲を聴いて共感してほしいというよりは、それぞれの日々を思い出すきっかけになってもらえると嬉しいです」と思いを語る。2020年2月21日には、四谷天窓(東京都新宿区)で、『Days』のリリースを記念したツアーファイナルを行う。収録曲を中心に、音源化していない曲なども織り交ぜた「特別感のあるセットリスト」を考えているという。「ひとりの“ぼく”という人の、今を感じてもらえるようなストーリーを見せたい」と話す。また、今回ゲスト出演する、さのめいみ。と稲見繭(afloat storage)については「空間を引き込む力を持っているアーティストだと思っています。声、歌詞、佇まい、どれも素晴らしいです。そういう空気を一緒に感じてほしいです」。そもそもairlieが音楽を始めたのは、中学3年生の頃。当時大好きだったバンドのライブを初めて見た時に直感した。「ライブハウスの一番後ろからステージを見ているとき、根拠もなく直感的に『同じステージに立つんだ』と思いました。それまではただ音楽を聴くことが好きで、曲を作ったことも、作ろうとしたこともなかった」と話す。その大好きだったバンドというのは、NICO Touches the Walls(2019年活動終了)。airlie自身「間違いなく影響を受けている」と語る。そのほか、バックストリート・ボーイズやヴァネッサ・カールトンなど、昔から繰り返し聴いている洋楽にも影響を受けているという。普段の曲作りは、ギターを弾きながらメロディーと歌詞を同時に作るスタイルで、「”こういう曲を書こう”というよりは、ギターを弾いているうちに“こういう曲が書きたかったんだ”と気づく感じ。なので、ギターを弾くときは基本的にボイスメモをまわしたまま」と明かす。これからどんなアーティストになりたいのか尋ねると、airlieは「これからというより、ここ数年変わっていないことなんですが、ずっと『まっすぐ』歌っていたいです。負けず嫌いで理想が高い“ぼく”ですが、踏みしめる一歩一歩は確かなものだと思い続けているので、それをおもしろいと思ってもらえたら嬉しい。あとは、聴いて頂いている皆さんが各々思うように受け取ってもらえたらと思います」と答えた。公演は2月21日(金)、東京・四谷天窓 にて。チケットぴあにてチケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2020年02月03日ストーリー性のある演劇的な世界観をジャズダンスとJ-POPで創り上げるエンタテインメント集団「梅棒」による第10回公演『OFF THE WALL』が、2020年2月6日(木)から、こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都渋谷区)で上演される。【チケット情報はこちら】2001年に日本大学芸術学部のダンスサークル『BAKUの会(現:Dance Company BAKU)』内で、同期の男子6人によって結成された、梅棒。09年にストリートダンス界最大のコンテスト『JAPAN DANCE DELIGHT vol.16』で特別賞を受賞し、12年に国内最大の振付作品コンテスト『Legend Tokyo chapter.2』で最優秀作品賞とオーディエンス賞を同時受賞。以降、活動の中心を劇場公演に移し、18年度は2万5000人超の動員を記録している、いま注目の集団だ。今回の『OFF THE WALL』は、梅棒のメンバー11人のみが出演する完全新作。どんな舞台になるのか、開幕まで約2週間となった1月下旬、都内で行われている稽古を見学させてもらった。すでに建て込み(大道具が設置されている状態)があり、本番の舞台さながらの稽古。この日は、冒頭に迫力満点のダンスナンバーを全員で踊ってから稽古がスタート。稽古場の熱量が一気に高まった。そして、オープニングから順番に、転換のタイミングや動線を入念にチェックしていた。J-POPに合わせたダンスでストーリーを表現する彼らにとって、振付はもちろんだが、同時にこうした地道な確認作業も重要になってくるのだろう。出演者の全員が梅棒のメンバーということもあって、チームワークはばっちり。伊藤今人が総合演出を務めているが、メンバーはいい意味でフラットな関係性で、それぞれへの尊敬の念が感じられる。稽古のテンポも非常によく、無駄な時間がない印象を受けた。今回使用する楽曲は、昭和の名曲から、誰もが一度は聞いたことがあるであろう人気アイドルグループのあの曲など、カーテンコールも含め20曲以上。どんなストーリーが繰り広げられるのか見学をした段階では全貌は分からなかったが、「梅棒メンバーによる最もバカバカしく暑苦しい、原点的革新的エンターテインメント」と掲げている通り、“梅棒らしさ”全開の舞台になることは間違いなさそうだ。公演は2月16日(日)まで。出演は、伊藤今人、梅澤裕介、飯野高拓、鶴野輝一、遠山晶司、遠藤誠、塩野拓矢、櫻井竜彦、楢木和也、天野一輝、野田裕貴。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2020年01月31日講談社「モーニング」で不定期連載されている、大ヒット歴史漫画「チェーザレ 破壊の創造者」(作:惣領冬実、監修:原基晶、講談社刊)が2020年4月、明治座(東京都中央区)にてミュージカル化される。15世紀のルネッサンス期イタリアを舞台に、欧州統一の夢を抱きながら32歳の若さで亡くなった、軍人であり政治家のチェーザレ・ボルジアの人生を描く。今回、主人公のチェーザレ役を演じる中川晃教に、作品の見どころや意気込みを聞いた。【チケット情報はこちら】年明け早々からミュージカル『フランケンシュタイン』に出演し、多忙を極める中川だが、合間を縫って、この『チェーザレ』の製作発表会見や取材のための予習は決して怠らない真面目さを見せる。「どんな風にお客様に喜んでいただけるのか。まだ稽古も始まっていないが、今ある台本や、(物語の背景となる)膨大な歴史の時間の中に、身を投じている。なかなか寝つけない夜もあるが、そんな時間も楽しい」と笑う。本作が上演される明治座では、1873年の創業以来、初となるオーケストラピットが稼働し、正統派ミュージカルとして新たな作品が作り上げられることになる。中川は「この作品は、いろいろな意味で、ターニングポイントになるのかなと思う」と語る。ひとつ目のターニングポイントは、日本のミュージカル界において。中川自身はこれまでミュージカルに出演する中で、「オリジナルミュージカルを作っていかないといけない。流行に乗るだけではなくて、確かなものを残していかなくてはいけない。ミュージカルが浸透していけば浸透していくほど、その価値というものを考えるようになった」という。本作が取り扱うのは、決して分かりやすい題材ではないが、現代の社会情勢と重ね合わせることができる部分もあるといい、「日本のミュージカル界に爪痕を残せる作品になるのではないか」と話す。そして、本作が中川の転機ともなりうることを示唆する。来年がデビュー20周年となる中川は、今回、座長という立場になる。「座長は、どんと構えつつも、気を使う立場。共演者の方々は錚々たるメンバーで、それぞれのフィールドで頑張っておられる方ばかり。ひとつの作品で巡り会えるのは奇跡みたいなこと。その信じあえる仲間たちと一緒に、枠にはまらない、チェーザレを演じたい」と意気込んだ。脚本は荻田浩一、演出は小山ゆうな、音楽は島健。その他の出演者は、宮尾俊太郎(Kバレエカンパニー)/松田凌、平野良、井澤勇貴、鈴木勝吾/山崎大輝、風間由次郎、近藤頌利(劇団Patch)、木戸邑弥/藤岡正明/今拓哉、丘山晴己、横山だいすけ/岡幸二郎/別所哲也ほか。日程は4月13日(月)~5月11日(月)明治座にて。チケットぴあにて二次先行受付中。取材・文:五月女菜穂
2020年01月31日8月20日(木)から9月28日(月)まで、WITH HARAJUKU HALLでイラストレーター、Chocomoo(チョコムー)による展示会『Chocomoo EXHIBITION -OUR SECRET PARTY- Supported by WITH HARAJUKU』が開催。展示会の開催に際し、Chocomooに話を聞いた。ポップで独創的な作品をモノトーンで描く、京都府出身のChocomoo。アパレルブランドや企業とのコラボレーション、アーティストへのアート提供など日本国内外で活躍をし、10~20代の女性を中心に人気を集めている。「子どもの頃から絵を描くのが好きで、ノートやスケッチブックに描いていました。初めてニューヨークに旅をした時も、絵日記を描くように、公園で絵を描いていたんです。そうしたら、ギャラリーを運営し ているおじさんに声をかけてもらって、“うちで展示してみる?”と言われたんです」彼女のイラストの特徴のひとつは、ほとんどがモノトーンで描かれること。なぜモノトーンにこだわるのか問うと、Chocomooは「小学生から高校生ぐらいまで書道をやっていて、黒で描 くということに凄く魅力を感じていました。黒の中でも、墨だっ たら少しマットになったり、ペンキだったら光沢があったり。その影響があるんだと思います」と話します。京都で生まれ育ち、昔から日本の伝統文化に触れてきたことも作風に影響しているのかもしれない。今回の展示会は、Chocomoo史上最大規模の展示。新作を作りつつ、展示内容を精査している段階だが、 「自分なりの色使いを進化させてみたいなと思っています。見 に来てくれた人が、新しいなと刺激をもらってもらえるようなも のを目指しています」と話します。 OUR SECRET PARTYというタイトルは「私の個展ですが、 Partyのようにみんなに楽しんでほしい。そして、そこに来ないと分からない、新しい発見があると思うので、Secretとつけました」最後に、これからの夢や目標を尋ねると、Chocomoo は「今までと変わらずコツコツ自分に出来る事を続けていくので すが、たくさんの子どもたちに向けて発信をしたいなぁと思っています。私の絵に塗り絵をしてくれるのも嬉しいし、子ど も向けの映像なんかにも挑戦したいと思います。それから、車をペインティングしたから、次はもっと大きく飛行機もやってみたい!」と笑顔で語ってくれた。取材・文:五月女菜穂
2020年01月22日約3年半の建て替え工事と準備期間を経て、新しく生まれ変わったPARCO劇場が、2020年1月15日にお披露目された。この日は、『志の輔らくご~PARCO劇場こけら落とし~』、『ラヴ・レターズ~こけら落としスペシャル~』に続き、3月13日より上演されるオープニング・シリーズ全14作品が発表され、渡辺謙、三谷幸喜、大泉洋、山本耕史、宮藤官九郎、河原雅彦、古田新太、市川猿之助、天海祐希など、演劇界を代表する豪華な顔ぶれが登壇した。【チケット情報はこちら】1973年に渋谷PARCO開店と同時に、当時「西武劇場」という名称で開場し、建て替えのために休館する2016年までの43年間で約1200作品を上演。お披露目された新劇場は、旧劇場の458席から636席に客席が拡張され、舞台空間も大きく広がる。この日はオープニング・シリーズの出演者ら計20人が登壇。シリーズ第1弾を飾る『ピサロ』に出演する渡辺謙は、西武劇場時代からの出演作を振り返りつつ、「この劇場は、僕の演劇人生にとってのエポックになる劇場。新しい劇場になって雰囲気が変わってしまうのではという一抹の不安もあったが、舞台に立ってみると、PARCOに戻ってきたという喜びと緊張が混ざった気持ち。万全の準備をして初日を迎え、お客様にこの席を埋めていただいて、一緒にこの劇場を作り上げたい」と語った。とりわけ会場を沸かせたのは、三谷幸喜。「新しいシステムについてお話ししたい」と切り出し、「みなさんが座っている椅子ですが、全ての座席にニクロム線が張られています。本番中に携帯電話を鳴らした瞬間、8万ボルトの電流が…。後方に3つレーザー銃が設置されています。招待されていたにも関わらず寝てしまったマスコミ関係者を狙い撃ちするように…」などとジョークを交えた挨拶をした。自身の公演期間が東京オリンピックと重なることにも触れ、「丸かぶりですが、スポーツに興味がない方はぜひ劇場へ」などと呼びかけて、また笑いを誘った。オープニング・シリーズのラインナップは以下の通り。▽渡辺謙主演『ピサロ』(3月13日~4月20日)▽森新太郎演出『佐渡島他吉の生涯』(5月13日~6月7日)▽三谷幸喜三作品三ヶ月公演『大地』(6月20日~8月8日)、『三谷幸喜のショーガール』(7月16日~8月7日)、『其礼成心中』(8月13日~8月20日)▽長田育恵作、栗山民也演出『ゲルニカ』(9月)▽宮藤官九郎作、河原雅彦演出『獣道一直線!!!』(10月)▽前川知大作・演出の作品(11月)▽宮本亞門演出『チョコレートドーナツ』(12月)▽『志の輔らくご in PARCO 2021』(2021年1月)▽『ラヴ・レターズ』(同)▽杉原邦生演出、市川猿之助ら出演『藪原検校』(2~3月)▽天海祐希ら出演『レディ・マクベス(仮題)』(3~4月)▽G2演出、中井貴一ら出演『月とシネマ』(4~5月)取材・文・撮影:五月女菜穂
2020年01月16日草なぎ剛が主演を務める舞台『アルトゥロ・ウイの興隆』が1月11日からKAAT神奈川劇場大ホールにて開幕した。本作は、ドイツ演劇の巨匠ベルトルト・ブレヒトの作品で、ヒトラーが独裁者として上り詰めていく過程をシカゴのギャングの世界に置き換えて描いている。初日を前に取材に応じた草なぎは、直前まで調整が続いていることを明かし、「最後までたどり着けるかどうか…膨大なセリフの量で正直まだ覚えきれていない…」などと不安な心境を覗かせながらも、「見どころは本当にすべてだと思います。ちゃんと出来たら、すごくエンターテイメント性の高い、いい作品になるのではないか。みんなで毎日毎日頑張ってきたので、僕らにしか出来ない『アルトゥロ・ウイの興隆』が届けられると思います」と決意を語った。演出を務めるのは、草なぎと2018年に『バリーターク』でタッグを組んだ、白井晃。草なぎについて、白井は「私が色々とお願いすることに対して、正面からぶつかっていただいていて、どんどん『アルトゥロ・ウイ』というギャング団のボスになりきっていただいている。剛さんは、人の気持ちを引き寄せるチャーミングな面をお持ちなので、役どころにもあっている。チャーミングだけれど、最後には怖くて恐ろしい剛さんを見られると思います」と全幅の信頼を寄せていた。劇中の音楽は、キング・オブ・ソウルと呼ばれるジェームス・ブラウンの楽曲を中心に構成され、ファンクバンドのオーサカ=モノレールが生演奏する。白井は「ヒトラーが人々の気持ちを盛り上げるために、ワーグナーの曲を利用したように、今回はジェームス・ブラウンの楽曲を盛り込んだ。それと一緒に(草なぎが)歌い、踊り狂う姿がまた見どころ」と話している。上演時間は約3時間5分(途中休憩あり)。作品ではヒトラーの政権掌握からオーストリア併合までの史実を扱い、合間で字幕による説明も入るが、あくまで設定はシカゴのギャング団の話。華やかなショーでありつつ、それでいて重厚な芝居も見せつけられる。1幕から最後に幕が閉じるその瞬間まで続く、熱狂、狂気、不思議な高揚感、そしてそれを止められない恐怖の感覚。主演の草なぎの白熱した演技はもちろん、共演する古谷一行、神保悟志、渡部豪太、松尾諭、小林勝也など、個性豊かな俳優たちの芝居もいい。草なぎは「白井さんとまた私、草なぎ剛がタッグを組んで、今までにないにないような草なぎ剛が見られると思います。白井さんの演出もまた新しく斬新でとても痺れる感じになっていますので、ぜひとも皆さんよろしくお願いします」とコメントしている。公演は2月2日まで。取材・文・撮影:五月女菜穂
2020年01月14日誰にでも訪れる老いと、家族の絆をテーマにした舞台『黄昏』が1月16日(木)から紀伊國屋ホールで上演される。【チケット情報はこちら】1978年のブロードウェイ初演以来(原題は『On Golden Pond』)、日本を含む世界各地で上演され続けているアーネスト・トンプソンの戯曲。1981年にはヘンリー・フォンダ、ジェーン・フォンダ、キャサリン・ヘップバーンの共演で映画化され、第54回アカデミー賞主演男優賞、主演女優賞、脚色賞などを受賞した。シーエイティプロデュースでは、文学座の高瀬久男の演出のもと、2003年に初演され、2006年再演(板垣恭一との共同演出)、2018年には鵜山仁による新演出で再再演されている。舞台は、アメリカ・メイン州、美しい湖ゴールデン・ポンドの岸辺にたたずむ別荘。偏屈な性格で最近老いを感じ始めたノーマンと、ノーマンの10歳年下の妻・エセルのふたりがひと夏を過ごすために、別荘へやってくる。そんなふたりのもとに、42歳になる娘のチェルシーから手紙が届く。父との確執から疎遠になりがちなチェルシーだが、8年ぶりにゴールデン・ポンドを訪れ、ボーイフレンドを連れてくるといって…。村井國夫の舞台降板に伴い、ノーマン役を演じるのは、文学座の石田圭祐。また、これまで初演からエセル役を演じてきた八千草薫が昨年10月に亡くなり、今回は高橋惠子がその跡を継ぐ。娘のチェルシーを瀬奈じゅん、ビルを松村雄基、ビリーを若山耀人、そして郵便配達夫のチャーリーを石橋徹郎が演じる。昨年12月下旬に東京都内で行われた稽古では、年季を感じさせる木造の別荘の内装が建てこんであり、1幕の第三場、ノーマンが80歳の誕生日に、チェルシーが恋人のビルと、13歳になる彼の息子ビリーとともに別荘へやってくるシーンが公開された。娘に会えた嬉しさと裏腹に天邪鬼な受け答えをしてしまうノーマン。父の体調を気にしているのに、それを素直に表せないチェルシー。その間に立って両者を気遣い、見守るエセル。程よい緊張感が漂う稽古場。本番まであと1か月ほどだったが、過度に焦ることなく、各々が淡々と目の前の芝居に向き合い、稽古に取り組む姿が印象的だった。初演から40年以上経っている戯曲だが、家族のあり方、そして、老いとの向き合い方は現代でも十分通ずるテーマだろう。実力派の俳優たちが紡ぐ、家族の物語。お見逃しなく。公演は19日(日)まで。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2020年01月09日1組の男女が時を超え、性別も超え、織りなす舞台『春母夏母秋母冬母』が2020年2月13日(木)から渋谷・CBGKシブゲキ!!で上演される。FUKAIPRODUCE羽衣の糸井幸之介が作・演出・音楽を手がけ、土屋神葉(劇団ひまわり)と上西星来(東京パフォーマンスドール)が本作に初挑戦することとなった。【チケット情報はこちら】登場するのは、深夜の公園で遊ぶ「こなこ」と「ユキユキ」の中学生カップル。そのシーンの中に、こなこと母、ユキユキとママの、幼年期・思春期・壮年期の物語が挟み込まれ、それぞれの「母」との関係性が描かれる。1組の男女が、母と子を自在に演じ分け、こなことユキユキの様々な年齢の物語が展開される音楽劇だ。本作は2018年5月に吉祥寺シアターで初演されたが、早くも再演が決定。詩的な世界観で描く、「母」という普遍的テーマや、韻を踏んだ歌詞と耳に残るメロディが高く評価された。糸井自身も初演で手応えを感じたようで、「非常にしっくりと、しかも楽しく作ることができた、大切な作品です」と語っている。出演にあたって、上西は「2人芝居は初挑戦で、どんな風になるのか想像がつかない。いろいろなことに挑戦して、殻をどんどん破っていないとダメだなと心に決めました」と話す。また、土屋は「新しいことばかりで自分がどれだけできるのか分からないけれど、再演ということで、(オリジナルキャストの)先輩方が土壌を作って下さっている。その中からヒントを得つつ、自分なりに面白い作品にできたらなとワクワクしています」と意気込む。今回は、土屋と上西のほか、オリジナルキャストの深井順子(FUKAIPRODUCE羽衣)と森下亮(クロムモリブデン)の出演も決まっている。新キャスト同士、オリジナルキャスト同士、そして新旧キャストが入り混じる公演と、計4パターンでの上演が予定される。40代のオリジナルキャストと、20代のフレッシュな新キャスト。年齢差によってどのように作品が変化するのかも、見どころのひとつになりそうだ。糸井は「みんな“お母さん”から生まれてきた。母のことを思い出したり、反対に自分の子どものことを思ったり、優しい気持ちになれる作品。初演をご覧になった方でも、初めてご覧になる方にも楽しんでいただけると思います」と作品をPRした。チケットは発売中。取材・文・撮影:五月女菜穂
2019年12月26日草彅剛が、白井晃の演出で、ドイツ演劇の巨匠ベルトルト・ブレヒトの大作『アルトゥロ・ウイの興隆』に挑む。ヒトラーが独裁者として上り詰めていく過程をシカゴのギャングの世界に置き換えて描いた問題作に、ファンクミュージックを散りばめた斬新な演出で挑む意欲作だ。【チケット情報はこちら】草彅と白井が初めてタッグを組んだのは、2018年の舞台『バリーターク』。その時の経験が草彅の中には強烈に残っているようで、「すごく新しい感覚でした。読んでみて全く分からない内容だったんですけど、実際にやってみたらすごく楽しくて。だから今回、白井さんが声をかけてくれるということで、別に台本を読まずとも、やりたいと言いました」と出演を決めた理由を話す。本作は、1956年にブレヒトがこの世を去った2年後の58年にドイツ・ヴュルテンブルグ州立劇場にて初演された。日本では1969年に田中邦衛主演、劇団俳優座による『ギャング・アルトゥロ・ウイ~おさえればとまるアルトゥロ・ウイの栄達』のほか、2005年に新国立劇場が招聘したマルティン・ヴトケ主演、ベルリナー・アンサンブルによる公演が上演されている。すでに稽古に取り組んでいる草彅は、難解な戯曲と向き合いながら「膨大なセリフの量だし、何を言っているのか、意味がよく分からないんです」と苦笑い。一方で、「すごく刺激的です。知らない扉を白井さんが開いてくれる感じがするし、自分が分からなければ、分からないほど未知の自分に出会える。舞台にはそういうところがある。今回もそれを期待しています」とも語っていた。劇中の音楽は、キング・オブ・ソウルと呼ばれるジェームス・ブラウンの楽曲を中心に構成され、オーサカ=モノレールによる生演奏というのも大きな見どころの一つ。『道(La Strada)』(2018年)で音楽劇に挑戦した草彅だが、改めて音楽劇の魅力を聞くと、「より僕の役の中の眠っている魂が、音楽によって呼び覚まされる。そんなことを白井さんは狙っているらしい。それができたら、観客の皆さんに新しい感動を届けられるのではないかなと思います」と話してくれた。公演は2020年1月11日(土)から2月2日(日)まで、KAAT神奈川芸術劇場大ホールにて。共演者には、古谷一行、神保悟志らベテラン陣のほか、渡部豪太といった若手キャストに加え、『バリーターク』でも草彅と共演した松尾諭、小林勝也など、個性豊かな俳優がそろっている。取材・文:五月女菜穂
2019年12月25日世界6大陸で上演されてきた“マルチメディアパペットショー”の『NUFONIA MUST FALL』が2020年1月12日(土)から日本で初上演される。【チケット情報はこちら】本作は、モントリオールに拠点を置く、世界的に有名なDJでグラフィック小説家としても活躍するKid Koala(キッドコアラ)と、オスカー賞にノミネートされた美術監督のK・K・バレット監督が手がけたもので、舞台上に設置された12を超えるミニチュアステージと40体の人形を操って展開される。演劇、撮影、編集、ターンテーブルとピアノ、弦楽四重奏楽団の要素が合わさり、約15人の出演者によって、すべてがライブで、同時進行で繰り広げられるのが特徴だ。物語の筋は、孤独なOLと都会の喧騒の中で自身の声を見つけようとしている古びたロボットの運命のラブストーリーだという。キッドコアラのマネージャーを務め、公演プロデューサーでもあるライナ・トンプソンは「登場するパペットはユニバーサルなキャラクターです。非言語のショーだからこそ、年齢も人種も性別も問わず、世界の誰でも共感できるはずです」と、公演の魅力を語る。一方で、ライナは、さまざまな要素が組み合わさったライブパフォーマンスゆえの「難しさ」を話す。「たくさんのものが同時に動いているから、何か1つでもトラブルが起こると、ショーが成り立たなくなります。たったひとつのミスがショー全体に影響しうるリスクがあるのです」。だが、だからこそ面白みがあるといい、「ハイレベルなコラボレーションはすごく人間的で、スリルがあって、ワクワクします」日本公演で楽しみにしていることを聞くと、「まだ日本では上演されたことがないので、オーディエンスがどんなリアクションをしてくれるのか、楽しみですね」とライナ。「ずっと日本で上演したいと思っていた作品なので、ぜひ見にきて欲しいです。また、今回のショーを通じて、これからいろいろなアーティストと新しいコラボレーションができたら嬉しいです」とも話した。公演は1月12日(日)、13日(月・祝)に大阪のIMPホール、1月18日(土)、19日(日)に東京の渋谷区文化総合センター大和田さくらホールで上演される。チケット発売中。取材・文・撮影:五月女菜穂
2019年12月23日1980~90年代、野田秀樹、渡辺えりらに並び、日本の小劇場ブームを牽引した作家・演出家の如月小春の戯曲『NIPPON・CHA!CHA!CHA!』が1月10日(金)からKAAT 神奈川芸術劇場で上演される。マラソンでオリンピックを目指し、日本中の期待を一身に背負って生きる若者の孤独と挫折を描いた本作は、「ダンス版」と「演劇版」の二部構成で上演。日本のコンテンポラリーダンスをリードし、世界で活躍し続ける振付家・ダンサーの山田うんが、構成・振付、さらには初めて演劇の演出に挑戦する。幼少期より兄とのお笑いコンビ「まえだまえだ」として活動し、現在では俳優として活躍する前田旺志郎が主人公のカズオ役を演じる。【チケット情報はこちら】山田は現在の創作状況について、 「一人一人の個性や物語が日に日に際立っていく。やりがいがあって、見応えがあって、スピード感があって、本当に駆け抜けている」と語る。初めての演劇の演出ということで、手探りな場面もあるようだが、「家族のようにみんなで作っている」という。作品で描かれる舞台は、高度経済成長期に入る少し前の日本で、本作の初演は1988年にまで遡る。“昔の作品”をこの2020年に上演することについて、山田は「いろいろな時代がミルフィーユのように層になっているのを感じる作品。戦後74年が経つけれど、嫌になっちゃうぐらい、その時と何も変わっていない」と所感を述べる。そして、「だからこそ今の私たちでも熱く感じたり、色々と実感できるところがあったりすると思う」。前田は大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』でも水泳選手の役を演じるなど活躍を見せるが、舞台出演は2作目で、今回が初主演となる。ダンスも未経験で「最初はすごく不安だった」というが、山田の指導を受けるうち、「初めてだからこそプレッシャーを感じる必要もないし、真っ直ぐにがむしゃらにやる。無駄なものを背負う必要はない」と、考えが変化していったという。その上で、「2020年の1月ということもあって、この舞台を見て、何か一歩を踏み出すような勇気を持つ人が現れたらいいなと思う」とも語った。そんな前田について、山田も「ぴったりの役。彼は今19歳。ダンスでも演劇でも、この体に詰まっているものが毎日変わっていき、儚さを感じる。それが、作品で描かれているような、崖っぷちに立った人が見つめる眼差しや勇気などとリンクして、本当に物語とは思えないような実感がこもっている」と太鼓判を押す。公演は1月19日(日)まで。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2019年12月19日英国演劇界を牽引する劇作家サイモン・スティーヴンスの新作『FORTUNE』が、2020年1月13日から日本で世界初上演される。本作の製作発表が2019年11月28日に都内で行われ、サイモンのほか、主演を務める森田剛、共演する吉岡里帆、田畑智子、根岸季衣、鶴見辰吾、日本初演出のショーン・ホームズ、美術・衣裳のポール・ウィルスが出席した。【チケット情報はこちら】本作は、悪魔に魂を売った男の顛末を描いた、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの代表作『ファウスト』を現代のロンドンを舞台に置き換え、人類に訴えかけ続ける作品の重大なテーマをリアルに迫ってくるストーリーとして新たに作り上げた意欲作。製作発表でサイモンは「素晴らしいチームで、最高の作品作りができることを光栄に思う。特に今の自国のことを考えると、どんどん国が小さくなり、世界の他の国々に対して背を向けているような状態になりつつある。このような国際的なコラボレーションで、一緒に何かを作って、コミュニケーションをとって、共通のものを分かち合いながら創る作品は、これまで手がけてきた作品の中でも、最も重要な作品と言ってもいい」と語っていた。主演の森田は、サイモンの代表作『夜中に犬に起こった奇妙な事件』で数学に天才的な才能を持つ15歳のアスペルガー症候群の少年を演じたが(2014年、鈴木裕美演出)、本作では過去の出来事から喪失感を抱えて生きながらも、恋人・財産・名誉と望むものすべてを手に入れるために悪魔と“契約”を結び、闇へと落ちていく二面性を持った映画監督・フォーチュンを演じる。製作発表で森田は、『夜中に~』のこと振り返りながら、「ものすごく苦労した。そこにまた飛び込むのは勇気のいること。でも、サイモンの戯曲を読んだときに、僕にとってもチャレンジで、すごく刺激のある舞台なので、ぜひやりたいなと思った。初上演なので、“日本が1番良かった”と思ってもらえるようにしっかりやりたい」と意気込んだ。フォーチュンの父親・ショーン役を演じる鶴見は「小難しくて難解な話かなと思いながら台本を読み始めたら、現代的で、濃密で。読んでいくことが非常に面白かった」と語り、「俳優は常にチャレンジをし続けていく仕事。一生挑戦し続けて、新しいものを見つけて、どう表現していくか。そのふさわしい機会を与えていただいた。有意義な仕事で、役者冥利に尽きる」と熱弁した。東京公演は1月13日(月・祝)~2月2日(日)、東京・東京芸術劇場プレイハウス。松本公演は2月7日(金)~9日(日)、長野・まつもと市民芸術館主ホール。大阪公演は2月15日(土)~23日(日・祝)、大阪・森ノ宮ピロティホール。北九州公演は2月27日(木)~3月1日(日)、福岡・北九州芸術劇場大ホール。チケット発売中。取材・文・写真:五月女菜穂
2019年12月03日全世界で1億冊以上が売れた大ベストセラー官能小説『50シェイズ・オブ・グレイ』をパロディにして作られたコメディミュージカル『50Shades!~クリスチャン・グレイの歪んだ性癖~』が11月15日より新宿FACEで開幕した。2016年に河原雅彦演出で日本初演された本作。今回は、さらに“過激”になり、3年ぶりの再演となった。【チケット情報はこちら】週に1度、「本を読む会」を開催している主婦3人組のパム(シルビア・グラブ)、ベブ(野口かおる)、キャロル(青木さやか)。マンネリ化した性生活を送る彼女たちは、刺激を求めて官能小説『50Shades of Grey』を読み始める。その小説で描かれているのは、若くて有能だがとんでもない性癖を持った青年実業家・グレイ(浜中文一)と、平凡に生きてきた純真無垢な女子大生・アナ(水崎綾女)の、どこまでも歪んだ愛のカタチ。アブノーマルな恋愛模様を繰り広げるふたりに、情熱的なアナの同級生・ホセ(福田転球)の存在も加わり、物語はどんどん熱く、激しく、ヒートアップして…。2014年にオフ・ブロードウェイで上演されるや否や、話題騒然となり、「大人の娯楽」を求めて男女問わず多くの観客が劇場に押し寄せた本作。海を越えることは不可能と思われた型破りな世界観の“エロティックコメディミュージカル”だったが、河原の演出により日本初演が実現。3年ぶりの再演は、初演よりも上演時間が20分も長くなり、東京・大阪・福岡と3都市で上演される。初演に引き続き主人公のグレイを演じる浜中は「皆さんに楽しんでいただけるのが1番いいなと思います。あとはやることをやるだけです」と意気込みを語る。舞台上では、ジャニーズのアイドルというイメージをいい意味で覆し、振り切った演技を見せた。「変態」だけれども、チャーミングさや弱さ、爽やかささえも感じる、浜中のグレイをぜひ目撃してほしい。演出を手がけた河原は再演にあたり、「エロくて楽しければいい。これで読売演劇大賞とれたらいいと思います。そんな世の中が来たらすごい。大人しくお勉強になる芝居もとても素敵だと思いますけども、こういう作品もあっていい。マイノリティーの叫びです。よろしくお願いします」と話していた。そのほか、水崎綾女、シルビア・グラブ、野口かおる、青木さやか、福田転球、レディビアード、カイル・カード、パイレーツオブマッチョビアンが出演。東京公演は11月24日(日)まで。大阪公演は11月29日(金)~12月1日(日)、Zepp Nambaにて。福岡公演は12月3日(火)、4日(水)、ももちパレスにて。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2019年11月19日演歌歌手の三山ひろしが明治座初座長を務める『三山ひろし特別公演』が来年1月7日(火)から明治座で開幕する。公演は2部構成で、1部では立川志の春による新作落語を舞台化した『阪田三吉物語』を上演し、2部では玉野和紀が構成・演出・振付を手がける『三山ひろしオンステージ First Dream 2020』が披露される。公演の見どころや意気込みを、三山ひろしと立川志の春に聞いた。【チケット情報はこちら】2020年の初舞台。三山は「明治座では初めての座長公演で、しかも新春特別公演ということなので、責任をすごく感じております。明治座の方からも“新春特別公演は1年を占う公演となります”と言われておりまして、大変なプレッシャーと緊張感で年始を迎えることになりそうです」と決意を見せる。1部では、将棋に人生をかけた伝説の棋士・阪田三吉を演じる三山。自らが歌い手を目指して高知県から上京した状況と重なる部分があるストーリーだといい、「阪田三吉さんはお亡くなりになっても、今もなお世の中に影響を与えている人。自分自身もそういう男にならなくてはいけないと思うので、阪田さんの姿を演じさせてもらうことはありがたい。一生懸命やりたいと思います」と意気込んでいた。「演劇の世界も勉強したい。それができるようになると、自分の歌の世界もすごく豊かになると思う。いろいろなことを吸収できるようにしたい」と貪欲さも見せた。一方、1部で進行を担当する志の春は「私はいつもひとりで落語をやっていて、舞台に出演することが初めて。三山さんはじめ、チームプレーで何かを作り上げることが楽しみですね」。物語の魅力については「将棋の世界も演歌の世界も、昭和の人情味があるところが似ている。だんだんと人の関係性が薄れてきている現代ですが、この物語にはすごく濃くて普遍的なものが詰まっていると思う」と話し、「この物語は、2020年の世の中でも、観客それぞれに刺さるメッセージがあると思うので、その作品の一員になれることは光栄です」と締めくくった。2部は、三山のヒット曲はもちろん、元宝塚歌劇団トップ娘役の美咲凛音をゲストに迎えて、『雨に唄えば』などの映画音楽や『神田川』など昭和歌謡をミュージカル仕立てのステージになるという。三山も「今までにはなかったような、新しいステージになりそう」と期待を寄せていた。最後に、三山は「1部も2部もみなさまの記憶に残り、いつまでも語り継いでいただけるような作品にしなければいけないなと思っています。ぜひご来場ください」と話していた。公演は1月23日(木)まで明治座にて。出演者は、田中稔彦、清水佐紀、丹羽貞仁、小野寺丈、ほんこん/間寛平(Wキャスト)ほか。11月17日(日)の一般発売に先駆け、11月16日(土)23:59までチケットぴあにて先着先行受付中。取材・文・撮影:五月女菜穂
2019年11月14日秋田禎信によるライトノベルをもとに、脚本を吉田武寛、演出を松多壱岱が手がける舞台『魔術士オーフェン はぐれ旅-牙の塔編-が11月7日から六行会ホールにて上演される。今年8月に上演された第一弾に引き続き出演する主人公のオーフェン役の松本慎也、アザリー役の花奈澪、そして、今回からの参加となるウォール・カーレン役の末野卓磨の3人に作品の見どころなどを聞いた。【チケット情報はこちら】原作は1994年に第1巻が刊行されて以降、累計1200万部を突破した人気作。シリーズ生誕25周年プロジェクトの一環として、2020年には新作テレビアニメの放送も予定されている。今回の舞台は、8月の初演の続編という位置付けだ。初演からの続投キャストが多い第二弾。松本は「前回は前回で、稽古と本番期間を経て、みんなで作った役と関係性がある。その上でさらに新しい登場人物を迎えて物語を作るというのは、なかなかない贅沢な環境で、楽しい」と語る。作品については「長い間愛されている作品なので、キャラクターが魅力的で、世界観も緻密。それゆえに限られた時間がある舞台では、原作を読んでいないお客様にも楽しんでもらえる演劇にしなくてはいけない」と話し、「初参加のキャストに客観的な目線で分かりにくい部分を指摘してもらうことで、初めてのお客様を置いていかないように、みんなで努めている」。花奈は「壮大な世界観を持つ作品だと思う。前回は幼い頃や学生時代の話もあったが、今回はそれぞれが大人になり、ストーリーがおしゃれになった印象」と話す。物語を正確に理解するために、改めて時系列で出来事をまとめたといい、「世界史を勉強しているみたいだった」と笑う。来年からのアニメについても触れ、「アニメよりも舞台が先に上演されるのは稀だし、斬新」。そして、「演出の壱岱さんも、脚本の吉田さんも原作愛を持って臨まれている。絶対に原作ファンも喜んでもらえる作品だし、あまり2.5次元の舞台に馴染みのないお客様でも、舞台に興味を持ってもらえるきっかけになればうれしい」と力を込めた。末野は「悪役も含め、登場人物全員がかわいい」と作品の魅力を語る。「初めてのお客様は、一見、内容が難しいと思うかもしれないが、見ていくうちに“こういうことだったのか”と分かるような仕組みになっている。舞台をきっかけに原作を読みたい、来年からのアニメを見たいという風にもなるかもしれない。何も知らない人こそ、僕は見てほしい」と呼びかけ、「逆に物語を知っている人は舞台でどこまで描き切れているかのか、一緒に楽しんでもらえたら」。公演は12日まで。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2019年11月07日音楽朗読劇『ジキルvsハイド』が2019年11月4日(月・祝)によみうりホールで上演される。原作は、19世紀末のロンドンを舞台としたロバート・ルイス・スティーヴンソンの小説『ジキル博士とハイド氏』。これまで多くの舞台化や映画化がなされてきたが、今回の音楽朗読劇は、登場人物を3人に絞り、地の文で状況を説明しながらセリフを発するスタイルだという。出演する、中島ヨシキ(ジキル博士とハイド氏役)、高橋広樹(アタソン役)、南早紀(マリー役)の3人に話を聞いた。【チケット情報はこちら】2018年の初演にはアタソン役を演じた中島。当時ジキル博士とハイド氏役だった江口拓也の演技を見ていたこともあり「自分の役のイメージは何となくできていた」というが、高橋のアタソン役は「自分が初演時にやったものとは全く違うもの」で、「再演ならではの楽しさがある。のびのびとやらせてもらっている」。その上で、「朗読劇は基本的には声と音楽だけ。それができる声優の真骨頂をお客様に見せられる機会になればいいなと思う」と話した。すでに10月に2公演を終えた高橋は「キャストが違えば、空気も違う。役も話も同じだが、伝わってくるキャッチボールの速度や球筋に違いがあった。稽古ではその違いを味わいつつ、楽しい時間を過ごした」。そして、朗読劇については「お客様と共有できるイメージを作れるか。それが朗読の一番の醍醐味。個人的には、普通の演劇よりも朗読劇の方が、客席との一体感が生まれやすいと思う。一期一会その公演に来てくださるお客様との『ジキルvsハイド』が作れれば」と語った。マリー役の南は、本作品に初参加だが、「先輩たちや演出家からのディレクションで、自分の中でマリー役の方針が出来つつある。本番までに完成させるように頑張ろうと思う」と意気込む。「原作を知っている人も知らない人も、この朗読劇を見て、いいなと思ってもらえるようなお芝居にしたい。また、朗読劇自体初めてのお客様にも、朗読劇の魅力が伝わるようなパフォーマンスができたら。劇場で一緒にこの『ジキルvsハイド』の世界を楽しみましょう」と述べた。上演時間は約90分(途中休憩なし)予定。また、11月30日(土)には神奈川県立青少年センター紅葉坂ホールで、13時半公演(伊東健人、神尾晋一郎、田中美海)、19時公演(石川界人、中島ヨシキ、吉岡茉祐)も行われる。取材・文:五月女菜穂
2019年11月01日舞台版『PSYCHO-PASS サイコパス Chapter1ー犯罪係数ー』が10月25日(金)から品川プリンスホテル ステラボールで上演されている。本作は、同名のテレビアニメ(第1期)を、『魔法少女まどか☆マギカ』などでも知られるシナリオライターの虚淵玄(ニトロプラス)の監修、三浦香の演出で初めて舞台化したもの。初日を前にゲネプロ(総舞台通し稽古)と会見が行われ、キャストたちが意気込みを語った。【チケット情報はこちら】舞台は、2112年、巨大監視ネットワーク「シビュラシステム」によって、人間の心理状態や性格的傾向を数値化し、管理する近未来の日本。人々はその数値を「PSYCHO-PASS」、中でも犯罪に関する数値を「犯罪係数」と呼んでいた。一見、何の異常性も見られない人でも、犯罪係数を測定する銃「ドミネーター」を向けると、数値が規定値を超えれば「潜在犯」として裁かれる世界。安全に見えて、とても窮屈な世界で、必死に生き抜く人間模様を描く。狡噛慎也(こうがみ・しんや)役の久保田悠来は、初日の天候が雨だったことに触れ、「生憎の天候ですが、実に『PSYCHO-PASS』らしい始まり。初めましてのキャストも多いなか、最高のキャストがそろったと思います。まさに“最高パス”です」。一方、槙島聖護(まきしま・しょうご)役の前山剛久は「僕自身、アニメ版が大好きで、しかも槙島聖護が大好き。自分がこの役を演じられることはとても光栄で、不思議な気持ちです。この作品を演劇でやる意味、生身の人間が演じる意味を考えながら頑張ってきました」と話した。また、久保田によると、監修をした虚淵が通し稽古を見た際に「こんなに面白い本を書いた覚えはない」と話していたという。それに対し、久保田は「最大の賛辞だなと思っていますし、『早く続きが見たい』という言葉もいただいた。身にあまる光栄です」立体的で一部回転式の舞台装置やスクリーンを存分に生かし、テンポが良い好演出。キャスト陣もそれぞれのキャラクターの特徴を見事に体現し、スリリングな『PSYCHO-PASS』の世界観を作り上げていた。過去と現在が交錯しながらも、全体としてすっきりとした構成になっているので、テレビアニメ版ファンはもちろん、アニメ版を見たことがない人でも物語を十分楽しめるはずだ。上演時間は約2時間30分(途中15分休憩あり)。このほか、真田佑馬、河内美里、橋本祥平、愛加あゆ、立道梨緒奈、磯野大、大塚尚吾、藤本結衣、細貝圭、今村ねずみらが出演する。公演は11月10日(日)まで。チケット発売中。取材・文・撮影:五月女菜穂(C)サイコパス製作委員会(C)舞台版『PSYCHO-PASS サイコパス Chapter1ー犯罪係数ー』製作委員会
2019年10月28日幼なじみの男女が半世紀にわたってやりとりした手紙の朗読劇『ラヴ・レターズ』は今年、日本初演から30年目を迎える。演出の藤田俊太郎と10月31日の公演で剛力彩芽とともに出演する尾上右近に、本作の魅力や思いを聞いた。【チケット情報はこちら】米国の作家A.R.ガーニーによる朗読劇で、ニューヨークで1989年に初演。日本では90年に初演され、故・青井陽治の翻訳・演出のもと、数々の俳優たちが舞台に立ってきた。2017年12月から、青井の遺志を受け継いだ藤田が演出を担当。右近は、同年12月に松井玲奈とともに本作に出演し、今回が2回目の挑戦となる。右近は、前回の出演について「歌舞伎以外の舞台経験が浅い時で、実感としては手も足も出なかった。ハードルが高かったといいますか、ハードルをくぐったような感じでした」と素直に語る。だからこそ今回の出演は「もう1回チャレンジさせていただきたいと思っていたので、本当に嬉しい」。本作がここまで愛される理由や魅力はどこにあるのだろうか。演出の藤田は「多角的」とコメントし、「この作品の魅力は、手紙と通して誰かに何かを伝えること、その思いだと思うんです。(台本の設定は)アメリカのある限られた人種、場所での話ですが、時代を超えて、普遍的な意味を見い出すことができる作品だと思います。特に自分が一番という考えになりがちな現代に、「他者を思いやり、いくつしむ」という作品のテーマには、新たな価値があるのでは」と話す。今回上演される台本は、故・青井氏が最後に直した新翻訳版だといい、「青井さんが亡くなって2年。青井さんから僕たちに新たに届けられた、ラヴレターだなと思います」とも語った。右近は「前回は作品の厚みを知らない怖さがあったけれど、今回は知っているからこその怖さがあります。緊張感を持ちながら、今の等身大の自分を表現できたら」と意気込み、「50年という年月を描きながら、普遍的な価値を持つ、とても稀有な作品。老若男女問わず、みなの心に届く作品でもあるので、幅広い方に見ていただきたいです」と話した。一方、藤田は、「演じる役者、カップルによって、まるで表情を変える作品です。素晴らしい公演をお届けしたいと思います」。『ラヴ・レターズ 2019 Autumn Special』は新国立劇場小劇場にて、10月31日(木)尾上右近&剛力彩芽、11月1日(金)平方元基&昆夏美、2日(土)三浦貴大&大島優子、3日(日・祝)岡山天音&黒島結菜、4日(月・休)松本利夫(EXILE)&樹里咲穂が出演。チケット発売中。取材・文・撮影:五月女菜穂
2019年10月18日映像や舞台で活躍中の若手俳優が多く所属する、キューブの若手俳優のサポーターズクラブ「C.I.A.(Cube Infinity Artists)」が、今年も年末に1年間の感謝を込めたライブ『SUPER LIVE 2019』を開催する。出演する川原一馬、金井成大、永田崇人、安田啓人の4人に意気込みやC.I.A.への思いを聞いた。【チケット情報はこちら】C.I.A.は2017年12月に発足し、昨年末に初めて『SUPER LIVE』を開催。“メンバー発信”をテーマに、歌やダンスを披露した。前回に引き続き、演出を務める川原は「ファンの皆さんに感謝の気持ちを込めて、僕たちのプライベートな部分、各々が輝いている部分にフィーチャーしたライブにしたい。今年しかできない時事ネタや幅広い年齢層に刺さる曲を選んで、みんなが楽しめるような工夫ができたら」と構想を語ってくれた。8月にリリースされたオリジナルソング『ドドドどんまい!』のパフォーマンスをはじめ、今回もC.I.A.の魅力が詰まったライブになりそうだ。昨年のライブについて、金井は「自分たちでゼロから作る初めての経験だった。お客さんを楽しませることができたのはもちろん、メンバーとも結束できた感覚があって、すごくよかった」と振り返る。「素直に楽しかった」と語るのは永田。「ライブを通じて、メンバーのことをたくさん知って大好きになって、お客さんとも『今年も一年頑張ったよな』とシンクロした感覚があった」と明かした。また、昨年は体調不良で不参加だった安田は「迷惑をかけた分、今年は恩返しができるようにしたい」と意気込む。1年を締めくくるライブ。抱負を尋ねると金井は「キャンディちゃん(※金井のファンの愛称)に向けた、世界を狙う、大きなプロジェクトが動いている。ライブに来てもらえれば分かると思うので、ぜひ応援してもらいたい」。安田は「今、応援してくださっているファンの方がこれからもずっと応援してくださるように頑張るのはもちろん、一人でも多くの人にC.I.A.のこと、個人個人のことを知ってもらえたら」と語った。また、永田は「まずは個人としての知名度をあげたいし、C.I.A.のこともたくさんの人に知ってほしい。素敵な人がたくさんいるので、みんなで一緒に戦っていきたい」。川原は「俳優としての僕たちも、プライベートな僕たちも両方を見てもらって、ファンの方とより深いコミュニケーションがとれる場になったら。そのために一人一人が俳優という職業を背負って頑張っているので、ぜひ応援していただきたい」と話していた。公演は12月27日(金)から29日(日)まで東京・品川インターシティホールにて。チケットは、チケットぴあにて現在、抽選先行プレリザーブのエントリーを受付中。取材・文:五月女菜穂
2019年10月16日幼なじみの男女が半世紀にわたってやりとりした手紙の朗読劇『ラヴ・レターズ』。日本初演から30年目を迎える今年、黒柳徹子が初出演することになった。「黒柳徹子スペシャル」版として相手役を務めるのは、高橋克典、筒井道隆、吉川晃司の3人。初日を前にした10月7日、報道陣向けのフォトコールが行われ、黒柳と高橋、演出を務める藤田俊太郎が取材に応じた。【チケット情報はこちら】米国の作家A.R.ガーニーによる朗読劇で、ニューヨークで1989年に初演。日本では90年に初演され、故・青井陽治の翻訳・演出のもと、数々の俳優たちが舞台に立ってきた。2017年12月から、青井の遺志を受け継いだ藤田が演出を担当している。舞台上には、テーブルと二脚の椅子。並んで座った男優と女優が、手にした台本を読み上げる。極々シンプルな舞台だが、それゆえに役者の個性と能力がありありと発揮され、観客はどんどんと物語に入り込んでいく。この日のフォトコールでは、アンディ(高橋克典)とメリッサ(黒柳徹子)が大学生になり、初めてホテルに行って、結ばれるチャンスを迎えるも、なかなかうまくいかないという場面が公開された。短いシーンではあったが、黒柳も高橋もひとつひとつの手紙にしっかりと思いを込めて、言葉を紡いでいた。初日を前に心情を問われた黒柳は「ものすごくワクワクしています」。およそ50年にわたる手紙のやりとりを通じた朗読劇だが、「すごくロマンチックな内容で、いいなと思います。手紙をもらうのはすごく好き」とほほ笑む。「残念ながら、人とラヴレターのやりとりをしたいい思い出はあまりない」と話しながらも、若い頃にもらったラヴレターの冒頭に「蒸かしたてのサツマイモのような貴方へ」と書かれていたことを明かし、「今思うと結構いいなと思うのですが、当時はムッとして、返事はもちろん書きませんでした」などと、自身の思い出を語った。共演する高橋は「緊張していますが、(座ったままで演技をするという)制限や抑制のある中で表現していくことに、とてもやりがいを感じています」と気合十分。演出の藤田は「手紙を通して、魂が交流する瞬間をお客様に早くみていただきたい。ワクワクして、興奮した気持ちでいっぱいです」と話していた。東京公演は16日(水)まで、EXシアター六本木にて。大阪公演は10月18日(金)~20日(日)、森ノ宮ピロティホールにて。11日(金)と19日(土)の終演後には黒柳徹子のトークショーが予定されている。チケット発売中。取材・文・撮影:五月女菜穂
2019年10月09日草刈民代と高嶋政宏による二人芝居の舞台『プルガトリオーあなたと私のいる部屋ー』が10月4日(金)から東京芸術劇場・シアターウエストで開幕した。バレリーナとして一世を風靡し、女優としても活躍を見せる草刈が初めて企画した舞台。アーツ・カウンシル・ロンドンの総監督や、英国王立演劇アカデミーの校長を務めた経験を持つ英国の演出家ニコラス・バーターが演出、草刈の夫で、映画監督の周防正行が脚色を担当する。【チケット情報はこちら】原作は、戯曲『死と乙女』や『谷間の女たち』などで世界的に著名なチリの劇作家アリエル・ドーフマンによる二人芝居。ギリシャ悲劇『王女メディア』と、ジャン=ポール・サルトルの『出口なし』をモチーフに、人間の愛憎、容赦をテーマとした濃密な1組の男女の物語だ。病室のようにも、刑務所の面会所のようにも見える殺風景な部屋。男(高嶋)と女(草刈)はそれぞれ立場を入れ替えて尋問し合う。そして、会話を通じて、だんだんとふたりの衝撃的な過去が明らかになっていく…。観る側も演じる側も確かに集中力が必要な芝居だが、スピーディーかつスリリングな展開で、ストレートプレイならではの面白さを実感することができるだろう。初日を前にした心情を問われた草刈は「2年ほどかけて準備をしてきたので、やっと幕が上がるなという感じです」。自宅でも草刈は熱心に芝居のことを考えていたらしく、夫の周防は「2年間、しつこかったですね。家に帰るとすぐに“あそこのセリフだけど…”と話し始めて」と笑いつつ、「まさか映画『Shall we ダンス?』で一緒に仕事をしてから、20数年経って、こうして舞台を一緒に作っているとは思わなかったです」と感慨深げだった。本作の見どころについて、草刈は「男女の関係も、バトルの仕方も、全部が濃い。ラテン系の作家だからこそのパッションを感じます。それを日本人がやる面白さ、スピード感を見てほしい」と話し、「日本初演なので、馴染みのないものかもしれないですが、私も高嶋さんもあまり見せたことのない顔を皆さんにお見せできると思います。ぜひご覧になっていただきたい」と語る。また、高嶋は「日本初演ということで、皆さんに最初の証人になってもらいたいです。普段、お芝居を見ない人も、見にきてくれたらすごく嬉しいです」。上演時間は約1時間30分(予定)。公演は10月14日(月・祝)まで。チケット発売中。取材・文・撮影:五月女菜穂
2019年10月07日日本初演50周年となるミュージカル『ラ・マンチャの男』の東京公演が10月4日、東京・帝国劇場で開幕した。初演からセルバンテス / ドン・キホーテ役として主演し続ける二代目松本白鸚は、本作品を自身のライフワークと位置づけている。初日前に取材に応じた白鸚は「僕が1番大事に思うのは今ですから。今の『ラ・マンチャの男』が1番愛おしいです」と語った。【チケット情報はこちら】スペインの小説『ドン・キホーテ』を原作とした『ラ・マンチャの男』がブロードウェイで初演されたのは1965年。日本初演は1969年4月から5月で、白鸚(当時は市川染五郎)は26歳という若さだった。70年には、日本人として初めてブロードウェイから招待を受け、名門マーチンベック劇場(現・アル・ハーシュフェルド劇場)にて10週間の主演を果たした。4年ぶりとなる2019年のツアーでは、すでに大阪、宮城、愛知での公演を終えた、帝国劇場で上演される10月19日(土)17時の部で、通算上演回数1300回を突破する予定となっている。舞台は、16世紀末のスペイン・セビリアの牢獄。教会を侮辱した罪で投獄されたセルバンテスは、牢名主に即興劇で申し開きをしようと思い立ち、他の囚人たちを巻き込んで『ドン・キホーテ』の劇を演じ始める…。原作者セルバンテス、彼の芝居の登場人物であるアロンソ・キハーナ、そして彼の狂気が生み出したドン・キホーテという3人の男の物語が重層的に展開。現実と狂気を行き来しながら、「あるがままの自分に折り合いをつけるのではなく、あるべき姿のために闘う」という生き様を貫く姿を描いている。東京公演初日のカーテンコール。観客の鳴り止まぬ拍手に応えようと、白鸚は胸に手を置いて、何度もお辞儀をしたり、観客に向かって手を振ったりしていた。「夢というのは、ただ夢みるだけのものでも、語るものでもなくて、夢を叶えようとする人の心意気だと思う」。そう語る白鸚自身が、きっと誰よりも「見果てぬ夢」を追い求めてきたし、今も追い求めている。その感動的な生き様をぜひ劇場で目撃してほしい。上演時間は約2時間5分(予定)。共演は、瀬奈じゅん、駒田一、松原凜子、宮川浩、上條恒彦ら。東京公演は10月27日(日)まで。チケット発売中。なお、チケットぴあでは東京公演のOVER50向けの企画チケットも発売している。取材・文:五月女菜穂
2019年10月07日おなじみのキャラクターに加え、公演史上最多となる総勢20フレンズが登場するオリジナルストーリー「舞台けものフレンズ『JAPARI STAGE!』~おおきなみみとちいさなきせき~」が9月27日より、東京・品川プリンスホテル クラブexで開幕した。【チケット情報はこちら】アニメ、漫画、ゲームなど、さまざまなメディアで展開している『けものフレンズ』の舞台版の第3弾となる。アニメ版の声優陣と舞台オリジナルキャストの合体チームで上演された前2作と違い、今回は舞台オリジナルキャストのみ。脚本・演出の村上大樹は公式パンフレットの中で「これまで以上の挑戦となることは間違いありません」と語る。物語の舞台はジャパリパーク。サンドスターの不思議な力で生まれたフレンズたちは、姿かたちは違っても、みんな仲良し。サバンナのフレンズが中心となって、学びの場である「ジャパリアカデミー」を作ろうとしていたが、最近現れた空のフレンズたちが「自分たちがパークを仕切る」と宣言して、対立を深めていって…。フレンズの特徴をよく捉えた衣装で、総勢20フレンズが歌って踊って、とにかく賑やかな舞台だった。円形舞台を生かしたステージングで、花道にもしばしばフレンズが現れる演出。舞台の終盤には、客席で「光る棒」を振って、「ようこそジャパリパークへ」などの楽曲をライブのような感覚で一体感が楽しめる。主演のオオミミギツネ役を演じるのは、乃木坂46のメンバーである伊藤理々杏。「初めて参加するので、すごく緊張してはいるんですが、他のフレンズたちと力を合わせて精いっぱい頑張っていきたいと思います」とコメントし、「20フレンズそれぞれの個性がピックアップされて、キャラクターが立っていると思うので、注目してほしいなと思います」。そのほか、オカピ役の野本ほたる、タヌキ役の加藤里保菜、クロヒョウ役の稲村梓らレギュラーフレンズや、初参加のフレッシュなメンバーにも注目だ。上演時間は休憩なしの約2時間。公演は10月6日(日)まで。9月30日(月)~10月3日(木)の終演後には日替わりの出演者のほか、特別ゲストを招いたアフタートークも予定されている。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2019年09月30日ディズニー・アニメーションや映画などの名曲を、フルオーケストラとブロードウェイのヴォーカリストたちによる生演奏で楽しむ「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2019」が開幕した。9月21日から23日まで行われた文京シビックホール(東京都文京区)での公演を皮切りに、12月23日(月)の滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールでの公演まで、全国24都市49公演が予定されている。初日を前に行われた公開リハーサルを取材した。【チケット情報はこちら】17年目を迎えた「ディズニー・オン・クラシック」。今年は「きっと、叶う★ Wish, Hope, Dream」をテーマに、メインプログラム(第二部)として、名作アニメーション『アラジン』を全編フィーチャー。字幕付きのアニメーション、フルオーケストラの生演奏、ヴォーカリストたちの歌声、シーンに合わせた彩り豊かな照明が調和した、贅沢な空間。「フレンド・ライク・ミー」や「ホール・ニュー・ワールド」、「アラビアン・ナイト」といった名曲をはじめ、30曲がノンストップで奏でられ、、『アラジン』の世界を存分に味わうことができた。第一部では、観客からのリクエストが多かった楽曲として『トイ・ストーリー』より「幻の旅」、『ムーラン』より「トゥルー・トゥ・ユア・ハート」や「リフレクション」などが演奏された。また、今年12月をもって終了する東京ディズニーランドのショー「ワンマンズ・ドリームⅡ -ザ・マジック・リブズ・オン」より“ワン・マンズ・ドリーム”、映画『メリー・ポピンズ リターンズ』より「幸せのありか」なども。ステージと観客が一体となって楽しめる工夫も随所に見られ、大人も子どもも楽しめるコンサートだった。公演時間は途中休憩も含め約2時間30分。指揮は、『オペラ座の怪人』のブロードウェイ公演および全米ツアーの指揮者を務めた経験や俳優経験もあるリチャード・カーシー。オーケストラは2015年に創立されたTHE ORCHESTRA JAPAN。ヴォーカリストは、ニューヨークでのオーディションを勝ち抜いた男女8名(サンティーナ・ウンバハ、コナー・サカール、アルマンド・ハーロウ・ロンコーニなど)。ナビゲーターは、ささきフランチェスコが務めた。各公演のチケット発売中。さらに、年末カウントダウンコンサート「ディズニー・オン・クラシック~ジルベスター・コンサート 2019/2020」の開催も決定している。12月30日(月)15時開演、17時半終演(予定)、12月31日(火)23時開演、25時半終演(予定)、いずれも舞浜アンフィシアター。こちらもぜひお見逃しなく!取材・文:五月女菜穂
2019年09月27日日本初演50周年となるミュージカル『ラ・マンチャの男』が9月7日より大阪のフェスティバルホールで開幕している。初演からセルバンテス/ドン・キホーテ役を演じ続け、本作品を自身のライフワークと位置づける松本白鸚は、今年8月19日に喜寿を迎え、帝国劇場で上演される10月19日17時の部で通算上演回数1300回を突破する予定だ。初日を前に東京都内で公開された、通し稽古の様子を取材した。【チケット情報はこちら】スペインの小説『ドン・キホーテ』を原作とした『ラ・マンチャの男』がブロードウェイで初演されたのは1965年。日本初演は69年4~5月で、市川染五郎(現・二代目松本白鸚)は26歳だった。70年には、日本人として初めてブロードウェイから招待を受け、名門マーチンベック劇場にて計60ステージに立った。以降これまでの上演回数は1265回にも上る。舞台は、16世紀末、スペインのセビリアの牢獄。投獄された『ドン・キホーテ』の作者であるセルバンテスは、牢名主からの追求を逃れるために、他の囚人たちを巻き込んで、『ドン・キホーテ』の劇を演じ始める…。この日の通し稽古は、オーケストラと衣裳がついた、本番に近い稽古だった。主演の松本白鸚は、とても77歳には見えない、力強く、熱のこもった芝居。6月に行われた製作発表では「真新しいラ・マンチャでございます。何しろ主演の俳優の名前が変わりましたから!」と挨拶し、笑いを誘っていたが、改めて白鸚のすごさは、この年になっても、何度も立った舞台であっても、常に自身の限界に挑んで、変化を楽しんで、観客の心を動かせることなのだと知る。白鸚演じるドン・キホーテが想い姫と慕うアルドンザ役は、本作初出演の瀬奈じゅん。元宝塚歌劇団のトップスターらしく、激しいダンスをこなし、伸びやかな歌声を披露していた。また、セルバンテスの従僕であるサンチョ役は駒田一。駒田自身、サンチョ役10年目ということで、主人への愛がより溢れ出ていたように思う。公演のキャッチコピーは「遍歴の旅はクライマックスへ」。ミュージカル史に残る“遍歴の旅”を、ぜひ心に焼きつけてほしい。上演時間は約2時間5分(予定)。大阪公演は12日(木)まで。宮城公演は9月21日(土)~23日(月)東京エレクトロンホール宮城。愛知公演は9月27日(金)~29日(日)愛知県芸術劇場大ホール。東京公演は10月4日(金)~27日(日)帝国劇場。チケット発売中。チケットぴあでは東京公演のOVER50向けの企画チケットを発売中。取材・文:五月女菜穂
2019年09月17日