昨年5月に刊行がスタートした「恋の絵本」シリーズ。この5月でようやく全5巻が揃いました。価値観をアップデートして描く、これからの恋愛絵本。絵本を作るのはこれがはじめてとなる小説家たちが人気イラストレーターとコラボレート。昔のおとぎ話のように「王子様に見いだされて結婚してめでたしめでたし」というお話ではなく、現代の恋愛観、結婚観、ジェンダー観を取り入れつつ、「好き」という素朴な感情を肯定する、というのがコンセプト。どのような切り口にするかは各作家に任せ、出来上がった物語にぴったりの描き手がイラストを担当、どれも絶妙なコラボレーション作品となっています。哲学的な内容があるかと思えば、恋のときめきを思い出す可愛らしいお話もあり、さらには新たな価値観を示してくれる物語も…。テーマは同じなのに、作家と絵師によってこんなにも異なる世界観が出来上がるのかと驚いてしまうほど。どの作品にも、大切なメッセージがこめられています。ぜひ、お話を楽しみながら、ぺージの隅々まで眺めて、読み比べてみてください。辻村深月・作×今日マチ子・絵『すきって いわなきゃ だめ?』学校で好きな人に告白することが流行中。同級生に「すきなひといないの?」と聞かれて「わかんない」って答えたけれど…。自分の淡い気持ちに気づいていく瑞々しさと同時に、同調圧力に対する違和感も表現。光景で主人公の心情を表すイラストも秀逸です!桜庭一樹・作×嶽まいこ・絵『すきなひと』ある夜、もう一人の自分とすれ違った「わたし」。「すきなひとをおいかけている」というその子を追いかけていくと…。お話は薄暗い夜道から始まり、やがて、はっと驚くような色彩豊かな世界が広がっていきます。読むたびに感じ方が変わる、壮大で深遠な内容。白石一文・作×北澤平祐・絵『こはるとちはる』好きな色も好きなケーキもなんでも一緒のこはるとちはる。ある時、好きな人まで同じだと気づき、こはるは悩んでしまう…。最初の家族の食事風景のページから、華やかで動きのあるイラストに圧倒されます。お話も絵も、すべてが可愛さ全開の一冊。村田沙耶香・作×米増由香・絵『ぼくの ポーポが こいを した』ぼくの大事なぬいぐるみのポーポが、ぼくのおばあちゃんと結婚する。ぼくは大反対!常識を覆す小説を発表し続ける著者らしく、恋や生き方の自由を伝える作品。ポーポの造形も可愛く、幻想的なシーンやおばあちゃんのドレスが、もうため息がでるほど美しい!!島本理生・作×平岡 瞳・絵『まっくろいたちのレストラン』不気味な牙がコンプレックスのまっくろいたちが、森の中にレストランをオープン。店は評判になるものの、いたちはみんなを怖がらせないよう客席に背中を向けていて…。“白馬の王子様”パターンとは違う恋の行方。質感のある版画絵の動物たちがキュート!※すべて、編集・瀧井朝世各1500円(岩崎書店)※『anan』2020年5月27日号より。文・瀧井朝世(by anan編集部)
2020年05月20日女優の京マチ子さんが5月12日、心不全のため死去していたと発表された。享年、95歳。各メディアによると、告別式は近親者で行ったという。大阪生まれの京さんは49年に大映で女優デビュー。黒沢明監督(享年88)の50年の映画「羅生門」や53年の溝口健二監督(享年58)「雨月物語」、衣笠貞之助監督(享年86)「地獄門」などに出演。作品がヴェネツィア国際映画祭やカンヌ国際映画祭といった映画祭で次々と受賞したことから「グランプリ女優」と形容されるほど、日本の映画界に欠かせない名女優となった。ドラマでは77年の「犬神家の一族」(TBS系)や必殺シリーズに出演し、94年の「花の乱」(NHK総合)や99年「元禄繚乱」(同局)といった大河ドラマでも存在感を発揮。06年までは舞台に出演するなど公の場にも登場していたが、以降は事実上の引退状態となっていた。そのため13年と14年に池畑慎之介(66)のブログに近影がアップされると、大きな反響を呼んだ。Twitterでは京さんを追悼する声が続々と上がっている。《また名優が御一人旅立たれた…… 京マチ子さん演じる坂東京山ほど美しく冷たく鋭い眼を見たことがない》《洋装も和装も似合って、なんて妖艶な人なんだろうと思っていました。特に唇が色っぽいのに可愛くて好きでした》《私は小津監督の「浮き草」の旅芸人の役が大好きです。特にあの大雨の時の鴈治郎さんとの罵声の言合いのシーンと、ラストシーンが。ご冥福をお祈りします》今年に入ってもデビュー70周年を記念した「京マチ子映画祭」が開催されるなど、いまだ根強い人気を誇っていた京さん。実は、晩年はドラマ「渡る世間は鬼ばかり」(TBS系)でお馴染みのテレビプロデューサー・石井ふく子氏(92)や、紫綬褒章も受賞した女優・奈良岡朋子(89)、戦後を代表する映画女優・若尾文子(85)らと同じマンションで暮らしていたという。「京さんがそのマンションで暮らすことになったのは、石井さんがキッカケ。正月にはみんなで石井さんのお家に集まってお雑煮を食べるなど、気の置けない仲間たちといっしょに老後を過ごされていたそうです。京さんは生涯独身を貫きましたが、女友達に囲まれている安心感のおかげで大往生となったのかもしれません」(芸能関係者)“リアルやすらぎの郷ライフ”を送り、女友達に見守られて息を引き取った京さん。これからは空から、日本の映画界を見守ることだろう。
2019年05月15日今日マチ子さんの『センネン画報+10years』は、絵とコマだけで物語性を感じさせる、不思議な雰囲気を持つマンガ。2004年からブログでほぼ毎日発表された1ページ漫画「センネン画報」。今日マチ子さん初の単行本がまとめられた日から10年。オールカラー増補改訂版となる『センネン画報+ 10years』が完成した。「自画自賛のようになってしまうのですが、これがこの作品の本来の姿だ!と思えるほど素晴らしい仕上がりです。1冊目の単行本はモノクロページも多かったのでカラーで出したいという思いをずっと持っていて、10年目にしてようやく叶いました。収録作品にはかなり古いものも交じっているので、表現にも技術にも稚拙なところはやっぱりある。でもそこに後期の作品が合わさり、連続するページに別々の作品が並べられて一冊にまとめられることで、新しいストーリー性が生まれました」ページをめくったり戻ったり、ひとつの絵をじっと眺めたり。読み手に委ねられた時間のなかで、作品と作品の行間が立ち上がるような不思議な作用も感じられる。その後、多くのストーリー漫画を手がけるようになる今日さんが、『センネン画報』で描きたかったものとは?「これを描き始めた頃は、漫画の描き方も知らないまま、憧れだけで描いていました。でもあるところまで進んだら、漫画って何だろう?漫画らしさって本当に必要なのかな?と疑問を持つようになり、じゃあセリフもナレーションも取り払ってみよう、登場人物のキャラクター性をなくしてみよう、と表現の冒険に気持ちが移っていきました。言葉にしたくてもできないものを絵とコマで表現したい。日常に存在しているけれどあえて描写されることのない、記憶にも残らないような微妙な瞬間をスケッチしたかったんです」描かれる情景や感覚は、どんなふうに記憶されているのだろうか。「記憶ではなく観察して考えることの繰り返しですね。メモに残すとつまらなくなってしまうので、メモする時間があったら漫画として描いてしまおうという感じです」「センネン画報」は、ひたすら描きたいものを描いていたデビュー前の時期に生まれた。「漫画を描いてる時間は1日で実質1時間くらい。それなのに、1枚描いただけでもどっと疲れてしまうくらい、絵に対して集中していました。もっと速く描けとか、面白くしろとか言われることもなく、何をやってもいいという気持ちの自由さに満ちていて、そういう意味では贅沢に描くことができた、とても幸せな作品だと思います。セリフのない1ページ漫画なので、本が苦手な人や、長い文章や漫画を読み通すのが苦手な人は、パッと開いたページを眺めてみてください。本好きな人は、バラバラに見える並びの中から、自分だけの物語を紡いでいってほしい。鞄に忍ばせて、いろいろなところに連れて歩いてもらえたら幸せです」冬の朝の一瞬を切り取った美しい1枚絵。「これが描けた時は、自分も新しいスタートラインに立てたような、清々しい気持ちになりました」と今日マチ子さんに言わせた、作家渾身の一枚。扉に映った影は一体誰のもの?指も視線も絡まないまま繋がっていく二人。5コマが連続してリズムを作る。淡くもカラフルな画面と、白く抜けるような青春の爽やかさ。その向こう側に、「七夕」の日に語られる、切ない恋の逸話が思い起こされる。『センネン画報+10years』淡く繊細な色で彩られた世界は、言葉はなくとも音と思いにあふれている。『センネン画報』を底本に、新たな収録作を多く加え、編み直されたオールカラー改訂版。通常版1、2巻も発売中。太田出版1600円きょう・まちこマンガ家。2004年にブログ「センネン画報」をスタート。短編、長編、エッセイマンガまで、これまで30作以上を出版。’15年に日本漫画家協会賞大賞を受賞。※『anan』2018年6月13日号より。インタビュー、文・鳥澤 光©Machiko Kyo
2018年06月11日伊勢丹新宿店では、8月12日から24日まで、ファインアートからデザインまでを紹介するキャンペーン「イセタン アート&クリエーション フェスタ 2015 ~アートはミライだ~」を同店全館で開催する。(一部の売場は8月19日から24日まで)キャンペーンの一環として、同店では日本のアートとも言うべき“漫画”にフォーカス。花くまゆうさく、今日マチ子、辛酸(しんさん)なめ子、の3人の漫画家にオリジナル漫画の制作を依頼した。花くまゆうさくは、「足りなかった男」をテーマに8コマ漫画を制作。ユニークなストーリー展開を楽しむことができる。今日マチ子は、「ハートビート」をテーマに、アクセサリーブランドのくぐり(Quguri)や、帽子のセレクトショップ、アース(arth)のアイテムがさりげなく紹介され、叙情的なタッチが印象的な漫画が制作されている。作品で描かれた、くぐりのネックレス(2万5,000円)やコサージュ(1万5,000円)は、実際に同店本館4階イーストパークで発売されているほか、アースの帽子(2万2,000円)は、同店1階婦人雑貨コーナーで展開している。辛酸なめ子は、「夢のパンプス」を題目に、靴ブランドのちゃけちょけのパンプス(22.0cmから25.0cm、2万800円)や、陶芸作家の山田浩之が制作したイボンヌ カップ(約口径8×高さ8cm、8,000円)が登場する漫画をコミカルに描いている。パンプスは同店2階婦人靴、カップは同店5階センターパーク/ザ・ステージ#5で購入できる。なお、各漫画の全編は伊勢丹が運営するウェブサイト「イセタン アート&クリエーション フェスタ 2015」(URLは下記「LINK」参照)で紹介されている。この他、同店本館6階センターパークでは、キッズファッション誌『sesame』40周年記念企画「日本の子供たちへ。」に合わせ、日本各地の工芸品や文化的体験を「星野リゾート 界」 と伊勢丹がプロデュースしたアイテムも“JAPANアートの発信”という視点から発売している。寄木細工の道具箱(税込5,621円)、遠州紬の下駄(8,000円)など。また8月19日からは、吉田カバンの創業80周年を記念し、国内外デザイナーやアーティストとのコラボレーションによって誕生したバッグが同店本館1階ザ・ステージ#1で発売される。ポーター(PORTER)とポール・スミス(Paul Smith)による3way ブリーフケース(税込61,500円)、ポーターとストーンアイランド(STONE ISLAND)のバックパック(税込6万9,500円)などを展開する。さらに、同日19日から、コンバース トウキョウ(CONVERSE TOKYO)がTOKYOだからこそ表現できるファッションを同店本館2階センターパーク/ザ・ステージ#2で発信。デニムジャケット(2万8,000円)を始め、デニムパンツ(3万4,000円)、スニーカーのオールスター刺繍 OX(1万6,500円)などが発売される。
2015年08月13日